説明

位相差板および当該位相差板を用いた立体画像表示装置

【課題】前記位相差板は、ガラス基板からなる位相差板では問題とならなかった寸法安定性、耐熱性、密着性に課題を有する。
【解決手段】透明な基板と、基板の一方の面に形成され、配向方向のパターンが基板の主面に沿った方向に周期的に配列され、異方性を有する高分子を含む配向層と、配向層の配向方向に倣って周期的に配向した液晶を含む液晶層と、を備え、透明な基板は、ノルボルネンとエチレンとの共重合体からなるシクロオレフィンコポリマーにより形成される位相差板が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相差板、および当該位相差板を用いた立体画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、画像光を出力する画像出力部と、偏光板と、位相差板とを備える立体画像表示装置が開示されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2005−91834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の立体画像表示装置に用いられていた位相差板は、主に、ガラス基板の主面に位相差機能を付与した位相差板である。しかし、ガラス基板を用いた位相差板は、寸法安定性に優れているものの、重量が重い、手扱いが難しいなどの課題を有している。これら課題を解決するために、トリアセチルセルロースやポリカーボネートからなるフィルムを基材とするフィルム基板からなる位相差板が開発されている。しかし、前記位相差板は、ガラス基板からなる位相差板では問題とならなかった寸法安定性、耐熱性、密着性に課題を有する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の態様は、ノルボルネンとエチレンとの共重合体からなるシクロオレフィンコポリマーにより形成される透明な基板と、前記基板の一方の面に形成され、配向方向のパターンが前記基板の主面に沿った方向に周期的に配列され、異方性を有する高分子を含む配向層と、前記配向層の配向方向に倣って周期的に配向した液晶を含む液晶層とを備えた位相差板、および前記位相差板を備えた立体画像表示装置である。
【0005】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】立体画像表示装置の分解斜視図である。
【図2】立体画像表示装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0008】
図1は、立体画像表示装置の分解斜視図である。図1の矢印で示すように、ユーザが位置する方向であって、画像を出射する方向を立体画像表示装置の前方とする。図1に示すように、立体画像表示装置10は、光源12と、画像出力部14と、第2粘着層の一例である粘着層44と、位相差板16と、反射防止膜18とを備えている。
【0009】
光源12は、面内において略均一な強度で、白色の無偏光を照射する。光源12は、ユーザから見て、立体画像表示装置10の最後方に配置される。光源12には、拡散板と冷陰極管(CCFL:Cold Cathode Fluorescent Lamp)とを組み合わせた光源、または、フレネルレンズと発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)とを組み合わせた光源等を適用できる。
【0010】
画像出力部14は、光源12の前方に配置されている。画像出力部14は、光源12からの光によって、画像を出力する。画像出力部14は、偏光板22と、粘着層24と、保持基板26と、光学素子28と、保持基板30と、粘着層32と、偏光板34とを備える。
【0011】
偏光板22は、光源12と、保持基板26との間に配置される。偏光板22は、PVA(ポリビニルアルコール)を含む樹脂によって構成されている。尚、偏光板22を構成する材料は適宜変更してよい。偏光板22は、粘着層24によって、光学素子28の後面に貼り付けられている。偏光板22は、水平方向から45°傾斜した透過軸と、透過軸と直交する吸収軸とを有する。これにより、光源12から出射されて、偏光板22に入射した無偏光のうち、振動方向が偏光板22の透過軸と平行な成分は透過するとともに、吸収軸と平行な成分は吸収されて遮断される。このため偏光板22から出射される光は、偏光板22の透過軸を偏光軸とする直線偏光となる。
【0012】
粘着層24は、保持基板26の後面の全面に略均一に設けられている。粘着層24には、アクリル系の粘着剤を適用できる。粘着層24は、偏光板22を保持基板26の後面に貼り付ける。
【0013】
保持基板26は、偏光板22と光学素子28との間に配置されている。保持基板26は、透明なガラス板を適用できる。尚、保持基板26は、ガラス板以外に透明な樹脂とガラスクロスとを含む透明な複合材料を用いた透明複合シートも利用することができる。これにより、立体画像表示装置10の軽量化かつ柔軟性を達成することができる。保持基板26の後面は、粘着層24を介して、偏光板22を保持する。
【0014】
光学素子28は、保持基板26と保持基板30との間に配置されて保持されている。光学素子28は、図1に「R」及び「L」で示すように、右目用の画像を生成する右目用画像生成部38と、左目用の画像を生成する左目用画像生成部40とを有する。右目用画像生成部38及び左目用画像生成部40は、水平方向に延びる矩形状に形成されている。右目用画像生成部38及び左目用画像生成部40は、鉛直方向に沿って交互に配置されている。
【0015】
光学素子28は、画像を生成する複数の画素(=ピクセル)を有する。複数の画素は、鉛直方向及び水平方向に一定のピッチで二次元に配列されている。画素は画像を扱うときの単位をいい、色調及び階調の色情報を出力する。各画素は、3個の副画素(=サブピクセル)を有する。各副画素は、液晶部と、液晶部の前後面に形成された透明電極とを有する。透明電極は液晶部に電圧を印加する。電圧が印加された副画素の液晶部は直線偏光の偏光軸を90°回転させる。各画素に含まれる3個の副画素は、それぞれ赤色のカラーフィルターと、緑色のカラーフィルターと、青色のカラーフィルターとを有する。副画素の透明電極の電圧印加を制御することにより、副画素から出射される赤色、緑色、青色の光を強めまたは弱めて、画像を形成する。
【0016】
保持基板30は、光学素子28と偏光板34との間に配置されている。保持基板26及び保持基板30は、光学素子28を挟持する。保持基板30は、透明なガラス板を適用できる。尚、保持基板30は、ガラス板以外に透明な樹脂とガラスクロスとを含む透明な複合材料を用いた透明複合シートも利用することができる。これにより、立体画像表示装置10の軽量化かつ柔軟性を達成することができる。保持基板30の前面は、粘着層32を介して、偏光板34を保持する。
【0017】
粘着層32は、保持基板30の前面の全面に略均一に設けられている。粘着層32には、アクリル系の粘着剤を適用できる。粘着層32は、偏光板34を保持基板30の前面に貼り付ける。
【0018】
偏光板34は、保持基板30と、位相差板16との間に配置されている。偏光板34は、保持基板30における光学素子28が保持される側の反対側に粘着層32により貼り付けられている。偏光板34は、PVA(ポリビニルアルコール)を含む樹脂によって構成されている。偏光板34の厚みは、薄い方が好ましい。偏光板34の厚みは、例えば、100μm〜200μmである。偏光板34は、透過軸と、透過軸と直交する吸収軸とを有する。偏光板34の透過軸は、偏光板22の透過軸と直交する。これにより、光学素子28によって偏光軸が、90°回転された直線偏光は、偏光板34を透過して画像光となり画像を形成する。一方、光学素子28によって偏光軸が回転されなかった直線偏光は、偏光板34によって遮蔽される。これにより、画像出力部14は、一の偏光を有する画像光を出力することになる。
【0019】
位相差板16は、粘着層44によって画像出力部14の偏光板34の前方に貼り付けられている。位相差板16は、同じ方向の偏光軸を有する直線偏光からなる右目用画像及び左目用画像の偏光状態を異なる偏光状態へと変調させる。位相差板16の厚みは、位相差板16の寸法変化を抑制するために、薄い方が好ましい。更に、偏光板34を薄くして、偏光板34の寸法変化を抑制することが好ましい。これにより、位相差板16の寸法変化が、より抑制される。しかし、偏光板を薄くして、厚い位相差板を硬い粘着層により偏光板に貼り付けた場合、偏光板への位相差板の寸法変化の影響が大きくなる。この結果、位相差板の寸法変化に伴って、偏光板の寸法変化が大きくなる。従って、これらのことから偏光板34を薄くすることには限界がある。これらのことを考慮すると、位相差板16の厚みは、50μm〜200μmであることが好ましい。更に、位相差板16の厚みと偏光板34の厚みとの関係において、位相差板16は、偏光板34よりも薄い方が好ましい。例えば、位相差板16の厚みが50μmであれば、偏光板34の厚みは100μm程度であることが好ましい。位相差板16は、複数対の位相差部46及び位相差部48と、透明な基板50とを有する。
【0020】
粘着層44は、偏光板34の前方の全面に略均一に設けられている。粘着層44の硬さは、粘着層32の硬さ以上である。粘着層44を構成する材料の一例は、紫外線硬化樹脂を含む材料からなる。粘着層44は、位相差部46及び位相差部48を偏光板34の前方に貼り付ける。
【0021】
位相差部46及び位相差部48は、透明な基板50の後面上に配されている。位相差部46及び位相差部48は、同一鉛直面上に配置されている。位相差部46及び位相差部48は、鉛直方向に沿って、交互に配置されている。
【0022】
位相差部46は、水平方向に延びる矩形状に形成されている。位相差部46は、光学素子28の右目用画像生成部38と略同形状である。位相差部46は、右目用画像生成部38の前方に配置されている。位相差部46は、入射する偏光の偏光状態を変調する。位相差部46は、直線偏光を円偏光に変換する1/4の波長板である。位相差部46の光学軸は、図1の位相差部46の左端に記載する矢印に示すように、鉛直方向と平行である。これにより、位相差部46は、光学軸の矢印の右側に示す矢印のように偏光板34から入射した直線偏光を右回りの円偏光に変調する。尚、光学軸は、進相軸または遅相軸である。
【0023】
位相差部48は、水平方向に延びる矩形状に形成されている。位相差部48は、光学素子28の左目用画像生成部40と略同形状である。位相差部48は、左目用画像生成部40の前方に配置されている。位相差部48は、入射する偏光の変調状態を変調する。位相差部48は、直線偏光を円偏光に変換する1/4の波長板である。位相差部48の光学軸は、図1の位相差部48の左端に記載する矢印に示すように、水平方向と平行である。これにより、位相差部48は、光学軸の矢印の右側に示すように偏光板34から入射した直線偏光を左回りの円偏光に変調する。従って、位相差部46及び位相差部48は、右目用画像及び左目用画像を構成する画像光である直線偏光を、偏光軸が互いに異なる円偏光へと変換して出力する。
【0024】
ここで、ユーザは、立体画像を見る場合、偏光眼鏡を掛ける。この偏光眼鏡の右目用レンズは、位相差部46から出射された右目用画像を構成する右回りの円偏光を透過する。一方、左目用レンズは、位相差部48から出射された左目用画像を構成する左回りの円偏光を透過する。これにより、ユーザの右目は、右目用画像生成部38から出射されて、位相差部46によって変調された円偏光のみを見る。また、ユーザの左目は、左目用画像生成部40から出射されて、位相差部48によって変調された円偏光のみを見る。この結果、ユーザは、立体画像を認識する。
【0025】
本実施形態にかかる位相差板16に用いる透明な基板50は、ノルボルネンとエチレンとの共重合比率が80:20〜90:10、MVR(メルトボリュームレート)が0.8〜2.0cm/10分、及びガラス転移温度が170〜200℃である環状オレフィンの付加(共)重合体よりなるフィルムを使用することができる。このようなフィルムを位相差板16の透明な基板50として用いることにより、寸法安定性、機械的および熱的負荷に対する耐久性、並びに密着性に優れた位相差フィルムを得ることができる。ここで、MVR(メルトボリュームレート)とは、溶融した樹脂を温度と荷重を一定にした状態でダイから押出し、10分換算での樹脂の吐出容量を計測することで樹脂の流動性を表した指標をいう。
【0026】
反射防止膜18は、位相差板16の前面に配置されている。反射防止膜18は、透明な基板50から出射された光の反射を抑制する。これにより、反射防止膜18は、外部から入射する光に影響されにくくなり、結果として高精細な立体画像を提供することができる。
【0027】
図2は、立体画像表示装置10の断面図である。図2に示すように、位相差部46は、配向層54と、液晶層56とを有する。配向層54は、透明な基板50の後面の全面にわたって形成されている。配向層54の厚みの一例は、20nm〜30nmである。配向層54は、一般に公知の配向剤として光配向性化合物を適用できる。光配向性化合物の例として、光分解型、光二量子化型、光異性型等の化合物をあげることができる。液晶層56の液晶分子は、配向層54の配向に対応して、配向される。これら配向層54及び液晶層56の配向は、上述した位相差部46及び位相差部48の光学軸に対応している。液晶層56の厚みの一例は、約1μm〜2μmである。従って、配向層54及び液晶層56の厚さは、透明な基板50、粘着層24、32、44、及び、偏光板22、34等の厚さに比べて薄い。
【0028】
次に、上述した立体画像表示装置10の動作について説明する。まず、立体画像表示装置10では、光が光源12から前方へと照射される。照射された光は、無偏光であって、鉛直面内において光量が略均一である。光は、画像出力部14の偏光板22に入射する。ここで、偏光板22は、水平方向から45°傾斜した透過軸と、透過軸と直交する吸収軸とを有する。従って、光は、偏光板22の透過軸と平行な偏光軸を有する直線偏光として、偏光板22から出射される。
【0029】
偏光板22から出射した直線偏光は、粘着層24及び保持基板26を透過して、光学素子28の右目用画像生成部38または左目用画像生成部40に入射する。光学素子28では、生成する画像に対応させていずれかの副画素に電圧が印加されている。電圧が印されている副画素を透過した直線偏光は、偏光軸が90°回転された後、光学素子28から出射される。一方、電圧が印加されていない副画素を透過した直線偏光は、偏光軸が回転されることなく、光学素子28から出射される。
【0030】
光学素子28から出射された直線偏光は、保持基板30及び粘着層32を透過した後、偏光板34に入射する。ここで、偏光板34の透過軸は、偏光板22の透過軸と直交する。従って、光学素子28によって偏光軸が90°回転された直線偏光は、偏光板34を透過する。一方、光学素子28によって偏光軸が回転されなかった直線偏光は、偏光板34によって吸収される。
【0031】
偏光板34を透過した直線偏光のうち、光学素子28の右目用画像生成部38から出射された直線偏光は位相差板16の位相差部46に入射する。位相差部46は、鉛直方向の光学軸を有する。これにより、右目用画像生成部38から出射された直線偏光は、位相差部46によって、右回りの円偏光へと変調されて、出射される。一方、偏光板34を透過した直線偏光のうち、光学素子28の左目用画像生成部40から出射された直線偏光は位相差部48に入射する。位相差部48は、水平方向の光学軸を有する。これにより、左目用画像生成部40から出射された直線偏光は、位相差部48によって、左回りの円偏光へと変調されて、出射される。
【0032】
位相差部46及び位相差部48から出射された円偏光は、透明な基板50及び反射防止膜18を透過して、立体画像表示装置10から出射される。円偏光は、ユーザが掛けている偏光眼鏡に入射する。ユーザが掛けている偏光眼鏡の右目用レンズは右回りの円偏光を透過するとともに、左目用レンズは左回りの円偏光を透過する。これにより、ユーザの右回りの円偏光が入射して、ユーザの左目には、左回りの円偏光が入射する。この結果、ユーザは立体画像を視認できる。
【0033】
次に、上述した立体画像表示装置の製造方法について説明する。まず、透明な保持基板26と保持基板30との間に保持された光学素子28を製造する。次に、保持基板26に粘着層24を塗布した後、粘着層24を介して、偏光板22を保持基板26に貼り付ける。次に、保持基板30に粘着層32を塗布した後、粘着層32を介して、偏光板34を保持基板30に貼り付ける。これにより、保持基板30における光学素子28が保持される側の反対側に粘着層32により樹脂製の偏光板34が貼り付けられる。この結果、一の偏光を有する画像光を出力する画像出力部14が完成する。
【0034】
次に、透明な基板50に配向剤を塗布し、乾燥して配向層54とする。透明な基板50はシクロオレフィンポリマーの共重合体であるシクロオレフィンコポリマー(=COC)を使用することができる。特に、ノルボルネンとエチレンとの共重合体からなるフィルムが好ましい。このような共重合体としては、TOPAS Advanced Polymers社のTOPAS6017を挙げることができる。
【0035】
次に位相差部46に対応する領域の配向層54に紫外線等の直線偏光を照射した後、位相差部48に対応する領域の配向層54に前記直線偏光の偏光軸角度に対して偏光軸角度を90°ずらした直線偏光を照射する。これにより、所定の方向に配向させた配向層54を得る。次に配向層54上に光重合性液晶組成物を塗布して、乾燥または紫外線照射により硬化させる。これにより、前記液晶組成物が配向層54の配向に沿って配向して、複数対の位相差部46及び位相差部48から成る液晶層56が透明な基板50上に形成される。この結果、入射された画像光を互いに交差する円偏光で出力する複数の位相差部46及び複数の位相差部48を有する位相差板16が完成する。
【0036】
次に、偏光板34の前面、または、位相差板16の後面に、粘着層44を塗布する。この後、粘着層44を介して、偏光板34に位相差板16を貼り付ける。この状態で、粘着層44に紫外線を照射することによって、粘着層44を硬化させる。これにより、画像出力部14の偏光板34に位相差板16の位相差部46及び位相差部48が粘着層44によって貼り付けられる。その後、反射防止膜18を位相差板16に設けるとともに、光源12を取り付けることによって、立体画像表示装置10が完成する。
【0037】
上述の実施形態では、位相差部46及び位相差部48が、互いに直交する円偏光を出力する例を示したが、互いに交差する直線偏光を出力するように構成してもよい。
【実施例1】
【0038】
透明な基板としてTOPAS6017を使用したフィルムを用意した。この透明な基板上に配向剤をスピンコーターで塗布し、乾燥して配向層を形成した。この配向層を紫外線偏光露光機でストライプ状にパターニングしたマスクを使ってプロキシミティ露光を行った。まず塗布する液晶分子の配列方向が透明な基板の長手方向に平行になるように直線偏光を照射した。次にマスクを外して、最初の露光方向と直行する方向に直線偏光を照射した。このようにして透明な基板の長手方向に平行と垂直な方向に液晶分子を配列する配向層を形成した。そして、この配向層にスピンコーターで光重合性液晶組成物を塗布して、液晶分子を配向層の各方向に倣って配列させた1/4波長板の試料を作製した。最後にこの試料を20cm角に切断して実験用位相差板とした。
【0039】
この実験用位相差板を所定のLCDモニターに粘着シートを介して、表示画素に合わせて貼合を行った。温度40℃、湿度90%の雰囲気下で24時間放置した後、3D表示を行い、2重像を目視で確認した。その結果、サンプル全面で放置前と比較して画像には大きな差は見られず、2重像は観察されなかった。さらにLCDモニターからの剥離も見られなかった。TOPAS6017を使用したフィルムからなる位相差板は、寸法安定性、耐熱性、および密着性にも優れることがわかった。
【0040】
(比較例1)
透明な基板としてトリアセチルセルロースを使用したフィルムを用意した。この透明な基板を用いて実施例1と同様の方法で20cm角の実験用位相差板を作製した。この実験用位相差板を所定のLCDモニターに粘着シートを介して、表示画素に合わせて貼合を行った。温度40℃、湿度90%の雰囲気下で24時間放置した後、3D表示を行い、同じように2重像を目視で確認した。その結果、画面の上部及び下部で2重像が観察され、適正な3D表示をすることができなかった。また、LCDモニター周辺部において、LCDモニターと位相差板との間で剥離が確認された。
【0041】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0042】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0043】
10 立体画像表示装置
12 光源
14 画像出力部
16 位相差板
18 反射防止膜
22 偏光板
24 粘着層
26 保持基板
28 光学素子
30 保持基板
32 粘着層
34 偏光板
38 右目用画像生成部
40 左目用画像生成部
44 粘着層
46 位相差部
48 位相差部
50 透明な基板
54 配向層
56 液晶層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な基板と、
前記基板の一方の面に形成され、配向方向のパターンが前記基板の主面に沿った方向に周期的に配列され、異方性を有する高分子を含む配向層と、
前記配向層の配向方向に倣って周期的に配向した液晶を含む液晶層と、
を備え、
前記透明な基板は、ノルボルネンとエチレンとの共重合体からなるシクロオレフィンコポリマーにより形成される位相差板。
【請求項2】
右目用画像を生成する右目画像生成領域および左目用画像を生成する左目画像生成領域を含む画像生成部と、
前記右目用画像を含む右目用画像光および前記左目用画像を含む左目用画像光を、偏光軸が互いに平行な直線偏光として出射する画像表示部と、
第一偏光領域および第二偏光領域を有し、前記第一偏光領域および前記第二偏光領域に前記右目用画像光および前記左目用画像光がそれぞれ入射したときに、入射した前記右目用画像光および前記左目用画像光を、偏光軸が互いに直交した直線偏光、または、偏光軸の回転方向が互いに逆方向である円偏光として出射する位相差板と
を備える立体画像表示装置であって、
前記位相差板が請求項1に記載の位相差板であることを特徴とする立体画像表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2013−37045(P2013−37045A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170702(P2011−170702)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000155698)株式会社有沢製作所 (117)
【Fターム(参考)】