説明

位相差板を製造する方法および位相差板

【課題】アスペクト比が1に近い複屈折領域を有する位相差板を製造する方法を提供する。
【解決手段】第1の走査として、ガラス基板の第1の深さ位置において、第1のレーザ光を第1の走査方向に走査して、前記ガラス基板の第1の深さ位置に、第1の走査領域を形成する工程であって、前記第1のレーザ光のオンの期間の時間平均出力値をPave1(W)とし、走査速度をS(mm/秒)としたとき、R=Pave1/(S1/2で表される指標RがR>6を満たす、工程と、第2の走査として、前記ガラス基板の第2の深さ位置において、第2のレーザ光を、前記第1のレーザ光の前記第1の走査方向とは反対向きの第2の走査方向に走査して、前記ガラス基板の第2の深さ位置に、第2の走査領域を形成する工程と、を有する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相差板を製造する方法および位相差板に関する。
【背景技術】
【0002】
光の位相や偏光を制御できる位相差板(例えば、1/2波長板または1/4波長板など)は、ブルーレイ光ピックアップ装置を含む、様々な光学機器等に使用されている。
【0003】
これまでこのような位相差板には、屈折率異方性、すなわち複屈折を有する有機高分子フィルムや一軸性結晶である水晶等が使用されてきた。
【0004】
しかしながら、従来の有機高分子フィルムは、耐湿性や高温安定性に劣るという欠点がある。また、水晶は材料自体が高価な上、正確な厚みへの切り出しや研磨等の加工コストが高いという欠点がある。そのため、耐湿性および高温安定性、低コスト性に優れるガラス基板を用いて、位相差板を製造する方法が提案されている。例えば、特許文献1には、レーザ光を使用して、ガラス基板内に、帯状の複屈折領域を形成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第WO2008/126828号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の特許文献1の方法では、レーザ光をガラス基板に照射し、これを走査することにより、ガラス基板内に、帯状の複屈折領域を形成することができる。
【0007】
しかしながら、本願発明者らは、同様の技術を用いて、複屈折領域の縦横の比、すなわち「アスペクト比」が1に近い位相差板を製造しようとした場合、レーザ光の走査領域に、位相差が生じなくなるという問題が生じることを見出した。
【0008】
ここで、「アスペクト比」は、レーザ光の走査領域において、走査方向と平行な方向の寸法を全長とし、走査方向と垂直な方向の寸法を幅としたとき、全長を幅で除した値で表される。
【0009】
この問題は、走査領域が1に近いアスペクト比を有する場合、レーザ光の走査条件によっては、走査方向における残留引張応力と幅方向における残留引張応力とがほぼ等しくなることがあり、これにより生じるものと考えられる。すなわち、走査領域において、走査方向における残留引張応力と幅方向における残留引張応力とがほぼ同等である場合、そのような領域は、光学的には等方的な応力分布と見なされるため、異方性(すなわちリタデーション)が発現しなくなるものと思われる。
【0010】
本発明は、このような背景に鑑みなされたものであり、本発明では、アスペクト比が1に近い複屈折領域を有する位相差板を製造する方法を提供することを目的とする。また、本発明では、アスペクト比が1に近い複屈折領域を有する位相差板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では、ガラス基板内に複屈折領域を有する位相差板を製造する方法であって、
(a)ガラス基板を準備する工程と、
(b)第1の走査として、前記ガラス基板の第1の深さ位置において、第1のレーザ光を第1の走査方向に走査して、前記ガラス基板の第1の深さ位置に、第1の走査領域を形成する工程であって、
前記第1の走査領域は、前記第1の走査方向と平行な方向の寸法を第1の全長とし、前記第1の走査方向と垂直な方向の寸法を第1の幅としたとき、第1の全長を第1の幅で除した値で表されるアスペクト比が0.5〜2.0であり、
前記第1のレーザ光のオンの期間の時間平均出力値をPave1(W)とし、走査速度をS(mm/秒)としたとき、

=Pave1/(S1/2 (1)式

で表される指標RがR>6を満たす、工程と、
(c)第2の走査として、前記ガラス基板の第2の深さ位置において、第2のレーザ光を、前記第1のレーザ光の前記第1の走査方向とは反対向きの第2の走査方向に走査して、前記ガラス基板の第2の深さ位置に、第2の走査領域を形成する工程であって、
前記第2の走査領域は、前記第2の走査方向と平行な方向の寸法を第2の全長とし、前記第2の走査方向と垂直な方向の寸法を第2の幅としたとき、第2の全長を第2の幅で除した値で表されるアスペクト比が0.5〜2.0であり、
前記第2の走査における前記第2のレーザ光のオンの期間の時間平均出力値Pave2および走査速度Sは、それぞれ、前記第1のレーザ光のオンの期間の時間平均出力値Pave1および走査速度Sと実質的に等しく、
前記ガラス基板を厚さ方向と平行な方向から見たとき、前記第1および第2の走査領域は、実質的に重なり合う、工程と、
を有することを特徴とする方法が提供される。
【0012】
また、本発明による方法において、
前記第1のレーザ光は、複数の分岐レーザ光で構成され、各分岐レーザ光のスポットは、前記第1の走査方向と垂直な方向に沿って、直線状に配列され、および/または
前記第2のレーザ光は、複数の分岐レーザ光で構成され、各分岐レーザ光のスポットは、前記第2の走査方向と垂直な方向に沿って、直線状に配列されても良い。
【0013】
また、本発明による方法において、前記第1および/または第2のレーザ光の出力波形は、ステップ状の平坦部を有しても良い。
【0014】
また、レーザ出力は変調されていても良い。
【0015】
さらに、本発明では、ガラス基板内に、レーザ光の走査によって形成された複屈折領域を有する位相差板であって、
前記複屈折領域は、レーザ光の走査方向と平行な方向の寸法を全長とし、前記走査方向と垂直な方向の寸法を幅としたとき、全長を幅で除した値で表されるアスペクト比が0.5〜2.0の範囲であることを特徴とする位相差板が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、アスペクト比が1に近い複屈折領域を有する位相差板を製造する方法を提供できる。また、本発明では、アスペクト比が1に近い複屈折領域を有する位相差板を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】特許文献1に記載された位相差板の製造方法を概略的に示した図である。
【図2】従来の方法で走査された、アスペクト比が1に近い走査領域におけるリタデーション分布の測定結果の一例を示したグラフである。
【図3】ガラス基板の深さ位置が異なる領域に、相互に反対向きにレーザ光走査を行った際に生じる、残留引張応力の分布を模式的に示した図である。
【図4】本発明による位相差板の製造方法の一例の概略的なフロー図である。
【図5】本発明による位相差板の製造方法における各工程でのガラス基板の状態を模式的に示した図である。
【図6】本発明による位相差板の製造方法に利用される装置の一構成例を示した図である。
【図7】各分岐ビームの出力波形の一例を概略的に示した図である。
【図8】本発明による製造方法で製造された位相差板を備える光ピックアップ装置の一例の概略図である。
【図9】実施例1において使用した、レーザ光の出力波形を示した図である。
【図10】実施例2のガラス基板のリタデーション分布を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明について説明する。
【0019】
図1には、特許文献1に記載された位相差板の製造方法の概念図を示す。
【0020】
図1に示すように、この方法では、レンズ3を介して、ガラス基板1にレーザ光2が照射される。レーザ光2を図1のY方向に沿って走査させることにより、ガラス基板1内に、帯状の複屈折領域4を形成できる。
【0021】
しかしながら、本願発明者らは、同様の技術を用いて、複屈折領域の全長と幅の比、すなわち「アスペクト比」が1に近い位相差板を製造しようとした場合、レーザ光2の走査領域に、位相差が生じなくなる場合があることを見出した。
【0022】
図2には、アスペクト比が1に近い走査領域におけるリタデーション分布の測定結果の一例を示す。走査速度は、4mm/秒であり、走査領域の寸法は、約1.5mm×約1.5mmである。なお、リタデーション分布の測定は、レーザ光の走査方向と平行な方向において実施した。
【0023】
図2に示すように、この走査領域には、リタデーションがほとんど認められないことがわかる。
【0024】
この問題は、走査領域が1に近いアスペクト比を有する場合、レーザ光の走査条件によっては、走査方向における残留引張応力と幅方向における残留引張応力とがほぼ等しくなることがあり、これにより生じるものと考えられる。すなわち、走査領域において、走査方向における残留引張応力と幅方向における残留引張応力とがほぼ同等である場合、そのような領域は、光学的には等方的な応力分布と見なされるため、異方性(すなわちリタデーション)が発現しなくなるものと思われる。
【0025】
本願発明者らは、以上のような問題に対処するため、レーザ光の走査条件と、レーザ光の走査によってガラス基板内に生じる残留応力との間の関係について、様々な検討を行ってきた。
【0026】
その結果、走査領域のアスペクト比が1に近い場合であっても、
(i)レーザ光の出力と、レーザ光の走査速度とを適正に制御し、
(ii)ガラス基板内の異なる深さ位置で、相互に反対向きにレーザ光走査を行う
という対応を採用することにより、ガラス基板内に所望の複屈折領域が形成されることを見出し、本発明に至った。
【0027】
以下、対応(i)および(ii)について、詳しく説明する。
【0028】
まず、(i)については、本願発明者らの研究により、レーザ光の出力およびレーザ光の走査速度が、残留応力の分布に大きな影響を及ぼすことが明らかとなった。このため、本発明では、レーザ光の出力およびレーザ光の走査速度を、指標Rを用いて調整する。
【0029】
すなわち、レーザ光のオンの期間の時間平均出力値をPave(W)とし、走査速度をS(mm/秒)としたとき、指標Rは、

R=Pave/(S)1/2 (1)式

で表される。また、この指標RをR>6として、レーザ光の走査を行うことにより、走査領域に、比較的方向が揃った残留引張応力分布を発生させることができる。すなわち、位相差(リタデーション)が誘起できる。
【0030】
ここで、レーザ光のオンの期間の時間平均出力値Paveは、以下のように定められる。レーザ光の出力が連続的で一定値Pを有する場合、レーザ光のオンの期間の時間平均出力値Paveは、この一定値Pを意味する。一方、レーザ光がオン/オフの繰り返し波形を有する場合、レーザ光のオンの期間の時間平均出力値Paveとは、文字通り、各波形のオンの期間における出力の時間平均値を意味する。
【0031】
また、主レーザ光が分岐されてガラス基板に照射される場合、すなわち、ガラス基板に複数の分岐レーザ光が照射される場合(以降の図6参照)、レーザ光のオンの期間の時間平均出力値Paveとは、分岐された後の各レーザ光のオンの期間の時間平均出力値の総和を意味する。従って、この場合、分岐レーザ光の総数をnとすると、
【0032】
【数1】

である。ここで、Pは、各レーザ光(第1の分岐レーザ光〜第nの分岐レーザ光)のオンの期間の時間平均出力値である(ただしiは、1〜nの整数)。
【0033】
次に、(ii)については、ガラス基板の深さ位置が異なる2つの領域において、レーザ光走査を行う。この際に、2回目の走査を、1回目の走査の方向に対して反対向きとなるように実施する。
【0034】
これにより、走査領域全体として、引張応力が走査方向に揃うようになり、複屈折軸を揃えることが可能になる。
【0035】
なお、2回のレーザ光走査に関して、レーザ照射をガラスの同一面側から照射する場合、1回目の走査は、2回目の走査よりも深い位置で行う方が、2回目の走査においてレーザビームの波面乱れを誘発しないので好ましい。また、1回目の走査と2回目の走査をそれぞれガラス基板の異なる面から実施しても良い。
【0036】
図3には、ガラス基板の深さ位置が異なる領域に、相互に反対向きにレーザ光走査を行った際に生じる、残留引張応力の分布を模式的に示す。なお、このような残留応力の分布は、例えば、Cri社製のAbrio測定器のような複屈折イメージングシステムを用いた進相軸方向の測定結果をもとに、容易に判断することができる。
【0037】
まず、前述の(1)式を満たす条件で、ガラス基板の第1の深さ位置において、第1の方向(Y方向)にレーザ光を走査する(第1の走査)。これにより、ガラス基板の第1の深さ位置の走査領域には、図3(a)に示すような残留引張応力分布が生じる。
【0038】
なお、この段階では、必ずしも、残留引張応力の分布が一方向に完全に整列された状態になっている必要はない。例えば、図3(a)に示した例では、走査領域の外周側には、レーザ光走査方向(Y方向)とは非平行な方向の残留引張応力が生じている。
【0039】
次に、前述の第1の走査と実質的に同等の条件で、ガラス基板の第2の深さ位置において、第1の方向とはちょうど逆向きの第2の方向に沿ってレーザ光を走査させる(第2の走査)。この走査によって、ガラス基板の第2の深さ位置の走査領域には、Y方向に対して図3(a)とは鏡面対称な分布、すなわち図3(b)に示すような残留引張応力分布が生じる。
【0040】
その結果、ガラス基板を厚さ方向から見た場合、図3(c)に示すように、両走査の影響が足し合わされて、全体としては、引張応力が走査方向(Y方向)に揃うようになり、異方性軸の方向が揃うようになる。従って、この操作により、走査領域全体として、複屈折軸を揃えることができる。
【0041】
このように、本発明では、対応(i)および(ii)を採用したため、これまで製造することが難しかった、アスペクト比が1に近い複屈折領域を有する位相差板を製造することができる。
【0042】
(本発明による位相差板の製造方法)
以下、図4および図5を参照して、本発明による位相差板の製造方法について、より詳しく説明する。
【0043】
図4には、本発明による位相差板の製造方法の一例の概略的なフロー図を示す。また、図5には、本発明による位相差板の製造方法における各工程でのガラス基板の状態を模式的に示す。
【0044】
図4に示すように、本発明による位相差板の製造方法は、
(a)ガラス基板を準備する工程(ステップS110)と、
(b)第1の走査として、前記ガラス基板の第1の深さ位置において、第1のレーザ光を第1の走査方向に走査して、前記ガラス基板の第1の深さ位置に、第1の走査領域を形成する工程(ステップS120)と、
(c)第2の走査として、前記ガラス基板の第2の深さ位置において、第2のレーザ光を、前記第1のレーザ光の前記第1の走査方向とは反対向きの第2の走査方向に走査して、前記ガラス基板の第2の深さ位置に、第2の走査領域を形成する工程(ステップS130)と、
を有する。
【0045】
以下、図5と関連付けて、本発明による製造方法の各工程を詳しく説明する。
【0046】
(ステップS110)
まず、図5(a)に示すように、位相差板を構成するためのガラス基板110が準備される。
【0047】
ガラス基板110は、第1の表面112および第2の表面114を有する。ガラス基板110の組成は、特に限られない。ガラス基板110は、例えば、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、およびシリカガラス等であっても良い。また、本発明では、使用するレーザ光の波長における吸収係数を高めるため、遷移金属などがドープされたガラスをガラス基板110として使用しても良い。
【0048】
ガラス基板110の厚さは、特に限られない。ガラス基板110の厚さは、例えば、0.1mm〜3mmの範囲であっても良い。
【0049】
(ステップS120)
次に、図5(b)に示すように、ガラス基板110の第1の深さ位置Z1において、第1のレーザ光走査が行われる。第1の深さ位置Z1は、ガラス基板110の第1の表面112から距離d1の位置にある。
【0050】
第1のレーザ光走査は、第1のレーザ光120を、第1の走査方向Y1(Y方向)に沿って走査することにより行われ、これにより、ガラス基板110の第1の深さ位置Z1に、第1の走査領域130が形成される。
【0051】
ここで、第1のレーザ光走査は、第1のレーザ光120のオンの期間の時間平均出力値をPave1(W)とし、走査速度をS(mm/秒)としたとき、

=Pave1/(S1/2 (3)式

で表される指標Rが、R>6を満たす条件で実施される。
【0052】
これにより、第1の走査領域130のアスペクト比が0.5〜2.0の範囲であっても、走査領域130に、比較的方向が揃った残留引張応力分布を発生させることができる。
【0053】
(ステップS130)
次に、図5(c)に示すように、ガラス基板110の第2の深さ位置Z2において、第2のレーザ光走査が行われる。第2の深さ位置Z2は、ガラス基板110の第1の表面112から距離d2の位置にある。このとき、第2のレーザ光走査は、第1のレーザ光走査よりも浅い位置で実施すると、第1のレーザ光走査で誘起された複屈折領域の影響を受けることなく、第2のレーザ光走査が可能となる。
【0054】
第2のレーザ光走査は、第2のレーザ光140を、第2の走査方向Y2(Y方向)に沿って走査することにより行われ、これにより、ガラス基板110の第2の深さ位置Z2に、第2の走査領域150が形成される。
【0055】
ここで、第2のレーザ光走査は、ガラス基板110を厚さ方向から見たとき、第2の走査領域150が第1の走査領域130と実質的に重なり合うようにして実施される。従って、第2の走査領域150は、第1の走査領域130と同様、アスペクト比が0.5〜2.0の範囲であっても良い。
【0056】
また、第2のレーザ光走査では、第2のレーザ光走査における第2のレーザ光140のオンの期間の時間平均出力値Pave2および走査速度Sが、それぞれ、第1のレーザ光120のオンの期間の時間平均出力値Pave1および走査速度Sと実質的に等しくなるようにして実施される。ただし、ガラス基板110のレーザ波長に対する吸収係数が高い場合や、集光レンズがガラス内部集光状態で収差補正されていない場合には、第2のレーザ光140のオンの期間の時間平均出力値Pave2は、第1のレーザ光走査における時間平均出力Pave1よりも低い出力であることが好ましい。
【0057】
第2のレーザ光140のオンの期間の時間平均出力値Pave2および走査速度Sを用いて、以下の式(4)で表される指標Rは、R>6を満たす:

=Pave2/(S1/2 (4)式

ただし、第2のレーザ光走査は、第2のレーザ光140の走査方向(第2の走査方向)Y2が、第1のレーザ光走査における第1の走査方向Y1と、ちょうど逆向きの関係となるようにして実施される。
【0058】
これにより、前述の図3に示した原理により、(ステップS120)で形成した第1の深さ位置Z1における走査領域130と、(ステップS130)で形成した第2の深さ位置Z2における走査領域150とが組み合わされ、全体として、図5のY方向に沿った方向に、残留引張応力の方向を整列させることが可能になる。また、これにより、Y方向に揃った複屈折軸を発現させることが可能となり、ガラス基板120内に複屈折領域190を構成することができる。
【0059】
このように、本発明による位相差板の製造方法では、走査領域130、150のアスペクト比が0.5〜2.0の範囲であっても、ガラス基板120の所望の位置に、複屈折領域190を構成することができる。
【0060】
なお、図5(c)において、第2のレーザ光走査は、ガラス基板110に対して、第1のレーザ光走査の場合と同じ側、すなわち第1の表面112の側から行われる。しかしながら、これは必須ではなく、第2のレーザ光走査は、ガラス基板110の第2の表面114の側から行われても良い。この場合、第2のレーザ光走査を行うガラス基板110の第2の表面114からの距離d2は、ガラス基板110の厚さから第1のレーザ光走査を行うガラス基板110の表面112からの距離d1を引いた値よりも小さくすることが好ましい。
【0061】
(本発明による位相差板の製造方法に使用され得る装置)
次に、図6を参照して、本発明による位相差板の製造方法に使用され得る装置について、簡単に説明する。
【0062】
図6には、本発明による位相差板の製造方法に利用される装置の一例を示す。
【0063】
図6に示すように、本発明による位相差板の製造方法に利用される装置200は、レーザ光源(図示されていない)から放射された主レーザ光220と、該主レーザ光220を複数の分岐レーザ光260A、260B、260Cに分岐する回折光学素子250と、各分岐レーザ光260A、260B、260Cをガラス基板210の所望の位置に収束させるレンズ230とを備える。
【0064】
レーザ光源は、特に限られないが、エキシマレーザ光源(XeCl:波長308nm、KrF:波長248nm、ArF:波長193nm)、YAGレーザ光源(波長1064nm)、YVO4レーザ光源(波長1064nm)、チタンサファイアレーザ光源(波長800nm)、または炭酸ガスレーザ光源(波長10.6μm)等であっても良い。YAGレーザ光源およびYVO4レーザ光源は、前述の基本波の他に、例えば、2倍波または3倍波のレーザ源であっても良い。例えば、2倍波のYAGレーザは、532nmの波長を有し、3倍波のYAGレーザは、355nmの波長を有する。
【0065】
主レーザ光源の出力は、特に限られないが、主レーザ光源のパワーが大きいほど、一度に多くの分岐レーザ光を得ることができるため有利である。
【0066】
なお、主レーザ光220は、オン/オフの繰り返し波形、または変調された繰り返し波形を有しても良い。
【0067】
回折光学素子250は、一つの主レーザ光220を複数の分岐レーザ光260A、260B、260Cに分割することができる素子であれば、いかなる素子であっても良く、例えば、回折光学素子の代わりにビームスプリッタ等を使用しても良い。
【0068】
このような構成の装置200を用いて位相差板を製造する際には、まず、レーザ光源からガラス基板210に向かって、主レーザ光220が放射される。主レーザ光220は、回折光学素子250において、例えば、3つ以上の分岐レーザ光260(260A、260B、260C)に分岐される。
【0069】
各分岐レーザ光260A、260B、260Cは、レンズ230によって収束され、ガラス基板210の内部に、それぞれ、焦点270A、270B、270Cを形成する。各焦点270A、270B、270Cは、一直線状に配置される。
【0070】
各焦点270A、270B、および270Cのスポット直径は、レンズ230等の性能等によっても異なるが、例えば、0.1μm〜100μm程度であっても良い。
【0071】
各焦点270A、270B、および270Cの間隔は、特に限られないが、装置構成上の制約から、現実的な間隔は、20μm〜400μmの範囲であり、50μm〜250μmの範囲であることが好ましい。
【0072】
次に、一連の分岐レーザ光260A、260B、260Cは、第1の方向(図6の例ではY方向)に走査される。
【0073】
前述のように、各分岐レーザ光260A、260B、260Cの走査速度は、(1)式および(2)式を満たすように選定される。すなわち、各分岐レーザ光のオンの期間の時間平均出力値をP〜Pとし、分岐レーザ光260A、260B、260Cの走査速度をS(mm/秒)としたとき、走査速度Sは、(1)式で表される指標RがR>6を満たすようにして選定される。
【0074】
前述の関係を満たす限り、各分岐ビーム260A、260B、260Cの走査速度は、特に限られない。各分岐ビーム260A、260B、260Cの走査速度は、例えば、0.1mm/秒〜10mm/秒の範囲であっても良い。
【0075】
これにより、分岐ビーム260A、260B、260Cが走査された領域には、図3(a)に示したような残留引張応力の分布が発生する。
【0076】
同様の操作を、ガラス基板210の深さ位置を変えて実施する。ただし、2回目の各分岐ビーム260A、260B、260Cの走査は、1回目の走査方向とは逆向きに実施される。これにより、ガラス基板210内に複屈折領域を形成することができる。
【0077】
なお、図6の例では、回折光学素子250によって、一つのレーザ光220は、3つの分岐ビーム260A、260B、260Cに分割されている。しかしながら、一つのレーザ光220は、回折光学素子250によって、2つまたは4つ以上の分岐ビームに分割されても良い。あるいは、装置200は、回折光学素子250を有さなくても良い。この場合、一つのレーザ光220が分岐されずに、そのまま走査用のレーザ光として使用される。
【0078】
すなわち、本発明において、使用されるレーザ光220の分岐数は、いかなる本数であっても良い。分岐の数は、例えば、レーザ光の走査方向に対して垂直な方向(図6のX方向)における複屈折領域の必要幅、あるいは製作時間等を考慮して、適宜選定される。
【0079】
また、各分岐ビーム260A、260B、260Cの出力波形は、特に限られない。各分岐ビーム260A、260B、260Cの出力波形は、例えば、オン/オフ(ステップ)の繰り返し波形、または変調された繰り返し波形を有しても良い。
【0080】
特に、各分岐ビーム260A、260B、260Cの出力波形として、例えば図7に示すような繰り返し波形、すなわち、時間的にオンの後方で出力が大きくなるような波形を使用した場合、複屈折領域の走査方向に沿ったリタデーションの変化を小さくすることができる(例えば±5%以内)。これにより、複屈折領域内に、均一なリタデーション分布を有する位相差板を製造することが可能になる。
【0081】
なお、図7において、一つの波形Vの期間Tonは、0.05秒〜20秒の範囲であっても良い。また、各波形Vにおいて、第1の平坦部の出力Pは、例えば、1W〜20Wであり、最大出力Pmaxは、例えば、2W〜30Wの範囲であっても良い。さらに、第1の平坦部の期間Tは、例えば0.04秒〜18秒の範囲であっても良い。なお、波形Vにおいて、第1の平坦部から最大値まで出力の変化は、単純な直線関係である必要はなく、出力は、例えば指数関数的に増加しても良い。
【0082】
その他にも、各種繰り返し波形が考慮される。
【0083】
(本発明による位相差板の適用例)
前述の方法で製造された位相差板は、光ピックアップ装置用の1/4波長板および/または1/2波長板として利用することができる。
【0084】
図8には、そのような光ピックアップ装置の概略図を示す。
【0085】
図8において、光ピックアップ装置1000は、例えば青色LD(波長405nm)のようなレーザ光源1010と、1/2波長板1020と、偏光ビームスプリッタ1030と、1/4波長板1050と、ブルーレイディスクのような光記録媒体1070と、フォトダイオード1090とを備える。
【0086】
なお、光記録媒体1070は、CDまたはDVDのような光記録媒体であっても良い。この場合、レーザ光源1010は、波長780nm(CDの場合)または波長650nm(DVDの場合)の光源であっても良い。
【0087】
1/2波長板1020は、特定波長(例えば、青色レーザ光の場合405nm)の直交する2つの偏光成分の間に、λ/2の光路差( すなわちπの位相差)を与えるための部材である。1/4波長板1050は、特定波長(例えば、青色レーザ光の場合405nm)の直交する2つの偏光成分の間に、λ/4の光路差( すなわちπ/2の位相差)を与えるための部材である。
【0088】
光ピックアップ装置1000において、レーザ光源1010から放射された直線偏光(紙面平行)の光1012は、1/2波長板1020を通り、ここで直線偏光の偏光面が回転される。光1012は、さらに、偏光ビームスプリッタ1030およびコリメートレンズ1040を通り、1/4波長板1050の方に誘導される。
【0089】
1/4波長板1050を通過した光1012は、ここで直線偏光から円偏光に偏光された後、対物レンズ1060により光記録媒体1070に照射される。
【0090】
次に、光記録媒体1070から反射された光1013は、同じ光路を通り、1/4波長板1050の方に誘導される。ここで光1013は、直線偏光(紙面垂直)に偏光され、その後、偏光ビームスプリッタ1030に照射され、レンズ1080を介してフォトダイオード1090に誘導される。フォトダイオード1090により、光記録媒体1070の情報が読み取られる。
【0091】
ここで、1/2波長板1020および/または1/4波長板1050は、本発明による方法で製造された位相差板で構成されても良い。すなわち、1/2波長板1020および/または1/4波長板1050は、1に近いアスペクト比を有する複屈折領域を有しても良い。
【実施例】
【0092】
次に、本発明による実施例について説明する。
【0093】
(実施例1)
まず、レーザ光照射の際のレーザ光出力および走査速度が、走査領域の複屈折特性に及ぼす影響を評価した。
【0094】
評価は、レーザ光出力とレーザ光の走査速度を変化させて、ガラス基板(厚さ1mm)に、レーザ光を照射し、これによって得られた、アスペクト比が約1の走査領域のリタデーションを測定することにより、実施した。なお、レーザ光の照射は、ガラス基板の表面からの深さが300μmの位置でのみ実施した。
【0095】
リタデーション測定には、Cri社製の複屈折イメージングシステムAbrioを使用した。この方法では、サンプルの前方に光源と円偏光フィルタとを配置し、サンプルの後方に楕円偏光解析器とCCDカメラとを配置した構成が使用される。この構成において、楕円偏光解析器内の液晶光学素子の状態を変化させ、楕円偏光解析器を通過した複数の画像をCCDカメラで取得し、これらの画像を比較計算することにより、発生したリタデーションを定量化することができる。
【0096】
照射するレーザ光には、レーザ光源からの主レーザ光を回折光学素子によって9分岐させたものを使用した。また、主レーザ光の出力波形には、図9に示すようなステップ状の波形のものを使用した。図9において、主レーザ光の最大出力値Pmaxを8W〜20Wの範囲で変化させた。従って、各分岐レーザ光の最大出力値は、それぞれ、この1/9となる。
【0097】
また、各分岐レーザ光の走査速度は、0.4mm/秒〜8mm/秒の間で変化させた。なお、全ての照射例において照射領域のアスペクト比がおよそ1になるように、照射期間Tonは、(1.6mm/走査速度)秒とし、オフの期間ToffもTonと同一とした。
【0098】
表1には、各実験(実験1〜実験22)において得られたリタデーションの測定結果をまとめて示す。なお、表1において、リタデーション欄の「−」は、観測できるほどのリタデーションが発生しなかったことを表す。
【0099】
【表1】

この結果から、主レーザ光の最大出力値Pmaxが大きくなるほど、また各分岐レーザ光の走査速度Sが小さくなるほど、走査領域において、特定の方向(走査方向に沿った方向)の残留応力が大きくなるため、リタデーションが発生しやすくなる傾向にあることがわかる。
【0100】
また、図9に示す波形Vにおいて、各分岐レーザ光のオンの期間の時間平均出力値の総和をPaveとし(前述の(2)式参照)、各分岐レーザ光の走査速度をS(mm/秒)としたとき、

R=Pave/(S)1/2 (1)式

で表される指標Rを、R>6とした場合、走査領域にリタデーションを発生させることができることがわかる。
【0101】
同様の評価を、分岐レーザ光の数および回折光学素子の種類を変えて実施したが、何れの場合もほぼ同様の結果が得られた。
【0102】
以上のことから、(1)式および(2)式で表される指標Rを使用して、指標RがR>6となるように、各分岐レーザ光の出力と走査速度を制御することにより、走査領域に、リタデーションを発現させ易くなることがわかった。
【0103】
(実施例2)
図6に示したような装置を用いて、以下の手順で位相差板を製作した。
【0104】
まず、板厚が1mmのガラス基板(ショット製B270)を準備した。
【0105】
次に、以下の手順で第1の走査を行った。
【0106】
レーザ光源として、波長が355nmのコヒレント製AVIA355−28を使用した。主レーザ光は、回折光学素子により、9つの分岐レーザ光に分岐させた。各分岐レーザ光の焦点は、レンズにより、ガラス基板の上面から深さ約300μmの位置に合わせた(理論スポット直径0.5μm)。なお、各分岐レーザ光の焦点は、直線状に配置され、ガラス基板内での各焦点同士の間隔は、150μmであった。
【0107】
この深さ位置において、一連の分岐レーザ光を、第1の方向に走査して照射し、ガラス基板内に第1の走査領域を形成した。
【0108】
各分岐レーザ光の出力波形は、前述の図7に示す形態とした。ここで、各分岐レーザ光の第1の平坦部の出力値Pは、12Wとし、期間Tは、約1.3秒とした。また、各分岐レーザ光の出力最大値Pmaxは、14Wとし、期間Tonは、2secとした。平坦部の出力値Pから出力最大値Pmaxまでの変化は、指数関数とした。この場合、各分岐レーザ光のオンの期間の時間平均出力値の総和で表されるPaveは、12.3Wとなる。なお、2つのオンの間のオフの期間Toffは、1secとした。
【0109】
走査速度Sは、1mm/秒とした。従って、(1)式で表される指標Rは、

R=12.3(W)/(1(mm/秒))1/2=12.3

となり、R>6を満たす。
【0110】
これにより、ガラス基板内に、長さ(走査方向と平行な方向の全長)約1.1mm×幅(走査方向と垂直な方向の全長)約1.2mmの、第1の走査領域が形成された。第1の走査領域のアスペクト比は、1.7である。
【0111】
次に、同様の手順で、第2の走査を行った。
【0112】
ただし、第2の走査は、ガラス基板の下面側から実施した。また、第2の走査は、ガラス基板の下面から深さ約300μmの位置で実施した。また、各分岐レーザ光の走査方向は、第1の走査の場合とは反対の方向とした。その他の条件は、第1の走査の場合と同様である。
【0113】
これにより、ガラス基板の第1の走査領域の下側に、第2の走査領域が形成された。ガラス基板の厚さ方向から見たとき、第1および第2の走査領域は、重なるように構成された。
【0114】
図10には、得られたガラス基板のリタデーション分布の測定結果の一部を示す。この図は、レーザ光の走査方向と平行な方向において測定した結果である。
【0115】
図10から、位置約1500μm〜約2600μmの範囲、すなわち、第1および第2の走査領域に相当する領域に、リタデーションの平坦部が形成されていることがわかる。また、この領域では、リタデーションの値は、約100nm以上となっており、極めて大きなリタデーションが得られることがわかった。
【0116】
(比較例1)
図6に示したような装置を用いて、以下の手順で位相差板を製作した。
【0117】
まず、板厚が1mmのガラス基板(ショット製B270)を準備した。
【0118】
次に、以下の手順でレーザ光の走査を行った。
【0119】
レーザ光源として、波長が355nmのコヒレント製AVIA−Xを使用した。主レーザ光は、回折光学素子により、9つの分岐レーザ光に分岐させた。各分岐レーザ光の焦点は、レンズにより、ガラス基板の上面から深さ約300μmの位置に合わせた(理論スポット直径0.5μm)。なお、各分岐レーザ光の焦点は、直線状に配置され、ガラス基板内での各焦点同士の間隔は、150μmであった。
【0120】
この深さ位置において、一連の分岐レーザ光を、第1の方向に走査して照射し、ガラス基板内に走査領域を形成した。
【0121】
各分岐レーザ光の出力波形は、前述の図9に示すようなステップ状の形態とした。ここで、各分岐レーザ光の最大出力値Pmaxは、12Wとし、期間Tonは、0.5秒とした。従って、この場合、各分岐レーザ光のオンの期間の時間平均出力値の総和で表されるPaveは、12Wとなる。なお、2つのオンの間のオフの期間Toffは、0.5秒とした。
【0122】
走査速度Sは、4mm/秒とした。従って、比較例1では、(1)式で表される指標Rは、

R=12(W)/(4(mm/秒))1/2=6

であり、R>6を満たさない。
【0123】
これにより、ガラス基板内に、長さ(走査方向と平行な方向の全長)1.5mm×幅(走査方向と垂直な方向の全長)1.2mmの走査領域が形成された。走査領域のアスペクト比は、おおよそ1.3である。
【0124】
前述の図2には、比較例1のガラス基板のリタデーション分布の測定結果を示す。この図は、レーザ光の走査方向と平行な方向において測定した結果である。
【0125】
図2に示すように、比較例1のガラス基板の場合、走査領域には、リタデーションがほとんど認められないことがわかる。従って、比較例1のガラス基板の走査領域には、適正な複屈折領域が形成されていないと言える。
【0126】
このように、本発明による方法で得られた位相差板では、走査領域に適正な複屈折領域が形成されることがわかった。特に、レーザ光の出力波形を適正に選択することにより、走査領域に、大きなリタデーションが得られるとともに、比較的均一なリタデーション分布が得られることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明は、位相差板、1/2波長板、1/4波長板、光ピックアップ素子、およびアイソレータ等の光学部品に適用することができる。
【符号の説明】
【0128】
1 ガラス基板
2 レーザ光
3 レンズ
4 複屈折領域
110 ガラス基板
112 第1の表面
114 第2の表面
120 第1のレーザ光
130 第1の走査領域
140 第2のレーザ光
150 第2の走査領域
190 複屈折領域
200 装置
210 ガラス基板
220 主レーザ光
230 レンズ
250 回折光学素子
260A、260B、260C 分岐レーザ光
270A、270B、270C 焦点
1000 光ピックアップ装置
1010 レーザ光源
1012、1013 光
1020 1/2波長板
1030 偏光ビームスプリッタ
1050 1/4波長板
1070 光記録媒体
1090 フォトダイオード
V 波形
Z1 第1の深さ位置
Z2 第2の深さ位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板内に複屈折領域を有する位相差板を製造する方法であって、
(a)ガラス基板を準備する工程と、
(b)第1の走査として、前記ガラス基板の第1の深さ位置において、第1のレーザ光を第1の走査方向に走査して、前記ガラス基板の第1の深さ位置に、第1の走査領域を形成する工程であって、
前記第1の走査領域は、前記第1の走査方向と平行な方向の寸法を第1の全長とし、前記第1の走査方向と垂直な方向の寸法を第1の幅としたとき、第1の全長を第1の幅で除した値で表されるアスペクト比が0.5〜2.0であり、
前記第1のレーザ光のオンの期間の時間平均出力値をPave1(W)とし、走査速度をS(mm/秒)としたとき、

=Pave1/(S1/2 (1)式

で表される指標RがR>6を満たす、工程と、
(c)第2の走査として、前記ガラス基板の第2の深さ位置において、第2のレーザ光を、前記第1のレーザ光の前記第1の走査方向とは反対向きの第2の走査方向に走査して、前記ガラス基板の第2の深さ位置に、第2の走査領域を形成する工程であって、
前記第2の走査領域は、前記第2の走査方向と平行な方向の寸法を第2の全長とし、前記第2の走査方向と垂直な方向の寸法を第2の幅としたとき、第2の全長を第2の幅で除した値で表されるアスペクト比が0.5〜2.0であり、
前記第2の走査における前記第2のレーザ光のオンの期間の時間平均出力値Pave2および走査速度Sは、それぞれ、前記第1のレーザ光のオンの期間の時間平均出力値Pave1および走査速度Sと実質的に等しく、
前記ガラス基板を厚さ方向と平行な方向から見たとき、前記第1および第2の走査領域は、実質的に重なり合う、工程と、
を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1のレーザ光は、複数の分岐レーザ光で構成され、各分岐レーザ光のスポットは、前記第1の走査方向と垂直な方向に沿って、直線状に配列され、および/または
前記第2のレーザ光は、複数の分岐レーザ光で構成され、各分岐レーザ光のスポットは、前記第2の走査方向と垂直な方向に沿って、直線状に配列される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1および/または第2のレーザ光の出力波形は、ステップ状の平坦部を有する請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ガラス基板内に、レーザ光の走査によって形成された複屈折領域を有する位相差板であって、
前記複屈折領域は、レーザ光の走査方向と平行な方向の寸法を全長とし、前記走査方向と垂直な方向の寸法を幅としたとき、全長を幅で除した値で表されるアスペクト比が0.5〜2.0の範囲であることを特徴とする位相差板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−88675(P2013−88675A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230067(P2011−230067)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】