説明

位置検索システム、携帯情報端末、及び位置検索方法

【課題】位置検索の対象となる携帯情報端末が、GPSによる位置情報の取得が困難な位置に存在しても、当該携帯情報端末の位置の特定を可能にする情報を提供する位置検索システムを実現する。
【解決手段】本発明の携帯情報端末は、無線基地局から電波を受信する無線通信部と、GPS(全地球測位システム)により位置情報を取得する位置情報取得部と、位置情報と無線基地局情報との組である位置履歴情報を記憶する記憶部と、電波の受信状態に所定の変動が生じる度に位置履歴情報を記憶部へ記録し、所定のタイミングで記憶部に記録された位置履歴情報を出力する制御部とを備える。無線基地局は、無線通信のために位置登録を行っている無線基地局である。無線基地局情報は、位置情報が取得された時点の無線基地局の情報である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯情報端末の存在位置を特定するための位置検索システムに関する。
【背景技術】
【0002】
GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)は、衛星から受信される電波に基づいて位置を算出することを可能にするシステムである。近年、GPSによる位置情報取得機能を搭載した携帯情報端末が普及している。また、遠隔に配置された装置からネットワークを介して携帯情報端末に位置の問い合わせを行って、当該携帯情報端末の位置を特定するサービスも提供されている。携帯情報端末の位置情報取得に関連する技術が以下の通り公開されている。
【0003】
特許文献1は、非常時の連絡をより迅速、且つ確実に行えるように支援する移動通信端末装置を開示している。特許文献1の移動通信端末装置は、以下のような構成である。位置情報取得手段は、移動通信端末装置の現在位置を示す位置情報を取得する。位置情報送信手段は、位置情報取得手段が取得する位置情報を外部装置に送信可能である。発呼手段は、通話を行う通話相手先との接続を要求する発呼を行う。制御手段は、発呼手段が通話相手先との接続を要求する発呼を行った後に、位置情報送信手段に位置情報を送信させることにより位置情報を自動的に通知する。特許文献1の移動通信端末装置は、通話相手先との接続を要求する発呼を行った後に、事前、あるいはその後に取得する位置情報を送信させることにより、その位置情報を通知すべき人に自動的に通知する。このため、移動通信端末装置のユーザは、発呼による電話連絡が行えなくとも、自身の居場所を迅速且つ確実に連絡することができる。
【0004】
特許文献2は、GPS測位を適切に行うことで、消費電力を一層削減することができる位置検出方法を開示している。特許文献2の位置検出方法は、予め定める第1の周期毎に現在位置をGPS測位し、その測位結果を、移動体通信網を介して外部へ送信するようにした位置検出方法である。特許文献2の一検出方法は、待ち受けのために予め定める第2の周期毎に移動体通信網の基地局との通信を行う。その通信結果から、予め定める範囲内での静止状態であると判定される場合には第1の周期を長くし、予め定める範囲外への移動が判定された場合には第1の周期を短くする。特許文献2の位置検出方法によれば、第2の周期毎の移動体通信網の基地局との通信結果を利用して、静止状態と移動状態とでGPS測位の間隔を変化させることが可能であるため、GPS測位に係る消費電力を適切に削減できる。
【0005】
特許文献3は、ワンセグ(地上ディジタル放送における1セグメント放送)のチャンネル設定を常に視聴可能な設定とすることができ、端末自体の消費電力を最小限に抑えることができる移動携帯端末を開示している。特許文献3の移動携帯端末は、基地局との通信を行う無線機能と、地上ディジタル放送における1セグメント放送を受信するワンセグ機能と、自端末の位置情報を取得するGPS機能とを備える移動携帯端末である。判定手段は、自端末が接続している基地局エリアが切り替わったかを判定する。制御手段は、判定手段の判定結果に応じてGPS機能の起動と停止とを行う。切り替え手段は、制御手段によるGPS機能を起動することで得た現在地の位置情報に対応するワンセグの電波局のチャンネル設定を切り替える。特許文献3の移動携帯端末によれば、基地局エリアの切り替わりを検出すると、GPS機能により位置情報を取得して適切なワンセグの電波局のチャネル設定へ切り替えることにより、常に視聴可能なチャンネル設定を設定できる。
【0006】
特許文献4は、外部装置から通信ネットワークを介した探索指令に基づいて自装置の現在位置を返送する動作をしていることを、当該探索機能付きモバイル装置の所有者には認識できないようにしたモバイル装置を開示している。特許文献4のモバイル装置は、制御指令処理部と電源制御部とを具備した探索機能部を備える。制御指令処理部は、外部装置から受信された探索指令を含んだ制御指令を処理する。電源制御部は、モバイル装置の電源を制御する。制御指令処理部は、探索指令を受信すると、モバイル装置の電源がOFFの場合に電源制御部によりモバイル装置の電源をONにする。制御指令処理部は、実行中のジョブの隙間を縫ってバックグラウンドジョブとしてモバイル装置の現在位置情報を取得する。制御指令処理部は、外部装置に対して現在位置情報を返送する。特許文献4のモバイル装置によれば、外部装置からの探索指令に対して、何ら操作を行うこともなく、自装置の現在位置を自動的に返送するため、喪失した装置の現在位置を遠隔地からでも確実に把握することができる。
【0007】
特許文献1から特許文献4に開示された技術では、GPSによる位置情報の取得を行っている。そのため、例えば、特許文献1や特許文献4では、GPSにより位置情報が取得できない環境では、端末の位置を特定することができないという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−197820号公報
【特許文献2】特開2006−153695号公報
【特許文献3】特開2009−302691号公報
【特許文献4】特許第4463189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、GPSによる位置情報の取得が困難な位置に携帯情報端末が存在する場合にも、当該携帯情報端末の存在位置の特定を可能にするための情報を提供する位置検索システムを実現する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一つの観点として、携帯情報端末が提供される。本発明の携帯情報端末は、無線基地局から電波を受信する無線通信部と、GPS(全地球測位システム)により位置情報を取得する位置情報取得部と、位置情報と無線基地局情報との組である位置履歴情報を記憶する記憶部と、電波の受信状態に所定の変動が生じる度に位置履歴情報を記憶部へ記録し、所定のタイミングで記憶部に記録された位置履歴情報を出力する制御部とを備える。無線基地局は、無線通信のために位置登録を行っている無線基地局である。無線基地局情報は、位置情報が取得された時点の無線基地局の情報である。
【0011】
本発明の他の観点として、位置検索システムが提供される。本発明の位置検索システムは、上述の携帯情報端末と、携帯情報端末から位置履歴情報を取得して、位置履歴情報に基づいて携帯情報端末の位置の履歴を視認可能に表示する位置検索装置とを備える。
【0012】
本発明のさらに他の観点として、位置検索方法が提供される。本発明の位置検索方法は、無線基地局から電波を受信するステップと、GPS(全地球測位システム)により位置情報を取得するステップと、位置情報と無線基地局情報との組である位置履歴情報を記憶するステップと、電波の受信状態に所定の変動が生じる度に位置履歴情報を記憶部へ記録するステップと、所定のタイミングで記憶部に記録された位置履歴情報を出力するステップと、携帯情報端末から位置履歴情報を取得するステップと、位置履歴情報に基づいて携帯情報端末の位置の履歴を視認可能に表示するステップと を備える。無線基地局は、無線通信のために位置登録を行っている無線基地局である。無線基地局情報は、位置情報が取得された時点の無線基地局の情報である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の、携帯情報端末によれば、GPSによる位置情報の取得が困難な位置に携帯情報端末が存在する場合にも、当該携帯情報端末の存在位置の特定を可能にするための情報を提供する位置検索システムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の実施形態における位置検索システムの構成を示す図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態における携帯電話端末100の構成を示す図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態における位置履歴情報テーブル41を示す図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態における携帯電話端末100の移動に伴う電波203及び電波401の受信状態の変化を説明する図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態における位置検索システムにおいて、携帯電話端末100が位置履歴情報を記録する動作を示すフローチャートである。
【図6】図6は、本発明の実施形態における位置検索装置300が携帯電話端末100の位置を取得する動作を示すフローチャートである。
【図7】図7は、本発明の実施形態における位置履歴情報の時系列データの一例を示す図である。
【図8】図8は、本発明の実施形態における位置履歴情報の時系列データの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付図面を参照して、本発明の実施形態による位置検索システムを以下に説明する。
【0016】
[構成の説明]
はじめに、本実施形態における位置検索システムの構成の説明を行う。図1は、本実施形態における位置検索システムの構成を示す図である。本実施形態の位置検索システムは、携帯電話端末100と、無線通信ネットワーク200と、位置検索装置300とを備える。
【0017】
無線通信システム200は、基地局201とネットワーク202とが接続されて構成される。位置検索装置300は、ネットワーク202と接続される。携帯電話端末100は、電波203を介して無線基地局201と接続される。位置検索装置300は、携帯電話端末100と無線通信ネットワーク200を介して通信を行うことが可能である。なお、図1において、基地局201及び携帯電話端末100は、多数存在するうちの一つのみを示している。
【0018】
携帯電話端末100は、GPS衛星400から送信される電波401を受信する。携帯電話端末100は、GPSにより自端末の位置情報を算出することができる。携帯電話端末100は、基地局201から基地局情報を取得する。携帯電話端末100は、位置情報と基地局情報との組である位置履歴情報を記憶する。位置履歴情報、位置情報、及び基地局情報については、後述する。なお、本実施形態では、携帯電話端末100を例として説明しているが、同様の機能を備えたPHS(Personal Handyphone System)やPDA(Personal Digital Assistants)に例示される携帯情報端末が広く適用可能である。
【0019】
位置検索装置300は、携帯電話端末100の位置を検索するための装置である。位置検索装置300は、携帯電話端末100に対して位置取得要求を送信して、携帯電話端末100から位置履歴情報を取得する。位置検索装置300は、表示装置を備える。位置検索装置300は、取得された位置履歴情報に基づいて、携帯電話端末100の位置を視認可能に表示する。
【0020】
次に、携帯電話端末100の構成の説明を行う。図2は、本実施形態における携帯電話端末100の構成を示す図である。本実施形態の携帯電話端末100は、位置情報取得部1と、無線通信部2と、制御部3と、記憶部4とを備える。
【0021】
まず、位置情報取得部1は、GPSアンテナ11と、GPS受信部12と、GPS信号処理部13とを備える。GPSアンテナ11は、GPS衛星400から電波401を受信する。GPS受信部12は、受信信号に受信処理を行って受信データを取得する。GPS信号処理部13は、受信データに基づく演算により位置情報を取得する。位置情報には、携帯電話端末100の緯度経度高度情報と、位置情報を取得した取得時刻とが含まれる。
【0022】
次に、無線通信部2は、アンテナ21と、送信部22と、受信部23と、信号処理部24とを備える。アンテナ21は、無線基地局201から電波203を受信し、無線基地局201へ電波203を送信する。送信部22は、信号処理部24からの送信データを変調して、送信信号をアンテナ21へ出力する。受信部23は、アンテナ21からの受信信号を復調して、受信データを信号処理部24へ出力する。信号処理部24は、所定の信号処理を行う。
【0023】
無線通信部2は、携帯電話端末100の電源が投入されると、周辺の複数の基地局201から受信される電波203の受信レベル測定を行う。無線通信部2は、複数の基地局201のうちから、最も良好に無線通信が可能な基地局201を選択して位置登録を行う。携帯電話端末100は、位置登録を行った基地局201を利用して無線通信を行う。なお、最も良好に無線通信が可能な基地局201は、一般に電波203の受信レベルが最も高い基地局である。
【0024】
無線通信部2は、その後も所定のタイミングで複数の基地局201から受信される電波203の受信レベルの測定を行い、最も良好に無線通信が可能な基地局201の更新を行う。これによって、無線通信部2は、常に良好な無線通信ができる基地局に対して位置登録を行う。
【0025】
次に、制御部3は、携帯電話端末100の機能を実行する。制御部3は、CPU(Central Processing Unit)に例示される。制御部3は、無線通信部2が受信する電波203を監視して、電波203に所定の変動が生じる度に、位置情報と基地局情報との組みである位置履歴情報を記憶部4へ記録する。制御部3は、位置情報取得部1から位置情報を取得する。また、制御部3は、無線通信部2から基地局情報を取得する。基地局情報は、無線通信部2が位置登録を行っている基地局201の情報である。基地局情報は、無線通信部2が位置登録を行っている基地局201の識別子とその基地局203から受信された電波203の受信レベルとを含む。
【0026】
電波203の所定の変動には、次の3つの場合が含まれる。第一に、電波203の受信レベルに所定の値以上の変動が発生した場合である。第二に、無線通信部2が位置登録を行っている基地局201が変更となった場合である。第三に、携帯電話端末100の電源が投入され、無線通信部2が複数の基地局201から最も良好に無線通信が可能な基地局201を選択して位置登録を行った場合である。これら3つの場合は、いずれも、携帯電話端末100の位置が移動したことが考えられる場合である。制御部3は、携帯電話端末100が移動したと考えられる電波203の所定の変動をトリガとして位置履歴情報を記録することにより、携帯電話端末100の移動に伴う位置の履歴を記録することができる。
【0027】
なお、制御部3は、位置情報取得部1が位置情報を取得できない場合、基地局情報のみを位置履歴情報として記憶部4へ記録する。位置情報取得部1が位置情報を取得できない場合とは、例えば、位置情報取得部1が電波401を受信できないために位置情報を算出することができない場合である。このとき、位置履歴情報は、位置情報が取得できなかったことが識別可能に記録されることが好ましい。
【0028】
次に、記憶部4は、携帯電話端末100の機能を実現するために必要となるコンピュータプログラムやデータを記憶する。記憶部4は、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリに例示される。記憶部4は、位置履歴情報テーブル41を備える。位置履歴情報テーブル41は、位置情報と基地局情報との組である位置履歴情報を記憶する。
【0029】
図3は、本実施形態における位置履歴情報テーブル41を示す図である。位置履歴情報テーブル41は、位置履歴情報として位置情報と基地局情報との組を時系列に記録している。位置情報は、前述の通り、携帯電話端末100の緯度経度高度情報と、位置情報を取得した取得時刻とが含まれる。基地局情報は、位置情報を取得した取得時刻において無線通信部2が位置登録を行っていた基地局201の識別子と、その基地局201から受信された電波203の受信レベルとを含む。なお、位置履歴情報テーブル41は、必ずしも位置履歴情報を時系列に記憶している必要はない。
【0030】
図3を参照すると、位置履歴情報テーブル41に記録された位置履歴情報には、基地局情報の値のみが記録されて位置情報の値が空欄となっているデータが存在する。これは、位置情報を取得した際に、位置情報取得部1が位置情報を取得できない状態にあったことを示している。このように、制御部3は、位置情報取得部1が位置情報を取得できない場合には、位置情報が取得できなかったことを識別可能にして位置履歴情報を記録する。なお、空欄ではなく、識別可能な任意のフラグを記録する方法でも良い。
【0031】
ここで、図4を用いて、携帯電話端末100の移動と位置履歴情報の記録内容との関係を説明する。図4は、本実施形態における携帯電話端末100の移動に伴う電波203及び電波401の受信状態の変化を説明する図である。
【0032】
まず、携帯電話端末100は、位置Aに存在する。携帯電話端末100は、位置Aにおいて、GPS衛星400からの電波401−1を受信可能である。例えば、携帯電話端末100が、位置Aにおいて電源を投入されたとする。制御部3は、電源の投入後に基地局201に対して位置登録が完了したことをトリガとして、電波401−1に基づく位置情報と、基地局201からの電波203−1に基づく基地局情報とを位置履歴情報として記録する。
【0033】
次に、携帯電話端末100が、位置Bへ移動する。携帯電話端末100は、基地局201から距離が離れる。基地局201からの電波203−2は、位置Aにおける電波203−1の場合よりも受信レベルが低下する。携帯電話端末100は、位置Bにおいて、GPS衛星400からの電波401−2を受信可能である。携帯電話端末100は、電波203−2の電波受信レベルの低下が所定の値以上であると、電波401−2に基づく位置情報と、基地局201からの電波203−2に基づく基地局情報とを位置履歴情報として記録する。この場合、基地局情報の電波の受信レベルは、位置Aに比べて低い値が記録される。
【0034】
次に、携帯電話端末100が位置Cへ移動する。位置Cは、建物500の屋内である。基地局201からの電波203−3は、位置Bにおける電波203−2より受信レベルがさらに低下する。また、位置Cにおいて、携帯電話端末100は、GPS衛星からの電波401−3を受信できない。携帯電話端末100は、電波203−3の電波受信レベルの低下が所定の値以上であると位置履歴情報を記録する。このとき、位置情報取得部1は、電波401−3を受信不可であり位置情報を算出できない。そのため、位置履歴情報テーブル41には、位置情報の取得時刻と基地局201からの電波203−2に基づく基地局情報とが記録され、緯度経度高度情報が空欄となる。この場合、基地局情報の電波の受信レベルは、位置Aに比べて低い値が記録される。
【0035】
また、例えば、建物500の屋内に他の基地局201が設けられていたとする。携帯電話端末100は、屋内の基地局201のほうが良好な通信を行えると判定した場合には、位置登録先を屋内の基地局201へ変更する。携帯電話端末100は、位置登録先の基地局201の変更をトリガとして、位置履歴情報の記録を行う。このとき、位置情報取得部1は、電波401−3を受信不可であり位置情報を算出できない。そのため、位置履歴情報テーブル41には、位置情報の取得時刻と屋内の基地局201からの電波203に基づく基地局情報とが記録され、緯度経度高度情報が空欄となる。
【0036】
このように、携帯電話端末100が移動したと考えられる電波203の所定の変動をトリガとして位置履歴情報を記録することにより、携帯電話端末100の移動に応じた位置の履歴を記録することができる。また、GPS衛星400からの電波401を受信することができない場合には基地局情報のみを記録することにより、電波401が受信できない場所にいたことを履歴として残すことができる。以上が、本実施形態における位置検索システムの構成の説明である。
【0037】
[動作の説明]
次に、本実施形態における位置検索システムの動作の説明を行う。図5は、本実施形態における位置検索システムにおいて、携帯電話端末100が位置履歴情報を記録する動作を示すフローチャートである。
【0038】
まず、携帯電話端末100の電源が投入される(ステップS10)。無線通信部2は、基地局201の電波203を受信する。無線通信部2は、最も良好に通信を行うことが可能な基地局201を選択する。無線通信部2は、その基地局201へ位置登録を完了する(ステップS20)。
【0039】
制御部3は、無線通信部2による位置登録の完了を検知する。制御部3は、位置登録の完了をトリガとして、位置取得1から位置情報を取得すると共に、無線通信部2から基地局情報を取得する(ステップS30)。制御部3は、位置情報と基地局情報の組を位置履歴情報として記憶部4の位置履歴情報テーブル41へ記録する(ステップS40)。
【0040】
その後、制御部3は、無線通信部2における電波203の受信レベルを監視する(ステップS50)。制御部3は、電波203の受信レベルに所定の変動が発生したかを判定する(ステップS60)。受信レベルに所定の変動が発生した場合(ステップS60のYes)、フローは、ステップS30へ戻る。この場合、制御部3は、位置情報と基地局情報の取得へ移る。一方、受信レベルに所定の変動が発生していない場合(ステップS60のNo)、フローは、ステップS70へ進む。
【0041】
制御部3は、無線通信部2による位置登録先の無線基地局201に変更が発生したか判定する(ステップS70)。位置登録先の無線基地局201に変更が発生した場合(ステップS70のYes)、フローは、ステップS30へ戻る。この場合、制御部3は、位置情報と基地局情報の取得へ移る。一方、位置登録先の無線基地局201に変更が発生していない場合(ステップS70のNo)、フローは、ステップS50へ戻る。この場合、制御部3は、電波203の受信レベルの監視を継続する。
【0042】
なお、ステップS60とステップS70とは順序を問わない。また、制御部3により位置履歴情報を記録するトリガは、上述以外に次のような条件がくわえられても良い。一つは、携帯電話端末100のユーザによる命令の入力が行われた場合である。もう一つは、位置検索装置300や無線通信ネットワーク200の運用者等により外部から命令の入力行われた場合である。
【0043】
上述の動作フローにおいて、携帯電話端末100の電源が切られた場合には、本フローチャートによる動作は終了する。そして、再び電源が投入されるとステップS10から再開する。携帯電話端末100の電源が切られたとしても、記憶部4の位置履歴情報テーブル41に記録された位置履歴情報は保持される。携帯電話端末100の電源再投入後は、さらに位置履歴情報が位置履歴情報テーブル41に追加されていく。
【0044】
次に、本実施形態における位置検索装置300が携帯電話端末100から位置履歴情報の時系列データを取得する動作を説明する。図6は、本実施形態における位置検索装置300が携帯電話端末100の位置を取得する動作を示すフローチャートである。
【0045】
まず、位置検索装置300は、無線通信ネットワーク200を介して位置取得要求を携帯電話端末100へ送信する(ステップS100)。携帯電話端末100は、位置取得要求を受信する。携帯電話端末100の制御部3は、位置取得要求を入力すると、位置情報取得部1がGPSによる位置情報を取得可能であるかを判定する(ステップS110)。
【0046】
GPSによる位置情報を取得可能である場合(ステップS110のYes)、制御部3は、位置情報取得部1から位置情報を取得する(ステップS120)。制御部3は、無線通信ネットワーク200を介して位置情報を位置検索装置300へ送信する(ステップS130)。GPSによる位置情報が取得可能な場合、現在の位置情報を応答することが、最も正確に携帯電話端末100の位置を示すことができるからである。位置検索装置300は、位置情報を受信すると、位置情報に含まれる緯度経度高度情報に基づいて、携帯電話端末100の位置を視認可能に表示を行う(ステップS140)。視認可能に表示するとは、例えば、位置検索装置が緯度経度高度情報に対応する位置を表示可能な地図データを備えて、地図上で位置情報に対応する位置に目印をつけるといった具合である。
【0047】
一方、GPSによる位置情報を取得可能でない場合(ステップS110のNo)、制御部3は、記憶部4の位置履歴情報テーブル41から位置履歴情報を取得して、位置検索装置300へ送信する(ステップS150)。このとき、制御部3は、位置履歴情報を時系列に並べた時系列データとして送信する。なお、位置履歴情報は、位置履歴情報テーブル41に記録された時点で時系列であっても良いし、制御部3が位置履歴情報を時系列に並び替えて送信しても良い。また、位置検索装置300側で時系列に並び替えられても良い。位置検索装置300は、位置履歴情報の時系列データを受信すると、位置履歴情報の時系列データに基づいて、携帯電話端末100の移動履歴を視認可能に表示を行う(ステップS160)。これにより、携帯電話端末100の現在の正確な位置を取得できなかったとしても、表示される移動履歴が携帯電話端末100の現在の位置を特定するための情報となる。なお、制御部3は、位置検索装置300の要求に応じてではなく、位置履歴情報を取得する度に、位置検索装置へ送信しても良い。以上が、本実施形態における位置検索システムの動作の説明である。
【0048】
次に、具体的な位置履歴情報の時系列データを用いて、どのように携帯電話端末100の現在位置が特定されるか説明を行う。図7及び図8は、本実施形態における位置履歴情報の時系列データの一例を示す図である。
【0049】
図7では、携帯電話端末100が「2010.9.16 16:58」の直後に位置取得要求を受信したとする。図7を参照すると、「2010.9.16 15:30」を最後にGPSによる位置情報が取得できなくなっている。また、基地局情報の基地局識別子が、各位置履歴情報において変更されている。これにより、携帯電話端末100は、かなりの高速で移動を行っていることが把握できる。例えば、携帯電話端末100を紛失しているような場合を考える。「2010.9.16 15:30」に計測された位置情報は、新幹線のような高速で移動する列車の駅の位置を示しているとする。その後の高速な移動速度から携帯電話端末100が新幹線の車内に置き忘れられていることが推測できる。より具体的に、最後の位置情報の取得時刻や、各基地局識別子の基地局201の設置場所と受信レベルが計測された時刻に基づいて、実際の列車を特定することも可能である。
【0050】
次に、図8では、携帯電話端末100が「2010.9.16 16:58」の直後に位置取得要求を受信したとする。図8を参照すると、「2010.9.16 16:58」では、位置情報を取得することができていない。しかし、直前までは位置情報が取得できていたことが確認できる。また、位置情報の取得時刻がある程度の間隔を空けて取得されている。また、基地局情報の基地局識別子の変化があまり無い。このようなことから、携帯電話端末100が、ゆっくりとした移動速度で移動していることが推測できる。例えば、携帯電話端末100を紛失したような場合を考える。紛失したはずの携帯電話端末100が、繁華街をゆっくりとした速度で移動しているような場合、携帯電話端末100が盗難された可能性も考えられる。
【0051】
このように、本発明の位置特定システムでは、携帯電話端末100が位置情報と基地局情報との組を位置履歴情報として記録する。位置履歴情報では、位置情報が取得できなくとも基地局情報は記録される。そのため、携帯電話端末100の現在の位置情報が取得できないような場合でも、位置履歴情報の時系列データを補助的に用いることによって、携帯電話端末100の現在位置を特定することができる。
【0052】
例えば、位置履歴情報に記録された位置情報と基地局情報とにより、携帯端末100が、移動しているか移動していないか判定できる。移動している場合には、概ねの移動方向や移動速度を把握することが可能である。また、最後に位置情報を取得できた場所の特定とその時刻を特定できる。携帯電話端末100を紛失したユーザであれば、これらの情報を考慮して携帯電話端末100の紛失場所を特定できる。携帯電話端末100が、ビルの中、地下、トンネルの中といった場所に存在するような場合でも、位置登録した基地局の履歴から概ねの位置を特定することが可能となる。このように、携帯電話端末100の紛失時の位置特定や緊急通報時の位置情報連絡に効果を発揮する。
【0053】
また、本発明の位置特定システムでは、携帯電話端末100に移動があったと考えられる場合をトリガとして位置履歴情報を記録する。そのため、一定間隔で位置情報を取得する場合と比較して、電力消費を抑えることができる。また、GPS信号の受信タイミングを計るために特別な回路を追加する必要がない。
【0054】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0055】
1 位置情報取得部
2 無線通信部
3 制御部
4 記憶部
11 GPSアンテナ
12 GPS受信部
13 GPS信号処理部
21 アンテナ
22 送信部
23 受信部
24 信号処理部
41 位置履歴情報テーブル
100 携帯電話端末
200 無線ネットワーク
201 基地局
202 ネットワーク
203 203−1〜3 電波
300 位置検索装置
400 GPS衛星
401 401−1〜3 電波
500 建物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線基地局から電波を受信する無線通信部と、
前記無線基地局は、無線通信のために位置登録を行っている無線基地局であり、
GPS(全地球測位システム)により位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記位置情報と無線基地局情報との組である位置履歴情報を記憶する記憶部と、
前記無線基地局情報は、前記位置情報が取得された時点の前記無線基地局の情報であり、
前記電波の受信状態に所定の変動が生じる度に前記位置履歴情報を前記記憶部へ記録し、所定のタイミングで前記記憶部に記録された前記位置履歴情報を出力する制御部と、
を備える携帯情報端末。
【請求項2】
請求項1に記載の携帯情報端末であって、
前記制御部は、前記位置情報取得部が前記位置情報を取得できない場合には、前記位置情報が取得できなかったことを識別可能にして前記位置履歴情報を記録する
携帯情報端末。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の携帯情報端末であって、
前記位置情報は、自端末の位置情報と前記位置情報を取得した取得時刻とを含み、前記基地局情報は、前記取得時刻に前記無線通信部が位置登録を行っている前記無線基地局の識別子と前記無線基地局からの電波の受信レベルとを含む
携帯情報端末。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の携帯情報端末であって、
前記所定の変動は、前記電波の受信レベルに所定の値以上の変動が発生した場合を含む
携帯情報端末。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の携帯情報端末であって、
前記所定の変動は、前記携帯情報端末が電源を供給されることにより起動して前記無線通信部が前記無線基地局に位置登録を完了した場合、あるいは前記無線通信部が位置登録を行っている前記無線基地局を変更したときの少なくともいずれかを含む
携帯情報端末。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれかに記載の携帯情報端末であって、
前記制御部は、前記位置履歴情報を時系列に並べて出力する
携帯情報端末。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれかに記載の携帯情報端末であって、
前記制御部は、外部から要求を受けると前記位置履歴情報を出力する
携帯情報端末。
【請求項8】
請求項7に記載の携帯情報端末であって、
前記制御部は、前記要求を受信したときに、前記位置情報取得部が前記位置情報を取得可能であるときは前記位置情報を出力し、前記位置情報取得部が前記位置情報を取得不可能であるときは前記位置履歴情報を出力する
携帯情報端末。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれかに記載の携帯情報端末と、
前記携帯情報端末から前記位置履歴情報を取得して、前記位置履歴情報に基づいて前記携帯情報端末の位置の履歴を視認可能に表示する位置検索装置と
を備える位置検索システム。
【請求項10】
無線基地局から電波を受信するステップと、
前記無線基地局は、無線通信のために位置登録を行っている無線基地局であり、
GPS(全地球測位システム)により位置情報を取得するステップと、
前記位置情報と無線基地局情報との組である位置履歴情報を記憶するステップと、
前記無線基地局情報は、前記位置情報が取得された時点の前記無線基地局の情報であり、
前記電波の受信状態に所定の変動が生じる度に前記位置履歴情報を前記記憶部へ記録するステップと、
所定のタイミングで前記記憶部に記録された前記位置履歴情報を出力するステップと、
前記携帯情報端末から前記位置履歴情報を取得するステップと、
前記位置履歴情報に基づいて前記携帯情報端末の位置の履歴を視認可能に表示するステップと
を備える位置検索方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−134795(P2012−134795A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285612(P2010−285612)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000197366)NECアクセステクニカ株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】