説明

位置検出システム

【課題】IDを読み取る際にIDタグリーダの直線偏波アンテナの偏波面を各々のIDタグの直線偏波アンテナの偏波面に合わせることで、IDタグリーダの位置をさらに高精度に検出することができる位置検出システムを提供することを課題とする。
【解決手段】本発明にかかる位置検出システム1は、直線偏波アンテナ10aを有するIDタグ10から発信されたIDを直線偏波アンテナ20aを有するIDタグリーダ20で読み取り、読み取られたIDに基づいて当該IDタグリーダ20の位置を位置検出装置30で検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直線偏波アンテナを有するIDタグから発信されたIDを直線偏波アンテナを有するIDタグリーダで読み取り、読み取られたIDに基づいて当該IDタグリーダの位置を位置検出装置で検出する位置検出システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
屋外で自己位置を検出する場合には、GPS(Global Positioning System)などの手段が使われている。そして現在では、GPSなどの手段により、自動車のみならず歩行者のナビゲーションもできるまでになってきている。しかし、リアルタイム(数秒ごと)に自己位置を検出する場合では、汎用のものでは数メートルから数十メートルの範囲で検出誤差があり、リアルタイムに数センチメートルの分解能で自己位置の検出を行うことは困難であった。
【0003】
また、屋内などのGPS電波が届かない空間で自己位置を検出する場合には、1.磁気変換技術を応用する方法、2.超音波ビーコンを利用する方法、3.PHS(Personal Handy−phone System)および携帯電話の親局を利用する方法、4.数十センチメートルから数メートルの通信距離を持つIDタグを利用する方法、などが使われている。しかし、1.の方法では磁場の乱れに弱く、また、2.の方法では壁などの音の遮蔽や反射に弱い、という問題があった。そして、3.の方法では数センチメートル精度の安定した位置検出が困難であり、4の方法では、複数の無線IDタグの送信電波干渉の問題があり、無線IDタグが数十センチメートルから数メートルの間隔で配置されているため、無線IDタグだけでは数センチメートル単位の位置検出精度を期待することが出来ない、という問題があった。ここで、これら問題を解決した技術として、特許文献1に記載の技術が挙げられる。特許文献1には、電磁誘導方式のIDタグを所定の範囲に高密度に配置し、アンチコリジョン技術を用いて複数のIDタグのIDをIDリーダにより読み取ることで自己位置を検出する非接触型位置測定方法および非接触型位置測定システムに関する技術が開示されている。これにより、リアルタイムに数センチメートルの分解能で自己位置の検出を行うことが可能になった。
【0004】
【特許文献1】特開2001−183455号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、直線偏波アンテナの場合、アンテナの偏波面に方向特性があるため、特許文献1に記載の技術では、IDタグとIDタグリーダとの位置関係によってはアンテナの偏波面が合わない場合があり、必ずしも充分な精度で自己位置を検出することができなかった、という問題点があった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、IDを読み取る際にIDタグリーダの直線偏波アンテナの偏波面を各々のIDタグの直線偏波アンテナの偏波面に合わせることで、IDタグリーダの位置をさらに高精度に検出することができる位置検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる請求項1に記載の位置検出システムは、直線偏波アンテナを有するIDタグから発信されたIDを直線偏波アンテナを有するIDタグリーダで読み取り、読み取られたIDに基づいて当該IDタグリーダの位置を位置検出装置で検出する位置検出システムにおいて、前記IDタグリーダは、IDを読み取る際に、当該IDタグリーダの前記直線偏波アンテナの偏波面であるIDタグリーダ偏波面を各々のIDタグの直線偏波アンテナの偏波面に合わせるように前記IDタグリーダ偏波面を所定の回転角度範囲で回転させることを特徴とする。
【0008】
また、本発明にかかる請求項2に記載の位置検出システムは、請求項1に記載の位置検出システムにおいて、前記位置検出装置は、前記IDタグリーダで読み取ったIDに対応するIDタグの位置座標を、各々のIDタグのIDと位置座標とを対応付けて記憶した位置対応表から取得するIDタグ位置取得手段と、前記IDタグ位置取得手段で取得したIDタグの位置座標に基づいて前記IDタグリーダの位置座標を決定するIDタグリーダ位置決定手段とを備え、前記IDタグリーダ位置決定手段は、前記IDタグ位置取得手段でIDタグの位置座標を複数取得した場合、取得した位置座標の平均座標を算出する平均座標算出手段をさらに備え、前記平均座標算出手段で算出された平均座標を前記IDタグリーダの位置座標として決定することを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる請求項3に記載の位置検出システムは、請求項2に記載の位置検出システムにおいて、前記IDタグリーダ位置決定手段は、前記所定の回転角度範囲のうちIDを読み取ることが可能な回転角度範囲に基づいて、前記IDタグ位置取得手段で取得したIDタグの位置座標に対して重み付けをする位置座標重み付け手段をさらに備え、前記平均座標算出手段は、前記位置座標重み付け手段で重み付けされた位置座標の平均座標を算出することを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる請求項4に記載の位置検出システムは、請求項1〜3のいずれか1つに記載の位置検出システムにおいて、前記位置検出装置は、前記IDタグリーダ偏波面の回転角度に基づいて前記IDタグリーダの方向を決定するIDタグリーダ方向決定手段をさらに備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる請求項5に記載の位置検出システムは、請求項4に記載の位置検出システムにおいて、前記位置検出装置は、前記IDタグリーダ方向決定手段で決定した方向が複数存在した場合、当該位置検出装置で決定した、前記IDタグリーダの位置座標および当該位置座標の相対的な位置座標に基づいて、方向を一意に特定するIDタグリーダ方向特定手段をさらに備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる請求項1に記載の位置検出システムは、直線偏波アンテナを有するIDタグから発信されたIDを直線偏波アンテナを有するIDタグリーダで読み取り、読み取られたIDに基づいて当該IDタグリーダの位置を位置検出装置で検出する。そして、IDタグリーダは、IDを読み取る際に、当該IDタグリーダの直線偏波アンテナの偏波面であるIDタグリーダ偏波面を各々のIDタグの直線偏波アンテナの偏波面に合わせるようにIDタグリーダ偏波面を所定の回転角度範囲で回転させる。これにより、IDタグリーダの位置をさらに高精度に検出することができるという効果を奏する。
【0013】
また、本発明にかかる請求項2に記載の位置検出システムにおいて、位置検出装置は、IDタグリーダで読み取ったIDに対応するIDタグの位置座標を、各々のIDタグのIDと位置座標とを対応付けて記憶した位置対応表からIDタグ位置取得手段で取得し、取得したIDタグの位置座標に基づいてIDタグリーダの位置座標をIDタグリーダ位置決定手段で決定する。そして、IDタグリーダ位置決定手段は、IDタグ位置取得手段でIDタグの位置座標を複数取得した場合、取得した位置座標の平均座標を平均座標算出手段で算出し、平均座標算出手段で算出された平均座標をIDタグリーダの位置座標として決定する。これにより、IDタグ位置取得手段でIDタグの位置座標を複数取得した場合においても、IDタグリーダの位置座標を容易かつ適切に決定することができるという効果を奏する。
【0014】
また、本発明にかかる請求項3に記載の位置検出システムにおいて、IDタグリーダ位置決定手段は、所定の回転角度範囲のうちIDを読み取ることが可能な回転角度範囲(読取可能角度範囲)に基づいて、IDタグ位置取得手段で取得したIDタグの位置座標に対して位置座標重み付け手段で重み付けをする。そして、平均座標算出手段は、位置座標重み付け手段で重み付けされた位置座標の平均座標を算出する。例えば、読取可能角度範囲が大きいIDタグの位置座標に対する重みは大きくし、読取可能角度範囲が小さいIDタグの位置座標に対する重みは小さくして、重み付けした位置座標の平均を算出してもよい。これにより、IDタグリーダの直線偏波アンテナとIDタグとの距離が遠くなると読取可能角度範囲(IDタグを検出することができる検出角度範囲)が小さくなることを利用して、IDタグリーダの位置をより精度良く検出することができるという効果を奏する。
【0015】
また、本発明にかかる請求項4に記載の位置検出システムにおいて、位置検出装置は、IDタグリーダ方向決定手段で、IDタグリーダ偏波面の回転角度に基づいてIDタグリーダの方向を決定する。これにより、偏波面の方向特性を利用してIDタグリーダの方向を検出することができるという効果を奏する。
【0016】
また、本発明にかかる請求項5に記載の位置検出システムにおいて、位置検出装置は、IDタグリーダ方向決定手段で決定した方向が複数存在した場合、IDタグリーダ方向特定手段で、当該位置検出装置で決定した、IDタグリーダの位置座標および当該位置座標の相対的な位置座標に基づいて、方向を一意に特定する。これにより、偏波面が180°位相の異なるところに検出角度範囲を持つことにより、IDタグリーダ方向決定手段で決定した方向が複数存在する場合であっても、IDタグリーダの方向を一意に特定することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明にかかる位置検出システムの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0018】
まず、本実施例の位置検出システム1の全体構成について、図1を参照して説明する。図1は、位置検出システム1の全体構成((A):床面に対し垂直な方向から観た場合、(B):床面に対し水平な方向から観た場合)の一例を示す図である。位置検出システム1は、直線偏波アンテナ10aを有しIDを発信する複数のIDタグ10と、直線偏波アンテナ20aを有しIDタグ10が発信したIDを読み取るIDタグリーダ20と、IDタグリーダ20と有線または無線で接続されIDタグリーダ20が読み取ったIDに基づいてIDタグリーダ20の位置を検出する位置検出装置30とで構成される。
【0019】
IDタグ10は、当該IDタグ10の直線偏波アンテナ10aの偏波面(IDタグ偏波面)が一定の方向になるように、等間隔に床に配置されている。なお、配置するIDタグ10の間隔は、IDタグリーダ20が、直線偏波アンテナ20aの偏波面(IDタグリーダ偏波面)をIDタグ10のIDタグ偏波面に合わせてIDを読み取った場合に、少なくとも1つ以上のIDを検出できる間隔である。
【0020】
IDタグリーダ20は、IDを読み取る際に、当該IDタグリーダ20のIDタグリーダ偏波面を各々のIDタグ10のIDタグ偏波面に合わせるように、IDタグリーダ偏波面を所定の回転角度範囲で物理的または電気回路的に回転させる。すなわち、IDタグリーダ20は、当該IDタグリーダ20の直線偏波アンテナ20aの偏波面を手動または自動で回転させる。なお、本実施例においては、IDタグリーダ20は、IDタグリーダ偏波面を床に鉛直な軸まわりに180°回転させる。
【0021】
位置検出装置30は、IDタグリーダ20が読み取ったIDに基づいて当該IDタグリーダ20の位置を検出する。ここで、位置検出装置30の内部構成について、図2を参照して説明する。図2は、位置検出システム1に含まれる位置検出装置30の内部構成を主に示すブロック図である。位置検出装置30は、当該位置検出装置30の全体を統括的に制御するCPU等の制御部32と、各種のデータベースやテーブルやファイルなどを格納する記憶部34と、IDタグリーダ20と通信可能に接続する通信インターフェース部36とを備えて構成されており、これら各部はバスを介して接続されている。なお、位置検出装置30は、ルータ等の通信装置および専用線等の有線または無線の通信回線を介して、ネットワークに通信可能に接続してもよい。
【0022】
制御部32は、図示の如く、大別して、IDタグ位置取得部32aと、IDタグリーダ位置決定部32bと、IDタグリーダ方向決定部32eと、IDタグリーダ方向特定部32fとを備えている。なお、制御部32は、OS(Operating System)等の制御プログラム、各種の処理手順等を規定したプログラムおよび所要データを格納するための内部メモリを有し、これらのプログラムに基づいて種々の処理を実行するための情報処理を行う。ここで、IDタグ位置取得部32aは、IDタグリーダ20で読み取ったIDに対応するIDタグ10の位置座標を、各々のIDタグ10のIDと位置座標とを対応付けて記憶した後述する位置対応表データベース34bから取得する。IDタグリーダ位置決定部32bは、IDタグ位置取得部32aで取得したIDタグ10の位置座標に基づいてIDタグリーダ20の位置座標を決定する。なお、IDタグリーダ位置決定部32bは、平均座標算出部32cと、位置座標重み付け部32dとをさらに備えている。平均座標算出部32cは、IDタグ位置取得部32aでIDタグ10の位置座標を複数取得した場合、取得した位置座標の平均座標を算出する。位置座標重み付け部32dは、所定の回転角度範囲のうちIDを読み取ることが可能な回転角度範囲(読取可能角度範囲)に基づいて、IDタグ位置取得部32aで取得したIDタグ10の位置座標に対して重み付けをする。IDタグリーダ方向決定部32eは、IDタグリーダ偏波面の回転角度に基づいてIDタグリーダ20の方向(例えば角度や方向ベクトルなど)を決定する。IDタグリーダ方向特定部32fは、IDタグリーダ方向決定部32eで決定した方向が複数存在した場合、位置検出装置30で決定した、IDタグリーダ20の位置座標および当該位置座標の相対的な位置座標に基づいて、方向を一意に特定する。
【0023】
記憶部34は、IDタグ関連情報ファイル34aと、位置対応表データベース34bと、IDタグリーダ関連情報ファイル34cとを格納している。なお、記憶部34は、ストレージ手段であり、例えば、RAM、ROM等のメモリ装置や、ハードディスクのような固定ディスク装置や、フレキシブルディスクや、光ディスク等を用いることができる。ここで、IDタグ関連情報ファイル34aは、IDタグリーダ20で読み取ったIDタグ10のIDと、当該IDタグ10の位置座標とを相互に関連付けて格納する。位置対応表データベース34bは、床に配置されている各々のIDタグ10のIDと、当該IDタグ10の位置座標とを相互に関連付けて格納する。IDタグリーダ関連情報ファイル34cは、IDタグリーダ20の位置座標と、当該位置座標に対応する位置におけるIDタグリーダ20の方向(例えば角度や方向ベクトルなど)とを相互に関連付けて格納する。
【0024】
以上の構成において、本実施例における位置検出システム1で行われる位置検出処理および方向検出処理を、図3や図4などを参照して説明する。まず、本実施例における位置検出システム1で行われる位置検出処理について、図3などを参照して説明する。図3は、位置検出処理の一例を示すフローチャートである。
【0025】
まず、制御部32で、通信インターフェース部36を介してIDタグリーダ20が読み取ったIDを取得し、取得したIDをIDタグ関連情報ファイル34aの所定の記憶領域に格納する。ついで、IDタグ位置取得部32aで、取得したIDに対応するIDタグ10の位置座標を位置対応表データベース34bから取得(検索)し、取得した位置座標を、対応するIDタグ10のIDと関連付けてIDタグ関連情報ファイル34aの所定の記憶領域に格納する(ステップSA−1)。
【0026】
ついで、IDタグ位置取得部32aでIDタグの位置座標を複数取得した場合(ステップSA−2:Yes)、平均座標算出部32cで、ステップSA−1で取得した位置座標の平均座標を算出する(ステップSA−3)。ここで、ステップSA−3において、まず位置座標重み付け部32dで、ステップSA−1で取得したIDタグ10の位置座標に対して読取可能角度範囲に基づいて重み付けをしてから、平均座標算出部32cで、位置座標重み付け部32dで重み付けした位置座標の平均座標を算出してもよい。具体的には、読取可能角度範囲が大きいIDタグ10の位置座標に対する重みは大きくし、読取可能角度範囲が小さいIDタグの位置座標に対する重みは小さくして、重み付けした位置座標の平均を算出してもよい。ここで、読取可能角度範囲とは、IDタグ10が応答し始める角度をΦ1としIDタグ10が応答しなくなる角度をΦ2とした時、図5(B)に示すように、Φ1からΦ2までの角度範囲(図5(B)における検出角度範囲)のことである。また、読取可能角度範囲は、IDタグリーダ20のIDタグリーダ偏波面の回転角度を制御部32で検出することにより得られた情報である。
【0027】
再び図3に戻り、IDタグリーダ位置決定部32bで、ステップSA−3で算出された平均座標をIDタグリーダ20の位置座標として決定し、IDタグリーダ関連情報ファイル34cの所定の記憶領域に格納する(ステップSA−4)。これにより、IDタグリーダ20の位置が検出された。以上、位置検出処理の説明を終了する。
【0028】
つぎに、本実施例における位置検出システム1で行われる方向検出処理について、図4などを参照して説明する。図4は、方向検出処理の一例を示すフローチャートである。
【0029】
まず、IDタグリーダ方向決定部32eで、IDタグリーダ偏波面の回転角度に基づいてIDタグリーダ20の方向を決定する(ステップSB−1)。具体的には、図5に示すように、各々のIDタグ10に対して制御部32で検出した、IDタグ10が応答し始める角度Φ1とIDタグ10が応答しなくなる角度Φ2とから、読み取った全てのIDタグ10に対してその中間の角度Φ3(Φ3=(Φ1+Φ2)÷2)を算出して、角度Φ3の平均値を算出し、当該平均値をIDタグリーダ20の方向として決定する。
【0030】
再び図4に戻り、IDタグリーダ方向決定部32eで決定した方向が複数(具体的には2つ)存在した場合(ステップSB−2:Yes)、IDタグリーダ方向特定部32fで、IDタグリーダ20の位置座標および当該位置座標の相対的な位置座標に基づいて、方向を一意に特定する(ステップSB−3)。ここで、偏波面は180°位相の異なるところに検出角度範囲(読取可能角度範囲)を持つため、位置検出装置30ではIDタグリーダ20の方向に関して「Φ3」か「Φ3+180°」かの2つの場合についての区別がつかない(図5(B)参照)。よって、予め大まかに(180°以下の精度で)IDリーダ20の方向がわかっている場合はどちらかを特定することができるが、わかっていない場合は180°異なる2つの方向を特定することが出来ない。そこで、相対的位置関係が既知の複数の地点で位置と方向の検出を行い、各地点で検出した位置と各地点の相対的な位置の関係から方向を一意に決める。具体的には、図6に示すように、IDタグリーダ20の向きを変えずに位置を動かして(図6に示すように、推定位置1から推定位置2まで動かして)、2つの地点で位置と方向の検出を行う。そして、検出された2つの位置からIDタグリーダ20の大まかな向きを求め、2つの異なる方向のうち1つを特定する。これにより、IDタグリーダ20の方向が一意に検出された。以上、方向検出処理の説明を終了する。
【0031】
以上説明したように、本実施例における位置検出システム1は、直線偏波アンテナ10aを有するIDタグ10から発信されたIDを直線偏波アンテナ20aを有するIDタグリーダ20で読み取り、読み取られたIDに基づいて当該IDタグリーダ20の位置を位置検出装置30で検出するシステムであり、IDタグリーダ20は、IDを読み取る際に、当該IDタグリーダ20の直線偏波アンテナ20aの偏波面であるIDタグリーダ偏波面を各々のIDタグ10の直線偏波アンテナ10aの偏波面に合わせるように、IDタグリーダ偏波面を所定の回転角度範囲で回転させる。これにより、IDタグリーダ20の位置をさらに高精度に検出することができる。
【0032】
また、本実施例における位置検出システム1において、位置検出装置30は、IDタグリーダ20で読み取ったIDに対応するIDタグ10の位置座標を、各々のIDタグ10のIDと位置座標とを対応付けて記憶した位置対応表データベース34bからIDタグ位置取得部32aで取得し、取得したIDタグ10の位置座標に基づいてIDタグリーダ20の位置座標をIDタグリーダ位置決定部32bで決定する。そして、IDタグ位置取得部32aでIDタグ10の位置座標を複数取得した場合、IDタグリーダ位置決定部32bは、取得した位置座標の平均座標を平均座標算出部32cで算出し、算出された平均座標をIDタグリーダの位置座標として決定する。これにより、IDタグリーダ20の位置座標を容易かつ適切に決定することができる。
【0033】
また、本実施例における位置検出システム1において、IDタグリーダ位置決定部32bは、所定の回転角度範囲のうちIDを読み取ることが可能な回転角度範囲(読取可能角度範囲)に基づいて、IDタグ位置取得部32aで取得したIDタグ10の位置座標に対して位置座標重み付け部32dで重み付けをし、重み付けされた位置座標の平均座標を平均座標算出部32cで算出し、算出された平均座標をIDタグリーダの位置座標として決定する。これにより、IDタグリーダ20の直線偏波アンテナ20aとIDタグ10との距離が遠くなると読取可能角度範囲(IDタグ10を検出することができる検出角度範囲)が小さくなることを利用して、IDタグリーダ20の位置をより精度良く検出することができる。
【0034】
また、本実施例における位置検出システム1において、位置検出装置30は、IDタグリーダ方向決定部32eで、IDタグリーダ偏波面の回転角度に基づいてIDタグリーダ20の方向を決定する。これにより、偏波面の方向特性を利用してIDタグリーダ20の方向を検出することができる。ここで、偏波面は180°位相の異なるところに検出角度範囲(読取可能角度範囲)を持つため、位置検出装置30において、IDタグリーダ20の方向に関し、角度「A°」と角度「A°+180°」との2つの場合について区別がつかない。そのため、予め大まかに(180°以下の精度で)IDタグリーダ20の方向がわかっていれば、IDタグリーダ方向決定部32eでどちらかを特定することができる。
【0035】
また、本実施例における位置検出システム1において、位置検出装置30は、IDタグリーダ方向決定部32eで決定した方向が複数存在した場合、IDタグリーダ方向特定部32fで、当該位置検出装置30で決定した、IDタグリーダ20の位置座標および当該位置座標の相対的な位置座標に基づいて、方向を一意に特定する。これにより、偏波面が180°位相の異なるところに検出角度範囲を持つことによりIDタグリーダ方向決定部32eで決定した方向が具体的には2つ存在する場合であっても、IDタグリーダ20の方向を一意に特定することができる。また、予め大まかにIDタグリーダ20の方向がわかっていなくても、IDタグリーダ20の方向を一意に特定することができる。
【0036】
また、本実施例における位置検出システム1は、視力障害者などが建物内で自己位置を知るために利用することができる。また、本実施例における位置検出システム1を利用することで、GPS電波の届かないエリアでも利用できるナビゲーションシステムを構築することができる。また、移動する機械に、本実施例における位置検出システム1のIDタグリーダ20を装着することで当該機械はエリア内を自律的に移動することが可能になり、自動搬送台車や自動移動型掃除機などへ本システムを利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上のように、本発明にかかる位置検出システムは、屋内などのGPS電波が届かない空間での位置検出に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】位置検出システム1の全体構成の一例を示す図である。
【図2】位置検出システム1に含まれる位置検出装置30の内部構成を主に示すブロック図である。
【図3】位置検出処理の一例を示すフローチャートである。
【図4】方向検出処理の一例を示すフローチャートである。
【図5】読取可能角度範囲(検出角度範囲)を模式的に示す図である。
【図6】IDタグリーダ20の方向を特定する手法の一例を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0039】
1 位置検出システム
10 IDタグ
10a 直線偏波アンテナ
20 IDタグリーダ
20a 直線偏波アンテナ
30 位置検出装置
32 制御部
32a IDタグ位置取得部
32b IDタグリーダ位置決定部
32c 平均座標算出部
32d 位置座標重み付け部
32e IDタグリーダ方向決定部
32f IDタグリーダ方向特定部
34 記憶部
36 通信インターフェース部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線偏波アンテナを有するIDタグから発信されたIDを直線偏波アンテナを有するIDタグリーダで読み取り、読み取られたIDに基づいて当該IDタグリーダの位置を位置検出装置で検出する位置検出システムにおいて、
前記IDタグリーダは、IDを読み取る際に、当該IDタグリーダの前記直線偏波アンテナの偏波面であるIDタグリーダ偏波面を各々のIDタグの直線偏波アンテナの偏波面に合わせるように前記IDタグリーダ偏波面を所定の回転角度範囲で回転させること
を特徴とする位置検出システム。
【請求項2】
前記位置検出装置は、
前記IDタグリーダで読み取ったIDに対応するIDタグの位置座標を、各々のIDタグのIDと位置座標とを対応付けて記憶した位置対応表から取得するIDタグ位置取得手段と、
前記IDタグ位置取得手段で取得したIDタグの位置座標に基づいて前記IDタグリーダの位置座標を決定するIDタグリーダ位置決定手段と
を備え、
前記IDタグリーダ位置決定手段は、
前記IDタグ位置取得手段でIDタグの位置座標を複数取得した場合、取得した位置座標の平均座標を算出する平均座標算出手段
をさらに備え、
前記平均座標算出手段で算出された平均座標を前記IDタグリーダの位置座標として決定すること
を特徴とする請求項1に記載の位置検出システム。
【請求項3】
前記IDタグリーダ位置決定手段は、
前記所定の回転角度範囲のうちIDを読み取ることが可能な回転角度範囲に基づいて、前記IDタグ位置取得手段で取得したIDタグの位置座標に対して重み付けをする位置座標重み付け手段
をさらに備え、
前記平均座標算出手段は、前記位置座標重み付け手段で重み付けされた位置座標の平均座標を算出すること
を特徴とする請求項2に記載の位置検出システム。
【請求項4】
前記位置検出装置は、
前記IDタグリーダ偏波面の回転角度に基づいて前記IDタグリーダの方向を決定するIDタグリーダ方向決定手段
をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の位置検出システム。
【請求項5】
前記位置検出装置は、
前記IDタグリーダ方向決定手段で決定した方向が複数存在した場合、当該位置検出装置で決定した、前記IDタグリーダの位置座標および当該位置座標の相対的な位置座標に基づいて、方向を一意に特定するIDタグリーダ方向特定手段
をさらに備えたことを特徴とする請求項4に記載の位置検出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−105696(P2006−105696A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−290653(P2004−290653)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】