説明

位置特定装置、コンピュータプログラム及び位置特定方法

【課題】歩行者の位置を精度良く特定することができる位置特定装置、コンピュータプログラム及び位置特定方法を提供する。
【解決手段】歩行挙動判定部173は、歩行者の歩行挙動が横断歩道歩行又は踏切歩行の可能性があるか否かを判定する。可能性の有無は、例えば、歩行の開始、歩行の停止、歩行速度の変動等により判定することができる。位置特定部174は、歩行者の歩行挙動が横断歩道歩行又は踏切歩行の可能性がある場合、歩行挙動と交差点に設置された信号機の信号切替タイミング又は踏切に設置された警報タイミングとが合致するか否かを判定し、合致する場合には、歩行者の位置を横断歩道付近又は踏切付近に特定する。例えば、横断歩道を有する交差点に設置された信号機の青信号点灯開始時点に、歩行挙動が歩行開始であるとき、歩行者の位置を横断歩道付近に特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置特定の技術に関し、特に歩行者が携帯することによって歩行者の位置を精度良く特定することができる位置特定装置、該位置特定装置を実現するためのコンピュータプログラム及び位置特定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等の移動体の位置を検出するためにナビゲーションで広く利用されている位置検出方法には、例えば、自立航法、衛星航法、地図マッチング法、ハイブリッド航法などがある。自立航法は、距離センサ、方位センサ又は角速度センサなど用い、例えば、経緯度座標系を基にした直交座標系に対する車両の走行の方位角と単位時間当たりの走行距離に基づいて、逐次車両位置を算出するものであるが、道路との整合性は考慮されておらず、走行距離の増加に応じて車両位置の誤差が累積するという問題がある。
【0003】
また、衛星航法は、GPS(Global Positioning System)を用いるものであり、検出される位置には、10〜20m程度の誤差を含む。GPSを用いるため、距離センサ、方位センサ又は角速度センサ等の車載のセンサは不要である。しかし、高架下の道路、建物に挟まれた道路、山道、街路樹等で覆われた道路では、所定数のGPS衛星から電波を受信することができず、検出精度が大きく劣化するという問題がある。また、道路間隔の狭い細街路では、走行道路を間違うという問題もある。
【0004】
また、地図マッチング法は、自立航法による走行軌跡と道路地図との整合性(マッチング)を考慮して車両の位置を検出するものである(特許文献1参照)。すなわち、自立航法による軌跡と、道路地図データとを比較して相関をとりながら、走行していると考えられる複数の道路候補の中から、最も確からしい道路を選定してゆく。そして、候補となる道路が1本に限定された時点で、自立航法により得られた車両の走行軌跡を道路に合致させる。しかし、限定した道路が間違っている場合、それ以降の位置検出が不能になるという問題がある。
【0005】
また、ハイブリッド航法は、衛星航法と地図マッチング法とを組み合わせたものであり、自立航法と衛星航法の誤差を勘案しながら、合理的に車両の位置を推定し、走行している道路を特定するものである(特許文献2参照)。ハイブリッド航法では、例えば、通常時には、地図マッチング法を用いて車両の位置を検出する。地図マッチング法で車両の位置が検出不能に陥った場合、衛星航法により車両の位置、方位を検出して車両の位置を推定し、道路地図データとの整合性を考慮して車両の位置を検出するものである。ハイブリッド航法を用いれば、特殊な場合を除けば、車両が走行している道路を間違う可能性は殆どなく、道路方向の位置精度も、平均的には10m程度の誤差範囲内であり、道路案内目的のナビゲーションでは、実用上殆ど問題ない精度レベルである。
【0006】
一方、歩行者の位置検出方法では、歩行者が携帯する携帯電話又は簡易型ナビゲーション装置等の携帯機器を用いて位置検出を行っている。このような携帯機器では、例えば、GPS衛星からの電波又は基地局との通信により歩行者の現在位置を検出する方法が実用化されている。
【特許文献1】特開昭63−148115号公報
【特許文献2】特開平2−275310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、GPS衛星から電波を受信して位置を検出する場合、GPS衛星の受信状態が良いときには、位置誤差が10〜20m程度であるが、都心のビル等の建造物の谷間又は高架下の道路などでは、位置を検出することが不能となる場合、あるいは、マルチパス等の影響により位置誤差が数百m程度になり正確な位置が求められない場合がある。特に、歩行者の場合、車両等の移動体と異なり、建造物の近くを建造物に沿って歩く傾向があるため、GPS衛星からの電波の受信レベルが低下する。
【0008】
また、歩行者が携帯する携帯機器において、歩行者の位置を検出するために使用される距離センサは、歩行者の歩数を計数するもの、あるいは、加速度センサなどであり、車両の場合に使用される距離センサ(例えば、車速センサ、車輪速センサなど)に比べて検出精度は低い。さらに、歩行者の歩行に合わせて姿勢が変動する場合には、携帯機器の位置又は傾きも変動するため、さらに検出精度が低下するときがある。従って、従来の位置検出方法では、歩行者の位置を精度よく検出することが困難であった。
【0009】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、歩行者の位置を精度良く特定(検出)することができる位置特定装置、該位置特定装置を実現するためのコンピュータプログラム及び位置特定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明に係る位置特定装置は、歩行者による携帯が可能であって自身の位置を特定する位置特定装置において、道路上の特徴地点の位置情報を記憶する記憶手段と、歩行者の歩行挙動を判定する歩行挙動判定手段と、前記特徴地点に特有の特有情報を外部から受信する受信手段と、前記歩行挙動判定手段で判定した歩行挙動と前記受信手段で受信した特有情報とを関連付けて自身の位置を特定する位置特定手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
第2発明に係る位置特定装置は、第1発明において、前記記憶手段は、横断歩道を有する交差点の位置情報を記憶してあり、前記受信手段は、前記交差点に設置された信号機の青信号点灯開始時点(又は赤信号開始時点)を受信するように構成してあり、前記位置特定手段は、前記信号機の青信号点灯開始時点(又は赤信号開始時点)に、前記歩行挙動判定手段で判定した歩行挙動が歩行開始(又は歩行停止)であるとき、前記交差点の横断歩道付近の位置を自身の位置として特定するように構成してあることを特徴とする。
【0012】
第3発明に係る位置特定装置は、第1発明において、前記記憶手段は、横断歩道を有する交差点の位置情報を記憶してあり、前記受信手段は、交差点に設置された信号機の青信号点灯時間をさらに受信するように構成してあり、前記位置特定手段は、前記信号機が青信号点灯中である場合に、前記歩行挙動判定手段で判定した歩行挙動が所定の閾値より大きい歩行速度であるとき、前記交差点の横断歩道付近の位置を自身の位置として特定するように構成してあることを特徴とする。
【0013】
第4発明に係る位置特定装置は、第1発明において、前記記憶手段は、横断歩道を有する交差点の位置情報を記憶してあり、前記受信手段は、交差点に設置された歩行者用信号機の青信号点滅開始時点又は赤信号点灯開始時点を取得するように構成してあり、前記位置特定手段は、前記歩行者用信号機の青信号点滅開始時点又は赤信号点灯開始時点に、前記歩行挙動判定手段で判定した歩行挙動が所定の閾値より大きい歩行速度であるとき、前記交差点の横断歩道付近の位置を自身の位置として特定するように構成してあることを特徴とする。
【0014】
第5発明に係る位置特定装置は、第3発明又は第4発明において、前記位置特定手段は、前記歩行挙動判定手段でさらに判定した歩行挙動が歩行速度の減少である場合、前記交差点の横断歩道の進行方向側付近の位置を自身の位置として特定するように構成してあることを特徴とする。
【0015】
第6発明に係る位置特定装置は、第1発明乃至第5発明のいずれか1つにおいて、前記記憶手段は、踏切の位置情報を記憶してあり、前記受信手段は、前記踏切に設置された警報機の警報終了時点を受信するように構成してあり、前記位置特定手段は、前記警報機の警報終了時点に、前記歩行挙動判定手段で判定した歩行挙動が歩行開始であるとき、前記踏切付近の位置を自身の位置として特定するように構成してあることを特徴とする。
【0016】
第7発明に係る位置特定装置は、第1発明乃至第5発明のいずれか1つにおいて、前記記憶手段は、踏切の位置情報を記憶してあり、前記受信手段は、踏切に設置された警報機の警報終了時点から警報開始時点までの警報停止時間をさらに受信するように構成してあり、前記位置特定手段は、前記警報機が警報停止中である場合に、前記歩行挙動判定手段で判定した歩行挙動が所定の閾値より大きい歩行速度であるとき、前記踏切付近の位置を自身の位置として特定するように構成してあることを特徴とする。
【0017】
第8発明に係る位置特定装置は、第1発明乃至第5発明のいずれか1つにおいて、前記記憶手段は、踏切の位置情報を記憶してあり、前記受信手段は、踏切に設置された警報機の警報開始時点を受信するように構成してあり、前記位置特定手段は、前記警報機の警報開始時点に、前記歩行挙動判定手段で判定した歩行挙動が所定の閾値より大きい歩行速度であるとき、前記踏切付近の位置を自身の位置として特定するように構成してあることを特徴とする。
【0018】
第9発明に係る位置特定装置は、第1発明乃至第8発明のいずれか1つにおいて、自身の位置を測位する測位手段と、該測位手段で測位した測位位置の測位誤差の範囲を示す誤差範囲を算出する誤差範囲算出手段とを備え、前記位置特定手段は、前記誤差範囲算出手段で算出した誤差範囲内にある特徴地点の特有情報に基づいて自身の位置を特定するように構成してあることを特徴とする。
【0019】
第10発明に係る位置特定装置は、第1発明乃至第9発明のいずれか1つにおいて、前記受信手段で特有情報を受信可能な範囲を特定する受信可能範囲特定手段を備え、前記位置特定手段は、前記受信可能範囲特定手段で特定した受信可能な範囲内にある特徴地点の特有情報に基づいて自身の位置を特定するように構成してあることを特徴とする。
【0020】
第11発明に係る位置特定装置は、第1発明乃至第10発明のいずれか1つにおいて、前記位置特定手段で特定した位置が複数ある場合、すべての位置を表示する表示手段を備えることを特徴とする。
【0021】
第12発明に係る位置特定装置は、第1発明乃至第10発明のいずれか1つにおいて、前記位置特定手段で特定した位置の確からしさを評価するための評価係数を算出する評価係数算出手段と、前記位置特定手段で特定した位置が複数ある場合、前記評価係数算出手段で算出した評価係数に応じて1つの位置を選択する選択手段と、該選択手段で選択した位置を表示する表示手段とを備えることを特徴とする。
【0022】
第13発明に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに、自身の位置を特定させるためのコンピュータプログラムにおいて、コンピュータを、歩行者の歩行挙動を判定する歩行挙動判定手段と、判定した歩行挙動と道路上の特徴地点に特有の特有情報とを関連付けて自身の位置を特定する位置特定手段として機能させることを特徴とする。
【0023】
第14発明に係る位置特定方法は、自身の位置を特定する位置特定方法において、道路上の特徴地点の位置情報を記憶してあり、歩行者の歩行挙動を判定し、前記特徴地点に特有の特有情報を外部から受信し、判定した歩行挙動と受信した特有情報とを関連付けて自身の位置を特定することを特徴とする。
【0024】
第1発明、第13発明及び第14発明にあっては、位置特定装置は、歩行者による携帯が可能であり、道路上の特徴地点の位置情報を記憶してある。特徴地点は、例えば、横断歩道を有する交差点、踏切などである。位置特定装置は、特徴地点に特有の特有情報を外部から受信し、歩行者の歩行挙動を判定する。特有情報は、例えば、特徴地点が交差点である場合、交差点を識別するための識別子、交差点(横断歩道)の位置、交差点に設置された信号機(車両用、歩行者用など)の信号情報(例えば、各灯色の点灯開始時刻、点灯時間、歩行者用の信号機の場合の青灯色点滅開始時刻等)などである。また、特徴地点が踏切である場合、特有情報は、例えば、踏切を識別する識別子、踏切の位置、警報情報(例えば、踏切の警報機の警報開始時刻、警報動作時間、警報終了時刻、警報停止時間等)などである。歩行挙動は、例えば、歩行者の歩行特性を示すものであり、自転車に乗った場合の走行特性も含む。歩行挙動は、例えば、歩行の開始、歩行速度、歩行速度の変動、単位時間当たりの歩数(自転車の場合には、ペダルをこぐ回数)、歩数の変動、歩行方位、歩行停止などである。ここで、歩行速度のかわりに歩行ペース(一歩当たりに要する時間)を用いても良い。以下では、歩行速度と歩行ペースとを区別せずに歩行速度を用いるが、歩行ペースの意味も含んでいるものとする。歩行挙動は、加速度センサ又は歩数センサなどの距離センサ、及び角速度センサ、角加速度センサ又は地磁気センサなどの方位センサ等により取得することができる。
【0025】
位置特定装置は、判定した歩行挙動と受信した特有情報とを関連付けて自身の位置を特定する。例えば、位置特定装置は、歩行挙動が横断歩道歩行又は踏切歩行の可能性があるか否かを判定する。可能性の有無は、例えば、歩行の開始、歩行の停止、歩行速度の変動等により判定することができる。位置特定装置は、横断歩道歩行又は踏切歩行の可能性がある場合、歩行挙動と信号機の信号切替タイミング又は警報機の警報タイミングとが合致するか否かを判定し、合致する場合には、自身(歩行者)の位置を横断歩道付近又は踏切付近に特定する。合致の有無の判定は、例えば、赤信号点灯開始時に歩行停止があった場合、あるいは、青信号点灯開始時に歩行開始があった場合等である。これにより、従来の自立航法、地図マッチング法、衛星航法、あるいは、ハイブリッド航法等では、歩行者の位置を精度良く検出することが困難であった場合に、道路上の特徴地点に特有の特有情報と歩行挙動とを関連付けることで歩行者の位置を精度よく特定することができ、さらに、リアルタイム、かつ歩行者による何らの操作も必要とせず自動的に歩行者の位置を高精度な位置へ補正することが可能となり、それ以降の歩行者の位置検出の精度も向上させることができる。
【0026】
第2発明にあっては、位置特定装置は、横断歩道を有する交差点に設置された信号機(車両用、歩行者用を含む)の青信号点灯開始時点(又は赤信号開始時点)に、歩行挙動が歩行開始(又は歩行停止)であるとき、自身(歩行者)の位置を横断歩道付近に特定する。青信号開始と歩行開始の同時性、あるいは、赤信号開始と歩行停止の同時性を判定することにより、歩行者の位置を横断歩道付近に特定することができる。特に、直近に検出した歩行者の位置の精度が低く、歩行者の位置が正確でない場合、以降の位置検出の誤差は大きくなり、誤った位置を検出するおそれがあるときでも、正確な位置を自動的に補正して歩行者の位置を高精度に検出(特定)することができる。
【0027】
第3発明にあっては、位置特定装置は、横断歩道を有する交差点に設置された信号機(車両用、歩行者用を含む)が青信号点灯中である場合に、歩行挙動が所定の閾値より大きい歩行速度であるとき、自身(歩行者)の位置を横断歩道付近に特定する。これは、歩行者が青信号点灯中に横断歩道を横断する際は、通常の歩道を歩行する場合に比べて歩行速度が速くなる傾向を利用したものであり、歩行者の歩行速度又は歩行ペース(例えば、一歩当たりに要する時間)が、他の時間帯に比べてやや速ければ歩行者が横断歩道を歩行していると判定することができる。なお、信号機が青信号点灯中であるか否かは、青信号開始時点と青信号点灯時間とにより判定することができる。青信号と歩行速度との関連性を判定することにより、歩行者の位置を横断歩道付近に特定することができ、正確な位置を自動的に補正して歩行者の位置を高精度に検出(特定)することができる。
【0028】
第4発明にあっては、位置特定装置は、交差点に設置された歩行者用信号機の青信号点滅開始時点又は赤信号点灯開始時点に、歩行挙動が所定の閾値より大きい歩行速度であるとき、自身(歩行者)の位置を横断歩道付近に特定する。これは、歩行者が歩行者用信号機の青信号点滅開始時点又は赤信号点灯開始時点に横断歩道を横断する際は、通常の歩道を歩行する場合に比べて歩行速度が速くなる傾向を利用したものであり、歩行者の歩行速度又は歩行ペースが、他の時間帯に比べて速ければ歩行者が横断歩道を歩行していると判定することができる。歩行者用信号機の青信号点滅又は赤信号開始と歩行速度との関連性を判定することにより、歩行者の位置を横断歩道付近に特定することができ、正確な位置を自動的に補正して歩行者の位置を高精度に検出(特定)することができる。なお、車両用信号機が歩行者用信号機を兼ねている場合は、歩行者用信号機の青信号点滅開始時点は、黄信号開始時点に該当する。
【0029】
第5発明にあっては、位置特定装置は、歩行挙動が歩行速度の減少である場合、例えば、歩行速度が通常の速度に戻った場合、自身(歩行者)の位置を横断歩道の進行方向側付近(例えば、横断歩道の中央付近から終了位置付近まで)の位置を特定する。これは、歩行者が横断歩道を横断する場合、横断歩道の中央付近を通過した時点で、歩行者は横断歩道を安全に渡りきることができると考え、歩行速度又は歩行ペースを通常の状態に戻すと考えられることを利用したものである。信号機の信号情報と歩行速度との関連性を判定することにより、歩行者の位置を横断歩道付近に特定することができ、正確な位置を自動的に補正して歩行者の位置を高精度に検出(特定)することができる。
【0030】
第6発明にあっては、位置特定装置は、踏切に設置された警報機の警報終了時点に、歩行挙動が歩行開始であるとき、自身(歩行者)の位置を踏切付近に特定する。踏切の警報機の警報終了と歩行開始の同時性を判定することにより、歩行者の位置を踏切付近に特定することができる。特に、直近に検出した歩行者の位置の精度が低く、歩行者の位置が正確でない場合、以降の位置検出の誤差は大きくなり、誤った位置を検出するおそれがあるときでも、正確な位置を自動的に補正して歩行者の位置を高精度に検出(特定)することができる。
【0031】
第7発明にあっては、位置特定装置は、踏切に設置された警報機が警報停止中である場合に、歩行挙動が所定の閾値より大きい歩行速度であるとき、自身(歩行者)の位置を踏切付近に特定する。これは、歩行者が踏切を歩行する際は、通常の歩道を歩行する場合に比べて歩行速度が速くなる傾向を利用したものであり、歩行者の歩行速度又は歩行ペースが、他の時間帯に比べてやや速ければ歩行者が踏切を歩行していると判定することができる。なお、警報機が警報停止中であるか否かは、警報終了時点と警報開始時点とにより判定することができる。警報機の警報停止と歩行速度との関連性を判定することにより、歩行者の位置を踏切付近に特定することができ、正確な位置を自動的に補正して歩行者の位置を高精度に検出(特定)することができる。
【0032】
第8発明にあっては、位置特定装置は、踏切に設置された警報機の警報開始時点に、歩行挙動が所定の閾値より大きい歩行速度であるとき、自身(歩行者)の位置を踏切付近に特定する。これは、歩行者が警報機の警報開始時に踏切を横断する際は、通常の歩道を歩行する場合に比べて歩行速度が速くなる傾向を利用したものであり、歩行者の歩行速度又は歩行ペースが、他の時間帯に比べて速ければ歩行者が踏切を歩行していると判定することができる。警報機の警報開始と歩行速度との関連性を判定することにより、歩行者の位置を踏切付近に特定することができ、正確な位置を自動的に補正して歩行者の位置を高精度に検出(特定)することができる。
【0033】
第9発明にあっては、位置特定装置は、自身(歩行者)の位置を測位し、測位した測位位置の測位誤差の範囲を示す誤差範囲を算出する。自身の位置を測位するには、例えば、GPS、基地局通信、距離センサ、方位センサなどの測位データを用いることができる。また、光ビーコン、電波ビーコン等の通信により測位することもできる。また、誤差範囲は、測位データの精度により変化し、例えば、測位位置の誤差の標準偏差を用いることができる。位置特定装置は、算出した誤差範囲内にある特徴地点の特有情報に基づいて自身の位置を特定する。特徴地点を誤差範囲内に限定することにより、誤差範囲外にある特徴地点の特有情報は除外して位置検出(特定)のための不要な処理を省き、処理労力を低減して短時間で位置を検出することができる。
【0034】
第10発明にあっては、位置特定装置は、特有情報を受信可能な範囲を特定し、特定した受信可能な範囲内にある特徴地点の特有情報に基づいて自身(歩行者)の位置を特定する。外部の通信装置等から特有情報を受信する場合、受信可能な範囲は、通信装置との通信可能範囲とすることができ、例えば、無線LAN等の中域通信の通信範囲である。特有情報の受信可能な範囲内に限定することにより、受信可能な範囲外にある特徴地点の特有情報は除外して位置検出(特定)のための不要な処理を省き、処理労力を低減して短時間で位置を検出することができる。
【0035】
第11発明にあっては、位置特定装置は、特定した位置が複数ある場合、すべての位置を表示する。これにより、歩行者は、自身の位置を容易に判断することができるとともに、可能性のある位置も知ることができる。
【0036】
第12発明にあっては、位置特定装置は、特定した位置の確からしさを評価するための評価係数を算出する。評価係数は、歩行者の位置の確からしさを評価するための係数であり、例えば、評価係数が小さいほど位置の確からしさ(確率)が大きいとすることができる。評価係数は、例えば、位置を特定する前の歩行者の歩行軌跡と、地図上の道路との位置ずれに応じて算出することができる。あるいは、評価係数の他の例として、直近に検出した歩行者の位置と特定した位置との距離に応じて算出することもできる。位置特定装置は、特定した位置が複数ある場合、それぞれの位置(特定位置)に対して算出した評価係数に応じて1つの位置を選択し、選択した位置を表示する。これにより、歩行者は、自身の位置を容易に判断することができるとともに、最も確からしい位置を知ることができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明にあっては、リアルタイム、かつ歩行者による何らの操作も必要とせず自動的に歩行者の位置を高精度な位置へ補正して歩行者の位置検出の精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明を実施の形態を示す図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る位置検出装置10の構成の一例を示すブロック図である。本発明に係る位置検出装置10は、自身(歩行者)の位置を時系列に測位し、測位して得られた測位データに基づいて自身の位置を推定し、推定した位置を歩行者の位置として検出するとともに表示する。また、位置検出装置10は、後述する道路上の特徴地点に特有の特有情報と歩行者の歩行挙動とを関連付けて、歩行者の位置を特定することにより、歩行者の位置を補正し、特定(補正)した位置を歩行者の位置として検出するとともに表示する。この場合、自身の位置を特定するとは、測位した測位位置よりもさらに高精度に自身の位置を検出することを意味する。
【0039】
位置検出装置10は、歩行者(自転車で走行する歩行者も含む)が携帯可能であって、装置全体を制御する制御部11、通信部12、測位部13、地図データベース14、記憶部15、操作部16、位置検出処理部17、表示部18、音声出力部19などを備える。また、測位部13は、GPS131、距離センサ132、方位センサ133などを備える。また、位置検出処理部17は、位置推定部171、誤差算出部172、歩行挙動判定部173、位置特定部174、評価部175などを備える。
【0040】
通信部12は、光ビーコン、電波ビーコン、RFID若しくはDSRC等の路上装置との間で通信を行う狭域通信機能、UHF帯若しくはVHF帯などの無線LAN等の中域通信機能、又は携帯電話、PHS、多重FM放送若しくはインターネット通信などの広域通信機能を備える。通信部12は、例えば、道路上の特徴地点としての、横断歩道を有する交差点、あるいは、警報機を有する踏切等の周辺を範囲とした無線LAN等の中域通信を利用し、路上装置間の路路間通信、路上装置と車両との路車間通信、又は車々間通信で通信された地図情報、特徴地点の特有情報(例えば、交差点情報、踏切情報等)などを取得する。路上装置は、例えば、超音波感知器、光ビーコン若しくは画像感知器等の交通情報収集装置、交通情報を文字又は図形で提供する情報板装置、信号制御装置等でもよい。また、通信部12は、携帯電話等の広域通信を利用することにより、情報処理センタ又は交通管制センタ等のセンタ装置から歩行者の周辺の地図情報、交差点の交差点情報又は踏切の踏切情報などを取得することもできる。
【0041】
特有情報としての交差点情報は、例えば、交差点を識別するための識別子、交差点の横断歩道の位置、交差点に設置された信号機(車両用、歩行者用など)の信号情報(例えば、各灯色の点灯開始時刻、点灯時間、歩行者用の信号機の場合の青灯色点滅開始時刻等)などである。また、特有情報としての踏切情報は、例えば、踏切を識別する識別子、踏切の位置、警報情報(例えば、踏切の警報機の警報開始時刻、警報動作時間、警報終了時刻、警報停止時間等)などである。
【0042】
通信部12は、基地局との間で通信を行う通信機能を備え、複数の基地局からの電波を受信し、受信結果を測位部13へ出力する。また、通信部12は、路上装置との狭域通信により得られた通信地点の位置情報を測位部13へ出力する。
【0043】
測位部13は、歩行者の位置を時々刻々(例えば、0.5秒、1秒等の経過の都度、1m、2m等の移動の都度など)測位し(測位位置を求め)、歩行者の移動距離及び移動方位(測位方位)を時刻とともに歩行者の歩行軌跡として記憶部15に記憶する。
【0044】
GPS131は、複数のGPS衛星から電波を受信し、歩行者の位置を測位する。なお、GPS131に加えて、DGPS(ディファレンシャルGPS)を搭載することもできる。DGPSは、予め位置が分かっている基準局から発信されるFM放送又は中波を受信し、GPS131で求めた測位位置のずれを補正することができ、歩行者の位置の精度を向上させることができる。なお、携帯電話の複数の基地局からの電波により位置を概略的に測位する方式とGPSとを複合した形で測位することも可能である。なお、携帯電話の複数の基地局からの電波により位置を概略的に測位する方式とGPSとを複合した形で測位することも可能である。これにより、屋内でGPS衛星からの電波を受信しにくい場合でも、位置精度が悪いものの一応位置を得ることができる確率が高くなる。
【0045】
距離センサ132は、非常に短い時間での速度、移動距離を検出することができる加速度センサ、比較的長い移動距離を検出することができる歩数センサなどを備えている。ここで歩数センサとして、例えば加速度センサを用いれば、歩行のピッチに合わせて生ずる急峻なデータが得られ、この数を計数することにより歩数や歩行速度を求めることができる。また、この場合、自転車に乗ってペダルをこいでいる場合、あるいは、歩道橋又は地下横断通路の階段を上下する場合には、急峻なデータの特性、例えば、ピーク値(歩行の強さ)が異なるため、これにより、ある程度歩行場所を特定することも可能である。これにより、自立航法において歩行者の位置を短時間かつ短距離の歩行毎に検出することができる。なお、都市圏以外で周囲にビル等がなくGPS衛星の測位精度が非常に良好な場合には、歩数センサを使用せず、GPSの位置測位の差により、歩行した距離を算出するようにしてもよい。また、本願では、歩行速度は、歩行ピッチ(単位時間当たりの歩数)を含む概念で用いる。
【0046】
方位センサ133は、角速度センサ又は角加速度センサ(相対方位センサ)、2次元又は3次元の地磁気センサ(絶対方位センサ)などを備えている。これにより、自立航法において歩行者の移動方位を短時間かつ短距離の歩行毎に検出することができる。なお、GPS131、距離センサ132、方位センサ133は、すべて備える構成でなくてもよい。
【0047】
測位部13は、測位した測位データ、通信部12を経由して得られた基地局からの電波の受信結果、又は路上装置との狭域通信により得られた通信地点の位置情報などに基づいて、測位位置及び測位位置の誤差を算出する。以下、測位位置及びその誤差の算出方法について説明する。
【0048】
図2は測位位置の誤差範囲の例を示す説明図である。直交座標系(x方向及びy方向)において、GPS、基地局又は路上装置との狭域通信により検出された位置の誤差範囲を、一例として、矩形領域(x方向の長さが4a、y方向の長さが4b)として設定する。すなわち、測位位置は、矩形領域の中心位置であり、誤差範囲は、中心位置からx方向に±2aの範囲だけ広がり、y方向に±2bの範囲だけ広がる。例えば、2aを2シグマと設定した場合、x方向の分散はa2 となり、標準偏差はaと設定することができる。また、2bを2シグマと設定した場合、y方向の分散はb2 となり、標準偏差はb2と設定することができる。
【0049】
歩行者の位置を測位する際にGPSを利用する場合、誤差範囲は、環境条件、より具体的には、GPSの受信レベル、捕捉衛星数、2次元又は3次元測位の別、あるいは、CEP(Circular Error Probability)等により時間的に変化する。また基地局通信の場合には、誤差範囲は、基地局との通信レベル、基地局の通信範囲等で時間的に変化する。誤差範囲を予め大きめに設定した所定の定数、場所又は時間に応じて予め決定した定数等を用いてもよい。また、誤差範囲の形状は、矩形形状に限らず、円形、楕円形等任意の形状でもよい。例えば、GPSのみで測位する場合、環境条件が良好なときには、誤差範囲として10〜20m程度を設定することができる。
【0050】
以下、歩行者の測位位置の算出方法について説明する。なお、測位位置は、直交座標系における二次元ベクトルで表現するが、3次元では、高度情報を加えるだけであり、容易に拡張可能である。また、以下の説明では、時刻で定式化しているが、実際の処理においては、単位時間の経過の都度の処理の代わりに単位走行距離の都度処理を行ってもよい。また、以下、大文字のアルファベットはベクトル又は行列とする。
【0051】
時刻tにおける歩行者の位置P(t)を式(1)とすると、時刻t+1(時刻t、t+1の間隔は、所定時間であり、例えば、1秒、0.5秒などである)における歩行者の位置P(t+1)は、式(2)で表すことができる。あるいは、時刻tから歩行者が所定の走行距離(例えば、1m、2mなど)を走行した時刻を時刻t+1とすることもできる。なお、ベクトルに付した「T」は転置を意味する。また、式(2)は、歩行者の動特性を示すものである。なお、時刻tにおける歩行者の位置P(t)は、歩行者の真の位置(実際の位置)であり、未知の誤差の存在のため観測不可能な位置である。すなわち、歩行者の測位位置は、真の位置P(t)に対する最適な推定位置を求めるものである。
【0052】
【数1】

【0053】
ここで、D(t)は、式(3)で表され、d(t)は、時刻tから時刻t+1までに歩行者が移動(歩行)した距離、θ(t)は、直交座標系に対する歩行者の移動(歩行)の方位角である。また、E(t)は、式(4)で表され、e(t)は、移動距離d(t)の誤差である。また、誤差E(t)の分散Q(t)は、式(5)で表され、qは、単位距離移動での誤差分散であり、一定値とすることができる。
【0054】
また、時刻tにおいて、GPS、基地局通信又は路上装置との通信により検出された位置S(t)は、式(6)で表すことができる。ここで、G(t)は、位置S(t)の誤差であり、誤差G(t)の共分散行列R(t)は、式(7)で表すことができる。式(7)において、a、bそれぞれは、図2で示した誤差範囲である矩形領域のx方向及びy方向の長さの4分の1である。すなわち、共分散行列R(t)は、2a、2bを2シグマとした場合のx方向及びy方向の分散で構成されている。なお、E(t)、G(t)の平均値は0としても一般性は失わない。
【0055】
時刻tにおける歩行者の位置P(t)の最適な推定位置H(t)は、カルマンフィルタにより式(8)のような漸化式で表される。
【0056】
【数2】

【0057】
ここで、Γ(t)は、推定位置H(t)の推定誤差の分散であり、式(9)のような漸化式で表すことができる。また、行列に付した「−1」は、その行列の逆行列を意味する。また、初期時刻0における推定位置H(0)、その推定誤差の分散Γ(0)は、それぞれ式(10)、式(11)で表すことができる。ここで、Mは、歩行者の最初の位置の先験情報であり、Σは、その誤差分散である。仮に先験情報がない場合、M=0、Σ-1=0となり、初期時刻0における推定位置H(0)、その推定誤差の分散Γ(0)は、それぞれ式(12)、式(13)で表される。
【0058】
なお、式(6)は、GPS、基地局通信又は路上装置との通信により位置が検出された場合に得られるので、GPS、基地局通信又は路上装置との通信が行われない間は、式(7)における誤差a、bが十分大きな値と考えることにより、式(8)において、R-1(t)=0とすれば、式(8)をそのまま用いて推定位置を繰り返し算出することができる。すなわち、この場合は、自立航法のみで位置を測位することと等価になる。なお、以上の数式では、2次元の位置検出として定式化したが、高さの次元を加えて3次元で定式化してもよい。
【0059】
地図データベース14は、広範囲の地図情報を記憶してある。なお、歩行者の位置に応じて、その付近の地図情報をセンタ装置又は路上装置などの外部から通信で取得して記憶しておくこともできる。
【0060】
図3は地図情報の一例を示す模式図である。歩行者の位置を検出する場合には、車両の位置を検出する場合に比較して複雑かつ困難になる。すなわち、車両の場合には、推定した位置と地図上の車道との地図マッチングにより、車両の位置を検出することができるのに対し、歩行者の場合には、歩行者用の歩道以外に歩行者が歩行可能な領域は種々存在する。また、屋外のみならず屋内であっても歩行者の位置検出を行う必要性が高い。したがって、歩行者の位置を検出する場合、歩道と車道との分離等、きめ細かな地図マッチングが必要となるため、地図情報としても詳細のデータが必要になる。ただし、広範囲な地図情報を位置検出装置10の記憶部15に記憶しておく必要はなく、歩行者の位置に合わせて適宜、情報センタ装置又は路上装置等の外部から通信で取得しても良い。
【0061】
地図上には、歩行者専用道路(歩道)、車道、横断歩道、ビル、小売店、公園、池、踏切など、種々の領域が存在する。そこで、ビル、地下道、駅舎、店舗、小売店、家屋、工場、地下街、建造物内部などの屋内領域には、その中に歩行通路(道路)を設定することができる。
【0062】
図4は地図上の道路の設定の一例を示す説明図である。図4の例は、道路上の特徴地点としての交差点の周辺の道路の設定例を示す。図4に示すように、歩道と車道とが分離されているような幹線道路の場合には、歩行者道路(歩道)及び横断歩道を道路として設定することができる。図4の例では、道路を二次元で示し、道路の幅を設定してある。
【0063】
図5は地図上の道路の設定の他の例を示す説明図である。図5の例も、道路上の特徴地点としての交差点の周辺の道路の設定例を示す。図5に示すように、歩道と車道とが分離されているような幹線道路の場合には、歩行者道路(歩道)及び横断歩道を道路として設定することができる。図5の例では、道路を一次元で示し、道路を線分として設定してある。なお、この場合、道路の幅を設定しておくこともできる。
【0064】
記憶部15は、通信部12を介して受信した各種情報、測位部13で測位した測位データ、位置検出処理部17で処理した処理結果などを記憶する。なお、制御部11、位置検出処理部17などをCPU、RAMなどで構成する場合、制御部11、位置検出処理部17の処理手順を定めたコンピュータプログラムを記憶することもできる。
【0065】
操作部16は、各種操作ボタンを備え、歩行者と位置検出装置10とのユーザインタフェースとして機能する。例えば、操作部16は、歩行者の操作により位置検出装置10の動作の開始又は停止の操作を受け付ける。
【0066】
位置検出処理部17は、専用のハードウエア回路で構成してもよく、又は予め処理手順を定めたコンピュータプログラムを実行する構成であってもよい。
【0067】
位置推定部171は、測位部13で算出した測位位置の軌跡(測位軌跡)に基づいて、地図上での歩行者の推定位置及び歩行軌跡を算出する。
【0068】
誤差算出部172は、測位部13で算出した測位位置の誤差範囲に基づいて、位置推定部171で算出した推定位置の誤差範囲を算出する。例えば、推定位置の誤差範囲を測位位置の誤差範囲(例えば、20〜200mであって、測位軌跡の長さに応じて変動)とすることができる。また、位置特定部174で歩行者の位置を特定した場合、特定位置の誤差範囲を設定する。歩行者の位置を特定した場合の誤差範囲は、例えば、最小の誤差(例えば、横断歩道の長さ程度の範囲、踏切の長さ程度の範囲など)とすることができる。
【0069】
誤差算出部172は、歩行者の位置が特定された後は、特定された位置からの歩行者の移動距離又は移動方向に応じて、測位誤差が大きくなることを考慮して、歩行者の移動距離又は移動方向に応じた値(例えば、測位誤差の増加分)を加算して誤差範囲を算出する。なお、歩行者の移動距離又は移動方向に関わらず、誤差範囲を常に適当な所定の一定値(例えば、100m)とすることもできる。
【0070】
歩行挙動判定部173は、測位部13で得られた測位データに基づいて、歩行者の歩行挙動を判定する。歩行挙動は、歩行者の歩行特性を示すものであり、自転車に乗った場合の走行特性も含む。歩行挙動は、例えば、歩行の開始、歩行速度、歩行速度の変動、歩行の強さ(例えば、歩数センサで加速が大きさで示されるレベル強度)、歩行の強さの変動、単位時間当たりの歩数(自転車の場合には、ペダルをこぐ回数)、歩数の変動、歩行方位、歩行停止などである。ここで、歩行速度のかわりに歩行ペース(一歩当たりに要する時間)を用いても良い。以下では、歩行速度と歩行ペースとを区別せずに歩行速度を用いるが、歩行ペースの意味も含んでいるものとする。
【0071】
より具体的には、歩行挙動判定部173は、歩行者の歩行挙動が横断歩道歩行又は踏切歩行の可能性があるか否かを判定する。可能性の有無は、例えば、歩行の開始、歩行の停止、歩行速度の変動等により判定することができる。
【0072】
位置特定部174は、歩行挙動判定部173で判定した歩行挙動と、通信部12で受信した特有情報(例えば、交差点情報、踏切情報等)とを関連付けて歩行者の位置を特定する。すなわち、位置特定部174は、歩行者の歩行挙動が横断歩道歩行又は踏切歩行の可能性がある場合、歩行挙動と交差点に設置された信号機の信号切替タイミング又は踏切に設置された警報機の警報タイミングとが合致するか否かを判定し、合致する場合には、自身(歩行者)の位置を横断歩道付近又は踏切付近に特定する。以下、歩行者の位置の特定方法について説明する。
【0073】
位置特定部174は、信号機の青信号開始と歩行開始の同時性に基づいて歩行者の位置を特定する。すなわち、横断歩道を有する交差点に設置された信号機の青信号点灯開始時点に、歩行挙動が歩行開始であるとき、歩行者の位置を横断歩道付近に特定する。この場合、歩行者の位置を横断歩道の歩行方向上流側付近に特定することもできる。特に、前回(例えば、直近でもよく、2回又は3回などの複数回前でもよい)に検出した歩行者の位置の精度が低く、歩行者の位置が正確でない場合、以降の位置検出の誤差は大きくなり、誤った位置を検出するおそれがあるときでも、正確な位置を自動的に補正して歩行者の位置を高精度に検出(特定)することができる。
【0074】
位置特定部174は、信号機の赤信号開始と歩行停止の同時性に基づいて歩行者の位置を特定する。すなわち、横断歩道を有する交差点に設置された信号機の赤信号点灯開始時点に、歩行挙動が歩行停止であるとき、歩行者の位置を横断歩道付近に特定する。この場合、歩行者の位置を横断歩道の歩行方向上流側付近に特定することもできる。これにより、正確な位置を自動的に補正して歩行者の位置を高精度に検出(特定)することができる。
【0075】
位置特定部174は、青信号と歩行速度との関連性に基づいて歩行者の位置を特定する。すなわち、横断歩道を有する交差点に設置された信号機が青信号点灯中である場合に、歩行挙動が所定の閾値より大きい歩行速度であるとき、歩行者の位置を横断歩道付近に特定する。これは、歩行者が青信号点灯中に横断歩道を横断する際は、通常の歩道を歩行する場合に比べて歩行速度が速くなる傾向を利用したものであり、歩行者の歩行速度又は歩行ペース(例えば、一歩当たりに要する時間)が、他の時間帯に比べてやや速ければ歩行者が横断歩道を歩行していると判定することができる。なお、信号機が青信号点灯中であるか否かは、青信号開始時点と青信号点灯時間とにより判定することができる。青信号と歩行速度との関連性を判定することにより、歩行者の位置を横断歩道付近に特定することができ、正確な位置を自動的に補正して歩行者の位置を高精度に検出(特定)することができる。
【0076】
位置特定部174は、歩行者用信号機の青信号点滅又は赤信号開始と歩行速度との関連性に基づいて歩行者の位置を特定する。すなわち、交差点に設置された歩行者用信号機の青信号点滅開始時点又は赤信号点灯開始時点に、歩行挙動が所定の閾値より大きい歩行速度であるとき、歩行者の位置を横断歩道付近に特定する。これは、歩行者が歩行者用信号機の青信号点滅開始時点又は赤信号点灯開始時点に横断歩道を横断する際は、通常の歩道を歩行する場合に比べて歩行速度が速くなる傾向を利用したものであり、歩行者の歩行速度又は歩行ペースが、他の時間帯に比べて速ければ歩行者が横断歩道を歩行していると判定することができる。歩行者用信号機の青信号点滅又は赤信号開始と歩行速度との関連性を判定することにより、歩行者の位置を横断歩道付近に特定することができ、正確な位置を自動的に補正して歩行者の位置を高精度に検出(特定)することができる。なお、車両用信号機が歩行者用信号機を兼ねている場合は、歩行者用信号機の青信号点滅開始時点は、黄信号開始時点に該当する。
【0077】
位置特定部174は、信号機の信号情報と歩行速度との関連性に基づいて歩行者の位置を特定する。すなわち、歩行者が横断歩道付近にいると判定した場合に、歩行挙動が歩行速度の減少であるとき、例えば、歩行速度が通常の速度に戻ったとき、歩行者の位置を横断歩道の歩行方向下流側付近(例えば、横断歩道の中央付近から終了位置付近まで)に特定する。これは、歩行者が横断歩道を横断する場合、横断歩道の中央付近を通過した時点で、歩行者は横断歩道を安全に渡りきることができると考え、歩行速度又は歩行ペースを通常の状態に戻すと考えられることを利用したものである。信号機の信号情報と歩行速度との関連性を判定することにより、歩行者の位置を横断歩道付近に特定することができ、正確な位置を自動的に補正して歩行者の位置を高精度に検出(特定)することができる。
【0078】
位置特定部174は、踏切の警報機の警報終了と歩行開始の同時性に基づいて歩行者の位置を特定する。すなわち、踏切に設置された警報機の警報終了時点に、歩行挙動が歩行開始であるとき、歩行者の位置を踏切付近に特定する。踏切の警報機の警報終了と歩行開始の同時性を判定することにより、歩行者の位置を踏切付近に特定することができる。特に、直近に検出した歩行者の位置の精度が低く、歩行者の位置が正確でない場合、以降の位置検出の誤差は大きくなり、誤った位置を検出するおそれがあるときでも、正確な位置を自動的に補正して歩行者の位置を高精度に検出(特定)することができる。
【0079】
位置特定部174は、警報機の警報停止と歩行速度との関連性に基づいて歩行者の位置を特定する。すなわち、踏切に設置された警報機が警報停止中である場合に、歩行挙動が所定の閾値より大きい歩行速度であるとき、歩行者の位置を踏切付近に特定する。これは、歩行者が踏切を歩行する際は、通常の歩道を歩行する場合に比べて歩行速度が速くなる傾向を利用したものであり、歩行者の歩行速度又は歩行ペースが、他の時間帯に比べてやや速ければ歩行者が踏切を歩行していると判定することができる。なお、警報機が警報停止中であるか否かは、警報終了時点と警報開始時点とにより判定することができる。警報機の警報停止と歩行速度との関連性を判定することにより、歩行者の位置を踏切付近に特定することができ、正確な位置を自動的に補正して歩行者の位置を高精度に検出(特定)することができる。
【0080】
位置特定部174は、警報機の警報開始と歩行速度との関連性に基づいて歩行者の位置を特定する。すなわち、踏切に設置された警報機の警報開始時点に、歩行挙動が所定の閾値より大きい歩行速度であるとき、歩行者の位置を踏切付近に特定する。これは、歩行者が警報機の警報開始時に踏切を横断する際は、通常の歩道を歩行する場合に比べて歩行速度が速くなる傾向を利用したものであり、歩行者の歩行速度又は歩行ペースが、他の時間帯に比べて速ければ歩行者が踏切を歩行していると判定することができる。警報機の警報開始と歩行速度との関連性を判定することにより、歩行者の位置を踏切付近に特定することができ、正確な位置を自動的に補正して歩行者の位置を高精度に検出(特定)することができる。
【0081】
上述の例で、踏切に警報機とともに遮断機が設置されている場合、あるいは、警報機の代わりに遮断機が設置されている場合、警報機情報に代えて遮断機情報を用いることもできる。遮断機情報は、例えば、警報機の警報開始時点を遮断機の降下開始時点とし、警報終了時点を遮断機の上昇開始時点とし、警報動作時間を遮断機の降下開始時点から上昇開始時点までの時間とし、警報停止時間を遮断機の上昇開始時点から降下開始時点までの時間とすればよい。また、信号機の赤信号点灯開始時点を遮断機の降下終了時点に対応させることもできる。
【0082】
また、上述の例で、外部から車両用の信号機の信号情報しか受信することができない場合には、歩行者用信号機の信号切替タイミングと車両用信号機の信号切替タイミングとの関係(例えば、時間差)を取得することにより、歩行者用信号機の青点滅信号の開始、又は赤信号の開始を推定することができる。例えば、車両用信号機の黄信号開始時刻から、所定の時間(例えば5秒)前に歩行者用信号機の青点滅信号又は赤信号が開始すると推定することができる。また、通信部12で受信した交差点情報が、どこの交差点の情報であるかを識別するために、地図データベース14に記録された交差点データベースから識別子の一致する交差点識別子を受信するようにしてもよく、あるいは、道路、交差点等が設定された道路情報(地図情報)とともに交差点の位置(停止線又は横断歩道の位置等)を受信するようにしてもよい。
【0083】
位置特定部174は、歩行者の位置を特定する場合、誤差算出部172で算出した誤差範囲内にある特徴地点(例えば、交差点、踏切等)の特有情報(例えば、交差点情報、踏切情報等)に基づいて歩行者の位置を特定する。特徴地点を誤差範囲内に限定することにより、誤差範囲外にある特徴地点の特有情報は除外して位置検出(特定)のための不要な処理を省き、処理労力を低減して短時間で位置を検出することができる。
【0084】
また、位置特定部174は、通信部12で特有情報を受信することができる範囲を特定し、特定した範囲内にある特徴地点の特有情報に基づいて歩行者の位置を特定する。受信可能な範囲は、例えば、無線LAN等の中域通信の通信範囲である。特有情報の受信可能な範囲内に限定することにより、受信可能な範囲外にある特徴地点の特有情報は除外して位置検出(特定)のための不要な処理を省き、処理労力を低減して短時間で位置を検出することができる。
【0085】
評価部175は、位置特定部174で特定した位置の確からしさを評価するための評価係数を算出する。評価係数は、歩行者の位置の確からしさを評価するための係数であり、例えば、評価係数が小さいほど位置の確からしさ(確率)が大きいとすることができる。評価係数は、例えば、位置を特定する前の歩行者の歩行軌跡と、地図上の道路との位置ずれに応じて算出することができる。あるいは、評価係数の他の例として、直近に検出した歩行者の位置と特定した位置との距離に応じて算出することもできる。これにより、例えば、特定した位置が交差点の横断歩道付近である場合、評価係数に基づいて、歩行者の位置が交差点のどの横断歩道かを特定することができる。横断歩道の特定方法の詳細については後述する。なお、評価係数の逆数を相関度として定義し、相関度が大きいほど位置の確からしさ(確率)が大きいとすることもできる。
【0086】
表示部18は、例えば、液晶表示パネルであって、歩行者に自身の位置を地図上に表示する。
【0087】
音声出力部19は、歩行者の位置を表示部18で表示する際に、歩行者に所要の情報を通知するため、又は注意を促すため音声又は音響を出力する。
【0088】
次に位置検出装置10の位置検出処理について説明する。歩行者の歩行挙動により歩行者が横断歩道を歩行している可能性があると判定された場合、位置特定部174は、歩行挙動と信号機の信号切替タイミングとが合致するか否かを判定して歩行者の位置を横断歩道付近に特定する。このとき、前回(例えば、直近でもよく、2回又は3回などの複数回前でもよい)に検出した歩行者の位置の誤差範囲内に複数の交差点が含まれるときがあり、位置特定部174は、複数の交差点の中から歩行者がいる可能性が最も高い交差点を特定する。
【0089】
図6は誤差範囲内の交差点を特定する一例を示す説明図である。図6において、交差点A、交差点Bは、直前の検出位置Xの誤差範囲内又は通信可能範囲(特有情報を受信することができる範囲、例えば、無線LAN等の中域通信の通信範囲)内にある交差点であり、歩行者がその交差点付近にいる可能性がある。一方、交差点Cは、直前の検出位置Xの誤差範囲外又は通信可能(特有情報を受信することができる)範囲外にある交差点であり、対象外となる。特徴地点を誤差範囲内又は特有情報の受信可能な範囲内に限定することにより、誤差範囲外又は受信可能な範囲外にある特徴地点の特有情報は除外して位置検出(特定)のための不要な処理を省き、処理労力を低減して短時間で位置を検出することができる。
【0090】
通常、交差点間の信号機にはオフセットが設定されているため、青信号開始時点等の信号切替タイミングは、交差点Aと交差点Bとで異なる。従って、上述の青信号開始と歩行開始の同時性、赤信号開始と歩行停止の同時性、青信号と歩行速度との関連性、あるいは、歩行者用信号機の青信号点滅又は赤信号開始と歩行速度との関連性などの条件が交差点A及び交差点Bの両者で成立することはなく、いずれか1つの交差点のみを特定し、他の交差点を除外することができる。なお、オフセットがない場合には、複数の交差点を対象とすればよい。
【0091】
次に横断歩道の特定方法について説明する。図7は横断歩道を特定する一例を示す説明図である。図7に示すように、2つの道路が交差する交差点に4つの横断歩道a、b、c、dが設けられている。横断歩道a、c用の信号機が青信号である場合、横断歩道b、d用の信号機は赤信号である。従って、上述の青信号開始と歩行開始の同時性、赤信号開始と歩行停止の同時性、青信号と歩行速度との関連性、あるいは、歩行者用信号機の青信号点滅又は赤信号開始と歩行速度との関連性などの条件が、横断歩道a、cと、横断歩道b、dとの両者で成立することはなく、横断歩道a及び横断歩道cか、又は横断歩道b及び横断歩道dのいずれか一方に特定することができる。図7の例では、例えば、横断歩道a、cを特定し、横断歩道b、dを除外することができる。また、横断歩道での歩行方向は、青信号で歩行を開始した方向から容易に判定することができる。図7の例では、例えば、位置P、Rを特定することができ、位置Q、Sを除外することができる。以上より、歩行者の位置は、位置P、Qに特定することができる。
【0092】
地図マッチングによる位置検出の場合、位置を特定した以降は、歩行者の歩行に応じて位置検出が行われ、特定した位置が複数あるような場合には、正しい特定位置以外のものは、歩行者の歩行につれて棄却される。従って、両方の地点P、Rを候補として通常の位置検出を続行することもできる。
【0093】
また、横断歩道を特定したときに、それまでの歩行者の歩行軌跡と、道路地図とを比較して、評価係数(マッチング具合の評価点であり、位置の確からしさを表す)の優劣を設定しておき、優劣に応じて位置を1つ特定することもできる。この場合、評価係数が小さいほど位置の確からしさは高い。
【0094】
例えば、図7の例において、実際には歩行者が位置Pから横断歩道aを歩行した場合、仮に歩行者が位置Pから横断歩道d、位置R、横断歩道cの順に歩行したとすると、道路の接続部(例えば、横断歩道同士の接続地点)において、歩行方位が不安定となる。従って、位置Pから横断歩道d、位置R、横断歩道cの順の歩行に対しては、評価係数を大きくすることができる。あるいは、位置Pから横断歩道d、位置R、横断歩道cの順の歩行軌跡を棄却することもできる。
【0095】
評価係数の一例として、直前の検出位置Xと、特定位置P、Rとの近さ(距離)を基準として、その距離に反比例した数値を用いることができる。例えば、位置Xと位置Pの距離の逆数をmpとし、位置Xと位置Rとの距離の逆数をmrとし、位置P、Rの評価係数Ep、Erをそれぞれmp/(mp+mr)、mr/(mp+mr)とすることができる。
【0096】
図8は歩行者の位置を特定する直前の位置の誤差範囲の一例を示す説明図である。図8に示すように、過去の走行軌跡に応じて測位位置の測位誤差が累加するため、直前の検出位置Xの誤差範囲は、比較的広くなる。特に、歩行者が携帯する携帯機器において、歩行者の位置を検出するために使用される距離センサは、歩行者の歩数を計数するもの、あるいは、加速度センサなどであり、車両の場合に使用される距離センサに比べて検出精度は低い。さらに、歩行者の歩行に合わせて姿勢が変動する場合には、携帯機器の位置又は傾きも変動するため、さらに検出精度が低下するときがある。従って、歩行者の検出位置Xの精度は高くない。
【0097】
図9は歩行者の位置を特定した後の特定位置の誤差範囲の一例を示す説明図である。上述のように、歩行者の歩行挙動と交差点情報とを関連付けることにより、横断歩道付近(例えば、横断歩道の歩行方向の上流側付近、下流側付近、あるいは、横断歩道の中央付近など)に歩行者の位置を特定することができる。特定位置の誤差範囲は、例えば、横断歩道の長さ、幅程度の範囲に絞り込むことができ、図8の例で示した検出位置Xを正確な位置に補正することができる。これにより、従来の自立航法、地図マッチング法、衛星航法、あるいは、ハイブリッド航法等では、歩行者の位置を精度良く検出することが困難であったという課題を解決することができ、さらに、リアルタイム、かつ歩行者による何らの操作も必要とせず自動的に歩行者の位置を高精度な位置へ補正することが可能となり、それ以降の歩行者の位置検出の精度も向上させることができる。
【0098】
図10は歩行者の位置を特定する直前の位置の誤差範囲の他の例を示す説明図である。図10の例では、特徴地点が交差点に代わりに踏切の場合の例を示す。なお、検出位置Xの誤差範囲は、図8の例と同様であるので説明は省略する。
【0099】
図11は歩行者の位置を特定した後の特定位置の誤差範囲の他の例を示す説明図である。上述のように、歩行者の歩行挙動と踏切情報とを関連付けることにより、踏切付近に歩行者の位置を特定することができる。特定位置の誤差範囲は、例えば、踏切の長さ程度の範囲に絞り込むことができ、図10の例で示した検出位置Xを正確な位置に補正することができる。これにより、図9の例の場合と同様、従来の自立航法、地図マッチング法、衛星航法、あるいは、ハイブリッド航法等では、歩行者の位置を精度良く検出することが困難であったという課題を解決することができ、さらに、リアルタイム、かつ歩行者による何らの操作も必要とせず自動的に歩行者の位置を高精度な位置へ補正することが可能となり、それ以降の歩行者の位置検出の精度も向上させることができる。
【0100】
次に、歩行者の位置を地図上で表示する表示例について説明する。なお、以下、表示例は交差点の場合を示すが、踏切の場合も同様である。
【0101】
図12は歩行者の位置の表示の一例を示す説明図である。特定位置が1つの場合、その位置を地図上に表示した上で、表示した特定位置の誤差範囲も同時に表示する。なお、特定位置が複数ある場合には、評価係数の最も小さい特定位置を1つ表示することもできる。
【0102】
図13は歩行者の位置の表示の他の例を示す説明図である。特定位置が複数存在する場合、複数の特定位置を包含する領域を特定位置として表示する。この場合、各特定位置の誤差範囲を含むような範囲を表示してもよい。また、推定位置の評価係数の大小に応じて、その推定位置の誤差範囲の大きさを拡大又は縮小した上で、推定位置とその誤差範囲とを同時に表示することもでき、また、推定位置が複数ある場合には、各推定位置の誤差範囲を含む範囲を表示してもよい。また、複数の特定位置の重心位置を表示してもよい。
【0103】
図14は歩行者の位置の表示の他の例を示す説明図である。特定位置が複数存在する場合、各特定位置を表示した上で、各特定位置の誤差範囲又は確からしさの順位などを同時に表示する。図14では、第1候補の特定位置が最も確率の高い歩行者の位置であり、第2候補の特定位置は、その次に確率が高い歩行者の位置を示す。また、推定位置が複数存在する場合に、所定の閾値より小さい評価係数の推定位置が複数あるときは、評価係数が閾値より小さい位置だけを表示することもできる。これにより、歩行者は、自身の位置を容易に判断することができるとともに、最も確からしい位置のみならず、可能性のある位置も知ることができる。
【0104】
図15は歩行者の位置の表示の他の例を示す説明図である。図15では、表示部18の表示面が小さく、地図情報を詳細に表示することができないような場合(例えば、地図の縮尺を大きくできない場合)には、道路を線分で表示した上で、歩行者の位置を1つの点で表示することもできる。
【0105】
上述のとおり、特定(検出)した位置を歩行者の位置として表示する場合に、特定した位置が複数あるときには、評価係数の大小に応じて、最も確からしい特定位置を表示することもでき、あるいは、複数の特定位置をすべて表示してもよく、あるいは、特定した位置の中からいくつかを選択して表示してもよい。また、歩行者の位置を検出している過程のある時点において、一時的に精度よく位置を検出することができず、仮に評価係数が大きくなり、検出した位置を表示した場合には、歩行者に誤った位置を表示する恐れがあるようなときでも、その後の測位の結果、特定位置の確からしさが十分確保できたような場合には、位置の確からしさを確保できた時点以降、その特定位置を表示させることもできる。
【0106】
次に位置検出処理の手順について説明する。図16及び図17は位置検出処理の手順を示すフローチャートである。制御部11は、位置検出装置10内の各部と協働して位置検出処理を行う。制御部11は、歩行者の位置を測位し(S11)、測位して得られた測位データに基づいて歩行者の位置を推定する(S12)。制御部11は、推定位置の誤差範囲を測位誤差に基づいて算出し(S13)、推定位置を歩行者の検出位置として表示する(S14)。
【0107】
制御部11は、外部から交差点情報又は踏切情報を受信したか否かを判定し(S15)、受信した場合(S15でYES)、交差点若しくは踏切を識別する識別子、交差点(横断歩道を含む)若しくは踏切の位置、信号情報又は警報情報を記憶する(S16)。交差点情報又は踏切情報を受信していない場合(S15でNO)、制御部11は、ステップS16の処理を行わずに後述のステップS17の処理を行う。
【0108】
制御部11は、記憶部15に記憶してある情報のうち、誤差範囲外の交差点情報及び踏切情報を削除し(S17)、歩行者の歩行挙動を取得する(S18)。制御部11は、取得した歩行挙動が横断歩道歩行又は踏切歩行の可能性があるか否かを判定し(S19)、可能性がある場合(S19でYES)、歩行挙動と信号切替タイミングとが合致するか否かを判定する(S20)。
【0109】
歩行挙動と信号機の信号切替タイミングとが合致する場合(S20でYES)、制御部11は、当該横断歩道に歩行者の位置を特定する(S21)。なお、この場合、誤差範囲内に交差点が複数ある場合には、歩行者がいる可能性が最も高い交差点を特定する。また、特定した交差点の複数の横断歩道のうち、最も可能性の高い横断歩道を特定する。
【0110】
歩行挙動と信号切替タイミングとが合致しない場合(S20でNO)、制御部11は、歩行挙動と警報機の警報タイミングとが合致するか否かを判定する(S22)。制御部11は、歩行挙動と警報機の警報タイミングとが合致する場合(S22でYES)、当該踏切に歩行者の位置を特定する(S23)。
【0111】
制御部11は、特定した位置の誤差範囲、評価係数を設定し(S24)、特定位置を検出位置として表示する(S25)。制御部11は、処理終了指示の有無を判定し(S26)、処理終了指示がない場合(S26でNO)、特定した位置、設定した誤差範囲、評価係数を以降の位置検出の初期値とし(S27)、ステップS11以降の処理を続ける。
【0112】
制御部11は、歩行挙動が横断歩道歩行又は踏切歩行の可能性がない場合(S19でNO)、あるいは、歩行挙動と警報機の警報タイミングとが合致しない場合(S22でNO)、ステップS11以降の処理を続ける。処理終了指示がある場合(S26でYES)、制御部11は、処理を終了する。
【0113】
以上説明したように、本発明によれば、従来の自立航法、地図マッチング法、衛星航法、あるいは、ハイブリッド航法等では、歩行者の位置を精度良く検出することが困難であった場合に、道路上の特徴地点に特有の特有情報と歩行挙動とを関連付けることで歩行者の位置を精度よく特定することができ、さらに、リアルタイム、かつ歩行者による何らの操作も必要とせず自動的に歩行者の位置を高精度な位置へ補正することが可能となり、それ以降の歩行者の位置検出の精度も向上させることができる。
【0114】
上記の例では、歩行者が、通常歩行時又は自転車走行時に位置検出装置を身に付けているとしているが、これに限定されず、歩行者が位置検出装置を直接身につけず、かばん、車輪付き旅行ケース、荷車、乳母車、車椅子等に収納、仮設置又は仮置きし、歩行者が持ち歩いたり、車を押したり引いたり、あるいは、手で車輪を回転したりして、歩行者の通行できる領域を通行している場合であってもよい。
【0115】
上述の位置検出装置は、例えば、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistant)、PHS、ノート型パーソナルコンピュータ、音楽プレーヤ、携帯型ゲーム装置等の情報端末装置又は携帯端末装置などに適用することができる。
【0116】
上述の実施の形態において、位置検出装置に傾斜角センサを備えることもできる。これにより、歩行者の歩行、取り出し、操作等に伴う位置検出装置の振動又は姿勢変化で位置検出装置が傾いた場合、方位センサ又は距離センサの種類によっては機能が停止し、あるいは、性能が劣化することがある。従って、傾斜角センサにより傾斜角を検出し、方位センサ又は距離センサを補正することもできる。
【0117】
上述の実施の形態で示した歩行者の位置を推定するための数式は、一例であって、これらに限定されるものではなく、適宜変形した数式を用いることもできる。
【0118】
上述の実施の形態では、道路上の特徴地点として横断歩道を有する交差点及び踏切を例に挙げ、特有情報として交差点情報及び踏切情報を挙げて説明したが、特徴地点、特有情報は、これらに限定されるものではなく、特徴地点と特有情報との関連付けが可能な地点、事象であれば、どのようなものに対しても本発明を適用することができる。
【0119】
上述の実施の形態では、2つの道路が交差する交差点を例として説明したが、1つの道路に横断歩道が設置されている地点でも、本発明を適用することができる。
【0120】
開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明に係る位置検出装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図2】測位位置の誤差範囲の例を示す説明図である。
【図3】地図情報の一例を示す模式図である。
【図4】地図上の道路の設定の一例を示す説明図である。
【図5】地図上の道路の設定の他の例を示す説明図である。
【図6】誤差範囲内の交差点を特定する一例を示す説明図である。
【図7】横断歩道を特定する一例を示す説明図である。
【図8】歩行者の位置を特定する直前の位置の誤差範囲の一例を示す説明図である。
【図9】歩行者の位置を特定した後の特定位置の誤差範囲の一例を示す説明図である。
【図10】歩行者の位置を特定する直前の位置の誤差範囲の他の例を示す説明図である。
【図11】歩行者の位置を特定した後の特定位置の誤差範囲の他の例を示す説明図である。
【図12】歩行者の位置の表示の一例を示す説明図である。
【図13】歩行者の位置の表示の他の例を示す説明図である。
【図14】歩行者の位置の表示の他の例を示す説明図である。
【図15】歩行者の位置の表示の他の例を示す説明図である。
【図16】位置検出処理の手順を示すフローチャートである。
【図17】位置検出処理の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0122】
10 位置検出装置
11 制御部
12 通信部
13 測位部
131 GPS
132 距離センサ
133 方位センサ
14 地図データベース
15 記憶部
16 操作部
17 位置検出処理部
171 位置推定部
172 誤差算出部
173 歩行挙動判定部
174 位置特定部
175 評価部
18 表示部
19 音声出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行者による携帯が可能であって自身の位置を特定する位置特定装置において、
道路上の特徴地点の位置情報を記憶する記憶手段と、
歩行者の歩行挙動を判定する歩行挙動判定手段と、
前記特徴地点に特有の特有情報を外部から受信する受信手段と、
前記歩行挙動判定手段で判定した歩行挙動と前記受信手段で受信した特有情報とを関連付けて自身の位置を特定する位置特定手段と
を備えることを特徴とする位置特定装置。
【請求項2】
前記記憶手段は、
横断歩道を有する交差点の位置情報を記憶してあり、
前記受信手段は、
前記交差点に設置された信号機の青信号点灯開始時点(又は赤信号開始時点)を受信するように構成してあり、
前記位置特定手段は、
前記信号機の青信号点灯開始時点(又は赤信号開始時点)に、前記歩行挙動判定手段で判定した歩行挙動が歩行開始(又は歩行停止)であるとき、前記交差点の横断歩道付近の位置を自身の位置として特定するように構成してあることを特徴とする請求項1に記載の位置特定装置。
【請求項3】
前記記憶手段は、
横断歩道を有する交差点の位置情報を記憶してあり、
前記受信手段は、
交差点に設置された信号機の青信号点灯時間をさらに受信するように構成してあり、
前記位置特定手段は、
前記信号機が青信号点灯中である場合に、前記歩行挙動判定手段で判定した歩行挙動が所定の閾値より大きい歩行速度であるとき、前記交差点の横断歩道付近の位置を自身の位置として特定するように構成してあることを特徴とする請求項1に記載の位置特定装置。
【請求項4】
前記記憶手段は、
横断歩道を有する交差点の位置情報を記憶してあり、
前記受信手段は、
交差点に設置された歩行者用信号機の青信号点滅開始時点又は赤信号点灯開始時点を取得するように構成してあり、
前記位置特定手段は、
前記歩行者用信号機の青信号点滅開始時点又は赤信号点灯開始時点に、前記歩行挙動判定手段で判定した歩行挙動が所定の閾値より大きい歩行速度であるとき、前記交差点の横断歩道付近の位置を自身の位置として特定するように構成してあることを特徴とする請求項1に記載の位置特定装置。
【請求項5】
前記位置特定手段は、
前記歩行挙動判定手段でさらに判定した歩行挙動が歩行速度の減少である場合、前記交差点の横断歩道の進行方向側付近の位置を自身の位置として特定するように構成してあることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の位置特定装置。
【請求項6】
前記記憶手段は、
踏切の位置情報を記憶してあり、
前記受信手段は、
前記踏切に設置された警報機の警報終了時点を受信するように構成してあり、
前記位置特定手段は、
前記警報機の警報終了時点に、前記歩行挙動判定手段で判定した歩行挙動が歩行開始であるとき、前記踏切付近の位置を自身の位置として特定するように構成してあることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載の位置特定装置。
【請求項7】
前記記憶手段は、
踏切の位置情報を記憶してあり、
前記受信手段は、
踏切に設置された警報機の警報終了時点から警報開始時点までの警報停止時間をさらに受信するように構成してあり、
前記位置特定手段は、
前記警報機が警報停止中である場合に、前記歩行挙動判定手段で判定した歩行挙動が所定の閾値より大きい歩行速度であるとき、前記踏切付近の位置を自身の位置として特定するように構成してあることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載の位置特定装置。
【請求項8】
前記記憶手段は、
踏切の位置情報を記憶してあり、
前記受信手段は、
踏切に設置された警報機の警報開始時点を受信するように構成してあり、
前記位置特定手段は、
前記警報機の警報開始時点に、前記歩行挙動判定手段で判定した歩行挙動が所定の閾値より大きい歩行速度であるとき、前記踏切付近の位置を自身の位置として特定するように構成してあることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載の位置特定装置。
【請求項9】
自身の位置を測位する測位手段と、
該測位手段で測位した測位位置の測位誤差の範囲を示す誤差範囲を算出する誤差範囲算出手段と
を備え、
前記位置特定手段は、
前記誤差範囲算出手段で算出した誤差範囲内にある特徴地点の特有情報に基づいて自身の位置を特定するように構成してあることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1つに記載の位置特定装置。
【請求項10】
前記受信手段で特有情報を受信可能な範囲を特定する受信可能範囲特定手段を備え、
前記位置特定手段は、
前記受信可能範囲特定手段で特定した受信可能な範囲内にある特徴地点の特有情報に基づいて自身の位置を特定するように構成してあることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1つに記載の位置特定装置。
【請求項11】
前記位置特定手段で特定した位置が複数ある場合、すべての位置を表示する表示手段を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか1つに記載の位置特定装置。
【請求項12】
前記位置特定手段で特定した位置の確からしさを評価するための評価係数を算出する評価係数算出手段と、
前記位置特定手段で特定した位置が複数ある場合、前記評価係数算出手段で算出した評価係数に応じて1つの位置を選択する選択手段と、
該選択手段で選択した位置を表示する表示手段と
を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか1つに記載の位置特定装置。
【請求項13】
コンピュータに、自身の位置を特定させるためのコンピュータプログラムにおいて、
コンピュータを、歩行者の歩行挙動を判定する歩行挙動判定手段と、
判定した歩行挙動と道路上の特徴地点に特有の特有情報とを関連付けて自身の位置を特定する位置特定手段と
して機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項14】
自身の位置を特定する位置特定方法において、
道路上の特徴地点の位置情報を記憶してあり、
歩行者の歩行挙動を判定し、
前記特徴地点に特有の特有情報を外部から受信し、
判定した歩行挙動と受信した特有情報とを関連付けて自身の位置を特定することを特徴とする位置特定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−150711(P2009−150711A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−327616(P2007−327616)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】