説明

位置補正装置、位置補正方法、プログラムおよび位置補正システム

【課題】位置推定の信頼性を向上させる。
【解決手段】推定時刻が対応付けられた複数の位置情報のうちの第1の位置情報を基準とする適正範囲を特定する適正範囲特定部221と、推定時刻が第1の位置情報の後である第2の位置情報を、第2の位置情報が適正範囲特定部221により特定された適正範囲外である場合に補正する位置情報補正部222と、を備える、位置補正装置20が提供される。位置情報補正部222は、第2の位置情報を、適正範囲内において第2の位置情報に最も近い位置情報に補正することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置補正装置、位置補正方法、プログラムおよび位置補正システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近日、衛星から送信された無線信号を受信可能な受信装置が車や携帯電話などの移動体に搭載されている。GPS(Global Positioning System)測位によれば、かかる受信装置を搭載した移動体の位置を推定することが可能である。このような受信装置を用いた位置推定技術は、ナビゲーション、セキュリティーまたは娯楽などの多岐にわたる分野において重要な共通基盤技術である。
【0003】
また、特許文献1には、PHS(Personal Handyphone System)が、基地局から送信される信号の信号強度を測定し、測定した信号強度に基づいて自機位置を推定する技術が開示されている。詳細には、PHSの基地局は、通信業者により設置されるため、通常、設置位置が既知である。したがって、PHSは、3つ以上の基地局から送信される信号の信号強度を測定し、測定した信号強度に基づいて各基地局と自機位置との距離を推定すれば、各基地局の設置位置を基準とする三角測量の原理で自機位置を推定することができる。
【0004】
また、無線LAN(Local Area Network)の基地局(アクセスポイント)と無線通信を行う携帯端末が、基地局から送信される信号の信号強度を測定し、携帯端末と通信可能な位置推定装置が、該信号強度に基づいて携帯端末の位置を推定する位置推定技術も考えられる。例えば、無線LANの基地局は、無線LANの基地局の存在を周囲に報知するためのビーコンを一定周期(例えば、5回/秒)で送信している。携帯端末は、かかるビーコンの信号強度を位置推定装置に送信し、位置推定装置は、該信号強度と事前に登録されている無線LANの基地局の位置に基づいて携帯端末の位置を推定できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−171012号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記したような各種位置推定技術によれば、測位精度が保証されている場合には信頼性の高い推定結果を得ることが可能であるが、必ずしも常に測位精度が保証されるとは限らないため、信頼性の高い推定結果が得られない可能性もある。したがって、より信頼性の高い位置推定が行われることが望まれる。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、位置推定の信頼性を向上させることが可能な、新規かつ改良された技術を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、推定時刻が対応付けられた複数の位置情報のうちの第1の位置情報を基準とする適正範囲を特定する適正範囲特定部と、推定時刻が前記第1の位置情報の後である第2の位置情報を、前記第2の位置情報が前記適正範囲特定部により特定された前記適正範囲外である場合に補正する位置情報補正部と、を備える、位置補正装置が提供される。
【0009】
前記位置情報補正部は、前記第2の位置情報を、前記適正範囲内において前記第2の位置情報に最も近い位置情報に補正することとしてもよい。
【0010】
前記適正範囲特定部は、前記複数の位置情報がユーザの携帯端末の位置を示す場合、前記携帯端末を有するユーザの行動を示す行動ラベルに基づいて、前記適正範囲を特定することとしてもよい。
【0011】
前記位置情報補正部は、前記第1の位置情報を基準とした円の内部を前記適正範囲として特定することとしてもよい。
【0012】
前記適正範囲特定部は、前記複数の位置情報がユーザの携帯端末の位置を示す場合、道路が存在する位置を示す道路情報または線路が存在する位置を示す線路情報に基づいて、前記適正範囲を特定することとしてもよい。
【0013】
前記適正範囲特定部は、前記道路情報が示す道路が存在する位置または前記線路情報が示す線路が存在する位置を前記適正範囲として特定することとしてもよい。
【0014】
前記適正範囲特定部は、前記複数の位置情報がユーザの携帯端末の位置を示す場合、前記携帯端末により検出された前記ユーザの動きを示す情報に基づいて、前記適正範囲を特定することとしてもよい。
【0015】
前記適正範囲特定部は、前記複数の位置情報がユーザの携帯端末の位置を示す場合、乗り物が停車駅に到達する予定の時刻と前記停車駅の位置情報とが対応付けられてなる時刻情報に基づいて、前記適正範囲を特定することとしてもよい。
【0016】
前記位置情報補正部は、前記第2の位置情報の測位誤差が所定値よりも小さい場合には、前記第2の位置情報が前記適正範囲外であっても、前記第2の位置情報を補正することを制限することとしてもよい。
【0017】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、推定時刻が対応付けられた複数の位置情報のうちの第1の位置情報を基準とする適正範囲を特定するステップと、推定時刻が前記第1の位置情報の後である第2の位置情報を、前記第2の位置情報が前記適正範囲外である場合に補正するステップと、を含む、位置補正方法が提供される。
【0018】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、コンピュータを、推定時刻が対応付けられた複数の位置情報のうちの第1の位置情報を基準とする適正範囲を特定する適正範囲特定部と、推定時刻が前記第1の位置情報の後である第2の位置情報を、前記第2の位置情報が前記適正範囲特定部により特定された前記適正範囲外である場合に補正する位置情報補正部と、を備える、位置補正装置として機能させるためのプログラムが提供される。
【0019】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、推定時刻が対応付けられた複数の位置情報を取得する位置情報取得部と、前記位置情報取得部により取得された前記複数の位置情報を送信する送信部と、を備える、携帯端末と、前記携帯端末から前記複数の位置情報を受信する受信部と、前記受信部により受信された前記複数の位置情報のうちの第1の位置情報を基準とする適正範囲を特定する適正範囲特定部と、推定時刻が前記第1の位置情報の後である第2の位置情報を、前記第2の位置情報が前記適正範囲特定部により特定された前記適正範囲外である場合に補正する位置情報補正部と、を備える、位置補正装置と、を有する、位置補正システムが提供される。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように本発明によれば、位置推定の信頼性を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る位置補正システムの構成を示した図である。
【図2】本発明の実施形態に係る携帯端末および位置補正装置の各々の構成を示した機能ブロック図である。
【図3】位置補正装置の補正部により使用されるデータの構成例を示す図である。
【図4】位置補正装置による位置補正の一例を説明するための図である。
【図5】位置補正装置による位置補正の一例の流れを示すフローチャートである。
【図6】連続的に位置補正を行う場合における位置補正装置による位置補正の一例(測位精度を考慮する場合)を説明するための図である。
【図7】連続的に位置補正を行う場合における位置補正装置による位置補正の一例の流れを示すフローチャートである。
【図8】連続的に位置補正を行う場合における位置補正装置による位置補正の一例(測位精度を考慮する場合)の流れを示すフローチャートである。
【図9】位置補正装置による位置補正の一例(道路情報を用いる場合)を説明するための図である。
【図10】位置補正装置による位置補正の一例(ユーザの動きを示す情報を用いる場合)を説明するための図である。
【図11】位置補正装置によるアルゴリズム選択に使用されるデータの一例を示す図である。
【図12】位置補正装置による位置補正の一例(行動ラベルを用いる場合)を説明するための図である。
【図13】位置補正装置による位置補正の一例(行動ラベルを用いる場合)の流れを示すフローチャートである。
【図14】本実施形態に係る位置補正装置による位置補正を無線LANの基地局からの信号に基づいた測位技術に適用した場合の補正結果の一例を示す図である。
【図15】本実施形態に係る位置補正装置による位置補正をGPS測位技術に適用した場合の補正結果の一例を示す図である。
【図16】位置補正装置のハードウェア構成例を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0023】
また、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素を、同一の符号の後に異なるアルファベットを付して区別する場合もある。ただし、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素の各々を特に区別する必要がない場合、同一符号のみを付する。
【0024】
また、以下に示す項目順序に従って当該「発明を実施するための形態」を説明する。
1.実施形態の説明
(位置補正システムの構成)
(携帯端末および位置補正装置の構成)
(位置補正装置を各種測位技術に適用した場合の効果)
(位置補正装置のハードウェア構成)
2.むすび
【0025】
<1.実施形態の説明>
以下、図1〜図16を参照し、本発明に係る実施形態を詳細に説明する。
【0026】
(位置補正システムの構成)
まず、本発明の実施形態に係る位置補正システムについて説明する。本実施形態に係る位置補正システムは、位置補正システムを構成する位置補正装置が特筆すべき特徴を有する。以下、図1〜図16を用いて説明する。
【0027】
図1は、本実施形態に係る位置補正システム1の構成を示した図である。図1に示すように、位置補正システム1は、携帯端末10および位置補正装置20を備えるものである。携帯端末10と位置補正装置20とは、ネットワーク30を介して、通信を行うことが可能である。
【0028】
ネットワーク30は、ネットワーク30に接続されている装置から送信される情報の有線、または無線の伝送路である。例えば、ネットワーク30は、インターネット、電話回線網、衛星通信網などの公衆回線網や、Ethernet(登録商標)を含む各種のLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、IP−VPN(Internt Protocol−Virtual Private Network)などの専用回線網を含んでもよい。
【0029】
携帯端末10は、携帯端末10の位置を示す位置情報を取得することが可能である。携帯端末10による位置情報の取得手法は、特に限定されるものではない。例えば、携帯端末10は、基地局が設置されている位置を示す位置情報が基地局IDと対応付けられた基地局情報を事前に記憶しており、基地局から受信した信号の強度と基地局情報とに基づいて、例えば、三角測量の原理により携帯端末10の位置を推定することにより位置情報を取得することができる。また、例えば、携帯端末10は、GPS衛星から受信した信号に基づいて、携帯端末10の位置を推定することにより位置情報を取得してもよい。
【0030】
携帯端末10の位置は、必ずしも携帯端末10において推定されるとは限らない。例えば、基地局からの信号の受信結果やGPS衛星からの信号の受信結果が、位置推定サーバに送信され、位置推定サーバにおいて携帯端末10の位置が推定されてもよい。その場合には、携帯端末10は、位置推定サーバにおいて推定された携帯端末10の位置を示す位置情報を取得し、ネットワーク30を介して位置情報を位置補正装置20に送信することができる。あるいは、位置補正装置20は、位置推定サーバにおいて推定された携帯端末10の位置を示す位置情報を位置推定サーバから直接取得することもできる。
【0031】
携帯端末10は、例えば、PC(Personal Computer)、家庭用映像処理装置(DVDレコーダ、ビデオデッキなど)、携帯電話、PHS(Personal Handyphone System)、携帯用音楽再生装置、携帯用映像処理装置、PDA(Personal Digital Assistant)、家庭用ゲーム機器、携帯用ゲーム機器、家電機器などの情報処理装置であってもよい。
【0032】
位置補正装置20は、携帯端末10の位置情報を補正することが可能である。位置補正装置20は、携帯端末10に限らず、他の複数の携帯端末の位置情報を補正することも可能である。なお、図1に示した例では、携帯端末10と位置補正装置20とは、別のハードウェアにより構成されていることとしているが、携帯端末10と位置補正装置20とは、同一のハードウェアにより構成されていてもよい。すなわち、位置補正装置20は、携帯端末10に組み込まれ、携帯端末10と位置補正装置20とは一体化されていてもよい。以下、本実施形態に係る携帯端末10および位置補正装置20の各々の構成について説明する。
【0033】
(携帯端末および位置補正装置の構成)
図2は、本実施形態に係る携帯端末10および位置補正装置20の各々の構成を示した機能ブロック図である。図2に示すように、本実施形態に係る携帯端末10は、位置情報取得部110と、通信部120と、検出部130とを備える。
【0034】
位置情報取得部110は、携帯端末10の位置を示す位置情報を取得する機能を有する。上記したように、位置情報取得部110による位置情報の取得手法は、特に限定されるものではない。なお、上記したように、位置補正装置20が位置推定サーバから位置情報を直接取得する場合等には、携帯端末10は、位置情報取得部110を備えなくてもよい。
【0035】
検出部130は、携帯端末10を有するユーザの動きを示す情報を検出する機能を有する。検出部130は、ユーザの動きを示す情報を検出できれば、特にどのようなハードウェアにより構成されていてもよいが、例えば、加速度センサ、ジャイロセンサ、コンパス、地磁気センサ、気圧センサなどといった各種センサにより構成されることが可能である。
【0036】
通信部120は、ネットワーク30を介して位置補正装置20と通信を行う機能を有する。通信部120は、例えば、位置情報取得部110により取得された位置情報や、検出部130により検出されたユーザの動きを示す情報を、位置補正装置20に送信する送信部として機能することができる。
【0037】
また、図2に示すように、本実施形態に係る位置補正装置20は、通信部210と、補正部220と、表示部240と、制御部250と、記憶部260と、入力部270と、行動ラベル取得部280と、選択部290とを備える。補正部220は、適正範囲特定部221と、位置情報補正部222とを含んでいる。
【0038】
通信部210は、ネットワーク30を介して携帯端末10と通信を行う機能を有する。通信部210は、例えば、携帯端末10から送信された携帯端末10の位置情報や、ユーザの動きを示す情報を受信する受信部として機能することができる。
【0039】
補正部220は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等から構成され、携帯端末10の位置を示す位置情報を補正する機能を有する。
【0040】
一般に、GPS測位や無線LANによる位置測位においては、測位精度が不安定な場合もある。そのような場合、連続して測定された携帯端末10の位置情報(例えば、緯度経度)をプロットすると、実際の携帯端末10の移動経路から外れた、揺らいだ軌跡が描かれてしまうこととなる。軌跡は、実際の携帯端末10の移動経路から大きく外れたりすることも珍しくない。補正部220は、このように揺らいだ軌跡や実際の携帯端末10の移動経路から外れたプロットを、実際の携帯端末10の移動経路に近づけるための位置補正を行うことができる。
【0041】
図3は、位置補正装置20の補正部220により使用されるデータの構成例を示す図である。図3に示すように、位置補正装置20の補正部220により使用されるデータには、推定時刻、経度(X座標)・緯度(Y座標)、行動ラベル、測位方法、その他の情報等がある。推定時刻は、携帯端末10の位置が推定された時刻であり、例えば、経度(X座標)・緯度(Y座標)の推定時に、経度(X座標)・緯度(Y座標)に対応付けられる。携帯端末10の位置が推定されるタイミングは、特に限定されるものではなく、例えば、携帯端末10の位置は、所定の時間ごとに推定され得る。
【0042】
経度(X座標)・緯度(Y座標)は、携帯端末10の位置を示す位置情報の一例である。つまり、位置情報の形式は、経度(X座標)・緯度(Y座標)を用いた形式であってもよいが、例えば、極座標を用いた形式であっても、ベクトルを用いた形式であってもよい。また、位置情報の形式は、高度を含めた3次元座標であってもよい。行動ラベルは、行動ラベル取得部280により取得され得るが、行動ラベルの詳細については後に説明する。測位方法は、携帯端末10が測位された方法を示し、測位方法には、例えば、GPS測位、無線LANによる測位などが挙げられる。測位方法は、例えば、携帯端末10の測位時に、測位により取得された位置情報に対応付けられる。
【0043】
その他の情報としては、測位精度、携帯端末10が存在すると推定された位置が属する建物名称、住所、フロアを特定するための情報、携帯端末10が存在すると推定された位置における天気、気温等が挙げられる。その他の情報は、例えば、携帯端末10の測位時に、測位により取得された位置情報に対応付けられる。以下、図4を参照しながら、適正範囲特定部221および位置情報補正部222の基本機能を説明する。
【0044】
図4は、位置補正装置による位置補正の一例を説明するための図である。ここで、推定時刻を早い順からT0〜Tn(nは自然数)とし、各推定時刻における位置情報をP0〜Pnとする。図4に示すように、適正範囲特定部221は、推定時刻T0〜Tnが対応付けられた位置情報P0〜Pnのうちの位置情報P0を基準とする適正範囲を特定する機能を有する。適正範囲特定部221は、例えば、位置情報P0を基準とした境界B1の内部を適正範囲として特定することができる。図4には、境界B1が円である例が示されているが、境界B1は、円に限定されるものではない。
【0045】
位置情報補正部222は、位置情報P1を、位置情報P1が適正範囲特定部221により特定された適正範囲外である場合に補正する機能を有する。図4に示した例では、位置情報P1が適正範囲特定部221により特定された適正範囲外(境界B1の外部)であるため、位置情報P1を補正する。位置情報補正部222は、位置情報P1をどの位置情報に補正してもよいが、例えば、位置情報P1を、適正範囲内において位置情報P1に最も近い位置情報P1’に補正することができる。位置情報P1’は、位置情報P0を基準とした適正範囲内であるという理論的な条件を満たしつつ、実測値である位置情報P1に最も近いという現実的な条件を満たすため、補正後の位置情報としてより適切な位置情報であると言える。
【0046】
位置情報補正部222は、位置情報P1が適正範囲特定部221により特定された適正範囲内である場合には、位置情報P1を特に補正しなくてもよいし、適正範囲内において位置情報P1を補正してもよい。位置情報補正部222は、位置情報P1の測位誤差が所定値よりも小さい場合には、位置情報P1が適正範囲外であっても、位置情報P1を補正することを制限してもよい(例えば、位置情報P1を補正しなくてもよい)。以下、図5を参照しながら、適正範囲特定部221および位置情報補正部222の基本機能に関する動作の流れを説明する。
【0047】
図5は、位置補正装置20による位置補正の一例の流れを示すフローチャートである。まず、位置情報取得部110は、位置情報P0を取得する(S101)。次いで、適正範囲特定部221は、位置情報P0を基準とする適正範囲を特定する(S102)。次いで、位置情報取得部110は、位置情報P1を取得する(S103)。位置情報補正部222は、位置情報P1が適正範囲内である場合には(S104で「No」)、位置補正を終了する。
【0048】
位置情報補正部222は、位置情報P1が適正範囲外である場合には(S104で「Yes」)、適正範囲において位置情報P1に最も近い位置情報P1’に位置情報P1を補正して(S105)、位置補正を終了する。図4および図5を参照しながら説明した位置推定においては、位置情報P0を基準とした適正範囲を特定し、位置情報P1を補正した。以下では、図6を参照しながら、連続的に位置補正を行う場合における位置補正装置20による位置補正の一例(測位精度を考慮する場合)を説明する。
【0049】
図6は、連続的に位置補正を行う場合における位置補正装置20による位置補正の一例(測位精度を考慮する場合)を説明するための図である。図6に示した例では、推定時刻を早い順からT0〜T6とし、各推定時刻における位置情報をP0〜P6とする。図6に示した例では、位置情報補正部222は、位置情報P1〜P5が適正範囲特定部221により特定された適正範囲外であるため、位置情報P1〜P5を位置情報P1’〜P5’に補正している。
【0050】
すなわち、一般的には、適正範囲特定部221は、位置情報Pk−1を基準とする適正範囲を特定し、位置情報補正部222は、位置情報Pkを、位置情報Pkが適正範囲特定部221により特定された適正範囲(位置情報Pk−1’を基準とする適正範囲)外である場合に補正する。
【0051】
なお、一般的に屋内や高層施設の多いエリア等では、正確に測位できないという問題がある。図6に示した例では、位置情報P2およびP3は店舗内であるため、特に測位精度が低くなりやすい位置である。しかし、本実施形態に係る位置補正により、位置情報P2およびP3は、位置情報P2’およびP3’に補正されるため、測位精度の低下による影響を緩和することができる。
【0052】
測位精度が不安定である場合もあるため、どの推定時刻において推定された位置情報をP0(初期値)とするかについては工夫が必要である。そこで、例えば、位置情報補正部222は、測位精度が所定値以上になった場合に、その位置情報をP0(初期値)とすることができる。例えば、GPS測位により推定された位置情報であれば、測位精度は、水平方向の誤差等に基づいて算出され得る。また、初期時刻T0から所定時間、携帯端末10の推定位置が移動していない場合、位置情報補正部222は、主成分分析の利用等を行うことで精度保証を行うこともできる。
【0053】
また、位置情報補正部222は、測位精度が高くなった場合、補正後の値(以下、「補正値」あるいは「補正値P’」とも言う。)に測位誤差が累積され続けることを防止するために、補正値を位置情報によりリセットすることもできる。例えば、位置情報補正部222は、測位精度が所定値以上になった場合に、測位精度が高くなった位置情報により補正値をリセットできる。あるいは、位置情報補正部222は、位置情報が適正範囲内にある場合、補正値を位置情報によりリセットしてもよい。
【0054】
図6に示した例では、位置情報補正部222は、位置情報P6が位置情報P5’を基準とした適正範囲外であるため、位置情報P6を、適正範囲内において位置情報P6に最も近い位置情報Q6’に補正することもできる。しかし、位置情報P6の測位精度が高かったため、位置情報補正部222は、位置情報P6により補正値P’をリセットすることができる。以下、図7を参照しながら、連続的に位置補正を行う場合における位置補正装置20による位置補正の一例の流れを説明する。
【0055】
図7は、連続的に位置補正を行う場合における位置補正装置20による位置補正の一例の流れを示すフローチャートである。図7に示すように、まず、位置情報取得部110は、最初の位置情報を取得するための準備(kを0とする)を行い(S201)、位置情報取得部110は、位置情報Pkを取得する(S202)。次いで、適正範囲特定部221は、位置情報Pk−1’を基準とする適正範囲を特定する(S203)。位置情報補正部222は、位置情報Pkが適正範囲内である場合には(S204で「No」)、S206に進み、位置情報Pkが適正範囲外である場合には(S204で「Yes」)、適正範囲において位置情報Pkに最も近い位置情報Pk’に位置情報Pkを補正して(S205)、S206に進む。
【0056】
位置情報補正部222は、位置補正を終了する場合には(S206で「Yes」)、位置補正を終了し、継続して位置補正を行う場合には(S206で「No」)、次の位置情報を取得するための準備(kに1を加算する)を行い(S207)、S202に戻る。以上、連続的に位置補正を行う場合における位置補正装置20による位置補正の一例の流れを説明した。以下、図8を参照しながら、連続的に位置補正を行う場合における位置補正装置20による位置補正の一例(測位精度を考慮する場合)の流れを説明する。
【0057】
図8は、連続的に位置補正を行う場合における位置補正装置20による位置補正の一例(測位精度を考慮する場合)の流れを示すフローチャートである。図8に示すように、まず、位置情報取得部110は、最初の位置情報を取得するための準備(kを0とする)を行い(S301)、位置情報取得部110は、位置情報Pkを取得する(S302)。次いで、位置情報補正部222は、位置情報Pkの測位精度が所定値より高い場合には(位置情報Pkの測位誤差が所定値より小さい場合には)(S303で「Yes」)、位置情報Pkにより補正値P’を初期化して(S304)、S309に進む。
【0058】
位置情報補正部222は、位置情報Pkの測位精度が所定値より小さい場合には(位置情報Pkの測位誤差が所定値より大きい場合には)(S303で「No」)、S305に進む。位置情報補正部222は、補正値P’が初期化済みではない場合には(S305で「No」)、S309に進む。適正範囲特定部221は、補正値P’が初期化済みである場合には(S305で「Yes」)、補正値P’を基準とする適正範囲を特定する(S306)。
【0059】
位置情報補正部222は、位置情報Pkが適正範囲内である場合には(S307で「No」)、S309に進み、位置情報Pkが適正範囲外である場合には(S307で「Yes」)、適正範囲において位置情報Pkに最も近い位置情報Pk’に補正値P’を補正して(S308)、S309に進む。
【0060】
位置情報補正部222は、位置補正を終了する場合には(S309で「Yes」)、位置補正を終了し、継続して位置補正を行う場合には(S309で「No」)、次の位置情報を取得するための準備(kに1を加算する)を行い(S310)、S302に戻る。以上、連続的に位置補正を行う場合における位置補正装置20による位置補正の一例(測位精度を考慮する場合)の流れを説明した。
【0061】
ところで、適正範囲特定部221が、例えば、位置情報Pk−1を基準とした境界B1の内部を適正範囲として特定することができることについては、上記した通りである。しかし、適正範囲特定部221による適正範囲の特定の手法としては、他にもあらゆる手法を採用することができる。例えば、適正範囲特定部221過去の複数の位置情報Pk−1,Pk−2,・・・,Pk−mから適正範囲を特定してもよい。以下、図9を参照しながら、位置補正装置20による位置補正の一例(道路情報を用いる場合)を説明する。
【0062】
図9は、位置補正装置20による位置補正の一例(道路情報を用いる場合)を説明するための図である。図9に示すように、適正範囲特定部221は、位置情報P0〜Pnがユーザの携帯端末10の位置を示す場合、道路が存在する位置を示す道路情報C’に基づいて、適正範囲を特定してもよい。例えば、適正範囲特定部221は、道路情報C’が示す道路が存在する位置を適正範囲として特定してもよい。道路情報C’が示す道路が存在する位置を適正範囲として特定するには、例えば、カーナビゲーションシステム等で利用される一般的なマップマッチングの手法を採用することができる。
【0063】
また、適正範囲特定部221は、道路情報C’が示す道路が存在する位置、かつ、位置情報Pt−1を基準とした境界Btの内部を、適正範囲として特定してもよい。図9に示した例では、適正範囲特定部221は、道路情報C’が示す道路が存在する位置、かつ、位置情報Pt−1を基準とした境界Btの内部を、適正範囲として特定している。この場合、位置情報補正部222は、位置情報Ptが適正範囲外であるため、適正範囲内において位置情報Ptに最も近い位置情報Pt’に位置情報Ptを補正する。
【0064】
なお、図9に示した例では、道路が存在する位置を示す道路情報C’に基づいて、適正範囲を特定したが、道路情報または線路が存在する位置を示す線路情報に基づいて、適正範囲を特定してもよい。すなわち、適正範囲特定部221は、道路や線路などといった経路が存在する位置を示す経路情報に基づいて、適正範囲を特定することができる。以上、位置補正装置20による位置補正の一例(道路情報を用いる場合)を説明した。以下、図10を参照しながら、位置補正装置20による位置補正の一例(ユーザの動きを示す情報を用いる場合)を説明する。
【0065】
図10は、位置補正装置20による位置補正の一例(ユーザの動きを示す情報を用いる場合)を説明するための図である。図10に示すように、適正範囲特定部221は、位置情報P0〜Pnがユーザの携帯端末10の位置を示す場合、携帯端末10の検出部130により検出されたユーザの動きを示す情報に基づいて、適正範囲を特定してもよい。例えば、検出部130が地磁気センサにより構成されている場合には、適正範囲特定部221は、地磁気センサにより検出されたユーザの移動方向に基づいて、適正範囲を特定することができる。
【0066】
例えば、ユーザの移動方向が「北東方向」である場合には、適正範囲特定部221は、位置情報Pt−1を基準とした第1象限の領域を適正範囲として特定することができる。また、ユーザの移動方向が「北東方向」のみである場合に比べて、ユーザの移動方向が「北東方向」「南西方向」「北東方向」と変化した場合には、位置情報Pt−1を基準とした第1象限の狭い領域を適正範囲として特定することができる。
【0067】
また、適正範囲特定部221は、携帯端末10の検出部130により検出されたユーザの動きを示す情報に基づいて特定される適正範囲、かつ、位置情報Pt−1を基準とした半径Dの円の内部を、適正範囲として特定してもよい。例えば、ユーザの移動方向が「北東方向」のみである場合、適正範囲特定部221は、位置情報Pt−1を基準とした第1象限の領域、かつ、位置情報Pt−1を基準とした半径Dの円の内部を、適正範囲として特定することができる。
【0068】
図10に示した例では、ユーザの移動方向が「北東方向」「南西方向」「北東方向」と変化した場合を想定しているため、適正範囲特定部221は、位置情報Pt−1を基準とした第1象限の狭い領域、かつ、位置情報Pt−1を基準とした半径Dの円の内部を、適正範囲C2’として特定している。この場合、位置情報補正部222は、位置情報Ptが適正範囲外であるため、適正範囲内において位置情報Ptに最も近い位置情報Pt’に位置情報Ptを補正する。以上、位置補正装置20による位置補正の一例(ユーザの動きを示す情報を用いる場合)を説明した。
【0069】
適正範囲特定部221による適正範囲の特定の手法としては、他の手法も想定され得る。例えば、適正範囲特定部221は、位置情報P0〜Pnがユーザの携帯端末10の位置を示す場合、乗り物が停車駅に到達する予定の時刻と停車駅の位置情報とが対応付けられてなる時刻情報に基づいて、適正範囲を特定することもできる。例えば、適正範囲特定部221は、乗り物が停車駅に到達する予定の時刻が推定時刻を基準とした所定の範囲内にある場合、その停車駅の位置情報を適正範囲として特定することもできる。
【0070】
この時刻情報は、位置補正装置20の記憶部260により記憶されていてもよいし、他の装置により記憶されていてもよい。また、この時刻情報は、リアルタイムに更新されてもよく、乗り物の運行状況に遅延が発生している場合には、適正範囲特定部221は、その遅延状態が反映された時刻情報に基づいて、適正範囲を特定することもできる。図2に戻り、位置補正装置20が有する機能についての説明を続ける。
【0071】
行動ラベル取得部280は、例えば、CPU、ROM、RAM等から構成され、携帯端末10を有するユーザの行動を示す行動ラベルを取得する機能を有する。携帯端末10を有するユーザの行動を認識する手法としては、上記したように、例えば、特開2006−345269号公報により開示されている技術を採用することができる。かかる技術によれば、例えば、検出部130により携帯端末10を有するユーザの動きが検出され、検出された動きが行動ラベル取得部280により解析されることにより、ユーザの行動が認識される。
【0072】
しかしながら、行動ラベル取得部280による行動ラベルの取得手法は、かかる例に限定されない。例えば、行動ラベル取得部280は、入力部270によりユーザから行動ラベルの入力が受け付けられた場合には、入力部270によりユーザからの入力が受け付けられた行動ラベルを取得してもよい。図2に示した例では、行動ラベル取得部280が位置補正装置20に備えられているが、位置補正装置20の代わりに携帯端末10に備えられていてもよい。
【0073】
選択部290は、例えば、CPU、ROM、RAM等から構成され、行動ラベル取得部280により取得された行動ラベルに基づいて、位置補正のためのアルゴリズムを選択する機能を有する。選択部290は、行動ラベルと所定の選択条件とに基づいて、アルゴリズムを選択してもよい。行動ラベルと所定の選択条件とに基づいたアルゴリズムの選択例について、図11を参照しながら説明する。
【0074】
図11は、位置補正装置20によるアルゴリズム選択に使用されるデータの一例を示す図である。かかるデータは、例えば、記憶部260により記憶されており、選択部290によるアルゴリズムの選択に供される。所定の選択条件は、例えば、携帯端末10を有するユーザの属性情報および携帯端末10を有するユーザが存在する環境のうちの少なくともいずれか一方を含んでいてもよい。また、所定の選択条件は、例えば、行動認識のもとになったデータを検出したセンサの種類、携帯端末10の位置推定に利用された測位方法等であってもよい。
【0075】
図11に示す例では、「天候」「環境情報」「移動手段」が、携帯端末10を有するユーザが存在する環境の例である。ユーザが存在する環境の例としては、その他、「都市・郊外」「陸・海・川」「季節」「気温」「時間帯」等が想定される。選択部290は、携帯端末10の位置情報に基づいて、携帯端末10を有するユーザが存在する環境をWEBサーバから取得してもよい。あるいは、選択部290は、携帯端末10の位置情報に基づいて、事前に記憶部260により記憶されている情報から、携帯端末10を有するユーザが存在する環境を取得してもよい。さらに、選択部290は、行動ラベルに基づいて、携帯端末10を有するユーザが存在する環境を取得することもできる。
【0076】
ユーザの属性情報としては、「性別」「年齢」「同行者」「未婚・既婚」「行動の目的」「携帯端末10の携帯方法」等が挙げられる。選択部290は、ユーザによって携帯端末10に入力された情報を、ユーザの属性情報として取得することができる。取得されたユーザの属性情報は、制御部250による制御により記憶部260に記憶させておくこともできる。選択部290は、例えば、行動ラベルが高速な移動を伴う行動を示すほど、広い範囲を適正範囲とするアルゴリズムを選択することができる。例えば、ユーザの行動は、休憩、買い物、徒歩による移動、自転車による移動、自動車による移動(または電車による移動)と変化するにつれて、高速な移動を伴うと想定されるため、より広い範囲を適正範囲とするアルゴリズムを選択することができる。
【0077】
また、選択部290は、選択条件のうち、例えば、「天候」が「晴れ」「曇り」「雨」「雪」と変化するにつれて、ユーザの移動速度が低下すると想定されるため、より狭い範囲を適正範囲とするアルゴリズムを選択することができる。さらに、選択部290は、例えば、「環境情報」が「舗装路」の場合に比べて、「未舗装」の場合には、移動速度が低下すると想定されるため、より狭い範囲を適正範囲とするアルゴリズムを選択することができる。以下に、このように選択されたアルゴリズムに従った位置補正の一例を説明する。
【0078】
図12は、位置補正装置20による位置補正の一例(行動ラベルを用いる場合)を説明するための図である。補正部220は、選択部290により選択されたアルゴリズムに従って携帯端末10の位置情報を補正することができる。この場合、上記したように、適正範囲特定部221による適正範囲の特定、位置情報補正部222による位置情報の補正がなされてもよい。
【0079】
すなわち、適正範囲特定部221は、位置情報P0を基準とする適正範囲を、選択部290により選択されたアルゴリズムに従って特定することができる。位置情報補正部222は、推定時刻が位置情報Pkの後である位置情報Pk+1を、位置情報Pk+1が適正範囲特定部221により特定された適正範囲外である場合に補正することができる。
【0080】
図12に示すように、位置情報補正部222は、位置情報Pkを基準として、選択部290により選択されたアルゴリズムにより指定された長さを半径とした円の内部を適正範囲として特定することもできる。例えば、位置情報P0〜P1までのユーザの行動が「自転車による移動」、位置情報P1〜P2までのユーザの行動が「電車による移動」、位置情報P2〜P3までのユーザの行動が「徒歩による移動」であるとする。
【0081】
この場合、選択部290は、位置情報P0、P1’、P2’の各々を基準として、選択部290により選択されたアルゴリズムにより指定された長さを半径d1、d2およびd3とした円(境界B1、B2およびB3)の内部を適正範囲として特定することができる。なお、「徒歩による移動」「自転車による移動」「電車による移動」と変化するにつれて、高速な移動を伴うと想定されるため、より広い範囲の適正範囲がアルゴリズムにより指定される。すなわち、各アルゴリズムにおける半径の関係は、d3<d1<d2と指定されている。
【0082】
なお、例えば、適正範囲特定部221は、ユーザの行動が「徒歩による移動」である場合、検出部130により検出されたユーザの動きを示す情報から、ユーザの歩行ピッチを検出することもできる。このように、適正範囲特定部221は、ユーザの歩行ピッチを検出した場合には、図12に示すように、歩行ピッチに応じて半径を変化させることもできる。例えば、適正範囲特定部221は、「歩行ピッチ(成人男性であれば、約2Hz)×歩幅(成人男性であれば、約70cm)=半径(成人男性であれば、約1.4m/秒)」として適正範囲を特定することができる。
【0083】
また、ユーザの行動が「休憩」である場合、実際には移動を伴わないが、移動しているように見える区間が存在する場合がある。適正範囲特定部221は、ユーザの行動が「休憩」である場合、その区間のプロット分布を示す楕円範囲を計算し、位置情報補正部222は、この区間に含まれる全ての位置情報がこの楕円の中に収まるように位置情報を補正してもよい。楕円範囲の計算には、例えば、適正範囲特定部221は、各位置情報のX,Y座標に関する共分散行列を求め、固有ベクトルと固有値を計算すればよい(主成分分析)。
【0084】
その他、例えば、適正範囲特定部221は、ユーザの行動が「電車による移動」である場合、電車の移動速度に応じた長さを半径として適正範囲を特定することもできる。すなわち、適正範囲特定部221は、例えば、行動ごとの移動速度に応じた長さを半径として適正範囲を特定することもできる。行動ごとの移動速度に応じた長さは、例えば、各行動ラベルに対応するアルゴリズムにより指定されている。
【0085】
行動ラベルを用いた適正範囲特定部221による適正範囲の特定手法としては、この他にも様々な手法が想定される。例えば、適正範囲特定部221は、行動ラベルが経路(道路や線路など)上を移動することが可能な状態を示す場合、経路が存在する位置を示す経路情報に基づいて適正範囲を特定してもよい。例えば、適正範囲特定部221は、行動ラベルが道路上を移動することが可能な状態を示す場合、道路が存在する位置を示す道路情報に基づいて適正範囲を特定してもよい。行動ラベルが道路上を移動することが可能な状態を示す場合としては、例えば、ユーザの行動が「徒歩による移動」「自転車による移動」「自動車による移動」「路線バスによる移動」である場合等が想定される。例えば、適正範囲特定部221は、道路情報が示す道路が存在する位置を適正範囲として特定することができる。道路情報に基づいた適正範囲の特定については、図9を参照して説明したように実行され得る。
【0086】
適正範囲特定部221は、行動ラベルが線路上を移動することが可能な状態を示す場合、線路が存在する位置を示す線路情報に基づいて適正範囲を特定してもよい。行動ラベルが線路上を移動することが可能な状態を示す場合としては、例えば、ユーザの行動が「電車による移動」である場合等が想定される。例えば、適正範囲特定部221は、線路情報が示す線路が存在する位置を適正範囲として特定することができる。線路情報に基づいた適正範囲の特定については、上記したように実行され得る。
【0087】
適正範囲特定部221は、行動ラベルが乗り物により移動している状態を示す場合、乗り物が停車駅に到達する予定の時刻と停車駅の位置情報とが対応付けられてなる時刻情報に基づいて適正範囲を特定してもよい。行動ラベルが線路上を移動することが可能な状態を示す場合としては、例えば、ユーザの行動が「路線バスによる移動」「電車による移動」である場合等が想定される。時刻情報に基づいた適正範囲の特定については、上記したように実行され得る。
【0088】
図2に戻り、位置補正装置20が有する機能についての説明を続ける。制御部250は、位置補正装置20の動作全体を制御する機能を有する。表示部240は、制御部250による制御に基づいて、各種情報を表示する機能を有する。例えば、表示部240は、制御部250による制御に基づいて、補正前の位置情報または補正後の位置情報を表示することができる。また、例えば、表示部240は、制御部250による制御に基づいて、補正前の位置情報および補正後の位置情報を並べて表示することもできる。
【0089】
入力部270は、ユーザから各種操作の入力を受け付ける機能を有する。したがって、制御部250は、例えば、入力部270により補正後の位置情報を表示する旨の操作の入力が受け付けられた場合には、補正後の位置情報を表示するよう表示部240を制御することができる。また、制御部250は、例えば、入力部270により補正前の位置情報を表示する旨の操作の入力が受け付けられた場合には、補正前の位置情報を表示するよう表示部240を制御する。
【0090】
入力部270は、ユーザから位置情報およびアルゴリズムの入力を受け付けることもできる。この場合には、制御部250は、補正部220による位置情報の補正に際し、ユーザから入力を受け付けた位置情報に対して、ユーザから入力を受け付けたアルゴリズムを適用するように制御することが可能である。表示部240は、ユーザから入力を受け付けたアルゴリズムを適用して補正した位置情報を、補正後の位置情報として表示し直すこともできる。
【0091】
記憶部260は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)等の磁気記憶部デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス、光磁気記憶デバイス等により構成され、各種情報、各種プログラム等を記憶するものである。記憶部260は、例えば、制御部250による制御に基づいて、補正前の位置情報や、補正後の位置情報を記憶しておくこともできる。
【0092】
以下、図13を参照しながら、行動ラベルを用いる場合における位置補正装置20による位置補正の一例を説明する。図13は、位置補正装置20による位置補正の一例(行動ラベルを用いる場合)の流れを示すフローチャートである。まず、選択部290は、携帯端末10の位置情報が不当な値である場合には(S401で「Yes」)、位置補正を終了する。選択部290は、携帯端末10の位置情報が正当な値である場合には(S401で「No」)、S402に進む。
【0093】
次いで、選択部290は、行動ラベル取得部280による行動の認識結果が「電車による移動」である場合には(S402で「Yes」)、電車による移動時における位置補正処理のアルゴリズムを選択し、補正部220は、選択されたアルゴリズムに従って位置補正処理を行い(S403)、位置補正を終了する。選択部290は、行動ラベル取得部280による行動の認識結果が「電車による移動」でない場合には(S402で「No」)、S404に進む。
【0094】
次いで、選択部290は、行動ラベル取得部280による行動の認識結果が「自動車による移動」である場合には(S404で「Yes」)、自動車による移動時における位置補正処理のアルゴリズムを選択し、補正部220は、選択されたアルゴリズムに従って位置補正処理を行い(S405)、位置補正を終了する。選択部290は、行動ラベル取得部280による行動の認識結果が「自動車による移動」でない場合には(S404で「No」)、S406に進む。
【0095】
次いで、選択部290は、行動ラベル取得部280による行動の認識結果が「路線バスによる移動」である場合には(S406で「Yes」)、路線バスによる移動時における位置補正処理のアルゴリズムを選択し、補正部220は、選択されたアルゴリズムに従って位置補正処理を行い(S407)、位置補正を終了する。選択部290は、行動ラベル取得部280による行動の認識結果が「路線バスによる移動」でない場合には(S406で「No」)、S408に進む。
【0096】
次いで、選択部290は、行動ラベル取得部280による行動の認識結果が「自転車による移動」である場合には(S408で「Yes」)、自転車による移動時における位置補正処理のアルゴリズムを選択し、補正部220は、選択されたアルゴリズムに従って位置補正処理を行い(S409)、位置補正を終了する。選択部290は、行動ラベル取得部280による行動の認識結果が「自転車による移動」でない場合には(S408で「No」)、S410に進む。
【0097】
次いで、選択部290は、行動ラベル取得部280による行動の認識結果が「徒歩による移動」である場合には(S410で「Yes」)、歩行時における位置補正処理のアルゴリズムを選択し、補正部220は、選択されたアルゴリズムに従って位置補正処理を行い(S411)、位置補正を終了する。選択部290は、行動ラベル取得部280による行動の認識結果が「徒歩による移動」でない場合には(S410で「No」)、位置補正を終了する。
【0098】
以上、行動ラベルを用いる場合における位置補正装置20による位置補正の一例を説明した。以下、図14および図15を参照しながら、本実施形態に係る位置補正装置20による位置補正を、各種の測位技術に適用した場合における補正結果の例を説明する。図14は、本実施形態に係る位置補正装置20による位置補正を無線LANの基地局からの信号に基づいた測位技術に適用した場合の補正結果の一例を示す図である。図15は、本実施形態に係る位置補正装置20による位置補正をGPS測位技術に適用した場合の補正結果の一例を示す図である。
【0099】
図14および図15において、「正解経路」は、携帯端末10を有するユーザが実際に移動した経路を示している。「補正前」は、本実施形態に係る位置補正装置20による位置補正を行う前における携帯端末10の移動経路を示している。「補正後」は、本実施形態に係る位置補正装置20による位置補正を行った後における携帯端末10の移動経路を示している。図14および図15の各々に示したように、位置補正装置20による位置補正を行った後においては、位置補正装置20による位置補正を行う前と比較して、移動経路に揺らぎがなく、高精度に携帯端末10の位置情報が取得されている。
【0100】
(位置補正装置のハードウェア構成)
図16は、位置補正装置20のハードウェア構成を示したブロック図である。位置補正装置20は、CPU301と、ROM302と、RAM303と、ホストバス304と、を備える。また、位置補正装置20は、ブリッジ305と、外部バス306と、インタフェース307と、入力装置308と、出力装置310と、ストレージ装置(HDD)311と、ドライブ312と、通信装置313とを備える。
【0101】
CPU301は、演算処理装置および制御装置として機能し、各種プログラムに従って位置補正装置20内の動作全般を制御する。また、CPU301は、マイクロプロセッサであってもよい。ROM302は、CPU301が使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する。RAM303は、CPU301の実行において使用するプログラムや、その実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶する。これらはCPUバスなどから構成されるホストバス304により相互に接続されている。
【0102】
ホストバス304は、ブリッジ305を介して、PCI(Peripheral Component Interconnect/Interface)バスなどの外部バス306に接続されている。なお、必ずしもホストバス304、ブリッジ305および外部バス306を分離構成する必要はなく、一のバスにこれらの機能を実装してもよい。
【0103】
入力装置308は、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、マイクロフォン、スイッチおよびレバーなどユーザが情報を入力するための入力手段と、ユーザによる入力に基づいて入力信号を生成し、CPU301に出力する入力制御回路などから構成されている。位置補正装置20のユーザは、該入力装置308を操作することにより、位置補正装置20に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりすることができる。
【0104】
出力装置310は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ装置、液晶ディスプレイ(LCD)装置、OLED(Organic Light Emitting Diode)装置およびランプなどの表示装置を含む。さらに、出力装置310は、スピーカおよびヘッドホンなどの音声出力装置を含む。出力装置310は、例えば、再生されたコンテンツを出力する。具体的には、表示装置は再生された映像データ等の各種情報をテキストまたはイメージで表示する。一方、音声出力装置は、再生された音声データ等を音声に変換して出力する。
【0105】
ストレージ装置311は、本実施形態に係る位置補正装置20の記憶部の一例として構成されたデータ格納用の装置である。ストレージ装置311は、記憶媒体、記憶媒体にデータを記録する記録装置、記憶媒体からデータを読み出す読出し装置および記憶媒体に記録されたデータを削除する削除装置などを含んでもよい。ストレージ装置311は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)で構成される。このストレージ装置311は、ハードディスクを駆動し、CPU301が実行するプログラムや各種データを格納する。
【0106】
ドライブ312は、記憶媒体用リーダライタであり、位置補正装置20に内蔵、あるいは外付けされる。ドライブ312は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、または半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体40に記録されている情報を読み出して、RAM303に出力する。また、ドライブ312は、リムーバブル記録媒体40に情報を書き込むこともできる。
【0107】
通信装置313は、例えば、ネットワーク30に接続するための通信デバイス等で構成された通信インタフェースである。通信装置313は、無線LAN(Local Area Network)対応通信装置であっても、LTE(Long Term Evolution)対応通信装置であっても、有線による通信を行うワイヤー通信装置であってもよい。
【0108】
[2.むすび]
以上説明したように、本発明の実施形態に係る位置補正装置20によれば、適正範囲特定部221および位置情報補正部222が有する機能により、位置推定の信頼性を向上させることが可能である。さらに、本発明の実施形態に係る位置補正装置20によれば、行動ラベル取得部280、選択部290および補正部220が有する機能により、ユーザの行動に応じた携帯端末10の位置情報を取得することが可能となる。
【0109】
なお、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0110】
また、本明細書の位置補正システム1の処理における各ステップは、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はない。例えば、位置補正システム1の処理における各ステップは、フローチャートとして記載した順序と異なる順序で処理されても、並列的に処理されてもよい。
【0111】
また、位置補正装置20に内蔵されるCPU301、ROM302およびRAM303などのハードウェアを、上述した位置補正装置20の各構成と同等の機能を発揮させるためのコンピュータプログラムも作成可能である。また、該コンピュータプログラムを記憶させた記憶媒体も提供される。
【符号の説明】
【0112】
1 位置補正システム
10 携帯端末
20 位置補正装置
30 ネットワーク
110 位置情報取得部
120 通信部
130 検出部
210 通信部
220 補正部
221 適正範囲特定部
222 位置情報補正部
240 表示部
250 制御部
260 記憶部
270 入力部
280 行動ラベル取得部
290 選択部




【特許請求の範囲】
【請求項1】
推定時刻が対応付けられた複数の位置情報のうちの第1の位置情報を基準とする適正範囲を特定する適正範囲特定部と、
推定時刻が前記第1の位置情報の後である第2の位置情報を、前記第2の位置情報が前記適正範囲特定部により特定された前記適正範囲外である場合に補正する位置情報補正部と、
を備える、位置補正装置。
【請求項2】
前記位置情報補正部は、
前記第2の位置情報を、前記適正範囲内において前記第2の位置情報に最も近い位置情報に補正する、
請求項1に記載の位置補正装置。
【請求項3】
前記適正範囲特定部は、
前記複数の位置情報がユーザの携帯端末の位置を示す場合、前記携帯端末を有するユーザの行動を示す行動ラベルに基づいて、前記適正範囲を特定する、
請求項1に記載の位置補正装置。
【請求項4】
前記位置情報補正部は、
前記第1の位置情報を基準とした円の内部を前記適正範囲として特定する、
請求項1に記載の位置補正装置。
【請求項5】
前記適正範囲特定部は、
前記複数の位置情報がユーザの携帯端末の位置を示す場合、道路が存在する位置を示す道路情報または線路が存在する位置を示す線路情報に基づいて、前記適正範囲を特定する、
請求項1に記載の位置補正装置。
【請求項6】
前記適正範囲特定部は、
前記道路情報が示す道路が存在する位置または前記線路情報が示す線路が存在する位置を前記適正範囲として特定する、
請求項5に記載の位置補正装置。
【請求項7】
前記適正範囲特定部は、
前記複数の位置情報がユーザの携帯端末の位置を示す場合、前記携帯端末により検出された前記ユーザの動きを示す情報に基づいて、前記適正範囲を特定する、
請求項1に記載の位置補正装置。
【請求項8】
前記適正範囲特定部は、
前記複数の位置情報がユーザの携帯端末の位置を示す場合、乗り物が停車駅に到達する予定の時刻と前記停車駅の位置情報とが対応付けられてなる時刻情報に基づいて、前記適正範囲を特定する、
請求項1に記載の位置補正装置。
【請求項9】
前記位置情報補正部は、
前記第2の位置情報の測位誤差が所定値よりも小さい場合には、前記第2の位置情報が前記適正範囲外であっても、前記第2の位置情報を補正することを制限する、
請求項1に記載の位置補正装置。
【請求項10】
推定時刻が対応付けられた複数の位置情報のうちの第1の位置情報を基準とする適正範囲を特定するステップと、
推定時刻が前記第1の位置情報の後である第2の位置情報を、前記第2の位置情報が前記適正範囲外である場合に補正するステップと、
を含む、位置補正方法。
【請求項11】
コンピュータを、
推定時刻が対応付けられた複数の位置情報のうちの第1の位置情報を基準とする適正範囲を特定する適正範囲特定部と、
推定時刻が前記第1の位置情報の後である第2の位置情報を、前記第2の位置情報が前記適正範囲特定部により特定された前記適正範囲外である場合に補正する位置情報補正部と、
を備える、位置補正装置として機能させるためのプログラム。
【請求項12】
推定時刻が対応付けられた複数の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記位置情報取得部により取得された前記複数の位置情報を送信する送信部と、
を備える、携帯端末と、
前記携帯端末から前記複数の位置情報を受信する受信部と、
前記受信部により受信された前記複数の位置情報のうちの第1の位置情報を基準とする適正範囲を特定する適正範囲特定部と、
推定時刻が前記第1の位置情報の後である第2の位置情報を、前記第2の位置情報が前記適正範囲特定部により特定された前記適正範囲外である場合に補正する位置情報補正部と、
を備える、位置補正装置と、
を有する、位置補正システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−202919(P2012−202919A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69841(P2011−69841)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】