説明

位相差フィルム

【課題】光弾性係数が小さな位相差フィルムを提供することにある。
【解決手段】式(1A)及び式(1B)で表される化合物からなる群から選ばれる1種以上のジオール化合物(1)と、脂環式炭化水素骨格を有するポリイソシアネート化合物(2)とを反応させ、次いで、エチレン性二重結合及びポリイソシアネート化合物(2)のイソシアナト基と反応しうる官能基を有する化合物(3)を反応させて得られる化合物(A)に由来する構造単位を含み、延伸してなる位相差フィルム。
HO−L−W−L−OH (1A)
HO−W−L−W−OH (1B)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相差フィルム及び該位相差フィルムの製造方法及び該位相差フィルム用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイで良好な表示性能を得るためには、光弾性係数が小さい位相差フィルムが求められている。
例えば、位相差フィルムとしては、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、イソホロンジイソシアネート及び2−ヒドロキシエチルアクリレートを反応させて得られるウレタンアクリレートに由来する構造単位と、スチレン−無水マレイン酸共重合体に由来する構造単位とを含むフィルムが知られている(例えば特許文献1参照)。また、ウレタンアクリレートとしては、トリシクロデカンジメタノール、イソホロンジイソシアネート及び2−ヒドロキシエチルアクリレートを反応させて得られるウレタンアクリレートが知られている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】韓国特許出願公開第10−2009−0068137号公報
【特許文献2】特開2005−255979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、トリシクロデカンジメタノールとポリイソシアネートとヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレートを硬化してなる位相差フィルムが知られているが、該位相差フィルムの光弾性係数は大きく、必ずしも十分に満足できるものではなかった。本発明の課題は、光弾性係数が小さな位相差フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記の課題を解決すべく検討した結果、特定のウレタン(メタ)アクリレートに由来する構造単位を含み、延伸してなる位相差フィルムによって光弾性係数が小さくなることを見出し、本発明に至った。
【0006】
即ち、本発明は、以下の[1]〜[19]を提供するものである。
[1]式(1A)及び式(1B)で表される化合物からなる群から選ばれる1種以上のジオール化合物(1)と、脂環式炭化水素骨格を有するポリイソシアネート化合物(2)とを反応させ、次いで、エチレン性二重結合及びポリイソシアネート化合物(2)のイソシアナト基と反応しうる官能基を有する化合物(3)を反応させて得られる化合物(A)に由来する構造単位を含み、延伸してなる位相差フィルム。

HO−L−W−L−OH (1A)
HO−W−L−W−OH (1B)

[式(1A)及び式(1B)中、W1は、炭素数8〜12の2価の橋かけ環炭化水素基又はスピロ炭化水素基を表し、該橋かけ環炭化水素基及び該スピロ炭化水素基に含まれる−CH−は、−NH−、−O−、又は−S−で置換されていてもよい。
及びLは、それぞれ独立して、単結合、又は炭素数1〜4の2価の脂肪族炭化水素基を表す。
は単結合、炭素数1〜9の2価の脂肪族炭化水素基又は炭素数3〜9の2価の脂環式炭化水素基を表す。
及びWは、それぞれ独立して、炭素数1〜3のアルキル基で置換されていてもよい炭素数5〜7の2価の脂環式炭化水素基を表す。]
[2]化合物(A)が、ジオール化合物(1)と、ポリイソシアネート化合物(2)と、ポリアミン化合物とを反応させ、次いで、エチレン性二重結合及びポリイソシアネート化合物(2)のイソシアナト基と反応しうる官能基を有する化合物を反応させて得られる化合物である前記[1]記載の位相差フィルム。
[3]式(1A)で表される化合物が、式(1A−1)で表される化合物である前記[1]又は[2]記載の位相差フィルム。
【化1】

[式(1A−1)中、A及びAは、それぞれ独立して、−CH−、−NR−、−O−、又は−S−を表す。
は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
及びnは、は、それぞれ独立して、1〜3の整数を表す。]
[4]式(1A)で表される化合物が、式(b−1)〜式(b−7)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である、前記[1]又は[2]記載の位相差フィルム。
【化2】

[5]W及びWが、ともにシクロヘキサンジイル基である前記[1]又は[2]記載の位相差フィルム。
[6]Lが、単結合、及び式(1B−1)〜式(1B−5)で表される基からなる群から選ばれる1種の基である前記[1]又は[2]記載の位相差フィルム。
【化3】

[式(1B−1)〜式(1B−5)中、*は結合手を表す。]
[7]式(1B)で表される化合物が、式(b−8)で表される化合物及び式(b−9)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である、前記[1]〜[6]のいずれかに記載の位相差フィルム。
【化4】

[8]ポリイソシアネート化合物(2)が、シクロヘキサン環を有する化合物である前記[1]〜[7]のいずれかに記載の位相差フィルム。
[9]ポリイソシアネート化合物(2)が、式(a−1)〜式(a−3)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である前記[1]〜[8]のいずれかに記載の位相差フィルム。
【化5】

[10]化合物(3)が、ヒドロキシ基を有するアクリレート及びヒドロキシ基を有するメタクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種である前記[1]〜[9]のいずれかに記載の位相差フィルム。
[11]ポリアミン化合物が、脂環式炭化水素構造を有する化合物である前記[2]〜[10]のいずれかに記載の位相差フィルム。
[12]化合物(A)の数平均分子量が、5,000以上500,000以下であり、かつ化合物(A)のガラス転移温度が60℃以上200℃以下である、前記[1]〜[11]のいずれかに記載の位相差フィルム。
[13]式(I)で表される化合物に由来する構造単位をさらに含む前記[1]〜[12]のいずれかに記載の位相差フィルム。
【化6】

[式(I)中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。
は、置換基を有していてもよい炭素数6〜20の環式炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭素数4〜20の複素環基を表す。]
[14]式(I)で表される化合物が、N−ビニルカルバゾールである前記[13]記載の位相差フィルム。
[15]位相差フィルムを透過する透過光の波長νnmにおける位相差値Re(ν)が、下記式を充足する前記[1]〜[14]のいずれかに記載の位相差フィルム。
Re(450)<Re(550)<Re(650)
[16]式(1A)及び式(1B)で表される化合物からなる群から選ばれる1種以上のジオール化合物(1)と、脂環式炭化水素骨格を有するポリイソシアネート化合物(2)とを反応させ、次いで、ポリイソシアネート化合物(2)のイソシアナト基と反応しうる官能基及びエチレン性二重結合を有する化合物(3)を反応させて得られる化合物(A)、並びに、式(I)で表される化合物を含むモノマー及び式(I)で表される化合物を含むモノマーに由来する構造単位を有する樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む位相差フィルム用組成物。

HO−L−W−L−OH (1A)
HO−W−L−W−OH (1B)

[式(1A)及び式(1B)中、W1は、炭素数8〜12の2価の橋かけ環炭化水素基又はスピロ炭化水素基を表し、該橋かけ環炭化水素基及び該スピロ炭化水素基に含まれる−CH−は、−NH−、−O−、又は−S−で置換されていてもよい。
及びLは、それぞれ独立して、単結合、又は炭素数1〜4の2価の脂肪族炭化水素基を表す。
は単結合、炭素数1〜9の2価の脂肪族炭化水素基又は炭素数3〜9の2価の脂環式炭化水素基を表す。
及びWは、それぞれ独立して、炭素数1〜3のアルキル基で置換されていてもよい炭素数5〜7の2価の脂環式炭化水素基を表す。]
【化7】

[式(I)中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。
は、置換基を有していてもよい炭素数6〜20の環式炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭素数4〜20の複素環基を表す。]
[17]重合開始剤をさらに含む前記[16]記載の位相差フィルム用組成物。
[18]溶剤をさらに含む前記[16]又は[17]記載の位相差フィルム用組成物。
[19]前記[16]〜[18]のいずれかに記載の位相差フィルム用組成物を支持体にキャストし、乾燥し、さらに延伸する位相差フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の位相差フィルムによれば、光弾性係数を小さくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書において、位相差フィルムとは、直線偏光を円偏光や楕円偏光に変換したり、逆に円偏光又は楕円偏光を直線偏光に変換したりするために用いられる、光学的機能を有するフィルムをいう。
構造単位とは、所定の複屈折性を発揮する最小単位であり、化合物に由来する単位を意味する。
なお、所定の複屈折性の発揮は、所定の構造単位を含む樹脂から得られた層を延伸した際、延伸した方向(±10°)の屈折率が最大(正)になること、又は、延伸した方向と直交(±10°)する方向の屈折率が最大(負)等になることを意味する。
本明細書において、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及びメタクリル酸の双方を包含する。
【0009】
本発明の位相差フィルムは、式(1A)及び式(1B)で表される化合物からなる群から選ばれる1種以上のジオール化合物(1)と、脂環式炭化水素骨格を有するポリイソシアネート化合物(2)とを反応させ、次いで、エチレン性二重結合及びポリイソシアネート化合物(2)のイソシアナト基と反応しうる官能基を有する化合物(3)を反応させて得られる化合物(A)に由来する構造単位を含む。

HO−L−W−L−OH (1A)
HO−W−L−W−OH (1B)

[式(1A)及び式(1B)中、W1は、炭素数8〜12の2価の橋かけ環炭化水素基又はスピロ炭化水素基を表し、該橋かけ環炭化水素基及び該スピロ炭化水素基に含まれる−CH−は、−NH−、−O−、又は−S−で置換されていてもよい。
及びLは、それぞれ独立して、単結合、又は炭素数1〜4の2価の脂肪族炭化水素基を表す。
は単結合、炭素数1〜9の2価の脂肪族炭化水素基又は炭素数3〜9の2価の脂環式炭化水素基を表す。
及びWは、それぞれ独立して、炭素数1〜3のアルキル基で置換されていてもよい炭素数5〜7の2価の脂環式炭化水素基を表す。]
【0010】
化合物(A)は、式(1A)及び式(1B)で表される化合物からなる群から選ばれる1種以上のジオール化合物(1)(以下、化合物(1)ということがある。)と、脂環式炭化水素骨格を有するポリイソシアネート化合物(2)(以下、化合物(2)ということがある。)とを反応させ、次いで、エチレン性二重結合及びポリイソシアネート化合物(2)のイソシアナト基と反応しうる官能基を有する化合物(3)(以下、化合物(3)ということがある。)を反応させることにより得られる。
【0011】
は、炭素数8〜12の2価の橋かけ環炭化水素基又はスピロ炭化水素基であり、該橋かけ環炭化水素基及び該スピロ炭化水素基に含まれる−CH−は、−NH−、−O−、又は−S−で置換されていてもよい。
炭素数8〜12の2価の橋かけ環炭化水素基としては、ノルボルナンジイル基、ノルボルネンジイル基、トリシクロデカンジイル基、ビシクロ〔3.3.0〕オクタンジイル基、ビシクロ〔4.4.0〕デカンジイル基、アダマンタンジイル基等が挙げられる。
炭素数8〜12の2価のスピロ炭化水素基としては、スピロ〔3.3〕オクタンジイル基、スピロ〔5.5〕ウンデカンジイル基等が挙げられる。
【0012】
及びLは、それぞれ独立して、単結合、又は炭素数1〜4の2価の脂肪族炭化水素基である。
炭素数1〜4の2価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基等が挙げられる。
【0013】
は単結合、炭素数1〜9の2価の脂肪族炭化水素基又は炭素数3〜9の2価の脂環式炭化水素基である。
炭素数1〜9の2価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、上記L及びLにおいて例示したもの以外に、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基、ヘプタン−1,7−ジイル基、オクタン−1,8−ジイル基、ノナン−1,9−ジイル基等が挙げられる。
炭素数3〜9の2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロパンジイル基、シクロブタンジイル基、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、メチルシクロヘキサンジイル基、トリメチルシクロヘキサンジイル基等が挙げられる。中でも、式(1B−1)〜式(1B−5)で表される基が好ましい。
【0014】
【化8】

【0015】
及びWは、それぞれ独立して、炭素数1〜3のアルキル基で置換されていてもよい炭素数5〜7の2価の脂環式炭化水素基である。
炭素数5〜7の2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、シクロヘプタンジイル基等が挙げられる。
炭素数1〜3のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。
炭素数1〜3のアルキル基で置換されている炭素数5〜7の2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、メチルシクロペンタンジイル基、エチルシクロペンタンジイル基、エチルシクロヘキサンジイル基等が挙げられる。
及びWは、ともにシクロヘキサンジイルであることが好ましい。
【0016】
式(1A)で表される化合物としては、例えば、式(1A−1)で表される化合物が挙げられる。
【化9】

[式(1A−1)中、A及びAは、それぞれ独立して、−CH−、−NR−、−O−、及び−S−からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である。
及びnは、それぞれ独立して、1〜3の整数である。]
【0017】
における、炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等が挙げられる。
【0018】
式(1A)で表される化合物としては、具体的に、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール(通称;トリシクロデカンジメタノール)、1,4−デカヒドロナフタレンジオール、1,5−デカヒドロナフタレンジオール、1,6−デカヒドロナフタレンジオール、2,6−デカヒドロナフタレンジオール、2,7−デカヒドロナフタレンジオール、デカヒドロナフタレンジメタノール、ノルボルナンジオール、ノルボルナンジメタノール、デカリンジメタノール、アダマンタンジオール、アダマンタントリオール、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(通称;スピログリコール)、イソソルビド、イソマンニド等が挙げられる。
【0019】
式(1A−1)で表される化合物としては、具体的に、式(b−1)〜式(b−5)で表される化合物等が好ましく挙げられる。式(b−1)で表される化合物としては、イソソルビド、イソマンニド等が好ましい。
【0020】
【化10】

【0021】
さらに、式(1A)で表される化合物としては、上記の他に、式(b−6)及び式(b−7)で表される化合物等も好ましく挙げられる。
【化11】

【0022】
式(1B)で表される化合物としては、具体的に、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン(通称;水添ビスフェノールA)、4,4′−ジヒドロキシジシクロヘキシルメタン(通称;水添ビスフェノールF)、1,1−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−1,1−ジシクロヘキシルメタン(通称;水添ビスフェノールZ)、4,4−ビシクロヘキサノール、式(b−8)で表される化合物、式(b−9)で表される化合物等が挙げられる。
【0023】
【化12】

【0024】
化合物(A)を得る反応においては、化合物(1)と他のジオールを併用してもよい。例えば、化合物(1)と、数平均分子量が400以上の高分子量ジオールを併用してもよく、例えば、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオール、シリコーンジオール、ポリオレフィン系ジオール及びこれらの共重合体等を使用することができる。化合物(1)と高分子量ジオールを組み合わせることで、得られるフィルムの柔軟性や耐熱性を向上させることができる。
【0025】
高分子量ジオールとしては、脂肪族骨格、脂環式骨格、飽和複素環式骨格からなる群から選ばれる少なくとも一種を有するポリエステルジオール、及び/又はポリカーボネートジオールが好ましい。また、高分子量ジオールの数平均分子量は、400以上5000以下であることが好ましく、更には400以上2000以下であることが好ましい。更には、400以上1500以下であることが特に好ましい。高分子量ジオールの数平均分子量が前記の範囲にあると、ポリイソシアネート化合物との反応性が良好であり、かつ本発明の位相差フィルムに適した柔軟性を与えるため、好ましい。
【0026】
ポリエステルジオールとしては、例えばコハク酸、グルタール酸、アジピン酸、アゼライン酸、ドデカン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水マレイン酸、フマル酸等から選ばれる少なくとも1種のジカルボン酸と低分子量のジオールとを反応させて得られたものが挙げられる。別の方法として、β−プロピオラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトン、メチル−δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、メチル−ε−カプロラクトン、ジメチル−ε−カプロラクトン、トリメチル−ε−カプロラクトン等のラクトン化合物を、低分子量のジオールと反応させたものが挙げられる。
ポリエーテルジオールとしては、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール等がある。
【0027】
ポリカーボネートジオールとしては、低分子量のジオール類とジアリルカーボネート、ジアルキルカーボネート及びエチレンカーボネートからなる群から選ばれる化合物からエステル交換法によって得られたものが挙げられる。具体的には、例えばポリ−1,6−ヘキサメチレンカーボネート、ポリ−2,2’−ビス(4−ヒドロキシヘキシル)プロパンカーボネート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンカーボネート等が挙げられる。
【0028】
高分子量ジオールとしては、ポリカーボネートジオールが好ましい。ポリカーボネートジオールを用いると、耐熱性や耐光性を保ちながらフィルムに靭性を付与することができ、加工性が向上するため好ましい。
【0029】
化合物(1)と高分子量ジオールを併用する場合、高分子量ジオールの使用量は、化合物(1)と高分子量ジオールの合計量に対して、20モル%以下であることが好ましい。
【0030】
脂環式炭化水素骨格を有するポリイソシアネート化合物(2)とは、脂環式炭化水素骨格及び2個以上のイソシアナト基を有する化合物をいう。中でも、シクロヘキサン環及び2個以上のイソシアナト基を有する化合物が好ましく、シクロヘキサン環及び2個のイソシアナト基を有する化合物がより好ましい。
【0031】
化合物(2)としては、具体的には例えば、イソホロンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート(通称;水添TDI)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(通称;水添XDI)、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン(通称;水添MDI)、デカヒドロナフチレン1,5−ジイソシアネート(通称;水添NDI)、1,3−ビス(2−イソシアナト−2−プロピル)シクロヘキサン(通称;水添m−TMXDI)、1,4−ビス(2−イソシアナト−2−プロピル)シクロヘキサン(通称;水添p−TMXDI)、1,2−ジイソシアネートシクロヘキサン、1,3−ジイソシアネートシクロヘキサン、1,4−ジイソシアネートシクロヘキサン、2,4,4−トリメチルシクロヘキサンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水添トリフェニルメタントリイソシアネート、水添トリス(イソシアナトフェニル)チオホスフェート、ビシクロヘプタントリイソシアネート等が挙げられる。
中でも、イソホロンジイソシアネート(式(a−1)で表される化合物)、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン(式(a−2)で表される化合物)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(式(a−3)で表される化合物)が好ましい。
【0032】
【化13】

【0033】
化合物(2)の使用量は、化合物(1)に対して100モル%以上110モル%以下、好ましくは100.05モル%以上107モル%以下、さらに好ましくは100.1モル%以上105モル%以下である。化合物(2)の使用量が前記の範囲にあると、白濁や固化しにくく、高重合度の化合物(A)が得られる傾向にあり、好ましい。
【0034】
エチレン性二重結合及び化合物(2)のイソシアナト基と反応しうる官能基を有する化合物(3)に含まれる、イソシアナト基と反応しうる官能基としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、スルファニル基等の活性水素を有する官能基が挙げられる。中でもヒドロキシ基が好ましい。
【0035】
イソシアナト基と反応しうる官能基及びエチレン性二重結合を有する化合物(3)としては、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物及びヒドロキシ基を有する(メタ)アクリルアミド化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。反応性の観点からヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物がより好ましく、更には、モノヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
反応性が優れていると、残存モノマーが少なくなり、良好な収率で化合物(A)が得られるため好ましい。残存モノマーが少ない化合物(A)を用いると、経時安定性や耐久性に優れた位相差フィルムを作製することができる。
【0036】
モノヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1−メチルエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、[4−(ヒドロキシメチル)シクロヘキシル]メチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−1−アダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートが好ましい。
ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリルアミドとしては、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。中でも、N−ヒドロキシエチルアクリルアミドが好ましい。
【0037】
化合物(3)の使用量は、ジオール化合物(1)に対して0.1モル%以上30モル%以下、好ましくは0.5モル%以上20モル%以下さらに好ましくは1モル%以上10モル%以下である。化合物(3)の使用量が前記の範囲にあると、残存モノマーが少なくなり、良好な収率で化合物(A)が得られるため好ましい。残存モノマーが少ない化合物(A)を用いると、経時安定性や耐久性に優れた位相差フィルムを作製することができる。
【0038】
化合物(A)は、化合物(1)と、化合物(2)と、ポリアミン化合物とを反応させ、次いで、化合物(3)を反応させて得られる化合物であってもよい。
【0039】
ポリアミン化合物とは、2個以上のアミノ基を有する化合物をいう。ポリアミン化合物としては、芳香族ポリアミン化合物、脂肪族ポリアミン化合物、脂環式ポリアミン化合物が挙げられる。
芳香族ポリアミン化合物は、2個以上のアミノ基を有する芳香族化合物である。例えば、トリレンジアミン、フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、1−メチル−3,5−ジエチル−2,4−ジアミノベンゼン、1−メチル−3,5−ジエチル−2,6−ジアミノベンゼン、1,3,5−トリエチル−2,6−ジアミノベンゼン、3,5,3’,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。
脂肪族ポリアミン化合物は、2個以上のアミノ基を有する脂肪族化合物である。例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
脂環式ポリアミン化合物は、2以上のアミノ基を有する脂環式化合物である。例えば、ジ(4−アミノシクロヘキシル)メタン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,2−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、及び3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン(イソホロンジアミン)等が挙げられる。
中でも、得られる化合物(A)の溶液としての経時安定性が優れ、黄変などの着色が少なくなる傾向にあることから、脂肪族ポリアミン化合物、脂環式ポリアミン化合物が好ましい。特に、作製した位相差フィルムの位相差発現性及び耐久性が良好になる傾向にあることから、脂環式ポリアミン化合物がより好ましい。
【0040】
ポリアミン化合物の使用量は、化合物(2)の量に対して20モル%以下、好ましくは15モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下である。ポリアミン化合物の使用量が前記の範囲にあると、化合物(A)が固化や白濁しにくくなるため好ましい。
【0041】
特に、イソホロンジイソシアネートとイソソルビドを重付加反応させて得られるポリウレタン、及びイソホロンジイソシアネートとイソソルビドを重付加反応させて得られるポリウレタンに2−ヒドロキシエチルアクリレートを反応させて得られるポリウレタンアクリレートは新規な化合物である。
【0042】
特に、イソホロンジイソシアネートとイソソルビドを重付加反応させて得られるポリウレタンにイソホロンジアミンを反応させて得られるポリウレタン尿素、及びイソホロンジイソシアネートとイソソルビドを重付加反応させて得られるポリウレタンにイソホロンジアミンを反応させて得られるポリウレタン尿素に更に2−ヒドロキシエチルアクリレートを反応させて得られるポリウレタン尿素アクリレートは新規な化合物である。
【0043】
化合物(A)の製造方法としては、化合物(1)と化合物(2)とを反応させて得られる化合物に、さらに化合物(3)を反応させる方法や、化合物(1)と化合物(2)とポリアミン化合物とを反応させて得られる化合物に、化合物(3)を反応させる方法等が挙げられる。
【0044】
化合物(A)の製造方法である重付加反応等は、有機溶剤を用いてもよいし無溶剤で行ってもよい。有機溶剤としては、イソシアナト基と反応しないものであれば特に限定されない。例えば、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ミネラルターペン等の炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、メチルグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸セロソルブ等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤等が挙げられる。また、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン等の非プロトン性極性溶剤を用いてもよい。
【0045】
化合物(A)の製造において有機溶剤を使用する場合、脱水処理を施した溶剤を使用することが好ましい。モレキュラーシーブ3A等を用いて脱水処理をしてもよいし、蒸留によって溶剤を脱水処理してもよい。例えば、酢酸エチル、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等を用いる場合、これらの溶剤と水素化カルシウム粉末を室温で混合し、懸濁状態で2〜12時間室温で撹拌し、続いて窒素やアルゴン等の不活性ガス気流下で沸点よりも10〜20℃高い温度で加熱して蒸留して、脱水処理することができる。また、テトラヒドロフラン等の溶剤は、これら溶剤にベンゾフェノンとナトリウム片を室温で加えて激しく撹拌し、濃紫色溶液状態を保ちながら窒素やアルゴン等の不活性ガス気流下で沸点よりも10〜20℃高い温度で加熱して蒸留して、脱水処理することができる。また、市販の脱水溶媒を使用してもよい。脱水処理を行うと、イソシアナト基と水分との副反応を抑制することができ、高分子量の化合物(A)を得ることができることから、好ましい。
【0046】
有機溶剤を使用する場合の有機溶剤の使用量は、反応混合液の合計量に対して10〜60質量%であり、好ましくは、15〜50質量%である。
【0047】
化合物(A)の製造に際して、化合物(1)と化合物(2)との反応(ウレタン化反応)を促進するために、必要により公知のウレタン化反応に使用される触媒を用いてもよい。具体的には、トリエチルアミン、N−エチルモルホリン、トリエチレンジアミン等の第三級アミン;ジラウリン酸ジブチル錫、ジラウリン酸ジオクチル錫、オクチル酸錫等の有機錫系触媒、テトラブチルチタネート等の有機チタン系触媒、等が挙げられる。また、これら第三級アミンと有機金属系触媒とを併用して使用してもよい。該触媒を用いる場合の使用量は、化合物(1)1当量に対して0.001モル%〜10モル%、好ましくは0.01モル%〜5モル%程度である。
【0048】
化合物(3)を反応させる際、エチレン性二重結合の重合を抑制するために重合禁止剤を使用することも好ましい。具体的には、メトキノン、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン等のヒドロキノン系重合禁止剤、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、t−ブチルカテコール等のヒンダードフェノール系重合禁止剤、フェノチアジン、ニトロソ化合物等が使用できる。重合禁止剤は、1種又は2種以上を併用してもよい。重合禁止剤を用いる場合の使用量は、一般的には化合物(1)に対して質量基準で、10〜50000ppm、好ましくは50〜1000ppmである。
【0049】
化合物(A)は、粘性、溶剤への溶解性、位相差フィルムの靭性、加工性、光学特性の観点から、数平均分子量で5,000〜500,000の範囲であることが好ましく、7,000〜300,000の範囲であることがより好ましく、10,000〜200,000の範囲であることがさらに好ましい。
【0050】
化合物(A)のガラス転移温度は60℃以上200℃以下の範囲であることが好ましい。
【0051】
化合物(A)の数平均分子量及びガラス転移温度が、上記の範囲内にあると、位相差フィルムの耐熱性、形状安定性、加工形成性、延伸性などに優れるため好ましい。
【0052】
本発明の位相差フィルムにおいて、化合物(A)に由来する構造単位の含有量は、全構造単位合計量に対して、30質量%〜100質量%、好ましくは40質量%〜90質量%、より好ましくは45質量%〜85質量%の範囲である。化合物(A)に由来する構造単位の含有量が上記の範囲内にあると、光弾性係数が小さく、且つ位相差フィルムが広い波長域でより一様の偏光変換を行うことが可能になる傾向にあることから好ましい。
【0053】
本発明の位相差フィルムは、式(I)で表される化合物に由来する構造単位をさらに含むことが好ましい。
【化14】

[式(I)中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。
は、置換基を有していてもよい炭素数6〜20の環式炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭素数4〜20の複素環基を表す。]
【0054】
における炭素数6〜20の環式炭化水素基は、単環の環式炭化水素基であってもよいし、縮合環式炭化水素基であってもよい。炭素数6〜20の環式炭化水素基としては、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基が挙げられ、中でも芳香族炭化水素基が好ましい。脂環式炭化水素基の具体例としては、シクロヘキシル基等が挙げられる。芳香族炭化水素基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基及びアントラセニル基等が挙げられる。
【0055】
炭素数4〜20の複素環基としては、窒素原子、酸素原子等のヘテロ原子を環の構成原子として含む複素環基が挙げられる。単環の複素環基であってもよいし、縮合環の複素環基であってもよい。このような複素環としては、具体的には、ピロール環、フラン環、チオフェン環、ピラジン環、ピラゾリン環、イミダゾール環、ピリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、テトラヒドロフラン環、インドール環、チアゾリン環、カルバゾール環等が挙げられる。
としては、芳香族炭化水素基または複素環基が好ましい。
【0056】
前記環式炭化水素基及び前記複素環基は、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基又はオクチル基等)、炭素数1〜12のアルコキシ基(例えばメトキシ基又はエトキシ基等)、炭素数6〜12のアリール基(例えばフェニル基、ナフチル基等)、炭素数7〜12のアラルキル基(例えばベンジル基等)、炭素数2〜4のアシル基(例えばアセチル基等)、炭素数1〜12のアシルオキシ基(例えばアセチルオキシ基等)、アミノ基、一つ又は二つの炭素数1〜12のアルキル基で置換されたアミノ基(例えばエチルアミノ基、ジメチルアミノ基等)、及びハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子又は臭素原子等)からなる群から選ばれる少なくとも一種で置換されていてもよい。
【0057】
式(I)で表される化合物としては、具体的には例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレン、トリメチルスチレン、プロピルスチレン、tert−ブチルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ドデシルスチレン等のアルキルスチレン;
ヒドロキシスチレン、t−ブトキシスチレン、ビニル安息香酸、ビニルベンジルアセテート、o−クロロスチレン、p−クロロスチレン及びアミノスチレン等の、ベンゼン環にヒドロキシ基、アルコキシ基、カルボキシ基、アシルオキシ基、ハロゲン及びアミノ基等から選ばれる基が結合した置換スチレン;
4−ビニルビフェニル、2−エチル−4ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン及び4−ヒドロキシ−4’−ビニルビフェニル等のビニルビフェニル系化合物;
ビニルナフタレン及びビニルアントラセン等の縮合環及びビニル基を有する化合物;
N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピリジン、N−ビニルフタルイミド及びN−ビニルインドール等の複素環基及びビニル基を有する化合物等が挙げられる。
【0058】
中でも、式(I)で表される化合物としては、スチレン、N−ビニルカルバゾール、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンが好ましく、スチレン、N−ビニルカルバゾールがより好ましく、N−ビニルカルバゾールがさらに好ましい。
これらの化合物であると、位相差フィルムが広い波長域でより一様の偏光変換を行うことが可能になる傾向があることから好ましい。
式(I)で表される化合物は、それぞれ単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0059】
式(I)で表される化合物に由来する構造単位の含有量は、本発明の位相差フィルムに含まれるすべての構造単位の合計量を100質量%に対して、5〜30質量%、好ましくは7〜25質量%、特に好ましくは10〜25質量%である。式(I)で表される化合物に由来する構造単位の含有量が、上記の範囲内にあると、広い波長域で一様の偏光変換を行うことができる傾向にあるので好ましい。
【0060】
本発明の位相差フィルムは、式(I)で表される化合物に加えてさらに、他のエチレン性二重結合を有する化合物を併用してもよい。
例えば、式(II)で表される化合物を併用してもよい。
【0061】
【化15】

[式(II)中、Rは水素原子又はメチル基であり、好ましくはメチル基を表す。
は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数2〜6のアルキルアミノ基を表し、該アルキル基、及び該アルキルアミノ基に含まれる水素原子は、ヒドロキシ基、又はカルボキシ基で置換されていてもよく、該アルキル基に含まれる−CH−は、−O−、−CO−、−S−又は−NH−で置換されていてもよい。]
【0062】
式(II)で表される化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル、グリセリンモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0063】
中でも、透過率が低下することなく式(I)で表される化合物と共重合して重合率を上げることができる、また、組成物の成膜均一性を向上させ、平滑性に優れたフィルムを作製することができる点から、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル、及びグリセリンモノメタクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0064】
式(II)で表される化合物は、それぞれ単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0065】
式(II)で表される化合物に由来する構造単位の含有量は、本発明の位相差フィルムに含まれるすべての構造単位の合計量を100質量%に対して、0〜50質量%、好ましくは3〜30質量%、特に好ましくは5〜25質量%である。式(II)で表される化合物に由来する構造単位の含有量が上記範囲内にあると、透過率が低下することなく式(I)で表される化合物と共重合して重合率を上げることができるので好ましい。また、組成物の成膜均一性を向上させ、平滑性に優れた位相差フィルムを作製することができるため好ましい。
【0066】
本発明の位相差フィルム用組成物は、化合物(A)と、式(I)で表される化合物及び式(I)で表される化合物を含むモノマーに由来する構造単位を有する樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種とを含む組成物である。
本発明の位相差フィルムは、本発明の位相差フィルム用組成物(以下、「本発明の組成物」ということがある。)を成膜し、さらに延伸することによって得ることができる。位相差フィルムの製造工程において、光重合してもよい。光重合は、成膜後延伸する前に行っても、成膜後延伸しながら行っても、成膜後さらに延伸した後に行ってもよい。特に、支持体にキャストし、乾燥して成膜し、光重合した後さらに延伸して得ることが好ましい。
【0067】
本発明の組成物は、光重合開始剤を含んでいてもよい。光重合開始剤としては、例えばベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ベンジルケタール類、α−ヒドロキシケトン類、α−アミノケトン類、アルキルフェノン類、チオキサントン類、アシルホスフィンオキサイド類、オキシムエステル誘導体、ヨードニウム塩及びスルホニウム塩等が挙げられる。
例えば、イルガキュア(IRGACURE)907、イルガキュア184、イルガキュア651、イルガキュア250、イルガキュア369、イルガキュアOXE01、イルガキュアOXE02(以上、全てチバ・ジャパン(株)製)、セイクオールBZ、セイクオールZ、セイクオールBEE(以上、全て精工化学(株)製)、カヤキュアー(KAYACURE)BP100、カヤキュアーDETX−S、カヤキュアーCTX、カヤキュアーBMS(以上、全て日本化薬(株)製)、UVI−6992(ダウ社製)、アデカオプトマーSP−150、アデカオプトマーSP−152、アデカオプトマーSP−172、アデカオプトマーN−1414、アデカオプトマーN−1606、アデカオプトマーN−1717、アデカオプトマーN−1919(以上、全て(株)ADEKA製)等の市販品を使用することもできる。
【0068】
また光重合開始剤の使用量は、化合物(A)と、式(I)で表される化合物及び式(I)で表される化合物を含むモノマーに由来する構造単位を有する樹脂との合計量に対して、0.1質量%〜10質量%であり、好ましくは0.5質量%〜5質量%である。光重合開始剤の使用量が上記の範囲内にあると、透過率を低下することなく、化合物(A)や式(I)で表される化合物が有するエチレン性二重結合を重合させることができ、好ましい。また、重合することにより、位相差発現性等の光学特性、耐熱性、透過率等が良好になる傾向があり、好ましい。
【0069】
本発明の組成物は、化合物(A)や式(I)で表される化合物の光重合反応性を制御し、得られる位相差フィルムの保存安定性を向上させるために、重合禁止剤を含んでいてもよい。重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン及びアルキルエーテル等の置換基を有するハイドロキノン類、ブチルカテコール等のアルキルエーテル等の置換基を有するカテコール類、ピロガロール類、2,2、6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカル等のラジカル補足剤、チオフェノール類、β−ナフチルアミン類あるいはβ−ナフトール類等が挙げられる。
【0070】
重合禁止剤の使用量は、化合物(A)と、式(I)で表される化合物及び式(I)で表される化合物を含むモノマーに由来する構造単位を有する樹脂との合計量に対して、0.1質量%〜30質量%であり、好ましくは0.5質量%〜10質量%である。重合禁止剤の使用量が上記の範囲内にあると、透過率を低下することなく、モノマーを重合させることができ、好ましい。
【0071】
本発明の組成物は、光重合開始剤の反応を高感度化するために光増感剤を含有していてもよい。光増感剤としては、例えばキサントン及びチオキサントン等のキサントン類、アントラセン及びアルキルエーテル等の置換基を有するアントラセン類、フェノチアジンあるいはルブレンを挙げることができる。
【0072】
光増感剤の使用量は、化合物(A)と、式(I)で表される化合物及び式(I)で表される化合物を含むモノマーに由来する構造単位を有する樹脂との合計量に対して、例えば0.1質量%〜30質量%であり、好ましくは0.5質量%〜10質量%である。光増感剤の使用量が上記の範囲内にあると、透過率を低下することなく、高感度にモノマーを重合させることができ、好ましい。
【0073】
本発明の組成物は、溶剤を含んでいてもよい。溶剤としては、例えばエーテル類、芳香族炭化水素類、ケトン類、アルコール類、エステル類、アミド類等が挙げられる。
【0074】
エーテル類としては、例えばテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、メトキシブチルアセテート、メトキシペンチルアセテート、アニソール、フェネトール及びメチルアニソール等が挙げられる。
【0075】
芳香族炭化水素類としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン及びメシチレン等が挙げられる。
【0076】
ケトン類としては、例えばアセトン、2−ブタノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、4−メチル−2−ペンタノン、シクロペンタノン及びシクロヘキサノン等が挙げられる。
【0077】
アルコール類としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール及びグリセリン等が挙げられる。
【0078】
エステル類としては、例えば酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、アルキルエステル類、乳酸メチル、乳酸エチル、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3−オキシプロピオン酸メチル、3−オキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート及びγ−ブチロラクトン等が挙げられる。
【0079】
アミド類としては、例えばN,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
その他の溶剤としては、例えばN−メチルピロリドン及びジメチルスルホキシド等が挙げられる。
溶剤は、それぞれ単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0080】
溶剤の使用量は、化合物(A)と、式(I)で表される化合物及び式(I)で表される化合物を含むモノマーに由来する構造単位を有する樹脂との合計量に対して、例えば50質量%〜90質量%であり、好ましくは60質量%〜80質量%である。溶剤の使用量が上記の範囲内にあると、本発明の組成物に含まれる溶媒以外の成分の相溶性を向上させ、平滑性に優れたフィルムを作成できる傾向にあり、好ましい。
【0081】
本発明の組成物は、レベリング剤を含んでいてもよい。レベリング剤としては、有機変性シリコーンオイル系、ポリアクリレート系、パーフルオロアルキル系等が挙げられる。具体的には、例えば、DC3PA、SH7PA、DC11PA、SH28PA、SH29PA、SH30PA、ST80PA、ST86PA、SH8400、SH8700、FZ2123(以上、全て東レ・ダウコーニング(株)製)、KP321、KP323、KP324、KP326、KP340、KP341(以上、全て信越化学工業(株)製)、TSF400、TSF401、TSF410、TSF4300、TSF4440、TSF4445、TSF−4446、TSF4452、TSF4460(以上、全てモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)、フロリナート(商品名)FC−72、同FC−40、同FC−43、同FC−3283(以上、全て住友スリーエム(株)製)、メガファック(商品名)R−08、同R−30、同R−90、同F−410、同F−411、同F−443、同F−445、同F−470、同F−477、同F−479、同F−482、同F−483(以上、いずれもDIC(株)製)、エフトップ(商品名)EF301、同EF303、同EF351、同EF352(以上、全て三菱マテリアル電子化成(株)製)、サーフロン(商品名)S−381、同S−382、同S−383、同S−393、同SC−101、同SC−105、KH−40、SA−100(以上、全てAGCセイミケミカル(株)製)、商品名E1830、同E5844((株)ダイキンファインケミカル研究所製)、BM−1000、BM−1100(いずれも商品名:BM Chemie社製)等が挙げられる。レベリング剤は、それぞれ単独で又は二種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0082】
レベリング剤を用いることにより、得られるフィルム(膜)を平滑にすることができる。更に成膜の製造過程で、組成物の流動性を制御したり、組成物を重合して得られるフィルムの架橋密度を調整したりすることができる。
レベリング剤の含有量は、化合物(A)、式(I)で表される化合物及び式(I)で表される化合物を含むモノマーに由来する構造単位を有する樹脂並びに光重合開始剤の合計量に対して、0.0001質量%〜2.0質量%であり、好ましくは0.0005質量%〜1.0質量%である。レベリング剤の含有量が上記の範囲内にあると、透過率を低下することなく平滑性に優れたフィルム(膜)を得ることができる。
【0083】
本発明の組成物は、可塑剤を含んでいてもよい。可塑剤としては、リン酸エステル、カルボン酸エステル及びグリコール酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が用いられる。リン酸エステルとしては、例えば、トリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート及びトリブチルホスフェートが挙げられる。
【0084】
可塑剤の具体例としては、特開平11−124445号公報記載の(ジ)ペンタエリスリトールエステル類、特開平11−246704号公報記載のグリセロールエステル類、特開2000−63560号公報記載のジグリセロールエステル類、特開平11−92574号公報記載のクエン酸エステル類、特開平11−90946号公報記載の置換フェニルリン酸エステル類等が挙げられる。
【0085】
カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステル及びクエン酸エステルが挙げられる。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)及びジエチルヘキシルフタレート(DEHP)が挙げられる。クエン酸エステルの例としては、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)、O−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)、クエン酸アセチルトリエチル及びクエン酸アセチルトリブチルが挙げられる。
その他のカルボン酸エステルとしては、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが例示される。
【0086】
グリコール酸エステルとしては、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート及びブチルフタリルブチルグリコレート等が例示される。またトリメチロールプロパントリベンゾエート、ペンタエリスリトールテトラベンゾエート、ジトリメチロールプロパンテトラアセテート、ジトリメチロールプロパンテトラプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラアセテート、ソルビトールヘキサアセテート、ソルビトールヘキサプロピオネート、ソルビトールトリアセテートトリプロピオネート、イノシトールペンタアセテート及びソルビタンテトラブチレート等も好ましく挙げられる。
【0087】
可塑剤としては、中でもトリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリブチルホスフェート、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジエチルヘキシルフタレート、トリアセチン、エチルフタリルエチルグリコレート、トリメチロールプロパントリベンゾエート、ペンタエリスリトールテトラベンゾエート、ジトリメチロールプロパンテトラアセテート、ペンタエリスリトールテトラアセテート、ソルビトールヘキサアセテート、ソルビトールヘキサプロピオネート及びソルビトールトリアセテートトリプロピオネート等が好ましく、特にトリフェニルホスフェート、ジエチルフタレート、エチルフタリルエチルグリコレート、トリメチロールプロパントリベンゾエート、ペンタエリスリトールテトラベンゾエート、ジトリメチロールプロパンテトラアセテート、ソルビトールヘキサアセテート、ソルビトールヘキサプロピオネート及びソルビトールトリアセテートトリプロピオネートが好ましい。
【0088】
可塑剤は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。可塑剤の添加量は、本発明の位相差フィルム特性を大きく損ねない範囲で適宜、選択されればよく、例えば化合物(A)、式(I)で表される化合物及び式(I)で表される化合物を含むモノマーに由来する構造単位を有する樹脂並びに光重合開始剤の合計量100質量%に対して0.1質量%〜30質量%が好ましい。
【0089】
本発明の位相差フィルムは、本発明の組成物を成膜(フィルム化)して膜状物を形成し、得られた膜状物を更に延伸することによって製造される。又は、本発明の位相差フィルムは、組成物を成膜(フィルム化)し、光重合して膜状物を形成し、得られた膜状物を更に延伸することによって製造される。組成物の膜状物を形成する方法としては、例えば、組成物を含む溶液を平滑な面にキャストして溶剤を留去する溶剤キャスト法、組成物を溶融押出機等でフィルム状に押出成形する溶融押出法等が挙げられる。特に溶剤キャスト法は、組成物を含む溶液をそのまま成膜できることから好ましい。
【0090】
光重合に用いられる光源としては、紫外光(UV)を発生する光源が好ましい。例えば、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト、低圧、高圧、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、太陽光線、無電極ランプ等が挙げられる。紫外光の照射強度は、終始一定の強度でも行ってよいし、硬化途中で強度を変化させることにより、硬化後の物性を微調整することもできる。
【0091】
また、延伸方法としては、例えば、テンター法による延伸法、ロール間延伸による延伸法等が挙げられる。
延伸は、一軸延伸でも二軸延伸のいずれでもよく、縦延伸でも横延伸のいずれでもよい。
一軸延伸の方法としてはロール間延伸による縦方向への一軸延伸法、テンター機を用いた横方向への一軸延伸法などが挙げられ、二軸延伸の方法としては、フィルムの側端を把持するテンタークリップのレール幅が開かれてゆき縦方向の延伸と同時にガイドレールの広がりにより横方向にも延伸する同時二軸延伸や、ロール間延伸による縦方向への延伸を行った後にその両端部をテンタークリップで把持してテンター機を用いて横方向へ延伸する逐次二軸延伸法などが挙げられる。
特に生産性が良好であることから、横一軸延伸及び二軸延伸が好ましく、特に横一軸延伸が好ましい。
横一軸延伸や二軸延伸によって光学的二軸性を有している位相差フィルムを得ることができる。ここで光学的二軸性とは、フィルム面内の直行する二方向の屈折率をそれぞれn、n(ただしn>nとする)、厚み方向の屈折率をnとしたときにn≠n≠nとなることであり、逆にn、n、nのうちのいずれか二つが等しい場合(例えばn>n=n、など)は光学的一軸性である。
光学的二軸性を有する光学フィルムは、フィルムの厚み方向に対しても一様な偏光変換が可能である。
【0092】
位相差フィルムを透過する光の波長νnmにおける位相差値Re(ν)は、通常Re(450)<Re(550)<Re(650)の関係を充足する等、波長が長いほど位相差値が大きくなり、300〜700nm可視領域全般で右上がりの分散を示すことにより、広い波長域で一様の偏光変換を行うことができる。
【0093】
光弾性係数Cは、下記式で定義される。

ここでΔαは分極率異方性、nは屈折率、kはボルツマン定数を表す。
光弾性係数と複屈折発現性とは下記式の関係がある。
Δnst=C・σ
ここでΔnstは応力複屈折、σは応力を表す。上式が示すように光弾性係数Cが大きい場合、σによって誘起されるΔnstが大きくなる。このため光弾性係数が大きい材料の場合、外力によって位相差フィルムに生じる応力に起因する位相差変化が大きくなってしまい、表示性能の低下が発生する。
従って、位相差フィルムの光弾性係数は小さいほうが好ましく、具体的には、0Pa−1以上30×10−12Pa−1以下であることが好ましい。光弾性係数が30×10−12Pa−1以下であれば、良好な光学特性を示しつつ、且つ表示性能に優れた位相差フィルムが得られるため好ましい。
【0094】
本発明の位相差フィルムのガラス転移温度は60℃以上200℃以下の範囲であることが好ましい。
本発明の位相差フィルムのガラス転移温度が低すぎると、位相差フィルムの耐熱性や形状安定性に劣るので好ましくなく、ガラス転移温度が高すぎると位相差フィルムの加工形成性や延伸性に劣るので好ましくない。位相差フィルムのガラス転移温度が上記の範囲内にあると、光学フィルムの耐熱性、形状安定性、加工形成性、延伸性などに優れるため好ましい。
【0095】
本発明の位相差フィルムは、光弾性係数が小さく、更に広い波長域において一様の偏光変換が可能であるため、λ/2板及びλ/4板等の位相差板や、視野角向上フィルム等として用いられる。また位相差フィルムがλ/4板であれば、それを直線偏光板と組み合わせて広波長域の円偏光板とすることができ、またλ/2板であれば、それを直線偏光板と組み合わせて広波長域の偏光回転素子とすることができる。したがって、各種液晶表示装置、陰極線管(CRT)、タッチパネル、エレクトロルミネセンス(EL)ランプ等における反射防止フィルター、更には液晶プロジェクター等に使用することができる。
本発明の位相差板は、このように上記位相差フィルムからなり、広い波長域において一様の偏光変換が可能である。
【実施例】
【0096】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。例中の「%」及び「部」は、特記ない限り、質量%及び質量部である。なお、平均分子量は以下の方法によって求めた。
【0097】
(平均分子量)
平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)(東ソー(株)製、HLC−8220GPC)を用い、ポリスチレン換算で求めた。
【0098】
装置 ;HLC−8220GPC(東ソー(株)製)
ガードカラム ;TSKguardcolumn MP(XL)(商品名)
カラム ;TSK−gel MultiporeHXL−M(商品名)
TSK−gel MultiporeHXL−M(商品名)
TSK−gel MultiporeHXL−M(商品名)(直列接続)
カラム温度 ;40℃
溶媒 ;THF
流速 ;1.0mL/min
注入量 ;50μL
検出器 ;RI、UV
測定試料濃度 ;0.6%(溶媒;THF)
校正用標準物質;TSK STANDARD POLYSTYRENE
A−500、A−1000、A−2500、A−5000、
F−1、F−2、F−4、F−10、F−20、F−40、
F−80、F−128、F−288,F−380
(商品名、東ソー(株)製)
上記測定方法で得られたポリスチレン換算重量平均分子量及び数平均分子量の比を分子量分布(Mw/Mn)とした。
【0099】
(合成例1)
攪拌機、温度計及び還流冷却器を備えた反応槽に、化合物(b−1)(イソソルビド:東京化成工業(株)製)21.92部、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール0.056部、メチルイソブチルケトン(モレキュラーシーブ3A(和光純薬工業(株)社製)で脱水処理済み)128部、ジラウリン酸ジブチル錫0.256部を仕込み、窒素気流攪拌下、オイルバスを用いて120℃にて加熱還流し、化合物(b−1)を完全に溶解させた。続いて、滴下漏斗を用いて化合物(a−1)(イソホロンジイソシアネート:和光純薬工業(株)製)34.68部を30分かけて滴下し、滴下終了後120℃で4時間反応させ、N,N−ジメチルホルムアミド(脱水)(関東化学(株)社製)35.8部を加えて激しく撹拌し、更に120℃で4時間反応させた。反応溶液を約50℃まで冷却した後に2−ヒドロキシエチルアクリレート(和光純薬工業(株)製)3.48部を加えて激しく撹拌し、続いて2−プロパノール20.6部を加えて激しく撹拌した。室温になるまで放冷し、化合物(A1)溶液(固形分25%)を得た。
分子量測定を実施した結果、化合物(A1)は数平均分子量36,400、分子量分布1.66であった。
【0100】
【化16】

【0101】
(合成例2)
攪拌機、温度計及び還流冷却器を備えた反応槽に、化合物(b−8)(水添ビスフェノールA:東京化成工業(株)製)24.04部、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール0.037部、トルエン(モレキュラーシーブ3A(和光純薬工業(株)社製)で脱水処理済み)130.1部、N,N−ジメチルホルムアミド(脱水)(関東化学(株)社製)11.4部、ジラウリン酸ジブチル錫0.171部を仕込み、窒素気流攪拌下、オイルバスを用いて110℃にて加熱還流し、化合物(b−8)を完全に溶解させた。続いて、滴下漏斗を用いて化合物(a−1)23.34部を30分かけて滴下し、滴下終了後110℃で6時間反応させた。反応溶液を約50℃まで冷却した後に2−ヒドロキシエチルアクリレート2.32部を加えて激しく撹拌し、続いて2−プロパノール20.4部を加えて激しく撹拌した。室温になるまで放冷し、化合物(A2)溶液(固形分24%)を得た。
分子量測定を実施した結果、化合物(A2)は数平均分子量23,400、分子量分布1.48であった。
【0102】
【化17】

【0103】
(合成例3)
攪拌機、温度計及び還流冷却器を備えた反応槽に、化合物(b−7)(スピログリコール:東京化成工業(株)製)36.53部、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール0.045部、トルエン(モレキュラーシーブ3A(和光純薬工業(株)社製)で脱水処理済み)128.1部、N,N−ジメチルホルムアミド(脱水)(関東化学(株)社製)40.4部、ジラウリン酸ジブチル錫0.205部を仕込み、窒素気流攪拌下、オイルバスを用いて110℃にて加熱還流し、化合物(b−7)を完全に溶解させた。続いて、滴下漏斗を用いて化合物(a−1)28.01部を30分かけて滴下し、滴下終了後110℃で8時間反応させた。反応溶液を約50℃まで冷却した後に2−ヒドロキシエチルアクリレート2.79部を加えて激しく撹拌し、続いて2−プロパノール22.6部を加えて激しく撹拌した。室温になるまで放冷し、化合物(A3)溶液(固形分26%)を得た。
分子量測定を実施した結果、化合物(A3)は数平均分子量32,000、分子量分布1.67であった。
【0104】
【化18】

【0105】
(合成例4)
攪拌機、温度計及び還流冷却器を備えた反応槽に、化合物(b−6)(トリシクロデカンジメタノール:東京化成工業(株)製)24.54部、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール0.047部、メチルイソブチルケトン(モレキュラーシーブ3A(和光純薬工業(株)社製)で脱水処理済み)123.8部、ジラウリン酸ジブチル錫0.213部を仕込み、窒素気流攪拌下、オイルバスを用いて120℃にて加熱還流し、化合物(b−6)を完全に溶解させた。続いて、滴下漏斗を用いて化合物(a−1)28.48部を30分かけて滴下し、滴下終了後120℃で4時間反応させ、N,N−ジメチルホルムアミド(脱水)(関東化学(株)社製)42.2部を加えて激しく撹拌し、更に120℃で4時間反応させた。反応溶液を約50℃まで冷却した後に2−ヒドロキシエチルアクリレート2.91部を加えて激しく撹拌し、続いて2−プロパノール20.2部を加えて激しく撹拌した。室温になるまで放冷し、化合物(A4)溶液(固形分23%)を得た。
分子量測定を実施した結果、化合物(A4)は数平均分子量54,100、分子量分布1.85であった。
【0106】
【化19】

【0107】
(合成例5)
攪拌機、温度計及び還流冷却器を備えた反応槽に、化合物(b−1)21.92部、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール0.056部、メチルイソブチルケトン(モレキュラーシーブ3A(和光純薬工業(株)社製)で脱水処理済み)150.2部、ジラウリン酸ジブチル錫0.256部を仕込み、窒素気流攪拌下、オイルバスを用いて120℃にて加熱還流し、化合物(b−1)を完全に溶解させた。続いて、滴下漏斗を用いて化合物(a−1)35.01部を30分かけて滴下し、滴下終了後120℃で4時間反応させ、N,N−ジメチルホルムアミド(脱水)(関東化学(株)社製)15.8部を加えて激しく撹拌し、更に120℃で4時間反応させた。オイルバスを取り除き、反応溶液を約50℃まで冷却した後に化合物(c−1)(イソホロンジアミン:和光純薬工業(株)製)2.56部を加えて激しく撹拌した。このまま余熱が残る状態で1時間激しい撹拌を続け、続いて2−ヒドロキシエチルアクリレート3.48部を加えて激しく撹拌し、更に2−プロパノール22.4部を加えて激しく撹拌した。室温になるまで放冷し、化合物(A5)溶液(固形分25%)を得た。
分子量測定を実施した結果、化合物(A5)は数平均分子量27,200、分子量分布1.58であった。
【0108】
【化20】

【0109】
(比較合成例1)
攪拌機、温度計及び還流冷却器を備えた反応槽に、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール(平均分子量860)(シグマ・アルドリッチジャパン(株)製)を86部、1,4−シクロヘキサンジメタノール(和光純薬工業(株)製)130部、ジラウリン酸ジブチル錫1.71部を仕込み、窒素気流攪拌下、化合物(a−1)222部を滴下し、滴下終了後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート657部を添加し、窒素気流下、70℃で6時間反応させ化合物(5−1)を含むポリウレタン溶液を得た。化合物(5−1)を含むポリウレタン溶液548部に、2−ヒドロキシエチルアクリレート34.8部を添加し、40℃で攪拌反応させて、化合物(B1)溶液(固形分44%)を得た。
分子量測定を実施した結果、化合物(B1)は数平均分子量35,200、分子量分布1.59であった。
【0110】
(比較合成例2)
イソホロンジアミン25.6部とプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート51部とを混合してジアミン希釈液を調製した。比較合成例1に従って得た化合物(5−1)を含むポリウレタン溶液548部を攪拌しながら40℃にて保温し、該希釈液を1時間かけて滴下した。滴下終了後も40℃に保温しながら30分攪拌を続け、化合物(5−3)を含むポリウレタン尿素溶液を得た。化合物(5−3)を含むポリウレタン尿素溶液594部に、2−ヒドロキシエチルアクリレート17.0部を添加し、40℃で攪拌反応させて、化合物(B2)溶液(固形分41%)を得た。
分子量測定を実施した結果、化合物(B2)は数平均分子量37,700、分子量分布1.76であった。
【0111】
【化21】

【0112】
〔実施例1〕
下記の成分を混合し、位相差フィルム用組成物を調製した。
化合物(A):化合物(A1)溶液 80部
レベリング剤:ポリエーテル変性シリコーンオイルSH8400
(東レ・ダウコーニング(株)社製) 0.001部
【0113】
(位相差フィルムの作製)
調整した位相差フィルム用組成物を、ポリエチレンテレフタレート製の離型フィルム(厚さ188μm)上にアプリケーターで塗布した後、100℃で15分乾燥した。得られたフィルムを離型フィルムから剥がしてフィルムを形成した。次いで、温度調節オートグラフ延伸機((株)東洋精機製作所製、ストログラフT)を使用して3.0倍延伸し位相差フィルムを作製した。
【0114】
〔実施例2〜5、比較例1及び2〕
化合物(A1)溶液を、表1の「ウレタンアクリレート溶液」欄に示す化合物溶液(「溶液部数」欄に示す含有量で混合)に代えた以外は、実施例1と同様にして位相差フィルムを作製した。
【0115】
〔比較例3〕
延伸工程を含まない以外は、実施例4で作製したフィルムと全く同様にして未延伸フィルム1を作製した。
【0116】
【表1】

【0117】
作製した位相差フィルム、及び未延伸フィルムについて、以下の評価を行った。
【0118】
(光学異方性)
得られた位相差フィルム、及び未延伸フィルムについて、屈折率が最大になる方向は自動複屈折計(KOBRA−WR、王子計測機器社製)により求めた。
延伸によって重合体主鎖を配向させた際に、その配向方向と屈折率が最大になる方向が異なる(例えば、直交する、等)光学異方性を有する場合、負の複屈折性を有している。一方、配向方向と屈折率が最大になる方向が一致する、又はほぼ一致する(例えば、配向方向と屈折率が最大になる方向との差が10度以内の場合、等)場合、正の複屈折性を有している。結果を表2に、Re(550)として示す。
【0119】
(波長分散性)
得られた位相差フィルム、及び未延伸フィルムについて、自動複屈折計(KOBRA−WR、王子計測機器(株)製)を用いて、450nmにおける位相差値[Re(450)]と550nmにおける位相差値[Re(550)]と、650nmにおける位相差値[Re(650)]を測定し、[Re(450)]/[Re(550)]、及び[Re(650)]/[Re(550)]を計算することで波長分散性を求めた。結果を表2に示す。
Re(450)/Re(550)が1.04以下であると広い波長域において一様の偏光変換が可能と判断できる。さらに1未満であると逆波長分散性を示すことから、広い波長域においてさらに位相差のずれなく一様の偏光変換が可能であり、良好であると判断できる。
また、[Re(650)]/[Re(550)]が0.97以上であると広い波長域において一様の偏光変換が可能と判断できる。さらに1以上であると逆波長分散性を示すことから、広い波長域においてさらに位相差のずれなく一様の偏光変換が可能であり、良好であると判断できる。
【0120】
(光弾性係数)
得られた位相差フィルム、及び未延伸フィルムを150mm×600mmに切り出し、自動複屈折計(KOBRA−WR、王子計測機器(株)製)を用いて、室温で0N〜50Nの範囲で5点張力σを変えたときの面内位相差値(Re)をそれぞれ測定し、下記式に従って作製した近似直線の傾きから光弾性係数を求めた。結果を表2に示す。
Δnst=C・σ
[式中、Δnstは応力複屈折、σは張力、Cは光弾性係数を表す。]
光弾性係数が30×10−12Pa−1以下であると、良好であると判断できる。
【0121】
(ガラス転移温度)
得られた位相差フィルム、及び未延伸フィルムを4mm×50mmに切り出し、TMA−100(セイコー電子工業(株)社製)の引張りモード測定を実施することでフィルムのガラス転移温度Tg(℃)を求めた。結果を表2に示す。
ガラス転移温度が60℃以上200℃以下であれば、良好であると判断できる。
【0122】
(厚み)
得られた位相差フィルムの厚みを、厚み計(商品名:DIGIMICRO MH−15M、(株)仙台ニコン製)を用いて測定した。結果を表2に示す。
【0123】
【表2】

【0124】
〔実施例6〕
下記の成分を混合し、位相差フィルム用組成物を調製した。
化合物(A):化合物(A1)溶液 80部
化合物(I):N−ビニルカルバゾール(シグマ・アルドリッチジャパン(株)製) 7.5部
光重合開始剤:イルガキュア184(チバ・ジャパン(株)製) 0.2部
溶剤:N,N−ジメチルホルムアミド 16部
レベリング剤:ポリエーテル変性シリコーンオイルSH8400
(東レ・ダウコーニング(株)社製) 0.1部
【0125】
(位相差フィルムの作製)
調製した位相差フィルム用組成物を、ポリエチレンテレフタレート製の離型フィルム(厚さ188μm)上にアプリケーターで塗布した後、100℃で15分間乾燥し、UV照射(高圧水銀ランプ:1Pass当たり 200mJ/cm:365nm)し、得られたフィルムを離型フィルムから剥がしてフィルムを形成した。次いで、温度調節オートグラフ延伸機((株)東洋精機製作所製、ストログラフT)を使用して3.0倍延伸して光学フィルムを作製した。位相差フィルムの光学特性を表4に示す。
【0126】
〔実施例7〜10、比較例4及び5〕
化合物(A1)溶液を、表3の「ウレタンアクリレート溶液」欄記載の化合物溶液(「溶液部数」欄に示す含有量で混合)に代え、かつN−ビニルカルバゾールの量を表3の「NVC/部」欄記載の量に代えた以外は、実施例6と同様にして位相差フィルムを作製した。
【0127】
【表3】

【0128】
得られた位相差フィルムについて、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表4に示す。
【0129】
【表4】

【0130】
表2及び表4に示す結果から、実施例1〜5及び実施例6〜10の位相差フィルムにおいて、光弾性係数は小さな値を示し、外力によって位相差フィルムに生じる応力に起因する位相差変化は小さいことが確認された。
また、実施例6〜10の位相差フィルムにおいて、波長分散係数αは1未満と小さい値を示し、位相差値が逆波長分散性を示すことから、広い波長域においてより一様の偏光変換が可能であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明の位相差フィルムによれば、光弾性係数を小さくすることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1A)及び式(1B)で表される化合物からなる群から選ばれる1種以上のジオール化合物(1)と、脂環式炭化水素骨格を有するポリイソシアネート化合物(2)とを反応させ、次いで、エチレン性二重結合及びポリイソシアネート化合物(2)のイソシアナト基と反応しうる官能基を有する化合物(3)を反応させて得られる化合物(A)に由来する構造単位を含み、延伸してなる位相差フィルム。

HO−L−W−L−OH (1A)
HO−W−L−W−OH (1B)

[式(1A)及び式(1B)中、W1は、炭素数8〜12の2価の橋かけ環炭化水素基又はスピロ炭化水素基を表し、該橋かけ環炭化水素基及び該スピロ炭化水素基に含まれる−CH−は、−NH−、−O−、又は−S−で置換されていてもよい。
及びLは、それぞれ独立して、単結合、又は炭素数1〜4の2価の脂肪族炭化水素基を表す。
は単結合、炭素数1〜9の2価の脂肪族炭化水素基又は炭素数3〜9の2価の脂環式炭化水素基を表す。
及びWは、それぞれ独立して、炭素数1〜3のアルキル基で置換されていてもよい炭素数5〜7の2価の脂環式炭化水素基を表す。]
【請求項2】
化合物(A)が、ジオール化合物(1)と、ポリイソシアネート化合物(2)と、ポリアミン化合物とを反応させ、次いで、エチレン性二重結合及びポリイソシアネート化合物(2)のイソシアナト基と反応しうる官能基を有する化合物を反応させて得られる化合物である請求項1記載の位相差フィルム。
【請求項3】
式(1A)で表される化合物が、式(1A−1)で表される化合物である請求項1又は2記載の位相差フィルム。
【化1】

[式(1A−1)中、A及びAは、それぞれ独立して、−CH−、−NR−、−O−、又は−S−を表す。
は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
及びnは、は、それぞれ独立して、1〜3の整数を表す。]
【請求項4】
式(1A)で表される化合物が、式(b−1)〜式(b−7)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2記載の位相差フィルム。
【化2】

【請求項5】
及びWが、ともにシクロヘキサンジイル基である請求項1又は2記載の位相差フィルム。
【請求項6】
が、単結合、及び式(1B−1)〜式(1B−5)で表される基からなる群から選ばれる1種の基である請求項1又は2記載の位相差フィルム。
【化3】

[式(1B−1)〜式(1B−5)中、*は結合手を表す。]
【請求項7】
式(1B)で表される化合物が、式(b−8)で表される化合物及び式(b−9)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜6のいずれかに記載の位相差フィルム。
【化4】

【請求項8】
ポリイソシアネート化合物(2)が、シクロヘキサン環を有する化合物である請求項1〜7のいずれかに記載の位相差フィルム。
【請求項9】
ポリイソシアネート化合物(2)が、式(a−1)〜式(a−3)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜8のいずれかに記載の位相差フィルム。
【化5】

【請求項10】
化合物(3)が、ヒドロキシ基を有するアクリレート及びヒドロキシ基を有するメタクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜9のいずれかに記載の位相差フィルム。
【請求項11】
ポリアミン化合物が、脂環式炭化水素構造を有する化合物である請求項2〜10のいずれかに記載の位相差フィルム。
【請求項12】
化合物(A)の数平均分子量が、5,000以上500,000以下であり、かつ化合物(A)のガラス転移温度が60℃以上200℃以下である、請求項1〜11のいずれかに記載の位相差フィルム。
【請求項13】
式(I)で表される化合物に由来する構造単位をさらに含む請求項1〜12のいずれかに記載の位相差フィルム。
【化6】

[式(I)中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。
は、置換基を有していてもよい炭素数6〜20の環式炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭素数4〜20の複素環基を表す。]
【請求項14】
式(I)で表される化合物が、N−ビニルカルバゾールである請求項13記載の位相差フィルム。
【請求項15】
位相差フィルムを透過する透過光の波長νnmにおける位相差値Re(ν)が、下記式を充足する請求項1〜14のいずれかに記載の位相差フィルム。
Re(450)<Re(550)<Re(650)
【請求項16】
式(1A)及び式(1B)で表される化合物からなる群から選ばれる1種以上のジオール化合物(1)と、脂環式炭化水素骨格を有するポリイソシアネート化合物(2)とを反応させ、次いで、ポリイソシアネート化合物(2)のイソシアナト基と反応しうる官能基及びエチレン性二重結合を有する化合物(3)を反応させて得られる化合物(A)、並びに、式(I)で表される化合物を含むモノマー及び式(I)で表される化合物を含むモノマーに由来する構造単位を有する樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む位相差フィルム用組成物。

HO−L−W−L−OH (1A)
HO−W−L−W−OH (1B)

[式(1A)及び式(1B)中、W1は、炭素数8〜12の2価の橋かけ環炭化水素基又はスピロ炭化水素基を表し、該橋かけ環炭化水素基及び該スピロ炭化水素基に含まれる−CH−は、−NH−、−O−、又は−S−で置換されていてもよい。
及びLは、それぞれ独立して、単結合、又は炭素数1〜4の2価の脂肪族炭化水素基を表す。
は単結合、炭素数1〜9の2価の脂肪族炭化水素基又は炭素数3〜9の2価の脂環式炭化水素基を表す。
及びWは、それぞれ独立して、炭素数1〜3のアルキル基で置換されていてもよい炭素数5〜7の2価の脂環式炭化水素基を表す。]
【化7】

[式(I)中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。
は、置換基を有していてもよい炭素数6〜20の環式炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭素数4〜20の複素環基を表す。]
【請求項17】
重合開始剤をさらに含む請求項16記載の位相差フィルム用組成物。
【請求項18】
溶剤をさらに含む請求項16又は17記載の位相差フィルム用組成物。
【請求項19】
請求項16〜18のいずれかに記載の位相差フィルム用組成物を支持体にキャストし、乾燥し、さらに延伸する位相差フィルムの製造方法。

【公開番号】特開2011−145330(P2011−145330A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−3831(P2010−3831)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】