位置検出装置
【課題】静電容量方式を用いた第1の検出部における検出精度を低下させることなく、電磁誘導方式を用いた第2の検出部における検出精度の低下を防止又は抑制する。
【解決手段】位置指示器2と、略平板状に形成された第1の検出部13と、この第1の検出部の他方の面と対向する位置に設けられた第2の検出部14とを備えている。位置指示器2は、コイル27を有している。第1の検出部13は、その一方の面に、人体との間の静電容量を検出するための検出電極5を備えている。また、第2の検出部14は、磁束Gを検出するループコイル24を備えている。そして、検出電極15は、略平板状に形成されると共に、外縁から内側に延在するスリットを少なくとも一つ以上有している。これにより、静電容量方式を用いた第1の検出部における検出精度の低下を防止又は抑制すると共に、電磁誘導方式を用いた第2の検出部における検出精度の低下を防止又は抑制することができる。
【解決手段】位置指示器2と、略平板状に形成された第1の検出部13と、この第1の検出部の他方の面と対向する位置に設けられた第2の検出部14とを備えている。位置指示器2は、コイル27を有している。第1の検出部13は、その一方の面に、人体との間の静電容量を検出するための検出電極5を備えている。また、第2の検出部14は、磁束Gを検出するループコイル24を備えている。そして、検出電極15は、略平板状に形成されると共に、外縁から内側に延在するスリットを少なくとも一つ以上有している。これにより、静電容量方式を用いた第1の検出部における検出精度の低下を防止又は抑制すると共に、電磁誘導方式を用いた第2の検出部における検出精度の低下を防止又は抑制することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量方式の検出部と電磁誘導方式の検出部を重ね合わせて、位置指示器または人体(手指)により指示された座標位置を検出する位置検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、パーソナルコンピュータ装置等の情報処理装置における位置入力を行うための装置として、位置検出装置が用いられている。この位置検出装置は、例えば、ペン型に形成された位置指示器、または人体(手指)からなる入力手段によりポインティング操作や文字及び図等の入力情報が入力される。
【0003】
位置指示器を入力手段として用いた入力方式としては、位置指示器に位置検出装置から送信される特定周波数の電磁波に対して共振する共振回路を設け、この共振回路によって生じた共振信号を位置検出装置に送信することにより位置検出装置に対して位置を指示する電磁誘導方式がある。(例えば、特許文献1参照)
【0004】
また、人体を入力手段として用いた入力方式には、図12に示すような、静電容量方式がある。図12は、静電容量方式の検出部を模式的に示す説明図である。図12に示すように、この検出部200は、平板状の検出電極201と、静電容量測定部202とを有している。この静電容量方式の検出部201とは、検出電極201に人体(手指)が接近又は接触すると、人体(手指)と検出電極201との間に静電容量が生じる。そして、この人体と検出電極201の間に生じた静電容量の増減を静電容量測定部202で測定することにより、人体(手指)が接近又は接触した座標を検出している。この際、検出電極201と人体(手指)との間に生じる静電容量をなるべく大きくした方が検出しやすいため、検出電極201は、ある程度の面積を有する平面電極が用いられている。
【0005】
一般的に、電磁誘導方式の検出部は、細かい文字や図等の入力に適している。これに対し、静電容量方式は、入力手段として人体(手指)を用いることができるため、手軽に入力することができる。このため、電磁誘導方式の検出部と静電容量方式の検出部の双方の利点を生かした新しいタイプの位置検出装置が考案され、提案されている。
【特許文献1】特開平7−302153号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、共通の入力エリアで電磁誘導方式及び静電容量方式の2つの検出方法が利用可能な検出装置が検討されている。かかる位置検出装置は、電磁誘導方式の検出部と静電容量方式の検出部とを重ね合わせることで入力するエリアを共通化し、座標入力装置を大型化することなく双方の入力方法を利用可能としたものである。以下、かかる位置検出装置の概略について、図13を用いて説明する。
【0007】
図13は、静電容量方式を用いた第1の検出部と電磁誘導方式を用いた第2の検出部を重ね合わせた位置検出装置を模式的に示した説明図である。この図13に示すように、電磁誘導方式の検出部を構成するループコイル304の上方に、静電容量方式の検出部を構成する検出電極201が配置されている。
【0008】
しかしながら、このような構成を有する位置検出装置は、位置指示器2のコイル27から発生した磁束Gが、静電容量方式の検出部における検出電極201に直交している。すると、この検出電極201には、渦電流Iが生じる。この検出電極201生じた渦電流Iが、位置指示器2からの磁束Gが減衰させる方向(磁束Gと逆向きの方向)に新たな磁束を発生させる。そのため、位置指示器2からの磁束Gが減衰することで、電磁誘導方式の検出部で検出できる磁束Gが減少して検出精度が低下する、という問題を発生させる。
【0009】
また、ループコイル304から磁束を発生させた場合についても、同様に、検出電極201に渦電流が発生する。その結果、位置指示器2に到達する磁束が減少し、位置指示器2の共振回路において十分な誘導起電力を得られない、という問題を発生させる。
【0010】
そこで、検出電極に生じる渦電流の大きさを小さくするために、検出電極の面積を小さくすることが考えられる。しかしながら、検出電極の面積を小さくすると、人体(手指)と検出電極の間に生じる静電容量も小さくなるため、静電容量方式の検出部における検出精度が低下する、という不都合があった。
【0011】
本発明の目的は、上述の問題点を考慮し、静電容量方式を用いた第1の検出部における検出精度の低下を防止又は抑制すると共に、電磁誘導方式を用いた第2の検出部における検出精度の低下を防止又は抑制することができる、位置検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の位置検出装置は、少なくとも一つ以上のコイルを有し、このコイルより磁束を発生する位置指示器と、略平板状に形成され、その一方の面に、人体との間の静電容量を検出するための少なくとも一つ以上の検出電極を設けた第1の検出部と、この第1の検出部の一方の面と反対側の他方の面と対向する位置に設けられ、磁束を検出する少なくとも一つ以上のループコイルを設けた第2の検出部と、を備えている。そして、検出電極は、略平板状に形成されると共に、外縁から内側に延在するスリットを少なくとも一つ以上有している。
【発明の効果】
【0013】
本発明の位置検出装置によれば、静電容量方式を用いた第1の検出部の検出電極にスリットを設けたことにより、この検出電極に渦電流が発生することを防止又は抑制することができる。これにより、電磁誘導方式を用いた第2の検出部の検出精度の低下を防止又は抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の位置検出装置の実施形態例について、図1〜図11を参照して説明する。ここで、図1は、本発明の位置検出装置の実施形態を示す斜視図、図2は、位置検出装置の構成とその動作を説明するためのブロック構成図、図3は、入力部を示す分解斜視図、図4は、第1の検出部の一方の面を示す平面図、図5A及び図5Bは、第1の検出部にかかる検出電極を示す平面図、図6は、第1の検出部の他方の面を示す平面図、図7は、第1の検出部の要部を拡大して示す平面図、図8は、第2の検出部の構成とその動作を説明するためのブロック構成図、図9は第2の検出部にかかるループコイルに検出電極を重ね合わせた状態を模式的に示す説明図である。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。また、本発明は、以下の形態に限定されるものではない。
【0015】
まず、本発明が適用される位置検出装置の概略構成を図1に従って説明する。図1は、本発明が適用される位置検出装置を示す斜視図である。
この図1に示すように、本発明の実施の形態例(以下、「本例」という。)である位置検出装置1は、パーソナルコンピュータやPDA(Personal Digital Assistant)等の図示しない外部装置にケーブル10を介して接続することによって、これら外部装置の入力装置として用いられるものである。なお、特に図示して説明していないが、かかる位置検出装置1をパーソナルコンピュータ等に内蔵しても良い。
【0016】
そして、この位置検出装置1は、後述する静電容量方式の検出部である第1の検出部13と電磁誘導方式の検出部である第2の検出部14を有している。さらに、この座標検出装置1は、位置指示器2または人体(手指)を介したポインティング操作による文字及び図等の入力が行われる。
【0017】
位置指示器2は、電磁誘導方式により位置検出装置1に対して位置を指示するものである。即ち、位置指示器2は、位置検出装置1から送信される特定周波数の電磁波に対して共振する、コイルとコンデンサからなる共振回路を有している。そして、この共振回路で検出した共振信号を位置検出装置1に送信することにより位置検出装置1に対して位置を指示するようになっている。
【0018】
位置検出装置1は、入力情報が入力される入力部4と、この入力部4を有する中空の薄い略直方体をなす筐体5等から構成されている。筐体5は、入力部4の入力面を露出させるための開口部6を有する上ケース7と、この上ケース7に重ね合わされる図示しない下ケースを有している。そして、上ケース7は、入力部4の入力面を露出させる四角形の開口部6を有しており、この開口部6に、入力部4が嵌め込まれる。
【0019】
次に、本例を適用した位置検出装置の回路構成の概略を、図2を参照して説明する。図2に示すように、位置検出装置1は、入力部4と、静電容量測定部22と、電磁誘導検出部23と、処理回路25とを有している。入力部4は、絶縁体であるカバー12と、静電容量方式の第1の検出部13と、電磁誘導方式の第2の検出部14から構成されている。第1の検出部13は、人体(手指)等の接近又は接触を検出し、その接近又は接触した点の座標を検出するためのものである。これに対し、第2の検出部14は、位置指示器2により指示した点の座標を検出するためのものである。
【0020】
静電容量測定部22は、第1の検出部13上に設けられた検出電極における静電容量の変化を測定するための回路であり、第1の検出部13と、処理回路25とに接続されている。電磁誘導検出部23は、電磁誘導方式により位置指示器2が指示した点の位置を検出するための回路であり、第2の検出部14と、処理回路25とに接続されている。処理回路25は、静電容量測定部22又は電磁誘導検出部23により検出した、人体又は位置指示器2により指示された点を座標データとして算出するための回路である。そして、この処理回路25は、図示しない外部装置(例えば、パーソナルコンピュータやPDA)や、この位置検出装置1を内蔵したパーソナルコンピュータの中央演算装置(MPU)等にその算出した座標データを出力するようになっている。
【0021】
次に、本例の位置検出装置1の入力部4の構成を、図3を参照して説明する。入力部4は、薄い平板状をなしており、絶縁体であるカバー12と、一方の面に検出領域16を有する第1の検出部13と、複数のループコイル24を有する第2の検出部14とから構成されている。そして、この入力部4は、カバー12の一方の面と第1の検出部13の一方の面が対向するように配置されている。そして、この第1の検出部13の他方の面に対向するように第2の検出部14が配置されている。このようにして、入力部4は、カバー12と第1の検出部13と第2の検出部14が重なり合っている。
【0022】
次に、本例の位置検出装置1の第1の検出部13の構成を図4〜図7を参照して説明する。まず図4に示すように、第1の検出部13は、略長方形の基板13aと、この基板13aの一方の面(以下、表面という)の略中央部に設けられた略長方形の検出領域16とから構成されている。検出領域16は、人体(手指)等の接近又は接触を検出してその接近又は接触した点の座標を検出するもので、複数の検出電極15で構成されている。そして、この検出領域16を構成する複数の検出電極15のうち外周に配置された検出電極15は、略三角形状をなしており、内側に配置された検出電極15は、略四角形状をなしている。
【0023】
次に、検出領域16の詳細を図5及び図6を参照して説明する。検出領域16は、図5Aに示す第1の検出電極群16Aと、図5Bに示す第2の検出電極群16Bとから構成されている。
図5Aに示すように、第1の検出電極群16Aは、基板13aの短手方向(以下、Y軸方向という)と平行に所定の間隔を開けて複数接続した検出電極15の列である複数の第1の検出電極列15aから構成されている。そして、この第1の検出電極群16Aは、複数の第1の検出電極列15aを、基板13aのY軸方向と直交する長手方向(以下、X軸方向という)に所定の間隔を開けて複数並べて形成されている。この第1の検出電極列15aは、Y軸方向に隣り合う検出電極15が、それぞれ対向する互いの頂点を接続部18aによって連結することにより電気的に接続されている。
【0024】
同様に、図5Bに示すように、第2の検出電極群16Bは、基板13aのX軸方向と平行に所定の間隔を開けて複数接続した検出電極15の列である複数の第2の検出電極列15bから構成されている。そして、この第2の検出電極群16Bは、複数の第2の検出電極列15bを、基板13aのY軸方向に所定の間隔を開けて複数並べて形成されている。この第2の検出電極列15bは、X軸方向に隣り合う検出電極15が、それぞれ対向する互いの頂点を接続部18bによって連結することにより電気的に接続されている。
【0025】
そして、この第1及び第2の検出電極群16A,16Bを、第1及び第2の検出電極群16A,16Bにおける各検出電極15間の隙間を互いに埋めるようにして、図4に示すような検出領域16を構成している。このように、検出領域16を第1及び第2の検出電極群16A,16Bにおける各検出電極15間の隙間を互いに埋めるように配置したことで、人体(手指)が第1の検出部13に接近又は接触する際には、人体(手指)が第1及び第2の検出電極群16A,16Bの両方の検出電極15と対向するような構造になっている。
【0026】
そして、第1の検出電極列15aにおける接続部18aは、図6に示すように、隣り合う検出電極15同士を第1の検出部13の他方の面(以下、裏面という)側で接続している。これに対し、第2の検出電極列15bにおける接続部18bは、隣り合う検出電極15同士を第1の検出部13の表面側で接続している。その結果、図4に示すように、第1及び第2の検出電極群16A,16Bを配置した際に、第1の検出電極群16Aの接続部18aと第2の検出電極群16Bの接続部18bが接触することを防止している。
なお、図6に示すように、第1の検出部13の裏面には、複数のリード線17が設けられている。そして、第1及び第2の検出電極群16A,16Bは、このリード線17を介して静電容量測定部22に接続される。
【0027】
また、検出領域16を構成する個々の検出電極15の大きさは、人体(手指)が入力部4に接近又は接触した際に、第1及び第2の検出電極群16A,16Bのそれぞれに対して、少なくとも2つの検出電極15が人体(手指)と対向するような大きさとすることが好ましい。これにより、X軸方向とY軸方向において最低でも2つの検出電極15が人体(手指)と対向するため、この2つの検出電極15における静電容量の違いから、入力部4に接近又は接触した人体(手指)の位置をより正確に検出することができる。
【0028】
次に、検出電極15の形状について、図7を参照して説明する。図7に示すように、検出電極15は、略四角形状(外周に位置する検出電極15は、略三角形状)に形成されると共に、複数のスリット19が形成されている。この複数のスリット19は、互いに平行で、かつ略等間隔に設けられている。そして、この複数のスリット19は、接続部18a,18bが接続された頂点を結ぶ線を対称軸として線対称に両側6本ずつ形成されている。さらに、このスリット19は、検出電極15の外縁から内側にかけて延在しており、検出電極15の外縁で開放し、検出電極15の内側で閉じている。その結果、検出電極15は、全体として櫛形形状をなしている。なお、このスリット19は、検出電極15をエッチングすることにより形成される。
【0029】
また、この検出電極15は、例えば、頂点から対向する頂点までの対角線の長さが5mmに設定されており、スリット19の幅が0.1mm程度に設定されている。このように、スリット19の開口面積は、検出電極15の面積に対して十分に小さく設定されている。そのため、スリット19を有する本例の検出電極15の面積は、スリット19を有していない従来の検出電極の面積とほとんど変わらない。これにより、本例に用いられる静電容量方式による第1の検出部13の検出精度は、従来のスリットを有しないものと比べてほぼ同等の精度を維持することができると言ってよい。
【0030】
なお、本例では、検出電極15の形状を略四角形状に形成した例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、検出電極の形状を、六角形状や円形状に形成してもよい。ここで、検出電極の形状が六角形状の場合は、複数の検出電極を蜂の巣状に配置することが好ましい。また、スリット19の数を両側に6本ずつとしたが、これに限定されるものではなく、スリット19の数は両側に7本以上、或いは5本以下としてもよい。さらに、上記では、スリット19をエッチングすることにより形成した例を説明したが、スリット19の形成方法はこれに限定されない。エッチング以外の手段によりスリット19を形成してもよいことは言うまでもない。
【0031】
次に、第1の検出部13の動作について説明する。静電容量測定部22は、複数の検出電極15に所定の電圧を印加する。そして、人体(手指)が検出電極15に接近又は接触すると、人体(手指)は接地体とみなされるため、人体(手指)とこの人体(手指)が接近又は接触した検出電極15との間の静電容量が変化する。静電容量測定部22は、この静電容量が変化した検出電極15を特定し、その位置及び静電容量の変化の度合い等をもとに演算処理を実行して、人体(手指)が接触した位置を検出するようになっている。
【0032】
次に、第2の検出部14及び電磁誘導検出部23の構成とその動作について図8を参照して説明する。第2の検出部14は、第1の検出部13の裏面と対向する側の面に複数のループコイル24が配置されており、この複数のループコイル24は、電磁誘導検出部23に接続されている。
【0033】
図8に示すように、第2の検出部14は、例えば、X軸方向に並べて配置される40本のループコイル24X1〜24X40と、Y軸方向に並べて配置される40本のループコイル24Y1〜24Y40とを有している。これらループコイル24X1〜24X40及びループコイル24Y1〜24Y40は、各々のループコイル24を選択する電磁誘導検出部23の選択回路106に接続されている。なお、この実施の形態では、ループコイル24の数を40本としたが、これに限定されるものではない。
【0034】
電磁誘導検出部25は、選択回路106、送受切替回路107、アンプ108、検波回路109、ローパスフィルタ(LPF)110、サンプルホールド回路112を備えている。選択回路106は、送受切替回路107に接続されており、この送受切替回路107の受信側にアンプ108が接続されている。アンプ108は、検波回路109に接続されており、検波回路109がローパスフィルタ(LPF)110を介してサンプルホールド回路112に接続されている。更に、サンプルホールド回路112は、アナログ/デジタル変換回路(AD変換回路)113に接続され、このアナログ/デジタル変換回路113はCPU(中央処理装置)114に接続されている。そして、CPU114は、上述した選択回路106と、サンプルホールド回路112と、アナログ/デジタル変換回路113及び送受切替回路107にそれぞれ制御信号を供給している。
【0035】
また、電磁誘導検出部23は、周波数f0の交流信号を発生する発振器116と、交流信号を電流に変換する電流ドライバ117が設けられており、この電流ドライバ117が送受切替回路107の送信側に接続されている。即ち、CPU114から供給される制御信号によって送受切替回路107の接点が送信側に切り替えられると、第2の検出部14のループコイル24X1〜24X40及びループコイル24Y1〜24Y40から磁界が発生する。
【0036】
そして、位置指示器2が入力部4に接近すると、位置指示器2に内蔵された共振回路が共振し、誘導電圧が発生する。その後、入力部4の第2の検出部14は、CPU114から供給される制御信号によって送受切替回路107の接点が受信側に切り替えられると、位置指示器2へ磁界が供給されなくなる。すると、受信時に発生した誘導電圧により位置指示器2に内蔵されたコイルから磁界が発生する。そして、第2の検出部14がこの位置指示器2に内蔵されたコイルが発生した磁界を検出することで、位置指示器2の位置を検出するようになっている。
【0037】
このような構成からなる位置検出装置1により、静電容量方式及び電磁誘導方式で入力操作を行うことが可能となり、操作性の向上を図ることができる。なお、位置指示器2で入力操作する場合、位置指示器2を把持する手が入力部4に接触するおそれがある。そのため、位置指示器2と人体(手指)が同時に入力部4に接近又は接触した場合は、位置指示器2の位置を優先的に検出するようにしてもよい。
【0038】
また、入力部4における検出方法の切り替えは、上述したものに限定されるものではない。例えば、入力部4の検出方法を第1の検出部13と第2の検出部14とでユーザが任意に切り替えるための検出切替スイッチを設けてもよい。または、位置指示器2及び人体(手指)が入力部4に接近又は接触している領域毎で、検出方法を第1の検出部13又は第2の検出部14に切り替えてもよい。
【0039】
次に、第2の検出部14で位置指示器2の位置を検出する際における状態を、図9を参照して説明する。
位置指示器2が第2の検出部14を構成するループコイル24に接近すると、上述したように、位置指示器2に内蔵された共振回路が共振し、誘導電圧が発生する。その後、図8に示す送受切替回路107の接点が受信側に切り替えられると、位置指示器2へ磁界が供給されなくなる。その結果、受信時に発生した誘導電圧により位置指示器2に内蔵されたコイル27から磁界が発生する。
【0040】
ここで、図9に示すように、ループコイル24と位置指示器2との間には、第1の検出部13である検出電極15が配置されている。そのため、位置指示器2に内蔵されたコイル27から磁束Gが発生すると、検出電極15には、位置指示器2からの磁束Gが加わり、検出電極15面上でこの磁束Gを少なくする方向に渦電流が発生する。
【0041】
しかし、上記したように検出電極15には、略等間隔に複数のスリット19が設けられている。この複数のスリット19は、検出電極15の外縁から内側にかけて切り欠くことにより形成されている。そのため、この複数のスリット19により、検出電極15が部分的に分断されるため、大きな渦電流は生じない。このように、検出電極15に生じる渦電流を極小化することにより、渦電流により生じる磁束Gと逆向きの磁束の発生を防ぐことができる。その結果、位置指示器2からの磁束Gが減衰されることを防止又は抑制することが可能である。
【0042】
なお、図9では、位置指示器2のコイル27からの磁束について説明したが、第2の検出部14に設けたループコイル24から位置指示器2のコイル27に対して出力される磁束についても、同様に減衰されることを防止又は抑制できる。これにより、位置指示器2及びループコイル24からの磁束が、検出電極15において減衰することを防止又は抑制できるため、位置指示器2における誘導起電力の低下を防止又は抑制することができる。
【0043】
次に、検出電極の他の実施形態例を図10及び図11を参照して説明する。図10は、本例の位置検出装置にかかる検出電極の他の実施形態例を示す平面図、図11は検出電極の更に別の実施形態例を示す平面図である。
図10に示す検出電極35は、スリット39の開放端の向きが、接続部18が接続された頂点から互い違いになるように形成されている。また、図11に示す検出電極45におけるスリット49は、接続部18が接続された頂点を結ぶ線の一側の外縁から他側にかけて形成されており、一側は開放され、他側は閉じている。このような検出電極35,45によっても、前述した検出電極15と同様の効果を得ることができる。
【0044】
なお、本発明は前述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。また、筐体及び入力部の形状を四角形として説明したが、筐体及び入力部の形状は、円形、三角形、六角形、八角形等でもよいことは勿論である。さらに、スリットを検出電極に対して直線状に形成した例を説明したが、これに限定されるものではなく、スリットを曲線状に波打ったように形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の位置検出装置の実施の形態を示す斜視図である。
【図2】本発明の位置検出装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の位置検出装置に係る入力部を示す分解斜視図である。
【図4】本発明の位置検出装置に係る第1の検出部を示す平面図である。
【図5】本発明の座標面出装置に係る検出電極群を示すもので、図5Aは第1の検出電極群を示す平面図、図5Bは第2の検出電極群を示す平面図である。
【図6】本発明の位置検出装置に係る第1の検出部の他方の面を示す平面図である。
【図7】本発明の位置検出装置に係る第1の検出部の要部を拡大して示す平面図である。
【図8】本発明の位置検出装置に係る第2の検出部の構成とその動作を説明するためのブロック構成図である。
【図9】本発明の第2の検出部に係るループコイルに検出電極を重ね合わせた状態を模式的に示す説明図である。
【図10】本発明の位置検出装置に係る検出電極の他の実施形態例を示す平面図である。
【図11】本発明の位置検出装置に係る検出電極の更に別の実施形態例を示す平面図である。
【図12】従来の静電容量方式の検出部を模式的に示す説明図である。
【図13】静電容量方式の第1の検出部と電磁誘導方式の第2の検出部を重ね合わせた従来の位置検出装置を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0046】
1…位置検出装置、 2…位置指示器、 4…入力部、 5…筐体、 6…開口部、13…第1の検出部、 14…第2の検出部、 15,35,45…検出電極、 16A…第1の検出電極群、 16B…第2の検出電極群、 18…接続部、 19,39,49…スリット、 22…静電容量測定部、 23…電磁誘導検出部、 24…ループコイル、 27…コイル G…磁束
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量方式の検出部と電磁誘導方式の検出部を重ね合わせて、位置指示器または人体(手指)により指示された座標位置を検出する位置検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、パーソナルコンピュータ装置等の情報処理装置における位置入力を行うための装置として、位置検出装置が用いられている。この位置検出装置は、例えば、ペン型に形成された位置指示器、または人体(手指)からなる入力手段によりポインティング操作や文字及び図等の入力情報が入力される。
【0003】
位置指示器を入力手段として用いた入力方式としては、位置指示器に位置検出装置から送信される特定周波数の電磁波に対して共振する共振回路を設け、この共振回路によって生じた共振信号を位置検出装置に送信することにより位置検出装置に対して位置を指示する電磁誘導方式がある。(例えば、特許文献1参照)
【0004】
また、人体を入力手段として用いた入力方式には、図12に示すような、静電容量方式がある。図12は、静電容量方式の検出部を模式的に示す説明図である。図12に示すように、この検出部200は、平板状の検出電極201と、静電容量測定部202とを有している。この静電容量方式の検出部201とは、検出電極201に人体(手指)が接近又は接触すると、人体(手指)と検出電極201との間に静電容量が生じる。そして、この人体と検出電極201の間に生じた静電容量の増減を静電容量測定部202で測定することにより、人体(手指)が接近又は接触した座標を検出している。この際、検出電極201と人体(手指)との間に生じる静電容量をなるべく大きくした方が検出しやすいため、検出電極201は、ある程度の面積を有する平面電極が用いられている。
【0005】
一般的に、電磁誘導方式の検出部は、細かい文字や図等の入力に適している。これに対し、静電容量方式は、入力手段として人体(手指)を用いることができるため、手軽に入力することができる。このため、電磁誘導方式の検出部と静電容量方式の検出部の双方の利点を生かした新しいタイプの位置検出装置が考案され、提案されている。
【特許文献1】特開平7−302153号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、共通の入力エリアで電磁誘導方式及び静電容量方式の2つの検出方法が利用可能な検出装置が検討されている。かかる位置検出装置は、電磁誘導方式の検出部と静電容量方式の検出部とを重ね合わせることで入力するエリアを共通化し、座標入力装置を大型化することなく双方の入力方法を利用可能としたものである。以下、かかる位置検出装置の概略について、図13を用いて説明する。
【0007】
図13は、静電容量方式を用いた第1の検出部と電磁誘導方式を用いた第2の検出部を重ね合わせた位置検出装置を模式的に示した説明図である。この図13に示すように、電磁誘導方式の検出部を構成するループコイル304の上方に、静電容量方式の検出部を構成する検出電極201が配置されている。
【0008】
しかしながら、このような構成を有する位置検出装置は、位置指示器2のコイル27から発生した磁束Gが、静電容量方式の検出部における検出電極201に直交している。すると、この検出電極201には、渦電流Iが生じる。この検出電極201生じた渦電流Iが、位置指示器2からの磁束Gが減衰させる方向(磁束Gと逆向きの方向)に新たな磁束を発生させる。そのため、位置指示器2からの磁束Gが減衰することで、電磁誘導方式の検出部で検出できる磁束Gが減少して検出精度が低下する、という問題を発生させる。
【0009】
また、ループコイル304から磁束を発生させた場合についても、同様に、検出電極201に渦電流が発生する。その結果、位置指示器2に到達する磁束が減少し、位置指示器2の共振回路において十分な誘導起電力を得られない、という問題を発生させる。
【0010】
そこで、検出電極に生じる渦電流の大きさを小さくするために、検出電極の面積を小さくすることが考えられる。しかしながら、検出電極の面積を小さくすると、人体(手指)と検出電極の間に生じる静電容量も小さくなるため、静電容量方式の検出部における検出精度が低下する、という不都合があった。
【0011】
本発明の目的は、上述の問題点を考慮し、静電容量方式を用いた第1の検出部における検出精度の低下を防止又は抑制すると共に、電磁誘導方式を用いた第2の検出部における検出精度の低下を防止又は抑制することができる、位置検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の位置検出装置は、少なくとも一つ以上のコイルを有し、このコイルより磁束を発生する位置指示器と、略平板状に形成され、その一方の面に、人体との間の静電容量を検出するための少なくとも一つ以上の検出電極を設けた第1の検出部と、この第1の検出部の一方の面と反対側の他方の面と対向する位置に設けられ、磁束を検出する少なくとも一つ以上のループコイルを設けた第2の検出部と、を備えている。そして、検出電極は、略平板状に形成されると共に、外縁から内側に延在するスリットを少なくとも一つ以上有している。
【発明の効果】
【0013】
本発明の位置検出装置によれば、静電容量方式を用いた第1の検出部の検出電極にスリットを設けたことにより、この検出電極に渦電流が発生することを防止又は抑制することができる。これにより、電磁誘導方式を用いた第2の検出部の検出精度の低下を防止又は抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の位置検出装置の実施形態例について、図1〜図11を参照して説明する。ここで、図1は、本発明の位置検出装置の実施形態を示す斜視図、図2は、位置検出装置の構成とその動作を説明するためのブロック構成図、図3は、入力部を示す分解斜視図、図4は、第1の検出部の一方の面を示す平面図、図5A及び図5Bは、第1の検出部にかかる検出電極を示す平面図、図6は、第1の検出部の他方の面を示す平面図、図7は、第1の検出部の要部を拡大して示す平面図、図8は、第2の検出部の構成とその動作を説明するためのブロック構成図、図9は第2の検出部にかかるループコイルに検出電極を重ね合わせた状態を模式的に示す説明図である。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。また、本発明は、以下の形態に限定されるものではない。
【0015】
まず、本発明が適用される位置検出装置の概略構成を図1に従って説明する。図1は、本発明が適用される位置検出装置を示す斜視図である。
この図1に示すように、本発明の実施の形態例(以下、「本例」という。)である位置検出装置1は、パーソナルコンピュータやPDA(Personal Digital Assistant)等の図示しない外部装置にケーブル10を介して接続することによって、これら外部装置の入力装置として用いられるものである。なお、特に図示して説明していないが、かかる位置検出装置1をパーソナルコンピュータ等に内蔵しても良い。
【0016】
そして、この位置検出装置1は、後述する静電容量方式の検出部である第1の検出部13と電磁誘導方式の検出部である第2の検出部14を有している。さらに、この座標検出装置1は、位置指示器2または人体(手指)を介したポインティング操作による文字及び図等の入力が行われる。
【0017】
位置指示器2は、電磁誘導方式により位置検出装置1に対して位置を指示するものである。即ち、位置指示器2は、位置検出装置1から送信される特定周波数の電磁波に対して共振する、コイルとコンデンサからなる共振回路を有している。そして、この共振回路で検出した共振信号を位置検出装置1に送信することにより位置検出装置1に対して位置を指示するようになっている。
【0018】
位置検出装置1は、入力情報が入力される入力部4と、この入力部4を有する中空の薄い略直方体をなす筐体5等から構成されている。筐体5は、入力部4の入力面を露出させるための開口部6を有する上ケース7と、この上ケース7に重ね合わされる図示しない下ケースを有している。そして、上ケース7は、入力部4の入力面を露出させる四角形の開口部6を有しており、この開口部6に、入力部4が嵌め込まれる。
【0019】
次に、本例を適用した位置検出装置の回路構成の概略を、図2を参照して説明する。図2に示すように、位置検出装置1は、入力部4と、静電容量測定部22と、電磁誘導検出部23と、処理回路25とを有している。入力部4は、絶縁体であるカバー12と、静電容量方式の第1の検出部13と、電磁誘導方式の第2の検出部14から構成されている。第1の検出部13は、人体(手指)等の接近又は接触を検出し、その接近又は接触した点の座標を検出するためのものである。これに対し、第2の検出部14は、位置指示器2により指示した点の座標を検出するためのものである。
【0020】
静電容量測定部22は、第1の検出部13上に設けられた検出電極における静電容量の変化を測定するための回路であり、第1の検出部13と、処理回路25とに接続されている。電磁誘導検出部23は、電磁誘導方式により位置指示器2が指示した点の位置を検出するための回路であり、第2の検出部14と、処理回路25とに接続されている。処理回路25は、静電容量測定部22又は電磁誘導検出部23により検出した、人体又は位置指示器2により指示された点を座標データとして算出するための回路である。そして、この処理回路25は、図示しない外部装置(例えば、パーソナルコンピュータやPDA)や、この位置検出装置1を内蔵したパーソナルコンピュータの中央演算装置(MPU)等にその算出した座標データを出力するようになっている。
【0021】
次に、本例の位置検出装置1の入力部4の構成を、図3を参照して説明する。入力部4は、薄い平板状をなしており、絶縁体であるカバー12と、一方の面に検出領域16を有する第1の検出部13と、複数のループコイル24を有する第2の検出部14とから構成されている。そして、この入力部4は、カバー12の一方の面と第1の検出部13の一方の面が対向するように配置されている。そして、この第1の検出部13の他方の面に対向するように第2の検出部14が配置されている。このようにして、入力部4は、カバー12と第1の検出部13と第2の検出部14が重なり合っている。
【0022】
次に、本例の位置検出装置1の第1の検出部13の構成を図4〜図7を参照して説明する。まず図4に示すように、第1の検出部13は、略長方形の基板13aと、この基板13aの一方の面(以下、表面という)の略中央部に設けられた略長方形の検出領域16とから構成されている。検出領域16は、人体(手指)等の接近又は接触を検出してその接近又は接触した点の座標を検出するもので、複数の検出電極15で構成されている。そして、この検出領域16を構成する複数の検出電極15のうち外周に配置された検出電極15は、略三角形状をなしており、内側に配置された検出電極15は、略四角形状をなしている。
【0023】
次に、検出領域16の詳細を図5及び図6を参照して説明する。検出領域16は、図5Aに示す第1の検出電極群16Aと、図5Bに示す第2の検出電極群16Bとから構成されている。
図5Aに示すように、第1の検出電極群16Aは、基板13aの短手方向(以下、Y軸方向という)と平行に所定の間隔を開けて複数接続した検出電極15の列である複数の第1の検出電極列15aから構成されている。そして、この第1の検出電極群16Aは、複数の第1の検出電極列15aを、基板13aのY軸方向と直交する長手方向(以下、X軸方向という)に所定の間隔を開けて複数並べて形成されている。この第1の検出電極列15aは、Y軸方向に隣り合う検出電極15が、それぞれ対向する互いの頂点を接続部18aによって連結することにより電気的に接続されている。
【0024】
同様に、図5Bに示すように、第2の検出電極群16Bは、基板13aのX軸方向と平行に所定の間隔を開けて複数接続した検出電極15の列である複数の第2の検出電極列15bから構成されている。そして、この第2の検出電極群16Bは、複数の第2の検出電極列15bを、基板13aのY軸方向に所定の間隔を開けて複数並べて形成されている。この第2の検出電極列15bは、X軸方向に隣り合う検出電極15が、それぞれ対向する互いの頂点を接続部18bによって連結することにより電気的に接続されている。
【0025】
そして、この第1及び第2の検出電極群16A,16Bを、第1及び第2の検出電極群16A,16Bにおける各検出電極15間の隙間を互いに埋めるようにして、図4に示すような検出領域16を構成している。このように、検出領域16を第1及び第2の検出電極群16A,16Bにおける各検出電極15間の隙間を互いに埋めるように配置したことで、人体(手指)が第1の検出部13に接近又は接触する際には、人体(手指)が第1及び第2の検出電極群16A,16Bの両方の検出電極15と対向するような構造になっている。
【0026】
そして、第1の検出電極列15aにおける接続部18aは、図6に示すように、隣り合う検出電極15同士を第1の検出部13の他方の面(以下、裏面という)側で接続している。これに対し、第2の検出電極列15bにおける接続部18bは、隣り合う検出電極15同士を第1の検出部13の表面側で接続している。その結果、図4に示すように、第1及び第2の検出電極群16A,16Bを配置した際に、第1の検出電極群16Aの接続部18aと第2の検出電極群16Bの接続部18bが接触することを防止している。
なお、図6に示すように、第1の検出部13の裏面には、複数のリード線17が設けられている。そして、第1及び第2の検出電極群16A,16Bは、このリード線17を介して静電容量測定部22に接続される。
【0027】
また、検出領域16を構成する個々の検出電極15の大きさは、人体(手指)が入力部4に接近又は接触した際に、第1及び第2の検出電極群16A,16Bのそれぞれに対して、少なくとも2つの検出電極15が人体(手指)と対向するような大きさとすることが好ましい。これにより、X軸方向とY軸方向において最低でも2つの検出電極15が人体(手指)と対向するため、この2つの検出電極15における静電容量の違いから、入力部4に接近又は接触した人体(手指)の位置をより正確に検出することができる。
【0028】
次に、検出電極15の形状について、図7を参照して説明する。図7に示すように、検出電極15は、略四角形状(外周に位置する検出電極15は、略三角形状)に形成されると共に、複数のスリット19が形成されている。この複数のスリット19は、互いに平行で、かつ略等間隔に設けられている。そして、この複数のスリット19は、接続部18a,18bが接続された頂点を結ぶ線を対称軸として線対称に両側6本ずつ形成されている。さらに、このスリット19は、検出電極15の外縁から内側にかけて延在しており、検出電極15の外縁で開放し、検出電極15の内側で閉じている。その結果、検出電極15は、全体として櫛形形状をなしている。なお、このスリット19は、検出電極15をエッチングすることにより形成される。
【0029】
また、この検出電極15は、例えば、頂点から対向する頂点までの対角線の長さが5mmに設定されており、スリット19の幅が0.1mm程度に設定されている。このように、スリット19の開口面積は、検出電極15の面積に対して十分に小さく設定されている。そのため、スリット19を有する本例の検出電極15の面積は、スリット19を有していない従来の検出電極の面積とほとんど変わらない。これにより、本例に用いられる静電容量方式による第1の検出部13の検出精度は、従来のスリットを有しないものと比べてほぼ同等の精度を維持することができると言ってよい。
【0030】
なお、本例では、検出電極15の形状を略四角形状に形成した例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、検出電極の形状を、六角形状や円形状に形成してもよい。ここで、検出電極の形状が六角形状の場合は、複数の検出電極を蜂の巣状に配置することが好ましい。また、スリット19の数を両側に6本ずつとしたが、これに限定されるものではなく、スリット19の数は両側に7本以上、或いは5本以下としてもよい。さらに、上記では、スリット19をエッチングすることにより形成した例を説明したが、スリット19の形成方法はこれに限定されない。エッチング以外の手段によりスリット19を形成してもよいことは言うまでもない。
【0031】
次に、第1の検出部13の動作について説明する。静電容量測定部22は、複数の検出電極15に所定の電圧を印加する。そして、人体(手指)が検出電極15に接近又は接触すると、人体(手指)は接地体とみなされるため、人体(手指)とこの人体(手指)が接近又は接触した検出電極15との間の静電容量が変化する。静電容量測定部22は、この静電容量が変化した検出電極15を特定し、その位置及び静電容量の変化の度合い等をもとに演算処理を実行して、人体(手指)が接触した位置を検出するようになっている。
【0032】
次に、第2の検出部14及び電磁誘導検出部23の構成とその動作について図8を参照して説明する。第2の検出部14は、第1の検出部13の裏面と対向する側の面に複数のループコイル24が配置されており、この複数のループコイル24は、電磁誘導検出部23に接続されている。
【0033】
図8に示すように、第2の検出部14は、例えば、X軸方向に並べて配置される40本のループコイル24X1〜24X40と、Y軸方向に並べて配置される40本のループコイル24Y1〜24Y40とを有している。これらループコイル24X1〜24X40及びループコイル24Y1〜24Y40は、各々のループコイル24を選択する電磁誘導検出部23の選択回路106に接続されている。なお、この実施の形態では、ループコイル24の数を40本としたが、これに限定されるものではない。
【0034】
電磁誘導検出部25は、選択回路106、送受切替回路107、アンプ108、検波回路109、ローパスフィルタ(LPF)110、サンプルホールド回路112を備えている。選択回路106は、送受切替回路107に接続されており、この送受切替回路107の受信側にアンプ108が接続されている。アンプ108は、検波回路109に接続されており、検波回路109がローパスフィルタ(LPF)110を介してサンプルホールド回路112に接続されている。更に、サンプルホールド回路112は、アナログ/デジタル変換回路(AD変換回路)113に接続され、このアナログ/デジタル変換回路113はCPU(中央処理装置)114に接続されている。そして、CPU114は、上述した選択回路106と、サンプルホールド回路112と、アナログ/デジタル変換回路113及び送受切替回路107にそれぞれ制御信号を供給している。
【0035】
また、電磁誘導検出部23は、周波数f0の交流信号を発生する発振器116と、交流信号を電流に変換する電流ドライバ117が設けられており、この電流ドライバ117が送受切替回路107の送信側に接続されている。即ち、CPU114から供給される制御信号によって送受切替回路107の接点が送信側に切り替えられると、第2の検出部14のループコイル24X1〜24X40及びループコイル24Y1〜24Y40から磁界が発生する。
【0036】
そして、位置指示器2が入力部4に接近すると、位置指示器2に内蔵された共振回路が共振し、誘導電圧が発生する。その後、入力部4の第2の検出部14は、CPU114から供給される制御信号によって送受切替回路107の接点が受信側に切り替えられると、位置指示器2へ磁界が供給されなくなる。すると、受信時に発生した誘導電圧により位置指示器2に内蔵されたコイルから磁界が発生する。そして、第2の検出部14がこの位置指示器2に内蔵されたコイルが発生した磁界を検出することで、位置指示器2の位置を検出するようになっている。
【0037】
このような構成からなる位置検出装置1により、静電容量方式及び電磁誘導方式で入力操作を行うことが可能となり、操作性の向上を図ることができる。なお、位置指示器2で入力操作する場合、位置指示器2を把持する手が入力部4に接触するおそれがある。そのため、位置指示器2と人体(手指)が同時に入力部4に接近又は接触した場合は、位置指示器2の位置を優先的に検出するようにしてもよい。
【0038】
また、入力部4における検出方法の切り替えは、上述したものに限定されるものではない。例えば、入力部4の検出方法を第1の検出部13と第2の検出部14とでユーザが任意に切り替えるための検出切替スイッチを設けてもよい。または、位置指示器2及び人体(手指)が入力部4に接近又は接触している領域毎で、検出方法を第1の検出部13又は第2の検出部14に切り替えてもよい。
【0039】
次に、第2の検出部14で位置指示器2の位置を検出する際における状態を、図9を参照して説明する。
位置指示器2が第2の検出部14を構成するループコイル24に接近すると、上述したように、位置指示器2に内蔵された共振回路が共振し、誘導電圧が発生する。その後、図8に示す送受切替回路107の接点が受信側に切り替えられると、位置指示器2へ磁界が供給されなくなる。その結果、受信時に発生した誘導電圧により位置指示器2に内蔵されたコイル27から磁界が発生する。
【0040】
ここで、図9に示すように、ループコイル24と位置指示器2との間には、第1の検出部13である検出電極15が配置されている。そのため、位置指示器2に内蔵されたコイル27から磁束Gが発生すると、検出電極15には、位置指示器2からの磁束Gが加わり、検出電極15面上でこの磁束Gを少なくする方向に渦電流が発生する。
【0041】
しかし、上記したように検出電極15には、略等間隔に複数のスリット19が設けられている。この複数のスリット19は、検出電極15の外縁から内側にかけて切り欠くことにより形成されている。そのため、この複数のスリット19により、検出電極15が部分的に分断されるため、大きな渦電流は生じない。このように、検出電極15に生じる渦電流を極小化することにより、渦電流により生じる磁束Gと逆向きの磁束の発生を防ぐことができる。その結果、位置指示器2からの磁束Gが減衰されることを防止又は抑制することが可能である。
【0042】
なお、図9では、位置指示器2のコイル27からの磁束について説明したが、第2の検出部14に設けたループコイル24から位置指示器2のコイル27に対して出力される磁束についても、同様に減衰されることを防止又は抑制できる。これにより、位置指示器2及びループコイル24からの磁束が、検出電極15において減衰することを防止又は抑制できるため、位置指示器2における誘導起電力の低下を防止又は抑制することができる。
【0043】
次に、検出電極の他の実施形態例を図10及び図11を参照して説明する。図10は、本例の位置検出装置にかかる検出電極の他の実施形態例を示す平面図、図11は検出電極の更に別の実施形態例を示す平面図である。
図10に示す検出電極35は、スリット39の開放端の向きが、接続部18が接続された頂点から互い違いになるように形成されている。また、図11に示す検出電極45におけるスリット49は、接続部18が接続された頂点を結ぶ線の一側の外縁から他側にかけて形成されており、一側は開放され、他側は閉じている。このような検出電極35,45によっても、前述した検出電極15と同様の効果を得ることができる。
【0044】
なお、本発明は前述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。また、筐体及び入力部の形状を四角形として説明したが、筐体及び入力部の形状は、円形、三角形、六角形、八角形等でもよいことは勿論である。さらに、スリットを検出電極に対して直線状に形成した例を説明したが、これに限定されるものではなく、スリットを曲線状に波打ったように形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の位置検出装置の実施の形態を示す斜視図である。
【図2】本発明の位置検出装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の位置検出装置に係る入力部を示す分解斜視図である。
【図4】本発明の位置検出装置に係る第1の検出部を示す平面図である。
【図5】本発明の座標面出装置に係る検出電極群を示すもので、図5Aは第1の検出電極群を示す平面図、図5Bは第2の検出電極群を示す平面図である。
【図6】本発明の位置検出装置に係る第1の検出部の他方の面を示す平面図である。
【図7】本発明の位置検出装置に係る第1の検出部の要部を拡大して示す平面図である。
【図8】本発明の位置検出装置に係る第2の検出部の構成とその動作を説明するためのブロック構成図である。
【図9】本発明の第2の検出部に係るループコイルに検出電極を重ね合わせた状態を模式的に示す説明図である。
【図10】本発明の位置検出装置に係る検出電極の他の実施形態例を示す平面図である。
【図11】本発明の位置検出装置に係る検出電極の更に別の実施形態例を示す平面図である。
【図12】従来の静電容量方式の検出部を模式的に示す説明図である。
【図13】静電容量方式の第1の検出部と電磁誘導方式の第2の検出部を重ね合わせた従来の位置検出装置を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0046】
1…位置検出装置、 2…位置指示器、 4…入力部、 5…筐体、 6…開口部、13…第1の検出部、 14…第2の検出部、 15,35,45…検出電極、 16A…第1の検出電極群、 16B…第2の検出電極群、 18…接続部、 19,39,49…スリット、 22…静電容量測定部、 23…電磁誘導検出部、 24…ループコイル、 27…コイル G…磁束
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つ以上のコイルを有し、該コイルより磁束を発生する位置指示器と、
略平板状に形成され、その一方の面に、人体との間の静電容量を検出するための少なくとも一つ以上の検出電極を設けた第1の検出部と、
前記第1の検出部の前記一方の面と反対側の他方の面と対向する位置に設けられ、前記磁束を検出する少なくとも一つ以上のループコイルを設けた第2の検出部と、を備え、
前記検出電極は、略平板状に形成されると共に、外縁から内側に延在するスリットを少なくとも一つ以上有する
ことを特徴とする位置検出装置。
【請求項2】
前記第1の検出部は、前記検出電極と人体との間の静電容量の変化を測定する静電容量測定部を備え、
前記第2の検出部は、前記位置指示器で指示した位置を検出する電磁誘導検出部を備えた
ことを特徴とする請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項3】
前記検出電極の形状を四角形に形成した
ことを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の位置検出装置。
【請求項4】
前記第1の検出部は、少なくとも一つ以上の検出電極を、その面を展開させて直線状に並べて配置した第1の検出電極群と、少なくとも一つ以上の検出電極を前記第1の検出電極群と直交する方向に面を展開させて直線状に並べて配置した第2の検出群と、からなる
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の位置検出装置。
【請求項1】
少なくとも一つ以上のコイルを有し、該コイルより磁束を発生する位置指示器と、
略平板状に形成され、その一方の面に、人体との間の静電容量を検出するための少なくとも一つ以上の検出電極を設けた第1の検出部と、
前記第1の検出部の前記一方の面と反対側の他方の面と対向する位置に設けられ、前記磁束を検出する少なくとも一つ以上のループコイルを設けた第2の検出部と、を備え、
前記検出電極は、略平板状に形成されると共に、外縁から内側に延在するスリットを少なくとも一つ以上有する
ことを特徴とする位置検出装置。
【請求項2】
前記第1の検出部は、前記検出電極と人体との間の静電容量の変化を測定する静電容量測定部を備え、
前記第2の検出部は、前記位置指示器で指示した位置を検出する電磁誘導検出部を備えた
ことを特徴とする請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項3】
前記検出電極の形状を四角形に形成した
ことを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の位置検出装置。
【請求項4】
前記第1の検出部は、少なくとも一つ以上の検出電極を、その面を展開させて直線状に並べて配置した第1の検出電極群と、少なくとも一つ以上の検出電極を前記第1の検出電極群と直交する方向に面を展開させて直線状に並べて配置した第2の検出群と、からなる
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の位置検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−162538(P2009−162538A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−340099(P2007−340099)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000139403)株式会社ワコム (118)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000139403)株式会社ワコム (118)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]