説明

位相差フィルムを評価する評価方法

【課題】パターンを有する位相差フィルムの領域の直線性又はピッチの精度を簡単に評価しうる評価方法を提供する。
【解決手段】光源と基準部材と位相差フィルムと着脱可能な偏光フィルターと光検出器とをこの順に備える評価系において、基準部材は偏光子を備え且つ一の基準方向に延在する透光領域を有し、位相差フィルムは、面内に均一な位相差を有する第一位相差フィルムと、一方向に延在する複数の異方性領域及び等方性領域を面内において交互に有する第二位相差フィルムとを備え、基準部材の基準方向における複数の地点を偏光フィルターを装着せずに観察して、基準方向に平行な基準線を前記複数の地点で同様に設定することと、偏光フィルターを装着して観察して、基準線と光が検出された部分の縁部とのズレ量を測定することとを行い、ズレ量の相違から異方性領域及び等方性領域の直線性を評価する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相差フィルムを評価する評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
立体画像表示装置のある態様として、画素と位置合わせされた状態で設けられた、特定のパターンを有する位相差フィルムを備えるものが知られている。例えば、パッシブ形式の立体画像表示装置では、通常、同一画面内に右目用の画像と左目用の画像とを同時に表示させ、これらの画像を専用のメガネを用いて左右の目それぞれに振り分けるようにしている。そのため、パッシブ形式の立体画像表示装置には、右目用の画像及び左目用の画像のそれぞれを、異なる偏光状態で表示させることが求められる。そのような表示を達成するため、パッシブ形式の立体画像表示装置には、2種類以上の異なる位相差(レターデーション)を有する複数種類の領域からなるパターンを有する位相差フィルムが設けられることがある。また、2以上の異なる方向に遅相軸を有する複数種類の領域からなるパターンを有する位相差フィルムが設けられることもある(特許文献1〜5参照)。
【0003】
前記のようなパターンを有する位相差フィルムは、液晶表示装置からなる立体画像表示装置においては、通常、液晶パネルに貼り合せられて使用される。この際、当該位相差フィルムの位置は、液晶パネルの画素領域の配置に応じて調整される。具体的には、液晶パネルの画素領域と、位相差フィルムにおいてパターンを構成する領域とが精密に重なるように位置を調整することが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−170557号公報
【特許文献2】特許第3461680号公報
【特許文献3】特許第3342454号公報
【特許文献4】特開2005−49865号公報
【特許文献5】特許第4553769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、パターンを有する位相差フィルムにおいて当該パターンを構成する領域は、一方向へ延在するように形成される。このように、パターンを構成する領域が、真っ直ぐに所望の一方向へと延在する性質を、直線性と呼ぶ。ところが、従来は、パターンを構成する領域が延在する方向が所望の方向からずれたり、前記領域が蛇行して一方向へ延在しなかったりして、直線性が損なわれることがあった。
また、例えば、位相差フィルムのパターンを構成する領域のピッチが所望の大きさとならないこともあった。
【0006】
このように、直線性が損なわれたり、所望のピッチとならなかったりして、パターンを構成する領域の精度が十分ではなくなると、液晶パネルの画素領域と位相差フィルムのパターンを構成する領域との位置合わせを高い精度で行うことができない。このため、直線性又はピッチの精度が低い位相差フィルムを用いる際に、位相差フィルムに遮光層を設けたものも存在する(例えば、特開2002−185983号公報)。ところが、このような遮光層は、画面の輝度を低下させることになる。
【0007】
そこで、パターンを有する位相差フィルムにおいて、パターンを構成する領域の直線性を高め、また、パターンを構成する領域のピッチを高い精度で制御しうる技術の開発が進められている。ところが、従来は、形成されたパターンを評価するのに、光学顕微鏡による目視評価を行わざるを得ず(例えば、特開2011−128589号公報、特開2011−145668号公報)、パターンを構成する領域の直線性及びピッチの精度を簡単に評価する方法が無かった。このため、開発された技術によって前記領域の直線性及び前記領域のピッチの精度をどの程度高めうるかを評価するのに手間及び時間を多く要し、開発の妨げとなっていた。
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みて創案されたものであって、パターンを有する位相差フィルムの領域の直線性又はピッチの精度を簡単に評価しうる評価方法を提供するものを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、透光領域及び遮光領域を備えた基準部材を基準とすること、及び、偏光を利用して位相差フィルムを観察することを組み合わせて、位相差フィルムにおいてパターンを構成する領域の基準からのズレ量を測定することにより、このズレ量から位相差フィルムの前記領域の直線性及びピッチの精度を評価しうることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0010】
〔1〕 光源と、基準部材と、位相差フィルムと、着脱可能な偏光フィルターと、光検出器とをこの順に備える評価系において、前記位相差フィルムを評価する評価方法であって、
前記基準部材は、偏光子を備え、且つ、一の基準方向に延在する透光領域を有し、
前記位相差フィルムは、当該位相差フィルムの有効領域において面内に均一な位相差を有する第一位相差フィルムと、一方向に延在する複数の異方性領域及び等方性領域を面内において交互に有する第二位相差フィルムとを備え、
前記光源を光らせて、前記基準部材の前記透光領域の前記基準方向における複数の地点を、前記偏光フィルターを装着せずに前記光検出器で観察して、前記基準方向に平行な基準線を前記複数の地点で同様に設定することと、前記偏光フィルターを装着して前記光検出器で観察して、前記基準線と前記光源が出した光が検出された部分の縁部とのズレ量を測定することとを行い、
前記ズレ量の前記基準方向における前記複数の地点間での相違から、前記第二位相差フィルムの前記異方性領域及び前記等方性領域の直線性を評価する、評価方法。
〔2〕 前記基準部材が、液晶パネルであり、
前記基準部材の前記透光領域が、前記液晶パネルの画素領域であり、
前記液晶パネルに、前記基準方向に平行な線及び前記基準方向に垂直な線を有する格子を表示させた状態において、前記光検出器による観察を行う、〔1〕記載の評価方法。
〔3〕 前記基準部材が、前記光源が出す光を透過させうる基板と、前記基板上に形成されて前記基準方向と平行に延在する複数のブラックストライプとを備え、
前記基準部材の前記透光領域が、前記ブラックストライプ同士の間に設けられている、〔1〕記載の評価方法。
〔4〕 前記偏光フィルターが、円偏光フィルターである、〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の評価方法。
〔5〕 前記第一位相差フィルムの位相差が、1/4波長である、〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載の評価方法。
〔6〕 前記第二位相差フィルムの前記異方性領域の位相差が、1/2波長である、〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載の評価方法。
〔7〕 光源と、基準部材と、位相差フィルムと、着脱可能な偏光フィルターと、光検出器とをこの順に備える評価系において、前記位相差フィルムを評価する評価方法であって、
前記基準部材は、偏光子を備え、且つ、一の基準方向に延在する透光領域を有し、
前記位相差フィルムは、一方向に延在し、遅相軸方向が異なる複数の異方性領域を面内において交互に有し、
前記光源を光らせて、前記基準部材の前記透光領域の前記基準方向における複数の地点を、前記偏光フィルターを装着せずに前記光検出器で観察して、前記基準方向に平行な基準線を前記複数の地点で同様に設定することと、前記偏光フィルターを装着して前記光検出器で観察して、前記基準線と前記光源が出した光が検出された部分の縁部とのズレ量を測定することとを行い、
前記ズレ量の前記基準方向における前記複数の地点間での相違から、前記位相差フィルムの前記異方性領域の直線性を評価する、評価方法。
〔8〕 前記基準部材が、液晶パネルであり、
前記基準部材の前記透光領域が、前記液晶パネルの画素領域であり、
前記液晶パネルに、前記基準方向に平行な線及び前記基準方向に垂直な線を有する格子を表示させた状態において、前記光検出器による観察を行う、〔7〕記載の評価方法。
〔9〕 前記基準部材が、前記光源が出す光を透過させうる基板と、前記基板上に形成されて前記基準方向と平行に延在するブラックストライプとを備え、
前記基準部材の前記透光領域が、前記ブラックストライプ同士の間に設けられている、〔7〕記載の評価方法。
〔10〕 前記偏光フィルターが、円偏光フィルターである、〔7〕〜〔9〕のいずれか一項に記載の評価方法。
〔11〕 前記位相差フィルムの前記異方性領域の位相差が、1/4波長である、〔7〕〜〔10〕のいずれか一項に記載の評価方法。
〔12〕 光源と、基準部材と、位相差フィルムと、着脱可能な偏光フィルターと、光検出器とをこの順に備える評価系において、前記位相差フィルムを評価する評価方法であって、
前記基準部材は、偏光子を備え、且つ、一の基準方向に延在する複数の透光領域を有し、
前記位相差フィルムは、当該位相差フィルムの有効領域において面内に均一な位相差を有する第一位相差フィルムと、一方向に延在する複数の異方性領域及び等方性領域を面内において交互に有する第二位相差フィルムとを備え、
前記光源を光らせて、前記基準部材の前記透光領域の前記基準方向に垂直な方向における複数の地点を、前記偏光フィルターを装着せずに前記光検出器で観察して、前記基準方向に平行な基準線を前記複数の地点で同様に設定することと、前記偏光フィルターを装着して前記光検出器で観察して、前記基準線と前記光源が出した光が検出された部分の縁部とのズレ量を測定することとを行い、
前記ズレ量の前記基準方向に垂直な方向における前記複数の地点間での相違から、前記第二位相差フィルムの異方性領域及び等方性領域のピッチの精度を評価する、評価方法。
〔13〕 光源と、基準部材と、位相差フィルムと、着脱可能な偏光フィルターと、光検出器とをこの順に備える評価系において、前記位相差フィルムを評価する評価方法であって、
前記基準部材は、偏光子を備え、且つ、一の基準方向に延在する複数の透光領域を有し、
前記位相差フィルムは、一方向に延在し、遅相軸方向が異なる複数の異方性領域を面内において交互に有し、
前記光源を光らせて、前記基準部材の前記透光領域の前記基準方向に垂直な方向における複数の地点を、前記偏光フィルターを装着せずに前記光検出器で観察して、前記基準方向に平行な基準線を前記複数の地点で同様に設定することと、前記偏光フィルターを装着して前記光検出器で観察して、前記基準線と前記光源が出した光が検出された部分の縁部とのズレ量を測定することとを行い、
前記ズレ量の前記基準方向に垂直な方向における前記複数の地点間での相違から、前記位相差フィルムの前記異方性領域のピッチの精度を評価する、評価方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の位相差フィルムを評価する評価方法によれば、パターンを有する位相差フィルムの領域の直線性又はピッチの精度を簡単に評価できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、第二位相差フィルムが有しうるパターンの一例を概略的に示す上面図である。
【図2】図2は、第二位相差フィルムの異方性領域及び等方性領域と液晶パネルの画素との相対的な位置関係の例を概略的に示す上面図である。
【図3】図3は、本発明の第一実施形態に係る評価系を模式的に示す分解斜視図である。
【図4】図4は、本発明の第一実施形態において液晶パネルに表示させる映像を模式的に示す平面図である。
【図5】図5は、本発明の第一実施形態において、円偏光フィルターを装着せずに、基準方向に平行な線と基準方向Xに垂直な線との交差点を観察した際にマイクロスコープの視野に現れる像を模式的に示す図である。
【図6】図6は、本発明の第一実施形態において、円偏光フィルターを装着して、基準方向Xに平行な線と基準方向Xに垂直な線との交差点を観察した際にマイクロスコープの視野に現れる像を模式的に示す図である。
【図7】図7は、本発明の第一実施形態において液晶パネルに表示させる映像を模式的に示す平面図である。
【図8】図8は、円偏光フィルターを装着して観察した場合に観察される、基準方向Xに平行な一本の線が基準方向Xに垂直な複数の線と交わる複数の交差点の様子を模式的に示す図である。
【図9】図9は、本発明の第一実施形態において液晶パネルに表示させる映像を模式的に示す平面図である。
【図10】図10は、円偏光フィルターを装着して観察した場合に観察される、基準方向Xに垂直な一本の線が基準方向Xに平行な複数の線と交わる複数の交差点の様子を模式的に示す図である。
【図11】図11は、本発明の第二実施形態に係る評価系を模式的に示す分解斜視図である。
【図12】図12は、本発明の第二実施形態において複層ブラックストライプフィルムをマイクロスコープ側から見た様子を模式的に示す平面図である。
【図13】図13は、本発明の第二実施形態において、円偏光フィルターを装着せずに、複層ブラックストライプフィルムのある地点を観察した際にマイクロスコープの視野に現れる像を模式的に示す図である。
【図14】図14は、本発明の第二実施形態において、円偏光フィルターを装着して、複層ブラックストライプフィルムの地点を観察した際にマイクロスコープの視野に現れる像を模式的に示す図である。
【図15】図15は、本発明の第三実施形態に係る評価系を模式的に示す分解斜視図である。
【図16】図16は、本発明の第四実施形態に係る評価系を模式的に示す分解斜視図である。
【図17】図17は、実施例1において液晶パネルに表示させる映像を模式的に示す平面図である。
【図18】図18は、実施例1の結果を示す図である。
【図19】図19は、実施例3の結果を示す図である。
【図20】図20は、実施例5の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下に説明する実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施してもよい。
【0014】
以下の説明において、「長尺」とは、幅に対して、少なくとも5倍以上の長さを有するものをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するものをいう。
また、「1/2波長板」、「1/4波長板」、「偏光板」及び「基板」とは、剛直な部材だけでなく、例えば樹脂製のフィルムのように可撓性を有する部材も含む。
【0015】
また、「位相差」とは、別に断らない限り、面内位相差(面内レターデーション)のことを意味する。フィルムの面内位相差は、フィルムの厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率nx、前記面内方向であってnxの方向に垂直な方向の屈折率ny、フィルムの膜厚dを用いて、(nx−ny)×dで表される値である。面内位相差は、市販の位相差測定装置(例えば、王子計測機器社製「KOBRA−21ADH」、フォトニックラティス社製「WPA−micro」)あるいはセナルモン法を用いて測定できる。
【0016】
また、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」及び「メタクリレート」のことを意味し、「(メタ)アクリル」とは「アクリル」及び「メタクリル」のことを意味する。
また、「紫外線」とは、波長が1nm以上400nm以下の光のことを意味する。
【0017】
また、構成要素の方向が「平行」、「垂直」及び「直交」とは、別に断らない限り、本発明の効果を損ねない範囲内、例えば±5°の範囲内での誤差を含んでいてもよい。さらに、ある方向に「沿って」とは、別に断らない限り、ある方向に「平行に」との意味である。
また、以下の説明において、偏光板の透過軸、位相差フィルムの遅相軸等のような、光学素子の光学軸の角度は、別に断らない限り、厚み方向から見た角度のことを意味する。
【0018】
[1.第一実施形態]
〔1.1.評価対象〕
本発明の第一実施形態において評価対象となる位相差フィルムは、第一位相差フィルムと第二位相差フィルムとを備える複層構造のフィルムである。また、位相差フィルムは、第一位相差フィルム及び第二位相差フィルム以外にも、例えば接着層などの他の層を備えていてもよい。
【0019】
(第一位相差フィルム)
第一位相差フィルムは、位相差フィルムの有効領域において、面内に均一な位相差を有する。
ここで有効領域とは、位相差フィルムを立体画像表示装置に設けた場合に、画像を表示する光が当該位相差フィルムを透過しうる領域のことを意味する。一般に、立体画像表示装置の画面は外周をフレームに囲まれており、このフレームに囲まれた画面を厚み方向において位相差フィルムに投影した領域が、通常は位相差フィルムの有効領域である。この場合、有効領域以外の外周には、液晶パネルとの位置合わせ用のアライメントマーク等を有していてもよい。
【0020】
また、面内に均一な位相差を有するとは、第二位相差フィルムとは異なり、異方性領域及び等方性領域からなるパターンを第一位相差フィルムが有しないという意味である。具体的には、第一位相差フィルムの面内の位相差のばらつきが、好ましくは±20nm以内、より好ましくは±10nm以内であれば、位相差が均一である。
【0021】
さらに、第一位相差フィルムは、通常、位相差フィルムの有効領域において、面内において遅相軸方向が均一となっている。ここで、面内において遅相軸方向が均一であるとは、第二位相差フィルムの面内の遅相軸方向のばらつきが、好ましくは±5°以内、より好ましくは±1°以内であることをいう。
【0022】
第一位相差フィルムの具体的な位相差は、位相差フィルムを適用する立体画像表示装置の構成に応じて設定してもよい。例えば、第一位相差フィルムの位相差を1/4波長にして、第一位相差フィルムが1/4波長板として機能するようにしてもよい。位相差が1/4波長であるとは、位相差が、透過光の波長範囲の中心値の1/4の値から、通常±65nm、好ましくは±30nm、より好ましくは±10nmの範囲にあるか、または、中心値の3/4の値から通常±65nm、好ましくは±30nm、より好ましくは±10nmの範囲にあることを示す。前記の透過光は通常は可視光であるため、透過光の波長範囲の中心値としては、通常、透過光の波長範囲の中心値である550nmを適用する。
【0023】
第一位相差フィルムが矩形のフィルムである場合、当該第一位相差フィルムの長手方向と、第一位相差フィルムの遅相軸方向とがなす角は、立体画像表示装置の態様に応じて設定してもよい。例えば、当該第一位相差フィルムの遅相軸方向を、長手方向と平行な方向又は垂直な方向にしてもよい。また、例えば、第一位相差フィルムとして斜め延伸した延伸フィルムを用いることにより、当該第一位相差フィルムの遅相軸方向を、長手方向と45°程度(例えば45°±5°、好ましくは45°±1°)の角度をなす方向としてもよい。
【0024】
(第二位相差フィルム)
第二位相差フィルムは、面内の異なる位置に、異方性領域及び等方性領域を有する。
ここで、異方性領域とは、面内の屈折率が異方性を有する領域のことをいう。異方性領域は、面内の屈折率が異方性を有することにより、面内位相差を有する。異方性領域の面内位相差の具体的な大きさは、例えば、1/2波長であってもよい。これにより、異方性領域は1/2波長板として機能しうる。ここで位相差が1/2波長であるとは、測定波長550nmで測定した面内位相差の値が、通常225nm以上、好ましくは245nm以上、また、通常285nm以下、好ましくは265nm以下であることをいう。
【0025】
また、等方性領域とは、面内の屈折率が等方性を有する領域のことをいう。等方性領域は、面内の屈折率が等方性を有することにより、位相差を有しないか、有するとしてもその位相差は小さい。等方性領域の位相差の具体的な大きさは、ほぼゼロであることが好ましい。具体的には、測定波長550nmで測定した面内位相差の値が、通常20nm以下、好ましくは10nm以下が好ましく、5nm以下がより好ましい。下限は理想的には0nmであるが、通常は1nm以上である。
【0026】
第二位相差フィルムは、前記の異方性領域及び等方性領域を、それぞれ複数有する。これらの異方性領域及び等方性領域は、一方向に延在して形成されている。また、異方性領域及び等方性領域は、その延在する方向に交差する方向では交互に並んでいて、全体として位相差フィルムの用途に応じたパターンを構成している。通常、位相差フィルムは液晶表示装置の液晶パネルと組み合わせて使用されるので、液晶パネルの画素の配置に応じて、第二位相差フィルムの異方性領域及び等方性領域の具体的なパターンが設定される。
【0027】
液晶表示装置がパッシブ形式の立体画像表示装置である場合、液晶パネルは通常2組の画素群、即ち、右目用画像を表示する画素群及び左目用画像を表示する画素群を有する。この場合、第二位相差フィルムの異方性領域及び等方性領域のパターンは、これらの画素群のうちの一方に対応する領域が等方性領域であり、他方に対応する領域が異方性領域であるパターンとしてもよい。
【0028】
図1は、第二位相差フィルムが有しうるパターンの一例を概略的に示す上面図である。なお、図1において、異方性領域には斜線を付して示す。
図1に示すように、第二位相差フィルム10において、異方性領域11及び等方性領域12は、通常は一方向Xに延在する帯状の形状を有する。また、第二位相差フィルム10は、面内において異方性領域11と等方性領域12とを、異方性領域11及び等方性領域12が延在する方向Xに垂直な方向Yにおいて交互に有する。したがって、第二位相差フィルム10は、これらの異方性領域11及び等方性領域12からなるストライプ状のパターンを有している。また、第二位相差フィルム10は、異方性領域11と等方性領域12との境界線13を、一方向に延在する線として有する。
【0029】
異方性領域11の幅W11及び等方性領域12の幅W12は、通常、位相差フィルムと組み合わせる液晶パネルの画素の寸法に合わせて設定される。一般に、液晶パネルの画素の寸法は均一であるため、異方性領域11の幅W11及び等方性領域12の幅W12は同程度に設定されることが多い。
また、異方性領域11と等方性領域12との境界線13は、通常、液晶パネルの画素間にあるブラックマトリックスに対応する位置に位置合わせすることになる。ブラックマトリックスは、通常は液晶パネルが備えるカラーフィルターにおいて、液晶パネルの画素の間に相当する位置に形成される。そして、このブラックマトリックスは、可視光線を遮りうる材料により形成され、ある程度の幅を有している。したがって、当該ブラックマトリックスの幅の分は、異方性領域11の幅W11と等方性領域12の幅W12とに差があってもよいので、異方性領域11の幅W11と等方性領域12の幅W12は、必ずしも同じでなくても構わない。
【0030】
図2は、第二位相差フィルム10の異方性領域11及び等方性領域12と液晶パネルの画素との相対的な位置関係の例を概略的に示す上面図である。図2の例において、液晶パネル20は、パッシブ形式の立体画像表示装置用の液晶パネルであり、2組の画素群、即ち右目用画像を表示する画素群及び左目用画像を表示する画素群を有している。画素R、画素G及び画素Bは2組の画素群のうちの第1の画素群を構成し、画素R、画素G及び画素Bは第2の画素群を構成している。各画素群の画素は、液晶パネル20の長手方向(図中座標軸X方向)に整列し、第1の画素群からなる画素領域21及び第2の画素群からなる画素領域22を構成している。
【0031】
画素領域21及び22は、液晶パネル20の幅方向(座標軸Y方向)において、交互に配列されている。したがって、第1の画素群と第2の画素群とは、液晶パネル20の長手方向(座標軸X方向)に延在するブラックマトリックス23によって分けられている。この例において、位相差フィルムは、当該位相差フィルムの第二位相差フィルム10の異方性領域11と等方性領域12との境界線13が、ブラックマトリックス23上に位置するよう位置合わせされる。
【0032】
このような位置合わせを行う場合、第二位相差フィルム10の異方性領域11又は等方性領域12の直線性が損なわれたりピッチの精度が低下したりすると、異方性領域11と等方性領域12との境界線13がブラックマトリックス23上に位置することができず、所望の立体画像表示装置を製造できないことがある。例えば、境界線13がブラックマトリックス23上に位置しないと、クロストークが生じ、不良品の原因となる可能性がある。ここでクロストークとは、立体画像表示装置において、左目用画像が右目で視認されたり、右目用画像が左目で視認されたりする現象を意味する。
【0033】
そこで、位相差フィルムが備える第二位相差フィルム10の異方性領域11及び等方性領域12の直線性及びピッチを評価して、その位相差フィルムが適切な位置合わせが可能なものであるか否かの選別を行えば、立体画像表示装置の不良品の発生を抑制できる。この際、本発明の第一実施形態に係る評価方法を用いれば、位相差フィルムの評価を簡単に行うことが可能である。
【0034】
第二位相差フィルムの厚みは、異方性領域及び等方性領域それぞれで所望の位相差が得られるように適切な厚みに設定しうる。通常は、第二位相差フィルムの厚みは、0.5μm以上50μm以下の範囲である。
【0035】
(任意の層)
位相差フィルムは、第一位相差フィルム及び第二位相差フィルムに加えて、本発明の効果を著しく損なわない限り任意の層を備えていてもよい。例えば、第一位相差フィルムと第二位相差フィルムとを貼り合わせる接着層を備えていてもよい。接着層とは、接着剤により形成された層である。この接着剤は、狭義の接着剤(エネルギー線照射後、あるいは加熱処理後、23℃における剪断貯蔵弾性率が1〜500MPaである接着剤)のみならず、23℃における剪断貯蔵弾性率が1MPa未満である粘着剤をも包含する。
【0036】
〔1.2.評価系〕
図3は、本発明の第一実施形態に係る評価系を模式的に示す分解斜視図である。また図3において、液晶セルの左目用の画素領域、並びに、第二位相差フィルムの異方性領域には斜線を付して示す。
【0037】
図3に示すように、本発明の第一実施形態に係る評価系100は、光源110と、基準部材としての液晶パネル120と、位相差フィルム130と、着脱可能な偏光フィルターとしての円偏光フィルター140と、光検出器としてのマイクロスコープ150とをこの順に備える。このような評価系100は、例えば、光源110と、液晶パネル120と、着脱可能な円偏光フィルター140と、マイクロスコープ150とをこの順に備える評価装置に、評価対象となる位相差フィルム130を取り付けることにより構成しうる。
【0038】
ここで、液晶パネル120、位相差フィルム130及び円偏光フィルター140は、いずれも主面が水平方向に平行となり、それらの厚み方向が一致するように配設されている。そこで、以下の説明においては、別に断らない限り、「厚み方向」とは前記の厚み方向のことを意味するものとする。
また、図3においては、評価系100を構成する各要素をいずれも図示のため離隔して示したが、これらのうち一部又は全部は実際の態様においては接触した状態にしてもよい。
【0039】
(光源110)
光源110は、評価用の非偏光を発しうる装置である。通常、光源110としては、可視光を発しうる装置を用いる。
【0040】
(液晶パネル120)
液晶パネル120は、光源に近い方から順に、偏光子である偏光フィルム121、液晶セル122、及び、偏光子である偏光フィルム123を備える。
【0041】
偏光フィルム121及び123は、所定の透過軸方向と平行な振動方向を有する直線偏光を透過させ、それ以外の偏光を遮断しうるフィルムである。ここで、直線偏光の振動方向とは、直線偏光の電場の振動方向を意味する。光源110が出した光は、液晶パネル120を透過することにより、マイクロスコープ側の偏光フィルム123の透過軸A123と平行な振動方向を有する直線偏光になるようになっている。
【0042】
また、偏光フィルム121と偏光フィルム123とは、クロスニコル状態で配置されている。すなわち、偏光フィルム121の透過軸A121と偏光フィルム123の透過軸A123とは、垂直になっている。
【0043】
液晶セル122は、光を透過させうる領域として、右目用の画素領域(すなわち、右目用画像を表示する画素群により構成される領域)124と左目用の画素領域(すなわち、左目用画像を表示する画素群により構成される領域)125を備えている。液晶パネル120においては、液晶セル122の前記の画素領域124及び125が液晶パネル120の画素領域としても機能し、偏光フィルム121及び123と協働して、光を透過させうる透光領域及び光を遮りうる遮光領域のどちらとしても機能できるようになっている。
【0044】
液晶セル122の画素領域124及び125は、面内の一方向(以下、適宜、この方向を「基準方向」と呼ぶ。)Xに画素が並んで形成された領域となっている。したがって、右目用の画素領域124及び左目用の画素領域125は、厚み方向から見てそれぞれ異なる位置に複数設けられ、いずれも面内の基準方向Xに延在する領域となっている。
【0045】
さらに、右目用の画素領域124と左目用の画素領域125とは、これらの画素領域124及び125が延在する基準方向Xに垂直な面内の方向Yにおいて交互に並んだストライプ状の配置となっている。また、これらの画素領域124及び125の幅は、通常、一定である。
【0046】
画素領域124及び125は、位相差フィルム130の異方性領域133及び等方性領域134の直線性及びピッチの精度を評価するときの基準となる。すなわち、これらの画素領域124及び125に対して位相差フィルム130の異方性領域133及び等方性領域134を適切に位置合わせができるように位相差フィルム130を設計した場合に、その設計に基づいて実際に製造された位相差フィルム130が十分な精度で製造されているかを評価することが、本実施形態において行われる評価である。したがって、基準となる画素領域124及び125は、できるだけ高い精度で形成することが望ましい。
【0047】
液晶セル122の右目用の画素領域124と左目用の画素領域125との間には、光を遮りうる遮光領域として、ブラックマトリックス126が設けられている。ブラックマトリックス126は、光を遮りうる物質で形成されていて、面内において液晶セル122を複数の画素領域124及び125に区画している。このブラックマトリックス126は、液晶セル122の右目用の画素領域124及び左目用の画素領域125と同様に、基準方向Xに延在している。
【0048】
また、液晶セル122においては、右目用の画素領域124、ブラックマトリックス126、左目用の画素領域125及びブラックマトリックス126からなる繰り返し単位が、面内の方向Yにおいて繰り返される構成となっている。したがって、液晶セル122では、画素領域124又は125とブラックマトリックス126とが、面内において交互に配置されている。
【0049】
(位相差フィルム130)
位相差フィルム130は、光源110に近い順に、第一位相差フィルム131と第二位相差フィルム132とを備える。
【0050】
第一位相差フィルム131は、面内の全体に均一な位相差を有するフィルムである。本実施形態においては、第一位相差フィルム131の面内位相差は1/4波長となっている。また、第一位相差フィルム131の遅相軸A131は、マイクロスコープ側の偏光フィルム123の透過軸A123に対して、マイクロスコープ150で光源110に向かって観察する向きにおいて、時計回りに45°の角度をなしている。これにより、液晶パネル120を透過した直線偏光は、第一位相差フィルム131を透過することにより、円偏光へと変換されるようになっている。
【0051】
第二位相差フィルム132は、面内の一方向Xに延在する複数の異方性領域133及び等方性領域134を、面内において交互に有することにより、これらの領域からなるストライプ状のパターンを有するフィルムである。
【0052】
本実施形態においては、異方性領域133の面内位相差は1/2波長となっている。また、異方性領域133の遅相軸A133は、マイクロスコープ側の偏光フィルム123の透過軸A123に対して、マイクロスコープ150で光源110に向かって観察する向きにおいて、反時計回りに45°の角度をなしている。これにより、第一位相差フィルム131を透過した円偏光が第二位相差フィルム132の異方性領域133を透過すると、円偏光の向きが逆向きに変換されるようになっている。
【0053】
また、等方性領域134の位相差はゼロになっている。これにより、第一位相差フィルム131を透過した円偏光が第二位相差フィルム132の等方性領域134を透過すると、円偏光の向きは実質的に維持されるようになっている。
【0054】
位相差フィルム130を液晶パネル120上に設置する際、異方性領域133及び等方性領域134の境界線135が、液晶セル122のブラックマトリックス126に対応する位置に来るように、位相差フィルム130を位置合わせする。位置合わせの方法としては、例えば、光源110を発光させ、且つ、液晶パネル120を制御して、右目用の画素領域124及び左目用の画素領域125の一方を透過した光のみがマイクロスコープ側の偏光フィルム123を透過しうるようにした状態において、厚み方向から円偏光フィルターを介して観察しながら、位相差フィルム130の位置を調整する方法が挙げられる。
【0055】
具体的には、以下の要領で、位置合わせを行ってもよい。まず、第二位相差フィルム132の異方性領域133及び等方性領域134の一方を透過した円偏光を遮り、異方性領域133及び等方性領域134の他方を透過した円偏光を透過させうる円偏光フィルターを用意する。また、光源110を発光させ、液晶セル122の右目用の画素領域124及び左目用の画素領域125の一方を透過した光がマイクロスコープ側の偏光フィルム123で遮られ、右目用の画素領域124及び左目用の画素領域125の他方を透過した光がマイクロスコープ側の偏光フィルム123を透過しうるように、液晶パネル120を制御する。この状態で、用意した円偏光フィルターを介して、第二位相差フィルム132をマイクロスコープ側から観察しながら、光が観察されない黒表示となるように、位置合わせを行う。この例によれば、位置合わせが適切に行われた場合には、液晶セル122の右目用の画素領域124及び左目用の画素領域125の一方を透過した光はマイクロスコープ側の偏光フィルム123で遮られ、また、右目用の画素領域124及び左目用の画素領域125の他方を透過した光は異方性領域133及び等方性領域134の一方を透過した後に円偏光フィルターで遮られるので、円偏光フィルターを透過しうる光は無くなる。このため、光が観察されない黒表示となるように位相差フィルム130の位置を調整することにより、厚み方向から見て、液晶セル122の右目用の画素領域124及び左目用の画素領域125の一方が第二位相差フィルム132の異方性領域133及び等方性領域134の他方と重なり、液晶セル122の右目用の画素領域124及び左目用の画素領域125の他方が第二位相差フィルム132の異方性領域133及び等方性領域134の一方と重なるので、異方性領域133と等方性領域134との境界線135は液晶セル122のブラックマトリックス126に重なり、適切な位置合わせができる。
【0056】
ただし、異方性領域133及び等方性領域134の直線性又はピッチの精度が劣る場合には、位置合わせをしても常に光が観察され、黒表示が得られないことがありえる。この場合には、通常、観察される光の強さができるだけ弱くなる位置に、位相差フィルム130を位置合わせする。このような位置では、面内の一部において境界線135とブラックマトリックス126とが重ならないことがありえるが、異方性領域133及び等方性領域134の直線性又はピッチの精度を評価することは可能である。
【0057】
本実施形態においては、厚み方向から見た場合、第二位相差フィルム132の異方性領域133が液晶セル122の左目用の画素領域125に重なり、第二位相差フィルム132の等方性領域134が液晶セル122の右目用の画素領域124に重なるように、位置合わせされているものとする。
【0058】
(円偏光フィルター140)
円偏光フィルター140は、所定の向きの円偏光を透過させ、それとは逆の向きの円偏光を遮りうるフィルターである。このような円偏光フィルター140としては、例えば、直線偏光子と1/4波長板とを、直線偏光子の透過軸と1/4波長板の遅相軸とが45°の角度をなすように組み合わせたフィルムを用いてもよい。また、コレステリック液晶を硬化させた層により形成してもよい。
【0059】
本実施形態に係る円偏光フィルター140としては、矢印A140で示す向きの円偏光を透過させ、それとは逆の向きの円偏光を遮りうるフィルターを用いる。これにより、第二位相差フィルム132の異方性領域133を透過した円偏光は円偏光フィルター140で遮られるが、等方性領域134を透過した円偏光は円偏光フィルター140を透過しうるようになる。
【0060】
また、円偏光フィルター140は、着脱可能になっている。このため、円偏光フィルター140は、任意に装着したり、取り外したりできるようになっている。
【0061】
(マイクロスコープ150)
マイクロスコープ150は、厚み方向から観察を行うことにより、光源110から出され、液晶パネル120及び位相差フィルム130を透過し、更に必要に応じて円偏光フィルター140を透過した光を検出しうる光検出器である。通常、マイクロスコープ150には図示しないモニターが接続され、マイクロスコープ150の視野の映像が当該モニターに出力されるようになっている。また、マイクロスコープ150は移動可能となっていて、所望の位置の観察が可能となっている。使用者は、必要に応じてモニターに出力される映像を見て、以下の評価方法を行う。
【0062】
〔1.3.評価方法〕
上述した評価系において、位相差フィルム130の評価を行う。評価を行う際には、光源110を光らせ、更に、液晶パネル120を制御して液晶パネル120に所望の映像を表示させる。この際、映像が表示された画素領域124及び125は、透光領域となって光を透過させ、また、映像が表示されなかった画素領域124及び125及びブラックマトリックス126は、遮光領域となって光を遮る。この際、液晶パネル120に表示させる映像は、マイクロスコープ150によって観察される地点を把握し易い映像が好ましい。
【0063】
図4は、本発明の第一実施形態において液晶パネル120に表示させる映像を模式的に示す平面図である。
図4に示すように、本実施形態においては、液晶パネル120の画面120Uに、格子160を表示させるようにする。格子160は、液晶セル122において画素領域124及び125が延在する基準方向Xに平行な線161a〜161fと、基準方向Xに垂直な線162i〜162vとを有している。すなわち、これらの線161a〜161f及び線162i〜162vが所定の間隔を空けて複数設けられることにより、格子160が構成されている。基準方向Xに平行な線161a〜161f、および、基準方向Xに垂直な線162i〜162vの本数は特に限定されるものではないが、測定点数の観点より、10本以下が好ましく、4〜6本が特に好ましい。
【0064】
基準方向Xに平行な線161a〜161fは、それぞれ、液晶セル122の右目用の画素領域124又は左目用の画素領域125の1本だけで表示させることが好ましい。これにより、マイクロスコープ150により観察する地点を特定し易くなる。また、ある1本の画素領域124のズレ量が基準方向においてどのように相違するかを調べる方が、異なる複数本の画素領域124でズレ量の相違を調べるよりも、直線性を適切に評価できる。
【0065】
本実施形態では、それぞれ1本の右目用の画素領域124を透過した光がマイクロスコープ側の偏光フィルム123を透過しうるように液晶パネル120を制御することにより、基準方向Xに平行な各線161a〜161fを液晶パネル120の画面120Uに表示させている。また、基準方向Xに平行な線161a〜161fは、一定の間隔L161を空けて6本表示されているものとする。
【0066】
また、基準方向Xに垂直な線162i〜162vは、例えば、液晶セル122の右目用の画素領域124及び左目用の画素領域125に設けられた画素のうち、基準方向Xにおいて一定の位置にある画素の列により表示させてもよい。前記の画素の列は、基準方向Xに垂直な方向Yに並んだ画素の列を構成し、この列により基準方向Xに垂直な線162i〜162vを表示することができる。
【0067】
本実施形態では、右目用の画素領域124及び左目用の画素領域125に設けられた画素のうち、基準方向Xにおいて所定の位置にある画素を透過した光がマイクロスコープ側の偏光フィルム123を透過しうるように液晶パネル120を制御することにより、基準方向Xに垂直な線162i〜162vそれぞれを表示パネル120の画面120Uに表示させている。また、基準方向Xに垂直な線162i〜162vは、一定の間隔L162を空けて5本表示されているものとする。
【0068】
さらに、通常、液晶セル122には、液晶パネル120の表示色(例えば、赤色、緑色及び青色)のそれぞれに応じた画素が設けられる。この際、格子160を視認しやすい色で表示できるように、各表示色の画素を組み合わせ、その組み合わせた画素により格子160を表示することが好ましい。本実施形態では、液晶セル122には赤色、緑色及び青色の画素が組み合わせて設けられていて、これら赤色、緑色及び青色の画素を用いて格子160を白色にて表示しているものとする。
【0069】
このように液晶パネル120の画面120Uに格子160を表示させた状態で、マイクロスコープ150による観察を行う。この際、円偏光フィルター140は装着せずに外した状態での観察と、円偏光フィルター140を装着した状態での観察とを行う。円偏光フィルター140を装着しない状態での観察と、円偏光フィルター140を装着した状態での観察とは、いずれを先に行ってもよい。
【0070】
観察は、液晶パネル120の画面120Uに表示された格子160上の地点について行う。通常は、基準方向Xに平行な線161a〜161fと、基準方向Xに垂直な線162i〜162vとの交差点(例えば、交差点163ai)を観察する。このような交差点は、位置の特定が容易だからである。
【0071】
図5は、本発明の第一実施形態において、円偏光フィルター140を装着せずに、基準方向Xに平行な線161aと基準方向Xに垂直な線162iとの交差点163aiを観察した際にマイクロスコープの視野に現れる像を模式的に示す図である。
図5に示すように、円偏光フィルター140を装着せずに交差点163aiを観察すると、基準方向Xに平行な線161aは、赤色の画素R、緑色の画素G及び青色の画素Bがこの順に繰り返し基準方向Xに並んだ列として観察される。また、基準方向Xに垂直な線162iは、赤色の画素R、緑色の画素G及び青色の画素Bからなる画素の組み合わせが、基準方向Xに垂直な方向Yに並んだ列として観察される。
【0072】
円偏光フィルター140を装着せずに交差点163aiを観察した場合、円偏光フィルター140により遮られることがないので、第二位相差フィルム132の異方性領域133を透過した光及び等方性領域134を透過した光は両方ともマイクロスコープ150に届く。そのため、マイクロスコープ150の視野には、液晶パネル120に表示された格子160を構成する赤色の画素R、緑色の画素G及び青色の画素Bは、欠けることなくそのまま現れる。
【0073】
このように観察された交差点163aiにおいて、円偏光フィルター140を装着して観察した場合との比較を行うときの基準となる基準線164を設定する。基準線164は、基準方向Xに平行な線分である。基準線164は、観察地点である交差点163aiにおいて光が検出された部分である赤色の画素R、緑色の画素G及び青色の画素Bと当該基準線164との相対的な位置関係が把握しうる位置であれば、どのような位置に設定してもよい。通常は、赤色の画素R、緑色の画素G及び青色の画素Bとの相対的な位置関係を容易に把握できるので、赤色の画素R、緑色の画素G及び青色の画素Bの基準方向Xに垂直な方向Yにおける縁部Eを通る線分として、基準線164を設定する。
【0074】
図6は、本発明の第一実施形態において、円偏光フィルター140を装着して、基準方向Xに平行な線161aと基準方向Xに垂直な線162iとの交差点163aiを観察した際にマイクロスコープの視野に現れる像を模式的に示す図である。
図6に示すように、円偏光フィルター140を装着して交差点163aiを観察すると、基準方向Xに平行な線161aは、一部が欠けた赤色の画素R、緑色の画素G及び青色の画素Bがこの順に繰り返し基準方向Xに並んだ列として観察される。また、基準方向Xに垂直な線162iは、一部が欠けた赤色の画素R、緑色の画素G及び青色の画素Bからなる画素の組み合わせが、基準方向Xに垂直な方向Yに並んだ列として観察される。
【0075】
円偏光フィルター140を装着して交差点163aiを観察した場合、第二位相差フィルム132の異方性領域133を透過した光は円偏光フィルター140で遮られ、等方性領域134を透過した光が円偏光フィルター140を透過してマイクロスコープ150に届く。そのため、マイクロスコープ150の視野には、液晶パネル120に表示された格子160を構成する赤色の画素R、緑色の画素G及び青色の画素Bのうち、厚み方向から見て第二位相差フィルム132の等方性領域134と重ねられた部分の画素R、画素G及び画素Bだけが現れ、異方性領域133と重ねられた部分R、G及びBは現れない。
【0076】
このように観察された交差点163aiにおいて、光が検出された部分である、赤色の画素R、緑色の画素G及び青色の画素Bは、第二位相差フィルム132の等方性領域134の位置を示す。また、円偏光フィルター140を装着しない状態であれば光が検出されたが円偏光フィルター140を装着した状態では光が検出されない部分R、G及びBは、第二位相差フィルム132の異方性領域133の位置を示す。ここで、光が検出された部分である赤色の画素R、緑色の画素G及び青色の画素Bの基準方向Xに垂直な方向Yにおける縁部Eは、赤色の画素R、緑色の画素G及び青色の画素Bと、欠けた部分R、G及びBとの境界である。したがって、赤色の画素R、緑色の画素G及び青色の画素Bの基準方向Xに垂直な方向Yにおける縁部Eの位置は、第二位相差フィルム132の異方性領域133と等方性領域134との境界線135の位置を示す。そこで、円偏光フィルター140を装着して交差点163aiを観察することにより、赤色の画素R、緑色の画素G及び青色の画素Bの基準方向Xに垂直な方向Yにおける縁部Eの位置を特定する。
【0077】
その後、前記の基準線164と、円偏光フィルター140を装着して交差点163aiを観察した場合の赤色の画素R、緑色の画素G及び青色の画素Bの基準方向Xに垂直な方向Yにおける縁部Eとのズレ量Δdを測定する。ここで、ズレ量Δdとは、基準方向Xに垂直な方向Yにおける距離のことをいう。本実施形態のように、基準線164として、円偏光フィルター140を装着しないで交差点163aiを観察した場合の赤色の画素R、緑色の画素G及び青色の画素Bの基準方向Xに垂直な方向Yにおける縁部Eを通る線分を設定した場合には、前記のズレ量Δdは、厚み方向から見た場合の、液晶セル122の右目用の画素領域124と第二位相差フィルム132の等方性領域134とのズレ量を表す。
【0078】
本発明の第一実施形態では、以上の工程を、格子160の複数の交差点で行い、各交差点におけるズレ量を測定する。評価精度を高める観点から、格子160の全ての交差点で同様の工程を行うことが好ましい。
ただし、基準線は、各交差点で同様に設定する。ここで基準線を同様に設定するとは、いずれの交差点においても同様のルールに基づいて基準線を設定することを意味する。本実施形態においては、図5に示すように、いずれの交差点においても、赤色の画素R、緑色の画素G及び青色の画素Bの基準方向Xに垂直な方向Yにおける縁部Eを通る線分として、基準線を設定しているものとする。
【0079】
このようにして測定した各交差点におけるズレ量Δdを用いて、第二位相差フィルム132の異方性領域133及び等方性領域134の直線性を評価する。具体的には、ズレ量Δdの基準方向Xにおける複数の交差点間での相違から、異方性領域133及び等方性領域134の直線性を評価する。
【0080】
図7は、本発明の第一実施形態において液晶パネル120に表示させる映像を模式的に示す平面図である。また、図8は、円偏光フィルター140を装着して観察した場合に観察される、基準方向Xに平行な一本の線161aが基準方向Xに垂直な複数の線162i〜162vと交わる複数の交差点163ai〜163avの様子を模式的に示す図である。
【0081】
例えば、図7に示すように、基準方向Xに平行な一本の線161aが、基準方向Xに垂直な複数の線162i〜162vと交わる複数の交差点163ai〜163avでのズレ量Δdの相違を用いてもよい。これらの交差点163ai〜163avにおけるズレ量Δdの相違により、厚み方向から見てこの線161aに重なる異方性領域133及び等方性領域134の直線性を評価できる。
【0082】
図8に示すように、交差点163ai〜163avにおいては、通常、基準線164は各交差点163ai〜163avに共通する一本の線が設定される。したがって、この基準線164に対するズレ量Δdが基準方向Xにおいてどのように相違するかを調べることにより、異方性領域133及び等方性領域134の直進性を評価できる。例えば、いずれの交差点163ai〜163avにおいてもズレ量Δdが同じ程度となって、ズレ量Δdの相違が小さければ、異方性領域133及び等方性領域134の直進性は高く、異方性領域133及び等方性領域134は基準方向Xに真っ直ぐ延びていることが分かる。また、例えば図8に示すように、交差点163ai〜163avごとにズレ量Δdが大きく異なって、ズレ量Δdの相違が大きければ、異方性領域133及び等方性領域134の直進性は低く、異方性領域133及び等方性領域134は曲がっていることが分かる。
【0083】
さらに、上述したように、赤色の画素R、緑色の画素G及び青色の画素Bの基準方向Xに垂直な方向Yにおける縁部Eは、第二位相差フィルム132の異方性領域133と等方性領域134との境界線135の位置を示す。したがって、交差点163ai〜163avのズレ量Δdによれば、異方性領域133及び等方性領域134のおおよその形状の見当をつけることができる。例えば図8のように、基準方向Xの端部に近い交差点163ai、163aiv及び163avにおけるズレ量Δdが大きく、基準方向Xの中央に近い交差点163aii及び163aiiiにおけるズレ量が小さい場合には、第二位相差フィルム132の異方性領域133及び等方性領域134は、図中下側に凸な弧状に曲がっていることが分かる。
【0084】
また、各交差点におけるズレ量Δdを用いて、第二位相差フィルム132の異方性領域133及び等方性領域134のピッチを評価する。具体的には、ズレ量Δdの基準方向Xに垂直な方向Yにおける複数の交差点間での相違から、一組の異方性領域133及び等方性領域134の合計ピッチの精度を評価する。
【0085】
図9は、本発明の第一実施形態において液晶パネル120に表示させる映像を模式的に示す平面図である。また、図9において、映像が表示されていない部分は斜線を付して示す。また、図10は、円偏光フィルター140を装着して観察した場合に観察される、基準方向Xに垂直な一本の線162iが基準方向Xに平行な複数の線161a〜161fと交わる複数の交差点163ai〜163fiの様子を模式的に示す図である。
【0086】
例えば、図9に示すように、基準方向Xに垂直な一本の線162iが、基準方向Xに平行な複数の線161a〜161fと交わる複数の交差点163ai〜163fiでのズレ量Δdの相違を用いてもよい。これにより、交差点163ai〜163fi間の距離当たりの、異方性領域133及び等方性領域134の合計ピッチの相違量を算出することができる。
【0087】
液晶セル122では、基準方向Xに垂直な方向Yにおいて、右目用の画素領域124、ブラックマトリックス126、左目用の画素領域125及びブラックマトリックス126が繰り返し並んでいる。また、第二位相差フィルム132では、基準方向Xに垂直な方向Yにおいて、異方性領域133と等方性領域134とが繰り返し並んでいる。したがって、右目用の画素領域124、ブラックマトリックス126、左目用の画素領域125及びブラックマトリックス126からなる繰り返し単位の幅と、一組の異方性領域133及び等方性領域134の合計ピッチとが同じであれば、各交差点163ai〜163fiにおけるズレ量Δdも同じになる。しかし、右目用の画素領域124、ブラックマトリックス126、左目用の画素領域125及びブラックマトリックス126からなる繰り返し単位の幅と、一組の異方性領域133及び等方性領域134の合計ピッチとが異なれば、その相違量に応じて、各交差点163ai〜163fiにおけるズレ量Δdも相違する。
【0088】
したがって、交差点163ai〜163fiのうち2点におけるズレ量Δdの相違量(差)を、その2点間の画素数で割ることにより、第二位相差フィルム132の一組の異方性領域133及び等方性領域134の合計ピッチが1画素当たりでどれだけ誤差があるかが分かる。ここで合計ピッチの誤差とは、設計した合計ピッチの大きさと実際の合計ピッチの大きさとの差を意味する。前記の1画素当たりの合計ピッチの誤差の大きさは、異方性領域133及び等方性領域134の合計ピッチの精度が低いほど、大きくなる。したがって、1画素当たりの合計ピッチの誤差の大きさにより、異方性領域133及び等方性領域134の合計ピッチの精度を評価することができる。
【0089】
図10に示すように、第二位相差フィルム132の異方性領域133及び等方性領域134の合計ピッチの精度が高い場合、交差点163ai〜163fiのうち最も近い2点間のズレ量Δdを比べても、ズレ量Δdの相違量が大きくないことがある。ズレ量Δdの相違量が大きくないと、測定誤差の影響が大きくなり、1画素当たりの合計ピッチの誤差の大きさを適切に求められない場合がありえる。この場合には、交差点163ai〜163fiのうち距離が離れた2点間のズレ量Δdを比べると、測定誤差の影響を抑えることが可能である。特に、図10に示す例のように、方向Yの一端に近いほどズレ量Δdが小さく、他端に近いほどズレ量Δdが大きい場合には、ズレ量Δdの相違量が最も大きくなる2点の交差点163ai及び163fi間でズレ量Δdの相違から1画素当たりの合計ピッチの誤差を計算すると、合計ピッチの精度をより正確に評価できる。
【0090】
このように、本発明の第一実施形態に係る評価方法によれば、液晶パネル120の液晶セル122に形成された画素領域124及び125を基準にして、位相差フィルム130の第二位相差フィルム132が有する異方性領域133及び等方性領域134の直線性及びピッチの精度を簡単に評価することができる。
【0091】
異方性領域133及び等方性領域134の直線性は、立体画像表示装置において、位相差フィルム130の異方性領域133及び等方性領域134と、液晶パネル120の画素領域124及び125とを、適切に位置合わせできるか否かの評価に相関する。また、前記の位置合わせは、立体画像表示装置におけるクロストークの程度に相関する。したがって、前記のように異方性領域133及び等方性領域134の直線性を評価することにより、立体画像表示装置のクロストークを防止する観点から、位相差フィルムの品質の適切な評価が可能である。
【0092】
また一般に、立体画像表示装置において立体画像表示機能を充実させるためには、液晶パネル120の画素のピッチ、ブラックマトリックスの幅、構成材料の厚み及び適視距離に合わせて位相差フィルム130の異方性領域133及び等方性領域134のピッチを設計することが求められる。このため、前記のように異方性領域133及び等方性領域134の合計ピッチにどの程度の誤差があるのかを評価することにより、位相差フィルムの品質の適切な評価が可能となる。ここで、ある1点の観測地点だけを見て合計ピッチの誤差を測定するよりも、位置の異なる観測地点を比べて広範囲のズレ量Δdにより評価を行えば、精度良い評価が可能である。
【0093】
さらに、通常、液晶パネル120及びその液晶セル122は、例えばフォトリソグラフィ等を用いることにより高い精度で製造されるので、これを基準として行われる前記の評価は、高い信頼性を有するものである。
【0094】
[2.第二実施形態]
〔2.1.評価対象〕
本発明の第二実施形態において評価対象となる位相差フィルムは、第一実施形態と同様である。
【0095】
〔2.2.評価系〕
図11は、本発明の第二実施形態に係る評価系を模式的に示す分解斜視図である。また図11において、ブラックストライプフィルムのブラックストライプ、並びに、第二位相差フィルムの異方性領域には斜線を付して示す。
【0096】
図11に示すように、本発明の第二実施形態に係る評価系200は、基準部材として液晶パネル120の代わりに複層ブラックストライプフィルム220を備えること以外は、第一実施形態に係る評価系100と同様である。このような評価系200は、例えば、光源110と、複層ブラックストライプフィルム220と、着脱可能な円偏光フィルター140と、マイクロスコープ150とをこの順に備える評価装置に、評価対象となる位相差フィルム130を取り付けることにより構成しうる。
ここで、図11においては、評価系200を構成する各要素をいずれも図示のため離隔して示したが、これらのうち一部又は全部は実際の態様においては接触した状態にしてもよい。
【0097】
(複層ブラックストライプフィルム220)
複層ブラックストライプフィルム220は、偏光子である偏光フィルム221及びブラックストライプフィルム222を備える。図11に示す態様においては、光源110に近い方から順に、偏光子である偏光フィルム221及びブラックストライプフィルム222を備えているものとする。ただし、偏光フィルム221の位置は第一位相差フィルム131よりも光源側であれば任意であり、例えばブラックストライプフィルム222のマイクロスコープ側に設けてもよい。
【0098】
偏光フィルム221は、所定の透過軸方向と平行な振動方向を有する直線偏光を透過させ、それ以外の偏光を遮断しうるフィルムである。偏光フィルム221を備えることによって、光源110が出した光は、複層ブラックストライプフィルム220を透過すると、偏光フィルム221の透過軸A221と平行な振動方向を有する直線偏光になるようになっている。
【0099】
偏光フィルム221の透過軸A221は、位相差フィルム130の第一位相差フィルム131の遅相軸A131が、偏光フィルム221の透過軸A221に対して、マイクロスコープ150で光源110に向かって観察する向きにおいて、時計回りに45°の角度をなすようにする。これにより、複層ブラックストライプフィルム220を透過した直線偏光は、第一位相差フィルム131を透過することにより、円偏光へと変換されるようになっている。
【0100】
また、偏光フィルム221の透過軸A221は、第二位相差フィルム132の異方性領域133の遅相軸A133が、偏光フィルム221の透過軸A221に対して、マイクロスコープ150で光源110に向かって観察する向きにおいて、時計回りに90°の角度をなすようにする。これにより、第一位相差フィルム131を透過した円偏光が第二位相差フィルム132の異方性領域133を透過すると、円偏光の向きが逆向きに変換されるようになっている。
【0101】
ブラックストライプフィルム222は、光源110が出す光を透過させうる基板223と、この基板223上に形成されて基準方向Xと平行に延在するブラックストライプ224とを備えるフィルムである。
基板223としては、例えば1mm厚で全光線透過率(JIS K7361−1997に準拠して、濁度計(日本電色工業社製、NDH−300A)を用いて測定)が80%以上である材料で形成されたものを用いてもよく、例えばガラス板等が挙げられる。
ブラックストライプ224は、光源110が出す光を遮りうる材料により形成されており、遮光領域として機能する。また、ブラックストライプフィルム222においては、ブラックストライプ224同士の間の前記ブラックストライプが形成されていない領域が透光領域225となっており、この透光領域225を、光源110が出す光は透過しうるようになっている。
【0102】
ブラックストライプ224及び透光領域225は、厚み方向から見てそれぞれ異なる位置に複数設けられ、いずれも面内の基準方向Xに延在する領域となっている。また、ブラックストライプ224及び透光領域225は、基準方向Xに垂直な面内の方向Yにおいて交互に並んだストライプ状の配置となっている。さらに、これらのブラックストライプ224及び透光領域225の幅は、通常、一定である。
【0103】
ブラックストライプ224及び透光領域225は、位相差フィルム130の異方性領域133及び等方性領域134の直線性及びピッチの精度を評価するときの基準となる。すなわち、これらのブラックストライプ224及び透光領域225に対応する画素領域を有する液晶パネルに対して位相差フィルム130の異方性領域及び等方性領域134を適切に位置合わせができるように位相差フィルム130を設計した場合に、その設計に基づいて実際に製造された位相差フィルム130が十分な精度で製造されているかを評価することが、本実施形態において行われる評価である。したがって、基準となるブラックストライプ224は、位相差フィルム130を適用する液晶表示装置の液晶パネルに応じて設定することが好ましく、また、できるだけ高い精度で形成することが望ましい。
【0104】
複層ブラックストライプフィルム220上に位相差フィルム130を設置する際、本実施形態では、異方性領域133がブラックストライプ224に対応する位置に、また、等方性領域134が透光領域225に対応する位置に来るように、位相差フィルム130を位置合わせする。位置合わせの方法としては、例えば、光源110を発光させた状態において、円偏光フィルターを介して厚み方向から観察しながら、位相差フィルム130の位置を調整する方法が挙げられる。
【0105】
具体的には、以下の要領で、位置合わせを行ってもよい。まず、第二位相差フィルム132の等方性領域134を透過した円偏光を遮りうる円偏光フィルターを用意する。また、光源110を発光させる。この状態で、用意した円偏光フィルターを介して、第二位相差フィルム132を光源110とは反対側から観察しながら、光が観察されない黒表示となるように、位置合わせを行う。この例によれば、位置合わせが適切に行われた場合には、ブラックストライプフィルム222の透光領域225を透過した光は円偏光フィルターで遮られ、その他の光はブラックストライプ224で遮られるので、円偏光フィルターを透過しうる光は無くなる。このため、光が観察されない黒表示となるように位相差フィルム130の位置を調整することにより、厚み方向から見て、ブラックストライプフィルム222のブラックストライプ224が第二位相差フィルム132の異方性領域133と重なり、ブラックストライプフィルム222の透光領域225が第二位相差フィルム132の等方性領域134と重なり、適切な位置合わせができる。なお、ブラックストライプ224を等方性領域134と重ねたい場合は、異方性領域133を透過した円偏光を遮りうる円偏光フィルターを用いて同様の要領で位置合わせをしてもよい。
【0106】
ただし、異方性領域133及び等方性領域134の直線性又はピッチの精度が劣る場合には、位置合わせをしても常に光が観察され、黒表示が得られないことがありえる。この場合には、第一実施形態と同様、観察される光の光量ができるだけ小さくなる位置に、位相差フィルムを位置合わせする。
【0107】
〔2.3.評価方法〕
上述した評価系において、位相差フィルム130の評価を行う。評価を行う際には、光源110を光らせる。
【0108】
図12は、本発明の第二実施形態において複層ブラックストライプフィルム220をマイクロスコープ側から見た様子を模式的に示す平面図である。
図12に示すように、本実施形態においては、ブラックストライプ224が光を遮るので、ブラックストライプフィルム222の透光部225を透過した光だけが複層ブラックストライプフィルム220を透過する。
【0109】
このような状態で、マイクロスコープ150による観察を行う。この際、円偏光フィルター140は装着せずに外した状態での観察と、円偏光フィルター140を装着した状態での観察とを行う。円偏光フィルター140を装着しない状態での観察と、円偏光フィルター140を装着した状態での観察とは、いずれを先に行ってもよい。
【0110】
図13は、本発明の第二実施形態において、円偏光フィルター140を装着せずに、複層ブラックストライプフィルム220のある地点260aiを観察した際にマイクロスコープの視野に現れる像を模式的に示す図である。
図13に示すように、円偏光フィルター140を装着せずに、複層ブラックストライプフィルム220の透光領域225上の地点260aiを観察すると、光が検出される明部分261と、光が検出されない暗部分262が観察される。明部分261はブラックストライプフィルム222の透光領域225に対応し、暗部分262はブラックストライプ224に対応するものであって、それぞれ基準方向Xに平行な帯状の部分として観察される。
【0111】
このように観察された地点260aiにおいて、円偏光フィルター140を装着して観察した場合との比較を行うときの基準となる基準線263を設定する。基準線263は、基準方向Xに平行な線分である。基準線263は、観察された地点260aiにおいて光が検出された明部分261と当該基準線263との相対的な位置関係が把握しうる位置であれば、どのような位置に設定してもよい。通常は、明部分261との相対的な位置関係を容易に把握できるので、明部分261の基準方向Xに垂直な方向Yにおける縁部Eを通る線として、基準線263を設定する。
【0112】
図14は、本発明の第二実施形態において、円偏光フィルター140を装着して、複層ブラックストライプフィルム220の地点260aiを観察した際にマイクロスコープの視野に現れる像を模式的に示す図である。
図14に示すように、円偏光フィルター140を装着して複層ブラックストライプフィルム220の地点260aiを観察すると、明部分261の基準方向Xに垂直な方向Yにおける一部分264が欠け、明部分261の方向Yにおける縁部Eの位置が変わった様子が観察される。
【0113】
円偏光フィルター140を装着して複層ブラックストライプフィルム220の地点260aiを観察した場合、第二位相差フィルム132の異方性領域133を透過した光は円偏光フィルター140で遮られ、等方性領域134を透過した光が円偏光フィルター140を透過してマイクロスコープ150に届く。そのため、マイクロスコープ150の視野には、ブラックストライプフィルム222の透光領域225のうち、厚み方向から見て第二位相差フィルム132の等方性領域134と重ねられた部分だけが明部分261として現れ、異方性領域133と重ねられた部分は暗部分262となる。
【0114】
このように観察された複層ブラックストライプフィルム220の地点260aiにおいて、光が検出された明部分261は、第二位相差フィルム132の等方性領域134の位置を示す。また、円偏光フィルター140を装着しない状態であれば光が検出されたが円偏光フィルター140を装着した状態では光が検出されない部分264は、第二位相差フィルム132の異方性領域133の位置を示す。ここで、光が検出された明部分261の基準方向Xに垂直な方向Yにおける縁部Eは、明部分261と、欠けた部分264との境界である。したがって、光が検出された明部分261の基準方向Xに垂直な方向Yにおける縁部Eの位置は、第二位相差フィルム132の異方性領域133と等方性領域134との境界線135の位置を示す。そこで、円偏光フィルター140を装着して複層ブラックストライプフィルム220の地点260aiを観察することにより、光が検出された明部分261の基準方向Xに垂直な方向Yにおける縁部Eの位置を特定する。
【0115】
その後、前記の基準線263と、円偏光フィルター140を装着して複層ブラックストライプフィルム220の地点260aiを観察した場合の光が検出された明部分261の基準方向Xに垂直な方向Yにおける縁部Eとのズレ量Δdを測定する。本実施形態のように、基準線263として、円偏光フィルター140を装着しないで複層ブラックストライプフィルム220の地点260aiを観察した場合の明部分261の基準方向Xに垂直な方向Yにおける縁部Eを通る線を設定した場合には、前記のズレ量Δdは、厚み方向から見た場合の、ブラックストライプフィルム222の透光領域225と第二位相差フィルム132の等方性領域134とのズレ量を表す。
【0116】
本発明の第二実施形態では、以上の工程を、複層ブラックストライプフィルム220の複数の地点260ai〜260aiii、260bi及び260ciで行い、各地点260ai〜260aiii、260bi及び260ciにおけるズレ量を測定する。この際、第二位相差フィルム132の異方性領域133及び等方性領域134の直線性を評価するためには、基準方向Xにおける位置(座標)が異なり基準方向Xに垂直な方向Yにおける位置(座標)が同じ複数の地点260ai〜260aiiiでズレ量を測定する。また、第二位相差フィルム132の異方性領域133及び等方性領域134のピッチの精度を評価するためには、基準方向Xにおける位置(座標)が同じで基準方向Xに垂直な方向Yにおける位置(座標)が異なる複数の地点260ai〜260ciでズレ量を測定する。
【0117】
ただし、基準線263は、各地点260ai〜260aiii、260bi及び260ciで同様に設定する。本実施形態においては、図13に示すように、いずれの地点260ai〜260aiii、260bi及び260ciにおいても、明部分261の基準方向Xに垂直な方向Yにおける縁部Eを通る線として、基準線263を設定しているものとする。
【0118】
このようにして測定した各地点260ai〜260aiiiにおけるズレ量Δdを用いて、第二位相差フィルム132の異方性領域133及び等方性領域134の直線性を評価する。具体的には、第一実施形態と同様にして、ズレ量Δdの基準方向Xにおける複数の地点260ai〜260aiii間での相違から、異方性領域133及び等方性領域134の直線性を評価する。
【0119】
例えば、ブラックストライプフィルム222の一本の透光領域225上の複数の地点260ai〜260aiiiでのズレ量Δdの相違を用いてもよい。いずれの地点260ai〜260aiiiにおいてもズレ量Δdが同じ程度となって、ズレ量Δdの相違が小さければ、異方性領域133及び等方性領域134の直進性は高く、異方性領域133及び等方性領域134は基準方向Xに真っ直ぐ延びていることが分かる。また、各地点260ai〜260aiiiごとにズレ量Δdが大きく異なって、ズレ量Δdの相違が大きければ、異方性領域133及び等方性領域134の直進性は低く、異方性領域133及び等方性領域134は曲がっていることが分かる。
【0120】
さらに、第一実施形態で説明したように、ブラックストライプフィルム222の一本の透光領域225上の複数の地点260ai〜260aiiiでのズレ量Δdによれば、異方性領域133及び等方性領域134のおおよその形状の見当をつけることができる。
【0121】
また、各地点260ai〜260ciにおけるズレ量Δdを用いて、第二位相差フィルム132の異方性領域133及び等方性領域134のピッチを評価する。具体的には、第一実施形態と同様にして、ズレ量Δdの基準方向Xに垂直な方向Yにおける複数の地点260ai〜260ci間での相違から、異方性領域133及び等方性領域134のピッチの精度を評価する。
【0122】
例えば、複層ブラックストライプフィルム220の、基準方向Xにおける位置(座標)が同じで、基準方向Xに垂直な方向Yにおける位置(座標)が異なる複数の地点260ai〜260ciでのズレ量Δdの相違を用いてもよい。複層ブラックストライプフィルム220の2つの地点260ai〜260ciにおけるズレ量Δdの相違量(差)を、その2点間の画素数で割ることにより、第二位相差フィルム132の異方性領域133及び等方性領域134の合計ピッチが1画素当たりでどれだけ誤差があるかが分かる。この1画素当たりの合計ピッチの誤差の大きさにより、異方性領域133及び等方性領域134の合計ピッチの精度を評価することができる。
【0123】
ただし、第一実施形態とは異なり、基準部材である複層ブラックストライプフィルム220は画素領域を有さない。そこで、ピッチの精度を評価する際には、ズレ量Δdを対比する2点間の距離を、予め画素数に換算しておくことが好ましい。
【0124】
このように、本発明の第二実施形態に係る評価方法によれば、複層ブラックストライプフィルム220のブラックストライプフィルム222に形成されたブラックストライプ224及び透光領域225を基準にして、位相差フィルム130の第二位相差フィルム132が有する異方性領域133及び等方性領域134の直線性及びピッチの精度を簡単に評価することができる。ブラックストライプフィルム222のブラックストライプ224は、例えばフォトリソグラフィ等を用いることにより高い精度で形成しうるので、これを基準として行われる前記の評価は、高い信頼性を有するものである。
【0125】
[3.第三実施形態]
〔3.1.評価対象〕
本発明の第三実施形態において評価対象となる位相差フィルムは、遅相軸方向が異なる複数の異方性領域を有するフィルムである。これらの領域は、位相差フィルムの厚み方向から見て異なる位置に形成されている。
【0126】
異方性領域の好適な組み合わせの例としては、遅相軸方向が垂直な2種類の領域の組み合わせが挙げられる。ここで遅相軸方向が垂直であるとは、これらの遅相軸方向がなす角度が、通常90°±5°以内、好ましくは90°±1°以内であることをいう。具体的な組み合わせの例を挙げると、位相差フィルムの長手方向に対して遅相軸方向が平行な領域と垂直な領域との組み合わせ、位相差フィルムの長手方向に対して遅相軸方向が+45°の角度をなす領域と−45°の角度をなす領域との組み合わせ、などが挙げられる。
【0127】
通常は、各異方性領域の面内位相差は、同じにする。すなわち、通常は、第三実施形態において評価対象となる位相差フィルムは、遅相軸方向は異なるが面内位相差が同じである複数種類の異方性領域を有する。異方性領域の具体的な位相差は、例えば、1/4波長としてもよい。
【0128】
位相差フィルムは、ある遅相軸方向に遅相軸を有する第一異方性領域と、それとは別の遅相軸方向に遅相軸を有する第二異方性領域とを、それぞれ複数有する。これらの異方性領域は、一方向に延在して形成されている。また、第一異方性領域及び第二異方性領域は、その延在する方向に交差する方向では交互に並んでいて、全体として位相差フィルムの用途に応じたパターンを構成している。通常、位相差フィルムは液晶表示装置の液晶パネルと組み合わせて使用されるので、液晶パネルの画素の配置に応じて、各異方性領域の具体的なパターンが設定される。例えば、パッシブ形式の立体画像表示装置に適用する場合には、右目用画像を表示する画素群及び左目用画像を表示する画素群のうちの一方に対応する領域が第一異方性領域であり、他方に対応する領域が第二異方性領域であるパターンとしてもよい。
【0129】
位相差フィルムが第一異方性領域及び第二異方性領域という2群の異方性領域を有する場合、第一実施形態において説明したのと同様に、これらの異方性領域がストライプ状のパターンを有するようにしてもよい。このとき、通常は、これらの異方性領域の境界線が液晶パネルのブラックストライプ上に位置するよう位置合わせをする。
【0130】
このような位置合わせを行う場合、各位方性領域の直線性が損なわれたりピッチの精度が低下したりすると、異方性領域間の境界線がブラックマトリックス上に位置することができず、所望の立体画像表示装置を製造できず、クロストークが生じ、不良品の原因となる可能性がある。
【0131】
そこで、位相差フィルムの異方性領域の直線性及びピッチの精度を評価して、その位相差フィルムが適切な位置合わせが可能なものであるか否かの選別を行えば、立体画像表示装置の不良品の発生を抑制できる。この際、本発明の第三実施形態に係る評価方法を用いれば、位相差フィルムの評価を簡単に行うことが可能である。
【0132】
なお、位相差フィルムには、第一実施形態に係る位相差フィルムと同様に、本発明の効果を著しく損なわない限り任意の層を備えていてもよい。
【0133】
〔3.2.評価系〕
図15は、本発明の第三実施形態に係る評価系を模式的に示す分解斜視図である。また図15において、液晶セルの左目用の画素領域、並びに、位相差フィルムの第二異方性領域には斜線を付して示す。
【0134】
図15に示すように、本発明の第三実施形態に係る評価系300は、位相差フィルム130の代わりに位相差フィルム330を備えること以外は、第一実施形態に係る評価系100と同様である。このような評価系300は、例えば、光源110と、液晶パネル120と、着脱可能な円偏光フィルター140と、マイクロスコープ150とをこの順に備える評価装置に、評価対象となる位相差フィルム330を取り付けることにより構成しうる。
ここで、図15においては、評価系300を構成する各要素をいずれも図示のため離隔して示したが、これらのうち一部又は全部は実際の態様においては接触した状態にしてもよい。
【0135】
(位相差フィルム330)
位相差フィルム330は、面内の一方向Xに延在する複数の第一異方性領域331及び第二異方性領域332を有することにより、これらの領域からなるストライプ状のパターンを有するフィルムである。本実施形態においては、第一異方性領域331及び第二異方性領域332の面内位相差は、いずれも1/4波長となっている。
【0136】
第一異方性領域331の遅相軸A331は、マイクロスコープ側の偏光フィルム123の透過軸A123に対して、マイクロスコープ150で光源110に向かって観察する向きにおいて、時計回りに45°の角度をなしている。これにより、液晶パネル120を透過した直線偏光は、位相差フィルム330の第一異方性領域331を透過することによって、円偏光フィルター140を透過しうる円偏光へと変換されるようになっている。
【0137】
また、第二異方性領域332の遅相軸A332は、マイクロスコープ側の偏光フィルム123の透過軸A123に対して、マイクロスコープ150で光源110に向かって観察する向きにおいて、反時計回りに45°の角度をなしている。これにより、液晶パネル120を透過した直線偏光は、位相差フィルム330の第二異方性領域332を透過することによって、第一異方性領域331を透過した円偏光とは逆向きの、偏光フィルター140で遮られる円偏光へと変換されるようになっている。
【0138】
位相差フィルム330を液晶パネル120上に設置する際、第一異方性領域331及び第二異方性領域332の境界線333が、液晶セル122のブラックマトリックス126に対応する位置に来るように、位相差フィルム330を位置合わせする。位置合わせの方法としては、例えば、第一実施形態と同様に、光源110を発光させ、且つ、液晶パネル120を制御して、右目用の画素領域124及び左目用の画素領域125の一方を透過した光のみがマイクロスコープ側の偏光フィルム123を透過しうるようにした状態において、厚み方向から円偏光フィルターを介して観察しながら、位相差フィルム330の位置を調整する方法が挙げられる。
【0139】
ただし、第一異方性領域331及び第二異方性領域332の直線性又はピッチの精度が劣る場合には、位置合わせをしても常に光が観察され、黒表示が得られないことがありえる。この場合には、通常、観察される光の強さができるだけ弱くなる位置に、位相差フィルム330を位置合わせする。このような位置では、面内の一部において境界線333とブラックマトリックス126とが重ならないことがありえるが、第一異方性領域331及び第二異方性領域332の直線性又はピッチの精度を評価することは可能である。
【0140】
本実施形態においては、厚み方向から見た場合、位相差フィルム330の第一異方性領域331が液晶セル122の右目用の画素領域124に重なり、第二異方性領域332が液晶セル122の左目用の画素領域125に重なるように、位置合わせされているものとする。
【0141】
〔3.3.評価方法〕
上述した評価系において、位相差フィルム330の評価を行う。
偏光フィルター140を装着して観察した場合、第一実施形態において第二位相差フィルム132の異方性領域133を透過した光が偏光フィルター140で遮られたのと同様に、第三実施形態においては位相差フィルム330の第二異方性領域332を透過した光が偏光フィルター140で遮られる。また、第一実施形態において第二位相差フィルム132の等方性領域134を透過した光が偏光フィルター140を透過してマイクロスコープ150に届くのと同様に、第三実施形態においては位相差フィルム330の第一異方性領域331を透過した光が偏光フィルター140を透過してマイクロスコープ150に届く。したがって、第三実施形態に係る位相差フィルム330は、その第一異方性領域331を第一実施形態に係る等方性領域134に相当する要素とし、また、その第二異方性領域332を第一実施形態に係る異方性領域133に相当する要素として扱って、第一実施形態と同様にして評価することができる。
【0142】
具体的には、位相差フィルム330の第一異方性領域331及び第二異方性領域332の直線性を評価する際には、次の操作を行なう。
液晶パネル120の画面120Uに格子160を表示させた状態で、格子160の複数の交差点163ai〜163av(図7参照)を、偏光フィルター140を装着せずにマイクロスコープ150で観察し、また、偏光フィルター140を装着してマイクロスコープ150で観察する。偏光フィルター140を装着しない観察の結果から、基準方向Xに平行な基準線164を複数の交差点163ai〜163avで同様に設定する。さらに、偏光フィルター140を装着した観察の結果から、基準線164と、赤色の画素R、緑色の画素G及び青色の画素Bの基準方向Xに垂直な方向Yにおける縁部Eとのズレ量Δdを測定する(図6参照)。そして、ズレ量Δdの複数の交差点163ai〜163av間での相違から、位相差フィルム330の第一異方性領域331及び第二異方性領域332の直線性を評価する。
【0143】
また、位相差フィルム330における一組の第一異方性領域331及び第二異方性領域332の合計ピッチを評価する際には、次の操作を行なう。
液晶パネル120の画面120Uに格子160を表示させた状態で、格子160の複数の交差点163ai〜163fi(図9参照)を、偏光フィルター140を装着せずにマイクロスコープ150で観察し、また、偏光フィルター140を装着してマイクロスコープ150で観察する。偏光フィルター140を装着しない観察の結果から、基準方向Xに平行な基準線164を複数の交差点163ai〜163avで同様に設定する。さらに、偏光フィルター140を装着した観察の結果から、基準線164と、赤色の画素R、緑色の画素G及び青色の画素Bの基準方向Xに垂直な方向Yにおける縁部Eとのズレ量Δdを測定する(図6参照)。そして、ズレ量Δdの複数の交差点163ai〜163fi間での相違量を、対比する2点間の画素数で割ることにより、一組の第一異方性領域331及び第二異方性領域332の合計ピッチの1画素当たりの誤差を求めて、第一異方性領域331及び第二異方性領域332の合計ピッチの精度を評価する。
【0144】
このように、本発明の第三実施形態に係る評価方法によれば、液晶パネル120の液晶セル122に形成された画素領域124及び125を基準にして、位相差フィルム330の第一異方性領域331及び第二異方性領域332の直線性及びピッチの精度を簡単に評価することができる。
【0145】
[4.第四実施形態]
〔4.1.評価対象〕
本発明の第四実施形態において評価対象となる位相差フィルムは、第三実施形態と同様である。
【0146】
〔4.2.評価系〕
図16は、本発明の第四実施形態に係る評価系を模式的に示す分解斜視図である。また図16において、ブラックストライプフィルムのブラックストライプ、並びに、位相差フィルムの第二異方性領域には斜線を付して示す。
【0147】
図16に示すように、本発明の第四実施形態に係る評価系400は、位相差フィルム130の代わりに位相差フィルム330を備えること以外は、第二実施形態に係る評価系200と同様である。このような評価系400は、例えば、光源110と、複層ブラックストライプフィルム220と、着脱可能な円偏光フィルター140と、マイクロスコープ150とをこの順に備える評価装置に、評価対象となる位相差フィルム330を取り付けることにより構成しうる。
ここで、図16においては、評価系を構成する各要素をいずれも図示のため離隔して示したが、これらのうち一部又は全部は実際の態様においては接触した状態にしてもよい。
【0148】
(位相差フィルム330)
位相差フィルム330は、第三実施形態で説明したものと同様であり、面内の一方向Xに延在する複数の第一異方性領域331及び第二異方性領域332からなるストライプ状のパターンを有するフィルムである。
【0149】
第一異方性領域331の遅相軸A331は、偏光フィルム221の透過軸A221に対して、マイクロスコープ150で光源110に向かって観察する向きにおいて、時計回りに45°の角度をなしている。これにより、複層ブラックストライプフィルム220を透過した直線偏光は、位相差フィルム330の第一異方性領域331を透過することによって、偏光フィルター140を透過しうる円偏光へと変換されるようになっている。
【0150】
また、第二異方性領域332の遅相軸A332は、偏光フィルム221の透過軸A221に対して、マイクロスコープ150で光源110に向かって観察する向きにおいて、反時計回りに45°の角度をなしている。これにより、複層ブラックストライプフィルム220を透過した直線偏光は、位相差フィルム330の第二異方性領域332を透過することによって、第一異方性領域331を透過した円偏光とは逆向きの、偏光フィルター140で遮られる円偏光へと変換されるようになっている。
【0151】
位相差フィルム330を複層ブラックストライプフィルム220上に設置する際、本実施形態では、第一異方性領域331がブラックストライプフィルム222の透光領域225に対応する位置に、また、第二異方性領332がブラックストライプ224に対応する位置に来るように、位相差フィルム130を位置合わせする。位置合わせの方法としては、例えば、第二実施形態と同様に、光源110を発光させた状態において、円偏光フィルターを介して厚み方向から観察しながら、位相差フィルム330の位置を調整する方法が挙げられる。
【0152】
ただし、第一異方性領域331及び第二異方性領域332の直線性又はピッチの精度が劣る場合には、位置合わせをしても常に光が観察され、黒表示が得られないことがありえる。この場合には、第一実施形態と同様、観察される光の光量ができるだけ小さくなる位置に、位相差フィルムを位置合わせする。
【0153】
〔4.3.評価方法〕
上述した評価系において、位相差フィルム330の評価を行う。
偏光フィルター140を装着して観察した場合、第二実施形態において第二位相差フィルム132の異方性領域133を透過した光が偏光フィルター140で遮られたのと同様に、第四実施形態においては位相差フィルム330の第二異方性領域332を透過した光が偏光フィルター140で遮られる。また、第二実施形態において第二位相差フィルム132の等方性領域134を透過した光が偏光フィルター140を透過してマイクロスコープ150に届くのと同様に、第四実施形態においては位相差フィルム330の第一異方性領域331を透過した光が偏光フィルター140を透過してマイクロスコープ150に届く。したがって、第四実施形態に係る位相差フィルム330は、その第一異方性領域331を第二実施形態に係る等方性領域134に相当する要素とし、また、その第二異方性領域332を第二実施形態に係る異方性領域133に相当する要素として扱って、第二実施形態と同様にして評価することができる。
【0154】
具体的には、位相差フィルム330の第一異方性領域331及び第二異方性領域332の直線性を評価する際には、次の操作を行なう。
光源110を光らせた状態で、複層ブラックストライプフィルム220の透光領域225上の複数の地点260ai〜260aiii(図12参照)を、偏光フィルター140を装着せずにマイクロスコープ150で観察し、また、偏光フィルター140を装着してマイクロスコープ150で観察する。この際、前記の観察される複数の地点260ai〜260aiiiとしては、基準方向Xにおける位置(座標)が異なるが、基準方向Xに垂直な方向Yにおける位置(座標)が同じ地点を選択する。偏光フィルター140を装着しない観察の結果から、基準方向Xに平行な基準線263を複数の地点260ai〜260aiiiで同様に設定する。さらに、偏光フィルター140を装着した観察の結果から、基準線263と、明部分261の方向Yにおける縁部Eとのズレ量Δdを測定する(図14参照)。そして、ズレ量Δdの複数の地点260間での相違から、位相差フィルム330の第一異方性領域331及び第二異方性領域332の直線性を評価する。
【0155】
また、位相差フィルム330における一組の第一異方性領域331及び第二異方性領域332の合計ピッチを評価する際には、次の操作を行なう。
光源110を光らせた状態で、複層ブラックストライプフィルム220の透光領域225上の複数の260ai〜260ci(図12参照)を、偏光フィルター140を装着せずにマイクロスコープ150で観察し、また、偏光フィルター140を装着してマイクロスコープ150で観察する。この際、前記の観察される複数の地点260ai〜260ciとしては、基準方向Xにおける位置(座標)が同じであるが、基準方向Xに垂直な方向Yにおける位置(座標)が異なる地点を選択する。偏光フィルター140を装着しない観察の結果から、基準方向Xに平行な基準線263を複数の地点260ai〜260ciで同様に設定する。さらに、偏光フィルター140を装着した観察の結果から、基準線263と、明部分261の方向Yにおける縁部Eとのズレ量Δdを測定する(図14参照)。そして、ズレ量Δdの複数の地点260ai〜260ci間での相違量を、対比する2点間の画素数で割ることにより、一組の第一異方性領域331及び第二異方性領域332の合計ピッチの1画素当たりの誤差を求めて、第一異方性領域331及び第二異方性領域332の合計ピッチの精度を評価する。
【0156】
このように、本発明の第四実施形態に係る評価方法によれば、複層ブラックストライプフィルム220のブラックストライプフィルム222に形成されたブラックストライプ224及び透光領域225を基準にして、位相差フィルム130の第一異方性領域331及び第二異方性領域332の直線性及びピッチの精度を簡単に評価することができる。
【0157】
[5.変形例]
上述した実施形態は、更に変更して実施してもよい。
例えば、各実施形態における光学軸の方向は、位相差フィルムの評価を適切に行える限り、任意に変更してもよい。例えば、図3の評価系において、マイクロスコープ側の偏光フィルム123の透過軸A123が、光源側の偏光フィルム121の透過軸A121及び第一位相差フィルムの遅相軸A131との関係を保持しながら、面内の基準方向Xに対して90°の角度をなすようにしてもよい。
また、例えば、各実施形態において、1/4波長板を位相差フィルムのマイクロスコープ側に設けることなどにより、偏光フィルターとして直線偏光を透過又は遮断しうる直線偏光フィルターを用いてもよい。
また、例えば、各実施態様における1/4波長板は、複数の位相差フィルムを当該位相差フィルムの光学軸が所望の関係となるように積層した広帯域1/4波長板、逆波長分散液晶を基材に塗布して形成された広帯域1/4波長板、等であってもよい。
【0158】
また、例えば、第一実施形態に係る評価系100においては、液晶セル122の右目用の画素領域124及び左目用の画素領域125に、それぞれ、第二位相差フィルム132の異方性領域133及び等方性領域134を重ねるように位置合わせをしてもよい。
また、例えば、第一位相差フィルムの有効領域以外の外周に設けたアライメントマーク等を用いて、液晶パネルと位置合わせをしてもよい。
また、例えば、第一実施形態に係る評価系100においては、円偏光フィルターを透過しうる円偏光の向きを、逆向きにしてもよい。この場合、円偏光フィルター140を装着した観察においては、異方性領域133を透過した光を検出することにより、ズレ量Δdを測定して評価を行う。
【0159】
また、例えば、第一実施形態及び第三実施形態に係る評価系100及び300において、液晶パネル120に表示させる映像は、格子160以外の映像でもよい。
また、例えば、第一実施形態及び第三実施形態に係る評価系100及び200において、液晶パネル120の一部の表示色の画素だけで光を透過させるようにしてもよい。
【0160】
また、例えば、第二実施形態に係る評価系200において、第二位相差フィルム132の異方性領域133がブラックストライプフィルム222の透光領域225に重なるようにしてもよい。この場合、円偏光フィルター140の代わりに、円偏光フィルター140とは逆向きの円偏光を透過させうる円偏光フィルターを用いる。
また、例えば、第二実施形態及び第四実施形態に係る評価系200及び400において、偏光フィルム221をブラックストライプフィルム222よりもマイクロスコープ側に設けてもよい。
【0161】
また、例えば、第四実施形態に係る評価系400において、位相差フィルム330の第二異方性領域332がブラックストライプフィルム222の透光領域225に重なるようにしてもよい。この場合、円偏光フィルター140の代わりに、円偏光フィルター140とは逆向きの円偏光を透過させうる円偏光フィルターを用いる。
【0162】
また、例えば、第二実施形態及び第四実施形態に係る評価系200及び400において、基準部材として、複層ブラックストライプフィルム220に代えて、ストライプ状のパターンを構成する透光領域及び遮光領域をガラス上に設けたガラスマスクを用いてもよい。このガラスマスクは、例えば、ガラス表面にクロムスパッタを施し、さらにフォトレジストを塗布し、ストライプ状に露光してフォトレジストを感光させて、洗浄し、クロムをエッチングしたものを用いてもよい。あるいは、例えば、感光性乳剤を塗布したPETフィルムをストライプ状にレーザー描画し、洗浄し、該PETフィルムをガラス上に接着層を介して貼り合わせたものを、基準部材として用いてもよい。
さらに、位相差フィルムの評価を適切に行える限り、評価系に任意の構成要素を加えてもよい。
【0163】
[6.材料等]
続いて、上述した評価方法において用いられる部材を構成する材料の例について、以下に説明する。
【0164】
[6−1.偏光子及び偏光フィルター]
偏光子及び偏光フィルターとしては、所望の偏光を透過させ、それ以外の偏光を遮りうる偏光板を用いてもよい。
偏光板のうち、直線偏光板は、例えば、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素若しくは二色性染料を吸着させた後、ホウ酸浴中で一軸延伸することによって製造してもよい。また、例えば、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素もしくは二色性染料を吸着させ延伸し、さらに分子鎖中のポリビニルアルコール単位の一部をポリビニレン単位に変性することによって製造してもよい。
【0165】
また、円偏光板は、例えば、上述した直線偏光板と、1/4波長板とを組み合わせた偏光板などが挙げられる。ただし、上述した直線偏光板と1/4波長板とを組み合わせた円偏光板を用いる場合、1/4波長板は、位相差フィルム側に向くように配置することが好ましい。
また、円偏光板としては、例えば、コレステリック液晶偏光板(例えば、特開2010−181710号公報に記載の「コレステリック樹脂層」)などを用いてもよい。
偏光板の偏光度は、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上である。
【0166】
[6−3.基準部材]
基準部材としては、上述した実施形態のように、例えば液晶パネル及び複層ブラックストライプフィルムなどを用いてもよい。これらの基準部材においては、通常、検出器により検出される光を遮りうるブラックストライプにより遮光領域が形成され、そのブラックストライプが形成されていない領域が透光領域として機能しうる。また、液晶パネルでは、表示させる映像に応じて、一部の画素領域は透光領域として機能しうることもあり、また、遮光領域として機能しうることもある。
【0167】
ブラックストライプは、例えば、可視光を遮りうる樹脂により形成してもよい。具体例を挙げると、着色剤又は金属粒子を含む樹脂などが挙げられる。
【0168】
樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロースエステル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ウレタンアクリレート硬化樹脂、エポキシアクリレート硬化樹脂、ポリエステルアクリレート硬化樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0169】
着色剤としては、例えば、有機顔料、カーボンブラック顔料、導電性カーボンブラック、電池用カーボンブラック、ゴム用カーボンブラック等の顔料;アントラキノン系化合物、フタロシアニン系化合物、ペリノン系化合物、ジオキサジン系化合物、ベンゾフラン系化合物、チオフェンモノアゾ系化合物、シアニン系化合物、ジインモニウム系化合物等の染料などが挙げられる。これらの着色剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0170】
金属粒子を形成する金属材料としては、例えば、ニッケル、白金、パラジウム、銀−パラジウム、銅、金、銀、錫、鉛、並びにこれらの合金などが挙げられる。これらの金属材料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。また、金属粒子には表面処理が施されていてもよく、例えばチオール化合物によって表面を修飾されていてもよい。金属粒子の粒子径(直径)は、0.2μm以上60μm以下の範囲にあることが好ましい。
【0171】
[6−4.第一位相差フィルムと、異方性領域及び等方性領域を有する第二位相差フィルムとを備える位相差フィルム]
第一実施形態及び第二実施形態で評価したような、第一位相差フィルムと、異方性領域及び等方性領域を有する第二位相差フィルムとを備える位相差フィルムは、例えば、第二位相差フィルムを製造し、製造した第二位相差フィルムを第一位相差フィルムと貼り合せて製造してもよい。
【0172】
第一位相差フィルムとしては、例えば、樹脂により形成された延伸フィルムを用いてもよい。
延伸フィルムを形成する樹脂は、通常、ポリマー(重合体)を含む。これらの樹脂が含むポリマーの例を挙げると、鎖状オレフィンポリマー、シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、酢酸セルロース系ポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、鎖状オレフィンポリマー及びシクロオレフィンポリマーが好ましく、透明性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、シクロオレフィンポリマーが特に好ましい。
【0173】
なお、樹脂は、1種類のポリマーを単独で含むものを用いてもよく、2種類以上のポリマーを任意の比率で組み合わせて含むものを用いてもよい。また、樹脂には、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意の配合剤を含ませてもよい。好適な樹脂の具体例を挙げると、日本ゼオン社製「ゼオノア1420」を挙げることができる。
【0174】
さらに、第一位相差フィルムとしては、単層構造のフィルムを用いてもよく、複層構造のフィルムを用いてもよい。
【0175】
好適な第一位相差フィルムの例を挙げると、市販の斜め延伸フィルム、長尺の横延伸フィルム、例えば、日本ゼオン社製、製品名「斜め延伸ゼオノアフィルム」や「横延伸ゼオノアフィルム」などを挙げることができる。
【0176】
第二位相差フィルムは、例えば、液晶相を呈することができ且つ紫外線(UV)等のエネルギー線の照射を受けて硬化しうる材料を用いて基材上に製造したものを用いてもよい。かかる材料を、以下において「液晶層形成用組成物」ということがある。また、かかる材料の、未硬化状態の層又は硬化後の層を、以下において「液晶樹脂層」ということがある。
【0177】
第二位相差フィルムは、例えば、液晶層形成用組成物を基材に塗布して未硬化状態の液晶樹脂層を得て、その液晶樹脂層の一部をある配向状態で硬化させ、他の一部を等方相の配向状態(すなわち、配向していない状態)で硬化させることにより製造してもよい。このような製造方法は、基材として長尺の基材フィルムを用いて行うことが可能であり、基材フィルムを搬送方向にラビングすることで、そのラビング方向と平行(遅相軸が搬送方向と平行)に液晶層形成用組成物が配向し、そのため第二位相差フィルムを長尺のフィルムとして製造できるので、生産効率の点で優れている。
【0178】
具体的には、
i.基材フィルムの一方の表面に、エネルギー線を遮光しうる遮光部と前記エネルギー線を透過させうる透光部とを有するマスク層を作製する工程と、
ii.前記基材フィルムの前記マスク層とは反対側の表面に、未硬化状態の液晶樹脂層を設ける工程と、
iii.前記基材フィルムの前記マスク層側から、前記遮光部で遮光されるが前記透光部を透光する波長のエネルギー線を照射して、前記液晶樹脂層の一部の領域を硬化させる第一の硬化工程と、
iv.前記液晶樹脂層の未硬化状態の領域における配向状態を変化させる工程と、
v.前記基材フィルムの前記マスク層とは反対側からエネルギー線を照射して前記液晶樹脂層の未硬化状態の領域を硬化させる第二の硬化工程と
を有する製造方法により製造してもよい。
【0179】
これらのようにして製造された第二位相差フィルムは、通常は基材フィルム及びマスク層を剥がした後で使用される。ただし、適宜、基材フィルム及びマスク層は、剥がさずに使用してもよい。
【0180】
上記の第二位相差フィルムの製造方法において、基材フィルムの材料としては、未硬化状態の液晶樹脂層を硬化させる工程において液晶樹脂層が硬化できる程度に紫外線等のエネルギー線を透過させられる材料を用いうる。通常は、1mm厚で全光線透過率(JIS K7361−1997に準拠して、濁度計(日本電色工業社製、NDH−300A)を用いて測定)が80%以上である材料が好適である。
【0181】
基材フィルムの材料の例を挙げると、第一位相差フィルムの材料として挙げた樹脂などが挙げられる。これらの材料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0182】
基材フィルムの厚みは、製造時のハンドリング性、材料のコスト、薄型化及び軽量化の観点から、好ましくは30μm以上、より好ましくは60μm以上であり、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下である。
【0183】
基材フィルムは、延伸されていない未延伸フィルムであってもよく、延伸された延伸フィルムであってもよい。また、等方なフィルムであっても、異方性を有するフィルムであってもよい。
【0184】
基材フィルムは、一層のみからなる単層構造のフィルムであってもよく、二層以上の層からなる複層構造のフィルムであってもよい。通常は、生産性及びコストの観点から、単層構造のフィルムを用いる。
【0185】
基材フィルムは、その片面又は両面に表面処理が施されたものであってもよい。表面処理を施すことにより、基材フィルムの表面に直接形成される他の層との密着性を向上させることができる。表面処理としては、例えば、エネルギー線照射処理や薬品処理などが挙げられる。また、基材フィルムの液晶層形成用組成物を塗布する面に配向膜を有していてもよい。
【0186】
マスク層の材料としては、エネルギー線、特に紫外線を遮光することができ、且つパターンの形成が容易なマスク用組成物を適宜選択して用いてもよい。
【0187】
通常、マスク用組成物としては、樹脂を用いる。前記の樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロースエステル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ウレタンアクリレート硬化樹脂、エポキシアクリレート硬化樹脂およびポリエステルアクリレート硬化樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種類の樹脂が好ましい。これらの樹脂を含むことにより、紫外線を遮光する材料を高温環境下においても保持し、安定した遮光部を作製することができる。前記の樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0188】
マスク用組成物に含まれる樹脂のガラス転移温度は、通常80℃以上、好ましくは100℃以上であり、通常400℃以下、好ましくは350℃以下である。ガラス転移温度を80℃以上にすることによりマスク層の耐熱性を高めることができ、例えば液晶樹脂層の加熱時にマスク層が変形することを防止できる。また、ガラス転移温度を400℃以下にすることにより、樹脂の溶解性を高めてマスク用組成物の印刷を簡単にできる。印刷前の状態とマスク層を形成した後の状態とで樹脂のガラス転移温度が変化する場合には、マスク層を形成した後の状態においてガラス転移温度が前記の範囲に収まることが好ましい。
【0189】
マスク用組成物は、紫外線吸収剤を含むことが好ましい。これによりマスク層の遮光部が紫外線吸収剤を含むことになり、遮光部において紫外線を安定して遮光することができるようになる。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤およびトリアジン系紫外線吸収剤からなる群より選ばれる少なくとも1種類の紫外線吸収剤を用いることが好ましい。紫外線吸収剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。紫外線吸収剤の使用量は、マスク層中のモノマー、オリゴマー及びポリマー100重量部に対して、通常5重量部以上、好ましくは8重量部以上、より好ましくは10重量部以上であり、通常20重量部以下、好ましくは18重量部以下、より好ましくは15重量部以下である。
【0190】
マスク用組成物は、さらに、着色剤、金属粒子、溶媒、光重合開始剤、架橋剤、その他の成分を含んでいてもよい。
【0191】
マスク用組成物を用いてマスク層を形成する方法としては、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、ロータリースクリーン印刷法、グラビアオフセット印刷法、インクジェット印刷法、又はこれらの組み合わせである印刷法を好ましく挙げることができる。透光部と遮光部は、例えば、マスク層の厚さが薄い層と厚い層とを形成することにより設けてもよい。
【0192】
液晶層形成用組成物としては、液晶化合物を含む組成物を用いうる。前記の液晶化合物としては、例えば、重合性基を有する液晶化合物、側鎖型液晶ポリマー化合物などが挙げられる。重合性基を有する液晶化合物としては、例えば、特開平11−513360号公報、特開2002−030042号公報、特開2004−204190号公報、特開2005−263789号公報、特開2007−119415号公報、特開2007−186430号公報などに記載された重合性基を有する棒状液晶化合物などが挙げられる。また、側鎖型液晶ポリマー化合物としては、例えば、特開2003−177242号公報などに記載の側鎖型液晶ポリマー化合物などが挙げられる。また、好ましい液晶化合物の例を製品名で挙げると、BASF社製「LC242」等が挙げられる。液晶化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0193】
液晶層形成用組成物における液晶化合物の屈折率異方性Δnは、波長546nmにおいて、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.10以上であり、好ましくは0.30以下、より好ましくは0.25以下である。屈折率異方性Δnが0.05未満では所望の光学的機能を得るために液晶樹脂層の厚さが厚くなって配向均一性が低下する可能性があり、また経済コスト的にも不利である。屈折率異方性Δnが0.30より大きいと所望の光学的機能を得るために液晶樹脂層の厚さが薄くなり、厚さ精度に対して不利である。また、Δnが0.30より大きい場合、液晶樹脂層の紫外線吸収スペクトルの長波長側の吸収端が可視域に及ぶ場合がありえるが、該スペクトルの吸収端が可視域に及んでも所望する光学的性能に悪影響を及ぼさない限り、使用可能である。液晶層形成用組成物が液晶化合物を1種類だけ含む場合には、当該液晶化合物の屈折率異方性を、そのまま液晶層形成用組成物における液晶化合物の屈折率異方性とする。また、液晶層形成用組成物が液晶化合物を2種類以上含む場合には、各液晶化合物それぞれの屈折率異方性Δnの値と各液晶化合物の含有比率とから求めた加重平均の値を、液晶層形成用組成物における液晶化合物の屈折率異方性とする。屈折率異方性Δnの値は、セナルモン法により測定しうる。
【0194】
さらに、液晶層形成用組成物は、製造方法や最終的な性能に対して適正な物性を付与するために、液晶化合物以外にその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分の例を挙げると、有機溶媒、界面活性剤、キラル剤、重合開始剤、紫外線吸収剤、架橋剤、酸化防止剤などが挙げられる。これらの成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0195】
有機溶媒のうち好適な例を挙げると、ケトン類、アルキルハライド類、アミド類、スルホキシド類、ヘテロ環化合物、炭化水素類、エステル類、およびエーテル類等が挙げられる。これらの中でも、環状ケトン類、環状エーテル類が、液晶化合物を溶解させやすいために好ましい。環状ケトン溶媒としては、例えば、シクロプロパノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等が挙げられ、中でもシクロペンタノンが好ましい。環状エーテル溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン等が挙げられ、中でも1,3−ジオキソランが好ましい。溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよく、液晶層形成用組成物としての相溶性や粘性、表面張力の観点などから最適化されることが好ましい。
有機溶媒の含有割合は、有機溶媒以外の固形分全量に対する割合として、通常は30重量%以上95重量%以下である。
【0196】
界面活性剤としては、配向を阻害しないものを適宜選択して使用することが好ましい。好ましい界面活性剤の例を挙げると、疎水基部分にシロキサン及びフッ化アルキル基等を含有するノニオン系界面活性剤などが挙げられる。中でも、1分子中に2個以上の疎水基部分を持つオリゴマーが特に好適である。これらの界面活性剤の例を製品名で挙げると、OMNOVA社PolyFoxのPF−151N、PF−636、PF−6320、PF−656、PF−6520、PF−3320、PF−651、PF−652;ネオス社フタージェントのFTX−209F、FTX−208G、FTX−204D;DIC社メガファックのF−477、F−553、F−554、F−555、F−556、TF−1367;住友スリーエム社ノベックのFC−430、FC−4430、FC−4432;セイミケミカル社サーフロンのKH−40等が挙げられる。界面活性剤は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0197】
界面活性剤の配合割合は、液晶層形成用組成物を硬化して得られる液晶樹脂層中における界面活性剤の濃度が0.05重量%以上3重量%以下となるようにすることが好ましい。界面活性剤の配合割合が0.05重量%より少ないと空気界面における配向規制力が低下して配向欠陥が生じる可能性がある。逆に3重量%より多い場合には、過剰の界面活性剤が液晶性化合物分子間に入り込み、配向均一性を低下させる可能性がある。
【0198】
キラル剤は、重合性化合物であってもよく、非重合性化合物であってもよい。キラル剤としては、通常、分子内にキラルな炭素原子を有し、液晶化合物の配向を乱さない化合物を使用する。キラル剤の例を挙げると、重合性のキラル剤としてはBASF社製「LC756」等が挙げられる。また、例えば、特開平11−193287号公報、特開2003−137887号公報などに記載されているものも挙げられる。キラル剤は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。キラル剤は、通常、ツイステッドネマチック相を有する領域を形成する場合に、重合性を有する液晶化合物と併用して用いられる。
【0199】
重合開始剤は、例えば熱重合開始剤を用いてもよいが、通常は光重合開始剤を用いる。光重合開始剤としては、例えば、紫外線又は可視光線によってラジカル又は酸を発生させる化合物を使用しうる。光重合開始剤の例を挙げると、ベンゾイン、ベンジルメチルケタール、ベンゾフェノン、ビアセチル、アセトフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンジルイソブチルエーテル、テトラメチルチウラムモノ(ジ)スルフィド、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、メチルベンゾイルフォーメート、2,2−ジエトキシアセトフェノン、β−アイオノン、β−ブロモスチレン、ジアゾアミノベンゼン、α−アミルシンナックアルデヒド、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、2−クロロベンゾフェノン、pp′−ジクロロベンゾフェノン、pp′−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn−プロピルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル、ジフェニルスルフィド、ビス(2,6−メトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、アントラセンベンゾフェノン、α−クロロアントラキノン、ジフェニルジスルフィド、ヘキサクロルブタジエン、ペンタクロルブタジエン、オクタクロロブテン、1−クロルメチルナフタリン、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−2−(o−ベンゾイルオキシム)]や1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン1−(o−アセチルオキシム)などのカルバゾールオキシム化合物、(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、3−メチル−2−ブチニルテトラメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル−(p−フェニルチオフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。重合開始剤は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。さらに、必要に応じて液晶層形成用組成物に、例えば三級アミン化合物等の光増感剤又は重合促進剤を含ませて、液晶層形成用組成物の硬化性を調整してもよい。光重合効率を向上させるためには、液晶化合物及び光重合開始剤などの平均モル吸光係数を適切に選定することが好ましい。
【0200】
紫外線吸収剤としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、4−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)−1−(2−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどのヒンダードアミン系紫外線吸収剤;2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどのベンゾエート系紫外線吸収剤;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、アクリロニトリル系;などが挙げられる。これらの紫外線吸収剤は、所望する耐光性を付与するために、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0201】
紫外線吸収剤の配合割合は、液晶化合物100重量部に対して、通常0.001重量部以上、好ましくは0.01重量部以上であり、通常5重量部以下、好ましくは1重量部以下である。紫外線吸収剤の配合割合が、0.001重量部未満の場合には紫外線吸収能が不十分となり所望する耐光性を得られない可能性があり、5重量部より多い場合には液晶層形成用組成物を紫外線等の活性エネルギー線で硬化させる際に硬化が不十分となり、液晶樹脂層の機械的強度が低くなったり耐熱性が低くなったりする可能性がある。
【0202】
液晶層形成用組成物には、所望する機械的強度に応じて架橋剤を含ませてもよい。架橋剤の例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルアクリレート等の多官能アクリレート化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル等のエポキシ化合物;2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、4,4−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート等のアジリジン化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるイソシアヌレート型イソシアネート、ビウレット型イソシアネート、アダクト型イソシアネート等のイソシアネート化合物;オキサゾリン基を側鎖に有するポリオキサゾリン化合物;ビニルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン等のアルコキシシラン化合物;などが挙げられる。架橋剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。また、液晶層形成用組成物には架橋剤の反応性に応じて公知の触媒を含ませ、膜強度や耐久性向上に加えて生産性を向上させるようにしてもよい。
【0203】
前記架橋剤の配合割合は、硬化後の液晶樹脂層中における架橋剤の濃度が0.1重量%以上20重量%以下となるようにすることが好ましい。架橋剤の配合割合が0.1重量%より少ないと架橋密度向上の効果が得られない可能性があり、逆に20重量%より多いと硬化後の液晶樹脂層の安定性を低下させる可能性がある。
【0204】
酸化防止剤としては、例えば、テトラキス(メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン等のフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤などが挙げられる。酸化防止剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。酸化防止剤の配合量は、粘着層の透明性や粘着力が低下しない範囲としうる。
【0205】
未硬化状態の液晶樹脂層を設ける場合、通常は、塗布法を用いる。液晶層形成用組成物の塗布方法としては、例えば、リバースグラビアコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、ダイコーティング法、バーコーティング法等の方法が挙げられる。液晶層形成用組成物を基材フィルムの表面に塗布することにより、未硬化状態の液晶樹脂層が形成される。
【0206】
液晶層形成用組成物は、基材フィルムの表面に直接に塗布してもよいが、基材フィルムの表面に例えば配向膜等を介して間接的に塗布してもよい。配向膜を用いれば、液晶樹脂層において液晶化合物を容易に配向させることができる。
【0207】
配向膜は、例えば、セルロース、シランカップリング剤、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルアルコール、エポキシアクリレート、シラノールオリゴマー、ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、ポリオキサゾール、環化ポリイソプレンなどを用いて形成してもよい。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0208】
配向膜の厚みは、所望する液晶樹脂層の配向均一性が得られる厚みであればよく、好ましくは0.001μm以上、より好ましくは0.01μm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは2μm以下である。さらに、例えば、特開平6−289374号公報、特表2002−507782号公報、特許4022985号公報、特許4267080号公報、特許4647782号公報、米国特許5389698号明細書などに示されるような光配向膜と偏光UVを用いる方法によって、液晶化合物を配向させるようにしてもよい。
【0209】
また、上述した配向膜以外の手段によって、液晶化合物を配向させるようにしてもよい。例えば、配向膜を使用せずに基材フィルムの表面を直接ラビングするような配向処理を施してもよい。通常、基材フィルムの搬送方向とラビング方向は平行になる。
前記の配向膜の形成、基材フィルムの表面のラビング等の処理工程は、マスク層形成工程の工程前、工程中及び工程後のいずれの時点で行ってもよいが、未硬化状態の液晶樹脂層を設ける工程の前に行うことが好ましい。
【0210】
第二位相差フィルムの製造方法においては、第一の硬化工程に先立ち、必要に応じて、未硬化状態の液晶樹脂層を設ける工程を行った後で、液晶樹脂層の液晶化合物を配向させる配向工程を行ってもよい。配向工程における具体的な操作としては、例えば、オーブン内で未硬化状態の液晶樹脂層を所定の温度に加熱する操作を挙げることができる。
【0211】
配向工程において液晶樹脂層を加熱する温度は、通常40℃以上、好ましくは50℃以上であり、通常200℃以下、好ましくは140℃以下である。また、加熱処理における処理時間は、通常1秒以上、好ましくは5秒以上であり、通常3分以下、好ましくは120秒以下である。これにより、液晶樹脂層中の液晶化合物が配向しうる。また、液晶層形成用組成物に溶媒が含まれていた場合、前記の加熱によって通常は溶媒が乾燥するので、液晶樹脂層から溶媒が除去される。したがって、配向工程を行うと、通常は液晶樹脂層を乾燥させる乾燥工程も同時に進行する。通常、液晶樹脂層の配向軸はラビング方向と平行となり、配向軸が遅相軸となる。
【0212】
必要に応じて配向工程を行った後で、液晶樹脂層の一部の領域を硬化させる第一の硬化工程を行う。第一の硬化工程は、通常、紫外線の照射により行う。紫外線の照射時間、照射量、及びその他の条件は、液晶層形成用組成物の組成及び液晶樹脂層の厚みなどに応じて適切に設定しうる。照射時間は通常0.01秒から3分の範囲であり、照射量は通常0.01mJ/cmから50mJ/cmの範囲である。また、紫外線の照射は、例えば窒素及びアルゴン等の不活性ガス中において行ってもよく、空気中で行ってもよい。
【0213】
第一の硬化工程の後で、液晶樹脂層の未硬化状態の領域における配向状態を変化させる工程を行う。この工程において、配向状態を変化させる方法としては、例えば、ヒーターにより、液晶樹脂層を、液晶層形成用組成物の透明点(NI点)以上に加熱してもよい。これにより、液晶化合物分子の配向はランダムになるので、液晶樹脂層の未硬化状態の領域は等方相となる。
【0214】
液晶樹脂層の未硬化状態の領域における配向状態を変化させた後で、第二の硬化工程を行う。第二の硬化工程は、紫外線の照射により行ってもよい。紫外線の照射時間、照射量などは、液晶層形成用組成物の組成及び液晶樹脂層の厚みなどに応じて適切に設定しうるが、照射量は通常50mJ/cmから10,000mJ/cmの範囲である。また、紫外線の照射は、例えば窒素及びアルゴン等の不活性ガス中において行ってもよく、空気中で行ってもよい。照射に際して、必要に応じてヒーターによる加熱を継続して、未硬化状態の液晶樹脂層の等方相を維持した状態で照射を行ってもよい。
【0215】
さらに、別の製造方法として、第二位相差フィルムは、
i.基材フィルムの一方の表面に、未硬化状態の液晶樹脂層を設ける工程と、
ii.前記基材フィルムの液晶樹脂層を設けた面と反対側の表面に、ストライプパターンの透光部および遮光部をガラス上に設けたガラスマスクを介して、エネルギー線を照射して、前記液晶樹脂層の一部の領域を硬化させる第一の硬化工程と、
iii.前記液晶樹脂層の未硬化状態の領域における配向状態を変化させる工程と、
iv.前記基材フィルムの液晶樹脂層を設けた面にエネルギー線を照射して前記液晶樹脂層の未硬化状態の領域を硬化させる第2の硬化工程と
を有する製造方法により製造してよい。この製造方法においては、先に説明した製造方法と同様の操作は、先に説明した製造方法と同様の条件で行ってもよい。
【0216】
また、第一の硬化工程としては、特開平4−299332号公報に示した方法を使用してもよい。また、ガラスマスクは、例えば、ガラス表面にクロムスパッタを施し、さらにフォトレジストを塗布し、ストライプ状に露光してフォトレジストを感光させて、洗浄し、クロムをエッチングしたものを用いてもよい。あるいは、例えば感光性乳剤を塗布したPETフィルムをストライプ状にレーザー描画し、洗浄し、該PETフィルムをガラス上に接着層を介して貼り合わせたものを用いてもよい。
さらに、上述した各製造方法では、第二位相差フィルムが得られる限り、各工程の順番は任意である。
【0217】
上述した製造方法によれば、いずれも、遮光部及び透光部により形成されるマスク層又はガラスマスクのマスクパターンを精度よく写し取ったパターンを有する第二位相差フィルムが製造できる。さらに、当該方法により得られた第二位相差フィルムにおいては、異方性領域と等方性領域との間には、物質的な連続性がある。したがって、領域間の空隙による反射及び散乱等を生じない点で光学的に有利であり、また、領域間の空隙を起点とした破損等を生じない点で機械的強度の点でも有利である。
【0218】
第二位相差フィルムとしての液晶樹脂層の厚みは、液晶層形成用組成物における液晶化合物の屈折率異方性Δnの値に応じて、第一領域及び第二領域それぞれで所望の位相差Reが得られるように適切な厚みに設定しうる。通常は、液晶樹脂層の厚みは、0.5μm以上50μm以下の範囲である。
【0219】
こうして得られた第二位相差フィルムを第一位相差フィルムに貼り合わせることにより、第一位相差フィルム及び第二位相差フィルムを有する位相差フィルムが得られる。この際、必要に応じて、貼り合わせには接着剤を用いてもよい。
【0220】
[6−5.異なる遅相軸方向を有する異方性領域を有する位相差フィルム]
第三実施形態及び第四実施形態で評価したような、遅相軸方向が異なる複数の異方性領域を有する位相差フィルムは、例えば、以下に説明する方法で製造したものを用いてもよい。
すなわち、この製造方法は、
i.基材フィルムの表面に、光配向材料の層(以下、「光配向材料層」ということがある。)を形成する工程と、
ii.光配向材料層の一部の領域に、偏光を照射する工程と、
iii.光配向材料層の全体に、前記の偏光とは偏光方向が90°±3°異なる偏光を照射して、配向膜を得る工程と、
iv.前記配向膜の表面に、液晶化合物を含み活性エネルギー線の照射により硬化しうる液晶層形成用組成物の層(即ち、未硬化状態の液晶樹脂層)を形成する工程と、
v.前記液晶樹脂層に活性エネルギー線を照射して、液晶樹脂層を硬化させる工程とを有する。
【0221】
これらのようにして製造された位相差フィルムは、通常は基材フィルムを剥がした後で使用される。ただし、適宜、基材フィルムは、剥がさずに使用してもよい。
基材フィルムとしては、第一位相差フィルムと第二位相差フィルムとを備える位相差フィルムの説明において上述したものと同様のフィルムを用いてもよい。
【0222】
光配向材料とは、偏光を照射されることにより不可逆的に配向する材料である。このような光配向材料の例としては、特許4267080号公報に記載のPPN層に使用されるPPN材料、特許4647782号公報に記載のLPP/LCP混合物、第2543666号公報に記載のPPN材料などが挙げられる。なお、これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0223】
基材フィルムの表面に、コロナ放電処理(出力0.2kW、基材フィルム濡れ指数56dyne/cm)を施し、処理面に例えば光配向材料を塗布することにより、光配向材料層を形成する。光配向材料層の厚みは、所望する液晶樹脂層の配向均一性が得られる厚みであればよく、好ましくは0.001μm以上、より好ましくは0.01μm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは2μm以下である。
【0224】
光配向材料層を形成した後で、光配向材料層の一部の領域に偏光を照射する工程(第一の偏光照射工程)を行う。偏光を照射された領域では、光配向材料層において光配向材料が不可逆的に配向し、その配向状態を維持したまま固定化される。
【0225】
第一の偏光照射工程では、通常、マスクを介して光配向材料層に偏光を照射する。この際、マスクとしては、通常、ある方向に対して平行に延在する帯状の遮光部及び透光部を有するマスクを用いる。これにより、光配向材料層の、ある方向に対して平行に延在する帯状の領域に、偏光を照射することができる。
【0226】
マスクとしては、例えば、基材フィルムの光配向材料層とは反対側に形成されたマスク層を用いてもよい。マスク層は、第一位相差フィルムと第二位相差フィルムとを備える位相差フィルムの説明において上述したものと同様に形成してもよい。
【0227】
また、マスクとしては、例えば、ガラス表面にクロムスパッタを施し、さらにフォトレジストを塗布し、ストライプ状に露光してフォトレジストを感光させて、洗浄し、クロムをエッチングしたガラスマスクを用いてもよい。
あるいは、例えば感光性乳剤を塗布したPETフィルムをストライプ状にレーザー描画し、洗浄し、該PETフィルムをガラス上に接着層を介して貼り合わせたマスクを用いてもよい。
【0228】
第一の偏光照射工程では、偏光として、光配向材料を配向させうる波長であって、マスクの遮光部で遮光されるが透光部を透過しうる波長の光を用いる。このような偏光として、通常は紫外線を用いる。紫外線の照射時間、照射量、及びその他の条件は、光配向材料の組成及び光配向材料層の厚みなどに応じて適切に設定しうる。また、偏光の照射は、例えば窒素及びアルゴン等の不活性ガス中において行ってもよく、空気中で行ってもよい。
【0229】
第一の偏光照射工程の後で、光配向材料層の全体に、前記の偏光とは偏光方向が90°±3°異なる偏光を照射する第二の偏光照射工程を行う。これにより、第一の偏光照射工程において偏光が照射されていなかった領域において、光配向材料が不可逆的に配向し、その配向状態を維持したまま固定化される。また、第一の偏光照射工程で照射した偏光と第二の偏光照射工程で照射した偏光とは偏光方向が90°±3°異なっているので、光配向材料層において第二の偏光照射工程で配向した領域の配向方向は、第一の偏光照射工程で配向した領域の配向方向と90°±3°異なる。
【0230】
第二の偏光照射工程は、例えば、マスクを介さずに偏光を照射することにより行ってもよい。偏光の照射時間、照射量などは、光配向材料の組成及び光配向材料層の厚みなどに応じて適切に設定しうるが、照射量は通常50mJ/cmから10,000mJ/cmの範囲である。また、偏光の照射は、例えば窒素及びアルゴン等の不活性ガス中において行ってもよく、空気中で行ってもよい。
【0231】
上述した製造方法により、基材フィルムの表面に光配向材料層からなる配向膜が得られる。この配向膜においては、配向方向が90°±3°異なる2種類の領域が、遮光部及び透光部により形成されるマスクのマスクパターンを精度よく写し取ったパターンを形成する。本例においては、配向方向が90°±3°異なる2種類の領域が、いずれもある方向に対して平行に延在する帯状の形状を有して交互に並ぶことにより、全体としてストライプ状のパターンが形成される。
【0232】
基材フィルムに配向膜を形成した後で、その配向膜の表面に、液晶樹脂層を形成する。液晶層形成用組成物としては、例えば、第一位相差フィルムと第二位相差フィルムとを備える位相差フィルムの説明において上述したものと同様の液晶層形成用組成物を用いてもよい。
【0233】
未硬化状態の液晶樹脂層を設ける場合、通常は、塗布法を用いる。液晶層形成用組成物の塗布方法としては、例えば、第一位相差フィルムと第二位相差フィルムとを備える位相差フィルムの説明において上述したものと同様の方法を用いてもよい。液晶層形成用組成物を基材フィルムの表面に塗布することにより、未硬化状態の液晶樹脂層が形成される。
【0234】
未硬化状態の液晶樹脂層を形成する工程を行った後で、必要に応じて、液晶樹脂層に含まれる液晶化合物を配向させる配向工程を行ってもよい。配向工程を行うことにより、配向膜の各領域の配向方向に応じた方向へと液晶化合物が配向する。配向工程における具体的な操作としては、例えば、第一位相差フィルムと第二位相差フィルムとを備える位相差フィルムの説明において上述したのと同様の操作を行なってもよい。
【0235】
必要に応じて配向工程を行った後で、未硬化状態の液晶樹脂層を硬化させる工程(硬化工程)を行う。硬化させられる液晶樹脂層の各領域では液晶層形成用組成物において重合反応が進行し、液晶化合物は配向状態を維持したまま固定化される。これにより、基材フィルムの表面に、配向膜を介して、液晶樹脂層からなる位相差フィルムが形成される。
【0236】
硬化工程は、通常、紫外線の照射により行う。紫外線の照射時間、照射量などは、液晶層形成用組成物の組成及び液晶樹脂層の厚みなどに応じて適切に設定しうるが、照射量は通常50mJ/cmから10,000mJ/cmの範囲である。また、紫外線の照射は、例えば窒素及びアルゴン等の不活性ガス中において行ってもよく、空気中で行ってもよい。
【0237】
この位相差フィルムにおいては、遅相軸方向が異なる2種類の領域が、配向膜に形成された異なる配向方向を有する領域のパターンを精度よく写し取ったパターンを形成する。通常、配向膜の各領域における配向方向と、その表面に形成された位相差フィルムの各領域の遅相軸方向とは、平行又は垂直となる。したがって、本例のように配向方向が90°±3°異なる領域を配向膜に形成した場合、位相差フィルムにおいて各領域の遅相軸方向は垂直となる。
【0238】
さらに、当該製造方法により得られた位相差フィルムにおいては、遅相軸方向が異なる異方性領域の間には、物質的な連続性がある。したがって、上述した製造方法は、異なる種類の異方性領域間の空隙による反射及び散乱等を生じない点で光学的に有利であり、また、異方性領域間の空隙を起点とした破損等を生じない点で機械的強度の点でも有利である。
【0239】
上記の位相差フィルムの製造方法においては、必要に応じて、上述した工程以外の工程を行うようにしてもよい。
また、所望の位相差フィルムが得られる限り、各工程の順番は任意である。
【0240】
位相差フィルムとしての液晶樹脂層の厚みは、液晶層形成用組成物における液晶化合物の屈折率異方性Δnの値に応じて、位相差フィルムの領域それぞれで所望の位相差Reが得られるように適切な厚みに設定しうる。通常は、液晶樹脂層の厚みは、0.5μm以上50μm以下の範囲である。
【0241】
[7.用途]
上述した評価方法により評価された位相差フィルムは、その位相差の大きさや光軸の軸角度等の光学特性により、それを通過する前の偏光状態を別の異なる偏光状態に変換する機能を有していることから、液晶表示装置をはじめ、物品の偽造防止等の光学素子に活用されている。例えば、パッシブ形式の立体画像表示装置に用いてもよく、特に液晶表示装置からなる立体画像表示装置に好適である。
【実施例】
【0242】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明は以下に説明する実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施してもよい。また、以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り重量基準である。また、以下の説明において位相差Reの測定波長は、別に断らない限り550nmである。さらに、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温及び常圧の条件において行った。
【0243】
[1.実施例1]
〔1.1 評価対象となる位相差フィルムの用意〕
(液晶組成物の用意)
重合性液晶化合物(BASF社製、製品名「LC242」)を75重量部と、下記の化合物1を20重量部と、架橋剤(新中村化学工業社製、トリメチロールプロパントリアクリレート)を5重量部と、重合開始剤(BASF社製、製品名「Irg 379」)を3重量部と、フッ素を含む界面活性剤メガファック−F477(DIC社製)を0.1重量部と、メチルエチルケトンを200重量部とを混合し、液晶層形成用組成物を調製した。
【0244】
【化1】

【0245】
【化2】

【0246】
(第二位相差フィルムの作製)
基材フィルムとして、面内の屈折率が等方性で長尺のポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製「PETフィルムA4100」;厚み100μm)を用意した。この基材フィルムをフィルム搬送装置の繰り出し部に取り付け、当該基材フィルムを搬送しながらラビング処理を施し、ラビング処理を施した面に前記にて用意した液晶層形成用組成物をダイコーターを使用して塗布した。これにより、基材フィルムの片面に、塗膜として未硬化状態の液晶組成物層を形成した。
【0247】
前記の液晶組成物層を40℃で2分間配向処理して、液晶組成物層中の重合性液晶化合物を配向させた。
その後、液晶組成物層に対して、基材フィルムの液晶組成物層が形成されたのとは反対側からガラスマスクを介して15mJ/cmの微弱な紫外線を照射した。前記のガラスマスクとしては、所定の方向に延在する透光部及び遮光部が互いに平行に並んでストライプ状に形成されたものを用いた。ガラスマスクの透光部の幅は306.4μm、遮光部の幅は316.0μmとした。ガラスマスクの遮光部に相当する位置では露光されなかったために液晶組成物層は未硬化状態のままであるが、ガラスマスクの透光部に相当する位置では露光されたために液晶組成物層が硬化した。これにより、液晶組成物層の露光部分において、1/2波長板として機能しうる面内位相差Reを有する異方性領域(λ/2領域;測定波長543nmにおける位相差Re=241nm)を形成した。
【0248】
次に、液晶組成物層を90℃で10秒間加温処理して、液晶組成物層の未硬化状態の部分(ガラスマスクの遮光部に相当した部分)の液晶相を等方相に転移させた。
この状態を維持しながら、基材フィルムの液晶組成物層側から窒素雰囲気下で液晶組成物層に対して積算光量300mJ/cmの紫外線を照射して、液晶組成物層の未硬化部分を硬化させた。これにより、面内位相差Reが小さい等方性領域(Iso領域;測定波長543nmにおける位相差Re=0.7nm)が液晶組成物層に形成された。
【0249】
このようにして、1/2波長板として機能しうる面内位相差Reを有する異方性領域と、面内位相差Reが小さい等方性領域とを、同一面内に有する液晶組成物層として、第二位相差フィルムを得た。この第二位相差フィルムを備えるフィルムは、(基材フィルム)−(第二位相差フィルム)の層構成を有する長尺のフィルムである。形成された第二位相差フィルムの乾燥膜厚は、4.7μmであった。異方性領域の面内位相差Reは241nmであり、面内方向の遅相軸が基材フィルムの長手方向と0°の角度をなしていた。一方、等方性領域の面内位相差Reは0.7nm以下であった。異方性領域及び等方性領域は互いに平行な帯状の領域として形成され、それぞれの帯の幅は311.1μmであった。
【0250】
(第一位相差フィルムの貼付)
第一位相差フィルム(日本ゼオン社製、製品名「横延伸ゼオノアフィルム」)を用意した。この第一位相差フィルムは、長手方向に対する配向角90°、測定波長543nmでの面内位相差Re125nm、面内における面内位相差Reのばらつき±10nm以下であった。
【0251】
アクリル粘着剤(綜研化学社製、製品名「SKダイン2094」)に硬化剤(綜研化学社製、製品名「E−AX」)を、アクリル粘着剤中のポリマー100重量部に対して硬化剤が5重量部の割合となるように添加したものを用意した。以下、これを適宜「PSA」と略称する。
【0252】
第二位相差フィルムを備える長尺の位相差フィルムの前記第二位相差フィルムの表面に、PSAを介して、第一位相差フィルムを貼り合わせた。この際、第一位相差フィルムの遅相軸と、第二位相差フィルムの異方性領域の遅相軸が90°となるようにして貼り合わせた。これにより、(基材フィルム)−(第二位相差フィルム)−(粘着層)−(第一位相差フィルム)の層構成を有する、長尺の位相差フィルムを得た。粘着層の厚さは25μmであった。
【0253】
〔1.2.評価系の用意〕
図3に示すように、光源110としてCCFLを装着した液晶表示装置を架台(図示せず)上に設置した。この液晶表示装置は、BENQ社製(モデル名;27型LCDワイドモニター、型番;M2700HD)であり、偏光フィルム121と、液晶セル122と、偏光フィルム123とを備える。偏光フィルム123の透過軸A123は、面内の基準方向Xに対して、マイクロスコープ150で光源110に向かって観察する向きにおいて、時計回りに45°である。また、液晶セル122には、それぞれ赤色、緑色及び青色の画素からなる右目用の画素領域124及び左目用の画素領域125が、幅311.4μmで、面内の基準方向Xに延在するように設けられている。また、液晶セル122の画素領域124及び125の間には、幅28.2μmのブラックマトリックス126が設けられている。
【0254】
液晶パネル120の上部に、所定の間隔を空けて、着脱可能な円偏光フィルター140を備えたマイクロスコープ150を設置した。このマイクロスコープ150は液晶パネル120の面内方向と平行に移動可能にした。さらに、マイクロスコープ150にはモニター(図示せず)を接続し、マイクロスコープ150が観察した像がモニターに出力されるようにした。
【0255】
先に用意した長尺の位相差フィルムを液晶パネル120に応じた大きさに切り出した。切り出した位相差フィルム130を液晶パネル120上に、第一位相差フィルム131の遅相軸A131が面内の基準方向Xに対して90°になるように、水を介して貼り合わせた。位相差フィルム130の向きは、第一位相差フィルム131が光源側、第二位相差フィルム132がマイクロスコープ側となるようにした。第二位相差フィルム132の異方性領域133の遅相軸A133は、面内の基準方向Xに対して平行であった。
【0256】
光源110を発光させ、液晶セル122の右目用の画素領域124が光を透過しない黒表示、左目用の画素領域125が光を透過する白表示となるように液晶パネル120を制御した。この状態で、偏光フィルター140と同様の偏光フィルターを介して位相差フィルム130を見ながら、光が観察されない黒表示となるように、位相差フィルム130の位置合わせを行った。これにより、厚み方向から見て、液晶セル122の右目用の画素領域124が第二位相差フィルム132の等方性領域134と重なり、液晶セル122の左目用の画素領域125が第二位相差フィルム132の異方性領域133と重なるように位置が調整された。
このようにして、図3に示す評価系を用意した。
【0257】
〔1.3.直線性の評価〕
光源110を光らせた状態において、市販の描画アプリケーションソフトを用いて、図17に示すように、液晶パネル120の画面120Uに格子460を表示させた。この際、赤色、緑色及び青色のいずれの画素も光を透過するようにして、格子460が白色で表示されるようにした。格子460は、液晶セル122において画素領域124及び125が延在する基準方向Xに平行な6行の線A〜Fと、基準方向Xに垂直な5列の線I〜Vとを有している。また、基準方向Xに延在する線A〜Fの間隔は160ピクセルとし、基準方向Xに垂直な線I〜Vの間隔は320ピクセルにした。
【0258】
このような格子460を表示させた状態で、格子460の交差点について、円偏光フィルター140を装着せずにマイクロスコープ150で観察して、基準方向Xに平行な基準線(図5の基準線164参照)を設定した。また、円偏光フィルター140を装着してマイクロスコープ150で観察して、光源110が出した光が検出された部分の縁部(図6の縁部E参照)を特定した。その後、基準線と、光源110が出した光が検出された部分の縁部とのズレ量Δdを測定した。ズレ量Δdは、まずピクセル単位で測定し、これに1ピクセル当たりの幅を乗じて単位をμmに換算した。
これと同様の操作を、格子460の全ての交差点で行なった。ただし、基準線は全ての交差点で同様に設定した。
【0259】
こうして測定した各交差点でのズレ量Δdの結果を、基準方向Xに平行な線A〜F毎にグループ分けした。そして、グループ分けしたズレ量Δdの結果のうち、基準方向Xに垂直な線III上の交差点での測定結果を基準(ズレ量Δdの相違=0.0μm)として、各交差点でのズレ量Δdの相違をグループ毎に整理した。結果を図18に示す。図18において、枠で囲まれたグラフは、上から順に、格子460の線A、B、C、D、E及びF上の交差点での結果を示す。また、図18において、枠で囲まれたグラフそれぞれにおいて、左から順に、格子460の線I、II、III、IV及びV上の交差点での結果を示す。
【0260】
図18から分かるように、いずれのグループの結果においても、基準方向Xにおける位置が異なる交差点間でズレ量Δdに大きな相違は無い。このことから、異方性流域133及び等方性領域134は、直進性に優れることが分かった。
【0261】
[2.実施例2]
実施例1で測定したズレ量Δdの結果を用いて、以下のような評価を行った。
まず、液晶パネル120に表示させた格子460の全ての交差点におけるズレ量Δdを、基準方向Xに垂直な線I〜V毎にグループ分けした(図17参照)。グループ分けしたズレ量Δdを確認したところ、いずれのグループにおいても、基準方向Xに平行な線A〜Fのうちで図中で最も上側にある線A上の交差点でのズレ量Δdが最も小さく、図中で下にある線上の交差点ほどズレ量Δdが大きいことが分かった。
【0262】
そこで、基準方向Xに平行な線A〜Fのうち、図中で最も上にある線A上の交差点でのズレ量Δdと、図中で最も下にある線F上の交差点でのズレ量Δdとの相違量(差)を計算した。求められた相違量を、線Aから線Fまでのピクセル数である800ピクセル(=160ピクセル×5)で割って、1ピクセル当たりの相違量を算出した。結果を表1に示す。
【0263】
【表1】

【0264】
こうして求めた1ピクセル当たりの値は、基準とした液晶パネル120の画素領域のピッチに対して、位相差フィルム130の一組の異方性領域133及び等方性領域134の合計ピッチが有する誤差の大きさを表す。表1から、実施例1で製造した位相差フィルム130が有する合計ピッチの誤差は小さいことが分かる。
【0265】
[3.実施例3]
〔3.1 評価対象となる位相差フィルムの用意〕
LGディスプレイ社製の立体画像表示装置(モデル名:D2770P−PN;27インチ)から、位相差フィルムを取り出した。この位相差フィルムは、1/4波長を有する2種類の異方性領域が、面内の基準方向に平行に延在して、交互に設けられたストライプ状のパターンを有している。この位相差フィルムの2種類の異方性領域の遅相軸方向は、長手方向に対して平行な方向と垂直な方向であった。また、前記の2種類の異方性領域は、遅相軸方向が互いに90°異なっている。
【0266】
〔3.2.評価系の用意〕
位相差フィルム330として前記3.1.で用意したものを用いたこと、並びに、液晶パネル120として当該位相差フィルムが取り出された立体画像表示装置(前記のLGディスプレイ社製「D2770P−PN」)が備えていたものを用いたこと、以外は実施例1と同様にして、図15に示す評価系を用意した。
【0267】
〔3.3.直線性の評価〕
前記3.2.で用意した評価系を用いて、実施例1と同様にして、液晶パネル120の画面120Uに格子460を表示させ、それらの交差点でのズレ量Δdを測定した(図17参照)。測定されたズレ量Δdを、実施例1と同様に、基準方向Xに平行な線A〜F毎にグループ分けし、基準方向Xに垂直な線III上の交差点での測定結果を基準(ズレ量Δdの相違=0.0μm)として、各交差点でのズレ量Δdの相違をグループ毎に整理した。結果を図19に示す。図19において、枠で囲まれたグラフは、上から順に、格子460の線A、B、C、D、E及びF上の交差点での結果を示す。また、図19において、枠で囲まれたグラフそれぞれにおいて、左から順に、格子460の線I、II、III、IV及びV上の交差点での結果を示す。
【0268】
図19から分かるように、いずれのグループの結果においても、ズレ量Δdの相違は、実施例1よりは大きいものの、過度に大きすぎるものでは無い。このことから、実施例3で用意した位相差フィルムの異方性領域は、直進性に優れることが分かった。
【0269】
[4.実施例4]
実施例3で測定したズレ量Δdの結果を用いて、実施例2と同様にして、合計ピッチの評価を行った。
すなわち、液晶パネル120に表示させた格子460の全ての交差点におけるズレ量Δdを、基準方向Xに垂直な線I〜V毎にグループ分けした(図17参照)。いずれのグループにおいても、基準方向Xに平行な線A〜Fのうちで図中で最も上側にある線A上の交差点でのズレ量Δdが最も小さく、図中で下にある線上の交差点ほどズレ量Δdが大きいことが分かった。
【0270】
そこで、基準方向Xに平行な線A〜Fのうち、図中で最も上にある線A上の交差点でのズレ量Δdと、図中で最も下にある線F上の交差点でのズレ量Δdとの相違量(差)を計算した。求められた相違量を、線Aから線Fまでのピクセル数である800ピクセル(=160ピクセル×5)で割って、1ピクセル当たりの相違量を算出した。結果を表2に示す。
【0271】
【表2】

【0272】
表2から、実施例3で用意した位相差フィルムが有する合計ピッチの誤差は、大きいことが分かる。
【0273】
[5.実施例5]
〔5.1 評価対象となる位相差フィルムの用意〕
三菱電機社製の立体画像表示装置(モデル名:RDT233WX−3D;23インチ)から、位相差フィルムを取り出した。この位相差フィルムは、1/4波長を有する2種類の異方性領域が、面内の基準方向に平行に延在して、交互に設けられたストライプ状のパターンを有している。この位相差フィルムの2種類の異方性領域の遅相軸方向は、長手方向に対して+45°の角度をなす方向と−45°の角度をなす方向であった。また、前記の2種類の異方性領域は、遅相軸方向が互いに90°異なっている。
【0274】
〔5.2.評価系の用意〕
位相差フィルム330として前記5.1.で用意したものを用いた。また、液晶パネル120として当該位相差フィルムが取り出された立体画像表示装置(前記の三菱電機社製「RDT233WX−3D」)が備えていたものを用いた。この液晶パネル120では、光源側の偏光フィルム121の透過軸A121は、面内の基準方向Xに対して垂直であり、また、マイクロスコープ側の偏光フィルム123の透過軸A123は、面内の基準方向Xに対して平行である。以上の事項以外は実施例1と同様にして、評価系を用意した。
【0275】
〔5.3.直線性の評価〕
前記5.2.で用意した評価系を用いて、実施例1と同様にして、液晶パネル120の画面120Uに格子460を表示させ、それらの交差点でのズレ量Δdを測定した(図17参照)。測定されたズレ量Δdを、実施例1と同様に、基準方向Xに平行な線A〜F毎にグループ分けし、基準方向Xに垂直な線III上の交差点での測定結果を基準(ズレ量Δdの相違=0.0μm)として、各交差点でのズレ量Δdの相違をグループ毎に整理した。結果を図20に示す。図20において、枠で囲まれたグラフは、上から順に、格子460の線A、B、C、D、E及びF上の交差点での結果を示す。また、図20において、枠で囲まれたグラフそれぞれにおいて、左から順に、格子460の線I、II、III、IV及びV上の交差点での結果を示す。
【0276】
図20から分かるように、いずれのグループの結果においても、ズレ量Δdの相違は大きかった。このことから、実施例5で用意した位相差フィルムの異方性流域は、直進性に劣ることが分かった。
【0277】
[6.実施例6]
実施例5で測定したズレ量Δdの結果を用いて、実施例2と同様にして、合計ピッチの評価を行った。
すなわち、液晶パネル120に表示させた格子460の全ての交差点におけるズレ量Δdを、基準方向Xに垂直な線I〜V毎にグループ分けした(図17参照)。いずれのグループにおいても、基準方向Xに平行な線A〜Fのうちで図中で最も上側にある線A上の交差点でのズレ量Δdが最も小さく、図中で下にある線上の交差点ほどズレ量Δdが大きいことが分かった。
【0278】
そこで、基準方向Xに平行な線A〜Fのうち、図中で最も上にある線A上の交差点でのズレ量Δdと、図中で最も下にある線F上の交差点でのズレ量Δdとの相違量(差)を計算した。求められた相違量を、線Aから線Fまでのピクセル数である800ピクセル(=160ピクセル×5)で割って、1ピクセル当たりの相違量を算出した。結果を表3に示す。
【0279】
【表3】

【0280】
表3から、実施例5で用意した位相差フィルムが有する合計ピッチの誤差は、小さいことが分かる。
【符号の説明】
【0281】
10 第二位相差フィルム
11 異方性領域
12 等方性領域
13 境界線
20 液晶パネル
21 画素領域
22 画素領域
23 ブラックストライプ
100 評価系
110 光源
120 液晶パネル
120U 画面
121 偏光フィルム
122 液晶セル
123 偏光フィルム
124 右目用の画素領域
125 左目用の画素領域
126 ブラックマトリックス
130 位相差フィルム
131 第一位相差フィルム
132 第二位相差フィルム
133 異方性領域
134 等方性領域
135 境界線
140 円偏光フィルター
150 マイクロスコープ
160 格子
161a〜161f 線
162i〜162v 線
163ai〜163fi、163aii〜163av 交差点
164a 基準線
200 評価系
220 複層ブラックストライプフィルム
221 偏光フィルム
222 ブラックストライプフィルム
223 基板
224 ブラックストライプ
225 透光領域
260ai〜260ci、260aii、260aiii 観察された地点
261 明部分
262 暗部分
263 基準線
264 明部分の欠けた一部分
300 評価系
330 位相差フィルム
331 第一異方性領域
332 第二異方性領域
333 境界線
400 評価系
460 格子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、基準部材と、位相差フィルムと、着脱可能な偏光フィルターと、光検出器とをこの順に備える評価系において、前記位相差フィルムを評価する評価方法であって、
前記基準部材は、偏光子を備え、且つ、一の基準方向に延在する透光領域を有し、
前記位相差フィルムは、当該位相差フィルムの有効領域において面内に均一な位相差を有する第一位相差フィルムと、一方向に延在する複数の異方性領域及び等方性領域を面内において交互に有する第二位相差フィルムとを備え、
前記光源を光らせて、前記基準部材の前記透光領域の前記基準方向における複数の地点を、前記偏光フィルターを装着せずに前記光検出器で観察して、前記基準方向に平行な基準線を前記複数の地点で同様に設定することと、前記偏光フィルターを装着して前記光検出器で観察して、前記基準線と前記光源が出した光が検出された部分の縁部とのズレ量を測定することとを行い、
前記ズレ量の前記基準方向における前記複数の地点間での相違から、前記第二位相差フィルムの前記異方性領域及び前記等方性領域の直線性を評価する、評価方法。
【請求項2】
前記基準部材が、液晶パネルであり、
前記基準部材の前記透光領域が、前記液晶パネルの画素領域であり、
前記液晶パネルに、前記基準方向に平行な線及び前記基準方向に垂直な線を有する格子を表示させた状態において、前記光検出器による観察を行う、請求項1記載の評価方法。
【請求項3】
前記基準部材が、前記光源が出す光を透過させうる基板と、前記基板上に形成されて前記基準方向と平行に延在する複数のブラックストライプとを備え、
前記基準部材の前記透光領域が、前記ブラックストライプ同士の間に設けられている、請求項1記載の評価方法。
【請求項4】
前記偏光フィルターが、円偏光フィルターである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の評価方法。
【請求項5】
前記第一位相差フィルムの位相差が、1/4波長である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の評価方法。
【請求項6】
前記第二位相差フィルムの前記異方性領域の位相差が、1/2波長である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の評価方法。
【請求項7】
光源と、基準部材と、位相差フィルムと、着脱可能な偏光フィルターと、光検出器とをこの順に備える評価系において、前記位相差フィルムを評価する評価方法であって、
前記基準部材は、偏光子を備え、且つ、一の基準方向に延在する透光領域を有し、
前記位相差フィルムは、一方向に延在し、遅相軸方向が異なる複数の異方性領域を面内において交互に有し、
前記光源を光らせて、前記基準部材の前記透光領域の前記基準方向における複数の地点を、前記偏光フィルターを装着せずに前記光検出器で観察して、前記基準方向に平行な基準線を前記複数の地点で同様に設定することと、前記偏光フィルターを装着して前記光検出器で観察して、前記基準線と前記光源が出した光が検出された部分の縁部とのズレ量を測定することとを行い、
前記ズレ量の前記基準方向における前記複数の地点間での相違から、前記位相差フィルムの前記異方性領域の直線性を評価する、評価方法。
【請求項8】
前記基準部材が、液晶パネルであり、
前記基準部材の前記透光領域が、前記液晶パネルの画素領域であり、
前記液晶パネルに、前記基準方向に平行な線及び前記基準方向に垂直な線を有する格子を表示させた状態において、前記光検出器による観察を行う、請求項7記載の評価方法。
【請求項9】
前記基準部材が、前記光源が出す光を透過させうる基板と、前記基板上に形成されて前記基準方向と平行に延在するブラックストライプとを備え、
前記基準部材の前記透光領域が、前記ブラックストライプ同士の間に設けられている、請求項7記載の評価方法。
【請求項10】
前記偏光フィルターが、円偏光フィルターである、請求項7〜9のいずれか一項に記載の評価方法。
【請求項11】
前記位相差フィルムの前記異方性領域の位相差が、1/4波長である、請求項7〜10のいずれか一項に記載の評価方法。
【請求項12】
光源と、基準部材と、位相差フィルムと、着脱可能な偏光フィルターと、光検出器とをこの順に備える評価系において、前記位相差フィルムを評価する評価方法であって、
前記基準部材は、偏光子を備え、且つ、一の基準方向に延在する複数の透光領域を有し、
前記位相差フィルムは、当該位相差フィルムの有効領域において面内に均一な位相差を有する第一位相差フィルムと、一方向に延在する複数の異方性領域及び等方性領域を面内において交互に有する第二位相差フィルムとを備え、
前記光源を光らせて、前記基準部材の前記透光領域の前記基準方向に垂直な方向における複数の地点を、前記偏光フィルターを装着せずに前記光検出器で観察して、前記基準方向に平行な基準線を前記複数の地点で同様に設定することと、前記偏光フィルターを装着して前記光検出器で観察して、前記基準線と前記光源が出した光が検出された部分の縁部とのズレ量を測定することとを行い、
前記ズレ量の前記基準方向に垂直な方向における前記複数の地点間での相違から、前記第二位相差フィルムの異方性領域及び等方性領域のピッチの精度を評価する、評価方法。
【請求項13】
光源と、基準部材と、位相差フィルムと、着脱可能な偏光フィルターと、光検出器とをこの順に備える評価系において、前記位相差フィルムを評価する評価方法であって、
前記基準部材は、偏光子を備え、且つ、一の基準方向に延在する複数の透光領域を有し、
前記位相差フィルムは、一方向に延在し、遅相軸方向が異なる複数の異方性領域を面内において交互に有し、
前記光源を光らせて、前記基準部材の前記透光領域の前記基準方向に垂直な方向における複数の地点を、前記偏光フィルターを装着せずに前記光検出器で観察して、前記基準方向に平行な基準線を前記複数の地点で同様に設定することと、前記偏光フィルターを装着して前記光検出器で観察して、前記基準線と前記光源が出した光が検出された部分の縁部とのズレ量を測定することとを行い、
前記ズレ量の前記基準方向に垂直な方向における前記複数の地点間での相違から、前記位相差フィルムの前記異方性領域のピッチの精度を評価する、評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−109220(P2013−109220A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255208(P2011−255208)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】