説明

位相同期ループ回路

【課題】必要な特性を満たしつつ、回路構成を簡素化し、省面積化を可能とするデジタルPLLの提供。
【解決手段】リファレンスクロック信号FRと分周クロック信号FDの位相差を検出するTDC101、FDとFRの進み遅れを出力するFF103、位相誤差演算器102、位相誤差(PERR)を平滑化するデジタルフィルタ104、出力クロック信号FOを出力するDCO105、FOを分周したFDを出力するN分周器106、N分周器106内のカウンタ値をFRに応答してサンプルするレジスタ107を備え、TDC101は、位相差検出測定範囲がFOの1周期以内とされ、FRとFDの位相差をFOの1周期に換算した小数で出力し、位相誤差演算器102は、FDとFRの位相差が、FOの周期の整数倍以上のときは、レジスタ107出力と符号情報signから、FOの1周期内のときは、TDCの出力と符号情報signからPERRを演算出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PLL(Phase Locked Loop:位相同期ループ)回路に関し、特に、デジタルPLLに適用して好適な回路構成に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルPLLは、アナログPLLの各ブロックをデジタル化し、処理をデジタル化した位相同期ループである。デジタル化することにより、アナログPLLで問題となっていた点を解決し、以下のような利点を実現可能としている。
【0003】
(A)アナログPLLで問題となっていたループフィルタにおけるリーク電流による電位変動の問題やフィルタの面積の問題を解消する。
【0004】
(B)デジタル化によりRTL(Register Transfer Level)設計となるため、PLLのパラメータ変更時の再設計を容易化する。
【0005】
(C)デジタル・コードの処理となるため、PVT(Process/Voltage/Temperature)変動による、回路の特性変動が小さい。
【0006】
上記利点を実現するために、アナログPLLの各ブロックをデジタル処理に置き換えた完全デジタルPLL(All Digital PLL、「ADPLL」と略記される、「全デジタルPLL」ともいう)がある。ADPLLでは、例えば、2つの入力の位相差を相対的に比較し該位相差をデジタル化する方式(この方式を、本明細書では「相対比較方式」と呼ぶことにする)が用いられる。しかしながら、この方式は、精度、回路面積、電力の面で問題となる点がある。
【0007】
これらを解決するための方式として、近年、フェーズ・ドメイン(Phase Domain)方式を採用したADPLLが開発されている。この方式は、精度及び位相変調を行うような用途の場合には特性向上に寄与するが、回路面積、及び、処理スピードの点でデメリットが存在する。以下、アナログPLL、ADPLLを概説しておく。
【0008】
図5は、アナログPLLの構成を示す図である。PFD+CPブロック11において、PFD(Phase Frequency Detector:位相周波数検出器)はリファレンスクロック信号FREFと分周クロック信号FCKVの位相・周波数を比較し、CP(Charge Pump)はPFDでの比較結果に対応した電圧を生成し、該電圧を、低域フィルタ(LF)(「ループフィルタ」ともいう)12にて平滑化した制御電圧を電圧制御発振器(VCO)13に与え、VCO13は該制御電圧に応じた周波数の発振クロックFVCOを出力し、FVCOを分周器(÷N)14でN分周した分周クロック信号FCKVが、PFDに帰還入力される。
【0009】
図6は、図5の各ブロックをデジタル化した完全デジタルPLL(ADPLL)の典型的な構成の一例を示す図である。図6において、P2D(phase to digital converter)21、デジタル・フィルタ(ループフィルタ)(Digital LF)22、DCO(digitally controlled oscillator)23、分周器24は、図5のアナログPLLのPFD+CP11、LF12、VCO13、分周器14にそれぞれ対応している。
【0010】
図7は、図6のP2D回路の構成の一例を示す図である。図5のアナログPLLでは、PFD(位相周波数比較器)出力であるUP/DNをCP(チャージポンプ)に入力して位相差に対応する電圧に変換してループフィルタ(アナログフィルタ)12に入力していたが、ADPLLでは、PFD201の位相比較結果UP/DNは、NOR回路202に入力され、NOR回路202の出力がTDC(Time to Digital Converter)203に入力される。NOR回路202は、UP、DNがともにLowのときHighを出力し、UP、DNの一方がHighのときLowを出力する。TDC203は、位相差をデジタル・コード化し、デジタル・フィルタ(Digital LF)22に入力される。特に制限されないが、PFD201は、例えばFDIVの立ち上がりエッジからFREFの立ち上がりエッジまでのパルス幅のHighパルスをUPとして出力する回路と、FREFの立ち上がりエッジからFDIVの立ち上がりエッジまでのパルス幅のHighパルスをDNとして出力する回路を備え、FDIVの1周期あたり、UPとDNの一方がHighパルスとされ、他方はLowとされる。
【0011】
PFD201では、FREFとFDIVの位相差を、UP又はDNのパルス幅、つまり相対値で検出するだけであるため、遅れ・進みについては、フリップフロップ(FF)204を用いて判定しFF204の出力から符号情報sign(1ビット)を得ている。特に制限されないが、フリップフロップ204は、FREFをデータ端子Dに入力し、FDIVをクロック端子に入力し、FDIVの立ち上がりエッジによってFREFをサンプルする。FDIVの立ち上がり遷移時にFREFがHigh(1)のとき、出力QはHigh(1)となり、FDIVの立ち上がり遷移時にFREFがLow(0)のとき、出力QはLow(0)となる。TDC203から出力される位相差の絶対値(Lビット信号)に、signビット(1ビット)を合わせた(L+1)ビット信号が、デジタル・フィルタ(Digital LF)22に入力される。
【0012】
図7において、TDC203は、NOR回路202から出力されるLowパルスのパルス幅を、FREFとFCKVの位相差として測定する。例えばPFD201からUPのHighパルスが出力されるとき、NOR回路202からLowパルス(パルス幅はUPのHighパルスのパルス幅と等しく、FREFとFCKVの位相差に対応する)が出力される。NOR回路202からのLowパルスは、例えばTDC203のB端子に入力され、Lowパルスの反転信号(Highパルス)が、TDC203のA端子に入力される。TDC203では、A端子に入力されたHighパルス(B端子の反転信号)の立ち上がりエッジと、B端子のLowパルスの立ち上がりエッジの位相差を検出する。TDC203のA端子に入力されたHighパルス(B端子の反転信号)の立ち上がりエッジと、TDC203のB端子のLowパルスの立ち上がりエッジの位相差は、UPのHighパルスのパルス幅に等しく、したがって、FREFとFCKVの位相差の絶対値が検出される。
【0013】
TDCの基本構成として例えば特許文献2の図5等に記載が参照される。図8に、TDCの典型的な基本構成の一例を示す。図8において、TDCは、端子AとBにそれぞれ入力される信号の立ち上がりエッジの位相差を測定する。端子Aに入力された信号は、複数段の単位遅延回路(バッファ)211からなる遅延回路列で遅延される。遅延回路列の各段の信号を、各段に対応して設けられたFF212のデータ端子に入力し、端子Bに入力される信号を複数のFF212のクロック端子に共通に入力する。各FF212では、データ端子の信号をクロック端子に共通に入力される信号の立ち上がりエッジでサンプルする。各FF212の出力と隣(後段)のFF212の出力をインバータ214で反転した信号を入力するAND回路213を備えている。AND回路213はFF212の出力が“1”、隣(後段)のFF212の出力が“0”、したがってインバータ214の出力が“1”のとき、“1”を出力し、それ以外は“0”を出力する検出回路として機能する。複数のAND回路213の出力をパラレルビットにバス化し、バイナリ化デコーダ215でデコードする。バイナリ化デコーダ215の出力OUTには、端子AとBにそれぞれ入力される信号の立ち上がりエッジの位相差に応じたバッファ211の段数がデジタルデータとして出力される。
【0014】
図8の動作の一例として、例えば端子Bに入力される信号が、端子Aに入力された信号の立ち上がりエッジから、バッファ1段分相等の遅延時間、遅延して立ち上がる場合、端子Bから各FF212のクロック端子に共通入力される信号の立ち上がり時点で、端子Aに入力された信号(Highレベル)はすでにバッファ1段分伝播しており、1段目のバッファ211の出力は“1”であるが、2段目以降のバッファ211の出力は全て“0”である。したがって、1段目のFF212に出力と2段目のFF212の出力の反転を受けるAND回路213の出力は“1”となり、残りの全てのAND回路213の出力は“0”となり、端子AとBの信号の位相差が、バッファ1段分の遅延に相当していることがわかる。なお、図8のTDCでは、端子Aに入力される信号の立ち上がりエッジよりも端子Bに入力される信号の立ち上がりエッジの方が時間的に遅れている場合の2つの信号の位相差を検出する。
【0015】
図6、図7に示した構成の場合、リファレンスクロック信号FREFと、VCOの出力クロックFVCOをN分周した信号FCKVを入力とするPFD201の出力UP/DNの幅(FREFとFCKVの位相差)を、TDC203にて測定しデジタル・コード化(Lビット信号)している。この場合、UPやDNの幅は、リファレンスクロック信号FREFの周期程度まで拡大する場合がある。これに応じて、TDC203の位相誤差検出範囲(バッファ段数、FF段数、AND回路の個数、バス幅)も拡大する必要がある。精度を保ったまま位相誤差検出範囲を広げる場合、長時間の測定が可能なTDCが必要となり、大量の遅延素子とFFが必要となり、回路面積が増加し、消費電力も増大する。
【0016】
図6、図7の構成とは別に、図9に示すような構成も提案されている(特許文献1の図4から引用)。図7の回路では、FREFとFCKVの位相差の全てをTDC203にて測定する構成であるのに対して図9の構成は、カウンタ404と遅延ライン401を用いることで同一の機能を実現するものである。
【0017】
図9を参照すると、PFD+TDCは、遅延列(Delay−Line)401、コントロールロジック402、サンプラ403、カウンタ404、加算器405、オフセット制御406を備えている。分周器(DIV)は、プリスケーラ407、プログラムカウンタ408、スワロウカウンタ(パルス・スワロカウンタ)409を備えている。DCOの出力VDCOを入力とする分周器DIVの出力(図9ではVPRE)をクロック入力とするカウンタ404にて、VREFとVDIV間の広範囲な位相差を相対的に粗い精度で測定し、その間(すなわちVREFとVPRE間)の精細な位相差を、遅延列401で高精度に測定する。カウンタ404のクロックとしてDIVのプリスケーラ407の出力VPREを用いる。
【0018】
ADPLLがロックした場合、VPREの出力もロックする。したがって、これをクロックとして、カウンタ404でカウントした位相差と時間との関係が一意的に決まる。サンプラ403により、VREFをVPREでサンプリングして同期化し、カウンタ404のスタート信号とし、VDIVは、カウンタ404のエンド信号とする。これにより、VPREの精度で、VREF・VDIV間の位相差を測定する。VREFとVPREの位相差を遅延列401で測定する。コントロールロジック402は、カウンタ404と遅延列401で測定した位相差を合成する。オフセット回路(加算器405、オフセットコントロール406)は、ADPLLロック時のVREFとVDIVの位相関係を調整する。
【0019】
図9の構成によれば、長時間の測定が必要なくなり、TDCが大規模化することを防ぐことができる。
【0020】
また、図9の構成によれば、常にVPRE1クロック以内をTDCの測定精度で補間する動作となるので精度を保つこともできる。
【0021】
なお、特許文献2の図1には、TDCと、DCOと、リファレンスクロックをDCOの出力でサンプルするフリップフロップと、2つのアキュムレータと、DCO周期正規化回路と、位相誤差検出器と、デジタル・フィルタと、DCOゲイン正規化回路を有する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特開2009−268047号公報
【特許文献2】特開2002−76886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
以下に関連技術の分析を与える。
【0024】
図6の構成においては、検出精度を保ったまま位相検出幅を幅広くするためには、長時間対応(フリップフロップ+遅延回路が大量)のTDCが必要となり、回路面積の点、及び消費電力の点で問題となる。
【0025】
位相変調が必要となるような特別な環境(RFアプリケーション)ではなく、LSI内部配置されるデジタル回路制御クロック生成器としてのADPLLへの適用を考えれば、位相検出精度(TDCによる精細な位相差の検出)を保ったままの状態で広い位相検出範囲に対応する必要はない。つまり、ロック状態にあるFREFとFDIVの位相が近い状態でのみ、精細(fine)な位相差の結果が必要であり、位相差が離れたところでは、精細な位相差が要求されることは少ない。
【0026】
位相差の小さい場合にのみ、TDCの分解能が必要である場合、図6の構成のままでも優位性を向上することは可能である。例えば、位相差が離れた箇所のTDCの単位遅延素子(バッファ)の単位遅延時間(バッファ1段あたりの遅延時間)を増大させることで、TDCの全体の遅延素子の段数を減らす効果がある。
【0027】
例えば図10に示すように、AとBの位相差が大の位置に対応する単位遅延素子(後段側に位置すrバッファ)の単位遅延時間を2αとしている。ただし、αはAとBの位相差が小さい場合に対応する単位遅延素子の遅延時間である。すなわち、αはTDCの入力端子A、Bに近い方に配置される単位遅延素子の遅延時間である。
【0028】
しかしながら、図10の構成は、TDCの面積削減に大きく寄与するものとはいえない。
【0029】
位相差の検出精度を保ったまま、位相検出範囲を広げる手法について、図9の構成がある。しかしながら、図9の構成では、別途、位相誤差を測定するカウンタと、その制御ブロックが別途必要となり、回路構成が複雑化する。また、VREFとVDIVの位相差が近い場合などは、カウンタ404のカウント動作の開始(Start)、停止(End)の制御を高速に行う必要がある。このため、別途回路の工夫が必要となる。
【0030】
したがって、本発明の目的は、精度、処理スピード等必要な特性を満たしつつ、回路構成を簡素化し、省面積化を可能とするデジタルPLLを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0031】
前記課題を解決する本発明が概略以下の構成とされる。
【0032】
本発明によれば、リファレンスクロック信号と分周クロック信号を入力し前記リファレンスクロック信号と前記分周クロック信号の位相差を検出する時間デジタル変換器と、
位相誤差演算器と、
前記位相誤差演算器から出力される位相誤差を平滑化するデジタルフィルタと、
前記デジタルフィルタからの出力信号により発振周波数が可変され該周波数の出力クロック信号を出力するデジタル制御発振器と、
前記デジタル制御発振器からの前記出力クロック信号を予め定められた正整数Nで分周した前記分周クロック信号を出力するN分周器と、
前記N分周器内のカウンタ値を前記リファレンスクロック信号に応答して捕獲するレジスタと、
を備え、
前記時間デジタル変換器の位相差の測定範囲が、前記出力クロック信号の1クロックサイクル以内とされ、
前記分周クロック信号と前記リファレンスクロック信号の位相差が、絶対値で、前記出力クロック信号の1クロックサイクル以上では、前記時間デジタル変換器の出力は0とされ、前記位相誤差演算器では、前記レジスタに捕獲されたカウンタ値を用いて、前記分周クロック信号と前記リファレンスクロック信号の位相誤差を演算し、
前記分周クロック信号と前記リファレンスクロック信号の位相差が、絶対値で、前記出力クロック信号の1クロックサイクル未満の場合、前記レジスタに捕獲されたカウンタ値は0とされ、前記位相誤差演算器では、前記時間デジタル変換器の出力を用いて、前記位相誤差を演算するデジタル位相同期ループ回路が提供される。
【0033】
本発明においては、前記分周クロック信号と前記リファレンスクロック信号のうちの一方の信号で他方の信号をサンプルした結果を、前記分周クロック信号と前記リファレンスクロック信号の進み/遅れを表す符号情報として出力するフリップフロップを備え、
前記時間デジタル変換器は、前記分周クロック信号と前記リファレンスクロック信号の位相差が、前記出力クロック信号の1クロックサイクル未満の場合、前記出力クロック信号の1クロックサイクルに対する割合に換算した小数値を出力し、
前記位相誤差演算器は、前記分周クロック信号と前記リファレンスクロック信号の位相差が、前記出力クロック信号の1クロックサイクル以上であれば、前記レジスタでサンプルしたカウンタ値と前記符号情報に基づき、符号付き整数値の位相誤差を出力し、
前記位相差が、前記出力クロック信号の1クロックサイクル未満であれば、前記時間デジタル変換器から出力される小数値と前記符号情報に基づき、符号付き小数値の位相誤差を出力する。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、精度、処理スピード等必要な特性を満たしつつ、回路構成を簡素化し、省面積化を可能としている。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態の構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態の動作を説明するタイミング図である。
【図3】本発明の一実施形態の動作を説明するタイミング図である。
【図4】本発明の一実施形態を説明する図である。
【図5】アナログPLLの構成例を示す図である。
【図6】ADPLLの構成例を示す図である。
【図7】図6のP2Dの構成例を示す図である。
【図8】TDCの基本構成を示す図である。
【図9】特許文献1の構成を示す図である。
【図10】TDCの構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の一実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態のADPLL回路の構成を示す図である。図1を参照すると、本実施形態のADPLL回路は、出力クロック信号FOの1クロックサイクル(1周期)以内の位相差測定範囲で、リファレンスクロック信号FREFと分周クロック信号FDの位相差を検出するTDC101と、FRとFDの位相の進み遅れを検出し符号情報(sign)を出力するフリップフロップ103と、位相誤差演算器102と、位相誤差演算器102の出力を受け平滑化するデジタル・フィルタ104と、デジタル・フィルタ104からの信号を受け発振周波数を可変制御するデジタル制御発振器(DCO)105と、DCO105の出力クロック信号FOをN分周するN分周器106と、N分周器106の内部変数(カウンタ値)をリファレンスクロック信号FRによって捕獲(キャプチャ)するレジスタ107と、を備えている。分周器106から出力される分周クロック信号FDは、TDC101に入力され、リファレンスクロック信号FRとの位相差が0となるように制御が行われ、ロック時に、安定した出力クロック信号FOを得る。
【0037】
FF103は、リファレンスクロック信号FRをデータ端子に入力し、分周クロック信号FDをクロック端子に入力し、分周クロック信号FDの立ち上がりエッジでリファレンスクロック信号FRを捕獲(キャプチャ)し、捕獲結果を出力端子Qから符号情報(sign)として出力する。分周クロック信号FDの立ち上がり時点でリファレンスクロック信号FRがすでにHigh(1)に立ち上がっているときは、FF103はその出力端子QからHigh(1)を出力する(FDの方がFRよりも位相が遅れている)。分周クロック信号FDの立ち上がり時点で、リファレンスクロック信号FRがHighに立ち上がっていず、Low(0)であるときは、FF103はその出力端子QからLow(0)を出力する(FDの方がFRよりも位相が進んでいる)。なお、リファレンスクロック信号FRのデューティが例えば50%の場合、FDとFRの位相差が±180度以上離れている場合には、FF103では、FDとFRの進み・遅れを正しく検出できない。分周クロック信号FDとリファレンスクロック信号FRは、例えばデューティが50%よりもさらに小さい場合、FF103によるFDとFRの位相差の検出可能範囲は狭まる。なお、FF103のデータ端子に分周クロック信号FD、クロック端子にリファレンスクロック信号FRを入力する構成としてもよい。ただし、この場合、FDのデューティも例えば50%とする。
【0038】
位相誤差演算器(位相差検出器)102は、TDC101の出力(小数:絶対値)と、FF103から出力される符号情報(sign)と、レジスタ107からのカウンタ値(整数:絶対値)を入力し、リファレンスクロック信号FRと分周クロック信号FDの位相誤差φEを演算してデジタル・フィルタ104に出力する。
【0039】
本実施形態のADPLL回路は、例えばLSIに搭載されるクロックジェネレータとして用いて好適とされ、該ADPLL回路と同一のLSIチップ上に搭載されるデジタルブロックに出力クロック信号を供給する。
【0040】
本実施形態においては、リファレンスクロック信号FRと分周クロック信号FDの位相が近い状態でのみ(したがって、ほぼロック状態にある場合)、精細(fine)な位相差の結果が必要となる適用を想定し、前述した図9の構成を、より簡素化した回路構成とすることで、回路面積、及び、処理スピード等に関してデメリットのないADPLLを実現している。
【0041】
本実施形態においては、2つの入力の位相差を相対的に比較し該位相差をデジタル化する方式(「相対比較方式」という)を採用し、関連技術等において、分周回路としてのみ機能していたフィードバック分周回路(1/N)を整数部分の位相誤差測定回路として用いる。
【0042】
本実施形態によれば、関連技術の相対比較方式と比較して、位相比較結果UP/DNを生成するPFD回路は、必要なくなり、リファレンスクロック信号FRと分周クロック信号FDの位相差を検出するTDCも、小数部(出力クロックFOの1クロックサイクル以下の時間長)のみを検出できればよく、追加のカウンタ(図9の404)も必要とされない。
【0043】
かかる構成としたことにより、本実施形態によれば、特許文献2の図1の構成における2つのアキュムレータ(特許文献2の102、118)やDCO周期正規化処理(NORM)等の煩雑な処理が不必要となり、逓倍値をカウントするカウンタが必要とされるだけであり、このカウンタを、図1のN分周器106のカウンタと共用したことにより、特許文献2の図1等の構成と較べ、特段に回路構成の簡素化を実現している。すなわち、本実施形態においては、相対比較で問題となる、整数部の位相誤差検出を、N分周器106の内部変数(カウンタ値)から得ている。
【0044】
本実施形態では、図6に示した相対比較ADPLLに対して、レジスタ(N分周器106のカウンタ値のビット数分の個数のフリップフロップ)107が追加されており、図7のPFD201は除去されている。なお、図1のFR、FDは、図6のリファレンスクロック信号FREF、分周クロック信号FCKVに対応する。
【0045】
PLLとして、まず必要な情報は、リファレンスクロック信号FRと分周クロック信号FDのエッジ(例えば立ち上がりエッジ)間に、どの程度位相差があるかということである。図6、図7、図9、図10等の関連技術においては、この位相誤差を検出するために、TDCもしくはカウンタ等を用いている。
【0046】
本願発明者等は、N分周器106内にすでに分周クロック信号FDの位相情報をもつカウンタ値が存在することに着目し、比較すべきもう一方の信号であるリファレンスクロック信号FRにて、N分周器106の内部変数(外部に出力されない回路内部の変数値)であるカウンタ値を捕獲(キャプチャ)することで、上記関連技術と同様の位相差が得られることを知見した。つまり、以下のような動作と処理を行なうことで、位相差情報が得られる。
【0047】
通常、N分周器106は逓倍値(=分周値)Nが設定され、DCO105からの出力クロックFOを逓倍値分カウントアップしていき、カウント値=(逓倍値−1)となった際に、次に出力クロック信号FOの立ち上がりエッジに同期して分周クロック信号FDのクロックパルス(Highパルス)の立ち上がりエッジ(リーディングエッジ)を生成出力する。
【0048】
逓倍値Nが8の場合(DCO105の出力クロック信号FOの周波数が分周クロック信号FDの周波数の8逓倍)、N分周器106におけるカウンタ動作について、図2及び図3のタイミング図を参照して説明する。なお、特に制限されないが、DCO105の出力クロック信号FO、リファレンスクロック信号FRはデューティ=50%、分周クロック信号FDのデューティは12.5%であるが、この値に限定されるものでない。分周クロック信号FDのデューティを50%としてもよい。
【0049】
8分周回路106は逓倍値=8が設定され、DCO105からの出力クロック信号FOの立ち上がりエッジに応答して0からカウントアップしていき、カウント値=(逓倍値−1)=7となると、次の出力クロック信号FOの立ち上がりエッジに応答してカウント値は0に戻り、0から7の間を昇順に循回的にカウント動作する。なお、N分周器106は、(N−1)から0にカウントダウン動作するダウンカウンタであってもよい。
【0050】
図2において、出力クロック信号FOの各Highパルスの下の数字0、1、2・・7、0、1・・・は、N分周器106のカウンタ値である。図2に示すように、出力クロック信号FOをカウントするN分周器106でのカウンタ値がN−1=7となり、次の出力クロック信号FOの立ち上がりエッジに応答してカウンタ値が「7」から「0」に変化する時に、分周クロック信号FDのクロックパルスの立ち上がりエッジ(パルスの先端のエッジ(リーディングエッジ))が生成される。N分周器106内部のカウンタにおいてカウント値=0が、分周クロック信号FDの位相データとなる。特に制限されないが、出力クロック信号FOを8分周した分周クロック信号FDのデューティは12.5%とする。この場合、出力クロック信号FOをカウントするN分周器106でのカウンタ値が「1」となる時に、分周クロック信号FDのHighパルスの立ち下りエッジ(パルスの後端のエッジ(トレイリングエッジ))が生成される。N分周器106において、カウンタ値の「7」から「0」への変化に応答して出力がHigh(1)にセットされ、カウンタ値の「0」から「7」への変化に応答して出力がLow(0)にリセットされるSRフリップフロップ等を備えることで、図2の分周クロック信号FDが生成される。なお、分周クロック信号FDのデューティを50%とする場合、SRフリップフロップは、カウンタ値の「7」から「0」への変化に応答して出力がHigh(1)にセットされ、カウンタ値の「3」から「4」への変化に応答して出力がLow(0)にリセットされる。
【0051】
図3において、出力クロック信号FOの立ち上がりエッジの下の数字0、1、2・・7、0、1・・・はN分周器106のカウンタ値である。図3に示すように、N分周器106のカウンタ値を、リファレンスクロック信号FRで捕獲することで、リファレンスクロック信号FRと分周クロック信号FDの位相差の整数部(FO何クロック分に相等するか換算した整数値)の位相誤差データを得ることができる。
【0052】
図3において、リファレンスクロック信号FRの立ち上がりエッジが、1の矢印が示すように、カウンタ値「1」と「2」の間にあるとき、分周クロック信号FDは、リファレンスクロック信号FRよりも、出力クロック信号FOの1クロックサイクル+α(ただし、αは小数部:FOの1クロックサイクル未満)だけ位相が進んでいる。このとき、カウンタ値0での分周クロック信号FDの立ち上がり時に、リファレンスクロック信号FRはLowであるため、FF103から出力される符号情報(sign)はLow(0)とされる。分周クロック信号FDがリファレンスクロック信号FRよりも出力クロック信号FOのクロックサイクルの整数倍+α位相が進んでいる場合、位相誤差演算器102では、レジスタ107でキャプチャされたカウンタ値の整数部と、符号情報(sign)とに基づき、位相誤差を算出する。
【0053】
また、図3において、リファレンスクロック信号FRの立ち上がりエッジが2の矢印が示すように、カウンタ値「5」と「6」の間にあれば、分周クロック信号FDは、リファレンスクロック信号FRよりも、出力クロックFOに関して、2クロックサイクル+α(ただし、αは小数部)だけ、位相が遅れていることになる。カウンタ値0での分周クロック信号FDの立ち上がり時、リファレンスクロック信号FRは既にHighに立ち上がっているため(FRは、2の矢印に対応するカウンタ値「5」と「6」の間でHighに立ち上がり、カウンタ値「1」と「2」の間でLowに立ち下がる)、FF103から出力される符号情報(sign)はHigh(0)とされる。分周クロック信号FDがリファレンスクロック信号FRよりも出力クロック信号FOのクロックサイクルの整数倍+α(小数)だけ位相が遅れている場合、位相誤差演算器102では、レジスタ107でキャプチャされたカウンタ値の整数部と、符号情報(sign)とに基づき、位相誤差を算出する。図3において、リファレンスクロック信号FRの立ち上がりエッジ(2の矢印)により、レジスタ107に捕獲されるN分周器106のカウンタ値は「5」、FF103から出力される符号情報(sign)=1に基づき、以下のように算出する(後に図4を参照して詳説する)。
【0054】
位相誤差=5+(−(8−1))=5−7=−2
【0055】
本実施形態において、リファレンスクロック信号FRと分周クロック信号FDの位相差が、出力クロック信号FOの1クロックサイクル以内(小数)であれば、その位相差はTDC101で検出される。TDC101は、端子A、Bの信号の立ち上がりエッジの位相差を検出するための端子遅延回路の段数(例えば図8のバッファ211の段数)として、出力クロックFOの1クロックサイクル分の長さがあればよい。
【0056】
リファレンスクロック信号FRと分周クロック信号FDの位相差が、出力クロック信号FOの1クロックサイクル以上ある場合(位相差が1以上の場合)、測定レンジオーバーとなり、TDC101は、その位相差を測定できず0を出力する。例えば図8のTDCにおいて、端子Bに入力される信号が、端子Aに入力された信号の立ち上がりエッジから、TDCのバッファ211の全段数の遅延時間の和(FOの1クロックサイクルの時間に相等)よりもさらに遅延して立ち上がる場合、端子Aから入力された信号は、端子Bから各FF212のクロック端子に共通入力される信号の立ち上がり時点で全てのバッファ212を伝播し終わっており、全段のバッファ211の出力は全て“1”である。このため、端子Bの信号の立ち上がりに応答して全てのFF212は“1”をサンプルする。前段のFF212の出力と後段のFF212の出力の反転を受ける各AND回路213の出力は全て“0”となり、OUTにはデジタル値0が出力される。
【0057】
一方、リファレンスクロック信号FRと分周クロック信号FDの位相差が、出力クロック信号FOの1クロックサイクル以内の場合、該位相差に対応したバッファ211(単位遅延回路)の個数をバッファ211の総数で割った小数(絶対値)が位相差として出力される。図8のTDCにおけるバッファ211の総数をM、バッファ211の遅延時間をtd、DCO105の出力クロック信号FOの1周期をTO(制御信号により可変する)とすると、M×td≒TOの関係が成り立つ。リファレンスクロック信号FRと分周クロック信号FDの位相差がバッファ211のn段分に対応する場合、TDCは、n/Mを出力する。なお、TDC101は、FRとFDの位相差(FOの1クロックサイクル以内)の正負について、該位相差の絶対値を出力する。
【0058】
なお、図8の構成では、端子Aに入力される信号の立ち上がりのタイミングが、端子Bに入力される信号の立ち上がりのタイミングよりも時間的に先行している場合、すなわち、端子Aの信号が端子Bの信号よりも位相が進んでいる場合に、端子AとBに入力される信号の立ち上がりエッジの位相差が検出可能であるが、端子Aに入力される信号の立ち上がりのタイミングが、端子Bに入力される信号の立ち上がりのタイミングよりも時間的に遅れている場合、すなわち端子Aの信号が端子Bの信号よりも位相が遅れている場合には、端子AとBに入力される信号の立ち上がりエッジの位相差は検出できない。図1のTDC101において、端子Aに入力されるリファレンスクロック信号FRの立ち上がりエッジが、端子Bに入力される分周クロック信号FDの立ち上がりエッジよりも時間的に遅れている場合の位相差を検出するには、TDC101において、図8の構成に加えて、端子Bに入力される信号を遅延させる複数段のバッファと、複数段のバッファのそれぞれの出力を、端子Aに入力される信号の立ち上がりエッジで共通にサンプルする複数のフリップフロップ(FF)と、複数のFFについて両隣のFFの出力の不一致を検出するための複数のAND回路(各AND回路はFFの出力と隣のFFの出力をインバータで反転した信号を入力)を備えた構成をさらに備え、複数のAND回路を並列化した値をバイナリ化デコーダ215でデコードする。かかる構成により、TDC101の端子AとBに入力されるリファレンスクロック信号FRの立ち上がりエッジと分周クロック信号FDの立ち上がりエッジの位相差に関して、FDがFRよりも位相が遅れている場合、及び、FDがFRよりも位相差が進んでいる場合のそれぞれについて、位相差を絶対値で出力することができる。
【0059】
N分周器106のカウンタ値をレジスタ107に捕獲するだけでは、ある整数値を捕獲するだけとなるので、捕獲したカウンタ値と、FF103から出力される遅れ/進みのsign信号(1、0)を用いて、位相誤差演算器102にて、図4に示すような特性として処理を行う。
【0060】
図4のカウンタ値、sign値、処理される位相誤差において、横軸は位相差(+、−)であり、縦軸は、それぞれ、カウンタ値、sign値、位相誤差(整数部)である。
【0061】
FF103は、分周クロック信号FDの立ち上がり時点でリファレンスクロック信号FRがHigh(1)、Low(0)のとき、FDとFRの位相差−、+に対応して、sign=High(1)、Low(0)をそれぞれ出力する。
【0062】
位相誤差演算器102では、FF103から出力される符号情報(sign)のLow(=0)、High(=1)に対して、図4に示すように、sign値0、−(N−1)を割当てる。
【0063】
位相誤差演算器102では、レジスタ107で捕獲されたN分周器106のカウンタ値に、FDとFRの位相差の正負に応じて(すなわち、FF103から出力される符号情報(sign)の値0、1に応じて)、sign値0、−(N−1)を加算する。
【0064】
カウンタ値+sign値の演算の結果、図4に示すように、位相誤差演算器102で「処理される位相誤差」は、FDとFRの位相差が負の場合、−(N−1)から0までの値(整数)、FDとFRの位相差が非負(正又は0)の場合、0から+(N−1)までの値(整数)となる。
【0065】
位相誤差演算器102では、TDC101で検出された分周クロック信号FDとリファレンスクロック信号FRの位相差の小数部に対して、FF103から出力される符号情報(sign)のLow(=0)、High(=1)に応じて正、負の符号を付加し、位相誤差として出力する。なお、TDC101から0以外の小数部が出力される場合、レジスタ107で捕獲されたN分周器106のカウンタ値は「0」又は「7」、すなわち、リファレンスクロック信号FRの立ち上がりエッジが、図3の3の矢印の位置(カウンタ値0)から前後1クロックサイクル以内にある場合に対応している。例えばリファレンスクロック信号FRで捕獲したN分周器106のカウンタ値が「7」のとき、分周クロック信号FDは、リファレンスクロック信号FRよりも位相が遅れており、FF103から出力される符号情報(sign)はHighであり、位相誤差演算器102では、図4を参照して説明したように、カウンタ値+sign値(=−(8−1))を演算する。よって、処理される位相誤差の整数部は、7+(−7)=0となる。
【0066】
またリファレンスクロック信号FRで捕獲したN分周器106のカウンタの値が「0」のとき、分周クロック信号FDはリファレンスクロック信号FRよりも位相が進んでいるか一致し、FF103から出力される符号情報(sign)はLowである。この場合、位相誤差演算器102では、図4を参照して説明したように、カウンタ値+sign値(=0)を演算し、処理される位相誤差の整数部は0+0=0となる。そして、位相誤差演算器102では、TDC101で検出された分周クロック信号FDとリファレンスクロック信号FRの位相差の小数部(絶対値)と、FF103から出力される符号情報(sign)に基づき、符号付きの小数を、位相誤差として、デジタル・フィルタ104に出力する。
【0067】
位相誤差演算器102において、
リファレンスクロック信号FRによってレジスタ107でサンプリングしたN分周器106のカウンタ値(整数部(絶対値))をCNT[k]とし、
FF103において分周クロック信号FDでサンプルされた符号情報signをsign[k](=1又は0)とし、
TDC101からの出力(小数(絶対値)をε[k]とすると、出力する位相誤差データφE[k]は、次式(1)、(2)で与えられる。ただし、kはサンプリングクロック(FR又はFD)にサンプリングの番号を表す。
【0068】
符号情報sign[k]が0のとき、
φE[k]=CNT値[k]+ε[k] ・・・(1)
だだし、
0<ε[k]<1のとき、CNT値[k]は0であり、
ε[k]=0のとき、CNT値[k]は非負整数(正の整数又は0)である。
【0069】
符号情報sign[k]が1のとき、
φE[k]=CNT値[k]−(N−1)−ε[k] ・・・(2)
だだし、
0<ε[k]<1のとき、CNT値[k]−(N−1)は0であり、
ε[k]=0のとき、CNT値[k]−(N−1)は負の整数又は0である。
【0070】
本実施形態においては、位相誤差の特性は、アナログPLLのPFDそのものの特性となるため、動作原理的に考えても、N分周器のカウンタ値を用いる点に問題はない。
【0071】
本実施形態においては、図6のP2Dに必要とされていたPFDは不要とされ、TDCはリファレンスクロック信号FRと分周クロック信号FDの位相が一致する近傍の位相差が検出できればよいことから、回路構成は大規模とはならない。加えて、本実施形態においては、N分周器の内部変数であるカウンタ値を用いることで、カウンタも追加ブロックとして必要となることはない。
【0072】
さらに、本実施形態においては、N分周器のカウンタを使うことで、つねに動作しているカウンタから値を拾い上げるだけの動作となるため、図9に示した、カウンタ付きのP2Dで問題となるカウンタのSTART/ENDの高速制御等の問題を解決することができる。このため、本実施形態によれば、正確性(精度)の向上、及び、処理スピードの高速化を可能としている。上記の通り、より簡素な回路構成にて面積削減に貢献しつつ、関連技術と同等のADPLL特性と性能が得られる。
【0073】
なお、上記の特許文献1、2の各開示を、本書に引用をもって繰り込むものとする。本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態の変更・調整が可能である。また、本発明の請求の範囲の枠内において種々の開示要素の多様な組み合わせないし選択が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0074】
11 PFD+CP
12 LF(ループフィルタ)
13 VCO
14 N分周器
21 P2D
22 デジタル・フィルタ(ループフィルタ)
23 DCO
24 N分周器
101 TDC
102 位相誤差演算器
103 FF
104 デジタル・フィルタ
105 DCO
106 N分周器
107 レジスタ(フリップフロップ)
201 PFD
202 NOR
203 TDC
204 FF
211 バッファ(単位遅延回路)
212 FF
213 AND
213 インバータ
215 バイナリ化デコーダ
401 Delay Line
402 Control Logic
403 Sampler
405 加算器
404 Counter
406 Offset Control
407 Prescaler
408 Program Counter
409 Swallow Counter

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リファレンスクロック信号と分周クロック信号を入力し前記リファレンスクロック信号と前記分周クロック信号の位相差を検出する時間デジタル変換器と、
位相誤差演算器と、
前記位相誤差演算器から出力される位相誤差を平滑化するデジタルフィルタと、
前記デジタルフィルタからの出力信号により発振周波数が可変され該周波数の出力クロック信号を出力するデジタル制御発振器と、
前記デジタル制御発振器からの前記出力クロック信号を予め定められた正整数Nで分周した前記分周クロック信号を出力するN分周器と、
前記N分周器内のカウンタ値を前記リファレンスクロック信号に応答して捕獲するレジスタと、
を備え、
前記時間デジタル変換器の位相差の測定範囲が、前記出力クロック信号の1クロックサイクル以内とされ、
前記分周クロック信号と前記リファレンスクロック信号の位相差が、絶対値で、前記出力クロック信号の1クロックサイクル以上では、前記時間デジタル変換器の出力は0とされ、前記位相誤差演算器では、前記レジスタに捕獲されたカウンタ値を用いて、前記分周クロック信号と前記リファレンスクロック信号の位相誤差を演算し、
前記分周クロック信号と前記リファレンスクロック信号の位相差が、絶対値で、前記出力クロック信号の1クロックサイクル未満の場合、前記レジスタに捕獲されたカウンタ値は0とされ、前記位相誤差演算器では、前記時間デジタル変換器の出力を用いて、前記位相誤差を演算する、デジタル位相同期ループ回路。
【請求項2】
前記分周クロック信号と前記リファレンスクロック信号のうちの一方の信号で他方の信号をサンプルした結果を、前記分周クロック信号と前記リファレンスクロック信号の進み/遅れを表す符号情報として出力するフリップフロップを備え、
前記時間デジタル変換器は、前記分周クロック信号と前記リファレンスクロック信号の位相差が、前記出力クロック信号の1クロックサイクル未満の場合、前記出力クロック信号の1クロックサイクルに対する割合に換算した小数値を出力し、
前記位相誤差演算器は、前記分周クロック信号と前記リファレンスクロック信号の位相差が、前記出力クロック信号の1クロックサイクル以上であれば、前記レジスタでサンプルしたカウンタ値と前記符号情報に基づき、符号付き整数値の位相誤差を出力し、
前記位相差が、前記出力クロック信号の1クロックサイクル未満であれば、前記時間デジタル変換器から出力される小数値と前記符号情報に基づき、符号付き小数値の位相誤差を出力する、請求項1記載のデジタル位相同期ループ回路。
【請求項3】
前記N分周器内のカウンタ値は、前記出力クロック信号の入力に応答して0からN−1の値を1つずつ、昇順又は降順に、循回し、
前記位相誤差演算器は、前記分周クロック信号と前記リファレンスクロック信号の位相差が、前記出力クロック信号の1クロックサイクル以上であり、且つ、正値の場合、前記カウンタ値を位相誤差とし、
前記分周クロック信号と前記リファレンスクロック信号の位相差が、前記出力クロック信号の1クロックサイクル以上であり、且つ、負値の場合、前記カウンタ値から(N−1)を減算した値を位相誤差とする、請求項1又は2記載のデジタル位相同期ループ回路。
【請求項4】
前記N分周器は、前記カウンタ値が0をとるたびに、前記分周クロック信号のクロックパルスのリーディングエッジを生成し、
前記リファレンスクロック信号に応答して捕獲した前記カウンタ値が1乃至N−1の間の整数値の場合、前記分周クロック信号と前記リファレンスクロック信号の位相差が前記出力クロック信号の1クロックサイクル以上として、前記位相誤差演算器より、前記カウンタ値と前記符号情報から符号付き整数値の位相誤差が生成され、
前記リファレンスクロック信号に応答して捕獲した前記カウンタ値が0の場合、前記分周クロック信号と前記リファレンスクロック信号の位相差が前記出力クロック信号の1クロックサイクル未満として、前記位相誤差演算器より、前記時間デジタル変換器から出力される小数値と前記符号情報から符号付き小数値の位相誤差が出力される、請求項3記載のデジタル位相同期ループ回路。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の前記デジタル位相同期ループ回路を備えた半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−49660(P2012−49660A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187930(P2010−187930)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】