説明

位置決定システムを備えた検出器システム

1種または複数種の放射、特にX線放射、ガンマ線放射、または核粒子放射を測定するための検出器モジュールであって、検出ユニットと、アナログ-デジタル変換器と、情報処理デバイスと、検出器モジュールの位置を格納するためのメモリデバイスとを備える検出器モジュールが提供される。検出器モジュールは、検出ユニットを安定化するために、検出ユニットと光学的に接続された少なくとも1つの発光ダイオード(LED)を備える。さらに、本発明は、支柱、特に可搬型支柱を提供し、それにより支柱が本発明の検出器モジュールを備える。さらに、検出器モジュールの(無線)ネットワークが提供され、それにより、各検出器モジュールが支柱内に取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1種または複数種の放射、好ましくはX線放射、ガンマ線放射、または核粒子放射を測定するための検出器モジュールであって、シンチレーション検出器、およびシンチレーション検出器によって発生した光の強度と既知の関係をもつ電子パルスをもたらす光検出器からなる検出ユニットと、光検出器に結合され、光検出器のアナログ出力信号をデジタル化放射信号に変換するアナログ-デジタル変換器(ADC)と、ADCに結合され、それによりデジタル化放射信号を較正し、安定化し、線形化する方法を実施する情報処理デバイスとを備える、検出器モジュールに関する。
【0002】
さらに、本発明は、好ましくは検出器モジュールによってもたらされるデジタルデータを分析するための分析デバイスに関する。さらに、本発明は、1種または複数種の放射、好ましくはX線放射、ガンマ線放射、または核粒子放射を検出するための検出器システムであって、少なくとも1つの検出器モジュールと分析デバイスとを備える検出器システムに関する。
【背景技術】
【0003】
検出器モジュールおよび分析デバイスからなる検出器システムは、当技術分野でよく知られている。当技術分野で既知の技法を用いて、電離放射を測定するための小型検出器システムを提供することが可能である。
【0004】
しかし、既知の検出器システムには、複数の異なる位置または場所を観測するために複数の検出器システムが必要になるという欠点がある。複数の検出器システムを使用することには、異なる位置の集中監視が不可能である、またはその集中監視に追加の技術装置が必要になるという欠点がある。さらには、複数の、例えば分散型検出器システムを設けると、特に移動式(mobile)、可搬型(portable)、および/または手持ち式(hand-held)の検出器システムが使用される場合に、検出器システムの位置についての追加の知識が必要になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数の検出器システムを用いた複数の場所の集中監視または観測を可能にするために検出器システムを提供することが、本発明の一目的である。複数の異なる検出器システムを用いて単一の位置または場所を観測できるようにし、それにより測定値の分析が遠隔で、すなわち集中化して実施されうる検出器システムを提供することが、本発明の別の目的である。さらに、移動式および/または可搬型検出器システムを提供することが必要とされており、それにより、検出器システムの実際の位置を、分析のために分析デバイスに供給しなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、1種または複数種の放射、特にX線放射、ガンマ線放射、または核粒子放射を検出するための検出器システムであって、少なくとも1つの検出器モジュールと分析デバイスとを備える検出器システムが提供される。さらに、支柱、特に通信ネットワークインターフェースを有する可搬型支柱が提供される。支柱は、本発明の検出器モジュールを収容することができる。
【0007】
1種または複数種の放射、特にX線放射、ガンマ線放射、または核粒子放射を測定するための検出器モジュールは、シンチレーション検出器、およびシンチレーション検出器によって発生した光の強度と既知の関係をもつ電子パルスをもたらす光検出器からなる検出ユニットと、光検出器に結合され、それにより光検出器のアナログ出力信号をデジタル化放射信号に変換するアナログ-デジタル変換器(ADC)と、ADCに結合され、それによりデジタル化放射信号を較正し、安定化し、線形化する方法を実施する情報処理デバイスと、検出器モジュールの位置を格納するためのメモリデバイスとを備えることができる。
【0008】
したがって、検出器モジュールの測定値を検出器モジュールの実際の位置に基づいて分析することを可能にする、検出器モジュールが提供される。複数の検出器モジュールの位置について分かっていると、複数の検出器モジュールによって測定される放射源の位置を、特化したアルゴリズムを用いることにより特定することができるという利点がある。
【0009】
好ましい一実施形態では、検出器モジュールが、メモリデバイス内に格納すべき検出器モジュールの位置を得るための位置決定システムを備えることができる。位置決定システムは、全地球航法衛星システム(GNSS)でも、無線航法システム(RNS)でもよい。
【0010】
これには、メモリデバイス内に格納される位置が、たとえ検出器モジュールの位置が変わっても、そのモジュールの実際の位置を表すという利点がある。GNSSまたはRNSに加えて、検出器モジュールは、微細加工したジャイロスコープなどのジャイロスコープを備えることができる。したがって、たとえGNSS信号またはRNS信号が利用できなくても、移動する検出器モジュールの位置を決定することができる。
【0011】
別の好ましい実施形態では、検出器モジュールが、通信インターフェースを備えることができる。通信インターフェースは、無線通信インターフェース、例えばWLAN、WiMAX、WiFi、またはブルートゥース、および有線通信インターフェース、例えばイーサネット(登録商標)インターフェースまたはUSBインターフェース、およびそれらの組合せのうち少なくとも1つとすることができる。情報処理デバイスは、較正し、安定化し、線形化し、デジタル化した放射信号を、通信ネットワークインターフェースを介して分析デバイスに伝送する方法を実施することができる。
【0012】
したがって、検出器モジュールの測定値の分析は、検出器モジュールから遠隔で、例えば集中化して実施することができる。測定値の集中分析は、放射源の位置の特定も可能にする。
【0013】
別の好ましい実施形態では、情報処理デバイスが、デジタル化し、較正し、安定化し、線形化した放射信号を格納するための別のメモリデバイスを備えることができる。デジタル化放射信号を較正し、線形化し、安定化する方法は、有利には、較正し、安定化し、線形化し、デジタル化した放射信号を、このメモリデバイス内に格納するステップを含むことができる。放射信号を格納すると、分析デバイスへのデータ伝送が中断された、または正常状態から逸している場合に、データの喪失を防止することができる。分析デバイスへの接続を再度確立するとすぐに、格納された信号を分析デバイスに伝送することができる。
【0014】
別の実施形態では、情報処理デバイスが、較正し、安定化し、線形化し、デジタル化した放射信号を伝送する方法の前に、1つまたは複数の較正し、安定化し、線形化し、デジタル化した放射信号を所定のデータ構造に符号化する方法を実施することができる。データ構造は、少なくともヘッダセクションおよびデータセクションを含むことができる。
【0015】
ヘッダセクションは、タイムスタンプ、検出器識別子、シーケンス数、検出器設定値、およびメモリデバイス内に格納された検出器位置のうち少なくとも1つを含むことができる。データセクションは、複数の較正し、安定化し、線形化し、デジタル化した放射信号を含むことができる。
【0016】
したがって、検出器識別子を設けることによって、分析デバイスが複数の検出器モジュールの信号を区別することができる。さらに、検出器位置を用いることによって、分析デバイスが放射源の位置を特定することができる。
【0017】
別の好ましい実施形態では、検出器モジュールが、検出ユニットと光学的に接続された少なくとも1つの発光ダイオード(LED)、好ましくはパルスLEDを備えることができる。LEDパルスが、光検出器による電子LEDパルスの発生を引き起こすことができ、ADCが、光検出器のアナログLEDパルスをデジタル化LED信号に変換することができ、デジタル化放射信号を較正し、線形化し、安定化する方法が、デジタル化LED信号を使用してデジタル化放射信号を較正し、線形化し、安定化することができる。
【0018】
デジタル化放射信号を較正し、線形化し、安定化する方法は、少なくとも、
-デジタル化LED信号をパルス波形解析によって特定するステップと、
-複数の較正および安定化パラメータを決定するステップと、
-決定された較正、線形化、および安定化パラメータを、デジタル化放射信号に適用するステップと
を実施することができる。
【0019】
したがって、LEDにより安定化され、較正される検出器モジュールが提供される。検出器モジュールを安定化し、較正するために、放射線源(radioactive radiation source)はもはや必要ない。
【0020】
本発明によれば、ネットワーク互換デバイス、特に放射検出器を収容する手段と、通信ネットワークインターフェースとを備える支柱が提供される。通信ネットワークインターフェースは、ネットワーク互換デバイスを接続するように適合される。
【0021】
本発明の好ましい一実施形態では、ネットワーク互換デバイスを検出器モジュールとすることができる。検出器モジュールは、外側から検出器モジュールが見えないように、可搬型で目立たない支柱内に取付可能とすることができ、また支柱のネットワーク通信インターフェースと接続可能とすることができる。
【0022】
支柱内に取付可能な検出器モジュールは、1種または複数種の放射、特にX線放射、ガンマ線放射、または核粒子放射を測定するための検出器モジュールであって、シンチレーション検出器、およびシンチレーション検出器によって発生した光の強度と既知の関係をもつ電子パルスをもたらす光検出器からなる検出ユニットと、光検出器に結合され、それにより光検出器のアナログ出力信号をデジタル化放射信号に変換するアナログ-デジタル変換器(ADC)と、ADCに結合され、それによりデジタル化放射信号を較正し、安定化し、線形化する方法を実施する情報処理デバイスとを備えることのできる、検出器モジュールとすることができる。
【0023】
検出器モジュールは、上述したように、検出器モジュールの位置を格納するためのメモリ、ならびに位置決定システムも備えることができる。
【0024】
さらに、支柱は、電源、好ましくは蓄電池またはバッテリを備えることができる。
【0025】
本発明の好ましい一実施形態では、検出器モジュールが、外側から検出器モジュールが見えないように支柱の内側に取り付けられる。したがって、人々に知られずに放射源の測定を実施すべき環境、例えば空港、セキュリティ完備の入口などにおいて使用することのできる検出器モジュールが提供される。
【0026】
さらに、支柱(すなわち支柱のハウジングまたはハウジングの一部)は、検出器モジュールが較正し、安定化し、線形化し、デジタル化した放射信号を無線通信手段を介してもたらす場合にアンテナとして働くことができる。したがって、追加のアンテナ装置は必要ない。
【0027】
本発明の特定の実施形態を、以下の図に基づいて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】シンチレータ結晶、光電子増倍管、LED、アナログ-デジタル変換器、および情報処理デバイスを備える検出器モジュールの一例示的実施形態を示す図である。
【図2】分析デバイスの一例示的実施形態を示す図である。
【図3】検出器モジュールを取り付けた支柱の一例を示す図である。
【図4】複数本の支柱、サーバ、およびワークステーションが、支柱の無線ネットワークを形成し、そこで放射源の位置を特定することができる様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1では、検出器モジュールの主要素、すなわち、
a)検出ユニットであって、シンチレーション結晶10、光検出器として働く、光電陰極を有する光電子増倍管20、および検出ユニットを安定化するために使用されるLED25からなる検出ユニット5、
b)情報処理デバイス40と、それが結合されたアナログ-デジタル変換器(ADC)50、
c)検出器モジュールの位置を格納するためのメモリデバイス85、
d)通信ネットワークインターフェース30a、ならびに
e)全地球測位システム(GPS)などの(オプションの)位置決定デバイス
を見ることができる。
【0030】
放射(例えばγ線放射)が、シンチレーション結晶10に入り、そのシンチレーション結晶内に吸収される。放射からの吸収に続く励起状態が、光の放出によって減衰する。次いで、光が光電陰極に誘導され、光電陰極は、光を吸収する結果、電子を放出している。結果として得られる電気信号が、光電子増倍管20内で増幅され、次いで、検出器電子回路(図1には示していない)に転送される。
【0031】
同時に、LED25が光を放出し、LED25が光電子像倍管20内に取り付けられているときにはその光が光電子増倍管20を通過し、または、図1に示されているように光電子増倍管の外側に取り付けられているときには、その光がシンチレーション結晶10を通過する。放出された光は、光電陰極によって吸収されている。LED25は、好ましくは、パルスモードで作動され、したがって、結果として得られる信号は主として矩形を確実に有する。
【0032】
検出器モジュールを安定化するために、放射により生じる信号とLEDにより生じる信号を互いに分離しなければならない。これらの信号を分離するために、測定された信号が第1のステップでADC50によってデジタル化される。
【0033】
デジタル化信号は解析され(例えばパルス波高および/またはパルス波形)、それにより、LEDにより生じるパルスを放射により生じるパルスから分離することが可能になる。
【0034】
追加のステップでは、必要に応じてデジタル化放射信号を安定化することができる。
【0035】
さらに、デジタル化放射信号は線形化される。信号をあらゆる検出器モジュール内で独立に線形化することには、後続の信号の処理および/または分析を単純にし、加速させることができるという大きな利点がある。例えば、異なる検出器モジュールから生じる複数の線形化したデジタル化放射信号を、信号のどんな追加の調整もせずに、(例えば分析デバイスによって)容易に追加することができる。さらに、照合すべき放射信号が線形化した形でもたらされる場合、照合プロセスをより効率的に実施することができる。照合プロセスの一例を、以下に図3を参照して示す。
【0036】
解析、安定化、および線形化は、ADC50に結合された情報処理デバイス40によって実施される。情報処理デバイス40は、信号に一意の識別子を割り当てること、または信号を構造化データ形式に符号化することなど、他のいくつかのタスクを実施することができる。
【0037】
さらに、情報処理デバイスは、特にデジタル化放射信号を格納するためのメモリデバイス80に結合される。したがって、放射信号の測定を、測定値を分析する後続のステップなしで実施することができる。このために、格納された放射信号と共にタイムスタンプを追加で格納することが有利である。
【0038】
情報処理デバイスは、検出器モジュールの位置を格納するための別のメモリデバイス85をもつ。位置は、例えば以下に説明するネットワークインターフェース30を介して手動で格納することができる。格納される位置に関してより柔軟性のある検出器モジュールを提供するために、モジュールは位置決定システム240に接続される。位置決定システム240は、情報処理デバイスに、検出器モジュールの実際の位置を供給する。実際の位置は、メモリデバイス85内に格納することができる。メモリデバイス内に実際の位置を格納することには、検出器モジュールが移動させられた後に位置を更新することができるという利点がある。更新プロセスは、手動で開始しても、検出器デバイスの移動を特定することのできる、ジャイロスコープなどの電子デバイスによって開始してもよい。
【0039】
位置決定デバイス240は、全地球測位システム(GPS)、無線航法システム、または検出器モジュールの位置を決定するのに適した他の任意のシステムとすることができる。
【0040】
別の実施形態では、位置決定システムに加えて、ジャイロスコープ、好ましくは微細加工したジャイロスコープ(図1には示していない)を、情報処理デバイス40または位置決定システム240に接続することができる。微細加工したジャイロスコープは、たとえGNSS信号またはRNS信号が利用できなくても、検出器モジュールの実際の位置を(最後に測定された位置から実際の位置を得ることによって)決定するために使用することができる。これは、例えば、必要なGNSS信号またはRNS信号がしばしば利用できない空港またはセキュリティ完備の入口および建物において必要となりうる。
【0041】
さらに、検出器モジュールは、図1に示すように、情報処理デバイス40の一部でよい通信ネットワークインターフェース30aを有する。通信ネットワークインターフェースは、無線通信インターフェース、例えばWLAN、WiMAX、WiFi、もしくはブルートゥース、または有線通信インターフェース、例えばイーサネット(登録商標)インターフェースまたはUSBインターフェースとすることができる。
【0042】
較正し、安定化し、デジタル化した放射信号は、通信ネットワークインターフェース30aを介して分析デバイスに伝送される。
【0043】
別の実施形態では、デジタル化放射信号の生データ(すなわち較正、安定化、および線形化していない放射信号)を、インターフェース30aを介して伝送することができる。したがって、費用のかかる複雑な計算を、伝送されたデータを受け取ったデバイスによって実施することができる。
【0044】
デジタル化放射信号を分析デバイス60に伝送する前に、放射信号は所定のデータ構造に符号化される。データ構造は、ヘッダセクションおよびデータセクションを含むことができる。好ましくは、ヘッダセクションは、(検出器モジュールのメディアアクセス制御(MAC)アドレスとすることができる)一意の識別子、およびメモリデバイス85内に格納された、または位置決定システム240から直接取得された、検出器システムの位置を保持することができる。データセクションは、較正し、安定化し、線形化し、デジタル化した放射信号を保持することができる。少なくとも検出器モジュールの位置および識別子、ならびに較正し、安定化し、線形化し、デジタル化した放射信号を格納するのに適した他の各データ構造、例えばXMLベースのデータ構造または構造化ファイルを使用することができる。
【0045】
信号を格納すること、および信号をインターフェースを介して伝送することは、非同期に実施できることを述べておかなければならない。
【0046】
結果として、本発明の検出器モジュールは、デジタル化し、較正し、安定化し、線形化した放射信号をもたらし、その放射信号は、さらに処理するために通信インターフェースを介して分析デバイスに伝送することができる。
【0047】
図2は、
a)デジタルデータ、好ましくは、1種または複数種の放射、特にX線放射、ガンマ線放射、または核粒子放射に対応する、較正し、安定化し、線形化し、デジタル化した放射信号を、図1を参照して説明した少なくとも1つの検出器モジュールから受け取るための通信ネットワークインターフェース30bと、
b)受け取ったデジタルデータを用いてエネルギースペクトルを生成するための選別器70、好ましくはマルチチャネルアナライザ(MCA)と、
c)第1のメモリデバイス91および第2のメモリデバイス92と、
d)比較器100と
からなる、本発明の分析デバイス60の一例を示す。
【0048】
検出器モジュールによってインターフェース30aを介して送出されるデータは、分析モジュールのインターフェース30bによって受け取られる。デジタル化データはMCAに転送され、そこで、受け取ったデータに基づくエネルギースペクトルが生成される。さらに、受け取ったデータは、第1のメモリデバイス91内に格納することができる。例えば、リビジョンセーフアーカイブ(revision-safe archiving)が必要となる場合、または受け取ったデータがさらなる分析に必要となる場合に、こうする必要がありうる。
【0049】
一実施形態では、MCA70が、受け取ったデータを、データがインターフェース30bによってもたらされるようなペースで選別することができない場合に、第1のメモリデバイス91を使用して、受け取ったデータをバッファリングすることができる。
【0050】
エネルギースペクトルは、その生成と同時に、第2のメモリデバイス92内に格納することができる。エネルギースペクトルは、たとえスペクトルの生成がまだ完了していなくても、メモリデバイス92を用いて格納できることに留意されたい。
【0051】
本発明の別の実施形態では、受け取ったデータおよび生成された1つまたは複数のエネルギースペクトルの格納に単一のメモリデバイスを使用できることを述べておかなければならない。
【0052】
分析のために、生成されたエネルギースペクトルは、そのエネルギースペクトルを、既知の、好ましくはしばしば検出されるガンマ崩壊図式の複数の予め定義されたエネルギースペクトル(テンプレートスペクトル)と比較することのできる比較器に転送される。複数のテンプレートスペクトルは、メモリデバイス92(または91)内に格納することができる。比較器100は、格納されたテンプレートスペクトルのうち少なくとも1つを要求し、要求したスペクトルを、MCA70によって転送されたスペクトルと比較する。要求したスペクトルが転送されたスペクトルと一致する場合、分析デバイスは、音声信号などの警報信号を出すことができる。
【0053】
本発明の別の実施形態では、分析デバイスが、インターフェースデバイス30bを介して、複数の異なる検出器モジュールからデジタルデータを受け取ることができる。デジタルデータが無線で伝送される場合、検出器モジュールの無線ネットワークを、ただ1つの分析デバイス60を要求してセットアップすることができる。伝送されたデータが一意の識別子(一意の識別子は例えばメディアアクセス制御(MAC)アドレスとすることができる)を含む場合、そのような識別子により、異なる検出器の異なるデータを分析デバイスが区別できるようになることが有利である。これまでのところ上で述べたように、受け取ったデータは、アーカイブ目的またはバッファリング目的でメモリデバイス91内に格納することができる。
【0054】
受け取ったデータは全てMCA70に転送され、MCA70は、受け取ったデータをエネルギースペクトルに追加(生成)する。したがって、生成されたエネルギースペクトルは、異なる検出器モジュールの位置およびモジュールの観測領域に応じて、単一の放射源または複数の異なる放射源のスペクトルを表すことができる。各検出器モジュールが、一意の識別子を含むデジタル化データをもたらすため、データをそれぞれの検出器モジュールに割り当てることができ、したがって、どの検出器モジュールがどの放射源を測定したかを特定することができる。検出器システムにさらなる分析機能を追加する際に、これが必要および/または有用となりうる。
【0055】
検出器モジュールによってもたらされるデータが、検出器モジュールの位置を含むとき、分析デバイス60は、測定された放射源の位置を特定する機能を実現することができる。
【0056】
図3は、検出器モジュールを取り付けた支柱の一例を示す。支柱は、支持スタンド220、ハウジング250、およびテープカートリッジ230からなる。本発明によれば、支柱200はさらに、検出器モジュール5、通信ネットワークデバイス30aならびにメモリデバイス80および85を含む情報処理デバイス40を備える。情報処理デバイス40は、検出器モジュール5に結合される。さらに、支柱は、位置決定システム240(例えばアンテナデバイス付きGPSシステム)を備える。支持スタンド220は、電源210、好ましくはバッテリまたは蓄電池を収容する。
【0057】
さらに、支柱は、通信ネットワークインターフェース(図3には示していない)を備える。取り付けられた検出器モジュールの通信インターフェースを、このネットワーク通信インターフェースと接続することができる。本発明の一実施形態では、支柱のネットワーク通信インターフェースを、イーサネット(登録商標)インターフェースとすることができる。別の実施形態では、支柱のネットワーク通信インターフェースを、任意のタイプの無線通信インターフェースとすることができる。したがって、取り付けられた検出器モジュールのネットワークインターフェースタイプとは無関係に有線または無線の検出器ネットワークを構築するために使用することのできる支柱が、本発明により提供される。
【0058】
検出器モジュールは、外側からモジュールが見えないように、支柱ハウジング内に取り付けられる。さらに、ハウジングは、内蔵される位置決定システム用の、また通信ネットワークデバイスが無線モードで作動される場合には通信ネットワークデバイス用の、アンテナ設備を提供することができる。さらに、上述したジャイロスコープも支柱ハウジング内に取り付けることができる。
【0059】
図4は、複数本の支柱、サーバ、およびワークステーションが、支柱の無線ネットワークを形成し、そこで放射源の位置が特定される様子を示す。
【0060】
図3を参照して上述した支柱を複数本用いて、支柱の無線ネットワークを形成することができる。図4に示す支柱200は全て、本発明の支柱によって提供される検出器設備を提供することができる。各支柱200は、通信インターフェース30aを介してサーバ300に接続される。サーバ300は、図2を参照して上述した分析機能性を与えるために必要なハードウェアおよびソフトウェアを装備した、汎用コンピュータとすることができる。
【0061】
サーバ300は、ワークステーション310に(無線または有線で)接続することができる。ワークステーション310は、支柱の位置ならびに検出された放射源の位置Tを可視化するための可視化デバイスとなっている。図4では、放射源が入っているバッグの位置がディスプレイに示されている。図4は、6本の支柱を用いた支柱ネットワークを示す。6本よりも多くの、または6本よりも少ない支柱を用いたネットワークを形成することができる。放射源の位置を特定する機能を実現すべき場合、少なくとも2本の支柱を支柱ネットワークの構築に使用すべきである。
【0062】
さらに、支柱は、ワイヤ(例えばイーサネット(登録商標)など)によって、サーバまたは分析デバイスと接続することができる。支柱および検出器モジュールの動作電力は、PoE(パワーオーバイーサネット(登録商標))を介してもたらすことができる。支柱は、較正検証用に40K(KCl)に囲まれた直径2"×長さ3"のNaI(Tl)シンチレーション検出器、中性子検出用の大容積3He検出器、LED安定化付きのDSPベースの電子回路、およびWLAN無線通信からなるものとすることができる。
【0063】
さらに、複数の異なる検出器モジュールを支柱の内側に取り付け、したがって、マルチ検出器支柱を実現することができる。各検出器モジュールは、モジュールのネットワーク通信インターフェースを介して分析デバイスに、または支柱のネットワーク通信インターフェースを介して分析デバイスに、直接接続することができる。後者の場合、支柱は、複数のネットワーク通信インターフェースをもつことができる。
【符号の説明】
【0064】
5 検出器モジュール
10 シンチレーション結晶、シンチレーション検出器
20 光電子増倍管、光検出器
25 LED
30a 通信ネットワークインターフェース、通信ネットワークデバイス
30b 通信ネットワークインターフェース、インターフェースデバイス
40 情報処理デバイス
50 アナログ-デジタル変換器、ADC
60 分析デバイス
70 選別器、MCA
80 メモリデバイス
85 メモリデバイス
91 第1のメモリデバイス
92 第2のメモリデバイス
100 比較器
200 支柱
210 電源
220 支持スタンド
230 テープカートリッジ
240 位置決定システム、位置決定デバイス
250 ハウジング
300 サーバ
310 ワークステーション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種または複数種の放射、特にX線放射、ガンマ線放射、または核粒子放射を測定するための検出器モジュール(5)であって、
シンチレーション検出器(10)、および前記シンチレーション検出器によって発生した光の強度と既知の関係をもつ電子パルスをもたらす光検出器(20)からなる検出ユニットと、
前記光検出器に結合され、前記光検出器の前記アナログ出力信号をデジタル化放射信号に変換するアナログ-デジタル変換器(ADC)(50)と、
前記ADCに結合され、前記デジタル化放射信号を較正し、安定化し、線形化する方法を実施する情報処理デバイス(40)と、
検出器モジュールの位置を格納するためのメモリデバイス(85)と
を備える検出器モジュール。
【請求項2】
前記メモリデバイス(85)内に格納すべき前記検出器モジュールの位置を得るための位置決定システム(240)をさらに備える、請求項1に記載の検出器モジュール。
【請求項3】
前記位置決定システム(240)が、全地球的航法衛星システム(GNSS)または無線航法システムである、請求項2に記載の検出器モジュール。
【請求項4】
無線通信インターフェース、例えばWLAN、WiMAX、WiFi、またはブルートゥース、および有線通信インターフェース、例えばイーサネット(登録商標)インターフェースまたはUSBインターフェース、およびそれらの組合せのうちの少なくとも1つである、通信インターフェース(30a)をさらに備える、請求項1から3のうちの一項に記載の検出器モジュール。
【請求項5】
前記情報処理デバイス(40)がさらに、前記較正し、安定化し、線形化し、デジタル化した放射信号を、前記通信ネットワークインターフェースを介して分析デバイス(60)に伝送する方法を実施する、請求項4に記載の検出器モジュール。
【請求項6】
前記検出ユニットと光学的に接続された少なくとも1つの発光ダイオード(LED)(25)、好ましくはパルスLEDをさらに備え、それにより、
-LEDパルスが、前記光検出器による電子LEDパルスの発生を引き起こし、
-前記ADCが、前記光検出器の前記アナログLEDパルスをデジタル化LED信号に変換し、
-前記デジタル化放射信号を較正し、線形化し、安定化する前記方法が、前記デジタル化LED信号を使用して、少なくとも、
-前記デジタル化LED信号をパルス波形解析によって特定するステップと、
-複数の較正および安定化パラメータを決定するステップと、
-前記決定された較正、線形化、および安定化パラメータを、前記デジタル化放射信号に適用するステップと
を実施することによって、前記デジタル化放射信号を較正し、線形化し、安定化する、請求項1から5のうちの一項に記載の検出器モジュール(5)。
【請求項7】
前記情報処理デバイスが、前記較正し、安定化し、線形化し、デジタル化した放射信号を格納するための別のメモリデバイス(80)を備え、前記デジタル化放射信号を較正し、線形化し、安定化する前記方法が、前記較正し、線形化し、安定化し、デジタル化した放射信号を格納するステップを含む、請求項1から6のうちの一項に記載の検出器モジュール。
【請求項8】
前記情報処理デバイスが、前記較正し、安定化し、線形化し、デジタル化した放射信号を伝送する前記方法の前に、1つまたは複数の較正し、安定化し、線形化し、デジタル化した放射信号を所定のデータ構造に符号化し、それにより前記データ構造が、少なくともヘッダセクションおよびデータセクションを含む方法を実施する、請求項4から7のうちの一項に記載の検出器モジュール。
【請求項9】
前記ヘッダセクションが、タイムスタンプ、検出器識別子、シーケンス番号、検出器設定値、および前記メモリデバイス(85)内に格納された検出器位置のうち少なくとも1つを含み、前記データセクションが、複数の較正し、安定化し、線形化し、デジタル化した放射信号を含む、請求項8に記載の検出器モジュール。
【請求項10】
ネットワーク互換デバイス、特に放射検出器を収容する手段と、ネットワーク互換デバイスを接続するように適合された通信ネットワークインターフェースとを備えることを特徴とする、支柱(200)、特に可搬型支柱。
【請求項11】
前記ネットワーク互換デバイスが、外側から見えないように支柱の内側に取付可能な、1種または複数種の放射、特にX線放射、ガンマ線放射、または核粒子放射を測定するための検出器モジュールであって、
シンチレーション検出器(10)、および前記シンチレーション検出器によって発生した光の強度と既知の関係をもつ電子パルスをもたらす光検出器(20)からなる検出ユニットと、
前記光検出器に結合され、前記光検出器の前記アナログ出力信号をデジタル化放射信号に変換するアナログ-デジタル変換器(ADC)(50)と、
前記ADCに結合され、前記デジタル化放射信号を較正し、安定化し、線形化する方法を実施する情報処理デバイス(40)と
を備える検出器モジュールである、請求項10に記載の支柱。
【請求項12】
電源(210)、好ましくは蓄電池またはバッテリをさらに備える、請求項10または11に記載の支柱。
【請求項13】
前記検出器モジュールが前記較正し、安定化し、線形化し、デジタル化した放射信号を無線通信手段を介してもたらす場合にアンテナとして働く、請求項10から12のうちの一項に記載の支柱。
【請求項14】
1種または複数種の放射、特にX線放射、ガンマ線放射、または核粒子放射を検出するための検出器システムであって、請求項10から13のうちの一項に記載の少なくとも1本の支柱(200)と、好ましくは前記少なくとも1本の支柱の検出器モジュールによってもたらされるデジタルデータを分析するために前記少なくとも1本の支柱と動作可能に接続された分析デバイス(60)とを備える、検出器システム。
【請求項15】
デジタルデータを分析することが、前記少なくとも1本の支柱の前記検出器モジュールによって検出された放射放出源の位置を特定することを含む、請求項14に記載の検出器システム。

【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−504749(P2012−504749A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517909(P2011−517909)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【国際出願番号】PCT/EP2009/059008
【国際公開番号】WO2010/007071
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(511011687)イーツェーイクス・テクノロジーズ・ゲーエムベーハー (2)
【Fターム(参考)】