説明

位置情報表示装置

【課題】駅間における車両の現在位置を容易に認識し得る表示を行うことができ、また、コストアップを招くことなく、車両客室内のどの位置にいる乗客からも容易に視認することができる位置情報表示装置を提供する。
【解決手段】照明手段20の一端側と他端側を、鉄道車両が直前に停車した前駅と次に停車する次駅に見立てて、これらの間の鉄道車両の現在位置を表すポイントとして、照明手段20のうち一の光源22を他の光源22とは区別可能に視認できる状態に制御し、前駅と次駅との間の駅間距離に対する前駅発車後の鉄道車両の走行距離の割合を表すように、前記ポイントを照明手段20の一端側から他端側に向けて順次移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路線上を運行する車両の乗客に向けて現在位置を案内する位置情報表示装置に関し、特に、鉄道車両の客室内の照明をそのまま利用した位置情報表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、鉄道車両の客室内に用いる位置情報表示装置として、列車の走行距離に応じて、表示装置の画面上に列車の現在位置を表す標識を線路図に沿って移動させるように表示するシステムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。ここでの表示装置は、LED素子を縦横のマトリクス状に配置したドットマトリクス方式の表示器であった。
【0003】
また、この種の表示器としては、最近のシステムではより多くの情報を鮮明に表示できる液晶表示画面を備えたものも広く用いられている。何れのタイプの表示器であっても、各種情報を表示可能な専用の大型のものとなり、客室内において最も人目に付く場所としてドア付近の上方等に設置されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−287243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述したような従来の技術では、専用の表示器が非常に高価なものとなり、コストアップの要因となっていた。かかるコストの関係で、通常はドア付近の上方等の一部の場所に限定して、1車両につき数台ずつしか設置することができないという問題があった。
【0006】
また、表示器の台数と設置場所が限られている関係上、ドア付近の上方等にある場合には、大部分の着座者の位置からは容易に視認することができなかった。そのため、位置情報表示装置により提供される情報を享受できるのは、乗客の一部に限られてしまうという問題もあった。
【0007】
ところで、車両客室内には必ず照明装置が設置されており、照明装置は車両客室内の全ての箇所を照らすことができるように天井部等に多数配置されている。かかる照明装置は、どの位置にいる乗客からも視認可能な範囲内に、少なくとも一つは設置されているものである。
【0008】
本発明は、以上のような従来の技術の有する問題点に着目してなされたものであり、駅間における車両の現在位置を容易に認識し得る表示を行うことができ、また、コストアップを招くことなく、車両客室内のどの位置にいる乗客からも容易に視認することができる位置情報表示装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するための本発明の要旨とするところは、以下の各項の発明に存する。
[1]路線上を運行する車両(1)の乗客に向けて現在位置を案内する位置情報表示装置(10)において、
複数の光源(22)が所定方向に延びる一端側から他端側に並ぶように配置されてなる車両客室内(2)の照明手段(20)と、
運行中の車両(1)の走行距離を算出する走行距離計測手段(30)と、
前記走行距離計測手段(30)により算出された車両(1)の走行距離に応じて、前記照明手段(20)の点灯制御を行う制御手段(40)と、を備え、
前記制御手段(40)は、
前記照明手段(20)の一端側と他端側を、車両(1)が直前に停車した前駅と次に停車する次駅に見立てて、これらの間の車両(1)の現在位置を表すポイントとして、前記照明手段(20)のうち一の光源(22)を他の光源(22)とは区別可能に視認できる状態に制御し、
前記前駅と前記次駅との間の駅間距離に対する前駅発車後の車両(1)の走行距離の割合を表すように、前記ポイントを前記照明手段(20)の一端側から他端側に向けて順次移動させることを特徴とする位置情報表示装置(10)。
【0010】
[2]前記照明手段(20)は、車両客室内(2)において長手方向に亘り複数のユニット(20a)が並ぶように配置され、
前記各ユニット(20a)は、それぞれ複数の光源(22)を直線上に等間隔で並ぶように配置してなることを特徴とする[1]に記載の位置情報表示装置(10)。
【0011】
[3]前記走行距離計測手段(30)は、車両(1)の車輪回転数から走行距離を算出し、
前記制御手段(40)は、車両運行情報から前記駅間距離を取得し、前記走行距離と前記駅間距離とに基づいて、前記駅間距離に対する前駅発車後の車両(1)の走行距離の割合を算出することを特徴とする[1]または[2]に記載の位置情報表示装置(10)。
【0012】
[4]前記制御手段(40)は、前記ポイントとして前記照明手段(20)のうち一の光源(22)のみ消灯させることを特徴とする[1],[2]または[3]に記載の位置情報表示装置(10)。
【0013】
[5]前記制御手段(40)は、前記次駅に車両(1)が到着した際に前記ポイントとしての一の光源(22)を、通常のポイントとしての制御とは異なる点灯形態に制御することを特徴とする[4]に記載の位置情報表示装置(10)。
【0014】
[6]前記制御手段(40)は、
前記照明手段(20)の一端側と他端側を、前記前駅の代わりの始発駅と前記次駅の代わりの終着駅に見立てて、これらの間の車両(1)の現在位置を表すポイントとして、前記照明手段(20)のうち一の光源(22)を他の光源(22)とは区別可能に視認できる状態に制御し、
前記始発駅と前記終着駅との間の駅間距離に対する始発駅発車後の車両(1)の走行距離の割合を表すように、前記ポイントを前記照明手段(20)の一端側から他端側に向けて順次移動させることを特徴とする[1],[2],[3],[4]または[5]に記載の位置情報表示装置(10)。
【0015】
次に、前述した解決手段に基づく作用を説明する。
前記[1]に記載の位置情報表示装置(10)によれば、現在位置を案内するための出力手段は、従来から車両客室内(2)にある設備の照明手段(20)であるが、現在位置を案内するための構造として、複数の光源(22)を所定方向に延びる一端側から他端側に並ぶように配置してなる。これにより、照明手段(20)自体を路線に見立てたり、複数の光源(22)をそれぞれ個別に点灯ないし消灯することが可能となる。
【0016】
車両(1)の現在位置を案内するために必要なデータとして、走行距離計測手段(30)は、運行中の車両(1)の走行距離を算出する。ここで算出された車両(1)の走行距離に応じて、制御手段(40)は、前記照明手段(20)の点灯制御を行って乗客に現在位置を案内することになる。
【0017】
すなわち、制御手段(40)は、先ず照明手段(20)の一端側と他端側を、車両(1)が直前に停車した前駅と次に停車する次駅に見立てる。次にこれらの間の車両(1)の現在位置を表すポイントとして、照明手段(20)のうち一の光源(22)を他の光源(22)とは区別可能に視認できる状態に制御する。ここで一の光源(22)とは、必ずしも1個の光源(22)に限られるものではなく、隣接し合う複数個の光源(22)としても良い。
【0018】
また、一の光源(22)を他の光源(22)とは区別可能に視認できる状態とは、例えば、前記[4]に記載したように、一の光源(22)のみを消灯させることが該当する。照明手段(20)全体を見た場合に、消灯している一の光源(22)の位置を特定することができる。なお、照明手段(20)から出る光の総量に対して一の光源(22)の光は十分小さいため、車両客室内(2)の照明環境には影響を及ぼすおそれはない。
【0019】
そして、制御手段(40)は、前駅と次駅との間の駅間距離に対する前駅発車後の車両(1)の走行距離の割合を表すように、前記ポイントを照明手段(20)の一端側から他端側に向けて順次移動させる。例えば、照明手段(20)の進行方向前方の一端側を次駅とし、逆の進行方向後方の他端側を前駅に見立てて、現在位置を表すポイントに相当する一の光源(22)のみを消灯させつつ、車両(1)の走行距離に応じて他端側から一端側に向けて順次移動させれば良い。
【0020】
これにより、現在位置が、前駅から次駅までの全行程のうち何割ぐらい走行した地点であるかを把握できるようになる。例えば、前駅発車後どの程度の時間が経過しているかを、通常乗客は把握しているので、現在位置が次駅までの何割の地点であるかを把握することで、次駅に到着するまでの大凡の時間を乗客に直感的に認識させることができる。
【0021】
しかも、既存設備であり車両客室内(2)のどの位置からも視認できる照明手段(20)の構造を一工夫することにより、車両客室内(2)の全域において乗客は現在位置を容易に知ることができる。また、専用の表示装置を用意する必要がなく、コストを低減することが可能となる。
【0022】
前記[2]に記載の位置情報表示装置(10)によれば、照明手段(20)は、車両客室内(2)において長手方向に亘り複数のユニット(20a)が並ぶように配置される。これにより、照明手段(20)において現在位置を表示する最小単位となるユニット(20a)は、車両客室内(2)の全域に亘るように配置されることになり、乗客はいっそう容易に現在位置を知ることができる。また、各ユニット(20a)は、それぞれ複数の光源(22)を直線上に等間隔で並ぶように配置してなるから、各ユニット(20a)ごとに独立して、駅間における現在位置をより的確かつ容易に把握し得る表示を乗客に提供することができる。
【0023】
前記[3]に記載の位置情報表示装置(10)によれば、走行距離計測手段(30)は、車両(1)の車輪回転数から走行距離を算出し、制御手段(40)は、車両運行情報から駅間距離を取得し、走行距離と駅間距離とに基づいて、駅間距離に対する前駅発車後の車両(1)の走行距離の割合を算出する。これにより、より正確な現在位置を照明手段(20)を介して表示することが可能となる。
【0024】
前記[5]に記載の位置情報表示装置(10)によれば、制御手段(40)は、次駅に車両(1)が到着した際にポイントとしての一の光源(22)を、通常のポイントとしての制御とは異なる点灯形態に制御する。これにより、乗客の注意を喚起することができ、次駅に到着した旨を乗客に確実に知らせることができる。ここで異なる点灯形態とは、例えばフラッシュさせたり、点滅させたり、あるいは発光色を変化させること等が該当する。
【0025】
また、前記[6]に記載の位置情報表示装置(10)によれば、照明手段(20)の一端側と他端側を、前駅の代わりの始発駅と次駅の代わりの終着駅に見立てて、これらの間の車両(1)の現在位置を表すポイントとして、照明手段(20)のうち一の光源(22)を他の光源(22)とは区別可能に視認できる状態に制御しても良い。
【0026】
かかる場合には、始発駅と終着駅との間の駅間距離に対する始発駅発車後の車両(1)の走行距離の割合を表すように、ポイントを照明手段(20)の一端側から他端側に向けて順次移動させることになる。このように、2駅間のみの現在位置の表示に限られることなく、始発駅から終着駅までの長いスパンにおける現在位置の表示にも活用することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る位置情報表示装置によれば、照明手段の一端側と他端側を前駅と次駅に見立てて、これらの間の車両の現在位置を表すポイントとして、照明手段のうち一の光源を他の光源とは区別可能に視認できる状態に制御し、駅間距離に対する車両の走行距離の割合を表すように前記ポイントを順次移動させるから、駅間における車両の現在位置を容易に認識し得る表示を行うことができる。しかも、車両客室内の全域において乗客は現在位置を知ることができ、また、専用の表示装置を用意する必要がなくコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態に係る位置情報表示装置を概略的に示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る位置情報表示装置の照明手段の配置レイアウトを示す平面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る位置情報表示装置の照明手段の内部における複数の光源を示す正面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る位置情報表示装置の照明手段の外面を示す正面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る位置情報表示装置の照明手段における表示態様を示す説明図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る位置情報表示装置の作用を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面に基づき、本発明を代表する実施の形態を説明する。
図1に示すように、位置情報表示装置10は、鉄道車両1の客室内2(図2参照)における照明手段20と、運行中の鉄道車両1の走行距離を算出する走行距離計測手段としての計算回路30と、計算回路30により算出された鉄道車両1の走行距離に応じて、前記照明手段20の点灯制御を行う制御手段としての制御回路40と、を備えてなる。
【0030】
図2に示すように、照明手段20は、鉄道車両1の客室内2における天井部の端寄りの部分に設置される。詳しく言えば照明手段20は、鉄道車両1の客室内2において、天井部の中心線を間にした左右対称の位置関係で長手方向に亘り複数のユニット20aが前後に並ぶように配置される。各ユニット20aは、それぞれが現在位置を案内する表示単位となり、各ユニット20aのうち何れか一つは、客室2内のどの位置にいる乗客からも容易に視認することができる。
【0031】
図3に示すように、各ユニット20aは、それぞれ細幅状に延びるケーシング21内に複数の光源22を直線上に等間隔で並ぶように配置してなる。光源20の種類は特に限定されないが、LEDランプであることが好ましい。LEDランプは小型であること、低消費電力であること、長寿命であることという利点を有する。本実施の形態では、図1に示すように、各ユニット20aごとに、駆動回路23上に複数の光源22としてLEDランプが接続されている。なお、図4に示すように、ケーシング21の開口前面には、個々の光源22が見えないように拡散性のあるグローブ24を装着すると良い。
【0032】
図1に示す計算回路30は、図示省略した速度発電器の発生するパルス信号(車輪回転数)を入力して、このパルス信号を基に演算処理を行い、車輪直径に対応する係数で車輪径補正した距離パルスを積算することで走行距離を算出する走行距離計測手段としての機能を備えている。速度発電器の構成は、一般的であるので詳細な説明は省略する。また、計算回路30は、既存の列車運行管理システム(通称PTC)から随時送信される車両運行情報を受信し、次述する制御回路40に送信する機能も備えている。なお、車両運行情報には、車両種別、行先、停車駅、各駅間距離等が含まれている。
【0033】
同じく図1に示す制御回路40は、前記照明手段20(ユニット20a)の一端側と他端側を、鉄道車両1が直前に停車した前駅と次に停車する次駅に見立てて、これらの間の鉄道車両1の現在位置を表すポイントとして、前記照明手段20のうち一の光源22を他の光源22,22…とは区別可能に視認できる状態に制御する制御手段としての機能を備えている。かかる機能により、前駅と次駅との間の駅間距離に対する前駅発車後の鉄道車両1の走行距離の割合を表すように、前記ポイントは照明手段20の一端側から他端側に向けて順次移動するように制御される。
【0034】
計算回路30および制御回路40は、各種制御の中枢的機能を果たすCPU(中央処理装置)と、CPUの実行するプログラムや各種の固定的データを記憶するROMと、プログラムを実行する上で一時的に必要になるデータを記憶するためのRAM等を主要部とする回路により構成されている。
【0035】
制御回路40は、前記車両運行情報から取得された駅間距離と、前記計算回路30で計算された走行距離とに基づいて、駅間距離に対する前駅発車後の車両の走行距離の割合を算出する。制御回路40にある前記ROM等の記憶手段には、前記算出した割合に応じて、ポイントを例えば各光源22ごとに1つずつ移動させるタイミングを予め登録した表示データ等が格納されている。
【0036】
制御回路40は、図4に示すように、鉄道車両1の現在位置を表すポイントとして照明手段20のうち一の光源22のみ消灯させる。ここで一の光源22とは、本実施の形態では1個の光源22としたが、必ずしも1個のみの光源22に限られるものではなく、隣接し合う複数個(例えば2〜3個)の光源22としても良い。なお、照明手段20における各光源22の間に仕切り板を設けることにより、消灯した光源22の視認性を上げるように構成しても良い。
【0037】
図5は、前駅を発車してから次駅に到着するまでの間に、鉄道車両1の現在位置を表すポイントが順次移動して表示される様子を示したものである。各々の駅間ごとに、前駅から次駅までの駅間距離(全32個分の光源22に相当)に対して32分の1となる距離を走行するごとに、ポイントとして消灯する光源22が進行方向に向って1つずつ移動するように設定されている。
【0038】
また、制御回路40は、鉄道車両1が次駅に到着した際、前記ポイントとしての一の光源22を、通常のポイントとしての消灯制御とは異なる点灯形態に制御するように設定されている。ここで異なる点灯形態とは、例えばフラッシュさせたり、点滅させたり、あるいは発光色を変化させること等が該当する。ここで発光色を変化させるには、光源22を多色発光ダイオードにより構成すれば良い。
【0039】
次に、本実施の形態に係る位置情報表示装置10の作用について説明する。
図6において、先ず鉄道車両1が始発駅を出発すると、客室内2にある照明手段20の各ユニット20aで全ての光源22が点灯する(ステップS101)。その後、計算回路30は、列車運行管理システムから車両運行情報を取得すると共に、鉄道車両1の速度発電器が出力するパルス信号を取得する(ステップS102)。
【0040】
そして、計算回路30は、前記パルス信号を基に演算処理を行い、車輪直径に対応する係数で車輪径補正した距離パルスを積算することで走行距離を算出する(ステップS103)。また、計算回路30は、車両運行情報から現時点における前駅と次駅との駅間距離を取得する。これらのデータは制御回路40に送信される。
【0041】
制御回路40は、走行距離と駅間距離とに基づいて、駅間距離に対する前駅発車後の鉄道車両1の走行距離の割合を算出する。ここで算出した割合に基づいて、制御回路40は、鉄道車両1の現在位置を表すポイントとして、照明手段20の各ユニット20aのうち一の光源22のみ消灯させる。そして、鉄道車両1が次駅へ近づくに従って、ポイントの表示箇所を進行方向に向って1つずつ移動させる点灯制御を行う(ステップS104)。
【0042】
具体的には図5(a)に示すように、鉄道車両1が前駅を発車してから駅間距離(全32個分の光源22)に対して、走行距離の割合が32分の12となったタイミングでは、照明手段20における前駅側である左端から12個目の光源が消灯する。図5(b)に示すように、駅間距離に対する走行距離の割合が32分の19となったタイミングで、左端から19個目の光源が消灯する。
【0043】
続いて図5(c)に示すように、駅間距離に対する走行距離の割合が32分の28となったタイミングで、左端から28個目の光源が消灯することになる。なお、図5に示したものと鉄道車両1の進行方向が逆方向となる場合には、前駅方向である図中の左端、次駅方向である図中の右端、ポイントが順次移動する方向は、図5に示したものと左右反転することになる。
【0044】
このように、照明手段20の点灯制御を行うことによって、客室内2の乗客に現在位置を案内することになり、乗客は現在位置が前駅から次駅までの全行程のうち何割ぐらい走行した地点であるかを把握できるようになる。例えば、前駅発車後どの程度の時間が経過しているかを、通常乗客は把握しているので、現在位置が次駅までの何割の地点であるかを把握することで、次駅に到着するまでの大凡の時間を乗客に直感的に認識させることができる。
【0045】
しかも、既存設備であり客室内2のどの位置からも視認できる照明手段20を、現在位置を案内するための出力手段として利用することにより、客室内2の全域において乗客は容易に現在位置を知ることができ、しかも、専用の表示装置を特別に用意する必要もなく、コストを大幅に低減することが可能となる。
【0046】
制御回路40は、駅間における現在位置の表示を次駅に到着するまで実行するが(ステップS105;N)、鉄道車両1が次駅に到着した際には(ステップS105;Y)、前記ポイントとしての一の光源22を、通常のポイントとしての消灯制御とは異なる点灯形態に制御する(ステップS106)。これにより、乗客の注意を喚起することができ、次駅に到着した旨を乗客に確実に知らせることができる。なお、異なる点灯形態とは、前述したように例えば、フラッシュさせたり、発光色を変化させること等が該当する。
【0047】
その後、今回到着した駅が終点でないときは(ステップS107;N)、ステップS101に戻り、制御回路40は、前述した駅間における現在位置の表示制御を継続する。一方、終点に到着した場合(ステップS107;Y)、制御回路40は、一連の表示制御の処理を終了する(エンド)。
【0048】
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は前述したような実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。例えば、線路上を運行する鉄道車両1に適用した例を説明したが、路線上を運行する車両であれば他に例えば、路線バスやモノレール等にも適用することができる。
【0049】
また、前記実施の形態では、光源22としてLEDランプを使用した例を説明したが、他に例えば、小型電球等を使用しても良い。また、各光源22を一列に並ぶように直線状に配置したが、他に例えば、環状に配置させたり、あるいは天井面に沿った形状に湾曲させて配置しても良い。
【0050】
また、前記実施の形態では、現在位置を表す一の光源22だけを消灯させることで、他の光源22とは区別可能に視認できる状態としたが、他に例えば、一の光源22だけ色温度、色、あるいは明るさを変える等しても良い。また、光源22を1つ単位で移動させるのみならず、例えば所定のタイミングで2つあるいは3つ単位で移動させても良い。また、前述したがポイントを表す光源は1つのみならず、隣接し合う2つあるいは3つ単位としても良い。
【0051】
さらに、別の実施の形態として、照明手段20の一端側と他端側を、前駅の代わりの始発駅と次駅の代わりの終着駅に見立てて、これらの間の鉄道車両1の現在位置を表すポイントとして、照明手段20のうち一の光源22を他の光源22とは区別可能に視認できる状態に制御しても良い。かかる場合は、鉄道車両1が駅に到着するタイミングでポイントを移動させても良く、あるいは、駅への到着とは無関係に所定の距離を移動する度にポイントを移動させても良い。
【0052】
このような別の実施の形態によれば、始発駅と終着駅との間の駅間距離に対する始発駅発車後の鉄道車両1の走行距離の割合を表すように、ポイントを照明手段20の一端側から他端側に向けて順次移動させることになる。このように、2駅間のみの現在位置の表示に限られることなく、始発駅から終着駅までの長いスパンにおける現在位置の表示にも活用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明に係る位置情報表示装置は、鉄道車両のみならず、路線バスやモノレール等にも幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1…鉄道車両
2…客室内
10…位置情報表示装置
20…照明手段
20a…ユニット
21…ケーシング
22…光源
23…駆動回路
24…グローブ
30…計算回路
40…制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路線上を運行する車両の乗客に向けて現在位置を案内する位置情報表示装置において、
複数の光源が所定方向に延びる一端側から他端側に並ぶように配置されてなる車両客室内の照明手段と、
運行中の車両の走行距離を算出する走行距離計測手段と、
前記走行距離計測手段により算出された車両の走行距離に応じて、前記照明手段の点灯制御を行う制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記照明手段の一端側と他端側を、車両が直前に停車した前駅と次に停車する次駅に見立てて、これらの間の車両の現在位置を表すポイントとして、前記照明手段のうち一の光源を他の光源とは区別可能に視認できる状態に制御し、
前記前駅と前記次駅との間の駅間距離に対する前駅発車後の車両の走行距離の割合を表すように、前記ポイントを前記照明手段の一端側から他端側に向けて順次移動させることを特徴とする位置情報表示装置。
【請求項2】
前記照明手段は、車両客室内において長手方向に亘り複数のユニットが並ぶように配置され、
前記各ユニットは、それぞれ複数の光源を直線上に等間隔で並ぶように配置してなることを特徴とする請求項1に記載の位置情報表示装置。
【請求項3】
前記走行距離計測手段は、車両の車輪回転数から走行距離を算出し、
前記制御手段は、車両運行情報から前記駅間距離を取得し、前記走行距離と前記駅間距離とに基づいて、前記駅間距離に対する前駅発車後の車両の走行距離の割合を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の位置情報表示装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記ポイントとして前記照明手段のうち一の光源のみ消灯させることを特徴とする請求項1,2または3に記載の位置情報表示装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記次駅に車両が到着した際に前記ポイントとしての一の光源を、通常のポイントとしての制御とは異なる点灯形態に制御することを特徴とする請求項4に記載の位置情報表示装置。
【請求項6】
前記制御手段は、
前記照明手段の一端側と他端側を、前記前駅の代わりの始発駅と前記次駅の代わりの終着駅に見立てて、これらの間の車両の現在位置を表すポイントとして、前記照明手段のうち一の光源を他の光源とは区別可能に視認できる状態に制御し、
前記始発駅と前記終着駅との間の駅間距離に対する始発駅発車後の車両の走行距離の割合を表すように、前記ポイントを前記照明手段の一端側から他端側に向けて順次移動させることを特徴とする請求項1,2,3,4または5に記載の位置情報表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−20689(P2012−20689A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160920(P2010−160920)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(390010054)コイト電工株式会社 (136)
【Fターム(参考)】