説明

位置復調装置、及び位置復調方法

【課題】ヘッドの位置の特定精度を向上する。
【解決手段】位置復調装置は、復調手段321と、補正手段311と、位置復調手段312と、を備える。復調手段は、媒体に対するヘッドの位置決めを行うために媒体に記録されたサーボパターンをヘッドが読み出した読出信号に基づいて、第1の復調信号、及び第1の復調信号と90度の位相差を有する第2の復調信号を復調する。補正手段は、第1の復調信号と第2の復調信号とを平面上の異なる座標軸の値として示したリサージュ図形の軌跡を描いた際、平面の原点で直交する2軸と交わる軌跡間の長さの比を等しくする補正を、第1の復調信号及び第2の復調信号に対して行う。位置復調手段は、補正手段で補正された後の第1の復調信号、及び第2の復調信号に基づいて、ヘッドの位置を特定するための位置信号を復調する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、位置復調装置、及び位置復調方法に関する。
【背景技術】
【0002】
記憶装置においては、アクチュエータアームを用いて、当該アクチュエータアームの先端に備え付けられたヘッドで、記録媒体に対して、データの記録等が行われている。記録媒体は、ユーザのデータを記録するためのデータ領域と、ヘッドの位置決め制御に用いられるデータが記録されるサーボ領域と、を有している。
【0003】
そして、記憶装置では、ヘッドがサーボ領域を通過する際に、当該サーボ領域から読み出した信号に基づいて、当該ヘッドの位置が特定される。この特定された位置に基づいて、アームがヘッドの位置を調整することで、ヘッドが所望の位置に存在するよう制御することができる。
【0004】
これらサーボ領域に記録されるパターンにはいくつかの種類が存在し、例えば、NULLサーボパターン、面積サーボパターン、及び位相サーボパターンなどが存在する。これらサーボ領域に記録されているサーボパターンを用いることで、ヘッドの位置を特定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2008/139603号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、記憶装置においては、サーボパターンから読み出された位置情報に基づすることは難しい。これは、ヘッドの移動等に起因して、読み出した信号とヘッドの位置との間で円滑な対応関係で結びつけるのは困難だからである。そこで、記憶装置では、より正確にヘッドの位置を特定するために、読み出した信号に対する補正処理が必要となる。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ヘッドの正確な位置を復調することを目的とした位置復調装置、及び位置復調方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の位置復調装置は、復調手段と、補正手段と、位置復調手段と、を備える。復調手段は、媒体に対するヘッドの位置決めを行うために前記媒体に記録されたサーボパターンを前記ヘッドが読み出した読出信号に基づいて、第1の復調信号、及び第1の復調信号と90度の位相差を有する第2の復調信号を復調する。補正手段は、第1の復調信号と第2の復調信号とを平面上の異なる座標軸の値として示したリサージュ図形の軌跡を描いた際、平面の原点で直交する2軸と交わる軌跡間の長さの比を等しくする補正を、第1の復調信号及び第2の復調信号に対して行う。位置復調手段は、補正手段で補正された後の第1の復調信号、及び第2の復調信号に基づいて、ヘッドの位置を特定するための位置信号を復調する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、第1の実施形態にかかるディスク記憶装置の電気的ハードウェア構成を示すブロック図。
【図2】図2は、第1の実施形態にかかる磁気ディスクにおける、NULL復調の場合のバースト部のパターンの一例を示す図。
【図3】図3は、第1の実施形態にかかるRDC、及びCPU内の位置の復調を行うための構成を示した図。
【図4】図4は、復調信号Nのsin成分をX座標に、復調信号Qのsin成分をY座標に割り当てた上で位相空間に表したベクトルを示した図。
【図5】図5は、復調信号N、Qにより求められるポジションリサージュの概念を示した図。
【図6】図6は、第1の実施形態にかかる磁気ディスク上のサーボパターンに対する磁気ヘッドの軌跡を示した図。
【図7】図7は、第1の実施形態にかかる磁気ヘッドの検出感度を示した図。
【図8】図8は、第1の実施形態にかかる磁気ヘッドが移動速度を有する場合と有しない場合とにおける、復調信号N及び復調信号Qの軌跡を描いた図。
【図9】図9は、第1の実施形態にかかる磁気ヘッドが移動速度を有していない場合と、有している場合と、で描かれるポジションリサージュを説明した図。
【図10】図10は、第1の実施形態にかかる磁気ヘッドが移動速度を有していない場合に描かれるポジションリサージュの例を示した図。
【図11】図11は、第1の実施形態にかかる磁気ヘッドがプラス方向に移動速度V1で移動する場合に描かれるポジションリサージュの例を示した図。
【図12】図12は、第1の実施形態にかかる磁気ヘッドがプラス方向に移動速度V2で移動する場合に描かれるポジションリサージュの例を示した図。
【図13】図13は、第1の実施形態にかかる磁気ヘッドがマイナス方向に移動速度V1で移動する場合に描かれるポジションリサージュの例を示した図。
【図14】図14は、第1の実施形態にかかる磁気ヘッドがマイナス方向に移動速度V2で移動する場合に描かれるポジションリサージュの例を示した図。
【図15】図15は、第1の実施形態にかかる速度補正部による補正の概念を示した図。
【図16】図16は、第1の実施形態にかかる速度補正部における、磁気ヘッドの移動方向に基づく補正の概念を示した図。
【図17】図17は、移動速度に基づく補正係数の遷移の例を示した図。
【図18】図18は、第1の実施形態にかかるヘッド位置復調部により復調した結果を示したグラフ。
【図19】図19は、第1の実施の形態にかかるディスク記憶装置における、補正係数の算出処理の手順を示すフローチャート。
【図20】図20は、第1の実施の形態にかかるディスク記憶装置における、磁気ヘッドの位置を特定するための処理の手順を示すフローチャート。
【図21】図21は、第2の実施形態にかかる磁気ヘッドの検出感度を示した図。
【図22】図22は、第2の実施形態のディスク記憶装置における、磁気ヘッドが移動速度を有する場合と有しない場合とにおける、復調信号N及び復調信号Qの軌跡を描いた図。
【図23】図23は、第2の実施形態のディスク記憶装置における、磁気ヘッドが移動速度を有していない場合、有している場合、及び速度補正部により補正した場合で描かれるポジションリサージュを説明した図。
【図24】図24は、第2の実施形態にかかるヘッド位置復調部により復調した結果を示したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態にかかる位置復調装置、及び位置復調方法を適用したディスク記憶装置100について説明する。図1は、本実施形態にかかるディスク記憶装置100の電気的ハードウェア構成を示すブロック図である。
【0011】
図1において、磁気ディスク111は、円盤状の記録媒体であって、スピンドルモータ112により、回転軸を中心に所定の回転速度で回転される。スピンドルモータ112の回転は、モータドライバ121により駆動される。
【0012】
磁気ヘッド122は、それに備わるライトコアおよびリードコアにより、磁気ディスク111に対してデータの書き込みや読み出しを行う。また、磁気ヘッド122は、アクチュエータアーム115の先端にあって、モータドライバ121によって駆動されるボイスコイルモータ(VCM)116により、磁気ディスク111の半径方向に移動される。磁気ディスク111の回転が停止しているときなどは、磁気ヘッド122は、ランプ123上に退避される。
【0013】
ヘッドアンプ124は、磁気ヘッド122が磁気ディスク111から読み取った信号を増幅して出力し、RDC(Read Write Channel)125に供給する。また、ヘッドアンプ124は、RDC125から供給された、磁気ディスク111にデータを書き込むための信号を増幅して、磁気ヘッド122に供給する。
【0014】
RDC125は、後述するHDC131から供給される、磁気ディスク111に書き込むためのデータをコード変調してヘッドアンプ124に供給する。また、RDC125は、磁気ディスク111から読み取られヘッドアンプ124から供給された信号をコード復調してディジタルデータとしてHDC131へ出力する。
【0015】
CPU126には、動作用メモリであるSRAM(Random Access Memory)127、不揮発性メモリであるFlash ROM(Read Only Memory)128および一時記憶用のバッファRAM129が接続されている。このCPU126は、Flash ROM128および磁気ディスク111に予め記憶されたファームウェアに従って、このディスク記憶装置100の全体的な制御を行う。
【0016】
HDC(Hard Disk Controller)131は、I/Fバスを介してホストコンピュータ(ホスト)40との間で行われるデータの送受信の制御や、バッファRAM129の制御、ならびに、記録データに対するデータの誤り訂正処理などを行う。また、バッファRAM129は、ホストコンピュータ40との間で送受信されるデータのキャッシュとして用いられる。
【0017】
次に、磁気ディスク111の詳細について説明する。磁気ディスク111は、ユーザのデータを記録するデータ領域と、サーボ情報等を記憶するサーボ領域と、を備えている。当該サーボ領域には、回転中心から半径方向に円弧状に延びるサーボパターンが記録されている。サーボパターンは、磁気ヘッド122を位置決めするために用いられるデータである。
【0018】
磁気ディスク111は、金属又はガラス製の円盤(ディスク)状の基板に磁性膜を形成した記憶媒体である。磁気ディスク111へデータの記録を行う場合には、磁気ディスク111のデータを記録する記録領域に、磁気ヘッド122から磁界をかけ、表面上の磁性体の磁化状態を変化させることによってデータを記録する。また、磁気ディスク111からデータを読み出して再生する場合には、再生対象となる磁気ディスク111上の記録領域に磁気ヘッド122を移動させ、磁気ディスク111の磁性体の磁化状態を読み取ってデータを再生する。なお、磁気ディスク111の記録方式は、垂直磁気記録方式、水平磁気記録方式のいずれであってもよい。
【0019】
本実施形態では、磁気ヘッド122の位置を特定するための手法として、NULL復調を用いるものとする。サーボ領域内のサーボパターンは、プリアンブル部と、SM(サーボ・マーク)部と、グレイコード部と、バースト部と、を有する構成とする。プリアンブル部は、クロック同期を行うためのプリアンブル信号が記録された領域とする。サーボパターンの先頭部分に相当するバースト部は、各トラックにおいてトラック中心から磁気ヘッド122のオフセット位置を検出するための領域である。NULL復調を用いる場合、バースト部は、2相のブロック(以下、NULLパターンと称す)を有する。
【0020】
次に、磁気ディスク111のバースト部について具体的に説明する。図2は、磁気ディスク111における、NULL復調の場合のバースト部のパターンの一例を示す図である。図2に示すように、バースト部には、2相のNULLパターンが形成されている。図2に示すように、NULLパターンは、N極とS極が交互に配置されている。このため、当該NULLパターンを磁気ヘッド122のリードコアでアクセスすることで、このN極及びS極で形成され、周期的に変化する波形の信号を読み出すことができる。
【0021】
本実施形態では、2相のNULLパターンとして、位置情報信号PosNのためのバーストN、及び位置情報信号PosNと位相が90度ずれた位置情報信号PosQのためのバーストQが記録される。つまり、図2に示すように、バーストNとバーストQとでは、パターンが1/2トラック半径方向にずれている(バーストNおよびバーストQは2トラックを1周期とする繰り返しパターンで形成されており、バーストNとバーストQとでは1/2トラックだけパターンが半径方向にずれていることから、以下、位相が90度ずれた、あるいは90度の位相差とも示す)。このため、磁気ヘッド122によりバーストNから読み出された信号と、バーストQから読み出された信号と、では波形の振幅が異なる。そこで、本実施形態にかかるディスク記憶装置100では、バーストNとバーストQの信号の波形の振幅の違いから、磁気ヘッド122のリードコアのオフセット位置(以下、位置とも示す)を特定できる。
【0022】
本実施形態にかかるディスク記憶装置100では、バースト部に記録された位置情報信号PosN、位置情報信号PosQに対して、DFT(Discrete Fourier Transform)による演算で得られた復調信号に対して、補正を行った後、補正後の復調信号から、検出されたトラック番号のトラック中心からの磁気ヘッド122の位置信号(オフセット位置を特定可能な信号)を復調する。
【0023】
次に、位置を復調するための構成について説明する。図3は、RDC125、及びCPU126内の、位置の復調を行うための構成を示した図である。
【0024】
RDC125は、NULL復調部321を備える。NULL復調部321は、磁気ディスク111のサーボ領域に記録されたNULLサーボパターンを磁気ヘッド122が読み出した位置情報信号PosN、PosQに対してDFT(Discrete Fourier Transform)演算を行う。そして、NULL復調部321は、DFT演算結果として、復調信号N(第1の復調信号)と、復調信号Q(第2の復調信号)と、を復調する。復調信号N、及び復調信号Qは、互いに90度の位相差を有している。なお、復調により得られた復調信号N、及び復調信号Qは、それぞれsin成分及びcos成分を含むベクトルとして示される。
【0025】
磁気ディスク装置100は、復調信号Nのsin成分をX座標に、復調信号Qのsin成分をY座標に用いることで、位相平面に表したベクトルの方向から、位相角θを得ることができる。そして、磁気ディスク装置100では、当該位相角θから、磁気ヘッド122のオフセット位置を特定できる。このオフセット位置を特定するために用いる、復調信号Nのsin成分、及び復調信号Qのsin成分について説明する。
【0026】
図4は、復調信号Nのsin成分をX座標に、復調信号Qのsin成分をY座標に割り当てた上で位相空間に表したベクトルを示した図である。図4に示す位相空間では、任意のタイミングでサンプリングされた(復調信号Nのsin成分、及び復調信号Qのsin成分の組)を位相空間にプロットすることで、ベクトル401の頂点402を示す座標が得られる。なお、サンプリングを抽出するタイミングは、例えば2π当たり8サンプルで、6サイクル(12π)分行うなどが考えられる。
【0027】
そして、ベクトル401は、磁気ヘッド122が半径方向に一定速度で移動した場合の変化に伴い、破線で示す円上を左回りに回転する。ベクトル401の頂点402の描く円403の軌跡は、磁気ヘッド122の半径方向に移動して得られた(復調信号Nのsin成分、復調信号Qのsin成分)をサンプリング保持する。そして、サンプリング保持した結果を位相空間にプロットすることで、リサージュ図形が得られる。本実施形態では、磁気ヘッド122のコアの位置を特定するための当該リサージュ図形を、ポジションリサージュと称する。
【0028】
ところで、復調信号N、Qを用いた復調方式としては、様々な手法が提案されている。これら提案されている手法では、磁気ヘッドの移動速度がゼロの場合に、磁気ヘッドの正確な位置が得られるように設計されている。このため、これら手法では、磁気ヘッドの移動速度がゼロでない場合、正確な位置を復調できない。そこで、本実施形態では、磁気ヘッド122の移動速度に基づく補正を行うことで、正確な位置の復調を実現することとした。
【0029】
図3に戻り、CPU126は、速度補正部311と、ヘッド位置復調部312と、速度算出部313と、座標算出部314と、係数算出部315と、VCM制御部316と、を備える。速度補正部311、ヘッド位置復調部312、及び速度算出部313は、補正係数を用いたヘッド位置の復調に用いられる。座標算出部314、及び係数算出部315は、補正係数の算出に用いられる。
【0030】
本実施形態では、CPU126内の速度補正部311で行われる補正の概念について、ポジションリサージュを用いて説明する。なお、以下に示すポジションリサージュは、説明を容易にするために例として示したものであり、ディスク記憶装置100で復調信号N、Qの補正を行う際、実際にポジションリサージュを生成する必要はない。
【0031】
図5は、復調信号N、Qにより表されるポジションリサージュの概念を示した図である。図5に示すように、復調信号Nのsin成分及びcos成分を用いて、位相平面上にサンプリングすると、グラフ501に示すようなリサージュ図形が得られる。また、復調信号Qのsin成分及びcos成分を用いて、位相平面上にサンプリングすると、グラフ502に示すようなリサージュ図形が得られる。
【0032】
そして、本実施形態にかかるディスク記憶装置100では、復調信号Nのsin成分と、復調信号Qのsin成分と、の組を、複数用いてポジションリサージュを描く。具体的には、図5のグラフ503に示すように復調信号Nのsin成分をX座標の値に、復調信号Qのsin成分をY座標の値に割り当てる。当該割り当てで生成されたベクトルの頂点で、位相平面上にポジションリサージュの軌跡を描くことができる。
【0033】
ところで、実際に描かれるポジションリサージュの軌跡は、環境に応じて様々な歪みが生じている。例えば、磁気ヘッド122がある速度で移動している場合には、当該移動速度に応じたポジションリサージュの歪みが生じる。そこで、本実施形態にかかる速度補正部311は、当該磁気ヘッド122の移動速度に応じて、当該ポジジョンリサージュに生じた歪みを抑止するよう、復調信号N及び復調信号Qの補正を行う。
【0034】
図6は、磁気ディスク111上のサーボパターンに対する磁気ヘッド122の軌跡を示した図である。図6に示す例では、磁気ヘッド122が磁気ディスク111の半径方向(換言すれば異なるトラックに移動する方向)に移動速度を有しない場合の軌跡601と、磁気ヘッド122が磁気ディスク111の半径方向に移動速度を有する場合の軌跡602と、が示されている。なお、本実施形態においては、磁気ヘッド122が、トラック2nからトラック2n+1に移動する方向を、プラス方向とし、トラック2nからトラック2n−1に移動する方向を、マイナス方向とする。
【0035】
図7は、本実施形態にかかる磁気ヘッド122の検出感度を示した図である。本実施形態では、図7に示すように、磁気ヘッド122のコア幅701に対して、検出感度は曲線702を描く。この曲線702では、中心部で検出感度が100%となり、中心部から離れるにつれて、検出感度が低下していく。
【0036】
図8は、磁気ヘッド122が図7に示すような検出感度であって、磁気ヘッド122が移動速度を有する場合と有しない場合とにおける、復調信号N及び復調信号Qの軌跡を描いた図である。図8のトラック1が、図6のトラック2nの中心に相当する。そして、トラックが‘1’ずれたトラック0及びトラック2は、図6のトラック2n−1、及びトラック2n+1の中心に相当する。そして、軌跡801は、磁気ヘッド122が移動速度を有していない場合の復調信号Nの軌跡を示している。また、軌跡804は、磁気ヘッド122が移動速度を有していない場合の復調信号Qの軌跡を示している。
【0037】
そして、磁気ヘッド122がプラス方向に移動速度を有している場合、復調信号Nは軌跡802を描き、復調信号Qは軌跡803を描く。図8に示すように、復調信号N及び復調信号Qは、磁気ヘッド122が移動速度を有していると、位相が変化する。図8に示すように、磁気ヘッド122がプラス方向に移動速度を有すると、復調信号N及び復調信号Qの軌跡の幅が狭まるように位相が変化する。一方、図8には示していないが、磁気ヘッド122がマイナス方向に移動速度を有すると、復調信号N及び復調信号Qの軌跡の幅が広まるように位相が変化する。そして、移動速度が大きいほど、位相の変化の幅は大きくなる。
【0038】
図9は、磁気ヘッド122が移動速度を有していない場合と、有している場合と、で描かれるポジションリサージュを説明した図である。図9に示すように、磁気ヘッド122が移動速度を有していない場合、ポジションリサージュは、ほぼ円に近い波形901として描かれる。
【0039】
一方、磁気ヘッド122が移動速度を有している場合、図8に示すように、復調信号N及び復調信号Qに位相差が生じる。このため、ポジションリサージュは、原点を基準に座標軸から+45度又は−45度回転させた軸の方向に、移動速度に依存して楕円形状につぶれた波形902として描かれる。なお、描かれるポジションリサージュは、磁気ヘッド122の移動方向や移動速度によっても異なる。次に、移動方向や移動速度の違いに基づいたポジションリサージュの違いに説明する。
【0040】
図10は、磁気ヘッド122が移動速度を有していない場合に描かれるポジションリサージュの例を示した図である。図10に示すように、磁気ヘッド122が移動速度を有していない場合には、どの方向でも歪みを生じていない円が描かれる。
【0041】
図11は、磁気ヘッド122がプラス方向に移動速度V1で移動する場合に描かれるポジションリサージュの例を示した図である。なお、移動速度V1は、比較的小さい移動速度とする。図11に示すように、原点を中心にX座標軸を、右回りに45度回転させた軸1101で原点に近づく方向につぶれたようなポジションリサージュが描かれる。また、図11に示すように、磁気ヘッド122がプラス方向に移動する場合、対称軸1102は、+45度の方向となる。
【0042】
図12は、磁気ヘッド122がプラス方向に移動速度V2で移動する場合に描かれるポジションリサージュの例を示した図である。なお、移動速度V2は、比較的大きい移動速度とし、移動速度V2>移動速度V1となる。図12で描かれるポジションリサージュは、軸1201の原点に近づく方向に、図11で描かれるポジションリサージュと比べて、さらにつぶれた図形となる。このように、磁気ヘッド122の移動速度が速くなるに従って、ポジションリサージュがよりつぶれた図形となる。
【0043】
図13は、磁気ヘッド122がマイナス方向に移動速度V1で移動する場合に描かれるポジションリサージュの例を示した図である。図13に示すように、原点を中心にX座標軸を、Y座標プラス方向に45度回転させた軸1301で原点に近づく方向につぶれたようなポジションリサージュが描かれる。また、図13に示すように、磁気ヘッド122がプラス方向に移動する場合、対称軸1302は、―45度の方向となる。
【0044】
図14は、磁気ヘッド122がマイナス方向に移動速度V2の場合に描かれるポジションリサージュの例を示した図である。図14で描かれるポジションリサージュは、軸1401の原点に近づく方向に、図13で描かれるポジションリサージュと比べて、さらにつぶれた図形となる。このように、磁気ヘッド122の移動速度が速くなるに従って、ポジションリサージュがよりつぶれた図形となる。
【0045】
図11〜図14に示すように、磁気ヘッド122の移動速度が速いほどリサージュはつぶれ、移動速度がプラス方向であれば対称軸は+45度となり、移動速度がマイナス方向であれば対称軸は−45度となる。このように、磁気ヘッド122の移動方向によって対称軸が90度変化する。
【0046】
このように、つぶれたポジションリサージュを描くような状態では、磁気ヘッド122の位置の特定精度が低下する。そこで、本実施形態にかかるディスク記憶装置100の速度補正部311では、この特性を利用して、復調信号N、Qに対して、移動速度による位置復調誤差を補正することとした。
【0047】
図3に戻り、速度補正部311は、復調信号Nと復調信号Qとを位相平面上でそれぞれ異なる座標軸の値(本実施形態では、復調信号NをX座標の値、復調信号QをY座標の値)に割り当てた位相平面で、上述したようなポジションリサージュの軌跡を描いた際、位相平面の原点で直交する2軸と交わる軌跡間の長さの比を1対1とするベクトルの成分の補正を、復調信号N及び復調信号Qに対して行う。本実施形態において、直交する2軸は、位相平面上の原点を基準に座標軸を45度回転した第1の軸と、第1の軸と原点で直交する第2の軸とする。
【0048】
図15は、速度補正部311による補正の概念を示した図である。図15に示すように、速度補正部311は、磁気ヘッド122が移動速度を有することでつぶれたポジションリサージュの軌跡1501を、座標軸から+45度回転させた軸又は−45度回転させた軸の方向に増幅させ、ポジションリサージュの軌跡が円1502とする補正を行うことした。
【0049】
この+45度回転させるか、―45度回転させるかは、磁気ヘッド122の移動方向によって異ならせる。図16は、速度補正部311における、磁気ヘッド122の移動方向に基づく補正の概念を示した図である。図16のグラフ1601は、マイナス方向に磁気ヘッド122がシークしたことで楕円形状となったポジションリサージュを示している。また、グラフ1602は、プラス方向に磁気ヘッド122がシークしたことで楕円形状となったポジションリサージュを示している。そして、速度補正部311は、マイナス方向又はプラス方向に応じて異なる補正を行い、グラフ1603に示す円形状に補正する。
【0050】
このように、速度補正部311は、磁気ヘッド122が移動している方向に基づいて、原点を基準にX座標軸を45度回転させた軸と、原点を基準にX座標軸を−45度回転させた軸と、のいずれか1つのベクトルの成分を補正する。
【0051】
具体的な復調アルゴリズムとしては、本実施形態にかかる速度補正部311は、磁気ヘッド122がマイナス方向に移動するシークの場合、+45度回転させた軸を表すベクトルの成分を補正の対象とする。そして、速度補正部311は、復調信号N、Qを位相平面上で表したベクトルに対して、−45度回転する回転行列を乗じた後、X軸方向に補正係数で示した幅だけ拡大する拡大行列を掛け、最後に+45度回転する回転行列を掛ける。
【0052】
補正係数は、楕円形状のポジションリサージュを45度回転させた後の、X座標軸とポジションリサージュの軌跡との交点までの距離と、Y座標軸と当該軌跡との交点までの距離と、の比に基づいて設定された係数とする。また、補正係数は、磁気ヘッド122の移動速度に依存するほか、磁気ヘッド122のリードコア幅によっても変化する。本実施形態では、Flash ROM128に予め移動速度に応じた補正係数のテーブルを記憶することとした。しかしながら、補正係数をこのような手法で用いることに制限するものではなく、例えば工場内の試験工程などで実測、保存し、速度補正に使用する形態も考えられる。
【0053】
一方、速度補正部311は、磁気ヘッド122がプラス方向に移動するシークの場合、―45度回転させた軸を表すベクトルの成分を補正の対象とする。そして、速度補正部311は、復調信号N、Qを位相平面上で表したベクトルに対して、−45度回転する回転行列を掛けた後、X軸方向に補正係数で示した幅だけ拡大する拡大行列を掛け、最後に+45度回転する回転行列を掛ける。
【0054】
これらの補正により、磁気ヘッド122が移動速度を有していることで、つぶれた楕円形状のポジションリサージュとなった場合に、短径方向を長くし、円形状とする補正がなされたことになる。これにより、復調信号N、Qの位相差が補正されたので、位置復調をより正確に行うことができる。
【0055】
また、速度補正部311は、速度算出部313により算出された移動速度、及び位置特定対象となる磁気ヘッド122に基づいて適切な補正係数を、Flash ROM128から読み出す。なお、本実施形態においては、磁気ヘッド122が、N+1(ヘッド0〜ヘッドN)個あり、CPU126は、磁気ヘッド122のそれぞれについて位置の特定が行われるものとする。
【0056】
図17は、移動速度に基づく補正係数の遷移の例を示した図である。図17に示す補正係数で、曲線1801は、コア幅がトラックピッチの0.5倍の場合の補正係数の遷移を示している。一方、曲線1802は、コア幅がトラックピッチの0.9倍の場合の補正係数の遷移を示している。図17に示すように、磁気ヘッド122のコア幅及び磁気ヘッド122の移動速度に応じて、補正係数が異なる。つまり、補正係数は、磁気ヘッド122の移動速度のほか、トラックピッチに対する、磁気ヘッド122のリードコア幅に応じて適切な値を選択する必要がある。そこで、本実施形態のように、補正係数のテーブルをFlash ROM128に埋め込むこととした。なお、テーブルで保持する方式のほか、工場内の試験工程でヘッド個別に実測で速度補正係数を算出し、これを保存、使用することも有効である。
【0057】
ところで、図17に示すように、補正係数は、磁気ヘッド122の移動速度の増加に従って増加する係数とする。このように、磁気ヘッド122の移動速度に応じて適切な補正係数が用いられることで、磁気ヘッド122の移動速度に応じてつぶれたポジションリサージュを円形状に適切に補正できる。つまり、補正係数は、つぶれた楕円形状のポジションリサージュの長径と短径との比率(長径/短径)から求められる。
【0058】
また、ディスク記憶装置100は、複数の磁気ヘッド122を備え、磁気ヘッド122毎にコア幅が異なっている。このため、磁気ヘッド122のそれぞれについて位置を特定する場合、磁気ヘッド122毎に補正係数を用意する必要がある。このため、本実施形態では、図3に示すように、Flash ROM128が、磁気ヘッド122毎に補正係数を記憶することとした。
【0059】
ヘッド位置復調部312は、速度補正部311により補正された後の復調信号N、Qに基づいて、磁気ヘッド122のリードコアの位置信号を復調する。本実施形態にかかるヘッド位置復調部312は、補正された後の復調信号N、Qを入力し、復調信号N、Qにより位相平面に形成されるベクトルの方向を示す位相角θを磁気ヘッド122の位置を示す信号yとして出力する。本実施形態にかかるヘッド位置復調部312では、arctan(復調信号Q/復調信号N)またはarctan(復調信号N/復調信号Q)を用いて復調することとするが、他の手法を用いても良い。これにより、磁気ヘッド122の位置が特定できる。
【0060】
VCM制御部316は、ヘッド位置復調部312で特定された磁気ヘッド122の位置を示す信号yで補正した制御信号rに従って、モータドライバ121の動作制御を行なうことで、磁気ヘッド122の位置制御を行なう。
【0061】
図18は、ヘッド位置復調部312により復調した結果を示したグラフである。図18に示すグラフでは、速度補正部311による補正を行わなかった場合の復調結果が曲線1701となる。曲線1701のように、速度補正部311による補正が行われなかった場合、実位置と復調結果とが非線形となる。
【0062】
これに対し、速度補正部311による補正を行った場合の復調結果が直線1702となる。直線1702のように、速度補正部311で補正が行われた場合、補正を行わなかった場合と比べて、線形性が保たれている。このように、速度補正部311が補正を行うことで、磁気ヘッド122の位置の特定の際のリニアリティを向上させることができる。換言すれば、磁気ヘッド122の位置特定の精度を向上させることができる。
【0063】
速度算出部313は、復調された磁気ヘッド122の位置に基づいて、磁気ヘッド122の移動速度を算出し、速度補正部311に出力する。磁気ヘッド122の移動速度の算出手法は、どのような手法を用いても良いが、例えば、速度算出部313は、今回入力された磁気ヘッド122の位置から、前回入力された磁気ヘッド122の位置を減算することで距離を求めた後、当該距離に対して、位置を求めるまでの時間間隔で除算することで移動速度を算出する。そして、速度補正部311は、入力された移動速度に応じて、適切な補正係数を用いた補正が可能となる。
【0064】
ところで、Flash ROM128に格納された補正係数は、予め座標算出部314及び係数算出部315により算出され、記憶された係数である。本実施形態において、補正係数の算出は、ディスク記憶装置100を出荷する前に行うこととするが、本実施形態は算出するタイミングを制限するものではない。この補正係数を記録する際に、ディスク記憶装置100は磁気ヘッド122に対してランダムシークを行わせることとする。
【0065】
図3に戻り、座標算出部314は、磁気ヘッド122のランダムシーク時に、NULL復調部321により復調された復調信号Nと復調信号Qとを位相平面上にそれぞれ異なる座標軸の値に割り当てることでベクトルとして示した際、当該ベクトルに対して原点を基準に45度回転させる。これにより、ポジションリサージュがつぶれる方向の軸が、座標軸に割り当てられることになる。本実施形態では、ポジションリサージュがつぶれる方向の軸が、X座標に割り当てられたものとする。そして、座標算出部314は、回転させた後のベクトルの頂点を示す位置座標を、移動速度別に算出する。
【0066】
係数算出部315は、座標算出部314により算出された移動速度別の位置座標のうち、位相平面のX座標軸上の位置座標から原点までの距離と、Y座標軸上の位置座標から原点までの距離と、の比に基づいて、移動速度別の補正係数を算出する。本実施形態では、係数算出部315は、移動速度別に、Y座標軸上の位置座標から原点までの距離を、位相平面のX座標軸上の位置座標から原点までの距離で除算して、移動速度別の補正係数を算出する。そして、算出された移動速度別の補正係数は、Flash ROM128に記憶される。なお、当該移動速度別の補正係数の算出は、磁気ヘッド122毎に行うこととする。
【0067】
図19は、補正係数の算出処理の手順を示すフローチャートの例である。図19に示すように、ディスク記憶装置100において、補正係数を算出する際、CPU126が、磁気ヘッド122のランダムシークを実行制御する(ステップS1901)。このランダムシークにより移動速度が異なる、復調信号のサンプルを複数得られる。
【0068】
そして、CPU126が、変数iに初期値‘0’を設定する(ステップS1902)。その後、座標算出部314は、ランダムシーク時にNULL復調部321により復調された復調信号N、Qを各座標軸に割り当てたベクトルの頂点の座標を、45度回転して、移動速度別にバッファRAM129に保存する(ステップS1903)。当該処理を繰り返すことで、バッファRAM129に、移動速度別に、各ベクトルの頂点により描かれるポジションリサージュが保存されることになる。
【0069】
その後、CPU126は、変数iに‘1’追加した後、変数iが規定回数以上であるか否かを判定する(ステップS1904)。規定回数未満の場合(ステップ1904:No)、ステップS1903の処理を繰り返す。
【0070】
一方、CPU126が、規定回数以上と判定した場合(ステップS1904:Yes)、磁気ヘッド122によるランダムシークを停止制御する(ステップS1905)。
【0071】
その後、係数算出部315が、バッファROM129に保存されて45度回転させた後の各ベクトルの頂点で描かれるポジションリサージュの軌跡とX座標軸との交点距離と、当該軌跡とY座標軸との交点距離との比を、移動速度別に算出する(ステップS1906)。
【0072】
そして、係数算出部315は、算出した比を、補正係数として、Flash ROM128上のテーブルに移動速度及び磁気ヘッド122別に格納し(ステップS1907)、終了する。
【0073】
つまり、速度補正値は、それぞれの移動速度毎に算出する必要があるが、本実施形態では、ランダムシークを実行することで、磁気ヘッド122を様々な速度で移動させる。そして、45度傾けた後の復調信号N、Qを、移動速度毎にFlash ROM128に保存する。そして、バッファRAM129は、この復調信号N、Qで表されるベクトルの頂点で移動速度別に描かれたポジションリサージュを保存する。そして、係数算出部315は、移動速度毎のポジションリサージュのそれぞれから、磁気ヘッド122毎のすべての移動速度における補正係数を算出することが可能となる。
【0074】
次に、本実施の形態にかかるディスク記憶装置100における、磁気ヘッド122の位置を特定するための処理について説明する。図20は、本実施の形態にかかるディスク記憶装置100における上述した処理の手順を示すフローチャートである。
【0075】
まず、磁気ヘッド122のリードコアが、NULLサーボパターンから位置情報信号PosN、及びPosQを読み出す(ステップS2001)。
【0076】
次に、NULL復調部321は、位置情報信号PosN、PosQに対してDFT(Discrete Fourier Transform)演算を行い、復調信号N、Qを復調する(ステップS2002)。
【0077】
その後、速度算出部313が、前回復調された磁気ヘッド122等に基づいて、磁気ヘッド122の移動速度を算出する(ステップS2003)。移動速度の算出手法は、従来から提案されている様々な手法が存在するため、説明を省略する。
【0078】
そして、速度補正部311が、復調信号N、Qに対して、ステップS2003で算出された移動速度及び磁気ヘッド122に対応する補正係数を用いて補正を行う(ステップS2004)。この補正を行う際、速度補正部311は、復調信号N、Qを各座標軸に割り当てることで表されたベクトルに対して、45度(又は−45度)回転させた後、補正係数だけ拡大する拡大行列を乗じ、最後に−45度(又は45度)回転させる。
【0079】
その後、ヘッド位置復調部312が、補正した後の復調信号N、Qに基づいて、磁気ヘッド122のリードコアを示す位置信号を復調する(ステップS2005)。
【0080】
上述した処理手順により、本実施形態にかかるディスク記憶装置100では、磁気ヘッド122の移動速度に応じた補正が行われた後に、位置信号が復調される。
【0081】
(第2の実施形態)
第1の実施形態は、ポジションリサージュの基本波形が円となる場合について説明した。しかしながら、補正の対象となるポジションリサージュの基本波形は円に制限するものではない。そこで第2の実施形態では、第1の実施形態と磁気ヘッド122の検出感度が異なるため、ポジションリサージュの基本波形が第1の実施形態と異なる場合について説明する。なお、ディスク記憶装置100の構成は第1の実施形態と同様として説明を省略する。
【0082】
図21は、第2の実施形態にかかる磁気ヘッド122の検出感度を示した図である。本実施形態では、図21に示すように、磁気ヘッド122のコア幅2101と、検出感度100%の幅と、が同一の矩形上の線2102を描く。この線2102では、コア幅の両端で100%から0%に検出感度が変化する。
【0083】
図22は、第2の実施形態のディスク記憶装置100における、磁気ヘッド122が移動速度を有する場合と有しない場合とにおける、復調信号N及び復調信号Qの軌跡を描いた図である。軌跡2201は、磁気ヘッド122が移動速度を有していない場合の復調信号Nの軌跡を示している。また、移動軌跡2204は、磁気ヘッド122が移動速度を有していない場合の復調信号Qの軌跡を示している。磁気ヘッド122の検出感度が、図21に示すような線を描く場合には、図22に示すように、復調信号N及び復調信号Qの軌跡も直線状となる。
【0084】
そして、磁気ヘッド122がプラス方向に移動速度を有している場合、復調信号Nは軌跡2202を描き、復調信号Qは軌跡2203を描く。図22に示すように、復調信号N及び復調信号Qは、磁気ヘッド122が移動速度を有していると、位相が変化する。図22に示すように、磁気ヘッド122がプラス方向に移動速度を有すると、復調信号N及び復調信号Qの軌跡の幅が狭まるように位相が変化する。一方、図22には示していないが、磁気ヘッド122がマイナス方向に移動速度を有すると、復調信号N及び復調信号Qの軌跡の幅が広まるように位相が変化する。そして、移動速度が大きいほど、位相の変化の幅は大きくなる。
【0085】
図23は、磁気ヘッド122が移動速度を有していない場合、有している場合、及び速度補正部311により補正した場合で描かれるポジションリサージュを説明した図である。図23に示すように、磁気ヘッド122が移動速度を有していない場合には8角形のポジションリサージュ2301を描く。一方、磁気ヘッド122が移動速度を有している場合には、移動速度を有してない場合と比べて、原点を基準にX座標軸から−45度回転させた軸の方向に、つぶれた8角形のポジションリサージュ2302が描かれる。そして、速度補正部311により復調信号N、及び復調信号Qを補正した後、原点を基準にX座標軸から−45度回転させた軸の方向で拡大されるため、軌跡2303を描くことになる。なお、補正手法は、第1の実施形態と同様として説明を省略する。
【0086】
ヘッド位置復調部312は、速度補正部311により補正された後の復調信号N、Qに基づいて、磁気ヘッド122のリードコアの位置信号を復調する。図24は、ヘッド位置復調部312により復調した結果を示したグラフである。図24に示すグラフでは、速度補正部311による補正を行わなかった場合の復調結果が曲線2401となる。
【0087】
これに対し、磁気ヘッド122が移動速度を有していない場合、及び速度補正部311による補正を行った場合の復調結果は、曲線2402で重なり合って示される。つまり、速度補正部311で補正が行われた場合、磁気ヘッド122が移動速度を有していない場合と同等の復調結果が得られる。さらに、曲線2402は、曲線2401よりも、直線2403に近い値を示しているため、曲線2402は、曲線2401と比べて線形性が高い。従って、速度補正部311が補正を行うことで、補正を行わなかった場合と比べて、磁気ヘッド122の位置の特定の際のリニアリティを向上させることができる。換言すれば、磁気ヘッド122の位置特定の精度を向上させることができる。
【0088】
本実施形態に示すようにポジションリサージュが8角形の場合であっても、磁気ヘッド122の移動速度に基づく補正を行うことで、位置特定の精度を向上させることができる。また、ポジションリサージュの形状が円形及び8角形以外の形状であっても、第1の実施形態及び第2の実施形態で示した補正を行うことで、同様の効果を得ることができる。
【0089】
(変形例)
また、上述した実施形態では、サーボパターンがNULLサーボパターンの場合について説明した。しかしながら、サーボパターンがNULLサーボパターンに制限するものではなく、例えば面積サーボパターンであっても同様の効果を得ることができる。
【0090】
上述した実施形態では2相のNULLサーボパターンから、位置情報信号PosN、PosQを得られる。これに対し、4相の面積サーボパターンから得られる位置情報信号PosA、PosB、PosC、及びPosDにおいて、PosN=PosA−PosB、及びPosQ=PosC−PosDと等価となる。よって、面積サーボパターンであっても、上述した処理を適用することができる。
【0091】
なお、本実施形態では、磁気ヘッド122の速度補正を行ったが、他の補正手法を組み合わせても良い。本実施形態にかかるディスク記憶装置100によれば、上述した補正手法のいずれか1つ以上を用いて復調信号N、Qの補正を行うことで、磁気ヘッド122の位置の特定精度を向上させることができる。
【0092】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0093】
100…ディスク記憶装置、126…CPU、128…Flash ROM、131…HDC、311…速度補正部、312…ヘッド位置復調部、313…速度算出部、314…座標算出部、315…係数算出部、321…NULL復調部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に対するヘッドの位置決めを行うために前記媒体に記録されたサーボパターンを前記ヘッドが読み出した読出信号に基づいて、第1の復調信号、及び前記第1の復調信号と90度の位相差を有する第2の復調信号を復調する復調手段と、
前記第1の復調信号と前記第2の復調信号とを平面上の異なる座標軸の値として示したリサージュ図形の軌跡を描いた際、前記平面の原点で直交する2軸と交わる軌跡間の長さの比を等しくする補正を、前記第1の復調信号及び前記第2の復調信号に対して行う補正手段と、
前記補正手段で補正された後の前記第1の復調信号、及び前記第2の復調信号に基づいて、前記ヘッドの位置を特定するための位置信号を復調する位置復調手段と、
を備える位置復調装置。
【請求項2】
前記補正手段は、前記平面上の原点を基準に座標軸を45度回転させた第1の軸と交わる軌跡間の長さと、当該第1の軸と原点で直交する第2の軸と交わる軌跡間の長さと、の比を等しくする補正を、前記第1の復調信号及び前記第2の復調信号に対して行う、
請求項1に記載の位置復調装置。
【請求項3】
媒体に対するヘッドの位置決めを行うために前記媒体に記録されたサーボパターンを前記ヘッドが読み出した読出信号に基づいて、第1の復調信号、及び前記第1の復調信号と90度の位相差を有する第2の復調信号を復調する復調手段と、
前記第1の復調信号を一方の座標軸の値とし、前記第2の復調信号を他方の座標軸の値として示された平面で、各座標軸から45度傾いた軸に対する補正を、前記第1の復調信号及び前記第2の復調信号に対して行う補正手段と、
前記補正手段で補正された後の前記第1の復調信号、及び前記第2の復調信号に基づいて、前記ヘッドの位置を特定するための位置信号を復調する位置復調手段と、
を備える位置復調装置。
【請求項4】
前記補正手段は、前記ヘッドが移動している方向に基づいて、原点を基準に座標軸を45度回転させた軸、及び当該原点を基準に当該座標軸を−45度回転させた軸のいずれか1つに基づいて補正する、
請求項2又は3に記載の位置復調装置。
【請求項5】
前記補正手段は、前記ヘッドの移動速度の増加に従って、前記第1の復調信号及び前記第2の復調信号を補正する補正係数を増加させる、
請求項1乃至4のいずれか1つに記載の位置復調装置。
【請求項6】
復調された前記第1の復調信号と前記第2の復調信号とを前記平面上にそれぞれ異なる座標軸に割り当てることでベクトルとして示した際、当該ベクトルに対して原点を基準に45度回転させ、回転後のベクトルの頂点の位置座標を、速度別に算出する座標算出手段と、
前記座標算出手段により算出された速度別の前記位置座標のうち、前記平面の第1の座標軸上の位置座標から原点までの距離と、当該第1の座標軸を90度回転させた第2の座標軸上の位置座標から原点までの距離と、の比に基づいて、速度別の補正係数を算出する係数算出手段と、をさらに備える、
請求項5に記載の位置復調装置。
【請求項7】
前記座標算出手段による前記位置座標の速度別の算出と、前記係数算出手段による速度別の前記補正係数の算出と、を複数のヘッドのそれぞれに対して行う、
請求項6に記載の位置復調装置。
【請求項8】
位置復調装置で実行される位置復調方法であって、
復調手段が、媒体に対するヘッドの位置決めを行うために前記媒体に記録されたサーボパターンを前記ヘッドが読み出した読出信号に基づいて、第1の復調信号、及び前記第1の復調信号と90度の位相差を有する第2の復調信号を復調する復調ステップと、
補正手段が、前記第1の復調信号と前記第2の復調信号とを平面上の異なる座標軸の値として示したリサージュ図形の軌跡を描いた際、前記平面の原点で直交する2軸と交わる軌跡間の長さの比を等しくする補正を、前記第1の復調信号及び前記第2の復調信号に対して行う補正ステップと、
位置復調手段が、前記補正ステップで補正された後の前記第1の復調信号、及び前記第2の復調信号に基づいて、前記ヘッドの位置を特定するための位置信号を復調する位置復調ステップと、
を含む位置復調方法。
【請求項9】
前記補正ステップは、前記平面上の原点を基準に座標軸を45度回転させた第1の軸と交わる軌跡間の長さと、当該第1の軸と原点で直交する第2の軸と交わる軌跡間の長さと、の比を等しくする補正を、前記第1の復調信号及び前記第2の復調信号に対して行う、
請求項8に記載の位置復調方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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