説明

位置測位装置を有する移動体情報端末

【課題】 CPUの負荷に応じて測位部を選択し、CPU負荷の分散、軽減を図る。また、場面に応じて必要とする測位精度の測位部を選択する。
【解決手段】 GPS測位部20は、第1測位部21と第2測位部22とを備える。第1測位部21は準天頂衛星から高精度測位情報を受信し、高精度測位情報に基づき、第2測位部22よりも精度の高い高精度測位方式で測位する。第2測位部22はGPS単独測位を行なう。切替部24は2つの測位部を選択的に切り替える。切替部24は、判定部30が出力する判定信号に従い測位部を切り替える。判定条件設定部33は判定条件を設定し判定条件信号として選択判定部34に出力する。選択判定部34は入力した判定条件信号と車速検知部90等から入力される判定対象信号81等に基づきどちらの測位部を選択するかの判定を行う。選択判定部34は判定結果を判定信号として切替部24に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の情報端末に関する。また、位置測位装置を有する移動体情報端末に関する。例えば、GPS(グローバル・ポジショニング・システム)装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のカーナビゲーション装置では、精度が数m程度のGPSコード測位と地図照合機能を組み合せた方式、あるいは精度が1m以下となるDGPS(ディファレンシャル・グローバル・ポジショニング・システム)などの高精度測位が使用されている。この従来のカーナビゲーション装置では、いずれかの方式が採用されており、例えば前記の複数の測位方式を切り替えて使用するようなものはない。
【0003】
一方、カーナビゲーション装置に組み込まれているCPU(セントラル・プロセッシング・ユニット)は、GPS測位に関する処理の他に、例えば、画像処理などを並列処理で実行する。並列処理を行う場合、GPS測位において高精度測位を使用すると、CPUの負荷が大きくなり画像処理などの並列処理の動作が遅延する原因となる。そのため、CPUの負荷を軽減するためにGPS測位の測位精度を切り替えたい場合がある。
【0004】
また、例えば、自動車が時速100kmで高速道路を走行しているときは、カーナビゲーション装置の利用者は、1秒ごとの測位において測位精度が数十センチ程度であることまで必要としない。このような場合は測位精度を低下させても構わない。逆に、目的地に近くなった場合や、なじみのない不慣れな地域を低速で走行する場合などは、利用者は、高い測位精度を求める。このようなことから、場面によって、測位精度の必要性は変化する。従って、場面に応じて測位精度を切り替えたい場合がある。
【0005】
従来の技術では、GPS衛星からの電波を受信して行うGPS測位を、これに替えて、DAB(Digital Audio Broadcasting)信号の中から送信識別情報を検出して現在位置を測位する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、従来の技術では、GPSの測位モードを変更する一つの技術として、GPS測位動作の時間間隔を変化させる技術も開示されている(例えば、特許文献2。)。
【0006】
しかし、上記の先行技術(特許文献1及び特許文献2)においては、いずれもGPS測位部の測位精度を切り替える技術を開示するものではない。
【特許文献1】特開平11−271076号公報
【特許文献2】特開平10−206520号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、CPUの負荷に応じて測位部を選択し、CPU負荷の分散、軽減を図ることを目的とする。また本発明は、場面に応じて必要な測位精度の測位部に選択的に切り替える位置測位装置を提供することを目的とする。さらに本発明は、測位部を切り替えるに際し、切り替えの判定を行う位置測位装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の位置測位装置を有する移動体情報端末は、位置を測位する位置測位装置を有する移動体情報端末において、
前記位置測位装置は、
測位情報を受信して位置を測位する少なくとも2つの測位部と、
前記少なくとも2つの測位部のうちいずれの測位部を選択して測位するかの判定に用いる判定条件を設定し判定条件信号として出力する判定条件設定部と、
前記判定条件設定部の出力した判定条件信号を入力し、入力した判定条件信号に基づいて前記少なくとも2つの測位部のうちいずれを選択するかの判定を行い、判定結果を判定信号として出力する選択判定部と、
前記選択判定部の出力した前記判定信号を入力し、入力した前記判定信号に基づいて前記少なくとも2つの測位部による測位を選択的に切り替える切替部と
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、CPUの負荷を軽減することができる。
【0010】
本発明によれば、場面に応じてその場面に必要な測位精度を提供することができる。
【0011】
本発明によれば、測位部を選択する判定において詳細に条件を設定し、多様な判定を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
実施の形態1.
図1から図8を用いて、測位部の切り替えを行う構成を備えた、実施の形態1における移動体情報端末を説明する。図1は、本実施の形態1の移動体情報端末が使用されるシステムである。図1は、自動車10(移動体の一例)に装備された移動体情報端末が衛星群から測位情報を受信して位置を測位する様子を示す図である。通常、GPS測位は、4機の衛星からの測位情報を受信して行う。実施の形態1におけるシステムでは、4機の衛星のうち少なくとも一機は、準天頂衛星200である。
なお、準天頂衛星については、後に詳しく説明する。
準天頂衛星200及びGPS衛星300(準天頂衛星200以外の衛星をいう。)が送信する測位情報を、アンテナ26により移動体情報端末が受信している。さらに、測位情報配信センター400が、後述する電子基準点網から収集した測位補正情報を準天頂衛星200に向け送信している。
【0013】
準天頂衛星200とは、通常の衛星に比べて高い仰角の衛星をいい、例えば仰角は60度以上を確保することができる。実施の形態1のシステムでは、GPS測位に必要な4機の衛星のうち、少なくとも1機は準天頂衛星200である。
次に図2から図5を用いて、準天頂衛星200を説明する。
【0014】
図2は、準天頂衛星200の軌道をあらわしている。準天頂衛星200は、赤道面から約45度の傾斜角及び、例えば離心率0.099程度の周回軌道により、遠地点で例えば約40、000km、近地点で例えば約32、000kmの上空を地球の自転に合わせて1日に1周回する。また、準天頂衛星200は、昇交点赤経(赤道面との交点)において120度ずつ離れるように3機が配置される。
【0015】
図3は、地上を固定して考えた場合に、図2における準天頂衛星200の軌跡を示している。図3に示すように、準天頂衛星200は、「8の字」を描くように周回している。3機の準天頂衛星200は、軌道面を異にするが8時間ずつ交代するように、切れ目なく日本上空に位置する。また、地域を日本で考えた場合、仰角が60度以上の準天頂衛星200が常に日本上空に存在することになる。切れ目なく日本上空に位置しているため、仰角が60度以上の準天頂衛星200が常に存在し、移動体情報端末が地上で準天頂衛星200から情報を受ける際、ビルの谷間でも電波を遮られることがない。
【0016】
図4(出典:www2.crl.go.jp/ka/control/efsat/index−J.html)は、準天頂衛星200が高仰角であることを、静止衛星との比較において示す図である。静止衛星は仰角が小さいため、ビルなどに電波がさえぎられる。これに対して、準天頂衛星200は仰角が60度以上(図4では60度以上とあるが、70度以上も可能である)と大きいため、ビルの谷間でも電波が遮られることが少ない。
【0017】
現在打ち上げられているGPS衛星のうちのいずれか4機からの測位情報を受信することでGPS測位ができる。しかし、これらのGPS衛星はいずれも仰角が低いため、これら衛星からの測位情報は前記のようにビルの谷間などによりブロッキングされ、4機すべての測位情報を受信できる確率は高くない。そのため、4機からの測位情報を受信できず測位できない場合が多く発生する。ところが、測位に必要な衛星4機のうちに、高仰角の準天頂衛星200が1機あることにより、4機の衛星から測位情報を受信できる確率が大きくなる。加えて、前記のように準天頂衛星200は、少なくとも1機は必ず日本上空に存在するため、準天頂衛星200も含めた4機の衛星から測位情報を受信できる確率は格段に高くなる。
このように準天頂衛星200は、高仰角であることと、3機の準天頂衛星200のうち1機は日本上空に存在することにより、GPS測位の確実性を高くする。
【0018】
図5は、準天頂衛星200を使用した高精度測位のシステムを示す図である。図5に示す準天頂衛星200を用いた高精度測位システムにより、測位精度が数十cmから数cmの誤差範囲の測位が可能となる。
GPS衛星300は、測位情報を放送する。準天頂衛星200と静止衛星の一例であるMTSAT450とは、GPS補完衛星でもあり、測位情報として、例えば、ディファレンシャル測位補正データとインテグリティデータと等を有する高精度測位情報を放送する。ここでは、MTSAT450を用いているが静止衛星の一例として用いたものであり、他の静止衛星であっても構わない。ユーザは、移動体情報端末を用いて、4機の衛星から測位情報を受信する。衛星の組み合わせとしては、例えば、1機の準天頂衛星200と3機のGPS衛星300、1機の準天頂衛星200と3機の静止衛星、あるいは、1機の準天頂衛星200とGPS衛星300とMTSAT450とによる3機の衛星との組み合わせがある。このように、少なくとも準天頂衛星200を含む4機の衛星群により測位に必要な位置情報を得ることができる。また、4機に限らず4機より多くの衛星群により測位に必要な位置情報を得ても構わない。
【0019】
地上には、測位情報配信センター400、全国に配置される電子基準点を配置する。電子基準点は、固定点として自己の基準位置を有する。全国に配置される電子基準点は、例えば、隣接する複数の電子基準点で取り囲む範囲を1つのメッシュとして全国を電子基準点網で網羅する。全国に配置される電子基準点は、上記4機以上の衛星群により測位に必要な位置情報を得る。そして、自己の有する基準位置と上記4機以上の衛星群により得た位置情報による位置との誤差等の測位補正情報を測位情報配信センター400に出力する。ここでは、全国を電子基準点網で網羅するため、メッシュ内のある位置においても補正精度を向上させることができる。測位情報配信センター400は、全国に配置される電子基準点より測位補正情報を入力し、入力された測位補正情報を収集、統合して収集統合情報を作成し、所定のアンテナを介して準天頂衛星200等の衛星に送信する。上記準天頂衛星200等は、測位情報配信センター400より所定のアンテナを介して準天頂衛星200等の衛星に送信された収集統合情報に基づき、高精度測位情報を放送する。
ユーザは、遮蔽が少ない高仰角である準天頂衛星200を少なくとも用いることで、山影等に位置することによる遮蔽や建物等の障害物による遮蔽を極力回避し、遮蔽を回避することにより測位可能時間を改善することができる。また、ユーザは、少なくとも準天頂衛星200を含む4機以上の衛星群と地上に配置された測位情報配信センター400及び全国に配置される電子基準点とを有するシステムにより補正された高精度測位情報を得ることにより、高精度の位置情報を得ることができる。このように、ユーザは、準天頂衛星200を用いることにより、高精度の位置情報、例えば、都会のビル街や山間部等において、数十cmから数cmの誤差範囲の精度で位置情報を得ることができる。
【0020】
以上のように、準天頂衛星200及び電子基準点網のシステムを使用することで高精度測位が可能となる。
図6〜図8は、前記準天頂衛星200を用いた高精度測位と、通常精度の測位とを切り替える構成の本実施の形態1に係る移動体情報端末を示している。
ここで「通常精度の測位」とは前記の準天頂衛星200と電子基準点網を用いた測位よりも測位精度が劣る、たとえばGPS単独測位がある。GPS単独測位は精度が劣るが、その代わりに位置計算におけるCPU処理の負担が軽く、準天頂衛星200の測位情報を利用した高精度測位よりもCPUの負荷が軽くなる。
【0021】
図6は、実施の形態1に係る移動体情報端末の構成を示す図である。GPS装置100(位置測位装置の一例)とマルチメディア装置50とがバス80を介してCPU70に接続されている。ここで、マルチメディア装置50とは、動画像や音声、文字等を扱う装置であり、その処理は主としてCPU70が行う。GPS装置100にはナビゲーション部60、車速検知部90およびCPU負荷センサ71が接続されている。
GPS装置100は、GPS測位部20、判定部30、課金部40を備えている。
GPS測位部20は、第1測位部21、第2測位部22、衛星受信部23、切替部24、測位時間モニタ部25を備えている。第1測位部21は第2測位部22よりも高精度の測位を行う。例えば、第1測位部21は、準天頂衛星200及び電子基準点網システムよる高精度測位を行う。第2測位部22は、第1測位部21よりも精度の低い測位を行う。例えば、GPS単独測位を行う。なお、第1測位部21が第2測位部22よりも精度が高ければよく、準天頂衛星200による高精度測位とGPS単独測位による組み合わせに限らない。
判定部30は、判定条件入力部31、判定条件記憶部32、判定条件設定部33、選択判定部34を備えている。
課金部40は、課金処理部41、課金情報記憶部42、課金情報送信部43を備えている。
また、ナビゲーション部60は、メッセージ表示部61、地図情報記憶部62を備えている。
【0022】
実施の形態1の移動体情報端末は、判定部30において第1測位部21と第2測位部22のいずれの測位部を選択して測位するかの判定を行う。そして、判定部30は、判定結果を判定信号としてバス80を介してGPS測位部20に出力し切替部24がその判定信号を入力する。入力した判定信号にしたがって、切替部24は第1測位部21と第2測位部22のいずれかの測位部に切り替える。切り替えられた測位部は衛星受信部23からの測位情報を入力して測位を行い、測位結果をナビゲーション部60に出力する。そして、ナビゲーション部60は測位結果をナビゲーションに利用する。以下、図7を用いて説明する。
【0023】
図7は、判定を行い、判定結果にしたがって測位部を選択的に切り替えて測位を行うまでの流れを説明する図である。
【0024】
S110において、ナビゲーション部60は、測位機能を使用するかどうかの信号を発する。ナビゲーション部60が測位機能を使用しない場合はスタートへ戻る。ナビゲーション部60は測位機能を使用する場合には、測位機能使用信号をCPU70に出力する。CPU70は、測位機能使用信号を入力すると、バス80を介して、判定部30に測位を指令する測位指令信号を出力する。判定部30は測位指令信号を入力すると、第1測位部21と第2測位部22とのいずれを選択して測位するかの選択の判定を開始する。
【0025】
S120において、判定部30が測位部の選択の判定を行う。以下、判定部30の行う判定について詳しく説明する。判定においては、あらかじめ判定条件入力部31に判定条件が入力され、入力された判定条件を判定条件記憶部32が記憶している。判定条件設定部33は、判定条件記憶部32が記憶した判定条件を入力し、判定条件を設定する。判定条件を「設定する」とは、入力した判定条件を選択判定部34が処理可能なように調整、変換等することをいう。判定条件設定部33は判定条件を判定条件信号として選択判定部34に出力する。選択判定部34は入力した判定条件信号に基づき判定を行う。図8は、入力して設定する判定条件設定のいくつかの例を示したものである。図8のうち、「1.自動車10の車速」を例にとり、判定の動作を説明する。自動車10は移動体の一例である。
自動車10の車速を判定条件とする場合、判定条件入力部31には、例えば、
「V≦時速100km」
を判定条件式として、あらかじめ入力する。Vは自動車10のリアルタイム車速を示す変数である。そして、この判定条件式をもとに選択判定部34が判定をする。
判定条件入力部31には、前記の「V≦時速100km」の判定条件式を、例えばプログラムとして入力する。また、時速100kmとは単なる例示の定数であり、入力時に適宜決めることができる。
次に、判定条件記憶部32は、入力された前記式を記憶する。
次に、判定条件設定部33は、判定条件記憶部32から前記の判定条件式を入力し、選択判定部34が処理可能な状態に設定する。判定条件設定部33は、設定後、前記の判定条件式を判定条件信号として選択判定部34に出力する。
次に、選択判定部34の行う判定を述べる。選択判定部34は、判定条件信号として入力した前記の判定条件式「V≦時速100km」により判定を行う。判定においては、車速検知部90が車速を検知し、この車速を判定対象情報81として選択判定部34に出力する。例えば、検知した車速が時速40kmとすると、選択判定部34は、前記の判定条件式「V≦時速100km」においてVを「時速40km」として判定を行う。この場合は判定条件式を満たすこととなり、判定条件式を満たす場合に選択されるべき測位部を選択する。
通常は、時速100km以下の場合(車速が遅い場合)は、高精度の測位を行う第1測位部21を選択するように判定を行う。高速で走行する場合は精度の高い測位はあまり必要ない一方、低速で裏道を走行するようなときは、精度の高い測位が必要だからである。選択判定部34は、例えば車速が時速40kmであったため、第1測位部21を選択する判定を下した場合、その結果を判定信号として切替部24へ向け出力する。図6においては、選択判定部34の出力する判定信号は、バス80からGPS測位部20を介して切替部24に入力される。
【0026】
S130において、切替部24は入力した判定信号に基づいて、準天頂衛星200及び電子基準点網のシステムによる高精度測位を行う第1測位部21に切り替える。第1測位部21は、衛星受信部23から測位情報を入力して測位を行う。
ここで、課金部40は、第1測位部21が測位を行う際、課金の必要がある場合は課金を行う。まず、課金処理部41は、第1測位部21が測位を行う際に、測位に連動して、課金の必要があるかどうかを判断し必要のある場合には課金を行う。例えば、課金処理部41は、準天頂衛星200からの測位情報に課金に関する信号である課金信号が含まれているかどうかを確認し、課金信号が含まれている場合はその課金信号に基づいて課金を行う。課金の際は、測位時間モニタ部25のモニタした第1測位部21の測位にかかった積算測位時間を課金処理に用いることができる。課金情報記憶部42は、課金処理部41の行った課金の処理結果を課金情報として記憶する。課金情報送信部43は課金情報記憶部42の記憶した課金情報を適宜、課金情報を取り扱う課金センター局(図示していない)等にアンテナ44を介して送信する。課金情報送信部43は、具体的には、DSRC(Dedicated Short Range Communication)や携帯電話、あるいは衛星通信(準天頂衛星200を含む)を用いても構わない。課金に際しては、デビットカードやクレジットカードを用いることができるものとする。これらを利用する場合、課金情報送信部43は課金情報を課金センター局であるクレジットカード会社に送信する。また、デビットカードやクレジットカードを利用する場合の他、課金処理部41は、プリペイドカード挿入部(図示していない)を備え、プリペイドカードを挿入することにより課金処理部41において直接プリペイドカードによる支払いができるようにしてもよい。すなわち、課金処理部41はプリペイドカードの残高を書き換える機能を有するものでもよい。
前記の課金については以下のビジネスモデルが考えられる。測位情報配信センター400は、高精度測位が可能な測位情報を有償で提供する。この場合、測位補正情報の他、前記の課金信号を衛星(準天頂衛星200を含む)に送信する。衛星は受信した課金信号を含む測位情報を地上の移動体に向け配信する。課金信号を含む測位情報は有償である。移動体に備えられた移動体情報端末は、有償の測位情報を利用する場合には、前記のように課金部40にて課金を行い課金情報を課金センター局(例えば、クレジットカード会社)に送信する。測位情報の利用者はクレジットカードの契約をしており、課金信号を含んだ有償の測位情報を利用した後は、利用代金をクレジットカード会社(課金センター局の例)に支払う。クレジットカード会社は、測位情報配信センター400に前記利用者の測位情報利用に関する支払を行う。プリペイドカードの場合は、測位情報センター400がプリペイドカードを発行し測位情報の利用を希望する者に販売、配布等を行う。なお、測位利用者が無償の測位を希望する場合も考慮し、第2測位部による測位は無償とし、手動による切り替え、あるいは判定条件の設定により第2測位部を選択するようにして無償測位を選択できるようにしても構わない。
第1測位部21が測位する際に課金する場合を述べたが、第1測位部21と第2測位部22のいずれかが測位する場合に課金しても構わない。
【0027】
S140において、第1測位部21は、測位結果をナビゲーション部60に出力する。ナビゲーション部60は、入力した測位結果を利用してナビゲーションを行う。第1測位部21が測位結果を出力した後は、図7において、スタートへ戻り、再び以上のステップを繰り返す。
【0028】
S150に進むのは、前記の判定条件式「V≦時速100km」において、検知した車速が時速100kmを超える場合である。前述のように高速走行時は高精度測位の必要は低いので、選択判定部34は、通常精度の第2測位部22を選択するように判定をする。この場合も第1測位部21を選択した場合と同様に、判定条件信号を切替部24に向け出力し、以下は第1測位部21の場合と同じである。
【0029】
前記のS120においては、自動車10の車速を例にとり判定の動作について述べた。以下は、図8に示す「1.移動体の車速」以外のそれぞれについて説明する。
【0030】
判定条件設定部33が、移動体が走行する地域の危険度について判定条件を設定する場合を説明する。「危険度」とは、例えば、冬には積雪が多くて雪でどこが道路かわからないとか、山岳地帯で道幅が狭く谷への落下危険があるとか、都市部ではあるが道路が入り組んでおり事故が多発している地域等、何かしらの危険を有する地域であることを表示する指標である。危険地帯の範囲は、判定条件入力部31に入力する。例えば、座標を3点以上入力し、その点を結ぶ多角形の範囲を指定範囲としてもよい。
判定条件設定部33は、前記危険地域の範囲に移動体が存在するかどうかについて、選択判定部34が処理可能なように判定条件を設定する。判定条件設定部33は設定した判定条件を判定条件信号として選択判定部34に出力する。
選択判定部34が判定を行う場合は、自動車10の現在位置を知らなければ危険地域にいるどうか判断できない。そのため、判定に用いる現在位置を一度測位する必要がある。この場合、一度、高精度測位で測位し、判定に用いる現在位置を取得する。
【0031】
次に、判定条件設定部33が、積算測位時間を判定条件として設定する場合について説明する。この場合、高精度測位を行なう第1測位部21により測位を行なう場合は有償であり、通常精度の第2測位部22で測位する場合は無償であるとする。積算測位時間を判定条件とするとは、例えば、「準天頂衛星200の測位情報を用いた第1測位部21による有償の測位は、月あたり10時間以内」と定められているような場合に、ひと月の測位時間が積算で10時間以下かどうかを判定する。前記の「月あたり10時間以内」を例にとれば、判定条件設定部33は、例えば、判定条件式として、
「積算測位時間≦月あたり10時間」
の判定条件式を選択判定部34が処理可能な状態に設定し、この判定条件式を選択判定部34に判定条件信号として出力する。選択判定部34は、リアルタイムで積算測位時間を判定対象情報83として測位時間モニタ部25から入力する。積算測位時間が10時間を越えて前記判定条件式を満たさない場合は、選択判定部34は、第1測位部21による有償の測位を、無償の第2測位部22による測位に切り替える判定を行なう。この結果を判定信号として切替部24に出力する。以下の動作は車速の場合と同様である。
【0032】
次に、判定条件設定部33が、測位結果を反映する地図の尺度に基づいて判定条件を設定する場合を説明する。「測位結果を反映する地図」とは、例えば、ナビゲーション部60における表示部(図示していない)に表示される地図であって、GPS測位部20の測位結果である自動車10の位置が表示されるものをいう。この地図は地図情報記憶部62においてDVD(Digital Versatile Disk)やHDD(Hard Disk Drive))等に記憶されている。関東一円の地図を利用するような場合には高精度の測位は必要がないが、ナビゲーション部の表示部に詳細な地図を表示して目的地を探すような場合には高精度の測位が必要である。第1測位部21が高精度であり、第2測位部22が通常精度であることは前記の場合と同様である。判定条件設定部33においては、判定条件として、
「表示部に表示される地図の尺度≦地図の尺度(設定値)」
の判定条件式を選択判定部34が処理可能な状態に設定し、この判定条件式を選択判定部34に判定条件信号として出力する。「表示部に表示される地図の尺度」は、ナビゲーション部60から判定対象情報82として選択判定部34に入力される。右辺の地図の尺度は、あらかじめ設定する。この判定条件式により選択判定部34が判定を行なう。以下の動作は車速の場合と同様である。
【0033】
次に、判定条件設定部33が、CPU70の負荷について判定条件を設定する場合について説明する。CPU70の負荷が所定の負荷以上の場合は、負荷の小さい通常精度の第2測位部22を選択する判定を行う。
判定条件設定部33は、判定条件として、CPU70の負荷の状態を判定条件として設定する。
「CPU70のリアルタイム負荷≧所定のCPU70の負荷(設定値)」
の判定条件式を選択判定部34が処理可能な状態に設定し、この判定条件式を選択判定部34に判定条件信号として出力する。「CPUのリアルタイム負荷」はCPU負荷センサ71から判定対象情報84として選択判定部34に入力される。
右辺の「所定のCPU負荷」はあらかじめ設定される。CPU負荷が所定値以上の場合は、通常精度の第2測位部22を選択すべき判定を行う。以下の動作は車速と同様である。
【0034】
次に、判定条件設定部33が、目的地との距離を判定条件に設定する場合を説明する。目的地が近い場合は高精度測位を必要とすることが多いから、目的地と現在位置とが所定距離以内かどうかを判定する。判定には現在位置が必要であるため、一度、GPS測位部20により測位する。目的地との距離を求める場合は、数十cm級の精度は通常必要としないから、測位は通常精度の第2測位部22で測位すれば足りる。判定条件設定部33は、判定条件式として、次の判定条件式を設定する。
「目的地と現在位置との距離≦所定の距離(設定値)」
の判定条件式を選択判定部34が処理可能な状態に設定し、この判定条件式を選択判定部34に判定条件信号として出力する。選択判定部34は、あらかじめナビゲーション部60に入力している目的地の座標と、GPS測位部20が測位中であればその測位結果を使用し、これをナビゲーション部60から判定対象情報82として入力する。現在位置の測位結果がない場合には、前記のように通常精度の第2測位部22により判定に用いる現在位置の取得のための測位を行う。そして、前記判定条件式により判定する。選択判定部34は、目的地との距離が所定の距離以下の場合、高精度測位の第1測位部21を選択すべき判定を行う。以下の動作は車速の場合と同様である。
【0035】
次に、判定条件設定部33が、道路の等級を判定条件に設定する場合を説明する。「道路の等級」とは、道幅が広い、車線が多い等の点からみた道路規模を示す指標である。道路の等級はあらかじめ決定してあり、例えば、地図情報記憶部62に記憶される地図情報の道路に付してあるものとする。
例えば、高速道路や主要国道を走行中する際は進行すべき方向は明らかなので、高精度測位は要求されない。一方、道幅の狭い入り組んだ裏道を走行するような場合は高精度測位が要求される。したがい、道路の等級を判定条件とする。判定条件設定部33は、判定条件式として、
「移動体が現在走行している道路の等級値≦所定の等級値(設定値)」
の判定条件式を選択判定部34が処理可能な状態に設定し、この判定条件式を選択判定部34に判定条件信号として出力する。
例えば、等級として道路に数字を付する。等級として数字を付与しておけば、測位部が3つある場合には、前記の判定条件式を増やし、等級を3つの領域に分けて判定をおこなうことができる。
判定を行うには走行中の道路の等級を知る必要があるが、それには、一度、第1測位部21による高精度測位を行なう。そして、地図情報記憶部62の地図情報を照合して走行中の道路の等級を知る。以下は車速の場合と同様である。
【0036】
次に、判定条件設定部33が、カーナビゲーションの利用者がカーナビゲーションにアクセスしたかどうかを判定条件に設定する場合を説明する。例えば、カーナビゲーション装置の機能のうち、ナビゲーション機能に関するを操作したかどうかを判定基準とする。ナビゲーションに関する機能とは、例えば、ナビゲーション部60の表示部(図示していない)に表示された地図を拡大した場合は高精度、縮小した場合は通常精度に切り替えることである。いかなる機能について判定するかは、自由に設定することができるものとする。
判定条件設定部33は、判定条件として、ナビゲーション部60へのアクセスの有無を選択判定部34が処理可能な状態に設定し、この判定条件を選択判定部34に判定条件信号として出力する。「カーナビゲーションへのアクセス」は、ナビゲーション部60から判定対象情報82として選択判定部34に入力される。
選択判定部34は、前記判定対象情報82に基づいて、選択判定を行う。以下の動作は車速の場合と同様である。
【0037】
次に、判定条件設定部33は、カーナビゲーション装置が何らかのメッセージを表示したときに切り替える判定を行なう場合を説明する。例えば、交差点が近づいたことを示すメッセージ表示や目的地が近づいたことを示すメッセージ表示等があった場合に、高精度測位の第1測位部21を選択する判定を行なう。判定条件設定部33は、判定条件として、メッセージ表示部61の表示するメッセージの有無につき選択判定部34が処理可能な状態に設定し、この判定条件を選択判定部34に判定条件信号として出力する。いかなる表示について判定するかは、自由に設定する。なお、「表示」とは、音声による表示や文字、図形等による表示のすべてを含む。選択判定部34は、ナビゲーション部60からメッセージのあったことの情報を判定対象情報82として入力し、選択判定を行う。以下の動作は車速の場合と同様である。
【0038】
また、第1測位部21と第2測位部22は、手動での切り替えも可能である。例えば、ナビゲーション部60に手動切替部を配置し、カーナビゲーションの利用者は、場面に応じて測位部を選択することもできる。
【0039】
本実施の形態1に係る移動体情報端末では、判定条件設定部33と選択判定部34と切替部24とを備えたので、CPUの負荷に応じて測位部を選択して、CPUの負荷の分散、軽減を図ることができる。
【0040】
本実施の形態1に係る移動体情報端末では、判定条件設定部33と選択判定部34と切替部24とを備えたので、場面に応じて必要とする測位精度の測位部を選択することができる。
【0041】
本実施の形態1に係る移動体情報端末では、判定条件設定部33は車速に基づき判定条件を設定するので、走行中の車速に適した測位部を選択することができる。また、測位以外の機能の影響である車速という、外部的な判定条件を用いることで、外部条件に適した測位部を選択することができる。
【0042】
本実施の形態1に係る移動体情報端末では、判定条件設定部33は自動車10が走行する地域の危険度に基づき判定条件を設定するので、自動車10の走行の安全性を高めることができる。
【0043】
本実施の形態1に係る移動体情報端末では、判定条件設定部33は測位する積算測位時間に基づき判定条件を設定するので、有償の測位でも使い過ぎを気にすることなく使用することができる。また、有償の測位情報を提供する者の顧客管理を容易とすることができる。
【0044】
本実施の形態1に係る移動体情報端末では、判定条件設定部33は地図の尺度に基づき判定条件を設定するので、地図の尺度に応じた測位をすることができる。また、地図利用の効果を一層高めることができる。
【0045】
本実施の形態1に係る移動体情報端末では、判定条件設定部33はCPUの負荷に基づき判定条件を設定するので、CPUの処理能力を有効に使用することができる。また、CPUによる測位処理以外の処理を停滞させることなく処理することができる。
【0046】
本実施の形態1に係る移動体情報端末では、判定条件設定部33は目的地との距離に基づき判定条件を設定するので、目的地に容易に到達することができる。
【0047】
本実施の形態1に係る移動体情報端末では、判定条件設定部33は道路の等級に基づき判定条件を設定するので、道路に応じた測位をすることができる。
【0048】
本実施の形態1に係る移動体情報端末では、判定条件設定部33はカーナビゲーション装置へのアクセスの有無に基づき判定条件を設定するので、カーナビゲーション機能に連動した測位部の選択をすることができる。
【0049】
本実施の形態1に係る移動体情報端末では、判定条件設定部33はカーナビゲーション装置からのメッセージの有無に基づき判定条件を設定するので、カーナビゲーション装置に連動した測位部の選択をすることができる。
【0050】
本実施の形態1に係る移動体情報端末では、切替部24は手動でも切り替えることができるので、利用者の好みに応じて容易に測位部を選択することができる。
【0051】
本実施の形態1に係る移動体情報端末では、課金処理部41を備えたので、受信する測位情報に容易に課金することができる。
【0052】
本実施の形態1に係る移動体情報端末では、課金情報送信部43を備えたので、容易に課金情報のやり取りをすることができる。
【0053】
本実施の形態1に係る移動体情報端末では、第1測位部21と第2測位部22とは測位精度が異なるので、場面により必要な測位精度を選択することができる。
【0054】
本実施の形態1に係る移動体情報端末では、準天頂衛星200が配信する高精度の測位情報を受信するので、数十cmから数cm級の精度で測位することができる。また、高仰角の準天頂衛星200からの測位情報を受信するので、都会のビル街、あるいは山間部などのような低い仰角の衛星からの測位情報は遮られるような場合でも、測位情報を受信することができる。
【0055】
実施の形態2.
図9から図11は、実施の形態2に係る移動体情報端末を説明する図である。
実施の形態2は、移動体情報端末が車載統合端末500である場合を説明する。
「車載統合端末500」とは、移動体が自動車10である場合に、自動車10内においてカーナビゲーション、受信動画像の再生、インターネット接続、運転操作支援など、必要な事務処理や娯楽の提供を一括して一台で行う情報端末をいう。
実施の形態2に係る車載統合端末500では、判定条件設定部640が、CPU負荷状態や移動体である自動車10の車速など複数対象について個々に最初の判定を行い、さらに、その判定に基づいて、選択判定部630が最終的な判定を行うことを特徴とする。換言すれば、判定条件設定部640が下位の判定を行い、選択判定部630が下位の判定に基づいて上位の判定を行うことが特徴である。
【0056】
図9は、車載統合端末500が使用されるシステムを示す図である。図9では測位情報配信センター560は、図5で述べた電子基準点網から収集した測位補正情報等を衛星向送出センター550を介して準天頂衛星200に送信する。準天頂衛星200は、測位情報、測位補正情報を配信し、及び動画像、音声等のコンテンツも配信している。
次世代用途における移動体情報端末は、図9に示すように、自動車10内で必要な事務処理、娯楽機能を提供する「車載統合端末500」となることが考えられる。車載統合端末500は、例えば、以下の機能を一台で提供する。
主な機能の例としては、1.カーナビゲーション操作部520によるカーナビゲーション、2.プロジェクションモニタ510への表示による放送動画像再生、蓄積動画像再生、3.車載統合端末500に組み込まれた車載コンピュータの入出力部530を介してのインターネット接続、4.運転操作支援540(自動車10の駆動制御装置へデータ提供等)、5.公衆網通信回線との接続(図示していない)、6.課金データの蓄積や外部との課金データの通信(図示していない)などがある。これらの機能については、現在は個々の装置によって提供されているが、将来的にこれらの機能を1台の車載統合端末500で実現することが考えられる。
【0057】
次世代用途のカーナビゲーションで用いる測位情報については、高精度測位情報は有償で提供され、測位精度の劣る測位情報は無償で提供されることも考えられる。この場合、測位情報を利用する者は、有償、無償の測位情報を選択できるとすれば都合がよい。
【0058】
前記のような次世代用途においては、車載統合端末500の測位部は、例えば、以下の3つの測位部を備える。すなわち、カーナビゲーション操作部520を通じての測位機能は、測位精度に応じて、(1)高精度測位(デシメータ級の精度)、(2)GPS単独測位(地図照合機能付き、10m級精度)(3)通常精度測位(メータ級〜1m以下級精度)などが考えられる。これら3つの場合では、車載統合端末500では、測位を行うCPUの負荷は、(1)が一番大きく、次いで(2)が大きく、(3)が一番小さいものとなる。
【0059】
車載統合端末500において、前記の(1)高精度測位や、(2)地図照合機能付きGPS単独測位を行っている場合はCPUの負荷が大きいので、他の処理例えば上記の動画像再生やインターネット接続あるいは運転支援操作を行おうとすると、動画像再生やインターネット接続等が遅くなり、または不可能になったりする。また、必要な運転操作支援ができない場合も生じるので、これらを回避することが必要となる。
また、場面により高精度測位が必要であったり、逆に高精度測位は不要であるなど、場面により要求される測位精度は異なるので、場面に応じた測位精度の提供が課題となる。
これを実現するために、CPUの負荷状態や、場面による測位精度の必要性に応じて、手動あるいは自動選択により測位の方式を切り替える機能が必要である。
【0060】
図10は、車載統合端末500(移動体情報端末の一例)の構成図である。図10の構成図では、前述した車載統合端末500の提供する機能であるカーナビゲーション機能、動画像再生及びインターネット接続等のうち、GPS装置、カーナビゲーション機能部及び動画像処理機能に関する構成を示している。
【0061】
車載統合端末500は、GPS装置600、放送信号受信部650、動画像デコーダ651、ビデオ制御部652、中央制御部(CPU)655、カーナビゲーション機能部656、地図情報記憶部657を備えている。
GPS装置600は、測位情報受信部610、GPS測位部620、選択判定部630、判定条件設定部640を備えている。
GPS測位部620は、第1測位部621から第3測位部623の3つの測位部と切替部624を備えている。第1測位部621は測位精度が一番高い。第2測位部622は第1測位部621の次に測位精度が高い。第3測位部623は測位精度が一番低い。中央制御部(CPU)655の負荷の大きさも、測位精度の順に同じである。
切替部624は、前記3つの測位部を選択的に切り替える。
判定条件設定部640は、CPU負荷センサ641、測位必要性判定センサ642、課金条件センサ643を備えている。
【0062】
動画情報の受信について説明する。なお、動画像についてのべるが、受信する情報は静止画像や音声情報、文字情報等でも構わない。
放送信号受信部650は、受信アンテナ658を介して準天頂衛星200等の衛星や地上局が放送する動画像の放送信号を受信し、放送受信信号702として動画像デコーダ651に出力する。動画像デコーダ651は、入力した放送受信信号702をデコードしビデオ制御部652に出力する。ビデオ制御部652は、入力した信号を画像、音声情報703として表示部653へ出力する。表示部653は入力した画像、音声情報703を表示する。これらの動画像処理の制御は中央制御部(CPU)655が行う。
【0063】
地図情報記憶部657は、放送信号に地図情報が含まれている場合には、放送信号受信部650から地図情報701を入力して記憶する。カーナビゲーション機能部656は、必要に応じて地図情報701を記憶している地図情報記憶部657との間で、地図情報に関して読み出し書き込み信号704のやりとりを行う。前記記憶される地図情報は、最新の地図情報であり、あるいはカーナビゲーション機能部656が備える地図情報記憶部(図示していない)に記憶されている地図情報に比べて詳細である。
【0064】
図11は、測位部を選択する判定から、判定に基づいて測位部を切り替えるまでのフローを示す図である。図11を用いて、実施の形態2に係る車載統合端末500における、判定から測位部を切り替えるまでの流れについて説明する。
【0065】
S210において、測位機能を使用するか否かを判断する。測位機能を使用する場合、カーナビゲーション機能部656が中央制御部(CPU)655に測位機能使用信号を出力する。測位を要求された中央制御部(CPU)655は、判定条件設定部640に対して測位を指令する測位指令信号を出力する。測位機能を使用しない場合は、図11においてスタートへ戻る。
【0066】
S220において、判定条件設定部640で個々の判定を行う。すなわち、CPU負荷センサ641は中央制御部(CPU)655の負荷状態を監視し、中央制御部(CPU)655の負荷が所定の値以上となった場合には測位精度を切り替えるように判定を行う。中央制御部(CPU)655の負荷の判定条件式等は、実施の形態1の場合と同様である。なお、測位部は第1測位部621、第2測位部622及び第3測位部623の3つがある。したがって、判定条件式もこれに対応する。例えば、F<F1、F1≦F<F2、F2<F(F1、F2は設定値のCPU負荷であり、FはCPU負荷センサ641が検知したリアルタイムのCPU負荷を示す。)のように、3つの領域にわける。そして、第1式に該当する場合は第1測位部、第2の式に該当するときは第2測位部622、第3の式に該当するときは第3測位部623を選択する判定を行う。次の測位必要性判定センサ642による車速による判定の場合も同様である。
測位必要性判定センサ642は、移動体である自動車10の外部条件に基づき判定を行う。本実施の形態2では、車速検知部644により車速を検知して、車速に基づき測位部の切り替えを判定する。車速に関する判定条件式等は実施の形態1と同様である。
課金条件センサ643は、例えば、第1測位部621及び第2測位部622による測位が有償の場合は、無償である第3測位部623に切り替える判定を行う。
これらCPU負荷センサ641、測位必要性判定センサ642、課金条件センサ643は、個々の判定結果を判定条件信号707として、選択判定部630に出力する。そのため、これらから出力される最初の判定結果は、相反する場合が起こる。例えば、CPU負荷センサ641は、第3測位部623を選択すると判定し、測位必要性判定センサ642及び課金条件センサ643は第1測位部621を選択すると判定する場合がある。
【0067】
S230においては、最終的な判定を行う。すなわち、前記のように判定条件信号として相反する信号を入力した選択判定部630は、最終的な選択判定を行う。最終的な判定とは、判定条件設定部640の個々のセンサがおこなった相反する判定について、第1測位部621等のうち、最終的にいずれの測位部を選択して測位するかの判定を行うことである。ここで、選択判定部630の行う判定の条件は、自由に設定できるものである。例えば、判定条件設定部640の3つのセンサがおこなった判定のいずれかを優先することもできるし、いずれか2つの結果の組み合せでもよいし、全部のセンサの一致を条件としてもよい。
さらに次の場合でもよい。
高精度測位(第1測位部621による測位)が優先され、かつ、中央制御部(CPU)655の負荷分散、軽減が必要とされる場合は、以下の(1)から(3)のように選択判定部630は測位機能以外の他の機能を制限して、高精度測位を優先する制御を行う。
(1)放送(受信)動画像再生や蓄積動画像再生を行っている動画像再生機能使用時においては、動画像の再生中に、途中数秒間から十数秒間は劣化した映像や音声を再生継続し、その間に中央制御部(CPU)655の負荷を高精度測位(第1測位部621による測位)に振り分ける。あるいは、音声だけ流して数秒間画像を静止画にしてもよい。
(2)インターネット接続時においては、音声、動画(例えばストリームデータ)以外の通信データ通信の場合は、人間が操作していない間(静止画をダウンロードした後)は中央制御部(CPU)655の負荷が軽くなるので、この間を高精度測位の処理時間にあてる。
(3)運転操作支援データ(自動車10駆動制御装置へのデータ提供)時においては、安全性要求が高い動作を支援しているときは、間引いてもよいデータをディスクにキャッシングするデータを間引いて、その間に高精度測位することが考えられる。
【0068】
S240においては、選択判定部630が、判定結果を判定信号706として切替部624へ出力する。切替部624は、入力した判定信号706にしたがって、第1測位部621、第2測位部622、第3測位部623のいずれかに切り替える。
【0069】
S250においては、切り替えられた測位部が測位を行う。例えば、切替部624が第1測位部621に切り替えた場合は、第1測位部621は、測位情報受信部610が出力した測位情報705を入力し測位を行う。そして、測位結果をカーナビゲーション機能部656に出力する。カーナビゲーション機能部656は、入力した測位結果を用いてナビゲーションを行う。S250による測位が終了した場合は、スタートへ戻る。
【0070】
以上は、判定により測位部を切り替える場合を述べたが、手動による切り替えも可能である。図10の表示部653には手動選択部654が設けてある。測位機能を使用する者は、表示部653にタッチパネル等として設けられた手動選択部654により、第1測位部621〜第3測位部623の選択が可能である。また、リモコン659により、遠隔操作で測位部を切り替えることもできる。
【0071】
以上から、実施の形態2に係る車載統合端末500は、判定条件設定部640、選択判定部630、切替部624及び第1測位部621、第2測位部622及び第3測位部623を備えたので、CPU負荷に応じて測位精度を切り替え可能であるから、一つのCPUで測位や動画像再生等の複数の機能を実現するに際し、CPUのシステムリソースの配分管理ができる。
【0072】
車載統合端末500の機能のうち測位機能においては、高精度の測位における、搬送波位相測定による測位の場合の、波長整数値バイアスの除去のための演算等がCPUの大きな負荷になることが想定される。この場合、判定条件設定部640、選択判定部630、切替部624及び第1測位部621〜第3測位部623を備えたので、CPUの負荷に応じて測位部を切り替えることができるので、高精度測位を行っておりCPU負荷が高い場合は、CPU負荷の大きくない測位方式の測位部へ切り替えることができる。
【0073】
実施の形態2に係る車載統合端末500は、判定条件設定部640、選択判定部630、切替部624及び第1測位部621から第3測位部623を備えたので、複数の機能を時、場所、情況に応じて効率的に使い分けることができる。
【0074】
実施の形態2に係る車載統合端末500は、判定条件設定部640において個々に最初の判定条件を行い、選択判定部630において最終的な判定を行なうので、多様な条件により判定することができる。また、判定条件を詳細に設定することができる。さらに、測位精度の優先と他の機能の優先とが衝突した場合でも、詳細な条件設定をすることができる。
【0075】
以上の実施の形態では、位置を測位する位置測位装置を有する移動体情報端末において、
前記位置測位装置は、
測位情報を受信して位置を測位する少なくとも2つの測位部と、
前記少なくとも2つの測位部のうちいずれの測位部を選択して測位するかの判定に用いる判定条件を設定し判定条件信号として出力する判定条件設定部と、
前記判定条件設定部の出力した判定条件信号を入力し、入力した判定条件信号に基づいて前記少なくとも2つの測位部のうちいずれを選択するかの判定を行い、判定結果を判定信号として出力する選択判定部と、
前記選択判定部の出力した前記判定信号を入力し、入力した前記判定信号に基づいて前記少なくとも2つの測位部による測位を選択的に切り替える切替部と
を備えた位置測位装置を有する移動体情報端末を説明した。
【0076】
以上の実施の形態では、前記判定条件設定部は、前記移動体情報端末が装備された移動体の速さに基づいて前記判定条件を設定する位置測位装置を有する移動体情報端末を説明した。
【0077】
以上の実施の形態では、前記判定条件設定部は、前記移動体情報端末が装備された移動体が移動する移動地域の危険度に基づいて前記判定条件を設定する位置測位装置を有する移動体情報端末を説明した。
【0078】
以上の実施の形態では、前記判定条件設定部は、前記少なくとも2つの測位部のうちいずれかの測位部が測位する積算測位時間に基づいて前記判定条件を設定する位置測位装置を有する移動体情報端末を説明した。
【0079】
以上の実施の形態では、前記判定条件設定部は、前記少なくとも2つの測位部のうちいずれかの測位部が測位した測位位置を反映する地図情報の尺度に基づいて前記判定条件を設定する位置測位装置を有する移動体情報端末を説明した。
【0080】
以上の実施の形態では、前記判定条件設定部は、前記少なくとも2つの測位部のうちいずれかの行う測位を処理するCPUの負荷に基づいて前記判定条件を設定する位置測位装置を有する移動体情報端末を説明した。
【0081】
以上の実施の形態では、前記位置測位装置は、さらに、前記少なくとも2つの測位部のうちいずれかが測位を行った場合に、測位に連動して課金をするかどうかを判断して課金処理を行う課金処理部を備えた位置測位装置を有する移動体情報端末を説明した。
【0082】
以上の実施の形態では、前記位置測位装置は、さらに、前記課金処理部が処理した課金情報を入力し、入力した前記課金情報を送信する送信部を備えた位置測位装置を有する移動体情報端末を説明した。
【0083】
以上の実施の形態では、前記少なくとも2つの測位部は、それぞれが異なる測位精度で測位する位置測位装置を有する移動体情報端末を説明した。
【0084】
以上の実施の形態では、前記少なくとも2つの測位部は、少なくとも1の測位部が準天頂衛星からの測位情報を受信して位置を測位する位置測位装置を有する移動体情報端末を説明した。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】実施の形態1の移動体情報端末が使用されるシステムを示す図である。
【図2】準天頂衛星の軌道を示す図である。
【図3】地上に対する準天頂衛星の軌道を示す図である。
【図4】静止衛星と準天頂衛星の仰角の比較を示す図である。
【図5】地上における電子基準点網を示す図である。
【図6】実施の形態1における移動体情報端末の構成を示す図である。
【図7】移動体情報端末の測位のフローを示す図である。
【図8】判定条件の例を示す図である。
【図9】車載統合載端末が使用されるシステムを示す図である。
【図10】車載統合端末の構成を示す図である。
【図11】車載統合端末の測位のフローを示す図である。
【符号の説明】
【0086】
10 自動車、20 GPS測位部、21 第1測位部、22 第2測位部、23 衛星受信部、24 切替部、25 測位時間モニタ部、30 判定部、31 判定条件入力部、32 判定条件記憶部、33 判定条件設定部、34 選択判定部、40 課金部、41 課金処理部、42 課金情報記憶部、43 課金情報送信部、50 マルチメディア装置、60 ナビゲーション部、61 メッセージ表示部、62 地図情報記憶部、70 CPU、71 CPU負荷センサ、80 バス、81,82,83,84 判定対象情報、90 車速検知部、100 GPS装置、200 準天頂衛星、300 GPS衛星、500 車載統合端末、600 GPS装置、610 測位情報受信部、620 GPS測位部、621 第1測位部、622 第2測位部、623 第3測位部、624 切替部、630 選択判定部、640 判定条件設定部、641 CPU負荷センサ、642 測位必要性判定センサ、643 課金条件センサ、644 車速検知部、653 表示部、654 手動選択部、655 中央制御部(CPU)、656 カーナビゲーション機能部、659 リモコン、706 判定信号、707 判定条件信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置を測位する位置測位装置を有する移動体情報端末において、
前記位置測位装置は、
測位情報を受信して位置を測位する少なくとも2つの測位部と、
前記少なくとも2つの測位部のうちいずれの測位部を選択して測位するかの判定に用いる判定条件を設定し判定条件信号として出力する判定条件設定部と、
前記判定条件設定部の出力した判定条件信号を入力し、入力した判定条件信号に基づいて前記少なくとも2つの測位部のうちいずれを選択するかの判定を行い、判定結果を判定信号として出力する選択判定部と、
前記選択判定部の出力した前記判定信号を入力し、入力した前記判定信号に基づいて前記少なくとも2つの測位部による測位を選択的に切り替える切替部と
を備えるとともに、
前記少なくとも2つの測位部には、
位置を測位する場合の補正に使用する情報を示す高精度測位情報を受信し、受信した高精度測位情報に基づいて他のいずれの測位部の測位精度よりも高精度に位置を測位する第1測位部が含まれることを特徴とする位置測位装置を有する移動体情報端末。
【請求項2】
前記第1測位部は、
衛星から前記高精度測位情報を受信することを特徴とする請求項1記載の位置測位装置を有する移動体情報端末。
【請求項3】
前記第1測位部は、
準天頂衛星から前記高精度測位情報を受信することを特徴とする請求項1記載の位置測位装置を有する移動体情報端末。
【請求項4】
前記少なくとも2つの測位部には、さらに、
GPS(Global Positioning System)衛星のみから測位情報を受信して位置を測位する第2測位部が含まれ、
前記第1測位部は、
準天頂衛星とGPS衛星とのそれぞれから測位情報を受信して、他のいずれの測位部よりも高精度に位置を測位することを特徴とする請求項1記載の位置測位装置を有する移動体情報端末。
【請求項5】
前記第1測位部が受信する高精度測位情報は、
複数の電子基準点のそれぞれが生成した情報であってそれぞれの電子基準点自身の位置の誤差を含む情報を示す測位補正情報に基づき作成されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の位置測位装置を有する移動体情報端末。
【請求項6】
前記準天頂衛星の周回軌道は、
赤道面からの傾斜角が略45度であるとともに、離心率が略0.099であることを特徴とする請求項3または4のいずれかに記載の位置測位装置を有する移動体情報端末。
【請求項7】
前記判定条件設定部は、
前記移動体情報端末が装備された移動体の速さに基づいて前記判定条件を設定することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の位置測位装置を有する移動体情報端末。
【請求項8】
前記判定条件設定部は、
前記移動体情報端末が装備された移動体が移動する移動地域の危険度に基づいて前記判定条件を設定する請求項1〜6のいずれかに記載の位置測位装置を有する移動体情報端末。
【請求項9】
前記判定条件設定部は、
前記少なくとも2つの測位部のうちいずれかの測位部が測位する積算測位時間に基づいて前記判定条件を設定することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の位置測位装置を有する移動体情報端末。
【請求項10】
前記判定条件設定部は、
前記少なくとも2つの測位部のうちいずれかの測位部が測位した測位位置を反映する地図情報の尺度に基づいて前記判定条件を設定することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の位置測位装置を有する移動体情報端末。
【請求項11】
前記判定条件設定部は、
前記少なくとも2つの測位部のうちいずれかの行う測位を処理するCPU(セントラル・プロセッシング・ユニット)の負荷に基づいて前記判定条件を設定することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の位置測位装置を有する移動体情報端末。
【請求項12】
前記位置測位装置は、
さらに、前記少なくとも2つの測位部のうちいずれかが測位を行った場合に、測位に連動して課金をするかどうかを判断して課金処理を行う課金処理部を備えたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の位置測位装置を有する移動体情報端末。
【請求項13】
前記第1測位部が前記準天頂衛星から受信する前記測位情報は、
課金に関する信号である課金信号を含み、
前記位置測位装置は、さらに、
前記切替部が切り替えることにより前記第1測位部が測位を開始した場合に、前記第1測位部が受信する前記測位情報に前記課金信号が含まれているどうかを確認し、前記課金信号が含まれていると確認した場合に、前記課金信号に基づいて課金処理を行なう課金処理部を備えたことを特徴とする請求項4記載の位置測位装置を有する移動体情報端末。
【請求項14】
前記位置測位装置は、
さらに、前記課金処理部が処理した課金情報を入力し、入力した前記課金情報を送信する送信部を備えたことを特徴とする請求項12または13のいずれかに記載の位置測位装置を有する移動体情報端末。
【請求項15】
前記少なくとも2つの測位部は、
それぞれが異なる測位精度で測位することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の位置測位装置を有する移動体情報端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−17735(P2006−17735A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−197794(P2005−197794)
【出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【分割の表示】特願2002−312260(P2002−312260)の分割
【原出願日】平成14年10月28日(2002.10.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】