説明

伸長性不織布および該不織布を積層した複合不織布

本発明に係る伸長性不織布は、少なくとも2つのポリマーからなる繊維を含有する伸長性不織布であって、前記オレフィン系ポリマーが、異種であり、かつ同一温度および同一せん断歪み速度において溶融せん断粘度の立ち上がり時間が特定の関係を満たすポリマーであることを特徴としている。本発明に係る複合不織布は、このような伸長性不織布からなる層を少なくとも1層含有することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は伸長性不織布に関する。より詳しくは、物理的延伸時に伸長可能であり、高伸長性を有し、かつ優れた耐毛羽立ち性、表面摩耗特性を有するとともに、成形性、生産性に優れ、低温での熱エンボス加工が可能な伸長性不織布に関する。また、本発明はこの不織布を積層した複合不織布およびこれを用いた使い捨てオムツに関する。
【背景技術】
不織布は、衣類、使い捨てオムツ、個人用衛生用品など様々な用途に利用されている。このような用途に使用される不織布は、優れた肌触り、身体適合性、追従性、ドレープ性、引張強度、表面磨耗性を有することが要求されている。
従来のモノコンポーネント繊維からなる不織布は、毛羽立ちが発生しにくく、肌触りが優れている一方で、十分な伸長性が得られていなかった。このため、肌触りと伸長性が要求されるオムツなどに使用することは困難であった。
上記特性を満足させるためには不織布に弾性特性を付与することが望ましいと言われている。従来から、弾性特性を付与する方法として種々の方法が提案されてきた。たとえば、弾性特性を有する層と実質的に非弾性の層とをそれぞれ少なくとも1層有する複合不織布を物理的延伸することによって弾性特性を発現させる方法がある。しかしながら、この方法では、物理的延伸時に非弾性繊維が破損または分断され、毛羽立ちが発生するとともに複合不織布の強度が低下するという問題があった。
そこで、非弾性繊維に高伸長性を付与することが検討されてきた。たとえば、非弾性繊維として異なる2種類以上のポリマーからなるマルチポリマー繊維を含有する複合不織布が提案されている(特表平9−512313号公報、国際公開公報WO01/49905)。この複合不織布は、マルチポリマー繊維を含有することにより伸長率を高めている。特表平9−512313号公報には、高伸長性を発現するメカニズムとして、1種類の追加ポリマーが優勢な連続相に混和することにより、優勢な連続相の結晶度を有効に低下させ、その結果、高伸長性が得られることが記載されている。また、追加ポリマーは優勢相よりも粘度が高いことが好ましいことも記載されている。しかしながら、この複合不織布は、毛羽立ちが発生し、肌触りに劣るという問題があった。また、用途によっては、この複合不織布では伸長性が不十分であり、さらに高い伸長性を有する複合不織布が求められていた。
発明の目的
本発明の目的は、十分な強度および優れた伸長性を有するとともに、耐毛羽立ち性、表面摩耗特性、成形性、生産性に優れ、かつ低温での熱エンボス加工が可能な伸長性不織布およびこの伸長性不織布を積層した複合不織布を提供することである。
【発明の開示】
本発明者は、上記問題点を解決すべく鋭意研究し、互いに異なるポリマーであって、同一条件で測定された溶融せん断粘度の立ち上がり時間が特定の関係を満たす複数のポリマーからなる繊維が高伸長性を発現することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明に係る伸長性不織布は、少なくとも2つのポリマーからなる繊維を含有する伸長性不織布であって、前記ポリマーが互いに異なるポリマーであり、前記ポリマーのうちの少なくとも1つのポリマー(A)が、温度140℃、せん断歪み速度0.2rad/sの条件で測定した溶融せん断粘度の立ち上がり時間が5000秒以下であり、前記ポリマー(A)の溶融せん断粘度の立ち上がり時間(140℃、せん断歪み速度0.2rad/s)が残りのポリマーの溶融せん断粘度の立ち上がり時間(140℃、せん断歪み速度0.2rad/s)よりも小さく、かつその差が500秒以上であることを特徴としている。
前記伸長性不織布は、温度140℃、せん断歪み速度0.2rad/sの条件で測定した、ポリマー(A)の測定開始時の溶融せん断粘度(ηA0)と残りのポリマーの測定開始時の溶融せん断粘度(η)とが、ηA0>ηの関係を満たすことが好ましい。
機械の流れ方向(MD)および/または該流れ方向と垂直な方向(CD)について、最大荷重時の伸長率が250%以上であることが好ましい。
前記繊維は複合繊維であり、該繊維の断面上の点(a)における成分が該点(a)と断面の中心点についての点対称の点(b)における成分と同一であることが好ましい。
前記伸長性不織布はスパンボンド不織布であることが好ましい。
本発明に係る複合不織布は、上記いずれかの伸長性不織布が少なくとも1層積層されている。また、本発明に係る使い捨てオムツは、上記いずれかの伸長性不織布を含有する。
【図面の簡単な説明】
図1は、溶融せん断粘度測定における粘度の経時変化を示すグラフである。
図2は、本発明に用いられる繊維の断面図である。図中、1は中心点である。
図3は、本発明に用いられる繊維の断面図である。(a)は同芯の芯鞘型複合繊維の断面図、(b)はサイドバイサイド型複合繊維の断面図、(c)は海島型複合繊維の断面図である。図中、2は芯部、3は鞘部、4は第1成分、5は第2成分である。
図4は、ギア延伸装置の概略図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明に係る伸長性不織布およびこの不織布を積層した複合不織布について説明する。
<伸長性不織布>
(溶融せん断粘度の立ち上がり時間)
まず、本明細書において用いられている「溶融せん断粘度の立ち上がり時間」について説明する。溶融せん断粘度の立ち上がり時間とは、測定温度が一定、せん断歪み速度が一定の条件でポリマーの溶融せん断粘度を測定した場合に、測定開始時から、溶融せん断粘度が増加し始めるまでの時間をいう。具体的には、図1に示す時間tをいう。すなわち、測定開始時から、溶融せん断粘度が一定の状態から変化(増加)した時までの時間を意味する。なお、溶融せん断粘度の立ち上がり時間はポリマーが結晶化する場合には流動誘起結晶化誘導期ともいう。
溶融せん断粘度測定において用いられる溶融粘度測定器としては、回転型レオメーター、キャピラリー型レオメーターなどが挙げられる。本発明におけるせん断歪み速度は、ある程度の粘度上昇が発生しても安定した流動を維持できる観点から、0.2rad/sである。
なお、実際の紡糸工程の流動場は上記測定における流動場とは異なるとともに歪み速度が非常に高い。しかしながら、ポリマーの粘度上昇は、系のトータル歪みが一定の水準に達したときに発生するため、溶融せん断粘度の立ち上がり時間はせん断歪み速度と反比例の関係にあり、低せん断歪み速度における測定結果から高せん断歪み速度における溶融せん断粘度の立ち上がり時間を推測することができる。さらに、紡糸工程における流動場と上記測定における流動場とは、流動によりポリマー分子を配向させるという点で共通しており、低せん断歪み速度における測定結果から実際の紡糸工程の伸長流動場における現象を検証することは可能であると考えられる。
溶融せん断粘度の立ち上がり時間は、溶融せん断粘度の測定温度およびせん断速度によって変動するため、本発明では140℃、0.2rad/sの一定条件で測定される。
<ポリマー>
本発明に用いられるポリマーとしては、熱可塑性のポリマーであって不織布を製造できるものであれば特に限定されない。たとえば、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン類;ポリオレフィン系エラストマー;ポリスチレン系ポリマー類;ポリスチレン系エラストマー;ポリエステル類;ポリエステル系エラストマー;ポリアミド類;ポリアミド系エラストマー;ポリウレタン;ポリ乳酸が挙げられる。
本発明において、「異なるポリマー」とは、種類の異なるポリマーの組み合わせだけでなく、同じ種類のポリマーであっても下記の(1)および(2)は異なるポリマーに含まれるものとする。ただし、種類の異なるポリマーの組み合わせであっても、下記(3)は「異なるポリマー」には含まれない。下記(1)および(3)はポリマーが1種単独の場合であり、下記(2)はポリマーが2種以上のブレンドポリマーの場合である。
(1)ポリマーが共重合体の場合:
「異なる共重合体」には、構成単位の種類の組み合わせが共重合体間で同一であっても、共重合体間での各構成単位の割合の差が10%以上である共重合体の組み合わせも含まれる。たとえば、プロピレン単位70%とエチレン単位30%のエチレン−プロピレン共重合体と異なる共重合体とは、プロピレン単位が80〜90%かつエチレン単位が10〜20%のエチレン−プロピレン共重合体またはプロピレン単位が60%以下かつエチレン単位が40%以上のエチレン−プロピレン共重合体である。
(2)ポリマーがブレンドポリマーの場合:
本発明では、上記単独重合体および共重合体から選択される2種以上の重合体を混合したブレンドポリマーも1つのポリマーとして用いることもできる。この場合、混合する2種以上の重合体は同種であっても異種であってもよい。本発明における「異なるブレンドポリマー」には、重合体の種類の組み合わせがブレンドポリマー間で同一であっても、ブレンドポリマー間での各重合体の割合の差が10重量%以上であるブレンドポリマーの組み合わせも含まれる。たとえば、ポリプロピレン70重量%とポリエチレン30重量%からなるブレンドポリマーと異なるブレンドポリマーとは、ポリプロピレンを80重量%以上かつポリエチレンを20重量%以下の量で含有するブレンドポリマーまたはポリプロピレンを60重量%以下かつポリエチレンを40重量%以上の量で含有するブレンドポリマーである。
(3)ポリマーが単独重合体の場合:
本発明において、「単独重合体」とは、主たる構成単位が90%以上である重合体を意味する。たとえば、エチレン単位を10%未満含有するポリプロピレンもホモポリプロピレンに含まれるものとする。したがって、主たる構成単位が90%以上のポリマーの組み合わせは「異なる単独重合体」には含まれない。たとえば、エチレン単位含有率が10%未満のポリプロピレンの組み合わせは「異なる単独重合体」には含まれない。
本発明に用いられる複数のポリマーのうち、少なくとも1つのポリマー(A)は、温度140℃、せん断歪み速度0.2rad/sの条件で測定した溶融せん断粘度の立ち上がり時間が5000秒以下、好ましくは4000秒以下、より好ましくは3000秒以下である。溶融せん断粘度の立ち上がり時間がより短いポリマーを用いることによって、得られる不織布の伸長性が高くなる。また、このポリマー(A)の溶融せん断粘度の立ち上がり時間(140℃、せん断歪み速度0.2rad/s)は残りのポリマーの溶融せん断粘度の立ち上がり時間(140℃、せん断歪み速度0.2rad/s)よりも小さい。さらに、このポリマー(A)と残りのポリマーとの溶融せん断粘度の立ち上がり時間(140℃、せん断歪み速度0.2rad/s)の差は500秒以上、好ましくは1000秒以上、より好ましくは2000秒以上であり、この差が大きいほどさらに伸長性が高くなる。
温度140℃、せん断歪み速度0.2rad/sの条件で測定した、ポリマー(A)の測定開始時の溶融せん断粘度(ηA0)と残りのポリマーの測定開始時の溶融せん断粘度(η)とが、ηA0>ηの関係を満たすことが好ましい。ここで、溶融せん断粘度が測定開始と同時に立ち上がった場合には、溶融せん断粘度の立ち上がり時間は0秒とし、測定開始時の溶融せん断粘度は0秒における値とする。
(ポリウレタン)
本発明に用いられるポリウレタンとしては熱可塑性のポリウレタンエラストマーが好ましい。このポリウレタンエラストマーとしては、不織布を製造できるものであれば特に限定されず、たとえば、ポリオールとイソシアネートと鎖延長剤とを用いて得ることができる。
前記ポリオールとしては、1分子中に水酸基を2個以上有するポリオールが好ましく、具体的には、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリエステルポリオールなどが挙げられる。これらのポリオールは1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
ポリオキシアルキレンポリオールとしては、たとえば、比較的低分子量の2価アルコールにプロピレンオキサイド、エチレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加重合したポリオキシアルキレングリコールが挙げられる。アルキレンオキサイドとしては、特に、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイドが好ましい。
ポリエステルポリオールとしては、たとえば、低分子量ポリオールとジカルボン酸またはオリゴマー酸とを縮合重合して得られるポリエステルポリオールが挙げられる。低分子量ポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールFなどが挙げられる。ジカルボン酸としては、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ダイマー酸などが挙げられる。具体的には、ポリエチレンブチレンアジペートポリオール、ポリエチレンアジペートポリオール、ポリエチレンプロピレンアジペートポリオール、ポリプロピレンアジペートポリオールなどが挙げられる。
前記イソシアネートとしては、イソシアネート基を1分子中に2個以上有するイソシアネートが挙げられ、芳香族イソシアネート、脂肪族イソシアネート、脂環族イソシアネートが好ましい。具体的には、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIという)、水添MDI(ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、以下、HMDIという)、パラフェニレンジイソシアネート(以下、PPDIという)、ナフタレンジイソシアネート(以下、NDIという)、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIという)、イソホロンジイソシアネート(以下、IPDIという)、2,5−ジイソシアネートメチル−ビシクロ〔2,2,1〕−ヘプタンおよびその異性体である2,6−ジイソシアネートメチル−ビシクロ〔2,2,1〕−ヘプタン(以下、NBDIという)が挙げられる。これらのうち、MDI、HDI、HMDI、PPDI、NBDIなどが好ましく用いられる。また、これらのジイソシアネートのウレタン変性体、カルボジイミド変性体、ウレトイミン変性体、イソシアヌレート変性体なども用いることができる。これらのイソシアネートは1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
鎖伸長剤としては、1分子中に水酸基を2個以上有する低分子量のポリオールが挙げられ、脂肪族、芳香環式、複素環式または脂環式の低分子量のポリオールが好ましい。脂肪族ポリオールとして、たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。芳香環式、複素環式または脂環式のポリオールとしては、たとえば、パラキシレングリコール、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート、ビス(2−ヒドロキシエチル)イソフタレート、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、レゾルシン、ヒドロキノン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオールなどが挙げられる。これらの鎖伸長剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明に用いられるポリウレタンエラストマーは、上記ポリオール、イソシアネートおよび鎖延長剤を用いて、従来公知の方法で製造することができる。
(ポリオレフィン類)
本発明に用いられるポリオレフィン類としては、α−オレフィンの単独重合体および共重合体が挙げられる。これらのうち、エチレンまたはプロピレンの単独重合体、プロピレンとプロピレン以外のα−オレフィン類から選択される少なくとも1種のα−オレフィンとの共重合体(以下、「プロピレン共重合体」という)が好ましく、エチレンまたはプロピレンの単独重合体がより好ましい。特にプロピレンの単独重合体は、毛羽立ちの発生を抑制することができることから好ましく、オムツ等に好適に利用される。
プロピレン以外のα−オレフィン類としては、エチレンおよび炭素数4〜20のα−オレフィンが挙げられる。これらのうち、エチレンおよび炭素数4〜8のα−オレフィンが好ましく、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンがより好ましい。
本発明に用いられるポリエチレンは、ASTM D1238に記載の方法に基づいて、190℃、2.16kg荷重下で測定されるMFRが、好ましくは1〜100g/10分、より好ましくは5〜90g/10分、特に好ましくは10〜85g/10分である。重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、好ましくは1.5〜5である。Mw/Mnが上記範囲にあると、紡糸性が良好であり、かつ強度に優れた繊維を得ることができる。ここで、「良好な紡糸性」とは、紡糸ノズルからの吐き出し時および延伸中に糸切れが生じず、フィラメントの融着が生じない状態をいう。なお、本発明において、MwおよびMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、カラム:TSKgel GMH6HT×2,TSKgel GMH6−HTL×2、カラム温度:140℃、移動相:o−ジクロロベンゼン(ODCB)、流量:1.0mL/min、試料濃度:30mg/20mL−ODCB、注入量:500μLの条件で測定され、ポリスチレンにより換算した値である。なお、分析用試料として、予め、試料30mgを20mLのo−ジクロロベンゼンに145℃で2時間加熱溶解後、孔径0.45μmの焼結フィルターでろ過したものを用いる。
ポリプロピレンは、平衡融点がエチレン単位含有率が0%の場合には一般的には185〜195℃である。本発明に用いられるポリプロピレンは、ASTM D1238に記載の方法に基づいて、230℃、2.16kg荷重下で測定されるMFRが、好ましくは1〜200g/10分、より好ましくは5〜120g/10分、特に好ましくは10〜100g/10分である。重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、好ましくは1.5〜5.0、より好ましくは1.5〜3.0である。Mw/Mnが上記範囲にあると、紡糸性が良好であり、かつ強度に優れた繊維を得ることができる。
本発明に用いられる少なくとも2つのポリマーはそれぞれ別個に調製して使用される。このとき、ポリマーをペレット状にすることが好ましい。2種以上の重合体を使用する場合、これらの重合体を溶融して混合し、必要に応じてペレット化した後、使用することが好ましい。
<添加剤>
本発明では、上記ポリマーに加えて、発明の目的を損なわない範囲で必要に応じて添加剤を使用してもよい。具体的な添加剤としては、耐熱安定剤や耐候安定剤などの各種安定剤、充填剤、帯電防止剤、親水剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックスなどが挙げられる。これらの添加剤は従来公知のものが使用できる。
安定剤としては、たとえば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)等の老化防止剤;テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アルキルエステル、2,2’−オキザミドビス[エチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)]プロピオネート、Irganox 1010(商品名、ヒンダードフェノール系酸化防止剤)等のフェノール系酸化防止剤;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、1,2−ヒドロキシステアリン酸カルシウムなどの脂肪酸金属塩;グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート等の多価アルコール脂肪酸エステルなどが挙げられる。これらの安定剤は1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
充填剤としては、たとえば、シリカ、ケイ藻土、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、軽石粉、軽石バルーン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ドロマイト、硫酸カルシウム、チタン酸カリウム、硫酸バリウム、亜硫酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、アスベスト、ケイ酸カルシウム、モンモリロナイト、ベントナイト、グラファイト、アルミニウム粉、硫化モリブデンなどが挙げられる。
これらの添加剤は、上記ポリマーに混合することが好ましい。このとき、添加剤は1つのポリマーに混合してもよいし、複数のポリマーに混合してもよい。混合方法は特に制限されず、公知の方法を使用することができる。
<繊維>
本発明に用いられる繊維は、上記ポリマーのうちの少なくとも2つポリマーからなる繊維であって、これらのポリマーは異なるものであり、かつ前記ポリマーのうちの少なくとも1つのポリマー(A)が、温度140℃、せん断歪み速度0.2rad/sの条件で測定した溶融せん断粘度の立ち上がり時間が5000秒以下であり、前記ポリマー(A)の溶融せん断粘度の立ち上がり時間(140℃、せん断歪み速度0.2rad/s)が残りのポリマーの溶融せん断粘度の立ち上がり時間(140℃、せん断歪み速度0.2rad/s)よりも小さく、かつその差が500秒以上である。この繊維は実質的に捲縮性を有さない。ここで、「実質的に捲縮性を有さない」とは、不織布を構成する繊維の捲縮性が不織布の伸長性には影響しないことをいう。
前記繊維は複合繊維であり、図2に示すような、この複合繊維の断面上の点(a)におけるポリマー成分と、この点(a)と断面上の中心点についての点対称の点(b)におけるポリマー成分とが同一であることが好ましい。ここで、「複合繊維」とは、長さと、断面を円と仮定した場合の直径との比が繊維と呼ぶにふさわしい程度の相が2相以上存在する単繊維をいう。したがって、本発明における複合繊維は、上記ポリマーからなる繊維状の相を少なくとも2つ含有する単繊維であって、これらの相を形成するポリマーが異種であって溶融せん断粘度の立ち上がり時間が上記関係を満たす単繊維である。
このような複合繊維として、具体的には、芯鞘型複合繊維、サイドバイサイド型複合繊維および海島型複合繊維などが挙げられる。芯鞘型複合繊維としては、繊維断面について、円形状の芯部の中心とドーナツ状の鞘部の中心とが一致する同芯型複合繊維が挙げられる。これらのうち、同芯型複合繊維が好ましい。なお、各種複合繊維の断面の一例を図3に示す。図3の(a)は同芯の芯鞘型複合繊維の断面図、(b)はサイドバイサイド型複合繊維の断面図、(c)は海島型複合繊維の断面図の一例である。これらの複合繊維の各相は少なくとも1つの成分が繊維状である必要がある。たとえば、相がブレンドポリマーにより構成される場合、各相についてブレンドポリマーのうちの少なくとも1成分が繊維状であれば相内で三次元的に海島構造を形成していてもよい。
前記繊維を構成する少なくとも2つのポリマーのうち、溶融せん断粘度の立ち上がり時間が最も小さいポリマーが、この繊維全体に対して好ましくは1〜70重量%、より好ましくは1〜50重量%、特に好ましくは1〜30重量%含まれる。溶融せん断粘度の立ち上がり時間が最も小さいポリマーの含有量が70重量%を超えると良好な紡糸性を得ることができない。また、繊維が同芯の芯鞘型複合繊維の場合、紡糸性に優れ、高伸張性の繊維が得られることから、溶融せん断粘度の立ち上がり時間がより小さいポリマーを芯部にすることが好ましい。
<不織布>
本発明に係る伸長性不織布は上記繊維を含有する不織布である。この伸長性不織布はスパンボンド不織布であることが好ましい。
前記伸長性不織布は、単位面積あたりの質量(目付量)が好ましくは3〜100g/m、より好ましくは10〜40g/mの範囲にある。目付量が上記範囲にあると柔軟性、触感、身体適合性、追従性、ドレープ性に優れるとともに、経済性、シースルー性にも優れる。
前記伸長性不織布は、機械の流れ方向(MD)および/または該流れ方向と垂直な方向(CD)について、最大荷重時の伸長率が好ましくは250%以上、より好ましくは300%以上、特に好ましくは350%以上である。前記伸長率が250%以上になると触感やフィット感に優れた伸長性不織布となる。特に、目付量が10〜40g/mの範囲にある伸長性不織布が通常250%以上、より好ましくは300%以上、特に好ましくは350%以上の伸長率を有すると、触感やフィット感など実用的な面において非常に満足のいく特性を示す。
前記伸長性不織布の繊度は5.0デニール以下が好ましい。繊度が5.0デニール以下であると不織布は優れた柔軟性を有する。
本発明に係る伸長性不織布は、従来公知の種々の方法で製造することができる。たとえば、乾式法、湿式法、スパンボンド法、メルトブロー法などが用いられる。これらの方法は、不織布の所望の特性により使い分けられるが、生産性が高く、高強度の不織布が得られる点で、スパンボンド法が好ましく用いられる。
以下、2つのポリマーからなる同芯芯鞘型複合繊維を含有するスパンボンド不織布を製造する方法を例に、本発明に係る伸長性不織布の製造方法を説明するが、本発明に係る伸長性不織布の製造方法はこれに限定されるものではない。
まず、2つのポリマーをそれぞれ別個に調製する。このとき、必要に応じて、上記添加剤を2つのポリマーの一方または両方に混合してもよい。これら2つのポリマーを、一方が芯部、他方が鞘部となるように、それぞれ別個に押出機等で溶融し、各溶融物を所望の同芯芯鞘構造を形成するように構成された複合紡糸ノズルを有する紡糸口金から吐出させ、同芯芯鞘型複合長繊維を紡出する。紡出された複合長繊維を、冷却流体により冷却し、さらに延伸エアにより複合長繊維に張力を加えて所定の繊度に調整し、これを捕集ベルト上に捕集して所定の厚さに堆積させる。次いで、ニードルパンチ、ウォータージェット、超音波シール等による交絡処理や熱エンボスロールによる熱融着などを施し、所望の同芯芯鞘構造を有する複合繊維からなるスパンボンド不織布を得る。熱エンボスロールによる熱融着の場合、エンボスロールのエンボス面積率は、適宜決定することができるが、通常5〜30%が好ましい。
本発明に係る伸長性不織布は、たとえば、スパンボンド成形においてエンボス加工を施す場合に、低温で熱エンボス加工ができる。その結果、毛羽立ちが多く、たとえば、オムツなどに使用することは困難であった。本発明に係る伸長性不織布を低温で熱エンボス加工すると、毛羽立ちの発生が皆無に等しく、オムツなどに使用することが可能である。また、本発明に係る伸長性不織布は、低温で熱エンボス加工することが可能である点で、生産工程におけるエネルギーコストの削減効果もある。
本発明に係る伸長性不織布は公知の方法により延伸加工してもよい。機械の流れ方向(MD)に延伸(伸長)する方法としては、たとえば、2つ以上のニップロールに伸長性不織布を通過させる。このとき、ニップロールの回転速度を、機械の流れ方向の順で速くすることによって伸長性不織布を延伸できる。また、図4に示すギア延伸装置を用いてギア延伸加工することもできる。
<複合不織布>
本発明に係る複合不織布は上記伸長性不織布の層を少なくとも1層有する。前記複合不織布に含まれる、伸長性不織布の層以外の層(以下、「その他の伸長層」という)は、少なくとも伸長性を有する層であれば特に制限されないが、伸縮性を合わせもつ弾性ポリマーからなる層が好ましい。
上記弾性ポリマーとしては、伸長性と伸縮性とを有する弾性材料を用いることができる。このような材料のうち、加硫ゴムや熱可塑性エラストマーなどが好ましく、特に、成形性が優れているという点で熱可塑性エラストマーが好ましい。熱可塑性エラストマーは、常温では加硫ゴムと同様な弾性体の性質を持ち(分子中のソフトセグメントによる)、高温では通常の熱可塑性樹脂と同様に既存の成形機により成形することができる(分子中のハードセグメントによる)高分子材料である。
本発明に用いられる熱可塑性エラストマーとして、ウレタン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリアミド系エラストマーなどが挙げられる。
ウレタン系エラストマーは、ポリエステルまたは低分子グリコールなどとメチレンビスフェニルイソシアネートまたはトリレンジイソシアネートなどとから得られるポリウレタンである。たとえば、ポリラクトンエステルポリオールに短鎖ポリオールの存在下でポリイソシアネートを付加重合したもの(ポリエーテルポリウレタン);アジピン酸とグリコールとのアジピン酸エステルポリオールに、短鎖ポリオールの存在下でポリイソシアネートを付加重合したもの(ポリエステルポリウレタン);テトラヒドロフランの開環により得られたポリテトラメチレングリコールに短鎖ポリオールの存在下でポリイソシアネートを付加重合したものなどが挙げられる。このようなウレタン系エラストマーは、レザミン(登録商標、大日精化工業(株)製)、ミラクトラン(登録商標、日本ポリウレタン(株)製)、エラストラン(登録商標、BASF社製)、パンデックス、デスモスパン(以上、登録商標、DIC−Bayerポリマー(株)製)、エステン(登録商標、B.F.グットリッチ社製)、ペレセン(登録商標、ダウ・ケミカル(株)製)などの市販品として得ることができる。
スチレン系エラストマーとしては、SEBS(スチレン/(エチレン−ブタジエン)/スチレン)、SIS(スチレン/イソプレン/スチレン)、SEPS(スチレン/(エチレン−プロピレン)/スチレン)、SBS(スチレン/ブタジエン/スチレン)などのスチレン系ブロック共重合体が挙げられる。このようなスチレン系エラストマーは、クレイトン(Kraton)(登録商標、シェル化学(株)製)、キャリフレックスTR(登録商標、シェル化学(株)製)、ソルプレン(登録商標、フィリップスペトロリファム社製)、ユーロプレンSOLT(登録商標、アニッチ社製)、タフプレン(登録商標、旭化成(株)製)、ソルプレンT(登録商標、日本エラストマー(株)製)、JSRTR(登録商標、日本合成ゴム(株)製)、電化STR(登録商標、電気化学(株)製)、クインタック(登録商標、日本ゼオン(株)製)、クレイトンG(登録商標、シェル化学(株)製)、タフテック(登録商標、旭化成(株)製)、セプトン(登録商標、クラレ(株)製)などの市販品として得ることができる。
ポリエステル系エラストマーとしては、芳香族ポリエステルをハードセグメントに、非晶性ポリエーテルや脂肪族ポリエステルをソフトセグメントにしたものが挙げられる。具体的には、ポリブチレンテレフタラート/ポリテトラメチレンエーテルグリコールブロック共重合体などが挙げられる。
オレフィン系エラストマーとしては、エチレン/α−オレフィンランダム共重合体や、これに第3成分としてジエンを共重合させたものなどが挙げられる。具体的には、エチレン/プロピレンランダム共重合体、エチレン/1−ブテンランダム共重合体、エチレン/プロピレン/ジシクロペンタジエン共重合体やエチレン/プロピレン/エチリデンノルボルネン共重合体などのエチレン/プロピレン/ジエン共重合体(EPDM)をソフトセグメントに、ポリオレフィンをハードセグメントにしたものなどが挙げられる。このようなオレフィン系エラストマーは、タフマー(三井化学(株)製)、ミラストマー(登録商標、三井化学(株)製)などの市販品として得ることができる。
ポリアミド系エラストマーとしては、ナイロンをハードセグメントに、ポリエステルまたはポリオールをソフトセグメントにしたものなどが挙げられる。具体的には、ナイロン12/ポリテトラメチレングリコールブロック共重合体などが挙げられる。
これらのうち、ウレタン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマーが好ましい。特に伸縮性に優れるという点で、ウレタン系エラストマー、スチレン系エラストマーが好ましい。
前記その他の伸長層の形態として、フィラメント、ネット、フィルム、フォームなどが挙げられる。これらは、従来公知の種々の方法により得ることができる。
本発明に係る複合不織布は、たとえば、上記伸長性不織布からなる層と上記その他の伸長層を従来公知の方法で各層を接合することにより得ることができる。接合方法としては、たとえば、熱エンボス接合、超音波エンボス接合、ホットエアースルー接合、ニードルパンチング、接着剤による接合が挙げられる。
接着剤による接合に用いられる接着剤としては、たとえば、酢酸ビニル系やポリビニルアルコール系などの樹脂系接着剤、スチレン−ブタジエン系やスチレン−イソプレン系、ウレタン系などのゴム系接着剤などが挙げられる。また、これら接着剤を有機溶剤に溶解した溶剤系接着剤、上記接着剤の水性エマルジョン接着剤なども用いることができる。これらの接着剤のうち、スチレン−ブタジエン系、スチレン−イソプレン系などのゴム系ホットメルト接着剤が、風合いを損なわない点で、好ましく用いられる。
本発明に係る複合不織布は、上記伸長性不織布と同様に、さらに公知の方法で延伸加工してもよい。
<用途>
本発明に係る伸長性不織布および複合不織布は、伸長性、引張強度、耐毛羽立ち性、表面摩耗特性、成形性、生産性に優れているため、医療用、衛生材用、包装材用などの各種産業用途に用いることができ、特に使い捨てオムツ用部材として好ましく用いられる。
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、この実施例により何ら限定されるものではない。溶融せん断粘度の立ち上がり時間の測定方法およびその比較方法、不織布の引張試験方法、毛羽立ちの評価方法を、以下に示す。
<評価方法>
(1)溶融せん断粘度の立ち上がり時間の測定方法:
溶融せん断粘度の立ち上がり時間は、温度140℃について測定した。温度一定、せん断歪み速度一定の条件で溶融せん断粘度を測定し、溶融せん断粘度の立ち上がり時間を決定した。以下に、溶融せん断粘度の測定条件を示す。
測定装置:レオメトリックス社製、型番ARES
測定モード:時間分散
せん断速度:0.2rad/s
測定温度:140℃
測定治具:コーンプレート25mmφ
測定環境:窒素雰囲気下
(2)引張試験:
得られた不織布から、流れ方向(MD)が25mm、横方向(CD)が2.5mmの試験片5枚と、流れ方向(MD)が2.5mm、横方向(CD)が25mmの試験片5枚採取した。前者の試験片について、定速伸長型引張試験機を用いて、チャック間100mm、引張速度100mm/分の条件で引張試験を行った。流れ方向の最大荷重、最大荷重時および破断時(荷重ゼロ)に試験片が伸びた割合を測定し、5枚の試験片の平均値を求めた。同様に後者の試験片について引張試験を行い、横方向の最大荷重、最大荷重時および破断時に試験片が伸びた割合を測定し、5枚の試験片の平均値を求めた。
(3)毛羽立ちの測定(ブラシ試験)
JIS L1076に準拠して測定した。得られた不織布から、流れ方向(MD)が25mm、横方向(CD)が20mmの試験片3枚を採取した。これをブラシアンドスポンジ形試験機の試料ホルダーに取り付け、ブラシアンドスポンジの代わりにフェルトを取り付け、58/分(rpm)の速さで200回摩擦した。摩擦後の試験片を目視により判定し、下記基準により評価した。
(評価基準)
5:全く毛羽立ちなし
4:ほとんど毛羽立ちなし
3:やや毛羽立ちが見られた
2:毛羽立ちが著しいが、破れなし
1:毛羽立ちが著しく、破れあり
【実施例1】
ポリマーとして、ポリウレタンエラストマー(TPU)とポリプロピレン(PP1)とを用いた。
TPUは、ポリエステルポリオールとMDIと1,4−ブタンジオールとを縮合重合して得た。このTPUは、温度140℃、せん断歪み速度0.2rad/sの条件で測定した溶融せん断粘度の立ち上がり時間が19秒であった。また、測定開始時の溶融せん断粘度は27.1kPa・sであった。
PP1は、温度140℃、せん断歪み速度0.2rad/sの条件で測定した溶融せん断粘度の立ち上がり時間が3500秒、測定開始時の溶融せん断粘度が1.4kPa・sのものを使用した。なお、このPP1は、ASTM D1238に基づいて、230℃、2.16kg荷重の条件で測定したメルトフローレート(MFR)が60g/分であった。
TPUを芯部、PP1を鞘部として、複合溶融紡糸を行い、芯部と鞘部の重量比が60/40の同芯の芯鞘型複合繊維(フィラメント径:30μm)を捕集面上に堆積させた。次いで、この堆積物をエンボスロールで加熱加圧処理(エンボス面積率18%、エンボス温度100℃)して目付量が50g/m、構成繊維の繊度が3.5デニールのスパンボンド不織布を作製した。得られたスパンボンド不織布の各物性を測定した。結果を表1に示す。
【実施例2】
ポリマーとして、上記ポリプロピレン(PP1)とポリエチレン(PE1)を用いた。
PE1は、温度140℃、せん断歪み速度0.2rad/sの条件で測定した溶融せん断粘度の立ち上がり時間が7200秒を超え、測定開始時の溶融せん断粘度が0.6kPa・sのものを使用した。なお、このPE1は、ASTM D1238に基づいて、190℃、2.16kg荷重の条件で測定したメルトフローレート(MFR)が60g/分であった。
芯部にPP1、鞘部にPE1を用い、芯部と鞘部の重量比を50/50、エンボス温度を110℃、目付量を25g/mに変更した以外は、実施例1と同様にしてスパンボンド不織布を作製した。得られたスパンボンド不織布の各物性を測定した。結果を表1に示す。
<比較例1>
ポリマーとして、ポリプロピレン(PP2)と上記ポリエチレン(PE1)を使用した。
PP2は、温度140℃、せん断歪み速度0.2rad/sの条件で測定した溶融せん断粘度の立ち上がり時間が7200秒を超え、測定開始時の溶融せん断粘度が1.4kPa・sのものを使用した。なお、このPP2は、ASTM D1238に基づいて、230℃、2.16kg荷重の条件で測定したメルトフローレート(MFR)が60g/分であった。
芯部にPP2を用いた以外は、実施例2と同様にしてスパンボンド不織布を作製した。得られたスパンボンド不織布の各物性を測定した。結果を表1に示す。

【産業上の利用可能性】
本発明によると、伸長性、引張強度、耐毛羽立ち性、表面摩耗特性、成形性、生産性に優れた伸長性不織布およびこの伸長性不織布を含む複合不織布を得ることができる。これらの伸長性不織布および複合不織布は、医療用、衛生材用、包装材用などの各種産業用途に用いることができ、特に、耐毛羽立ち性に優れていることから優れた触感を有し、使い捨てオムツ用部材として好ましく用いられる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのポリマーからなる繊維を含有する伸長性不織布であって、
前記ポリマーが互いに異なるポリマーであり、
前記ポリマーのうちの少なくとも1つのポリマー(A)が、温度140℃、せん断歪み速度0.2rad/sの条件で測定した溶融せん断粘度の立ち上がり時間が5000秒以下であり、
前記ポリマー(A)の溶融せん断粘度の立ち上がり時間(140℃、せん断歪み速度0.2rad/s)が残りのポリマーの溶融せん断粘度の立ち上がり時間(140℃、せん断歪み速度0.2rad/s)よりも小さく、かつその差が500秒以上である
ことを特徴とする伸長性不織布。
【請求項2】
温度140℃、せん断歪み速度0.2rad/sの条件で測定した、ポリマー(A)の測定開始時の溶融せん断粘度(ηA0)と残りのポリマーの測定開始時の溶融せん断粘度(η)とが、ηA0>ηの関係を満たすことを特徴とする請求の範囲第1項に記載の伸長性不織布。
【請求項3】
機械の流れ方向(MD)および/または該流れ方向と垂直な方向(CD)について、最大荷重時の伸長率が250%以上であることを特徴とする請求の範囲第1項または第2項に記載の伸長性不織布。
【請求項4】
前記繊維が複合繊維であり、該繊維の断面上の点(a)における成分が該点(a)と断面の中心点についての点対称の点(b)における成分と同一であることを特徴とする請求の範囲第1項〜第3項のいずれかに記載の伸長性不織布。
【請求項5】
前記伸長性不織布がスパンボンド不織布であることを特徴とする請求の範囲第1項〜第4項のいずれかに記載の伸長性不織布。
【請求項6】
請求の範囲第1項〜第5項のいずれかに記載の伸長性不織布からなる層を少なくとも1層有する複合不織布。
【請求項7】
請求の範囲第1項〜第5項のいずれかに記載の伸長性不織布を含む使い捨てオムツ。

【国際公開番号】WO2004/048663
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【発行日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−555029(P2004−555029)
【国際出願番号】PCT/JP2003/015001
【国際出願日】平成15年11月25日(2003.11.25)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】