説明

位置情報検出システム

【課題】 取得したすべての絶対位置情報を一元管理することにより効率的な作業を可能とする。
【解決手段】探査対象の絶対位置情報を検出する位置情報検出システムにおいて、探査対象が存在する探査エリアに対し、それぞれ同じ周波数帯または異なる周波数帯でのレーダ探査を行い、GPS(グローバル・ポジショニング・システム)により探査対象の絶対位置情報を取得する複数のレーダユニットLと、前記複数のレーダユニットLが取得した絶対位置情報を記憶し管理する第一のコンピュータ5と、前記レーダユニットLと前記第一のコンピュータ5との間にデータ通信機能を提供する情報伝達手段6とを備え、前記情報伝達手段6により、前記レーダユニットL側からは前記絶対位置情報を拡散符号で拡散した信号が前記第一のコンピュータ5側に送信され、該第一のコンピュータ5には、受信信号を逆拡散することによりデータ復元された絶対位置情報が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所望の探査対象を検出し、その絶対位置情報を一元管理する位置情報検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
作業員が直接、目視により探査することができない対象、例えば、地中に埋設放置された対人地雷、地中に敷設されたパイプラインの破損、地中に自然形成された空洞等を効果的に検出する方法としてレーダ探査がある。
このレーダ探査を用いた探査対象の検出方法によれば、ある特定域の周波数のレーダを発射し、その反射波を解析することにより探査対象の有無や形状までも得ることができる。
また、このレーダ探査技術を用いることにより、地中に限らず、例えば山中に張り巡らされた送電線の破損確認作業、建物の漏水検査等にも応用できると期待されている。
【0003】
ところで、広い探査エリア内に多数の探査対象が存在する場合、一つ一つの探査対象について探査作業と処理作業を交互に繰り返し行なうと、作業効率が低下する。作業効率を向上するには、先ず全ての探査対象の位置を収集し、その情報に基づいて全ての探査対象に対し処理作業(地雷ならば除去作業)を纏めて行なうのが好ましい。そのためには、検出された各探査対象の位置を正確な情報として記録し、探査対象に対し処理を行なう作業者側にその位置情報を受け渡すことが必要である。
このような課題に対し、例えば天然ガスや石油の輸送に用いられ地中に敷設されたパイプラインの破損位置の絶対座標を検出し、その周囲を掘削する技術が特許文献1に開示されている。図6は、特許文献1に開示される掘削システムの構成を模式的に示すブロック図である。
【0004】
この掘削システムは、地中に敷設されたパイプラインの破損位置を検出する基地局車両50と、掘削作業を行なう油圧ショベル60とが無線通信を行なう構成とされる。基地局車両50は、GPS(グローバル・ポジショニング・システム)衛星からの電波を受信するGPSユニット51、パイプライン破損位置を検出する地中レーダ52、基地局車両50全体を制御するコントローラ53、及び油圧ショベル60とのデータ通信を行なうためのデータ通信機54を備えている。
【0005】
一方、油圧ショベル60は、この油圧ショベル全体を制御するコントローラ61、基地局車両50のデータ通信機54と通信するためのデータ通信機62、GPS63、油圧ショベルの各動作を検出するためのセンサ群64、刃先をモニタするための刃先モニタ65を備えている。
【0006】
このような構成において、先ず基地局車両50が、GPS51及び地中レーダ52により取得した信号に基づき、コントローラ53によりパイプライン破損位置の絶対座標を求め、その座標データをデータ通信機54により油圧ショベル60に送信するようになされている。そして、座標データを受け取った油圧ショベル60は、GPS63及び座標データに基づき、パイプライン破損位置周辺の掘削作業を行なうようになされている。
【特許文献1】特開2003−56010号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されるシステムによれば、GPSによる基地局車両50の絶対座標(緯度経度情報)と、地中レーダによるパイプライン破損位置情報とを組み合わせることにより破損位置の絶対位置情報を得ることができる。したがって、その絶対位置情報に基づいた効率的な作業を期待することができる。
【0008】
ところで、探査エリアに存在する破損位置を効率的に早く探査するためには、複数の基地局車両50を用意し、各基地局車両50について探査エリアを割り振り、それらを同時に稼動するのが望ましい。
しかしながら、その場合、複数の基地局車両50が同時に油圧ショベルにデータを送信する状況が生じるため混信が発生し、油圧ショベルが通信相手を特定することができなくなるという問題があった。
【0009】
また、地中においては所望の探査対象のみならず、様々な物体や空洞等が存在する。例えば、パイプラインと地雷が同じエリアに存在する場合もある。この場合には、地雷の爆破によりパイプラインが破損しないように対処する必要がある。したがって、実際に探査作業を行なう場合には、各物体に対応した周波数帯のレーダを用いることにより所望の探査対象を正確に識別するのが好ましい。
【0010】
特許文献1の構成を用い、例えばパイプラインが敷設された地帯に埋設放置された地雷の検出を行なう場合、パイプラインと地雷とを識別するために、それぞれ異なる周波数帯のレーダを搭載した複数の基地局車両を同時に稼動する必要がある。しかしながら、その場合においても、前記したようなデータ通信時における混信の問題があった。
【0011】
このように、特許文献1に開示されたシステムにあっては、同じ周波数帯の地中レーダを複数同時に用いる場合、データ通信における混信が生じるため効率的な作業ができなかった。また、異なる周波数の地中レーダを複数同時に用いる場合、データ通信における混信を回避するために、各基地局車両を順番に稼動しなければならず、作業効率が大幅に低下するという問題があった。
【0012】
本発明は、前記したような事情の下になされたものであり、複数のレーダを同時に用いて所望の探査対象の絶対位置情報を取得し、取得したすべての絶対位置情報を一元管理することにより効率的な作業を可能とする位置情報検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために、本発明にかかる位置情報検出システムは、探査対象の絶対位置情報を検出する位置情報検出システムにおいて、探査対象が存在する探査エリアに対し、それぞれ同じ周波数帯または異なる周波数帯でのレーダ探査を行い、衛星からの受信データに基づき探査対象の絶対位置情報を取得する複数のレーダユニットと、前記複数のレーダユニットが取得した絶対位置情報を記憶し管理する第一のコンピュータと、前記レーダユニットと前記第一のコンピュータとの間にデータ通信機能を提供する情報伝達手段とを備え、前記情報伝達手段により、前記レーダユニット側からは前記絶対位置情報を拡散符号で拡散した信号が前記第一のコンピュータ側に送信され、該第一のコンピュータには、受信信号を逆拡散することによりデータ復元された絶対位置情報が提供されることに特徴を有する。
【0014】
このように構成すれば、複数のレーダユニットを同時に稼動させることにより、効率的に探査対象を検出することができる。
また、検出された探査対象の絶対位置情報は、拡散符号を用いた情報伝達手段を介して第一のコンピュータに送信される。第一のコンピュータにおいては、送信側で用いられた拡散符号を用いてデータ復元を行なうため、通信相手(レーダユニット)が特定され、混信状態を回避することができる。
また、所望の探査対象のみでなく複数の物体が混在する状況においては、それぞれ異なる周波数帯のレーダユニットを複数用いることにより、各物体を容易に検出することができる。なお、その場合においても拡散符号を用いた情報伝達手段により、第一のコンピュータは、通信相手を特定することができるため、検出された物体を識別することができる。
【0015】
また、探査対象に対し作業を行なう作業手段を備え、前記作業手段は、前記レーダユニットまたは前記第一のコンピュータから前記情報伝達手段を介し前記探査対象の絶対位置情報を取得する第二のコンピュータと、衛星からの受信データに基づき作業手段の位置情報を取得する作業位置取得手段とを有し、前記作業手段は、前記探査対象の絶対位置情報と前記作業位置取得手段により得られた情報に基づいて探査対象に対し接近し作業を行なうことが望ましい。
このようにすれば、取得した絶対位置情報に含まれる探査対象の絶対座標(緯度経度情報)に接近することができ、また、レーダ探査の結果に基づき適切な作業を行なうことができる。
【0016】
また、前記レーダユニットは、一つまたは複数単位で複数の探査手段に搭載され、前記複数の探査手段はそれぞれ、目印としてのマーキングを付すマーキング手段を備え、前記レーダユニットにより前記絶対位置情報を取得した探査対象の位置を特定するマーキングを、前記マーキング手段により探査エリア上に付すことが望ましい。
このように構成すれば、例えば作業員による目視によっても探査対象の位置を確認することができる。
【0017】
また、前記作業手段は、前記マーキング手段により付されたマーキングを検出するマーキング検出手段を備え、前記マーキング検出手段によって前記マーキングを検出することにより探査対象の位置を特定することが望ましい。
このようにすれば、作業手段において、前記探査対象の絶対位置情報と前記作業位置取得手段により得られた情報に加え、マーキング情報を用いることで、より正確に探査対象の位置を特定することができる。
【0018】
また、前記第一のコンピュータは、前記探査対象の絶対位置情報に基づいて、前記探査手段及び/または前記作業手段のそれぞれに動作指示を送ることが望ましい。
このように構成すれば、前記第一のコンピュータが一元管理するすべての探査対象の絶対位置情報に基づいて、前記探査手段及び/または前記作業手段における効率的な作業が可能となる。
【0019】
また、前記レーダユニットは、探査対象を検出するレーダ手段と、該レーダユニットの絶対位置を衛星からの受信データに基づき取得するターゲット座標取得手段とを備え、少なくとも前記レーダ手段の出力信号と、前記ターゲット座標取得手段の出力信号とを多重化することにより前記絶対位置情報を形成することが望ましい。
このようにすれば、一つの伝送路で効率的に複数データの送受信を行なうことができる。
【0020】
また、前記レーダユニットは、同じ周波数帯域でレーダ探査中の他のレーダユニットに対し、既に探査が終了した探査エリア情報を、前記情報伝達手段を介して送信することが望ましい。
このようにすることにより、各レーダユニットにおける無駄な探査作業を回避し、効率的な作業を行なうことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、複数のレーダを同時に用いて所望の探査対象の絶対位置情報を取得し、取得したすべての絶対位置情報を一元管理することにより効率的な作業を可能とする位置情報検出システムを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る実施の形態について、図に基づいて説明する。図1は、本発明に係る位置情報検出システムの全体構成図である。図2は、図1の構成を一具体例に適用した場合の模式図である。
本発明に係る位置情報検出システムは、例えば、地中に埋設された物体の検出、地中に自然形成された空洞の検出、地上高くに張り巡らされた送電線の破損検査、建物における漏水検査等々にそれぞれ適用することができるが、本実施の形態においては、図2に示すように、例えば天然ガスを輸送するパイプライン41が敷設された地帯に埋設された(複数の)地雷40を検出する場合を例に説明する。すなわち、この場合、パイプライン41と地雷40とをそれぞれ検出し、パイプライン41を破損しないように地雷40の除去作業を行なう必要がある。
【0023】
図1に示す位置情報検出システム100の基本構成は、システム全体を制御するホストコンピュータ5(第一のコンピュータ)と、地中レーダ探査を行なう複数のレーダユニットL1〜Ln〜(nは正の整数)と、前記レーダユニットLの探査結果を取得し参照する(一つまたは)複数のクライアントコンピュータ3(第二のコンピュータ)とからなる。
【0024】
それらレーダユニットL1〜Ln〜と、クライアントコンピュータ3と、ホストコンピュータ5とは、それぞれスペクトラム拡散方式を用いた無線データ通信手段である情報伝達手段6によりデータの送受信を行なうよう構成されている。
すなわち、送信側では送信信号に拡散符号を掛け合わせ(拡散する)、受信側では送信側で用いた拡散符号を用いて逆拡散しデータ復元が行なわれる。このようにすることによって、同じ通信エリアにおける一周波数帯域において同時に複数のデータ送受信が可能となり、データ通信における混信を回避することができる。
【0025】
複数のレーダユニットL1〜Ln〜は、それぞれ同じ周波数帯域及び/または異なる周波数帯域のレーダ発射及び受信を行なうようになされ、(一台または)複数台単位で、探査手段であるロボットR1〜Rm〜(mは正の整数)に搭載される。すなわち、地雷を検出するための周波数帯域(900MHz〜2600MHz)を使用するレーダユニットLと、パイプラインを検出するための周波数帯域(ガス等の空洞の場合500MHz、水の場合400MHz)を使用するレーダユニットLとをそれぞれ別々のロボットRに、または両方のレーダユニットLを一台のロボットRに搭載するようになされる。
【0026】
また、複数のレーダユニットL1〜Ln〜は、それぞれ後述するように、GPS衛星からの受信信号に基づき位置情報を取得するGPS(グローバル・ポジショニング・システム)を利用することにより、レーダ探査において検出した探査対象の絶対座標(緯度経度情報)を特定するように構成されている。そして、各レーダユニットLは、レーダ探査の結果と、GPSにより得られた絶対座標とを多重化し、各探査対象の絶対位置情報を形成するようになされている。また、それら絶対位置情報は、ホストコンピュータ5からのリクエストに応じて、ホストコンピュータ5にそれぞれ情報伝達手段6を介して送信されるようになされている。
【0027】
また、クライアントコンピュータ3は作業手段としての油圧ショベル4に少なくとも一つ搭載されるが、一台の油圧ショベル4に複数のクライアントコンピュータ3が搭載されてもよい。このクライアントコンピュータ3は、レーダユニットLまたはホストコンピュータ5にリクエスト送信することにより、レーダユニットLまたはホストコンピュータ5から探査対象の絶対位置情報を取得する。そして、油圧ショベル4は、クライアントコンピュータ3が取得した絶対位置情報等に基づいて作業を行なうようになされている。
なお、油圧ショベル4は、一台であっても複数台であっても構わないが、処理対象が多数ある場合には、複数台稼動することによって効率的に対応することができる。
【0028】
また、システム全体を制御するホストコンピュータ5は、すべてのレーダユニットL及びクライアントコンピュータ3とそれぞれ通信可能な場所に存在すればよく、その設置場所は限定されない。なお、図2においては、建物内にホストコンピュータ5が設置される例を示している。
ホストコンピュータ5は、前記したように各レーダユニットLにリクエスト送信することにより、各レーダユニットLから探査対象の絶対位置情報を取得し、取得したすべての絶対位置情報を一元管理する。そして、その絶対位置情報に基づいて、各探査ロボットR及び各油圧ショベル4に対し、動作指令を行なうようになされている。
【0029】
例えば、探査ロボットRには、図3のブロック図に示すように、一つまたは複数のレーダユニットLが搭載されるとともに、ロボットを移動等、動作させるための移動機構ユニットTが搭載される。ホストコンピュータ5からのリクエストに対し、レーダユニットLからは、探査対象の検出位置を示す絶対位置情報が返され、また、移動機構ユニットTからは、その動作状態等を示す情報が返される。
ホストコンピュータ5においては、探査ロボットRから返された情報に基づいて、探査ロボットRの動作指令を移動機構ユニットTに対し行なうようになされている。
【0030】
続いて、各レーダユニットLの構成について、図4に基づき説明する。図4は、レーダユニットL内部の概略構成を示すブロック図である。
図4に示すようにレーダユニットLは、探査対象をレーダ探査するためのレーダ手段7と、探査対象の絶対位置を検出するためのターゲット座標取得手段8と、探査ロボットRが有する図示しないマーキング手段による地上へのマーキング情報等を取得するその他情報取得手段9(マーキング検出手段)とを備えている。尚、マーキングとは、地雷の位置を特定するための目印であって、探査エリア上(この場合、地上)にスプレーガン等の手段により付される。また、マーキングの材質としては、アルミニウム粉が好ましい。
【0031】
前記レーダ手段7は、地中に対してレーダの送受信を行ない、探査対象の地中における位置や形状等を情報として検出するターゲットレーダ10と、ターゲットレーダ10のアナログ出力をデジタル信号に変換するA/D(アナログ/デジタル)変換手段11と、A/D変換手段11のパラレル信号出力をシリアル信号に変換するP/S(パラレル/シリアル)変換手段12とで構成されている。
【0032】
また、ターゲット座標取得手段8は、複数のGPS衛星から発信された電波を受信し、レーザユニットLの絶対座標(緯度経度情報)を取得するGPSユニット13と、その出力をデジタル信号に変換するA/D変換手段14と、パラレル信号をシリアル信号に変換するP/S変換手段15とで構成されている。
また、その他情報取得手段9は、地上に付されたマーキング等をレーダにより検出するその他情報取得レーダ16と、その出力をデジタル信号に変換するA/D変換手段17と、パラレル信号をシリアル信号に変換するP/S変換手段18とで構成されている。
【0033】
レーダ手段7とターゲット座標取得手段8とその他情報取得手段9の出力は、それぞれユニット統括コンピュータ19に入力され、各情報が紐付けされて一纏まりの情報として統括される。そして、それらの情報は、情報多重化手段20により多重化され、探査対象の絶対位置情報として情報伝達手段6に出力されるようになされている。
【0034】
また、前記レーダユニットLは、同じ周波数帯域でレーダ探査中の他のレーダユニットLに対し、既に探査が終了した探査エリアにおける探査対象の絶対位置情報を、情報伝達手段6を介して送信するようになされている。すべてのレーダユニットLは、他のレーダユニットLから情報伝達手段6を介して入力された多重化信号を分離する情報分離手段21を備えており、その出力はユニット統括コンピュータ19に入力されるよう構成されている。すなわち、レーダユニットL同士が直接データ通信を行い、相互に探査したエリアでの情報を交換することによって無駄な探査作業を回避し、効率的な作業ができるようになされている。また、レーダユニットL同士が通信することによって、ロボットR同士の衝突を回避するようになされている。
【0035】
またこのように、少なくともレーダユニットLにおいては、複数種類の検出信号を多重化する機能及び多重化信号を分離する機能を有することにより、一つの伝送路で効率的に複数のデータの送受信が可能になされている。
なお、図示しないが、前記ホストコンピュータ5側においては、少なくとも前記情報分離手段21と同様の手段をそれぞれ有し、レーダユニットLから送信された多重化信号を分離することができるように構成されている。
【0036】
次に、図5に基づいて油圧ショベル4(作業手段)内の構成について説明する。図5は、油圧ショベル4において、探査対象に接近するために必要となる構成を示すブロック図である。
油圧ショベル4は、地雷が検出された地点に付されたマーキング等を検出するマーキング検出手段としてのその他情報取得手段22と、油圧ショベル4の絶対座標(緯度経度情報)を検出するための作業位置取得手段23とを備えている。
【0037】
前記その他情報取得手段22は、探査ロボットRにより地上に付されたマーキング等をレーダにより検出するその他情報取得レーダ24と、その出力をデジタル信号に変換するA/D変換手段25と、さらにパラレル信号をシリアル信号に変換するP/S変換手段26とで構成されている。
【0038】
また、前記作業位置取得手段23は、複数のGPS衛星から発信された電波を受信し、油圧ショベル4の絶対座標(緯度経度情報)を取得するGPSユニット27と、その出力をデジタル信号に変換するA/D変換手段28と、さらにパラレル信号をシリアル信号に変換するP/S変換手段29とで構成されている。
【0039】
前記したように、油圧ショベル4には、ホストコンピュータ5またはレーザユニットLから情報伝達手段6を介して探査対象の絶対位置情報が多重化された情報として送信される。そして、油圧ショベル4で受信された絶対位置情報は、情報分離手段31により、レーダユニットLにおけるレーダ手段7の出力情報と、ターゲット座標取得手段8の出力情報と、その他情報取得手段9の出力情報とに分離され、それぞれクライアントコンピュータ3に入力される。
【0040】
油圧ショベル4においては、先ず、前記ターゲット座標取得手段8の出力情報(地雷の緯度経度情報)と、前記作業位置取得手段23の出力情報(油圧ショベルの緯度経度情報)に基づいて探査対象である地雷に接近するようになされる。そして、目標となる地雷上の地表に付されたマーキングを前記その他情報取得手段22により検出し、さらに前記レーダ手段7の出力情報により地雷の埋設位置を正確に確定するようになされている。
【0041】
また、前記その他情報取得手段22の出力情報と、作業位置取得手段23の出力情報とは、クライアントコンピュータ3において紐付けされて一纏まりの情報として統括される。そして、それらの情報は、情報多重化手段30により多重化され、作業が施される地雷の絶対位置情報として情報伝達手段6を介しホストコンピュータ5に出力される。
これにより、ホストコンピュータ5においては、未処理の地雷と処理済(及び現時点で処理を行なっている地雷)の管理が可能となり、油圧ショベル4に対して常に効率的な作業指示を行なうことができる。
【0042】
続いて、以上説明した構成において、図2に示すような一具体例の下、地雷を所望の探査対象として検出し除去する一連の作業について説明する。
探査エリアにおいては、例えば、地雷40を探査するための周波数帯域(900MHz〜2600MHz)のレーダユニットLを搭載した複数の探査ロボットRと、パイプライン41(中のガス等)を探査するための周波数帯域(ガス等の空洞の場合500MHz)のレーダユニットLを搭載した複数の探査ロボットRとを同時に稼動させる。なお、一台の探査ロボットRに周波数帯域の異なる複数のレーダユニットLを搭載してもよい。また、効率的な探査作業のためには、同じ周波数帯のレーダユニットLによる探査エリアは、予めホストコンピュータ5によりそれぞれ割り振られるのが好ましい。
各探査ロボットRにおいては、地中に対しレーダ探査を行なうと共に、GPS衛星32からの電波を受信し、レーダ探査により得られた信号とGPSにより現在位置を示す信号等を多重化し、探査対象の絶対位置情報を形成する。
【0043】
探査作業中または終了した探査ロボットRに対し、ホストコンピュータ5が情報送信リクエストを送信すると、探査ロボットRに搭載されたレーダユニットLはそれぞれ、ホストコンピュータ5に対し、その時点における探査エリアでの地雷40またはパイプライン41の絶対位置情報を送信する。なお、ホストコンピュータ5においては、拡散符号を用いた情報伝達手段6により通信相手を特定できるため、送られた絶対位置情報が地雷40であるのか、あるいはパイプライン41であるのかを識別することができる。
【0044】
ホストコンピュータ5では、受け取った絶対位置情報を参照し、さらに効率よく残りの探査エリアを探査するために各探査ロボットRに対し動作指令を送信する。なお、この場合においても情報伝達手段6を介してデータ通信が行なわれるため、ホストコンピュータ5は、探査ロボットR毎に適切な動作指令を行なうことができる。
また、探査ロボットR(レーダユニットL)間においても、相互に探査したエリアでの情報が交換される。これにより、お互いの衝突や無駄な探査作業を回避し、効率的な作業ができるようになされている。
【0045】
探査ロボットRによる探査作業終了後、ホストコンピュータ5は、探査エリアにおける地雷等の絶対位置情報を一元管理し、各油圧ショベル4のクライアントコンピュータ3に対し、作業の対象とする地雷の絶対位置情報を送信する。油圧ショベル4においては、そのクライアントコンピュータ3が受け取った絶対位置情報に基づいて地雷に接近し、さらにマーキングを検出することにより地雷の正確な位置を確定し、パイプライン41に影響しないように適切な所定の作業(周囲の掘削等)を行なう。
なお、ホストコンピュータ5から各油圧ショベル4へのデータ通信においても情報伝達手段6を介し行なわれるため、拡散符号により通信相手が特定され、混信することがないようになされている。
【0046】
以上のように、本発明に係る実施の形態によれば、複数のレーダユニットLを同時に稼動させることにより、効率的に探査対象を検出することができる。
また、検出された探査対象の絶対位置情報は、拡散符号を用いた情報伝達手段6を介してホストコンピュータ5に送信される。ホストコンピュータ5においては、送信側で用いられた拡散符号を用いてデータ復元を行なうため、通信相手(レーダユニットL)が特定され、混信状態を回避することができる。
【0047】
また、ホストコンピュータ5は、検出された探査対象の絶対位置情報をすべてのレーダユニットLから受信し、また、クライアントコンピュータ3から現時点で処理を行なう探査対象の絶対位置情報を受信することにより、探査エリアにおけるすべての探査対象の情報(状況)を一元管理することができる。
これにより、ホストコンピュータ5は、すべてのロボットR(探査手段)の探査動作及び、すべての油圧ショベル4(作業手段)の作業動作を効率よく制御することができる。
【0048】
また、所望の探査対象のみでなく複数の物体が混在する状況においては、それぞれ異なる周波数帯のレーダユニットLを複数用いることにより、各物体を容易に検出することができる。なお、その場合においても拡散符号を用いた情報伝達手段6により、ホストコンピュータ5は、通信相手を特定することができるため、検出された物体をそれぞれ識別することができる。
【0049】
尚、前記その他情報取得手段9、22は、地表に付されたマーキングをレーダにより検出する例として説明したが、マーキングを検出する手段はレーダに限定されず、カメラによりマーキングを検出するように構成してもよい。
また、前記実施の形態においては、地中に対しレーダ探査を行なう場合を例に説明したが、本発明に係る位置情報検出システムの適用にあっては、地中における探査対象のみに限定されるものではない。すなわち、GPSを利用することによってレーダユニットの高さ方向の位置を測定することが可能であるため、例えば、建物の壁中に沿って高さ方向に敷設された水道管の漏水検査、ガス管のガス漏れ検査等にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明にかかる位置情報検出システムは、例えば、地雷検出除去作業や、パイプライン破損検査等において好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1は本発明に係る位置情報検出システムの全体構成図である。
【図2】図2は図1の構成を一具体例に適用した場合の模式図である。
【図3】図3は図1のレーダユニットを搭載したロボットと、ホストとの通信データについて模式的に示すブロック図である。
【図4】図4は図1のレーダユニットの内部の概略構成を示すブロック図である。
【図5】図5は図1の油圧ショベルの内部の概略構成を示すブロック図である。
【図6】図6は従来の掘削システムの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0052】
3 クライアントコンピュータ(第二のコンピュータ)
4 油圧ショベル(作業手段)
5 ホストコンピュータ(第一のコンピュータ)
6 情報伝達手段
7 レーダ手段
8 位置情報取得手段
9 その他情報取得手段
10 レーダ送受信部
13 GPSユニット
19 ユニット統括コンピュータ
20 情報多重化手段
21 情報分離手段
22 その他情報取得手段
100 位置情報検出システム
L レーダユニット
R 探査ロボット(探査手段)
T 移動機構ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
探査対象の絶対位置情報を検出する位置情報検出システムにおいて、
探査対象が存在する探査エリアに対し、それぞれ同じ周波数帯または異なる周波数帯でのレーダ探査を行い、衛星からの受信データに基づき探査対象の絶対位置情報を取得する複数のレーダユニットと、前記複数のレーダユニットが取得した絶対位置情報を記憶し管理する第一のコンピュータと、前記レーダユニットと前記第一のコンピュータとの間にデータ通信機能を提供する情報伝達手段とを備え、
前記情報伝達手段により、前記レーダユニット側からは前記絶対位置情報を拡散符号で拡散した信号が前記第一のコンピュータ側に送信され、該第一のコンピュータには、受信信号を逆拡散することによりデータ復元された絶対位置情報が提供されることを特徴とする位置情報検出システム。
【請求項2】
探査対象に対し作業を行なう作業手段を備え、
前記作業手段は、前記レーダユニットまたは前記第一のコンピュータから前記情報伝達手段を介し前記探査対象の絶対位置情報を取得する第二のコンピュータと、衛星からの受信データに基づき作業手段の位置情報を取得する作業位置取得手段とを有し、
前記作業手段は、前記探査対象の絶対位置情報と前記作業位置取得手段により得られた情報に基づいて探査対象に対し接近し作業を行なうことを特徴とする請求項1に記載された位置情報検出システム。
【請求項3】
前記レーダユニットは、一つまたは複数単位で複数の探査手段に搭載され、
前記複数の探査手段はそれぞれ、目印としてのマーキングを付すマーキング手段を備え、
前記レーダユニットにより前記絶対位置情報を取得した探査対象の位置を特定するマーキングを、前記マーキング手段により探査エリア上に付すことを特徴とする請求項1または請求項2に記載された位置情報検出システム。
【請求項4】
前記作業手段は、前記マーキング手段により付されたマーキングを検出するマーキング検出手段を備え、
前記マーキング検出手段によって前記マーキングを検出することにより探査対象の位置を特定することを特徴とする請求項3に記載された位置情報検出システム。
【請求項5】
前記第一のコンピュータは、前記探査対象の絶対位置情報に基づいて、前記探査手段及び/または前記作業手段のそれぞれに動作指示を送ることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載された位置情報検出システム。
【請求項6】
前記レーダユニットは、探査対象を検出するレーダ手段と、該レーダユニットの絶対位置を衛星からの受信データに基づき取得するターゲット座標取得手段とを備え、
少なくとも前記レーダ手段の出力信号と、前記ターゲット座標取得手段の出力信号とを多重化することにより前記絶対位置情報を形成することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載された位置情報検出システム。
【請求項7】
前記レーダユニットは、同じ周波数帯域でレーダ探査中の他のレーダユニットに対し、既に探査が終了した探査エリア情報を、前記情報伝達手段を介して送信することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載された位置情報検出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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