説明

位置決め冶具およびこれを用いた圧力調整弁の組立方法

【課題】受圧膜体を簡単に且つ精度良く位置決めすることができる位置決め冶具およびこれを用いた圧力調整弁の組立方法を提供することである。
【解決手段】圧力調整弁の組立てに用いられ、受圧膜体16の膜体固定部への固定に先立って、受圧膜体16を連通流路と同軸上に位置決めする位置決め治具52であって、1次室側から連通流路に挿入されると共に、受圧膜体16の突部37が嵌合する嵌合穴を有する位置決め突起57と、位置決め突起57が取り付けられると共に、バルブケーシング11の1次室側に位置決めされる取付プレート55と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力調整弁の組立てに際し、受圧膜体を位置決めする位置決め冶具およびこれを用いた圧力調整弁の組立方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の位置決め治具を組立てに用いる圧力調整弁として、バルブケーシングと、受圧板および受圧膜体本体から成る受圧膜体と、バルブケーシングと受圧膜体との間に介設されたシールリングと、受圧膜体を押さえる押えリングと、を有し、インクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドに機能液を減圧供給するものが知られている(特許文献1参照)。一方、位置決め治具は、受圧膜体を押えリングに位置合わせするためのマークを有し、受圧膜体に対面するように、押えリングの内周面に嵌合して用いられる。
この位置決め治具を用いる圧力調整弁の組立方法は、先ずバルブケーシングの環状溝にシールリングを装着した後、バルブケーシングの複数のネジ孔に複数の切抜き孔を合せるようにして、受圧膜体を仮セットする。次に、バルブケーシングの複数のネジ孔に複数のバカ孔を合せるようにして、押えリングを仮セットし、バルブケーシングの複数のネジ孔に、複数のバカ孔および複数の切抜き孔を貫通して複数の取付けネジを仮締めする。さらに、押えリングに位置決め治具をセットし、この位置決め治具のマークに受圧膜体を位置合わせした後、ネジを本締めする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−208020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような圧力調整弁の組立方法では、作業者が、位置決め治具のマークに受圧膜体を位置合わせながら受圧膜体に一定の張りを与え、かつネジ締めする必要があり、作業が極めて煩雑なものとなっていた。特に受圧膜体を見ながら手加減で位置合わせするため、本締めする際に一方の手を離さざるを得ず、受圧膜体が不等に弛んだり位置ずれしてしまうおそれがあった。
【0005】
本発明は、受圧膜体を簡単に且つ精度良く位置決めして固定することができる位置決め冶具およびこれを用いた圧力調整弁の組立方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の位置決め治具は、扁平形状のバルブケーシングの中心部に設けられ1次室と2次室とを連通する連通流路と、バルブケーシングの2次室側の面に形成した2次室内面壁と、2次室内面壁と対峙して2次室を構成すると共に、中心部に連通流路に臨む突部を有する受圧膜体と、2次室内面壁の外側に配設され受圧膜体が液密に固定される膜体固定部と、を備えた圧力調整弁の組立てに用いられ、受圧膜体の膜体固定部への固定に先立って、受圧膜体を連通流路と同軸上に位置決めする位置決め治具であって、1次室側から連通流路に挿入されると共に、受圧膜体の突部が嵌合する嵌合穴を有する位置決め突起と、位置決め突起が取り付けられると共に、バルブケーシングの1次室側に位置決めされる取付プレートと、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、受圧膜体の突部に位置決め突起が嵌合し、バルブケーシングの1次室側に取付プレートが位置決めされるため、受圧膜体(突部)は、バルブケーシングに対して一定の位置に不動に位置決めされる。すなわち、受圧膜体の位置合わせを精度良く且つ簡単にすることができ、ネジを本締めする際にも位置ずれすることがない。
【0008】
この場合、取付プレートを支持するベースプレートと、取付プレートとベースプレートとの間に介設したスペーサと、を更に備えたことが好ましい。
【0009】
また、位置決め突起は、取付プレートに対し軸方向にスライド自在に取り付けられ、ベースプレートを受けとして、位置決め突起を突出方向に付勢する付勢手段を、更に備えたことが好ましい。
【0010】
これらの構成によれば、位置決め突起は、突出方向に付勢されるため、受圧膜体の突部の軸方向位置が区々であっても、受圧膜体の突部を位置決め突起に対して確実に嵌合させることができる。
【0011】
この場合、受圧膜体を2次室内面壁に押し当てる押当て手段、を更に備えたことが好ましい。
【0012】
圧力調整動作において応動する受圧膜体は、一定の撓みを持たせた張り状態で組み込むことが好ましい。
この構成によれば、位置決めした状態で、受圧膜体に対して一定の撓みを持たせることができる。
【0013】
本発明の圧力調整弁の組立方法は、扁平形状のバルブケーシングの中心部に設けられ1次室と2次室とを連通する連通流路と、バルブケーシングの2次室側の面に形成した2次室内面壁と、2次室内面壁と対峙して2次室を構成すると共に、中心部に連通流路に臨む突部を有する受圧膜体と、2次室内面壁の外側に配設され受圧膜体が液密に固定される膜体固定部と、を備えた圧力調整弁の組立方法であって、上記の位置決め治具を用い、受圧膜体の膜体固定部への固定に先立って、位置決め治具を圧力調整弁に相対的にセットする治具セット工程と、受圧膜体を膜体固定部に仮固定する膜体仮固定工程と、仮固定の後、位置決め治具の位置決め突起に受圧膜体の突部が嵌合して、受圧膜体を位置決めする膜体位置決め工程と、位置決め状態で、受圧膜体を、張りを与えつつ膜体固定部に本固定する膜体本固定工程と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、位置決め治具を圧力調整弁にセットした後、受圧膜体を膜体固定部に仮固定し、位置決め治具の位置決め突起に受圧膜体の突部を嵌合させるため、簡単に受圧膜体を位置決めすることができる。また、この位置決め状態で本固定するため、受圧膜体が位置ずれすることがなく、精度良く圧力調整弁を組み立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】圧力調整弁の外観表裏平面図である。
【図2】圧力調整弁を流出ポートの軸線方向に切断した縦断面図である。
【図3】位置決め冶具を装着した圧力調整弁の断面図である。
【図4】位置決め冶具の模式図である。
【図5】膜体伸張冶具の平面図である。
【図6】圧力調整弁の組立方法の説明図(1)である。
【図7】圧力調整弁の組立方法の説明図(2)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付した図面を参照して、本発明の位置決め冶具および圧力調整弁の組立方法を、膜体組付け治具およびこれを用いた圧力調整弁の組立方法に適用した場合にについて説明する。この圧力調整弁は、カラーフィルタなどを製造する液滴吐出装置の機能液滴吐出ヘッドに機能液を供給するチューブに介設されており、機能液滴吐出ヘッドに機能液を大気圧基準(一定圧)で減圧供給するものである。また、膜体組付け治具は、圧力調整弁の組立てに際し、受圧膜体を正規の位置に適切に組み込むために用いられる。そこで先ず、圧力調整弁について説明し、その後、膜体組付け治具および圧力調整弁の組立方法について説明する。なお、以下の説明では、受圧膜体側を前面とし、対向する側を後面として説明する。
【0017】
図1および図2に示すように、圧力調整弁1は、主要部を成す調整弁本体2と、調整弁本体2の流入側に差込み接合した流入コネクター3と、調整弁本体2の流出側に差込み接合した流出コネクター4と、を備えている。そして、流入コネクター3には、押えナットを介して、機能液タンクに連なるチューブが接続され、同様に流出コネクター4には、押えナットを介して、機能液滴吐出ヘッドに連なるチューブが接続される(いずれも図示省略)。
【0018】
調整弁本体2は、略円板状で、かつ前面および後面の中央部が凹型形成された扁平形状のバルブケーシング11と、バルブケーシング11の後面と共に1次室14を画成する蓋体12と、バルブケーシング11に受圧膜体16を固定することでバルブケーシング11の前面と共に2次室15を画成する押えリング13と、で構成されており、バルブケーシング11、蓋体12および押えリング13は、ステンレス等の耐食性材料で形成されている。また、バルブケーシング11の中心部には、1次室14および2次室15を連通する連通流路17が形成されている。
【0019】
押えリング13および蓋体12は、バルブケーシング11に対し、前後方向から挟み込むようにねじ止めして組み込まれており、いずれも円形の受圧膜体16の中心を通る軸線と同心円となる円形の外形を有している。バルブケーシング11および押えリング13は、受圧膜体16の周縁部および前側シールリング18を挟込み込んで相互に液密に突合せ接合されている。同様に、蓋体12は、後側シールリング19を介してバルブケーシング11に対し相互に液密に突合せ接合されている。これにより、1次室14および2次室15は、液密に保持されている。なお、1次室14には圧力調整弁1の組立ての際に、位置決め冶具52が臨んで、受圧膜体16を位置決めするようになっている。
【0020】
1次室14は、バルブケーシング11の後面中心部に形成した1次室内面壁21と、中心部に1次室内面壁21を形成した着座部22に装着され、バルブケーシング11の開放端を閉蓋する蓋体12とにより、受圧膜体16と同心となる略円柱形状に形成されている。また、1次室14の上部には、1次室14から径方向斜めに延びる流入ポート23が形成され、中心部には、連通流路17に連なる1次室側開口部24が開口している。そして、この1次室側開口部24には、1次室14側から連通流路17を開閉する弁体25が臨む一方、これに対応して、1次室側開口部24の周縁部により、弁体25が離接する弁座が構成されている。また、弁体25は、これと蓋体12との間に介設した弁体付勢ばね26によって、閉弁方向(2次室15側)に弱い力で付勢されている。
【0021】
2次室15は、バルブケーシング11の前面と、バルブケーシング11の開放端を閉蓋する受圧膜体16と、で形成されており、受圧膜体16は、押えリング13によりバルブケーシング11に取り付けられている(詳細は、後述する。)。具体的には、2次室15は、バルブケーシング11に凹型形成した2次室内面壁27と受圧膜体16とによって、全体として受圧膜体16を底面とする円錐台形状に形成されている。また、2次室15の下部には、2次室15から真下に延びる流出ポート28が形成され、中心部には、連通流路17に連なる2次室側開口部29が開口している。そして、この2次室側開口部29の周縁部と後述する受圧膜体16との間には、受圧膜体16を前方向に向かって弱く付勢する膜体付勢ばね30が介設されている。
【0022】
バルブケーシング11の前面周縁部であるリング状端面31には、リング状端面31と受圧膜体16との間をシールする上記の前側シールリング18が装着されている。また、リング状端面31には、押えリング13を取り付けるための複数の取付けネジ32が螺合するネジ孔33が複数(6個)形成されている。なお、請求項にいう膜体固定部は、リング状端面31および押えリング13で構成されている。
【0023】
受圧膜体16は、樹脂フィルムで構成した膜体本体34と、膜体本体34の中央部に接着した樹脂製の受圧板35と、で構成されている。膜体本体34(受圧膜体16)の周縁部には、バルブケーシング11のネジ孔33に対応する部位に複数(6個)の切抜き孔36が形成されている。受圧板35は、膜体本体34と同心の円板状に、且つ膜体本体34に対し十分に小さい径に形成されており、その中央部には、上記の膜体付勢ばね30の前端が囲繞するように臨む突部37が形成されている。また、この突部37の中心には、上記の弁体25が離接するようになっている(図2参照)。なお、受圧板35の径は、連通流路17の径より大きく形成され、突部37の径は、連通流路17の径より小さく形成されている。
【0024】
押えリング13は、バルブケーシング11のリング状端面31と同じ大きさのドーナツ状に形成されており、その周縁部には、ネジ孔33および切抜き孔36に対応する部位に複数(6個)のバカ孔38が形成されている。これにより、前側シールリング18を装着したバルブケーシング11のリング状端面31に受圧膜体16をセットし、これに押えリング13を複数本の取付けネジ32でねじ止めすることで、2次室15が構成される。
【0025】
弁体25は、弾性材で構成され、弁の機能を奏するリング状の弁体本体41と、弁体本体41保持する弁ホルダ42と、を備えている。弁体本体41は、弁座となる1次室側開口部24の周縁部に離接することで連通流路17を開閉する。また、弁ホルダ42は、連通流路17を挿通する軸部43を有しており、この軸部43の先端が上記の受圧板35に当接するようになっている(図2参照)。
【0026】
このように構成された圧力調整弁1では、例えば機能液滴吐出ヘッドの液滴吐出により2次室15の圧力が下がってゆくと、大気圧により受圧膜体16が凹変形してゆき、受圧板35が弁体25を押す。これにより、弁体25が開弁し、連通流路17を介して1次室14から2次室15に機能液が流入する。機能液の流入がすすむと、やがて2次室15の圧力が高まってゆき、受圧膜体16が外部に向かって凸変形してゆく。これにより、受圧板35が弁体25から離れるように前進し、同時に弁体25が前進して閉弁する。
【0027】
すなわち、圧力調整弁1は、大気圧と機能液滴吐出ヘッドに連なる2次室15との内部圧力のバランスにより受圧膜体16が変形することで連通流路17を開閉する。その際、弁体付勢ばね26および膜体付勢ばね30に力が分散して作用し、且つ弁体本体41の弾性力により、弁体25は極めてゆっくり開閉動作する。このため、弁体25の開閉による圧力変動(キャビテーション)が抑制され、機能液滴吐出ヘッドの吐出駆動に影響を与えないようになっている。もちろん、1次室14側で発生する脈動等も、弁体25で縁切りされるため、これを吸収(ダンパー機能)することができる。
【0028】
次に、図3ないし図6を参照して、圧力調整弁1における2次室15側の組立方法について詳細に説明する。受圧膜体16は、上記したように、2次室15内の内部圧力の変化により凹凸変化して弁体25を開閉させる、いわゆるダイヤフラムであり、バルブケーシング11に精度良く組みつけられる必要がある。本実施形態では、この組付けに際し、受圧膜体16を位置決めすると共に所定の張りを与えるための膜体組付け治具51を用いるようにしている。そこで、圧力調整弁1の組立方法を説明する前に、この膜体組付け治具51について説明する。
【0029】
図3に示すように、膜体組付け治具51は、主に受圧膜体16を位置決めする位置決め冶具52と、主に位置決めした受圧膜体16に所定の張りを与える膜体伸張冶具53とから成り、これらは受圧膜体16の組付けに際し、相互に協働するようになっている。実際の組付け作業では、テーブル上に位置決め冶具52を上向き置き、これに圧力調整弁1(バルブケーシング11)をその後面を下にしてセットし、さらに圧力調整弁1(バルブケーシング11)に上側から膜体伸張冶具53をセットする。
【0030】
図3および図4に示すように、位置決め冶具52は、上記のテーブル上に載置されるベースプレート54と、ベースプレート54に支持される取付プレート55と、ベースプレート54と取付プレート55との間に介設した複数(図示のものは4つ)のスペーサー56と、1次室14側から連通流路17に挿入されると共に、受圧膜体16の突部37が嵌合する嵌合穴59を有し、取付プレート55に対し軸方向にスライド自在に取付けられた位置決め突起57と、ベースプレート54を受けとして、位置決め突起57を突出方向に付勢する押えバネ58(付勢手段)と、を備えている。
【0031】
ベースプレート54は、圧力調整弁1の外形より大きく形成されており、周縁部には、圧力調整弁1の側面を遊嵌状態で覆う側壁61が設けられている。側壁61は、流入ポート23および流出ポート28に対応する部分に切り欠き部62が形成されており、圧力調整弁1をセットする際に邪魔しないようになっている。また、ベースプレート54には、スペーサー56をねじ止め固定するための段付き穴63(ザグリ穴)が4つ形成されており、中心部分には、押えバネ58が係合する下係合部64が設けられている。
【0032】
取付プレート55は、取付プレート本体71と、取付プレート本体71の中心部に設けられたガイド部72と、から構成されている。取付プレート本体71は、上記の着座部22と相補的形状に形成され、ガイド部72は、1次室内面壁21と相補的形状に形成されている。ガイド部72および取付プレート55の中心部には、位置決め突起57がスライドするためのスライド穴60が貫通形成されている。また、取付プレート55の下面(後面)には、4つのスペーサー56が取り付けられている。取付プレート55は、取付プレート本体71を着座部22に着座させると共に、ガイド部72を1次室内面壁21に嵌合させることで、受圧膜体16と同心となるように位置決めされる。
【0033】
複数のスペーサー56は、周方向に等間隔となるに4つ配設されており、上端が取付プレート55の下面に固定されている。各スペーサー56の下端は、下側からベースプレート54にねじ止めされている。
【0034】
位置決め突起57は、円柱状或いは円筒状に形成されており、内部には受圧膜体16の突部37が嵌合する嵌合穴59が形成されている。一方、下端部の外周面には、押えバネ58が係合する鍔部73が設けられている。また、位置決め突起57は、この鍔部73と下係合部64との間に介設した押えバネ58により、1次室14側に付勢されている。位置決め突起57は、取付プレート55のガイド部72にガイドされ、押えバネ58に抗して上下方向にスライドする。
【0035】
図3および図5に示すように、膜体伸張冶具53は、バルブケーシング11に位置決め状態で装着される治具ベース74と、治具ベース74に対し、径方向にスライド自在に装着され、押えリング13からはみ出した受圧膜体16の周縁部の不要部分を、3箇所で把持する3つの把持ブロック75と、治具ベース74に設けられ、3つの把持ブロック75を同時に外方に移動させるブロック移動機構76と、治具ベース74に設けられ、受圧膜体16を2次室内面壁27に押し当てる押当て部77(押当て手段)と、備えている。なお、把持ブロック75は、4つ以上であってもよい。
【0036】
治具ベース74は、外径において押えリング13より大きく略円板形状に形成されている。治具ベース74の下面には、押えリング13の内周面に嵌合する円形嵌合部81が、押えリング13の厚さより僅かに薄く突設されている。冶具ベース74の中心部には、受圧板35に対応して貫通穴82が形成されており、貫通穴82には押当て部77が挿通するようにして固着されている。また、冶具ベース74の周縁部には、等間隔に3つの把持ブロック75が、それぞれ径方向にスライド自在に取り付けられている。さらに、冶具ベース74には、上記複数本の取付けネジ32に対応して、複数の工具挿入孔83が形成されている。
【0037】
把持ブロック75は、冶具ベース74の周縁部に沿って等間隔に3つ配設されており、冶具ベース74の径方向に向かってスライドするスライド部84と、スライド部84と一体に形成され、受圧膜体16の周縁部を把持する把持部85と、から構成されている。スライド部84には、ブロック移動機構76のカム部86に係合する係合ピン87(カムフォロアに相当する)が取り付けられている。そして、後述するカム部86のカム作用により、3つの把持ブロック75がそれぞれ径方向に且つ同時に進退する。把持部85は、下ブロックに対し上ブロックが下動して受圧膜体16を挟み込むように構成されており、ユリアネジ等で構成された把持ネジ88を締めることで受圧膜体16の周縁部(不要部分)を把持する。
【0038】
ブロック移動機構76は、2次室内面壁27の中心と同心上において、治具ベース74に回転自在に設けられた回転体91と、回転体91に設けられ、各把持ブロック75にカム係合する3つのカム部86と、を有している。回転体91は、冶具ベース74の上面に接した状態で、冶具ベース74に固着した押当て部77(後述する雌ネジブロック93)に回転自在に係合している。回転体91には、上記複数の工具挿入孔83の対応する複数の円弧状長孔92が形成されている。また、各カム部86は、回転体91に形成された円弧状のスリット孔で構成されており、このスリット孔に把持ブロック75のる係合ピン87が係合している。図示では省略したが、回転体91の上面には複数の指掛け突起が設けられており、指掛け突起を介して回転体91を正逆回転することで、3つの把持ブロック75がそれぞれ径方向に且つ同時に進退する。具体的には、回転体91を時計回りに回転させると、各把持ブロック75は径方向外側にスライドし、把持ブロック75を介して受圧膜体16に一定の張りを与える。逆に、回転体91を反時計周りに回転させることで、各把持ブロック75は径方向内側にスライドし、元の位置に復帰する。
【0039】
押当て部77は、円柱状に形成され、冶具ベース74に固着された雌ネジブロック93と、雌ネジブロック93に上側から螺合したユリアネジ94と、雌ネジブロック93の下部中央にスプライン係合する押当て板95と、を有している。ユリアネジ94の先端は、押当て板95の上面に突き当てられており、ユリアネジ94をねじ込むと、押当て板95が下動し、受圧板35(受圧膜体16)を2次室内面壁27に押し当てる。この状態で、受圧板35の突部37が、上記の位置決め突起57の嵌合穴59に嵌合し、受圧膜体16が位置決めされる。
【0040】
次に、図6および図7を参照して、上記の膜体組付け治具51を用いた圧力調整弁1の2次室15側の組立方法について説明する。この組立方法は、テーブル上の位置決め治具52に、圧力調整弁1(バルブケーシング11)をセットする第1治具セット工程(冶具セット工程)と、受圧膜体16を、セットしたバルブケーシング11のリング状端面31に仮固定する膜体仮固定工程と、仮固定の後、圧力調整弁1(バルブケーシング11)に膜体伸張治具53をセットする第2治具セット工程と、押当て部77により、受圧膜体16を位置決めする膜体位置決め工程と、位置決め状態で、受圧膜体16を、張りを与えつつリング状端面31に本固定する膜体本固定工程と、受圧膜体16の不要部分をカットするカット工程と、を備えている。
【0041】
第1治具セット工程では、位置決め突起57が上向きになるように載置した位置決め冶具52に、上方から1次室14を下向きにして、バルブケーシング11をセットする(図6(a))。
【0042】
膜体仮固定工程では、上方からリング状端面31に前側シールリング18を装着した後、リング状端面31に形成された複数のネジ孔33と、受圧膜体16に形成された複数の切抜き孔36と、押えリング13の複数のバカ孔38とをそれぞれ合せるようにして、受圧膜体16の上方から押えリング13を仮セットする。押えリング13を仮セットした後、押えリング13の上方からリング状端面31に向って、バカ孔38および切抜き孔36を貫通してネジ孔33に取付けネジ32をそれぞれ仮締めする(図6(b))。
【0043】
第2治具セット工程では、押えリング13の内周面に膜体伸張治具53の円形嵌合部81をはめ込み装着する。
【0044】
膜体位置決め工程では、押当て部77のユリアネジ94をねじ込んで、受圧膜体16を2次室15内面壁に押し付ける。その際、位置決め突起57の嵌合穴59に受圧膜体16の突部37が嵌合し、受圧膜体16が位置決めされる(図7(a))。
【0045】
膜体本固定工程では、先ず位置決めされた受圧膜体16の不要部分を3つの把持ブロック75で把持する。次に、回転体91を回転させて、3つの把持ブロック75を径方向外側に同時にスライドさせることで、受圧膜体16に張りを与える。その後、複数の取付けネジ32を均等に本締めして、押えリング13をリング状端面31に本締結する(図7(b))。最後に、押当て部77のユリアネジ94を緩めて、受圧膜体16の押し当てを解除すると共に、把持ブロック75の把持を解除する。
【0046】
カット工程では、膜体組付け治具51を取り外して、押えリング13の外周からはみ出している受圧膜体16を、押えリング13の外周に沿って切り取る(図7(c))。以上の工程により、圧力調整弁1の2次室15側の組立作業を終了する。
【0047】
なお、本実施形態では、ネジ孔33、切抜き孔36およびバカ孔38は、それぞれ6つずつ形成されているが、これらの数は限定されるものではない。
【0048】
また、本実施形態では、バルブケーシング11を位置決め冶具52にセットした後に、前側シールリング18、受圧膜体16、押えリング13を仮締めするようにしているが、リング状端面31に前側シールリング18、受圧膜体16、押えリング13を仮締めした後に、バルブケーシング11を位置決め冶具52にセットしてもよい。
【0049】
以上の構成によれば、受圧膜体16の突部37に位置決め突起57が嵌合し、バルブケーシング11の1次室14側に取付プレート55が位置決めされるため、受圧膜体16は、バルブケーシング11に対して一定の位置に不動に位置決めされるため、受圧膜体16の位置合わせを精度良く且つ簡単にすることができる。
【符号の説明】
【0050】
1…圧力調整弁 11…バルブケーシング 14…1次室 15…2次室 16…受圧膜体 17…連通流路 27…2次室内面壁 37…突部 52…位置決め治具 54…ベースプレート 55…取付プレート 56…スペーサー 57…位置決め突起 58…押えバネ 77…押当て部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扁平形状のバルブケーシングの中心部に設けられ1次室と2次室とを連通する連通流路と、前記バルブケーシングの2次室側の面に形成した2次室内面壁と、前記2次室内面壁と対峙して2次室を構成すると共に、中心部に前記連通流路に臨む突部を有する受圧膜体と、2次室内面壁の外側に配設され前記受圧膜体が液密に固定される膜体固定部と、を備えた圧力調整弁の組立てに用いられ、
前記受圧膜体の前記膜体固定部への固定に先立って、前記受圧膜体を前記連通流路と同軸上に位置決めする位置決め治具であって、
前記1次室側から前記連通流路に挿入されると共に、前記受圧膜体の前記突部が嵌合する嵌合穴を有する位置決め突起と、
前記位置決め突起が取り付けられると共に、前記バルブケーシングの前記1次室側に位置決めされる取付プレートと、を備えたことを特徴とする位置決め治具。
【請求項2】
前記取付プレートを支持するベースプレートと、
前記取付プレートとベースプレートとの間に介設したスペーサと、を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の位置決め治具。
【請求項3】
前記位置決め突起は、前記取付プレートに対し軸方向にスライド自在に取り付けられ、
前記ベースプレートを受けとして、前記位置決め突起を突出方向に付勢する付勢手段を、更に備えたことを特徴とする請求項2に記載の位置決め治具。
【請求項4】
前記受圧膜体を2次室内面壁に押し当てる押当て手段、を更に備えたことを特徴とする請求項3に記載の位置決め治具。
【請求項5】
扁平形状のバルブケーシングの中心部に設けられ1次室と2次室とを連通する連通流路と、前記バルブケーシングの2次室側の面に形成した2次室内面壁と、前記2次室内面壁と対峙して2次室を構成すると共に、中心部に前記連通流路に臨む突部を有する受圧膜体と、2次室内面壁の外側に配設され前記受圧膜体が液密に固定される膜体固定部と、を備えた圧力調整弁の組立方法であって、
請求項1ないし4のいずれかに記載の位置決め治具を用い、
前記受圧膜体の前記膜体固定部への固定に先立って、前記位置決め治具を前記圧力調整弁に相対的にセットする治具セット工程と、
前記受圧膜体を前記膜体固定部に仮固定する膜体仮固定工程と、
前記仮固定の後、前記位置決め治具の前記位置決め突起に前記受圧膜体の前記突部が嵌合して、前記受圧膜体を位置決めする膜体位置決め工程と、
前記位置決め状態で、前記受圧膜体を、張りを与えつつ前記膜体固定部に本固定する膜体本固定工程と、を備えたことを特徴とする圧力調整弁の組立方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−184830(P2012−184830A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49929(P2011−49929)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】