説明

位置検出装置

【課題】少ない数の磁気センサと単純構造のマグネットを用いてレバーの操作位置を検出できる位置検出装置を提供する。
【解決手段】シフトレバー1の操作に伴って回路基板9と平行な同一平面内を移動するホルダ7に円板状のマグネット8を固着し、回路基板9に一対の磁気センサ10(10A,10B)を実装する。マグネット8は一方の主面をN極、他方の主面をS極に着磁してあり、磁気センサ10は、非磁性材料からなる基台20の表面層に設けられた軟磁性体層22と、この軟磁性体層22の外縁部近傍に配置された少なくとも2つのホールIC21とを有し、これらのホールIC21が軟磁性体22の中心を原点とするX−Y直交座標上に配置された構成となっている。これにより、磁気センサ10のペアで検出されたホール電圧に基づいてマグネット8の磁束のX軸に対する方向(角度)を検出でき、その検出結果に基づいてシフトレバー1の複数のシフト位置を検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レバーの操作位置を検出するのに好適な位置検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば車両に搭載される自動変速機のシフト装置としてシフトバイワイヤ(Shift By Wire)方式と呼ばれるもの、すなわち、シフトレバーの操作位置をセンサによって検知し、その検知信号に基づいてアクチュエータで自動変速機のレンジを切り換えるものが注目されている。
【0003】
従来より、このようなシフト装置に適用される位置検出装置の一例として、シフトレバーの先端に設けた支持部材に多極マグネット板を固着し、この多極マグネット板に一定間隔を存して配置された基板の表面に複数のON/OFFセンサを実装すると共に、基板の裏面に1つのリニアセンサを実装したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。ここで、多極マグネット板には、四角形状の4つのマグネットがそれぞれの一角部を一点で接するように配置されており、これら4つのマグネットはそれぞれ基板側にN極、S極、N極、S極が面している。また、ON/OFFセンサは、検出した磁石の磁束密度の強弱に応じてON/OFF信号を出力するスイッチ動作タイプのホールセンサであり、多極マグネット板との相対位置に応じてON(=1)信号またはOFF(=0)信号を出力する。一方、リニアセンサは、検出した磁石の磁束密度の強さに応じた出力電圧を出力するホールセンサであり、多極マグネット板との相対位置に応じてH(ハイ)信号とM(ミディアム)信号およびL(ロー)信号のいずれかを出力する。
【0004】
このように概略構成された位置検出装置を備えたシフト装置では、運転者がシフトレバーを所望のシフト位置へ移動操作すると、支持部材が多極マグネット板と一緒に基板に対して平行移動し、それに伴って多極マグネット板と基板の相対位置が変化する。その結果、基板の表面に実装された4つのON/OFFセンサ(ホールセンサ)からONまたはOFF信号が出力されると共に、基板の裏面に実装された1つのリニアセンサ(ホールセンサ)からH、M、L信号のいずれかが出力されるため、各ON/OFFセンサの検出信号(ON信号、OFF信号)とリニアセンサの検出信号(H信号、M信号、L信号)との組合せにより、シフトレバーのシフト位置を検出できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−349447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前述した従来の位置検出装置においては、ON/OFFセンサやリニアセンサとしてホールセンサを用いており、このホールセンサは基板に対して垂直方向の磁束密度を検出する素子であるため、複数のマグネットを搭載した複雑構造の多極マグネット板を必要とすると共に、このような多極マグネット板に対応して基板の表裏両面の所定位置に複数のホールセンサ(ON/OFFセンサやリニアセンサ)を実装する必要があり、このことが検出部の構造を複雑化させたりコストアップになる要因となっていた。
【0007】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、少ない数の磁気センサと単純構造のマグネットを用いてレバーの操作位置を検出することができる低コストの位置検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、レバーの操作に伴って移動するホルダと、このホルダに固着されたマグネットと、このマグネットに対し所定間隔を存して異なる位置に対向配置された磁気センサとを備え、前記マグネットは一方の主面をN極で他方の主面をS極に着磁された円板状のマグネットからなり、前記複数の磁気センサを覆うように軟磁性体層が設けられている構成とした。
【0009】
このように構成された位置検出装置では、レバーを所望の位置へ移動操作すると、それに伴ってホルダが移動し、ホルダに固着されたマグネットとそれに対向配置された各磁気センサとの相対位置が変化するのに応じて各磁気センサの出力がそれぞれ変化するため、各磁気センサの出力に基づいてホルダの移動位置を特定・検出することができる。したがって、少ない数の磁気センサと単純構造のマグネットを用いてレバーの操作位置を検出することができ、低コストの位置検出装置を実現することができる。すなわち、本発明による位置検出装置においては、マグネットの磁束は一方の主面の中心から他方の主面の中心に向かって放射状に拡がり収束するものとなるため、各磁気センサの表面に対して平行となる磁束の状態が磁気センサとマグネットとの相対位置に応じて変化し、一方、磁気センサの表面層に設けられた軟磁性体層はその外縁部(エッジ)に磁束を収束させる働きがあるため、それぞれの磁気センサの出力に基づいて磁気センサの表面におけるマグネットの平行磁束の方向(角度)を検出でき、その検出結果に基づいてホルダの移動位置を検出することができる。
【0010】
上記の構成において、各磁気センサが少なくとも2つのホールICから構成され、これらのホールICが、平面的なXY座標軸の各軸上において軟磁性体層の中心位置から等距離にあり、かつ、軟磁性体層の外縁部近傍に配置されていることが望ましいる。かかる構成によれば、各ホールICのホール電圧に基づいてレバーの操作位置を検出することができるので、位置検出装置がさらに簡略化されて低コスト化できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の位置検出装置は、レバーの操作に伴って移動するホルダに、一方の主面をN極で他方の主面をS極に着磁した円板状のマグネットが固着されており、このマグネットに対し所定間隔を存して対向配置された複数の磁気センサと、それらの磁気センサを覆うように設けられた軟磁性体層とを備える構成であるため、各磁気センサの出力に基づいてレバーの操作位置を検出することができる。したがって、少ない数の磁気センサと単純構造のマグネットを用いてレバーの操作位置を検出することができ、低コストの位置検出装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態例に係る位置検出装置をシフト装置に適用した実施形態の分解斜視図である。
【図2】図1に示すシフト装置の底面図である。
【図3】図2に示すシフト装置から回路基板を取り除いた底面図である。
【図4】図1に示すシフト装置の断面図である。
【図5】図4に示すシフトレバーを操作したときのマグネットと磁気センサの相対位置関係を示す断面図である。
【図6】図5に対応する底面図である。
【図7】図3に示すシフトレバーを操作したときのマグネットと磁気センサの相対位置関係を示す底面図である。
【図8】本発明の実施形態例に係る位置検出装置に用いられるマグネットの説明図である。
【図9】本発明の実施形態例に係る位置検出装置に用いられる磁気センサの斜視図である。
【図10】図9に示す磁気センサの軟磁性体層とホールICの位置関係を示す説明図である。
【図11】シフトレバーを操作したときのマグネットと磁気センサの相対位置関係を平面的に示す説明図である。
【図12】シフトレバーを操作してマグネットがホームポジションとニュートラル位置の間で移動したときの磁気センサの検出結果を示す説明図である。
【図13】シフトレバーを操作してマグネットがドライブ位置とニュートラル位置との感で移動したときの磁気センサの検出結果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1〜図4に示すように、本発明の実施形態例に係る位置検出装置を適用したシフト装置は、本発明のレバーとしてのシフトレバー1、すなわち圧入等によって一体化された作動部材1aを有するシフトレバー1と、作動部材1aの先端部、すなわちシフトレバー1から突出された側の部分を図4に示す収納部S1に収納してシフトレバー1を揺動可能に支持するレバー支持体2と、レバー支持体2を収納して回動可能に支持するケース3およびカバー4と、レバー支持体2に回動可能に支持された駆動アーム5と、レバー支持体2に固定されたガイド体6と、ガイド体6にスライド可能に支持されたホルダ7と、ホルダ7に固着された円板状のマグネット8と、ケース3に固定された回路基板9と、回路基板9に実装された一対の磁気センサ10(Melexis社製・MLX90316)等を備えている。ケース3とカバー4は、ネジ11を用いて一体化されて、図4に示すようにレバー支持体2の先端部を収納する収納部S2を形成するハウジング12を構成している。このハウジング12は運転席の前方に位置するステアリングコラムの側部に取り付けられ、ハウジング12から突出するシフトレバー1を運転者が手動操作することにより、複数のシフト位置のいずれかが選択されるようになっている。
【0014】
なお、本実施形態例におけるシフト装置のシフト位置は、ホームポジション(中立位置)H、ニュートラル位置N、ドライブ位置Dおよびリバース位置Rにより構成されており、シフトレバー1をホームポジションHからニュートラル位置Nに移動させることにより、図11に示すように、マグネット8がホームポジションHからニュートラル位置Nに移動されて、図示せぬ自動変速機のレンジがニュートラルレンジに設定される。また、シフトレバー1をホームポジションHからニュートラル位置Nを経由してドライブ位置Dまたはリバース位置Rに移動させることにより、図11に示すように、マグネット8がホームポジションHからニュートラル位置Nを経由してドライブ位置Dまたはリバース位置Rに移動されて、図示せぬ自動変速機のレンジがドライブレンジまたはリバースレンジに設定される。
【0015】
シフトレバー1の基部を構成する作動部材1aは、その先端部を除く長尺部分がレバー支持体2から大きく突出しており、作動部材1aの先端部の回路基板9側の外壁には係合溝1bが形成されている。図4に示すように、この係合溝1bは、レバー支持体2から回路基板9側に向けて断面L字状に突設された掛止部1dと、レバー支持体2の外壁との間に形成されている。作動部材1aには軸孔1cが設けられており、この軸孔1cを挿通するピン13がレバー支持体2の軸受部2aに軸支されることにより、シフトレバー1はピン13を回動中心として図4の紙面と平行な第1の操作面、すなわち回路基板9と略直交する面内で揺動できるようにレバー支持体2に支持されている。また、作動部材1aには第1の押圧子14を弾性付勢するためのコイルばね15が収納されており、図4に示すように、この第1の押圧子14はレバー支持体2の内壁に形成されたカム面2bに弾接している。
【0016】
図1に示すように、レバー支持体2の基端部側には一対の回動軸2c,2dが同一線上で互いに反対方向に突設されており、レバー支持体2の回路基板9側の外壁には一対の軸溝2eが形成されている。一方の回動軸2cはケース3の底板3bに向けて突設されてケース3の軸受部3aに回動可能に支持され、他方の回動軸2dはカバー4に向けて突設されてカバー4の軸受部4aに回動可能に支持されている。したがって、レバー支持体2はこれら回動軸2c,2dを回動中心として前記第1の操作面と略直交する第2の操作面内で揺動できるようにハウジング12に支持されている。この第2の操作面内では、シフトレバー1が揺動操作されると、レバー支持体2はシフトレバー1と一体的に回転するようになっている。また、レバー支持体2には第2の押圧子16を弾性付勢するためのコイルばね17が収納されており、この第2の押圧子16はケース3に固定されたカム部材18の内壁に形成された図示せぬカム面に弾接している。なお、一対の軸溝2eは、シフトレバー1の回動軸、すなわち軸孔1cを挿通するピン13の軸線と平行に形成されている。また、図4に示すように、レバー支持体2の回路基板9側の外壁には収納部S2と連通する開口2fが形成されており、前述した掛止部1dは、作動部材1aの先端部が収納部S2に収納された状態で開口2fに臨むように配置されている。
【0017】
駆動アーム5は、直線状に延びる軸部5aと、軸部5aの中央から異なる2方向へ突出する係合部5bおよび係合ピン5cとを有している。軸部5aの両端はレバー支持体2の軸溝2eに回転可能に支持されており、係合ピン5cはシフトレバー1の作動部材1aに形成された係合溝1bに係合している。これにより、シフトレバー1がレバー支持体2に対して第1の操作面内で揺動操作されると、駆動アーム5がレバー支持体2の軸溝2eを支点として第1の操作面内を回動する。一方、シフトレバー1とレバー支持体2がハウジング12に対して第2の操作面内で揺動操作されると、レバー支持体2と駆動アーム5が回動軸2c,2dを中心に第2の操作面内を一体的に回動する。
【0018】
ガイド体6はスナップ結合等の手段を用いてレバー支持体2に固定されており、このガイド体6には長方形状のガイド壁6aが突設されると共に、ガイド壁6aで包囲された部分に透孔6bが穿設されている。ガイド壁6aの相対向する一対の長辺は駆動アーム5の軸部5aと直交する方向へ延びており、ホルダ7はこのガイド壁6aの両長辺間にスライド可能に支持されている。ホルダ7には凹部7aと係合孔7bが形成されており、この凹部7a内にマグネット8が圧入や接着等の手段を用いて固着されている。図8に示すように、円板状のマグネット8は、一方の主面がN極で他方の主面がS極に着磁されている。本実施形態例でマグネット8は、図4のホルダ7の凹部7aの底面に対向する側をN極、回路基板9に対向する側をS極としているが、その反対に着磁されていても良い。これにより、マグネット8から生じる磁束(または磁力線)は、一方の主面の中心から他方の主面の中心に向かって放射状に拡がり収束するため、平面的に見ると放射状に発生することになる。
【0019】
前述した駆動アーム5の係合部5bは透孔6bを挿通して係合孔7bに係合しており、シフトレバー1を第1の操作面内で揺動操作すると、係合部5bが第1の操作面内を回動してホルダ7をガイド壁6aの長辺に沿ってスライド移動させるため、ホルダ7に固着されたマグネット8が回路基板9と平行な面内を直線的に往復移動する。一方、シフトレバー1を第2の操作面内で揺動操作すると、レバー支持体2と駆動アーム5およびガイド体6が回動軸2c,2dを中心に第2の操作面内を一体的に回動し、マグネット8は回路基板9と平行な面内で回転移動する。
【0020】
回路基板9はネジ19を用いてケース3に固定されており、第2の操作面に沿って略平行に配設されている。前述したマグネット8は回路基板9と微小ギャップを存して対向しており、一対の磁気センサ10は、回路基板9のホルダ7と対向する面とは反対側の面に実装されている。ただし、マグネット8との間に所定ギャップが確保されていれば、磁気センサ10は回路基板9の上面側、すなわちガイド体6と対向する面に実装されていても良い。これら一対の磁気センサ10は、本実施形態例では同一構成の少なくとも2つのホールICからなり、以下、図11に示すように、一方の磁気センサ10を第1の磁気センサ10Aとし、他方の磁気センサ10を第2の磁気センサ10Bとする。
【0021】
図9に示すように、磁気センサ10(10A,10B)は、非磁性材料からなる基台20上に設けられた少なくとも2つのホールIC21(図中実線で示すホールIC21)と、基台20の表面層において各ホールIC21の表面を一体的に覆うように形成された軟磁性体層22と、基台20の相対向する2つの側面から突出する複数の端子23とによって構成されている。軟磁性体層22は、例えばアモルファスのフィルムを基台20の表面に接着した後、これをフォトレジストとプラズマエッチングによって円形状に形成したものであり、かかる軟磁性体層22は外縁部(エッジ)に磁束を収束させる働きがある。図10に示すように、各ホールIC21は軟磁性体層22の外縁部近傍に位置するように、具体的には、2つのホールIC21の中心付近に軟磁性体層22の外縁部が位置するように配置されており、軟磁性体層22の中心を原点OとするX−Y直交座標を設定すると、2つのホールIC21は原点Oから等距離にかつ90度をなして配置されている。なお、磁気センサ10は、図10の一点鎖線で示すホールIC21をさらに加えた合計4個のホールIC21としても良い。このような構成では、4個のホールIC21の各出力値に基づいてレバーの操作位置をより高精度に検出できるが、例えば、実線で示す2つのホールIC21の一方が故障した場合、これらのホールIC21に代わって一点鎖線で示す2つのホールIC21によってレバーの操作位置を検出できることになり、位置検出装置のフェールセーフ性を向上できるものとなる。なお、図10において、X軸は図11の直線αと平行であり、Y軸は図11の直線βと平行である。
【0022】
シフトレバー1がホームポジションH(図5(a))にあるとき、第1の磁気センサ10Aと第2の磁気センサ10Bは、図11に示すように、マグネット8の中心を通る直線αを対称軸として微小間隔を存して回路基板9上に近接配置されている。そして、シフトレバー1をホームポジションHとニュートラル位置N(図5(b))との間で操作することにより、マグネット8は図11のホームポジションHとニュートラル位置Nとの間で移動され、マグネット8の中心は直線αに沿って移動する。また、シフトレバー1をニュートラル位置N(図7(b))とドライブ位置D(図7(a))およびリバース位置R(図7(c))との間で操作することにより、マグネット8は図11のニュートラル位置Nとドライブ位置Dおよびリバース位置Rとの間で移動され、マグネット8の中心は両磁気センサ10A,10Bの側方を通る直線βに沿って移動する。なお、前述したように、マグネット8の直線βに沿う移動は、図1に示す回動軸2c,2dを中心とする回転運動であるため、厳密に見ると直線βは曲率の大きな曲線の一部となっているが、マグネット8の移動量に対して回転半径が十分に大きく設定されているため、マグネット8は近似的な直線である直線βに沿って移動する。磁気センサ10A,10Bは、少なくとも2つのホールIC21のペアで検出されたホール電圧に基づいて、磁気センサ10A,10B上における磁束の合成ベクトルとX軸とのなす角度を出力するように構成されており、後述するように、それらの磁気センサ10A,10Bから出力(角度)の組合せによってシフトレバー1のシフト位置(操作位置)を検出することができる。図12および図13は、磁気センサ10の出力(角度)とシフトレバー1のシフト位置との関係をそれぞれ示しており、それら各図において、縦軸は磁気センサ10の出力(角度)、横軸はシフトレバー1のシフト位置を表している。
【0023】
次に、このように構成されたシフト装置(位置検出装置)の動作について具体的に説明する。図5(a)はシフトレバー1がホームポジションHにある状態を示し、この場合、図11に示すように、両磁気センサ10A,10Bはマグネット8の中心を通る直線αに対して対称位置に配置されている。この状態でシフトレバー1を第1の操作面に沿って図中の矢印P方向に揺動操作してニュートラル位置Nへ移動すると、ピン13を回動中心にシフトレバー1がレバー支持体2に対して回転し、それに伴って駆動アーム5がレバー支持体2の軸溝2eを支点として第1の操作面内を回動するため、駆動アーム5の係合部5bに係合するホルダ7がガイド体6のガイド壁6aの長辺に沿って移動し、ホルダ7に固着されたマグネット8が回路基板と非接触状態で図11中右方へ移動する。具体的には、シフトレバー1を図5(a)の矢印P方向へ揺動操作すると、図5(b)に示すように、駆動アーム5が軸部5aを中心に同図の反時計回り方向へ回転してホルダ7を図中右方へスライド移動させるため、マグネット8と両磁気センサ10A,10Bの相対位置は図6(a)から図6(b)に示す状態に変化し、マグネット8は両磁気センサ10A,10Bに対して同図の右側へ移動する。
【0024】
すなわち、運転者がシフトレバー1をホームポジションHからニュートラル位置Nへ移動操作すると、マグネット8が図11の直線αに沿ってホームポジションHからニュートラル位置Nへ移動するため、マグネット8の移動距離に応じて磁気センサ10A,10Bの各ホールIC21で検出されるホール電圧が変化する。この場合、シフトレバー1の移動ストローク(マグネット8の移動距離)に対して、第1の磁気センサ10A上の磁束ベクトルとX軸とのなす角度は図12(a)に示すように変化し、第2の磁気センサ10B上の磁束ベクトルとX軸とのなす角度は図12(b)に示すように変化する。したがって、これら磁気センサ10A,10Bで検出される磁束ベクトルとX軸とのなす角度の組合せに基づいてマグネット8の位置、すなわちシフトレバー1がニュートラル位置Nに操作されたことを検知でき、その検知結果に基づいて自動変速機のレンジがニュートラル位置Nに切り換えられる。例えば、図12(a),(b)において、磁気センサ10Aの出力(角度)が36、磁気センサ10Bの出力が43の組合せである場合、シフトレバー1の操作位置がホームポジションHであり、一方、磁気センサ10Aの出力が27、磁気センサ10Bの出力が35の組合せである場合には、シフトレバー1の操作位置がニュートラル位置Nであることがわかる。
【0025】
図7(b)はシフトレバー1がホームポジションHからニュートラル位置Nへ操作された状態を示し、前述した図6(b)と同じ状態を示している。この状態でシフトレバー1を第2の操作面に沿って揺動操作してドライブ位置Dまたはリバース位置Rへ移動すると、シフトレバー1とレバー支持体2が回動軸2c,2dを回動中心にハウジング12に対して一体的に回転し、それに伴って駆動アーム5とガイド体6およびホルダ7も回動軸2c,2dを中心に第2の操作面内を回転するため、ホルダ7に固着されたマグネット8が回路基板9に対して非接触状態で移動する。具体的には、シフトレバー1を図7(b)の矢印Q1方向へ揺動操作して図7(a)に示すリバース位置Rへ移動させると、マグネット8は両磁気センサ10A,10Bに対して反時計回りに移動し、図11のニュートラル位置Nからリバース位置Rへと移動する。これとは逆に、シフトレバー1を図7(b)の矢印Q2方向へ揺動操作して図7(c)に示すドライブ位置Dへ移動させると、マグネット8は両磁気センサ10A,10Bに対して時計回りに移動し、図11のニュートラル位置Nからドライブ位置Dへと移動する。
【0026】
すなわち、運転者がシフトレバー1を操作するのに伴い、マグネット8がホームポジションHからニュートラル位置Nを経由して、リバース位置Rまたはドライブ位置Dへ移動操作されると、マグネット8が図11の直線βに沿って移動するため、マグネット8の移動距離に応じて磁気センサ10A,10Bの各ホールIC21で検出されるホール電圧が変化する。この場合、マグネット8の中心が移動する直線βに対して両磁気センサ10A,10Bが平行に配列されているため、シフトレバー1の移動ストローク(マグネット8の移動距離)に対して、第1の磁気センサ10Aで検出される磁束ベクトルのX軸に対する角度は図13(a)に示すように変化し、第2の磁気センサ10Bで検出される磁束ベクトルのX軸に対する角度は図13(b)に示すように変化する。したがって、これら磁気センサ10A,10Bで検出される磁束ベクトルの角度に基づいてマグネット8の位置、すなわちシフトレバー1の操作位置を検知でき、その検知結果に基づいて自動変速機のレンジがニュートラル位置Nとドライブ位置Dおよびリバース位置Rのいずれかの位置に切り換えられる。
【0027】
このように本実施形態例に係る位置検出装置(シフト装置)は、シフトレバー1の操作に伴って移動するホルダ7に、一方の主面をN極で他方の主面をS極に着磁した円板状のマグネット8が固着されており、このマグネット8に所定間隔を存して対向配置された少なくとも2つのホールIC21からなる磁気センサ10(10A,10B)の表面に軟磁性体層22を備えた構成となっているため、磁気センサ10の出力に基づいてシフトレバー1のシフト位置(ホームポジションH、ニュートラル位置N、ドライブ位置D、リバース位置R)を検出することができる。したがって、少ない数の磁気センサと単純構造のマグネットを用いてレバーの操作位置を検出することができ、低コストの位置検出装置を実現することができる。
【0028】
また、回路基板9に第1および第2の磁気センサ10A,10Bを微小間隔を存して近接配置し、ホルダ7に固着された1つのマグネット8を直交する直線αおよび直線βに沿って移動可能となしたので、シフトレバー1の各シフト位置がT字形状の移動経路上に設定されている場合でも、あるいは十字形状の移動経路上に設定されている場合などであっても、1つのマグネット8と2つの磁気センサ10A,10Bを用いてシフトレバー1の各シフト位置を検出することができる。
【0029】
なお、マグネットが固着されたホルダをシフトレバーの操作に伴って駆動させるための駆動機構は上記実施形態例に限定されず、例えば、特開2006−349447号公報に開示されたように、シフトレバーとホルダとをガイド部材によって直線的かつ一体的に移動案内し、このようなホルダにマグネットを固着した構成とすることも可能であり、要は、シフトレバーの手動操作に連動してホルダ7が略同一平面内を移動できれば良い。
【0030】
また、シフトレバーを操作する移動経路は上記実施形態例のT字形状に限定されず、例えば、シフトレバーをクランク形状の移動経路に沿って操作することによって所望のシフト位置に操作するようにしても良いし、シフトレバーの移動経路を直線的でなく曲線などで構成しても良い。その場合、用いられる磁気センサの数は必ずしも2つでなくても良く、1つまたは3つ以上の磁気センサと1つのマグネットとを用いてシフトレバーの各シフト位置を検出することも可能である。
【0031】
さらに、上記実施形態例では、位置検出装置の磁気センサにホールICを用いた場合について例示したが、ホールICの代わりに巨大磁気抵抗効果(GMR:Giant Magneto Resistive Effect)センサを用いることも可能である。また、上記実施形態例では、本発明の位置検出装置をシフト装置に適用した場合について例示したが、ターンシグナルスイッチ装置やワイパースイッチ装置などのコンビネーションスイッチ装置にも適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0032】
1 シフトレバー
1c 軸孔
2 レバー支持体
2c,2d 回動軸
3 ケース
4 カバー
5 駆動アーム
6 ガイド体
7 ホルダ
7a 凹部
8 マグネット
9 回路基板
10 磁気センサ
10A 第1の磁気センサ
10B 第2の磁気センサ
12 ハウジング
13 ピン
14 第1の押圧子
15 コイルばね
16 第2の押圧子
17 コイルばね
18 カム部材
20 非磁性基台
21 ホールIC
22 軟磁性体層
23 端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レバーの操作に伴って移動するホルダと、このホルダに固着されたマグネットと、このマグネットに対し所定間隔を存して異なる位置に対向配置された磁気センサとを備え、
前記マグネットは一方の主面をN極で他方の主面をS極に着磁された円板状のマグネットからなり、前記複数の磁気センサを覆うように軟磁性体層が設けられていることを特徴とする位置検出装置。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記各磁気センサが少なくとも2つのホールICから構成され、これらのホールICが、平面的なXY座標軸の各軸上において前記軟磁性体層の中心位置から等距離にあり、かつ、この軟磁性体層の外縁部近傍に配置されていることを特徴とする位置検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−27627(P2011−27627A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175495(P2009−175495)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】