説明

位置情報管理システム

【課題】無線通信を利用して、車両等の移動体の位置情報を特定し、移動体に関連付けられた情報を取得することのできる位置情報管理システムを提供する。
【解決手段】自機の識別情報を含むビーコン信号を無線送信する複数のビーコン発信器であって、隣接するビーコン発信器とビーコン信号の出力範囲が一部重なるように管理すべきエリアに分布して配置されるビーコン発信器20と、移動体に搭載される端末装置であって、ビーコン信号を受信し、受信された各ビーコン信号から識別情報を抽出し、各ビーコン信号の受信信号強度を測定して、得られたビーコン信号の識別情報と受信信号強度を自機の識別情報に関連付けた端末信号を無線送信する端末装置30と、前記端末信号を受信し、受信された端末信号に含まれる端末装置の識別情報と、ビーコン発信器の識別情報及び受信信号強度に基づいて、端末装置の位置を特定する主装置40と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信を利用して、車両等の移動体の位置情報を特定し、移動体に関連付けられた情報を取得することのできる位置情報管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
スーパーマーケット、イベント会場、遊園地等の駐車場では、入出庫する車両の入出庫情報の管理が行なわれている。また、駐車場の混雑状況や、空き駐車スペースを管理したり、使用者に表示パネル等で告知する必要がある。
そこで、各駐車スペースに夫々センサを設置し、駐車スペースに車両が駐車されているか否かを検出して、表示等することのできる駐車場の管理システムが提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−35194号公報
【特許文献2】特開平08−305998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記管理システムでは、駐車スペース毎にセンサ等を設置する必要があり、駐車場の規模が大きいほどセンサ等の数も増えてしまう。このため、個別に多数設置されたセンサ等を信号の無線送受信で管理することは極めて困難であり、各センサを有線接続せざるを得ない。従って、センサ等の設置やメンテナンスに多大な費用が必要となる。
【0005】
さらに、このような駐車場管理システムでは、駐車スペースにおける車両の有無は検知できるが、各駐車スペースに駐められている車両の車種、ナンバー等の情報を特定することはできない。
【0006】
また、例えば、自動車展示販売業等では、車両の展示スペースに明確な区画はないから、車両の有無をセンサ等で検知することができない。しかしながら、このような場合であっても、展示されている車両の情報とその車両の位置を的確に把握することのできるシステムへの要望がある。
【0007】
本発明の目的は、無線通信を利用して、車両等の移動体の位置情報を特定し、移動体に関連付けられた情報を取得することのできる位置情報管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の位置情報管理システムは、
自機の識別情報を含むビーコン信号を無線送信する複数のビーコン発信器であって、隣接するビーコン発信器とビーコン信号の出力範囲が一部重なるように管理すべきエリアに分布して配置されるビーコン発信器と、
移動体に搭載される端末装置であって、ビーコン信号を受信する端末受信部と、受信された各ビーコン信号から識別情報を抽出する端末抽出部と、各ビーコン信号の受信信号強度を測定する端末測定部と、得られたビーコン信号の識別情報と受信信号強度を自機の識別情報に関連付けた端末信号を無線送信する端末送信部を有する端末装置と、
前記端末信号を受信する受信部と、受信された端末信号に含まれる端末装置の識別情報と、ビーコン発信器の識別情報及び受信信号強度に基づいて、端末装置の位置を特定する解析部を有する主装置と、
を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る位置情報管理システムによれば、管理すべきエリアに分布された複数のビーコン発信器のビーコン信号を端末装置で無線受信し、該端末装置は、各ビーコン信号の識別情報と受信信号強度を自機の識別情報に関連付けた端末信号として無線送信する。
主装置は、受信された端末信号を解析することにより、端末装置の位置を特定する。
より具体的には、端末装置の識別情報によって端末装置を特定し、該端末装置が受信したビーコン信号の識別情報と受信信号強度から位置を特定することができる。
【0010】
本発明は、ビーコン発信器と端末装置、端末装置と主装置との信号の送受信を無線で行なっているから、有線接続された機器の設置を可及的に少なくでき、設置費用やメンテナンス費用を抑制することができる。
【0011】
また、移動体の情報を予め端末装置及び/又は主装置で取得して登録しておくことで、どの移動体がどの位置にいるかを的確に把握することができる。
【0012】
本発明によれば、ビーコン発信器を駐車場等に分布して配置し、駐車場に入出庫する車両の端末装置を搭載することで、駐車場内における車両の位置情報を無線により主装置で取得することができる。また、車両に関する情報を予め取得しておくことで、車両の入庫時間、駐車場所、出庫時間等を管理することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の一実施形態である位置情報管理システムを配置した駐車場の平面図である。
【図2】図2は、位置情報管理システムのブロック図である。
【図3】図3は、ビーコン発信器から発信されるビーコン信号の出力範囲を示す説明図であって、(a)は出力が大きい場合、(b)は出力が小さい場合を示している。
【図4】図4は、本発明の位置情報管理システムを駐車場内の車両の位置検知に適用したフローチャート図である。
【図5】図5は、車両に搭載された端末装置から送信される端末信号の一例を示している。
【図6】図6は、複数の端末装置からの端末信号を受信した主装置の表示画面の一例を示している。
【図7】図7は、駐車場の地図に所望する車両の位置を表示した表示画面の一例を示している。
【図8】図8は、エンジン始動時のフローチャート図である。
【図9】図9は、駐車場へ入る車両を検知する位置情報管理システムのブロック図である。
【図10】図10は、図9のフローチャート図である。
【図11】図11は、駐車場から出る車両を検知する位置情報管理システムのブロック図である。
【図12】図12は、図11のフローチャート図である。
【図13】図13は、迷子捜しに本発明の位置情報管理システムを配置した施設の平面図である。
【図14】図14は、迷子捜しのフローチャート図である。
【図15】図15は、ヒトの携帯している端末装置から送信される端末信号の一例を示している。
【図16】図16は、端末装置からの端末信号を受信した主装置の表示画面の一例を示している。
【図17】図17は、施設の地図に迷子の位置を表示した表示画面の一例を示している。
【図18】図18は、居住者の在室管理に本発明の位置情報管理システムを配置した建物の平面図である。
【図19】図19は、居住者の携帯している端末装置から送信される端末信号の一例を示している。
【図20】図20は、端末装置からの端末信号を受信した主装置の表示画面の一例を示している。
【図21】図21は、建物の地図に居住者の位置を表示した表示画面の一例を示している。
【図22】図22は、荷物の位置特定に本発明の位置情報管理システムを配置した物流倉庫の平面図である。
【図23】図23は、荷物の位置特定のフローチャート図である。
【図24】図24は、荷物に搭載された端末装置から送信される端末信号の一例を示している。
【図25】図25は、端末装置からの端末信号を受信した主装置の表示画面の一例を示している。
【図26】図26は、物流倉庫の地図に荷物の位置を表示した表示画面の一例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の位置情報管理システム(10)を駐車場における車両の位置の特定に適用した実施例について説明する。
【0015】
図1は、本発明の位置情報管理システム(10)を適用した駐車場(81)、図2は、位置情報管理システム(10)のブロック図である。
図に示すように、位置情報管理システム(10)は、駐車場(81)に分布して設置された複数のビーコン発信器(20)と、車両(72)に搭載されてビーコン発信器(20)からのビーコン信号を無線受信する端末装置(30)と、端末装置(30)からの端末信号を無線受信して解析する主装置(40)を含んでいる。
【0016】
<ビーコン発信器(20)>
ビーコン発信器(20)は、自機の識別情報を含むビーコン信号を無線発信する。ビーコン信号を受信する端末装置(30)の構成を簡略化するために、各ビーコン発信器(20)から発信されるビーコン信号は、同じ周波数となるように設定することが望ましく、この場合、各ビーコン発信器(20)のビーコン信号の発信タイミングが重ならないように設定する。例えば、ビーコン発信器(20)は、ビーコン信号の同時送信を回避するために夫々送信前に他のビーコン発信器(20)をモニタすればよい。
【0017】
ビーコン発信器(20)は、管理すべきエリアである駐車場(81)の全体に何れかのビーコン発信器(20)のビーコン信号が到達可能且つ隣接して配置されるビーコン発信器(20)のビーコン信号の出力範囲が一部重なるように駐車場(81)に分布して配置する。
【0018】
ビーコン発信器(20)は、商用電源から有線により電源の供給を受けることもできるが、バッテリを内蔵することで有線接続を不要とでき、駐車場(81)に埋設等することで設置することができる。
【0019】
図3は、格子状に配置されたビーコン発信器(20)から無線発信されるビーコン信号の出力範囲を示している。図3(a)及び図3(b)に示すように、ビーコン発信器(20)から互いに等しい送信出力で同じ周波数のビーコン信号を発信した場合、各ビーコン信号の到達範囲は、各ビーコン発信器(20)を中心とする円形の範囲となり、図3(a)中、αで示す領域には1つのビーコン発信器(20)(ビーコンA)からのビーコン信号のみが受信される。また、βで示す領域には2つのビーコン発信器(20)(ビーコンA及びB)、γで示す領域には3つのビーコン発信器(20)(ビーコンA、B及びD)、δで示す領域には4つのビーコン発信器(20)(ビーコンA、B、D及びE)のビーコン信号が受信される。
【0020】
図3(a)に示すように、ビーコン発信器(20)の送信出力を大きくすることでビーコン信号の到達範囲は広くなるから、所定のエリアに対するビーコン発信器(20)の設置台数を少なくすることができる。一方、位置検知の精度は低下する。
図3(b)に示すように、ビーコン発信器(20)の送信出力を小さくすることでビーコン信号の到達範囲は狭くなるため、ビーコン発信器(20)の設置台数は多くなるが、位置検知の精度を高めることができる。
これらは、設置されるエリアの面積、要求される位置検知の精度等に応じて適宜決定することができる。
【0021】
なお、駐車場(81)に設置されるビーコン発信器(20)の個々の設置する際に、ビーコン発信器(20)の設置位置と対応する識別情報は、予め主装置(40)に記憶させておく。また、各ビーコン信号の受信信号強度を予め種々のポイントで測定しておき、後述する主装置(40)に記憶させておく。
【0022】
<端末装置(30)>
端末装置(30)は、管理されるエリア内の移動体(70)(図1では車両(72))に搭載される。端末装置(30)は、各ビーコン発信器(20)から発信されるビーコン信号を無線受信し、受信されたビーコン信号に含まれる識別情報と、その受信信号強度を、自機の識別情報と関連付けて無線送信する。
【0023】
より具体的には、端末装置(30)は、図2に示すように、ビーコン信号を受信する端末受信部(32)、受信されたビーコン信号の発信元となるビーコン発信器(20)の識別情報を抽出する端末抽出部(34)、受信されたビーコン信号の受信信号強度を測定する端末測定部(36)を含む。受信信号強度は、RSSI値やdBmとして測定することができる。
得られたビーコン発信器(20)の識別情報とその受信信号強度は、端末装置(30)の識別情報と関連付けられた端末信号として、端末送信部(38)から無線送信される。
【0024】
なお、端末装置(30)には、予め又は車両(72)が駐車場(81)に入庫したときに、車両(72)に関連する情報、例えば、ナンバー(車両番号)、メーカー、車種、グレード、車色等を登録しておき、端末信号に含めて送信することもできる(図5参照)。
【0025】
端末装置(30)は、ビーコン信号の受信タイミング、受信時間を適宜設定することができる。
例えば、移動体(70)が車両(72)の場合、受信タイミングは、車両(72)が駐車スペースで停止したとき、即ち、エンジン停止をトリガーとすることができる。エンジン停止は車両(72)の電源系から取得したり、端末装置(30)に振動センサを搭載して、エンジン停止を検知することで判別することができる。
【0026】
受信時間は、ビーコン発信器(20)のビーコン信号の発信間隔に基づいて決定することができる。例えば、ビーコン発信器(20)のビーコン信号の発信間隔が10秒であれば、端末装置(30)の受信時間は10秒以上に設定すればよく、受信時間をビーコン信号の発信間隔に比して長く設定し(例えば5分)、複数回同じビーコン信号を受信して、その中で最も大きい受信信号強度を端末信号に含めたり、測定された受信信号強度の平均を算出して端末信号に含めることもできる。
【0027】
端末装置(30)からの端末信号は、上記受信時間が終了し、端末信号が送信可能となったときを送信タイミングとすることができる。また、端末信号を送信する前に、予め後述する主装置(40)に対して接続要求確認の信号を送信し、主装置(40)から接続要求確認に対する返信を受けて、双方向の送受信が成立した状態で端末信号を送信するようにしてもよい。
【0028】
なお、端末装置(30)は移動体(70)から電源の供給を受ける構成とすることもできるが、電圧等の影響を受ける可能性があるから、バッテリにより駆動する構成とすることが望ましい。また、端末装置(30)の電力消費を抑えるために、主装置(40)に端末信号を送信した後、電源をオフ又はスリープ状態となるように構成することが望ましい。
【0029】
<主装置(40)>
主装置(40)は、端末装置(30)から無線送信される端末信号を無線受信して、端末装置(30)を搭載する移動体(70)の位置等の情報を特定して管理する装置である。
主装置(40)は、PCやサーバ等をメインに構成することができる。より具体的には、図1及び図2に示すように、主装置(40)は、PC(サーバ)(41)に送受信部(42)と表示部(50)等を接続して構成することができる。
【0030】
送受信部(42)は、端末装置(30)と信号を受信する受信部と、端末装置(30)へ信号を送信する送信部を含む装置であり、管理すべきエリア内の何れの位置からでも端末装置(30)と信号の送受信が可能となるように1又は複数配置される。図1の実施例では、送受信部(42)は1基のみであるが、駐車場(81)が広い場合等には駐車場(81)の各コーナー又は所定間隔毎に送受信部(42)を設置することが望ましい。
【0031】
PC(サーバ)(41)は、送受信部(42)にて受信した端末信号を解析して、端末装置(30)の位置を特定する解析部(43)と、PC(サーバ)(41)を制御する制御部(44)を有する。
【0032】
また、制御部(44)には、管理すべきエリアに設置された各ビーコン発信器(20)の識別情報とその位置、管理すべきエリア内の各位置におけるビーコン発信器(20)のビーコン信号の受信信号強度、端末装置(30)の識別情報、端末装置(30)が搭載されている移動体(70)に関する種々の情報、その他制御等に必要な情報を記憶する記憶部(45)が接続されている。例えば、エリア内の各位置におけるビーコン発信器(20)のビーコン信号の受信信号強度はマップ化して記憶することができる。以下、ビーコン信号の受信信号強度のマップを受信信号強度マップと称する。
記憶部(45)は、メモリやハードディスクを例示でき、外部記憶媒体や外部記憶装置等としてもよい。
【0033】
解析部(43)は、端末装置(30)から受信した端末信号を解析して、端末装置(30)の位置を特定する。より具体的には、解析部(43)は、端末信号に含まれる端末装置(30)の識別情報、端末装置(30)の受信した各ビーコン発信器(20)の識別情報とその受信信号強度を解析し、例えば記憶部(45)に記憶されている受信信号強度マップと照合することで、端末装置(30)とその位置を特定する。
【0034】
解析部(43)にて特定された端末装置(30)とその位置に関する情報は、必要に応じて移動体(70)に関する情報等と関連付けられて、PC(サーバ)(41)に接続された表示部(50)に視覚的に表示することができる。後述する図6は端末装置(30)及び移動体(70)の情報をテーブル化して表示したものであり、図7は、表示部(50)への表示例である。
【0035】
また、解析部(43)にて特定された端末装置(30)とその位置に関する情報は、必要に応じて移動体(70)に関する情報等と関連付けられて、ルータ(60)等を介して、携帯電話機等の携帯端末(64)を含む外部端末に公衆ネットワーク(62)を介して送信することもできる。
【0036】
主装置(40)には、さらに、移動体(70)に関する情報を取得又は入力するためのカメラや操作手段等の外部入力部(48)を接続することができる。例えば、車両(72)の場合、駐車場(81)のゲート(83)等にカメラを配備し、ゲート(83)を通過する車両(72)のナンバー(車両番号)、メーカー、車種、グレード、車色などを撮像して、これらデータを車両(72)に関する情報として取得できる。もちろん、取得する情報はこれらに限定されるものではない。
【0037】
取得された移動体(70)に関する情報は、記憶部(45)に記憶されて、移動体(70)に搭載される端末装置(30)の識別情報と関連付けることができる。なお、取得された移動体(70)に関する情報を端末装置(30)に無線送信してもよい。
【0038】
上記ビーコン発信器(20)、端末装置(30)、主装置(40)を含む位置情報管理システム(10)によれば、管理されるエリア内の端末装置(30)、具体的には端末装置(30)を搭載した移動体(70)の位置を特定することができる。
【0039】
以下、上記位置情報管理システム(10)の具体的な動作及び制御の流れを説明する。
図4は、本発明の位置情報管理システム(10)のフローチャート図を示している。ステップ1乃至ステップ3は、駐車場(81)に設置された各ビーコン発信器(20)からのビーコン信号の発信フローを示している。ビーコン発信器(20)は、ビーコン信号を発信する前に、予め他のビーコン発信器(20)との電波干渉を避けるため、ビーコン信号の送信に利用する周波数帯域の干渉信号を受信し(ステップ1)、電波干渉がなければ(ステップ2のYes)、自機の識別情報を含むビーコン信号を発信する(ステップ3)。
【0040】
各ビーコン発信器(20)からのビーコン信号は、24時間又は駐車場(81)の営業時間中、所定時間毎に発信される。
【0041】
移動体(70)である車両(72)は端末装置(30)を搭載し、該端末装置(30)にてビーコン信号を受信する。
端末装置(30)のビーコン信号の受信タイミングは、例えば、車両(72)が駐車スペースに駐められたとき、即ち、車両(72)のエンジンが停止したとき(ステップ11及びステップ12)とすることができる。車両(72)のエンジンの停止は、端末装置(30)に振動センサ(図示せず)を搭載して、振動センサの検知結果に基づいて判断することができる。
【0042】
端末装置(30)は、上記のようにエンジンの停止をトリガーとして端末受信部(32)を作動させて、ビーコン信号を受信する(ステップ13)。受信されたビーコン信号は、端末抽出部(34)にてビーコン信号の発信元であるビーコン発信器(20)の識別情報が抽出されると共に、端末測定部(36)にて受信されたビーコン信号の受信信号強度が測定される(ステップ14)。ビーコン信号の受信と、識別情報の抽出、受信信号強度の測定は所定時間行なわれ、図5に示すようなテーブルデータとして記憶することができる。
【0043】
図5は、上記端末信号のテーブルデータであり、車両(72)に搭載された端末装置(30)の識別情報と、車両情報(後述する)、ビーコン発信器(20)の識別情報と受信信号強度を含んでいる。
【0044】
所定時間経過後、端末装置(30)は、端末送信部(38)から前記テーブルデータに自機の識別情報を関連付けて、端末信号として送信する(ステップ15)。
【0045】
なお、端末信号が上手く主装置(40)にて受信されたかどうかを判定するために、主装置(40)が当該端末信号を受信した場合にACK信号を送信するようにすればよい(ステップ16及びステップ23)。なお、この場合、端末装置(30)がACK信号を受信するまで、端末信号の送信を続けるようにすればよい。
また、送信が完了又は送信完了後所定時間経過すると、端末装置(30)のバッテリの消耗を防ぐためにスリープ状態又は電源オフの状態となるようにすることができる。
【0046】
主装置(40)は、送受信部(42)にて端末装置(30)から端末信号を受信すると、PC(サーバ)(41)の制御部(44)に端末信号を送信する(ステップ22)。上記のように端末装置(30)側にACK信号を送信するよう設定している場合には、端末装置(30)へACK信号を送信する(ステップ23)。
【0047】
制御部(44)は、送受信部(42)から端末信号を受信すると、受信された端末信号に含まれる端末装置(30)の識別情報、各ビーコン発信器(20)の識別情報とその受信信号強度を解析し(図6参照)、予め記憶部(45)に記憶されている受信信号強度マップと照合して、端末装置(30)とその位置を特定する(ステップ25)。
【0048】
より具体的には、図1に示す如く設置されたビーコン発信器(20)からのビーコン信号について、図6に示すように、端末装置(30)は、4つのビーコン信号を受信しているから、これら4つのビーコン信号を受信可能な位置に端末装置(30)を搭載した車両(72)が位置していることがわかる(図3のδ参照)。さらに詳細に解析すると、ビーコン1のRSSI値(受信信号強度)が−43、ビーコン2のRSSI値が−73、ビーコン3のRSSI値が−54、ビーコン4のRSSI値が−84であるから、端末装置(30)とビーコン発信器(20)の位置関係について、端末装置(30)は、ビーコン信号のRSSI値が大きいビーコン1に最も近い位置にあり、順にビーコン3、ビーコン4、ビーコン2に近いことがわかる。これらの数値から、端末装置(30)を搭載した車両(72)は、図1に位置にあることが特定できる。
【0049】
上記により、どの端末装置(30)を搭載した車両(72)が駐車場(81)のどの位置に駐められているかの位置情報を取得できる。
【0050】
得られた位置情報は、図7に示すように、表示部(50)にて視覚的に判断しやすいように駐車場(81)の地図(82)上に表示することができる(ステップ26)。
【0051】
また、ルータ(60)を介して公衆ネットワーク(62)に接続し(ステップ27)、携帯端末(64)等に車両(72)の位置情報を送信するようにしてもよい(ステップ28)。
【0052】
上記にて説明した位置情報管理システム(10)により、駐車場(81)に分布して設置されたビーコン発信器(20)のビーコン信号から、端末装置(30)の位置を特定することができる。
【0053】
なお、端末装置(30)に温度センサ、振動検知センサ、モーションセンサ、人感センサ等を配置し、車両(72)が駐車スペースに駐められた状態、即ち、エンジンが停止した状態で、これらセンサが異常を検知すると、端末装置(30)から自機の識別情報と共に異変の発生を主装置(40)に無線送信することもできる。異変の生じている車両(72)の位置は、上記により特定されているから、異変の生じている車両(72)を容易に発見することができる。
【0054】
フローチャート図8に示すように、駐車場(81)から出庫のために車両(72)のエンジンを作動させると(ステップ11’及びステップ12’)、端末装置(30)は起動を開始し、フローチャート図4と同様の要領にてビーコン信号を受信し(ステップ13)、端末信号を主装置(40)に送信し(ステップ15)、主装置(40)にて位置情報を特定する(ステップ21〜ステップ25)。
なお、エンジン作動後、すぐに車両(72)が移動する可能性が高いから、ビーコン信号の受信(ステップステップ13)は、初回のビーコン信号のみを受信すると、即時に主装置(40)へ端末信号を送信するようにすることが望ましい。
【0055】
端末装置(30)は、端末信号を送信した後、スリープ状態又は電源オフとはせずに、起動しておくことが望ましい。なお、この後の制御の流れは、図11及びフローチャート図12を用いて後述する。
【0056】
移動体(70)である車両(72)の情報(図6及び図7参照)は、移動体(70)である車両(72)が駐車場(81)に入庫したときに、カメラや手入力等で主装置(40)及び/又は端末装置(30)により取得することができる。車両情報を主装置(40)又は端末装置(30)で取得した後、無線通信を用いて、他方の装置へ送信することで両者が夫々車両情報を有するようにしてもよい。
取得される車両(72)の情報として、ナンバー(車両番号)、メーカー、車種、グレード、車色を例示できるが、これに限定されるものではない。
【0057】
図9及び図11は、駐車場(81)のゲート(83)にビーコン発信器(22)(24)を設置し、駐車場(81)に入出庫する車両(72)を端末装置(30)にて検知し、管理等することのできるシステムの例である。
図9及び図11に示すように、ゲート(83)には2基のビーコン発信器(22)(24)、具体的にはビーコンAとビーコンBを設置している。ゲート(83)の駐車場(81)側のビーコンAと駐車場(81)の外側のビーコンBは、ゲート(83)を通過する車両(72)の進行方向に向けて略垂直な向きに自機の識別情報を含むビーコン信号を異なるタイミングで所定時間毎に発信する。
なお、発信されるビーコン信号は、誤検知を防止するために、指向性の信号とすることが望ましい。
【0058】
車両(72)には、ゲート(83)を通過する前に予め端末装置(30)を搭載し、ビーコン信号を受信できる状態としておく。
図9に示すように車両(72)がゲート(83)に侵入すると、フローチャート図10に示すように、端末装置(30)は、まずビーコンBの前を通過するから、ビーコンBのビーコン信号を受信する(ステップ4及びステップ4’)。さらに車両(72)が進行すると、ビーコンAの前を通過して、ビーコンAのビーコン信号を受信する(ステップ5及びステップ5’)。
即ち、ビーコンBのビーコン信号の後、ビーコンAのビーコン信号を受信した場合には端末装置(30)を搭載した車両(72)が駐車場(81)に入庫したことが判別できる。
【0059】
端末装置(30)は、上記の順でビーコン信号を受信した場合には(ステップ13’)、ビーコン発信器(22)(24)の識別情報に自機の識別情報を関連付けて入庫データを端末信号として無線発信する(ステップ15”)。
【0060】
主装置(40)は、入庫データを含む端末信号を受信すると(ステップ21及びステップ22)、端末装置(30)の端末信号を解析して(ステップ24)、端末装置(30)を特定し(ステップ25)、当該端末装置(30)を搭載した車両(72)が駐車場(81)に入庫したことを表示やネットワーク送信する(ステップ26乃至ステップ28)。
【0061】
なお、端末装置(30)は、送信する端末信号に入庫時刻の情報を含めることができる。また、主装置(40)は、端末信号の受信時刻を管理情報に含めることもできる。
【0062】
さらに、上記した車両情報は、入庫の際、即ちゲート(83)を通過するときに同時に取得するようにして、取得された車両情報を端末装置(30)の識別情報に関連付けて管理等することもできる。
【0063】
ゲート(83)を通過して入庫した車両(72)は、搭載された端末装置(30)が前述のフローチャート図4に従って制御され、主装置(40)により駐車位置を特定することができる。
【0064】
車両(72)が駐車場(81)から出庫する場合には、前述したフローチャート図8の後、図11及びフローチャート図12に示すように、入庫とは逆の手順で、車両(72)はまずビーコンAの前を通過し、続いてビーコンBの前を通過する。
車両(72)に搭載された端末装置(30)は、フローチャート図8で説明したように、エンジンを作動させることで電源がオン又はスリープ状態が解除され、ビーコン信号が受信できる状態となっている。
【0065】
この状態で、出庫のために、図11に示すように車両(72)がゲート(83)に近づくと、フローチャート図12に示すように、端末装置(30)は、まずビーコンAの前を通過するから、ビーコンAのビーコン信号を受信する(ステップ6及びステップ6’)。さらに車両(72)が進行すると、ビーコンBの前を通過して、ビーコンBのビーコン信号を受信する(ステップ7及びステップ7’)。
即ち、ビーコンAのビーコン信号の後、ビーコンBのビーコン信号を受信した場合には端末装置(30)を搭載した車両(72)が駐車場(81)から出庫したことが判別できる。
【0066】
端末装置(30)は、上記の順でビーコン信号を受信した場合には(ステップ13”)、ビーコン発信器(22)(24)の識別情報に自機の識別情報を関連付けて出庫データとして端末信号を無線発信する(ステップ15”)。
【0067】
主装置(40)は、端末信号を受信すると(ステップ21)、端末装置(30)の端末信号を解析して、端末装置(30)を特定し(ステップステップ24)、当該端末装置(30)を搭載した車両(72)が駐車場(81)から出庫したこと(ステップ25”)を表示やネットワーク送信する(ステップ26乃至ステップ28)。
【0068】
端末装置(30)は、送信する端末信号に出庫時刻の情報を含めることができる。また、主装置(40)は、端末信号の受信時刻を管理情報に含めることもできる。
【0069】
なお、端末装置(30)は、ゲート(83)の外で回収し、端末装置(30)に記憶されていた車両情報等の情報をリセットすることが望ましい。
【0070】
上記により、車両(72)が入庫し、駐車した後、出庫するまでの位置情報等の情報を管理することができ、これら情報は、駐車場(81)の運営等に活用することができる。
【0071】
上記実施例では、移動体(70)として車両(72)を例示しているが、移動体(70)は車両(72)に限定されず、ヒトや物等とすることができることは勿論である。
例えば、本発明の位置情報管理システム(10)は、遊園地やデパート等の施設(85)における迷子捜し(図13乃至図17)、マンション(86)等の建物内の居住者(76)の位置特定(図18乃至図21)、物流倉庫(89)等における荷物(78)の位置特定(図22乃至図26)にも適用できる。
【0072】
図13乃至図17は、遊園地やデパート等の施設における迷子捜しをアシストするシステムを示している。なお、車両(72)の位置情報管理システム(10)と重複する部分については適宜説明を省略する(他の実施例についても同じ)。
【0073】
図13に示すように、管理すべきエリア(80)となる遊園地やデパート等の施設(86)に複数のビーコン発信器(20)を設置しておき、端末装置(30)は予め当該施設(86)に入る子ども(74)等が携帯しておく。
フローチャート図14に示すように、ビーコン信号を受信した端末装置(30)は、図15に示すような端末信号を送信し、主装置(40)にて子ども(74)の位置を特定することができる(図16及び図17)。
なお、端末装置(30)は、ビーコン信号を子ども(74)に携帯させた状態で常に受信してリアルタイムで主装置(40)に送信することもできるし、保護者等の問い合わせがあったときに、主装置(40)から端末装置(30)へビーコン信号を受信して端末信号を送信するよう命令する信号を送信してもよい。
【0074】
上記により、子ども(74)の位置を特定でき、迷子捜しを容易に行なうことができる。
【0075】
また、図18は、管理すべきエリア(80)をマンション(86)等として、居住者(76)等の在室管理を行なうシステムを示している。
ビーコン発信器(20)は、各部屋(87)、廊下(88)等に複数設置され、居住者(76)等が端末装置(30)を所持しておく。
【0076】
これにより、前述のフローチャート図14と同様に、ビーコン信号を受信した端末装置(30)は、図19に示すような端末信号を送信して、主装置(40)にて居住者(76)等の位置を特定することができる(図20及び図21)。
なお、端末装置(30)は、ビーコン信号を居住者(76)等に所持させた状態で常に受信してリアルタイムで主装置(40)に送信することもできるし、必要に応じて、主装置(40)から端末装置(30)へビーコン信号を受信して端末信号を送信するよう命令する信号を送信してもよい。
【0077】
上記により、居住者(76)等の在室管理を行なうことができる。
【0078】
図22に示すように、管理すべきエリア(80)となる物流倉庫(89)等に複数のビーコン発信器(20)を設置しておき、端末装置(30)は予め物流倉庫(89)等で搬送等される荷物(78)に取り付けておく。
フローチャート図23に示すように、ビーコン信号を受信した端末装置(30)は、図24に示すような端末信号を送信し、主装置(40)にて荷物(78)の位置を特定することができる(図25及び図26)。
なお、端末装置(30)は、ビーコン信号を荷物(78)に取り付けた状態で常に受信してリアルタイムで主装置(40)に送信することもできるし、必要に応じて主装置(40)から端末装置(30)へビーコン信号を受信して端末信号を送信するよう命令する信号を送信してもよい。
【0079】
上記により、荷物(78)の位置を特定でき、物流管理に役立てることができる。
【0080】
上記実施例の説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮する様に解すべきではない。又、本発明の各部構成は上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、管理すべきエリア内の移動体の位置を特定することのできるシステムとして有用である。
【符号の説明】
【0082】
(10) 位置情報管理システム
(20) ビーコン発信器
(30) 端末装置
(40) 主装置
(70) 移動体
(72) 車両
(80) エリア
(81) 駐車場

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自機の識別情報を含むビーコン信号を無線送信する複数のビーコン発信器であって、隣接するビーコン発信器とビーコン信号の出力範囲が一部重なるように管理すべきエリアに分布して配置されるビーコン発信器と、
移動体に搭載される端末装置であって、ビーコン信号を受信する端末受信部と、受信された各ビーコン信号から識別情報を抽出する端末抽出部と、各ビーコン信号の受信信号強度を測定する端末測定部と、得られたビーコン信号の識別情報と受信信号強度を自機の識別情報に関連付けた端末信号を無線送信する端末送信部を有する端末装置と、
前記端末信号を受信する受信部と、受信された端末信号を解析し、受信された端末信号に含まれる端末装置の識別情報と、ビーコン発信器の識別情報及び受信信号強度に基づいて、端末装置の位置を特定する解析部を有する主装置と、
を含むことを特徴とする位置情報管理システム。
【請求項2】
端末信号には、端末装置を搭載する移動体の情報が含まれる請求項1に記載の位置情報管理システム。
【請求項3】
主装置は、端末装置を搭載する移動体の情報を有しており、該移動体の情報と端末装置の識別情報を関連付ける請求項1に記載の位置情報管理システム。
【請求項4】
移動体は車両である請求項1乃至請求項3の何れかに記載の位置情報管理システム。
【請求項5】
管理すべきエリアは駐車場である請求項4に記載の位置情報管理システム。
【請求項6】
車両の情報は、端末装置及び/又は主装置により、駐車場の出入りゲートで取得される請求項5に記載の位置情報管理システム。
【請求項7】
移動体はヒトである請求項1乃至請求項3の何れかに記載の位置情報管理システム。
【請求項8】
移動体は物品である請求項1乃至請求項3の何れかに記載の位置情報管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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