説明

位置決め具

【課題】積み重ねられる複数の物品を、一種類の係合部材によって位置決めさせるとともに、比較的簡単な構成で強度を高めることが可能な位置決め具を提供する。
【解決手段】物品を積み重ねる際、互いに係合することで水平方向への位置ずれを防ぐ上側係合部材11及び下側係合部材12を備える。上側係合部材11及び下側係合部材12は、互いに同一形状であり、対称軸を中心として線対称の第一ベース部16及び第二ベース部17と、第一ベース部16に形成された複数の第一凸条20及び第一凹部21と、第二ベース部17に形成された第二凸条22及び第二凹部23とを具備する。第一凸条20及び第二凸条22は、夫々第二凹部23及び第一凹部21に嵌合可能であり、第一凸条20の延長線と第二凹部23の延長線との交点、及び第一凹部21の延長線と第二凸条22の延長線との交点が、いずれも対称軸上に位置するように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置決め具に関し、特に、複数の物品を積み重ねる際、互いに係合することで水平方向への位置ずれを防ぐ位置決め具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
収容ケースやパレット等の物品を複数個積み重ねた場合に、下側の物品に対して上側の物品が水平方向に移動可能な状態で載置されていると、積み重ね状態が不安定となり、例えば上側物品が水平方向にずれて落下したり、下側物品または上側物品の表面に傷が付いたりする可能性がある。
【0003】
そこで、水平方向への位置ずれを防止するため、物品の上面四隅及び下面四隅に夫々係合部を設けるようにしたものが提案されている。これによれば、複数個の物品を積み重ねる際、上側に位置する物品の上側係合部(例えば円柱状の凸部)と、下側に位置する物品の下側係合部(例えば穴状の凹部)とを互いに係合させること、すなわち一方を係合部として作用させ、もう一方を被係合部として作用させることにより、下側物品に対する上側物品の位置ずれを防止することが可能になる。
【0004】
なお、上記の従来技術は、当業者にとってなされている一般的事項であり、出願人は、この従来技術を特定するに適した文献を、特に知見していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の位置決め具によれば、上側係合部及び下側係合部における係合部分の形状が互いに異なる(例えば一方が凸で他方が凹となる)ことから、少なくとも二種類の係合部材を製造しなければならず、ひいては二種類の部材に夫々対応した二種類の製造型を用いる必要があった。また、製造する際に、異種の係合部材が混在したり、間違った位置に取り付けたりすることがないよう、管理上及び製造上、十分な注意が必要とされていた。
【0006】
さらに、上側係合部及び下側係合部の一方に円柱状の凸部を形成し、他方に凹部を形成するものにおいては、上側係合部を下側係合部に係合させる際、凸部と凹部とが互いに合致していないと、上側の物品の荷重が直接凸部に加わることになり、凸部を破損させる虞があった。特に、上側係合部に凸部を形成するものにおいては、物品を単独で設置する際に、物品の全荷重が凸部に加わることとなり、凸部の破損が助長されたり、物品の設置が不安定になったりする虞があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記の実状に鑑み、積み重ねられる複数の物品を、一種類の係合部材によって位置決めさせるとともに、比較的簡単な構成で強度を高めることが可能な位置決め具の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる位置決め具は、「物品を積み重ねる際、互いに対向する上側物品の下面と下側物品の上面とに夫々設けられ、互いに係合することで水平方向への位置ずれを防ぐ上側係合部材及び下側係合部材からなる位置決め具であって、
前記上側係合部材及び前記下側係合部材は、互いに同一形状を呈しており、
対称軸を中心として線対称の第一ベース部及び第二ベース部からなる板状のベース部材と、
前記第一ベース部の表面に形成され、所定の間隔で並設された複数の第一凸条、及び該各第一凸条の間に形成された複数の第一凹部と、
前記第二ベース部の表面に形成され、所定の間隔で並設され且つ前記第一凸条に対し垂直方向に形成された複数の第二凸条、及び該各第二凸条の間に形成された複数の第二凹部と
を具備し、
前記第一凸条及び前記第二凸条は、夫々前記第二凹部及び前記第一凹部に嵌合可能な形状を呈し、前記第一凸条の延長線と前記第二凹部の延長線との交点、及び前記第一凹部の延長線と前記第二凸条の延長線との交点が、何れも前記対称軸上に位置するように形成されている」ことを特徴とするものである。
【0009】
ここで、「物品」としては特に限定されるものではなく、積重ねることが可能なものであれば本発明の位置決め具を備えることが可能である。なお、表面にのみ化粧面が形成されている物品の場合には、順に積み重ねられる物品を一つ置きに裏返し、表面と表面、または裏面と裏面とを互いに対向させるように積み重ねることもあるが、この場合、裏返した物品については、表面(上側の面)が本発明の「下面」に相当し、裏面(底面)が本発明の「上面」に相当する。つまり、本発明の「上面」及び「下面」は物品の使用状態における上下関係を示しているのではなく、積み重ね状態での上下関係を示している。
【0010】
また、「ベース部材」は、第一凸条、第一凹部、第二凸条、及び第二凹部を形成するための基礎となる部分であり、その形状は、平面が線対称であれば特に限定されるものではない。なお、線対称な形状としては、長方形、正方形、二等辺三角形、台形、円形、V字形、及びL字形を例示することができる。
【0011】
さらに、上側係合部材及び下側係合部材を物品の下面及び上面に取付ける手段としては特に限定されるものではなく、例えばネジ等の取付部材によって固定状態に取付けてもよく、接着剤等によって貼着するようにしてもよい。また、別部材で構成した上側係合部材及び下側係合部材を物品に後付けするようにしてもよいが、物品の販売時に装着したり、物品と一体に形成したりすることも可能である。
【0012】
本発明の位置決め具によれば、互いに係合する下側係合部材及び上側係合部材を同一の部材から構成することが可能になる。詳しく説明すると、下側物品の上に上側物品を載置すると、下側物品の上面に設けられた下側係合部材の表面と上側物品の下面に設けられた上側係合部材の表面とが対向する。特に、上側係合部材及び下側係合部材を構成する板状のベース部材は、対称軸を中心として線対称の第一ベース部及び第二ベース部からなるため、上側係合部材の第一ベース部と下側係合部材の第二ベース部とが対向し、上側係合部材の第二ベース部と下側係合部材の第一ベース部とが対向する。なぜなら、上側係合部材は、上側物品の下面に対し対称軸を中心として天地を反転させた状態で取付けられるからである。
【0013】
そして、第一ベース部には、所定の間隔で並設された複数の第一凸条と第一凹部とが形成され、第二ベース部には、所定の間隔で並設された複数の第二凸条と第二凹部とが形成されており、第一凸条の延長線と第二凹部の延長線との交点、及び第一凹部の延長線と第二凸条の延長線との交点が、何れも対称軸上に位置するように配置されている。換言すれば、対称軸を中心として、第一凸条と第二凹部とが対称となり、且つ第一凹部と第二凸条とが対称となるように形成されている。また、第一凸条は第二凹部に嵌合可能な形状であり、第二凸条は第一凹部に嵌合可能な形状となっている。したがって、上側係合部材及び下側係合部材の表面側同士を対向させて重ねると、上側係合部材の第一凸条及び第二凸条が、夫々下側係合部材の第二凹部及び第一凹部に嵌挿され、下側係合部材の第一凸条及び第二凸条が、夫々上側係合部材の第二凹部及び第一凹部に嵌挿されることとなる。なお、第二凸条は第一凸条に対して垂直方向に形成されているため、上側係合部材の第一凸条及び第一凹部が下側係合部材の第二凹部及び第二凸条に対して長手方向に摺動すること、及び上側係合部材の第二凸条及び第二凹部が下側係合部材の第一凹部及び第一凸条に対して長手方向に摺動することを防止できる。
【0014】
このように、上側係合部材及び下側係合部材として同一形状の係合部材を用いても、それらの表面側同士を対向させることにより、互いに係合させることができ、ひいては下側物品に対する上側物品の位置ずれを防止することが可能になる。また、第一ベース部及び第二ベース部には、複数の第一凸条及び第二凸条が所定の間隔で形成されているため、位置決め具全体の強度を高めるとともに、突出部分の面積を比較的広くすることが可能になる。したがって、上側物品を単独で載置した場合でも上側係合部材に加わる荷重を分散することができ、上側係合部材の破損を抑制するとともに、物品を安定した状態で支持することが可能になる。
【0015】
本発明の位置決め具において、「前記ベース部材は、平面視略L字形の部材であり、
前記上側係合部材及び前記下側係合部材は、夫々前記上側物品における下面の四隅、及び前記下側物品における上面の四隅に配置される」構成とすることができる。
【0016】
本発明の位置決め具によれば、上側係合部材及び下側係合部材は、ベース部材が略L字形の部材であるため、略直方体形状の物品に取付ける際、表面側を外側に向け、角部に沿って配設することが可能である。換言すれば、ベース部材を角部に沿わせるように取付ければ、上側係合部材及び下側係合部材の配設方向が必然的に定められることとなり、ひいては各係合部材の向きを間違えることなく取付けることが可能になる。
【0017】
また、本発明の位置決め具において、「前記第一凸条及び前記第二凸条は、幅方向の寸法が先端側ほど細くなるテーパー状の形状を呈している」構成とすることができる。
【0018】
ところで、上側係合部材と下側係合部材とが係合する際、第一凸条は第二凹部に嵌合し第二凸条は第一凹部に嵌合することとなるが、この際、各凸条の外観形状が各凹部の内部形状に略一致していると、精度の高い嵌合わせが必要となる。特に上側係合部材と下側係合部材とを物品の四隅に設けるものでは、四つの位置決め具を同時に嵌合わせなければならず、積重ね作業における作業者の負担が大きくなることが懸念される。
【0019】
しかし、本発明の位置決め具によれば、第一凸条及び第二凸条はテーパー状に形成され、幅方向の寸法が先端側ほど細くなっているため、互いに対向する第一凸条と第二凹部、及び第二凸条と第一凹部とを嵌合させる際、それらの位置関係が相対的にずれていても、僅かであれば互いに係合させることが可能になる。
【発明の効果】
【0020】
このように、本発明の位置決め具によれば、積重ねられる複数の物品を、一種類の係合部材によって位置決めさせることが可能となり、ひいては設備費及び製造費の低廉化を図ることができるとともに、製造管理における負担を軽減することができる。また、複数の凸条によって位置決め具全体の強度を高めるとともに、突出部分の面積を比較的広くすることが可能になり、例えば物品を単独で載置した場合でも係合部材に加わる荷重を分散し、係合部材の破損を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態である位置決め具1、及びその位置決め具1を備える収容ケース2について、図1乃至図5に基づき説明する。図1は位置決め具1における係合部材の構成を示す斜視図であり、図2は係合部材の構成を示す平面図であり、図3は係合部材の係合状態を示す断面図であり、図4は収容ケース2の構成を示す斜視図であり、図5は図4の要部拡大図である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態の位置決め具1は、収容ケース2(図4参照)等の物品を積み重ねる際、互いに係合することで水平方向の位置ずれを防止する上側係合部材11及び下側係合部材12から構成されている。詳細は後述するが、上側係合部材11は上側に載置される物品の下面に取付けられ、一方、下側係合部材12は下側に配置される物品の上面に取付けられる。なお、上側係合部材11及び下側係合部材12の材質は特に限定されるものではないが、本例では合成樹脂によって一体成形されている。
【0023】
上側係合部材11及び下側係合部材12は、互いに同一の形状を呈しており、共通部品として用いられる。このため、以下においては、上側係合部材11及び下側係合部材12の構成を説明するにあたり、単に「係合部材13」と称することにする。係合部材13は、平面視略L字形の形状を呈するベース部材14と、ベース部材14の表面に形成された凹凸形成部18とを具備している。ベース部材14は板状の部材であり、図2に示すように、対称軸15を中心として線対称の第一ベース部16及び第二ベース部17から構成されている。第一ベース部16及び第二ベース部17は互いに垂直方向に延設されており、全体としてL字形のベース部材14を構成している。
【0024】
凹凸形成部18は、第一ベース部16の表面側から突出して形成され所定の間隔で並設された複数本(本例では二本)の第一凸条20と、第二ベース部17の表面側から突出して形成され所定の間隔で並設された複数本(本例では三本)の第二凸条22とを具備している。これらの第一凸条20及び第二凸条22は細長い略直方体の形状(拍子木の形状)であり、それらの大きさは全て等しくなっている。さらに詳しく説明すると、第一凸条20は第一ベース部16の長手方向に沿って配設され、第二凸条22は第二ベース部17の長手方向に沿って配設されており、第一凸条20の延設方向と第二凸条22の延設方向とは互いに垂直となっている。また、第一凸条20及び第二凸条22は所定の間隔で並設されていることから、第一凸条20及び第二凸条22が形成されていない第一ベース部16及び第二ベース部17の表面部分は溝形状の凹部(第一凹部21及び第二凹部23)となっている。
【0025】
特に、第一ベース部16では二本の第一凸条20の間及びその両側に第一凹部21が形成され、一端側から、第一凹部21、第一凸条20、第一凹部21、第一凸条20、及び第一凹部21の順で、第一凹部21及び第一凸条20が繰返し形成されている。一方、第二ベース部17では三本の第二凸条22の間に第二凹部23が形成され、一端側から、第二凸条22、第二凹部23、第二凸条22、第二凹部23、及び第二凸条22の順で、第二凸条22及び第二凹部23が繰返し形成されている。そして、第一凸条20の延長線20eと第二凹部23の延長線23eとの交点24、及び第一凹部21の延長線21eと第二凸条22の延長線22eとの交点25が、何れも対称軸15上に位置するように形成されている。換言すれば対称軸15を中心として第一凸条20と第二凹部23とが対称となり、第一凹部21と第二凸条22とが対称となるように形成されている。また、第一凸条20及び第二凸条22における夫々の幅方向の寸法は、第二凹部23及び第一凹部21における幅方向の寸法と略等しくなっており、図1に示すように、一方の係合部材13を下側係合部材12とし、もう一方の係合部材13を裏返して(対称軸15を中心として天地を反転させて)上側係合部材11とすると、上側係合部材11の第一凸条20を下側係合部材12の第二凹部23に嵌合させ、上側係合部材11の第二凸条22を下側係合部材12の第一凹部21に嵌合させることが可能になる(図3参照)。
【0026】
なお、図3に示すように、第一凸条20及び第二凸条22の側面には、テーパー部26が形成されており、第一凸条20及び第二凸条22における幅方向の寸法は先端側ほど細くなり、第一凹部21及び第二凹部23における幅方向の寸法は上部側ほど広くなっている。このため、互いに対向する上側係合部材11の第一凸条20と下側係合部材12の第二凹部23、及び上側係合部材11の第二凸条22と下側係合部材12の第一凹部21を係合させる際、テーパー部26によって案内することができ、ひいては夫々の位置関係が相対的にずれていても僅かであれば互いに嵌合させることが可能になる。
【0027】
図4及び図5は、本例の係合部材13を備えた収容ケース2を示している。この収容ケース2は、長方形の底板3及び周壁4からなり上面が開放された略直方体形状の樹脂容器であり、周壁4の上面縁部5及び下面縁部6、特にそれらの四隅であるコーナー部7には、係合部材13が貼着されている。なお、積み重ねられる収容ケース2の個数は特に制限されるものではなく、使用方法や使い勝手に応じて任意に変化させることが可能となっている。つまり、全ての収容ケース2に対して、係合部材13が上面縁部5及び下面縁部6に四個ずつ貼着されており、収容ケース2を何段積み重ねた場合でも、所定の収容ケース2とその上に載置された別の収容ケース2との間では、位置決め具1によって水平方向への位置ずれが防止されるようになっている。
【0028】
なお、収容ケース2は、全て同じ形状であり積み重ねる順序も特定されるものではないが、ここでは説明の便宜上、積み重ねた際に下側に配置される収容ケース2を下側ケース2aとし、その上に載置される収容ケース2を上側ケース2bとする。これによれば、下側ケース2aの上面縁部5に貼着された係合部材13が下側係合部材12となり、上側ケース2bの下面縁部6に貼着された係合部材13が上側係合部材11となる。ここで、上側ケース2bが本発明の上側物品に相当し、下側ケース2aが本発明の下側物品に相当する。
【0029】
図5に示すように下側係合部材12は、上面縁部5の各コーナー部7に取付けられており、上方から見て時計方向に第一ベース部16が位置し、反時計方向に第二ベース部17が位置するように配置されている。なお、下側係合部材12のベース部材14は略L字形の部材であるため、上面縁部5のコーナー部7に沿って配設することが可能である。換言すれば、ベース部材14をコーナー部7に沿わせるように貼着すれば、下側係合部材12の配設方向が必然的に定められることとなり、ひいては下側係合部材12の向きを間違えることなく貼着することが可能となる。
【0030】
一方、上側係合部材11は、下面縁部6の各コーナー部7に取付けられており、上方から見て時計方向に第二ベース部17が位置し、反時計方向に第一ベース部16が位置するように配置されている。つまり、上側係合部材11は、天地を反転させた状態で下面縁部6に貼着されているため、第一ベース部16及び第二ベース部17の配置が互いに逆となり、上側係合部材11の第一ベース部16と下側係合部材12の第二ベース部17とが対向し、上側係合部材11の第二ベース部17と下側係合部材12の第一ベース部16とが対向するようになる。そして、上側係合部材11及び下側係合部材12の表面側同士を重ねた際、上側係合部材11の第一凸条20及び第二凸条22が、夫々下側係合部材12の第二凹部23及び第一凹部21に嵌挿され、下側係合部材12の第一凸条20及び第二凸条22が、夫々上側係合部材11の第二凹部23及び第一凹部21に嵌挿されることとなる。なお、第一凸条20と第二凸条22とは互いに垂直方向に延設されているため、上側係合部材11の第一凸条20及び第一凹部21が下側係合部材12の第二凹部23及び第二凸条22に対して長手方向に摺動すること、及び上側係合部材11の第二凸条22及び第二凹部23が下側係合部材12の第一凹部21及び第一凸条20に対して長手方向に摺動することが防止される。すなわち、凸条と凹部との組合せが一組だけの場合には長手方向に摺動する可能性があるが、凸条と凹部との組合せを二組設け、且つそれらの摺動方向を互いに垂直方向とすることによって、夫々の長手方向への摺動を規制し合うことができ、ひいては、水平方向へのずれを全方位にわたって防止することが可能となる。
【0031】
このように、本実施形態の位置決め具1によれば、上側係合部材11及び下側係合部材12として同一形状の係合部材13を用いることができるため、設備費及び製造費の低廉化を図ることができるとともに、製造管理における負担を軽減することが可能となる。
【0032】
また、本実施形態の位置決め具1によれば、第一ベース部16及び第二ベース部17には、複数の第一凸条20及び第二凸条22が所定の間隔で形成されているため、係合部材13全体の強度を高めるとともに、突出部分の面積を比較的広くすることができる。したがって、上側ケース2bを単独で載置した場合でも上側係合部材11に加わる荷重を分散することが可能となり、上側係合部材11の破損を抑制するとともに、収容ケース2を安定した状態で支持することが可能になる。
【0033】
また、本実施形態の位置決め具1によれば、係合部材13のベース部材14の形状を略L字形としたことにより、係合部材13を略直方体形状の収容ケース2に取付ける際、係合部材13の配設方向が必然的に定められることになり、ひいては下側係合部材12が間違った向きに取付けられてしまうことを防止できる。
【0034】
さらに、本実施形態の位置決め具1によれば、第一凸条20及び第二凸条22はテーパー状に形成され、幅方向の寸法が先端側ほど細くなっているため、互いに対向する第一凸条20と第二凹部23、及び第二凸条22と第一凹部21とを嵌合させる際、それらの位置関係が相対的にずれていても、互いに係合させることが可能である。したがって、係合部材13を複数備えた場合でも、全ての係合部材13を比較的容易に係合させることができる。
【0035】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0036】
すなわち、上記実施形態では、係合部材13を収容ケース2に取付けるもの、すなわち収容ケース2を物品とするものを示したが、物品の種類は特に限定されるものではなく、例えば図6に示すように、パレット30に取付けるようにしてもよい。なお、このパレット30は周知のものであり、例えば所定の間隔で並設された複数枚の上横板31と、上横板31の底面に固定されるとともに上横板31に対して垂直方向に架設された複数枚の上縦板32と、ブロック状のスペーサ33を介して上縦板32と並行に設けられた下縦板34とを具備して構成することができる。そして、上横板31の上面と下縦板34の下面とに、夫々係合部材13を配設するようにすれば、複数枚のパレット30を積み重ねる際に、上下の係合部材13同士(すなわち上側係合部材11と下側係合部材12)を互いに係合させ、水平方向への位置ずれを防止することが可能になる。
【0037】
また、上記実施形態では、夫々の物品(収容ケース2またはパレット30)の上面及び下面に係合部材13を取付けるものを示したが、物品の積み重ね個数が二個の場合には、下側の物品の上面及び上側の物品の下面にのみ係合部材13を取付けるようにしてもよい。具体的には、図7に示すように、段ボール箱40の積み重ね個数が2段に制限されている場合には、下側に配置する下側段ボール箱40aの上面42の四隅に下側係合部材12を取付け、上側に載置される上側段ボール40bの下面41の四隅に上側係合部材11を取付ければよく、上側段ボール40bの上面42、及び下側段ボール箱40aの下面41には係合部材を取付けなくてもよい。このように構成した場合には、段ボール箱40を積み重ねる際の上下関係が特定されるものの、係合部材13の必要個数が半分になるため、一層安価に構成することが可能になる。
【0038】
さらに、上記実施形態では、複数の第一凸条20及び複数の第二凸条22を夫々第一ベース部16及び第二ベース部17の長手方向に沿って形成するものを示したが、図8及び図9に示す係合部材50のように、複数の第一凸条60を第二ベース部52の長手方向と並行に形成し、複数の第二凸条62を第一ベース部51の長手方向と並行に形成してもよい。なお、この場合、ベース部材53は、上記実施形態におけるベース部材14と同じ形状であり、第一ベース部51と第二ベース部52とから構成されている。そして、第一ベース部51には、複数(本例では三本)の第一凸条60が所定の間隔で第一ベース部51を横切るように形成されており、各第一凸条60の間に第一凹部61が形成されている。また、第二ベース部52では、複数(本例では二本)の第二凸条62が所定の間隔で第二ベース部52を横切るように形成されており、一対の第二凸条62の間及びその両側に第二凹部63が形成されている。
【0039】
また、この係合部材50では、図9に示すように、第一凸条60の延長線60eと第二凹部63の延長線63eとの交点64、及び第一凹部61の延長線61eと第二凸条62の延長線62eとの交点65が、何れも対称軸15上に位置している。換言すれば対称軸15を中心として第一凸条60と第二凹部63とが対称となり、第一凹部61と第二凸条62とが対称となるように形成されている。また、第一凸条60及び第二凸条62の幅方向の寸法は、第一凹部61及び第二凹部63の幅方向の寸法と略等しくなっており、互いに嵌合させることが可能な形状となっている。したがって、このような係合部材50を採用した場合でも、上側係合部材及び下側係合部材として同一形状の係合部材50を用いることが可能となり、下側物品に対する上側物品の位置ずれを防止することが可能になる。また、複数の第一凸条60及び第二凸条62によって係合部材50全体の強度を高めるとともに、係合部材50に加わる荷重を分散し、係合部材50の破損を抑制することが可能になる。
【0040】
さらに、上記実施形態では、ベース部材として平面視略L字形の形状を呈するものを示したが、対称軸を中心として対称となる形状であればよく、例えば平面視が長方形や三角形の形状となるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】位置決め具における係合部材の構成を示す斜視図である。
【図2】係合部材の構成を示す平面図である。
【図3】係合部材の係合状態を示す断面図である。
【図4】位置決め具が取付けられた収容ケースの構成を示す斜視図である。
【図5】収容ケースの要部の構成を示す拡大斜視図である。
【図6】パレットに位置決め具を備えた場合を示す斜視図である。
【図7】段ボール箱に位置決め具を備えた場合を示す斜視図である。
【図8】他の実施形態の係合部材を示す斜視図である。
【図9】その係合部材の構成を示す平面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 位置決め具
2 収容ケース(物品)
2a 上側収容ケース(上側物品)
2b 下側収容ケース(下側物品)
7 コーナー部
11 上側係合部材
12 下側係合部材
14 ベース部材
15 対称軸
16 第一ベース部
17 第二ベース部
20 第一凸条
20e,21e,22e,23e 延長線
21 第一凹部
22 第二凸条
23 第二凹部
24,25 交点
30 パレット(物品)
40 段ボール箱(物品)
50 係合部材(上側係合部材,下側係合部材)
51 第一ベース部
52 第二ベース部
53 ベース部材
60 第一凸条
60e,61e,62e,63e 延長線
61 第一凹部
62 第二凸条
63 第二凹部
64,65 交点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を積み重ねる際、互いに対向する上側物品の下面と下側物品の上面とに夫々設けられ、互いに係合することで水平方向への位置ずれを防ぐ上側係合部材及び下側係合部材からなる位置決め具であって、
前記上側係合部材及び前記下側係合部材は、互いに同一形状を呈しており、
対称軸を中心として線対称の第一ベース部及び第二ベース部からなる板状のベース部材と、
前記第一ベース部の表面に形成され、所定の間隔で並設された複数の第一凸条、及び該各第一凸条の間に形成された複数の第一凹部と、
前記第二ベース部の表面に形成され、所定の間隔で並設され且つ前記第一凸条に対し垂直方向に形成された複数の第二凸条、及び該各第二凸条の間に形成された複数の第二凹部と
を具備し、
前記第一凸条及び前記第二凸条は、夫々前記第二凹部及び前記第一凹部に嵌合可能な形状を呈し、前記第一凸条の延長線と前記第二凹部の延長線との交点、及び前記第一凹部の延長線と前記第二凸条の延長線との交点が、何れも前記対称軸上に位置するように形成されている
ことを特徴とする位置決め具。
【請求項2】
前記ベース部材は、平面視略L字形の部材であり、
前記上側係合部材及び前記下側係合部材は、夫々前記上側物品における下面の四隅、及び前記下側物品における上面の四隅に配置されることを特徴とする請求項1に記載の位置決め具。
【請求項3】
前記第一凸条及び前記第二凸条は、幅方向の寸法が先端側ほど細くなるテーパー状の形状を呈していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の位置決め具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−42825(P2010−42825A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−207102(P2008−207102)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【出願人】(391034488)イビケン株式会社 (29)
【Fターム(参考)】