説明

伸縮門扉

【課題】移動側端の垂れ下がりを防止でき、大きな間口に対応できる伸縮門扉を提供する。
【解決手段】吊元側上がりの斜架材2Aの吊元側端は吊元柱9又は回転柱11の上側に固定した上側ガイド部材26に対し上部移動ピン24を介して上下摺動自在に連結し、吊元側下がりの斜架材3Aの吊元側端は吊元柱9又は回転柱11の下側に固定した下側ガイド部材27に対し下部移動ピン25を介して上下摺動自在に連結する。斜架材2Aの吊元側端と斜架材3Aの吊元側端との間に配された、斜架材2Bの吊元側端と吊元側下がりの斜架材3Bの吊元側端との交差部は前記固定部材に対し固定ピン軸4Aを介して回動自在に枢支連結する。扉本体6を伸長するときは、吊元側上がりの斜架材2Aと吊元側下がりの斜架材3Aとが固定ピン軸4Aを中心として反時計方向に回転し、これにより扉本体6の移動端側を持ち上げる力が作用して扉本体6の移動側端の垂れ下がりを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉本体がパンタグラフ機構により伸び縮みする伸縮門扉に係り、より詳しくは、レールやキャスターを不要とするハンガータイプの伸縮門扉に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の伸縮門扉として、例えば、複数本の吊元側上がり(左上がり)に傾斜した斜架材と吊元側下がり(左下がり)に傾斜した斜架材とが交差し、交差部がピン軸で枢着されたパンタグラフ機構により伸縮する扉本体を形成し、この扉本体の吊元側端を吊元柱等の固定部材に連結する伸縮門扉において、扉本体の上部側における斜架材同士の交差点同士間の距離を扉本体の下部側における交差点同士間の距離よりも小さく設定し、これにより扉本体を伸ばしたとき該扉本体の移動側端が垂れ下がるのを抑えるようにしたものがある(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平9−177455号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このように構成した伸縮門扉は、伸長長さ(全幅)がせいぜい3m程度が限界であり、それを上回る長さ、例えば2台の車庫スペースの入口の間口の場合のように4m以上必要とする長さでは、扉本体の移動側端が垂れ下がり、地面に接触する等の不具合が生じ、扉本体の下部に車輪あるいはキャスターを取り付けることが余儀なくされる。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、上記のような、複数本の吊元側上がりに傾斜した斜架材と吊元側下がりに傾斜した斜架材とが交差し、交差部がピン軸で枢着されたパンタグラフ機構により伸縮する扉本体を形成し、この扉本体の吊元側端を吊元柱等の固定部材に連結する伸縮門扉において、固定部材に対する扉本体の吊元側端の連結手段に工夫を凝らすことにより3mを上回る長尺の扉本体も移動側端の垂れ下がりを防止でき、大きな間口に対応できるハンガータイプの伸縮門扉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、請求項1に記載のように、その発明の内容を理解しやすくするために図1〜図7に付した符号を参照して説明すると、複数本の吊元側上がり(図上において左上がり)に傾斜した斜架材2と吊元側下がり(図上において左下がり)に傾斜した斜架材3とが交差し、交差部がピン軸4で枢着されたパンタグラフ機構5により伸縮する扉本体6を形成し、この扉本体6の吊元側端を吊元柱等の固定部材に連結する伸縮門扉において、吊元側上がりの斜架材2Aの吊元側端は前記固定部材の上側に固定した上側ガイド部材26に対し上部移動ピン24を介して上下摺動自在に連結し、吊元側下がりの斜架材3Aの吊元側端は前記固定部材の下側に固定した下側ガイド部材27に対し下部移動ピン25を介して上下摺動自在に連結しており、前記吊元側上がりの斜架材2Aの吊元側端と、前記吊元側下がりの斜架材3Aの吊元側端との間に配された、吊元側上がりの斜架材2Bの吊元側端と吊元側下がりの斜架材3Bの吊元側端との交差部は、前記固定部材に対し固定ピン軸4Aを介して回動自在に枢支連結しており、上側ガイド部材26は、扉本体6が伸長し上部移動ピン24が上側ガイド部材26を下降するに伴い前記吊元側上がりの斜架材2Aが吊元側に移動するよう傾斜させ、下側ガイド部材27は、扉本体6が伸長し下部移動ピン25が下側ガイド部材27を上昇するに伴い前記吊元側下がりの斜架材3Aが戸当り側に移動するよう傾斜させていることに特徴を有するものである。
【0007】
このような構成の伸縮門扉によれば、扉本体6を伸ばして閉扉するときには、スライド式の吊元側上がり斜架材2Aの上部移動ピン24は上側ガイド部材26の溝内を下降し、スライド式の吊元側下がり斜架材3Aの下部移動ピン25は下側ガイド部材27の溝内を上昇し、これにより吊元側上がりの斜架材2Aと吊元側下がりの斜架材3Aとが固定ピン軸4Aを中心として反時計方向(図上において左回り)に回転して扉本体6の移動端側を持ち上げようとする力が作用し、このため長尺の扉本体6もこれの移動側端が垂れ下がるのを防止でき、大きな間口に対応できる。
【0008】
請求項1記載のヒンジは、請求項2に記載のように、吊元側下がりの斜架材3Aの吊元側端にブラケット28を吊元側に突出するよう固定し、このブラケット28の突出端側に前記下部移動ピン24が、扉本体6を縮めたとき吊元側下がり斜架材3Aの下端部、固定ピン軸4A、および吊元側上がり斜架材2Aの上部移動ピン24を結んだ線Pが前記固定部材の長手方向と平行となるように偏倚させて設けられた構成を採用することができる。この構成によると、下側ガイド部材27を前記固定部材に戸当り側方向へ突出させることのない納まり状態に設けることができるため、扉本体6を縮めた際に下側ガイド部材27と扉本体6の吊元側端との接当干渉問題を回避することができ、扉本体6を吊元側にコンパクトな収縮状態に納めることができる。
【0009】
請求項1又は2記載のヒンジは、請求項3に記載のように、扉本体6の上方部における斜架材2,3同士の交差点同士間の距離を、扉本体6の下方部における交差点同士間の距離よりも小さく設定した構成を採用することができる。この構成によると、扉本体6を伸長して閉扉するとき扉本体6の移動側端が垂れ下がるのを防止でき、請求項1記載の発明の構成により得られる扉本体6の移動側端の垂れ下がり防止作用と相俟って扉本体6の移動側端の垂れ下がり防止効果を更に高めることができ、より大きな間口に対応できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ハンガータイプの伸縮門扉において伸長させた扉本体の移動側端の垂れ下がりを、扉本体の構成部材の強度アップによることなく防止できるので、この種門扉の長尺化を安価に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づき説明する。図1は本発明の一実施例の伸縮門扉の伸長状態を道路側から見た全体の正面図、図2は同伸縮門扉の平面図、図3(a),(b),(c),(d)は図1におけるA部,B部,C部,D部における各断面図、図4は同伸縮門扉を伸長したときの扉本体の吊元側端部の正面図、図5は同伸縮門扉を収縮した状態での扉本体の吊元側端部の正面図、図6は図4における要部拡大断面図、図7は図5における要部拡大断面図、図8は同伸縮門扉の伸長状態を無重力状態で示す全体の正面図、図9は同伸縮門扉を伸長したときの扉本体の吊元側端部を無重力状態で示す正面図である。
【0012】
図1、図2に示すように、本発明に係る伸縮門扉1は、複数本の吊元側上がり(図上において左上がり)に傾斜した斜架材2と吊元側下がり(図上において左下がり)に傾斜した斜架材3とが交差し、交差部がピン軸4で枢着されたパンタグラフ機構5により左右方向に伸縮する扉本体6を形成したものである。
【0013】
扉本体6は、左右に間隔をおいて相対向状に地面8に立設した吊元柱9と戸当り柱10間に配設される。本実施例の伸縮門扉1の全幅は4270mm、たたみ幅は745mmである。
扉本体6の吊元側端には断面溝形の回転柱11が設けられ、この回転柱11は図2のように吊元柱9にヒンジ12を介して水平方向に180°回転自在に取り付けられている。
回転柱11と吊元柱9はヒンジ12の反対側に抜き差し自在に取り付けるロックピン13の差込みによって回動不能とされ、ロックピン13を抜き出すことにより、図2に仮想線Mで示すように縮めた扉本体6を吊元柱9の背面側にヒンジ12を介して180°回転収納できるようにしている。
一方、扉本体6の戸当り側端には移動柱14が設けられ、この移動柱14には錠前15を設け、この錠前15によって移動柱14を戸当り柱10に施錠・解錠可能にしている。移動柱14の前後両側には、扉本体6の伸縮操作用の把手16が設けられている。
【0014】
回転柱11と移動柱14との間には、パンタグラフ機構5が設けられている。図示例のパンタグラフ機構5は、複数本の吊元側上がり(図上において左上がり)に傾斜した斜架材2および吊元側下がり(図上において左下がり)に傾斜した斜架材3と、縦格子7とから構成されている。なお、本実施例においては縦格子7を設けたが、縦格子7を省略した斜架材2,3のみからなる竹矢来状のものであってもよい。
【0015】
吊元側上がりに傾斜した斜架材2と吊元側下がりに傾斜した斜架材3とは、基本的に各交差箇所においてピン軸4で相対回転自在に枢着されている。扉本体6の軽量化、コスト低減の目的で交差箇所におけるピン軸4を省略することがある。本実施例の場合、図1に示すように、吊元側における斜架材2,3同士の交差箇所は全てピン軸4で枢着されているが、吊元側と戸当り側との中間位置から戸当り側にかけて、上から4番目の交差箇所C4ではピン軸4が省略されている。これは、扉本体6の伸長時における移動端側の垂れ下がりを防止するために、扉本体6の吊元側の強度をアップし、戸当り側は軽量化を図るためである。
【0016】
図1において、斜架材2,3同士の交差箇所における上から1番目、3番目、5番目、7番目の各交差箇所C1、C3、C5、C7におけるピン軸4は斜架材3,2から前後方向に突出している。1番目、5番目、7番目の各交差箇所C1、C5、C7におけるピン軸4の前後突出端は、図3(c)に示すように、前後1対の縦格子7の各内側に形成した断面エ形のガイド溝17に摺動自在に嵌合し、扉本体6が伸縮する際にピン軸4が縦格子7のガイド溝17に沿って上下に移動する。具体的には、これらピン軸4の各前後突出端に樹脂製のカラー18が設けられ、このカラー18の中間位置に形成したくびれ部18aに、ガイド溝17内に突設したリップ7aが摺動自在に係合している。なお、図3(c)において、ピン軸4上の斜架材3,2間にはスペーサ30を介在させている。
上から3番目の交差箇所C3における中空状のピン軸4の前後突出端は、図3(a),(b)に示すように、縦格子7内に上下動不能にビス19で止め付けられるため、扉本体6の伸縮動作の際の上下位置に変動はない。図1のように、戸当り側端から二つ目の縦格子7の側部には落とし棒装置20が設けられており、扉本体6の全閉状態において、地面8に穿設した孔21に落とし棒22の下端部が嵌入して、扉本体6の伸縮動作を阻止するようにしている。
【0017】
図4、図6に示すように、吊元側端領域にある吊元側上がりの斜架材2群のうち最上段の斜架材2(以下、スライド式の吊元側上がり斜架材2Aという。)と、同じく吊元側端にある吊元側下がり斜架材3群のうち最下段の斜架材3(以下、スライド式の吊元側下がり斜架材3Aという。)とは、回転柱11に連結されている。スライド式の吊元側上がり斜架材2Aの吊元端には上部移動ピン24を、吊元側下がり斜架材3Aの吊元端には下部移動ピン25をそれぞれ設け、上部移動ピン24はこれの前後両端に設けた転動ローラを回転柱11の内部の上側に設けた断面リップ付き溝形の上側ガイド部材26内の溝に、下部移動ピン25はこれの前後両端に設けた転動ローラを回転柱11の下側に設けた断面リップ付き溝形の下側ガイド部材27内の溝にそれぞれ上下方向に摺動自在に嵌め込んでいる。
【0018】
同じ吊元側端において、スライド式の吊元側上がり斜架材2Aと、スライド式の吊元側下がり斜架材3Aとの間に配された、それらとは別の吊元側上がり斜架材2Bの吊元側端と吊元側下がり斜架材3Bの吊元側端との交差部は、回転柱11に対し固定ピン軸4Aを介して回動自在に枢支連結している。すなわち、その固定ピン軸4Aはこれの前後端を吊元側上がり斜架材2Bの吊元側端と吊元側下がり斜架材3Bの吊元側端との交差部に貫通させて回転柱11の前後側に突出させ、この前後の突出端を回転柱11に対しビス等で止め付けている。
【0019】
一方、スライド式の吊元側上がり斜架材2Aと、スライド式の吊元側下がり斜架材3Aとの間に配され、且つ吊元側上がり斜架材2Bの吊元側端と吊元側下がり斜架材3Bの吊元側端との交差部の下側において、互いに交差する吊元側上がり斜架材2Cの吊元端と吊元側下がり斜架材3Cの吊元端との交差箇所におけるピン軸4は前後方向に突出することなく、回転柱11の内部空間に留まっているだけで、回転柱11に対し連結されていない自由状態にある。
【0020】
図4、図6に示すように、上側ガイド部材26は、扉本体6が伸長し上部移動ピン24が上側ガイド部材26の溝内を下降するに伴いスライド式の吊元側上がりの斜架材2Aが吊元側に移動するよう傾斜させ、下側ガイド部材27は、扉本体6が伸長し下部移動ピン25が下側ガイド部材27の溝内を上昇するに伴いスライド式の吊元側下がりの斜架材3Aが戸当り側に移動するよう傾斜させている。その際、上側ガイド部材26はこれの下端側を吊元側に向けて傾斜させるが、下側ガイド部材27はこれの上端側を戸当り側に向けて傾斜させる。例えば、上側ガイド部材26は、その上端位置に対して下端位置が吊元側に向けて7.5°傾斜させており、下側ガイド部材27は、その下端位置に対して上端位置が戸当り側に向けて7.5°傾斜させている。上下側ガイド部材26,27の長さは、例えば、上側ガイド部材26の長さを137.5mm、下側ガイド部材27の長さを235.0mmとする。これら上下側ガイド部材26,27の長さは、固定ピン軸4から離れる程長くなる。
【0021】
しかるときは、扉本体6の伸長時に、スライド式の吊元側上がり斜架材2Aの上部移動ピン24は上側ガイド部材26の溝内を下降し、スライド式の吊元側下がり斜架材3Aの下部移動ピン25は下側ガイド部材27の溝内を上昇し、これによりスライド式の吊元側上がり斜架材2Aと吊元側下がり斜架材3Aは、固定ピン軸4Aを中心として反時計方向(図上において左回り)に回転する。このスライド式の吊元側上がり斜架材2Aと吊元側下がり斜架材3Aの回転は、扉本体6全体を反時計方向に回転する動きにつながり、扉本体6の移動側端を上昇させようとする力が作用する(図8、図9参照)。
扉本体6の収縮時には、スライド式の吊元側上がり斜架材2Aの上部移動ピン24は上側ガイド部材26の溝内を上昇し、スライド式の吊元側下がり斜架材3Aの下部移動ピン25は下側ガイド部材27の溝内を下降し、吊元側上がりの斜架材2Aと吊元側下がりの斜架材3Aとが、延いては扉本体6全体が固定ピン軸4Aを中心として時計方向に回転して扉本体6が収縮する(図5、図7参照)。
【0022】
図6、図7に示すように、スライド式の吊元側下がり斜架材3Aの下端部にはブラケット28を吊元側に突出するようビス29で固定し、このブラケット28の突出端側に下部移動ピン25を吊元側下がり斜架材3Aの下端部より吊元側に偏倚するよう設け、この下部移動ピン25を下側ガイド部材27に上下方向に摺動自在に嵌合している。下部移動ピン25の偏倚量は、図5、図7のように扉本体6を縮めたとき吊元側下がり斜架材3Aの下端部、吊元側上がり斜架材2Cの吊元端と吊元側下がり斜架材3Cの吊元端との交差箇所におけるピン軸4、吊元側上がりの斜架材2Bの吊元側端と吊元側下がりの斜架材3Bの吊元側端との交差部における固定ピン軸4A、および吊元側上がり斜架材2Aの上部移動ピン24を結んだ線Pが吊元柱9、回転柱11の長手方向と平行となるように設定している。これに対し、仮に、ブラケット28を介さずに直に吊元側下がり斜架材3Aの下端に下部移動ピン25を上記線P上に位置するように設けたのでは、下側ガイド部材27の上端側を回転柱11から戸当り側方向へ突出させる必要があり、これでは扉本体6を縮めた際に下側ガイド部材27の上端と吊元側端の縦格子7が干渉(当接)する不具合が生じる。その点、上記のように、吊元側下がり斜架材3Aの下端部にブラケット28を固定し、このブラケット28の突出端側に下部移動ピン25を偏倚させて設ける構成を採用すると、下側ガイド部材27は回転柱11の外部に突出させることなく該回転柱11内に完全に納まる状態に設けることができる。したがって、後述するように、扉本体6を縮めた際に下側ガイド部材27と吊元側端の縦格子7との接当干渉問題を回避することができ、扉本体6を吊元側にコンパクトな収縮状態に納めることができる。
【0023】
扉本体6を構成する斜架材2,3、縦格子7はアルミニウム製の型材によって形成される。このような扉本体6の斜架材2,3は、吊元側では強度を高め、戸当り側では軽量となるように工夫を施している。具体的には、図1のように、吊元側端領域(イ)にあるスライド式の吊元側上がり斜架材2Aとスライド式の吊元側下がり斜架材3Aとは、図3(b),(d)に示すように二つの斜架材を平行に配備してある。さらに斜架材2A,3Aの中には補強用の鉄心23(図3(b),(d)参照)が内蔵されて強度アップを図っている。吊元側端領域(イ)にある斜架材2B,2C,3B,3C、および吊元側端寄り中間領域(ロ)にある4本の斜架材2D,3Dにも、それぞれ鉄心23が内蔵されている。しかし、図1のように、戸当り側端領域寄り中間領域(ハ)にある7本の斜架材2E,3Eと、戸当り側端領域(ニ)にある6本の斜架材2F,3Fには、鉄心が内蔵されていない。さらに、各斜架材2,3は断面長方形管(図3(a)〜(d)参照)からなり、図1のように、スライド式の吊元側上がり斜架材2A、スライド式の吊元側下がり斜架材3A、吊元側端寄り中間領域(ロ)にある斜架材2D,3D、戸当り側端領域寄り中間領域(ハ)にある斜架材2E,3Eのそれぞれの肉厚は長辺が1.5mm、短辺が2.0mmとしている。一方、戸当り側端領域(ニ)にある斜架材2F,3Fの肉厚は、長辺、短辺共に、1.0mmとしている。
【0024】
斜架材2,3同士の各交差箇所間の距離は、具体的には、例えば、図4に示すように、上方から168.5mm(1番目の交差箇所と2番目の交差箇所間の距離d1)、169.0mm(2番目の交差箇所と3番目の交差箇所間の距離d2)、169.5mm(3番目の交差箇所と4番目の交差箇所間の距離d3)、170.0mm(4番目の交差箇所と5番目の交差箇所間の距離d4)、170.5mm(5番目の交差箇所と6番目の交差箇所間の距離d5)、171.0mm(6番目の交差箇所と7番目の交差箇所間の距離d6)としている。このように上部側の交差箇所間の距離を、下部側の交差箇所間の距離よりも小さくすることによって、無重力状態での扉本体6、あるいは扉本体6を地面上に寝かせた状態(扉本体6を水平状態に置き扉本体6に縦方向の荷重を与えない状態)で伸長させると、扉本体6は逆扇状に伸長する(図8、図9参照)。
【0025】
次に、上記構成の伸縮門扉1の開閉動作について説明する。先ず扉本体6を図5、図7の開扉状態から伸長させて図4、図6のように閉扉する場合には、扉本体6の移動柱14の把手16を持って戸当り柱10側へ引いて行く。すると、スライド式の吊元側上がり斜架材2Aの上部移動ピン24は上側ガイド部材26の溝内を下降し、スライド式の吊元側下がり斜架材3Aの下部移動ピン25は下側ガイド部材27の溝内を上昇し、これよりスライド式の吊元側上がり斜架材2Aと吊元側下がり斜架材3Aは、固定ピン軸4Aを中心として反時計方向(図上において左回り)に回転する動きが加わる。そして、スライド式の吊元側上がり斜架材2Aと吊元側下がり斜架材3Aの回転は、扉本体6全体を反時計方向に回転する動きにつながり、図8、図9のように扉本体6の移動側端を上昇させようとする力が作用し、扉本体6は逆扇状に伸長する(図8、図9参照)。しかしながら、扉本体6の重力、斜架材2,3におけるピン軸挿通孔とピン軸4とのクリアランス、斜架材2,3の撓み等により、扉本体6の移動側端に垂れが発生する。この扉本体6の垂れによる下降量と、スライド式の吊元側上がり斜架材2Aと吊元側下がり斜架材3Aが扉本体6の移動側端を上昇させようとする作用による扉本体6の逆扇状の変形による上昇量とが相殺されて、扉本体6は略水平に移動し、扉本体6の移動側端の垂れによる不具合を解消することができる。
【0026】
また、扉本体6の上部側における斜架材2,3同士の交差点同士間の距離を、扉本体6の下部側における交差点同士間の距離よりも小さく設定して、扉本体6を伸ばして閉扉するとき扉本体6の移動側端が垂れ下がるのを防止できるものとしておくと、上記扉本体6の移動側端の垂れ下がり防止作用と相俟って扉本体6の移動側端の垂れ下がり防止効果を更に高めることができ、より大きな間口に対応できる。
なお、図1のように扉本体6を全閉した後は、扉本体6の移動柱14に設けた錠前15によって移動柱14を戸当り柱10に施錠する。
【0027】
つぎに、扉本体6を図1、図2の全閉状態から収縮して開く場合は、扉本体6の移動柱14の把手16を持って吊元柱9側へ引いて行く。すると、図5、図7に示すように、スライド式の吊元側上がり斜架材2Aの上部移動ピン24は上側ガイド部材26の溝内を上昇し、スライド式の吊元側下がり斜架材3Aの下部移動ピン25は下側ガイド部材27の溝内を下降し、吊元側上がりの斜架材2Aと吊元側下がりの斜架材3Aとが固定ピン軸4Aを中心として時計方向に回転してパンタグラフ機構5が収縮し、縦格子7,7同士の間隔が一様に狭まって行くので、吊元側に扉本体6を収縮状態に納めることができる。
また、このとき、下側ガイド部材27は回転柱11内に納まり状態に設けられているので、扉本体6を収縮した際に下側ガイド部材27と吊元側端の縦格子7とが接当干渉するのを回避することができ、扉本体6を吊元側にコンパクトな縮め状態に納めることができる。なお、扉本体6を収縮させて閉じた後は、吊元柱9と回転柱11間に取り付けたロックピン13を抜き出すことにより、図2に仮想線Mで示すように収縮した扉本体6を吊元柱9の背面側にヒンジ12を介して180°回転させて収納する。
【0028】
上記実施例では、吊元側端にある斜架材2A,2B,3A,3Bを回転柱11に上記のように連結するが、これに代えて、回転柱11を省略し、吊元柱9の上側に上側ガイド部材26を、吊元柱9の下側に下側ガイド部材27をそれぞれ固定し、吊元上がりの斜架材2Aの吊元側端を上側ガイド部材26に対し上部移動ピン24を介して上下摺動自在に連結し、吊元側下がりの斜架材3Aの吊元側端を下側ガイド部材27に対し下部移動ピン25を介して上下摺動自在に連結することもできる。この場合、吊元側上がりの斜架材2Bの吊元側端と吊元側下がりの斜架材3Bの吊元側端との交差部は、吊元柱9に対し固定ピン軸4Aを介して回動自在に枢支連結する。
【0029】
また、上記実施例では、吊元側上がり斜架材2Cの吊元端と吊元側下がり斜架材3Cの吊元端との交差箇所におけるピン軸4は回転柱11に対し連結していないが、スライド式の吊元側下がり斜架材3Aの吊元側端の下側ガイド部材27と同様な、図外のガイド部材を設けて、扉本体6の伸長時に、固定ピン軸4Aを中心に斜架材3Cの吊元側端が反時計方向に回転するように、そのガイド部材を傾斜させてもよい。
【0030】
さらに、上記実施例では扉本体6がパンタグラフ機構5を一列のみに備え、これに応じて固定ピン軸4Aは一つだけ設けるが、上下二列にパンタグラフ機構を配備するものであってもよく、この場合固定ピン軸4Aは上下二つ設けることになる。つまり、固定ピン軸4Aの個数はパンタグラフ機構5の数に応じて変化する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施例の伸縮門扉の伸長状態を道路側から見た全体の正面図である。
【図2】同伸縮門扉の平面図である。
【図3】(a),(b),(c),(d)は図1におけるA部,B部,C部,D部における各断面図である。
【図4】同伸縮門扉を伸長したときの扉本体の吊元側端部の正面図である。
【図5】同伸縮門扉を収縮した状態での扉本体の吊元側端部の正面図である。
【図6】図4における要部拡大断面図である。
【図7】図5における要部拡大断面図である。
【図8】同伸縮門扉の伸長状態を無重力状態で示す全体の正面図である。
【図9】同伸縮門扉を伸長したときの扉本体の吊元側端部を無重力状態で示す正面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 伸縮門扉
2,2A,2B 吊元側上がり(左上がり)斜架材
3,3A,3B 吊元側下がり(左下がり)斜架材
4 ピン軸
4A 固定ピン軸
5 パンタグラフ機構
6 扉本体
9 吊元柱
11 回転柱
24 上部移動ピン
25 下部移動ピン
26 上側ガイド部材
27 下側ガイド部材
28 ブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の吊元側上がりに傾斜した斜架材と吊元側下がりに傾斜した斜架材とが交差し、交差部がピン軸で枢着されたパンタグラフ機構により伸縮する扉本体を形成し、この扉本体の吊元側端を吊元柱等の固定部材に連結する伸縮門扉において、
前記吊元側上がりの斜架材の吊元側端は前記固定部材の上側に固定した上側ガイド部材に対し上部移動ピンを介して上下摺動自在に連結し、前記吊元側下がりの斜架材の吊元側端は前記固定部材の下側に固定した下側ガイド部材に対し下部移動ピンを介して上下摺動自在に連結しており、
前記上側ガイド部材に対し吊元側端を上下摺動自在に連結した前記斜架材の吊元側端と、前記下側ガイド部材に対し吊元側端を上下摺動自在に連結した前記斜架材の吊元側端との間に配された、吊元側上がりの斜架材の吊元側端と吊元側下がりの斜架材の吊元側端との交差部は、前記固定部材に対し固定ピン軸を介して回動自在に枢支連結しており、
前記上側ガイド部材は、前記扉本体が伸長し前記上部移動ピンが前記上側ガイド部材を下降するに伴い前記吊元側上がりの斜架材が吊元側に移動するよう傾斜させ、前記下側ガイド部材は、前記扉本体が伸長し前記下部移動ピンが前記下側ガイド部材を上昇するに伴い前記吊元側下がりの斜架材が戸当り側に移動するよう傾斜させていることを特徴とする、伸縮門扉。
【請求項2】
前記吊元側下がりの斜架材の吊元側端にブラケットを吊元側に突出するよう固定し、このブラケットの突出端側に前記下部移動ピンが、前記扉本体を縮めたとき前記吊元側下がり斜架材の下端部、前記固定ピン軸、および前記吊元側上がり斜架材の上部移動ピンを結んだ線が前記固定部材の長手方向と平行となるように偏倚させて設けられている、請求項1記載の伸縮門扉。
【請求項3】
扉本体の上部側における斜架材同士の交差点同士間の距離を、扉本体の下部側における交差点同士間の距離よりも小さく設定している、請求項1又は2記載の伸縮門扉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−138401(P2009−138401A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−315359(P2007−315359)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(000180302)四国化成工業株式会社 (167)
【出願人】(000230928)シコク景材株式会社 (18)
【Fターム(参考)】