説明

伸長された電気光学デバイス

第1の端部及び反対側にある第2の端部を有する電気光学デバイスであって、電気光学活性部と、第1の端部及び反対側にある第2の端部を有する第1の電極と、第1の端部及び反対側にある第2の端部を有する第2の電極と、前記電気光学活性部の所定領域の光学状態を、当該電気光学デバイス内の前記所定領域の位置が制御可能であるように制御する制御手段とを有し、前記電気光学活性部は、前記第1の電極と前記第2の電極との間に少なくとも部分的に位置付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、他の寸法よりも相当に大きい一の寸法を有する電気光学デバイスに関する。具体的には、本発明は、他の寸法よりも相当に大きい長さを有しており、この長さに沿ってアドレス可能な伸長された電気光学デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
この例は、ファイバー又はフィラメント、特に、1又はそれ以上のインジケータ表示を組み込まれた繊維又は布地への包含に適したものである。
【0003】
他の例は、複数の別々の光から成るホースを有する所謂ロープライト(ropelight)である。これは、制御下でアドレス可能であって、インジケータ表示として又は装飾照明として用いられうる。
【0004】
色変化を生じさせる能力を有する電気光学物質から形成される様々な種類のファイバー又はフィラメントが知られる。例えば、電界発光物質又はポリLED物質などの電気光学活性物質からファイバー又はフィラメントを形成することが知られる。また、伸長された電気光学デバイスを形成する電気光学物質として液晶、電気泳動粒子浮遊物又はエレクトロクローム物質を使用することも可能である。
【0005】
一般に、この種の全ての既知のファイバー又はフィラメントは、同じ基本構造を有しており、
1.ファイバー又はフィラメントの軸方向に、又は、ファイバー若しくはフィラメントの中心に向かって、一様に通された導電コア又は電極と、
2.コア電極を覆う電気光学層と、
3.透明な導電外部電極と、
を有する。
【0006】
コア電極と外部電極との間に電圧差を印加することによって、電界が電気光学層に発生する。発生した電界は、ファイバー又はフィラメントの全長に亘って一様であり、電気光学層の光学状態に変化をもたらす。光学状態の変化は、電気光学層を形成する物質と、電極の両端に印加された電界とに依存する。
【0007】
更に、別々の電球又はLEDから成る様々な種類のロープライトが知られる。通常、ロープライトは、ホースの長さに沿って通された2つの電極線を有しており、それらの2つの電極線の間の電位差によって供給される複数の別々の光源を有する。更に、ロープライトの光の発現は一定であり、あるいは、ホースの全長に亘って周期的に少なくとも繰り返される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、デバイスの光学活性部の長さ及び位置がデバイスの一部を形成する第1の電極又は第2の電極のいずれか一方に沿って位相遅延を生ずることによって制御可能な電気光学デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様に従って、第1の端部及び反対側にある第2の端部を有する電気光学デバイスであって:
電気光学活性部;
第1の端部及び反対側にある第2の端部を有する第1の電極;
第1の端部及び反対側にある第2の端部を有する第2の電極;及び
前記電気光学活性部の所定領域の光学状態を、当該電気光学デバイス内の前記所定領域の位置が制御可能であるように制御する制御手段;
を有し、
前記電気光学活性部は、前記第1の電極と前記第2の電極との間に少なくとも部分的に位置付けられる、電気光学デバイスが提供される。
【0010】
望ましくは、前記所定領域の長さは、また、制御可能である。
【0011】
本発明によって、前記所定領域の位置若しくは長さのいずれか一方、又は位置及び長さの両方が制御されうるように、当該電気光学デバイスの所定領域の光学状態を制御することが可能である。
【0012】
これは、電極の全長に亘って一様に電気光学活性層の光学状態しか変更することができない既知の変色電気光学デバイスとは極めて異なる点である。実際には、このことは、既知の変色電気光学デバイスの光学状態が当該デバイスの全長に沿って同じであることを意味する。
【0013】
言い換えると、既知の変色ファイバーでは、電気光学活性部が、それを上回るとオン状態となり、反対に下回るとオフ状態となるところの閾値電圧を有する物質から形成される場合に、ファイバー全体は、発光しないオフ状態又は、発光するオン状態のいずれか一方の状態にある。
【0014】
本発明により、伸長された電気光学デバイスの可変部分及び可変長がオン状態にあって、いつでも発光しているように、電気光学デバイスの長さに沿って電気光学活性部の光学状態を変更することが可能である。
【0015】
当該デバイスの光学状態は、当該デバイスが内部光を放射し、あるいは、外部光源からの光を反射又は吸収することができる状態にある。使用に際して、前記所定領域の光学状態は、当該デバイスの他の部分が発光しない場合に前記所定領域が発光することができる状態にある。
【0016】
電気光学デバイスの所定領域は、当該デバイスの一部であっても良く、あるいは当該デバイスの全体であっても良い。
【0017】
本発明は、特に、インジケータとしての、又は、衣類に組み込まれたインジケータとしての、又は、装飾照明としての使用に適する。
【0018】
有利に、電気光学デバイスは軸を有する。当該デバイスの第1の端部で、第1の電極及び第2の電極は、夫々、その軸に実質的に直交する第1の面にあり、当該デバイスの第2の端部で、第1の電極及び第2の電極は、夫々、前記第1の面から離れたところに位置し、軸に実質的に直交する第2の面にある。
【0019】
有利に、前記制御手段は、前記電気光学活性部の両端に交流電圧を印加するための電圧手段を有する。
【0020】
電気光学活性物質又は素子の光学状態は、その物質又は素子の両端に印加された電界を変化させることによって変更されても良い。望ましくは、その物質又は素子は閾値電圧を有する。閾値電圧を下回る電界がその物質又は素子へ印加される場合には、その物質又は素子はオフ状態のままであり、発光しない。閾値レベルを上回る電界がその物質又は素子へ印加される場合には、その物質又は素子は、光を放射するオン状態に切り替わる。
【0021】
本発明により、電気光学活性層を形成する物質又は素子の閾値電圧は、当該デバイスの長さに沿った1つ又は複数の所定領域に勝る。
【0022】
所定領域の長さは、電気光学活性部の両端に印加された交流電圧の振幅を変化させることによって変更されても良い。振幅の間の差を大きくすることによって、前記所定領域の長さは増大しうる。逆もまた同様である。
【0023】
望ましくは、前記電圧手段は、前記第1の電極の第1の端部へ第1の交流電圧を印加する第1の電圧源と、前記第2の電極の第1の端部へ第2の交流電圧を印加する第2の電圧源とを有する。
【0024】
望ましくは、前記第1の電極は、前記第1の電極の第1の端部から第2の端部へ実質的に一定の位相で前記第1の電圧を伝送するよう構成され、前記第2の電極は、位相遅延を伴って、前記第2の電極の第1の端部から第2の端部へ前記第2の電圧を伝送するよう構成される。
【0025】
有利に、前記制御手段は、第3の電極と、前記第2の電極に組み込まれた複数の誘導素子と、前記第2の電極と前記第3の電極との間に位置付けられた複数の容量素子とを更に有する。
【0026】
前記第1の交流電圧は、前記第1の電極の第1の端部へ前記第1の電圧源によって印加されうる。この第1の電極は、その電圧が当該電気光学デバイスの長さに亘って実質的に一様であるように構成される。
【0027】
前記第2の交流電圧は、前記第2の電極の第1の端部へ印加されうる。前記第2の電極は、その電圧が位相遅延を伴ってその第1の端部からその第2の端部へ伝送されるように構成される。
【0028】
前記位相遅延は、前記第2の電極の長さに沿って前記第1の端部から増大し、前記第2の電極の中間では一半周期に等しく、前記第2の電極の第2の端部では一全周期に等しい。
【0029】
当該デバイスの電気光学活性部に現れる電圧は、任意の位置及び所定の時点で、前記第1の電極と前記第2の電極との間の電圧差に等しい。従って、この電圧差は、前記第1の電極と前記第2の電極との間の差を表す。
【0030】
本発明の第1の実施例で、前記第1及び第2の電圧の位相は、夫々の電極の第1の端部で等しくなるよう選択される。本実施例で、前記第1及び第2の電圧の振幅は、また、等しくなるよう選択される。これは、夫々の電極の第1の端部で、当該デバイスの電気光学活性部に現れる電圧が実質的に零となりうることを意味する。言い換えると、前記第1の電圧と前記第2の電圧との間には相殺的干渉が存在する。
【0031】
当該デバイスの長さの中間で、前記第2の電極における位相は、前記第2の電極の第1の端部での位相に比べて(従って、前記第1の電極での位相に比べても)半周期だけ遅れるよう設定される。これは、前記第1の電圧と前記第2の電圧との間の差が最大となることを意味する。言い換えると、この点で、前記第1及び第2の電圧は建設的に干渉する。
【0032】
当該デバイスの第2の端部で、前記第2の電圧の位相は、正確に一周期だけ前記第1の電圧の位相より遅れる。これは、当該デバイスの第2の端部で、前記第1の電圧と前記第2の電圧との間の位相差が先と同じく零となり、従って、電圧差も零となることを意味する。当該デバイスの電気光学活性部の両端に印加される電圧がその部分を形成する電気光学活性物質の閾値電圧を超えるところの当該デバイスの領域において、光が放射されうる。
【0033】
望ましくは、前記制御手段は、前記第2の電極の第1の端部における前記第2の電圧の位相に対して、前記第1の電極の第1の端部における前記第1の電圧の位相を制御可能に変化させる。
【0034】
これにより、結果として、電圧が閾値レベルを上回るところの電気光学活性部の領域が、前記第1及び第2の電極の夫々の第1の端部で前記第1及び第2の電圧の位相の差に依存して、当該デバイスの長さに沿って所定距離だけシフトされる。例えば、半周期の位相差が選択されるならば、電気光学活性部における最大電圧差は、当該デバイスの第1及び第2の両端部で生じ、当該デバイスの中間では、電圧差は零となりうる。
【0035】
有利に、前記制御手段は、前記第2の電圧に対して前記第1の電圧の振幅を制御可能に変化させるよう構成される。
【0036】
都合の良いことには、前記制御手段は、前記第2の電圧に対して前記第1の電圧の周波数を制御可能に変化させるよう構成される。
【0037】
有利に、前記電気光学活性部は電気光学活性物質を有し、当該電気光学デバイスはファイバー又はフィラメントを有する。
【0038】
望ましくは、前記ファイバー又はフィラメントは実質的に円筒形である。
【0039】
望ましくは、前記電気光学活性部は電界発光物質を有する。しかし、他の種類の電気光学活性物質が用いられても良い。
【0040】
望ましくは、前記第2の電極は、複数のコイルを有する巻きコイルの形をした伸長導体を有する。
【0041】
有利に、当該電気光学デバイスは、前記伸長導体から成る隣接するコイルの間に形成された絶縁被覆を更に有する。これは、隣接するコイルが互いに短絡することを防ぐ。
【0042】
都合の良いことには、前記絶縁被覆は、電気光学活性層によって放射される光が前記ファイバーを通って伝送されることを可能にするよう透明である。
【0043】
望ましくは、前記第3の電極は、当該デバイスの外部表面の近くに置かれる。前記第3の電極は、前記第2の電極に容量的に結合された外部導電被覆を有する。前記外部導電被覆は、触れても安全な接地層として機能するよう接地されうる。
【0044】
有利に、前記第2の電極の前記巻きコイルは、前記第3の電極への明確な容量性接続を確立するために、絶縁外部被覆を有する。なお、「明確な(well−defined)」とは、容量性接続が再現可能であって、第2の電極と第3の電極との間に確実な分離が存在することを意味する。更に、第3の電極への望ましくない抵抗接続の機会は最小限とされる。
【0045】
望ましくは、前記外部導電被覆は、電気光学活性層から放射される光が前記ファイバーを介して伝送されることを可能にするよう透明である。
【0046】
代替的に、前記電気光学活性部は複数の発光ダイオード(LED)を有し、当該電気光学デバイスはロープライトを有する。LEDは、発光のためのそれらの閾値電圧のために、本発明による使用に特に適する。
【0047】
本発明の第2の態様に従って、電気光学活性物質を有する電気光学デバイスの製造方法であって:
(a)第1の伸長導電部材の周囲に電気光学活性物質の層を置くステップ;
(b)前記層を固まらせるステップ;
(c)前記固化された電気光学活性物質の周りに第2の伸長導電部材を巻き付けるステップ;
(d)前記第2の導電部材から成る隣接するコイルの間に絶縁物質を置くステップ;及び
(e)当該伸長された電気光学デバイスの周りに導電被覆を置くステップ;
を有する製造方法が提供される。
【0048】
本発明の第2の態様の更なる有利な特徴は、請求項20で述べられる。
【0049】
本発明の第3の態様に従って、第1の端部及び第2の端部を各々有する第1の電極並びに第2の電極と、該第1の電極と該第2の電極との間に少なくとも部分的に位置付けられた電気光学活性部とを有する電気光学デバイスの駆動方法であって:
第1の電圧を前記第1の電極の第1の端部へ、且つ第2の電圧を前記第2の電極の第1の端部へ印加することによって前記電気光学活性部の両端に交流電圧差を印加するステップ;及び
位相遅延を前記第2の電極に導入して、前記電気光学活性部の両端の前記交流電圧差の振幅を制御するステップ;
を有する駆動方法が提供される。
【0050】
本発明の第3の態様の更なる好ましく且つ有利な特徴は、請求項22〜24で述べられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
以下、本発明について、一例として添付の図面を参照して更に説明する。
【0052】
図1a及び1bを参照すると、従来の変色ファイバーが、全体として参照番号2によって示される。既知の変色ファイバーは、一般的に、内部のコア電極と、透明な被覆の形をした外部電極とを有する。外部電極と内部電極との間には電気光学活性物質がある。図1aで、電気光学活性物質はオフ状態にあり、一方、図1bでは、電気光学活性物質は発光するオン状態にある。従来の変色ファイバーでは、ファイバー全体をオン状態又はオフ状態にすることしかできない。言い換えると、ファイバー全体が発光又は非発光となることしかできない。
【0053】
ここで図2aから2fを参照すると、ファイバーの形をした本発明に従う電気光学デバイスが、全体として参照番号4によって示される。本発明に従って、以下で更に詳細に説明されるように、デバイス4の所定領域の光学状態を、所定領域6が制御されうるように、変更することが可能である。
【0054】
図2aで、デバイス全体はオフ状態にあり、従って、光は放射されない。
【0055】
図2bから2fの夫々において、デバイス4は所定領域6を有しており、領域6の光学状態は、その領域が発光し、一方、デバイス4の他の領域が発光しないという状態にある。図2bから2fから明らかなように、所定領域6の長さ及び位置は、本発明により制御可能である。
【実施例1】
【0056】
図3を参照すると、本発明に従うファイバー4が更に詳細に示される。ファイバー4は、内部導電コアの形をした第1の電極8を有する。電極8は、例えば銅などの、低抵抗のコア導線を有する。
【0057】
デバイス4は、電気光学活性層10の外部表面に沿って巻き付けられたコイル状の伸長部材の形をした第2の電極12を更に有する。第2の電極12は、隣接するコイル14の間に空間が存在するように巻き付けられている。この空間を介して、電気光学活性層10から放射される光はデバイスから漏れ出すことができる。
【0058】
絶縁物質16が隣接するコイル14の間に置かれる。絶縁被覆は、更に、第2の電極12を覆うように置かれる。
【0059】
デバイス4は、例えばITOから形成された透明な導電被覆18の形をした第3の電極を更に有する。透明な導電被覆18は、デバイスの周りに置かれる。透明な導電被覆18は、接地層として機能し、触れても安全である。同時に、この層は、第2の電極12へ容量的に結合されている。
【0060】
デバイス4は、第1の電極8の上に電気光学活性層10を置くことによって形成される。層10が固化されている場合に、第2の電極12は、層10の外部表面の周りに巻き付けられる。絶縁層16は、その場合に、隣接するコイル14の間及び周りに置かれる。最後に、被覆18はデバイス4の周りに置かれる。
【0061】
本発明の一実施例で、第2の電極12は、電極の外部表面に絶縁層を予め有する。これは、伸長部材が電気光学活性層10の周りに巻き付けられているならば、更なる絶縁物質が伸長部材の上に置かれる必要がないことを意味する。この結果、より正確に決定された絶縁体厚さを得られる。また、これは、第2の電極12と透明被覆18との間に生ずる短絡の可能性を減らす。
【0062】
第1の電圧は第1の電極8へ印加され、第2の電圧は第2の電極12へ印加される。第2の電極12は、ファイバーの長さに沿って巻き付けられ、第3の電極18へ容量的に結合されたコイルを有するので、位相差が、第2の電極12の長さに沿って電圧に導入される。しかし、第1の電極8は、ファイバーの長さに沿って実質的に一定電圧を有する電気信号を有する。
【0063】
ファイバーの長さに沿ったある位置で、ある時点に、第1の電極8と第2の電極12との間には約180度(半周期)の位相差が存在する。これらの位置で、電気光学活性層10に現れる電圧は最大であり、電気光学活性層10の光学活性の閾値を超えるよう配置される。
【0064】
第2の電極12と第3の電極18との間の自己インダクタンスL及び容量結合Cは、注意深く調整される。更に、第2の電極12は、一端で、注意深くその固有インピーダンスで接地へ終端される。第2の電極12に沿って位相遅延を生ずるために必要な条件は、特に図8を参照して、以下で更に詳細に説明される。
【0065】
ここで、図4を参照すると、図3で表されたファイバー4を表す電気回路が示される。回路は、3つの電位ライン、即ち、接地ライン20と、コイルライン22と、コア又は均一相ライン24とを有する。ライン20、22、24の水平長さは、デバイス4の長さに対応する。
【0066】
コイル線22は、本実施例において図3で表されたようにコイルの形をした第2の電極12を表す。コア又は均一相ライン24は、第1の電極8を表す。接地ライン20は、第3の電極18を表す。第2の電極12は、複数のセグメントを有しており、セグメント毎の複数の自己誘導素子Lcoilと、同じくセグメント毎の抵抗素子Rcoilと、接地ラインに対する容量結合Ccoatingとを有すると考えられても良い。セグメント概念は、ファイバーが数学的にモデル化されることを可能にするために用いられる。ファイバーは、必ずしもセグメントから物理的に形成されない。
【0067】
図3で示されるようにデバイス4の左側の端部によって表される第1の端部で、(コイルライン22を表す)第2の電極12は、角周波数ωを有する信号発生器Vcoilにより(接地ライン20を表す)第3の電極18へ接続されている。誘導素子と容量素子との間の相互作用の結果として、信号における漸進的な位相遅延は、モデルの隣接するセグメントの間で、
【数1】

に等しいコイルラインの長さに沿って大きくなりうる。
【0068】
図3の右側に示されたデバイスの第2の端部で、(コイルライン22を表す)第2の電極12は、抵抗
【数2】

により(接地ライン20を表す)第3の電極18へ接続されている。
【0069】
この整合抵抗の機能は、後方反射信号を防ぐために、第2の電極12上の入来信号を吸収することである。更に、コイル抵抗Rcoilは、第2の電極12の長さ上で信号の振幅を等しく保つために、コイルのインダクタンスインピーダンスωLcoilよりも低くなるよう選択されるべきである。
【0070】
コイルライン22及び均一相ライン24によって夫々表される第2の電極12と第1の電極8との間には、電気光学活性層10が置かれる。電気光学活性層10は、第2の電極12のモデル化されたセグメント毎に抵抗Roptic及び静電容量Copticを有する。
【0071】
ファイバー4の左端で、(コアライン24を表す)第1の電極8は、同じくωの角周波数を有する第2の信号発生器Vcoreにより(接地ライン20を表す)第3の電極18へ接続されている。図4に示される回路において零で表される第1の電極に沿った低抵抗のために、第1の電極8に沿った位相遅延は存在しない。
【0072】
これは、電界が、同じくωの周波数により、電気光学活性層10の上で発生しうることを意味する。しかし、電界の振幅は、第1の電極8と第2の電極12との間の位相差に依存しうる。最大振幅は、180度の位相差を有する位置で生じ、一方、最小振幅は、0度の位相差で生ずる。
【0073】
第2の電極12での電圧の位相はデバイス4に沿って変化するので、電気光学活性層10の両端に印加される電界の振幅は、同じくデバイスの長さに沿って変化する。これは、位相可変領域が、電界、及び実効電力が電気光学活性層10の光学活性閾値を超えるところで作られることを意味する。デバイスに沿った他の領域は、また、電界が電気光学活性層10の光学活性閾値を超えないために光学活性が認知され得ないところで作られる。
【0074】
有利に、第3の電極に対する容量結合(Ccoating)は、そのインピーダンスが、位相遅延を決定するために電気光学活性層10の等価インピーダンスに比べて小さいことを確実にするほど十分に大きい。
【0075】
ここで、図5を参照すると、本発明の実施例に従う伸長電気光学デバイスに関して、デバイスの位置による発光電力の変化がグラフとして示される。
【0076】
図5に表された結果は、約10cmの長さを有する100個のセグメントによりモデル化されたデバイスに基づく。用いられたデバイスの全長は10メートルであった。デバイスの半径rfiber(コア+電気光学層)は5mmであった。第2の電極12は、0.8mmの半径rwireと、13.8ミクロンの外部絶縁被覆rcoatingとを有する細い銅線を有していた。この細い銅線は、メートルファイバー長(N/I)毎に307巻で巻き付けられた。
【0077】
モデルセグメント毎の電気光学活性層10の抵抗は、Roptic=100kΩである。
【0078】
モデルセグメント毎の電気光学活性層10の容量は、Coptic=100pFである。
【0079】
このようなファイバーで、ファイバーの夫々のセグメントは、モデルセグメント毎に以下のパラメータ:
・コイルの自己インダクタンス:
【数3】

・コイルの抵抗:
【数4】

・第3の電極に対する静電容量:
【数5】

・単一終端抵抗:
【数6】

を有する。
【0080】
この値は、毎秒6.28×10ラジアンの、第1の電極8及び第2の電極12の夫々へ印加される電圧の選択された角周波数ωに当てはまる。ファイバーの全長に亘る全体の位相差は、
【数7】

に等しい。
【0081】
これは、全体の位相差が、電極へ印加された電圧の周波数の一周期(360度)に等しいことを意味する。
【0082】
夫々のセグメントの電気光学電力は、図5に示される。
【0083】
明らかなように、第1の電極8、及び第2の電極12の左側端部での正弦波電圧の振幅は、本実施例では、いずれも115ボルトに等しくなるよう選択される。
【0084】
ライン26によって表されるように、第1の電極8及び第2の電極12の電圧源の間の位相差が零である場合に、デバイスの中間で、発光電力は最大であり、ライン28によって表される0.2ワットの閾値電力を上回る。従って、2つの電圧源の間の位相差が零である場合には、ファイバーの中間地点が発光する。これは、その地点が、ファイバーの電力が閾値28を上回る位置に当たるためである。
【0085】
発光部は、2つの電圧源の間の位相差を適切に調整することによって、デバイスの長さに沿った如何なる所望の位置へも移動可能である。ライン30は、(第2の電極12の左端での)Vcoilと(第1の電極8に沿った全地点での)Vcoreとの間の位相差が−0.3である場合の発光電力分布を表し、一方、ライン32は、電圧源の間の位相差が0.1である場合のファイバーに沿った発光電力の変化を表す。明らかなように、発光電力が閾値28を上回るところのファイバーの領域の位置は、位相差の変化とともに変化する。
【0086】
ここで、図6を参照すると、ファイバー4に沿った発光電力の変化は、示されるように図5を参照して先に説明されたのと同じパラメータを有する。しかし、図6に示される実施例では、第1の電極8及び第2の電極12の電圧の振幅は、それらが互いに等しくないが、図5を参照して先に説明された電圧の合計と同じ合計を有するように選択される。言い換えると、本実施例で、第1の電極8及び第2の電極12へ印加される電圧の和は230ボルトである。
【0087】
閾値28を超えることができるほどの電力を有し、従って発光するデバイスの所定部分の長さが、第1の電極8及び第2の電極12へ印加された電圧の間の差に依存してどれ程に変化しうるかは明らかである。図6を参照して示される例では、第1の電極8及び第2の電極12へ印加された電圧がいずれも115ボルトに等しくなる場合に、この長さは最短となる。これはライン34によって表される。ライン36は、第1の電極8へ印加された電圧が173ボルトであって、第2の電極12へ印加された電圧が58ボルトである場合に、この領域の長さがどれ程増大するのかを示す。長さは、第1の電極へ印加された電圧が196ボルトであって、第2の電極12へ印加された電圧が35ボルトである場合に、ライン38によって示されるように更に増大する。最終的に、本実施例では、所定領域は、第1の電極8へ印加された電圧が207ボルトであって、第2の電極12へ印加された電圧が23ボルトである場合に、ライン40によって示されるように最長の長さを有する。
【0088】
他の実施例で、駆動信号Vcoil及びVcoreは、装飾照明用途で関心を持たれることがある特別な効果を発生させるよう制御可能である。
【0089】
例えば、第1の電極8及び第2の電極12の周波数が互いに僅かに異なった周波数を有するよう選択される場合に、発光部分は、ファイバーに沿って徐々に移動(平行移動)することができる。これは、例えば、第1の電極と第2の電極との間に存在する毎秒1ラジアンの放射周波数の差に関して、発光部分が6.3秒でファイバーの全長に亘って移動することができることを意味する。
【0090】
更に、第1の電極及び第2の電極へ印加される信号の周波数の大きさは、図8を参照して以下で更に詳細に説明されるように、第2の電極12に沿った位相シフト全体に比例する。これは、第1及び第2の電極への両信号の周波数を2倍にすることによって、発光部分の数が2倍になること意味する。発光部分は、等距離の位置で整列することできる。これは、外見は従来のロープライトに類似するが、更に、発光部分の数を電気的に変化させて、それらをファイバーの長さに沿って移動させることが可能な装飾照明を作ることができることを意味する。
【0091】
本発明の実施例に従ってファイバー4の駆動パラメータについて簡単に述べると、第1の電極8及び第2の電極12の電圧が以下:
【数8】

のように決定されるならば、全ての駆動信号の機能は以下の通りである:
・バーVは発光部分の輝度(及び幅)を制御する、
・ΔVは発光部分の幅を制御する、
・バーωは発光部分の数を制御する、
・Δφ(Δω=0)は発光部分の位置を制御する、
・Δωは発光部分の速度を(それらがファイバー長さに沿って移動する場合に)制御する。
【実施例2】
【0092】
図7を参照すると、本発明の第2の実施例が、全体として参照番号70によって示される。ファイバー70は、内部導電コア74に沿って延在する伸長コイルの形をした第2の電極72を有する。ファイバー70は、第2の電極72を囲む電気光学活性層76を更に有する。電気光学活性層76は、透明な導電被覆の形をした第1の電極78によって取り囲まれている。内部導体コア74は第3の電極として機能する。
【0093】
ファイバー70は、ファイバー4に関して先に説明されたのと同様の方法で用いられうる。
【0094】
ここで図8を参照すると、インダクタ線に沿った位相遅延の派生の一例が表される。
【0095】
コイル抵抗がR=0であって、定常状態が実現される場合に、全ての電圧Vが同じ放射周波数ω及び同じ振幅Vを有する正弦波であって、隣接するノードの間には位相遅延Δφが存在するとすれば、これは(複素表示で):
【数9】

を意味する。
【0096】
その場合に、電流(隣接する電流の差)は:
【数10】

となる。
【0097】
この差は、コンデンサを流れる電流:
【数11】

と一致すべきである。
【0098】
その場合に、隣接するノードの間の位相差は(スモールΔφの近似で):
【数12】

となる。
【0099】
その場合に、終端インピーダンスZtermは(スモールΔφの近似で):
【数13】

となる。
【0100】
零ではないコイル抵抗Rにより、上記結果は、R<<ωLである限り保持されたままである。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1a】従来の変色ファイバーの概要である(オフ状態)。
【図1b】従来の変色ファイバーの概要である(オン状態)。
【図2a】本発明に従うファイバーの形をした電気光学デバイスの概要である(オフ状態)。
【図2b】本発明に従うファイバーの形をした電気光学デバイスの概要である(オン状態)。
【図2c】本発明に従うファイバーの形をした電気光学デバイスの概要である(オン状態)。
【図2d】本発明に従うファイバーの形をした電気光学デバイスの概要である(オン状態)。
【図2e】本発明に従うファイバーの形をした電気光学デバイスの概要である(オン状態)。
【図2f】本発明に従うファイバーの形をした電気光学デバイスの概要である(オン状態)。
【図3】本発明に従うファイバーの形をした電気光学デバイスの詳細な説明図である。
【図4】図3の電気光学デバイスを表す回路である。
【図5】第1及び第2の電極の夫々へ印加された第1の電圧と第2の電圧との間の様々な位相差に関して電気光学デバイス内の発光電力の変化を示すグラフである。
【図6】第1及び第2の電極の夫々へ印加された第1の電圧と第2の電圧との間の振幅を変化させることによって図4のデバイスの発光部の長さがどれ程変化するかを示すグラフである。
【図7】本発明の第2の実施例を表す図である。
【図8】第2の電極に沿って位相遅延がどのように派生するかを示す回路図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端部及び反対側にある第2の端部を有する電気光学デバイスであって:
電気光学活性部;
第1の端部及び反対側にある第2の端部を有する第1の電極;
第1の端部及び反対側にある第2の端部を有する第2の電極;及び
前記電気光学活性部の所定領域の光学状態を、当該電気光学デバイス内の前記所定領域の位置が制御可能であるように制御する制御手段;
を有し、
前記電気光学活性部は、前記第1の電極と前記第2の電極との間に少なくとも部分的に位置付けられる、電気光学デバイス。
【請求項2】
前記所定領域の長さは制御可能である、請求項1記載の電気光学デバイス。
【請求項3】
前記制御手段は、前記電気光学活性部の両端に交流電圧を印加するよう構成される電圧手段を有する、請求項1又は2記載の電気光学デバイス。
【請求項4】
前記電圧手段は、前記第1の電極の第1の端部へ第1の電圧を印加する第1の電圧源と、前記第2の電極の第1の端部へ第2の電圧を印加する第2の電圧源とを有する、請求項1乃至3のうちいずれか一項記載の電気光学デバイス。
【請求項5】
前記第1の電極は、前記第1の電極の第1の端部から第2の端部へ実質的に一定の位相で第1の電圧を伝送するよう構成され、
前記第2の電極は、位相遅延を伴って、前記第2の電極の第1の端部から第2の端部へ第2の電圧を伝送するよう構成される、
請求項4記載の電気光学デバイス。
【請求項6】
前記制御手段は、第3の電極と、前記第2の電極に組み込まれた複数の誘導素子と、前記第2の電極と前記第3の電極との間に位置付けられた複数の容量素子とを更に有する、請求項4又は5記載の電気光学デバイス。
【請求項7】
前記制御手段は、前記第2の電極の第1の端部へ印加された場合の前記第2の電圧に対して、前記第1の電極の第1の端部へ印加された場合の前記第1の電圧の位相を制御可能に変化させるよう構成される、請求項4乃至6のうちいずれか一項記載の電気光学デバイス。
【請求項8】
前記制御手段は、前記第2の電圧に対して前記第1の電圧の振幅を制御可能に変化させるよう構成される、請求項4乃至7のうちいずれか一項記載の電気光学デバイス。
【請求項9】
前記制御手段は、前記第2の電圧に対して前記第1の電圧の周波数を制御可能に変化させるよう構成される、請求項4乃至8のうちいずれか一項記載の電気光学デバイス。
【請求項10】
前記電気光学活性部は電気光学活性物質を有し、
当該電気光学デバイスはファイバー又はフィラメントを有する、
請求項1乃至9のうちいずれか一項記載の電気光学デバイス。
【請求項11】
前記ファイバー又はフィラメントは実質的に円筒形である、請求項10記載の電気光学デバイス。
【請求項12】
前記電気光学活性部は電界発光物質を有する、請求項1乃至11のうちいずれか一項記載の電気光学デバイス。
【請求項13】
前記第2の電極は、複数のコイルを有する巻きコイルの形をした伸長導体を有する、請求項11又は12記載の電気光学デバイス。
【請求項14】
前記伸長導体から成る隣接するコイルの間に形成された絶縁被覆を更に有する、請求項13記載の電気光学デバイス。
【請求項15】
前記絶縁被覆は前記伸長導体を包む、請求項14記載の電気光学デバイス。
【請求項16】
前記絶縁被覆は透明である、請求項14又は15記載の電気光学デバイス。
【請求項17】
前記第3の電極は外部導電被覆を有する、請求項6乃至16のうちいずれか一項記載の電気光学デバイス。
【請求項18】
前記第3の電極は透明である、請求項17記載の電気光学デバイス。
【請求項19】
電気光学デバイスの製造方法であって:
(a)第1の伸長導電部材の周囲に電気光学活性物質の層を置くステップ;
(b)前記層を固まらせるステップ;
(c)前記固化された電気光学活性物質の周りに第2の伸長導電部材を巻き付けるステップ;
(d)前記第2の導電部材から成る隣接するコイルの間に絶縁物質を置くステップ;及び
(e)ファイバー又はフィラメントの周りに導電被覆を置くステップ;
を有する製造方法。
【請求項20】
(f)前記ステップ(c)を実行する前に、前記第2の伸長導電部材の周りに絶縁物質の層を置くステップ、を更に有する請求項19記載の製造方法。
【請求項21】
第1の端部及び第2の端部を各々有する第1の電極並びに第2の電極と、該第1の電極と該第2の電極との間に少なくとも部分的に位置付けられた電気光学活性部とを有する電気光学デバイスの駆動方法であって:
第1の電圧を前記第1の電極へ、且つ第2の電圧を前記第2の電極へ印加することによって前記電気光学活性部の両端に交流電圧差を印加するステップ;及び
位相遅延を前記第2の電極に導入して、前記電気光学活性部の両端の前記交流電圧差の振幅を制御するステップ;
を有する駆動方法。
【請求項22】
前記第2の電極の第1の端部へ印加される場合の前記第2の電圧に対して、前記第1の電極の第1の端部へ印加される場合の前記第1の電圧の位相を制御するステップを更に有する、請求項21記載の駆動方法。
【請求項23】
前記第2の電圧に対して前記第1の電圧の周波数を制御するステップを更に有する、請求項21又は22記載の駆動方法。
【請求項24】
前記第2の電圧に対して前記第1の電圧の振幅を制御するステップを更に有する、請求項21乃至23のうちいずれか一項記載の駆動方法。
【請求項25】
請求項10乃至18のうちいずれか一項記載の電気光学デバイスの複数個から形成される繊維又は布地。
【請求項26】
請求項10乃至18のうちいずれか一項記載の電気光学デバイスの複数個から形成される衣服。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図2e】
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【図2f】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−513947(P2008−513947A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−531932(P2007−531932)
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【国際出願番号】PCT/IB2005/053029
【国際公開番号】WO2006/030395
【国際公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】