説明

位置情報抽出システム及び位置情報抽出方法

【課題】ユーザの移動軌跡情報を提供する際に蓄積する位置情報のデータ量を効率的に削減すること。
【解決手段】位置情報抽出システム600は、ユーザの移動軌跡情報を提供するために必要な情報であって、ユーザに関する位置情報、位置情報が得られた時刻情報、及びユーザ識別子を含むポイントデータを抽出する位置情報抽出システムであって、ポイントデータをユーザ毎に抽出する対象抽出部601と、抽出されたユーザ毎のポイントデータから、時刻情報を基に複数の時系列ポイントデータを読み出して、時系列ポイントデータの示す位置が同一直線上に沿っているか否かを判定する軌跡判定部604と、同一直線上に沿っていると判定された時系列ポイントデータから、最初のポイントデータと最後のポイントデータを除く中間データの少なくとも一部を間引くデータ抽出保存部605とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザに関する移動軌跡情報の基となる位置情報を抽出する位置情報抽出システム及び位置情報抽出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、携帯電話機等の移動端末のユーザの移動軌跡に関する情報を提供する装置が知られている。例えば、下記特許文献1,2には、端末装置の移動軌跡情報や移動手段に関する情報を提供する装置に、端末装置の位置情報と時間情報とが関係づけて記憶されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−303383号公報
【特許文献2】特開2007−304009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、複数の端末装置を対象にして移動軌跡情報を提供しようとする場合には、各端末装置における位置情報の取得タイミングが様々に変化しうるため、位置情報の取得時間間隔によっては蓄積する位置情報のデータ量が膨大になってしまう場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、かかる課題に鑑みて為されたものであり、ユーザの移動軌跡情報を提供する際に蓄積する位置情報のデータ量を効率的に削減することが可能な位置情報抽出システム及び位置情報抽出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の位置情報抽出システムは、ユーザの移動軌跡情報を提供するために必要な情報であって、ユーザの位置を示す位置情報、位置情報が得られた時刻情報、及びユーザを特定するユーザ識別情報を含むポイントデータを抽出する位置情報抽出システムであって、ポイントデータをユーザ毎に抽出する対象抽出部と、対象抽出部によって抽出されたユーザ毎のポイントデータから、時刻情報を基に複数の時系列データを読み出して、複数の時系列データの示す位置が同一線上に沿っているか否かを判定する軌跡判定部と、軌跡判定部によって同一線上に沿っていると判定された複数の時系列データから、最初のポイントデータと最後のポイントデータを除く中間データの少なくとも一部を間引くデータ抽出部とを備える。
【0007】
或いは、本発明の位置情報抽出方法は、ユーザの移動軌跡情報を提供するために必要な情報であって、ユーザの位置を示す位置情報、位置情報が得られた時刻情報、及びユーザを特定するユーザ識別情報を含むポイントデータを抽出する位置情報抽出方法であって、対象抽出部が、ポイントデータをユーザ毎に抽出する対象抽出ステップと、軌跡判定部が、対象抽出部によって抽出されたユーザ毎のポイントデータから、時刻情報を基に複数の時系列データを読み出して、複数の時系列データの示す位置が同一線上に沿っているか否かを判定する軌跡判定ステップと、データ抽出部が、軌跡判定部によって同一線上に沿っていると判定された複数の時系列データから、最初のポイントデータと最後のポイントデータを除く中間データの少なくとも一部を間引くデータ抽出ステップとを備える。
【0008】
このような位置情報抽出システム及び位置情報抽出方法によれば、ユーザに関する位置情報、時刻情報、及びユーザ識別情報を含むポイントデータがユーザ毎に抽出され、抽出されたポイントデータから時系列に複数のデータが読み出され、これらの複数のデータが同一線上に沿っているか否かが判定され、同一線上に沿っていると判定された最初のポイントデータと最後のポイントデータとの間の中間データの少なくとも一部が間引かれる。これにより、ユーザの移動軌跡を求めるために必要なポイントデータが抽出されて記憶されることになり、移動軌跡情報を提供する際に蓄積する位置情報のデータ量を効率的に削減することができる。
【0009】
軌跡判定部は、所定規則で決定されるデータ間隔で抽出された時系列データを参照して同一線上から外れた範囲を特定した後に、該範囲にある時系列データをデータ間隔よりも細かいデータ間隔で抽出し、抽出した時系列データを対象に同一線上から外れた範囲を更に絞り込むことが好ましい。こうすれば、同一線上に沿ったポイントデータの数が膨大な場合であってもポイントデータの判定処理のステップ数を削減することができ、その結果、位置情報の抽出処理の負荷を軽減することができる。
【0010】
また、対象抽出部は、隣接するポイントデータ間に対応する移動方法を判定し、軌跡判定部は、ポイントデータを移動方法毎に抽出することも好ましい。かかる構成を採れば、ユーザの移動方法に対応して処理対象の位置情報を抽出することで、ユーザの実際の行動に対応した移動軌跡を求めることができる。
【0011】
さらに、対象抽出部は、隣接するポイントデータ間に対応する移動方法を判定し、軌跡判定部は、ポイントデータを移動方法毎に抽出し、データ間隔を決定するための所定規則を、移動方法に応じて変化させることも好ましい。この場合、ユーザの移動方法に応じてポイントデータの判定処理のデータ間隔を変化させることができ、位置情報の抽出処理の効率と精度とを両立させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ユーザの移動軌跡情報を提供する際に蓄積する位置情報のデータ量を効率的に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の好適な一実施形態にかかる移動通信システムの概略構成図である。
【図2】本発明の好適な一実施形態である位置情報抽出システムの機能構成を示すブロック図である。
【図3】図2の分類部によって加工されたポイントデータのデータ構成を示す図である。
【図4】図2の対象抽出部による移動方法判定処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】図2の移動方法情報データベースに保存される移動方法情報のデータ構成を示す図である。
【図6】図2の軌跡判定部によって用いられるポイントデータ抽出のための関数の特性を示すグラフである。
【図7】図2のデータ抽出保存部によって間引きされるポイントデータを示す概念図である。
【図8】図2の位置情報抽出システムによる位置情報抽出時の動作を示すフローチャートである。
【図9】図8のステップS205の処理を詳細に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面とともに本発明による位置情報抽出システム及び位置情報抽出方法の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。本実施形態に係る位置情報抽出システムは、ユーザの移動軌跡情報を提供する際に蓄積する位置情報を抽出するためのサーバシステムである。
【0015】
図1は、本発明の好適な一実施形態にかかる移動通信システム10の概略構成図である。図1に示すように、この移動通信システム10は、移動機100、BTS(基地局)200、RNC(無線ネットワーク制御装置)300、交換機400、各種処理ノード700、および管理センタ500を含んで構成されている。また、この管理センタ500は、社会センサユニット501、ペタマイニングユニット502、モバイルデモグラフィユニット503、および可視化ソリューションユニット504から構成されている。
【0016】
交換機400は、BTS200、RNC300を介して、移動機100の位置情報を収集する。RNC300は、移動機100との間で特定の通信接続が行われる際に、移動機100の位置を測定することができる。交換機400は、このように測定された移動機100の位置情報を、移動機100が特定の通信を実行する際に受け取ることができる。交換機400は受け取った位置情報を記憶しておき、所定のタイミング、または管理センタ500からの要求に応じて収集した位置情報を管理センタ500に出力する。
【0017】
各種処理ノード700は、RNC300および交換機400を通じて移動機100の位置情報を取得し、場合によっては位置の再計算などを行い、所定のタイミングで、または、管理センタ500からの要求に応じて、収集された位置情報を管理センタ500に出力する。
【0018】
管理センタ500は、上述したとおり、社会センサユニット501、ペタマイニングユニット502、モバイルデモグラフィユニット503、および可視化ソリューションユニット504を含んで構成されており、各ユニットでは、移動機100の位置情報に用いた統計処理を行う。
【0019】
社会センサユニット501は、各交換機400および各種処理ノード700から、またはオフラインで移動機100の位置情報等を含んだデータを収集するサーバ装置である。この社会センサユニット501は、交換機400および各種処理ノード700から定期的に出力されたデータを受信したり、または社会センサユニット501において予め定められたタイミングに従って交換機400および各種処理ノード700からデータを取得できるように構成されている。
【0020】
ペタマイニングユニット502は、社会センサユニット501から受信したデータを所定のデータ形式に変換するサーバ装置である。例えば、ペタマイニングユニット502は、ユーザIDをキーにソーティング処理を行ったり、データの属するエリアごとにソーティング処理を行ったりする。
【0021】
モバイルデモグラフィユニット503は、ペタマイニングユニット502において処理されたデータに対する集計処理、すなわち各項目のカウンティング処理を行うサーバ装置である。例えば、モバイルデモグラフィユニット503は、あるエリアに在圏するユーザ数をカウントしたり、また在圏分布を集計したりすることができる。
【0022】
可視化ソリューションユニット504は、モバイルデモグラフィユニット503において集計処理されたデータを可視可能に処理するサーバ装置である。例えば、可視化ソリューションユニット504は、集計されたデータを地図上にマッピング処理することができる。なお、このように統計処理された情報は、当然にプライバシーを侵害しないように個人等は特定されないように加工されている。
【0023】
なお、社会センサユニット501、ペタマイニングユニット502、モバイルデモグラフィユニット503および可視化ソリューションユニット504はいずれも、前述したようにサーバ装置により構成され、図示は省略するが、通常の情報処理装置の基本構成、即ち、CPU、RAM、ROM、キーボードやマウス等の入力デバイス、外部との通信を行う通信デバイス、情報を記憶する記憶デバイス、および、ディスプレイやプリンタ等の出力デバイスを備えることは言うまでもない。
【0024】
次に、本実施形態に係る位置情報抽出システムの機能構成について説明する。図2は、本発明の好適な一実施形態である位置情報抽出システム600の機能構成を示すブロック図である。同図に示す位置情報抽出システム600は、分類部602,移動速度算出部603A、及び移動方法判定部603Bを有する対象抽出部601と、軌跡判定部604と、データ抽出保存部(データ抽出部)605と、軌跡導出部606と、出力部607とを備えている。
【0025】
位置情報抽出システム600の処理対象である位置情報は、ユーザの位置を示す位置情報(緯度・経度情報)、当該位置情報が得られた時刻情報(タイムスタンプ)、および当該ユーザのユーザ識別子を含んだポイントデータとして記憶されている。多数のユーザについての複数の時刻にわたるポイントデータは、位置情報データベース610に保存されている。ここでの「ポイントデータ」としては、GPS測位システムで得られたGPS測位データを採用することができ、周期的に(例えば、1秒間隔)で取得されるものである。一方、2次元の地図を表す地図データは、地図データベース620に保存されている。また、後述する移動方法判定部603Bによる判定で得られた各ポイントデータ間の移動方法情報は、移動方法情報データベース630に保存される。
【0026】
図2の論理的な構成と図1のシステム構成との対応について概説する。ここでは、一例として、位置情報抽出システム600が、図1のモバイルデモグラフィユニット503および可視化ソリューションユニット504に相当し、位置情報データベース610、地図データベース620および移動方法情報データベース630が、図1のペタマイニングユニット502に相当する。
【0027】
但し、別の例として、位置情報抽出システム600における軌跡導出部606および出力部607が図1のモバイルデモグラフィユニット503および可視化
ソリューションユニット504に相当し、位置情報抽出システム600における他の構成部、位置情報データベース610、地図データベース620および移動方法情報データベース630が、図1のペタマイニングユニット502に相当する構成を採用してもよい。
【0028】
以下、図2の位置情報抽出システム600の各部の機能を説明する。
【0029】
分類部602は、複数のユーザについての複数の時刻にわたるポイントデータを位置情報データベース610から読み出して位置情報抽出システム600に入力し、入力された個々のポイントデータにユニークな識別子(以下「ポイント識別子」という)を付与し、そして、入力されたポイントデータをユーザ毎に分類し時系列に並べる。図3は、分類部602によって読み出されて加工されたポイントデータの構成を示しており、分類部602は、ユーザ識別子“USERID1”、緯度情報“X1”、経度情報“Y1”、タイムスタンプ“2009/10/3 8:00”、及びポイント識別“XXX”を含むような複数のポイントデータを、ユーザ識別子毎にタイムスタンプの示す時刻順に並べ替えて保持する。なお、個々のポイントデータにポイント識別子を付与することは必須ではなく、入力された個々のポイントデータを何らかの手法で識別可能であればよい。例えば、ポイントデータが予め含んでいるユニークな情報によって識別してもよいし、位置情報抽出システム600への入力時刻や入力順情報から算出可能なユニークな情報によって識別してもよい。
【0030】
移動速度算出部603Aは、複数の時刻にわたるユーザ毎のポイントデータにおける、時系列上で隣接するポイントデータ間の距離および時間差を求め、当該ポイントデータ間の距離および時間差に基づいて各ポイントデータ間の移動速度を算出する。移動方法判定部603Bは、算出された各ポイントデータ間の移動速度、ポイントデータに含まれる位置情報、および、予め記憶された前記公共交通機関の路線地図データに基づいて、各ポイントデータ間における移動方法を判定する。なお、判定で得られた各ポイントデータ間の移動方法情報は、移動方法情報データベース630に保存される。
【0031】
具体的には、移動速度算出部603Aは、ユーザ毎に分類され時系列に並べられたポイントデータにおいて、あるユーザの一連の移動履歴に対応する複数のポイントデータを1つのラインとして捉え、各ラインに対しユニークな識別子(ライン識別子)を割り当て、位置情報抽出システム600内で一時記憶する。そして、移動速度算出部603Aおよび移動方法判定部603Bは、対象ユーザの時系列に並べたポイントデータにおいて隣接する2つのポイントデータを対象に、移動方法判定処理を実行する。
【0032】
図4は、この移動方法判定処理の手順を示すフローチャートである。移動速度算出部603Aは、当該2つの対象ポイントデータの位置情報より対象ポイントデータ間の距離を求めるとともに、対象ポイントデータのタイムスタンプより時間差を求め、得られた対象ポイントデータ間の距離を時間差で割り算することで、対象ポイントデータ間の移動速度を算出する(ステップS101)。なお、対象として定めた上記隣接する2つのポイントデータ間を1つの「区間」として想定し、当該2つのポイントデータのうち古い方(時系列上で上流側)のポイントデータを「始点」と称し、新しい方(時系列上で下流側)のポイントデータを「終点」と称する。
【0033】
そして、移動方法判定部603Bは、上記算出された移動速度Vが、予め定められた徒歩判定のための基準速度V1未満か否かを判定し(ステップS102)、移動速度Vが基準速度V1未満ならば、対象ポイントデータ間の移動方法を「徒歩」と判定する(ステップS103)。移動速度Vが基準速度V1未満でない場合、移動方法判定部603Bは、移動速度Vが基準速度V1以上且つ予め定められた自転車判定のための基準速度V2未満か否かを判定し(ステップS104)、移動速度Vが基準速度V1以上且つ基準速度V2未満ならば、対象ポイントデータ間の移動方法を「自転車」と判定する(ステップS105)。
【0034】
一方、移動速度Vが基準速度V2以上の場合、移動方法判定部603Bは、予め記憶された電車路線地図データに照らし、始点と終点の少なくとも1つ以上が電車路線上に位置するか否かを判定し(ステップS106)、始点と終点の少なくとも1つ以上が電車路線上に位置するならば、対象ポイントデータ間の移動方法を「電車」と判定する(ステップS107)。ステップS106で否定判定された場合、移動方法判定部603Bは、予め記憶されたバス路線地図データに照らし、始点と終点の少なくとも1つ以上がバス路線上に位置するか否かを判定し(ステップS108)、始点と終点の少なくとも1つ以上がバス路線上に位置するならば、対象ポイントデータ間の移動方法を「バス」と判定する(ステップS109)。一方、ステップS108で否定判定された場合は、対象ポイントデータ間の移動方法を「自動車」と判定する(ステップS110)。
【0035】
そして、移動方法判定部603Bは、判定で得られた対象ポイントデータ間の移動方法情報を移動方法情報データベース630に保存する(ステップS111)。図5は、このとき保存される移動方法情報のデータ構成を示す図である。このように、移動方法判定部603Bは、1つのラインにおける時系列上で隣接するポイントデータ間(1つの区間)を一単位としたラインデータを生成する。このラインデータは、判定完了時刻“2009/10/3 21:00”、ライン識別子“ZZZ”ユーザ識別子“USERID1”、該当区間の移動方法を示す移動手段“自動車”、該当区間の始点のポイント識別子“XXX”および該当区間の終点のポイント識別子“YYY”を含んで構成される。
【0036】
さらに、移動速度算出部603Aおよび移動方法判定部603Bは、上記の移動方法判定処理を、対象ユーザの時系列に並べたポイントデータにおける次の隣接ポイントデータを対象に繰り返し実行し、全ポイントデータについて実行完了するまで、ステップS101〜S111の処理を繰り返す(ステップS112)。
【0037】
図2に戻って、軌跡判定部604は、対象抽出部601によって位置情報データベース610からユーザ毎に分類し抽出されたポイントデータから、該当ユーザの時系列ポイントデータを読み出して、複数の時系列ポイントデータが同一直線上に沿っているか否かを判定する。
【0038】
すなわち、軌跡判定部604は、ユーザ毎に分類されたポイントデータの中から、移動方法情報データベース630を参照することによって、同じ移動方法に対応しているポイントデータを時系列に抽出する。例えば、図3及び図5の例によれば、ポイント識別子“XXX”および“YYY”で識別されるユーザ識別子“USERID1”で特定されるユーザのポイントデータは、同じ移動手段“自動車”に対応していることがわかるので、それらのポイントデータは時系列に並べて抽出される。
【0039】
そして、軌跡判定部604は、読み出された時系列ポイントデータPt0〜Ptn(t0〜tn:ポイントデータのタイムスタンプ)の中から最も古い時刻の起点ポイントデータPt0を設定するとともに、時系列ポイントデータPt1〜Ptnの中から所定のアルゴリズムfを用いて順にポイントデータPtf(x)(xは自然数)を抽出した後に、抽出したポイントデータPtf(x)が起点ポイントデータPt0を基準にした同一直線上に沿っているか否かを判定する。このようなアルゴリズムfとしては、例えば、f(x)=2(x−1)のようにxが増加するほど増加率が大きくなるような関数を用いることが挙げられる。これにより、軌跡判定部604は、起点ポイントデータPt0を起点にした同一直線上の最遠点Ptf(x1)を求めることができる。
【0040】
さらに、軌跡判定部604は、次の起点ポイントデータを最遠点Ptf(x1)に設定して、抽出するポイントデータの時間間隔を小さくすることによって、同一直線上に沿っているかの判定を繰り返す。このとき、ポイントデータPtf(x)を抽出する際には、抽出アルゴリズムを関数f(x)=f(x1)+2(x−1)(x=1,2,3,…)によって設定する。その後、起点ポイントデータを変更しながら繰り返し最遠点を求めることによって、軌跡判定部604は、時系列ポイントデータPt1〜Ptnの中から、ポイントデータPt0を起点にした同一直線上の真の最遠点Ptf(xn)を絞り込んで特定することができる。そして、軌跡判定部604は、最遠点Ptf(xn)より時間的に後のポイントデータに関しても同様に起点及び最遠点を特定し、時系列ポイントデータPt0〜Ptn、及び対応する複数の最遠点Ptf(xn)を特定する情報をデータ抽出保存部605に出力する。
【0041】
図6は、軌跡判定部604において用いられるポイントデータ抽出のための関数fの一例を示すグラフである。同図において、横軸はポイントデータの抽出順序xを示し、縦軸は抽出されるポイントデータの時刻に対応する変数k=f(x)を示している。このように、軌跡判定部604は、所定のアルゴリズム(規則)f(x)で決定されるデータ間隔で時系列ポイントデータPtf(1),Ptf(2),…を時刻順に抽出して参照し、同一直線上から外れた範囲が、ポイントデータPtf(x1)〜Ptf(x1+1)の範囲にあることを判定する。さらに、軌跡判定部604は、所定のアルゴリズムf(x)を用いて前回のデータ間隔よりも細かいデータ間隔でポイントデータPtf(x1)〜Ptf(x1+1)の間のポイントデータを抽出して、抽出したデータを参照して、同一直線上から外れた範囲がポイントデータPtf(x2)〜Ptf(x2+1)の範囲にあることを絞り込んで判定する。最終的に、軌跡判定部604は、起点ポイントデータPt0から時間的に最も近い同一直線上から外れたポイントデータPtf(xn+1)を特定し、そのポイントデータPtf(xn+1)の1つ前を最遠点Ptf(xn)として特定する。
【0042】
ここで、軌跡判定部604が、複数のポイントデータが同一直線上に沿っているかを判定する際には、ハフ変換のような公知の手法を用いて複数の点を通る直線を決定することによって複数の点が同一直線上に位置することを判定することができる。ただし、この判定手法は特定のものには限定されるものではなく、例えば、2点間を結ぶベクトル間の演算によって判定してもよい。また、軌跡判定部604が、ポイントデータの抽出規則を決める関数fを、処理対象となるポイントデータの移動方法に応じて変化させてもよい。例えば、軌跡判定部604は、処理対象のポイントデータの移動方法が“徒歩”である場合には、f(x)=2×xで表される関数fに変更して、抽出順序xに対する変数kの増加率、すなわち抽出データの時間間隔を、移動方法に応じて変えてもよい。
【0043】
データ抽出保存部605は、軌跡判定部604によって同一直線上の最遠点Ptf(xn)が判定された時系列ポイントデータPt0〜Ptnから、同一直線上での最初のポイントデータPt0及び最後のポイントデータPtf(xn)を除く中間のポイントデータを間引いて、位置情報抽出システム600内に記憶する。また、データ抽出保存部605は、時系列ポイントデータPt0〜Ptnに複数の最遠点Ptf(xn)が存在する場合には、それぞれに対応する最初と最後のポイントデータ間の中間データを間引く。ここで、「ポイントデータを間引く」とは、該当するデータを全て削除することはもちろん、部分的(例えば、周期的に)に削除することも含む概念である。
【0044】
図7には、データ抽出保存部605によって間引きされたポイントデータを示す概念図である。同図に示すように、ポイントデータPt0,Pt1,…の中でポイントデータPt0〜Pt8が同一直線上に沿っていると判定された場合は(図7(a))、データ抽出保存部605によって中間のポイントデータPt1〜Pt7が削除される(図7(b))。
【0045】
図2に戻って、軌跡導出部606は、データ抽出保存部605によって間引かれた各ポイントデータ間の移動方法、各ポイントデータに含まれる位置情報、並びに、予め記憶された地図データに基づいて、地図上における移動軌跡情報を各ユーザについて求める。このような移動軌跡情報としては、地図データ上でポイントデータの示す位置との間を線で結んだような画像情報が生成される。出力部607は、求められた複数ユーザの移動軌跡情報に基づく統計情報を、外部のサーバ装置や移動機100等の端末装置に向けて送信する。例えば、例えば、巨視的な人口流動に関する分析データとして、ある地域から他の地域へ住民がどのような移動軌跡や移動方法で移動しているかの傾向を示す統計情報が出力される。なお、保存されたユーザ毎の移動軌跡情報は出力されることのないよう考慮されており、ユーザ個人のプライバシーが侵害されることを回避している。
【0046】
次に、図8及び図9を参照して、位置情報抽出システム600の動作について説明するとともに、併せて位置情報抽出システム600における位置情報抽出方法について詳述する。図8は、位置情報抽出システム600による位置情報抽出時の動作を示フローチャート、図9は、図8のステップS205の処理を詳細に示すフローチャートである。
【0047】
まず、位置情報抽出システム600の分類部602によって、位置情報データベース610から、所定のタイミングで(例えば、1時間間隔で)複数ユーザに関する複数の時刻にわたるポイントデータ(周期位置情報)が読み出される(ステップS201)。そうすると、分類部602によってポイントデータがユーザ識別子ごとに分類されてタイムスタンプの示す時刻順に並べ変えられる(ステップS202)。その後、移動速度算出部603Aおよび移動方法判定部603Bによって、ユーザ毎のポイントデータにおける2つの隣接するポイントデータ間の移動方法が判定され、全ての隣接するポイントデータに関する移動方法情報が移動方法情報データベース630に保存される(ステップS203)。
【0048】
さらに、軌跡判定部604によって、ユーザ毎に分類されたポイントデータの中から同じ移動方法に対応するポイントデータが時系列に抽出される(ステップS204)。そして、軌跡判定部604によって、抽出されたポイントデータの中で同一直線上に位置する起点及び最遠点の複数の組み合わせが判定された後、データ抽出保存部605により、ポイントデータから中間データが間引かれる(ステップS205)。中間データが間引かれたポイントデータは軌跡抽出保存部605によって保存され、軌跡導出部606による移動軌跡情報の生成時に参照される(ステップS206)。
【0049】
そして、軌跡判定部604によって、ユーザ毎に分類されたポイントデータの全てに対する判定処理が終了したかが判定され(ステップS207)、全てのポイントデータの判定処理が終了した場合(ステップS207;YES)は、位置情報抽出処理を完了する。
【0050】
一方、全てのポイントデータの判定処理が終了していない場合(ステップS207;NO)は、移動方法毎の判定処理が終了したか否かが判定される(ステップS208)。移動方法毎の判定処理が終了した場合(ステップS208;YES)には、次の移動方法に関してステップS204〜S206の処理を繰り返す。これに対して、移動方法毎の判定処理が終了していない場合(ステップS208;NO)には、残りのポイントデータに関してステップS205〜ステップS206の処理を繰り返す。
【0051】
次に、図9を参照して、図8のステップS205におけるポイントデータの起点及び最遠点の判定処理の詳細について説明する。
【0052】
軌跡判定部604により、ユーザ毎の同一の移動方法に関するポイントデータPt0〜Ptnが選択されると(ステップS301)、そのポイントデータの中から起点となるポイントデータPt0が決定される(ステップS302)。その後、軌跡判定部604により、時系列のポイントデータPt1〜Ptnの中から、所定の関数f(x)(x=1,2,3,…)を用いて判定対象のポイントデータPtf(x)が順次抽出される(ステップS303)。
【0053】
次に、軌跡判定部604により、ポイントデータPtf(x)がポイントデータPt0を起点とする直線上に沿っているか否かが判定される(ステップS304)。この判定結果に応じて、ポイントデータPt0を起点とする直線上の最遠点が決定されたか否かが判定される(ステップS305)。すなわち、ステップS304の判定処理により、ポイントデータPtf(x1+1)が直線上から外れたと判定されると、その1つ前に処理されたポイントデータPtf(x1)が最遠点として決定されることになる。
【0054】
ステップS305における判定の結果、直線上の最遠点が未だ決定されていない場合(ステップS305;NO)、処理がステップS303に戻される。一方、直線上の最遠点が決定された場合(ステップS305;YES)、時系列ポイントデータPt0〜Ptnの中に、最遠点のポイントデータPtf(x1)より時間的に後のポイントデータが存在するか否かが判定される(ステップS306)。判定の結果、時間的に後のポイントデータが存在する場合(ステップS306;YES)には、処理がステップS302に戻される。一方、時間的に後のポイントデータが存在しない場合(ステップS306;NO)には、次のユーザに関するポイントデータに関してステップS301〜ステップS306の処理が繰り返される(ステップS307)。
【0055】
以上説明した位置情報抽出システム600及び位置情報抽出方法によれば、ユーザの位置に関する緯度情報、経度情報、時刻情報、及びユーザ識別子を含むポイントデータがユーザ毎に抽出され、抽出されたポイントデータから時系列ポイントデータが読み出され、これらの時系列ポイントデータが同一直線上に沿っているか否かが判定され、同一直線上に沿っていると判定された最初のポイントデータと最後のポイントデータとの間の中間データの少なくとも一部が間引かれる。これにより、ユーザの移動軌跡を求めるために最低限必要なポイントデータが抽出されて記憶されることになり、移動軌跡情報を提供する際に蓄積する位置情報のデータ量を効率的に削減することができる。
【0056】
また、位置情報抽出システム600の軌跡判定部604は、所定規則f(x)で決定されるデータ間隔で抽出された時系列データを参照して同一直線上から外れた範囲を特定した後に、該範囲にある時系列データを前回のデータ間隔よりも細かいデータ間隔で抽出し、抽出した時系列データを対象に同一直線上から外れた範囲を更に絞り込む。これにより、同一直線上に沿ったポイントデータの数が膨大な場合であってもポイントデータの判定処理のステップ数を削減することができ、その結果、位置情報の抽出処理の負荷を軽減することができるとともに、演算時間を短縮化することができる。
【0057】
また、対象抽出部601は、隣接するポイントデータ間に対応する移動方法を判定し、軌跡判定部604は、ポイントデータを移動方法毎に抽出するので、ユーザの移動方法に対応して処理対象のポイントデータを抽出することで、ユーザの実際の行動に的確にマッチした移動軌跡を求めることができる。
【0058】
さらに、対象抽出部601は、ポイントデータの抽出するデータ間隔を決定するための所定規則f(x)を、移動方法に応じて変化させるので、ユーザの移動方法に応じてポイントデータの判定処理のデータ間隔を変化させることができ、位置情報の間引き処理の効率と精度とを両立させることができる。具体的に言えば、移動方法が“徒歩”の場合はデータ間隔を大きくし、移動方法“自動車”の場合はデータ間隔を短くすることで、その移動手段の特性に合わせて位置情報のデータ抽出時の判定処理の効率を最適化することができる。
【符号の説明】
【0059】
600…位置情報抽出システム、601…対象抽出部、602…分類部、603A…移動速度算出部、603B…移動方法判定部、604…軌跡判定部、605…データ抽出保存部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの移動軌跡情報を提供するために必要な情報であって、ユーザの位置を示す位置情報、前記位置情報が得られた時刻情報、及び前記ユーザを特定するユーザ識別情報を含むポイントデータを抽出する位置情報抽出システムであって、
前記ポイントデータを前記ユーザ毎に抽出する対象抽出部と、
前記対象抽出部によって抽出された前記ユーザ毎の前記ポイントデータから、前記時刻情報を基に複数の時系列データを読み出して、複数の前記時系列データの示す位置が同一線上に沿っているか否かを判定する軌跡判定部と、
前記軌跡判定部によって同一線上に沿っていると判定された前記複数の時系列データから、最初のポイントデータと最後のポイントデータを除く中間データの少なくとも一部を間引くデータ抽出部と
を備えることを特徴とする位置情報抽出システム。
【請求項2】
前記軌跡判定部は、所定規則で決定されるデータ間隔で抽出された前記時系列データを参照して同一線上から外れた範囲を特定した後に、該範囲にある前記時系列データを前記データ間隔よりも細かいデータ間隔で抽出し、抽出した前記時系列データを対象に同一線上から外れた範囲を更に絞り込む、
ことを特徴とする請求項1記載の位置情報抽出システム。
【請求項3】
前記対象抽出部は、隣接する前記ポイントデータ間に対応する移動方法を判定し、
前記軌跡判定部は、前記ポイントデータを前記移動方法毎に抽出する、
ことを特徴とする請求項1又は2記載の位置情報抽出システム。
【請求項4】
前記対象抽出部は、隣接する前記ポイントデータ間に対応する移動方法を判定し、
前記軌跡判定部は、前記ポイントデータを前記移動方法毎に抽出し、前記データ間隔を決定するための前記所定規則を、前記移動方法に応じて変化させる
ことを特徴とする請求項2記載の位置情報抽出システム。
【請求項5】
ユーザの移動軌跡情報を提供するために必要な情報であって、ユーザの位置を示す位置情報、前記位置情報が得られた時刻情報、及び前記ユーザを特定するユーザ識別情報を含むポイントデータを抽出する位置情報抽出方法であって、
対象抽出部が、前記ポイントデータを前記ユーザ毎に抽出する対象抽出ステップと、
軌跡判定部が、前記対象抽出部によって抽出された前記ユーザ毎の前記ポイントデータから、前記時刻情報を基に複数の時系列データを読み出して、複数の前記時系列データの示す位置が同一線上に沿っているか否かを判定する軌跡判定ステップと、
データ抽出部が、前記軌跡判定部によって同一線上に沿っていると判定された前記複数の時系列データから、最初のポイントデータと最後のポイントデータを除く中間データの少なくとも一部を間引くデータ抽出ステップと
を備えることを特徴とする位置情報抽出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−41131(P2011−41131A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−188520(P2009−188520)
【出願日】平成21年8月17日(2009.8.17)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】