説明

位置検出システムおよび携帯端末

【課題】複数の端末が発信する捜索用信号の干渉を回避し、端末の台数のカウントや位置の特定を容易にする。
【解決手段】無線交換局1は、捜索用信号の発信周波数と発信タイミングと発信出力値のうち少なくとも1つを指定する捜索用信号設定情報を携帯電話端末3−2,3−3毎に生成する。無線基地局2は、捜索用信号設定情報を設定先の携帯電話端末3−2,3−3に送信して捜索用信号の発信を要求する。携帯電話端末3−2,3−3は、捜索用信号設定情報で指定された発信周波数と発信タイミングと発信出力値とで捜索用信号M−4−a,M−4−bを発信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば災害時等において人が所持している携帯端末の位置を特定するための位置検出システム、および位置検出システムで用いる携帯端末に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地震等の災害の発生により倒壊した建物に生き埋めとなった人(被災者)を救出する際には、被災者の存在及び場所の特定が急務である。被災者の捜索方法としては以下の方法がある。
(1)被災者との会話等のコミュニケーションを用いて被災者の場所を特定する。
(2)救助犬や小型カメラなどを用いて被災者を捜索する。
(3)被災者が所有する携帯端末を用いて被災者を捜索する。
【0003】
携帯端末を用いて被災者を捜索する方法については、例えば特許文献1、特許文献2に開示されている。特許文献1に開示された位置検出システムでは、無線交換局からの指示により、携帯端末に対して複数の無線基地局から緊急電波信号を送信し、緊急電波信号を受信した携帯端末は、端末内に記憶している自己のID(氏名や電話番号)を音響信号(モールス信号やDTMF信号)に変換し、この音響信号を大音量で出力する。この音響信号により、被災者とその居場所の特定が可能になる。
【0004】
また、特許文献2に開示されたシステムでは、レスキュー隊などの捜索者の携帯端末から特定の被災者の携帯端末に対して緊急信号を発信させるための制御信号を送信し、この制御信号を受信した被災者の携帯端末が緊急信号を送信する。捜索者は、緊急信号の強度を検知することにより、被災者の位置を特定することができる。
【0005】
【特許文献1】特開2002−314634号公報
【特許文献2】特開2005−33458号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の(1)、(2)の方法および特許文献2に開示された方法は、被災者が存在する大まかな場所が特定できている場合には非常に効果的であるが、広範囲の捜索には適していない。
【0007】
一方、特許文献1に開示された位置検出システムでは、無線交換局からの指示により携帯端末に音響信号を発生させるため、広範囲の捜索が可能である。しかし、捜索場所に数多くの携帯端末が存在する場合、各携帯端末が一斉に捜索用音響信号を発することになるため、以下の問題点が発生する。
(a)携帯端末の台数(すなわち被災者の人数)のカウントが難しい。
(b)様々な場所から音響信号が発生するため、被災者の位置の特定が難しい。
(c)音響信号を発することから被災者が周囲の状況を確認する際の妨げになり、また被災者と捜索者との会話の妨げになる。
【0008】
そこで、特許文献1に開示された位置検出システムにおいて、音響信号を可聴帯域外の周波数の信号に変更すれば、上記の(c)の問題点を解決することができるが、その他の問題点は解決できない。
なお、特許文献2に開示された方法においても、広範囲での災害発生時や多数の被災者が存在する場合には、被災者の携帯端末が発信する緊急信号が互いに干渉し合うことにより、上記の(b)の問題点と同様に被災者の位置の特定が困難となることが考えられる。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、複数の携帯端末が発信する捜索用信号の干渉を回避し、携帯端末の台数のカウントや位置の特定を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の位置検出システムは、捜索用信号の発信周波数と発信タイミングのうち少なくとも1つを指定する捜索用信号設定情報を携帯端末毎に生成する捜索用信号設定手段と、前記捜索用信号設定情報を設定先の携帯端末に送信して捜索用信号の発信を要求する捜索用信号発信要求手段と、この捜索用信号発信要求手段から送信された要求を受信する携帯端末に設けられ、前記捜索用信号設定情報で指定された発信周波数と発信タイミングとで捜索用信号を発信する捜索用信号発信手段とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明の位置検出システムの1構成例において、前記捜索用信号設定手段は、さらに前記捜索用信号設定情報によって捜索用信号の発信出力値を携帯端末毎に指定し、前記捜索用信号発信手段は、前記捜索用信号設定情報で指定された発信出力値で前記捜索用信号を発信することを特徴とするものである。
また、本発明の位置検出システムの1構成例において、前記捜索用信号設定手段は、前記捜索用信号の発信タイミングを指定する場合に、前記携帯端末の間欠受信のタイミングを基準タイミングとして、前記捜索用信号の発信タイミングを指定し、前記捜索用信号発信手段は、前記間欠受信のタイミングを基準タイミングとして前記捜索用信号を間欠発信することを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の位置検出システムの1構成例は、さらに、複数の携帯端末に対して捜索の要否を確認する要否確認手段を備え、前記捜索用信号設定手段は、捜索要請のあった携帯端末について前記捜索用信号設定情報を生成し、前記捜索用信号発信要求手段は、生成された捜索用信号設定情報を設定先の携帯端末に送信することを特徴とするものである。
また、本発明の位置検出システムの1構成例は、さらに、携帯端末毎の前記捜索用信号設定情報のリストを作成するリスト作成手段を備えることを特徴とするものである。
また、本発明の位置検出システムの1構成例は、さらに、前記携帯端末から発信される捜索用信号を受信するモニター装置を備えることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明は、位置検出システムで用いる携帯端末であって、捜索用信号の発信要求を受信する受信手段と、捜索用信号の発信周波数と発信タイミングのうち少なくとも1つを指定する捜索用信号設定情報を前記発信要求から取り出して、この捜索用信号設定情報で指定された発信周波数と発信タイミングとで捜索用信号を発信する捜索用信号発信手段とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明の携帯端末の1構成例において、前記捜索用信号発信手段は、前記捜索用信号設定情報で発信出力値が指定される場合に、指定された発信出力値で前記捜索用信号を発信することを特徴とするものである。
また、本発明の携帯端末の1構成例において、前記捜索用信号発信手段は、前記捜索用信号設定情報によって携帯端末の間欠受信のタイミングを基準タイミングとして前記発信タイミングが指定される場合に、前記間欠受信のタイミングを基準タイミングとして前記捜索用信号を間欠発信することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、捜索用信号の発信周波数と発信タイミングのうち少なくとも1つを指定する捜索用信号設定情報を携帯端末毎に生成し、携帯端末が捜索用信号設定情報で指定された発信周波数と発信タイミングとで捜索用信号を発信するようにしたので、複数の携帯端末が発信する捜索用信号の干渉を減らすことができる。その結果、本発明では、携帯端末の台数のカウントや位置の特定を容易に行うことができる。また、本発明では、各々の携帯端末に対して捜索用信号の発信オン/オフを指定することが可能であるため、捜索状況によって捜索用信号の発信停止を行うことが可能となる。さらに、本発明では、捜索用信号の発信周波数と発信タイミングを捜索状況に応じて変更することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1、図2は本発明の第1の実施の形態に係る位置検出システムを説明する図である。
本実施の形態は、携帯電話端末が発信する捜索用信号の発信周波数、発信タイミング、発信出力値などを無線基地局から指定することにより、各々の被災者の携帯電話端末が発信する捜索用信号の干渉を回避することを特徴とする。
【0015】
災害発生時、無線基地局2の要否確認部(不図示)は、無線交換局1からの指示に応じて、自身がカバーする圏内に存在する携帯電話端末3−1,3−2,3−3に対し、CBS(Cell Broadcast Service)等の一斉報知信号により救出要否確認要求メッセージM−1を送信する(図1)。
携帯電話端末3−2,3−3を所持している人が被災して救出が必要な場合、これらの被災者は携帯電話端末3−2,3−3を操作して救出要請を行う。これにより、携帯電話端末3−2,3−3からそれぞれ救出要請通知メッセージM−2−a,M−2−bが無線基地局2に対して送信される。
【0016】
次に、救出要請通知メッセージM−2−a,M−2−bを受けた無線基地局2は、救出要否の確認結果を無線交換局1に通知する。
無線基地局2からの通知を受けた無線交換局1の捜索用信号設定部(不図示)は、捜索用信号の発信周波数と発信タイミングと発信出力値のうち少なくとも1つを指定する捜索用信号設定情報を、救出要請のあった携帯電話端末3−2,3−3毎に生成する。無線交換局1は、この捜索用信号設定情報を含む捜索用信号発信要求を無線基地局2に送る。
【0017】
無線基地局2の捜索用信号発信要求部(不図示)は、携帯電話端末3−2,3−3に対して、捜索用信号設定情報を含む捜索用信号発信要求メッセージM−3−a,M−3−bを送出する。
捜索用信号発信要求メッセージM−3−a,M−3−bを受信した携帯電話端末3−2,3−3の捜索用信号発信部(不図示)は、それぞれ捜索用信号設定情報で指定された周波数と発信タイミングと発信出力とで捜索用信号M−4−a,M−4−bを発信する。
【0018】
レスキュー隊などの捜索者は、例えば携帯電話端末公衆網を管理するオペレータから各携帯電話端末が発信する捜索用信号の情報を入手し、個々の携帯電話端末が発信する捜索用信号を検索することにより被災者の位置を特定することができる。
【0019】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は第1の実施の形態をより具体的に説明するものである。図3は無線交換局1の構成を示すブロック図、図4は無線基地局2の構成を示すブロック図、図5は携帯電話端末3(3−1〜3−3)の構成を示すブロック図である。
【0020】
無線交換局1は、救出要否確認部11と、捜索用信号設定部12と、救出リスト作成部13と、通信部14とを有する。救出要否確認部11は、携帯電話端末3に対して無線基地局2を介して救出(捜索)の要否を確認する。捜索用信号設定部12は、救出要請のあった携帯電話端末3毎に捜索用信号設定情報を生成する。救出リスト作成部13は、携帯電話端末毎の捜索用信号設定情報のリストを作成する。通信部14は、無線基地局2との通信を行う。
【0021】
無線基地局2は、救出要否確認部21と、捜索用信号発信要求部22と、捜索用信号受信部23と、無線部24と、アンテナ25と、通信部26とを有する。救出要否確認部21は、携帯電話端末3に対して救出の要否を確認する。捜索用信号発信要求部22は、救出要請のあった携帯電話端末3に対して捜索用信号の発信を要求する。捜索用信号受信部23は、携帯電話端末3からの捜索用信号を受信する。無線部24は、アンテナ25を介して携帯電話端末3との無線通信を行う。通信部26は、無線交換局1との通信を行う。
【0022】
携帯電話端末3は、記憶部31と、無線部32と、アンテナ33と、捜索用信号発信部34と、CPU35と、タイマー部36と、表示部37と、操作部38と、CPUバス39とを有する。
【0023】
携帯電話端末3は、CPU35と各機能部とをCPUバス39で接続し、CPU35が制御を行う構成となっている。
記憶部31は、CPU動作時のプログラムおよびデータを保存する。記憶部31は、間欠受信を行うタイミングを指定する間欠受信タイミング情報31−1、捜索用信号の発信タイミングを指定する捜索用信号発信タイミング情報31−2、捜索用信号の発信周波数を指定する捜索用信号発信周波数情報31−3、捜索用信号の発信出力値を指定する捜索用信号発信出力値情報31−4などを保持する。
【0024】
無線部32は、アンテナ33を介して無線基地局2との無線通信を行う。捜索用信号発信部34は、捜索用信号を発信する。タイマー部36は、間欠受信タイミング並びに捜索用信号の発信タイミングの時間測定に使用される。表示部37は携帯電話端末3のユーザに対して情報を表示し、操作部38はユーザのキー操作を受け付ける。
【0025】
以下、本実施の形態の位置検出システムの動作を説明する。図6、図7は被災者を捜索するときの位置検出システムの動作を示すシーケンス図である。ここでは、特定のエリア(以下、A地域とする)における捜索を例に挙げて説明する。
まず、災害発生時、自治体の担当者は、被災者捜索のためにオペレータに対して、A地域に存在する携帯電話端末3から捜索用信号を発信させるよう要求する(図6ステップS1)。
【0026】
オペレータは、自治体の担当者からの要求に従い、無線交換局1に対してA地域の携帯電話端末3から捜索用信号を発信させるよう指示を出す(ステップS2)。
オペレータからの指示を受けた無線交換局1の救出要否確認部11は、A地域に該当する無線基地局2を特定し(ステップS3)、この無線基地局2のエリアに存在する全ての携帯電話端末3に対して救出の要否を確認するよう無線基地局2に要求する(ステップS4)。
【0027】
無線交換局1からの要求を受けた無線基地局2の救出要否確認部21は、自局のエリアに存在する全ての携帯電話端末3に対して救出の要否を確認する信号を、無線部24およびアンテナ25を介して一斉に送信する(ステップS5)。
無線基地局2から救出要否確認信号を受信した携帯電話端末3のCPU35は、例えば救出の要否を確認するメッセージを表示部37に表示させる。このメッセージを見た携帯電話端末3のユーザは、救出が必要であれば、操作部38に対して所定の操作を行う。この操作を受けたCPU35は、無線基地局2に対して救出要請信号を送信する(ステップS6)。
【0028】
携帯電話端末3から救出要請信号を受けた無線基地局2の救出要否確認部21は、無線交換局1に対して救出要否の確認結果信号を送信する(ステップS7)。この確認結果信号には、救出を要請した携帯電話端末3の識別情報(例えば電話番号)が含まれる。
無線基地局2から確認結果信号を受けた無線交換局1の捜索用信号設定部12は、捜索用信号の発信周波数と発信タイミングと発信出力値とを指定する捜索用信号設定情報を、救出要請のあった携帯電話端末3毎に生成する(ステップS8)。
【0029】
そして、無線交換局1の捜索用信号設定部12は、ステップS8で捜索用信号設定情報を割り振った携帯電話端末3の識別情報と捜索用信号設定情報とを含む捜索用信号発信要求を、ステップS3で特定した無線基地局2に送る(ステップS9)。
無線交換局1から捜索用信号発信要求を受けた無線基地局2の捜索用信号発信要求部22は、ステップS6で救出要請のあった携帯電話端末3(捜索用信号発信要求で指定された携帯電話端末3)に対してこの携帯電話端末3用に設定された捜索用信号設定情報を通知し、捜索用信号の発信を要求する(ステップS10)。
【0030】
捜索用信号発信要求を受けた携帯電話端末3のCPU3は、この捜索用信号発信要求に含まれる捜索用信号設定情報で指定された周波数と発信タイミングと発信出力とで捜索用信号を発信するよう捜索用信号発信部34に指示する(ステップS11)。この指示に従って捜索用信号発信部34は、捜索用信号の発信を開始する(ステップS12)。
捜索用信号を受信した無線基地局2の捜索用信号受信部23は、無線交換局1に対して捜索用信号の発信を確認したことを通知する(ステップS13)。このとき、無線基地局2から送信される確認通知信号には、捜索用信号を発信した携帯電話端末3の識別情報が含まれる。
【0031】
無線基地局2から確認通知信号を受けた無線交換局1の救出リスト作成部13は、捜索用信号を発信した携帯電話端末3の識別情報とこの携帯電話端末3用に設定した捜索用信号設定情報とをリスト化した救出リストを作成し(ステップS14)、この救出リストをオペレータに通知する(ステップS15)。このようなリストを作成することにより、このリストを基に被災者の捜索を行うことができる。救出リストの通知方法としては、例えば救出リストの印刷や表示などがある。
オペレータは、無線交換局1から受け取った救出リストを自治体の担当者に通知する(ステップS16)。
【0032】
自治体の担当者は、レスキュー隊などの捜索者に救出リストを配布する。捜索者は、各携帯電話端末3が発信する捜索用信号をモニターしながら被災者の捜索にあたる(ステップS17)。
【0033】
図8は捜索者が使用するモニター装置4の構成の1例を示すブロック図である。モニター装置4は、捜索用信号の周波数を検出する発信周波数検出部41と、捜索用信号の発信タイミングを検出する発信タイミング検出部42と、捜索用信号の発信出力値を検出する発信出力検出部43と、アンテナ45を介して捜索用信号を受信する無線部44と、検出された捜索用信号の周波数、発信タイミング、発信出力値などを表示する表示部46と、モニター装置全体を制御するCPU47とを有する。このようなモニター装置4を用いることにより、捜索者は、捜索用信号の周波数、発信タイミング、発信出力値を認識することができるので、複数の携帯電話端末3から発信される捜索用信号を区別することができる。
【0034】
図9は本実施の形態における捜索用信号の発信動作を示すタイミングチャートであり、捜索用信号の干渉回避方法を説明する図である。図9(A)は携帯電話端末3の間欠受信のタイミングを示す図、図9(B)は救出要請をした携帯電話端末(ここでは、携帯電話端末3−Aとする)の捜索用信号の発信タイミングを示す図、図9(C)は救出要請をした別の携帯電話端末(ここでは、携帯電話端末3−Bとする)の捜索用信号の発信タイミングを示す図である。
【0035】
図9(A)〜図9(C)において、t1は携帯電話端末3−A,3−Bが無線基地局2から捜索用信号発信要求を受信したタイミング、t2,t3,t4は間欠受信のタイミング、ΔTは間欠受信の周期である。なお、間欠受信とは、一定のタイミング毎に無線基地局2からの受信を行い、それ以外では受信を行わない動作を意味する。上記の捜索用信号発信要求も間欠受信のタイミングで受信したものである。この間欠受信のタイミングは、間欠受信タイミング情報31−1で指定される。
【0036】
ここでは、携帯電話端末3−Aに通知される捜索用信号設定情報により、捜索用信号の発信タイミングとして間欠受信のタイミングからΔa後のタイミングが指定され、発信周波数としてa(Hz)が指定されているものとする。この捜索用信号設定情報に応じて、携帯電話端末3−Aは、図9(B)に示すように、間欠受信のタイミングt2,t3からΔa後のタイミングt5,t6において周波数がa(Hz)の捜索用信号を発信する。
【0037】
また、携帯電話端末3−Bに通知される捜索用信号設定情報により、捜索用信号の発信タイミングとして間欠受信のタイミングからΔb後のタイミングが指定され、発信周波数としてb(Hz)が指定されているものとする。この捜索用信号設定情報に応じて、携帯電話端末3−Bは、図9(C)に示すように、間欠受信のタイミングt2,t3からΔb後のタイミングt7,t8において周波数がb(Hz)の捜索用信号を発信する。
【0038】
特許文献1に開示された位置検出システムでは、捜索用信号として音響信号(DTMF信号)を使用しており、複数の携帯電話端末が発信する音響信号が干渉するため、各々の携帯電話端末が発する音響信号を正確に捉えることができないという問題が発生する。この干渉は、音響信号を同じ時間帯で発信することと(以下、原因1と呼ぶ)、音響信号を同じ周波数帯で発信すること(以下、原因2と呼ぶ)で発生する。
【0039】
本実施の形態では、特許文献1に開示された位置検出システムの問題点を解決する為に下記の解決方法を用いる。
まず、時間軸での干渉回避を行うために捜索用信号の発信タイミングに基準タイミングを設け、携帯電話端末毎に発信タイミングを指定することによって、捜索用信号の干渉を回避する。これにより、原因1に起因する問題を解決する。具体的には、基準タイミングとして携帯電話端末の間欠受信のタイミングを用いる。本実施の形態では、間欠受信のタイミングを基準とし、この間欠受信のタイミングから指定時間だけ遅れたタイミングを捜索用信号の発信タイミングとして、この発信タイミングを捜索用信号設定情報によって各携帯電話端末に通知する。
【0040】
次に、同一周波数帯域での干渉回避を行うために捜索用信号の発信周波数を携帯電話端末毎に指定することによって、捜索用信号の干渉を回避する。これにより、原因2に起因する問題を解決する。具体的には、携帯電話端末毎に捜索用信号の発信周波数を用意する。本実施の形態では、捜索用信号の発信周波数を捜索用信号設定情報によって各携帯電話端末に通知し、通知した発信周波数で捜索用信号を発信させる。
【0041】
以上のように、本実施の形態では、捜索用信号の発信周波数と発信タイミングと発信出力値のうち少なくとも1つを指定する捜索用信号設定情報を携帯端末毎に生成し、携帯端末が捜索用信号設定情報で指定された発信周波数と発信タイミングとで捜索用信号を発信するようにしたので、複数の携帯端末が発信する捜索用信号の干渉を減らすことができる。その結果、本実施の形態では、携帯端末の台数のカウントや位置の特定を容易に行うことができ、携帯端末を所持する被災者の捜索を行うことができる。また、本実施の形態では、各々の携帯端末に対して捜索用信号の発信オン/オフを指定することが可能であるため、捜索状況によって捜索用信号の発信停止を行うことが可能となる。さらに、本実施の形態では、捜索用信号の発信周波数と発信タイミングと発信出力値を捜索状況に応じて変更することが可能となる。
【0042】
また、本実施の形態では、捜索用信号を間欠で発信することにより、携帯電話端末の省電力化が可能となり、長期間に渡って捜索用信号を発信することが可能になる。また、本実施の形態では、捜索用信号発信要求の受信と捜索用信号の発信とが携帯電話端末の本来の機能である着信・発信動作に影響を与えないことから、携帯電話端末の機能と本実施の形態の位置検出システムに関わる機能とを並列して機能させることが可能になる。
【0043】
[第3の実施の形態]
第1、第2の実施の形態では、位置検出システムを携帯電話端末公衆網のエリアに適用したが、これに限るものではなく、携帯電話端末公衆網以外のエリア(圏外エリア)においても、移動基地局を使用することによって本発明の位置検出システムを用いた被災者の捜索を行うことが可能になる。
【0044】
また、幼稚園/小学校などの遠足等の行事において、各生徒が持つ携帯電話端末から発信する捜索用信号を常にモニターすることができる機器を教師や保護者等の引率者が携行することにより、このモニター装置から一定の距離以上生徒が離れた場合にモニター装置を携行している引率者に注意を促すことが可能になる。
【0045】
また、第2の実施の形態では、携帯電話端末の間欠発信のタイミングを捜索用信号の発信の基準タイミングとしたが、これに限るものではなく、電波時計等を用いることにより基準タイミングを得るようにしてもよい。
また、本発明は、携帯電話端末の間欠受信時のみでの使用を限定するものでは無く、例えば無線基地局との通信中のような連続受信時においても同様の効果を得ることが可能である。
【0046】
なお、第1〜第3の実施の形態において無線交換局1、無線基地局2、携帯電話端末3、モニター装置4は、それぞれCPU、記憶装置、表示装置およびインタフェースを備えたコンピュータとこれらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。これらのコンピュータのCPUは、それぞれ記憶装置に格納されたプログラムに従って第1〜第3の実施の形態で説明した機能を実現する。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、災害時等において人が所持している携帯端末の位置を特定するための技術に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る位置検出システムを説明する図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る位置検出システムを説明する図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る無線交換局の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る無線基地局の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る携帯電話端末の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態において被災者を捜索するときの位置検出システムの動作を示すシーケンス図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態において被災者を捜索するときの位置検出システムの動作を示すシーケンス図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態において捜索者が使用するモニター装置の構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態における捜索用信号の発信動作を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0049】
1…無線交換局、2…無線基地局、3−1〜3−3…携帯電話端末、4…モニター装置、11…救出要否確認部、12…捜索用信号設定部、13…救出リスト作成部、14…通信部、21…救出要否確認部、22…捜索用信号発信要求部、23…捜索用信号受信部、24…無線部、25…アンテナ、26…通信部、31…記憶部、32…無線部、33…アンテナ、34…捜索用信号発信部、35…CPU、36…タイマー部、37…表示部、38…操作部、39…CPUバス、31−1…間欠受信タイミング情報、31−2…捜索用信号発信タイミング情報、31−3…捜索用信号発信周波数情報、31−4…捜索用信号発信出力値情報、41…発信周波数検出部、42…発信タイミング検出部、43…発信出力検出部、44…無線部、45…アンテナ、46…表示部、47…CPU。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
捜索用信号の発信周波数と発信タイミングのうち少なくとも1つを指定する捜索用信号設定情報を携帯端末毎に生成する捜索用信号設定手段と、
前記捜索用信号設定情報を設定先の携帯端末に送信して捜索用信号の発信を要求する捜索用信号発信要求手段と、
この捜索用信号発信要求手段から送信された要求を受信する携帯端末に設けられ、前記捜索用信号設定情報で指定された発信周波数と発信タイミングとで捜索用信号を発信する捜索用信号発信手段とを備えることを特徴とする位置検出システム。
【請求項2】
請求項1記載の位置検出システムにおいて、
前記捜索用信号設定手段は、さらに前記捜索用信号設定情報によって捜索用信号の発信出力値を携帯端末毎に指定し、
前記捜索用信号発信手段は、前記捜索用信号設定情報で指定された発信出力値で前記捜索用信号を発信することを特徴とする位置検出システム。
【請求項3】
請求項1または2記載の位置検出システムにおいて、
前記捜索用信号設定手段は、前記捜索用信号の発信タイミングを指定する場合に、前記携帯端末の間欠受信のタイミングを基準タイミングとして、前記捜索用信号の発信タイミングを指定し、
前記捜索用信号発信手段は、前記間欠受信のタイミングを基準タイミングとして前記捜索用信号を間欠発信することを特徴とする位置検出システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の位置検出システムにおいて、
さらに、複数の携帯端末に対して捜索の要否を確認する要否確認手段を備え、
前記捜索用信号設定手段は、捜索要請のあった携帯端末について前記捜索用信号設定情報を生成し、
前記捜索用信号発信要求手段は、生成された捜索用信号設定情報を設定先の携帯端末に送信することを特徴とする位置検出システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の位置検出システムにおいて、
さらに、携帯端末毎の前記捜索用信号設定情報のリストを作成するリスト作成手段を備えることを特徴とする位置検出システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の位置検出システムにおいて、
さらに、前記携帯端末から発信される捜索用信号を受信するモニター装置を備えることを特徴とする位置検出システム。
【請求項7】
位置検出システムで用いる携帯端末であって、
捜索用信号の発信要求を受信する受信手段と、
捜索用信号の発信周波数と発信タイミングのうち少なくとも1つを指定する捜索用信号設定情報を前記発信要求から取り出して、この捜索用信号設定情報で指定された発信周波数と発信タイミングとで捜索用信号を発信する捜索用信号発信手段とを備えることを特徴とする携帯端末。
【請求項8】
請求項7記載の携帯端末において、
前記捜索用信号発信手段は、前記捜索用信号設定情報で発信出力値が指定される場合に、指定された発信出力値で前記捜索用信号を発信することを特徴とする携帯端末。
【請求項9】
請求項7または8記載の位置検出システムにおいて、
前記捜索用信号発信手段は、前記捜索用信号設定情報によって携帯端末の間欠受信のタイミングを基準タイミングとして前記発信タイミングが指定される場合に、前記間欠受信のタイミングを基準タイミングとして前記捜索用信号を間欠発信することを特徴とする携帯端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−98422(P2010−98422A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−266175(P2008−266175)
【出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】