説明

位置及び曲率−進行方向に関する2元道路形状表現

【課題】データとして道路を表現する方法を提供する。
【解決手段】カーブ警告システム或いは車線逸脱システムといった、道路曲率に関する運転者支援機能を実現する車両システムは、道路形状を示すデータ及び道路位置を示すデータを使用する。これらの車両システムをサポートするために、2元データ表現は、道路位置、例えば、道路センターライン或いは車線センターラインを示し、他の道路の幾何形状データ表現は、道路形状、例えば、曲率/進行方向を示す。いくつかの異なる2元形状表現を実現することができ、既存及び将来のデータベース表現と共存することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、トラック及びバスといった公道走行車両のための地図データ、特に公道走行車両のための先端的運転者支援システムをサポートする地図データに関する。
【背景技術】
【0002】
先端的運転者支援システム(ADASシステム)は、快適さ、便利さ、効率性、及び運転の全体的な満足度を改善するために開発されてきている。先端的運転者支援システムの例は、適応ヘッドライト照準、カーブ警告、適応走行制御、及び適応シフト制御、その他を含む。これらの先端的運転者支援システムのあるものは、車両中のセンサー機構、例えばレーダや映像志向センサー(例えば、カメラ)を使用し、車両及び車両周辺の道路について現在の状態を判断する。
【0003】
ある種の先端的運転者支援システムは、ディジタル地図データを使用し、道路網、道路形状構造、道路状態及び車両周辺の道路網に関係したその他の特徴に関する情報を提供する。ディジタル地図データは、例えば霧や、雨、或いは雪といった環境面の状態に影響されない。加えて、ディジタル地図データは、カメラ又はレーダでは信頼できるものを得ることができない、速度制限、混雑状況及び車線規制などの有益な情報も提供できる。さらに、ディジタル地図データは、車両の前方だけではなく曲がり角の周辺や障害物の背後の道路を判断するために使用することができる。したがって、ディジタル地図データは、ある種の先端的運転者支援システムに付加することが有益である。
【0004】
ある種の先端的運転者支援システムアプリケーションにとって、例えば曲率や進行方向のような道路形状属性を比較的正確に表現することは有益である。道路の従来の地図データベース表現は、道路の位置を示し、そこから曲率や進行方向を求めることができるデータを含む。しかしながら、曲率や進行方向を得るために従来の道路の地図データベース表現を使用する場合、データはある状況下で不整合を生じうる。
【0005】
したがって、地図データベース中の道路の曲率或いは進行方向を信頼できかつ正確に表現する方法が必要とされている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
従来の地図データベース、特にナビゲーションに使用される地図データベースは、道路の区画を表現した物理的位置に関する情報を含む。表示された道路区間の物理的位置に関する情報は、ナビゲーションシステムで使用され、利用者がどこにいるか、車両が計算してルートから外れているか、利用者が希望の目的地に対してどのくらい近くにいるか、及び様々な他の目的について判断することを助ける。
【0007】
ある種の従来の地図データベースでは、表示された道路区間の物理的位置は、そのセンターラインによって示されるか、又は分岐する高速道路の場合には、各方向に向かう車線グループのセンターラインによって示される。図1Aは、分岐する道路区間がセンターラインによってどのように表現されるか、又は分岐する高速道路の場合に各方向に向かう車線グループのセンターラインによってどのように表現されるかを示す。図1Aでは、出口ランプ10は分岐する高速道路12に接続している。これらの道路区間を表現する地図データでは、出口ランプ10及び分岐する高速道路12が出会う位置は、ノードの地理的座標を示すデータと結び付けられたノードデータエンティティによって決定され、表現される。これらの道路区間を表現する地図データベース中では、出口ランプ10及び分岐する高速道路12は道路区間データエンティティによって表現される。道路区間の位置は、それらのセンターライン14、16及び18によって表現される。これらのセンターラインを定義するデータは、これらの道路区間を表現する道路区間データエンティティと共に格納される。
【0008】
図1Bは、非分岐道路区間が地図データベース中でどのように表現されるかを示す。図1Bでは、道路22と道路24が交差点26で交差する。これらの道路区間を表現する地図データベース中では、道路が交差する位置は、ノードの地理的座標を示すデータと結び付けられるノードエンティティによって決定され、表現される。地図データベース中では、道路区間はそれらのセンターライン28及び30で示される。センターライン28及び30を定義するデータは、これらの道路区間を表現するそれぞれの道路区間データエンティティと共に格納される。
【0009】
直線道路区間の場合には、センターラインは、道路区間の終端のノード座標を示すデータによって正確に定義することができる。図1A及び図1Bに示すような曲線道路区間の場合には、センターラインは道路区間の終端のノード間に置かれる1つ又はそれ以上のシェープポイントによって定義できる。図1A及び図1Bでは、シェープポイントを接続する直線群が示されており、センターラインは一連の区分的線形の短い直線によって近似される。
【0010】
センターラインを一連の短い直線で表現する代わりに、センターラインを曲線として表現することができる。そのようなセンターライン曲線は様々な異なる方法で決定し、定義することができる。例えば、曲線は、既知の曲線近似技術を使用してシェープポイントを通過させることができる。
【0011】
上記のように、道路区間に沿った曲率を示すデータを保持することは、ある種の先端的運転者支援システムにとって有益である。道路区間の曲率を示すデータを得るための1つの方法は、地図データベース中の道路区間の座標を表現するために使用されるセンターラインの曲率を演繹することである。しかしながら、実際の道路区間の曲率として道路のセンターラインの曲率を使用することは、突然に不規則性を生じる場合がある。
【0012】
道路レベルの幾何形状並びに車線レベルの幾何形状に対して、位置制約条件や曲率制約条件の両者を単一の曲線で満足することはできない。道路レベルの幾何形状の場合、これは、データベースのスキーマにおける接続可能性についての制限(すなわち、ノード配置)から生じ、車線レベルの幾何形状の場合、この制限は、道路中央の形状が道路の曲率より急激に変化するために、モデリング分析における要求が異なったものとなることから生じる。
【0013】
単一の幾何形状曲線エンティティを幾何学的位置及び曲率の両者に対して使用した場合、道路曲率は局所的な道路/車線の曲線形状に直接結び付けられることになり、逆も同様である。局所的な曲線形状における摂動に関しては、曲率が敏感であるため、局所的な曲線形状が僅かに変化しても、結果としての曲率に比較的大きな望ましくない影響があり、それでも、依然として位置的正確性の要求条件を満たす可能性がある。このことは、位置的要求条件及び曲率要求条件を単一の曲線エンティティでは満足し得ないことを意味する。
【0014】
ここに開示する本実施形態は、道路曲率(及び進行方向)の改善を可能とするための道路幾何形状に対する2元表現を実現することにより、これらの制限を克服する。これらの実施形態では、1つの道路幾何形状表現は、位置的道路地図データ(例えば、道路の中心或いは車線の中心)に対するものであり、他の道路幾何形状表現は、道路形状(すなわち、曲率及び/又は進行方向)に対するものである。いくつかの異なる2元形状表現を実現することができ、既存及び将来のデータベース表現の存在と共存できる。ある種のこれらの2元形状表現は、道路中心の曲線、車線中心の曲線、車両軌道、解析的曲率関数、その他を含む。考えられる実現手段は、スプライン、クロソイド、解析的曲率関数、級数近似、離散的に配置された値、その他を含む。
【実施例】
【0015】
単一の曲線表現を位置(すなわち、道路や車線の中心)及び形状(すなわち、曲率/進行方向)の両者に使用することの問題点を以下の例で示す。
【0016】
〔実施例1〕
図2は、道路ネットワーク54の一部を含む区域52の航空画像50を示す。航空画像50は、実際のランプ62を示す。航空画像50にライン64が重ね合わされている。ライン64は、実際のランプ62を表示するために使用される地図データベース中のデータから生成される。より具体的に言えば、ライン64は、地図データ中の実際のランプ62の物理的位置を表現するために使用されるデータから生成される。地図データベースを開発するために使用される仕様によれば、ランプを表現するために使用されるライン64は、実際のランプ62の物理的中心線にほぼ沿うべきである。しかしながら、地図データベースを開発するために使用される仕様は、道路区間の位置をその中心線で表現する場合にある種の例外を設けている。1つの例外は、道路区間を表現するために使用されるデータから生成されるラインの終端の位置が既存のノード(すなわち、1つの道路区間が他の道路区間と交差する終端)に接続を強制されることである。図2の例は、ランプ道路曲線がランプノード66への接続条件に従うために道路中心の位置的条件からどのように異なるかを示す。
【0017】
出口ランプ道路区間に沿った曲率を決定するためにセンターラインデータが使用される場合には、不規則性に遭遇する。不規則性のタイプを図2の出口ランプの例に示す。ライン64に沿った曲率値は、通常センターライン64から法線方向に延びる直線70、72、及び74の長さによって示される。ランプセンターラインの曲線64は、ランプの始点において(曲率値70によって示されるように)曲がり、ノード66に接続されるが、依然として道路中心の近くにある。
【0018】
曲率は、局所的な曲線形状の摂動に対して敏感なため、センターラインの曲線64の曲がりが僅かであっても、ランプの始点において曲率値70で示すような顕著な曲率急上昇を引き起こす。そのような誤った曲率急上昇は、ある種の先端的運転者支援アプリケーション、例えばカーブスピード警告アプリケーションに問題を引き起こすことになる。
【0019】
本例に示すように、道路の曲率を決定するために道路区間のセンターラインを使用することは、特に道路区間が急に(すなわち、比較的短いか、或いは距離がないところで)接続するところでは不正確な結果につながることがある。出口ランプは、道路区分が急に接続される例である。
【0020】
図3は、位置的な道路の幾何形状及び道路曲率を記述するために、道路の2元(すなわち、2曲線)幾何形状表現をどのように使用することができるかを示す。図3では、新たな道路曲線88は、その形状が実際のランプ中心の曲率を表すように調整されている。曲率値90、92、74によって示されたランプ曲率は、今度は誤った曲率急上昇なく正しく表現されている。
(曲率/形状表現に使用される曲線がノードに接続するように拘束されていないことが分かる。さらに、曲線表現が相互に重なる場合があることも分かる。)
【0021】
〔実施例2〕
道路センターラインの位置を使用した結果として導かれる誤った曲率の他の例は、車線数が変化する際に起こる。車線数の変化は、図4に示すように、道路センターラインの位置に影響を及ぼす。
【0022】
図4は、道路ネットワーク114の一部を含む区域112の航空画像110を示す。航空画像110は、実際の道路122を示す。ライン124が航空画像110に重ね合わされている。ライン124は、地図データベース中の実際の道路122を表現するために使用されるデータから生成され、道路122のセンターラインの物理的位置を表現する。地図データベースを開発するために使用される仕様に従って、道路を表現するために使用されるライン124は、全体的に道路を構成するすべての車線(同一方向の)の物理的センターラインに沿っている。しかしながら、車線数が変化する場合には、これに応じてセンターラインに横方向の移動が生じるが、車線それ自身は真直ぐである。
【0023】
センターラインの横方向移動は、車線数が変化する位置周りの区域に生じる望ましくない曲率(ライン140及び142によって示される)の原因となる。この道路区間の2元表現では、別な直線(曲率ゼロを含む)が区間全体に含まれることになる。
【0024】
〔実施例3〕
図5A、5B及び5C中の次の例は、道路曲率がどのように車両軌道或いは行動に依存するかを示す。図5A、5B及び5Cは、道路が交差点で交差する区域202の航空画像200である。
【0025】
図5A上においては、交差点ノードで交差する3つの道路区間の位置的な道路幾何的配置(すなわち、センターライン表現210)を重ね合わせている。図5Bの画像上には、可能性のあるものとして、交差点を通る車両軌道(ライン222で示す)を重ね合わせている。車両が交差点を通過する軌道は、所望の行動或いは選ばれた経路に依存する。図5Cは、この可能性のある交差点を通る車両軌道222のそれぞれに対する曲率プロファイル(すなわち、曲率値232,234及び236)を示す。曲率プロファイル232は、南から東への車両軌道の曲率を示す。曲率プロファイル234は、東から西への車両軌道の曲率を示す。曲率プロファイル236は、南から西への車両軌道の曲率を示す。図5Cに示すように、交差点への接近、進入及び離脱の曲率は、交差点での望まれる動きに応じて極めて顕著に異なるものとなる。
【0026】
この状況を解決する2元表現は、各道路区間に対する複数の曲率関数を反映するように拡張されることになる。
【0027】
図6A、6B及び6Cは、位置的な道路の幾何形状及びその曲率/進行方向を表現するために2つ又はそれ以上のB−スプラインを使用する1つの可能性ある道路幾何形状の2元表現を示す。図6A、6B及び6Cはリンク2044105についての例を示すもので、ここでは、道路表現が、3つの曲線、すなわち、1本は道路中心の幾何学的曲線(図6A中のライン240)に、2本は行動依存の道路曲率/進行方向についての曲線からなる。東向きの移動経路の曲率値は、図6B中のライン242により示され、南向きの移動経路の曲率値は、図6C中のライン244により示されている。
【0028】
リンク2044105に対する道路リンク幾何形状のB−スプライン道路中心曲線
制御点:
37.3764769807727,−122.1663128109364
37.3765279984324,−122.1662260923172
37.3765431966615,−122.1661169944101
37.3765438324253,−122.1659513615504
ノット・ベクトル:
(0,0,0,0,1,1,1,1)
カーブ長: 24.79 メートル
【0029】
リンク2044105に対する南−東移動B−スプライン形曲線
制御点:
37.3765479761620, −122.1659552179730
37.3765501148576, −122.1660327364868
37.3765428766386, −122.1661475865591
37.3764924890996, −122.1662486680855
37.3764721372598, −122.1662806510816
ノット・ベクトル:
(0,0,0,0,1.31713557,2,2,2,2)
【0030】
リンク2044105に対する東−西移動Bスプライン形曲線
制御点:
37.3765576628816, −122.1659612018338
37.3765556972230, −122.1660272433453
37.3765463036549, −122.1661528616981
37.3765138765444, −122.1662432198899
37.3765111328391, −122.1663038934853
ノット・ベクトル:
(0,0,0,0,0.98779066,2,2,2,2)
【0031】
この表現は、滑らかな連続曲線であることから、任意の地点で道路の幾何形状の計算をすることが可能である。道路の幾何形状は、解析的曲線であることから、曲線に対する形状特性も同様に計算でき、形状特性は車両の進行方向の計算にも使用できる。2つの形状表現は、道路区間に沿った任意の地点の曲率と進行方向を同様に計算可能とし、それは所望の行動/地図上の経路に依存する。
【0032】
〔実施例4〕
次の例は、車線レベルの幾何形状に対する2元表現を使用することの利点を示す。車線レベルの幾何形状の場合、車線形状(すなわち、曲率)及び車線位置を単一の曲線表現で表現し、同時に低周波数の先端的運転者支援システム要求条件(例えば、カーブスピード警告アプリケーション)を満足することは難しい。このことは、車線中心形状が道路曲率より急激に変化するためである。車線逸脱警告のためのアプリケーションは、正確な車線中心の幾何形状を使用する。車線の中心は車線表示の塗装された線によって定義され、通常10cmから30cmの精度で表現される必要がある。しかしながら、このレベルの精度で車線の中心を表現しようとすると、車線曲線は、滑らかな信頼できる曲率をもたらすために非常に多くの変化を示すことになる。図7は、車線中心曲線から計算された曲率がいかにノイズが多く、信頼できない曲率であるかを示す。図7は、実際の道路310を示す区域302の航空画像300である。中心線を定義する線312が決定される。曲率値316は、センターラインから演繹される。これらの曲率値の一部は、320に示されるように誤った変化をみせる。
【0033】
車線中心部位置は、対応する道路或いは車線の形状/曲率より高い解像度及び変動周波数を使用する。車線中心部の幾何形状は、高周波数の車線中心部の変動を捉えることが可能な柔軟でより精度の高い曲線として定義することができる。(図9A参照) 道路車線の幾何形状に対して、道路曲率(これはゆっくり変化する)を、車線逸脱アプリケーションに対して高周波数のローカル変動を捉える道路車線中心部として同一の曲線で表現することは望ましくない。
【0034】
逆に、道路/曲率の表現に適した幾何形状が、車線中心部を表現するためにも使用されるとすれば、この幾何形状は滑らか過ぎるものとなって、車線離脱アプリケーションにとって有用でなくなる可能性がある。図8は、斜線中心を表現するのに使用されている斜線形状曲率曲線332の例を示す。図8は、図7で示した道路310と同一の部分を示す。図8は、曲率スプライン曲線の滑らかな性質が車線曲率及び道路の全体形状を表現するには十分に適しているが、車線中心の偏差(100倍に拡大)340で示すように車線中心部位置での急激な変動を捉えるには必ずしも適していないことを示す。ベクトル340(鮮明にするため100倍に拡大)は、車線中心部(車線塗装線から計算)が車線曲率スプライン曲線からどれだけ偏差しているかを示す。車線表示は、通常、波長300m当たり+/−0.3〜0.5mの割合の偏差を伴う正弦波状のパターンの中で変化する。
【0035】
図9A及び9Bに示すように、車線の幾何形状に対する2元幾何形状表現は、これらの考察に対処するために使用できる。2元幾何形状表現を使用することにより、図9Aに示す高解像度(急速に変化)で高精度の車線中心部曲線348は、車線逸脱アプリケーションに使用され、図9Bに示す、別の高精度ではあるが低解像度(ゆっくり変化)曲線354は滑らかでゆっくり変化する車線曲率を表現するために使用することができるようになる。図9Aは、真の車線中心部からの高解像度で高精度の車線中心曲線348における偏差の値350(すなわち、偏差値は1000倍に拡大される)を示す。偏差は1.5cm未満である。図9Bは、低解像度でゆっくり変化する曲線354に対する滑らかな曲率値358を示す。
【0036】
〔2元表現実施例〕
開示する実施形態は、道路区間に対する2元幾何形状表現を実現する。2元幾何形状表現では、1つの幾何形状エンティティ(例えば、レコード、属性、フィールド)は、道路/車線位置p=(s)(例えば、道路/車線中心の緯度、経度或いはx、y)に対して使用され、そして他のエンティティは、道路形状、例えば曲率k(s)或いは進行方向t=t(s)を表現するために使用される。
【0037】
道路の幾何的位置エンティティの目的のために、形状地点ベース表現又はスプラインベース表現、例えばB−スプラインが使用できる。
【0038】
道路の幾何形状エンティティの目的のために、任意の連続曲線表現、例えば、スプライン、クロソイド、解析的曲率関数或いは級数近似が使用できる。連続的な滑らかな曲率を実現しない離散的測量値は、道路の幾何形状を表現するためには好ましくない。しかしながら、離散的測量値は、曲線属性として結び付けることができる。この表現の目的は、道路或いは車線に沿った任意の地点での曲率k(及び/又は進行方向t)を計算可能とすることである。
【0039】
上述の実施例は、形状ベース表現並びに位置的道路幾何形状の両者について、スプライン曲線を使用する。スプラインは、道路位置を表現するのに十分に適しており、それらは並進不変量かつ回転不変量である。同様な理由で、スプライン曲線は曲率や進行方向を表現するのに適しており、スプライン曲線上の任意の点は進行方向(すなわち、接線方向)及び符号付曲率を持つ。
【0040】
道路/車線中心部の幾何形状を表現するための実現可能な代替方法:
・ (緯度、経度)シェープポイントのリスト
・ パラメトリック・スプラインB(s):[x(s)=Bx(s),y(s)=By(s)]、
ここで、B(s)は、曲線に沿ったパラメータsを持つパラメータ化されたスプライン曲線である。
・クロソイド
【0041】
道路/車線形状を表現するための実現可能な代替方法:
・パラメトリック・スプラインB(s):[x(s)=B(s),y(s)=B(s)](道路/車線中心部或いは車両軌道を近似)、ここで、B(s)は曲線に沿ったパラメータsを持つパラメータ化されたスプライン曲線である。そこで、曲率は、

により、計算でき、進行方向は
t(s)=[xs(s),ys(s)]
によって、計算できる。
・多項式関数k=k(s)、ここで、sは道路区間に沿ったあるパラメータであり、k(s)はその位置での符号付曲率である。
k(s)=asN+bsN-1+…+c及び 進行方向t(s)=[tx(s),ty(s)]
・任意の他の解析的曲率関数k=k(s)(スプラインを含む)、ここで、sは道路区間に沿ったあるパラメータであり、k(s)は道路に沿ったその位置での符号付曲率である。同様に、進行方向(接線方向)に対してt=t(s)。
・クロソイド
・級数近似
【0042】
パラメトリック・スプラインの場合、多次元を導入することも可能であり、(x、y)又は(緯度、経度)位置及び曲率は単一の多次元スプラインにより制御される。
B(s):[x(s)=Bx(s),y(s)=By(s),k(s)=Bk(s)]
そしてさらに標高は、
[x(s)=Bx(s),y(s)=By(s),z(s)=Bz(s),k(s)= Bk(s)]
形状(曲率/進行方向)を表現する別な曲線を使用することが好ましく、操作及び制御が視覚的に容易である。
【0043】
2元表現の道路幾何形状の使用
図10は、道路の幾何形状の2元表現を含む地図データを使用したシステムのブロック図である。図10においては、ソースデータベース500は、対象エリア中の地勢を表現するデータを含む。対象エリアは、国全体、複数の国或いは1つ又はそれ以上の国の中の地域とすることができる。
【0044】
対象エリア中の地勢に関するデータは、地理データベース開発者により収集される。地理データベース開発者がデータを収集するために使用できる方法は多様であり、航空写真をディジタル化すること、他のソースからデータを入手すること、地理的領域を通過する道路に沿って車両によって人が旅行し、特徴を入手し、それらの情報を記録すること及び探査車両を使用すること、並びにその他の方法が含まれる。
【0045】
ソースデータベース500は、対象範囲となる区域の道路に関するデータ504を含む。道路に関するデータ504は、様々な種類の情報、例えば道路の地理的な位置、道路の街路名、道路沿いの住所範囲、道路の交差点での進路変更規制などを含む。図10に示す実施例では、ソースデータベース500は、少なくとも表現された道路のいくつかに対する道路の幾何形状の2元表現を含む。上記についてより詳細に説明すると、道路504を表現するデータは、センターライン位置データ508及び曲率(及び/又は進行方向)データ512を含む。1つの実施例では、センターライン位置データ508は、高周波数道路/車線中心部データ518(すなわち、位置決め及び車線逸脱警告システムに有用)を含むことができる。曲率データ512は、低周波数曲率データ516(すなわち、カーブ警告システムに有用)を含むことができる。
【0046】
ソースデータベース500は、その他の種類のデータ524、例えば関心ある地点、場所(例えば、市、町その他のコミュニティー)などを含むことができる。
【0047】
ソースデータベース500は、地理データベースの開発業者によって定期的かつ継続的に更新され、拡張され、及び/又はその他の変更がなされる。これらの実施を促進するため、ソースデータベース500は、更新、保守及び開発を促進する書式で格納する事ができる。
【0048】
ソースデータベース500は、コンパイルされたデータベース540の作成に使用される。コンパイルされたデータベース540は、コンパイラー530を使用することによって作成される。コンパイラー530は、適切なコンピュータプラットフォーム上で実行されるプログラムである。コンパイルされたデータベース540は、ソースデータベース500にあるすべてのデータの1部分のみを含むものとすることができる。コンパイルされたデータベース540は、ナビゲーション及び/又は先端的運転者支援機能を実現するアプリケーション及びシステムでの使用に適切な書式になっている。例えば、コンパイルされた地理データベース540は、適切なインデックス付け、レイヤー化、区分化、圧縮、及び、ナビゲーション及び/又は先端的運転者支援アプリケーションを実現するためのデータの使用を助ける他の形式の構造或いは配置を含むものとすることができる。
【0049】
コンパイルされたデータベース540は、車両550に搭載され、使用される。車両550においては、コンパイルされたデータベース540は、先端的運転者支援システム558、例えばカーブ警告システム562、適応型変速制御システム566、車線逸脱警告システム570、車線逸脱制御システム574、及び場合によっては他のシステム578を含む、様々な車両アプリケーション又はシステムによって使用することができる。コンパイルされたデータベース540はまた、ナビゲーション関連機能、例えば経路計算、経路案内、車両位置表示及び地図表示を実現する車両内システム554によって使用することができる。
【0050】
〔結論〕
2元道路幾何形状表現は、位置的な道路の幾何形状及び曲率や進行方向といった道路の幾何形状特性の両方を表現するための従来の方法及び技術に対して顕著な利点をもたらす。2元表現は、融通性があり、異なる数学的表現が使用でき、既存のデータベース表現と同様に、将来のデータベース表現とも共存できる。2元形状表現は道路位置表現から切り離されていることから、それは、既存の道路表現に影響を与えることなく展開することができ、道路ベース表現が時間とともに発展する場合にも、変更の必要性なしに維持し移植することができる。
【0051】
本表現が顕著な優位性をもたらすのは、それが既存の形状位置ベース表現に影響を与えることなく既存のデータベースモデルの中に連続した滑らかな曲率と進行方向を導入することを可能とし、その結果、先端的運転者支援アプリケーション機能を利用可能とすることができるからである。
【0052】
上述の詳細な説明は、限定的なものではなく、例示とみなされること、及びすべての均等なものを含む以下の請求項が本発明の範囲を定義するものであると理解されることを意図するものである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1A】図1Aは、従来の地図データベース中での分岐する道路区間の表示方法を示す。
【図1B】図1Bは、従来の地図データベース中での非分岐道路区間の表示方法を示す。
【図2】図2は、道路区間の従来の地図データベース中での表現方法及び従来の表現を使用して計算された結果の曲率を示すように重ね合わせた道路ネットワークの一部の航空画像である。
【図3】図3は、道路区間が開示された実施形態による表現方法と開示された実施形態を使用して計算された結果の曲率とを重ね合わせた図2に示す道路ネットワークと同一の部分の航空画像である。
【図4】図4は、道路区間の従来の地図デーベース中での表現方法と従来の表現を使用して計算された結果の曲率とを示す重ね合わせた道路ネットワークの他の部分の航空画像である。
【図5A】図5Aは、道路区間の従来の地図データベースでの表現方法を示すように重ね合わされた道路ネットワークのさらに他の部分の航空画像を示す。
【図5B】図5Bは、道路に沿った実際の車両の走行軌跡を示すように重ね合わされた図5Aと同一の航空画像を示す。
【図5C】図5Cは実際の車両の走行軌跡に沿って計算された結果の曲率を示すように重ね合わされた図5Bと同一の航空画像を示す。
【図6A】図6Aは、記述された道路の1つに対する道路幾何形状の2元表現の位置的な部分を示すように重ね合わされた図5Aから5Cと同一の航空画像を示す。
【図6B】図6Bは、記述された道路の1つに対する道路幾何形状の2元表現の第1の曲率部分を示すように重ね合わされた図6Aと同一の航空画像を示す。
【図6C】図6Cは、記述された道路の1つに対する道路幾何形状の2元表現の第2の曲率部分を示すように重ね合わされた図6A及び6Bと同一の航空画像を示す。
【図7】図7は、センターライン曲線から計算された曲率を示すように重ね合わされた道路ネットワークのさらに他の部分の航空画像である。
【図8】図8は、曲率データから導出された場合のセンターラインデータの拡大された偏差を示すように重ね合わされた図7と同一の航空画像である。
【図9A】図9Aは、真のセンターラインからのセンターラインデータの拡大された偏差を示すように重ね合わされた図7及び8と同一の航空画像である。
【図9B】図9Bは、曲率を示すように重ね合わされた図9Aと同一の航空画像である。
【図10】図10は、道路幾何形状の2元表現を含む地図データを使用する車両内のシステムのブロックダイアグラムである。
【符号の説明】
【0054】
500 ソースDB
504 道路区間/車線
508 センターライン位置
512 曲率
516 低周波
518 高周波
524 その他
530 コンパイラー
540 地理データベース
550 車両
554 ナビゲーション・アプリ
558 先端的運転者支援システム
562 カーブ警告
566 適応式変速機制御
570 車線警告
574 車線制御
578 その他

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともいくつかの道路区間のそれぞれが、2つの別形式のデータによって表現された道路区間の表現を備え、
前記2つの形式のデータが、
前記表現された道路区間の物理的センターラインにほぼ合致するラインの位置を示す第1の形式のデータと、
前記表現された道路区間の形状を示す第2の形式のデータと、
を含むことを特徴とする、コンピュータ読み取り可能媒体に格納されたデータベース。
【請求項2】
前記第1の形式のデータによって表現される前記道路区間の前記物理的センターラインにほぼ合致する前記ラインが、前記道路区間が隣接する道路区間に接続する交差点を表現するノードと関連する物理的位置まで延びていることを特徴とする請求項1に記載のデータベース。
【請求項3】
前記表現された道路区間の物理的センターラインにほぼ合致するラインの位置を示す前記第1の形式のデータが、シェープポイントのリストを含むことを特徴とする請求項1に記載のデータベース。
【請求項4】
前記各シェープポイントが、緯度及び経度位置を示すものであることを特徴とする請求項3に記載のデータベース。
【請求項5】
前記表現された道路区間の物理的センターラインとほぼ合致するラインの位置を示す前記第1の形式のデータが、パラメトリック・スプラインを含むこと特徴とする請求項1に記載のデータベース。
【請求項6】
前記表現された道路区間の物理的センターラインとほぼ合致するラインの位置を示す前記第1の形式のデータが、クロソイドを含むこと特徴とする請求項1に記載のデータベース。
【請求項7】
前記表現された道路区間の形状を示す前記第2の形式のデータがパラメトリック・スプラインを含むこと特徴とする請求項1に記載のデータベース。
【請求項8】
前記表現された道路区間の形状を示す前記第2の形式のデータが、多項関数を含むこと特徴とする請求項1に記載のデータベース。
【請求項9】
前記表現された道路区間の形状を示す前記第2の形式のデータが、任意の他の解析的曲率関数k=k(s)を含み、ここで、sは前記道路区間に沿ったある種のパラメータ、k(s)は前記道路区間に沿ったその位置における符号付曲率を表すこと特徴とする請求項1に記載のデータベース。
【請求項10】
前記表現された道路区間の形状を示す前記第2の形式のデータが、クロソイドを含むこと特徴とする請求項1に記載のデータベース。
【請求項11】
前記表現された道路区間の形状を示す前記第2の形式のデータが、級数近似を含むこと特徴とする請求項1に記載のデータベース。
【請求項12】
前記表現された道路区間の形状を示す前記第2の形式のデータが、前記表現された道路区間の全体的形状を表現する低周波曲率データを含むこと特徴とする請求項1に記載のデータベース。
【請求項13】
前記表現された道路区間の物理的センターラインとほぼ合致するラインの位置を示す前記第1の形式のデータが、高周波車線中心部変動を表現する高周波位置データを含むこと特徴とする請求項1に記載のデータベース。
【請求項14】
車両運転者を支援するための車両システムであって、
データがコンピュータ読み込み可能な媒体に格納された、さらにデータベースが道路区間の表現を含み、少なくともいくつかの前記道路区間の各々が、2つの区分された形式のデータによって表現され、前記2つの区分された形式のデータが、前記表現された道路区間の物理的センターラインとほぼ合致するラインの位置を示す第1の形式のデータ及びと前記表現された道路区間の形状を示す第2の形式のデータとを含む、車両が通る道路区間を表現するデータベースと、
前記第1の形式のデータを使用して前記車両の位置を求める第1のアプリケーションと、
前記第2の形式のデータを使用して前記車両が走行する道路の曲率に関連する機能を運転者に提示する第2のアプリケーションと
を備えることを特徴とする車両運転者を支援するための車両システム。
【請求項15】
前記第2のアプリケーションが、カーブ警告アプリケーションであることを特徴とする請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記第2のアプリケーションが、適応式変速機制御システムであることを特徴とする請求項14に記載のシステム。
【請求項17】
前記第1のアプリケーションが、車線逸脱警告システムであることを特徴とする請求項14に記載のシステム。
【請求項18】
前記第1のアプリケーションが、車線逸脱制御システムであることを特徴とする請求項14に記載のシステム。
【請求項19】
前記第1のアプリケーションが、ナビゲーションに関連する機能を提示するものであることを特徴とする請求項14に記載のシステム。
【請求項20】
ナビゲーションに関連する機能が、経路計算、経路案内、車両位置決め及び地図表示を含むことを特徴とする請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記表現された道路区間の物理的センターラインとほぼ合致するラインの位置を示す前記第1の形式のデータが、前記表現された道路区間の高周波車線中心部変動を表現する高周波位置データを含むこと特徴とする請求項14に記載のシステム。
【請求項22】
前記第1のアプリケーションが、車線逸脱警告システムであり、前記車線逸脱警告システムが前記高周波位置データを使用すること特徴とする請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記第1のアプリケーションが、車線逸脱制御システムであり、前記車線逸脱制御システムが前記高周波位置データを使用すること特徴とする請求項21に記載のシステム。
【請求項24】
表現された道路区間の形状を示す前記第2の形式のデータが、前記表現された道路区間の全体形状を表現する低周波曲率データ含むこと特徴とする請求項14に記載のシステム。
【請求項25】
前記第2のアプリケーションが、カーブ警告アプリケーションであり、前記カーブ警告アプリケーションが前記低周波曲率データ使用すること特徴とする請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
前記第2のアプリケーションが、適応式変速機制御アプリケーションであり、前記適応式変速機制御アプリケーションが前記低周波曲率データ使用すること特徴とする請求項24に記載のシステム。
【請求項27】
少なくともいくつかの道路区間のそれぞれが、2つの別形式のデータによって表現された道路区間の車線の表現を備え、
前記2つの形式のデータが、
前記表現された道路区間の車線の物理的センターラインにほぼ合致するラインの位置を示す第1の形式のデータと、
前記表現された道路区間の車線の形状を示す第2の形式のデータと、
を含むことを特徴とする、コンピュータ読み取り可能媒体に格納されたデータベース。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【公開番号】特開2007−316654(P2007−316654A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−155745(P2007−155745)
【出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【出願人】(504390584)ナヴテック ノース アメリカ リミテッド ライアビリティ カンパニー (12)
【Fターム(参考)】