位置推定方法および位置推定システム
【課題】送信手段が1つしかない環境でも、受信手段の位置を高い確率で推定することができる位置推定方法および位置推定システムを提供する。
【解決手段】送信手段から無線で送られてきた信号を受信した受信手段が、複数ある候補位置のいずれに位置しているのかを推定する位置推定方法であって、受信手段を各候補位置に配置して受信信号強度分布を取得するステップS1−1と、当該受信信号強度分布を位置指紋として記憶手段に格納するステップS1−2とを実行し、その後、受信手段を推定対象位置に位置させて受信信号強度分布を取得するステップS1−3と、ステップS1−3で取得した受信信号強度分布と、記憶手段に格納されている各候補位置の位置指紋との相関値を求めるステップS1−4と、相関値に基づいて各候補位置の中から推定対象位置に最も相関する候補位置を特定するステップS1−5とを実行する。
【解決手段】送信手段から無線で送られてきた信号を受信した受信手段が、複数ある候補位置のいずれに位置しているのかを推定する位置推定方法であって、受信手段を各候補位置に配置して受信信号強度分布を取得するステップS1−1と、当該受信信号強度分布を位置指紋として記憶手段に格納するステップS1−2とを実行し、その後、受信手段を推定対象位置に位置させて受信信号強度分布を取得するステップS1−3と、ステップS1−3で取得した受信信号強度分布と、記憶手段に格納されている各候補位置の位置指紋との相関値を求めるステップS1−4と、相関値に基づいて各候補位置の中から推定対象位置に最も相関する候補位置を特定するステップS1−5とを実行する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信手段から無線で送られてきた信号の受信強度を利用して、当該信号を受信した受信手段の位置を推定する位置推定方法および位置推定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の位置推定方法および位置推定システムとしては、全地球測位システム(GPS,Global Positioning System)を利用したものがよく知られている。全地球測位システムによれば、地球の周りを周回する約30個のGPS衛星のうち、上空にある3個以上のGPS衛星からの信号を受信機で受け取ることにより、受信機の位置を特定することができる。全地球測位システムを利用した代表的なアプリケーションとしては、例えば、カーナビゲーションシステムがある。
【0003】
しかしながら、全地球測位システムはGPS衛星からの信号に頼っているため、信号が届きにくい室内での利用には適していない。また、全地球測位システムは数m単位の位置ズレを生じ得るため、用途によっては精度が問題となっていた。そこで、室内においても位置を高い確率で推定することができる位置推定システムとして、無線LANを利用したものが検討されている。
【0004】
図12に示すように、この従来の位置推定システムは、3つの親機(アクセスポイント)AP1〜AP3と、各親機AP1〜AP3からの信号を受信する子機Tとを備えている。子機Tでは、受信した各親機AP1〜AP3からの信号の強度(以下、受信信号強度(RSS,Received Signal Strength)という)が測定される。そして、測定した強度またはその平均値と、あらかじめ測定しておいた当該強度(平均値)および各親機AP1〜AP3からの距離の関係(位置指紋)とに基づいて各親機AP1〜AP3からの距離r1〜r3が求められ、各親機AP1〜AP3を中心とした半径r1〜r3の円C1〜C3の交点が子機Tの位置と推定される(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
室内での位置を高い確率で推定することができれば、例えば、公演者がステージ上に上がると客席の照明が暗くなり公演者にスポットライトがあたる、等の制御を自動的に行うことができる他、位置情報を利用した様々なアプリケーションを実現することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Kaemarungsi, K., "Efficient design of indoor positioning systems based on location fingerprinting", In Proceedings of 2005 international conference on wireless networks, communications and mobile computing, 13-16 June 2005 (Vol. 1, pp. 181-186).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記の通り、この位置推定システムは3つの親機を必要とする。また、推定確率を向上させるという観点から、親機の数は多ければ多いほどよい。したがって、親機を1つしか備えていない一般家庭やオフィスの既存無線LAN環境下で十分な推定確率を得るためには、新たに親機を増設する必要があり、コスト負担が大きかった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、送信手段(例えば、上記親機)が1つしかない環境でも、受信手段(例えば、上記子機)の位置を高い確率で推定することができる位置推定方法および位置推定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明では「受信信号強度分布」を利用する。ここで、「受信信号強度分布」とは、一定時間(例えば、数ms)おきに受信信号強度を複数回(例えば、数千回)測定し、受信信号強度と当該受信信号強度が測定された回数とをヒストグラム化したものである。本発明者は鋭意検討を重ねた結果、受信信号の“強度”だけではなく、「受信信号強度分布」を利用して受信信号の“強度”と“分布”の双方を利用すれば、1つの送信手段からでも位置を推定するための十分な情報が得られることを見い出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明に係る位置推定方法は、送信手段から無線で送られてきた信号を受信した受信手段が、複数ある候補位置のいずれに位置しているのかを推定する位置推定方法であって、受信手段を各候補位置に配置して各候補位置における受信信号強度分布を取得する第1ステップと、取得した受信信号強度分布を各候補位置の位置指紋として記憶手段に格納する第2ステップとをあらかじめ実行しておき、その後、受信手段を推定対象位置に位置させて当該推定対象位置における受信信号強度分布を取得する第3ステップと、第3ステップで取得した受信信号強度分布と、記憶手段にあらかじめ格納されている各候補位置の位置指紋との相関値を求める第4ステップと、相関値に基づいて、各候補位置の中から推定対象位置に最も相関する候補位置を特定する第5ステップとを実行することを特徴とする。
【0011】
この構成では、あらかじめ取得した各候補位置の受信信号強度分布(位置指紋)と、推定対象位置の受信信号強度分布との相関値に基づいて、推定対象位置の位置を推定している。したがって、この構成によれば、受信信号の“強度”と“分布”の両方の観点から推定対象位置と各候補位置との相関を求めることができ、推定対象位置が候補位置のいずれであるのかを高い確率で推定することができる。
【0012】
上記位置推定方法において、相関値は、第3ステップで取得した受信信号強度分布と各候補位置の位置指紋との間のユークリッド距離またはマンハッタン距離であることが好ましく、この場合、上記第5ステップでは、ユークリッド距離またはマンハッタン距離が最も短いことに基づいて候補位置を特定する。
この構成によれば、比較的簡単に相関値を求めることができ、また、相関値同士の比較も容易である。
【0013】
上記位置推定方法は、第4ステップと第5ステップとの間に、第4ステップで求めたユークリッド距離またはマンハッタン距離の中から所定閾値よりも短いものを抽出するステップをさらに実行することが好ましく、この場合、上記第5ステップでは、抽出後のユークリッド距離またはマンハッタン距離が最も短いことに基づいて候補位置を特定する。
この構成によれば、推定対象位置の受信信号強度分布がどの候補位置の位置指紋とも強い相関を示さないために、誤った推定結果となるのを未然に防ぐことができ、結果的に推定確率を高めることができる。
【0014】
また、本発明に係る位置推定システムは、送信部と、当該送信部から無線で送られてきた信号を受信して当該信号の強度に関する強度データを出力する受信部とを備え、複数ある候補位置のいずれに受信部が位置しているのかを推定する位置推定システムであって、受信部からの強度データに基づいて受信信号強度分布データを生成する制御部と、各候補位置に配置された受信部からの強度データに基づいて制御部が生成した受信信号強度分布データを、各候補位置の位置指紋として格納した記憶部と、推定対象位置に位置した受信部からの強度データに基づいて制御部が生成した受信信号強度分布データと、記憶部に格納されている各候補位置の位置指紋との相関値を求めて出力する相関値演算部と、相関値に基づいて、各候補位置の中から推定対象位置に最も相関する候補位置を特定し当該候補位置に関する推定結果信号を出力する位置特定部とを備えたことを特徴とする。
【0015】
この構成では、あらかじめ取得しておいた各候補位置の受信信号強度分布データ(位置指紋)と、推定対象位置の受信信号強度分布データとの相関値に基づいて、推定対象位置の位置が推定される。したがって、この構成によれば、受信信号の“強度”と“分布”の両方の観点から推定対象位置と各候補位置との相関が求められるので、推定対象位置が候補位置のいずれであるのかを高い確率で推定することができる。
【0016】
上記位置推定システムにおいて、相関値は、推定対象位置における受信信号強度分布データと各候補位置の位置指紋との間のユークリッド距離またはマンハッタン距離であることが好ましく、この場合、上記位置特定部は、ユークリッド距離またはマンハッタン距離が最も短いことに基づいて候補位置を特定する。
この構成によれば、比較的簡単に相関値を求めることができ、また、相関値同士の比較も容易である。
【0017】
上記位置推定システムは、相関値演算部から出力されたユークリッド距離またはマンハッタン距離の中から所定閾値よりも短いものを抽出する相関値抽出部をさらに備えることが好ましく、この場合、上記位置特定部は、抽出後のユークリッド距離またはマンハッタン距離が最も短いことに基づいて候補位置を特定する。
この構成によれば、推定対象位置の受信信号強度分布がどの候補位置の位置指紋とも強い相関を示さないために、誤った推定結果となるのを未然に防ぐことができ、結果的に推定確率を高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、送信手段が1つしかない環境でも、受信手段の位置を高い確率で推定することができる位置推定方法および位置推定システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係る位置推定方法のフローチャートである。
【図2】本発明の第1実施形態に係る位置推定システムのブロック図である。
【図3】候補位置数を10個とした位置推定実験の環境を示す模式図である。
【図4】記憶手段に格納されている位置指紋テーブルの概念図である。
【図5】位置指紋を示すグラフであって、(A)〜(J)はそれぞれ図3に示す各候補位置P1〜P10の位置指紋の具体例である。
【図6】位置推定の過程を説明するための図であって、(A)は推定対象位置における受信信号強度分布の概念図、(B)は推定対象位置における受信信号強度分布の具体例を示すグラフ、(C)は相関値の具体例である。
【図7】位置推定の過程を説明するための図であって、(A)は推定対象位置における受信信号強度分布の概念図、(B)は推定対象位置における受信信号強度分布の別の具体例を示すグラフ、(C)は相関値の別の具体例である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る位置推定方法のフローチャートである。
【図9】本発明の第2実施形態に係る位置推定システムのブロック図である。
【図10】候補位置数を25個とした位置推定実験の環境を示す模式図である。
【図11】候補位置数と推定確率の関係を示すグラフである。
【図12】従来の位置推定システムの概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明に係る位置推定方法および位置推定システムの好ましい実施形態について説明する。
【0021】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係る位置推定方法および位置推定システムは、無線LAN(IEEE802.11g規格)の親機からの信号を受信する無線LANの子機が、あらかじめ設けられた複数の候補位置のいずれに位置しているのかを推定するものである。本実施形態では、親機が本発明の送信手段(送信部)に相当し、子機が本発明の受信手段(受信部)に相当する。位置推定の環境は図3に示す通りであり、本実施形態に係る位置推定方法および位置推定システムによれば、縦6m×横8mの室内に縦横1m間隔で設けた候補位置P1〜P10のいずれに受信手段(受信部)が位置しているのかを推定することができる。
【0022】
まず、図2を参照しつつ、図1に示す第1実施形態に係る位置推定方法について説明する。同図に示すように、本実施形態に係る位置推定方法は事前準備フェイズと位置推定フェイズとから構成され、事前準備フェイズを実行した後に位置推定フェイズを実行するようになっている。ただし、事前準備フェイズを少なくとも一度実行した後は、事前準備フェイズを省略して位置推定フェイズのステップS1−3から実行することができる。
【0023】
事前準備フェイズのステップS1−1では、受信手段3の少なくとも受信部4を各候補位置P1〜P10に配置し、各候補位置P1〜P10における受信信号強度分布を取得する。より詳しくは、送信手段2の位置は変えずに、受信部4の位置を候補位置P1→P2→・・・→P10に順に変化させ、各候補位置P1〜P10における受信信号強度分布を取得する。本実施形態では、50ms間隔で受信信号強度を3000回測定し、0[dBm]の受信信号強度が何回測定されたか、−1[dBm]の受信信号強度が何回測定されたか、・・・−49[dBm]の受信信号強度が何回測定されたかをヒストグラム化することにより、受信信号強度分布を取得した。
【0024】
ステップS1−2では、ステップS1−1で取得した受信信号強度分布を、各候補位置P1〜P10の位置指紋として記憶手段6に格納する。位置指紋は、図4に示す位置指紋テーブルT1の形式で記憶手段6に格納される。位置指紋テーブルT1は各候補位置P1〜P10の位置指紋をテーブル形式にまとめたもので、この位置指紋テーブルT1を参照すれば、例えば、候補位置P3において−47[dBm]の受信信号強度がρ3,48回測定されたことや、候補位置P8において−3[dBm]の受信信号強度がρ8,4回測定されたことが判るようになっている。なお、この位置指紋テーブルT1は単なる一例であり、他の形式で格納してもよい。要は、各候補位置P1〜P10において、どのような強度の受信信号が何回観測されたのかを特定できるものであれば、格納の形式はどのようなものであってよい。
【0025】
図5に、本実施形態に係る位置推定方法で取得した位置指紋の具体例を示す。図5(A)に示すように、候補位置P1の位置指紋には、−11[dBm]にある1517回の強いピークと、−22[dBm]にある552回の弱いピークとが見られる。また、図5(E)に示すように、候補位置P5の位置指紋には、−12[dBm]にある315回の弱いピークと、−23[dBm]にある1425回の強いピークとが見られる。つまり、送信手段2から見た位置が対称な候補位置P1とP5でも、壁やテーブルとの距離等の環境が異なることにより、異なった位置指紋を取得することができる(図3参照)。当然ながら、送信手段2から見た位置が対称ではない候補位置(例えば、候補位置P5とP8)では、異なった位置指紋を取得することができる。
【0026】
再び、図1を参照して、位置推定フェイズのステップS1−3では、受信部4を各候補位置P1〜P10のいずれかに位置させて、当該候補位置(例えば、候補位置P3。以下、「推定対象位置」という)における受信信号強度分布を取得する。本実施形態では、5ms間隔で受信信号強度を3000回測定し、0[dBm]の受信信号強度が何回測定されたか、−1[dBm]の受信信号強度が何回測定されたか、・・・−49[dBm]の受信信号強度が何回測定されたかをヒストグラム化することにより、受信信号強度分布を取得した。
【0027】
ステップS1−3で取得した受信信号強度分布は、例えば、図6(A)に示すようなテーブルT2の形式で記憶手段6等に一時的に格納しておくと便利である。このテーブルT2を参照すれば、推定対象位置において、例えば、−3[dBm]の受信信号強度がr4回測定されたことや、−48[dBm]の受信信号強度がr49回測定されたことが判るようになっている。なお、このテーブルT2は単なる一例であり、他の形式としてもよい。要は、推定対象位置において、どのような強度の受信信号が何回観測されたのかを特定できるものであれば、形式はどのようなものであってよい。また、ステップS1−3で取得した受信信号強度分布の格納先は、記憶手段6には限らない。
【0028】
図6(B)は、本実施形態に係る位置推定方法で取得した推定対象位置(候補位置P3)の受信信号強度分布の具体例である。同図に示すように、推定対象位置の受信信号強度分布には、−11[dBm]にある842回のピークと、−22[dBm]にある993回のピークとが見られる。
【0029】
位置推定フェイズのステップS1−4では、ステップS1−3で取得した受信信号強度分布と、事前準備フェイズにおいて記憶手段6に格納しておいた各候補位置P1〜P10の位置指紋との相関値を求める。相関値としては公知の種々のものを用いることができるが、本実施形態では、ユークリッド距離を相関値とした。ステップS1−3で取得した受信信号強度分布riと、候補位置Pi(i=1〜10)の位置指紋ρi,jとのユークリッド距離di(i=1〜10)は、次式で求めることができる。
【数1】
ここで、本実施形態では、1つの位置指紋および受信信号強度分布が、0〜−49[dBm]に対応する50個の数値で構成されている(図4の位置指紋テーブルT1、図6(A)のテーブルT2参照)。したがって、上記(1)式のNは50である。
【0030】
上記(1)式により、ステップS1−3で取得した受信信号強度分布と、各候補位置P1〜P10の位置指紋とのユークリッド距離diを求めると、図6(C)に示すような結果となった。
【0031】
位置推定フェイズのステップS1−5では、ステップS1−4で求めたユークリッド距離diに基づいて、各候補位置P1〜P10の中から推定対象位置(候補位置P3)に最も相関する候補位置を特定する。つまり、ステップS1−5では、図5に示す各候補位置P1〜P10のグラフのうち、どのグラフが図6(B)に示す推定対象位置のグラフに最もよく似ているのかを特定する。
【0032】
より詳しくは、ステップS1−5では、図6(C)に示す10個のユークリッド距離diの中から、距離が最も短いものを特定する。本実施形態では、ユークリッド距離d3の“692”が他のユークリッド距離d1,2、d4〜10よりも短い。したがって、ステップS1−5では、推定対象位置(候補位置P3)に最も相関する候補位置は候補位置P3であると特定される。
【0033】
図7は、推定対象位置を候補位置P6とした場合の具体例である。この場合、ステップS1−3では図7(B)に示す受信信号強度分布が取得され、ステップS1−4では図7(C)に示すユークリッド距離diが求められる。そして、ステップS1−5では、ユークリッド距離d6の“553”が他のユークリッド距離d1〜5、d7〜10よりも短いので、推定対象位置(候補位置P6)に最も相関する候補位置は候補位置P6であると特定される。
【0034】
以上のように、本実施形態に係る位置推定方法によれば、推定対象位置を候補位置P3、P6としたいずれの場合においても、受信手段3の受信部4の位置を正しく推定することができた。また、ここでは説明を省略するが、本実施形態に係る位置推定方法によれば、推定対象位置を他の候補位置(P1、P2、P4、P5、P7〜P10)とした場合においても、受信部4の位置を正しく推定することができた。
【0035】
次に、本発明の第1実施形態に係る位置推定システムについて説明する。図2に示すように、本実施形態に係る位置推定システム1Aは、送信部2、受信部4、制御部5、記憶部6、相関値演算部7および位置特定部8を備えている。本実施形態において、送信部2は無線LANの親機から構成され、受信部4は無線LANの子機から構成されている。また、記憶部6はハードディスクまたは各種の揮発/不揮発メモリから構成され、制御部5、相関値演算部7および位置特定部8は主にCPUと当該CPU上で実行されるコンピュータプログラムとから構成されている。
【0036】
受信部4は、送信部2から無線で送られてきた信号を受信するとともに、受信信号強度に関するデータ(本発明の「強度データ」に相当)を出力する。制御部5は、受信部4から出力された強度データを受け取ることができるように受信部4に接続されており、受け取った強度データに基づいて受信信号強度分布データを生成する。受信信号強度分布データは、既に説明した受信信号強度分布に関するデータである。
【0037】
記憶部6には、各候補位置P1〜P10に配置された受信部4からの強度データに基づいて制御部5が生成した受信信号強度分布データが位置指紋としてあらかじめ格納されている。受信信号強度分布データは、例えば、図4に示す位置指紋テーブルT1の形式で格納されている。
【0038】
相関値演算部7は、各候補位置P1〜P10の1つである推定対象位置に位置した受信部4からの強度データに基づいて制御部5が生成した受信信号強度分布データと、記憶部6に格納されている各候補位置P1〜P10の位置指紋との相関値を求めて出力する。相関値としては公知の種々のものを用いることができるが、本実施形態では、ユークリッド距離を相関値とした。推定対象位置における受信信号強度分布ri(図6(A)参照)と、候補位置Piの位置指紋ρi,j(図4参照)とのユークリッド距離diは上記(1)式で求めることができ、例えば、推定対象位置を候補位置P3とした場合は、図6(C)に示すようなユークリッド距離diが求められる。
【0039】
位置特定部8は、相関値演算部7から出力されたユークリッド距離diに基づいて、各候補位置P1〜P10の中から推定対象位置に最も相関する候補位置を特定し、当該候補位置に関する推定結果信号を出力する。より詳しくは、位置特定部8は、図6(C)に示す10個のユークリッド距離diの中から、距離が最も短いものを特定する。本実施形態では、ユークリッド距離d3の“692”が他のユークリッド距離d1,2、d4〜10よりも短い。したがって、位置特定部8は、推定対象位置(候補位置P3)に最も相関する候補位置は候補位置P3であると特定し、候補位置P3に対応した推定結果信号を出力する。
【0040】
以上のように、本実施形態に係る位置推定システム1Aによれば、既に説明した位置推定方法と同様に、受信部4の位置を正しく推定することができる。
【0041】
[第2実施形態]
上記の第1実施形態では候補位置数を10個としたが、この数を増やしていくと、各候補位置の位置指紋同士が近似して、誤った推定結果となる確率が高くなる。また、受信信号強度は環境の変化や時間経過に伴って若干変動する。このため、推定対象位置の受信信号強度分布が推定対象位置以外の位置指紋と強く相関したり、または、どの位置指紋とも強い相関を示さなかったりして、誤った推定結果となる場合がある。
【0042】
そこで、本発明の第2実施形態に係る位置推定方法は、図8に示すように、ステップS1−4に相当するステップS2−4とステップS1−5に相当するステップS2−6との間に、ステップS2−5として相関値の抽出を行う。そして、ステップS2−6では、抽出された相関値に基づいて、各候補位置の中から推定対象位置に最も相関する候補位置を特定する。より詳しくは、相関値としてユークリッド距離を用いる場合は、あらかじめ設定しておいた閾値(距離)よりも短いユークリッド距離を抽出し、抽出したユークリッド距離の中から、距離が最も短いものを特定する。
【0043】
このようにすれば、特に、推定対象位置の受信信号強度分布がどの位置指紋とも強い相関を示さないために、誤った推定結果となるのを未然に防ぐことができる。なお、この場合は推定結果を得ることはできないが、ステップS2−3に戻って位置推定フェイズを初めから再実行し、閾値との関係を満足する別の相関値を得ることができれば、結果的に推定確率を高めることができる。
【0044】
なお、適切な閾値は、周囲の環境や機器(送信部2、受信部4)の特性等によって変わることが予想される。したがって、閾値は、位置指紋同士の相関値を参考にしながら、後述する推定確率確認実験を繰り返し行った結果に基づいて、経験的に決定する必要がある。
【0045】
図9は、第2実施形態に係る位置推定システムである。同図に示すように、位置推定システム1Bは、相関値抽出部9を備えている点において第1実施形態に係る位置推定システム1Aと異なっている。制御部5等と同様に、追加された相関値抽出部9は、主にCPUと当該CPU上で実行されるコンピュータプログラムとから構成されている。
【0046】
相関値抽出部9は、相関値演算部7から出力された相関値の中から所定の条件に合致するものを抽出する。そして、位置特定部8は、抽出された相関値に基づいて、各候補位置の中から推定対象位置に最も相関する候補位置を特定する。
【0047】
本実施形態に係る位置推定システム1Bによれば、既に説明した位置推定方法と同様に、誤った推定結果となるのを未然に防ぐことができ、結果的に推定確率を高めることができる。
【0048】
[推定確率確認実験]
続いて、第1および第2実施形態に係る位置推定方法と、従来の位置推定方法とで、推定確率にどのような差異が見られるのか確認した実験の結果について説明する。実験環境は図10に示す通りであり、縦6m×横8mの部屋の壁際に計4つのテーブルを配置し、空いたスペースの床に縦横1m間隔で候補位置P1〜P25を設けた。また、無線LAN(IEEE802.11g規格)の親機である送信部2と、最寄りの候補位置P3との距離は1mとした。
【0049】
位置指紋は、無線LANの子機である受信部4を各候補位置P1〜P25に配置し、50ms間隔で受信信号強度を3000回測定することにより取得した。また、推定対象位置における受信信号強度分布は、5ms間隔で受信信号強度を3000回測定することにより取得した。なお、推定対象位置における受信信号強度分布については、各候補位置P1〜P25で50個ずつ取得することにより、25×50=1250個の受信信号強度分布を取得した。そして、1250個の受信信号強度分布のそれぞれと、各候補位置P1〜P25の位置指紋との相関を求め、正しい位置を推定できた確率を求めた。相関値としてはユークリッド距離を使用し、第2実施形態に係る位置推定方法については閾値(距離)を1300とした。
【0050】
また、実験は、全候補位置P1〜P25のうちの一部を使用する場合についても行った。例えば、候補位置P1〜P10のみを使用する場合は、10×50=500個の受信信号強度分布のそれぞれと、各候補位置P1〜P10の位置指紋との相関を求め、正しい位置を推定できた確率を求めた。
【0051】
また、従来の位置推定方法については、50ms間隔で3000回測定した受信信号強度の平均値を位置指紋とし、さらに受信信号強度分布の代わりに5ms間隔で3000回測定した受信信号強度の平均値を用い、他の条件は上記と同様にして正しい候補位置を推定できた確率を求めた。なお、上記平均値は、例えば、−10[dBm]の受信信号強度が1000回測定され、−20[dBm]の受信信号強度が2000回測定された場合は、(−10×1000+−20×2000)/3000=−16.7[dBm]となる。
【0052】
図11に、第1および第2実施形態に係る位置推定方法および従来の位置推定方法の推定確率を示す。同図に示すように、どの位置推定方法についても、候補位置数が増えるにつれて推定確率が低下する傾向が見られた。これは、各候補位置の位置指紋(または、平均値)同士が近似することに起因すると考えられる。また、候補位置数に関係なく、第1および第2実施形態に係る位置推定方法では、従来の位置推定方法よりも高い推定確率が得られた。これは、受信信号の“強度”と“分布”の双方を利用することにより、1つの送信手段からより多くの情報が得られたためだと考えられる。さらに、第2実施形態に係る位置推定方法では、第1実施形態に係る位置推定方法よりも高い推定確率が得られ、特に候補位置数が10個以下の場合は9割以上の確率で正しい位置を推定することができた。これは、閾値を設けて相関値であるユークリッド距離を抽出したことにより、誤った推定結果となるのを未然に防ぐことができたからだと考えられる。
【0053】
[その他の実施形態]
以上、本発明に係る位置推定方法および位置推定システムの好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、種々の変形実施形態が考えられる。
【0054】
例えば、上記各実施形態では、送信手段(送信部)と受信手段(受信部)との間の通信手段として無線LANを用いたが、これに代えて、Bluetooth、無線USB等の室内に送信側端末と受信側端末の双方を配置する各種通信手段を用いることができる。また、当然ながら、IEEE802.11b等の他の規格の無線LANを用いることもできる。
【0055】
また、上記各実施形態では、相関値としてユークリッド距離を用いたが、これに代えて、マンハッタン距離を用いることができる。この場合も、閾値よりも値が小さい相関値を抽出して推定確率を向上させることができる。なお、マンハッタン距離は次式で求めることができる。
【数2】
この他、本発明では、ニューラルネットワーク法(Neural Network Method)、サポートベクターマシン法(Support Vector Machine Method)により相関値を求めることができる。なお、値が大きいほど相関が強いことを示す相関値を用いる場合は、最も値が大きい相関値に基づいて、推定対象位置に最も相関する候補位置を特定することができる。また、この場合は、所定の閾値よりも値が大きい相関値を抽出することより推定確率を向上させることができる。
【0056】
また、上記各実施形態では、50ms間隔で受信信号強度を3000回測定することにより位置指紋を取得したが、この条件は単なる一例であり、使用する機器(送信部、受信部)の特性等に応じて適宜変更することができる。なお、測定間隔が同じであれば、測定回数が多ければ多いほど、より正確な位置指紋を取得することができる。反対に、測定回数を減らし過ぎたり、測定間隔を短くし過ぎたりすると正確な位置指紋が取得できなくなるので、注意が必要である。推定対象位置における受信信号強度分布の取得条件についても、同様に、適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0057】
1A、1B 位置推定システム
2 送信部(送信手段)
3 受信手段
4 受信部
5 制御部
6 記憶部(記憶手段)
7 相関値演算部
8 位置特定部
9 相関値抽出部
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信手段から無線で送られてきた信号の受信強度を利用して、当該信号を受信した受信手段の位置を推定する位置推定方法および位置推定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の位置推定方法および位置推定システムとしては、全地球測位システム(GPS,Global Positioning System)を利用したものがよく知られている。全地球測位システムによれば、地球の周りを周回する約30個のGPS衛星のうち、上空にある3個以上のGPS衛星からの信号を受信機で受け取ることにより、受信機の位置を特定することができる。全地球測位システムを利用した代表的なアプリケーションとしては、例えば、カーナビゲーションシステムがある。
【0003】
しかしながら、全地球測位システムはGPS衛星からの信号に頼っているため、信号が届きにくい室内での利用には適していない。また、全地球測位システムは数m単位の位置ズレを生じ得るため、用途によっては精度が問題となっていた。そこで、室内においても位置を高い確率で推定することができる位置推定システムとして、無線LANを利用したものが検討されている。
【0004】
図12に示すように、この従来の位置推定システムは、3つの親機(アクセスポイント)AP1〜AP3と、各親機AP1〜AP3からの信号を受信する子機Tとを備えている。子機Tでは、受信した各親機AP1〜AP3からの信号の強度(以下、受信信号強度(RSS,Received Signal Strength)という)が測定される。そして、測定した強度またはその平均値と、あらかじめ測定しておいた当該強度(平均値)および各親機AP1〜AP3からの距離の関係(位置指紋)とに基づいて各親機AP1〜AP3からの距離r1〜r3が求められ、各親機AP1〜AP3を中心とした半径r1〜r3の円C1〜C3の交点が子機Tの位置と推定される(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
室内での位置を高い確率で推定することができれば、例えば、公演者がステージ上に上がると客席の照明が暗くなり公演者にスポットライトがあたる、等の制御を自動的に行うことができる他、位置情報を利用した様々なアプリケーションを実現することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Kaemarungsi, K., "Efficient design of indoor positioning systems based on location fingerprinting", In Proceedings of 2005 international conference on wireless networks, communications and mobile computing, 13-16 June 2005 (Vol. 1, pp. 181-186).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記の通り、この位置推定システムは3つの親機を必要とする。また、推定確率を向上させるという観点から、親機の数は多ければ多いほどよい。したがって、親機を1つしか備えていない一般家庭やオフィスの既存無線LAN環境下で十分な推定確率を得るためには、新たに親機を増設する必要があり、コスト負担が大きかった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、送信手段(例えば、上記親機)が1つしかない環境でも、受信手段(例えば、上記子機)の位置を高い確率で推定することができる位置推定方法および位置推定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明では「受信信号強度分布」を利用する。ここで、「受信信号強度分布」とは、一定時間(例えば、数ms)おきに受信信号強度を複数回(例えば、数千回)測定し、受信信号強度と当該受信信号強度が測定された回数とをヒストグラム化したものである。本発明者は鋭意検討を重ねた結果、受信信号の“強度”だけではなく、「受信信号強度分布」を利用して受信信号の“強度”と“分布”の双方を利用すれば、1つの送信手段からでも位置を推定するための十分な情報が得られることを見い出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明に係る位置推定方法は、送信手段から無線で送られてきた信号を受信した受信手段が、複数ある候補位置のいずれに位置しているのかを推定する位置推定方法であって、受信手段を各候補位置に配置して各候補位置における受信信号強度分布を取得する第1ステップと、取得した受信信号強度分布を各候補位置の位置指紋として記憶手段に格納する第2ステップとをあらかじめ実行しておき、その後、受信手段を推定対象位置に位置させて当該推定対象位置における受信信号強度分布を取得する第3ステップと、第3ステップで取得した受信信号強度分布と、記憶手段にあらかじめ格納されている各候補位置の位置指紋との相関値を求める第4ステップと、相関値に基づいて、各候補位置の中から推定対象位置に最も相関する候補位置を特定する第5ステップとを実行することを特徴とする。
【0011】
この構成では、あらかじめ取得した各候補位置の受信信号強度分布(位置指紋)と、推定対象位置の受信信号強度分布との相関値に基づいて、推定対象位置の位置を推定している。したがって、この構成によれば、受信信号の“強度”と“分布”の両方の観点から推定対象位置と各候補位置との相関を求めることができ、推定対象位置が候補位置のいずれであるのかを高い確率で推定することができる。
【0012】
上記位置推定方法において、相関値は、第3ステップで取得した受信信号強度分布と各候補位置の位置指紋との間のユークリッド距離またはマンハッタン距離であることが好ましく、この場合、上記第5ステップでは、ユークリッド距離またはマンハッタン距離が最も短いことに基づいて候補位置を特定する。
この構成によれば、比較的簡単に相関値を求めることができ、また、相関値同士の比較も容易である。
【0013】
上記位置推定方法は、第4ステップと第5ステップとの間に、第4ステップで求めたユークリッド距離またはマンハッタン距離の中から所定閾値よりも短いものを抽出するステップをさらに実行することが好ましく、この場合、上記第5ステップでは、抽出後のユークリッド距離またはマンハッタン距離が最も短いことに基づいて候補位置を特定する。
この構成によれば、推定対象位置の受信信号強度分布がどの候補位置の位置指紋とも強い相関を示さないために、誤った推定結果となるのを未然に防ぐことができ、結果的に推定確率を高めることができる。
【0014】
また、本発明に係る位置推定システムは、送信部と、当該送信部から無線で送られてきた信号を受信して当該信号の強度に関する強度データを出力する受信部とを備え、複数ある候補位置のいずれに受信部が位置しているのかを推定する位置推定システムであって、受信部からの強度データに基づいて受信信号強度分布データを生成する制御部と、各候補位置に配置された受信部からの強度データに基づいて制御部が生成した受信信号強度分布データを、各候補位置の位置指紋として格納した記憶部と、推定対象位置に位置した受信部からの強度データに基づいて制御部が生成した受信信号強度分布データと、記憶部に格納されている各候補位置の位置指紋との相関値を求めて出力する相関値演算部と、相関値に基づいて、各候補位置の中から推定対象位置に最も相関する候補位置を特定し当該候補位置に関する推定結果信号を出力する位置特定部とを備えたことを特徴とする。
【0015】
この構成では、あらかじめ取得しておいた各候補位置の受信信号強度分布データ(位置指紋)と、推定対象位置の受信信号強度分布データとの相関値に基づいて、推定対象位置の位置が推定される。したがって、この構成によれば、受信信号の“強度”と“分布”の両方の観点から推定対象位置と各候補位置との相関が求められるので、推定対象位置が候補位置のいずれであるのかを高い確率で推定することができる。
【0016】
上記位置推定システムにおいて、相関値は、推定対象位置における受信信号強度分布データと各候補位置の位置指紋との間のユークリッド距離またはマンハッタン距離であることが好ましく、この場合、上記位置特定部は、ユークリッド距離またはマンハッタン距離が最も短いことに基づいて候補位置を特定する。
この構成によれば、比較的簡単に相関値を求めることができ、また、相関値同士の比較も容易である。
【0017】
上記位置推定システムは、相関値演算部から出力されたユークリッド距離またはマンハッタン距離の中から所定閾値よりも短いものを抽出する相関値抽出部をさらに備えることが好ましく、この場合、上記位置特定部は、抽出後のユークリッド距離またはマンハッタン距離が最も短いことに基づいて候補位置を特定する。
この構成によれば、推定対象位置の受信信号強度分布がどの候補位置の位置指紋とも強い相関を示さないために、誤った推定結果となるのを未然に防ぐことができ、結果的に推定確率を高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、送信手段が1つしかない環境でも、受信手段の位置を高い確率で推定することができる位置推定方法および位置推定システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係る位置推定方法のフローチャートである。
【図2】本発明の第1実施形態に係る位置推定システムのブロック図である。
【図3】候補位置数を10個とした位置推定実験の環境を示す模式図である。
【図4】記憶手段に格納されている位置指紋テーブルの概念図である。
【図5】位置指紋を示すグラフであって、(A)〜(J)はそれぞれ図3に示す各候補位置P1〜P10の位置指紋の具体例である。
【図6】位置推定の過程を説明するための図であって、(A)は推定対象位置における受信信号強度分布の概念図、(B)は推定対象位置における受信信号強度分布の具体例を示すグラフ、(C)は相関値の具体例である。
【図7】位置推定の過程を説明するための図であって、(A)は推定対象位置における受信信号強度分布の概念図、(B)は推定対象位置における受信信号強度分布の別の具体例を示すグラフ、(C)は相関値の別の具体例である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る位置推定方法のフローチャートである。
【図9】本発明の第2実施形態に係る位置推定システムのブロック図である。
【図10】候補位置数を25個とした位置推定実験の環境を示す模式図である。
【図11】候補位置数と推定確率の関係を示すグラフである。
【図12】従来の位置推定システムの概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明に係る位置推定方法および位置推定システムの好ましい実施形態について説明する。
【0021】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係る位置推定方法および位置推定システムは、無線LAN(IEEE802.11g規格)の親機からの信号を受信する無線LANの子機が、あらかじめ設けられた複数の候補位置のいずれに位置しているのかを推定するものである。本実施形態では、親機が本発明の送信手段(送信部)に相当し、子機が本発明の受信手段(受信部)に相当する。位置推定の環境は図3に示す通りであり、本実施形態に係る位置推定方法および位置推定システムによれば、縦6m×横8mの室内に縦横1m間隔で設けた候補位置P1〜P10のいずれに受信手段(受信部)が位置しているのかを推定することができる。
【0022】
まず、図2を参照しつつ、図1に示す第1実施形態に係る位置推定方法について説明する。同図に示すように、本実施形態に係る位置推定方法は事前準備フェイズと位置推定フェイズとから構成され、事前準備フェイズを実行した後に位置推定フェイズを実行するようになっている。ただし、事前準備フェイズを少なくとも一度実行した後は、事前準備フェイズを省略して位置推定フェイズのステップS1−3から実行することができる。
【0023】
事前準備フェイズのステップS1−1では、受信手段3の少なくとも受信部4を各候補位置P1〜P10に配置し、各候補位置P1〜P10における受信信号強度分布を取得する。より詳しくは、送信手段2の位置は変えずに、受信部4の位置を候補位置P1→P2→・・・→P10に順に変化させ、各候補位置P1〜P10における受信信号強度分布を取得する。本実施形態では、50ms間隔で受信信号強度を3000回測定し、0[dBm]の受信信号強度が何回測定されたか、−1[dBm]の受信信号強度が何回測定されたか、・・・−49[dBm]の受信信号強度が何回測定されたかをヒストグラム化することにより、受信信号強度分布を取得した。
【0024】
ステップS1−2では、ステップS1−1で取得した受信信号強度分布を、各候補位置P1〜P10の位置指紋として記憶手段6に格納する。位置指紋は、図4に示す位置指紋テーブルT1の形式で記憶手段6に格納される。位置指紋テーブルT1は各候補位置P1〜P10の位置指紋をテーブル形式にまとめたもので、この位置指紋テーブルT1を参照すれば、例えば、候補位置P3において−47[dBm]の受信信号強度がρ3,48回測定されたことや、候補位置P8において−3[dBm]の受信信号強度がρ8,4回測定されたことが判るようになっている。なお、この位置指紋テーブルT1は単なる一例であり、他の形式で格納してもよい。要は、各候補位置P1〜P10において、どのような強度の受信信号が何回観測されたのかを特定できるものであれば、格納の形式はどのようなものであってよい。
【0025】
図5に、本実施形態に係る位置推定方法で取得した位置指紋の具体例を示す。図5(A)に示すように、候補位置P1の位置指紋には、−11[dBm]にある1517回の強いピークと、−22[dBm]にある552回の弱いピークとが見られる。また、図5(E)に示すように、候補位置P5の位置指紋には、−12[dBm]にある315回の弱いピークと、−23[dBm]にある1425回の強いピークとが見られる。つまり、送信手段2から見た位置が対称な候補位置P1とP5でも、壁やテーブルとの距離等の環境が異なることにより、異なった位置指紋を取得することができる(図3参照)。当然ながら、送信手段2から見た位置が対称ではない候補位置(例えば、候補位置P5とP8)では、異なった位置指紋を取得することができる。
【0026】
再び、図1を参照して、位置推定フェイズのステップS1−3では、受信部4を各候補位置P1〜P10のいずれかに位置させて、当該候補位置(例えば、候補位置P3。以下、「推定対象位置」という)における受信信号強度分布を取得する。本実施形態では、5ms間隔で受信信号強度を3000回測定し、0[dBm]の受信信号強度が何回測定されたか、−1[dBm]の受信信号強度が何回測定されたか、・・・−49[dBm]の受信信号強度が何回測定されたかをヒストグラム化することにより、受信信号強度分布を取得した。
【0027】
ステップS1−3で取得した受信信号強度分布は、例えば、図6(A)に示すようなテーブルT2の形式で記憶手段6等に一時的に格納しておくと便利である。このテーブルT2を参照すれば、推定対象位置において、例えば、−3[dBm]の受信信号強度がr4回測定されたことや、−48[dBm]の受信信号強度がr49回測定されたことが判るようになっている。なお、このテーブルT2は単なる一例であり、他の形式としてもよい。要は、推定対象位置において、どのような強度の受信信号が何回観測されたのかを特定できるものであれば、形式はどのようなものであってよい。また、ステップS1−3で取得した受信信号強度分布の格納先は、記憶手段6には限らない。
【0028】
図6(B)は、本実施形態に係る位置推定方法で取得した推定対象位置(候補位置P3)の受信信号強度分布の具体例である。同図に示すように、推定対象位置の受信信号強度分布には、−11[dBm]にある842回のピークと、−22[dBm]にある993回のピークとが見られる。
【0029】
位置推定フェイズのステップS1−4では、ステップS1−3で取得した受信信号強度分布と、事前準備フェイズにおいて記憶手段6に格納しておいた各候補位置P1〜P10の位置指紋との相関値を求める。相関値としては公知の種々のものを用いることができるが、本実施形態では、ユークリッド距離を相関値とした。ステップS1−3で取得した受信信号強度分布riと、候補位置Pi(i=1〜10)の位置指紋ρi,jとのユークリッド距離di(i=1〜10)は、次式で求めることができる。
【数1】
ここで、本実施形態では、1つの位置指紋および受信信号強度分布が、0〜−49[dBm]に対応する50個の数値で構成されている(図4の位置指紋テーブルT1、図6(A)のテーブルT2参照)。したがって、上記(1)式のNは50である。
【0030】
上記(1)式により、ステップS1−3で取得した受信信号強度分布と、各候補位置P1〜P10の位置指紋とのユークリッド距離diを求めると、図6(C)に示すような結果となった。
【0031】
位置推定フェイズのステップS1−5では、ステップS1−4で求めたユークリッド距離diに基づいて、各候補位置P1〜P10の中から推定対象位置(候補位置P3)に最も相関する候補位置を特定する。つまり、ステップS1−5では、図5に示す各候補位置P1〜P10のグラフのうち、どのグラフが図6(B)に示す推定対象位置のグラフに最もよく似ているのかを特定する。
【0032】
より詳しくは、ステップS1−5では、図6(C)に示す10個のユークリッド距離diの中から、距離が最も短いものを特定する。本実施形態では、ユークリッド距離d3の“692”が他のユークリッド距離d1,2、d4〜10よりも短い。したがって、ステップS1−5では、推定対象位置(候補位置P3)に最も相関する候補位置は候補位置P3であると特定される。
【0033】
図7は、推定対象位置を候補位置P6とした場合の具体例である。この場合、ステップS1−3では図7(B)に示す受信信号強度分布が取得され、ステップS1−4では図7(C)に示すユークリッド距離diが求められる。そして、ステップS1−5では、ユークリッド距離d6の“553”が他のユークリッド距離d1〜5、d7〜10よりも短いので、推定対象位置(候補位置P6)に最も相関する候補位置は候補位置P6であると特定される。
【0034】
以上のように、本実施形態に係る位置推定方法によれば、推定対象位置を候補位置P3、P6としたいずれの場合においても、受信手段3の受信部4の位置を正しく推定することができた。また、ここでは説明を省略するが、本実施形態に係る位置推定方法によれば、推定対象位置を他の候補位置(P1、P2、P4、P5、P7〜P10)とした場合においても、受信部4の位置を正しく推定することができた。
【0035】
次に、本発明の第1実施形態に係る位置推定システムについて説明する。図2に示すように、本実施形態に係る位置推定システム1Aは、送信部2、受信部4、制御部5、記憶部6、相関値演算部7および位置特定部8を備えている。本実施形態において、送信部2は無線LANの親機から構成され、受信部4は無線LANの子機から構成されている。また、記憶部6はハードディスクまたは各種の揮発/不揮発メモリから構成され、制御部5、相関値演算部7および位置特定部8は主にCPUと当該CPU上で実行されるコンピュータプログラムとから構成されている。
【0036】
受信部4は、送信部2から無線で送られてきた信号を受信するとともに、受信信号強度に関するデータ(本発明の「強度データ」に相当)を出力する。制御部5は、受信部4から出力された強度データを受け取ることができるように受信部4に接続されており、受け取った強度データに基づいて受信信号強度分布データを生成する。受信信号強度分布データは、既に説明した受信信号強度分布に関するデータである。
【0037】
記憶部6には、各候補位置P1〜P10に配置された受信部4からの強度データに基づいて制御部5が生成した受信信号強度分布データが位置指紋としてあらかじめ格納されている。受信信号強度分布データは、例えば、図4に示す位置指紋テーブルT1の形式で格納されている。
【0038】
相関値演算部7は、各候補位置P1〜P10の1つである推定対象位置に位置した受信部4からの強度データに基づいて制御部5が生成した受信信号強度分布データと、記憶部6に格納されている各候補位置P1〜P10の位置指紋との相関値を求めて出力する。相関値としては公知の種々のものを用いることができるが、本実施形態では、ユークリッド距離を相関値とした。推定対象位置における受信信号強度分布ri(図6(A)参照)と、候補位置Piの位置指紋ρi,j(図4参照)とのユークリッド距離diは上記(1)式で求めることができ、例えば、推定対象位置を候補位置P3とした場合は、図6(C)に示すようなユークリッド距離diが求められる。
【0039】
位置特定部8は、相関値演算部7から出力されたユークリッド距離diに基づいて、各候補位置P1〜P10の中から推定対象位置に最も相関する候補位置を特定し、当該候補位置に関する推定結果信号を出力する。より詳しくは、位置特定部8は、図6(C)に示す10個のユークリッド距離diの中から、距離が最も短いものを特定する。本実施形態では、ユークリッド距離d3の“692”が他のユークリッド距離d1,2、d4〜10よりも短い。したがって、位置特定部8は、推定対象位置(候補位置P3)に最も相関する候補位置は候補位置P3であると特定し、候補位置P3に対応した推定結果信号を出力する。
【0040】
以上のように、本実施形態に係る位置推定システム1Aによれば、既に説明した位置推定方法と同様に、受信部4の位置を正しく推定することができる。
【0041】
[第2実施形態]
上記の第1実施形態では候補位置数を10個としたが、この数を増やしていくと、各候補位置の位置指紋同士が近似して、誤った推定結果となる確率が高くなる。また、受信信号強度は環境の変化や時間経過に伴って若干変動する。このため、推定対象位置の受信信号強度分布が推定対象位置以外の位置指紋と強く相関したり、または、どの位置指紋とも強い相関を示さなかったりして、誤った推定結果となる場合がある。
【0042】
そこで、本発明の第2実施形態に係る位置推定方法は、図8に示すように、ステップS1−4に相当するステップS2−4とステップS1−5に相当するステップS2−6との間に、ステップS2−5として相関値の抽出を行う。そして、ステップS2−6では、抽出された相関値に基づいて、各候補位置の中から推定対象位置に最も相関する候補位置を特定する。より詳しくは、相関値としてユークリッド距離を用いる場合は、あらかじめ設定しておいた閾値(距離)よりも短いユークリッド距離を抽出し、抽出したユークリッド距離の中から、距離が最も短いものを特定する。
【0043】
このようにすれば、特に、推定対象位置の受信信号強度分布がどの位置指紋とも強い相関を示さないために、誤った推定結果となるのを未然に防ぐことができる。なお、この場合は推定結果を得ることはできないが、ステップS2−3に戻って位置推定フェイズを初めから再実行し、閾値との関係を満足する別の相関値を得ることができれば、結果的に推定確率を高めることができる。
【0044】
なお、適切な閾値は、周囲の環境や機器(送信部2、受信部4)の特性等によって変わることが予想される。したがって、閾値は、位置指紋同士の相関値を参考にしながら、後述する推定確率確認実験を繰り返し行った結果に基づいて、経験的に決定する必要がある。
【0045】
図9は、第2実施形態に係る位置推定システムである。同図に示すように、位置推定システム1Bは、相関値抽出部9を備えている点において第1実施形態に係る位置推定システム1Aと異なっている。制御部5等と同様に、追加された相関値抽出部9は、主にCPUと当該CPU上で実行されるコンピュータプログラムとから構成されている。
【0046】
相関値抽出部9は、相関値演算部7から出力された相関値の中から所定の条件に合致するものを抽出する。そして、位置特定部8は、抽出された相関値に基づいて、各候補位置の中から推定対象位置に最も相関する候補位置を特定する。
【0047】
本実施形態に係る位置推定システム1Bによれば、既に説明した位置推定方法と同様に、誤った推定結果となるのを未然に防ぐことができ、結果的に推定確率を高めることができる。
【0048】
[推定確率確認実験]
続いて、第1および第2実施形態に係る位置推定方法と、従来の位置推定方法とで、推定確率にどのような差異が見られるのか確認した実験の結果について説明する。実験環境は図10に示す通りであり、縦6m×横8mの部屋の壁際に計4つのテーブルを配置し、空いたスペースの床に縦横1m間隔で候補位置P1〜P25を設けた。また、無線LAN(IEEE802.11g規格)の親機である送信部2と、最寄りの候補位置P3との距離は1mとした。
【0049】
位置指紋は、無線LANの子機である受信部4を各候補位置P1〜P25に配置し、50ms間隔で受信信号強度を3000回測定することにより取得した。また、推定対象位置における受信信号強度分布は、5ms間隔で受信信号強度を3000回測定することにより取得した。なお、推定対象位置における受信信号強度分布については、各候補位置P1〜P25で50個ずつ取得することにより、25×50=1250個の受信信号強度分布を取得した。そして、1250個の受信信号強度分布のそれぞれと、各候補位置P1〜P25の位置指紋との相関を求め、正しい位置を推定できた確率を求めた。相関値としてはユークリッド距離を使用し、第2実施形態に係る位置推定方法については閾値(距離)を1300とした。
【0050】
また、実験は、全候補位置P1〜P25のうちの一部を使用する場合についても行った。例えば、候補位置P1〜P10のみを使用する場合は、10×50=500個の受信信号強度分布のそれぞれと、各候補位置P1〜P10の位置指紋との相関を求め、正しい位置を推定できた確率を求めた。
【0051】
また、従来の位置推定方法については、50ms間隔で3000回測定した受信信号強度の平均値を位置指紋とし、さらに受信信号強度分布の代わりに5ms間隔で3000回測定した受信信号強度の平均値を用い、他の条件は上記と同様にして正しい候補位置を推定できた確率を求めた。なお、上記平均値は、例えば、−10[dBm]の受信信号強度が1000回測定され、−20[dBm]の受信信号強度が2000回測定された場合は、(−10×1000+−20×2000)/3000=−16.7[dBm]となる。
【0052】
図11に、第1および第2実施形態に係る位置推定方法および従来の位置推定方法の推定確率を示す。同図に示すように、どの位置推定方法についても、候補位置数が増えるにつれて推定確率が低下する傾向が見られた。これは、各候補位置の位置指紋(または、平均値)同士が近似することに起因すると考えられる。また、候補位置数に関係なく、第1および第2実施形態に係る位置推定方法では、従来の位置推定方法よりも高い推定確率が得られた。これは、受信信号の“強度”と“分布”の双方を利用することにより、1つの送信手段からより多くの情報が得られたためだと考えられる。さらに、第2実施形態に係る位置推定方法では、第1実施形態に係る位置推定方法よりも高い推定確率が得られ、特に候補位置数が10個以下の場合は9割以上の確率で正しい位置を推定することができた。これは、閾値を設けて相関値であるユークリッド距離を抽出したことにより、誤った推定結果となるのを未然に防ぐことができたからだと考えられる。
【0053】
[その他の実施形態]
以上、本発明に係る位置推定方法および位置推定システムの好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、種々の変形実施形態が考えられる。
【0054】
例えば、上記各実施形態では、送信手段(送信部)と受信手段(受信部)との間の通信手段として無線LANを用いたが、これに代えて、Bluetooth、無線USB等の室内に送信側端末と受信側端末の双方を配置する各種通信手段を用いることができる。また、当然ながら、IEEE802.11b等の他の規格の無線LANを用いることもできる。
【0055】
また、上記各実施形態では、相関値としてユークリッド距離を用いたが、これに代えて、マンハッタン距離を用いることができる。この場合も、閾値よりも値が小さい相関値を抽出して推定確率を向上させることができる。なお、マンハッタン距離は次式で求めることができる。
【数2】
この他、本発明では、ニューラルネットワーク法(Neural Network Method)、サポートベクターマシン法(Support Vector Machine Method)により相関値を求めることができる。なお、値が大きいほど相関が強いことを示す相関値を用いる場合は、最も値が大きい相関値に基づいて、推定対象位置に最も相関する候補位置を特定することができる。また、この場合は、所定の閾値よりも値が大きい相関値を抽出することより推定確率を向上させることができる。
【0056】
また、上記各実施形態では、50ms間隔で受信信号強度を3000回測定することにより位置指紋を取得したが、この条件は単なる一例であり、使用する機器(送信部、受信部)の特性等に応じて適宜変更することができる。なお、測定間隔が同じであれば、測定回数が多ければ多いほど、より正確な位置指紋を取得することができる。反対に、測定回数を減らし過ぎたり、測定間隔を短くし過ぎたりすると正確な位置指紋が取得できなくなるので、注意が必要である。推定対象位置における受信信号強度分布の取得条件についても、同様に、適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0057】
1A、1B 位置推定システム
2 送信部(送信手段)
3 受信手段
4 受信部
5 制御部
6 記憶部(記憶手段)
7 相関値演算部
8 位置特定部
9 相関値抽出部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信手段から無線で送られてきた信号を受信した受信手段が、複数ある候補位置のいずれに位置しているのかを推定する位置推定方法であって、
前記受信手段を各候補位置に配置して前記各候補位置における受信信号強度分布を取得する第1ステップと、
取得した前記受信信号強度分布を前記各候補位置の位置指紋として記憶手段に格納する第2ステップと、
をあらかじめ実行しておき、その後、
前記受信手段を推定対象位置に位置させて当該推定対象位置における受信信号強度分布を取得する第3ステップと、
前記第3ステップで取得した前記受信信号強度分布と、前記記憶手段にあらかじめ格納されている前記各候補位置の前記位置指紋との相関値を求める第4ステップと、
前記相関値に基づいて、前記各候補位置の中から前記推定対象位置に最も相関する候補位置を特定する第5ステップと、
を実行することを特徴とする位置推定方法。
【請求項2】
前記相関値は、前記第3ステップで取得した前記受信信号強度分布と前記各候補位置の前記位置指紋との間のユークリッド距離またはマンハッタン距離であり、
前記第5ステップにおいて、前記ユークリッド距離または前記マンハッタン距離が最も短いことに基づいて前記候補位置を特定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の位置推定方法。
【請求項3】
前記第4ステップと前記第5ステップとの間に、前記第4ステップで求めた前記ユークリッド距離または前記マンハッタン距離の中から所定閾値よりも短いものを抽出するステップをさらに実行し、
前記第5ステップにおいて、抽出後の前記ユークリッド距離または前記マンハッタン距離が最も短いことに基づいて前記候補位置を特定する、
ことを特徴とする請求項2に記載の位置推定方法。
【請求項4】
送信部と、当該送信部から無線で送られてきた信号を受信して当該信号の強度に関する強度データを出力する受信部とを備え、複数ある候補位置のいずれに前記受信部が位置しているのかを推定する位置推定システムであって、
前記受信部からの前記強度データに基づいて、受信信号強度分布データを生成する制御部と、
各候補位置に配置された前記受信部からの前記強度データに基づいて前記制御部が生成した前記受信信号強度分布データを、前記各候補位置の位置指紋として格納した記憶部と、
推定対象位置に位置した前記受信部からの前記強度データに基づいて前記制御部が生成した前記受信信号強度分布データと、前記記憶部に格納されている前記各候補位置の前記位置指紋との相関値を求めて出力する相関値演算部と、
前記相関値に基づいて、前記各候補位置の中から前記推定対象位置に最も相関する候補位置を特定し、当該候補位置に関する推定結果信号を出力する位置特定部と、
を備えたことを特徴とする位置推定システム。
【請求項5】
前記相関値は、前記推定対象位置における前記受信信号強度分布データと前記各候補位置の前記位置指紋との間のユークリッド距離またはマンハッタン距離であり、
前記位置特定部は、前記ユークリッド距離または前記マンハッタン距離が最も短いことに基づいて前記候補位置を特定する、
ことを特徴とする請求項4に記載の位置推定システム。
【請求項6】
前記相関値演算部から出力された前記ユークリッド距離または前記マンハッタン距離の中から所定閾値よりも短いものを抽出する相関値抽出部をさらに備え、
前記位置特定部は、抽出後の前記ユークリッド距離または前記マンハッタン距離が最も短いことに基づいて前記候補位置を特定する、
ことを特徴とする請求項5に記載の位置推定システム。
【請求項1】
送信手段から無線で送られてきた信号を受信した受信手段が、複数ある候補位置のいずれに位置しているのかを推定する位置推定方法であって、
前記受信手段を各候補位置に配置して前記各候補位置における受信信号強度分布を取得する第1ステップと、
取得した前記受信信号強度分布を前記各候補位置の位置指紋として記憶手段に格納する第2ステップと、
をあらかじめ実行しておき、その後、
前記受信手段を推定対象位置に位置させて当該推定対象位置における受信信号強度分布を取得する第3ステップと、
前記第3ステップで取得した前記受信信号強度分布と、前記記憶手段にあらかじめ格納されている前記各候補位置の前記位置指紋との相関値を求める第4ステップと、
前記相関値に基づいて、前記各候補位置の中から前記推定対象位置に最も相関する候補位置を特定する第5ステップと、
を実行することを特徴とする位置推定方法。
【請求項2】
前記相関値は、前記第3ステップで取得した前記受信信号強度分布と前記各候補位置の前記位置指紋との間のユークリッド距離またはマンハッタン距離であり、
前記第5ステップにおいて、前記ユークリッド距離または前記マンハッタン距離が最も短いことに基づいて前記候補位置を特定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の位置推定方法。
【請求項3】
前記第4ステップと前記第5ステップとの間に、前記第4ステップで求めた前記ユークリッド距離または前記マンハッタン距離の中から所定閾値よりも短いものを抽出するステップをさらに実行し、
前記第5ステップにおいて、抽出後の前記ユークリッド距離または前記マンハッタン距離が最も短いことに基づいて前記候補位置を特定する、
ことを特徴とする請求項2に記載の位置推定方法。
【請求項4】
送信部と、当該送信部から無線で送られてきた信号を受信して当該信号の強度に関する強度データを出力する受信部とを備え、複数ある候補位置のいずれに前記受信部が位置しているのかを推定する位置推定システムであって、
前記受信部からの前記強度データに基づいて、受信信号強度分布データを生成する制御部と、
各候補位置に配置された前記受信部からの前記強度データに基づいて前記制御部が生成した前記受信信号強度分布データを、前記各候補位置の位置指紋として格納した記憶部と、
推定対象位置に位置した前記受信部からの前記強度データに基づいて前記制御部が生成した前記受信信号強度分布データと、前記記憶部に格納されている前記各候補位置の前記位置指紋との相関値を求めて出力する相関値演算部と、
前記相関値に基づいて、前記各候補位置の中から前記推定対象位置に最も相関する候補位置を特定し、当該候補位置に関する推定結果信号を出力する位置特定部と、
を備えたことを特徴とする位置推定システム。
【請求項5】
前記相関値は、前記推定対象位置における前記受信信号強度分布データと前記各候補位置の前記位置指紋との間のユークリッド距離またはマンハッタン距離であり、
前記位置特定部は、前記ユークリッド距離または前記マンハッタン距離が最も短いことに基づいて前記候補位置を特定する、
ことを特徴とする請求項4に記載の位置推定システム。
【請求項6】
前記相関値演算部から出力された前記ユークリッド距離または前記マンハッタン距離の中から所定閾値よりも短いものを抽出する相関値抽出部をさらに備え、
前記位置特定部は、抽出後の前記ユークリッド距離または前記マンハッタン距離が最も短いことに基づいて前記候補位置を特定する、
ことを特徴とする請求項5に記載の位置推定システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−179946(P2011−179946A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43989(P2010−43989)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(503027931)学校法人同志社 (346)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(503027931)学校法人同志社 (346)
【Fターム(参考)】
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