説明

位相差フィルム、偏光板、偏光板の製造方法及び液晶表示装置

【課題】本発明の目的はフィルムの金属ベルトからの剥離性不良、貼り付き故障等の生産上の問題がなく、かつ湿度変化に対する寸法変化性、偏光子との貼合性及びヘイズに優れた位相差フィルム、及びそれを用いた変形故障がなく、視認性の高い偏光板、偏光板の製造方法及び液晶表示装置を提供することにある。
【解決手段】少なくとも、酸化ケイ素微粒子とアミン系分散剤及びカルボキシル基含有高分子分散剤から選ばれる1種以上の分散剤と有機溶媒とから分散されてなる酸化ケイ素微粒子分散体と、アセチル基置換度2.0〜2.5のセルロースアセテートとを含有することを特徴とする位相差フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相差フィルム、偏光板、偏光板の製造方法及び液晶表示装置に関し、より詳しくはフィルムの金属ベルトからの剥離性不良、貼り付き故障等の生産上の問題がなく、かつ湿度変化に対する寸法変化性、偏光子との貼合性及びヘイズに優れた位相差フィルム、及びそれを用いた変形故障がなく視認性の高い偏光板、偏光板の製造方法及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置の視野角や色味変化改良のために、特定のリターデーション値を有する位相差フィルム及びその組み合わせが用いられている。
【0003】
このような位相差フィルムの主原料としては、セルロースアセテートが有利であることや、フィルムの光学特性がセルロースアセテートのアセチル基置換度に依存することが知られている。特に、低置換度のセルロースアセテートはその固有複屈折が高いことから、アシル基置換度を低減することにより、VA用位相差フィルムとして適切な光学特性を実現することが可能であると考えられている。
【0004】
また、特許文献1、2に記載されているように、セルロースアセテートフィルムの表面をアルカリ水溶液に浸漬処理してけん化し親水化することにより、ポリビニルアルコールを主成分とする偏光子に直接貼合することができる。このため、液晶セルの位相差補償機能を付加した偏光板保護フィルム(以下、簡単に保護フィルムともいう)として利用されている。
【0005】
しかしながらセルロースアセテートフィルムは、特に湿度変化に対して寸法が変動しやすい(即ち位相差も変動し易い)という問題を有しており、近年では、液晶表示装置の広視野角化や高画質化に伴って、位相差補償性の一段の向上が求められるようになっていることから、湿度変化に対する寸法安定性の改善が求められていた。
【0006】
また、該寸法安定性は偏光子との貼合性にも影響し、環境変化や経時により偏光子と保護フィルムの間での膜剥がれなどの要因となりやすい。偏光子との貼合性をより強固にするために、水との接触角が低いセルロースアセテートフィルムを使用することが提案されている(例えば特許文献3)。
【0007】
しかしながら、接触角が低いセルロースアセテートフィルムは、表面をアルカリ水溶液に浸漬処理してけん化し親水化する過程でフィルム表面が溶出しやすく、浸漬処理を弱くする必要があるため偏光子と十分な接着性が得られず、湿度変化に対する寸法安定性と貼合性を共に改善するものではない。
【0008】
また、該接触角が低いセルロースアセテートフィルムは、流延時の金属ベルトからの剥離性が悪く金属ベルトの汚染、フィルムの横段発生、更にはフィルム製膜後ロール状にして保管する際の貼り付き故障が発生し易いことからマット剤が多量に必要であり、フィルムのヘイズ上昇、コントラスト低下等の問題も発生する。
【0009】
従って、フィルムの金属ベルトからの剥離性不良、貼り付き故障等の生産上の問題がなく、湿度変化に対する寸法安定性と偏光子との貼合性とを両立したセルロースアセテートフィルム、及び該寸法安定性が影響する変形故障のない偏光板、該偏光板を組み込んだヘイズが低くコントラストの高い液晶表示装置の出現が待たれる状況にあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−94838号公報
【特許文献2】特開2001−166146号公報
【特許文献3】特開2006−215535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記問題、状況に鑑みてなされたものであり、その目的はフィルムの金属ベルトからの剥離性不良、貼り付き故障等の生産上の問題がなく、かつ湿度変化に対する寸法変化性、偏光子との貼合性及びヘイズに優れた位相差フィルム、及びそれを用いた変形故障がなく、視認性の高い偏光板、偏光板の製造方法及び液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記目的は以下の構成により達成される。
【0013】
1.少なくとも、酸化ケイ素微粒子とアミン系分散剤及びカルボキシル基含有高分子分散剤から選ばれる1種以上の分散剤と有機溶媒とから分散されてなる酸化ケイ素微粒子分散体と、アセチル基置換度2.0〜2.5のセルロースアセテートとを含有することを特徴とする位相差フィルム。
【0014】
2.前記分散剤がアミン系分散剤であることを特徴とする前記1に記載の位相差フィルム。
【0015】
3.前記位相差フィルムが環状構造を側鎖に有する重合体を含有することを特徴とする前記1または2に記載の位相差フィルム。
【0016】
4.前記セルロースアセテートがパルプ由来のものであることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
【0017】
5.前記1〜4のいずれか1項に記載の位相差フィルムを偏光子の少なくとも一方の面に有することを特徴とする偏光板。
【0018】
6.偏光子をセルロースアセテートフィルムと前記1〜4のいずれか1項に記載の位相差フィルムとで挟持する偏光板の製造方法であって、
(a)偏光子と該偏光子の第1の面の上に形成された前記セルロースアセテートフィルムとの間、および前記偏光子と該偏光子の第2の面の上に形成された前記位相差フィルムとの間に、放射線硬化型接着剤用組成物を供給する工程と、
(b)前記偏光子、前記セルロースアセテートフィルムおよび、前記位相差フィルムとを、前記放射線硬化型接着剤用組成物を介して貼合する工程と、
(c)放射線を照射することにより前記放射線硬化型接着剤用組成物を硬化させて、放射線硬化型接着剤層を形成する工程とを含み、少なくとも前記位相差フィルムはケン化処理を行っていないことを特徴とする偏光板の製造方法。
【0019】
7.前記5に記載の偏光板、または前記6に記載の偏光板の製造方法によって製造された偏光板、を液晶セルの少なくとも一方の面に有することを特徴とする液晶表示装置。
【発明の効果】
【0020】
本発明の上記構成により、フィルムの剥離性不良、貼り付き故障等の生産上の問題がなく、湿度変化に対する寸法安定性と偏光子との貼合性が両立したヘイズの低い位相差フィルム、及びそれを用いた変形故障がなく、視認性の高い偏光板、偏光板の製造方法及び液晶表示装置を提供することができる。
【0021】
さらに、金属ベルトからの剥離性やロール保管時の貼り付き防止性を保ちつつ、親水性フィルムとの貼合性を改良したことによって、偏光子との貼合においてフィルム表面をけん化処理して親水性フィルムとの強固な貼合性を得るという従来のけん化処理も不要にできることを見出したものである。
【0022】
これは、本発明に係るセルロースアセテート樹脂の使用及び、本発明に係る酸化ケイ素分散体の使用によって達成されるものであり、セルロースアセテート樹脂と酸化ケイ素微粒子の相溶性、酸化ケイ素微粒子の粒径分布が適切に制御されたことによるものと推定している。
【0023】
本発明に係る位相差フィルムや当該位相差フィルムを用いた偏光板は、液晶表示装置に好ましく用いることができ、特にVA用液晶表示装置に好ましく用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】ガラスにグリセリンを滴下したもの
【図2】フィルムを載せたもの
【図3】フィルム上にグリセリンを滴下したもの
【図4】ガラスを載せたもの
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0026】
本発明の位相差フィルムは、少なくとも、酸化ケイ素微粒子とアミン系分散剤及びカルボキシル基含有高分子分散剤から選ばれる1種以上の分散剤と有機溶媒とから分散されてなる酸化ケイ素微粒子分散体と、アセチル基置換度2.0〜2.5のセルロースアセテートとを含有することを特徴とする。
【0027】
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記分散剤がアミン系分散剤であることが好ましく、前記位相差フィルムが環状構造を側鎖に有する重合体を含有することが好ましく、さらに前記セルロースアセテートがパルプ由来のものであることが好ましい。
【0028】
本発明の位相差フィルムは、測定波長590nmにおいて、面内方向のリターデーションReが25nm≦|Re|≦100nmの範囲内であり、かつ、厚さ方向のリターデーションRthが50nm≦|Rth|≦250nmの範囲内であることが好ましい。
【0029】
本発明の位相差フィルムは、平均層厚が30〜100μmの範囲内であり、フィルム幅が、700〜3000mmの範囲内であることが好ましい。
【0030】
本発明の位相差フィルムは、偏光板や液晶表示装置に好適に用いることができる。
【0031】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0032】
また、本願において用いる次の用語及び記号の定義は下記の通りである。
【0033】
(1)「nx」は、面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸に垂直な方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚さ方向の屈折率である。
【0034】
また、例えば「nx=ny」は、nxとnyが厳密に等しい場合のみならず、nxとnyが実質的に等しい場合も包含する。本願において「実質的に等しい」とは、液晶パネルの全体的な光学特性に実用上の影響を与えない範囲でnxとnyが異なる場合も包含する趣旨である。
【0035】
(2)「面内方向のリターデーション(位相差)Re」とは、23℃・55%RHにおける波長590nmの光で測定したフィルム(層)面内の位相差値をいう。Reは、波長590nmにおけるフィルム(層)の遅相軸方向、進相軸方向の屈折率をそれぞれ、nx、nyとし、d(nm)をフィルム(層)の厚さとしたとき、式:Re=(nx−ny)×dによって求められる。
【0036】
(3)「厚さ方向のリターデーション(位相差)Rth」とは、23℃・55%RHにおける波長590nmの光で測定した厚さ方向の位相差値をいう。Rthは、波長590nmにおけるフィルム(層)の遅相軸方向、進相軸方向、厚さ方向の屈折率をそれぞれ、nx、ny、nzとし、d(nm)をフィルム(層)の厚さとしたとき、式:Rth={(nx+ny)/2−nz)}×dによって求められる。
【0037】
<位相差フィルム>
本発明の位相差フィルム(以下、「セルロースアセテートフィルム」という場合もある。)は、酸化ケイ素微粒子とアミン系分散剤及びカルボキシル基含有高分子分散剤から選ばれる1種以上の分散剤と有機溶媒とから分散されてなる酸化ケイ素微粒子分散体とアセチル基置換度が2.0〜2.5であるセルロースアセテートを少なくとも含有することを特徴とする。
【0038】
本発明の好ましい実施態様としては、環状構造を側鎖に有するビニル系重合体を含有することが好ましい。これにより偏光子との貼合性をより良好にすることができる。さらに、液晶表示装置の色バランスを良好にすることができる。
【0039】
本発明の位相差フィルムにおいて、前記アミン系分散剤を含有することが、フィルムの金属ベルトからの剥離性を改善させる上で好ましい。また、前記酸化ケイ素微粒子の粒径分布幅を狭くすることで、貼り付きの防止とヘイズ低下を両立することができる。
【0040】
さらに、下記一般式(A)で表される化合物を添加して延伸することも好ましい態様であり、位相差フィルム全体の光学特性が受ける影響を抑制し、Re及びRthのバラツキを抑えることができる。
【0041】
【化1】

【0042】
(式中、R〜Rは、各々独立に、置換若しくは無置換のアルキルカルボニル基、又は、置換若しくは無置換のアリールカルボニル基を表し、R〜Rは、各々同じであっても、異なっていてもよい。)
したがって、従来のセルロースアセテート系の位相差フィルムに比べ、本発明のセルロースアセート系の位相差フィルムは、光学特性の発現性が高く、かつ、光学特性のバラツキが非常に小さい。
【0043】
以下、本発明のフィルムの特徴と好ましい態様について詳細な説明をする。
【0044】
<セルロースアセテート>
本発明に用いられるセルロースアセテートは、アセチル基置換度が前記範囲を満たすものであれば特に定めるものではない。
【0045】
本発明に係るセルロースアセテートの原料セルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などが挙げられるが、何れの原料セルロースから得られるセルロースアセテートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。
【0046】
特に本発明に好ましいセルロースアセテートは、木材パルプから得られたものであることが偏光子との貼合性の観点から好ましい。
【0047】
これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えば、丸澤、宇田著、「プラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂」日刊工業新聞社(1970年発行)や発明協会公開技報公技番号2001−1745号(7頁〜8頁)に記載のセルロースを用いることができる。
【0048】
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位及び6位に遊離のヒドロキシル基(水酸基)を有している。セルロースアセテートは、これらのヒドロキシル基(水酸基)の一部又は全部をアセチル基によりアセチル化した重合体(ポリマー)である。アセチル基置換度は、2位、3位及び6位に位置するセルロースのヒドロキシル基(水酸基)がアセチル化している割合(100%のアセチル化は置換度3)を意味する。
【0049】
前記アセチル基置換度は、2.0〜2.5を満たすものであり、より好ましく2.3〜2.5を満たすものである。
【0050】
本発明における、セルロースのアセチル化において、アセチル化剤としては、酸無水物や酸クロライドを用いた場合、反応溶媒である有機溶媒としては、有機酸、例えば、酢酸、メチレンクロライド等が使用される。
【0051】
触媒としては、アセチル化剤が酸無水物である場合には、硫酸のようなプロトン性触媒が好ましく用いられ、アセチル化剤が酸クロライド(例えば、CHCOCl)である場合には、塩基性化合物が用いられる。
【0052】
最も一般的なセルロースの脂肪酸エステルの工業的合成方法は、セルロースをアセチル基及び他のアシル基に対応する脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、吉草酸等)又はそれらの酸無水物を含有する混合有機酸成分でアシル化する方法である。
【0053】
本発明に用いるセルロースアセテートは、例えば、特開平10−45804号公報に記載されている方法により合成できる。
【0054】
<酸化ケイ素微粒子>
本発明の位相差フィルムは酸化ケイ素微粒子を含有するが、該酸化ケイ素微粒子は、1次平均粒子径が20nm以下であり、且つ見かけ比重が70g/リットル以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5〜16nmと小さいものがフィルムのヘイズを下げることができ、より好ましい。見かけ比重は90〜200g/リットル以上が好ましく、100〜200g/リットル以上がさらに好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
【0055】
これらの微粒子は、通常、平均粒子径が0.05〜3.0μm程度の2次粒子を形成し、これらの微粒子はフィルム中では、1次粒子の凝集体として存在し、フィルム表面に0.1〜3.0μm程度の凹凸を形成させる。2次平均粒子径は0.05μm〜1.5μm程度が好ましく、0.1μm〜1.0μm程度がさらに好ましく、0.1μm〜0.2μm程度がさらに好ましい。1次、及び2次粒子径はフィルム中の粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、粒子に外接する円の直径をもって粒径とした。また、場所を変えて粒子200個を観察し、その平均値をもって平均粒子径とした。
【0056】
酸化ケイ素微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)などの市販品を使用することができる。
【0057】
これらの中で、アエロジル200V及びアエロジルR972Vが1次平均粒子径が20nm以下で、且つ見かけ比重が70g/リットル以上である酸化ケイ素微粒子であり、位相差フィルムのヘイズを低く保ちながら、摩擦係数を下げる効果が大きいため特に好ましい。
【0058】
本発明に係る酸化ケイ素微粒子分散体は、酸化ケイ素微粒子とアミン系分散剤及びカルボキシル基含有高分子分散剤から選ばれる1種以上の分散剤と有機溶媒とから分散されてなるものである。
【0059】
該酸化ケイ素微粒子分散の製造方法には、いくつかの手法が考えられる。例えば、有機溶媒と微粒子と上記分散剤を撹拌混合した微粒子分散体をあらかじめ調製し、この微粒子分散体を別途用意した少量のセルロースアセテート溶液に加えて撹拌溶解し、さらにメインのセルロースアセテートドープ液と混合する方法がある。この方法は酸化ケイ素微粒子の分散性がよく、酸化ケイ素微粒子が更に再凝集し難い点で好ましい調製方法である。ほかにも、有機溶媒に少量のセルロースアセテートを加え、撹拌溶解した後、これに微粒子と分散剤を加えて分散機で分散を行い、これを微粒子添加液とし、この微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する方法もある。いずれの方法を利用してもよいし、またこれらの方法に限定されるものでもない。酸化ケイ素微粒子を有機溶媒などと混合して分散する際の二酸化珪素の濃度は、5〜30質量%程度が好ましく、10〜25質量%程度が更に好ましく、15〜20質量%程度がよりさらに好ましい。分散濃度が高い方が添加量に対する液濁度が低くなり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。最終的なセルロースアセテートのドープ溶液中での酸化ケイ素微粒子の添加量は1mあたり0.01〜1.0gが好ましく、0.03〜0.3gが更に好ましく、0.08〜0.16gがより好ましい。
【0060】
上記調製方法に使用される有機溶媒は、低級アルコール類としては、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。低級アルコール以外の溶媒としては特に限定されないが、セルロースアセテートの製膜時に用いられる溶剤を用いることが好ましい。
【0061】
本発明のセルロースアセテートに含まれる酸化ケイ素微粒子の量は、セルロースアセテートの全質量に対して0.03〜0.1質量%であることが好ましく、0.05〜0.08質量%であることがより好ましい。酸化ケイ素微粒子の含有量が多いと、ヘイズが増大するため好ましくなく、また、少な過ぎるとフィルムの滑り性が悪化し、搬送中のキシミ、スリキズの発生などが問題となる。
【0062】
本発明に係る酸化ケイ素微粒子分散体の製造方法によれば、前記したようにセルロースアセテート樹脂と酸化ケイ素微粒子の相溶性、酸化ケイ素微粒子の粒径分布が適切に制御されていることから、酸化ケイ素微粒子を比較的多く含むセルロースアセテート組成物を用いてフィルムを製造する場合であっても、フィルムのヘイズ上昇が抑えられる。
【0063】
<分散剤>
本発明に係る分散剤は、アミン系分散剤及びカルボキシル基含有高分子分散剤から選ばれるものである。
【0064】
アミン系分散剤としては、アルキルアミンおよびポリカルボン酸のアミン塩のうち少なくとも1種の分散剤が好ましい。例えば、ポリエステル酸、ポリエーテルエステル酸、脂肪酸、脂肪酸アミド、ポリカルボン酸、アルキレンオキサイド、ポリアルキレンオキサイド、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、およびこれらの誘導体等をアミン化したものが挙げられる。アミン塩としては、アミドアミン塩、脂肪族アミン塩、芳香族アミン塩、アルカノールアミン塩、多価アミン塩等がある。具体的には、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリプロピルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン等が挙げられる。
【0065】
具体的には、ソルスパーズシリーズ(ルーブリゾール社製)、アジスパーシリーズ(味の素社製)、BYKシリーズ(ビックケミー社製)、EFKAシリーズ(EFKA社製)の中のアミン系化合物を挙げることができる。添加量としては酸化ケイ素微粒子10質量部に対し0.05〜10質量部が好ましい。
【0066】
カルボキシル基含有高分子分散剤としては、ポリカルボン酸及びその塩の少なくとも1種が好ましい。例えば、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸アンモニウム、ポリカルボン酸ナトリウムなどが挙げられる。具体的には、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸アンモニウム共重合体、ポリマレイン酸、ポリマレイン酸アンモニウム、ポリマレイン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0067】
具体的には、デモールシリーズ(花王社製)、ジュリマーシリーズ(東亜合成社製)、ポリティシリーズ(ライオン社製)、などを挙げることができる。添加量としては酸化ケイ素微粒子10質量部に対し0.05〜10質量部が好ましい。
【0068】
これらアミン系分散剤やカルボキシル基含有高分子分散剤は、溶剤成分に溶解させた溶液状態のものを使用することもでき、また市販されているものも使用することができる。また、これらアミン系分散剤及びカルボキシル基含有高分子分散剤の添加量は、酸化ケイ素微粒子分散体の用途、および分散剤の種類に応じて適宜調製すればよいが、酸化ケイ素微粒子に対し0.2質量%以上であることが好ましい。
【0069】
<環状構造を側鎖に有する重合体>
本発明の位相差フィルム中には、環状構造を側鎖に有する重合体として、下記一般式(A)で表される化合物、芳香族末端エステル系化合物、フタル酸エステル、リン酸エステルなどの可塑剤;紫外線吸収剤;酸化防止剤;剥離促進剤などの添加剤を加えることが好ましい。
【0070】
(環状構造を側鎖に有する重合体)
環状構造を側鎖に有する重合体としては、一般式(21)又は(22)で表されるビニル重合体が好ましい。
【0071】
一般式(21)又は(22)で表される環状構造を一つのみ有していても複数有していてもよく、それ以外の側鎖を有していてもよい。
【0072】
(一般式(21)で表される環状構造)
一般式(21)で表される環状構造について説明する。
【0073】
【化2】

【0074】
一般式(21)において、XはCR又は窒素原子を表し、窒素原子であることが好ましい。
【0075】
またRは、水素原子又は1価の置換基を表し、1価の置換基としては特に制限はない。Yは炭素原子、窒素原子又は硫黄原子を表し、炭素原子又は硫黄原子であることが好ましく、炭素原子であることがより好ましい。
【0076】
は、単結合又は連結鎖長が1原子の連結基を表し、Lは単結合であることが好ましい。前記原子連結基としては特に制限はないが、2価の炭素原子含有連結基や、2価の窒素原子含有連結基、硫黄原子、酸素原子などがあげられる。
【0077】
は、連結鎖長が2〜6原子の連結基を表す。Lの連結鎖長は2〜5原子であることが好ましく、2〜4原子であることがより好ましい。連結基としては、2価のものであれば特に制限はなく、例えば2価の炭素原子含有連結基や、2価の窒素原子含有連結基などが挙げられる。また、前記連結基はさらに置換基を有していてもよい。Lは、炭素数2〜4の置換又は無置換のアルキレン基が特に好ましい。
【0078】
前記一般式(21)で表される環状構造は、全体として芳香環やヘテロ環、芳香族ヘテロ環を形成していてもよい。また、複数の環状構造を含んでいてもよいが、単独の環状構造であることが好ましい。
【0079】
、Y、L、Lの好ましい組み合わせとしては、Xが窒素原子であり、Yが炭素原子であり、Lが単結合であり、Lが炭素数2〜4の置換又は無置換のアルキレン基である場合が好ましく、一般式(23)又は(24)で表される構造であることがより好ましい。
【0080】
(一般式(23)又は(24)で表される環状構造)
まず、一般式(23)で表される環状構造について説明する。
【0081】
【化3】

【0082】
一般式(23)において、R19は炭素数2〜4の置換又は無置換のアルキレン基を表し、炭素数3の置換又は無置換のアルキレン基がより好ましい。
【0083】
前記置換基としては、例えば、後述するリターデーション発現剤の説明において(c)の連結基の具体例c1〜c15の直後に記載されている置換基が挙げられる。また、前記置換基中に−C(=O)−の構造を有していても有していなくてもよいが、有している場合は一般式(23)における−C(=O)−と平行方向に近い方向であることが好ましい。
【0084】
(一般式(24)で表される環状構造)
次に、一般式(24)で表される環状構造について説明する。
【0085】
【化4】

【0086】
一般式(24)において、R20は炭素数1〜3の置換又は無置換のアルキレン基を表す。R20としては炭素数2の置換又は無置換のアルキレン基がより好ましい。
【0087】
前記置換基としては、一般式(23)で説明したものと同様のものを用いることができ、好ましい範囲も同様である。
【0088】
前記一般式(21)で表される環状構造は、ピロリドン構造であることが最も好ましい。
【0089】
前記一般式(21)、(23)又は(24)で表される環状構造の具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0090】
【化5】

【0091】
(一般式(22)で表される環状構造)
一般式(22)で表される環状構造について、以下説明する。
【0092】
【化6】

【0093】
一般式(22)において、XはCR1314、NR15、酸素原子又は硫黄原子を表す。XはCR1314、NR15であることが好ましく、CR1314、NR15であることがより好ましい。
【0094】
は、炭素原子、窒素原子又は硫黄原子を表し、炭素原子又は硫黄原子であることが好ましく、炭素原子であることがより好ましい。
【0095】
は、CR1617、NR18、酸素原子、硫黄原子、−C(=O)−、−N(=O)−又はS(=O)−を表し、−S(=O)−、−C(=O)−であることが好ましく、−C(=O)−であることがより好ましい。
【0096】
〜R18は、水素原子又は1価の置換基を表し、水素原子又は炭素数1〜8の置換又は無置換のアルキル基であることがより好ましい。
【0097】
k1、m1及びn1はそれぞれ独立に0〜2の整数を表す。k1は0又は1であることが好ましく、0であることがより好ましい。m1は0又は1であることが好ましい。n1は0又は1であることが好ましい。より好ましくは、m1及びn1の合計が0又は1である。
【0098】
なお、k1個の部分構造とm1個の部分構造とn1個の部分構造の結合順は順不同である。
【0099】
前記一般式(22)で表される環状構造は、全体として芳香環やヘテロ環、芳香族ヘテロ環を形成していてもよい。また、複数の環状構造を含んでいてもよいが、単独の環状構造であることが好ましい。
【0100】
、Y、Y、R〜R18、k1、m1及びn1の好ましい組み合わせとしては、XがNR15であり、Yが炭素原子であり、Yが−C(=O)−であり、R〜R18が水素原子であり、k1が0であり、m1が0又は1であり、n1が0又は1である場合が好ましく、一般式(25)で表される構造であることがより好ましい。
【0101】
(一般式(25)で表される環状構造)
【0102】
【化7】

【0103】
一般式(25)において、R21は水素原子、下記一般式(25−1)で表される基、下記一般式(25−2)で表される基、もしくは炭素数1〜8の置換又は無置換のアルキル基を表す。
【0104】
【化8】

【0105】
【化9】

【0106】
31〜R47は、それぞれ独立に、水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、窒素原子、イオウ原子もしくはケイ素原子を含む連結基を有していてもよい置換もしくは無置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;及び極性基よりなる群から選ばれる原子もしくは基を表す。
【0107】
一般式(25−1)において、p1及びq1は0又は正の整数であり、p1=q1=0のとき、R32とR35又はR35とR39は相互に結合してヘテロ原子を有してもよい単環又は多環の基を形成してもよい。
【0108】
一般式(25−2)において、sは0又は1以上の整数である。
【0109】
22〜R29は水素原子もしくは炭素数1〜8の置換又は無置換のアルキル基を表し、水素原子もしくは炭素数1〜8の置換又は無置換のアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0110】
m2及びn2はそれぞれ0又は1を表す。
【0111】
前記一般式(22)又は(25)で表される環状構造の具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0112】
【化10】

【0113】
また、下記一般式(A)で表される化合物を用いることも好ましい。
【0114】
【化11】

【0115】
(式中、R〜Rは、各々独立に、置換若しくは無置換のアルキルカルボニル基、又は、置換若しくは無置換のアリールカルボニル基を表し、R〜Rは、各々同じであっても、異なっていてもよい。)
一般式(A)で表される化合物の好ましい具体例としては、表1に示す化合物が挙げられる。なお、下表中に記載のRは、R〜Rのうちのいずれかを表す。アルキルカルボニル基及びアリールカルボニル基の置換基としては、下表に示すアルキルカルボニル基及びアリールカルボニル基が有するフェニル基、アルコキシ基等の置換基が好ましい。
【0116】
【表1】

【0117】
また、本発明で用いられる位相差フィルムには、一般式(C)の化合物を用いることが好ましい。一般式(C)に示す構造の化合物は、ポリエステル系可塑剤であり、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有するポリエステル系可塑剤を用いることができる。
【0118】
一般式(C) B−(G−A)n−G−B
(式中、Bはアリールカルボン酸残基、Gは炭素数2〜12のアルキレングリコール残基または炭素数6〜12のアリールグリコール残基または炭素数が4〜12のオキシアルキレングリコール残基、Aは炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸残基または炭素数6〜12のアリールジカルボン酸残基を表し、またnは1以上の整数を表す。)
一般式(C)中、Bで示されるベンゼンモノカルボン酸残基とGで示されるアルキレングリコール残基またはオキシアルキレングリコール残基またはアリールグリコール残基、Aで示されるアルキレンジカルボン酸残基またはアリールジカルボン酸残基とから構成されるものであり、通常のポリエステル系可塑剤と同様の反応により得られる。
【0119】
本発明で使用されるポリエステル系可塑剤のアリールカルボン酸成分としては、例えば、安息香酸、パラターシャリブチル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸等があり、これらはそれぞれ1種または2種以上の混合物として使用することができる。
【0120】
本発明で用いられる第2のセルロースアセテートフィルムに好ましく用いることのできるポリエステル系可塑剤の炭素数2〜12のアルキレングリコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル1,3−ペンタンジオール、2−エチル1,3−ヘキサンジオール、2−メチル1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等があり、これらのグリコールは、1種または2種以上の混合物として使用される。
【0121】
特に炭素数2〜12のアルキレングリコールがセルロースアセテートとの相溶性に優れているため、特に好ましい。
【0122】
また、上記芳香族末端エステルの炭素数4〜12のオキシアルキレングリコール成分としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等があり、これらのグリコールは、1種または2種以上の混合物として使用できる。
【0123】
芳香族末端エステルの炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸成分としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、フマール酸、グルタール酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等があり、これらは、それぞれ1種または2種以上の混合物として使用される。炭素数6〜12のアリーレンジカルボン酸成分としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5ナフタレンジカルボン酸、1,4ナフタレンジカルボン酸等がある。
【0124】
本発明に係る第2のセルロースアセテートフィルムに使用されるポリエステル系可塑剤は、数平均分子量が、好ましくは300〜1500、より好ましくは400〜1000の範囲が好適である。また、その酸価は、0.5mgKOH/g以下、水酸基価は25mgKOH/g以下、より好ましくは酸価0.3mgKOH/g以下、水酸基価は15mgKOH/g以下のものである。
【0125】
以下に、本発明に用いることのできる一般式(C)に示す構造の芳香族末端エステル系可塑剤の具体的化合物を示すが、本発明はこれに限定されない。
【0126】
【化12】

【0127】
【化13】

【0128】
【化14】

【0129】
【化15】

【0130】
本発明の位相差フィルムへのこれら環状構造を側鎖に有する重合体の添加量は、セルロースアセテート100質量部に対して、0.5〜40質量部とすることが好ましく、0.5〜30質量部とすることがより好ましく、1〜20質量部とすること湿熱条件下での光学特性耐久性を維持する観点から好ましい。
【0131】
一般式(A)で表される化合物を含有する場合は、その含有量はセルロースアセテート樹脂100質量部に対して、0.5〜20質量部とすることが好ましく、1.0〜15質量部とすることがより好ましく、2.0〜10質量部とすることがセルロースアセテート樹脂との相溶性を維持する観点からさらに好ましい。
【0132】
一般式(C)で表される化合物を含有する場合は、その含有量はセルロースアセテート樹脂100質量部に対して、0.5〜20質量部とすることが好ましく、1.0〜15質量部とすることがより好ましく、2.0〜5質量部とすることがセルロースアセテート樹脂の柔軟性を維持する観点からさらに好ましい。
【0133】
<その他の添加剤>
本発明では、必要に応じ、劣化防止剤、紫外線吸収剤、剥離促進剤、マット剤、滑剤、前述の可塑剤等を適宜用いることができる。
【0134】
(劣化防止剤)
本発明においてはセルロースアセテート溶液に公知の劣化(酸化)防止剤、例えば、2、6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、4、4′−チオビス−(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、1、1′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2、2′−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2、5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのフェノール系あるいはヒドロキノン系酸化防止剤を添加することができる。さらに、トリス(4−メトキシ−3、5−ジフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2、4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2、6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリストールジホスファイト、ビス(2、4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどのリン系酸化防止剤をすることが好ましい。劣化防止剤の添加量は、セルロースアセテート100質量部に対して、0.05〜5.0質量部を添加することが好ましい。
【0135】
(紫外線吸収剤)
本発明においてはセルロースアセテート溶液に、偏光板又は液晶等の劣化防止の観点から、紫外線吸収剤が好ましく用いられる。紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。本発明に好ましく用いられる紫外線吸収剤の具体例としては、例えばヒンダードフェノール系化合物、ヒドロキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。ヒンダードフェノール系化合物の例としては、2、6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N、N′−ヘキサメチレンビス(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、1、3、5−トリメチル−2、4、6−トリス(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイトなどが挙げられる。ベンゾトリアゾール系化合物の例としては、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2、2−メチレンビス(4−(1、1、3、3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、(2、4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3、5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1、3、5−トリアジン、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N、N′−ヘキサメチレンビス(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、1、3、5−トリメチル−2、4、6−トリス(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2(2′−ヒドロキシ−3′、5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、(2(2′−ヒドロキシ−3′、5′−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2、6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕などが挙げられる。これらの紫外線防止剤の添加量は、位相差フィルム全体中に質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmがさらに好ましい。
【0136】
(剥離促進剤)
本発明の位相差フィルムには、剥離促進剤を含有することがより剥離性と高める観点から好ましい。剥離促進剤は、例えば、0.001〜1質量%の割合で含めることができ、0.5質量%以下の添加であれば剥離剤のフィルムからの分離等が発生し難いため好ましく、0.005質量%以上であれば所望の剥離低減効果を得ることができるため好ましいため、0.005〜0.5質量%の割合で含めることが好ましく、0.01〜0.3質量%の割合で含めることがより好ましい。剥離促進剤としては、公知のものが採用でき、有機、無機の酸性化合物、アミン化合物、界面活性剤、キレート剤等を使用することができる。中でも、多価カルボン酸及びそのエステル、アミン化合物、が効果的であり、本発明に係るアミン系分散剤は酸化ケイ素微粒子の分散効果と併せて、フィルムの剥離性に対しても効果的に使用することができる。
【0137】
(その他のマット剤)
本発明の位相差フィルムには、酸化ケイ素微粒子以外のマット剤を本発明の効果を高める為に用いることも好ましい。無機化合物のマット剤の好ましい具体例としては、ケイ素を含む無機化合物(例えば、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムなど)、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化ストロングチウム、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化スズ・アンチモン、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン及びリン酸カルシウム等が好ましく、更に好ましくはケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムである。
【0138】
有機化合物のマット剤の好ましい具体例としては、例えば、シリコーン樹脂、弗素樹脂及びアクリル樹脂等のポリマーが好ましく、中でも、シリコーン樹脂が好ましく用いられる。シリコーン樹脂の中でも、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、トスパール105、トスパール108、トスパール120、トスパール145、トスパール3120及びトスパール240(以上東芝シリコーン(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。
【0139】
[位相差フィルムの製造方法]
本発明の位相差フィルム(以下、簡単にフィルムともいう)は、少なくとも請求項1に記載のアセチル基置換度を満たすセルロースアセテートと、酸化ケイ素微粒子とアミン系分散剤及びカルボキシル基含有高分子分散剤から選ばれる1種以上の分散剤と有機溶媒とから分散されてなる酸化ケイ素微粒子分散体とを含むドープを支持体上に流延することによって製膜される。
【0140】
フィルムの製膜方法の例を説明するが、これに限定されるものではない。フィルムの製膜方法としては、インフレーション法、T−ダイ法、カレンダー法、切削法、流延法、エマルジョン法、ホットプレス法等の製造法が使用できる。
【0141】
セルロースアセテートを溶解に用いた溶媒の残留抑制の点からは溶融流延製膜法で作製する方法が好ましい。溶融流延によって形成される方法は、溶融押出成形法、プレス成形法、インフレーション法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法などに分類できる。これらの中で、機械的強度及び表面精度などに優れるフィルムが得られる溶融押出し法が好ましい。また、着色抑制、異物欠点の抑制、ダイラインなどの光学欠点の抑制などの観点からは溶液流延法による製膜が好ましい。
【0142】
尚、フィルム形成材料が加熱されて、その流動性を発現させた後、ドラム上またはエンドレスベルト上に押出し製膜する方法も溶融流延製膜法として含まれる。
【0143】
〔有機溶媒〕
フィルムを溶液流延法で製造する場合のドープを形成するのに有用な有機溶媒は、セルロースアセテート、酸化ケイ素微粒子分散体、その他の添加剤を溶解するものであれば制限なく用いることが出来る。
【0144】
例えば、塩素系有機溶媒としては、塩化メチレン、非塩素系有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることが出来、塩化メチレン、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトンを好ましく使用し得る。
【0145】
ドープには、上記有機溶媒の他に、1〜40質量%の炭素原子数1〜4の直鎖または分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有させることが好ましい。ドープ中のアルコールの比率が高くなるとウェブがゲル化し、金属支持体からの剥離が容易になり、また、アルコールの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒系でのセルロースアセテート樹脂の溶解を促進する役割もある。特に、メチレンクロライド、及び炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有する溶媒に、セルロースアセテート樹脂を、少なくとも計15〜45質量%溶解させたドープ組成物であることが好ましい。炭素原子数1〜4の直鎖または分岐鎖状の脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールを挙げることが出来る。これらの内ドープの安定性、沸点も比較的低く、乾燥性もよいこと等からエタノールが好ましい。
【0146】
〔溶液流延法〕
フィルムは、溶液流延法によって製造することが出来る。溶液流延法では、樹脂および添加剤を溶剤に溶解させてドープを調製する工程、ドープをベルト状もしくはドラム状の金属支持体上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、延伸または幅保持する工程、更に乾燥する工程、仕上がったフィルムを巻き取る工程により行われる。
【0147】
ドープ中のセルロースアセテートの濃度は、濃度が高い方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷が低減できて好ましいが、セルロースアセテートの濃度が高過ぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10〜35質量%が好ましく、更に好ましくは、15〜25質量%である。流延(キャスト)工程における金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、金属支持体としては、ステンレススティールベルト若しくは鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。
【0148】
キャストの幅は1〜4mとすることができる。流延工程の金属支持体の表面温度は−50℃〜溶剤が沸騰して発泡しない温度以下に設定される。温度が高い方がウェブの乾燥速度が速くできるので好ましいが、余り高すぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化する場合がある。
【0149】
好ましい支持体温度としては0〜100℃で適宜決定され、5〜30℃が更に好ましい。または、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風または冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。
【0150】
温風を用いる場合は溶媒の蒸発潜熱によるウェブの温度低下を考慮して、溶媒の沸点以上の温風を使用しつつ、発泡も防ぎながら目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。
【0151】
特に、流延から剥離するまでの間で支持体の温度および乾燥風の温度を変更し、効率的に乾燥を行うことが好ましい。
【0152】
フィルムが良好な平面性を示すためには、金属支持体からウェブを剥離する際の残留溶媒量は10〜150質量%が好ましく、更に好ましくは20〜40質量%または60〜130質量%であり、特に好ましくは、20〜30質量%または70〜120質量%である。
【0153】
残留溶媒量は下記式で定義される。
【0154】
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
なお、Mはウェブまたはフィルムを製造中または製造後の任意の時点で採取した試料の質量で、NはMを115℃で1時間の加熱後の質量である。
【0155】
また、フィルムの乾燥工程においては、ウェブを金属支持体より剥離し、更に乾燥し、残留溶媒量を1質量%以下にすることが好ましく、更に好ましくは0.1質量%以下であり、特に好ましくは0〜0.01質量%以下である。
【0156】
次いで、フィルム乾燥工程では一般にロール乾燥方式(上下に配置した多数のロールにウェブを交互に通し乾燥させる方式)やテンター方式でウェブを搬送させながら乾燥する方式が採られる。
【0157】
〔延伸工程〕
延伸工程では、フィルムの長手方向(MD方向)、及び幅手方向(TD方向)に対して、逐次または同時に延伸することができる。互いに直交する2軸方向の延伸倍率は、それぞれ最終的にはMD方向に1.0〜2.0倍、TD方向に1.07〜2.0倍の範囲とすることが好ましく、MD方向に1.0〜1.5倍、TD方向に1.07〜2.0倍の範囲で行うことが好ましい。例えば、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用してMD方向に延伸する方法、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げてMD方向に延伸する方法、同様に横方向に広げてTD方向に延伸する方法、或いはMD/TD方向同時に広げてMD/TD両方向に延伸する方法などが挙げられる。製膜工程のこれらの幅保持或いは幅手方向の延伸はテンターによって行うことが好ましく、ピンテンターでもクリップテンターでもよい。
【0158】
テンター内などの製膜工程でのフィルム搬送張力は温度にもよるが、120N/m〜200N/mが好ましく、140N/m〜200N/mがさらに好ましい。140N/m〜160N/mが最も好ましい。
【0159】
延伸する際は、フィルムのガラス転移温度をTgとすると(Tg−30)〜(Tg+100)℃、より好ましくは(Tg−20)〜(Tg+80)℃、さらに好ましく(Tg−5)〜(Tg+20)℃である。
【0160】
フィルムのTgは、フィルムを構成する材料種及び構成する材料の比率によって制御することができる。本発明の用途においてはフィルムの乾燥時のTgは110℃以上が好ましく、さらに120℃以上が好ましい。特に好ましくは150℃以上である。
【0161】
従ってガラス転移温度は190℃以下、より好ましくは170℃以下であることが好ましい。このとき、フィルムのTgはJIS K7121に記載の方法などによって求めることができる。
【0162】
延伸する際の温度は150℃以上、延伸倍率は1.15倍以上にすると、表面が適度に粗れる為好ましい。フィルム表面を粗らすことは、滑り性を向上させるのみでなく、表面加工性、特に偏光子との密着性が向上するため好ましい。
【0163】
〔溶融製膜法〕
フィルムは、溶融製膜法によって製膜しても良い。溶融製膜法は、樹脂、マット剤および可塑剤などの添加剤を含む組成物を、流動性を示す温度まで加熱溶融し、その後、流動性のセルロースアセテートを含む溶融物を流延することをいう。
【0164】
加熱溶融する成形法は、更に詳細には、溶融押出成形法、プレス成形法、インフレーション法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法などに分類できる。これらの成形法の中では、機械的強度および表面精度などの点から、溶融押出し法が好ましい。溶融押出しに用いる複数の原材料は、通常予め混錬してペレット化しておくことが好ましい。
【0165】
ペレット化は、公知の方法でよく、例えば、乾燥セルロースアセテートや可塑剤、その他添加剤をフィーダーで押出し機に供給し1軸や2軸の押出し機を用いて混錬し、ダイからストランド状に押出し、水冷または空冷し、カッティングすることによってできる。
【0166】
添加剤は、押出し機に供給する前に混合しておいてもよいし、それぞれ個別のフィーダーで供給してもよい。
【0167】
粒子や酸化防止剤等少量の添加剤は、均一に混合するため、事前に混合しておくことが好ましい。
【0168】
押出し機は、剪断力を抑え、樹脂が劣化(分子量低下、着色、ゲル生成等)しないようにペレット化可能でなるべく低温で加工することが好ましい。例えば、2軸押出し機の場合、深溝タイプのスクリューを用いて、同方向に回転させることが好ましい。混錬の均一性から、噛み合いタイプが好ましい。
【0169】
以上のようにして得られたペレットを用いてフィルム製膜を行う。もちろんペレット化せず、原材料の粉末をそのままフィーダーで押出し機に供給し、そのままフィルム製膜することも可能である。
【0170】
上記ペレットを1軸や2軸タイプの押出し機を用いて、押出す際の溶融温度を200〜300℃程度とし、リーフディスクタイプのフィルターなどで濾過し異物を除去した後、Tダイからフィルム状に流延し、冷却ロールと弾性タッチロールでフィルムをニップされ、冷却ロール上で固化させる。
【0171】
供給ホッパーから押出し機へ導入する際は真空下または減圧下や不活性ガス雰囲気下にして酸化分解等を防止することが好ましい。
【0172】
押出し流量は、ギヤポンプを導入するなどして安定に行うことが好ましい。また、異物の除去に用いるフィルターは、ステンレス繊維焼結フィルターが好ましく用いられる。ステンレス繊維焼結フィルターは、ステンレス繊維体を複雑に絡み合った状態を作り出した上で圧縮し接触箇所を焼結し一体化したもので、その繊維の太さと圧縮量により密度を変え、濾過精度を調整できる。
【0173】
可塑剤や粒子などの添加剤は、予め樹脂と混合しておいてもよいし、押出し機の途中で練り込んでもよい。均一に添加するために、スタチックミキサーなどの混合装置を用いることが好ましい。
【0174】
冷却ロールと弾性タッチロールでフィルムをニップする際のタッチロール側のフィルム温度はフィルムのTg以上Tg+110℃以下にすることが好ましい。このような目的で使用する弾性体表面を有するロールは、公知のロールが使用できる。
【0175】
弾性タッチロールは挟圧回転体ともいう。弾性タッチロールとしては、市販されているものを用いることもできる。
【0176】
冷却ロールからフィルムを剥離する際は、張力を制御してフィルムの変形を防止することが好ましい。
【0177】
また、上記のようにして得られたフィルムは、冷却ロールに接する工程を通過後、前記延伸操作により延伸することが好ましい。
【0178】
延伸する方法は、公知のロール延伸機やテンターなどを好ましく用いることができる。延伸温度は、通常フィルムを構成する樹脂のTg〜Tg+60℃の温度範囲で行われることが好ましい。
【0179】
巻き取る前に、製品となる幅に端部をスリットして裁ち落とし、巻き中の貼り付きやすり傷防止のために、ナール加工(エンボッシング加工)を両端に施してもよい。ナール加工の方法は凸凹のパターンを側面に有する金属リングを加熱や加圧により加工することができる。なお、フィルム両端部のクリップの把持部分は通常、フィルムが変形しており製品として使用できないので切除されて、再利用される。
【0180】
<位相差フィルムの物性>
(ヘイズ)
本発明の位相差フィルムは、ヘイズが1%未満であることが好ましく、0.5%未満であることがより好ましい。ヘイズを1%未満とすることにより、フィルムの透明性がより高くなり、位相差フィルムとしてより用いやすくなるという利点がある。
【0181】
(平均含水率)
本発明の位相差フィルムは、25℃、相対湿度60%における平衡含水率が4%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましい。平均含水率を4%以下とすることにより、湿度変化に対応しやすく、光学特性や寸法がより変化しにくく好ましい。
【0182】
(Re、Rth)
本発明の位相差フィルムのリターデーション値は、位相差フィルムに用いる場合等には、Re及びRthは液晶セル及び光学フィルムの設計により、適宜選択されるが、一般的に、Reが25nm≦|Re|≦100nmであり、かつ、膜厚方向のリターデーションRthが50nm≦|Rth|≦250nmであることが好ましい。前記Reは30nm≦|Re|≦80nmであることがより好ましく、35nm≦|Re|≦70nmであることが特に好ましい。前記Rthは70nm≦|Rth|≦240nmであることがより好ましく、90nm≦|Rth|≦230nmであることが特に好ましい。
【0183】
上記リターデーション値は、例えばKOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)において測定することができる。
【0184】
(膜厚)
本発明の位相差フィルムは平均膜厚が30〜100μmであることが好ましく、30〜80μmであることがより好ましく、30〜70μmであることがさらに好ましい。30μm以上とすることにより、ウェブ状のフィルムを作製する際のハンドリング性が向上し好ましい。また、70μm以下とすることにより、湿度変化に対応しやすく、光学特性を維持しやすい。
【0185】
(フィルム幅)
本発明の位相差フィルムは、フィルム幅が700〜3000mmであることが好ましく、1000〜2800mmであることがより好ましく、1500〜2500mmであることが特に好ましい。
【0186】
<偏光板>
本発明の位相差フィルムは、偏光板保護フィルムも兼ねて偏光板に用いられることが好ましい。偏光板は、偏光子の少なくとも一方の面に保護フィルムを貼り合わせ積層することによって形成される。偏光子は従来から公知のものを用いることができ、例えば、ポリビニルアルコールフィルムのような親水性ポリマーフィルムを、沃素のような二色性染料で処理して延伸したものである。位相差フィルムと偏光子との貼り合わせは、特に限定はないが、水溶性ポリマーの水溶液からなる接着剤、または、放射線硬化型接着剤用組成物からなる接着剤により行うことができる。この水溶性ポリマー接着剤は完全鹸化型のポリビニルアルコール水溶液が好ましく用いられる。
【0187】
本発明に係る偏光板の好ましい実施態様としては、偏光子をセルロースアセテートフィルムと本発明の位相差フィルムで挟持する偏光板の製造方法であって、
(a)偏光子と該偏光子の第1の面の上に形成されたセルロースアセテートフィルムとの間、および前記偏光子と該偏光子の第2の面の上に形成された前記位相差フィルムとの間に、放射線硬化型接着剤用組成物を供給する工程と、
(b)前記偏光子、前記セルロースアセテートフィルムおよび、前記位相差フィルムとを、前記放射線硬化型接着剤用組成物を介して貼合する工程と、
(c)放射線を照射することにより前記放射線硬化型接着剤用組成物を硬化させて、放射線硬化型接着剤層を形成する工程とを含み、少なくとも前記位相差フィルムはケン化処理を行っていない偏光板の製造方法によって製造されることが好ましい。
【0188】
(セルロースアセテートフィルム)
上記セルロースアセテートフィルムは市販のTACフィルムなどが好ましく用いられ、その例としては、KC8UX2MW、KC4UX、KC5UX、KC4UY、KC8UY、KC12UR、KC4UEW、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UCR−5、KC4FR−1、KC4FR−2、KC8UE、KC4UE(コニカミノルタオプト(株)製)等が挙げられる。
【0189】
(放射線硬化型接着剤用組成物)
本実施形態において接着剤として使用される放射線硬化型接着剤用組成物は、第1および第2の保護層と偏光フィルムとを接着させるためのものである。当該放射線硬化型接着剤用組成物は、下記(a)ないし(c)、およびその他の任意成分を含有することができる。
(a):脂環式エポキシ化合物
(b):水酸基を少なくとも1個含有し、数平均分子量が500以上である化合物
(c):光酸発生剤
以下、各成分について詳細に説明する。
【0190】
[成分(a))
放射線硬化型接着剤用組成物を構成する成分(a)は、脂環式エポキシ化合物、好ましくは1分子中に2個以上の脂環式エポキシ基を有する脂環式エポキシ化合物である。1分子中に2個以上の脂環式エポキシ基を有する脂環式エポキシ化合物を成分(a)の全量中に50質量%以上含有すると、良好な硬化速度や機械的強度を保つことができる。
【0191】
成分(a)として用いられる脂環式エポキシ化合物の具体例としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ε−カプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリメチルカプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、β−メチル−δ−バレロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシシクロヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシシクロヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル等が挙げられる。
【0192】
これらの脂環式エポキシ化合物のうち、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ε−カプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリメチルカプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、β−メチル−δ−バレロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートがより好ましく、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペートがさらに好ましい。
【0193】
これらの市販品としては、セロキサイド2021、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド2083、セロキサイド2085、エポリードGT−300、エポリードGT−301、エポリードGT−302、エポリードGT−400、エポリード401、エポリード403(以上、ダイセル化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0194】
放射線硬化性組成物中の(a)脂環式エポキシ化合物の含有率は、好ましくは10〜80質量%、より好ましくは12〜75質量%、特に好ましくは15〜70質量%である。該含有率が10質量%未満では、接着剤層の機械的強度及び耐熱性が不十分になる傾向がある。該含有率が80質量%を超えると、放射線硬化性組成物を硬化させてなる接着剤層の反り等の変形が大きくなる傾向がある。
【0195】
[成分(b)]
放射線硬化型接着剤用組成物を構成する成分(b)は、水酸基を1個以上含有し、数平均分子量が500以上である化合物である。
【0196】
成分(b)は、1分子中に水酸基を1個以上、好ましくは1〜4個有する。成分(b)の数平均分子量は、500以上、好ましくは1000以上、より好ましくは1500以上である。該平均分子量の上限値は、特に限定されないが、接着剤用組成物の粘度の過度の増大を防ぐ観点から、好ましくは20000、より好ましくは10000である。該平均分子量が500未満であると、偏光板の裁断時の耐裁断性に劣るため、好ましくない。なお、成分(b)の数平均分子量は、ASTM D2503に従い測定した値である。成分(b)を用いることにより、接着強度に優れた積層フィルムを得ることができる。
【0197】
成分(b)として好適に用いられる化合物としては、ポリカプロラクトンジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、その他のポリオールなどが挙げられる。ポリカプロラクトンジオールとしては、例えば、ε−カプロラクトンとジオールとを反応させて得られるポリカプロラクトンジオール等が挙げられる。ここで用いられるジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,2−ポリブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ブタンジオールなどが挙げられる。これらポリカプロラクトンジオールの市販品としては、プラクセル205、205H、205AL、212、212AL、220、220AL(以上、ダイセル化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0198】
ポリエーテルジオールとしては、脂肪族ポリエーテルジオールが好ましく、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリヘプタメチレングリコール、ポリデカメチレングリコールなどが挙げられる。これらのポリエーテルジオールの市販品としては、PEG#600、#1000、#1500、#1540、#4000(以上、ライオン社製)、エクセノール720、1020、2020、3020、510、プレミノールPPG4000(以上、旭硝子社製)等を挙げることができる。
【0199】
ポリエステルジオールとしては、脂肪族ジオール化合物と脂肪族ジカルボン酸化合物の共重合体が好ましい。脂肪族ジオール化合物としては、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール等が挙げられ、脂肪族ジカルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸等が挙げられる。脂肪族ジオールは1種または2種以上を使用することができ、また、脂肪族ジカルボン酸も1種または2種以上を使用することができる。これらのポリエステルジオールの市販品としては、クラレポリオールN−2010、O−2010、P−510、P−1010、P−1050、P−2010、P−2050、P−3010、P−3050(以上、クラレ社製)等を挙げることができる。
【0200】
上記その他のポリオールとしては、例えば、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、スクロース、クオドロール等の3価以上の多価アルコールを、エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等の環状エーテル化合物で変性することにより得られるポリエーテルポリオールを挙げることができる。このような化合物の具体例としては、EO変性トリメチロールプロパン、PO変性トリメチロールプロパン、テトラヒドロフラン変性トリメチロールプロパン、EO変性グリセリン、PO変性グリセリン、テトラヒドロフラン変性グリセリン、EO変性ペンタエリスリトール、PO変性ペンタエリスリトール、テトラヒドロフラン変性ペンタエリスリトール、EO変性ソルビトール、PO変性ソルビトール、EO変性スクロース、PO変性スクロース、EO変性スクロース、EO変性クオドール等を例示することができ、これらのうち、EO変性トリメチロールプロパン、PO変性トリメチロールプロパン、PO変性グリセリン、PO変性ソルビトールが好ましい。
【0201】
上記その他のポリオールの市販品としては、サンニックスTP−700、サンニックスGP−1000、サンニックスSP−750、サンニックスGP−400、サンニックスGP−600(以上、三洋化成(株)製)等を挙げることができる。
【0202】
また、成分(b)として好適に用いられるポリオールとしては、水酸基含有不飽和化合物の重合体を挙げることができる。上記水酸基含有不飽和化合物としては、水酸基含有(メタ)アクリレートが挙げられ、具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリロイルホスフェート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。さらにアルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有化合物と(メタ)アクリル酸との付加反応により得られる化合物が挙げられる。
【0203】
また、成分(b)は、下記式(2)で示されるポリカーボネートジオールであることも好ましい。
【0204】
式(2)HO−(R−O−CO−O)m−(R−O−CO−O)n−R−OH
(式中、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数2〜12の2価の炭化水素基を表し、Rは、RとRのいずれかと同じ構造を表す。mは2〜150、nは0〜150であり、かつ、m+nは2〜200である。)
上記式(2)で表されるポリカーボネートジオールの製造方法としては特に限定されるものではなく、ジオール化合物とカーボネート化合物のエステル交換反応、ジオール化合物とホスゲンの重縮合反応等、既知の方法が挙げられる。成分(B)の製造に使用されるジオール化合物としては、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール等が挙げられる。また、適度な接着強度を得るには、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール等の炭素数6の脂肪族炭化水素基を含有するポリカーボネートジオールがより好ましい。
【0205】
ポリカーボネートジオールとして好適に用いられる化合物の市販品としては、DN−980、981、982、983(以上、日本ポリウレタン社製)、PC−8000(PPG社製)、PC−THF−CD(BASFジャパン社製)、クラレポリオールC−590、C−1090、C−2050、C−2090、C−3090、C−2065N、C−2015N(以上、(株)クラレ製)、プラクセルCD CD210PL、プラクセルCD CD220PL(以上、ダイセル化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0206】
放射線硬化型接着剤用組成物中、成分(b)の含有率は、好ましくは2〜50質量%、より好ましくは3〜45質量%、特に好ましくは3〜40質量%である。該含有率が2質量%未満であると、接着剤層の接着強度が劣るため好ましくない。一方、上記含有率が50質量%を超えると、放射線硬化性接着剤用組成物の粘度が高くなりすぎて塗工性が悪くなり、接着剤層と被着体との接着強度が劣ることがあり、好ましくない。
【0207】
[成分(c)]
放射線硬化性組成物を構成する成分(c)は、光酸発生剤である。
【0208】
上記光酸発生剤の例として、例えば、下記式(3)で表される構造を有するオニウム塩が挙げられる。このオニウム塩は、400nm未満に実質的な光吸収波長を有する。
【0209】
式(3) [RaR10bR12dz]p+[MXq+pp−
(式中、カチオンはオニウムイオンであり、ZはS、Se、Te、P、As、Sb、Bi、O、I、Br、ClまたはNを示し、R、R10、R11およびR12は、互いに同一または異なる有機基を示す。a、b、cおよびdは、それぞれ0〜3の整数であって、(a+b+c+d−p)はZの価数に等しい。Mは、ハロゲン化物錯体[MXq+p]の中心原子を構成する金属またはメタロイドを示し、例えば、B、P、As、Sb、Fe、Sn、Bi、Al、Ca、In、Ti、Zn、Sc、V、Cr、Mn、Co等である。Xは、例えば、F、Cl、Br等のハロゲン原子であり、pはハロゲン化物錯体イオンの正味の電荷であり、qはMの原子価である。)
上記式(3)において、オニウムイオンの具体例としては、ジフェニルヨードニウム、4−メトキシジフェニルヨードニウム、ビス(4−メチルフェニル)ヨードニウム、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム等のジアリールヨードニウムや、トリフェニルスルホニウム、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルホニウム等のトリアリールスルホニウムや、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)−フェニル]スルフィド、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル)スルホニオ)−フェニル]スルフィド、η−2,4−(シクロペンタジエニル)[1,2,3,4,5,6−η]−(メチルエチル)−ベンゼン]−鉄(1+)等が挙げられる。
【0210】
前記式(3)において、アニオン[MXq+p]の具体例としては、テトラフルオロボレート(BF)、ヘキサフルオロホスフェート(PF)、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF)、ヘキサフルオロアルセネート(AsF)、ヘキサクロロアンチモネート(SbCl)等が挙げられる。
【0211】
また、一般式[MX(OH)]で表されるアニオンを有するオニウム塩を使用することができる。さらに、過塩素酸イオン(ClO)、トリフルオロメタンスルフォン酸イオン(CFSO)、フルオロスルフォン酸イオン(FSO)、トルエンスルフォン酸イオン、トリニトロベンゼンスルフォン酸アニオン、トリニトロトルエンスルフォン酸アニオン等の他のアニオンを有するオニウム塩を使用することもできる。
【0212】
成分(c)として用いられるオニウム塩の例としては、例えば特開昭50−151996号公報、特開昭50−158680号公報等に記載の芳香族ハロニウム塩、特開昭50−151997号公報、特開昭52−30899号公報、特開昭56−55420号公報、特開昭55−125105号公報等に記載のVIA族芳香族オニウム塩、特開昭50−158698号公報等に記載のVA族芳香族オニウム塩、特開昭56−8428号公報、特開昭56−149402号公報、特開昭57−192429号公報等に記載のオキソスルホキソニウム塩、特開昭49−17040号公報等に記載の芳香族ジアゾニウム塩、米国特許第4,139,655号明細書に記載のチオビリリウム塩等が挙げられる。また、鉄/アレン錯体、アルミニウム錯体/光分解ケイ素化合物系開始剤等も挙げることができる。成分(f)として好ましく用いられる光酸発生剤は、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等の芳香族オニウム塩等であり、より好ましくはトリアリールスルホニウム塩である。
【0213】
光酸発生剤の市販品の例としては、UVI−6950、UVI−6970、UVI−6974、UVI−6990(以上、ユニオンカーバイド社製)、アデカオプトマーSP−150、SP−151、SP−170、SP−172(以上、旭電化工業(株)製)、Irgacure184、Irgacure261(以上、BASFジャパン(株)製)、CI−2481、CI−2624、CI−2639、CI−2064(以上、日本曹達(株)製)、CD−1010、CD−1011、CD−1012(以上、サートマー社製)、DTS−102、DTS−103、NAT−103、NDS−103、TPS−103、MDS−103、MPI−103、BBI−103(以上、みどり化学(株)製)、PCI−061T、PCI−062T、PCI−020T、PCI−022T(以上、日本化薬(株)製)、CPI−110A、CPI−101A(以上、サンアプロ(株))等を挙げることができる。これらのうち、UVI−6970、UVI−6974、アデカオプトマーSP−170、SP−172、CD−1012、MPI−103、CPI−110A、CPI−101Aは、これらを含有してなる組成物に高い光硬化感度を発現させることができることから特に好ましい。上記の光酸発生剤は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0214】
なお、光酸発生剤による酸の発生を促進させるために、増感剤を併用してもよい。増感剤の例としては、ジヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシベンゼン、ヒドロキシアセトフェノン、ジヒドロキシジフェニルメタン等が挙げられる。
【0215】
放射線硬化型接着剤用組成物中、光酸発生剤の含有率は、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.2〜5質量%、特に好ましくは0.3〜3質量%である。該含有率が0.1質量%未満であると、放射線硬化性組成物の放射線硬化性が低下し、十分な機械的強度を有する接着剤層を形成することができないため好ましくない。該含有率が10質量%を超えると、光酸発生剤が接着剤層の長期特性に悪影響を及ぼす可能性があるため、好ましくない。
【0216】
本発明の位相差フィルムは、偏光板用保護フィルム/偏光子/偏光板用保護フィルム/液晶セル/本発明の位相差フィルム/偏光子/偏光板用保護フィルムの構成、もしくは偏光板用保護フィルム/偏光子/本発明の位相差フィルム/液晶セル/本発明の位相差フィルム/偏光子/偏光板用保護フィルムの構成で好ましく用いることができる。特に、TN型、VA型、OCB型などの液晶セルに貼り合わせて用いることによって、さらに視野角に優れ、着色が少ない視認性に優れた表示装置を提供することができる。特に本発明に係る偏光板用保護フィルムを用いた偏光板は高温高湿条件下での劣化が少なく、長期間安定した性能を維持することができる。
【0217】
<液晶表示装置>
本発明の位相差フィルム、該フィルムを用いた偏光板は、様々な表示モードの液晶セル、液晶表示装置に用いることができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)及びHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。
【0218】
OCBモードの液晶セルは、棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置である。OCBモードの液晶セルは、米国特許第4583825号、同5410422号の各明細書に開示されている。棒状液晶分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。ベンド配向モードの液晶表示装置は、応答速度が速いとの利点がある。
【0219】
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。
【0220】
VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech. Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(シャープ技報第80号11頁)及び(4)SURVAIVALモードの液晶セル(月刊ディスプレイ5月号14頁(1999年))が含まれる。
【0221】
VAモードの液晶表示装置は、液晶セル及びその両側に配置された二枚の偏光板からなる。液晶セルは、二枚の電極基板の間に液晶を担持している。本発明における透過型液晶表示装置の一つの態様では、本発明のフィルムは、液晶セルと一方の偏光板との間に、一枚配置するか、あるいは液晶セルと双方の偏光板との間に二枚配置する。
【0222】
本発明に係る液晶表示装置の別の態様では、液晶セルと偏光子との間に配置される偏光板の透明保護フィルムとして、本発明の位相差フィルムからなる光学補償シートが用いられる。一方の偏光板の(液晶セルと偏光子との間の)保護フィルムのみに上記の光学補償シートを用いてもよいし、あるいは双方の偏光板の(液晶セルと偏光子との間の)二枚の保護フィルムに、上記の光学補償シートを用いてもよい。一方の偏光板のみに上記光学補償シートを使用する場合は、液晶セルのバックライト側偏光板の液晶セル側保護フィルムとして使用するのが特に好ましい。液晶セルへの張り合わせは、本発明の位相差フィルムはVAセル側にすることが好ましい。保護フィルムは通常のセルロースアセテートフィルムでも良く、本発明のフィルムより薄いことが好ましい。例えば、40〜80μmが好ましく、市販のKC4UY(コニカミノルタオプト株式会社製40μm)、KC5UX(コニカミノルタオプト株式会社製60μm)、TD80(富士フイルム製80μm)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0223】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0224】
<セルロースアセテートの作製>
原料パルプ(αセルロース93%以上:日本製紙(株)製)に酢酸50質量部を加え、1時間活性化処理を行った。
【0225】
上記含酢酸パルプを反応器に入れ、更に反応器に無水酢酸500質量部、硫酸12質量部を投入し室温から徐々に40℃まで温度を上昇させ、40℃に保温しながら1時間保温し、エステル化反応を進行させた。
【0226】
次いで1次中和工程で30%酢酸水溶液250部を加え中和した後、反応停止のため、硫酸を中和するために、30質量%の酢酸マグネシウム水溶液を15質量部を加え中和した後、熟成工程にて残った無水カルボン酸類を加水分解するために、80質量%の酢酸水溶液を150質量部入れ、60℃に保持し、1時間撹拌させた。
【0227】
その後反応停止のために、硫酸を中和するため、30質量%の酢酸マグネシウム水溶液を15質量部加えた。
【0228】
熟成反応停止後のドープに親水性基を持つ平均粒径30μmの親水性シリカ粒子を投入し、5分間撹拌した後、濾過工程においてガラスフィルターで酢酸ドープを濾過した。
【0229】
次に沈殿工程で析出したセルロースアセテート樹脂を濾別し、50℃の温水で5回洗浄し、残っている酢酸水溶液を溶出させた後、70℃で3時間乾燥させ、アセチル基置換度2.45、総アシル基置換度2.45のセルロースアセテートAを得た。重量平均分子量(Mw)は下記測定法を用いて測定した結果19万であった。
【0230】
(重量平均分子量(Mw)の測定)
重量平均分子量Mwは、市販のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。
【0231】
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用する)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500の13サンプルによる校正曲線を使用する。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
【0232】
同様にして、添加剤の量、エステル化反応条件を調整して表2記載のセルロースアセテートB〜Gを作製した。
【0233】
【表2】

【0234】
<位相差フィルム101の作製>
〈微粒子分散液1〉
微粒子(アエロジル R812V 日本アエロジル(株)製) 11質量部
アミン系分散剤(1:ソルスパーズ20000(ルーブリゾール社製)) 6質量部
エタノール 83質量部
以上をディゾルバーで50分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。
【0235】
メチレンクロライドを入れた溶解タンクに十分攪拌しながら、微粒子分散液1をゆっくりと添加した。更に、二次粒子の粒径が所定の大きさとなるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、微粒子添加液を調製した。
【0236】
メチレンクロライド 99質量部
微粒子分散液1 5質量部
下記組成の主ドープ液を調製した。まず加圧溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを添加した。溶剤の入った加圧溶解タンクに表2記載のセルロースアセテートA(アセチル基置換度2.45、重量平均分子量190000)を攪拌しながら投入した。これを加熱し、攪拌しながら、完全に溶解し。これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、主ドープ液を調製した。
【0237】
〈ドープ液の組成〉
メチレンクロライド 340質量部
エタノール 64質量部
セルロースアセテートA 100質量部
一般式(A)の化合物:A−9 8.0質量部
一般式(C)の化合物:15 2.0質量部
ビニル重合化合物:23−2 2.0質量部
微粒子添加液 1質量部
紫外線吸収剤(TINUVIN928:BASFジャパン社製) 1質量部
以上の各材料を密閉容器に投入し、攪拌しながら溶解してドープ液を調製した。次いでドープ液を濾過した後、ドープ液の温度を35℃として、ステンレス製支持体上に、1500mm幅で均一に流延した。ステンレスベルトの温度は30℃に制御した。
【0238】
ステンレスベルト支持体上で、流延(キャスト)したフィルム中の残留溶媒量が75%になるまで溶媒を蒸発させ、次いで剥離張力150N/mで、ステンレスベルト支持体上から剥離した。
【0239】
剥離したフィルムを、160℃の熱をかけながらテンターを用いて幅方向に36%延伸した。延伸開始時の残留溶媒は10%であった。
【0240】
次いで、乾燥ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させた。乾燥温度は130℃で、搬送張力は100N/mとした。
【0241】
以上のようにして、乾燥膜厚40μmの位相差フィルム101を得た。
【0242】
<位相差フィルム102〜133の作製>
位相差フィルム101で用いた微粒子分散液1のアミン系分散剤1を、アミン系分散剤として、2:アジスパーPB−822(味の素社製)、3:DISPERBYK−111(ビックケミー社製)、更にカルボキシル基含有高分子分散剤として、4:ポイズ521(花王社製)を用いて各々微粒子分散液2〜4を同様に作製した。
【0243】
以下、表2記載のセルロースアセテート、各種添加剤種を表3に示すように変更した以外はほぼ同様にして位相差フィルム102〜133を作製した。
【0244】
【表3】

【0245】
<ハードコートフィルム1の作製>
上記作製した位相差フィルム109上に、下記のハードコート層塗布組成物を孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層塗布液を調製し、マイクログラビアコーターを用いて塗布し、80℃で乾燥の後、紫外線ランプを用いて、照射部の照度が80mW/cm、照射量を80mJ/cmとして塗布層を硬化させ、ドライ膜厚9μmのハードコート層を形成し、巻き取り、ロール状のハードコートフィルム1を作製した。
【0246】
<ハードコートフィルム2の作製>
上記作製した位相差フィルム110上に、下記のハードコート層塗布組成物を孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層塗布液を調製し、マイクログラビアコーターを用いて塗布し、80℃で乾燥の後、紫外線ランプを用いて、照射部の照度が80mW/cm、照射量を80mJ/cmとして塗布層を硬化させ、ドライ膜厚6μmのハードコート層を形成し、巻き取り、ロール状のハードコートフィルム2を作製した。
【0247】
(ハードコート層塗布組成物)
下記材料を攪拌、混合しハードコート層塗布組成物とした。
【0248】
熱可塑性樹脂、ポリエステルウレタン樹脂(東洋紡績(株)製、商品名「バイロンUR1350」、固形分濃度33%(トルエン/メチルエチルケトン溶媒=65/35))
6.0質量部
(ポリエステルウレタン樹脂としては、2.0質量部)
ペンタエリスリトールトリアクリレート 30質量部
ペンタエリスリトールテトラアクリレート 30質量部
イルガキュア184(BASFジャパン社製、光重合開始剤) 3.0質量部
イルガキュア907(BASFジャパン社製、光重合開始剤) 1.0質量部
ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン
(BYK−UV3510、ビックケミージャパン社製) 2.0質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 150質量部
メチルエチルケトン 150質量部
<偏光板作製、パネル作製、液晶表示装置評価>
<偏光板201の作製>
ハードコートフィルム1と位相差フィルム101の各々1枚を偏光板の保護フィルムとして用いて、偏光板201を作製した。
【0249】
(a)偏光子の作製
けん化度99.95モル%、重合度2400のポリビニルアルコール(以下、PVAと略記する)100質量部に、グリセリン10質量部、及び水170質量部を含浸させたものを溶融混練し、脱泡後、Tダイから金属ロール上に溶融押出し、製膜した。その後、乾燥・熱処理して、PVAフィルムを得た。
【0250】
得られたPVAフィルムは、平均厚さが25μm、水分率が4.4%、フィルム幅が3mであった。次に、得られたPVAフィルムを予備膨潤、染色、湿式法による一軸延伸、固定処理、乾燥、熱処理の順番で、連続的に処理して、偏光子を作製した。すなわち、PVAフィルムを温度30℃の水中に30秒間浸して予備膨潤し、ヨウ素濃度0.4g/リットル、ヨウ化カリウム濃度40g/リットルの温度35℃の水溶液中に3分間浸した。続いて、ホウ酸濃度4%の50℃の水溶液中でフィルムにかかる張力が700N/mの条件下で、6倍に一軸延伸を行い、ヨウ化カリウム濃度40g/リットル、ホウ酸濃度40g/リットル、塩化亜鉛濃度10g/リットルの温度30℃の水溶液中に5分間浸漬して固定処理を行った。その後、PVAフィルムを取り出し、温度40℃で熱風乾燥し、更に温度100℃で5分間熱処理を行った。得られた偏光子は、平均厚さが13μm、偏光性能については透過率が43.0%、偏光度が99.5%、2色性比が40.1であった。
【0251】
(b)偏光板の作製
下記工程1〜4に従って、偏光子と、位相差フィルム101とハードコートフィルム1を貼り合わせて偏光板201を作製した。
工程1:前述の偏光子を、固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤溶液の貯留槽中に1〜2秒間浸漬した。
工程2:位相差フィルム101とハードコート層に剥離性の保護フィルム(PET製)を張り付けたハードコートフィルム1を偏光子に貼合する面をアルカリけん化処理し、工程1でポリビニルアルコール接着剤溶液に浸漬した偏光子に付着した過剰の接着剤を軽く取り除き、この偏光子を位相差フィルム101と、ハードコートフィルム1とで挟み込んで積層配置した。
工程3:積層物を、二つの回転するローラにて20〜30N/cmの圧力で約2m/minの速度で貼り合わせた。このとき、気泡が入らないように注意して実施した。
工程4:工程3で作製した試料を、温度80℃の乾燥機中にて5分間乾燥処理し、偏光板を作製した。
工程5:工程4で作製した偏光板の位相差フィルム101に市販のアクリル系粘着剤を乾燥後の厚さが25μmとなるように塗布し、110℃のオーブンで5分間乾燥して粘着層を形成し、粘着層に剥離性の保護フィルムを張り付けた。この偏光板を960×600mmサイズに裁断(打ち抜き)し、偏光板201を作製した。
【0252】
<偏光板202〜228、236〜238の作製>
偏光板201の作製において、位相差フィルム101を位相差フィルム102〜108、111〜133に、それぞれ変更した以外は同様にして偏光板202〜228、236〜238を作製した。
【0253】
<偏光板229の作製>
(接着剤の調製)
(a)UV接着剤の調製
(1)UV接着剤1の調製
東亜合成株式会社製「アロニクスM−315」12部、ダイセル化学工業株式会社製「セロキサイド2021P」32.5部、株式会社クラレ製「クラレポリオールC−2090」10部、サンアプロ株式会社製「CPI−110A」2.5部、阪本薬品工業株式会社製「SR−NPG」33部、三洋化成工業株式会社製「サンニックスGP−400」8部、BASFジャパン社製「Irgacure184」2部を混合し、UV接着剤1を調製した。
【0254】
(2)UV接着剤2の調製
4−ヒドロキシブチルアクリレート58.8部、ビニルエステル樹脂(ビスフェノール系ビニルエステル)19.6部、ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン19.6部、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド1.1部、日本化薬株式会社製「KAYAMER PM−2」0.1部、2−メルカプトベンゾチアゾール0.5部、住友化学株式会社製「Sumilizer GA80」0.3部を混合し、UV接着剤2を調製した。
【0255】
(貼合方法)
(a)UV接着剤
UV接着剤1または2をワイヤーバーコータ#3を用いて、位相差フィルム101上に塗工し、その上に作製したPVAフィルムを気泡等の欠陥が入らないように貼合した。次に、ハードコートフィルム1上にUV接着剤1をワイヤーバーコータ#3を用いて塗工し、上記貼合したフィルムのPVA上に、気泡等の欠陥が入らないように貼合した。ガラス板上にハードコートフィルム1が上になるようにセルロースアセテートフィルムの四方をテープで固定し、メタルハライドランプ(照度220mW/cm、照射光量1,000mJ/cm)で位相差フィルム101の側から光照射し、23℃、50%RHで24時間静置した。
【0256】
その後、作製した偏光板の位相差フィルム101側に市販のアクリル系粘着剤を乾燥後の厚さが25μmとなるように塗布し、110℃のオーブンで5分間乾燥して粘着層を形成し粘着層に剥離性の保護フィルムを張り付けた。
【0257】
このようにして偏光板229を作製した。
【0258】
<偏光板230〜235の作製>
偏光板229の作製において、位相差フィルム101を位相差フィルム103、113、117、121、127、130にそれぞれ変更した以外は同様にして偏光板230〜235を作製した。
【0259】
<偏光板239〜276の作製>
偏光板201〜238の作製と同様にして表6の位相差フィルムの組み合わせ、及びUV接着剤を用いて、偏光板239〜276を作製した。
【0260】
<液晶表示装置401の作製>
SONY製40型ディスプレイKDL−40V5 の液晶パネルの偏光板を剥がし、視認側の偏光板として上記作製した偏光板201をハードコート層が視認側となるようにして、粘着剤層と液晶セルガラスとを貼合した。また、バックライト側には、上記手順と同様に位相差フィルム101が液晶セル側となるように貼合した偏光板239を厚さ25μmのアクリル系粘着剤を用いて液晶セルガラスに貼合して、液晶パネル301を作製した。次に液晶パネル301を液晶テレビにセットし、液晶表示装置401を作製した。
【0261】
<液晶表示装置402〜438の作製>
液晶表示装置401の作製において、偏光板201を偏光板202〜238に、それぞれ変更した以外は同様に、ハードコート層が視認側となるようにして、粘着剤層と液晶セルガラスとを貼合した。また、バックライト側には、上記手順と同様に偏光板239を偏光板240〜276に、それぞれ変更した以外は同様に、厚さ25μmのアクリル系粘着剤を用いて液晶セルガラスに貼合して、液晶パネル302〜338を作製した。次に液晶パネル302〜338を液晶テレビにセットし、液晶表示装置402〜438を作製した。
【0262】
[評価]
以下、位相差フィルムの諸特性は以下の方法で測定して実施した。
【0263】
(吸湿膨張係数)
吸湿膨張係数(cm/cm・%RH)は下記式で表される。下記において、L4は23℃のある相対湿度(RH4)に変化させた時のフィルム試料の長さ(mm)、L0は標準状態(23℃、55%RH)におけるフィルム試料の原寸(mm)、RH0は標準相対湿度(%RH)、RH4は上記の変化させた相対湿度(%RH)である。
【0264】
β={(L4−L0)/L0}/(RH4−RH0)
吸湿膨張係数は相対湿度1%当たりの寸法の変化であり、湿度の変動によって変化が大きいフィルムか小さいフィルムかを表す。本発明において、吸湿膨張係数は8×10−5(cm/cm・%RH)以下であることが好ましく、6×10−5(cm/cm・%RH)以下であることがより好ましく、4×10−5(cm/cm・%RH)以下であることが更に好ましい。
【0265】
(湿熱寸法安定性)
位相差フィルム試料表面の2箇所(MD方向、長尺方向に)に十文字型の印を付し、熱処理(条件:80℃,90%RH,200時間)を施し、光学顕微鏡で印間の距離を測定した。熱処理前の距離をa1とし、熱処理後の距離をa2として、下記式で寸法変化率を算出した。
寸法変化率(%)=(a1−a2)/a1×100
(剥離性)
位相差フィルム製膜時のベルト状金属支持体とウェブの剥離性を下記観点で評価した。
【0266】
5:剥離性が非常に良く、剥離後にフィルムに光学的なムラが全く視認できなかった。
【0267】
4:剥離性が良く、剥離後にフィルムに光学的なムラわずかに視認できた。
【0268】
3:剥離でき、剥離後にフィルムにスジ状の膜厚ムラは無いが、光学的なムラが視認できた。
【0269】
2:剥離性が悪く、剥離後にフィルムにスジ状の膜厚ムラが視認できた。
【0270】
1:剥離性が非常に悪く、剥離時にフィルムが部分的に伸張された。
【0271】
(内部ヘイズ)
まず本発明でいう内部ヘイズとは、フィルムの内部の散乱因子により発生するヘイズであり、内部とは、フィルム表面から5μm以上の部分である。
【0272】
この内部ヘイズは、フィルム屈折率±0.05の屈折率の溶剤をフィルム界面に滴下して、フィルム表面のヘイズをできるだけ無視できる状態にして、ヘイズメーターにより測定される。
【0273】
〈フィルム内部のヘイズ(以下、内部ヘイズと略す)測定装置〉
ヘイズメーター(濁度計)(型式:NDH 2000、日本電色(株)製)
光源は、5V9Wハロゲン球、受光部は、シリコンフォトセル(比視感度フィルター付き)を用いている。
【0274】
本発明においては、この装置にてフィルム屈折率±0.05の屈折率の溶剤をフィルム界面に滴下した場合のフィルムのヘイズ測定において、その値が0.02以下であることが好ましい。測定はJIS K−7136に準じて測定した。
【0275】
内部ヘイズ測定は以下のように行う。図1〜4を持って説明する。
【0276】
まず、フィルム以外の測定器具のブランクヘイズ1を測定する。
【0277】
1.きれいにしたスライドガラスの上にグリセリンを一滴(0.05ml)たらす。このとき液滴に気泡が入らないように注意する。ガラスは見た目がきれいでも汚れていることがあるので必ず洗剤で洗浄したものを使用する。図1参照
2.その上にカバーガラスを載せる。カバーガラスは押さえなくてもグリセリンは広がる。
【0278】
3.ヘイズメーターにセットしブランクヘイズ1を測定する。
【0279】
ついで、試料を含めたヘイズ2を測定する。
【0280】
4.スライドガラス上にグリセリンを滴下する。(0.05ml) 図1参照
5.その上に測定する試料フィルムを載せる。 図2参照
6.試料フィルム上にグリセリンを滴下する。(0.05ml) 図3参照
7.その上にカバーガラスを載せる。 図4参照
8.ヘイズメーターにセットしヘイズ2を測定する。
【0281】
9.(ヘイズ2)−(ヘイズ1)=(内部ヘイズ)を算出する。
【0282】
上記測定にて使用したガラス、グリセリンは以下の通りである。
【0283】
ガラス:MICRO SLIDE GLASS S9213 MATSUNAMI
グリセリン: 関東化学製 鹿特級
[評価]
以下、偏光板201〜238、偏光板239〜276、及び液晶表示装置401〜438について下記の評価を行った。
【0284】
(偏光板)
a.変形故障の観察
上記作製した偏光板を、熱処理(条件:80℃,90%RH,200時間)を施し、偏光板201〜238はハードコート層側から、また偏光板239〜276はバックライト側保護フィルム側から観察して、偏光子との貼合性に影響される変形故障の状態を以下の基準で観察した。
【0285】
◎:変形故障が全くみられない
○:僅かな部分で変形故障がみられるが、実害上問題なし
△:部分的に変形故障がみられる。実害上問題あり
×:部分的な変形故障が、遠くから見てもはっきりと発生している事がみえる
b.密着性(貼合性)評価
作製した各偏光板の位相差フィルムを有する側の表面に、カッターナイフで碁盤目状に縦11本、横11本の切り込みを入れて、合計100個の正方形の升目を刻み、日東電工(株)製のポリエステル粘着テープ“No.31B”を圧着して、密着試験を行った。剥がれの有無を目視で観察し、下記の4段階評価を行った。
【0286】
◎:100個の升目中に剥がれが全く認められなかったもの
○:100個の升目中に剥がれが認められたものが2升以内のもの
△:100個の升目中に剥がれが認められたものが3〜10升のもの
×:100個の升目中に剥がれが認められたものが10升を超えたもの
(液晶表示装置)
a:スジの評価
上記作製した各液晶表示装置401〜438について、熱による劣化を見るために60℃の条件で300時間処理した後、23℃、55%RHに戻した。その後、電源を入れてバックライトを点灯させてから2時間後の黒表示時のスジ(筋)を目視により下記基準で評価した。
【0287】
◎:スジがまったくない
○:中央に弱いスジが存在する
△:中央から端部にかけて弱いスジが存在する
×:全面に強いスジが存在する
スジは○以上の評価であれば、実用上問題ない
b:視認性の評価
上記作製した各液晶表示装置401〜438について、60℃、90%RHの条件で100時間放置した後、23℃、55%RHに戻した。その後、表示装置の表面を目視で観察し下記の基準による評価をした。
【0288】
◎:表面に波打ち状のムラは全く認められない
○:表面にわずかに波打ち状のムラが認められる
△:表面に細かい波打ち状のムラがやや認められる
×:表面に細かい波打ち状のムラが認められる
以上の評価結果を下記表4〜7に示す。
【0289】
【表4】

【0290】
【表5】

【0291】
【表6】

【0292】
【表7】

【0293】
表4に示した結果からわかるように、本発明の位相差フィルムは内部ヘイズ、吸湿膨張係数、湿熱寸法安定性、及び剥離性に優れた性能である。
【0294】
また、表5〜7に示した結果から判るように、本発明の位相差フィルムから作製した偏光板は、高温高湿下で保存した際の変形故障が無く、偏光子との貼合性に優れている。また、当該偏光板を液晶表示装置に用いた際、スジ、視認性の両方に優れた性能を発揮する。
【0295】
また、ケン化処理せずUV硬化接着剤で位相差フィルムと偏光子を貼合した偏光板229〜233、及び偏光板267〜271は、ケン化処理した位相差フィルムと同等の偏光子との貼合性を実現できることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、酸化ケイ素微粒子とアミン系分散剤及びカルボキシル基含有高分子分散剤から選ばれる1種以上の分散剤と有機溶媒とから分散されてなる酸化ケイ素微粒子分散体と、アセチル基置換度2.0〜2.5のセルロースアセテートとを含有することを特徴とする位相差フィルム。
【請求項2】
前記分散剤がアミン系分散剤であることを特徴とする請求項1に記載の位相差フィルム。
【請求項3】
前記位相差フィルムが環状構造を側鎖に有する重合体を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の位相差フィルム。
【請求項4】
前記セルロースアセテートがパルプ由来のものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の位相差フィルムを偏光子の少なくとも一方の面に有することを特徴とする偏光板。
【請求項6】
偏光子をセルロースアセテートフィルムと請求項1〜4のいずれか1項に記載の位相差フィルムとで挟持する偏光板の製造方法であって、
(a)偏光子と該偏光子の第1の面の上に形成された前記セルロースアセテートフィルムとの間、および前記偏光子と該偏光子の第2の面の上に形成された前記位相差フィルムとの間に、放射線硬化型接着剤用組成物を供給する工程と、
(b)前記偏光子、前記セルロースアセテートフィルムおよび、前記位相差フィルムとを、前記放射線硬化型接着剤用組成物を介して貼合する工程と、
(c)放射線を照射することにより前記放射線硬化型接着剤用組成物を硬化させて、放射線硬化型接着剤層を形成する工程とを含み、少なくとも前記位相差フィルムはケン化処理を行っていないことを特徴とする偏光板の製造方法。
【請求項7】
請求項5に記載の偏光板、または請求項6に記載の偏光板の製造方法によって製造された偏光板、を液晶セルの少なくとも一方の面に有することを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−247531(P2012−247531A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117744(P2011−117744)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(303000408)コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】