位置検出装置及び位置検出方法
【目的】GPS出力データの各成分について信頼度の有無及び誤差指標に基づいて補正処理を行って位置決定精度を向上する「位置検出装置及び位置検出方法」を提供することである。
【構成】GPSの測位周期で該GPSにより測定される車両の各方向位置成分データ及び速度成分データを用いて自律航法による位置計算結果及び該自律航法の位置計算に使用する車両速度、ピッチ角、センサー取り付け姿勢角を補正する補正処理を行い、GPSにより測定される車両の各方向の位置成分データ及び速度成分データの信頼度を判定すると共に、信頼度ありと判定された成分の誤差指標を算出し、信頼度が無いと判定された測定成分の補正処理における貢献度を零あるいは略零にし、信頼度有りと判定された測定成分の補正処理における貢献度を誤差指標の大きさに応じて小さくする。
【構成】GPSの測位周期で該GPSにより測定される車両の各方向位置成分データ及び速度成分データを用いて自律航法による位置計算結果及び該自律航法の位置計算に使用する車両速度、ピッチ角、センサー取り付け姿勢角を補正する補正処理を行い、GPSにより測定される車両の各方向の位置成分データ及び速度成分データの信頼度を判定すると共に、信頼度ありと判定された成分の誤差指標を算出し、信頼度が無いと判定された測定成分の補正処理における貢献度を零あるいは略零にし、信頼度有りと判定された測定成分の補正処理における貢献度を誤差指標の大きさに応じて小さくする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の現在位置を検出する位置検出装置および位置検出方法に関わり、特に、自律航法により計算される位置データの精度を向上できる位置検出装置および位置検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用ナビゲーション装置は、自律航法センサーを用いた自律航法(Dead Reckoning)とGPS(Global Positioning System)レシーバを用いたGPS航法を併用している。
自律航法は、車両の加速度を検出する加速度センサーや車両の方位変化量を検出する相対方位センサー(ジャイロ等)、車両の速度(距離)を検出する距離センサー(車速センサー等)の出力を用いて、車両の位置・方位・車速等を検出する方法である。しかし、自律航法の出力(位置・方位・車速等)には、センサーの誤差が含まれるため、誤差が生じる。特に、位置、方位はセンサー出力を積算して算出するため、誤差が徐々に累積する。一方、GPSレシーバは、最大位置誤差が通常環境で30m程度で絶対的な位置、方位、車速を求めることができる。このため、GPS受信時に自律航法の出力を該GPSレシーバの出力に整合させることにより、累積により誤差が大きくなったときの補正が可能である。例えば、自律航法で得られた位置を周知のマップマッチング法により道路地図上の道路位置に自車位置を修正した時の位置と、GPSレシーバで得られた位置との差が所定値より大きくなった時に、道路地図上の位置をGPSでレシーバ得られた位置に修正する。
【0003】
ところで、自律航法は、上述のようにGPSレシーバの出力により補正することができるが、GPS非受信時においてセンサー出力の誤差、センサー取り付け誤差により自律航法の誤差が累積し出力精度が悪くなる問題が生じる。特に、立体駐車場や地下駐車場ではGPS信号が届かないため、100m程の最大位置誤差が発生し、また、都心部では反射したGPS信号を受けることが多く、マルチパスが発生すると、300m程の最大位置誤差が発生する。
以上より、センサー出力の誤差を修正して現在位置を求める方法が提案されている。第1従来技術(特許文献1参照)は、自律推測航法から求められる車両の位置、方位、車速の情報とGPSレシーバから出力される車両の位置、方位、車速の情報により、カルマンフィルタにて、オフセット誤差、距離係数誤差、絶対方位誤差、絶対位置誤差を求めて、自律航法におけるそれぞれの補正を行う。
【0004】
ところで、カルマンフィルタ処理にGPS出力(緯度、経度、高度の3方向位置データ、3方向速度データ)を適用するには、GPS出力の各成分データについて誤差指標を必要とする(特許文献1参照)。しかし、多くのGPSレシーバは水平位置に関する誤差指標しか出力せず、このためGPS出力データのうち誤差指標のないGPS出力データをカルマンフィルタ処理に利用できなかった。そこで、誤差指標を単純な計算により求めることが行われるが、適正な誤差指標を使う場合に比べて位置推定精度が大きく劣る。また、従来のGPS出力データは都心などではマルチパスの影響で精度が劣化し、その際誤差指標も不正確となる(誤差が大きいはずなのに、小さい数字を出す)。かかる場合、GPS出力データをカルマンフィルタ補正処理に使用すると位置推定精度が大きく落ちる。
上記問題を解決する方法は、全GPS出力成分について誤差指標を出力するGPSレシーバ(u-blox社製等)を使うことである。しかし、かかるGPSレシーバは高価であり、採用することができない。なお、誤差の少ないGPS出力データを選択的に用いることにより、位置決定精度を向上させるGPSナビゲーション装置があるが(特許文献2)、誤差の大小に基づいてカルマンフィルタ補正処理を制御するものではない。
【特許文献1】特開2001−337150
【特許文献2】特開平8−334338
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上から、本発明の目的は、誤差指標を出力しないGPSレシーバの測定データ(緯度、経度、高度の3方向位置データ、緯度、経度、高度の3方向速度データ)を補正処理に適用できるようにすることである。
本発明の目的は、GPS出力データの各成分について信頼度の有無を判定し、信頼度有りの場合の誤差指標を計算し、これら信頼度の有無及び計算した誤差指標に基づいて補正処理を行って位置決定精度を向上することである。
本発明の目的は、GPS出力データの各成分について信頼度の有無を判定し、信頼度が無いと判定されたGPS出力データの補正処理における貢献度を零あるいは略零にして位置決定精度を向上することである。
本発明の目的は、GPS出力データの各成分について信頼度の有無を判定し、信頼度有りと判定されたGPS出力データの誤差指標を計算し、補正処理における貢献度を該誤差指標の大きさに応じて小さくして位置決定精度を向上することである。
本発明の目的は、測定成分が1つでも信頼度が無いと判定された場合には補正処理を行わず、全ての測定成分が信頼度有りと判定された場合に補正処理を行うと共に、該補正処理における各測定成分の貢献度を誤差指標に応じて小さくして位置決定精度を向上することである。
本発明の目的は、速度成分グループと位置成分グループに分け、グループ毎に、測定成分が1つでも信頼度が無いと判定された場合には補正処理を行わず、全ての測定成分が信頼度有りと判定された場合に補正処理を行うと共に、該補正処理における各測定成分の貢献度を誤差指標に応じて小さくして位置決定精度を向上することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
・位置検出方法
本発明の第1は、車両の現在位置を検出する位置検出方法である。
本発明の第1の位置検出方法は、所定の周期で自律航法により車両の位置を計算するステップ、前記周期より長いGPSレシーバの測位周期で該GPSレシーバにより測定される車両の各方向位置成分及び速度成分を用いて前記自律航法による位置計算結果及び該自律航法の位置計算に使用する車両速度、ピッチ角、センサー取り付け姿勢角を補正する補正処理を行うステップ、前記GPSレシーバにより測定される車両の各方向の位置成分及び速度成分の信頼度を判定すると共に、信頼度ありと判定された成分の誤差指標を算出するステップ、信頼度が無いと判定された測定成分の前記補正処理における貢献度を零あるいは略零にし、信頼度有りと判定された測定成分の前記補正処理における貢献度を前記誤差指標の大きさに応じて小さくするステップを備えている。
本発明の第2の位置検出方法は、所定の周期で自律航法により車両の位置を計算するステップ、前記周期より長いGPSレシーバの測位周期で該GPSレシーバにより測定される車両の各方向位置成分及び速度成分を用いて前記自律航法による位置計算結果及び該自律航法の位置計算に使用する車両速度、ピッチ角、センサー取り付け姿勢角を補正する補正処理を行うステップ、前記GPSレシーバにより測定される車両の各方向の位置成分及び速度成分の信頼度を判定すると共に、信頼度ありと判定された成分の誤差指標を算出するステップ、測定成分が1つでも信頼度が無いと判定された場合には前記補正処理を行わず、全ての測定成分が信頼度有りと判定された場合には前記補正処理を行うと共に、該補正処理における各測定成分の貢献度を前記誤差指標に応じて小さくするステップを備えている。
本発明の第3の位置検出方法は、所定の周期で自律航法により車両の位置を計算するステップ、前記周期より長いGPSレシーバの測位周期で該GPSレシーバにより測定される車両の各方向位置成分及び速度成分を用いて前記自律航法による位置計算結果及び該自律航法の位置計算に使用する車両速度、ピッチ角、センサー取り付け姿勢角を補正する補正処理を行うステップ、前記GPSレシーバにより測定される車両の各方向の位置成分及び速度成分の信頼度を判定すると共に、信頼度ありと判定された成分の誤差指標を算出するステップ、GPS測定成分を速度成分グループと位置成分グループに分け、グループ毎に、測定成分が1つでも信頼度が無いと判定された場合には該グループの測定成分を用いた補正処理を行わず、グループ全ての測定成分が信頼度有りと判定された場合に該グループの測定成分を用いた補正処理を行うと共に、該補正処理における各測定成分の貢献度を誤差指標に応じて小さくするステップ、を備えている。
上記第1、第2、第3の位置検出方法は、前記自律航法による位置計算周期より長く、かつ、前記GPS周期以下の周期で、移動距離検出センサーの出力信号を用いて車両速度を測定し、該車両速度と前記自律航法で計算した前記車両速度との速度差に基づいて、自律航法で用いる前記車両速度、前記ピッチ角、前記センサーの取り付け姿勢角を補正するステップを有している。
【0007】
・位置検出装置
本発明の第2は、車両の現在位置を検出する位置検出装置である。
本発明の第1の位置検出装置は、所定の周期で自律航法により車両の位置を計算する自律航法部、前記周期より長いGPSレシーバの測位周期で該GPSレシーバにより測定される車両の各方向位置成分及び速度成分を用いて、前記自律航法による位置計算結果及び該自律航法の位置計算に使用する車両速度、ピッチ角、センサー取り付け姿勢角を補正する補正処理を行なう補正部、前記GPSレシーバにより測定される車両の各方向の位置成分及び速度成分の信頼度を判定すると共に、信頼度ありと判定された成分の誤差指標を算出するGPSデータ判定部を備え、前記補正部は、信頼度が無いと判定された測定成分の前記補正処理における貢献度を零あるいは略零にし、信頼度有りと判定された測定成分の前記補正処理における貢献度を前記誤差指標の大きさに応じて小さくする手段を備えている。
本発明の第2の位置検出装置は、所定の周期で自律航法により車両の位置を計算する自律航法部、前記周期より長いGPSレシーバの測位周期で該GPSレシーバにより測定される車両の各方向位置成分及び速度成分を用いて前記自律航法による位置計算結果及び該自律航法の位置計算に使用する車両速度、ピッチ角、センサー取り付け姿勢角を補正する補正処理を行なう補正部、前記GPSレシーバにより測定される車両の各方向の位置成分及び速度成分の信頼度を判定すると共に、信頼度ありと判定された成分の誤差指標を算出するGPSデータ判定部を備え、前記補正部は、測定成分が1つでも信頼度が無いと判定された場合には前記補正処理を行わないよう制御する手段、全ての測定成分が信頼度有りと判定された場合には前記補正処理を行うと共に、該補正処理における各測定成分の貢献度を前記誤差指標に応じて小さくする手段を備えている。
本発明の第3の位置検出装置は、所定の周期で自律航法により車両の位置を計算する自律航法部、前記周期より長いGPSレシーバの測位周期で該GPSレシーバにより測定される車両の各方向位置成分及び速度成分を用いて前記自律航法による位置計算結果及び該自律航法の位置計算に使用する車両速度、ピッチ角、センサー取り付け姿勢角を補正する補正処理を行なう補正部、前記GPSレシーバにより測定される車両の各方向の位置成分及び速度成分の信頼度を判定すると共に、信頼度ありと判定された成分の誤差指標を算出するGPSデータ判定部を備え、前記補正部は、GPS測定成分を速度成分グループと位置成分グループに分け、グループ毎に、測定成分が1つでも信頼度が無いと判定された場合には該グループの測定成分を用いた補正処理を行わないようにする手段、グループの全ての測定成分が信頼度有りと判定された場合に該グループの測定成分を用いた補正処理を行うと共に、該補正処理における各測定成分の貢献度を誤差指標に応じて小さくする手段備えている。
上記第1、第2、第3の位置検出装置は、前記自律航法による位置計算周期より長く、かつ、前記GPS周期以下の周期で、移動距離検出センサーの出力信号を用いて車両速度を測定し、該車両速度と前記自律航法で計算した前記車両速度との速度差に基づいて、自律航法で用いる前記車両速度、前記ピッチ角、前記センサーの取り付け姿勢角を補正する第2の補正部を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、GPS出力データの各成分について信頼度の有無を判定し、信頼度が無いと判定されたGPS出力データの補正処理における貢献度を零あるいは略零にしたから、位置決定精度を向上することができる。
本発明によれば、GPS出力データの各成分について信頼度の有無を判定し、信頼度有りと判定されたGPS出力データの誤差指標を計算し、補正処理における貢献度を該誤差指標の大きさに応じて小さくしたから、位置決定精度を向上することができる。
本発明によれば、誤差指標を出力しないGPSレシーバであっても、GPS測定データ(緯度、経度、高度の3方向位置データ、緯度、経度、高度の3方向速度データ)の信頼度の有無を判定でき、しかも、信頼度有りの場合の誤差指標を計算できるため、高価なGPSレシーバを使用しなくてもカルマンフィルタを用いた補正処理を行うことができる。
本発明によれば、GPS測定成分が1つでも信頼度が無いと判定された場合には補正処理を行わず、全ての測定成分が信頼度有りと判定された場合に補正処理を行うと共に、該補正処理における各測定成分の貢献度を誤差指標に応じて小さくしたから、位置決定精度を向上することができる。
本発明によれば、速度成分グループと位置成分グループに分け、グループ毎に、測定成分が1つでも信頼度が無いと判定された場合には該グループの測定成分を用いた補正処理を行わず、全ての測定成分が信頼度有りと判定された場合に補正処理を行うと共に、該補正処理における各測定成分の貢献度を誤差指標に応じて小さくしたから、グループ毎の測定精度に差がある場合、グループ毎に補正処理を制御して位置決定精度を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(A) 本発明の概要
図1は本発明の位置検出装置の説明図であり、自律航法用センサー11、自律航法部12、GPSレシーバ14、GPSデータ判定部(GPSフィルタ)15、補正部(カルマンフィルタ処理部)16を備えている。自律航法用センサー11は車両の移動距離を測定する移動距離検出部(車速センサー)、車両の方位変化量に応じた信号を出力する相対方位センサー(ジャイロ)、車両の加速度を検出する加速度センサーを備え、自律航法部12は所定の周期で自立航法センサー出力信号を用いて自律航法により車両の位置を計算する。GPSレシーバ14はGPS測位周期、たとえば1秒間隔でGPS衛星から受信した信号に基づいて三次元位置(緯度、経度、高さ)、三次元速度(北方向速度、東方向速度、上下方向速度)を計算して出力する。GPSデータ判定部15は、信頼度判定部15aと誤差指標計算部15bを備え、信頼度判定部15aはGPSレシーバにより測定される車両の各方向の位置成分データ及び速度成分データのそれぞれの信頼度を判定し、誤差指標計算部15bは信頼度無しの場合には、該成分データの誤差指標を補正処理に貢献しないように大きな値にし、信頼度ありと判定された場合には、該成分データの誤差指標を算出する。
補正部16は、GPSレシーバ14により測定される車両の各方向位置成分データ、速度成分データ及び各成分データの誤差指標を用いて自律航法部12により計算された位置計算結果及び該自律航法部の位置計算に使用する車両速度、ピッチ角、センサー取り付け姿勢角を補正する補正処理を行なう。
この場合、補正部16は、信頼度が無いと判定された測定成分の補正処理における貢献度を零あるいは略零にし、信頼度有りと判定された測定成分の補正処理における貢献度を誤差指標の大きさに応じて小さくする。
あるいは、補正部16は、GPS測定成分が1つでも信頼度が無いと判定された場合には前記補正処理を行わないよう制御し、全ての測定成分が信頼度有りと判定された場合には補正処理を行うと共に、該補正処理における各GPS測定成分の貢献度を誤差指標に応じて小さくする。
あるいは、補正部16は、GPS測定成分データを速度成分グループと位置成分グループに分け、グループ毎に、測定成分が1つでも信頼度が無いと判定された場合には該グループの測定成分を用いた補正処理を行わない。しかし、グループ全ての測定成分が信頼度有りと判定された場合に該グループの測定成分を用いた補正処理を行うと共に、該補正処理における各測定成分の貢献度を誤差指標に応じて小さくする。
【0010】
(B)位置検出装置
図2は本発明の位置検出装置の詳細な構成図である。この位置検出装置には、自律航法用センサー11として、車両の移動距離を測定する移動距離検出部、たとえば車両が所定距離走行する毎に1個のパルスを発生する車速センサー11a、車両の方位変化量に応じた信号を出力する相対方位センサーであるジャイロ11b、車両の加速度を検出する加速度センサー11cが設けられている。車速センサー11aは車輪に取り付けられ、ジャイロ11bおよび加速度センサー11cは一体にダッシュボードの所定位置に装着される。ジャイロ11bおよび加速度センサー11cは、側面から見たとき、車両方向と平行して車両に取り付けられるのが理想であるが、図3(A)に示すように取り付け誤差があり、センサー方向は車両方向に角度A(取り付けピッチ角)を成して取り付けられる。なお、水平方向とセンサー方向の角度θをピッチ角といい、ピッチ角は傾斜角と取り付けピッチ角の和である。また、ジャイロ11bおよび加速度センサー11cは、平面に投影したとき、車両方向と一致して車両に取り付けられるのが理想であるが、取り付け誤差があり、図3(B)に示すように、センサー方向は車両方向に角度A2(取り付けヨー角)を成して取り付けられる。なお、北方向とセンサー方向の角度Yをヨー角といい、ヨー角Yは車両方向と取り付けヨー角の和である。
【0011】
自律航法部12は、各自律センサーからの出力信号を用いて高速度で、たとえば25Hzの周期で前後方向の車両速度Vsp(k)、車両の3次元位置(緯度方向位置N(k)、経度方向位置E(k)、高さD(k))を計算して出力する。図4は加速度センサー11cから出力する加速度信号を用いて車両速度Vsp(k)を計算する方法の説明図である。車両CARには鉛直方向に重力加速度Gが加わっており、取り付けピッチ角Aが0の場合、(A)に示すように、その傾斜方向成分G0は
G0=G×sinβ
である。したがって、加速度センサー11cが測定する加速度Accは、車両の移動に伴う進行方向の加速度G1と重力の傾斜方向成分の和となり、次式
Acc=G×sinβ+G1
で表現できる。なお、上式においてG×sinの符号は上り走行であれば負、下り走行であれば正である。取り付けピッチ角Aが0でない場合、(B)に示すように、加速度センサー11cはピッチ角θ(=β+A)方向の加速度Accが測定される。したがって、(C)に示すようにピッチ角方向の重力加速度成分はG×sinθとなり、ピッチ角方向の車両移動に伴う加速度成分はG1×cosAとなり、次式
Acc= G×sinθ+ G1×cosA
が成立し、取り付けヨー角A2を考慮すると、次式
Acc= G×sinθ+ G1×cosA×cosA2
が成立する。この結果、傾斜方向の加速度G1は次式
G1=( Acc−G×sinθ)/ (cosA×cosA2) (1)
で表現できる。加速度測定周期をT1とすれば、変化速度ΔVは次式
ΔV=T1×( Acc−G×sinθ)/ (cosA×cosA2)
で与えられる。したがって、速度Vsp(k+1)は1つ前の離散時刻kにおける速度Vsp(k)とΔVより
Vsp(k+1)=Vsp(k)+T1×( Acc−G×sinθ)/ (cosA×cosA2) (2)
で与えられる。尚、加速度AccのオフセットをαOFとすれば加速度センサーの出力信号AccからαOFを差し引いた値をAccとして(2)式の演算を行う。すなわち、
Acc=Acc−αOF
とする。
【0012】
また、自律航法部12は、車両の3次元位置(緯度N(k)、経度E(k)、高さD(k))を次式により計算して出力する。
N(k+1)= N(k) +S(cosθcosY cosAcosA2+sinY sinA2+sinθcosY sinAcosA2)
E(k+1)= E(k) +S(cosθsinY cosAcosA2−cosY sinA2+sinθsinY sinAcosA2)
D(k+1)= D(k) +S(−sinθcosAcosA2+cosθ sinAcosA2) (3)
ただし、S=(サンプル時間T1あたりの車速パルス数×パルス間距離)
=車がサンプル時間当たりに車両方向に進んだ距離
であり、4つの角度(θ、A、Y、A2)を使って、SをN-E-D座標系(North−East−Down座標系)に投影している。
速度計算部13は、所定の周期T2(たとえば10Hzの周期)で車速センサー11aから出力するパルス数Nと1パルスあたりの移動距離Lを用いて次式
Vx=N×L/T2 (4)
により車速度を計算する。
GPSレシーバ14はGPS測位周期、たとえば1秒間隔でGPS衛星から受信した信号に基づいて三次元位置(緯度、経度、高さ)、三次元速度(北方向速度、東方向速度、上下方向速度)を計算して出力する。
【0013】
GPSフィルタ15は、図5に示すように信頼度判定部15aと誤差指標計算部15bを備え、信頼度判定部15aはGPSレシーバにより測定される車両の各方向の位置成分データ(緯度、経度、高さ)及び速度成分データ(北方向速度、東方向速度、上下方向速度)のそれぞれの信頼度を判定し、誤差指標計算部15bは信頼度無しの場合には、該成分データの誤差指標を補正処理に貢献しないように大きな値(例えば1000)にし、信頼度ありと判定された場合には、該成分データの誤差指標を算出する。信頼度判定部15aは、北・東方向速度信頼度判定部31、上下方向速度信頼度判定部32、GPS緯度・経度信頼度判定部33、GPS高度信頼度判定部34を備え、誤差指標計算部15bは、北・東方向速度誤差指標計算部35、上下方向速度誤差指標計算部36、GPS緯度・経度誤差指標計算部37、GPS高度誤差指標計算部38を備えている。位置成分データ(緯度、経度、高さ)の誤差指標をδPx,δPy,δPzと表現し、速度成分データ(北方向速度、東方向速度、上下方向速度)の誤差指標をδVx,δVy,δVzと表現する。
GPSフィルタ15は、GPSレシーバにより測定される車両の各方向の位置成分データ(緯度、経度、高さ)及び速度成分データ(北方向速度、東方向速度、上下方向速度)及び各成分データの誤差指標をカルマンフィルタ処理部16に入力する。
信頼度判定部15aによる信頼度判定処理及び誤差指標計算処理は図6乃至図17にしたがって後述する。
【0014】
カルマンフィルタ処理部16は、ジャイロオフセット補正部20と第1の補正部21と第2の補正部22を備えている。なお、カルマンフィルタ処理部16は、第1の補正部21を除外した構成とすることができる。
ジャイロオフセット補正部20は、速度Vxが零(即ち、停車中)の時、停車中における角速度信号が[オフセット+ノイズ]であることを利用し、該角速度信号出力ωOFと自律航法部12で計算する角速度信号オフセットとの差をとり、後述のカルマンフィルタ処理により角速度信号オフセットωOFの補正を短時間で行う。
自律航法部12はジャイロ11bの出力信号を用いて計測した角速度信号ωから方位変化Δω(k)を次式
Δω(k)=(ω−ωOF)×T1
により計算し、また周知の慣性航法システムの技術から導出される次式に基づいてピッチ角θとヨー角Yを求めて更新する。
c00=cosθ(k+1) ×cosY(k+1) =−sinY(k)× Δω(k)
c10=cosθ(k+1) ×sinY(k+1) = cosY(k) ×Δω(k) (5)
なお、自律航法部12はセンサー取り付けピッチ角A、センサー取り付けヨー角A2、角速度信号オフセットωOF、加速度信号オフセットαOFについては次式により、
A(k+1)=A(k)
A2(k+1)=A2(k)
ωOF(k+1)=ωOF(k)
αOF(k+1)=αOF(k) (6)
補正されるまで一定とする。
【0015】
カルマンフィルタ処理部16の第1の補正部21は、第1の周期(たとえば10Hz周期)で第1のカルマンフィルタ処理を行う。第1のカルマンフィルタ処理において第1の補正部21は、速度計算部13が計算した車両速度Vxと自律航法部12が計算した車両速度Vspとの差に基づいて、該自律航法部で計算している車両速度Vsp、ピッチ角θ、センサー取り付けピッチ角A、センサー取り付けヨー角A2、角速度信号オフセットωOF、加速度信号オフセットαOFを補正する。
カルマンフィルタ処理部の第2の補正部22は、第1の周期より長い第2の周期(たとえば1Hz周期)でGPSレシーバ14が出力する車両の各方向の位置成分データ(緯度、経度、高さ)、速度成分データ(北方向速度、東方向速度、上下方向速度)及び各成分データの誤差指標ならびに自律航法部12が出力する三次元の車両位置と三次元の車両速度を用いて、該自律航法部で計算している緯度、経度、高さ方向の車両位置、車両速度、前記ピッチ角θ、センサー取り付けピッチ角A、前記ヨー角Y、センサー取り付けヨー角A2、角速度信号オフセットωOF、加速度信号オフセットαOF(自律航法で計算している全てのパラメータ)を補正する。なお、第2の補正部22は信頼度が無いと判定された測定成分データの補正処理における貢献度を零あるいは略零にし、信頼度有りと判定された測定成分データの補正処理における貢献度を誤差指標の大きさに応じて小さくする。
第1、第2の補正部21,22によるカルマンフィルタ処理の詳細は後述する。
自律航法部12は第1の補正部21により10Hz周期で更新されるピッチ角θ、車両取り付けピッチ角A、センサー取り付けヨー角A2を用いて車両速度や車両位置を(2)、(3)式により演算し、また、第2の補正部22により1Hz周期で更新されるピッチ角θ、車両取り付けピッチ角A、ヨー角Y、車両取り付けヨー角A2を用いて車両速度や車両位置を(2)、(3)式により演算して出力する。
【0016】
(C)信頼度判定及び誤差指標計算
図6乃至図17は信頼度判定及び誤差指標計算処理フローである。
GPSフィルタ15は図6に示す順序で信頼度測定、誤差指標計算処理を行う。すなわち、信頼度判定部15aは、北・東方向速度の信頼度判定(ステップ10)、上下方向速度の信頼度判定(ステップ200)、GPS緯度・経度の信頼度判定(ステップ300)、GPS高度の信頼度判定 (ステップ400) を行い、誤差指標計算15bは北・東方向速度誤差指標δVx,δVyの計算(ステップ500)、上下方向速度誤差指標δVzの計算(ステップ600)、GPS緯度・経度誤差指標δPx,δPyの計算(ステップ700)、GPS高度誤差指標δPzの計算(ステップ800)を行う。
(a)信頼度判定処理
1)北・東方向速度の信頼度判定処理
図7〜図9は北・東方向速度の信頼度判定処理フローである。
信頼度判定部15aの北・東方向速度信頼度判定部31(図5)は、今回のGPS速度が予測速度範囲内であるかチェックする(ステップ101)。例えば図8に示すように、前回の速度と予測最大加速度とから今回の予測速度範囲VRNGを計算し(ステップ101a)、ついで、今回の実速度Vを測定し(ステップ101b)、実速度Vと予測速度範囲VRNGを比較し(ステップ101c)、V<VRNGであればステップ101において「YES」と判定し(ステップ101d)、V≧VRNGであればステップ101において「NO」と判定する(301e)。
ついで、北・東方向速度信頼度判定部31は、GPS測定データから得られるGPS方位θGPSに信頼度があるか判定する(ステップ102)。図9はGPS方位θGPSの信頼度判定処理フローである。まず、GPS測定可能であるかチェックし(ステップ102a)、測定不可能であれば、GPS方位θGPSは信頼度が無く、ステップ102において「NO」と判定する(ステップ102e)。測位可能であれば、以下の(1)〜(4)の測位条件を満たすか否か判定する(ステップ102b)。
(1)GPS測位状態が3次元測位であること。これは、3次元測位は、2次元測位に比べて精度が高いためである。
(2)GPS速度が閾値以上であること(例えば、20Km/h)。これは低速の場合には、GPS方位の精度が悪化するためである。
(3)走行距離比率αが一定の範囲以内であること(例えば、0.9≦走行距離比率≦1.1)。
走行距離比率は、GPS位置から得られる走行距離と、車速パルスから得られる走行距離の比である。この比が1に近いほど、GPS測位データの精度が高いことを示している。
(4)進行角誤差βが閾値以下(例えば、進行角誤差≦30度)であること。
進行角誤差は、GPS位置の2点間の角度とGPS方位との差である。進行角誤差が0に近いほど、GPS測位データの精度が高いことを示している。
以上の測位条件(1)ないし(4)のすべてを満足するとき、GPS方位θGPSは信頼度が有るとして、ステップ102において「YES」と判定する(302f)。
ステップ102bのいずれかの測位条件を満足しなければ、北・東方向速度信頼度判定部31は、GPS方位θGPSと自律航法により取得した航法方位θgyroが類似性があるか判定する(ステップ102c)。すなわち、北・東方向速度信頼度判定部31はGPS方位とθGPSと航法方位θgyroの類似性を次式に
Δθ=|(θGPS1−θGPS2)−θgyro|≦10(degree) (7)
より判定する。上式において、θGPS1は今回のGPS方位、θGPS2は前回のGPS方位、θgyroは今回の航法方位である。Δθが10度より大きい場合には、両者の方位に類似性がなく、GPS方位の信頼度はないと判定する(ステップ102e)。
Δθが10度より小さければ、今回のGPS方位θGPS1が予測範囲内であるかチェックし(ステップ102d)、予測範囲外であればGPS方位の信頼度はないと判定し(ステップ102e)、予測範囲内であればGPS方位θGPSは信頼度が有ると判定する(ステップ102f)。予測範囲は、車両の直線性に依存するため、まず、移動が直線性か否かを判定する。直線性の移動であれば次式
Δθ′=|θGPS1−(θt-1+θgyro)|≦10(degree) (8)
により予測範囲を設定し、GPS方位θGPS1が予測範囲内に存在するか否かを判定する。なお、θt-1に前回の進行角である。直線性の移動でなければ、Δθ′≦14(degree)により予測範囲を設定し、GPS方位θGPS1が予測範囲内に存在するか否かを判定する。
ステップ102において、GPS方位θGPSに信頼度があるか判定すれば、GPS傾斜角θGPS-SLを次式
【数1】
により計算する(ステップ103)。ただし、VNGPSは北方向速度、VEGPS は東方向速度、VDGPSは上下方向速度である。ついで、GPS傾斜角θGPS-SLの絶対値が10(degree)以下であるか判定する(ステップ104)。これは道路交通法により10(degree)以上傾斜する道路は存在しないからである。GPS傾斜角θGPS-SLの絶対値が10(degree)より大きければ、北方向速度信頼度フラグ及び東方向速度信頼度フラグを共にオフ(信頼度なし)と設定し(ステップ105)、GPS傾斜角θGPS-SLの絶対値が10(degree)より小さければ、北方向速度信頼度フラグ及び東方向速度信頼度フラグを共にオン(信頼度あり)と設定する(ステップ106)。
【0017】
2)上下方向速度の信頼度判定処理
図10は上下方向速度の信頼度判定処理フローである。
信頼度判定部15aの上下方向速度信頼度判定部32(図5)は、GPS傾斜角の信頼性が高いかチェックし(ステップ201)、GPS傾斜角の信頼性が高ければ、上下方向速度の信頼度は高いと判断し、上下方向速度信頼度フラグをオンし(ステップ202)、GPS傾斜角の信頼性が低ければ、上下方向速度の信頼度は低いと判断し、上下方向速度信頼度フラグをオフする(ステップ203)。
ステップ201において、上下方向速度信頼度判定部32は、まずGPSレシーバが3次元測位状態であるか判断し(ステップ211)、3次元測位状態でなければ、GPS傾斜角度の信頼度は低いと判定し(ステップ212)、上下方向速度信頼度フラグをオフする(ステップ203)。
上下方向速度信頼度判定部32は、3次元測位状態であれば、(9)式によりGPS傾斜角θGPS-SLを計算する(ステップ213)。ついで、信頼度判定部32は、算出したGPS傾斜角θGPS-SLの履歴がN個(例えば、N=5)たまったかどうかを判定する(ステップ214)。この判定は、GPS傾斜角θGPS-SLの標準偏差を算出するのに必要なサンプル数がたまったかどうかの判定である。ここで、GPS傾斜角θGPSの履歴がN個たまったと判断した場合、続いて上下方向速度信頼度判定部32は、次の3つの条件
(1) GPS速度が10km/h以上であること、
(2)算出したGPS傾斜角θGPS-SLの絶対値が10度以下であること、
(3)算出したGPS傾斜角θGPS-SLの標準偏差が3度以下であること
を全て満たすかどうか判定する(ステップ215)。
上下方向速度信頼度判定部32は、上述の3つの条件を全て満たしていれば、GPS傾斜角θGPS-SLに信頼性があると判定し(ステップ216)、上下方向速度信頼度フラグをオンする(ステップ202)。一方、上述の3つの条件を1つでも満たしていなければ、GPS傾斜角θGPS-SLに信頼性がないと判定し(ステップ212)、上下方向速度信頼度フラグをオフする(ステップ203)。
【0018】
3)GPS緯度・経度の信頼度判定処理
図11はGPS緯度・経度の信頼度判定処理フローである。
信頼度判定部15aのGPS緯度・経度信頼度判定部33(図5)は以下の測位条件(1)〜(4)を満たすか否か判断する(ステップ301)。
(1)GPS測位状態が3次元測位であること。
(2)GPS速度が閾値(例えば、10Km/h)以上であること。
(3)走行距離比率αが一定の範囲以内(例えば、0.9≦走行距離比率≦1.1)であること。
(4)進行角誤差βが閾値以下(例えば、進行角誤差≦30度)であること。
以上の測位条件(1)ないし(4)のすべてを満足するとき、GPS緯度・経度の信頼度が高いと判定し(ステップ302)、GPS緯度信頼度フラグ、GPS経度信頼度フラグを共にオンする(ステップ303)。一方、上記測位条件の1つでも満足しなければ、GPS緯度・経度の信頼度が低いと判定し(ステップ304)、GPS緯度信頼度フラグ、GPS経度信頼度フラグを共にオフする(ステップ305)。
【0019】
4)GPS高度の信頼度判定処理
図12はGPS高度の信頼度判定処理フローである。
信頼度判定部15aのGPS高度信頼度判定部34(図5)は、GPS緯度・経度の信頼度がオンであるか判断し(ステップ401)、GPS緯度・経度の信頼度がオフであれば、GPS高度信頼度フラグをオフする(ステップ402)。一方、ステップ401において、GPS緯度・経度の信頼度がオンであれば、上下方向速度信頼度フラグがオンであるかチェックし(ステップ403)、上下方向速度信頼度フラグがオフであれば、GPS高度信頼度フラグをオフする(ステップ402)。しかし、ステップ403において、上下方向速度信頼度フラグがオンであれば、GPS高度信頼度フラグをオンする(ステップ405)。すなわち、GPS緯度・経度の信頼度および上下方向速度信頼度フラグが共にオンであれば、GPS高度の信頼度は高いとしてGPS高度信頼度フラグをオンし、それ以外はオフする。
【0020】
(b)誤差指標計算処理
誤差指標(標準偏差σ)は、リファレンス用の膨大な蓄積誤差データとGPSレシーバから得られるパラメータとの関連付けから得られる近似式を用いて計算する。この近似式は、まず誤差と関連のあるパラメータ(誤差因子)を選び、次にそれぞれの誤差因子を用いて蓄積誤差データの誤差指標(標準偏差σ)をあらわす近似式を決定する。最後に品質工学の手法を用いてそれぞれの近似式へのウェイトを決定して重み付けを行った和をとり、平方根をとる。
1)北・東方向速度の誤差指標計算処理
図13は北・東方向速度の誤差指標計算処理フローである。
信頼度判定部15aの北・東方向速度誤差指標計算35(図5)は、北・東方向速度信頼度フラグがオフであるか判断し(ステップ501)、オフであれば精度が悪いから北方向速度の誤差指標δVx,東方向速度の誤差指標δVyを共に1000m/s とする(ステップ502)。
ステップ501において、北・東方向速度誤差指標計算35は、北・東方向速度信頼度フラグがオンであれば、3次元測位状態であるかチェックし(ステップ503)、3次元測位状態でなければ、2次元測位状態であるかチェックし(ステップ504)、2次元測位状態でなければ、北方向速度の誤差指標δVx,東方向速度の誤差指標δVyを共に1000m/s とする(ステップ502)。2次元測位状態であれば、誤差に関連する因子がないため、北方向速度の誤差指標δVx,東方向速度の誤差指標δVyを共に0.41m/s とする(ステップ505)。これは統計による結果である。
一方、ステップ503において、3次元測位状態であれば、北・東方向速度誤差指標計算35は、水平方向の速度誤差に関連する誤差因子PDOP、GPS 速度(Vgps)をそれぞれ用いて(10)、(11)式の近似式により誤差指標を計算する(ステップ506)。PDOP(Position Dilution of Precision)は水平と垂直方向を踏まえた衛星配置指標であり、小さいほど精度が良く、次式
北・東方向速度誤差指標δV1=0.0543×PDOP+0.3138 (10)
によりPDOPに起因する北・東方向速度誤差指標δV1を計算する。また、GPS 速度(Vgps)は速いほど精度が良く、次式
北・東方向速度誤差指標δV2=1.2609×exp( -0.0149×Vgps ) (11)
によりGPS 速度(Vgps)に起因する北・東方向速度誤差指標δV2を計算する。
ついで、北・東方向速度誤差指標計算35は、次式によりδV1とδV2を重み付け合成して北方向速度誤差指標δVx、東方向速度誤差指標δVyをそれぞれ計算する(ステップ507)。
【数2】
【0021】
2)上下方向速度の誤差指標計算処理
図14は上下方向速度の誤差指標計算処理フローである。
信頼度判定部15aの上下方向速度誤差指標計算部36(図5)は、上下方向速度信頼度フラグがオンであるかチェックし(ステップ601)、オフであれば精度が悪いから上下方向速度の誤差指標δVzを1000m/s とする(ステップ602)。しかし、上下方向速度信頼度フラグがオンの場合には、誤差に関連する因子がないため、上下方向速度誤差指標δVz=0.52m/s とする(ステップ603)。この値は統計値によるものである。
【0022】
3)GPS緯度・経度の誤差指標計算処理
図15はGPS緯度・経度の誤差指標計算処理フローである。
信頼度判定部15aのGPS緯度・経度誤差指標計算部37(図5)は、GPS緯度・経度信頼度フラグがオンであるか調べ(ステップ701)、オフであれば精度が悪いからGPS緯度誤差指標δPx、GPS経度誤差指標δPyを共に1000m/s とする(ステップ702)。しかし、GPS緯度・経度信頼度フラグがオンであれば、水平方向の位置誤差に関連するPDOPを誤差因子として利用して誤差指標δPx、δPyを計算する。PDOPは小さいほど精度が良いから、PDOP≦4であるか調べ(ステップ703)、PDOP≦4であれば、GPS緯度・経度誤差指標δPx、δPy=4.6mとし(ステップ704)、PDOP>4であれば、GPS緯度・経度誤差指標δPx、δPy=4.9mとする(ステップ705)。
【0023】
4)GPS高度誤差指標計算処理
図16はGPS高度誤差指標計算処理フローである。
信頼度判定部15aのGPS高度誤差指標計算部38(図5)は、GPS高度信頼度フラグがオンであるか調べ(ステップ801)、オフであれば精度が悪いからGPS高度誤差指標δPzを1000m/s とする(ステップ802)。しかし、GPS高度信頼度フラグがオンであれば、高度誤差指標計算部38は、高度誤差に関連する誤差因子VDOP、過去4 秒間の高度標準偏差(Alt1σ)、GPS 速度(Vgps)をそれぞれ用いて(13)、(14)、(15)式の近似式により誤差指標を計算する(ステップ803)。すなわち、VDOPは垂直方向の衛星配置指標であり、小さいほど精度が良く、次式
GPS高度誤差指標δD1=5.1077×exp( 0.2043×VDOP ) (13)
によりVDOPに起因するGPS高度誤差指標δD1を計算する。また、過去4 秒間の高度標準偏差(Alt1σ)のバラツキが小さいほど精度が良いから、次式
GPS高度誤差指標δD2=1.5362×Alt1σ+5.4304 (14)
により高度標準偏差(Alt1σ)に起因するGPS高度誤差指標δD2を計算する。また、GPS 速度(Vgps)が速いほど精度が良く、次式
GPS高度誤差指標δD3=19.61×exp(−0.0094×Vgps ) (15)
によりGPS 速度(Vgps)に起因するGPS高度誤差指標δD3を計算する。
図7(A)は蓄誤差積データに基づいて高度誤差とVDOPの対応をプロットし、これより高度誤差指標を近似する(13)式を決定する例、(B)は高度誤差と過去4 秒間の高度標準偏差(Alt1σ)の対応をプロットし、これより高度誤差指標を近似する(14)式を決定する例、(C)は高度誤差とGPS 速度(Vgps)の対応をプロットし、これより高度誤差指標を近似する(15)式を決定する例である。
ステップ103において、GPS高度誤差指標δD1〜δD3が求まれば、高度誤差指標計算部38は、次式によりδD1〜δD3を重み付け合成して高度誤差指標δPzを計算する(ステップ104)。
【数3】
【0024】
(D)位置検出装置の処理
図18は図2の位置検出装置の全体の処理フローである。
最初、自律航法部12に3次元車両位置N、E、D、車両速度Vsp、ピッチ角θ、車両取り付けピッチ角A、ヨー角Y、車両取り付けヨー角A2、ジャイロ11bのオフセットωOF、加速度センサーのオフセットαOFの初期値を設定する(ステップ1101)。以後、自律航法部12は車速センサー11a、ジャイロ11b、加速度センサー11cの出力を取り込み(ステップ1102)、第1周期(25Hz周期)で(2)、(3)、(5)式の演算を行って車両速度Vsp(k+1)及び車両の3次元位置(緯度N(k+1)、経度E(k+1)、高さD(k+1)、ピッチ角θとヨー角Yに関する2つの値:
cosθ(k+1) ×cosY(k+1)、
cosθ(k+1) ×sinY(k+1)
を演算して出力する(ステップ1103)。ついで、第2周期(10Hz周期)になったかチェックし(ステップ1104)、第2周期になっていなければ、ステップ1102以降の処理を繰り返す。
第2周期になっていれば、車両速度Vxが零である状態が2秒以上続いていたかどうかによって停車判定を行う(ステップ1105)。
停車中でなければ、第3周期(1Hz周期=GPS測位周期)になっているかチェックし(ステップ1106)、第3周期でなければカルマンフィルタ処理部15の第1補正部21は速度計算部13が(4)式により計算した車両速度Vxと自律航法部12が(2)式より計算した車両速度Vsp(k)を用いてカルマンフィルタ処理により車両速度、前記ピッチ角θ、センサー取りつけピッチ角A、センサー取り付けヨー角A2、角速度信号オフセットωOF、加速度信号オフセットαOFを補正する(ステップ1107)。ステップ1107では後述するカルマンフィルタの観測行列H1を用いた第1補正処理が行われる。
ステップ106において、第3周期であればカルマンフィルタ処理部15の第2補正部22はGPSレシーバ14が出力する3次元の車両位置(NGPS、EGPS、DGPS)、3次元の車両速度(VNGPS、VEGPS、VDGPS)、誤差指標を用いて、車両位置、車両速度、ピッチ角θ、車両取り付けピッチ角A、ヨー角Y、車両取り付けヨー角A2、角速度信号オフセットωOF、加速度信号オフセットαOFを補正する(ステップ1108)。ステップ1108では後述するカルマンフィルタの観測行列H2を用いた第2補正処理が行われる。
このステップ1108において、第2補正部22は図19のステップ1201に示すように、信頼度が無いと判定された測定成分データの補正処理における貢献度を零あるいは略零にし、信頼度有りと判定された測定成分データの補正処理における貢献度を誤差指標の大きさに応じて小さくするよう補正処理を行う。
あるいは、第2補正部22はステップ1108において図20に示すように、GPS測定成分データが1つでも信頼度が無いと判定された場合には(ステップ1211で「NO」)、補正処理を行わないよう制御し(ステップ1212)、全てのGPS測定成分データが信頼度有りと判定された場合には補正処理を行うと共に、該補正処理における各GPS測定成分の貢献度を誤差指標に応じて小さくする(ステップ1213)。かかる制御により、システムの精度を向上することができる。なお、図20の制御を可能にするために、GPSフィルタ15は、GPS測定成分データの1つでも信頼度が無いと判定した場合、全GPS測定成分データの誤差指標を1000にする必要がある。
あるいは、第2補正部22はステップ1108において、図21に示すようにGPS測定成分データを速度成分グループと位置成分グループに分け(ステップ1221)、グループ毎に、測定成分が1つでも信頼度が無いと判定された場合には(ステップ1222で「NO」)、該グループの測定成分を用いた補正処理を行わない(ステップ1223)。しかし、グループ全ての測定成分が信頼度有りと判定された場合には(ステップ1222で「YES」)、該グループの測定成分を用いた補正処理を行うと共に、該補正処理における各測定成分の貢献度を誤差指標に応じて小さくする(ステップ1224)。GPSレシーバでは、GPS速度データの方がGPS位置データより測定精度が良いから、上記の制御をすることによりシステムの精度を向上することができる。なお、図21の制御を可能にするために、GPSフィルタ15は、グループのGPS測定成分データの1つでも信頼度が無いと判定した場合、該グループの全GPS測定成分データの誤差指標を1000にする必要がある。
図18に戻って、ステップ1105において、停車中であれば、第3周期(1Hz周期=GPS測位周期)になっているかチェックし(ステップ1109)、第3周期でなければカルマンフィルタ処理部15の第1補正部21は前記ステップ1107の補正処理を行うと共に、ジャイロの角速度出力信号と自律航法部12で計算した角速度信号オフセットとの差に基づいて角速度オフセット補正を行う(ステップ1110)。このステップ1110では後述するカルマンフィルタの観測行列H3を用いた第3補正処理が行われる。
ステップ1109において、第3周期であれば、カルマンフィルタ15の第2補正部22は前記ステップ1108の補正処理を行うと共に、ジャイロの角速度出力信号と自律航法部12で計算した角速度信号オフセットとの差に基づいて角速度オフセット補正を行う(ステップ1111)。このステップ1111では後述するカルマンフィルタの観測行列H4を用いた第4補正処理が行われる。
【0025】
以上の位置検出処理によれば、GPSによる推定誤差補正より早い周波数で、第1補正部21が誤差累積の補正を行うため精度の高い位置検出ができる。
図22はGPS受信時とGPS非受信時における位置検出誤差の説明図であり、(A)に示すようにGPS受信時に第1の補正部21は10Hz周期でピッチ角、センサー取り付けピッチ角、センサー取り付けヨー角の補正を行い、第2の補正部22は1Hz周期(GPS測位周期)で補正を行うため、誤差の累積を小さくできる。また、(B)に示すようにGPS非受信時でも第1の補正部21は10Hz周期でピッチ角、センサー取り付けピッチ角、センサー取り付けヨー角の補正を行うため、誤差の累積度合を小さくできる。
【0026】
図23はA矢印方向から車両が移動してきて立体駐車場でグルグル回ってB矢印方向から去って行ったときの本発明の車両走行軌跡データの説明図であり、ほぼ実際の走行軌跡を示している。ただし、図23はGPS測定データの誤差指標が正確に計算され、GPSレシーバとカルマンフィルタ処理部が最大に機能を発揮した例であり、マップマッチングMMはしていない。図24(A)はカルマンフィルタ処理部16を使用せず、主にマップマッチングで補正したときの従来の走行軌跡データ例であり、図24(B)はカルマンフィルタ処理部16を使用するが、誤差指標が不正確、あるいは誤差指標がない場合の走行軌跡データ例である。図24(B)より明らかなように誤差指標が不正確、あるいは誤差指標がない場合、正確な走行軌跡を示さなくなる。
【0027】
(E)カルマンフィルタ処理
カルマンフィルタ処理は各時刻における予測値と観測値との誤差を修正しながら、各時刻における最適な推定値を逐次求める方法である。カルマンフィルタ処理においては、予め、ある値を予測するための算出式を設定し、この算出式を用いて観測値が得られる時刻nまで予測を繰り返す。時刻nで観測値が取得できれば、該観測値を用いて時刻nでの推定値について確率論的に定義された誤差を最小化させるような推定値補正計算を行う。
図25はカルマンフィルタ処理の概要説明図である。カルマンフィルタにおいては、図25に示すように、信号生成過程40と観測過程41に分けられる。図において、線形システムFがあり、そのシステムの状態をX(t)とするとき、観測行列Hを介してX(t)の一部が観測できる場合、カルマンフィルタはX(t)の最適な推定値を与える。ここで、wは信号生成過程にて発生する雑音であり、vは観測過程にて発生する雑音である。カルマンフィルタは、入力をZ(t)としてカルマン処理を所定周期で繰り返し実行することにより、最適推定値X(t)を求める。
【0028】
本発明のカルマンフィルタ処理におけるシステムモデルの状態式は次式
ΔX(k+1)=F(k)δX(k)+w(k) (17)
で表され、システム状態変数δXは
ΔX=[δN、δE、δD、δVbx、δc00、δc10、δc20、δp00、δp10、δp20、bwz、bax]
である。但し、Vbx=Vsp((2)式参照)、bwz=ωOF、bax=αOFとしている。また、c00〜p20のパラメータは座標変換行列の要素で、
c00=cosθcosY
c10=cosθsinY
c20=−sinθ
p00=cosAcosA2
p10=cosAsinA2
p20=−sinA
である。(17)式における線形システムFは(2)、(3)、(5)式のシステムモデルを表す式より図26に示す行列で表現でき、太枠内が行列要素である。なお、cijはセンサー座標系からN−E−D座標系への座標変換行列要素、pijはセンサー座標系から車両固定座標系への座標変換行列要素であり、それぞれ次式により表現される。
【数4】
【0029】
また、本発明のカルマンフィルタの観測式は
ΔZ(k)=H(k)δX(k)+v(k) (18)
で表される。(18)式の観測行列Hは図27に示す行列で表される。図27において、観測行列Hの行列部分(1)は10Hz周期での速度誤差δVbxを計算する部分、(2)は10Hz周期での停車時における角速度オフセット誤差bwzを計算する部分、(3)は1Hz周期でのGPSの車両位置誤差δN,δE,δDおよび車両速度誤差δvnx,δvny,δvnzを計算する部分である。なお、観測行列Hは
【数5】
と表現する。(1)は観測行列Hの第1行を、(2)は観測行列Hの第2行、(3)は観測行列Hの第3〜第8行を意味している。
カルマンフィルタは、Z(t) (=δZ(t)) が観測できるタイミングで(18)式によりZ(t)(=δZ(t))を計算し、計算した値と観測された値の差に基づいてX(t)(=δX(t))を推定し、以後、次のZ(t)が観測されるまでX(t)を(17)式により更新する。そして、Z(t)が観測されると上記差を再び演算し、該差に基づいてX(t)(=δX(t))を推定し、以後、同様の処理を繰り返す。
【0030】
観測行列Hの行列部分(1)は図18の処理ステップ1107の第1補正処理において使用するカルマンフィルタの観測行列H1を構成し、
【数6】
である。また、観測行列Hの行列部分(1)、(3)は図18の処理ステップ1108の第2補正処理において使用するカルマンフィルタの観測行列H2を構成し、
【数7】
である。また、観測行列Hの行列部分(1)、(2)は図18の処理ステップ1110の第3補正処理において使用するカルマンフィルタの観測行列H3を構成し、
【数8】
である。また、観測行列Hの行列部分(1)、(2)、(3)は図18の処理ステップ1111の第4補正処理において使用するカルマンフィルタの観測行列H4を構成し、
【数9】
である。
【0031】
カルマンフィルタは、入力をZ(t)として以下の(19)式を所定周期(Z(t)の入力周期)で繰り返し実行することにより、最適推定値X(t|t)(=δX(t|t))を求める。ただし、時刻jまでの情報に基づく時刻iでのAの推定値をA(i|j)と表記する。
X(t|t)=X(t|t−1)+K(t)[Z(t)−HX(t|t−1)] (19)
ここでX(t|t−1)は事前推定値、K(t)はカルマンゲインであり、それぞれ
X(t|t−1)=FX(t−1|t−1) (20)
K(t)=P(t|t−1)HT (HP(t|t−1)HT+V)-1 (21)
と表現でき、事前推定値X(t|t−1)は、Z(t)の入力周期より短い周期で(20)式により更新される。
また、Pは状態量Xの誤差共分散行列であり、P(t|t−1)は誤差共分散の予測値、P(t−1|t−1)は誤差共分散であり、それぞれ
P(t|t−1)=FP(t−1|t−1)FT +W
P(t−1|t−1)=(I−K(t−1)H)P(t−1|t−2)
である。Vは観測過程で発生する雑音vの分散、ずなわち、測定に関する誤差(誤差指標)の共分散行列、Wは信号過程で発生する雑音wの分散である。添字の(・)T は転置行列を意味し、(・)-1は逆行列を意味する。また、Iは単位行列である。さらに、VとWは平均0の白色ガウス雑音であり、互いに無相関である。上記のようなカルマンフィルタにおいて、状態量Xと誤差共分散Pの初期値に適当な誤差を与えてやり、新しい観測が行われる度に(17)式の計算を繰り返し行うことにより、状態量Xの精度を向上することができる。
【0032】
(F)誤差指標のカルマンフィルタの補正処理に対する貢献度
誤差指標の共分散行列Vは誤差指標δPx,δPy,δPz,δVx,δVy,δVzを用いて次式
【数10】
で表現される。
誤差指標のカルマンフィルタ処理に対する貢献度は、カルマンゲインK(t)を算出するための(19)式の右辺(HP(t|t−1)HT+V)-1より明らかなように、誤差指標の逆数に依存する。すなわち、誤差指標が大きいと貢献度は小さくなり、誤差指標が小さいと貢献度は大きくなる。例えば、誤差指標の共分散行列Vにおいて、全てのGPS測定成分の信頼度が無く、誤差指標δPx,δPy,δPz,δVx,δVy,δVzが全て1000であるとすれば、(HP(t|t−1)HT+V)-1は零あるいは略零となる。この結果、カルマンゲインK(t)は零となり、何らの補正は行われない。
【0033】
本発明によれば、GPSフィルタを備えているため、どのGPSレシーバでもカルマンフィルタ複合システムに利用することができる。即ち、数社に限られるGPSレシーバだけでなく、多くのGPSレシーバを採用候補に挙げることができ、その中からコストパーフォーマンスが最適なGPSレシーバを採用することができる。また、GPSレシーバを用いる際、該GPSレシーバが出力する誤差指標よりも確からしい、あるいはGPSレシーバが出力しない誤差指標をGPSフィルタから出力できるので、システム精度を向上することができる。また、信頼度の無いGPS測定データのカルマンフィルタ補正処理における貢献度を零にできるため、システム精度を向上することができる。
以上本発明を実施例に従って説明したが、本発明は実施例に限定されるものではない。たとえば、以上では、カルマンフィルタを使用して各パラメータを補正する場合であるが、カルマンフィルタに限らず、Hインフィニティフィルタ、パーティクルフィルタなど、確率論に基づくフィルタリングシステムを利用して補正することが可能である。
また、以上では、カルマンフィルタ処理部において第1、第2補正処理を行う場合について説明したが、本発明はGPS測定データを用いた第2補正処理のみを行う場合(第1補正処理を行わない)にも適用できることは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の位置検出装置の概要説明図である
【図2】本発明の位置検出装置の構成図である
【図3】姿勢パラメータ(ピッチ角θ、センサー取り付けピッチ角A、ヨー角Y、センサー取り付けヨー角A2)説明図である。
【図4】加速度センサーから出力する加速度信号を用いて車両速度Vsp(k)を計算する方法の説明図である。
【図5】GPSフィルタの構成図である。
【図6】GPSフィルタの信頼度測定、誤差指標計算処理フローである。
【図7】北・東方向速度の信頼度判定処理フローである。
【図8】GPS速度が予測速度範囲内にあるかの判定処理フローのである。
【図9】GPS方位θGPSに信頼度があるかの判定処理フローである。
【図10】上下方向速度の信頼度判定処理フローである。
【図11】GPS緯度・経度の信頼度判定処理フローである。
【図12】GPS高度の信頼度判定処理フローである。
【図13】北・東方向速度の誤差指標計算処理フローである。
【図14】上下方向速度の誤差指標計算処理フローである。
【図15】GPS緯度・経度の誤差指標計算処理フローである。
【図16】GPS高度誤差指標計算処理フローである。
【図17】GPS高度誤差指標を計算するための近似式決定説明図である。
【図18】位置検出部の全体の処理フローである。
【図19】信頼度及び誤差指標の補正処理における貢献度説明図である。
【図20】1つでもGPS測定データに信頼度が無い場合、全GPS測定データの誤差指標を大きな値にして補正処理を行わないようにし、全てのGPS測定データに信頼度がある場合において補正処理を行う場合の処理フローである。
【図21】GPS測定データを速度グループと位置グループに分け、グループのGPS測定データに1つでも信頼度が無い場合、該グループの測定データを用いた補正処理を行わないようにした処理フローである。
【図22】第1、第2補正処理を行う場合のGPS受信時とGPS非受信時における位置検出誤差の説明図である。
【図23】A矢印方向から車両が移動してきて立体駐車場でグルグル回ってB矢印方向から去って行ったときの本願発明の車両走行軌跡データの説明図である。
【図24】カルマンフィルタ処理部を使用せず、主にマップマッチングで補正したときの従来の走行軌跡データ例、およびカルマンフィルタ処理部を使用するが、誤差指標が不正確、あるいは誤差指標がない場合の走行軌跡データ例である。
【図25】カルマンフィルタ処理の概要説明図である。
【図26】カルマンフィルタの線形システムFを示す行列例である。
【図27】カルマンフィルタの観測行列Hを示す行列例である。
【符号の説明】
【0035】
11 自律センサー
12 自律航法部
14 GPSレシーバ
15 GPSフィルタ
16 カルマンフィルタ処理部
21 第1の補正部
22 第2の補正部
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の現在位置を検出する位置検出装置および位置検出方法に関わり、特に、自律航法により計算される位置データの精度を向上できる位置検出装置および位置検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用ナビゲーション装置は、自律航法センサーを用いた自律航法(Dead Reckoning)とGPS(Global Positioning System)レシーバを用いたGPS航法を併用している。
自律航法は、車両の加速度を検出する加速度センサーや車両の方位変化量を検出する相対方位センサー(ジャイロ等)、車両の速度(距離)を検出する距離センサー(車速センサー等)の出力を用いて、車両の位置・方位・車速等を検出する方法である。しかし、自律航法の出力(位置・方位・車速等)には、センサーの誤差が含まれるため、誤差が生じる。特に、位置、方位はセンサー出力を積算して算出するため、誤差が徐々に累積する。一方、GPSレシーバは、最大位置誤差が通常環境で30m程度で絶対的な位置、方位、車速を求めることができる。このため、GPS受信時に自律航法の出力を該GPSレシーバの出力に整合させることにより、累積により誤差が大きくなったときの補正が可能である。例えば、自律航法で得られた位置を周知のマップマッチング法により道路地図上の道路位置に自車位置を修正した時の位置と、GPSレシーバで得られた位置との差が所定値より大きくなった時に、道路地図上の位置をGPSでレシーバ得られた位置に修正する。
【0003】
ところで、自律航法は、上述のようにGPSレシーバの出力により補正することができるが、GPS非受信時においてセンサー出力の誤差、センサー取り付け誤差により自律航法の誤差が累積し出力精度が悪くなる問題が生じる。特に、立体駐車場や地下駐車場ではGPS信号が届かないため、100m程の最大位置誤差が発生し、また、都心部では反射したGPS信号を受けることが多く、マルチパスが発生すると、300m程の最大位置誤差が発生する。
以上より、センサー出力の誤差を修正して現在位置を求める方法が提案されている。第1従来技術(特許文献1参照)は、自律推測航法から求められる車両の位置、方位、車速の情報とGPSレシーバから出力される車両の位置、方位、車速の情報により、カルマンフィルタにて、オフセット誤差、距離係数誤差、絶対方位誤差、絶対位置誤差を求めて、自律航法におけるそれぞれの補正を行う。
【0004】
ところで、カルマンフィルタ処理にGPS出力(緯度、経度、高度の3方向位置データ、3方向速度データ)を適用するには、GPS出力の各成分データについて誤差指標を必要とする(特許文献1参照)。しかし、多くのGPSレシーバは水平位置に関する誤差指標しか出力せず、このためGPS出力データのうち誤差指標のないGPS出力データをカルマンフィルタ処理に利用できなかった。そこで、誤差指標を単純な計算により求めることが行われるが、適正な誤差指標を使う場合に比べて位置推定精度が大きく劣る。また、従来のGPS出力データは都心などではマルチパスの影響で精度が劣化し、その際誤差指標も不正確となる(誤差が大きいはずなのに、小さい数字を出す)。かかる場合、GPS出力データをカルマンフィルタ補正処理に使用すると位置推定精度が大きく落ちる。
上記問題を解決する方法は、全GPS出力成分について誤差指標を出力するGPSレシーバ(u-blox社製等)を使うことである。しかし、かかるGPSレシーバは高価であり、採用することができない。なお、誤差の少ないGPS出力データを選択的に用いることにより、位置決定精度を向上させるGPSナビゲーション装置があるが(特許文献2)、誤差の大小に基づいてカルマンフィルタ補正処理を制御するものではない。
【特許文献1】特開2001−337150
【特許文献2】特開平8−334338
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上から、本発明の目的は、誤差指標を出力しないGPSレシーバの測定データ(緯度、経度、高度の3方向位置データ、緯度、経度、高度の3方向速度データ)を補正処理に適用できるようにすることである。
本発明の目的は、GPS出力データの各成分について信頼度の有無を判定し、信頼度有りの場合の誤差指標を計算し、これら信頼度の有無及び計算した誤差指標に基づいて補正処理を行って位置決定精度を向上することである。
本発明の目的は、GPS出力データの各成分について信頼度の有無を判定し、信頼度が無いと判定されたGPS出力データの補正処理における貢献度を零あるいは略零にして位置決定精度を向上することである。
本発明の目的は、GPS出力データの各成分について信頼度の有無を判定し、信頼度有りと判定されたGPS出力データの誤差指標を計算し、補正処理における貢献度を該誤差指標の大きさに応じて小さくして位置決定精度を向上することである。
本発明の目的は、測定成分が1つでも信頼度が無いと判定された場合には補正処理を行わず、全ての測定成分が信頼度有りと判定された場合に補正処理を行うと共に、該補正処理における各測定成分の貢献度を誤差指標に応じて小さくして位置決定精度を向上することである。
本発明の目的は、速度成分グループと位置成分グループに分け、グループ毎に、測定成分が1つでも信頼度が無いと判定された場合には補正処理を行わず、全ての測定成分が信頼度有りと判定された場合に補正処理を行うと共に、該補正処理における各測定成分の貢献度を誤差指標に応じて小さくして位置決定精度を向上することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
・位置検出方法
本発明の第1は、車両の現在位置を検出する位置検出方法である。
本発明の第1の位置検出方法は、所定の周期で自律航法により車両の位置を計算するステップ、前記周期より長いGPSレシーバの測位周期で該GPSレシーバにより測定される車両の各方向位置成分及び速度成分を用いて前記自律航法による位置計算結果及び該自律航法の位置計算に使用する車両速度、ピッチ角、センサー取り付け姿勢角を補正する補正処理を行うステップ、前記GPSレシーバにより測定される車両の各方向の位置成分及び速度成分の信頼度を判定すると共に、信頼度ありと判定された成分の誤差指標を算出するステップ、信頼度が無いと判定された測定成分の前記補正処理における貢献度を零あるいは略零にし、信頼度有りと判定された測定成分の前記補正処理における貢献度を前記誤差指標の大きさに応じて小さくするステップを備えている。
本発明の第2の位置検出方法は、所定の周期で自律航法により車両の位置を計算するステップ、前記周期より長いGPSレシーバの測位周期で該GPSレシーバにより測定される車両の各方向位置成分及び速度成分を用いて前記自律航法による位置計算結果及び該自律航法の位置計算に使用する車両速度、ピッチ角、センサー取り付け姿勢角を補正する補正処理を行うステップ、前記GPSレシーバにより測定される車両の各方向の位置成分及び速度成分の信頼度を判定すると共に、信頼度ありと判定された成分の誤差指標を算出するステップ、測定成分が1つでも信頼度が無いと判定された場合には前記補正処理を行わず、全ての測定成分が信頼度有りと判定された場合には前記補正処理を行うと共に、該補正処理における各測定成分の貢献度を前記誤差指標に応じて小さくするステップを備えている。
本発明の第3の位置検出方法は、所定の周期で自律航法により車両の位置を計算するステップ、前記周期より長いGPSレシーバの測位周期で該GPSレシーバにより測定される車両の各方向位置成分及び速度成分を用いて前記自律航法による位置計算結果及び該自律航法の位置計算に使用する車両速度、ピッチ角、センサー取り付け姿勢角を補正する補正処理を行うステップ、前記GPSレシーバにより測定される車両の各方向の位置成分及び速度成分の信頼度を判定すると共に、信頼度ありと判定された成分の誤差指標を算出するステップ、GPS測定成分を速度成分グループと位置成分グループに分け、グループ毎に、測定成分が1つでも信頼度が無いと判定された場合には該グループの測定成分を用いた補正処理を行わず、グループ全ての測定成分が信頼度有りと判定された場合に該グループの測定成分を用いた補正処理を行うと共に、該補正処理における各測定成分の貢献度を誤差指標に応じて小さくするステップ、を備えている。
上記第1、第2、第3の位置検出方法は、前記自律航法による位置計算周期より長く、かつ、前記GPS周期以下の周期で、移動距離検出センサーの出力信号を用いて車両速度を測定し、該車両速度と前記自律航法で計算した前記車両速度との速度差に基づいて、自律航法で用いる前記車両速度、前記ピッチ角、前記センサーの取り付け姿勢角を補正するステップを有している。
【0007】
・位置検出装置
本発明の第2は、車両の現在位置を検出する位置検出装置である。
本発明の第1の位置検出装置は、所定の周期で自律航法により車両の位置を計算する自律航法部、前記周期より長いGPSレシーバの測位周期で該GPSレシーバにより測定される車両の各方向位置成分及び速度成分を用いて、前記自律航法による位置計算結果及び該自律航法の位置計算に使用する車両速度、ピッチ角、センサー取り付け姿勢角を補正する補正処理を行なう補正部、前記GPSレシーバにより測定される車両の各方向の位置成分及び速度成分の信頼度を判定すると共に、信頼度ありと判定された成分の誤差指標を算出するGPSデータ判定部を備え、前記補正部は、信頼度が無いと判定された測定成分の前記補正処理における貢献度を零あるいは略零にし、信頼度有りと判定された測定成分の前記補正処理における貢献度を前記誤差指標の大きさに応じて小さくする手段を備えている。
本発明の第2の位置検出装置は、所定の周期で自律航法により車両の位置を計算する自律航法部、前記周期より長いGPSレシーバの測位周期で該GPSレシーバにより測定される車両の各方向位置成分及び速度成分を用いて前記自律航法による位置計算結果及び該自律航法の位置計算に使用する車両速度、ピッチ角、センサー取り付け姿勢角を補正する補正処理を行なう補正部、前記GPSレシーバにより測定される車両の各方向の位置成分及び速度成分の信頼度を判定すると共に、信頼度ありと判定された成分の誤差指標を算出するGPSデータ判定部を備え、前記補正部は、測定成分が1つでも信頼度が無いと判定された場合には前記補正処理を行わないよう制御する手段、全ての測定成分が信頼度有りと判定された場合には前記補正処理を行うと共に、該補正処理における各測定成分の貢献度を前記誤差指標に応じて小さくする手段を備えている。
本発明の第3の位置検出装置は、所定の周期で自律航法により車両の位置を計算する自律航法部、前記周期より長いGPSレシーバの測位周期で該GPSレシーバにより測定される車両の各方向位置成分及び速度成分を用いて前記自律航法による位置計算結果及び該自律航法の位置計算に使用する車両速度、ピッチ角、センサー取り付け姿勢角を補正する補正処理を行なう補正部、前記GPSレシーバにより測定される車両の各方向の位置成分及び速度成分の信頼度を判定すると共に、信頼度ありと判定された成分の誤差指標を算出するGPSデータ判定部を備え、前記補正部は、GPS測定成分を速度成分グループと位置成分グループに分け、グループ毎に、測定成分が1つでも信頼度が無いと判定された場合には該グループの測定成分を用いた補正処理を行わないようにする手段、グループの全ての測定成分が信頼度有りと判定された場合に該グループの測定成分を用いた補正処理を行うと共に、該補正処理における各測定成分の貢献度を誤差指標に応じて小さくする手段備えている。
上記第1、第2、第3の位置検出装置は、前記自律航法による位置計算周期より長く、かつ、前記GPS周期以下の周期で、移動距離検出センサーの出力信号を用いて車両速度を測定し、該車両速度と前記自律航法で計算した前記車両速度との速度差に基づいて、自律航法で用いる前記車両速度、前記ピッチ角、前記センサーの取り付け姿勢角を補正する第2の補正部を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、GPS出力データの各成分について信頼度の有無を判定し、信頼度が無いと判定されたGPS出力データの補正処理における貢献度を零あるいは略零にしたから、位置決定精度を向上することができる。
本発明によれば、GPS出力データの各成分について信頼度の有無を判定し、信頼度有りと判定されたGPS出力データの誤差指標を計算し、補正処理における貢献度を該誤差指標の大きさに応じて小さくしたから、位置決定精度を向上することができる。
本発明によれば、誤差指標を出力しないGPSレシーバであっても、GPS測定データ(緯度、経度、高度の3方向位置データ、緯度、経度、高度の3方向速度データ)の信頼度の有無を判定でき、しかも、信頼度有りの場合の誤差指標を計算できるため、高価なGPSレシーバを使用しなくてもカルマンフィルタを用いた補正処理を行うことができる。
本発明によれば、GPS測定成分が1つでも信頼度が無いと判定された場合には補正処理を行わず、全ての測定成分が信頼度有りと判定された場合に補正処理を行うと共に、該補正処理における各測定成分の貢献度を誤差指標に応じて小さくしたから、位置決定精度を向上することができる。
本発明によれば、速度成分グループと位置成分グループに分け、グループ毎に、測定成分が1つでも信頼度が無いと判定された場合には該グループの測定成分を用いた補正処理を行わず、全ての測定成分が信頼度有りと判定された場合に補正処理を行うと共に、該補正処理における各測定成分の貢献度を誤差指標に応じて小さくしたから、グループ毎の測定精度に差がある場合、グループ毎に補正処理を制御して位置決定精度を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(A) 本発明の概要
図1は本発明の位置検出装置の説明図であり、自律航法用センサー11、自律航法部12、GPSレシーバ14、GPSデータ判定部(GPSフィルタ)15、補正部(カルマンフィルタ処理部)16を備えている。自律航法用センサー11は車両の移動距離を測定する移動距離検出部(車速センサー)、車両の方位変化量に応じた信号を出力する相対方位センサー(ジャイロ)、車両の加速度を検出する加速度センサーを備え、自律航法部12は所定の周期で自立航法センサー出力信号を用いて自律航法により車両の位置を計算する。GPSレシーバ14はGPS測位周期、たとえば1秒間隔でGPS衛星から受信した信号に基づいて三次元位置(緯度、経度、高さ)、三次元速度(北方向速度、東方向速度、上下方向速度)を計算して出力する。GPSデータ判定部15は、信頼度判定部15aと誤差指標計算部15bを備え、信頼度判定部15aはGPSレシーバにより測定される車両の各方向の位置成分データ及び速度成分データのそれぞれの信頼度を判定し、誤差指標計算部15bは信頼度無しの場合には、該成分データの誤差指標を補正処理に貢献しないように大きな値にし、信頼度ありと判定された場合には、該成分データの誤差指標を算出する。
補正部16は、GPSレシーバ14により測定される車両の各方向位置成分データ、速度成分データ及び各成分データの誤差指標を用いて自律航法部12により計算された位置計算結果及び該自律航法部の位置計算に使用する車両速度、ピッチ角、センサー取り付け姿勢角を補正する補正処理を行なう。
この場合、補正部16は、信頼度が無いと判定された測定成分の補正処理における貢献度を零あるいは略零にし、信頼度有りと判定された測定成分の補正処理における貢献度を誤差指標の大きさに応じて小さくする。
あるいは、補正部16は、GPS測定成分が1つでも信頼度が無いと判定された場合には前記補正処理を行わないよう制御し、全ての測定成分が信頼度有りと判定された場合には補正処理を行うと共に、該補正処理における各GPS測定成分の貢献度を誤差指標に応じて小さくする。
あるいは、補正部16は、GPS測定成分データを速度成分グループと位置成分グループに分け、グループ毎に、測定成分が1つでも信頼度が無いと判定された場合には該グループの測定成分を用いた補正処理を行わない。しかし、グループ全ての測定成分が信頼度有りと判定された場合に該グループの測定成分を用いた補正処理を行うと共に、該補正処理における各測定成分の貢献度を誤差指標に応じて小さくする。
【0010】
(B)位置検出装置
図2は本発明の位置検出装置の詳細な構成図である。この位置検出装置には、自律航法用センサー11として、車両の移動距離を測定する移動距離検出部、たとえば車両が所定距離走行する毎に1個のパルスを発生する車速センサー11a、車両の方位変化量に応じた信号を出力する相対方位センサーであるジャイロ11b、車両の加速度を検出する加速度センサー11cが設けられている。車速センサー11aは車輪に取り付けられ、ジャイロ11bおよび加速度センサー11cは一体にダッシュボードの所定位置に装着される。ジャイロ11bおよび加速度センサー11cは、側面から見たとき、車両方向と平行して車両に取り付けられるのが理想であるが、図3(A)に示すように取り付け誤差があり、センサー方向は車両方向に角度A(取り付けピッチ角)を成して取り付けられる。なお、水平方向とセンサー方向の角度θをピッチ角といい、ピッチ角は傾斜角と取り付けピッチ角の和である。また、ジャイロ11bおよび加速度センサー11cは、平面に投影したとき、車両方向と一致して車両に取り付けられるのが理想であるが、取り付け誤差があり、図3(B)に示すように、センサー方向は車両方向に角度A2(取り付けヨー角)を成して取り付けられる。なお、北方向とセンサー方向の角度Yをヨー角といい、ヨー角Yは車両方向と取り付けヨー角の和である。
【0011】
自律航法部12は、各自律センサーからの出力信号を用いて高速度で、たとえば25Hzの周期で前後方向の車両速度Vsp(k)、車両の3次元位置(緯度方向位置N(k)、経度方向位置E(k)、高さD(k))を計算して出力する。図4は加速度センサー11cから出力する加速度信号を用いて車両速度Vsp(k)を計算する方法の説明図である。車両CARには鉛直方向に重力加速度Gが加わっており、取り付けピッチ角Aが0の場合、(A)に示すように、その傾斜方向成分G0は
G0=G×sinβ
である。したがって、加速度センサー11cが測定する加速度Accは、車両の移動に伴う進行方向の加速度G1と重力の傾斜方向成分の和となり、次式
Acc=G×sinβ+G1
で表現できる。なお、上式においてG×sinの符号は上り走行であれば負、下り走行であれば正である。取り付けピッチ角Aが0でない場合、(B)に示すように、加速度センサー11cはピッチ角θ(=β+A)方向の加速度Accが測定される。したがって、(C)に示すようにピッチ角方向の重力加速度成分はG×sinθとなり、ピッチ角方向の車両移動に伴う加速度成分はG1×cosAとなり、次式
Acc= G×sinθ+ G1×cosA
が成立し、取り付けヨー角A2を考慮すると、次式
Acc= G×sinθ+ G1×cosA×cosA2
が成立する。この結果、傾斜方向の加速度G1は次式
G1=( Acc−G×sinθ)/ (cosA×cosA2) (1)
で表現できる。加速度測定周期をT1とすれば、変化速度ΔVは次式
ΔV=T1×( Acc−G×sinθ)/ (cosA×cosA2)
で与えられる。したがって、速度Vsp(k+1)は1つ前の離散時刻kにおける速度Vsp(k)とΔVより
Vsp(k+1)=Vsp(k)+T1×( Acc−G×sinθ)/ (cosA×cosA2) (2)
で与えられる。尚、加速度AccのオフセットをαOFとすれば加速度センサーの出力信号AccからαOFを差し引いた値をAccとして(2)式の演算を行う。すなわち、
Acc=Acc−αOF
とする。
【0012】
また、自律航法部12は、車両の3次元位置(緯度N(k)、経度E(k)、高さD(k))を次式により計算して出力する。
N(k+1)= N(k) +S(cosθcosY cosAcosA2+sinY sinA2+sinθcosY sinAcosA2)
E(k+1)= E(k) +S(cosθsinY cosAcosA2−cosY sinA2+sinθsinY sinAcosA2)
D(k+1)= D(k) +S(−sinθcosAcosA2+cosθ sinAcosA2) (3)
ただし、S=(サンプル時間T1あたりの車速パルス数×パルス間距離)
=車がサンプル時間当たりに車両方向に進んだ距離
であり、4つの角度(θ、A、Y、A2)を使って、SをN-E-D座標系(North−East−Down座標系)に投影している。
速度計算部13は、所定の周期T2(たとえば10Hzの周期)で車速センサー11aから出力するパルス数Nと1パルスあたりの移動距離Lを用いて次式
Vx=N×L/T2 (4)
により車速度を計算する。
GPSレシーバ14はGPS測位周期、たとえば1秒間隔でGPS衛星から受信した信号に基づいて三次元位置(緯度、経度、高さ)、三次元速度(北方向速度、東方向速度、上下方向速度)を計算して出力する。
【0013】
GPSフィルタ15は、図5に示すように信頼度判定部15aと誤差指標計算部15bを備え、信頼度判定部15aはGPSレシーバにより測定される車両の各方向の位置成分データ(緯度、経度、高さ)及び速度成分データ(北方向速度、東方向速度、上下方向速度)のそれぞれの信頼度を判定し、誤差指標計算部15bは信頼度無しの場合には、該成分データの誤差指標を補正処理に貢献しないように大きな値(例えば1000)にし、信頼度ありと判定された場合には、該成分データの誤差指標を算出する。信頼度判定部15aは、北・東方向速度信頼度判定部31、上下方向速度信頼度判定部32、GPS緯度・経度信頼度判定部33、GPS高度信頼度判定部34を備え、誤差指標計算部15bは、北・東方向速度誤差指標計算部35、上下方向速度誤差指標計算部36、GPS緯度・経度誤差指標計算部37、GPS高度誤差指標計算部38を備えている。位置成分データ(緯度、経度、高さ)の誤差指標をδPx,δPy,δPzと表現し、速度成分データ(北方向速度、東方向速度、上下方向速度)の誤差指標をδVx,δVy,δVzと表現する。
GPSフィルタ15は、GPSレシーバにより測定される車両の各方向の位置成分データ(緯度、経度、高さ)及び速度成分データ(北方向速度、東方向速度、上下方向速度)及び各成分データの誤差指標をカルマンフィルタ処理部16に入力する。
信頼度判定部15aによる信頼度判定処理及び誤差指標計算処理は図6乃至図17にしたがって後述する。
【0014】
カルマンフィルタ処理部16は、ジャイロオフセット補正部20と第1の補正部21と第2の補正部22を備えている。なお、カルマンフィルタ処理部16は、第1の補正部21を除外した構成とすることができる。
ジャイロオフセット補正部20は、速度Vxが零(即ち、停車中)の時、停車中における角速度信号が[オフセット+ノイズ]であることを利用し、該角速度信号出力ωOFと自律航法部12で計算する角速度信号オフセットとの差をとり、後述のカルマンフィルタ処理により角速度信号オフセットωOFの補正を短時間で行う。
自律航法部12はジャイロ11bの出力信号を用いて計測した角速度信号ωから方位変化Δω(k)を次式
Δω(k)=(ω−ωOF)×T1
により計算し、また周知の慣性航法システムの技術から導出される次式に基づいてピッチ角θとヨー角Yを求めて更新する。
c00=cosθ(k+1) ×cosY(k+1) =−sinY(k)× Δω(k)
c10=cosθ(k+1) ×sinY(k+1) = cosY(k) ×Δω(k) (5)
なお、自律航法部12はセンサー取り付けピッチ角A、センサー取り付けヨー角A2、角速度信号オフセットωOF、加速度信号オフセットαOFについては次式により、
A(k+1)=A(k)
A2(k+1)=A2(k)
ωOF(k+1)=ωOF(k)
αOF(k+1)=αOF(k) (6)
補正されるまで一定とする。
【0015】
カルマンフィルタ処理部16の第1の補正部21は、第1の周期(たとえば10Hz周期)で第1のカルマンフィルタ処理を行う。第1のカルマンフィルタ処理において第1の補正部21は、速度計算部13が計算した車両速度Vxと自律航法部12が計算した車両速度Vspとの差に基づいて、該自律航法部で計算している車両速度Vsp、ピッチ角θ、センサー取り付けピッチ角A、センサー取り付けヨー角A2、角速度信号オフセットωOF、加速度信号オフセットαOFを補正する。
カルマンフィルタ処理部の第2の補正部22は、第1の周期より長い第2の周期(たとえば1Hz周期)でGPSレシーバ14が出力する車両の各方向の位置成分データ(緯度、経度、高さ)、速度成分データ(北方向速度、東方向速度、上下方向速度)及び各成分データの誤差指標ならびに自律航法部12が出力する三次元の車両位置と三次元の車両速度を用いて、該自律航法部で計算している緯度、経度、高さ方向の車両位置、車両速度、前記ピッチ角θ、センサー取り付けピッチ角A、前記ヨー角Y、センサー取り付けヨー角A2、角速度信号オフセットωOF、加速度信号オフセットαOF(自律航法で計算している全てのパラメータ)を補正する。なお、第2の補正部22は信頼度が無いと判定された測定成分データの補正処理における貢献度を零あるいは略零にし、信頼度有りと判定された測定成分データの補正処理における貢献度を誤差指標の大きさに応じて小さくする。
第1、第2の補正部21,22によるカルマンフィルタ処理の詳細は後述する。
自律航法部12は第1の補正部21により10Hz周期で更新されるピッチ角θ、車両取り付けピッチ角A、センサー取り付けヨー角A2を用いて車両速度や車両位置を(2)、(3)式により演算し、また、第2の補正部22により1Hz周期で更新されるピッチ角θ、車両取り付けピッチ角A、ヨー角Y、車両取り付けヨー角A2を用いて車両速度や車両位置を(2)、(3)式により演算して出力する。
【0016】
(C)信頼度判定及び誤差指標計算
図6乃至図17は信頼度判定及び誤差指標計算処理フローである。
GPSフィルタ15は図6に示す順序で信頼度測定、誤差指標計算処理を行う。すなわち、信頼度判定部15aは、北・東方向速度の信頼度判定(ステップ10)、上下方向速度の信頼度判定(ステップ200)、GPS緯度・経度の信頼度判定(ステップ300)、GPS高度の信頼度判定 (ステップ400) を行い、誤差指標計算15bは北・東方向速度誤差指標δVx,δVyの計算(ステップ500)、上下方向速度誤差指標δVzの計算(ステップ600)、GPS緯度・経度誤差指標δPx,δPyの計算(ステップ700)、GPS高度誤差指標δPzの計算(ステップ800)を行う。
(a)信頼度判定処理
1)北・東方向速度の信頼度判定処理
図7〜図9は北・東方向速度の信頼度判定処理フローである。
信頼度判定部15aの北・東方向速度信頼度判定部31(図5)は、今回のGPS速度が予測速度範囲内であるかチェックする(ステップ101)。例えば図8に示すように、前回の速度と予測最大加速度とから今回の予測速度範囲VRNGを計算し(ステップ101a)、ついで、今回の実速度Vを測定し(ステップ101b)、実速度Vと予測速度範囲VRNGを比較し(ステップ101c)、V<VRNGであればステップ101において「YES」と判定し(ステップ101d)、V≧VRNGであればステップ101において「NO」と判定する(301e)。
ついで、北・東方向速度信頼度判定部31は、GPS測定データから得られるGPS方位θGPSに信頼度があるか判定する(ステップ102)。図9はGPS方位θGPSの信頼度判定処理フローである。まず、GPS測定可能であるかチェックし(ステップ102a)、測定不可能であれば、GPS方位θGPSは信頼度が無く、ステップ102において「NO」と判定する(ステップ102e)。測位可能であれば、以下の(1)〜(4)の測位条件を満たすか否か判定する(ステップ102b)。
(1)GPS測位状態が3次元測位であること。これは、3次元測位は、2次元測位に比べて精度が高いためである。
(2)GPS速度が閾値以上であること(例えば、20Km/h)。これは低速の場合には、GPS方位の精度が悪化するためである。
(3)走行距離比率αが一定の範囲以内であること(例えば、0.9≦走行距離比率≦1.1)。
走行距離比率は、GPS位置から得られる走行距離と、車速パルスから得られる走行距離の比である。この比が1に近いほど、GPS測位データの精度が高いことを示している。
(4)進行角誤差βが閾値以下(例えば、進行角誤差≦30度)であること。
進行角誤差は、GPS位置の2点間の角度とGPS方位との差である。進行角誤差が0に近いほど、GPS測位データの精度が高いことを示している。
以上の測位条件(1)ないし(4)のすべてを満足するとき、GPS方位θGPSは信頼度が有るとして、ステップ102において「YES」と判定する(302f)。
ステップ102bのいずれかの測位条件を満足しなければ、北・東方向速度信頼度判定部31は、GPS方位θGPSと自律航法により取得した航法方位θgyroが類似性があるか判定する(ステップ102c)。すなわち、北・東方向速度信頼度判定部31はGPS方位とθGPSと航法方位θgyroの類似性を次式に
Δθ=|(θGPS1−θGPS2)−θgyro|≦10(degree) (7)
より判定する。上式において、θGPS1は今回のGPS方位、θGPS2は前回のGPS方位、θgyroは今回の航法方位である。Δθが10度より大きい場合には、両者の方位に類似性がなく、GPS方位の信頼度はないと判定する(ステップ102e)。
Δθが10度より小さければ、今回のGPS方位θGPS1が予測範囲内であるかチェックし(ステップ102d)、予測範囲外であればGPS方位の信頼度はないと判定し(ステップ102e)、予測範囲内であればGPS方位θGPSは信頼度が有ると判定する(ステップ102f)。予測範囲は、車両の直線性に依存するため、まず、移動が直線性か否かを判定する。直線性の移動であれば次式
Δθ′=|θGPS1−(θt-1+θgyro)|≦10(degree) (8)
により予測範囲を設定し、GPS方位θGPS1が予測範囲内に存在するか否かを判定する。なお、θt-1に前回の進行角である。直線性の移動でなければ、Δθ′≦14(degree)により予測範囲を設定し、GPS方位θGPS1が予測範囲内に存在するか否かを判定する。
ステップ102において、GPS方位θGPSに信頼度があるか判定すれば、GPS傾斜角θGPS-SLを次式
【数1】
により計算する(ステップ103)。ただし、VNGPSは北方向速度、VEGPS は東方向速度、VDGPSは上下方向速度である。ついで、GPS傾斜角θGPS-SLの絶対値が10(degree)以下であるか判定する(ステップ104)。これは道路交通法により10(degree)以上傾斜する道路は存在しないからである。GPS傾斜角θGPS-SLの絶対値が10(degree)より大きければ、北方向速度信頼度フラグ及び東方向速度信頼度フラグを共にオフ(信頼度なし)と設定し(ステップ105)、GPS傾斜角θGPS-SLの絶対値が10(degree)より小さければ、北方向速度信頼度フラグ及び東方向速度信頼度フラグを共にオン(信頼度あり)と設定する(ステップ106)。
【0017】
2)上下方向速度の信頼度判定処理
図10は上下方向速度の信頼度判定処理フローである。
信頼度判定部15aの上下方向速度信頼度判定部32(図5)は、GPS傾斜角の信頼性が高いかチェックし(ステップ201)、GPS傾斜角の信頼性が高ければ、上下方向速度の信頼度は高いと判断し、上下方向速度信頼度フラグをオンし(ステップ202)、GPS傾斜角の信頼性が低ければ、上下方向速度の信頼度は低いと判断し、上下方向速度信頼度フラグをオフする(ステップ203)。
ステップ201において、上下方向速度信頼度判定部32は、まずGPSレシーバが3次元測位状態であるか判断し(ステップ211)、3次元測位状態でなければ、GPS傾斜角度の信頼度は低いと判定し(ステップ212)、上下方向速度信頼度フラグをオフする(ステップ203)。
上下方向速度信頼度判定部32は、3次元測位状態であれば、(9)式によりGPS傾斜角θGPS-SLを計算する(ステップ213)。ついで、信頼度判定部32は、算出したGPS傾斜角θGPS-SLの履歴がN個(例えば、N=5)たまったかどうかを判定する(ステップ214)。この判定は、GPS傾斜角θGPS-SLの標準偏差を算出するのに必要なサンプル数がたまったかどうかの判定である。ここで、GPS傾斜角θGPSの履歴がN個たまったと判断した場合、続いて上下方向速度信頼度判定部32は、次の3つの条件
(1) GPS速度が10km/h以上であること、
(2)算出したGPS傾斜角θGPS-SLの絶対値が10度以下であること、
(3)算出したGPS傾斜角θGPS-SLの標準偏差が3度以下であること
を全て満たすかどうか判定する(ステップ215)。
上下方向速度信頼度判定部32は、上述の3つの条件を全て満たしていれば、GPS傾斜角θGPS-SLに信頼性があると判定し(ステップ216)、上下方向速度信頼度フラグをオンする(ステップ202)。一方、上述の3つの条件を1つでも満たしていなければ、GPS傾斜角θGPS-SLに信頼性がないと判定し(ステップ212)、上下方向速度信頼度フラグをオフする(ステップ203)。
【0018】
3)GPS緯度・経度の信頼度判定処理
図11はGPS緯度・経度の信頼度判定処理フローである。
信頼度判定部15aのGPS緯度・経度信頼度判定部33(図5)は以下の測位条件(1)〜(4)を満たすか否か判断する(ステップ301)。
(1)GPS測位状態が3次元測位であること。
(2)GPS速度が閾値(例えば、10Km/h)以上であること。
(3)走行距離比率αが一定の範囲以内(例えば、0.9≦走行距離比率≦1.1)であること。
(4)進行角誤差βが閾値以下(例えば、進行角誤差≦30度)であること。
以上の測位条件(1)ないし(4)のすべてを満足するとき、GPS緯度・経度の信頼度が高いと判定し(ステップ302)、GPS緯度信頼度フラグ、GPS経度信頼度フラグを共にオンする(ステップ303)。一方、上記測位条件の1つでも満足しなければ、GPS緯度・経度の信頼度が低いと判定し(ステップ304)、GPS緯度信頼度フラグ、GPS経度信頼度フラグを共にオフする(ステップ305)。
【0019】
4)GPS高度の信頼度判定処理
図12はGPS高度の信頼度判定処理フローである。
信頼度判定部15aのGPS高度信頼度判定部34(図5)は、GPS緯度・経度の信頼度がオンであるか判断し(ステップ401)、GPS緯度・経度の信頼度がオフであれば、GPS高度信頼度フラグをオフする(ステップ402)。一方、ステップ401において、GPS緯度・経度の信頼度がオンであれば、上下方向速度信頼度フラグがオンであるかチェックし(ステップ403)、上下方向速度信頼度フラグがオフであれば、GPS高度信頼度フラグをオフする(ステップ402)。しかし、ステップ403において、上下方向速度信頼度フラグがオンであれば、GPS高度信頼度フラグをオンする(ステップ405)。すなわち、GPS緯度・経度の信頼度および上下方向速度信頼度フラグが共にオンであれば、GPS高度の信頼度は高いとしてGPS高度信頼度フラグをオンし、それ以外はオフする。
【0020】
(b)誤差指標計算処理
誤差指標(標準偏差σ)は、リファレンス用の膨大な蓄積誤差データとGPSレシーバから得られるパラメータとの関連付けから得られる近似式を用いて計算する。この近似式は、まず誤差と関連のあるパラメータ(誤差因子)を選び、次にそれぞれの誤差因子を用いて蓄積誤差データの誤差指標(標準偏差σ)をあらわす近似式を決定する。最後に品質工学の手法を用いてそれぞれの近似式へのウェイトを決定して重み付けを行った和をとり、平方根をとる。
1)北・東方向速度の誤差指標計算処理
図13は北・東方向速度の誤差指標計算処理フローである。
信頼度判定部15aの北・東方向速度誤差指標計算35(図5)は、北・東方向速度信頼度フラグがオフであるか判断し(ステップ501)、オフであれば精度が悪いから北方向速度の誤差指標δVx,東方向速度の誤差指標δVyを共に1000m/s とする(ステップ502)。
ステップ501において、北・東方向速度誤差指標計算35は、北・東方向速度信頼度フラグがオンであれば、3次元測位状態であるかチェックし(ステップ503)、3次元測位状態でなければ、2次元測位状態であるかチェックし(ステップ504)、2次元測位状態でなければ、北方向速度の誤差指標δVx,東方向速度の誤差指標δVyを共に1000m/s とする(ステップ502)。2次元測位状態であれば、誤差に関連する因子がないため、北方向速度の誤差指標δVx,東方向速度の誤差指標δVyを共に0.41m/s とする(ステップ505)。これは統計による結果である。
一方、ステップ503において、3次元測位状態であれば、北・東方向速度誤差指標計算35は、水平方向の速度誤差に関連する誤差因子PDOP、GPS 速度(Vgps)をそれぞれ用いて(10)、(11)式の近似式により誤差指標を計算する(ステップ506)。PDOP(Position Dilution of Precision)は水平と垂直方向を踏まえた衛星配置指標であり、小さいほど精度が良く、次式
北・東方向速度誤差指標δV1=0.0543×PDOP+0.3138 (10)
によりPDOPに起因する北・東方向速度誤差指標δV1を計算する。また、GPS 速度(Vgps)は速いほど精度が良く、次式
北・東方向速度誤差指標δV2=1.2609×exp( -0.0149×Vgps ) (11)
によりGPS 速度(Vgps)に起因する北・東方向速度誤差指標δV2を計算する。
ついで、北・東方向速度誤差指標計算35は、次式によりδV1とδV2を重み付け合成して北方向速度誤差指標δVx、東方向速度誤差指標δVyをそれぞれ計算する(ステップ507)。
【数2】
【0021】
2)上下方向速度の誤差指標計算処理
図14は上下方向速度の誤差指標計算処理フローである。
信頼度判定部15aの上下方向速度誤差指標計算部36(図5)は、上下方向速度信頼度フラグがオンであるかチェックし(ステップ601)、オフであれば精度が悪いから上下方向速度の誤差指標δVzを1000m/s とする(ステップ602)。しかし、上下方向速度信頼度フラグがオンの場合には、誤差に関連する因子がないため、上下方向速度誤差指標δVz=0.52m/s とする(ステップ603)。この値は統計値によるものである。
【0022】
3)GPS緯度・経度の誤差指標計算処理
図15はGPS緯度・経度の誤差指標計算処理フローである。
信頼度判定部15aのGPS緯度・経度誤差指標計算部37(図5)は、GPS緯度・経度信頼度フラグがオンであるか調べ(ステップ701)、オフであれば精度が悪いからGPS緯度誤差指標δPx、GPS経度誤差指標δPyを共に1000m/s とする(ステップ702)。しかし、GPS緯度・経度信頼度フラグがオンであれば、水平方向の位置誤差に関連するPDOPを誤差因子として利用して誤差指標δPx、δPyを計算する。PDOPは小さいほど精度が良いから、PDOP≦4であるか調べ(ステップ703)、PDOP≦4であれば、GPS緯度・経度誤差指標δPx、δPy=4.6mとし(ステップ704)、PDOP>4であれば、GPS緯度・経度誤差指標δPx、δPy=4.9mとする(ステップ705)。
【0023】
4)GPS高度誤差指標計算処理
図16はGPS高度誤差指標計算処理フローである。
信頼度判定部15aのGPS高度誤差指標計算部38(図5)は、GPS高度信頼度フラグがオンであるか調べ(ステップ801)、オフであれば精度が悪いからGPS高度誤差指標δPzを1000m/s とする(ステップ802)。しかし、GPS高度信頼度フラグがオンであれば、高度誤差指標計算部38は、高度誤差に関連する誤差因子VDOP、過去4 秒間の高度標準偏差(Alt1σ)、GPS 速度(Vgps)をそれぞれ用いて(13)、(14)、(15)式の近似式により誤差指標を計算する(ステップ803)。すなわち、VDOPは垂直方向の衛星配置指標であり、小さいほど精度が良く、次式
GPS高度誤差指標δD1=5.1077×exp( 0.2043×VDOP ) (13)
によりVDOPに起因するGPS高度誤差指標δD1を計算する。また、過去4 秒間の高度標準偏差(Alt1σ)のバラツキが小さいほど精度が良いから、次式
GPS高度誤差指標δD2=1.5362×Alt1σ+5.4304 (14)
により高度標準偏差(Alt1σ)に起因するGPS高度誤差指標δD2を計算する。また、GPS 速度(Vgps)が速いほど精度が良く、次式
GPS高度誤差指標δD3=19.61×exp(−0.0094×Vgps ) (15)
によりGPS 速度(Vgps)に起因するGPS高度誤差指標δD3を計算する。
図7(A)は蓄誤差積データに基づいて高度誤差とVDOPの対応をプロットし、これより高度誤差指標を近似する(13)式を決定する例、(B)は高度誤差と過去4 秒間の高度標準偏差(Alt1σ)の対応をプロットし、これより高度誤差指標を近似する(14)式を決定する例、(C)は高度誤差とGPS 速度(Vgps)の対応をプロットし、これより高度誤差指標を近似する(15)式を決定する例である。
ステップ103において、GPS高度誤差指標δD1〜δD3が求まれば、高度誤差指標計算部38は、次式によりδD1〜δD3を重み付け合成して高度誤差指標δPzを計算する(ステップ104)。
【数3】
【0024】
(D)位置検出装置の処理
図18は図2の位置検出装置の全体の処理フローである。
最初、自律航法部12に3次元車両位置N、E、D、車両速度Vsp、ピッチ角θ、車両取り付けピッチ角A、ヨー角Y、車両取り付けヨー角A2、ジャイロ11bのオフセットωOF、加速度センサーのオフセットαOFの初期値を設定する(ステップ1101)。以後、自律航法部12は車速センサー11a、ジャイロ11b、加速度センサー11cの出力を取り込み(ステップ1102)、第1周期(25Hz周期)で(2)、(3)、(5)式の演算を行って車両速度Vsp(k+1)及び車両の3次元位置(緯度N(k+1)、経度E(k+1)、高さD(k+1)、ピッチ角θとヨー角Yに関する2つの値:
cosθ(k+1) ×cosY(k+1)、
cosθ(k+1) ×sinY(k+1)
を演算して出力する(ステップ1103)。ついで、第2周期(10Hz周期)になったかチェックし(ステップ1104)、第2周期になっていなければ、ステップ1102以降の処理を繰り返す。
第2周期になっていれば、車両速度Vxが零である状態が2秒以上続いていたかどうかによって停車判定を行う(ステップ1105)。
停車中でなければ、第3周期(1Hz周期=GPS測位周期)になっているかチェックし(ステップ1106)、第3周期でなければカルマンフィルタ処理部15の第1補正部21は速度計算部13が(4)式により計算した車両速度Vxと自律航法部12が(2)式より計算した車両速度Vsp(k)を用いてカルマンフィルタ処理により車両速度、前記ピッチ角θ、センサー取りつけピッチ角A、センサー取り付けヨー角A2、角速度信号オフセットωOF、加速度信号オフセットαOFを補正する(ステップ1107)。ステップ1107では後述するカルマンフィルタの観測行列H1を用いた第1補正処理が行われる。
ステップ106において、第3周期であればカルマンフィルタ処理部15の第2補正部22はGPSレシーバ14が出力する3次元の車両位置(NGPS、EGPS、DGPS)、3次元の車両速度(VNGPS、VEGPS、VDGPS)、誤差指標を用いて、車両位置、車両速度、ピッチ角θ、車両取り付けピッチ角A、ヨー角Y、車両取り付けヨー角A2、角速度信号オフセットωOF、加速度信号オフセットαOFを補正する(ステップ1108)。ステップ1108では後述するカルマンフィルタの観測行列H2を用いた第2補正処理が行われる。
このステップ1108において、第2補正部22は図19のステップ1201に示すように、信頼度が無いと判定された測定成分データの補正処理における貢献度を零あるいは略零にし、信頼度有りと判定された測定成分データの補正処理における貢献度を誤差指標の大きさに応じて小さくするよう補正処理を行う。
あるいは、第2補正部22はステップ1108において図20に示すように、GPS測定成分データが1つでも信頼度が無いと判定された場合には(ステップ1211で「NO」)、補正処理を行わないよう制御し(ステップ1212)、全てのGPS測定成分データが信頼度有りと判定された場合には補正処理を行うと共に、該補正処理における各GPS測定成分の貢献度を誤差指標に応じて小さくする(ステップ1213)。かかる制御により、システムの精度を向上することができる。なお、図20の制御を可能にするために、GPSフィルタ15は、GPS測定成分データの1つでも信頼度が無いと判定した場合、全GPS測定成分データの誤差指標を1000にする必要がある。
あるいは、第2補正部22はステップ1108において、図21に示すようにGPS測定成分データを速度成分グループと位置成分グループに分け(ステップ1221)、グループ毎に、測定成分が1つでも信頼度が無いと判定された場合には(ステップ1222で「NO」)、該グループの測定成分を用いた補正処理を行わない(ステップ1223)。しかし、グループ全ての測定成分が信頼度有りと判定された場合には(ステップ1222で「YES」)、該グループの測定成分を用いた補正処理を行うと共に、該補正処理における各測定成分の貢献度を誤差指標に応じて小さくする(ステップ1224)。GPSレシーバでは、GPS速度データの方がGPS位置データより測定精度が良いから、上記の制御をすることによりシステムの精度を向上することができる。なお、図21の制御を可能にするために、GPSフィルタ15は、グループのGPS測定成分データの1つでも信頼度が無いと判定した場合、該グループの全GPS測定成分データの誤差指標を1000にする必要がある。
図18に戻って、ステップ1105において、停車中であれば、第3周期(1Hz周期=GPS測位周期)になっているかチェックし(ステップ1109)、第3周期でなければカルマンフィルタ処理部15の第1補正部21は前記ステップ1107の補正処理を行うと共に、ジャイロの角速度出力信号と自律航法部12で計算した角速度信号オフセットとの差に基づいて角速度オフセット補正を行う(ステップ1110)。このステップ1110では後述するカルマンフィルタの観測行列H3を用いた第3補正処理が行われる。
ステップ1109において、第3周期であれば、カルマンフィルタ15の第2補正部22は前記ステップ1108の補正処理を行うと共に、ジャイロの角速度出力信号と自律航法部12で計算した角速度信号オフセットとの差に基づいて角速度オフセット補正を行う(ステップ1111)。このステップ1111では後述するカルマンフィルタの観測行列H4を用いた第4補正処理が行われる。
【0025】
以上の位置検出処理によれば、GPSによる推定誤差補正より早い周波数で、第1補正部21が誤差累積の補正を行うため精度の高い位置検出ができる。
図22はGPS受信時とGPS非受信時における位置検出誤差の説明図であり、(A)に示すようにGPS受信時に第1の補正部21は10Hz周期でピッチ角、センサー取り付けピッチ角、センサー取り付けヨー角の補正を行い、第2の補正部22は1Hz周期(GPS測位周期)で補正を行うため、誤差の累積を小さくできる。また、(B)に示すようにGPS非受信時でも第1の補正部21は10Hz周期でピッチ角、センサー取り付けピッチ角、センサー取り付けヨー角の補正を行うため、誤差の累積度合を小さくできる。
【0026】
図23はA矢印方向から車両が移動してきて立体駐車場でグルグル回ってB矢印方向から去って行ったときの本発明の車両走行軌跡データの説明図であり、ほぼ実際の走行軌跡を示している。ただし、図23はGPS測定データの誤差指標が正確に計算され、GPSレシーバとカルマンフィルタ処理部が最大に機能を発揮した例であり、マップマッチングMMはしていない。図24(A)はカルマンフィルタ処理部16を使用せず、主にマップマッチングで補正したときの従来の走行軌跡データ例であり、図24(B)はカルマンフィルタ処理部16を使用するが、誤差指標が不正確、あるいは誤差指標がない場合の走行軌跡データ例である。図24(B)より明らかなように誤差指標が不正確、あるいは誤差指標がない場合、正確な走行軌跡を示さなくなる。
【0027】
(E)カルマンフィルタ処理
カルマンフィルタ処理は各時刻における予測値と観測値との誤差を修正しながら、各時刻における最適な推定値を逐次求める方法である。カルマンフィルタ処理においては、予め、ある値を予測するための算出式を設定し、この算出式を用いて観測値が得られる時刻nまで予測を繰り返す。時刻nで観測値が取得できれば、該観測値を用いて時刻nでの推定値について確率論的に定義された誤差を最小化させるような推定値補正計算を行う。
図25はカルマンフィルタ処理の概要説明図である。カルマンフィルタにおいては、図25に示すように、信号生成過程40と観測過程41に分けられる。図において、線形システムFがあり、そのシステムの状態をX(t)とするとき、観測行列Hを介してX(t)の一部が観測できる場合、カルマンフィルタはX(t)の最適な推定値を与える。ここで、wは信号生成過程にて発生する雑音であり、vは観測過程にて発生する雑音である。カルマンフィルタは、入力をZ(t)としてカルマン処理を所定周期で繰り返し実行することにより、最適推定値X(t)を求める。
【0028】
本発明のカルマンフィルタ処理におけるシステムモデルの状態式は次式
ΔX(k+1)=F(k)δX(k)+w(k) (17)
で表され、システム状態変数δXは
ΔX=[δN、δE、δD、δVbx、δc00、δc10、δc20、δp00、δp10、δp20、bwz、bax]
である。但し、Vbx=Vsp((2)式参照)、bwz=ωOF、bax=αOFとしている。また、c00〜p20のパラメータは座標変換行列の要素で、
c00=cosθcosY
c10=cosθsinY
c20=−sinθ
p00=cosAcosA2
p10=cosAsinA2
p20=−sinA
である。(17)式における線形システムFは(2)、(3)、(5)式のシステムモデルを表す式より図26に示す行列で表現でき、太枠内が行列要素である。なお、cijはセンサー座標系からN−E−D座標系への座標変換行列要素、pijはセンサー座標系から車両固定座標系への座標変換行列要素であり、それぞれ次式により表現される。
【数4】
【0029】
また、本発明のカルマンフィルタの観測式は
ΔZ(k)=H(k)δX(k)+v(k) (18)
で表される。(18)式の観測行列Hは図27に示す行列で表される。図27において、観測行列Hの行列部分(1)は10Hz周期での速度誤差δVbxを計算する部分、(2)は10Hz周期での停車時における角速度オフセット誤差bwzを計算する部分、(3)は1Hz周期でのGPSの車両位置誤差δN,δE,δDおよび車両速度誤差δvnx,δvny,δvnzを計算する部分である。なお、観測行列Hは
【数5】
と表現する。(1)は観測行列Hの第1行を、(2)は観測行列Hの第2行、(3)は観測行列Hの第3〜第8行を意味している。
カルマンフィルタは、Z(t) (=δZ(t)) が観測できるタイミングで(18)式によりZ(t)(=δZ(t))を計算し、計算した値と観測された値の差に基づいてX(t)(=δX(t))を推定し、以後、次のZ(t)が観測されるまでX(t)を(17)式により更新する。そして、Z(t)が観測されると上記差を再び演算し、該差に基づいてX(t)(=δX(t))を推定し、以後、同様の処理を繰り返す。
【0030】
観測行列Hの行列部分(1)は図18の処理ステップ1107の第1補正処理において使用するカルマンフィルタの観測行列H1を構成し、
【数6】
である。また、観測行列Hの行列部分(1)、(3)は図18の処理ステップ1108の第2補正処理において使用するカルマンフィルタの観測行列H2を構成し、
【数7】
である。また、観測行列Hの行列部分(1)、(2)は図18の処理ステップ1110の第3補正処理において使用するカルマンフィルタの観測行列H3を構成し、
【数8】
である。また、観測行列Hの行列部分(1)、(2)、(3)は図18の処理ステップ1111の第4補正処理において使用するカルマンフィルタの観測行列H4を構成し、
【数9】
である。
【0031】
カルマンフィルタは、入力をZ(t)として以下の(19)式を所定周期(Z(t)の入力周期)で繰り返し実行することにより、最適推定値X(t|t)(=δX(t|t))を求める。ただし、時刻jまでの情報に基づく時刻iでのAの推定値をA(i|j)と表記する。
X(t|t)=X(t|t−1)+K(t)[Z(t)−HX(t|t−1)] (19)
ここでX(t|t−1)は事前推定値、K(t)はカルマンゲインであり、それぞれ
X(t|t−1)=FX(t−1|t−1) (20)
K(t)=P(t|t−1)HT (HP(t|t−1)HT+V)-1 (21)
と表現でき、事前推定値X(t|t−1)は、Z(t)の入力周期より短い周期で(20)式により更新される。
また、Pは状態量Xの誤差共分散行列であり、P(t|t−1)は誤差共分散の予測値、P(t−1|t−1)は誤差共分散であり、それぞれ
P(t|t−1)=FP(t−1|t−1)FT +W
P(t−1|t−1)=(I−K(t−1)H)P(t−1|t−2)
である。Vは観測過程で発生する雑音vの分散、ずなわち、測定に関する誤差(誤差指標)の共分散行列、Wは信号過程で発生する雑音wの分散である。添字の(・)T は転置行列を意味し、(・)-1は逆行列を意味する。また、Iは単位行列である。さらに、VとWは平均0の白色ガウス雑音であり、互いに無相関である。上記のようなカルマンフィルタにおいて、状態量Xと誤差共分散Pの初期値に適当な誤差を与えてやり、新しい観測が行われる度に(17)式の計算を繰り返し行うことにより、状態量Xの精度を向上することができる。
【0032】
(F)誤差指標のカルマンフィルタの補正処理に対する貢献度
誤差指標の共分散行列Vは誤差指標δPx,δPy,δPz,δVx,δVy,δVzを用いて次式
【数10】
で表現される。
誤差指標のカルマンフィルタ処理に対する貢献度は、カルマンゲインK(t)を算出するための(19)式の右辺(HP(t|t−1)HT+V)-1より明らかなように、誤差指標の逆数に依存する。すなわち、誤差指標が大きいと貢献度は小さくなり、誤差指標が小さいと貢献度は大きくなる。例えば、誤差指標の共分散行列Vにおいて、全てのGPS測定成分の信頼度が無く、誤差指標δPx,δPy,δPz,δVx,δVy,δVzが全て1000であるとすれば、(HP(t|t−1)HT+V)-1は零あるいは略零となる。この結果、カルマンゲインK(t)は零となり、何らの補正は行われない。
【0033】
本発明によれば、GPSフィルタを備えているため、どのGPSレシーバでもカルマンフィルタ複合システムに利用することができる。即ち、数社に限られるGPSレシーバだけでなく、多くのGPSレシーバを採用候補に挙げることができ、その中からコストパーフォーマンスが最適なGPSレシーバを採用することができる。また、GPSレシーバを用いる際、該GPSレシーバが出力する誤差指標よりも確からしい、あるいはGPSレシーバが出力しない誤差指標をGPSフィルタから出力できるので、システム精度を向上することができる。また、信頼度の無いGPS測定データのカルマンフィルタ補正処理における貢献度を零にできるため、システム精度を向上することができる。
以上本発明を実施例に従って説明したが、本発明は実施例に限定されるものではない。たとえば、以上では、カルマンフィルタを使用して各パラメータを補正する場合であるが、カルマンフィルタに限らず、Hインフィニティフィルタ、パーティクルフィルタなど、確率論に基づくフィルタリングシステムを利用して補正することが可能である。
また、以上では、カルマンフィルタ処理部において第1、第2補正処理を行う場合について説明したが、本発明はGPS測定データを用いた第2補正処理のみを行う場合(第1補正処理を行わない)にも適用できることは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の位置検出装置の概要説明図である
【図2】本発明の位置検出装置の構成図である
【図3】姿勢パラメータ(ピッチ角θ、センサー取り付けピッチ角A、ヨー角Y、センサー取り付けヨー角A2)説明図である。
【図4】加速度センサーから出力する加速度信号を用いて車両速度Vsp(k)を計算する方法の説明図である。
【図5】GPSフィルタの構成図である。
【図6】GPSフィルタの信頼度測定、誤差指標計算処理フローである。
【図7】北・東方向速度の信頼度判定処理フローである。
【図8】GPS速度が予測速度範囲内にあるかの判定処理フローのである。
【図9】GPS方位θGPSに信頼度があるかの判定処理フローである。
【図10】上下方向速度の信頼度判定処理フローである。
【図11】GPS緯度・経度の信頼度判定処理フローである。
【図12】GPS高度の信頼度判定処理フローである。
【図13】北・東方向速度の誤差指標計算処理フローである。
【図14】上下方向速度の誤差指標計算処理フローである。
【図15】GPS緯度・経度の誤差指標計算処理フローである。
【図16】GPS高度誤差指標計算処理フローである。
【図17】GPS高度誤差指標を計算するための近似式決定説明図である。
【図18】位置検出部の全体の処理フローである。
【図19】信頼度及び誤差指標の補正処理における貢献度説明図である。
【図20】1つでもGPS測定データに信頼度が無い場合、全GPS測定データの誤差指標を大きな値にして補正処理を行わないようにし、全てのGPS測定データに信頼度がある場合において補正処理を行う場合の処理フローである。
【図21】GPS測定データを速度グループと位置グループに分け、グループのGPS測定データに1つでも信頼度が無い場合、該グループの測定データを用いた補正処理を行わないようにした処理フローである。
【図22】第1、第2補正処理を行う場合のGPS受信時とGPS非受信時における位置検出誤差の説明図である。
【図23】A矢印方向から車両が移動してきて立体駐車場でグルグル回ってB矢印方向から去って行ったときの本願発明の車両走行軌跡データの説明図である。
【図24】カルマンフィルタ処理部を使用せず、主にマップマッチングで補正したときの従来の走行軌跡データ例、およびカルマンフィルタ処理部を使用するが、誤差指標が不正確、あるいは誤差指標がない場合の走行軌跡データ例である。
【図25】カルマンフィルタ処理の概要説明図である。
【図26】カルマンフィルタの線形システムFを示す行列例である。
【図27】カルマンフィルタの観測行列Hを示す行列例である。
【符号の説明】
【0035】
11 自律センサー
12 自律航法部
14 GPSレシーバ
15 GPSフィルタ
16 カルマンフィルタ処理部
21 第1の補正部
22 第2の補正部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の現在位置を検出する位置検出方法において、
所定の周期で自律航法により車両の位置を計算し、
前記周期より長いGPSレシーバの測位周期で該GPSレシーバにより測定される車両の各方向位置成分及び速度成分を用いて前記自律航法による位置計算結果及び該自律航法の位置計算に使用する車両速度、ピッチ角、センサー取り付け姿勢角を補正する補正処理を行い、
前記GPSレシーバにより測定される車両の各方向の位置成分及び速度成分の信頼度を判定すると共に、信頼度ありと判定された成分の誤差指標を算出し、
信頼度が無いと判定された測定成分の前記補正処理における貢献度を零あるいは略零にし、信頼度有りと判定された測定成分の前記補正処理における貢献度を前記誤差指標の大きさに応じて小さくする、
ことを特徴とする位置検出方法。
【請求項2】
車両の現在位置を検出する位置検出方法において、
所定の周期で自律航法により車両の位置を計算し、
前記周期より長いGPSレシーバの測位周期で該GPSレシーバにより測定される車両の各方向位置成分及び速度成分を用いて前記自律航法による位置計算結果及び該自律航法の位置計算に使用する車両速度、ピッチ角、センサー取り付け姿勢角を補正する補正処理を行い、
前記GPSレシーバにより測定される車両の各方向の位置成分及び速度成分の信頼度を判定すると共に、信頼度ありと判定された成分の誤差指標を算出し、
測定成分が1つでも信頼度が無いと判定された場合には前記補正処理を行わず、
全ての測定成分が信頼度有りと判定された場合には前記補正処理を行うと共に、該補正処理における各測定成分の貢献度を前記誤差指標に応じて小さくする、
ことを特徴とする位置検出方法。
【請求項3】
車両の現在位置を検出する位置検出方法において、
所定の周期で自律航法により車両の位置を計算し、
前記周期より長いGPSレシーバの測位周期で該GPSレシーバにより測定される車両の各方向位置成分及び速度成分を用いて前記自律航法による位置計算結果及び該自律航法の位置計算に使用する車両速度、ピッチ角、センサー取り付け姿勢角を補正する補正処理を行い、
前記GPSレシーバにより測定される車両の各方向の位置成分及び速度成分の信頼度を判定すると共に、信頼度ありと判定された成分の誤差指標を算出し、
GPS測定成分を速度成分グループと位置成分グループに分け、グループ毎に、測定成分が1つでも信頼度が無いと判定された場合には該グループの測定成分を用いた補正処理を行わず、グループ全ての測定成分が信頼度有りと判定された場合に該グループの測定成分を用いた補正処理を行うと共に、該補正処理における各測定成分の貢献度を誤差指標に応じて小さくする、
ことを特徴とする位置検出方法。
【請求項4】
前記自律航法による位置計算周期より長く、かつ、前記GPS周期以下の周期で、移動距離検出センサーの出力信号を用いて車両速度を測定し、該車両速度と前記自律航法で計算した前記車両速度との速度差に基づいて、自律航法で用いる前記車両速度、前記ピッチ角、前記センサーの取り付け姿勢角を補正する、
ことを特徴とする請求項1記載の位置検出方法。
【請求項5】
前記信頼度が無いと判定された前記成分の誤差指標を、該成分が前記補正処理に貢献しないように大きな値にする、
ことを特徴とする請求項1乃至3記載の位置検出方法。
【請求項6】
カルマンフィルタ処理に基づいて前記補正処理を行い、
前記誤差指標を用いて該カルマンフィルタ処理に用いる測定誤差の共分散行列を演算し、該共分散行列により各測定成分の前記補正処理における貢献度を該誤差指標に応じて小さくする、
ことを特徴とする請求項5記載の位置検出方法。
【請求項7】
車両の現在位置を検出する位置検出方法において、
車両の加速度や車両の方位変化量に応じた信号を出力する自律航法用センサーの水平面に対するピッチ角θ、ヨー角Yおよび車両に対する前記センサーの取り付け姿勢角並びに車両移動距離検出部により検出された車両移動距離を用いて、自律航法部において第1の周期で緯度、経度、高さ方向の車両位置を計算すると共に、前記センサーから出力する加速度信号を用いて車両速度を計算する第1ステップ、
前記移動距離検出部の出力信号を用いて前記第1周期以上の長さの第2の周期で車両速度を計算し、該車両速度と前記自律航法部で計算した前記車両速度との速度差に基づいて、自律航法部で計算した車両速度、前記ピッチ角θ、前記センサーの取り付け姿勢角を補正する第2ステップ、
GPSレシーバが出力する緯度、経度、高さ方向の車両位置と車両速度、および前記自律航法部が出力する緯度、経度、高さ方向の車両位置と車両速度を用いて、第2周期以上の長さの第3の周期で前記自律航法部が計算する緯度、経度、高さ方向の車両位置、車両速度、前記ピッチ角θ、前記ヨー角Y、前記センサーの取り付け姿勢角およびセンサーオフセット値を補正する第3ステップ、
前記GPSレシーバにより測定される車両の各方向の位置成分及び速度成分の信頼度を判定すると共に、信頼度ありと判定された成分の誤差指標を算出する第4ステップ、
信頼度が無いと判定された測定成分の前記第3ステップの補正処理における貢献度を零あるいは略零にし、信頼度有りと判定された測定成分の該補正処理における貢献度を前記誤差指標の大きさに応じて小さくする第5ステップ、
を備えたことを特徴とする位置検出方法。
【請求項8】
前記第4ステップにおいて、前記信頼度が無いと判定された前記成分の誤差指標を該成分が前記補正処理に貢献しないように大きな値にし、
前記第3ステップにおいて、カルマンフィルタ処理に基づいて前記補正対象の値を補正し、各成分の前記誤差指標を用いて該カルマンフィルタ処理に用いる測定誤差の共分散行列を演算し、該演算により各測定成分の前記補正処理における貢献度を該誤差指標に応じて小さくする、
ことを特徴とする請求項7記載の位置検出方法。
【請求項9】
車両の現在位置を検出する位置検出装置において、
所定の周期で自律航法により車両の位置を計算する自律航法部、
前記周期より長いGPSレシーバの測位周期で該GPSレシーバにより測定される車両の各方向位置成分及び速度成分を用いて、前記自律航法による位置計算結果及び該自律航法の位置計算に使用する車両速度、ピッチ角、センサー取り付け姿勢角を補正する補正処理を行なう補正部、
前記GPSレシーバにより測定される車両の各方向の位置成分及び速度成分の信頼度を判定すると共に、信頼度ありと判定された成分の誤差指標を算出するGPSデータ判定部を備え、
前記補正部は、信頼度が無いと判定された測定成分の前記補正処理における貢献度を零あるいは略零にし、信頼度有りと判定された測定成分の前記補正処理における貢献度を前記誤差指標の大きさに応じて小さくする手段、
を備えることを特徴とする位置検出装置。
【請求項10】
車両の現在位置を検出する位置検出装置において、
所定の周期で自律航法により車両の位置を計算する自律航法部、
前記周期より長いGPSレシーバの測位周期で該GPSレシーバにより測定される車両の各方向位置成分及び速度成分を用いて前記自律航法による位置計算結果及び該自律航法の位置計算に使用する車両速度、ピッチ角、センサー取り付け姿勢角を補正する補正処理を行なう補正部、
前記GPSレシーバにより測定される車両の各方向の位置成分及び速度成分の信頼度を判定すると共に、信頼度ありと判定された成分の誤差指標を算出するGPSデータ判定部を備え、前記補正部は、
測定成分が1つでも信頼度が無いと判定された場合には前記補正処理を行わないよう制御する手段、
全ての測定成分が信頼度有りと判定された場合には前記補正処理を行うと共に、該補正処理における各測定成分の貢献度を前記誤差指標に応じて小さくする手段、
を備えたことを特徴とする位置検出装置。
【請求項11】
車両の現在位置を検出する位置検出装置において、
所定の周期で自律航法により車両の位置を計算する自律航法部、
前記周期より長いGPSレシーバの測位周期で該GPSレシーバにより測定される車両の各方向位置成分及び速度成分を用いて前記自律航法による位置計算結果及び該自律航法の位置計算に使用する車両速度、ピッチ角、センサー取り付け姿勢角を補正する補正処理を行なう補正部、
前記GPSレシーバにより測定される車両の各方向の位置成分及び速度成分の信頼度を判定すると共に、信頼度ありと判定された成分の誤差指標を算出するGPSデータ判定部、
を備え、前記補正部は、
GPS測定成分を速度成分グループと位置成分グループに分け、グループ毎に、測定成分が1つでも信頼度が無いと判定された場合には該グループの測定成分を用いた補正処理を行わないようにする手段、
グループの全ての測定成分が信頼度有りと判定された場合に該グループの測定成分を用いた補正処理を行うと共に、該補正処理における各測定成分の貢献度を誤差指標に応じて小さくする手段、
を備えたことを特徴とする位置検出装置。
【請求項12】
前記自律航法による位置計算周期より長く、かつ、前記GPS周期以下の周期で、移動距離検出センサーの出力信号を用いて車両速度を測定し、該車両速度と前記自律航法で計算した前記車両速度との速度差に基づいて、自律航法で用いる前記車両速度、前記ピッチ角、前記センサーの取り付け姿勢角を補正する第2の補正部、
を備えることを特徴とする請求項9乃至11記載の位置検出装置。
【請求項13】
前記GPSデータ判定部は、
前記GPSレシーバにより測定される車両の各方向の位置成分及び速度成分の信頼度を判定する信頼度判定部、
信頼度ありと判定された成分の誤差指標を算出する誤差指標計算部、
を備えることを特徴とする請求項9乃至11記載の位置検出装置。
【請求項14】
前記誤差指標計算部は、前記信頼度が無いと判定された前記成分の誤差指標を、該成分が前記補正処理に貢献しないように大きな値にする、
ことを特徴とする請求項14記載の位置検出装置。
【請求項15】
前記補正部は、カルマンフィルタ処理に基づいて前記補正処理を行い、前記誤差指標を用いて該カルマンフィルタ処理に用いる測定誤差の共分散行列を演算し、該共分散行列により各測定成分の前記補正処理における貢献度を該誤差指標に応じて小さくするカルマンフィルタ処理、
を備えたことを特徴とする請求項9乃至11記載の位置検出装置。
【請求項16】
車両の現在位置を検出する位置検出装置において、
車両の加速度や車両の方位変化量に応じた信号を出力する自律航法用センサーの水平面に対するピッチ角θ、ヨー角Yおよび車両に対する前記センサーの取り付け姿勢角並びに車両移動距離検出部により検出された車両移動距離を用いて、第1の周期で緯度、経度、高さ方向の車両位置を計算すると共に、前記センサーから出力する加速度信号を用いて車両速度を計算する自律航法部、
前記移動距離検出部の出力信号を用いて前記第1周期以上の長さの第2の周期で車両速度を計算し、該車両速度と前記自律航法部で計算した前記車両速度との速度差に基づいて、自律航法部で計算した車両速度、前記ピッチ角θ、前記センサーの取り付け姿勢角を補正する第1の補正部、
GPSレシーバが出力する緯度、経度、高さ方向の車両位置と車両速度、および前記自律航法部が出力する緯度、経度、高さ方向の車両位置と車両速度を用いて、第2周期以上の長さの第3の周期で前記自律航法部が計算する緯度、経度、高さ方向の車両位置、車両速度、前記ピッチ角θ、前記ヨー角Y、前記センサーの取り付け姿勢角およびセンサーオフセット値を補正する第2の補正部、
前記GPSレシーバにより測定される車両の各方向の位置成分及び速度成分の信頼度を判定すると共に、信頼度ありと判定された成分の誤差指標を算出するGPSデータ判定部を備え、前記第2補正部は、
信頼度が無いと判定された測定成分の前記第3ステップの補正処理における貢献度を零あるいは略零にし、信頼度有りと判定された測定成分の該補正処理における貢献度を前記誤差指標の大きさに応じて小さくする手段、
を備えたことを特徴とする位置検出装置。
【請求項17】
前記GPSデータ判定部は、
前記GPSレシーバにより測定される車両の各方向の位置成分及び速度成分の信頼度を判定する信頼度判定部、
信頼度ありと判定された成分の誤差指標を算出する誤差指標計算部、
を備えることを特徴とする請求項16記載の位置検出装置。
【請求項18】
前記誤差指標計算部は、前記信頼度が無いと判定された前記成分の誤差指標を、該成分が前記補正処理に貢献しないように大きな値にする、
ことを特徴とする請求項17記載の位置検出装置。
【請求項1】
車両の現在位置を検出する位置検出方法において、
所定の周期で自律航法により車両の位置を計算し、
前記周期より長いGPSレシーバの測位周期で該GPSレシーバにより測定される車両の各方向位置成分及び速度成分を用いて前記自律航法による位置計算結果及び該自律航法の位置計算に使用する車両速度、ピッチ角、センサー取り付け姿勢角を補正する補正処理を行い、
前記GPSレシーバにより測定される車両の各方向の位置成分及び速度成分の信頼度を判定すると共に、信頼度ありと判定された成分の誤差指標を算出し、
信頼度が無いと判定された測定成分の前記補正処理における貢献度を零あるいは略零にし、信頼度有りと判定された測定成分の前記補正処理における貢献度を前記誤差指標の大きさに応じて小さくする、
ことを特徴とする位置検出方法。
【請求項2】
車両の現在位置を検出する位置検出方法において、
所定の周期で自律航法により車両の位置を計算し、
前記周期より長いGPSレシーバの測位周期で該GPSレシーバにより測定される車両の各方向位置成分及び速度成分を用いて前記自律航法による位置計算結果及び該自律航法の位置計算に使用する車両速度、ピッチ角、センサー取り付け姿勢角を補正する補正処理を行い、
前記GPSレシーバにより測定される車両の各方向の位置成分及び速度成分の信頼度を判定すると共に、信頼度ありと判定された成分の誤差指標を算出し、
測定成分が1つでも信頼度が無いと判定された場合には前記補正処理を行わず、
全ての測定成分が信頼度有りと判定された場合には前記補正処理を行うと共に、該補正処理における各測定成分の貢献度を前記誤差指標に応じて小さくする、
ことを特徴とする位置検出方法。
【請求項3】
車両の現在位置を検出する位置検出方法において、
所定の周期で自律航法により車両の位置を計算し、
前記周期より長いGPSレシーバの測位周期で該GPSレシーバにより測定される車両の各方向位置成分及び速度成分を用いて前記自律航法による位置計算結果及び該自律航法の位置計算に使用する車両速度、ピッチ角、センサー取り付け姿勢角を補正する補正処理を行い、
前記GPSレシーバにより測定される車両の各方向の位置成分及び速度成分の信頼度を判定すると共に、信頼度ありと判定された成分の誤差指標を算出し、
GPS測定成分を速度成分グループと位置成分グループに分け、グループ毎に、測定成分が1つでも信頼度が無いと判定された場合には該グループの測定成分を用いた補正処理を行わず、グループ全ての測定成分が信頼度有りと判定された場合に該グループの測定成分を用いた補正処理を行うと共に、該補正処理における各測定成分の貢献度を誤差指標に応じて小さくする、
ことを特徴とする位置検出方法。
【請求項4】
前記自律航法による位置計算周期より長く、かつ、前記GPS周期以下の周期で、移動距離検出センサーの出力信号を用いて車両速度を測定し、該車両速度と前記自律航法で計算した前記車両速度との速度差に基づいて、自律航法で用いる前記車両速度、前記ピッチ角、前記センサーの取り付け姿勢角を補正する、
ことを特徴とする請求項1記載の位置検出方法。
【請求項5】
前記信頼度が無いと判定された前記成分の誤差指標を、該成分が前記補正処理に貢献しないように大きな値にする、
ことを特徴とする請求項1乃至3記載の位置検出方法。
【請求項6】
カルマンフィルタ処理に基づいて前記補正処理を行い、
前記誤差指標を用いて該カルマンフィルタ処理に用いる測定誤差の共分散行列を演算し、該共分散行列により各測定成分の前記補正処理における貢献度を該誤差指標に応じて小さくする、
ことを特徴とする請求項5記載の位置検出方法。
【請求項7】
車両の現在位置を検出する位置検出方法において、
車両の加速度や車両の方位変化量に応じた信号を出力する自律航法用センサーの水平面に対するピッチ角θ、ヨー角Yおよび車両に対する前記センサーの取り付け姿勢角並びに車両移動距離検出部により検出された車両移動距離を用いて、自律航法部において第1の周期で緯度、経度、高さ方向の車両位置を計算すると共に、前記センサーから出力する加速度信号を用いて車両速度を計算する第1ステップ、
前記移動距離検出部の出力信号を用いて前記第1周期以上の長さの第2の周期で車両速度を計算し、該車両速度と前記自律航法部で計算した前記車両速度との速度差に基づいて、自律航法部で計算した車両速度、前記ピッチ角θ、前記センサーの取り付け姿勢角を補正する第2ステップ、
GPSレシーバが出力する緯度、経度、高さ方向の車両位置と車両速度、および前記自律航法部が出力する緯度、経度、高さ方向の車両位置と車両速度を用いて、第2周期以上の長さの第3の周期で前記自律航法部が計算する緯度、経度、高さ方向の車両位置、車両速度、前記ピッチ角θ、前記ヨー角Y、前記センサーの取り付け姿勢角およびセンサーオフセット値を補正する第3ステップ、
前記GPSレシーバにより測定される車両の各方向の位置成分及び速度成分の信頼度を判定すると共に、信頼度ありと判定された成分の誤差指標を算出する第4ステップ、
信頼度が無いと判定された測定成分の前記第3ステップの補正処理における貢献度を零あるいは略零にし、信頼度有りと判定された測定成分の該補正処理における貢献度を前記誤差指標の大きさに応じて小さくする第5ステップ、
を備えたことを特徴とする位置検出方法。
【請求項8】
前記第4ステップにおいて、前記信頼度が無いと判定された前記成分の誤差指標を該成分が前記補正処理に貢献しないように大きな値にし、
前記第3ステップにおいて、カルマンフィルタ処理に基づいて前記補正対象の値を補正し、各成分の前記誤差指標を用いて該カルマンフィルタ処理に用いる測定誤差の共分散行列を演算し、該演算により各測定成分の前記補正処理における貢献度を該誤差指標に応じて小さくする、
ことを特徴とする請求項7記載の位置検出方法。
【請求項9】
車両の現在位置を検出する位置検出装置において、
所定の周期で自律航法により車両の位置を計算する自律航法部、
前記周期より長いGPSレシーバの測位周期で該GPSレシーバにより測定される車両の各方向位置成分及び速度成分を用いて、前記自律航法による位置計算結果及び該自律航法の位置計算に使用する車両速度、ピッチ角、センサー取り付け姿勢角を補正する補正処理を行なう補正部、
前記GPSレシーバにより測定される車両の各方向の位置成分及び速度成分の信頼度を判定すると共に、信頼度ありと判定された成分の誤差指標を算出するGPSデータ判定部を備え、
前記補正部は、信頼度が無いと判定された測定成分の前記補正処理における貢献度を零あるいは略零にし、信頼度有りと判定された測定成分の前記補正処理における貢献度を前記誤差指標の大きさに応じて小さくする手段、
を備えることを特徴とする位置検出装置。
【請求項10】
車両の現在位置を検出する位置検出装置において、
所定の周期で自律航法により車両の位置を計算する自律航法部、
前記周期より長いGPSレシーバの測位周期で該GPSレシーバにより測定される車両の各方向位置成分及び速度成分を用いて前記自律航法による位置計算結果及び該自律航法の位置計算に使用する車両速度、ピッチ角、センサー取り付け姿勢角を補正する補正処理を行なう補正部、
前記GPSレシーバにより測定される車両の各方向の位置成分及び速度成分の信頼度を判定すると共に、信頼度ありと判定された成分の誤差指標を算出するGPSデータ判定部を備え、前記補正部は、
測定成分が1つでも信頼度が無いと判定された場合には前記補正処理を行わないよう制御する手段、
全ての測定成分が信頼度有りと判定された場合には前記補正処理を行うと共に、該補正処理における各測定成分の貢献度を前記誤差指標に応じて小さくする手段、
を備えたことを特徴とする位置検出装置。
【請求項11】
車両の現在位置を検出する位置検出装置において、
所定の周期で自律航法により車両の位置を計算する自律航法部、
前記周期より長いGPSレシーバの測位周期で該GPSレシーバにより測定される車両の各方向位置成分及び速度成分を用いて前記自律航法による位置計算結果及び該自律航法の位置計算に使用する車両速度、ピッチ角、センサー取り付け姿勢角を補正する補正処理を行なう補正部、
前記GPSレシーバにより測定される車両の各方向の位置成分及び速度成分の信頼度を判定すると共に、信頼度ありと判定された成分の誤差指標を算出するGPSデータ判定部、
を備え、前記補正部は、
GPS測定成分を速度成分グループと位置成分グループに分け、グループ毎に、測定成分が1つでも信頼度が無いと判定された場合には該グループの測定成分を用いた補正処理を行わないようにする手段、
グループの全ての測定成分が信頼度有りと判定された場合に該グループの測定成分を用いた補正処理を行うと共に、該補正処理における各測定成分の貢献度を誤差指標に応じて小さくする手段、
を備えたことを特徴とする位置検出装置。
【請求項12】
前記自律航法による位置計算周期より長く、かつ、前記GPS周期以下の周期で、移動距離検出センサーの出力信号を用いて車両速度を測定し、該車両速度と前記自律航法で計算した前記車両速度との速度差に基づいて、自律航法で用いる前記車両速度、前記ピッチ角、前記センサーの取り付け姿勢角を補正する第2の補正部、
を備えることを特徴とする請求項9乃至11記載の位置検出装置。
【請求項13】
前記GPSデータ判定部は、
前記GPSレシーバにより測定される車両の各方向の位置成分及び速度成分の信頼度を判定する信頼度判定部、
信頼度ありと判定された成分の誤差指標を算出する誤差指標計算部、
を備えることを特徴とする請求項9乃至11記載の位置検出装置。
【請求項14】
前記誤差指標計算部は、前記信頼度が無いと判定された前記成分の誤差指標を、該成分が前記補正処理に貢献しないように大きな値にする、
ことを特徴とする請求項14記載の位置検出装置。
【請求項15】
前記補正部は、カルマンフィルタ処理に基づいて前記補正処理を行い、前記誤差指標を用いて該カルマンフィルタ処理に用いる測定誤差の共分散行列を演算し、該共分散行列により各測定成分の前記補正処理における貢献度を該誤差指標に応じて小さくするカルマンフィルタ処理、
を備えたことを特徴とする請求項9乃至11記載の位置検出装置。
【請求項16】
車両の現在位置を検出する位置検出装置において、
車両の加速度や車両の方位変化量に応じた信号を出力する自律航法用センサーの水平面に対するピッチ角θ、ヨー角Yおよび車両に対する前記センサーの取り付け姿勢角並びに車両移動距離検出部により検出された車両移動距離を用いて、第1の周期で緯度、経度、高さ方向の車両位置を計算すると共に、前記センサーから出力する加速度信号を用いて車両速度を計算する自律航法部、
前記移動距離検出部の出力信号を用いて前記第1周期以上の長さの第2の周期で車両速度を計算し、該車両速度と前記自律航法部で計算した前記車両速度との速度差に基づいて、自律航法部で計算した車両速度、前記ピッチ角θ、前記センサーの取り付け姿勢角を補正する第1の補正部、
GPSレシーバが出力する緯度、経度、高さ方向の車両位置と車両速度、および前記自律航法部が出力する緯度、経度、高さ方向の車両位置と車両速度を用いて、第2周期以上の長さの第3の周期で前記自律航法部が計算する緯度、経度、高さ方向の車両位置、車両速度、前記ピッチ角θ、前記ヨー角Y、前記センサーの取り付け姿勢角およびセンサーオフセット値を補正する第2の補正部、
前記GPSレシーバにより測定される車両の各方向の位置成分及び速度成分の信頼度を判定すると共に、信頼度ありと判定された成分の誤差指標を算出するGPSデータ判定部を備え、前記第2補正部は、
信頼度が無いと判定された測定成分の前記第3ステップの補正処理における貢献度を零あるいは略零にし、信頼度有りと判定された測定成分の該補正処理における貢献度を前記誤差指標の大きさに応じて小さくする手段、
を備えたことを特徴とする位置検出装置。
【請求項17】
前記GPSデータ判定部は、
前記GPSレシーバにより測定される車両の各方向の位置成分及び速度成分の信頼度を判定する信頼度判定部、
信頼度ありと判定された成分の誤差指標を算出する誤差指標計算部、
を備えることを特徴とする請求項16記載の位置検出装置。
【請求項18】
前記誤差指標計算部は、前記信頼度が無いと判定された前記成分の誤差指標を、該成分が前記補正処理に貢献しないように大きな値にする、
ことを特徴とする請求項17記載の位置検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
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【図21】
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【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2009−19992(P2009−19992A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−182818(P2007−182818)
【出願日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】
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