説明

位置検出装置、位置検出方法、露光装置、露光方法およびデバイス製造方法

【課題】反射面を通過した光束に発生する偏光成分による相対的な位置ずれなどの影響を実質的に受けることなく、被検面の面位置を高精度に検出することのできる面位置検出装置。
【解決手段】投射系は、第1反射面7b,7cを有する投射側プリズム部材7を備えている。受光系は、投射側プリズム部材に対応するように配置された第2反射面8b,8cを有する受光側プリズム部材8を備えている。第1反射面および第2反射面を通過した光束の偏光成分による相対的な位置ずれを補償するための位置ずれ補償部材をさらに備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面位置検出装置、露光装置、および露光方法に関する。特に、本発明は、半導体素子、液晶表示素子、撮像素子、薄膜磁気ヘッドなどのデバイスを製造するためのリソグラフィ工程でマスクパターンを感光性基板上に転写するのに使用される投影露光装置における感光性基板の面位置の検出に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、投影露光装置に好適な面位置検出装置として、本出願人による特開2001−296105号公報およびそれに対応する米国特許第6,897,462号公報(特許文献1)に開示された斜め入射型の面位置検出装置が知られている。このような斜め入射型の面位置検出装置において被検面の面位置の検出精度を原理的に高めるためには、被検面への光束の入射角を大きくする(90°に近づける)ことが必要である。この場合、斜め入射型の面位置検出装置の投射光学系および集光光学系の構成および配置について被検面の制約を回避するために、投射光学系の光路および集光光学系の光路中に、互いに平行な一対の内面反射面を有するプリズムをそれぞれ配置して、投射光学系および集光光学系を被検面から遠ざけることが提案されている(特許文献1の図7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−296105号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1の図7に開示された従来の面位置検出装置では、投射側ひし形プリズムの互いに平行な2つの内面反射面で全反射された光束に偏光成分による相対的な位置ずれが発生し、鮮明なパターン像が被検面上に形成されない可能性がある。同様に、被検面から反射されて受光側ひし形プリズムの互いに平行な2つの内面反射面で全反射された光束にも偏光成分による相対的な位置ずれが発生し、パターン二次像がさらに不鮮明になる可能性がある。
【0005】
一方、露光装置において表面にレジストが塗布されたウェハ(感光性基板)の面位置の検出に対して従来の面位置検出装置を適用する場合、特定の偏光成分の光に対する反射率がレジスト層の厚さに依存して変化することが知られている。その結果、従来の面位置検出装置では、ひし形プリズムの内面反射面を通過した光束に発生する偏光成分による相対的な位置ずれと、感光性基板のレジスト層の厚さによる反射率の変化とに起因して、被検面の面位置の検出誤差が発生し易い。
【0006】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたものであり、反射面を通過した光束に発生する偏光成分による相対的な位置ずれなどの影響を実質的に受けることなく、被検面の面位置を高精度に検出することのできる面位置検出装置を提供することを目的とする。また、本発明は、被検面の面位置を高精度に検出することのできる面位置検出装置を用いて、マスクのパターン面と感光性基板の被露光面とを投影光学系に対して高精度に位置合わせすることのできる露光装置および露光方法ならびにデバイス製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の第1形態では、被検面上に斜め方向から光束を投射する投射系と、前記被検面で反射された光束を受光する受光系とを備え、該受光系の出力に基づいて前記被検面の面位置を検出する面位置検出装置において、
前記投射系は、第1反射面を備え、
前記受光系は、第2反射面を備え、
前記投射系の前記第1反射面および前記受光系の前記第2反射面を通過した光束の偏光成分による相対的な位置ずれを補償するための位置ずれ補償部材をさらに備えていることを特徴とする面位置検出装置を提供する。
【0008】
本発明の第2形態では、被検面上に斜め方向から光束を投射する投射系と、前記被検面で反射された光束を受光する受光系とを備え、該受光系の出力に基づいて前記被検面の面位置を検出する面位置検出装置において、
前記投射系と前記受光系との少なくとも一方は、反射面を備え、
前記反射面を通過した光束の偏光成分による相対的な位置ずれを補償するための位置ずれ補償部材をさらに備えていることを特徴とする面位置検出装置を提供する。
【0009】
本発明の第3形態では、被検面上に斜め方向から光束を投射する投射系と、前記被検面で反射された光束を受光する受光系とを備え、該受光系の出力に基づいて前記被検面の面位置を検出する面位置検出装置において、
前記投射系は、第1反射面と、該第1反射面の射出側に配置された投射側偏光解消素子とを備え、
前記受光系は、前記第1反射面に対応するように配置された第2反射面と、該第2反射面の入射側に配置された受光側偏光解消素子とを備えていることを特徴とする面位置検出装置を提供する。
【0010】
本発明の第4形態では、投影光学系を介して所定のパターンを感光性基板上へ投影露光する露光装置において、
前記所定のパターン面または前記感光性基板の被露光面の前記投影光学系に対する面位置を、前記被検面の面位置として検出するための第1形態乃至第3形態のいずれかの面位置検出装置と、
前記面位置検出装置の検出結果に基づいて、前記所定のパターン面または前記感光性基板の被露光面を前記投影光学系に対して位置合わせするための位置合わせ手段とを備えていることを特徴とする露光装置を提供する。
【0011】
本発明の第5形態では、投影光学系を介して所定のパターンを感光性基板上へ投影露光する露光方法において、
第1形態乃至第3形態のいずれかの面位置検出装置を用いて、前記所定のパターン面または前記感光性基板の被露光面の前記投影光学系に対する面位置を、前記被検面の面位置として検出する検出工程と、
前記検出工程での検出結果に基づいて、前記所定のパターン面または前記感光性基板の被露光面を前記投影光学系に対して位置合わせする位置合わせ工程とを含むことを特徴とする露光方法を提供する。
【0012】
本発明の第6形態では、投影光学系を介して所定パターンを感光性基板上に投影露光する露光工程と、
第1形態乃至第3形態のいずれかの面位置検出装置を用いて、前記所定のパターン面または前記感光性基板の被露光面の前記投影光学系に対する面位置を、前記被検面の面位置として検出する検出工程と、
前記検出工程での検出結果に基づいて、前記所定のパターン面または前記感光性基板の被露光面を前記投影光学系に対して位置合わせする位置合わせ工程と、
前記露光工程を経た前記感光性基板を現像する現像工程とを含むことを特徴とするデバイス製造方法を提供する。
【0013】
本発明の第7形態では、被検面上に斜め方向から光束を投射する投射系と、前記被検面で反射された光束を受光する受光系とを備え、該受光系の出力に基づいて前記被検面の面位置を検出する面位置検出装置の製造方法において、
投射系中に配置される第1反射面を準備する工程と、
受光系中に配置される第2反射面を準備する工程と、
前記投射系の前記第1反射面および前記受光系の前記第2反射面を通過した光束の偏光成分による相対的な位置ずれを補償する工程とを備えていることを特徴とする面位置検出装置の製造方法を提供する。
【0014】
本発明の第8形態では、第1反射面を介して被検面上に斜め方向から光束を投射する投射系と、前記被検面で反射された光束を第2反射面を介して受光する受光系とを備え、該受光系の出力に基づいて前記被検面の面位置を検出する面位置検出装置の調整方法において、
入射光束の偏光成分に応じて異なる特性の射出光束を生成する偏光部材を準備する工程と、
該偏光部材を用いて、前記投射系の前記第1反射面および前記受光系の前記第2反射面を通過した光束の偏光成分による相対的な位置ずれを補償する工程とを備えていることを特徴とする面位置検出装置の調整方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の典型的な形態にしたがう面位置検出装置では、投射系および受光系のうちの少なくとも一方の反射面を通過した光束の偏光成分による相対的な位置ずれを補償するための位置ずれ補償部材として、投射系の瞳空間または受光系の瞳空間に配置されて入射光線の偏光方向により射出光線の進行方向を異なる角度だけ傾ける補償素子、あるいは投射系の物体空間または像空間もしくは受光系の物体空間または像空間に配置されて入射光線の偏光方向により射出光線の進行方向を異なる距離だけ平行移動させる補償素子を備えている。この補償素子の作用により、反射面を通過した光束に発生する偏光成分による相対的な位置ずれなどの影響を実質的に受けることなく、被検面の面位置を高精度に検出することができる。
【0016】
また、本発明の別の典型的な形態にしたがう面位置検出装置では、投射系中の反射面および受光系中の反射面を通過した光束の偏光成分による相対的な位置ずれによる影響を低減させるための偏光解消素子(デポラライザー)を備えている。この偏光解消素子の作用により、反射面を通過した光束に発生する偏光成分による相対的な位置ずれなどの影響を実質的に受けることなく、被検面の面位置を高精度に検出することができる。
【0017】
したがって、露光装置において投影光学系に対する感光性基板の面位置の検出に本発明の面位置検出装置を適用すると、反射面を通過した光束に発生する偏光成分による相対的な位置ずれなどの影響を実質的に受けることなく、被検面の面位置を高精度に検出することができ、ひいてはマスクのパターン面と感光性基板の被露光面とを投影光学系に対して高精度に位置合わせすることができるので、良好なデバイスを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態にかかる面位置検出装置を備えた露光装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】図1の投射光学系および集光光学系がともに両側テレセントリックであることを示す光路図である。
【図3】本実施形態の面位置検出装置における一対のペンタプリズム間の構成を概略的に示す図である。
【図4】被検面Wa上に格子パターン3aの一次像が形成されている状態を示す斜視図である。
【図5】5つのX方向に細長く延びる矩形状の開口部Sa1〜Sa5を有する受光スリットSの構成を概略的に示す図である。
【図6】5つのシリコン・フォト・ダイオードPD1〜PD5が、受光スリットSの開口部Sa1〜Sa5に光学的に対応するように、受光部14の受光面14a上に設けられている様子を示す図である。
【図7】本実施形態の面位置検出装置に付設された位置ずれ補償部材の構成および作用を説明する図である。
【図8】本実施形態の第1変形例の要部構成および作用を説明する図である。
【図9】本実施形態の第2変形例の要部構成および作用を説明する図である。
【図10】本実施形態の第3変形例の要部構成および作用を説明する図である。
【図11】マイクロデバイスとしての半導体デバイスを得る際の手法のフローチャートである。
【図12】マイクロデバイスとしての液晶表示素子を得る際の手法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態を、添付図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態にかかる面位置検出装置を備えた露光装置の構成を概略的に示す図である。図2は、図1の投射光学系および集光光学系がともに両側テレセントリックであることを示す光路図である。図3は、本実施形態の面位置検出装置における一対のペンタプリズム間の構成を概略的に示す図である。
【0020】
図1および図2では、図面の明瞭化のために、一対のペンタプリズム6と9との間の構成の図示を省略している。図1において、投影光学系PLの光軸AXに平行にZ軸を、光軸AXに垂直な面内において図1の紙面に平行にY軸を、図1の紙面に垂直にX軸を設定している。本実施形態では、投影露光装置における感光性基板の面位置の検出に対して本発明の面位置検出装置を適用している。
【0021】
図示の露光装置は、露光用光源(不図示)から射出された照明光(露光光)で、所定のパターンが形成されたマスクとしてのレチクルRを照明するための照明系ILを備えている。レチクルRは、レチクルホルダRHを介して、レチクルステージ(不図示)上においてXY平面に平行に保持されている。レチクルステージは、図示を省略した駆動系の作用により、レチクル面(すなわちXY平面)に沿って二次元的に移動可能であり、その位置座標はレチクル干渉計(不図示)によって計測され且つ位置制御されるように構成されている。
【0022】
レチクルRに形成されたパターンからの光は、投影光学系PLを介して、感光性基板であるウェハWの表面(被露光面)Wa上にレチクルパターン像を形成する。ウェハWはウェハホルダ21上に載置され、ウェハホルダ21はホルダ保持機構22によって支持されている。ホルダ保持機構22は、ホルダ駆動部23の制御に基づいて、上下方向(Z方向)に移動可能な3つの支持点22a〜22c(図1では2つの支持点22aおよび22bだけを示す)によって、ウェハホルダ21を支持している。
【0023】
こうして、ホルダ駆動部23は、ホルダ保持機構22の各支持点22a〜22cの上下移動をそれぞれ制御することにより、ウェハホルダ21のレベリング(水平出し)およびZ方向(フォーカシング方向)移動を、ひいてはウェハWのレベリングおよびZ方向移動を行う。ウェハホルダ21およびホルダ保持機構22は、さらにウェハステージ(不図示)によって支持されている。ウェハステージは、図示を省略した駆動系の作用によりウェハ面(すなわちXY平面)に沿って二次元的に移動可能で且つZ軸廻りに回転可能であり、その位置座標はウェハ干渉計(不図示)によって計測され且つ位置制御されるように構成されている。
【0024】
ここで、レチクルRのパターン面上に設けられた回路パターンをウェハWの被露光面Waの各露光領域に良好に転写するには、各露光領域への露光毎に、投影光学系PLによる結像面を中心とした焦点深度の幅内に、被露光面Waの現在の露光領域を位置合わせする必要がある。そのためには、現在の露光領域における各点の面位置すなわち投影光学系PLの光軸AXに沿った面位置を正確に検出した後に、被露光面Waが投影光学系PLの焦点深度の幅の範囲内に収まるように、ウェハホルダ21のレベリングおよびZ方向の移動を、ひいてはウェハWのレベリングおよびZ方向の移動を行えば良い。
【0025】
そこで、本実施形態の投影露光装置は、被露光面Waの現在の露光領域における各点の面位置を検出するための面位置検出装置を備えている。図1を参照すると、本実施形態の面位置検出装置は、検出光を供給するための光源1を備えている。一般に、被検面であるウェハWの表面Waは、レジスト等の薄膜で覆われている。したがって、この薄膜による干渉の影響を低減するために、光源1は波長幅の広い白色光源(たとえば、波長幅が600〜900nmの照明光を供給するハロゲンランプや、これと同様の帯域の広い照明光を供給するキセノン光源など)であることが望ましい。なお、光源1として、レジストに対する感光性の弱い波長帯の光を供給する発光ダイオードを用いることもできる。
【0026】
光源1からの発散光束は、コンデンサーレンズ2を介して略平行光束に変換された後、偏向プリズム3に入射する。偏向プリズム3は、コンデンサーレンズ2からの略平行光束を、屈折作用により−Z方向に沿って偏向させる。また、偏向プリズム3の射出側には、X方向に延びる細長い透過部とX方向に延びる細長い遮光部とが一定のピッチで交互に設けられた透過型格子パターン3aが形成されている。なお、透過型格子パターンに代えて、凹凸形状の反射型回折格子を適用しても良いし、あるいは反射部と無反射部とが交互に形成された反射型格子パターンを適用しても良い。
【0027】
透過型格子パターン3aを透過した光は、投影光学系の光軸AXに平行な光軸AX1に沿って配置された投射光学系(4,5)に入射する。投射光学系(4,5)は、投射用集光レンズ4と投射用対物レンズ5とで構成されている。投射光学系(4,5)を介した光束は、ペンタプリズム6に入射する。ペンタプリズム6は、その長手方向軸線がX方向に沿って延びた五角柱状の偏向プリズムであり、光軸AX1に沿って入射した光を屈折させることなくそのまま透過させるための第1透過面6aを有する。すなわち、第1透過面6aは、光軸AX1に対して垂直に設定されている。
【0028】
第1透過面6aを透過してペンタプリズム6の内部を光軸AX1に沿って伝播した光は、第1反射面6bで反射された後、第2反射面6cで光軸AX2に沿って再び反射される。第2反射面6cで反射されてペンタプリズム6の内部を光軸AX2に沿って伝播した光は、第2透過面6dで屈折されることなくそのまま透過する。すなわち、第2透過面6dは、光軸AX2に対して垂直に設定されている。ここで、ペンタプリズム6は石英ガラスのような低熱膨張で且つ低分散の光学材料で形成され、第1反射面6bおよび第2反射面6cにはアルミニウムや銀などからなる反射膜が形成されている。
【0029】
こうして、光軸AX1に沿って−Z方向に入射した光は、ペンタプリズム6によって大きく偏向され、光軸AX2に沿って被検面Waへ導かれる。このとき、被検面Waへの入射角が十分大きくなるように、光軸AX2の方向が設定され、ひいてはペンタプリズム6による偏向角が設定されている。具体的には、図3に示すように、光軸AX2に沿ってペンタプリズム6から射出された光束は、投射側ひし形プリズム7に入射する。
【0030】
ひし形プリズム7は、ひし形断面を有する四角柱状のプリズムであって、その長手方向軸線がペンタプリズム6と同様にX方向に沿って配置されている。ひし形プリズム7では、光軸AX2に垂直な第1透過面7aを透過した光が、互いに平行な一対の反射面7bおよび7cで順次反射された後、第1透過面7aに平行な第2透過面7dを透過し、光軸AX2に平行な光軸AX21に沿ってひし形プリズム7から射出される。ひし形プリズム7から光軸AX21に沿って射出された光束は、被検面Waに入射する。
【0031】
ここで、被検面Waが投影光学系PLの結像面と合致している状態において、投射光学系(4,5)が格子パターン3aの形成面(すなわち偏向プリズム3の射出面)と被検面Waとを共役に配置するように構成されている。また、格子パターン3aの形成面と被検面Waとが投射光学系(4,5)に関してシャインプルーフの条件を満たすように構成されている。その結果、格子パターン3aからの光は、投射光学系(4,5)を介して、被検面Wa上のパターン像形成面の全体に亘って正確に結像する。
【0032】
また、図2において光路を破線で示すように、投射用集光レンズ4と投射用対物レンズ5とで構成される投射光学系(4,5)は、いわゆる両側テレセントリック光学系である。したがって、格子パターン3aの形成面上の各点と被検面Wa上の各共役点とは、全面に亘ってそれぞれ同倍率である。こうして、被検面Wa上には、図4に示すように、格子パターン3aの一次像がその全体に亘って正確に形成される。
【0033】
再び図1を参照すると、投影光学系PLの光軸AXに関して光軸AX21と対称な光軸AX31に沿って被検面Waで反射された光束は、受光側ひし形プリズム8に入射する。ひし形プリズム8は、ひし形プリズム7と同様に、X方向に沿って長手方向軸線を有し且つひし形断面を有する四角柱状のプリズムである。したがって、ひし形プリズム8では、光軸AX31に垂直な第1透過面8aを透過した光が、互いに平行な一対の反射面8bおよび8cで順次反射された後、第1透過面8aに平行な第2透過面8dを透過し、光軸AX31に平行な光軸AX3に沿ってひし形プリズム8から射出される。
【0034】
光軸AX3に沿ってひし形プリズム8から射出された光は、上述のペンタプリズム6と同様の構成を有するペンタプリズム9を介して、集光光学系(10,11)に入射する。すなわち、被検面Waで反射された光は、投影光学系PLの光軸AXに関して光軸AX2と対称な光軸AX3に沿って、ペンタプリズム9に入射する。ペンタプリズム9では、光軸AX3に垂直な第1透過面9aを透過した光が、第1反射面9bおよび第2反射面9cで順次反射された後、Z方向に延びる光軸AX4に沿って第2透過面9dに達する。光軸AX4に垂直な第2透過面9dを透過した光は、光軸AX4に沿って+Z方向に集光光学系(10,11)に入射する。
【0035】
集光光学系(10,11)は、受光用対物レンズ10と受光用集光レンズ11とで構成されている。そして、受光用対物レンズ10と受光用集光レンズ11との間の光路中には、走査手段としての振動ミラー12が設けられている。したがって、光軸AX4に沿って受光用対物レンズ10に入射した光は、振動ミラー12を介して偏向され、光軸AX5に沿って受光用集光レンズ11に達する。なお、本実施形態では、振動ミラー12を集光光学系(10,11)の略瞳面の位置に配置しているが、これに限定されることなく、被検面Waと後述のアオリ補正プリズム13との間の光路中または被検面Waと偏向プリズム3との間の光路中において任意の位置に配置することができる。
【0036】
集光光学系(10,11)を介した光は、上述の偏向プリズム3と同様の構成を有するアオリ補正プリズム13に入射する。ここで、被検面Waが投影光学系PLの結像面と合致している状態において、集光光学系(10,11)が被検面Waとアオリ補正プリズム13の入射面13aとを共役に配置するように構成されている。こうして、アオリ補正プリズム13の入射面13aには、格子パターン3aの二次像が形成される。
【0037】
なお、アオリ補正プリズム13の入射面13aには、遮光手段としての受光スリットSが設けられている。受光スリットSは、図5に示すように、例えば5つのX方向に細長く延びる矩形状の開口部Sa1〜Sa5を有する。集光光学系(10,11)を介した被検面Waからの反射光は、受光スリットSの各開口部Sa1〜Sa5をそれぞれ通過して、アオリ補正プリズム13に入射する。
【0038】
ここで、受光スリットSの開口部Saの数が、被検面Wa上における検出点の数に対応する。すなわち、被検面Wa上に格子パターン3aの一次像が形成されている状態を示す図4において、被検面Wa上の検出点(検出領域)Da1〜Da5は、図5に示す受光スリットSの5つの開口部Sa1〜Sa5に光学的に対応している。したがって、被検面Wa上での検出点の数を増やしたいときには、開口部Saの数を増やせば良いだけであり、検出点の数を増やしても構成の複雑化を招くことがない。
【0039】
なお、投影光学系PLによる結像面とアオリ補正プリズム13の入射面13aとが集光光学系(10,11)に関してシャインプルーフの条件を満たすように構成されている。したがって、被検面Waと結像面とが合致している状態において、格子パターン3aからの光が、集光光学系(10,11)を介して、プリズム入射面13a上のパターン像形成面の全体に亘って正確に再結像する。
【0040】
また、図2において光路を破線で示すように、集光光学系(10,11)が両側テレセントリック光学系で構成されている。したがって、被検面Wa上の各点とプリズム入射面13a上の各共役点とは、全面に亘ってそれぞれ同倍率である。こうして、アオリ補正プリズム13の入射面13a上には、格子パターン3aの二次像がその全体に亘って正確に形成される。
【0041】
ところで、アオリ補正プリズム13の入射面13aの位置に受光面を配置すると、被検面Waに対する光束の入射角θが大きいため、受光面における光束の入射角も大きくなる。この場合、受光面に例えばシリコン・フォト・ダイオードを配置すると、シリコン・フォト・ダイオードへの光束の入射角が大きくなるため、シリコン・フォト・ダイオードにおける表面反射が大きくなると共に、光束のけられが生じて、受光量が著しく低下する恐れがある。
【0042】
そこで、本実施形態では、受光面における光束の入射角に起因する受光量の低下を避けるために、図1に示すように、集光光学系(10,11)に関する被検面Waとの共役面に偏向光学系としてのアオリ補正プリズム13の入射面13aを配置している。その結果、集光光学系(10,11)を介して光軸AX5に沿ってアオリ補正プリズム13の入射面13aに入射した光束は、アオリ補正プリズム13の頂角(入射面と射出面とのなす角)と同じ屈折角にしたがって偏向され、射出面13bから光軸AX6に沿って射出される。ここで、射出面13bは、光軸AX6に垂直に設定されている。
【0043】
アオリ補正プリズム13の射出面13bから光軸AX6に沿って射出された光は、一対のレンズ14aおよび14bで構成されるリレー光学系(14a,14b)に入射する。リレー光学系(14a,14b)を介した光は、アオリ補正プリズム13の入射面13a上に形成された格子パターン3aの二次像と受光スリットSの開口部Sa1〜Sa5との共役像を、受光部15の受光面15a上に形成する。受光面15aには、図6に示すように、5つのシリコン・フォト・ダイオードPD1〜PD5が、受光スリットSの開口部Sa1〜Sa5に光学的に対応するように設けられている。なお、シリコン・フォト・ダイオードに代えて、CCD(2次元電荷結合型撮像素子)やフォトマルを用いることもできる。
【0044】
このように、本実施形態においては、偏向光学系としてのアオリ補正プリズム13を用いているので、受光面15aに入射する光束の入射角が十分小さくなり、受光面15aにおける光束の入射角に起因する受光量の低下が回避される。なお、リレー光学系(14a,14b)は、図2に示すように、両側テレセントリック光学系であることが望ましい。また、アオリ補正プリズム13の入射面13aと受光面15aとがリレー光学系(14a,14b)に関してシャインプルーフの条件を満足するように構成されていることが望ましい。
【0045】
さて、上述したように、アオリ補正プリズム13の入射面13a上には、5つの開口部Sa1〜Sa5を有する受光スリットSが設けられている。したがって、入射面13aに形成された格子状パターン3aの二次像は、受光スリットSを介して部分的に遮光される。すなわち、受光スリットSの開口部Sa1〜Sa5の領域に形成された格子状パターン3aの二次像からの光束のみが、アオリ補正プリズム13およびリレー光学系(14a,14b)を介して、受光面15aに達する。
【0046】
こうして、図6に示すように、受光部15の受光面15a上に配置されたシリコン・フォト・ダイオードPD1〜PD5上には、受光スリットSの開口部Sa1〜Sa5の像すなわちスリット像SL1〜SL5がそれぞれ形成される。なお、スリット像SL1〜SL5は、シリコン・フォト・ダイオードPD1〜PD5の矩形状の受光領域の内側にそれぞれ形成されるように設定されている。
【0047】
ここで、被検面Waが投影光学系PLの光軸AXに沿ってZ方向に上下移動すると、アオリ補正プリズム13の入射面13a上に形成される格子パターン3aの二次像は、被検面Waの上下移動に対応してパターンのピッチ方向に横ずれを起こす。本実施形態では、たとえば本出願人による特開平6−97045号公報に開示された光電顕微鏡の原理により、格子パターン3aの二次像の横ずれ量を検出し、検出した横ずれ量に基づいて投影光学系PLの光軸AXに沿った被検面Waの面位置を検出する。
【0048】
なお、振動ミラー12を駆動するミラー駆動部16、ミラー駆動部16からの交流信号に基づいてシリコン・フォト・ダイオードPD1〜PD5からの検出信号を同期検波するための位置検出部17、被検面Waを投影光学系PLの焦点深度の範囲内に収めるのに必要な傾き補正量およびZ方向補正量を算出する補正量算出部18、傾き補正量およびZ方向補正量に基づいてホルダ保持機構22を駆動制御して、ウェハホルダ21のレベリングおよびZ方向移動を行わせるためのホルダ駆動部23の動作は、本出願人による特開2001−296105号公報およびこれに対応する米国特許第6,897,462号公報に開示される装置と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0049】
また、シャインプルーフの条件、偏向プリズム3およびアオリ補正プリズム13の構成や作用、および光電顕微鏡の原理の具体的な適用などについては、米国特許第5,633,721号公報に詳細に開示されている。そして、ペンタプリズム6および9の構成や作用については、特開2001−296105号公報およびこれに対応する米国特許第6,897,462号公報に詳細に開示されている。なお、これらのペンタプリズム6および9の一方、または双方を省く構成も可能である。ここでは、米国特許第5,633,721号公報および米国特許第6,897,462号公報を参照として援用する。
【0050】
本実施形態では、投射光学系(4,5)と被検面Waとの間の光路中および集光光学系(10,11)と被検面Waとの間の光路中にペンタプリズム6および9をそれぞれ設け、被検面Waへの入射光束の光路および被検面Waからの反射光束の光路をペンタプリズム6および9の作用により大きく折り曲げて、投射光学系(4,5)および集光光学系(10,11)を被検面Waから十分に遠ざけている。その結果、投射光学系(4,5)および集光光学系(10,11)の構成および配置が、被検面Waの制約を実質的に受けることがない。
【0051】
また、本実施形態では、ペンタプリズム6と被検面Waとの間の光路中およびペンタプリズム9と被検面Waとの間の光路中にひし形プリズム7および8がそれぞれ付設されているので、被検面Waへの入射光束の光路および被検面Waからの反射光束の光路がひし形プリズム7および8の作用によりそれぞれ平行移動する。その結果、一対のペンタプリズム6および9を被検面Waから遠ざけることができ、一対のペンタプリズム6および9およびその保持部材の構成および配置が被検面Waの制約を実質的に受けることがない。
【0052】
本実施形態の面位置検出装置では、投射系の光路中に配置されて入射光束の光路を平行移動させるための一対の内面反射面(7b,7c)を有する投射側プリズム部材すなわちひし形プリズム7と、受光系の光路中において投射側プリズム部材7に対応するように配置されて、被検面Waからの入射光束の光路を平行移動させるための一対の内面反射面(8b,8c)を有する受光側プリズム部材すなわちひし形プリズム8とを備えている。この場合、投射側のひし形プリズム7の互いに平行な2つの内面反射面(7b,7c)で全反射された光束に偏光成分による相対的な位置ずれが発生し、鮮明なパターン像が被検面Wa上に形成されない。
【0053】
具体的には、被検面Waに達する光束のうち、被検面Waに対するP偏光の光とS偏光の光との間に相対的な位置ずれが発生し、ひいてはP偏光の光が被検面Wa上に形成するパターン像とS偏光の光が被検面Wa上に形成するパターン像との間に相対的な位置ずれが発生する。同様に、被検面Waから反射されて受光側のひし形プリズム8の互いに平行な2つの内面反射面(8b,8c)で全反射された光束にも偏光成分による相対的な位置ずれが発生し、アオリ補正プリズム13の入射面13a上に形成されるパターン二次像がさらに不鮮明になる。
【0054】
換言すれば、受光側のひし形プリズム8の内面反射面(8b,8c)での全反射の影響により、P偏光の光が入射面13a上に形成するパターン二次像とS偏光の光が入射面13a上に形成するパターン二次像との間に発生する相対的な位置ずれが助長され(倍加され)る。
【0055】
本実施形態の面位置検出装置は、半導体露光プロセス途中において各種の表面状態を持つウェハW(たとえばウェハW上の構造物を構成する物質が複数種であったり、ウェハW上の構造そのもの(多層構造)が複数種であったりする)の面位置検出に対して適用される。そして、一般的に、ウェハ表面はレジストが塗布された状態になっている。このような状況で、各種表面状態にばらつきがある場合(たとえばウェハ上に形成される層の厚みがばらついたり、その層を形成する材料の純度などの性質がばらついたりする場合)や、レジスト厚にばらつきがある場合、特定の偏光成分の光(例えばP偏光の光、S偏光の光など)に対する反射率がこれらのばらつきに依存して変化する。
【0056】
その結果、本実施形態の面位置検出装置では、特段の策を講じない限り、ひし形プリズム(7,8)の内面反射面(7b,7c;8b,8c)を通過した光束に発生する偏光成分による相対的な位置ずれと、上記ウェハWの表面状態のばらつきやレジスト厚のばらつきに起因する特定偏光成分の反射率変化とにより、被検面Waの面位置の検出誤差が発生しやすい。
【0057】
近年、投影露光パターンの微細化に伴い、ウェハ面の平坦度に対する要求も厳しくなるとともに、面位置検出精度に対する要求も非常に高くなっている。また、ArFエキシマレーザ光源を用いた露光装置などでは、表面のレジストの厚みも薄くなる傾向にあり、前記各種表面状態やレジスト厚のばらつきに起因する、面位置検出誤差が無視できない状況にある。
【0058】
そこで、本実施形態では、投射側プリズム部材(ひし形プリズム)7の内面反射面(7b,7c)および受光側プリズム部材(ひし形プリズム)8の内面反射面(8b,8c)を通過した光束の偏光成分による相対的な位置ずれを補償するための位置ずれ補償部材を付設している。
【0059】
図7は、本実施形態の面位置検出装置に付設された位置ずれ補償部材の構成および作用を説明する図である。ただし、図7では、説明の明瞭化のために、被検面Waからアオリ補正プリズム13の入射面13aまでの光路を直線状の光軸AXに沿って展開して示すとともに、振動ミラー12の図示を省略している。この点は、図7に関連する図8においても同様である。図7を参照すると、本実施形態の面位置検出装置では、受光用対物レンズ10と受光用集光レンズ11との間の光路中において集光光学系(10,11)の瞳位置またはその近傍に、位置ずれ補償部材としてのノマルスキープリズム19を配置している。
【0060】
ノマルスキープリズム19は、入射光線の偏光方向により射出光線の進行方向を異なる角度だけ傾ける機能を有する光学素子(第1補償素子)である。具体的には、図7に示すように、ひし形プリズム(7,8)の内面反射面(7b,7c;8b,8c)での全反射の影響により、P偏光の光とS偏光の光との間に相対的な位置ずれが発生し、代表的なP偏光の光71aおよびS偏光の光72aが互いに異なる角度で光軸AXに対して傾いた状態でノマルスキープリズム19中の光軸AX上のほぼ1点に入射する。ノマルスキープリズム19は、入射光線の偏光方向により射出光線の進行方向を異なる角度だけ傾ける機能に基づいて、光軸AXに対して傾いて入射したP偏光の光71aをほぼ光軸AXに沿って進行するP偏光の射出光71bに変換し、且つ光軸AXに対して傾いて入射したS偏光の光72aをほぼ光軸AXに沿って進行するS偏光の射出光72bに変換する。
【0061】
こうして、ひし形プリズム(7,8)の内面反射面(7b,7c;8b,8c)での全反射に起因して発生したP偏光の光とS偏光の光との間の相対的な位置ずれがノマルスキープリズム19の作用により補償され、ノマルスキープリズム19からのP偏光の射出光71bとS偏光の射出光72bとがほぼ同じ経路に沿って進行してアオリ補正プリズム13の入射面13a上のほぼ1点に達する。その結果、本実施形態の面位置検出装置では、位置ずれ補償部材としてのノマルスキープリズム19の作用により、プリズム部材(ひし形プリズム)7,8の内面反射面(7b,7c;8b,8c)を通過した光束に発生する偏光成分による相対的な位置ずれなどの影響を実質的に受けることなく、アオリ補正プリズム13の入射面13a上に鮮明なパターン二次像が形成され、ひいては被検面Waの面位置を高精度に検出することができる。ちなみに、ノマルスキープリズム19を付設しない場合、ノマルスキープリズム19からのP偏光の射出光(図中破線で示す)71cとS偏光の射出光(図中破線で示す)72cとが互いに異なる経路に沿って進行してアオリ補正プリズム13の入射面13a上の互いに異なる位置に達することになり、アオリ補正プリズム13の入射面13a上において鮮明なパターン二次像は得られない。
【0062】
なお、上述の説明では、入射光線の偏光方向により射出光線の進行方向を異なる角度だけ傾ける機能を有する位置ずれ補償部材としてノマルスキープリズムを用いているが、これに限定されることなく、ノマルスキープリズムに代えて、たとえばウォラストンプリズムを用いても良い。また、位置ずれ補正部材として、ノマルスキープリズムやウォラストンプリズムを用いる場合には、ノマルスキープリズムやウォラストンプリズムの近傍に直視プリズムを配置して、色ずれを補正しても良い。
【0063】
また、より簡易的には、前記プリズムの代わりに、方解石、水晶、イットリウム・オルトバナデート結晶、ルチル結晶などの複屈折性の結晶材料により形成されて、入射する常光線と異常光線とに角度ずれを発生させる楔プリズム板を用いても良い。この場合、例えば結晶光軸と楔は角度ずれを発生させる方向に設定する。また、このような、楔プリズム板と通常の光学ガラスによる楔プリズム板を貼り合わせたものを用いても良い。その効果に関しては、前述のノマルスキープリズムを用いたものと同様である。
【0064】
また、上述の説明では、受光用対物レンズ10と受光用集光レンズ11との間の光路中において集光光学系(10,11)の瞳位置またはその近傍にノマルスキープリズム19を配置しているが、これに限定されることなく、一般に投射系の瞳空間または受光系の瞳空間にノマルスキープリズムを配置することができる。なお、投射系の瞳空間に配置する場合、投射用集光レンズ4と投射用対物レンズ5との間の光路中において投射光学系(4,5)の瞳位置またはその近傍に配置すれば良い。また、位置ずれ補償部材としてウォラストンプリズムを用いる場合にも、投射系の瞳空間または受光系の瞳空間にウォラストンプリズムを配置すれば良い。ただし、既成装置の性能向上のために、ノマルスキープリズムやウォラストンプリズムのような位置ずれ補償部材を後付けする場合には、受光系の瞳空間に配置する方が投射系の瞳空間に配置するよりも光学調整が容易である。
【0065】
また、上述の説明では、位置ずれ補償部材として、入射光線の偏光方向により射出光線の進行方向を異なる角度だけ傾ける機能を有する光学素子(ノマルスキープリズム、ウォラストンプリズムなど)を用いている。しかしながら、これに限定されることなく、図8に示すように、入射光線の偏光方向により射出光線の進行方向を異なる距離だけ平行移動させる光学素子(第2補償素子)を位置ずれ補償部材として用いる変形例も可能である。また、図9に示すように、投射側プリズム部材(ひし形プリズム)7と受光側プリズム部材(ひし形プリズム)8との間の光路中に配置されて入射光線の偏光方向を変化させるための位相部材を位置ずれ補償部材として用いる変形例も可能である。
【0066】
図8を参照すると、第1変形例にかかる位置ずれ補償部材としてのビームディスプレーサー20が、受光用集光レンズ11とアオリ補正プリズム13との間の光路中に配置されている。ビームディスプレーサー20は、たとえば方解石、水晶、イットリウム・オルトバナデート(YVO4)結晶、ルチル(TiO2)結晶などの複屈折性の結晶材料により形成され、入射する常光線と異常光線とを互いに平行となるように射出する機能を有する。換言すれば、ビームディスプレーサー20は、入射光線の偏光方向により射出光線の進行方向を異なる距離だけ平行移動させる機能を有する。
【0067】
具体的には、図8に示すように、ひし形プリズム(7,8)の内面反射面(7b,7c;8b,8c)での全反射の影響により、P偏光の光とS偏光の光との間に相対的な位置ずれが発生し、代表的なP偏光の光73aおよびS偏光の光74aが光軸AXにほぼ平行な互いに異なる経路に沿ってビームディスプレーサー20に入射する。ビームディスプレーサー20は、入射光線の偏光方向により射出光線の進行方向を異なる距離だけ平行移動させる機能に基づいて、入射したP偏光の光73aをそのまま透過させて光軸AXにほぼ平行な経路に沿って進行するP偏光の射出光73bに変換し、且つ入射したS偏光の光74aを平行移動させてP偏光の射出光73bの進行経路とほぼ同じ経路に沿って進行するS偏光の射出光74bに変換する。
【0068】
こうして、ひし形プリズム(7,8)の内面反射面(7b,7c;8b,8c)での全反射に起因して発生したP偏光の光とS偏光の光との間の相対的な位置ずれがビームディスプレーサー20の作用により補償され、ビームディスプレーサー20からのP偏光の射出光73bとS偏光の射出光74bとがほぼ同じ経路に沿って進行してアオリ補正プリズム13の入射面13a上のほぼ1点に達する。その結果、図8の第1変形例においても、位置ずれ補償部材としてのビームディスプレーサー20の作用により、アオリ補正プリズム13の入射面13a上に鮮明なパターン二次像が形成され、ひいては被検面Waの面位置を高精度に検出することができる。ちなみに、ビームディスプレーサー20を付設しない場合、ビームディスプレーサー20からのP偏光の射出光73cとS偏光の射出光(図中破線で示す)74cとが互いに異なる経路に沿って進行してアオリ補正プリズム13の入射面13a上の互いに異なる位置に達することになり、アオリ補正プリズム13の入射面13a上において鮮明なパターン二次像は得られない。
【0069】
なお、上述の第1変形例では、受光用集光レンズ11とアオリ補正プリズム13との間の光路中に、すなわち受光系の像空間に、ビームディスプレーサー20を配置している。しかしながら、これに限定されることなく、一般に偏向プリズム3とアオリ補正プリズム13との間の光路中において、投射系の物体空間または像空間、あるいは受光系の物体空間または像空間に、ビームディスプレーサーを配置することができる。ただし、既製装置の性能向上のために、ビームディスプレイサーのような位置ずれ補償部材を後付けする場合には、受光系の像空間に配置する方が光学調整を容易に行うことができる。
【0070】
図9を参照すると、第2変形例にかかる位置ずれ補償部材としての1/2波長板31が、一対のプリズム部材(ひし形プリズム)7と8との間の光路中において受光側のひし形プリズム8に近接した位置に配置されている。1/2波長板31は、入射光線の偏光方向を変化させるための位相部材であって、入射するP偏光の光をS偏光の光に変換して射出し且つ入射するS偏光の光をP偏光の光に変換して射出する機能を有する。
【0071】
この場合、投射側のひし形プリズム7の内面反射面(7b,7c)を通過したP偏光の光は、1/2波長板31の作用によりS偏光の光に変換され、受光側のひし形プリズム8の内面反射面(8b,8c)を通過する。同様に、投射側のひし形プリズム7の内面反射面(7b,7c)を通過したS偏光の光は、1/2波長板31の作用によりP偏光の光に変換され、受光側のひし形プリズム8の内面反射面(8b,8c)を通過する。すなわち、第2変形例では、投射側のひし形プリズム7の内面反射面(7b,7c)での全反射によりP偏光の光が受ける影響を、受光側のひし形プリズム8の内面反射面(8b,8c)での全反射によりS偏光の光が受ける影響により相殺し、投射側のひし形プリズム7の内面反射面(7b,7c)での全反射によりS偏光の光が受ける影響を、受光側のひし形プリズム8の内面反射面(8b,8c)での全反射によりP偏光の光が受ける影響により相殺することになる。その結果、図9の第2変形例においても、位置ずれ補償部材としての1/2波長板31の作用により、アオリ補正プリズム13の入射面13a上に鮮明なパターン二次像が形成され、ひいては被検面Waの面位置を高精度に検出することができる。
【0072】
なお、上述の第2変形例では、投射側プリズム部材7と受光側プリズム部材8との間の光路中に配置されて入射光線の偏光方向を変化させるための位相部材として、1/2波長板31を用いている。しかしながら、これに限定されることなく、1/2波長板31に代えて、ファラデーローテーター(ファラデー旋光器)のような位相部材を用いることができる。
【0073】
また、上述の第2変形例では、一対のプリズム部材(ひし形プリズム)7と8との間の光路中において受光側のひし形プリズム8に近接した位置に、位相部材としての1/2波長板31を配置している。しかしながら、これに限定されることなく、一対のプリズム部材(ひし形プリズム)7と8との間の光路中において投射側の適当な位置または受光側の適当な位置に、1/2波長板のような位相部材を配置することもできる。
【0074】
また、上述の実施形態および変形例では、投射側プリズム部材7の内面反射面および受光側プリズム部材8の内面反射面を通過した光束の偏光成分による相対的な位置ずれを補償するための位置ずれ補償部材(19,20,31)を用いている。しかしながら、これに限定されることなく、図10に示すように、入射光線の偏光方向をランダム化するための偏光解消素子を用いる第3変形例も可能である。
【0075】
図10の第3変形例では、投射側プリズム部材(ひし形プリズム)7の射出側に近接して投射側偏光解消素子32が配置され、受光側プリズム部材(ひし形プリズム)8の入射側に近接して受光側偏光解消素子33が配置されている。ここで、偏光解消素子32および33は、たとえば水晶、フッ化マグネシウムのように複屈折性を有する結晶材料により形成された偏角プリズム(くさび状のプリズム)であって、入射するP偏光の光およびS偏光の光を実質的に非偏光化する機能を有する。
【0076】
この場合、一対の偏光解消素子32および33の作用により、ウェハWへの入射前およびウェハWからの射出後において光の偏光方向がランダム化されるので、ウェハWに塗布されたレジスト層によるP偏光やS偏光の反射率変動の影響を良好に抑えることができる。その結果、第3変形例においても、プリズム部材(ひし形プリズム)7,8の内面反射面(7b,7c;8b,8c)を通過した光束に発生する偏光成分による相対的な位置ずれなどの影響を実質的に受けることなく、被検面Waの面位置を高精度に検出することができる。
【0077】
また、本実施形態では、投射側のひし形プリズム7および受光側のひし形プリズム8の内面反射面(7b,7c;8b,8c)の外側面に、たとえばアルミニウムなどからなる金属コートのような反射膜を形成する構成も可能である。この構成により、ひし形プリズム7,8における全反射現象を回避し、ひいてはひし形プリズム7,8を通過した光束に発生する偏光成分による相対的な位置ずれの発生を実質的に抑制することができる。
【0078】
また、本実施形態では、投射側ひし形プリズム7に隣接して投射側第2ひし形プリズムを配置し、受光側ひし形プリズム8に隣接して受光側第2ひし形プリズムを配置する構成も可能である。この構成により、投射側ひし形プリズム7の内面反射面(7b,7c)の全反射による影響を投射側第2ひし形プリズムの内面反射面の全反射による影響で相殺し、受光側ひし形プリズム8の内面反射面(8b,8c)の全反射による影響を受光側第2ひし形プリズムの内面反射面の全反射による影響で相殺し、ひいてはひし形プリズム7,8を通過した光束に発生する偏光成分による相対的な位置ずれの発生を実質的に抑制することができる。
【0079】
また、本実施形態では、投射系の光路中または受光系の光路中に、入射光束のうち特定の偏光成分だけを選択的に通過させるための偏光子を配置する構成も可能である。この場合、ウェハWに塗布されたレジスト層による反射率はP偏光よりもS偏光の方が高いため、被検面Waに関してS偏光の光だけを選択的に通過させる特性を有する偏光子を用いることが好ましい。この構成では、特定の偏光成分の光だけが受光されるので、プリズム部材の内面反射面を通過した光束に発生する偏光成分による相対的な位置ずれなどの影響を受けることなく、被検面の面位置を高精度に検出することができる。ただし、偏光子を配置する構成は、光量損失の観点から実用的ではない。
【0080】
また、上述の実施形態では、内面反射面を有するひし型プリズム(7,8)における全反射の影響により生ずるP偏光の光とS偏光の光との間の相対的な位置ずれについて説明したが、表面反射面での反射によってもP偏光の光とS偏光の光との間の相対的な位置ずれが生じる場合がある。上述の実施形態においては、このような表面反射面での反射により生じるP偏光の光とS偏光の光との間の相対的な位置ずれを補償する変形例もとることができる。
【0081】
また、上述の実施形態では、露光装置が単一の面位置検出装置を備えている例を説明しているが、これに限定されることなく、必要に応じて複数組の面位置検出装置で検出視野を分割することもできる。この場合、第1の面位置検出装置の検出視野と第2の面位置検出装置の検出視野との共通の視野における検出結果に基づいて、各装置のキャリブレーションを行うこともできる。
【0082】
また、上述の実施形態では、投影露光装置の感光性基板の面位置の検出に対して本発明を適用しているが、投影露光装置のマスクの面位置の検出に本発明を適用することもできる。また、上述の実施形態では、投影露光装置における感光性基板の面位置の検出に対して本発明を適用しているが、一般の被検面の面位置の検出に本発明を適用することもできる。
【0083】
さて、上述の実施形態にかかる面位置検出装置および露光装置は、本願請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
【0084】
たとえば上述の実施形態にかかる面位置検出装置の製造方法は、投射系中に配置される第1反射面(7b,7c)を準備する工程と、受光系中に配置される第2反射面(8b,8c)を準備する工程と、前記投射系の第1反射面および前記受光系の第2反射面を通過した光束の偏光成分による相対的な位置ずれを補償する工程とを備えている。
【0085】
また、上述の実施形態にかかる面位置検出装置の調整方法は、入射光束の偏光成分に応じて異なる特性の射出光束を生成する偏光部材(19,20,31,33)を準備する工程と、該偏光部材を用いて、前記投射系の第1反射面および前記受光系の第2反射面を通過した光束の偏光成分による相対的な位置ずれを補償する工程とを備えている。
【0086】
上述の実施形態の露光装置では、照明装置によってレチクル(マスク)を照明し(照明工程)、投影光学系を用いてマスクに形成された転写用のパターンを感光性基板に露光する(露光工程)ことにより、マイクロデバイス(半導体素子、撮像素子、液晶表示素子、薄膜磁気ヘッド等)を製造することができる。以下、本実施形態の露光装置を用いて感光性基板としてのウェハ等に所定の回路パターンを形成することによって、マイクロデバイスとしての半導体デバイスを得る際の手法の一例につき図11のフローチャートを参照して説明する。
【0087】
先ず、図11のステップ301において、1ロットのウェハ上に金属膜が蒸着される。次のステップ302において、その1ロットのウェハ上の金属膜上にフォトレジストが塗布される。その後、ステップ303において、本実施形態の露光装置を用いて、マスク上のパターンの像がその投影光学系を介して、その1ロットのウェハ上の各ショット領域に順次露光転写される。その後、ステップ304において、その1ロットのウェハ上のフォトレジストの現像が行われた後、ステップ305において、その1ロットのウェハ上でレジストパターンをマスクとしてエッチングを行うことによって、マスク上のパターンに対応する回路パターンが、各ウェハ上の各ショット領域に形成される。
【0088】
その後、更に上のレイヤの回路パターンの形成等を行うことによって、半導体素子等のデバイスが製造される。上述の半導体デバイス製造方法によれば、極めて微細な回路パターンを有する半導体デバイスをスループット良く得ることができる。なお、ステップ301〜ステップ305では、ウェハ上に金属を蒸着し、その金属膜上にレジストを塗布、そして露光、現像、エッチングの各工程を行っているが、これらの工程に先立って、ウェハ上にシリコンの酸化膜を形成後、そのシリコンの酸化膜上にレジストを塗布、そして露光、現像、エッチング等の各工程を行っても良いことはいうまでもない。
【0089】
また、本実施形態の露光装置では、プレート(ガラス基板)上に所定のパターン(回路パターン、電極パターン等)を形成することによって、マイクロデバイスとしての液晶表示素子を得ることもできる。以下、図12のフローチャートを参照して、このときの手法の一例につき説明する。図12において、パターン形成工程401では、本実施形態の露光装置を用いてマスクのパターンを感光性基板(レジストが塗布されたガラス基板等)に転写露光する、所謂光リソグラフィ工程が実行される。この光リソグラフィー工程によって、感光性基板上には多数の電極等を含む所定パターンが形成される。その後、露光された基板は、現像工程、エッチング工程、レジスト剥離工程等の各工程を経ることによって、基板上に所定のパターンが形成され、次のカラーフィルター形成工程402へ移行する。
【0090】
次に、カラーフィルター形成工程402では、R(Red)、G(Green)、B(Blue)に対応した3つのドットの組がマトリックス状に多数配列されたり、またはR、G、Bの3本のストライプのフィルターの組を複数水平走査線方向に配列されたりしたカラーフィルターを形成する。そして、カラーフィルター形成工程402の後に、セル組み立て工程403が実行される。セル組み立て工程403では、パターン形成工程401にて得られた所定パターンを有する基板、およびカラーフィルター形成工程402にて得られたカラーフィルター等を用いて液晶パネル(液晶セル)を組み立てる。
【0091】
セル組み立て工程403では、例えば、パターン形成工程401にて得られた所定パターンを有する基板とカラーフィルター形成工程402にて得られたカラーフィルターとの間に液晶を注入して、液晶パネル(液晶セル)を製造する。その後、モジュール組み立て工程404にて、組み立てられた液晶パネル(液晶セル)の表示動作を行わせる電気回路、バックライト等の各部品を取り付けて液晶表示素子として完成させる。上述の液晶表示素子の製造方法によれば、極めて微細な回路パターンを有する液晶表示素子をスループット良く得ることができる。
【符号の説明】
【0092】
1 光源
2 コンデンサーレンズ
3 偏向プリズム
4,5 投射光学系
6,9 ペンタプリズム
7,8 ひし形プリズム
10,11 集光光学系
12 振動ミラー
13 アオリ補正プリズム
14a、14b リレー光学系
15 受光部
16 ミラー駆動部
17 位置検出部
18 補正量算出部
19 ノマルスキープリズム(第1補償素子)
20 ビームディスプレーサー(第2補償素子)
21 ウェハホルダ
22 ホルダ保持機構
23 ホルダ駆動部
31 1/2波長板(位相部材)
32,33 偏光解消素子
IL 照明系
R レチクル
RH レチクルホルダ
PL 投影光学系
W ウェハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検面上に斜め方向から光束を投射する投射系と、前記被検面で反射された光束を受光する受光系とを備え、該受光系の出力に基づいて前記被検面の面位置を検出する面位置検出装置において、
前記投射系と前記受光系との少なくとも一方は、反射面を備え、
前記反射面を通過した光束の偏光成分による相対的な位置ずれを補償するための位置ずれ補償部材をさらに備えていることを特徴とする面位置検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−70075(P2013−70075A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−252522(P2012−252522)
【出願日】平成24年11月16日(2012.11.16)
【分割の表示】特願2011−205343(P2011−205343)の分割
【原出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】