説明

位相変調装置

【課題】本発明は、各構成部品を等長化して組み立てる必要がなく、部品の温度特性及び経時変化が生じてもスキュー調整が容易である位相変調装置を提供することを目的とする。
【解決手段】位相変調装置301は、連続光を出力する光源10と、2つの位相変調器12及び強度変調器15を有し、光源10からの連続光を位相変調器12がそれぞれに入力されるデータ信号(DATA1、2)で位相変調して2つの位相変調光信号を生成し、移相器13が位相変調光信号の一方の位相をπ/2ずらして位相変調光信号の他方と合波した合波信号を強度変調器15が入力されたクロック信号CLKで強度変調しRZ化して出力するRZ位相変調回路101と、RZ位相変調回路101の出力が最大となるように、RZ位相変調回路101の位相変調器12が生成する位相変調光信号の位相をそれぞれ調整する位相制御回路111と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル信号列で光の位相を変調する位相変調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル信号で光を変調する方式として4値位相シフトキーイング(QPSK:Quadrature Phase Shift Keying)や差動4値位相シフトキーイング(DQPSK:Differential QPSK)が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
長距離伝送システムにおいては、符号間干渉の抑圧や高感度化を目的として上記QPSKもしくはDQPSK変調された光信号に、さらにRZ(Return to Zero)強度変調を行う場合がある。図1は、RZ−QPSK変調方式を採用する位相変調装置300を説明する図である。RZ−QPSK変調は、以下の手順で実施される。
(1)光源10の連続光LDを1:2カップラ11で分岐する。
(2)位相変調器(12−1、12−2)は、デジタル入力信号(DATA1、DATA2)に基づき、1:2カップラ11からの連続光(LD1、LD2)の光位相が0又はπの2値の位相変調光信号(LN1、LN2)に変換する。
(3)2:1カップラ14は、位相器13で互いにπ/2位相ずれた状態となった2つの位相変調光信号(LN1’、LN2)を合波し、4値の位相変調信号QPSKを出力する。
(4)強度変調器15は、位相変調信号QPSKを、上記デジタル入力信号と同期したクロック信号CLKで強度変調してRZ化した光信号RZ−QPSKを出力する。
【0004】
上記の手順を、図2と3でさらに詳しく述べる。図2は、位相変調器1と2によって生成された2値位相変調信号から4値位相変調光信号が生成される過程を説明する図である。ここでは位相変調器として強度変調器を用いている。すなわち、デジタル入力信号の振幅を、強度変調器の半波長電圧の2倍に設定し、かつ該信号の‘0’/‘1’レベルを強度変調器の透過最大点に設定することで、デジタルの‘0’/‘1’ビットがそれぞれ相対光位相0/πをもつ光のビットに変換される。こうして2値位相変調光信号LN1とLN2が生成される。この構成では、光位相が0からπもしくはこの逆に変化する位相遷移点では、光出力が一旦0となる。LN1はさらにπ/2移相器によって光位相がπ/2だけシフトされたLN1’となる。このLN1’とLN2を、各々のビットが重なるタイミングで合波することで、光位相がπ/4、3π/4、5π/4、7π/4の4値をもつQPSK位相変調光が生成される。
【0005】
図3は、位相変調装置300内の各信号のアイダイアグラムである。図3(A)は、光源10から出力される連続光LDである。連続光LDの光強度に変化はない。図3(B)は、位相変調器12−1(12−2)が出力する2値位相変調光信号LN1(LN2)である。位相変調光信号LN1は、光位相が確定した状態では一定の光強度を保つが、前述の通り位相遷移点では一旦消光するため、アイダイアグラムにはノッチNが生じる。図3(C)は、2:1カップラ14が出力する4値位相変調光信号QPSKである。前述の通り、QPSKは、2つの位相変調光信号(LN1’、LN2)がそれぞれのビットが重なるタイミングで合波されることで4つの位相状態を取る。また、位相遷移の発生するタイミングも重なるので、位相遷移がLN1’、LN2で同時に発生するか、どちらか一方で発生するかでノッチNの深さが2通りに決まる。図3(D)は、強度変調器15が出力するRZ光信号RZ−QPSKである。デジタル入力信号と同期したクロック信号CLKで光位相が確定した領域にRZのパルス変調をかけたものである。同図に示すように、最適位相(ノッチとノッチの中間)にCLKのピークが重なるタイミングで変調をかけるのが最適な状態である。RZ化することによって、近接パルスとの符号間干渉が抑圧され、また、平均光強度に対して高いパルス先頭値が得られることから、高感度で非線形耐力に優れた長距離伝送システムが実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−208472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これまでにRZ−QPSKの発生方法について、2つの2値位相変調光をそれぞれのビットが重なるタイミングで合成することで4値位相変調光を生成し、ノッチ間の中心を最適位相としてクロック信号によってRZ変調をかけるという手順で述べた。このことからも自明のとおり、2つのデータ列(LN1’とLN2)とクロックCLKの計3種類の信号のタイミングをそろえるのがRZ−QPSK生成上の課題である。これら信号間のタイミングがそろわなかった場合の影響について以下に述べる。
【0008】
図4は、4値のQPSK位相変調光とCLKとのタイミングのずれ(データ−クロック間スキュー)の影響を示すものである。スキューがない場合、出力波形は、図4(A)のように単一幅の繰り返しパルスとなる。しかし、スキューが生じた場合、ノッチとRZ変調クロックが干渉してパルスが削られる結果、出力波形は図4(B)のように歪んだパルスとなる。こうした歪みは情報の欠落となり伝送特性に著しい劣化をもたらす。
【0009】
図5は、2:1カプラ14に入力される2値位相変調光LN1’とLN2とのデータ間スキューの影響を説明する図である。前述の通り、4値のQPSK位相変調光には、4つの位相状態が確定した位相確定領域R1と位相遷移が起きてノッチが生じている位相遷移領域R2が存在する。スキューがない場合では、2つの信号間での位相遷移のタイミングが揃っているため、アイダイアグラムには、図5(A)のように深さが異なる同一幅のノッチが発生する。しかし、スキューが生じた場合、2つの信号間での位相遷移のタイミングがずれて合波されるため、アイダイアグラムに見られるノッチが分離する。このため、図5(B)に示すように位相確定領域が狭まり、たとえクロック位相を最適タイミングに合わせたとしても、位相遷移領域との干渉が避けられず伝送特性を著しく劣化させてしまう。
【0010】
これら3つの信号間でスキューが生じる要因としては、個々の部品(変調器12やドライバ等)や配線の遅延時間のバラツキ、温度や電源変動に依存する遅延変動、経年変動などが挙げられる。個々の部品の遅延時間のバラツキであれば、製造時に等遅延化の選別や位相シフタなどで個別に調整することで一応の対応は可能である。しかし、温度や電源変動に起因する遅延変動や、経年変動は初期調整だけでは対応できず、常に最適動作点で動作するような補正が必要となる。
【0011】
そこで、本発明は、前記課題を解決するために、各構成部品を等長化して組み立てる必要がなく、部品の温度特性及び経時変化が生じてもスキュー調整が容易である位相変調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係る位相変調装置は、光出力信号の平均強度をモニタし、これが最大となるように電気信号経路に具備された位相シフタの位相シフト量をフィードバック制御する構成とした。
【0013】
具体的には、本発明に係る位相変調装置は、一定の光位相を持つ連続光を出力する光源と、前記光源の出力を分岐して得られる2つの連続光の各々の光位相を、2つの電気データ信号に基づきそれぞれ変調する2つの位相変調器と、一方の前記相変調器の出力の光位相をπ/2シフトさせるπ/2移相器と、前記π/2移相器の出力と他方の前記位相変調器の出力とを合波する合波器と、前記合波器の出力に、前記電気データ信号と同期した電気クロック信号で強度変調する強度変調器と、前記電気データ信号が前記位相変調器まで伝搬する2つの電気経路、及び、前記電気クロック信号が前記強度変調器まで伝搬する電気経路のうちの2つに配置され、前記電気データ信号又は前記電気クロック信号の位相をシフトする位相シフタと、前記位相シフタが未配置である前記電気経路の前記電気データ信号又は電気クロック信号の位相を基準として、前記位相シフタが配置された前記電気経路の前記電気データ信号又は電気クロック信号の位相を、前記強度変調器からの光出力強度が最大となるように、それぞれ制御する位相制御回路と、を備える。
【0014】
前記位相制御回路は、前記位相シフタが前記電気データ信号又は電気クロック信号の位相をシフトする位相シフト量を指示する制御信号に所定周波数のパイロット信号を重畳して前記位相シフト量を前記所定周波数で振動させるパイロット信号重畳を行うパイロット信号供給部と、前記強度変調器の出力を光電気変換した電気信号を前記パイロット信号と同一の周波数で同期検波を行う同期検波部と、前記同期検波部の出力を誤差信号として、該誤差信号がゼロになるように調整した前期位相シフト量の前記制御信号を前記位相シフタへ出力する調整作業を行う調整部と、を有することを特徴とする。
【0015】
ここで、本発明に係る位相変調装置の前記位相制御回路は、前記位相シフタ毎に用意された互いに異なる周波数である2つの前記パイロット信号を用い、前記パイロット信号供給部が、2つの前記パイロット信号をそれぞれ前記制御信号に重畳するように前記パイロット信号重畳を行い、前記同期検波部が、前記パイロット信号毎に同期検波を行い、前記調整部が、前記パイロット信号毎に前記調整作業を行ってもよい。この位相変調装置は、2つのパイロット信号を2つの位相シフタに割り当てており、スキューの合わせ込みを同時に行うことができる。
【0016】
一方、発明に係る位相変調装置の前記位相制御回路は、1つのパイロット信号を用い、前記パイロット信号供給部が行う前記パイロット信号重畳、前記同期検波部が行う前記同期検波、及び前記調整部が行う前記調整作業を、時分割に行ってもよい。この位相変調装置は、2つの位相シフタでのスキューの合わせ込みを1つのパイロット信号で交互に行う。位相制御回路を簡素化できるため、位相変調装置を小型化することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、各構成部品を等長化して組み立てる必要がなく、部品の温度特性及び経時変化が生じてもスキュー調整が容易である位相変調装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】RZ−QPSK変調方式を採用する位相変調装置を説明する図である。
【図2】QPSK信号の生成を説明する図である。
【図3】位相変調装置内の信号のアイダイアグラムを示した図である。(A)は、光源から出力される信号である。(B)は、位相変調器が出力する信号である。(C)は、2:1カップラが出力する信号である。(D)は、強度変調器が出力する信号である。
【図4】データ−クロック間スキューの影響を説明する図である。(A)は、スキューが無い場合の出力波形である。(B)は、スキューが生じた場合の出力波形である。(C)は、データ−クロック間スキューを説明する図である。
【図5】データ間スキューの影響を説明する図である。(A)は、スキューが無い場合のQPSK位相変調光である。(B)は、スキューが生じた場合のQPSK位相変調光である。(C)は、データ間スキューを説明する図である。
【図6】本発明に係る位相変調装置を説明する図である。
【図7】本発明に係る動作原理を説明する図である。(A)は、LN1’−CLK間のスキューによってRZ光信号の平均光強度の変化する様子を説明する図である。(B)は、スキュー0.5UIの場合のRZ光信号をオシロスコープで観察した結果である。(C)は、スキューが0.25UIでのRZ光信号をオシロスコープで観察した結果である。(D)は、スキューがないときのRZ光信号をオシロスコープで観察した結果である。
【図8】本発明に係る動作原理を説明する図である。
【図9】本発明に係る位相変調装置を説明する図である。
【図10】位相変調信号へのパイロット信号の重畳を説明する図である。
【図11】位相シフタの制御方向の決定方法を説明する図である。(A)は、データの位相がクロックの位相より進んでいる状態を説明する図である。(B)は、データの位相とクロックの位相とが一致している状態を説明する図である。(C)は、データの位相がクロックの位相より遅れている状態を説明する図である。
【図12】本発明に係る位相変調装置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0020】
(第1実施形態)
図6は、本実施形態の一例である位相変調装置301を説明する図である。位相変調装置301は、RZ位相変調回路101及び位相制御回路111を備える。RZ位相変調回路101は、連続光を出力する光源10と、2つの位相変調器(12−1、12−2)及び強度変調器15を有し、これら位相変調器(12−1、12−2)は、それぞれに入力されるデータ信号(DATA1、DATA2)に基づき光源10からの連続光を位相変調して2つの位相変調光信号を生成し、移相器13が位相変調光信号の一方の位相をπ/2ずらして位相変調光信号の他方と合波した4値位相変調信号を生成し、強度変調器15が前記データ信号と同期したクロック信号CLKで該4値位相変調信号を強度変調しRZ化して出力する。位相制御回路111は、データ信号(DATA1、DATA2)の電気経路にそれぞれに配置した位相シフタ(21−1、21−2)と、クロック信号(CLK)の位相を基準として強度変調器15が出力するRZ光信号RZ−QPSKの光強度が最大となるようにデータ信号(DATA1、DATA2)の位相シフト量を決定し、位相シフタ(21−1、21−2)に制御信号を出力する調整ユニット125を有する。
【0021】
ここで、図7と8を用いて本実施形態の動作原理を説明する。図7(A)は、位相変調器12が出力する位相変調光信号LN1’とLN2、およびCLKの位相関係が最適な状態から、位相シフタ21−1を用いて、LN1’−CLK間のスキューを、−0.5UI(Unit Interval)から+0.5UIまで変化させたときのRZ光信号RZ−QPSKの平均光強度が変化する様子を説明する図である。図7(B)〜(D)は各位相時におけるRZ光信号をオシロスコープで観察した結果である。図7(D)から図3(B)のようにスキューが大きくなると、図7(D)から図7(B)のようにノッチNとCLKとの干渉が生じるため、図7(A)のようにRZ光信号RZ−QPSKの平均光強度が低下する。このことからRZ光信号RZ−QPSKの平均光強度を最大にすることでスキュー調整が行えることがわかる。
【0022】
図8は、位相変調光信号LN1’とLN2のCLKとのスキューを−0.5UIから+0.5UIまで変化させたときのRZ光信号RZ−QPSKの平均光強度が変化する様子を説明する図である。LN1’のスキュー調整をする場合、仮にLN2の位相が最適でなくとも、RZ−QPSKの光強度を最大にすることで、LN1’のスキュー調整が行えることを示している。このことから、位相シフタ(21−1、21−2)によって、それぞれLN1’とLN2の位相を、RZ光信号RZ−QPSKの平均光強度が増大する方向に制御をかければ、両方のスキュー調整が行えることがわかる。
【0023】
図6の実施例では、平均光強度は、1:2カプラ16でタップしたモニタ光を受光素子23で光電気変換した光電流として得られる。調整ユニット125は、位相シフタ(21−1、21−2)の位相シフト量を変動させ、平均光強度すなわち光電流が減少するのであれば、位相シフト量を反対側に変動させるようにすることで、最適なタイミングにスキュー調整できる。
【0024】
本実施例は、CLKの位相を基準として、LN1’とLN2のスキューを調整する構成であるが、LN1’を基準としてLN2とCLKのスキューを調整すること、及びLN2を基準としてLN1’とCLKのスキューを調整することも可能である。また、光源10の直後に光強度変調器15を配置し、光強度変調器15で生成した光パルスを分岐して位相変調をかける構成としても構わない。
【0025】
(第2実施形態)
図9は、本実施形態の一例である位相変調装置302を説明する図である。位相変調装置302は図6の位相変調装置301で説明した調整ユニット125の構成の一例を搭載する。
【0026】
位相制御回路111は、位相シフタ(21−1、21−2)がデータ信号の位相をシフトする位相シフト量を指示する制御信号Jに所定周波数のパイロット信号を重畳して位相シフト量を所定周波数で振動させるパイロット信号重畳を行うパイロット信号供給部22と、強度変調器15の出力を光電気変換した電気信号をパイロット信号と同一の周波数で同期検波を行う同期検波部24と、同期検波部24の出力を誤差信号として、該誤差信号がゼロになるように調整した位相シフト量の制御信号Jを位相シフタ(21−1、21−2)へ出力する調整作業を行う調整部25と、を有する。
【0027】
特に、位相変調装置302は、位相シフタ(21−1、21−2)毎に用意された互いに異なる周波数である2つのパイロット信号を用い、パイロット信号供給部(22−1、22−2)が、2つのパイロット信号をそれぞれ制御信号Jに重畳してパイロット信号重畳を行い、同期検波部(24−1、24−2)が、パイロット信号毎に同期検波を行い、調整部(25−1、25−2)が、パイロット信号毎に調整作業を行う。
【0028】
本実施例では、パイロット信号を用いることで、位相シフタの制御方向を予め知ることができる。位相制御回路111における位相シフタの制御方向の決定方法の概要を図10及び図11を用いて説明する。図10は、パイロット信号32による位相変調光信号33の位相状態の変化を模式的に示した図である。入力データ列30が位相シフタ31を経て位相変調器に入力しているとする。入力データ列30の中央部にはノッチNが入っているとする。位相シフタ31に周波数fのパイロット信号32が導入された場合、位相シフタ31から出力されるデータ信号のノッチNは周波数fで振動するため、このデータ信号に基づいて変調された位相変調光信号33のノッチNも振動する。ノッチの時間振動は、最適位相が時間振動していることと等価である。
【0029】
図11は、位相変調光信号LN1’とクロック信号CLKのスキュー状態とRZ光信号RZ−QPSKの平均光強度との関係を説明する図である。図7で説明した通り、位相変調光信号LN1’の最適位相とクロック信号CLKのピークが一致する最適タイミング(図11(B))で平均光強度は最大となり、スキューが生じると平均光強度は低下する(図11(A)(C))。ここで、位相シフタ21−1を制御する制御信号Jに周波数f1の正弦波のパイロット信号を重畳すると、位相変調光信号LN1’の最適位相は周波数f1で振動する。この振動は平均光強度に時間変動をもたらすが、位相変調光信号LN1’のクロック信号CLKに対する位相進み又は遅れの状態によって、時間変動の状態が変化する。
【0030】
具体的には、位相変調光信号LN1’の位相が進んでいる図11(A)場合、平均光強度は、周波数f1でかつ、パイロット信号と同位相で時間変動する。位相変調光信号LN1’の位相が最適点である図(B)場合、光平均強度は最大値をとる。この状態で位相変調光信号LN1’の位相が最適点から進んでも遅れても平均光強度は減衰する。このため、パイロット信号で位相変調光信号LN1’の位相を振動させると光平均強度の時間変動は周波数f1の2倍で変動する。位相変調光信号LN1’の位相が遅れている場合、平均光強度は、周波数f1でかつ、パイロット信号と逆位相で時間変動する。
【0031】
したがって、位相制御回路111は、光平均出力の時間変動がパイロット信号と同位相であるか逆位相であるかを検出できれば、位相変調光信号LN1’を進ませるか遅らせるかの判定、すなわち位相シフタ21−1の位相シフト方向が決定できる。ここでの説明は、位相変調光信号LN2でも同様である。
【0032】
上記の動作を、図9を用いてより具体的に説明する。パイロット信号供給部22−1から周波数f1のパイロット信号を位相シフタ21−1に与えて位相変調光信号LN1’の位相を振動させる。このときのRZ光信号RZ−QPSKの平均光強度は、受光素子23で光電気変換されて光電流値として検出され、同期検波部24−1によって、パイロット信号で同期検波される。光電流の時間変動がパイロット信号と同相(位相変調光信号LN1’の位相が進み)又は逆相(位相変調光信号LN1’の位相が遅れ)であれば、同期検波出力Kはそれぞれ正又は負の値をとる。位相変調光信号LN1’が最適位相にあれば、f1の倍波は同期検波出力には現れず、Kは0となる。このように、調整部25−1は、Kの正負に基づき位相シフタ21−1の位相シフト量の大小を調整することで、スキュー調整が完了する。
【0033】
以上に、位相変調光信号LN1のスキュー調整について説明したが、パイロット信号供給部22−2からの周波数f2のパイロット信号、同期検波部24−2及び調整部25−2を使うことで位相変調光信号LN2のスキュー調整も同様にできる。
【0034】
さらに、位相変調装置302は、2つの周波数(f1、f2)のパイロット信号を使用するため、位相変調光信号LN1及び位相変調光信号LN2のスキュー調整を同時に実施できる。
【0035】
本実施例は、CLKの位相を基準として、LN1’とLN2のスキューを調整する構成であるが、例えばLN1’(LN2)を基準としてLN2(LN1’)とCLKのスキューを調整することも可能である。また、光源10の直後に強度変調器15を配置し、強度変調器15で生成した光パルスを分岐して位相変調をかける構成としても構わない。
【0036】
位相変調装置302は、このスキュー調整を随時できるため、各構成部品を等長化して組み立てる必要がなく、部品の温度特性及び経時変化が生じてもその変化によるスキュー変動を容易に収束することができる。
【0037】
(実施形態3)
図12は、実施形態2の位相変調装置303を説明する図である。位相変調装置303と図9の位相変調装置302との違いは、位相制御回路111の代替として位相制御回路112を備えている点である。位相制御回路112と位相制御回路111との違いは、パイロット信号の数である。位相変調装置302は周波数fである1つのパイロット信号でスキュー調整を行う。具体的には、位相変調光信号LN1と位相変調光信号LN2のスキュー調整を時間をずらして行う。このため、位相変調装置302は、位相制御回路112にパイロット信号の出力先を切り替える切替スイッチ26を有する。スキュー調整方法は図10及び図11で説明した位相変調装置302のスキュー調整方法と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の実施例としてRZ−QPSKを説明したが、本発明は、RZ−DQPSK、RZ−DP−QPSK(ビットアライン)、RZ−DP−QPSK(シンボルインターリーブ)にも適用できる。
【符号の説明】
【0039】
10:光源
11:1:2カップラ
12−1、12−2:位相変調器
13:移相器
14:2:1カップラ
15:強度変調器
16:1:2カップラ
21−1、21−2:位相シフタ
22、22−1、22−2:パイロット信号供給部
23:受光素子
24、24−1、24−2:同期検波部
25、25−1、25−2:調整部
26:切替スイッチ
30:入力データ列
31:位相シフタ
32:パイロット信号
33:位相変調光信号
101:RZ位相変調回路
111、112:位相制御回路
125:調整ユニット
300〜303:位相変調装置
LD、LD1、LD2:連続光
LN1、LN1’、LN2:位相変調光信号
QPSK:合波信号
RZ−QPSK:RZ光信号
K:検出信号
J:制御信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定の光位相を持つ連続光を出力する光源と、
前記光源の出力を分岐して得られる2つの連続光の各々の光位相を、2つの電気データ信号に基づきそれぞれ変調する2つの位相変調器と、
一方の前記相変調器の出力の光位相をπ/2シフトさせるπ/2移相器と、
前記π/2移相器の出力と他方の前記位相変調器の出力とを合波する合波器と、
前記合波器の出力に、前記電気データ信号と同期した電気クロック信号で強度変調する強度変調器と、
前記電気データ信号が前記位相変調器まで伝搬する2つの電気経路、及び、前記電気クロック信号が前記強度変調器まで伝搬する電気経路のうちの2つに配置され、前記電気データ信号又は前記電気クロック信号の位相をシフトする位相シフタと、
前記位相シフタが未配置である前記電気経路の前記電気データ信号又は電気クロック信号の位相を基準として、前記位相シフタが配置された前記電気経路の前記電気データ信号又は電気クロック信号の位相を、前記強度変調器からの光出力強度が最大となるように、それぞれ制御する位相制御回路と、
を備える位相変調装置。
【請求項2】
前記位相制御回路は、
前記位相シフタが前記電気データ信号又は電気クロック信号の位相をシフトする位相シフト量を指示する制御信号に所定周波数のパイロット信号を重畳して前記位相シフト量を前記所定周波数で振動させるパイロット信号重畳を行うパイロット信号供給部と、
前記強度変調器の出力を光電気変換した電気信号を前記パイロット信号と同一の周波数で同期検波を行う同期検波部と、
前記同期検波部の出力を誤差信号として、該誤差信号がゼロになるように調整した前期位相シフト量の前記制御信号を前記位相シフタへ出力する調整作業を行う調整部と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の位相変調装置。
【請求項3】
前記位相制御回路は、
前記位相シフタ毎に用意された互いに異なる周波数である2つの前記パイロット信号を用い、
前記パイロット信号供給部が、2つの前記パイロット信号をそれぞれ前記制御信号に重畳するように前記パイロット信号重畳を行い、
前記同期検波部が、前記パイロット信号毎に同期検波を行い、
前記調整部が、前記パイロット信号毎に前記調整作業を行うことを特徴とする請求項2に記載の位相変調装置。
【請求項4】
前記位相制御回路は、
1つのパイロット信号を用い、
前記パイロット信号供給部が行う前記パイロット信号重畳、
前記同期検波部が行う前記同期検波、及び
前記調整部が行う前記調整作業を、時分割に行うことを特徴とする請求項2に記載の位相変調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−160970(P2012−160970A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20104(P2011−20104)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(591230295)NTTエレクトロニクス株式会社 (565)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】