説明

位置情報履歴比較システム

【課題】携帯通信機器から得られる位置情報を、携帯通信機器間で相互に関連付けることによって、当該携帯通信機器を持つユーザー間の人間関係に関する所定の情報を提供する。
【解決手段】複数の携帯通信機器の各々から、携帯通信機器側で自動的に蓄積保存された位置情報履歴を受信し、相互に比較する位置情報履歴比較システムが記載されている。これらの現在位置情報の履歴を比較照合することにより、予め定義された相関関係を抽出し、携帯通信機器の移動履歴の関連性の有無を特定する。この結果によって、同居の家族であるといった、当該携帯通信機器を持つユーザー間の人間関係に関する所定の情報を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯通信機器によって、その携帯通信機器を携帯するユーザーの移動履歴の相関関係を検出するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、PHS(Personal Handyphone System)、スマートフォン等の携帯通信機器の利用範囲が飛躍的に広がってきている。本来の機能である通話機能の他に、データ通信機能などが強化され、ユーザーに対してインターネットを介した種々のサービスが提供されている。特に、GPSを初めとする現在位置情報を利用する様々なサービスが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−070341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、現在の位置情報の利用方法としては、当該携帯通信機器の現在位置そのものや移動を検出するためだけに利用されている。他のユーザーとの関連性において、更に応用の幅が拡がる可能性があるが、そのような提案はなされていない。
【0005】
そこで、本発明の目的は、携帯通信機器から得られる位置情報を、携帯通信機器間で相互に関連付けることによって、当該携帯通信機器を持つユーザー間の人間関係に関する所定の情報を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の位置情報履歴比較システムは、インターネットへのアクセスが可能な通信機能と現在位置情報の検出機能を備えた複数の携帯通信機器の移動履歴の相関関係を検出するシステムであって、前記複数の携帯通信機器の各々から現在位置情報の履歴を受信し、前記現在位置情報の履歴を比較照合し、予め定義された相関関係を抽出し、携帯通信機器の移動履歴の関連性の有無を特定する。
【0007】
このような構成により、複数の携帯通信機器の移動履歴の相関関係を新たなユーザー情報として利用することが可能となる。
【0008】
また、前記相関関係は、前記複数の携帯通信機器を携帯するユーザー同士が同居しているか否かという情報を示すものであり、長時間滞在する位置が共通する場合に、同居していると判断する。このような構成により、家族割引といったサービスを非常に低コストに導入できる。
【0009】
更に、前記現在位置情報の検出機能は、GPSを利用することもできるが、その時に当該携帯通信機器と通信を行なっている基地局を特定するCell-IDを位置情報として利用することもできる。このような構成により、GPSの備えていない携帯通信機器への応用も可能となる。
【0010】
更に、前記携帯通信機器の移動履歴に関連性が認められた際に、その関連性を条件としたサービスの提供が行われ、そのサービス提供の履歴が記録される。このような構成により、ユーザーのサービス利用状況に応じた、更なるサービスの提供が可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係わる位置情報履歴比較システムによれば、携帯通信機器の位置情報履歴の相関関係から、当該携帯通信機器を持つユーザー間の人間関係に関する所定の情報を得ることができる。これによって、それらのユーザーに適したサービスの提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の実施例1に係る位置情報履歴比較システムを説明する図である。
【図2】図2は、本発明の実施例1に係る位置情報履歴比較システムにおいて、携帯通信機器に蓄積される履歴データベースの構成を示す図である。
【図3】図3は、本発明の実施例1に係る位置情報履歴比較システムの利用シナリオを説明する図である。
【図4】図4は、本発明の実施例1に係る位置情報履歴比較システムの利用シナリオを説明する図である。
【図5】図5は、本発明の実施例1に係る位置情報履歴比較システムにおいて、予め定義された相関関係を抽出し、携帯通信機器の移動履歴の関連性の有無を特定する方法を説明する図である。
【図6】図6は、本発明の実施例1に係る位置情報履歴比較システムにおいて、クーポン番号が表示されている携帯通信機器の画面を示す図である。
【図7】図7は、本発明の実施例2に係る位置情報履歴比較システムにおいて、携帯通信機器に蓄積される履歴データベースの構成を示す図である。
【図8】図8は、本発明の実施例2に係る位置情報履歴比較システムにおいて、予め定義された相関関係を抽出し、携帯通信機器の移動履歴の関連性の有無を特定する方法を説明する図である。
【図9】図9は、本発明の実施例3に係る位置情報履歴比較システムにおいて、スタンプ数が表示されている携帯通信機器の画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態による位置情報履歴比較システムを説明する。利用する携帯通信機器としては、現在位置情報の取得が可能で、インターネットへの通信機能を備えたものを想定する。具体的には、一般的な携帯電話、スマートフォンと呼ばれるタッチパネル付きの多機能携帯電話、タブレット型コンピュータが含まれる。現在位置情報の取得方法としては、GPS(Global Positioning System)や、基地局による三角測量などがある。
【実施例1】
【0014】
図1を参照して、携帯通信機器3Aを利用するユーザーAと携帯通信機器3Bを利用するユーザーBは、同じ家に住む家族(ここでは親子)だとする。また、携帯通信機器3A、3Bは、常時起動している常駐プログラムによって、現在位置情報を定期的に測位して内部の記憶領域に位置情報履歴データとして蓄積する。
【0015】
この履歴のデータベースの構成を図2に示す。この履歴データベースには、記録の行われた日時と、緯度、経度、その時に通信を行なっている基地局7を特定するCell-IDと、受信感度のフィールドが設けられている。データベースの内容は暗号化しておくことが望ましい。
【0016】
具体的には、衛星5からの信号に基づくGPS等を利用して、常駐プログラムが数分毎(例えば、5分毎)に現在位置情報を測位し緯度と経度を特定する。そして、前回の測位データの緯度と経度と比較する。もし、これらの緯度と経度がほぼ同一(例えば、高々10m程度の差異)であれば、履歴データベースへの記録は行わない。緯度と経度が異なる場合には、その時の日時と、緯度、経度、その時に通信を行なっている基地局7を特定するCell-IDと、受信感度を履歴データベースへ記録する。
【0017】
ユーザーAの行動は、概ね、平日は朝会社11へ出勤し、夜に自宅9に戻るといったパターンを持っているものとする。また、ユーザーBは、平日は朝学校15へ通学し、夕方に自宅9に戻るといったパターンを持っているものとする。このような場合には、帰宅時間に自宅9付近の緯度と経度が記録され、次のデータは出勤(通学)時間に移動の際の緯度と経度の記録となる。従って、後続の記録との時間差が滞在時間となる。
【0018】
この場合、携帯通信機器3Aに記録されている位置情報履歴データは、自宅9に長時間位置した情報と、会社11に長時間位置した情報とが平日の間繰り返され、休日には会社11の位置情報は現れない、といったようなものになると考えられる。
【0019】
また、携帯通信機器3Bに記録されている位置情報履歴データは、自宅9に長時間位置した情報と、学校15に長時間位置した情報とが平日の間繰り返され、休日には学校15の位置情報は現れない、といったようなものになると考えられる。
【0020】
図3および図4を参照して、この位置情報履歴比較システムの利用シナリオを説明する。携帯通信機器3A、3Bを持った親子が、レストラン13へ入るとする。また、このレストラン13では、同居家族の食事代金を10%割引くサービスを行っている。食事を終えて代金を支払う段になって、親子は携帯通信機器3A、3Bのカメラを用いて、テーブルに備え付けられているQRコードで示されたURLを読み込む。そして、URLが示すレストラン13のサイトへアクセスする。但し、このURLには、テーブルを特定する情報も含まれている為、2つのアクセスが同伴客であることがサーバー1側で検出できるようになっている。
【0021】
アクセスを受けたサーバー1では、携帯通信機器3A、3Bに対して、過去14日分の位置情報履歴データを要求する。そして、位置情報履歴データから、自宅が同一であることを例えば図5に示したような方法で確認する。
【0022】
まず、レストラン13のサーバー1は、アクセスを受けた後、過去14日分の位置情報履歴データを要求する(S1)。そして、受信した位置情報履歴から一定時間以上滞在するデータを抽出する。これは、日時データが大きく変化する前のデータを抽出すればよい。例えば、次のデータの日時が5時間以上離れているデータを抽出する(S2)。次に、抽出されたデータを緯度によってソートする(S3)。そして、緯度がほぼ同一(例えば、高々10m程度の差異)のデータをひとまとまりにして、その中で経度によってソートする(S4)。
【0023】
次に、経緯度がほぼ同一(例えば、高々10m程度の差異)のデータが7個以上となる滞在位置を抽出する(S5)。携帯通信機器A、B同士で、滞在位置に共通するものがあるかどうかを確認する(S6)。共通滞在位置が有れば、同居家族と判断して、割引クーポンを発行する(S7)。
【0024】
共通滞在位置がなければ、同居していない判断して、その旨の表示を行い割引クーポンは発行しない(S8)。しかし、旅行などで、同居家族であるにもかかわらず共通滞在位置が検出されないということもあるので、15日〜28日前の位置情報履歴データを要求し、それについて同様の処理を行って再度同居家族であるかどうかを判断するようにしても良い。
【0025】
割引クーポンは、携帯通信機器3A、3Bにクーポン番号と共に表示される(図6)。また、レジ側の端末(PC又は携帯通信機器)でも、この割引クーポンを受信する。従って、店員はレジ側の端末の割引クーポンの番号と、携帯通信機器3A、3Bに表示されている割引クーポンの番号が同じであれば、10%割引を実行する。
【実施例2】
【0026】
この実施例では、図1の携帯通信機器3A、3BにGPS機能が搭載されていない場合を想定する。しかし、携帯通信機器3A、3Bでは、通信中の基地局7を特定するCell-IDの取得が可能とする。
【0027】
従って、携帯通信機器3A、3Bは、記録されているCell-IDに対応する基地局からの電波の受信範囲に存在するということになる。従って、この実施例における位置情報は、Cell-IDとして記録される。この場合、図7に示したように、データベースは図2のデータベースから経緯度の情報を除いたものになる。その他の、処理は実施例1と同様である。
【0028】
上記シナリオでは、携帯通信機器3A、3Bは、自宅9において、常に同一の基地局7と通信を行うことになる為、夜間に繰り返し基地局7のCell-IDが取得されているはずである。この記録によって、携帯通信機器3A、3Bは同じ自宅9に住んでいると推定できる。
【0029】
以下、図8を参照する。携帯通信機器3A、3Bがレストラン13のサーバー1へアクセスするまでは、実施例1と同じである。アクセスを受けたサーバー1では、携帯通信機器3A、3Bに対して、過去14日分のCell-ID履歴データを要求する(S21)。
【0030】
そして、受信したCell-ID履歴から一定時間以上の滞在を示すデータを抽出する。実施例1と同様に、次のデータの日時が5時間以上離れているデータを抽出する(S22)。次に、Cell-IDが同一のデータが7個以上となるCell-IDを抽出する(S23)。携帯通信機器A、B同士で、それらのCell-IDに共通するものがあるかどうかを確認する(S24)。共通基地局(共通Cell-ID)が有れば、同居家族と判断して、割引クーポンを発行する(S25)。
【0031】
共通基地局がなければ、同居していないと判断して、その旨の表示を行い割引クーポンは発行しない(S26)。しかし、旅行などで、同居家族であるにもかかわらず共通Cell-IDが検出されないということもあるので、15日〜28日前の位置Cell-ID履歴データを要求し、それについて同様の処理を行って再度同居家族であるかどうかを判断するようにしても良い。
【0032】
やはり、割引クーポンは、携帯通信機器3A、3Bに表示される。また、レジ側の端末でも、この割引クーポンを受信する。従って、店員はレジ側の端末の割引クーポンの番号と、携帯通信機器3A、3Bに表示されている割引クーポンの番号が同じであれば、10%割引を実行する。
【実施例3】
【0033】
実施例1や実施例2では、レストラン13のサーバー1へユーザーの位置情報履歴が送信される。従って、ユーザーの位置情報履歴は、同様のサービスを提案する様々なサーバーへ分散してしまうことになる。これを避けるには、一定の信頼を持つ運営会社がサーバー1を管理すれば良い。そして、ユーザーの位置情報履歴は、常にこのサーバー1で、携帯通信機器の位置情報履歴を受信し相関の確認を行うようにすると良い。
【0034】
すなわち、レストラン13のテーブルに備え付けられているQRコードは、サーバー1を示すURLとなっている。やはり、URLにはレストラン13のテーブルを特定する情報も含まれている為、2つのアクセスが同伴客であることがサーバー1側で検出できるようになっている。
【0035】
そして、実施例1や実施例2と同様の処理により、同居家族であるか否かが判断され、結果が携帯通信機器A、Bに送信される。同居家族と判断された場合には、認証コード(割引クーポンに対応)が表示される。また、店員はレジ側の端末から、サーバー1へアクセスして、レストラン13のテーブルを特定する情報を指定し、認証コードを得る。この認証コードが、携帯通信機器3A、3Bに表示されているものと同じであれば、10%割引を実行する。
【0036】
従って、レジャー施設などの、レストラン13以外の施設で家族割引を行う場合でも、同じサーバー1へのURLコードを作成するだけで簡単にサービスの提供が可能となる。
【実施例4】
【0037】
この実施例では、実施例1または実施例2において、レジの店員が、クーポン番号の確認を行った後に、レストラン13のサーバー1へ確認済の情報を送信する。レストラン13のサーバー1は、常駐プログラムにリクエストメッセージを送信することで、レストラン13に携帯通信機器3A、3Bの内部の記憶領域を割り当てる。そして、スタンプ数として1を設定する。既に、割り当てがなされている場合には、スタンプ数を1だけ増分する。
【0038】
スタンプ数が更新されると、携帯通信機器3A、3Bの画面に現在のスタンプ数が表示される(図9)。このスタンプ数は、家族でレストラン13を利用した回数を示しており、一定回数に達した場合には優待サービスを受けることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上のように、本発明による位置情報履歴比較システムによれば、携帯通信機器側で自動的に蓄積保存された位置情報履歴を相互に比較することで、当該携帯通信機器を持つユーザー間の人間関係に関する所定の情報を得ることができる。これによって、新たな応用への選択肢を拡大することが可能となる。
【符号の説明】
【0040】
1 サーバー
3 携帯通信機器
5 衛星
7 基地局
9 自宅
11 会社
13 レストラン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターネットへのアクセスが可能な通信機能と現在位置情報の検出機能を備えた複数の携帯通信機器の移動履歴の相関関係を検出するシステムであって、
前記複数の携帯通信機器の各々から現在位置情報の履歴を受信し、
前記現在位置情報の履歴を比較照合し、予め定義された相関関係を抽出し、携帯通信機器の移動履歴の関連性の有無を特定することを特徴とする位置情報履歴比較システム。
【請求項2】
前記相関関係は、前記複数の携帯通信機器を携帯するユーザー同士が同居しているか否かという情報を示すものであり、長時間滞在する位置が共通する場合に、同居していると判断することを特徴とする請求項1に記載の位置情報履歴比較システム。
【請求項3】
前記現在位置情報の検出機能は、GPSを利用することを特徴とする請求項1に記載の位置情報履歴比較システム。
【請求項4】
前記現在位置情報の検出機能は、Cell-ID情報を利用することを特徴とする請求項1に記載の位置情報履歴比較システム。
【請求項5】
前記携帯通信機器の移動履歴に関連性が認められた際に、その関連性を条件としたサービスの提供が行われ、そのサービス提供の履歴が記録されることを特徴とする請求項1に記載の位置情報履歴比較システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−31080(P2013−31080A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166850(P2011−166850)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(596177559)インターマン株式会社 (14)
【Fターム(参考)】