説明

位置検出装置及びシフト装置

【課題】磁石に対する着磁パターン等を含む構成の簡素化を図りつつ、位置検出に対する信頼性を確保することができる位置検出装置及びシフト装置を提供する。
【解決手段】各磁気センサ16a〜16gにおいて生成される二値信号の組合せがハミング符号をなすように磁石15の着磁パターン及び当該磁石15に対する各磁気センサ16a〜16gの相対的な位置関係が調節されている。このため、シフト装置では、1つの磁気センサに何らかの異常が発生した場合であれ、当該磁気センサにおいて生成される二値信号を含む誤った二値信号の組合せを訂正し、正しい二値信号の組合せとすることができる。さらに、2つの磁気センサに何らかの異常が発生した場合にも、その異常の発生を検知することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出対象の位置を非接触で検出する磁気式の位置検出装置及びシフト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、車両の自動変速機とシフト装置とを機械的に分離した、いわゆるバイワイヤ方式のシフト装置が普及しつつある。このシフト装置では、ユーザにより操作されるシフトレバーの操作位置を摺動接点あるいは磁気センサを通じて電気信号として検出し、当該電気信号に基づきアクチュエータを作動させることにより自動変速機の接続状態を切り替えることから、リンク機構等の機械的な構成が不要となる。このため、シフト装置の小型化が容易になるとともに、設置場所の選択の自由度が高められるといった利点がある。
【0003】
こうしたシフト装置では、特に操作位置の検出に対する高い信頼性が要求されるところ、例えば特許文献1に示されるようなシフト装置が従来提案されている。当該装置では、シフトレバーの操作に伴い複数個のホールセンサと平面上に多極着磁された磁石とを相対的に変位させて当該変位に応じて各ホールセンサから出力される信号の組合せに基づき、シフトレバーの操作位置を検出する。各ホールセンサは、磁界を検出したときにはオン信号(論理「1」)を、磁界を検出しないときにはオフ信号(論理「0」)を出力する。そして当該装置では、十字状あるいは直線状のシフトゲートに沿って変位するシフトレバーの5つの操作位置を検出可能とされているところ、このシフトレバーが各操作位置に操作された際に各ホールセンサから出力される信号の組合せが、誤り訂正符号をなすように、磁石の着磁パターン及び各ホールセンサの配置が設定されている。このため、各ホールセンサからの出力信号の組合せ(シフトレバーの操作位置を示すシフトポジション信号)のデータに符号誤り(エラー)が発生した場合にそれを検出、あるいは検出して訂正することが可能となる。この誤り検出あるいは誤り訂正により、シフト装置(その位置検出装置)の位置検出処理に対する信頼性が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−148352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に記載のシフト装置には、次のような問題があった。例えば十字状のシフトゲートに対応する場合には、同一平面に多極着磁、しかも着磁パターンの異なる複数個の小磁石を組み合わせて全体として所望の着磁パターンを有する磁石を構成している。特殊な形状の磁石を用意する必要があるとともに、各小磁石、ひいてはそれらを組み合わせて構成される着磁パターンが非常に複雑なものとなっている。また、直線状のシフトゲートに対応する場合には、検出する操作位置の数と同数だけ着磁パターンを設定する必要がある。このため、設計コスト、ひいては製造コストが非常に高くなることが懸念される。なお、こうした問題は、シフト装置に限らず、複数方向に操作される例えばジョイスティック等の入力装置についても同様に発生する。
【0006】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、磁石に対する着磁パターン等を含む構成の簡素化を図りつつ、位置検出に対する信頼性を確保することができる位置検出装置及びシフト装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、操作部材の操作に連動して直線的に変位するとともに、当該変位方向に対して直交する方向においてS極及びN極が2極着磁される複数の磁極部が当該変位方向においてもS極及びN極が交互に着磁されてなる磁石と、前記磁石の変位方向に沿って間隔をおいて配設されて前記磁石の変位に伴う磁界の変化に基づき二値信号を生成する複数個の磁気センサと、前記各磁気センサにおいて生成される二値信号の組合せに基づき操作部材の操作位置を検出する制御装置と、を備え、前記二値信号の組み合わせが、前記操作部材に連動する磁石の位置情報を構成するデータビットと、前記二値信号の組み合わせにおける1つの二値信号の誤りを訂正するためのチェックビットとを含むハミング符号に準拠したものとなるように、前記磁石の変位方向における各磁極部の着磁ピッチ及び当該各磁極部に対する各磁気センサの相対的な位置関係が設定されてなることをその要旨とする。
【0008】
本発明によれば、各磁気センサにおいて生成される二値信号の組合せが、ハミング符号に準拠するため、1つの誤り訂正、あるいは2つの誤り検出が可能となる。これにより、磁石の位置に対応する操作部材の操作位置の検出に対する信頼性が確保可能となる。また、磁石の着磁パターンについても、磁石の変位方向及び当該変位方向に直交する方向のいずれの方向においても、S極及びN極を交互に着磁するだけでよい。このため、着磁パターン、ひいては磁石の構成の簡素化が図られる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の位置検出装置において、前記磁気センサは、印加される磁界の方向に応じて二値信号を生成するMRセンサが採用されてなることをその要旨とする。
【0010】
本発明によれば、磁界の方向に応じて二値信号が生成されるので、磁石の着磁パターンの簡素化が図られる。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の位置検出装置において、前記磁気センサは、磁石を間に挟みその変位方向に対して互いに反対側に配設されてなることをその要旨とする。
【0011】
本発明によれば、直方体状の磁石の互いに反対側に位置する2つの長側面に沿って、複数個の磁気センサを配設することにより、当該磁石の長大化を抑制することが可能となる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、直線状に配置して設定される複数の操作位置間を変位する操作部材と、当該操作部材の操作位置を検出する位置検出装置とを備え、当該位置検出装置の検出結果に基づき車両の変速機の接続状態を切り替えるシフト装置において、前記位置検出装置として、請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の位置検出装置が採用されてなることをその要旨とする。
【0013】
本発明によれば、1つの磁気センサの故障を検出可能とした非接触式のシフト装置を構築可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、磁石に対する着磁パターン等を含む構成の簡素化を図りつつ、位置検出に対する信頼性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は、本実施の形態におけるシフト装置の概略構成を示す正面図、(b)は、同じくシフト装置の平面図。
【図2】同じく磁石及び各磁気センサの相対位置関係を示す平面図。
【図3】同じく磁気センサの平面図。
【図4】同じくシフト装置の電気的な構成を示すブロック図。
【図5】同じく各磁気センサから出力される二値信号の組合せとシフトレバーの操作位置との関係を示す一覧図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を、エンジン及びモータを走行用の駆動源とするハイブリッド車両に搭載されるバイワイヤ方式のシフト装置に具体化した一実施の形態を図1〜図4に基づいて説明する。このシフト装置は、例えば自動車の車室フロアにおける運転席と助手席との間、あるいはインストルメントパネルにおける運転席の近傍に配設される。
【0017】
<シフト装置の概要>
図1(a)に示すように、シフト装置のシフトレバー12は、その基端部を中心として直線状(同図中の左右方向)に揺動可能に設けられている。すなわち、図示しない車体には、直方体状の磁石保持部材13が直線状にスライド変位可能に設けられている。磁石保持部材13は合成樹脂材料により形成される。また、この磁石保持部材13の上面には先端が球面をなす軸状のピボット14が設けられている。このピボット14の球面状をなす先端部には、シフトレバー12の基端部が摺動可能に嵌合されている。磁石保持部材13は、スライド方向に対して直交する方向(同図中の上下方向及び紙面に直交する方向)への変位は規制された状態で設けられる。したがって、シフトレバー12の左右方向への揺動は、ピボット14を介して磁石保持部材13の左右方向への直線運動に変換される。この磁石保持部材13には、その変位方向へ延びる直方体状の磁石15が貫通した状態で固定されている。このため、シフトレバー12の傾動操作に連動して、磁石15は磁石保持部材13と一体的に同図中の左右方向へスライド変位する。シフト装置11に内蔵される位置検出装置は、シフトレバー12に連動して磁石15が直線状にスライド変位することを利用して、当該シフトレバー12の操作位置を検出する。この検出されるシフトレバー12の操作位置に応じて自動変速機の接続状態が切り換えられる。
【0018】
なお、本例では、シフトレバー12の操作位置として、駐車位置(P)、後進位置(R)、中立位置(N)、前進位置(D)及び回生ブレーキ位置(B)が設定されるところ、これら操作位置は直線状に配置される。また、シフトレバー12の各操作位置間の傾動量(操作角度)は同一とされている。シフトレバー12の各操作位置と、磁石15の位置とは一対一で対応する。また、シフト装置11は、シフトレバー12の操作位置が保持される保持型(ステーショナリタイプ)、あるいは当該操作位置が特定の基準位置に自動復帰する復帰型(モーメンタリタイプ)のいずれのタイプとして構成してもよい。
【0019】
<位置検出装置>
次に、シフトレバー12の操作位置を検出する位置検出装置について説明する。図1(b)に示すように、位置検出装置21は、前述した磁石15と、当該磁石15から発せられる磁界を検出する複数個の磁気センサ16とを備えてなる。各磁気センサ16は、磁石15を間に挟んで同図中の上下方向において互いに反対側に配設される第1及び第2の基板17,18上に配設されている。具体的には、第1の基板17上には第1〜第4の磁気センサ16a,16b,16c,16dが、第2の基板18上には第5〜第7の磁気センサ16e,16f,16gが、それぞれ磁石15の変位方向(X軸方向)において間隔をおいて配設されている。第1及び第2の基板17,18は、各磁気センサ16が設けられる側面をZ軸方向へ向けて配設される。
【0020】
<磁石>
図2に示すように、磁石15は、その変位方向に対して直交する方向においては2極着磁されるとともに、その変位方向においては多極着磁されてなる。具体的には、磁石15は複数の磁極部19が設けられている。各磁極部19は、磁石15の変位方向に対して直交する方向においS極とN極とが2極着磁される。また、各磁極部19は、磁石15の変位方向においてS極とN極とが交互に並ぶように多極着磁される。本例では、9つ、すなわち第1〜第9の磁極部19a〜19iが設けられている。同図において、左から順に第1〜第9の磁極部19a〜19iが設けられる。
【0021】
磁石15の変位方向において、各磁極部19間の着磁ピッチは部分的に異なる値に設定されている。各磁極部間の着磁ピッチλ1〜λ8の大小関係は次の通りである。なお、各着磁ピッチλ1〜λ8は、各磁極部19において磁石15の変位方向における長さを等分する中心軸O1〜O9において互いに隣り合う中心軸間の距離である。
【0022】
・λ7>λ6>λ1=λ8>λ2=λ3=λ4=λ5
ここで、λ1は第1及び第2の磁極部19a,19b間の着磁ピッチ、λ2は第2及び第3の磁極部19b,19c間の着磁ピッチ、λ3は第3及び第4の磁極部19c,19d間の着磁ピッチ、λ4は第4及び第5の磁極部19d,19e間の着磁ピッチである。また、λ5は第5及び第6の磁極部19e,19f間の着磁ピッチ、λ6は第6及び第7の磁極部19f,19g間の着磁ピッチ、λ7は第7及び第8の磁極部19g,19h間の着磁ピッチ、λ8は第8及び第9の磁極部19h,19i間の着磁ピッチである。
【0023】
磁石15は、シフトレバー12の操作を通じて、図2の右側に白抜きの矢印で示されるように、シフトレバー12の操作方向と反対側へ変位する。これは、シフトレバー12は磁石保持部材13のピボット14に支持されるからである。なお、図2は、シフトレバー12が駐車位置(P)に保持されているときの磁石15と各磁気センサ16との相対的な位置関係を示す。シフトレバー12が駐車位置(P)→中立位置(N)→前進位置(D)→回生ブレーキ位置(B)の順に操作されるごとに、磁石15はシフトレバー12の操作量に応じて図2の右方向へ変位する。
【0024】
<磁気センサ>
各磁気センサ16と磁石15との相対位置関係は次のように設定されている。すなわち、図2に示されるように、第1の磁気センサ16aは、第3の磁極部19cと第4の磁極部19dとの境界部分に対応して配設されている。第2の磁気センサ16bは、第5の磁極部19eの中心軸O1に対応する位置に配設されている。第3の磁気センサ16cは、第7の磁極部19gの中心軸O7を基準として第8の磁極部19h側に片寄って配設されている。第4の磁気センサ16dは、第7の磁極部19gの中心軸O7を基準として第6の磁極部19f側に片寄って配設されている。第5の磁気センサ16eは、第8の磁極部19hの中心軸O8を基準として第7の磁極部19g側に片寄って配設される。第6の磁気センサ16fは、第6の磁極部19fと第7の磁極部19gとの境界部分に対応して配設されている。また、第6の磁気センサ16fは、第6の磁極部19fの中心軸O6側へ若干片寄って配設されている。第7の磁気センサ16gは、第8の磁極部19hの中心軸O8を基準として第9の磁極部19i側に片寄って配設される。また、同図に示されるように、第1〜第7の磁気センサ16a〜16g(正確には、それらの中心)と磁石15の側面との距離Dはすべて同じ値に設定されている。各磁気センサ16は、磁石15の各磁極部間においてN極からS極へ向かう磁界が印加される。
【0025】
各磁気センサ16としては、例えば4つの磁気抵抗(MRE)がブリッジ状に接続されてなるいわゆるフルブリッジ型のMRセンサが採用される。この磁気センサは、各磁気抵抗のブリッジ回路及びその信号処理回路が単一のICチップとして集積回路化されてなる。磁気抵抗の抵抗値は、与えられる磁界(正確には、磁束の向き)に応じて変化する。
【0026】
各磁気センサは、前述したブリッジ状の回路の中点電位(アナログ信号)を、前記信号処理回路を構成するコンパレータを通じて、「1(オン)」又は「0(オフ)」の二値信号を生成する。すなわち、各磁気センサ16は、磁石15のスライド変位に伴う磁界(磁束)の方向の変化に応じて、「1」又は「0」の二値信号を生成する。
【0027】
なお、前記ブリッジ回路の中点電位であるアナログ信号は、各磁気センサ16に印加される磁界の方向が磁石15の変位方向に対して−45度(+135度)の角度をなすときに最大値(ピーク)を、同じく+45度(+225度)の角度をなすときに最小値(ボトム)をとるサイン波又はコサイン波である。当該アナログ信号の周期は180度である。本例では、各磁気センサ16に対して、図3に矢印A1で示される方向に沿った磁界(磁束)が印加された場合に最小値(ボトム)を、同じく矢印A2で示される方向に沿った磁界が印加された場合に最大値(ピーク)をとる。
【0028】
シフトレバー12が各操作位置に操作された場合に各磁気センサ16において生成される二値信号の組合せがすべて異なるように、各磁気センサ16の磁石15に対する相対的な位置関係が設定される。すなわち、シフトレバー12の操作に連動する磁石15の位置に応じて各磁気センサ16において生成される二値信号の組合せに基づきシフトレバー12の操作位置を特定可能となる。
【0029】
図4に示すように、シフト装置11のマイクロコンピュータ31は、各磁気センサ16から供給される二値信号の組合せに基づきシフトレバー12の操作位置を認識し、この認識されるシフトレバー12の操作位置に応じて自動変速機32に対する変速指令信号Scを生成する。自動変速機32は、当該変速指令信号Scを受けて内部の動力伝達経路の接続状態の切り替えを行う。
【0030】
<ハミング符号>
本例では、各磁気センサ16において生成される二値信号の組合せがハミング符号に準拠するように、磁石15の着磁パターン及び当該磁石15に対する各磁気センサ16の相対的な位置関係が調節されている。シフトレバー12の各操作位置と、各磁気センサから供給される二値信号との組合せは、例えば図5の一覧表に示されるようになる。なお、同図では、各行はシフトレバー12の操作位置(P,R,N,D,B)を、また各列は第1〜第7の磁気センサ16a〜16gを示す。
【0031】
同図に示されるように、シフトレバー12が駐車位置(P)に操作された場合、各二値信号の組合せは、「1011100」となる。シフトレバー12が駐車位置(R)に操作された場合、各二値信号の組合せは、「0101101」となる。シフトレバー12が駐車位置(N)に操作された場合、各二値信号の組合せは、「1000111」となる。シフトレバー12が駐車位置(D)に操作された場合、各二値信号の組合せは、「0101101」となる。シフトレバー12が駐車位置(B)に操作された場合、各二値信号の組合せは、「1010010」となる。
【0032】
詳述すると、ハミング符号とは、データ通信の際に通信路で生ずる符号誤りを訂正し通信の信頼性を高めるための誤り訂正符号のひとつである。本例では、このハミング符号を用いることにより、各二値信号の組み合わせにおける1つの誤りを検出して訂正することが可能となる。また、各二値信号の組み合わせにおける2つの誤りを検出することが可能となる。
【0033】
ハミング符号は、データビット(情報ビット)にチェックビット(冗長ビット)を付加したものである。データビットは、送信したい情報、すなわち本例ではシフトレバー12の操作位置(正確には、当該操作位置に対応する磁石15の位置)を示す情報を構成する。チェックビットは、誤りの検出及び訂正を行うためにデータビットに付加される情報である。本例では、第1〜第4の磁気センサ16a〜16dにおいて生成される二値信号がデータビットとされている。また、第5〜第7の磁気センサ16e〜16gにおいて生成される二値信号がチェックビットとされている。
【0034】
マイクロコンピュータ31は、各二値信号の組み合わせに基づいて、磁石15の各位置に対応する二値信号の組み合わせの1つの誤り信号に一対一で対応する誤り信号位置情報を生成する。そしてマイクロコンピュータ31は、当該誤り信号位置情報に基づいて、前記二値信号の組み合わせの誤り信号位置を特定し、この特定された誤り信号位置の二値信号を訂正する。
【0035】
前記自動変速機の接続状態を切り替えるに際して、マイクロコンピュータ31は、各磁気センサ16から供給される二値信号の組合せの誤りの有無を判定し、誤りがある旨判定される場合にはその誤りを訂正する。そして、マイクロコンピュータ31は、訂正した二値信号の組み合わせに基づきシフトレバー12の操作位置を認識する。
【0036】
<実施の形態の効果>
したがって、本実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)磁石15は、シフトレバー12の操作に連動して直線的に変位するように設けた。また、磁石15は、その変位方向に対して直交する方向においてS極及びN極が2極着磁される複数の磁極部16a〜16iが、当該変位方向においてもS極及びN極が交互に着磁されてなる。また、磁石15の変位方向に沿って間隔をおいて配設されて当該磁石15の変位に伴う磁界の変化に基づき二値信号を生成する複数個の磁気センサ16を設けた。そしてシフト装置11のマイクロコンピュータ31は、各磁気センサ16において生成される二値信号の組合せに基づきシフトレバー12操作位置を検出する。
【0037】
ここで、各磁気センサ16において生成される二値信号の組合せがハミング符号をなすように、磁石15の変位方向における各磁極部19間の着磁ピッチλ1〜λ8及び各磁極部19に対する各磁気センサ16の相対的な位置関係が調節されている。このため、シフト装置11では、1つの磁気センサ16に何らかの異常が発生した場合であれ、当該磁気センサ16において生成される二値信号を含む誤った二値信号の組合せを訂正し、正しい二値信号の組合せとすることができる。さらに、2つの磁気センサ16に何らかの異常が発生した場合にも、その異常の発生を検知することができる。したがって、シフトレバー12の操作位置の検出に対する信頼性が確保される。また、磁石15の着磁パターンについても、磁石15の変位方向及び当該変位方向に直交する方向のいずれの方向においても、S極及びN極を交互に着磁するだけでよい。このため、着磁パターン、ひいては磁石の構成の簡素化が図られる。
【0038】
(2)磁気センサ16として、印加される磁界の方向に応じて二値信号を生成するMRセンサを採用した。磁界の方向に応じて二値信号が生成されるので、磁石15の着磁パターンの簡素化が図られる。
【0039】
(3)各磁気センサ16は、磁石15を間に挟み、その変位方向に対して直交する方向において互いに反対側に配設した。このため、直方体状の磁石15の互いに反対側に位置する2つの長側面に沿って、複数個の磁気センサ16を配設することにより、当該磁石15の長大化を抑制することが可能となる。
【0040】
(4)1つの磁気センサ16の故障を検出可能とした非接触式のシフト装置を構築可能となる。
<他の実施の形態>
なお、前記実施の形態は、次のように変更して実施してもよい。
【0041】
・各二値化信号において、1つもしくは2つの誤りを検知した場合、マイクロコンピュータ31は、例えば車室内に設けられるインジケータランプ等の報知装置を通じて、その旨報知するようにしてもよい。また、マイクロコンピュータ31は、各二値化信号の組み合わせの誤りを訂正不能と判断した場合、自動変速機32の接続状態をニュートラルに切り替える旨指令する変速指令信号Scを生成するようにしてもよい。
【0042】
・本例では、シフトレバー12の操作位置に応じた変速指令信号Scを生成するようにしたが、単にシフトレバー12の操作位置を示す信号を生成するようにしてもよい。この場合には、自動変速機32側の電子制御装置は、シフト装置11のマイクロコンピュータ31から供給される信号に基づきシフトレバー12の操作位置を判定し、この判定される操作位置に応じて自動変速機32の動力伝達経路の切り換え制御を実行する。
【0043】
・本例では、磁気センサ16として、いわゆるフルブリッジ側のMRセンサを採用したが、例えば2つの磁気抵抗が直列に接続されてなるいわゆるハーフブリッジ型のMRセンサを採用してもよい。また、磁気センサ16としては、MRセンサ以外にも、ホール素子が使用されてなるホールセンサを採用することも可能である。
【0044】
・各磁気センサ16において生成される二値信号の組合せは、図5の表に示されるものに限られない。磁石15の着磁パターン及び各磁気センサ16の磁石15に対する相対的な位置関係の調節を通じて、異なる組合せとすることも可能である。
【0045】
・第1及び第2の基板17,18の磁石15に対する位置は、適宜変更可能である。例えば図2において、第1及び第2の基板17,18の位置を上下逆にしてもよい。
・磁石15の向きは適宜変更可能である。例えば、磁石15において、第1及び第2の基板17,18が対向している2つの側面を、シフトレバー12の軸方向において互いに反対側に位置するように磁石15の向きを変更する。ただし、各磁気センサ16の磁石15に対する相対的な位置関係は維持する。
【0046】
・本例では、シフトレバー12の各操作位置が直線状に配置される、いわゆるストレート型のシフトパターンを採用したが、例えば各操作位置がT字状、あるいはH字状に配置されてなるシフトパターンを採用することも可能である。この場合には、採用するシフトパターンに応じて複数個の磁石15を組み合わせて、当該磁石15に対して磁気センサ16を適宜配設して構成することが考えられる。
【0047】
・本例では、磁石15の両側に磁気センサ16を配置するようにしたが、片側のみに配設することも可能である。この場合には、磁石15の長さ、着磁パターン、及び磁気センサ16の配置を適宜調節する。
【0048】
・シフト装置11に限らず、ジョイスティック型の入力装置等にも適用可能である。レバーの操作位置を検出する。
<他の技術的思想>
次に、前記実施の形態から把握できる技術的思想を以下に追記する。
【0049】
・請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の位置検出装置において、前記磁石は前記操作部材の操作方向に沿って延びる直方体状に形成されてなる位置検出装置。この構成によれば、磁石の形成が簡単である。
【符号の説明】
【0050】
11…シフト装置、12…シフトレバー(操作部材)、15…磁石、19a〜19i…磁極部、16a〜16g…磁気センサ(MRセンサ)、21…位置検出装置、31…マイクロコンピュータ(制御装置)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部材の操作に連動して直線的に変位するとともに、当該変位方向に対して直交する方向においてS極及びN極が2極着磁される複数の磁極部が当該変位方向においてもS極及びN極が交互に着磁されてなる磁石と、
前記磁石の変位方向に沿って間隔をおいて配設されて前記磁石の変位に伴う磁界の変化に基づき二値信号を生成する複数個の磁気センサと、
前記各磁気センサにおいて生成される二値信号の組合せに基づき操作部材の操作位置を検出する制御装置と、を備え、
前記二値信号の組み合わせが、前記操作部材に連動する磁石の位置情報を構成するデータビットと、前記二値信号の組み合わせにおける1つの二値信号の誤りを訂正するためのチェックビットとを含むハミング符号に準拠したものとなるように、前記磁石の変位方向における各磁極部の着磁ピッチ及び当該各磁極部に対する各磁気センサの相対的な位置関係が設定されてなる位置検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の位置検出装置において、
前記磁気センサは、印加される磁界の方向に応じて二値信号を生成するMRセンサが採用されてなる位置検出装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の位置検出装置において、
前記磁気センサは、磁石を間に挟みその変位方向に対して互いに反対側に配設されてなる位置検出装置。
【請求項4】
直線状に配置して設定される複数の操作位置間を変位する操作部材と、当該操作部材の操作位置を検出する位置検出装置とを備え、当該位置検出装置の検出結果に基づき車両の変速機の接続状態を切り替えるシフト装置において、
前記位置検出装置として、請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の位置検出装置が採用されてなるシフト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−80839(P2011−80839A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232586(P2009−232586)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】