説明

位置検出装置

【課題】電波を送受信して物体の位置を検出する近接センサを用いて、例えば透明基板上に配置可能な小型の位置検出装置を提供する。
【解決手段】位置検出装置1aは、発振器2と、発振器2の信号に基づいて交流信号Eaを放射する送信アンテナ3と、交流信号Ebを受信する複数の受信アンテナ4R、4L,4U、4Dとを備える。位置検出装置1aにおいて、透明基板上に透明電極で形成された送信
アンテナおよび受信アンテナを用い、このアンテナをディスプレイ上に配置することにより、ディスプレイ上の3次元領域に位置する被検物体の位置を検出する位置検出装置を構成することが出来る。この位置検出装置による被検物体の3次元の位置情報に応じて機器への入力を制御することにより、入力装置を構成することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の位置を検出する位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2つのアンテナを備え、一方のアンテナから交流電磁界を発生し、他方のアンテナでこれを受信し、受信した信号を位相検波して、物体の位置や移動を検出する近接センサが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、3点以上の位置にそれぞれ配置された赤外線センサで測定した物体との距離情報から当該物体との位置を演算する位置検出装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−275629号公報(第3−5頁、図1)
【特許文献2】特開2007−80214号公報(第6頁、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の近接センサを複数用いて、特許文献2に記載のような位置検出装置を構成した場合、ディスプレイ上に構成することができず、また装置が大型化してしまう問題がある。特に、指向性の無いアンテナ構成で被検査物体を検出するアンテナ部において、これを例えばボタン一つの領域に留める事が出来ず、装置が大型化してしまう。
【0006】
この発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、交流電波を送受信して物体の位置を検出する近接センサを用いて、小型の位置検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明の位置検出装置は下記記載の構成を採用するものである。
【0008】
本発明の位置検出装置は、交流信号発生源の信号に基づいて送信アンテナから送信された電波を受信アンテナで受信し、当該受信した信号を交流信号発生源からの信号を用いて位相検波して情報を取得し、複数の場所で取得した情報を用いて物体の位置を検出する位置検出装置であって、一つの送信アンテナから送信された電波を受信する複数の受信アンテナと、各受信アンテナで受信した信号を交流信号発生源からの信号によりそれぞれ位相検波する複数の位相検波手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の位置検出装置は、上記に記載の構成に加えて、受信アンテナ及び位相検波手段を3つ以上備える
ことを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明の位置検出装置は、上記に記載の構成に加えて、送信アンテナはリング状のアンテナであり、送信アンテナの内側に互いに離れて配置されたことを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明の位置検出装置は、上記に記載の構成に加えて、交流信号発生源からの信号を移相する移相手段と、移相手段で移相された信号と各受信アンテナで受信した信号とを合成する複数の合成手段と、を更に備え、各位相検波手段は、各合成手段で合成された合成信号を、交流信号発生源からの信号により位相検波することを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明の位置検出装置は、上記に記載の構成に加えて、送信アンテナは複数の棒状部を有し、受信アンテナは棒状のアンテナであり、送信アンテナの各棒状部と各受信アンテナとが、並んで交互に配置されたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の位置検出装置は、交流信号発生源の信号に基づいて送信アンテナから送信された電波を受信アンテナで受信し、当該受信した信号を交流信号発生源からの信号を用いて位相検波して情報を取得し、複数の場所で取得した情報を用いて物体の位置を検出する位置検出装置であって、異なる周波数の交流信号を発生する複数の交流信号発生源と、各交流信号発生源からの信号に基づき、異なる周波数の電波を送信する複数の送信アンテナと、複数の送信アンテナからのそれぞれの電波を複数受信する1つの受信アンテナと、各受信アンテナで受信した信号を各交流信号発生源からの信号によりそれぞれ位相検波する複数の位相検波手段と、を備えることを特徴とする。
【0014】
さらに、本発明の位置検出装置は、上記に記載の構成に加えて、交流信号発生源、受信アンテナ及び位相検波手段を3つ以上備えることを特徴とする。
【0015】
さらに、本発明の位置検出装置は、上記に記載の構成に加えて、受信アンテナはリング状のアンテナであり、各送信アンテナは、受信アンテナの内側に互いに離れて配置されたことを特徴とする。
【0016】
さらに、本発明の位置検出装置は、上記に記載の構成に加えて、各交流信号発生源からの信号を移相する複数の移相手段と、各移相手段で移相された信号と一つの受信アンテナで受信した信号とを合成する複数の合成手段と、を更に備え、各位相検波手段は、各合成手段で合成された合成信号を、各交流信号発生源からの信号により位相検波することを特徴とする。
【0017】
さらに、本発明の位置検出装置は、上記に記載の構成に加えて、送信アンテナは棒状のアンテナであり、受信アンテナは複数の棒状部を有し、各送信アンテナと受信アンテナの各棒状部とが、並んで交互に配置されたことを特徴とする。
【0018】
また、本発明の位置検出装置は、交流信号発生源の信号に基づいて送信アンテナから送信された電波を受信アンテナで受信し、当該受信した信号を交流信号発生源からの信号を用いて位相検波して情報を取得し、複数の場所で取得した情報を用いて物体の位置を検出する位置検出装置であって、一つの送信アンテナから送信された電波を受信する複数の受信アンテナと、各受信アンテナで受信した信号を交流信号発生源からの信号によりそれぞれ位相検波する複数の位相検波手段と、を有する近接センサ群を二つ備え、送信アンテナは複数の棒状部を有し、受信アンテナは棒状のアンテナであり、送信アンテナの各棒状部と各受信アンテナとが並んで交互に配置され、各近接センサ群の送信アンテナ及び受信アンテナの長手方向が互いに直交するように、各近接センサ群の送信アンテナ及び受信アンテナが重なって配置されたことを特徴とする。
【0019】
また、本発明の位置検出装置は、交流信号発生源の信号に基づいて送信アンテナから送信された電波を受信アンテナで受信し、当該受信した信号を交流信号発生源からの信号を用いて位相検波して情報を取得し、複数の場所で取得した情報を用いて物体の位置を検出する位置検出装置であって、複数の送信アンテナからのそれぞれの電波を複数受信する1
つの受信アンテナと、各受信アンテナで受信した信号を各交流信号発生源からの信号によりそれぞれ位相検波する複数の位相検波手段と、を有する近接センサ群を二つ備え、送信アンテナは棒状のアンテナであり、受信アンテナは複数の棒状部を有し、各送信アンテナと受信アンテナの各棒状部とが、並んで交互に配置され、各近接センサ群の送信アンテナ及び受信アンテナの長手方向が互いに直交するように、各近接センサ群の送信アンテナ及び受信アンテナが重なって配置されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の位置検出装置は、交流電波を送受信して物体の位置を検出する近接センサを複数用いる構成において、発振回路及び発信アンテナを複数の近接センサで共用することにより、小型の位置検出装置を実現することが可能となる。
【0021】
また、本発明の位置検出装置は、交流電波を送受信して物体の位置を検出する近接センサを複数用いる構成において、受信アンテナを複数の近接センサで共用することにより、小型の位置検出装置を実現することが可能となる。
【0022】
更に、本発明の位置検出装置は、リング状のアンテナと、このリング状のアンテナの内側に互いに離れて配置された複数のアンテナを用いて構成することにより、送信アンテナ及び受信アンテナをより小型に構成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例1の位置検出装置の構成を示す回路図である。
【図2】本発明の実施例2の位置検出装置の構成を示す回路図である。
【図3】本発明の実施例2の位置検出装置の動作を説明する波形図である。
【図4】本発明の実施例2の位置検出装置の動作を説明する波形図である。
【図5】本発明の実施例3の位置検出装置の構成を示す回路図である。
【図6】本発明の実施例4の位置検出装置の構成を示す回路図である。
【図7】送信アンテナおよび受信アンテナの構成例を示す説明図である。
【図8】送信アンテナおよび受信アンテナの構成例を示す説明図である。
【図9】送信アンテナおよび受信アンテナの構成例を示す説明図である。
【図10】本発明の実施例5の位置検出装置の構成を示す回路図である。
【図11】本発明の実施例5の位置検出装置の構成を示す回路図である。
【図12】送信アンテナおよび受信アンテナの構成例を示す説明図である。
【図13】送信アンテナおよび受信アンテナの構成例を示す説明図である。
【図14】送信アンテナおよび受信アンテナの構成例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
[実施例1:図1]
まず、本発明の実施例1の位置検出装置1aの構成について説明する。図1は、実施例1の位置検出装置1aの構成を示す回路図である。図1に示すように、実施例1の位置検出装置1aは、一つの発振器2及び送信アンテナ3と、複数の受信アンテナ4R、4L、4U、4D及び移相検波器9R、9L、9U、9Dを用いて、複数の近接センサを実現したものである。
【0025】
位置検出装置1aは、発振器2と、該発振器2で生成した低周波信号に基づいて交流信号Eaを被検査領域へ放射する送信アンテナ3を備える。
【0026】
発振器2は、交流信号発生源の一例であり、例えば水晶振動子を用いて構成される。送信アンテナ3から放射される交流信号Eaは、その周波数及び強度の安定性が当該近接セ
ンサとしての出力の安定性を左右するので、周波数の安定度が高く、温度や経時変化等に対して安定な水晶振動子を用いるのが望ましい。
【0027】
例えば、携帯機器などに使用されることを想定して低消費電力の構成を目指す為、VLF帯の発振を可能とする音叉型水晶振動子を用いる。発振器の回路構成は低消費電力を考慮して時計などに用いられる、一般的なコルピッツ型発回路などでよい。
【0028】
また、水晶振動子以外では、PZT薄膜等の圧電素子とセラミックで構成した振動子(セラミック振動子)、同じくPZT薄膜等の圧電素子をMEMSで構成した振動体表面に形成したMEMS振動子、タンタル酸リチウム単結晶、ニオブ酸リチウム単結晶またはランガサイトを用いた振動子などを用いて、発振器2を構成してもよい。
【0029】
また、位置検出装置1aは、被検査領域からの交流信号Ebを受信する受信アンテナ4R、4L、4U、4Dを備える。バッファ6は、発振器2へ後段の回路からの影響が及び、周波数や振幅に変化を生じるのを避ける為に設けられる。さらに、位置検出装置1aは、受信アンテナ4の出力を増幅する増幅器8R、8L、8U、8Dと、発振器2の出力信号で、受信アンテナ4R、4L、4U、4Dで受信した信号を位相検波する位相検波器9R、9L、9U、9Dを備える。さらに、位置検出装置1aは、位相検波器9R、9L、9U、9Dの出力を平滑化するLPF(ローパスフィルタ)10R、10L、10U、10Dと、出力端子11R、11L、11U、11Dを備える。
【0030】
次に、上述した構成を備える位置検出装置1aの動作について説明する。まず、発振器2により低周波信号を発生させ、送信アンテナ3により被検査領域へ交流信号Eaを放射する。送信アンテナ3から放射した交流信号Eaは、被検査領域に、この領域に存在する大気,誘電体および導体等により決定される電磁界を形成する。受信アンテナ4R、4L、4U、4Dは、被検査領域に形成される電磁界に応じた交流信号Ebを受信する。
【0031】
この時、被検査領域に存在する物が一切動かなければ、送信アンテナ3が送信する交流信号Eaが形成する電磁界は定常的な状態となり、受信アンテナ4が受信する交流信号Ebは安定した位相と振幅を持つ。しかし、この領域へ例えば人間の指等の適度な誘電率を備えた被検査物体Oが浸入すると、電磁界が擾乱を受けて変化する。この結果受信アンテナ4が受信する交流信号Ebの位相と振幅が変化する。
【0032】
受信アンテナ4R、4L、4U、4Dで受信した信号は、増幅器8R、8L、8U、8Dにより電気的に増幅される。増幅器8R、8L、8U、8Dの出力は、位相検波器9R、9L、9U、9Dにより発振器2の周波数で位相検波され、LPF10R、10L、10U、10Dにより平滑化され、出力端子11から直流電圧の変化として出力される。
【0033】
上述したように、被検査領域に例えば人間の指等の適度な誘電率を備えた被検物体Oが浸入すると、電磁界が擾乱を受けて変化する。この結果受信アンテナ4R、4L、4U、4Dが受信する交流信号Ebの位相と振幅は変化するので位相検波器9R、9L、9U、9Dの出力は変化し、これを平滑化するLPF10R、10L、10U、10Dからの直流出力は変化する。この直流出力の変化によって被検物体Oの存在、運動、受信アンテナ4R、4L、4U、4Dから被検物体Oまでの距離を知る事が出来る。
【0034】
図1に示す位置検出装置1aは、一つの発振回路2及び一つの発信アンテナ3を共用して発信した電波を、受信アンテナ4R、4L、4U、4Dで各々受信した場合、各々の増幅器8R、8L、8U、8Dには、各々の受信アンテナによる異なる情報を反映した信号が入力する。各アンプの出力信号を各々同じ発振器2の信号であるバッファ6からの参照信号で位相検波したとしても、各LPF10R、10L、10U、10Dで平滑化した各
出力端子11R、11L、11U、11Dからは別々の出力が得られ、これらは各々受信アンテナ4R、4L、4U、4Dからの信号を反映しており、4つの近接センサを構成できる。
【0035】
受信アンテナ4R、4L、4U、4Dをそれぞれ異なる場所に配置し、各受信アンテナ4R、4L、4U、4Dから被検物体Oまでの距離を測定し、各受信アンテナ4R、4L、4U、4Dから被検物体Oまでの距離の情報と、各受信アンテナ4R、4L、4U、4Dの位置の情報とから、各受信アンテナ4R、4L、4U、4Dに対する被検物体Oの位置を検出することが可能となる。
【0036】
ここで、本発明の実施例1の位置検出装置1aは、4つの近接センサを構成したものであるが、発振回路2及び発信アンテナ3を4つの近接センサで共用した構成であるので、全体の構成を小型化することが可能となる。
[実施例2:図2−図4]
次に、本発明の実施例2の位置検出装置1bの構成について説明する。図2は、実施例2の位置検出装置1bの構成を示す回路図である。図2に示すように、実施例2の位置検出装置1bは、実施例1の位置検出装置1aと同様に、一つの発振器2及び送信アンテナ3と、複数の受信アンテナ4R、4L、4U、4D及び移相検波器9R、9L、9U、9Dを用いて、複数の近接センサを実現したものである。
【0037】
実施例2の位置検出装置1bは、実施例1の位置検出装置1aにおいて、送信アンテナ3と各受信アンテナ4R、4L、4U、4Dを電気的に接続する抵抗7R、7L、7U、7Dを備える。抵抗7R、7L、7U、7Dは送信アンテナ3と各受信アンテナ4R、4L、4U、4Dの結合抵抗であり、抵抗器7R、7L、7U、7Dの値が小さすぎると電気的結合が強くなりすぎ、一方、抵抗器7の値が大きすぎると電気的結合が弱すぎる。このため、抵抗器7R、7L、7U、7Dの抵抗値の選択は重要である。本実施例1の場合、抵抗器9の抵抗値は0.5〜1MΩ程度が適当である。
【0038】
ここで、抵抗により全てのアンテナが結合されて互いの入力に影響が出ることが心配されるが、送信アンテナ3はバッファ6の出力により安定な状態に保たれ、各受信アンテナからの信号は他のアンテナに到達するまでに抵抗により減衰するので、各受信アンテナ間の混信が発生することはなく、4つの近接センサを実現できる。また、単一の移相手段を用いて移相を行ない、バッファ等を用いてこの信号を各受信アンテナに分配すれば、複数の移相手段を用いなくても、これらの混信を避ける構成を実現できる。
【0039】
次に、上述した構成を備える位置検出装置1bの動作について説明する。なお、以下の説明では、動作説明を明確にする為、位相検波器9R、9L、9U、9Dで乗算する増幅器8R、8L、8U、8Dからの参照信号は、予め2値化回路を用いて上下電源電圧を交互に変化し、位相情報のみを持つ矩形波に加工されたものを用いる。それ以外の信号は、矩形波と正弦波のいずれであっても効果は変わらないが、本説明においては全て正弦波とする。ここで、実際に発振回路の波形を正弦波にする為には発振回路にAGCが必要である。
【0040】
図3は、実施例2の位置検出装置1bの動作を説明する波形図である。実施例2においては、図2に示す様に増幅器8R、8L、8U、8Dの入力は発振回路の出力であるバッファ6の出力に大きな抵抗7を用いて接続してある。バッファ6からの出力は発振器2より電源電圧の中間電位を中心にした交流という性質を引き継いでいるので、交流の平均値はこの接続で電源電圧の中間電位へのクランプが実現する。
【0041】
また、この構成により、大きな値の抵抗7R、7L、7U、7Dと実際の回路素子の持
つ小さな寄生容量5R、5L、5U、5Dとによりバッファ6の出力とアンプ8R、8L、8U、8Dの入力の間にはローパスフィルタが形成される。この抵抗7R、7L、7U、7Dと寄生容量5R、5L、5U、5Dとからなるローパスフィルタが、移相手段として、バッファ6の出力とアンプ8R、8L、8U、8Dの入力の間に信号波形の位相差を生じさせる。移相手段により移相された信号を図3の移相発信波形で示す。
【0042】
一方、受信アンテナ4からの交流信号Ebは、発信アンテナ3からの交流信号Eaとの間で位相差を生じない。受信アンテナ4R、4L、4U、4Dで受信した信号を、図3の受信波形で示す。また、抵抗7R、7L、7U、7Dと受信アンテナ4R、4L、4U、4Dとは接続されており、この接続により、受信アンテナ4R、4L、4U、4Dとからの交流信号Ebのと、抵抗7R、7L、7U、7Dからの出力信号とが、それぞれ合成される。この抵抗7R、7L、7U、7Dと受信アンテナ4R、4L、4U、4Dとの接続は、合成手段の一例である。この合成信号の波形を図3の合成波形で示す。
【0043】
図4は、合成波形の変化の説明図である。図4に示すように、物体Oの変化を反映する受信波形の振幅の変化により、この合成波形は振幅及び位相が変化する。すなわち、物体Oの変化を反映する受信波形の振幅の変化は、合成波形が受信波形と同相の検波位置で検波されることで、合成波形の振幅及び位相の変化として検出される。
【0044】
抵抗7R、7L、7U、7D及び寄生容量5R、5L、5U、5Dによって生成される移相発信波形を抵抗7R、7L、7U、7Dの値またはアンプ8R、8L、8U、8Dの増幅率を調整することによりその振幅が電源電圧を超えるように調整しておくと、移相発信波形及び合成波形は電源電圧によりその振幅を制限されて台形波形または矩形波形となり、受信波形による変化は合成波形の位相のみに反映されることになる。このような状態では各々の波形の微妙な振幅調整は不要となり、振幅を変化させる環境要因は除外されるので、結果的に検波結果のSNは向上する。
【0045】
また、移相発信波形に比較して受信波形の振幅を小さくなるように各々の信号を調整しておくことにより、物体Oが帯電している場合に重畳される静電気による影響により、被検波信号が正負の何れかの電圧レベルに非対称に張り付いてしまう現象を極力抑えることが出来、物体Oの帯電に影響されないロバストな近接センサを実現することが出来る。この移相発信波形に比較して受信波形の振幅を小さくなるように各々の信号を調整することは、抵抗7と容量5の値を調整することにより行う。抵抗7R、7L、7U、7Dを大きくすると受信アンテナ4R、4L、4U、4Dからの信号の比率が大きくなる。また、寄生容量5R、5L、5U、5Dの値を大きくすると、やはり受信アンテナ4R、4L、4U、4Dからの信号の比率が大きくなる。全体のレベル調整はアンプ8R、8L、8U、8Dで行う。
【0046】
上述したように、被検査領域に例えば人間の指等の適度な誘電率を備えた被検物体Oが進入すると、電磁界が擾乱を受けて変化する。この結果受信アンテナ4R、4L、4U、4Dが受信する交流信号Ebの位相と振幅は変化するので位相検波器9R、9L、9U、9Dの出力は変化し、これを平滑化する平滑器10R、10L、10U、10Dからの直流出力は変化する。この直流出力の変化によって被検物体Oの存在、運動を知る事が出来る。
【0047】
本発明の実施例2の位置検出装置1bは、4つの近接センサを構成したものであるが、発振回路2及び発信アンテナ3を4つの近接センサで共用した構成であるので、実施例1と同様に、全体の構成を小型化することが可能となる。
【0048】
[実施例3:図5]
次に、本発明の実施例3の位置検出装置1cの構成について説明する。図5は、実施例3の位置検出装置1cの構成を示す回路図である。図5に示すように、実施例3の位置検出装置1cは、複数の周波数の異なる発振器2R、2L、2U、2D及び送信アンテナ3R、3L、3U、3Dと、一つの受信アンテナ4及び複数の移相検波器9R、9L、9U、9Dを用いて、複数の近接センサを実現したものである。
【0049】
実施例3の位置検出装置1cは、周波数の異なる複数の発振回路2R、2L、2U、2D及び複数の発信アンテナ3R、3L、3U、3Dを用いて発信した電波を、受信アンテナ4を共有して受信した場合、各々のアンプ8R、8L、8U、8Dには、各々のアンテナによる異なる情報を反映した信号が入力する。
【0050】
同じ受信アンテナ4から入力して混合されたとはいえ、各アンプの出力信号は各々周波数の異なる複数の発振回路2R、2L、2U、2Dの信号であるバッファ6R、6L、6U、6Dからの周波数と位相の異なる参照信号で位相検波することにより、各LPF10R、10L、10U、10Dで平滑化した各出力端子11R、11L、11U、11Dからは別々の出力が得られ、これらは各々受信アンテナ4からの信号を反映しており、4つの近接センサを実現できる。
[実施例4:図6]
次に、本発明の実施例4の位置検出装置1dの構成について説明する。図6は、実施例4の位置検出装置1dの構成を示す回路図である。図6に示すように、実施例4の位置検出装置1dは、実施例3の位置検出装置1cと同様に、複数の周波数の異なる発振器2R、2L、2U、2D及び送信アンテナ3R、3L、3U、3Dと、一つの受信アンテナ4及び複数の移相検波器9R、9L、9U、9Dを用いて、複数の近接センサを実現したものである。
【0051】
実施例4の位置検出装置1dは、実施例3の位置検出装置1cにおいて、各送信アンテナ3R、3L、3U、3Dと受信アンテナ4を電気的に接続する抵抗7R、7L、7U、7Dを位相手段として備える。こでは抵抗による連結により全てのアンテナが結合されて互いの入力に影響が出ることが心配されるが、出力アンテナは各バッファ6R、6L、6U、6Dの出力により安定な状態に保たれ、また周波数及び位相が異なるので、各送信アンテナ間の混信が発生することはなく、この場合も4つの近接センサを実現できる。
【0052】
一般に位相検波器は極めて鋭いバンドパスフィルタと見ることが出来ると説明されており、実際に異なる周波数の交流信号を排他的に検出することが出来る。しかし、周波数差が小さい場合はやはり混信が発生する。複数の発振器の周波数が近い場合の共振現象などを含めて各々の発振器に使用する周波数差は、VLF帯を使用する場合でも100Hz程度以上離しておく必要がある。更に高周波を使用する場合も、複数の近接センサを使用する場合は、使用する周波数の1%程度以上の周波数差を各々持たせておくと良い。
【0053】
実施例4の位置検出装置1dは、各送信アンテナ3R、3L、3U、3Dと受信アンテナ4を電気的に接続する抵抗7R、7L、7U、7Dを位相手段として備えるものであり、図2〜図4で説明した実施例2の位置検出装置1bと同様の動作をする。
【0054】
本発明の実施例3の位置検出装置1c及び実施例4の位置検出装置1dは、4つの近接センサを構成したものであるが、受信アンテナ4を4つの近接センサで共用した構成であるので、全体の構成を小型化することが可能となる。
【0055】
[送信アンテナおよび受信アンテナの構成例:図7〜図9]
次に、上述した位置検出装置の各実施例に用いられる送信アンテナ3および受信アンテナ4の構成について説明する。
【0056】
最近はディスプレイ上に描写された映像情報と連動した入力装置、即ちタッチパネルと呼ばれる入力装置の必要性が増大している。本発明の位置検出装置の送信アンテナおよび受信アンテナをディスプレイ上の異なる位置に配置すれば、ディスプレイ上の3次元領域に位置する被検物体の位置を検出する位置検出装置を構成することが出来る。この位置検出装置による被検物体の3次元の位置情報に応じて機器への入力を制御することにより、入力装置を構成することが出来る。
【0057】
以下に、このような位置検出装置を構成するため透明基板上にITO等の透明電極を用いて形成した送信アンテナ3および受信アンテナ4について説明する。
図7は、図1を用いて示した実施例1の位置検出装置1a及び図2を用いて示した実施例2の位置検出装置1bに用いるアンテナ構成の例である。図7に示す構成では、送信アンテナ3をリングアンテナとし、各々の受信アンテナ4R,4L,4U,4Dを点状アンテナとし、各々上下左右に対向するもの同士の間隔をdとして配置した様子を示した。この構成においては、図1及び2に示す回路の場合、dの値をリングアンテナ3の直径に近づけることにより、4セットの近接センサの送受信アンテナを1cm程度離して配置するにもかかわらず、アンテナが占有するのは直径1cm程度の領域で足りることになる。
【0058】
図8は、図5を用いて示した実施例3の位置検出装置1c及び図6を用いて示した実施例4の位置検出装置1dに用いるアンテナ構成の例である。図8に示す構成では、受信アンテナ4をリングアンテナとし、各々の送信アンテナ4R、4L、4U、4Dを点状アンテナとし、各々上下左右に対向するもの同士の間隔をdとして配置した様子を示した。この構成においては、図3及び4に示す回路の場合、dの値をリングアンテナ4の直径に近づけることにより、4セットの近接センサの送受信アンテナを1cm程度離して配置するにもかかわらず、アンテナが占有するのは直径1cm程度の領域で足りることになる。
【0059】
図7及び図8に示すアンテナ構成により、狭い領域に、感度出力の対称性の良い複数のアンテナを互いに離して配置し、近接センサの感度が距離だけに依存する構成を実現することができる。
【0060】
図7及び図8に示すアンテナ構成を用いた位置検出装置により、一つの非接触のボタンに空間入力装置として、方向指示もしくは入力機能を持たせることが可能となる。ボタンという概念は、一般にその存在領域を限定された小さな領域と規定している。本実施例1及び2においてはこの領域として1平方cm程度の大きさと想定する。
【0061】
リング状アンテナの直径を1cmとし、縦横2方向の動作検出に必要な近接センサの個数を4個とすると、4個のリングアンテナを一つのボタン内に収納しなければならないので、これら4個のリングアンテナの中心を正方形の頂点に配置したとしても、ボタンの大きさは最低2cm角が必要となる。そして、この場合の4組の各近接センサのアンテナセットの仮想中心間距離は1cm程度である。
【0062】
本発明の近接センサにおいて、図7及び図8に示すような構成で、透明基板上に透明電極で形成された送信アンテナおよび受信アンテナを用い、このアンテナをディスプレイ上に配置することにより、ディスプレイ上の3次元領域に位置する被検物体の位置を検出する位置検出装置を構成することが出来る。この位置検出装置による被検物体の3次元の位置情報に応じて機器への入力を制御することにより、入力装置を構成することが出来る。また、図7及び図8に示すような構成によりボタンという概念で示されるような小さな領域に複数の、ほぼ距離だけに依存する感度をもたらすアンテナを備えたことによる位置検出装置を構成することができる。
【0063】
図9は他のアンテナ構成の説明図である。図9に示すアンテナ構成では、実線で示す各々受信アンテナ4D,4L,4R,4Uは棒状アンテナであり、棒の伸びた方向を紙面縦方向に向け、紙面横方向にある間隔を空けて平行に配置してある。これらに対応する点線で示す送信アンテナ3は複数の棒状のアンテナを束ねた形状であり、この棒状部分は各々受信アンテナ4D,4L,4R,4Uと平行に各々の間に配置される。このアンテナ配置において、物体Oの接近の影響は棒が伸びた方向即ち紙面上下方向には無関係となり、紙面左右方向の位置及び紙面に垂直な方向の情報のみが得られることになる。
【0064】
図9においては図示した送信アンテナ3は全て連結されており、全ての配線上で同様な出力で電波を空間に送出する。一方その配置から左右方向の位置情報を担う各々の受信アンテナ4D,4L,4R,4Uは送信アンテナ3Xから同等の信号を受け取るのが望ましいので、両端に配置された、例えば4D及び4Uの外側には送信アンテナ3が存在したほうが良い。
【0065】
図9では、一つの送信アンテナと複数の受信アンテナを備える実施例1及び2の位置検出装置で用いられるアンテナ構成の例を示しました。しかし、複数の送信アンテナと一つの受信アンテナを備える実施例3及び4の位置検出装置で用いられるアンテナ構成も図9と同様に構成することができる。この場合、棒状の複数の送信アンテナが平行に配置され、受信アンテナの複数の棒状部分が各送信アンテナの間に配置される。
【0066】
[実施例5:図10〜図14]
次に、本発明の実施例5の位置検出装置1eの構成について説明する。実施例5の位置検出装置1eは、平面に近づく物体Oの位置情報を、高い分解能で得ることを可能とするものである。図10は、実施例5の位置検出装置1eの構成を示す回路図の一例である。図10に示すように、本発明の実施例5の位置検出装置1eは、図1を用いて説明した実施例1の位置検出装置1aの構成を近接センサ群1ea、1ebとして、2組備えるものである。
【0067】
図10に示すように、実施例5の位置検出装置1eでは、一方の近接センサ群1eaは、発振器2Xと、送信アンテナ3Xと、複数の受信アンテナ例えば4X1,4X2,4X3,4X4と、複数の移相検波器例えば9X1,9X2,9X3,9X4,と、複数のLPF例えば10X1, 10X2, 10X3, 10X4を備える。また、他方の近接センサ群1eaは、発振器2Yと、送信アンテナ3Yと、複数の受信アンテナ例えば4Y1,4Y2,4Y3,4Y4と、複数の移相検波器例えば9Y1,9Y2,9Y3,9Y4,と、複数のLPF例えば10Y1, 10Y2, 10Y3, 10Y4を備える。実施例5の位置検出装置1eでは、それぞれの近接センサ群1ea、1ebの発振器2X、2Yの周波数が互いに異なる。これにより、近接センサ群1ea、1ebは互いに干渉しない。
【0068】
使用する回路構成としては、少し複雑になるが、図11に示す位置検出装置1fのように、図2を用いて説明した実施例2の位置検出装置1bの構成を近接センサ群1fa、1fbとして2組備える構成としてもよい。これにより、SNその他の性能を向上させることができる。
【0069】
図12は、実施例5の位置検出装置1eの近接センサ群1ea、位置検出装置1fの近接センサ群1faのアンテナ構成の一例である。実線で示す各々受信アンテナ4X1,4X2,4X3,4X4は棒状アンテナであり、棒の伸びた方向を紙面縦方向に向け、紙面横方向にある間隔を空けて平行に配置してある。これらに対応する点線で示す送信アンテナ3Xは複数の棒状のアンテナを束ねた形状であり、この棒状部分は各々受信アンテナ4X1,4X2,4X3,4X4と平行に各々の間に配置される。このアンテナ配置において、物体Oの接近の影響は棒が伸びた方向即ち紙面上下方向には無関係となり、紙面左右方向
の位置及び紙面に垂直な方向の情報のみが得られることになる。
【0070】
図12においては図示した送信アンテナ3Xは全て連結されており、全ての配線上で同様な出力で電波を空間に送出する。一方その配置から左右方向の位置情報を担う各々の受信アンテナ4X1,4X2,4X3,4X4は送信アンテナ3Xから同等の信号を受け取るのが望ましいので、両端に配置された、例えば4X1及び4X4の外側には送信アンテナ3Xが存在したほうが良い。
【0071】
図13は、実施例5の位置検出装置1eの近接センサ群1eb、位置検出装置1fの近接センサ群1fbのアンテナ構成の一例である。各々実線で示す受信アンテナ4Y1,4Y2,4Y3,4Y4は棒状アンテナであり、棒の伸びた方向を紙面横方向に向け、紙面縦方向にある間隔を空けて平行に配置してある。これらに対応する破線で示す送信アンテナ3Yは複数の棒状のアンテナを束ねた形状であり、この棒状部分は各々受信アンテナ4Y1,4Y2,4Y3,4Y4と平行に各々の間に配置される。このアンテナ配置において、物体Oの接近の影響は棒が伸びた方向即ち紙面左右方向には無関係となり、紙面上下方向の位置及び紙面に垂直な方向の情報のみが得られることになる。
【0072】
図13においては図示した送信アンテナ3Yは全て連結されており、全ての配線上で同様な出力で電波を空間に送出する。一方その配置から上下方向の位置情報を担う各々の受信アンテナ4Y1,4Y2,4Y3,4Y4は送信アンテナ3Yから同等の信号を受け取るのが望ましいので、両端に配置された、例えば4Y1及び4Y4の外側には送信アンテナ3Yが存在したほうが良い。
【0073】
実施例5の位置検出装置1e又は1fは、周波数の異なる2つの発振回路2X及び2Yを用いて発生させた周波数の異なる信号を、各々2つの送信アンテナ3X及び3Yを用いて送信する。すると、各々複数の受信アンテナ4X1,4X2,4X3,4X4から受信した信号は位相検波の性質から、送信アンテナ3Yからの情報には全く影響されず、送信アンテナ3Xからの信号のみを抽出し、複数の出力端子11X1,11X2,11X3,11X4には、物体Oの接近は、送信アンテナ3Xと各々受信アンテナ4X1,4X2,4X3,4X4の間に起こる変化を反映した情報のみが発生する。一方、各々複数の受信アンテナ4Y1,4Y2,4Y3,4Y4から受信した信号は位相検波の性質から、送信アンテナ3Xからの情報には全く影響されず、送信アンテナ3Yからの信号のみを抽出し、複数の出力端子11Y1,11Y2,11Y3,11Y4には、物体Oの接近は、送信アンテナ3Yと各々受信アンテナ4Y1,4Y2,4Y3,4Y4の間に起こる変化を反映した情報のみが発生する。
【0074】
図12及び図13に示したように、特定の方向を向く平行な棒状アンテナを複数形成すれば、物体Oの接近に対して、各々紙面左右方向及び紙面に垂直な方向のみの位置情報と、各々紙面上下向及び紙面に垂直な方向のみの位置情報を別々に得ることができる。
【0075】
次に、図14を用いて各々紙面左右方向と上下方向に配置した複数のアンテナを混在させた場合について説明する。図14には、図12及び図13で説明した送信アンテナ3X及び3Y、受信アンテナ4X1,4X2,4X3,4X4及び4Y1,4Y2,4Y3,4Y4をそのまま重ねて配置してある。各々のアンテナは同一平面上では交点で交わってしまうので、3X,4X1,4X2,4X3,4X4と3Y,4Y1,4Y2,4Y3,4Y4の組みは互いに接触しないようにほんの少し紙面垂直な方向にずらして配置してある。
【0076】
このような配置においては、互いに全く干渉しない情報として、受信アンテナ4X1,4X2,4X3,4X4から紙面左右方向の情報、受信アンテナ4Y1,4Y2,4Y3,4Y4から紙面上下方向の情報が得られる。これらは直交する座標系における2つの軸の情
報と見ることができるので、2つの情報の組みでこれらのアンテナが決定する平面に接近する物体Oの座標情報を得ることができる。
【0077】
被検出物体が1つの場合は図7及び図8に示した様にリングアンテナを領域の4隅に配置すれば位置を検出できる。しかし本実施例が目指したものは、物体Oが複数存在した場合にこれらを別々に認識出来ることである。物体Oが複数存在した場合、受信アンテナはそれらからの情報を重ね合わせて入力するため、複数の物体を1つの大きな物体として認識してしまう。複数物体の検出に対応するためには受信アンテナの数を増やして情報を増やす必要がある。複数の受信アンテナが存在し、複数の物体を同方向から見る受信アンテナと反対方向に見る受信アンテナが存在すれば複数の物体を分離して把握できる。この為には受信アンテナを多数配置する必要がある。
【0078】
本実施例では、煩雑さを避けるため、紙面左右方向と紙面上下方向に設置する受信アンテナ及び受信回路の数量を各々4個として説明した。実際の入力パネルの大きさを100mm×200mm程度と想定し、物体Oとして有力な人間の指の大きさを10mm程度の広がりを持った物体と想定すると、これを物体として分解するには、左右20上下10以上のアンテナ配置が実用的な数量となる。図7及び図8に示したようなリング状アンテナを用いた場合は、アンテナの個数がそのまま分解能となるため、縦行アンテナ数×横列アンテナ数即ち200個を必要とすることになり、実用的ではないが、本実施例の方式では、この例では10mmの分解能を持った直交する2つの1次元配列情報と見なせるので、アンテナの総数は、縦アンテナ数+横アンテナ数即ち30個で済み、実用の範囲となる。
【0079】
このように棒状アンテナはある平面上に網のような配置を取って入力平面を構成しているが、実際のアンテナは空間に導線により張られた網であっても良いし、プリント基板上に配線された配線パターンであっても良い。プリント基板がFPCであればアンテナにより構成される入力平面は変形可能なフレキシブル入力平面となる。また図7及び図8に示したように、アンテナがガラスや樹脂のような透明平面上にITO等で透明に形成される場合は、この透明入力平面をディスプレイに重ねることによりディスプレイのジェスチャー入力装置として活用できる。
【0080】
本発明の実施例5の位置検出装置1fとして、一つの送信アンテナと複数の受信アンテナと複数の位相検波手段を有する近接センサ群を備える例を説明した。しかし、これとは別に、実施例3及び4の位置検出装置と同様の構成の近接センサ群、すなわち一つの受信アンテナと複数の送信アンテナと複数の位相検波手段を有する近接センサ群を備える構成としてもよい。一つの受信アンテナと複数の送信アンテナと複数の位相検波手段を有する近接センサ群を備える構成であっても、図11から図13に示すように送信アンテナ及び受信アンテナを構成することにより、平面座標上の物体の位置を検出することが可能となる。
【符号の説明】
【0081】
1a、1b、1c、1d、1e、1f 位置検出装置
1ea、1eb、1fa、1fb 近接センサ群
2、2D、2L、2R、2U 発振器
3、3D、3L、3R、3U 発信アンテナ
4、4D、4L、4R、4U 受信アンテナ
5、5D、5L、5R、5U 寄生容量
6、6D、6L、6R、6U バッファ
7D、7L、7R、7U 抵抗
8D,8L,8R、8U 増幅器
9D,9L,9R、9U 位相検波器
10D,10L,10R、10U LPF
11D,11L,11R、11U 出力端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流信号発生源の信号に基づいて送信アンテナから送信された電波を受信アンテナで受信し、当該受信した信号を前記交流信号発生源からの信号を用いて位相検波して情報を取得し、複数の場所で取得した前記情報を用いて物体の位置を検出する位置検出装置であって、
一つの前記送信アンテナから送信された電波を受信する複数の前記受信アンテナと、
前記各受信アンテナで受信した信号を前記交流信号発生源からの信号によりそれぞれ位相検波する複数の位相検波手段と、を備える
ことを特徴とする位置検出装置。
【請求項2】
前記受信アンテナ及び前記位相検波手段を3つ以上備える
ことを特徴とする請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項3】
前記送信アンテナはリング状のアンテナであり、
前記送信アンテナの内側に互いに離れて配置された
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の位置検出装置。
【請求項4】
前記交流信号発生源からの信号を移相する移相手段と、
前記移相手段で移相された信号と前記各受信アンテナで受信した信号とを合成する複数の合成手段と、を更に備え、
前記各位相検波手段は、前記各合成手段で合成された合成信号を、前記交流信号発生源からの信号により位相検波する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の位置検出装置。
【請求項5】
前記送信アンテナは複数の棒状部を有し、
前記受信アンテナは棒状のアンテナであり、
前記送信アンテナの各棒状部と前記各受信アンテナとが、並んで交互に配置された
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の位置検出装置。
【請求項6】
交流信号発生源の信号に基づいて送信アンテナから送信された電波を受信アンテナで受信し、当該受信した信号を前記交流信号発生源からの信号を用いて位相検波して情報を取得し、複数の場所で取得した前記情報を用いて物体の位置を検出する位置検出装置であって、
異なる周波数の交流信号を発生する複数の前記交流信号発生源と、
前記各交流信号発生源からの信号に基づき、異なる周波数の電波を送信する複数の前記送信アンテナと、
前記複数の送信アンテナからのそれぞれの電波を複数受信する1つの受信アンテナと、
前記各受信アンテナで受信した信号を前記各交流信号発生源からの信号によりそれぞれ位相検波する複数の位相検波手段と、を備える
ことを特徴とする位置検出装置。
【請求項7】
前記交流信号発生源、前記受信アンテナ及び前記位相検波手段を3つ以上備える
ことを特徴とする請求項6に記載の位置検出装置。
【請求項8】
前記受信アンテナはリング状のアンテナであり、
前記各送信アンテナは、前記受信アンテナの内側に互いに離れて配置された
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の位置検出装置。
【請求項9】
前記各交流信号発生源からの信号を移相する複数の移相手段と、
前記各移相手段で移相された信号と前記一つの受信アンテナで受信した信号とを合成する複数の合成手段と、を更に備え、
前記各位相検波手段は、前記各合成手段で合成された合成信号を、前記各交流信号発生源からの信号により位相検波する
ことを特徴とする請求項6から8のいずれか一項に記載の位置検出装置。
【請求項10】
前記送信アンテナは棒状のアンテナであり、
前記受信アンテナは複数の棒状部を有し、
前記各送信アンテナと前記受信アンテナの各棒状部とが、並んで交互に配置された
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の位置検出装置。
【請求項11】
交流信号発生源の信号に基づいて送信アンテナから送信された電波を受信アンテナで受信し、当該受信した信号を前記交流信号発生源からの信号を用いて位相検波して情報を取得し、複数の場所で取得した前記情報を用いて物体の位置を検出する位置検出装置であって、
一つの前記送信アンテナから送信された電波を受信する複数の前記受信アンテナと、前記各受信アンテナで受信した信号を前記交流信号発生源からの信号によりそれぞれ位相検波する複数の位相検波手段と、を有する近接センサ群を二つ備え、
前記送信アンテナは複数の棒状部を有し、前記受信アンテナは棒状のアンテナであり、前記送信アンテナの各棒状部と前記各受信アンテナとが並んで交互に配置され、
前記各近接センサ群の前記送信アンテナ及び前記受信アンテナの長手方向が互いに直交するように、前記各近接センサ群の前記送信アンテナ及び前記受信アンテナが重なって配置された
ことを特徴とする位置検出装置。
【請求項12】
交流信号発生源の信号に基づいて送信アンテナから送信された電波を受信アンテナで受信し、当該受信した信号を前記交流信号発生源からの信号を用いて位相検波して情報を取得し、複数の場所で取得した前記情報を用いて物体の位置を検出する位置検出装置であって、
前記複数の送信アンテナからのそれぞれの電波を複数受信する1つの受信アンテナと、
前記各受信アンテナで受信した信号を前記各交流信号発生源からの信号によりそれぞれ位相検波する複数の位相検波手段と、を有する近接センサ群を二つ備え、
前記送信アンテナは棒状のアンテナであり、前記受信アンテナは複数の棒状部を有し、前記各送信アンテナと前記受信アンテナの各棒状部とが、並んで交互に配置され、
前記各近接センサ群の前記送信アンテナ及び前記受信アンテナの長手方向が互いに直交するように、前記各近接センサ群の前記送信アンテナ及び前記受信アンテナが重なって配置された
ことを特徴とする位置検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−88294(P2012−88294A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276841(P2010−276841)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【出願人】(000166948)シチズンファインテックミヨタ株式会社 (438)
【Fターム(参考)】