説明

位置決めリング

【課題】容易に着脱することができる位置決めリングを提供する。
【解決手段】軸方向に所定長さを有する管状のものであり、その一端部は一方の管に外嵌し他端部は他方の管に外嵌して、双方の管1a、1bの中心軸を略合致させて保持する位置決めリング200であって、前記一端部及び他端部に、この位置決めリングを形成する壁体の厚み方向に貫通する切欠をそれぞれ設けるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1対の管の中心軸を合致させて保持する位置決めリングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
いわゆるフランジ継手とは、管の端部に設けたフランジ部同士を結合することによって管同士を接続するものであるが、その際、対向するフランジ部同士(管同士)の中心軸を合致させる必要がある。その時、例えば、円筒状の位置決めリングを利用する(特許文献1参照)。
この位置決めリングは、その一端部が一方の管(又はフランジ)に、その他端部が他方の管(又はフランジ)にそれぞれガタ無く外嵌することによって、これら管の中心軸を合致させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−286325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、この構成であると、位置決めリングを脱着するときに、管を位置決めリングに対して軸方向に相対的に動かす必要があり、例えば、ガスパネルのように多数の管が縦横に結合されていて、管を軸方向に動かしにくい場合に、位置決めリングの脱着が困難となる場合がある。
特に取り外し時、管は組み立て状態にあって他の部位が固定され動かせない場合が多いため、前記不具合が顕著となる。
【0005】
そこで、本発明は上記の問題を解決すべく、容易に着脱することができる位置決めリングを提供することをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明に係る位置決めリングは、軸方向に所定長さを有する管状のものであり、その一端部が一方の管に外嵌し、他端部が他方の管に外嵌して、双方の管の中心軸を略合致させて保持する位置決めリングであって、
前記一端部及び他端部に、この位置決めリングを形成する壁体の厚み方向に貫通する切欠をそれぞれ設けたことを特徴とする。
【0007】
中心軸を確実に合致させるためには、前記切欠の軸方向からみた時の中心角が180度未満となるようにしたものが好ましい。
【0008】
前記一端部の切欠と前記他端部の切欠とが連続しているものであれば、管同士を離合させることなく、位置決めリングを容易に着脱することができる。又、前記一端部の切欠と前記他端部の切欠とが不連続であって、その間に所定幅の残存部を形成する等としてもよい。
【0009】
前記一端部と他端部との間に、軸と直交するように円環板状のガスケットを一体的に取り付けているものとしてもよい。このようなものであれば、管同士を離合させることなく、位置決めリング及びガスケットを同時にかつ容易に着脱することができる。
【0010】
弾性変形するものであれば容易に着脱でき、かつ、繰り返し使用することができるので好ましい。
【0011】
このような位置決めリングを用いた流体供給装置であれば、コンパクトにでき、管を容易に取り付けたり、取り外したりすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、切欠という簡単な構成の追加だけで、拡開させた切欠から管を径方向に通過させることができるので、1対の管同士を軸方向に離合させることなく、又は僅かに離合させるだけで、位置決めリングを容易に着脱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態における位置決めリングの全体斜視図。
【図2】同実施形態における位置決めリングで管を保持した状態を示す斜視図。
【図3】第2の実施形態における位置決めリングの全体斜視図。
【図4】第3の実施形態における位置決めリングで管を保持した状態を示す縦断面図。
【図5】第3の実施形態において用いる結合リングの部分横断面図。
【図6】第3の実施形態における位置決めリングの変形例の全体斜視図。
【図7】第3の実施形態における位置決めリングを用いた流体供給装置の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0015】
<第1実施形態>
本実施形態に係る位置決めリング200は、1対の管1a、1bの中心軸を合致させて保持するものであり、図1に示すように、切欠202a、202bが形成された弾性変形する保持部201を具備している。
保持部201は、軸方向からみてC型の部分円筒形状をなすものであり、その内径を後述する管1a、1bの端部外径寸法と一致させてある。また、その軸方向寸法は管1a、1bの中心軸を合致させて保持することができるだけの長さにしてある。
切欠202a、202bは、保持部201の厚み方向に貫通する溝であり、一端部の切欠202aと他端部の切欠202bとが連続するように、軸方向に直線状に延びている。この切欠202a、202bの幅、すなわち、軸方向からみたときの中心角は、ここでは90度である。
【0016】
次に、本実施形態に係る位置決めリング200の取り付け及び取り外し作業について説明する。
取り付けの際は、直列に並べた管1a、1bに、位置決めリング200を切欠202a、202bから径方向に押し付けて、弾性変形させてはめ込む。この結果、管1a、1b同士の中心軸が合致して保持される。この他の方法として、例えば、切欠202a、202bの幅を拡げながら、位置決めリング200を管1a、1bに径方向からはめ込む方法がある。
取り外しの際は、位置決めリング200を径方向に引っ張り、弾性変形させて取り外す。この他の方法として、例えば、切欠202a、202bの幅を拡げながら、位置決めリング200を径方向に引っ張り、管1a、1bから取り外す方法がある。
【0017】
このように構成したものであれば、位置決めリング200に極めて単純な形状の切欠202a、202bを設けるだけで、位置決めリング200の複雑化を招くことなく、かつ、管1a、1b同士を離合させることなく位置決めリング200を容易に着脱することができる。なお、従来と同様に、管1a、1b同士を軸方向に離合して着脱することも可能である。
【0018】
<第2実施形態>
本実施形態に係る位置決めリング200は、図3に示すように、一端部の切欠202aと他端部の切欠202bとが不連続に形成された弾性変形する保持部201を具備し、更に、残存部203とを備えている。
残存部203は、一端部の切欠202aと他端部の切欠202bとの間に形成されている所定幅の円弧部材である。残存部203の幅は、ここでは、保持部201の幅に比べて十分に小さく、かつ、管1a、1b同士に許容された軸方向の離間距離よりも小さいものである。
保持部201には、ここでは、保持部201をより拡開させやすくするために、残存部203を周方向に延長するような溝状の切込部201aが設けられている。
このように構成したものであれば、管1a、1b同士を軸方向に僅かに離合させる必要はあるものの、その他は第1実施形態と同様であり、位置決めリング200を容易に着脱できるという効果を奏しうる。
【0019】
<第3実施形態>
【0020】
本実施形態に係る位置決めリング200は、フランジ継手300の構成部品であり、フランジ部2a、2bを端部に有する1対の管1a、1bの中心軸を合致させて保持するためのものである。このフランジ継手300は、管1a、1bの端部に設けたフランジ部2a、2b同士を結合することによって、管1a、1b同士を接続するものであり、ガスケット7と、位置決めリング200と、結合リング100とを備えるものである。まず、管1a、1bについて説明する。
【0021】
管1a、1bは、図5等に示すように、管本体11a、11bと、管本体11a、11bの端部に設けられた円板状のフランジ部2a,2bとを具備し、フランジ部2a,2bの先端面同士を対向させて結合されるものである。このフランジ部2a,2bには、その先端面(以下対向面とも言う)に、閉じた円環状の突起5a,5bが設けられており、その裏面には、先端へ向かうにつれ径が大きくなる傾斜面3a,3bが形成されている。更に先端部の外周面には、段部4a、4bが設けられている。
【0022】
前記管1a、1b同士を結合する場合はフランジ部2a,2bの対向面の間に等厚円環板状をなすガスケット7を挟み込む。又、この時、対向させた各フランジ部2a、2bの段部4a、4bに位置決めリング200をガタなく外嵌させる。更に、対向させたフランジ部2a,2bに結合リング100を外嵌させてこれらを緊締結合する。以下に各部を詳述する。
【0023】
前記ガスケット7は、その内径が管1a、1bの内径寸法と一致し、外径が段部4a、4bの外径寸法と一致するものであり、前記突起5a,5bが食い込んで気密性を担保するものである。
位置決めリング200は、第1実施形態と同様の形状であり、その内径が段部4a、4bの外径寸法と一致する。
【0024】
結合リング100は、図5に示すように、隣り合うもの同士が互いに回転可能に連結された複数の(ここでは3つ)ユニット部材50a〜50cと、両端のユニット部材50a、50cを連結するための締結具52とを備えている。
【0025】
ユニット部材50a〜50cは、図5に示すように、ここでは軸方向から見て円環を3分割した形状を概略有するものである。ユニット部材50a〜50cの内周面には、対向した1対のフランジ部2a,2bの外周縁部に外嵌させることができる幅を有した凹溝51が、周方向に延びるように設けられており、この凹溝51の側面には、フランジ部2a、2b裏面の傾斜面3a,3bに対応した傾斜面51aが形成されている。
【0026】
締結具52は、図5に示すように、例えば、基端部がユニット部材50cに取り付けられたボルト部材52aとナット部材52bとを具備したものである。ボルト部材52aの先端部をユニット部材50aのボルト受け部54に嵌め込み、ナット部材52bを螺合させることによって両端のユニット部材50a、50cを連結するとともに、結合リング100の内周径を拡縮することができる。
【0027】
次に、本実施形態に係る位置決めリング200を用いて管1a、1bを直列結合及び分離する方法について説明する。
【0028】
結合の際には、まず、位置決めリング200の一端部を一方の管1aの段部4aに外嵌させる。次に位置決めリング200の他端部にガスケット7及び他方の段部4bを順次軸方向からはめ込む。
次に、両端が連結されていない開放状態の結合リング100の凹溝51を、対向させたフランジ部2a,2bの外周縁部に外嵌させる。そして、締結具52を締め付け、結合リング100の内周径を小さくしていくと、図4に示すように、凹溝51の側面に形成した傾斜面51aが前記フランジ部2a、2bの裏面に形成した傾斜面3a、3bを押圧する。そして、その際に発生する軸方向の分力によって、フランジ部2a、2b同士が押し付けられ、突起5a,5bがガスケット7の両面に食い込んで、十分な気密性を保って管1a、1b同士が接続される。
【0029】
分離の際には、まず、締結具52を緩め、結合リング100を取り外す。そして、第1実施形態と同様に、管1a、1b同士を離間させることなく位置決めリング200を径方向に取り外す。
【0030】
なお、第1実施形態又は第2実施形態に係る位置決めリング200を、第3実施形態におけるフランジ継手300の構成部品として用いることももちろん可能である。
【0031】
加えて言えば、第3実施形態におけるフランジ継手300を用いて流体供給装置を構成してもよい。その流体供給装置の構成は、例えば、平行に設けた3本の縦流体ラインたるガス供給ラインL1と、これらガス供給ラインL1間に設けられた1つの横流体ライン、ここでは各ガス供給ラインL1にクリーニングガスを供給するクリーニングガス供給ラインL2とを具備したものである。
【0032】
縦流体ラインL1はマスフローコントローラX11等の流体機器を備えるものであり、ガス供給ラインとして機能するように構成されている。横流体ラインL2はクリーニングガス供給ラインとして機能するように構成されている。なお、ここでは全ての管接続にフランジ継手300を用いるものとしたが、これに限られず、少なくとも1つの管接続にフランジ継手300を用いたものであればよい。
【0033】
なお、図7中、符号L1はガス供給ライン、符号L2はクリーニングガス供給ライン、符号X11はマスフローコントローラ、符号X12、X13はバルブや圧力センサ、符号300はフランジ継手、符号X4、X4’、X4”は配管を示している。
【0034】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。例えば、切欠は軸方向に延びるものとしたが、斜めに延びるものであってもよい。切欠は軸方向からみて中心角が180度未満であり、保持部がC型をなす部分円筒形状としたが、保持部がばねのような螺旋形状であってもよい。
【0035】
また、保持部は実質的に弾性変形しない素材で形成してもよい。この場合、径方向に取り外す際は塑性変形させる必要がある。
【0036】
残存部は、他の部分と比べ破断が容易な形状又は素材等からなるようにしてもよい。この場合、管同士を離間させることなく径方向に取り外す際には、残存部を破断させることもできる。
また、残存部の一方の付け根を保持部と回転可能に連結し、他方の付け根を取り外し可能として、着脱時に残存部を拡開できるようにしてもよい。
このようなものであれば、管同士を離間させることなく、径方向に位置決めリングを取り外すことができる。また、残存部の幅は保持部の幅以下のものであればよい。
【0037】
ガスケットは、図6に示すように、位置決めリングの一端部と他端部との間に一体的に取り付けたものとしてもよく、第2実施形態と同様に形成された残存部等に取り付けられていてもよい。要は、ガスケットの位置によって分割された保持部が、1対の管同士の中心軸を合致させて保持することができる幅を、それぞれ有していればよい。
ここで、第3実施形態では、径方向から位置決めリングを取り付けようとすると、取り付け作業中に管の間からガスケットが脱落し、作業が困難となる場合がある。しかし、ガスケットを一体的に取り付けた位置決めリングであれば、ガスケットが脱落しないように保持しておく必要がないので、第1実施形態と同様に、管同士を離合させることなく径方向及び軸方向のいずれからでも位置決めリングを容易に着脱できる。さらに、位置決めリングを着脱する工程のみで、位置決めリング及びガスケットの着脱ができる。
また、ガスケットの外周面は、保持部内周面の周方向の少なくともいずれかの一端から一定距離接着されていないものであれば、切欠を拡げるように弾性変形させやすくなるので好ましい。
【0038】
その他、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0039】
1a、1b・・・管
2a、2b・・・フランジ部
3a、3b・・・フランジ部の裏面に形成した傾斜面
4a、4b・・・段部
5a、5b・・・突起
7・・・ガスケット
11a、11b・・・管本体
50a、50b、50c・・・ユニット部材
51・・・凹溝
51a・・・凹溝の側面に形成した傾斜面
52・・・締結具
52a・・・ボルト部材
52b・・・ナット部材
53a、53b・・・軸
54・・・ボルト受け部
100・・・結合リング
200・・・位置決めリング
201・・・保持部
201a・・・切込部
202a、202b・・・切欠
203・・・残存部
300・・・フランジ継手



【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に所定長さを有する管状のものであり、その一端部が一方の管に外嵌し、他端部が他方の管に外嵌して、双方の管の中心軸を略合致させて保持する位置決めリングであって、
前記一端部及び他端部に、この位置決めリングを形成する壁体の厚み方向に貫通する切欠をそれぞれ設けたことを特徴とする位置決めリング。
【請求項2】
前記切欠の軸方向からみた時の中心角が180度未満となるように構成している請求項1記載の位置決めリング。
【請求項3】
前記一端部の切欠と前記他端部の切欠とが連続している請求項1又は2記載の位置決めリング。
【請求項4】
前記一端部の切欠と前記他端部の切欠とが不連続であって、その間に所定幅の残存部を形成している請求項1,2又は3記載の位置決めリング。
【請求項5】
前記一端部と他端部との間に、軸と直交するように円環板状のガスケットを一体的に取り付けている請求項1,2,3又は4記載の位置決めリング。
【請求項6】
弾性変形するものである請求項1,2,3,4又は5記載の位置決めリング。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5又は6記載の位置決めリングを用いた流体供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−117468(P2011−117468A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−272735(P2009−272735)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(594165734)イハラサイエンス株式会社 (40)
【出願人】(000127961)株式会社堀場エステック (88)
【Fターム(参考)】