説明

位置特定装置、ナビゲーション装置およびナビゲーションシステム

【課題】 高い位置精度の位置特定を行うことができるAM波等の地上波を利用した位置特定装置を提供する
【解決手段】 各発信局の位置に関する情報と各発信局の搬送波周波数の情報とを対応付けて記憶する発信局情報記憶部42と、全発信局から同時送信される同期送信波を受信する受信部43と、受信した各同期送信波の搬送波周波数を抽出し各同期送信波の送信元の発信局を識別する発信局識別部44と、受信した各同期送信波に重畳されている信号波の位相を検出する位相検出部45と、検出された信号波間の位相差および発信局情報記憶部に記憶された各発信局の位置情報に基づいて現在の位置を算出する位置算出部46とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信した電波を利用して現在位置を特定する位置特定装置、さらには、表示装置上で地図情報とともに特定した現在位置をマーカー表示することにより現在位置を知らせるナビゲーション装置およびナビゲーションシステムに関する。本発明は、例えば、自動車等に搭載されるカーナビゲーション装置や、歩行者が携帯する携帯型のナビゲーション装置等に利用される。
【背景技術】
【0002】
従来のカーナビゲーション装置には、衛星から送信される電波を利用して現在位置や移動速度を算出するGPS(Global Positioning System)航法を利用しているものがある。
GPS航法を採用するナビゲーション装置では、一般にGPS測位の性質上、トンネル内やビルの駐車場内等のような衛星電波を受信できない場所では、測位を行うことはできない。
そのため、車両に設置されたジャイロスコープや加速度センサ等の各センサからの情報や車輪の回転数を使用して位置を求める自立航法を併用し、いわゆるハイブリッド航法により車両の位置決定を行うカーナビゲーション装置が広く利用されている(特許文献1参照)。
【0003】
一般に、ハイブリッド航法によるナビゲーション装置では、衛星から送信される電波が利用できないときは、車両に搭載されている計器やジャイロスコープや加速度センサ等の各センサからの情報のみを使用して位置を求める自立航法を利用し、衛星から送信される電波が利用できる場合は、GPS航法あるいは自立航法のいずれかを主とし、他方を従として併用することで、より正確なナビゲーションを行えるようにしている。いずれの場合であっても、自立航法で長時間連続運転すると、次第に測位誤差が増大するので、GPS航法による位置補正が必要となる。
【0004】
GPS航法を利用するには、3つの異なる位置の衛星からの衛星電波が受信できることが前提となる。そのためには上空に衛星電波を遮る物体が存在しない道路を走行することが必要条件となるが、高層建築物に囲まれていたり、立体道路下の道路であったりすることが多い都市部の道路では、そのような条件を常時満足することは困難であり、走行条件によっては、ナビゲーション装置を使用中の80%程度の期間は電波が受信できないと言われている。
また、ビル内や地下を走行するときは、衛星電波は受信できないため、GPSを利用することは全く困難である。
【0005】
一方、衛星を用いたGPS航法に代えて、低コストのナビゲーション装置を提供する目的で、複数のAMラジオ放送局から送信される放送電波を指向性のアンテナ(フェライトバーアンテナ)で受信してAMラジオ放送局の方向を特定し、低コストのナビゲーション装置を提供することが開示されている(特許文献2参照)。これによれば、AMラジオ放送局の位置情報と送信周波数情報(すなわちラジオ放送の搬送波周波数)とを対応させてメモリに記憶しておき、フェライトバーアンテナを回転させることによって受信した電波の信号強度とそのときのアンテナの受信方向から2以上のAMラジオ放送局の方向を求め、予め記憶してあるAMラジオ放送局の位置情報に基づいて、現在位置を特定するようにしている。
【特許文献1】特開2004−117265号公報
【特許文献2】特開平7−239377号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した文献に記載されているようなAMラジオ放送局等の地上からの放送電波を利用してナビゲーションを行うシステムでは、GPSに用いる衛星電波周波数(GHz帯)より小さなAM波周波数(KHz帯)やFM波周波数(MHz帯)の搬送波を用いており、1つの放送局からの電波を受信できる領域はGPSより小さい範囲に限られるものの、ビル内や地下においても、ある程度は電波を受信することができるので、限定された領域での利用や都市部での利用に適している。
その一方で、位置特定の精度は、ナビゲーション装置に搭載してある受信アンテナによる電波発信元の角度測定の分解能に依存することになる。実用的には、例えば数mの誤差で位置を把握できるナビゲーション装置を低価格で実現することが望ましいが、そうするためには、指向性に優れた角度分解能が高い高価な受信アンテナが必要となり、装置のコストが多大になってしまう。
また、角度分解能を高めようとすると指向性アンテナは大型になってしまうので、コンパクトなナビゲーション装置にすることが困難になる。また、フェライトバーアンテナのようなバーアンテナを用いる場合はバーを回転する駆動機構が必要となる。
また、たとえ高分解能、高精度の指向性アンテナを使用したとしても、受信電波がナビゲーション装置の近傍で電波反射体により反射した後に受信アンテナに到達する場合に、検出方位が大きく異なることとなり、誤ったナビゲーション表示を行うようになる。
【0007】
そこで、本発明は、高価な指向性アンテナを用いる必要がなく、それでいて、充分に高い位置精度の位置特定およびナビゲーションを行うことができるAM波等の地上波を利用した位置特定装置およびナビゲーション装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、無指向性の小型アンテナを用いてAM波等の地上波を受信することにより、コンパクトな位置特定装置およびナビゲーション装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、発信局に対する角度から現在位置を求めるのではなく、発信局に対する距離から現在位置を求めるようにして、位置精度を高めるようにした位置特定装置およびナビゲーション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本発明の位置特定装置は、地上に設置される各発信局の位置情報と前記各発信局が用いる搬送波の周波数情報とを対応付けて記憶する発信局情報記憶部と、各発信局で各々の搬送波に信号波が重畳され全発信局から同時送信される同期送信波について少なくとも3箇所の発信局からの同期送信波を受信する受信部と、受信した各同期送信波の搬送波周波数を抽出し発信局情報記憶部に記憶された各発信局の搬送波周波数情報に基づいて受信した各同期送信波の送信元の発信局を識別する発信局識別部と、受信した各同期送信波に重畳されている信号波の位相を検出する位相検出部と、検出された信号波の位相から求めた信号波間の位相差と発信局情報記憶部に記憶された各発信局の位置情報とに基づいて現在位置を算出する位置算出部とを備えるようにしている。
【0009】
ここで、地上に設置される発信局は、搬送波に信号波を重畳した送信波を送信する能力を備えた発信局であればよいが、既存施設である放送局(AM放送局あるいはFM放送局)を利用することが好ましく、特に、AM放送局を利用することが好ましい。その他の既存設備を用いた発信局として航空機の無線航法支援施設であるVOR(超短波全方向式レンジビーコン:使用周波数108MHz〜118MHz)等の地上電波の発信施設を利用することも可能である。
【0010】
本発明によれば、各発信局は、それぞれ異なる搬送波周波数の搬送波に、外部へ伝送しようとする実体的な情報を信号波として重畳した送信波を送信している。各発信局から送信される通常の送信波に含まれる信号波は発信局ごとに異なるが、送信波の一部に、全発信局で信号波を同時送信する同期送信波が含まれているようにする。同期送信波の代表例は、定時毎に発せられる時報情報の信号波である。この定時の時報情報あるいはこれと同様の時報情報(時報情報以外のその他の情報でもよい)を適時同期送信波として各発信局が同時に送信するようにする。すなわち各発信局は、それぞれが独自に発する通常の送信波に加えて、同期送信波を適時送信するようにしておく。好ましくは、通常の送信波に重ねて、常時、同期送信波を送信するようにする。
【0011】
ナビゲーション装置では、受信部が発信局からの同期送信波を受信する。受信する同期送信波の数は3つあればよいが、4つ以上であってもよい(4つ以上受信する場合は、後述する演算処理に最適な3つの同期送信波を選択するか、統計的な演算処理を行うことになる)。
発信局識別部は、受信した同期送信波に含まれる搬送波の搬送波周波数を抽出し、搬送波周波数ごとに各同期送信波を分離するとともに、発信局情報記憶部に記憶された情報に基づいて各同期送信波の送信元の発信局を特定する処理を行う。搬送波周波数の抽出および搬送波周波数ごとの同期送信波の分離は、搬送波周波数を参照信号とするフーリエ変換処理により実行することができる。
【0012】
続いて、位相検出部により、分離した各同期送信波に含まれる同時送信された信号波の位相を検出する。そして位置算出部により、検出された位相に基づいて現在位置を算出する。
【0013】
検出した信号波の位相から現在位置を算出する最も基本的な方法は、現在位置で検出される各信号波の位相を検出して、位相と各局固有の波長との積を求め、これらの積の差から信号波が現在位置に到達する時間を直接検出する方法である。
【0014】
すなわち、各局からの搬送波の位相をφA、φB、φC、各局の波長搬送波波長をλ、λ、λとすると、2局間の信号波の到達時間差ΔtAB、ΔtBC、ΔtCAは、次式(1)の関係で現わされる。
ΔtAB = (φA・λA- φB・λB)/2πC
ΔtBC = (φB・λB- φC・λC)/2πC
ΔtCA = (φC・λC- φA・λA)/2πC
(1)
ここで、Cは光速度、ΔtABはR−R間到達時間差、ΔtBCはR−R間到達時間差、ΔtCAはR−R間到達時間差である。
【0015】
各局からの受信した搬送波の位相φA、φB、φCを求めることにより、実質的に到達時間差ΔtAB、ΔtBC、ΔtCAを求めることができる。
【0016】
また、到達時間差Δt(ΔtAB、ΔtBC、ΔtCA)と発信局間の距離差との間は、次式(2)の関係で表すことができる。

CΔtAB=√((x−x)+(y−y)+(z−z)))− √((x−x)+(y−y)+(z−z)

CΔtBC=√((x−x)+(y−y)+(z−z)))− √((x−x)+(y−y)+(z−z)

CΔtCA=√((x−x)+(y−y)+(z−z)))− √((x−x)+(y−y)+(z−z)
(2)
ここで、(x,y,z)は発信局Aの座標、(x,y,z)は発信局Bの座標、(x,y,z)は発信局Cの座標、(x,y,z)は現在位置Pの座標である。

すなわち、検出した位相φ、φ、φから求めた到達時間差ΔtAB、ΔtBC、ΔtCAを(2)式に代入するとともに、発信局情報記憶部に記憶してある発信局の位置情報を(2)式に代入することにより、現在地点Pの座標(x,y,z)を特定することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、発信局の角度(方向)測定ではなく、発信局との距離の測定から現在位置を求めることができ、位置精度が高い位置特定装置を提供することができる。
また、本発明によれば、各発信局で搬送波に重畳され同時送信された信号波どうしの位相差に基づいて、現在位置を算出するようにしているので、精度の高い角度測定を行う必要がなく、高価な指向性アンテナを用いる必要がなくなる。
また、送信元の発信局についての正確な角度の測定が必要なくなり、無指向性の小型アンテナを用いてAMラジオ波等の地上波を受信することにより、コンパクトな位置特定装置にすることができる。
【0018】
(その他の課題を解決するための手段および効果)
上記発明において、搬送波の周波数が500KHz〜2000KHzとするのが好ましい。搬送波周波数をこの周波数帯から選ぶことにより、波長が数10m〜数100mとなり、建物内においても電波を受信することが可能となり、建物内でも正確な位置情報を得ることができる。
【0019】
上記発明において、発信局としてAM放送局またはFM放送局が含まれ、同期信号波として時報信号が用いられるようにしてもよい。これにより、既存の発信局を利用して、位置特定を行うことができる。また、既に定時毎(例えば正午の時報)に利用されている時報信号送信設備を利用して、同期信号波を送信することができるので、システム構築を容易に行うことができる。
【0020】
上記発明において、受信部は無指向性の容量性アンテナを用いて同期送信波を受信するようにしてもよい。指向性アンテナを用いて送信元の方向を測定する必要がないので、無指向性の容量性アンテナを用いることができる。これにより、アンテナを小型にすることができ、コンパクトな位置特定装置とすることができる。
【0021】
上記課題を解決するために別の観点からなされた本発明のナビゲーション装置は、地図情報記憶部と、地上に設置される各発信局の位置情報と前記各発信局が用いる搬送波の周波数情報とを対応付けて記憶する発信局情報記憶部と、各発信局で各々の搬送波に信号波が重畳され全発信局から同時送信される同期送信波について少なくとも3箇所の発信局からの同期送信波を受信する受信部と、受信した各同期送信波の搬送波周波数を抽出し発信局情報記憶部に記憶された各発信局の搬送波周波数情報に基づいて受信した各同期送信波の送信元の発信局を識別する発信局識別部と、受信した各同期送信波に重畳されている信号波の位相を検出する位相検出部と、検出された信号波の位相から求めた信号波間の位相差と発信局情報記憶部に記憶された各発信局の位置情報とに基づいて現在位置を算出する位置算出部と、表示器と、算出された現在位置を地図情報とともに表示器上に表示する制御を行う表示制御部とを備えるようにしている。
【0022】
本発明によれば、上述した位置特定装置と同様の作用によって現在位置が特定される。表示制御部は、特定された現在位置Pを、地図情報記憶部に蓄積された地図情報とともに表示器上に表示する制御を行う。このようにして、現在位置Pをナビゲーション装置の表示器に表示する。
【0023】
また、別の観点からなされた本発明のナビゲーションシステムは、地上に設置され各々が異なる搬送波周波数の搬送波を用いた送信波を送信する少なくとも3箇所の発信局、および、移動体からなり、各発信局は、各々の搬送波に信号波を重畳するとともに全発信局で信号波を同期送信波として同時に送信する同期送信波送信部を備え、移動体は、地図情報記憶部と、各発信局の位置情報と各発信局が用いる搬送波の周波数情報とを対応付けて記憶する発信局情報記憶部と、少なくとも3箇所の発信局からの同期送信波を受信する受信部と、受信した各同期送信波の搬送波周波数を抽出し発信局情報記憶部に記憶された各発信局の搬送波周波数情報に基づいて受信した各同期送信波の送信元の発信局を識別する発信局識別部と、受信した各同期送信波に重畳されている信号波の位相を検出する位相検出部と、検出された信号波の位相から求められる信号波間の位相差と発信局情報記憶部に記憶された各発信局の位置情報とに基づいて現在位置を算出する位置算出部と、表示器と、算出された現在位置を地図情報とともに表示器上に表示する制御を行う表示制御部とを備えるようにしている。
これにより、上述したナビゲーション装置を利用したナビゲーションシステムを構築することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態について、図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれることは言うまでもない。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態であるナビゲーションシステムおよびナビゲーション装置(位置特定装置でもある)の構成を示すブロック図であり、図2はナビゲーション装置に搭載する無指向容量性アンテナの一例を説明する回路図である。
このナビゲーションシステム10は、複数の発信局A、B、C、・・・からなる発信局群11(図1ではA〜Cのみ図示)と、ナビゲーション装置12とにより構成される。
各発信局A、B、C、・・・は、図3に示すように、ナビゲーションシステム10を使用するエリア内で、できるだけ分散して設置されるようにしてあり、エリア内ではどこであっても、少なくとも3箇所の異なる発信局からの電波がナビゲーション装置12で受信できるように配置してある。ここでは具体的に、使用エリアが都市部であるとして、既存のAMラジオ放送局が発信局になるものとする。また、ナビゲーション装置12は、車両に搭載してあるものとする。
【0026】
次に各発信局の構成について説明する。発信局Aは、固有の搬送波周波数ωを有する搬送波を生成する搬送波生成部21A、ラジオ放送として外部に実体的な情報を送信するための信号波を生成する信号波生成部22A、信号波を搬送波に重畳して通常放送の送信波を送信する通常送信波送信部23A、全発信局A、B、C、・・・が同時に信号波を送信する同期送信波送信部24Aを備えている。
同期送信波送信部24Aと通常送信波送信部23Aとは、全発信局A、B、C、・・・で同期させた信号波を送信するか否かの違いがあるだけで、その他は全く同じ構成である。また、通常送信波送信部23Aは、従来からラジオ放送で行われているラジオ波送信(各放送局の搬送波に信号波を重畳させて送信)を便宜上、通常送信波送信部23Aが行うものとしたものである。同期送信波送信部24Aは、全発信局で同時に送信するために、正確な時刻情報を参照して信号波を同期信号波として送信する制御を行う。具体的には、時刻情報そのものを一定間隔(例えば5秒間隔)で、これを全発信局が同時に送信するようにして、同期送信波とする。
【0027】
発信局B、C、・・・についても発信局Aと同様に、搬送波生成部21B、21C、・・・、信号波生成部22B、22C、・・・、通常送信波送信部23B、23C、・・・、同期送信波送信部24B、24C、・・・を備えており、それぞれ固有の搬送波周波数ω、ω、・・・の搬送波周波数で通常放送を行い、また、同期送信波を送信している。なお、上述したように本実施形態では既存ラジオ放送局の搬送波を利用しているため、500KHz〜2000KHzの搬送波を利用することになる。
【0028】
次に、車両に搭載されたナビゲーション装置12について説明する。このナビゲーション装置12は、無指向容量性アンテナ31と、制御部32と、表示器33とから構成される。制御部32はCPU、ROM、RAM、AD変換器等のハードウェアとソフトウェアであるプログラムとにより構成されるコンピュータ装置からなり、また表示器33は液晶パネル等の表示装置からなる。制御部32で実行される処理動作を説明するため、制御部32を各機能ブロックに分けて説明すると、発信局情報記憶部41、地図情報記憶部42、無指向性容量アンテナ31を用いて発信局群11からの送信波を受信する受信部43、発信局識別部44、位相差検出部45、位置算出部46、表示制御部47とにより構成される。
【0029】
無指向容量性アンテナ31は、図2に示すように、電波を検出するための導電性板状部材からなるアンテナ51、受信周波数(すなわち搬送波周波数)を選択する可変コンデンサ52、蓄積した電荷を減衰させるための抵抗53、高入力インピーダンスの増幅器54とにより構成され、AD変換器55を介して制御部32の受信部41に電波が送られるようになっている。このアンテナ51には、駆動部分がないため、従来の指向性アンテナを使う場合に比して小型で、かつ、簡単な構造になっている。
【0030】
発信局情報記憶部41には、図4に示すように、発信局の名称、その位置情報、その搬送波周波数が対応付けて記憶してある。
地図情報記憶部42には、使用エリアの地図情報が記憶してある。
【0031】
受信部43は、無指向容量アンテナ31によって同期送信波を受信する制御を行う。このナビゲーションシステム10が使用できるエリア内では、少なくとも3箇所の発信局からの同期送信波を受信できるようになっている。
発信局識別部44は、受信部43で受信した同期送信波(受信部43が受信した送信波は複数の発信局からの同期送信波が混在している)から、各同期送信波の搬送波周波数を抽出し、発信局情報記憶部41に記憶された情報に基づいて受信した各同期送信波の送信元の発信局を識別する。ここでは、発信局情報記憶部41に蓄積されている各発信局の搬送波周波数の参照信号を生成し、フーリエ変換処理を行うことにより、混在する同期送信波から搬送波周波数ごとの同期送信波に分離する。そして、同期送信波が抽出された搬送波周波数について、発信局情報記憶部41を参照することにより、3箇所の発信局を特定する。
【0032】
位相検出部45は、受信部43で受信され発信局識別部44で分離された各同期送信波に重畳されている信号波間の位相差を検出する。図5は、同期送信波の波形および位相差を説明する図である。ここでは、発信局A、B、Cから同期送信波が送信されているものとする。各発信局A、B、Cでは、図5(a)に示すように、時刻Tにおいて同時に同期送信波S、S、S(発信局AからのSは搬送波周波数ω、発信局BからのSは搬送波周波数ω、発信局CからのSは搬送波周波数ω)を送信する。これら同期送信波では、信号波が搬送波のピークを結ぶ包絡線として表われる。
ナビゲーション装置12が現在座標(x,y,z)であるP点に存在するとして、受信部43で受信し発信局識別部44により分離された各同期送信波R、R、Rは、図5(b)、図5(c)、図5(d)に示すように、発信局A、B、Cからの距離に依存して、少しずつ信号波の位相がずれている(ここでは、説明の便宜上、位相のずれを誇張して図示している)。
【0033】
位相差検出部45は、同期送信波R、R、R間の位相を検出する。具体的には信号波のピーク位置の位相を検出する。検出された位相はφ、φ、φとして検出される。
位相差と到達時間差とは、上述した(1)式の関係があることから、位相から到達時間差が求まることになる。
【0034】
位置算出部46は、上述した(2)式を用いて、検出した到達時間差(すなわち位相差)と、各発信局の位置情報とに基づいて、現在位置Pの座標(x,y,z)を算出する。
表示制御部47は、地図情報記憶部42に蓄積された地図情報を表示器33の画面に表示するとともに、算出された現在位置Pの座標にマーカーを重ねて表示する制御を行う。
【0035】
次に、このナビゲーションシステムおよびナビゲーション装置の動作について、図6のフローチャートを用いて説明する。
まず、各発信局A、B、Cは、それぞれが独自の通常送信波を送信するとともに、一定間隔(例えば5秒間隔)ごとに、全発信局が同時に信号波(例えば時報情報)をそれぞれの搬送波に重畳して送信する同期送信波を送信する(S100)。
【0036】
ナビゲーション装置12を作動し、無指向容量性アンテナ31により、同期送信波を含む電波を、随時、受信する(s101)。
受信した電波には、複数の発信局それぞれから送信されてきた通常送信波、同期送信波が混在している。
【0037】
続いて、発信局情報記憶部41に記憶されている搬送波周波数を参照信号としてフーリエ変換処理を行い、受信した電波のなかから搬送波周波数が異なる各同期送信波を抽出し、分離する。分離した各同期送信波は、発信局情報記憶部41に記憶される搬送波周波数を参照することにより、それぞれの送信元の発信局が特定される(s102)。
【0038】
続いて、各同期送信波に含まれる信号波の位相を検出する(s103)。この位相から(1)式により、信号波間の到達時間差が求められる。
【0039】
続いて、信号波間の到達時間差と、各発信局の位置座標とに基づいて、現在位置Pの座標を算出する(s104)。すなわち、信号波間の到達時間差と、各発信局の座標位置と現在位置との間の関係を示す(2)式を用いて、現在位置Pの座標が算出される。
【0040】
続いて、表示器33に地図情報を表示するとともに、現在位置(P)をマーカー表示する(s105)。
以上の動作により、発信局についての方向測定ではなく、位相測定による発信局と間の距離測定によって求めた正確な現在位置(P)をナビゲーション装置12の表示器33に表示することができる。
【0041】
以後、ナビゲーション装置は、s101〜s105の処理動作を繰り返すことにより、新しい現在位置Pを算出し、随時更新して、表示器33に表示することにより、正確なナビゲーションを連続して行うことができる。
以上の説明では、3つの発信局A、B、Cのみを受信することとしているが、発信局Dその他の発信局からの同期送信波を受信するようにしてもよい。この場合は、信号波の受信強度が最も高い3つの同期送信波を選択するようにしてもよい。
また、(2)式における3元方程式を変形して4元以上の方程式にし、統計的に、最も適切な解を求めるように数値計算するようにしてもよい。
【0042】
本実施形態では、発信局としてAM放送局を利用し、送信周波数としてラジオ放送周波数を利用するようにしたが、これは、主に、ビル内等でもナビゲーション装置12が使用できるためである。ビル内での使用を考慮しないでよい場合は、AMラジオ放送周波数に限られず、例えばFM放送周波数帯域やその他の周波数帯域を利用するようにしてもよい。
【0043】
また、上記実施形態では、GPSに代えて地上波による誘導を行うこととしたが、GPS航法とともに、さらには自立航法とGPS航法とによるハイブリッド航法とともに、補足的に地上波による誘導を行うようにして、走行条件に応じたナビゲーションを行うようにしてもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、位置特定装置をナビゲーション装置として使用した例を説明したが、これ以外の方法で位置特定装置を利用することもできる。
図7は、荷物や配達物等の位置管理、在庫管理に用いる位置特定装置の構成を示すブロック図である。図7において、図1と同じものについては、同符号を付すことにより説明の一部を省略する。
この位置特定装置61は、位置算出部46により算出された位置情報を送信可能な送信信号波に変換する送信部48と、外部に送信信号波を送信する送信アンテナ49と、装置を駆動するバッテリ62とを搭載している。位置特定装置61は、位置管理や在庫管理を行おうとする荷物や配達物を入れた袋等に直接取り付けられる。
したがって、位置特定装置61は、荷物や配達物とともに移動し、その際に、送信アンテナから現在位置情報を送信信号波として送信する。
この送信信号波を受信することにより、荷物や配達物の位置を常に管理することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、これまでのGPSを利用したナビゲーションシステムを補足するシステム、あるいはGPSシステムに代替するシステムとして、利用することができ、また、新しいナビゲーション装置として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施形態であるナビゲーションシステムおよびナビゲーション装置(位置特定装置)の構成を示すブロック図。
【図2】無指向容量性アンテナの構成を示す回路図。
【図3】AM放送局を利用したナビゲーションシステムの発信局の分布を説明する図。
【図4】発信局情報記憶部に蓄積される情報のデータ構造を説明する図。
【図5】同期送信波の波形および位相差を説明する図。
【図6】本発明によるナビゲーション動作を説明するフローチャート。
【図7】本発明の他の一実施形態である位置管理装置のブロック図。
【符号の説明】
【0047】
10: ナビゲーションシステム
11: 発信局群(発信局A、B、C、D、・・・)
12: ナビゲーション装置
21A〜21D: 搬送波生成部
22A〜22D: 信号波生成部
23A〜23D: 通常送信波生成部
24A〜24D: 同期送信波生成部
31: 無指向性容量アンテナ
32: 制御部
33: 表示器
41: 発信局情報記憶部
42: 地図情報記憶部
43: 受信部
44: 発信局識別部
45: 位相検出部
46: 位置算出部
47: 表示制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上に設置される各発信局の位置情報と前記各発信局が用いる搬送波の周波数情報とを対応付けて記憶する発信局情報記憶部と、
各発信局で各々の搬送波に信号波が重畳され全発信局から同時送信される同期送信波について少なくとも3箇所の発信局からの同期送信波を受信する受信部と、
受信した各同期送信波の搬送波周波数を抽出し発信局情報記憶部に記憶された各発信局の搬送波周波数情報に基づいて受信した各同期送信波の送信元の発信局を識別する発信局識別部と、
受信した各同期送信波に重畳されている信号波の位相を検出する位相検出部と、
検出された信号波の位相から求めた信号波間の位相差と発信局情報記憶部に記憶された各発信局の位置情報とに基づいて現在位置を算出する位置算出部とを備えたことを特徴とする位置特定装置。
【請求項2】
搬送波周波数が500KHz〜2000KHzであることを特徴とする請求項1に記載の位置特定装置。
【請求項3】
発信局としてAM放送局が利用され、同期信号波として時報信号が用いられることを特徴とする請求項1に記載の位置特定装置。
【請求項4】
受信部は、無指向容量性アンテナを用いて同期送信波を受信することを特徴とする請求項1に記載の位置特定装置。
【請求項5】
地図情報記憶部と、
地上に設置される各発信局の位置情報と前記各発信局が用いる搬送波の周波数情報とを対応付けて記憶する発信局情報記憶部と、
各発信局で各々の搬送波に信号波が重畳され全発信局から同時送信される同期送信波について少なくとも3箇所の発信局からの同期送信波を受信する受信部と、
受信した各同期送信波の搬送波周波数を抽出し発信局情報記憶部に記憶された各発信局の搬送波周波数情報に基づいて受信した各同期送信波の送信元の発信局を識別する発信局識別部と、
受信した各同期送信波に重畳されている信号波の位相を検出する位相検出部と、
検出された信号波の位相から求めた信号波間の位相差と発信局情報記憶部に記憶された各発信局の位置情報とに基づいて現在位置を算出する位置算出部と、
表示器と、
算出された現在位置を地図情報とともに表示器上に表示する制御を行う表示制御部とを備えたことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項6】
地上に設置され各々が異なる周波数の搬送波を用いた送信波を送信する少なくとも3箇所の発信局、および、移動体からなり、
各発信局は、各々の搬送波に信号波を重畳するとともに全発信局で信号波を同期送信波として同時に送信する同期送信波送信部を備え、
移動体は、地図情報記憶部と、各発信局の位置情報と各発信局が用いる搬送波の周波数情報とを対応付けて記憶する発信局情報記憶部と、少なくとも3箇所の発信局からの同期送信波を受信する受信部と、受信した各同期送信波の搬送波周波数を抽出し発信局情報記憶部に記憶された各発信局の搬送波周波数情報に基づいて受信した各同期送信波の送信元の発信局を識別する発信局識別部と、受信した各同期送信波に重畳されている信号波の位相を検出する位相検出部と、検出された信号波の位相から求められる信号波間の位相差と発信局情報記憶部に記憶された各発信局の位置情報とに基づいて現在位置を算出する位置算出部と、表示器と、算出された現在位置を地図情報とともに表示器上に表示する制御を行う表示制御部とを備えたことを特徴とするナビゲーションシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−47129(P2007−47129A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−234686(P2005−234686)
【出願日】平成17年8月12日(2005.8.12)
【出願人】(505127721)公立大学法人大阪府立大学 (688)
【Fターム(参考)】