説明

位置情報提供装置および位置情報提供方法

【課題】 大掛かりな設備や、携帯端末等の装置の設計変更を必要とせずに、場所によらずに携帯端末等の装置が正確な位置情報を取得できるようにする。
【解決手段】 位置情報提供装置1は、複数の信号受信部2と、位置確定部3と、無線通信部4とを有する。各信号受信部2は、それぞれ、位置情報を含む互いに異なる種類の信号を受信する機能を備えている。位置確定部3は、信号受信部2で受信された各信号に含まれている位置情報と、それら各信号に対して与えられる信頼度とに基づいた演算処理により、自装置の所在位置を確定する機能を備えている。無線通信部4は、位置確定部3により確定した前記所在位置の情報を伝達する信号を、予め定められた信号形式でもって外部に向け無線送信する機能を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所在位置を示す情報を例えば携帯端末に提供できる位置情報提供装置および位置情報提供方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話等の携帯端末は、GPS(Global Positioning System)機能、つまり、GPSを利用して位置情報を取得する機能を有するものが増えてきている。そのGPS機能付きの携帯端末は、無線通信によって、GPS衛星から信号(GPS信号)を受信する。そのように無線(電波)通信を利用するため、携帯端末が室内に位置している場合や、天候が雨や曇りである場合には、建物壁や雲が電波伝搬の障害となり、携帯端末は、良好なGPS信号を受信できない事態が発生し易い。携帯端末は、良好なGPS信号を受信できないと、所在位置を示す正確な位置情報を取得できない。
【0003】
そのような事態発生を防止するために、様々な手法が提案されている。例えば、特許文献1(特開2008−128934号公報)は、屋内や地下道等でもGPS信号を受信できるようにするシステムとして、次のような構成を提案している。すなわち、特許文献1に示されるシステムは、GPS衛星からGPS信号を受信する屋外アンテナと、GPS信号を受信することが困難な場所に設置される屋内アンテナと、屋外アンテナで受信したGPS信号を屋内アンテナから送信する再送信装置とを有している。
【0004】
特許文献2(特開2006−201151号公報)に示されているシステムは、疑似GPS信号を生成し、当該疑似GPS信号を、GPS衛星からGPS信号を受信できない室内等に送信する構成を有している。
【0005】
特許文献3(特開2008−141234号公報)に示されている装置は、GPS信号だけなく、外付けユニットに内蔵されている地磁気センサ等のセンサ出力に基づいても、位置情報を取得できる構成を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−128934号公報
【特許文献2】特開2006−201151号公報
【特許文献3】特開2008−141234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1〜3に示されている構成には、次のような問題がある。すなわち、特許文献1,2の構成では、室内アンテナや再送信装置などの設備を設置する必要がある。このため、特許文献1,2の構成を実現するためには、多くの費用が発生する。
【0008】
また、特許文献3の構成では、携帯局装置は、外付けユニットからセンサ出力を受け取り、当該センサ出力を信号処理することによって位置情報を取得する。つまり、携帯局装置(携帯端末)が外付けユニットのセンサ出力を信号処理できる構成を持たなければ、当該携帯局装置は位置情報を取得できない。このため、特許文献3の構成を持たない携帯端末(換言すれば、既に市販されている携帯端末)に、外付けユニットからセンサ出力を提供したとしても、当該携帯端末は位置情報を取得できない。
【0009】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたものである。すなわち、本発明の主な目的は、大掛かりな設備や、携帯端末等の装置の設計変更を必要とせずに、場所によらずに携帯端末等の装置が正確な位置情報を取得できるようにする位置情報提供装置および位置情報提供方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の位置情報提供装置は、
位置情報を含む複数種の信号を、それぞれ受信する複数の信号受信部と、
前記信号受信部で受信された前記各信号の前記位置情報と、前記各信号に対して与えられる信頼度とに基づいた演算処理により、自装置の所在位置を確定する位置確定部と、
前記位置確定部により確定した前記所在位置の情報を伝達する信号を、予め定められた信号形式でもって外部に向け無線送信する無線通信部と
を有する。
【0011】
本発明の位置情報提供方法は、
位置情報を含む複数種の信号を、それぞれ受信し、
受信した前記各信号の前記位置情報と、前記各信号に対して与えられる信頼度とに基づいた演算処理により、自装置の所在位置を確定し、
その確定した前記所在位置の情報を伝達する信号を、予め定められた信号形式でもって外部に向け無線送信する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、大掛かりな設備や、携帯端末等の装置の設計変更を必要とせずに、場所によらずに携帯端末等の装置が正確な位置情報を取得できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る第1実施形態の位置情報提供装置の構成を簡略化して示すブロック図である。
【図2】本発明に係る第2実施形態の位置情報提供装置の機能をイメージで表した図である。
【図3】本発明に係る第2実施形態の位置情報提供装置の構成を簡略化して示すブロック図である。
【図4】所在位置を確定する演算処理の一例を説明する図である。
【図5】本発明に係る第3と第4の各実施形態の位置情報提供装置の構成を簡略化して示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
【0015】
(第1実施形態)
以下に、本発明に係る第1実施形態を説明する。
【0016】
図1は、本発明に係る第1実施形態の位置情報提供装置の構成を簡略化して示すブロック図である。この第1実施形態の位置情報提供装置1は、複数の信号受信部2(2A,2B)と、位置確定部3と、無線通信部4とを有している。
【0017】
信号受信部2(2A,2B)は、位置情報を含む信号を受信する機能を有している。位置確定部3は、信号受信部2(2A,2B)で受信された各信号に含まれている位置情報と、前記各信号に対して与えられる信頼度とに基づいた演算処理により、この位置情報提供装置1の所在位置を確定する機能を有している。無線通信部4は、その確定した所在位置の情報を伝達する信号を、予め定められた信号形式でもって外部に向けて無線送信する機能を備えている。
【0018】
すなわち、この第1実施形態の位置情報提供装置1は、次のように動作する。つまり、位置情報提供装置1は、位置情報を含む複数種の信号を受信すると、それら受信した各信号に含まれている位置情報と、各信号に対してそれぞれ与えられている信頼度とに基づいて、当該位置情報提供装置1の所在位置を確定する。そして、位置情報提供装置1は、その確定した所在位置の情報を伝達する信号を、予め定めた信号形式でもって外部に向けて無線送信する。
【0019】
この第1実施形態の位置情報提供装置1は、上記のように、複数種の位置情報を利用して、当該位置情報提供装置1の所在位置を算出(確定)する。これにより、1つの位置情報に基づいて位置情報提供装置1の所在位置を求める場合に比べて、位置情報提供装置1は、所在位置の算出精度を高めることができる。また、この位置情報提供装置1は、複数種の位置情報、換言すれば、精度が異なる複数の位置情報を利用することから、それら精度の差異に基づいた信頼度をも考慮して、つまり、各位置情報毎に重み付けを異ならせて、所在位置の演算処理を行う。これにより、位置情報提供装置1は、所在位置の算出精度をより高めることができる。
【0020】
また、位置情報提供装置1は、複数種の位置情報を利用して、所在位置を算出することから、仮に、一つの位置情報を取得できない事態になったとしても、他の位置情報に基づいて所在位置を算出できる。
【0021】
さらに、この第1実施形態では、例えば、位置情報提供装置1を、携帯が容易な大きさとすることにより、携帯電話等の携帯端末の所持者は、携帯端末と共に位置情報提供装置1を携帯することが可能となる。さらに、位置情報提供装置1が、携帯端末が受信できる信号形式でもって、所在位置の情報を伝達する信号を、無線通信することによって、携帯端末は、位置情報提供装置1からの信号に基づいて所在位置の情報を取得できる。これにより、携帯端末は、天候や建物壁などに因る通信不良によって、所在位置の情報を得ることができないという事態の発生を抑制できる。換言すれば、この第1実施形態の構成は、大掛かりな設備を必要とせず、かつ、携帯端末の設計変更を行うことなく、場所によらずに携帯端末に位置情報を提供することが可能である。
【0022】
(第2実施形態)
以下に、本発明に係る第2実施形態を説明する。
【0023】
図2は、本発明に係る第2実施形態の位置情報提供装置の機能をイメージで表した図である。図2に示されるように、この第2実施形態では、位置情報提供装置10は、位置情報を含む複数種の信号(以下、位置情報信号とも記す)を取り込む。例えば、その位置情報信号の一つの種類としては、GPS衛星35からの信号(以下、GPS信号とも記す)である。より具体的には、位置情報提供装置10は、4つのGPS衛星35から、それぞれ、時刻データとGPS衛星35の軌道データとを含む信号をGPS信号として取り込む。
【0024】
また、位置情報信号の別の一つとしては、携帯電話システムの基地局36から発信される信号(以下、3G(Generation)信号とも記す)である。さらに、位置情報信号の別の一つとしては、無線LAN(Local Area Network)のアクセスポイント37から発信される信号(以下、無線LAN信号とも記す)である。さらにまた、位置情報信号の別の一つとしては、可視光通信を行う光源38から発せられる光信号(以下、可視光通信信号とも記す)である。
【0025】
位置情報提供装置10は、それら取り込んだ信号に基づいて、所在位置を算出(確定)する。そして、位置情報提供装置10は、その算出(確定)した所在位置の情報を伝達する信号を、無線送信する。その無線送信する信号は、GPS衛星35が送信する信号と同様な信号形式である。つまり、位置情報提供装置10は、算出(確定)した所在位置の情報に基づいて、4つの前記GPS信号(疑似GPS信号)を作成し、これら疑似GPS信号を無線送信する。これにより、携帯端末16は、GPS衛星35からGPS信号を受信する機能によって、位置情報提供装置10からの疑似GPS信号を受信できる。
【0026】
位置情報提供装置10は、例えば、手のひら程度のサイズとし、携帯端末16と共に携帯されるとすると、位置情報提供装置10によって算出される所在位置は、携帯端末16の所在位置でもある。このことから、携帯端末16は、位置情報提供装置10から受信した疑似GPS信号に基づいて、位置情報を取得できる。
【0027】
位置情報提供装置10は、上記のような機能を実現するために次のような構成を備えている。すなわち、図3は、本発明に係る第2実施形態の位置情報提供装置の構成を簡略化して示すブロック図である。この第2実施形態の位置情報提供装置10は、制御装置11と、複数の信号受信部12(12A〜12D)と、通信回路13と、記憶装置14とを有している。この第2実施形態では、位置情報提供装置10の大きさは、携帯することが容易な大きさ(例えば手のひらサイズ)である。
【0028】
信号受信部12(12A〜12D)は、位置情報を含む信号を受信する機能を備えている。各信号受信部12A〜12Dは、それぞれ、互いに異なる種類の信号を受信する。例えば、信号受信部12Aは、GPS衛星35からのGPS信号を受信する機能を備えている。信号受信部12Bは、携帯電話システムの基地局36から発信されている3G信号を受信する機能を備えている。信号受信部12Cは、無線LANのアクセスポイント37から発信されている無線LAN信号を受信する機能を備えている。例えば、それら各信号受信部12A〜12Cは、それぞれ、対応する周波数帯の信号を受信するアンテナ(図示せず)と、当該アンテナで受信した信号を復調する回路(図示せず)とを有している。さらに、信号受信部12Dは、可視光通信の光源38からの光信号(可視光通信信号)を受信する機能を備えている。当該信号受信部12Dは、例えば、光信号を受信する受光部(図示せず)と、光信号を電気信号に変換する光−電気変換素子(図示せず)とを有している。
【0029】
通信回路13は、制御装置11から受けた信号を変調する回路(図示せず)と、変調後の信号を外部に向けて送信するアンテナ(図示せず)とを有している。この第2実施形態では、通信回路13は、GPS信号の仕様に基づいて、設計されている。
【0030】
記憶装置14は、コンピュータプログラム(以下、プログラムとも記す)や各種データを記憶する記憶媒体を有する装置(例えば、RAM(Random Access Memory))である。
【0031】
制御装置11は、例えばCPU(Central Processing Unit)を有している。当該制御装置11は、記憶装置14に格納されているプログラムを読み込み、当該プログラムを実行することによって、位置情報提供装置11の全体的な動作を司る。例えば、制御装置11は、プログラムを実行することにより、次のような機能ブロックを有する。すなわち、制御装置11は、位置確定部20と、信頼度決定部21と、無線通信部22とを有する。
【0032】
信頼度決定部21は、各信号受信部12A〜12Dにより受信した各信号の信頼度を決定する機能を有している。すなわち、信号受信部12A〜12Dは、上記の如く、それぞれ、電波又は光の無線通信によって送信されてきた信号を受信する。無線通信は通信状態が変化し易いことから、各信号受信部12A〜12Dにより受信した信号に対する信頼度が変化する。このことから、この第2実施形態では、信頼度決定部21は、各信号受信部12A〜12Dで受信された信号に対する信頼度を、当該受信信号の強度に基づいて決定する。例えば、信頼度決定部21は、予め実験や演算等により求められた基準の信号強度と、受信信号の強度との差分、あるいは、前記基準の信号強度に対する受信信号の強度の割合等に基づいて、信頼度を決定する。
【0033】
また、信頼度決定部21は、次のように、各信号受信部12A〜12Dにより受信した各信号の信頼度を決定してもよい。例えば、信頼度決定部21は、上記のような受信信号の強度だけでなく、各信号受信部12A〜12Dの受信信号に含まれている位置情報の精度をも考慮して、各信号受信部12A〜12Dの受信信号に対する信頼度を決定する。つまり、GPS信号に含まれている位置情報の精度は、3G信号の位置情報よりも高精度であるという如く、各信号受信部12A〜12Dの受信信号に含まれている位置情報の精度(信頼度)は、それぞれ、異なる。このことを考慮し、例えば、各信号受信部12A〜12Dの受信信号に対して、それぞれ、基準の信頼度が予め設定される。信頼度決定部21は、前記基準の信号強度に対する受信信号の強度の割合に基づいて、基準の信頼度を増減させる演算を行って、各信号受信部12A〜12Dの受信信号に対する信頼度を決定する。
【0034】
また、信頼度決定部21は、上記のような受信信号の強度と、受信信号に含まれている位置情報の精度とに基づいて、次のように、各信号受信部12A〜12Dの受信信号に対する信頼度を決定してもよい。すなわち、各受信信号の位置情報に対する精度の値は、例えば、GPS信号に関しては「0.6」、3G信号に関しては「0.4」、無線LAN信号に関しては「0.8」という如く、それぞれ、予め定数として与えておくことができる。信頼度決定部21は、各信号受信部12A〜12Dの受信信号の強度に応じて設定した値に、それぞれ、前記精度に関する定数を乗算して得られた数値を各受信信号に対する信頼度として決定する。具体的には、例えば、信頼度決定部21は、GPS信号の受信信号強度に応じた値として「2.0」を、3G信号の受信信号強度に応じた値として「4.0」を、無線LAN信号の受信信号強度に応じた値として「2.5」を、それぞれ、設定したとする。信頼度決定部21は、それら各設定した値に、前記精度に関する定数を乗算する。つまり、信頼度設定部21は、GPS信号に関しては、受信強度に応じた値「2.0」に、精度に関する定数「0.6」を乗算して、信頼度「1.2」を算出する。また同様に、信頼度設定部21は、3G信号に関しては、受信強度に応じた値「4.0」に、精度に関する定数「0.4」を乗算して、信頼度「1.6」を算出する。さらに同様に、信頼度設定部21は、無線LAN信号に関しては、受信強度に応じた値「2.5」に、精度に関する定数「0.8」を乗算して、信頼度「2.0」を算出する。
【0035】
上記のように、信頼度決定部21は、位置情報の信頼度に関係する複数の要素を考慮して、各信号受信部12A〜12Dの受信信号に対する信頼度を決定してよい。
【0036】
信頼度決定部21は、さらに、各信号受信部12A〜12Dの各受信信号と、上記決定した信頼度の情報とを位置決定部20に出力する機能を有している。
【0037】
位置確定部20は、信頼度決定部21から受け取った複数種の受信信号(GPS信号、3G信号、無線LAN信号、可視光通信信号)と、信頼度の情報とに基づいて、位置情報提供装置10の所在位置を算出する機能を備えている。
【0038】
例えば、位置確定部20は、GPS信号の受信感度が良くて当該GPS信号の信頼度が予め設定した閾値以上に高い場合には、GPSに基づいた演算処理でもって、受信したGPS信号を利用して、位置情報提供装置10の所在位置を算出(確定)する。
【0039】
また、位置確定部20は、GPS信号の受信感度が悪くて当該GPS信号の信頼度が前記閾値未満であるというように低い場合には、他の受信信号に含まれている位置情報に基づいた演算処理によって、位置情報提供装置10の所在位置を確定する。
【0040】
具体例を挙げると、例えば、位置確定部20は、無線LAN信号に含まれている位置情報とその信頼度に基づき、所在位置として想定されるエリアを図4に示す実線Aのようにマッピングする。また、位置確定部20は、3G信号に含まれている位置情報とその信頼度に基づき、所在位置として想定されるエリアを図4に示す点線Bのようにマッピングする。さらに、位置確定部20は、可視光通信信号に含まれている位置情報とその信頼度に基づき、所在位置として想定されるエリアを図4に示す鎖線Cのようにマッピングする。このようなマッピングに基づいて、位置確定部20は、位置情報提供装置10の所在位置P(図4参照)を確定する。
【0041】
なお、上記のようなマッピングによるエリアは、信頼度が高くなるに従って狭くなり、反対に、信頼度が低くなるに従って広くなる。
【0042】
位置確定部20は、さらに、上記のように確定した所在位置の情報を無線通信部22に出力する機能を備えている。さらにまた、位置確定部20は、所在位置の情報を記憶装置14に書き込む機能を備えている。例えば、位置確定部20は、所在位置の情報を時系列的に記憶装置14に格納する。あるいは、この位置情報提供装置10に、図3の点線に示すような時計部23を設け、位置確定部20は、その時計部23に基づいた時間情報を所在位置の情報に関連付け、当該所在位置の情報を記憶装置14に格納する。
【0043】
無線通信部22は、位置確定部20により確定した所在位置の情報を、予め定められた信号形式でもって、通信回路13を通して外部に向けて送信する機能を備えている。この第2実施形態では、その信号形式は、GPS衛星35が送信するGPS信号の形式である。つまり、無線通信部22は、確定した所在位置の情報に基づいて、4つの疑似GPS信号を作成し、当該疑似GPS信号(所在位置の情報を伝達する信号)を通信回路13に出力する。これにより、通信回路13は、その疑似GPS信号を変調して当該疑似GPS信号を無線送信する。
【0044】
この第2実施形態では、位置情報提供装置10と共に携帯している携帯端末16が、その疑似GPS信号を受信すると、携帯端末16は、GPS衛星35からGPS信号を受信した場合と同様の演算処理を行って、所在位置を算出する。つまり、携帯端末16は、GPS衛星から通信不良によってGPS信号を受信できない場合であっても、位置情報提供装置10からの疑似GPS信号によって、所在位置の情報を取得することが可能である。
【0045】
上記のように、この第2実施形態の位置情報提供装置10は、大掛かりな設備を要することなく、かつ、携帯端末16の設計変更を行うことなく、場所によらずに、携帯端末16に所在位置の情報(位置情報)を提供することができる。
【0046】
(第3実施形態)
以下に、本発明に係る第3実施形態を説明する。
【0047】
図5は、第3実施形態の位置情報提供装置の構成を実線により簡略的に示すブロック図である。なお、この第3実施形態の説明において、第2実施形態の位置情報提供装置と同一名称部分には同一符号を付し、その共通部分の重複説明は省略する。
【0048】
この第3実施形態の位置情報提供装置10は、第2実施形態の構成に加えて、図5の実線に示すように、地磁気センサ25と加速度センサ26が設けられている。さらに、制御装置11は、第2実施形態の制御構成に加えて、算出部27を有する。
【0049】
地磁気センサ25は、地磁気を検知する機能を備えたセンサである。地磁気センサには様々な種類があり、ここでは、何れの種類の地磁気センサを採用してもよいが、例えば、小型化を考慮したチップ素子の形態を備えた地磁気センサを採用する。
【0050】
加速度センサ26は、加速度を検知する機能を備えたセンサである。加速度センサにも様々な種類があり、上記同様に、何れの種類の地磁気センサを採用してもよいが、例えば、小型化を考慮したチップ素子の形態を備えた地磁気センサを採用する。
【0051】
制御装置11の算出部27は、地磁気センサ25と加速度センサ26がそれぞれ出力するセンサ出力を取り込み、当該センサ出力と、記憶装置14に格納されている前記確定した所在位置の情報とに基づいて、所在位置を算出する機能を備えている。つまり、算出部27は、地磁気センサ25のセンサ出力に基づいた進行方向と、加速度センサ26のセンサ出力に基づいた移動距離とに基づいて、以前に確定した所在位置から移動した地点の位置を算出する。算出部27は、その算出した所在位置を示す位置情報を信頼度決定部21に出力する。
【0052】
信頼度決定部21は、第2実施形態で述べた受信信号に対する信頼度を決定する機能に加えて、算出部27から受け取った位置情報に対する信頼度を決定する機能を備えている。例えば、その算出部27からの位置情報に対する信頼度は、センサの検知精度等を考慮して予め設定され、当該設定された信頼度が記憶装置14に格納される。信頼度決定部21は、算出部27から位置情報を受け取ると、その位置情報に対応する信頼度を記憶装置14から読み出し、当該信頼度を、算出部27による位置情報の信頼度として決定する。当該信頼度決定部21は、そのように決定した信頼度と、算出部27による位置情報とを位置確定部20に出力する。
【0053】
位置確定部20は、信号受信部12(12A〜12D)で受信した受信信号に基づいた位置情報に加えて、算出部27による位置情報をも考慮して、第2実施形態と同様に、所在位置を確定する。そして、第2実施形態と同様に、位置確定部20は、確定した所在位置の情報を、無線通信部22に出力すると共に、記憶装置14に格納する。無線通信部22は、その確定した所在位置の情報を、第2実施形態と同様に、GPS信号の形式でもって通信回路13を通して外部に向けて無線送信する。
【0054】
この第3実施形態の位置情報提供装置10は、第2実施形態と同様の構成を備えているので、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。その上、この第3実施形態では、所在位置を求める演算処理は、信号受信部12で受信した信号に含まれている位置情報だけでなく、地磁気センサ25および加速度センサ26のセンサ出力に基づいた位置情報をも含めて行う。これにより、第3実施形態の位置情報提供装置10は、より正確な所在位置の情報を得ることが可能となる。
【0055】
(第4実施形態)
以下に、本発明に係る第4実施形態を説明する。なお、この第4実施形態の説明では、第2や第3の実施形態と同一名称部分には同一符号を付し、その共通部分の重複説明は省略する。
【0056】
この第4実施形態の位置情報提供装置10は、第2又は第3の実施形態の構成に加えて、所在位置の情報を送信する出力形式を変更できる構成を備えている。すなわち、この第4実施形態では、位置情報提供装置10は、第2又は第3の実施形態の構成に加えて、図5の鎖線に示すような操作手段30と、赤外線通信回路33とを備え、さらに、制御装置11は、出力形式変更部31と、無線通信部(以下、赤外線通信部と記す)32とを有する。
【0057】
操作手段30は、例えば位置情報提供装置10の利用者が、指示を入力するタッチパネルやキーや釦等を有している。
【0058】
制御装置11の出力形式変更部31は、操作手段30を用いて入力された指示に基づいて、所在位置の情報を送信する出力形式を変更する機能を備えている。例えば、当該出力形式変更部31は、操作手段30からの指示に基づいて、GPS信号と同様の電波による出力形式と、赤外線通信による出力形式とのうちの何れかを択一的に選択する。そして、出力形式変更部31は、その選択した出力形式の情報を位置確定部20に出力する。
【0059】
位置確定部20は、確定した所在位置の情報を、出力形式変更部31から受け取った情報に基づいた出力先に、出力する機能を備えている。つまり、出力形式変更部31が、GPS信号と同様の電波による出力形式を選択した場合には、位置確定部20は、その選択に基づいて、確定した所在位置の情報を無線通信部22に出力する。また、出力形式変更部31が、赤外線通信による出力形式を選択した場合には、位置確定部20は、その選択に基づいて、確定した所在位置の情報を赤外線通信部32に出力する。
【0060】
赤外線通信部32は、前記のように確定した所在位置の情報を赤外線通信で送信できるように、赤外線通信の仕様に応じた信号を作成する機能を備えている。例えば、その信号形式は、IrDA(Infrared Data Association)による規格に基づいた信号形式である。
【0061】
赤外線通信回路33は、赤外線通信部32から出力された信号を赤外線通信により送信する機能を備えている。つまり、赤外線通信回路33は、電気信号を赤外線の光信号に変換する電気−光変換素子(図示せず)と、赤外線を放射する発光素子(図示せず)とを有している。その発光素子から放射される赤外線は、予め定めた方向の指向性を有している。
【0062】
この第4実施形態の位置情報提供装置10は、第2や第3の実施形態と同様の構成を備えているので、第2や第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。しかも、当該位置情報提供装置10は、確定した所在位置の情報を、赤外線通信でも送信することが可能である。
【0063】
(その他の実施形態)
なお、この発明は第1〜第4の各実施形態に限定されるものでなく、様々な実施の形態を採り得る。例えば、第3実施形態では、位置情報提供装置10は、地磁気センサ25と加速度センサ26を備えている。これに対し、位置情報提供装置10は、さらに加えて、所在位置の確定に利用する情報を含む信号を出力するセンサとして、気圧センサと湿度センサと気温センサとのうちの少なくとも一つを備えていてもよい。その気圧センサから出力されるセンサ出力は、高度に応じた値であるので、気圧センサを備えることにより、位置情報提供装置10は、高度情報を得ることが可能となる。また、湿度センサや気温センサを備えることにより、位置情報提供装置10は、所在位置における周囲環境の情報を得ることができる。なお、気圧と高度との関係や、湿度と気温と所在位置の周囲環境との関係は、気象状況によって変化する。このことから、気圧センサや湿度センサや気温センサから出力されるセンサ出力をも利用して所在位置を確定する場合には、位置情報提供装置10は、気象状況の情報を取り込む機能を備える。つまり、位置情報提供装置10は、インターネット等の情報通信網を通して、気象情報を提供する例えばサーバ装置にアクセスする機能を備える。
【0064】
また、第4実施形態では、位置情報提供装置10は、所在位置の情報を赤外線通信により送信可能な構成を有している。位置情報提供装置10は、赤外線通信部(無線通信部)32に加えて、あるいは、赤外線通信部(無線通信部)32に代えて、他の無線通信を実現する無線通信部を一つ以上備えていてもよい。その他の無線通信としては、例えば、無線LAN通信や、Bluetooth(登録商標)通信や、可視光通信などがある。なお、無線LAN通信等においては、無線送信される信号は予め設定された宛先情報を含む。
【0065】
上記のような場合にも、出力形式変更部31が、操作手段30により入力される指示に基づいて、所在位置の情報を送信する出力形式を選択する。そして、前記同様に、所在位置の情報は、その選択された出力形式でもって、外部に向けて無線送信される。
【0066】
さらに、位置情報提供装置10は、確定した所在位置の情報を有線通信により送信する構成を備えていてもよい。
【0067】
さらに、第2〜第4の各実施形態では、位置確定部20は、GPS信号の信頼度が高い場合には、GPS信号に基づいて所在位置を算出している。これに代えて、位置確定部20は、GPS信号の信頼度の高低に関係無く、信号受信部12で受信した全ての受信信号に含まれている位置情報を利用して、所在位置の情報を算出してもよい。
【0068】
さらに、第2〜第4の各実施形態の位置情報提供装置10は、4つの信号受信部12を備えている。これに対して、信号受信部12の数は、複数であれば、特に限定されず、適宜設定してよい。
【0069】
さらに、位置情報提供装置10は、第2〜第4の実施形態の構成に加えて、確定した位置の情報を表示したり、確定した所在位置の情報を送信する送信形式等の設定情報を表示するディスプレイとその表示動作を制御する表示制御部とを有していてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1,10 位置情報提供装置
2,12 信号受信部
3,20 位置確定部
4,22 無線通信部
21 信頼度決定部
25 地磁気センサ
26 加速度センサ
31 出力形式変更部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置情報を含む複数種の信号を、それぞれ受信する複数の信号受信部と、
前記信号受信部で受信された前記各信号の前記位置情報と、前記各信号に対して与えられる信頼度とに基づいた演算処理により、自装置の所在位置を確定する位置確定部と、
前記位置確定部により確定した前記所在位置の情報を伝達する信号を、予め定められた信号形式でもって外部に向け無線送信する無線通信部と
を有する位置情報提供装置。
【請求項2】
前記無線通信部が無線送信する前記信号の信号形式は、GPS(Global Positioning System)に基づく信号形式である請求項1記載の位置情報提供装置。
【請求項3】
前記信号受信部が受信する前記信号の一つは、GPSによる信号である請求項1又は請求項2記載の位置情報提供装置。
【請求項4】
少なくとも一つの前記信号受信部は、電波又は光による無線通信により送信されてきた信号を受信する構成を有し、
その無線通信により受信した前記信号の受信強度に基づいて当該信号の前記信頼度を決定する信頼度決定部をさらに有する請求項1又は請求項2又は請求項3記載の位置情報提供装置。
【請求項5】
所在位置の確定に利用する情報を出力するセンサをさらに有し、
前記位置確定部は、さらに、前記センサから出力される前記情報と、当該情報に対して与えられる信頼度とをも利用した前記演算処理により、前記所在位置を確定する請求項1乃至請求項4の何れか一つに記載の位置情報提供装置。
【請求項6】
前記所在位置の情報を送信する出力形式を変更する出力形式変更部をさらに有している請求項1乃至請求項5の何れか一つに記載の位置情報提供装置。
【請求項7】
前記無線通信部が無線送信する信号は、宛先情報を含んでいる請求項1乃至請求項6の何れか一つに記載の位置情報提供装置。
【請求項8】
前記無線通信部により無線送信される信号は、予め定められた方向に指向性を有している請求項1乃至請求項7の何れか一つに記載の位置情報提供装置。
【請求項9】
位置情報を含む複数種の信号を、それぞれ受信し、
受信した前記各信号の前記位置情報と、前記各信号に対して与えられる信頼度とに基づいた演算処理により、自装置の所在位置を確定し、
その確定した前記所在位置の情報を伝達する信号を、予め定められた信号形式でもって外部に向け無線送信する位置情報提供方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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