説明

位置規則性ポリマーの製造方法

本発明は、位置規則性ポリマー、特に高い位置規則性を有する頭−尾(HT)ポリ(3−置換)チオフェンの、製造方法、この方法により製造される新規なポリマー、新規なポリマーの使用であって、電界効果トランジスタ(FET)、電子発光、光起電もしくはセンサーデバイスを含む、光学、電気光学もしくは電子デバイスにおける半導体または電荷輸送材料としての前記使用、新規なポリマーを含むFETおよび他の半導体部品または材料、ポリマーをエンドキャッピングする方法、ならびにこれにより得られるエンドキャップポリマーおよびそれらの上記デバイスにおける使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明分野
本発明は、位置規則性ポリマー、特に、高い位置規則性(regioregularity)を有する頭−尾(head-to-tail)(HT)ポリ−(3−置換)チオフェンの製造方法に関し、また、この方法によって製造される新規なポリマーに関する。本発明はさらに、電界効果トランジスタ(FET)、電子発光、光起電およびセンサーデバイスを含む光学、電子光学または電子デバイスにおける、半導体または電荷輸送材料としての新規ポリマーの使用に関する。本発明はさらに、新規なポリマーを含有する、FETおよび他の半導体部品もしくは材料に関する。本発明はさらに、ポリマーをエンドキャッピングする方法、この方法により得られるポリマー、および上記デバイスにおけるそれらの使用に関する。
【0002】
背景および従来技術
有機材料は近年、有機ベースの薄膜トランジスタおよび有機電界効果トランジスタ(OFET)における活性層として将来性を示している(H. E. Katz, Z. Bao and S. L. Gilat, Acc. Chem, Res., 2001, 34, 5, 359参照)。かかるデバイスは、スマートカード、安全保障タグおよびフラットパネルディスプレイのスイッチング素子において潜在的な用途を有する。有機材料は、もし溶液から蒸着できれば、高速で大面積の製造ルートが可能となるため、そのシリコン類似体に対して大きなコスト的利点を有することが予想される。
【0003】
デバイスの性能は、基本的に、半導体材料の電荷キャリア移動度および電流オン/オフ比に基づく。そのため理想的な半導体は、高い電荷キャリア移動度(>1×10−3cm−1−1)と組み合わせて、オフ状態において低い導電率を有する必要がある。さらに半導体材料は、酸化がデバイスの性能の低下を引き起こすため、酸化に対して比較的安定であること、すなわち、高いイオン化ポテンシャルを有することが重要である。
従来技術において、位置規則性頭−尾(HT)ポリ−(3−アルキルチオフェン)、特にポリ−(3−ヘキシルチオフェン)は、1×10−5〜0.1cm−1−1の電荷キャリア移動度を示すために、それらを半導体材料として用いることが示唆された。さらにポリ−(3−アルキルチオフェン)は、有機溶媒中で良好な溶解性を示し、大面積フィルムを製造するための溶液加工が可能である。
【0004】
ポリ−(3−アルキルチオフェン)の高い位置規則性は、パッキングの改善および最適化微細構造をもたらし、改善された電荷キャリア移動度をもたらすため、その電子および光学特性にとって重要である(US 6,166,172, H. Sirringhaus et al., Science, 1998, 280, 1741-1744;H. Sirringhaus et al., Nature, 1999, 401, 685-688;およびH. Sirringhaus, et al., Synthetic Metals, 2000, 111-112, 129-132参照)。位置規則性は、ポリマーの製造方法に大きく影響される。
高い位置規則性HT−ポリ−(3−アルキルチオフェン)を製造する幾つかの方法が、従来技術において報告されており、例えば、R. D. McCullough, Adv. Mater., 1998, 10(2), 93-116の概説およびその中に引用されている参考文献などである。
【0005】
≧90%の位置規則性を有するHT−ポリ(3−アルキルチオフェン)を、2,5−ジブロモ−3−アルキルチオフェンから出発して製造する既知の方法は、例えば「リーク法(Rieke method)」を含み、これは、遊離体(educt)(ここでRはアルキル)をTHF中の高反応性の亜鉛と、以下のように反応させることによる。
【化1】

【0006】
さらに知られているのは、McCullough et al., Adv. Mater., 1999, 11(3), 250-253およびEP 1 028 136およびUS 6,166,172に記載されている方法であり、これらの文献の全開示は、本明細書に参照として組み込まれる。この経路によれば、遊離体は、TFH中の臭化メチルマグネシウムと、以下のように反応する。
【化2】

【0007】
位置規則性ポリ(3−アルキルチオフェン)を、「スチル法(Stille-method)」(Stille, Iraqi, Barker et al., J. Mater. Chem., 1998, 8, 25参照)によって、下に示すように製造することも報告され、
【化3】

また「スズキ法(Suzuki-method)」(Suzuki, Guillerez, Bidan et al., Synth. Met., 1998, 93, 123参照)によって、下に示すように製造することも報告された。
【化4】

【0008】
しかし、従来技術において記載されている方法は、幾つかの欠点を有する。従って例えばリーク法では、高価で製造の難しい、高反応性の「リーク亜鉛」が必要とされる。スチル法およびスズキ法では、プロセスの効率を低下させる、余分な加工ステップが必要とされる。マッカルー法(McCullough method)では、高価なグリニャール試薬、臭化メチルマグネシウムが必要である。さらにこの方法では、化学量論的量の臭化メチルが副産物として生成され、これは、特に大規模生産の場合には、環境問題の原因となる。臭化メチルは排気ガスからガス洗浄器によって除去することができないため、排気燃焼用の費用のかかる技術と方法が必要となる。
【0009】
従来技術ではまた、2,5−ジハロゲン化チオフェンのマグネシウムとの反応から形成されるグリニャール試薬の、ニッケルが触媒する結合による無置換ポリチオフェンの製造について報告されている。この経路は、1984年に最初に報告された(J. P. Montheard; T. Pascal, Synth. Met, 1984, 9, 389およびM. Kobayashi; J. Chen; T.-C. Chung; F. Moraes; A. J. Heeger; F. Wudl, Synth. Met, 1984, 9, 77)。しかし、この方法は低分子量のみを産出する。またこれらのポリマーは、3−アルキル置換ポリチオフェンと比べて、低い溶解性を有する。
【0010】
2,5−ジハロゲン化3−アルキルチオフェンとマグネシウムから形成されるグリニャール試薬の、ニッケルが触媒する結合を用いた、ポリ(3−アルキルチオフェン)の下に示すような製造についても報告されている。
【化5】

【0011】
T. Yamamoto; K.-I. Sanechika; A. Yamamoto, Bull. Chem. Soc. Jpn., 1983, 56, 1497およびUS 4,521,589には、THF中の2,5−ジハロ−3−アルキルチオフェンのグリニャール結合について記載されており、ここでアルキル基は、メチルなどの、1〜4個のC原子を有する低級アルキルである。しかし、得られたポリマーは低分子量(1,370または2,300)および低い位置規則性(H−NMRスペクトルから見られるように)を有することが報告されている。US 4,521,589にはまた、IRスペクトルにより決定された重合の程度が96である、高い分子量のフラクションについて述べられているが、しかし分子量の測定データは示されていない。Elsenbaumer et al.による一連の刊行物には、グリニャール結合によるポリ(3−アルキルチオフェン)の合成について記載されている(R. L. Elsenbaumer; K. Y. Jen; R. Oboodi, Synth. Met, 1986, 15, 169;さらにK. Y. Jen; R. Oboodi; R. L. Elsenbaumer, Polym. Mater. Sci. Eng., 1985, 53, 79およびK.-Y. Jen; G. G. Miller; R. L. Elsenbaumer, J Chem Soc, Chem Commun, 1986, 1346)。しかし、これらのポリマーはほとんどが3,000〜8,000の範囲の分子量(Mn)を有し、例外としては2,5−ジヨード−3,4−ジメチルチオフェンから得られるホモポリマーおよび2,5−ジヨード−3−メチル−および2,5−ジヨード−3−n−ブチルチオフェンから得られるコポリマーであり、これらはそれぞれ26,000および35,000の分子量を有することが報告されている。US 4,711,742(Elsenbaumer et al.)には、2−メチル−テトラヒドロフラン中のジヨードモノマーの、グリニャール結合によるポリ(3−ブチルチオフェン)の合成について記載されており、これによって、重合の程度300に対応する41,400の分子量が得られる。しかし、上記文献中に記載されたポリ(3−アルキルチオフェン)は、比較的低い量の所望の頭尾−頭尾(HT−HT)トライアド(triad)を有して位置ランダム的(regiorandom)である(例えば、K.-Y. Jen; G. G. Miller; R. L. Elsenbaumer, J Chem Soc, Chem Commun, 1986, 1346参照)。
【0012】
3つの異なる経路により作製されたポリ(3−デシルチオフェン)の研究において(P. C. Stein; C. Botta; A. Bolognesi; M. Catellani, Synth. Met, 1995, 69, 305参照)、ジヨードモノマーのグリニャール重合を用いて製造した試料が、H−NMRによって70%の位置規則性を有することが見出された。2,5−ジヨード−3−ヘキシルチオフェンとエーテル中のマグネシウムのグリニャール反応を用いたポリ(3−ヘキシルチオフェン)の合成の研究(H. Mao; S. Holdcroft, Macromolecules, 1992, 25, 554参照)の結果、5,200の分子量(M)が得られた。直接の位置規則性のデータは示されていないが、H−NMRによれば、可能性のある4つ全てのトライアドからのピークが示され、比較的低い位置規則性が示唆された。同じ著者による他の研究(H. Mao; S. Holdcroft, Macromolecules, 1993, 26, 1163参照)では、低い位置規則性(58%までのHT−HTトライアド、または80%までのHTダイアド(dyad))のポリ(3−ヘキシルチオフェン)のみが報告された。
【0013】
結論すると、マグネシウムとのグリニャール反応によるポリ(3−アルキルチオフェン)の製造が文献に記載されてはいるが、合成されたポリマーは低い分子量および/または低いもしくはランダムな位置規則性を有することが報告されている。
従って、高い位置規則性、高分子量、高純度および高収率を有する、ポリマー、特にポリ(3−置換)チオフェンの、改善された製造方法であって、経済的、効率的および環境に有利で、工業的大規模生産に特に好適な前記方法の必要性が、未だに存在している。
【0014】
本発明の目的は、これらの利点を有し、しかし上記の従来技術の方法の欠点を有さないポリマーの製造のための、改善された方法を提供することである。
本発明の他の目的は、以下の詳細な記述から、当業者には直ちに明らかである。
【0015】
本発明の発明者らは、ポリマーの製造方法、特にポリ−(3−置換)チオフェンの、以下に記載された本発明の方法に従う製造方法を提供することによって、これらの目的が達成され、そして上記問題点が解決されることを見出した。この方法によれば、マグネシウムと反応可能な離脱基である少なくとも2つの基を有する3−置換チオフェンモノマーを、好適な溶媒中でマグネシウムと反応させて中間体を形成し、次に好適な触媒の存在下で重合する。驚くべきことには、適切な試薬および反応条件を選択することにより、高い位置規則性、高分子量、高純度のポリマー、特にポリ−(3−置換)チオフェンを、高収率で、除去が必要な大量の有害な副産物を回避して得ることが可能であることが見出された。
【0016】
本発明の方法により製造されるポリマーは、半導体または発光材料、部品またはデバイスのための電荷輸送材料として、特に有用である。
ポリマーを製造するための上記の経路は、通常、ハロゲンなどの反応基、ボロネートエステルもしくはトリアルキルスズなどの有機金属種、または有機マグネシウムもしくは有機亜鉛などの強い反応基によって終端されたポリマーを与え、これを慣用の操作の下で急冷する(quenched)。しかし、これらの基は、ポリマーの電気的特性に対して不都合な効果を有する;例えば、半導体用途において、それらは電荷を吸着し、従ってポリマーの電荷キャリア移動度を低下させる。従って本発明のさらなる目的は、本発明の方法によって、また上記の従来技術の方法によって得られるポリマーの電気特性をさらに改善することである。発明者らは、この目的が、本明細書に記載のポリマーの化学的修飾(「エンドキャッピング」)によって実現できることを見出した。すなわち、ポリマーの末端基を、例えばアルキル基または水素によって置き換えることにより、改善された電気特性のポリ(3−アルキルチオフェン)が得られる。本発明の他の側面は、従って、ポリマー、特に、位置規則性ポリ(3−アルキルチオフェン)をエンドキャッピングする方法、およびこの方法によって得られるポリマーに関する。
【0017】
発明の概要
本発明は、ポリマーの製造方法であって、マグネシウムと反応可能な少なくとも2つの基を有するチオフェンを提供すること、該チオフェンをマグネシウムと反応させて、位置化学性(regiochemical)グリニャール中間体または位置化学性グリニャール中間体の混合物を形成すること、および前記グリニャール中間体を、好適な触媒を添加することにより重合することによる、前記方法に関する。
本発明はさらに、本明細書に記載の方法であって、ここでチオフェンが、2位および5位においてマグネシウムと反応可能な基を有する溶解性3−置換チオフェンである、前記方法に関する。
【0018】
本発明はさらに、本明細書に記載の方法であって、ここでポリマーが、≧90%、好ましくは≧95%、非常に好ましくは≧98%の位置規則性を有する、位置規則性頭−尾(HT)ポリマーである、前記方法に関する。
本発明はさらに、本明細書に記載の方法であって、
a)マグネシウムと反応可能な2つの基を有するチオフェンを、溶媒または溶媒混合物に溶解すること、
【0019】
b)チオフェンの少なくとも1モル量のマグネシウムを溶液に加えること、または、溶液を前記マグネシウムに加えること、ここで前記マグネシウムは前記チオフェンと反応して、位置化学性グリニャール中間体または位置化学性グリニャール中間体の混合物を形成し、
c)随意的に、未反応のマグネシウムを反応混合物から除去すること、
d)触媒を前記反応混合物に加え、または前記反応混合物を触媒に加え、および随意的に得られた混合物を攪拌し、ポリマーを形成すること、ならびに、
e)ポリマーを混合物から回収すること、
による、前記方法に関する。
【0020】
本発明はさらに、本明細書に記載の方法によって得ることのできる、またはそれによって得た、新規なポリマー、特に新規なポリ−3−置換チオフェンに関する。
本発明はさらに、ポリマー、特にポリ−3−置換チオフェンであって、好ましくは高い位置規則性を有し、本明細書に記載の方法から得られ、ここで、1つまたは2つ以上の末端基が化学的に修飾されており(「エンドキャッピングされた」)、特に半導体として用いられる、前記ポリマーに関する。本発明はさらに、ポリマー、特にポリ−3−置換チオフェンの末端基を、重合中またはその後に、化学的に修飾する方法(「エンドキャッピング」)に関する。
【0021】
本発明はさらに、本明細書に記載の1種または2種以上のポリマーを含む、半導体または電荷輸送材料、部品またはデバイスに関する。
本発明はさらに、本発明によるポリマーの使用であって、半導体または電荷輸送材料としての、特に、光学、電気光学もしくは電子デバイスにおける、例えば集積回路の部品としての電界効果トランジスタ(FET)における、フラットパネルディスプレイ用途におけるまたは無線IC(RFID)タグのための薄膜トランジスタとしての、または例えば電子発光ディスプレイもしくは例えば液晶ディスプレイ(LCD)のバックライトなどの、有機発光ダイオード(OLED)のための半導体部品における、光起電もしくはセンサーデバイスのための、バッテリーにおける電極材料としての、光導電体としての、および電子写真記録などの電子写真用途のための、前記使用に関する。
【0022】
本発明はさらに、本発明によるポリマーの使用であって、電子発光材料としての、光起電もしくはセンサーデバイスにおける、バッテリーにおける電極材料としての、光導電体としての、電子写真用途または電子写真記録のための、またはDNA配列の検出および識別のための、前記使用に関する。
本発明はさらに、本発明による半導体または電荷輸送材料、部品またはデバイスを含む、光学、電子光学もしくは電子デバイス、FET、集積回路(IC)、TFTまたはOLEDに関する。
【0023】
本発明はさらに、本発明による半導体もしくは電荷輸送材料、部品もしくはデバイス、またはFET、IC、TFTまたはOLEDを含む、フラットパネルディスプレイ、無線IC(RFID)タグ、電子発光ディスプレイまたはバックライト用の、TFTまたはTFTアレイに関する。
本発明はさらに、本発明によるFETまたはRFIDタグを含む、安全保障マークまたはデバイスに関する。
【0024】
発明の詳細な説明
本発明に従った方法により製造されるポリマーは、好ましくは式I:
【化6】

から選択され、式中、nは>1の整数であり、Rは、本明細書中の本発明による方法に対して記載された条件のもとで、マグネシウムと反応しない基である。好ましくは、Rは、無置換で無修飾の直鎖もしくは分枝アルキルの場合は、5個または6個以上のC原子を有する有機基である。非常に好ましくは、Rは、5個または6個以上のC原子を有する有機基である。
【0025】
本発明の方法において遊離体として用いるチオフェンは、好ましくは式II
【化7】

から選択され、式中、Rは式Iで与えられた意味を有し、そしてXおよびXは、互いに独立して、マグネシウムと反応可能な基である。特に好ましいXおよびXは、Clおよび/またはBrであり、最も好ましくはBrである。
【0026】
本発明による方法は、従来技術において開示された方法に対して、同様またはそれ以上の収率および品質のポリチオフェンを提供しつつ、特に経済的および環境的側面に関して重要な利点を提供する。
本発明による方法により、ポリチオフェン、特に、90%またはそれ以上の位置規則性を有するHT−ポリ−(3−置換)チオフェンを、50%またはそれ以上の収率で(チオフェン遊離体に関して)、製造することができる。上記したように、これらの高い位置規則性HT−ポリ−(3−置換)チオフェンは、電子または光学デバイスにおいて、電荷輸送または半導体材料として特に好適である。
【0027】
従って本発明の位置規則性ポリマーは、大きい数のHT結合繰り返し単位を有し、そして好ましくはそれのみからなり、該繰り返し単位は次の式Iaで示される:
【化8】

【0028】
さらに、ハロゲン化有機マグネシウムなどの高価で製造の困難なグリニャール試薬は不要であり、その代わりにマグネシウムを試薬として用いることができる。また、臭化メチルなどの有害な副産物の大量の排出も避けることができる。
ハロゲン化有機マグネシウムなどのグリニャール試薬の代わりにマグネシウムを加える一般的な方法は、従来技術において、ポリチオフェンおよびポリ−3−アルキルチオフェンの製造について記載されている。しかし、マグネシウムは一般に、従来のグリニャール反応において高度に位置選択的ではないと考えられている。これは、上記従来技術の文献の教示が、高い位置規則性を有するポリマーを報告していないことによって支持される。
【0029】
本発明の発明者らは、高い位置規則性、高分子量および良好な加工性を有するポリチオフェンが、反応条件および試薬の適切な選択、例えば、直鎖エーテルを溶媒として用いること、および2/5位においてブロモ基またはクロロ基を有するチオフェンモノマーを遊離体として用いることにより得られることを見出した。さらに、3位に有機置換基を有し、好ましくは5、6または7個以上のC原子を有する3−置換チオフェンの使用が、ポリチオフェンの加工性および溶解性を改善する。その結果、重合の間に、成長するポリマーが溶液中により長く存在して、高い分子量および良好な位置規則性を得ることができる。
【0030】
重合の後、ポリマーは好ましくは反応混合物から、例えば慣用の操作により回収され、精製される。これは、専門家に知られており文献に記載されている標準の方法に従って、実施することができる。
本発明の方法の結果、得られたポリチオフェンは、通常、チオフェンモノマーまたはその誘導体の2位および5位においてマグネシウムと反応可能な脱離基により終端される。式IIのチオフェン遊離体を用いる場合、得られるポリマーは式I1:
【化9】

に相当し、式中、n、R、XおよびXは、式IおよびIIにおいて与えられた意味を有する。
【0031】
本発明の他の目的は、ポリマー、特にポリ−3−置換チオフェンの反応末端基を、重合中またはその後に化学的に修飾する方法である。この方法は以下では「エンドキャッピング」とも呼ぶ。本発明の他の目的は、末端基が化学的に修飾されてモノマー末端基に置き換わっているポリマー、特にポリ−3−置換チオフェンであり、これは以下では「エンドキャップポリマー(endcapped polymer)」とも呼ぶ。本発明の他の目的は、エンドキャップポリマー、特にエンドキャップポリ−3−置換チオフェンの使用であって、半導体または電荷輸送材料としての、特に、本明細書に記載の使用およびデバイスのための、前記使用である。
【0032】
ポリアルキルチオフェンのエンドキャッピングは当分野に知られており、例えばB. M. W. Langeveld-Voss, R. A. J. Janssen et al., Chem Commun 2000 81-82およびJ. Liu., R. S. Loewe and R. D. McCullough, Macromolecules, 1999, 32 5777-5785によって、反応機構の理解の支援のために(Liu, Janssen)、またはポリマーの後の反応を可能にするために、または基板への結合を促進するために(Janssen)記載されている。さらにUS 6,602,974には、ブロックコポリマーの製造のために、末端のハロゲン基をHまたは官能末端基で置き換えることによる、ポリアルキルチオフェンの化学的修飾が記載されている。
【0033】
本発明の発明者らは、エンドキャッピングが、改善された電気的特性を有するポリマーを提供する好適な方法としても用い得ることを見出した。例えば、臭素末端基をポリマー鎖から取り除くことにより、電荷キャリアトラッピングの供給源が取り除かれて、より高い電荷キャリア移動度が観察できる。主要な利点は、トランジスタ性能の安定性に関する。炭素−臭素結合は、トランジスタの稼動中に存在する荷電された種の存在下で、さらなる反応を起こしやすい。これらの可能性のある化学反応は、半導体ポリマーの特性を変化させ、また可動イオンを放出し、これによりトランジスタのヒステリシスおよび閾値電圧のドリフトをもたらす。エンドキャッピングは、荷電ポリマーの反応性を低下させ、従って安定性を改善する。
【0034】
従って、本発明の他の側面は、本明細書に記載されたように、ポリマーの末端基を化学的に修飾することによる(エンドキャッピング)、ポリマー、特にポリアルキルチオフェンの、電荷キャリア移動度などの電気的特性、および加工性を改善する方法に関する。本発明の他の側面は、エンドキャップポリマーおよび、それらの半導体としての、例えば本明細書に記載の用途における使用に関する。
【0035】
例えば、残留ハロゲン末端基を他の基または反応種に転換することによるエンドキャッピングの方法は、本発明の方法により得られるポリマーに限定されるものではない。方法は、他のポリマー、例えば上記のリーク法、マッカルー法、スズキ法またはスチル法により得られるポリマーについても実施できる。
エンドキャッピングは、重合反応混合物からポリマーを回収する前または後に、ポリマーの操作の前または後に、またはその精製の前または後に、材料のコスト、時間および関連する反応条件に関していずれがより好適であり効果的であるかに依存して、実施することができる。例えば、エンドキャッピングのために高価な共反応物を用いる場合には、エンドキャッピングをポリマーの精製の後に行うのが、より経済的となり得る。精製の手間が共反応物より経済的により重要な場合には、エンドキャッピングを精製の前に、または、さらに重合反応混合物からポリマーを回収する前に実施するのが好ましい場合がある。
【0036】
特に好ましいのは、本明細書に記載の本発明の方法に従った、マグネシウムとのグリニャール反応により得られる、エンドキャップポリ−3−置換チオフェンであって、ここでポリマーの反応末端基は、重合中またはその後に、または混合物からポリマーを回収した後に、またはポリマーの精製後に、化学的に修飾される。
【0037】
本発明による方法の結果、重合ステップの終わりにおいて、末端基XおよびXはハロゲンまたはグリニャール基である。この段階において、脂肪族グリニャール試薬RMgXまたはジアルキルグリニャール試薬MgR(この式中Xはハロゲンであり、Rが脂肪族基である)または反応性マグネシウムを好ましくは添加して、残留ハロゲン末端基をグリニャール基に転換する。続いて、例えば、アルキル末端基を得るために、過剰なω−ハロアルカンが加えられ、これがグリニャールに結合する。代替的に、プロトン末端基を得るため、重合はアルコールなどの非溶媒中で停止される(quenched)。
【0038】
例えばヒドロキシルもしくはアミン基またはこれらの保護された形態などの、反応性官能末端基を提供するためには、ハロゲン末端基は例えばグリニャール試薬R’MgXと反応し、ここでR’は、かかる反応性官能基または保護された反応性官能基である。
グリニャール試薬の代わりに有機リチウム試薬を用い、その後ω−ハロアルカンを添加することにより、エンドキャッピングを行うことも可能である。
【0039】
例えばUS 6,602,974に記載された方法、例えばビルスマイアー反応(Vilsmeier reaction)でアルデヒド基を導入し、続いて金属水素化物で還元してヒドロキシル基を形成することなどにより、H末端基を反応性官能基に置き換えることも可能である。
エンドキャッピングの前にポリマーが完全に反応している(worked up)場合は、ポリマーをグリニャール結合のための良好な溶媒、例えばジエチルエーテルまたはTHFなどに溶解することが好ましい。この溶液は次に、例えば上記の有機グリニャール試薬、RMgXまたはMgRまたはR’MgXで、または亜鉛試薬、RZnX、R’ZnXまたはZnRで処理し、この式中、RおよびR’は上記の定義の通りである。次に好適なニッケルまたはパラジウム触媒をハロアルカンと共に加える。
【0040】
このエンドキャッピングの方法は、例えばマッカルーまたはリーク経路により製造されるポリマーにも有効である。
スズキまたはスチル経路により製造されるポリマーの場合は、好ましくは以下のようにエンドキャッピングする:スズキ反応については、重合の終わりに、好ましくは、2−ボロン−5−アルカリチオフェンを添加して臭素末端基と反応させ、続いて過剰の2−ブロモ−5−アルキルチオフェンを添加してボロン末端基と反応させることにより、アルキル終端を得る。水素によるエンドキャップ種を得るためには、2−ボロンチオフェンとの反応と、続く過剰の2−ブロモチオフェンが必要である。スチル経路についても同様の方法を用いることができるが、ただし、2−トリアルキルスタンニル試薬、例えば2−トリアルキルスタンニル−5−アルキルチオフェンを、ボロンチオフェンの代わりに用いる。同様に、最初の急冷およびポリマーの精製の後にエンドキャッピングを行う場合は、ポリマーを溶解し、好適な触媒を加えるのが好ましい。
【0041】
非常に好ましいのは、末端基が重合中またはその後にHまたはアルキル基によって置き換えられた、エンドキャップポリマー(以降、「Hまたはアルキル基によるエンドキャップポリマー」とも呼ぶ)である。
好ましくは、エンドキャッピングはポリマーの精製の前に行う。さらに好ましいエンドキャッピングは、本明細書に記載された方法のステップd)の後に行う。本発明の他の好ましい態様において、エンドキャッパーを重合中に加えて、末端基を取り除き、可能であればポリマーの分子量を制御する。
【0042】
ポリマー試料の実質的に全ての分子が本発明によりエンドキャッピングされるのが好ましいが、しかし少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも98%がエンドキャッピングされる。
本発明によるポリマーの末端基の化学的修飾(エンドキャッピング)により、異なる末端基を有する新規なポリマーを製造することができる。これらのポリマーは、好ましくは式I2:
【化10】

式中、
nおよびRは、式IおよびIIにおいて与えられた意味を有し、そしてX11およびX22は、互いに独立して、H、ハロゲン、スズ酸塩、ボロン酸塩、または1個もしくは2個以上のヘテロ原子を含むこともできる脂肪族、脂環式もしくは芳香族基である、
から選択される。
【0043】
特に好ましいX11およびX22は、Hまたは、1〜20個、好ましくは1〜12個、非常に好ましくは1〜6個のC原子を有する、直鎖もしくは分枝アルキルから選択され、最も好ましくは直鎖アルキルまたは分枝アルキル、例えばイソプロピルまたはtert.ブチルである。芳香族基のX11およびX22はかさ高くなり勝ちであり、より好ましくない。
上記のように、末端基X11およびX22は、好ましくは、式I1のポリマーを上記のグリニャール試薬MgRX、MgRまたはMgR’Xと反応させることにより導入され、ここでRおよびR’は式I2で定義の通りX11またはX22である。
【0044】
好適な官能末端基X11および/またはX22を導入することにより、本発明によるポリマーからブロックコポリマーを製造することができる。例えば、式I2のポリマーにおける末端基X11およびX22の一方または両方が反応基または保護反応基である場合、例えば随意的に保護されたヒドロキシもしくはアミン基の場合、それらは、(保護基を取り除いた後)式I2の他のポリマーの末端基(例えば、異なる基Rおよび/またはX11および/またはX22)と反応させることができ、または、異なる構造のポリマーと反応させることができる。X11およびX22の1つが反応基である場合、ジブロックコポリマーが形成可能である。X11およびX22の両方が反応基である場合、トリブロックコポリマーが形成可能である。
【0045】
代替的に、ブロックコポリマーは、反応基または保護反応基X11および/またはX22を導入し、触媒および1つまたは2つ以上のモノマーを添加し、X11および/またはX22基の部位から出発して新しい重合反応を開始することにより、形成可能である。
好適な官能末端基およびそれらの導入方法は、上記の開示および従来技術からとることができる。ブロックコポリマーをいかにして製造するかについての詳細は、例えば、US 6,602,974から得ることができ、この開示の全体は、本明細書に参照により組み込まれる。
本発明による方法を、以下のスキーム1に例示的に示し、ここでn、R、XおよびXは、式IおよびIIの意味を有する。
【0046】
スキーム1
【化11】

が、本明細書に記載の製造条件下においてマグネシウムと反応性の場合は、これは、(2)および(3)を形成する反応に関与させないために、保護基に転換するか、または保護基と結合するのが好ましい。好適な保護基は専門家に知られており、文献、例えばGreene and Greene, “Protective Groups in Organic Synthesis”, John Wiley and Sons, New York (1981)に記載されている。
【0047】
本発明による方法において用いる出発原料および試薬は、市場で入手可能であるか(例えば、Aldrichより)、または当業者によく知られた方法により、容易に合成可能である。
場合によっては、チオフェンモノマーおよび他の試薬を、本発明の方法において用いる前にさらに精製することが好適であり得る。精製は、専門家に知られ、文献に記載されている標準的な方法により実施することができる。
【0048】
スキーム1に例示的に示された本発明による方法は、好ましくは以下のようにして実施する:
第1のステップ(ステップa))において、3−置換チオフェン(1)、好ましくは3−置換2,5−ジハロチオフェン、最も好ましくは3−置換2,5−ジブロモチオフェン、例えば、出発原料として容易に入手可能な2,5−ジブロモ−3−アルキルチオフェンを、溶媒または溶媒混合物、例えばジエチルエーテル中に溶解する。
【0049】
溶媒または溶媒混合物は、1種または2種以上の極性非プロトン性溶媒からなるのが好ましく、これはこの種類の任意の溶媒であり、例えば、ジエチルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジ−イソプロピルエーテルなどのジアルキルエーテル、1,2−ジメトキシエタンなどのグリコールエーテル、tert−ブチルメチルエーテルなどの2種の異なるアルキル基を有するエーテル、またはこれらの混合物、または芳香族もしくは脂肪族溶媒の混合物、例えばトルエンと上記エーテルとの混合物などである。
好ましくは、溶媒は、ジエチルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジ−イソプロピルエーテルなどの直鎖エーテル、2種の異なるアルキル基を有するエーテル、1,2−ジメトキシエタン、またはtert−ブチルメチルエーテル、またはこれらの混合物、あるいはトルエンと1種もしくは2種以上のこれらのエーテルとの混合物から選択される。
【0050】
特に好ましい溶媒は、ジエチルエーテルである。
溶媒中のチオフェン遊離体(1)の濃度は、好ましくは40〜200g/l、非常に好ましくは80〜130g/lである。
第2のステップ(ステップb))において、マグネシウムを、少なくともチオフェン遊離体(1)のモル量で、好ましくはチオフェン遊離体のモル量に対して1より大〜3倍の過剰量で、好ましくは1.01〜2.00倍で、非常に好ましくは1.02〜1.50倍で、最も好ましくは1.02〜1.20倍で反応混合物に加える。
【0051】
次に、グリニャール反応を、例えば反応混合物を還流まで熱することにより、または、Br、I、DIBAH(水素化アルミニウムジイソブチル)もしくはその他の好適な開始剤を加えることにより、またはマグネシウム表面を活性化する他の方法により、開始させる。次に、随意的に反応混合物を攪拌および/または熱することにより、グリニャール反応を十分な時間進行させて、中間体(2)を得る。
随意的な次のステップ(ステップc))において、未反応のマグネシウムを次に反応混合物から、例えばろ過により取り除く。好ましくは、マグネシウムを除去する。
【0052】
次のステップ(ステップd))において、有効量の好適な触媒を反応混合物に加えて、グリニャールメタセシス反応を介して重合を開始させる。通常、触媒は、他の手段なしに重合を開始させるのに十分反応性であるが、しかし実際には、触媒を添加している間、一般に混合物を攪拌する。
代替的に、反応混合物を触媒中に加えることも可能である。
ステップd)における触媒は、有機金属試薬の関与する反応に好適な任意の触媒であってよく、例えば、Ni、Pdまたは他の遷移金属触媒を含む。好ましくは、触媒は以下から選択される:特に、Ni(dppp)Cl(1,3−ジフェニルホスフィノプロパン塩化ニッケル(II))またはNi(dppe)Cl(1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン塩化ニッケル(II))などのNi(II)触媒、さらに例えば、CuI、CuBrもしくはLiCuClなどの銅触媒、またはPd(PPh)、PdCl(dppe)などのPd触媒。
【0053】
触媒は、チオフェン遊離体の0.1〜5%、好ましくは0.5〜2mol%の量で添加するのが好ましい。
次に、随意的に反応混合物を攪拌および/または熱しつつ、重合(グリニャールメタセシス)反応を十分な時間進行させて、ポリマー(3)を得る。
本発明による方法は、十分な転換率を提供する任意の温度において実施することができる。反応は、−5℃と溶媒の還流温度の間の温度で、特に、本明細書に特定した温度で実施するのが好ましい。用語「還流温度」とは、溶媒の沸点、またはそれより僅かに低い温度を含む。
【0054】
好適な反応時間の選択は、個々の反応の実際の速度に依存する。好ましくは、反応時間は本明細書に記載の通りである。
チオフェン遊離体とマグネシウムの反応(ステップb))のために、反応温度は好ましくは10℃〜還流温度の範囲、最も好ましくは室温〜還流温度の範囲である。反応時間は、15分〜24時間、好ましくは30分〜6時間である。
【0055】
重合反応(ステップd))のために、温度は好ましくは−5℃〜還流温度の範囲、最も好ましくは室温〜還流温度の範囲である。反応時間は、15分〜48時間、好ましくは45分〜4時間である。
ステップb)およびd)による反応は、随意的に、反応混合物を攪拌しつつ行い、攪拌は既知の方法により実施可能である。
ステップa)〜d)、特にステップb)およびd)は、好ましくは乾燥した不活性雰囲気下で、例えば窒素下で実施する。
【0056】
本発明の方法により製造された反応生成物(2)および(3)は、当業者によく知られた通常の操作および標準の方法による精製によって、単離することができる。
ステップb)において得られた中間体(2)は、ステップd)で直接用いることができる。しかし、例えば反応プロセスの進行を試験するため、または生成された位置規則性中間体の割合を解析するためなどの目的のためには、反応混合物を急冷することが好適であり得る。
【0057】
最終ステップ(ステップe))において、ポリマー(3)を反応混合物から回収する。好ましくは、ポリマーは混合物から、アルコールもしくは水性溶液により反応混合物を急冷すること、または/およびポリマーを沈殿させることにより、回収する。
次にポリマーは、既知の方法により精製して、無機の不純物およびモノマーおよび短鎖オリゴマーを除去するか、または、さらなる精製なしで用いることもできる。好ましくはポリマーは精製する。好適で好ましい精製方法には、固相抽出、液体−液体抽出、沈殿、吸着およびろ過が含まれる。精製方法の組合せを選択して、高純度で用途に最も好適な生成物を得るのが好ましい。
【0058】
例えば、好ましい精製方法には、例えば、クロロホルム/水の混合物による水性急冷(aqueous quenching)、随意的に、液体/液体抽出または元の溶媒の蒸留分離、例えばメタノールなどの極性溶媒中での沈殿、および例えばヘプタンなどの非極性溶媒による洗浄などを含む。
中間体(2)のポリマー(3)への反応を含む、ステップd)およびe)のための好適な試薬およびプロセス条件は、McCullough et al., Adv. Mater., 1999, 11(3), 250-253、EP 1 028 136およびUS 6,166,172から得ることができ、これらの文献の開示の全体は、本明細書に参照により組み込まれる。
【0059】
特に好ましい態様は、以下のステップを含む方法に関する:
a)マグネシウムと反応可能な2つの基を有するチオフェン、好ましくは式IIで表されるチオフェンを、非常に好ましくは40〜200g/lの量で、ジエチルエーテルに溶解すること、
b)チオフェンのモル量の1.02〜1.20倍のマグネシウムを添加すること、またはチオフェン溶液をマグネシウムに添加すること、および、混合物を還流まで熱して、位置化学性グリニャール中間体を形成すること、
【0060】
c)未反応のマグネシウムを反応混合物から取り除くこと、
d)Ni(II)触媒、好ましくはNi(DPPP)ClまたはNi(DPPE)Clを、反応混合物に添加すること、または、反応混合物をNi(II)触媒に添加すること、および、得られた混合物を、好ましくは還流下で攪拌して、ポリマーを形成すること、ならびに
e)ポリマーを混合物から回収すること。
【0061】
中間体(2)は、通常、位置化学性異性体(2a)および(2b)の混合物として得られ、これはまた、下に示すように、典型的には少量の二重グリニャール生成物(double-Grignard product)(2c)も含むことがあり、ここでX、XおよびRは、式IおよびI1の意味を有する。
【化12】

【0062】
これらの中間体の比率は、例えばマグネシウムのモル過剰量、溶媒、温度、および反応時間に依存する。
例えば、反応が上記の特に好ましい態様に従って行われる場合、中間体2a、2bおよび2cは、85/5/10の比率で得ることができる。
【0063】
加工条件、例えば溶媒およびマグネシウムの量に依存して、異性体中間体2a/2b/2cの比率は変化し得る。好ましいプロセスは、異性体中間体比率2a/2b/2cが80〜90/2〜20/0〜20を含む。
本発明によるポリマーは、特に好ましくは位置規則性HT−ポリ−(3−置換)チオフェンである。位置規則性(=頭−尾結合数を総結合数で割ったもので、パーセンテージで表される)は、これらのポリマーにおいて、好ましくは少なくとも85%、特に90%以上、非常に好ましくは95%以上、最も好ましくは98〜100%である。
【0064】
従って高いパーセンテージのHT結合を有する式I、I1およびI2のポリマーは、対応する高い数値の、下に示す式Ia/b、I1a/bおよびI2a/bの、HTダイアドまたはHT−HTトライアドを有する。
【化13】

【化14】

この式中、R、X、X、X11、X22は、上記の意味を有する。
【0065】
位置規則性ポリ−(3−置換)チオフェンは、これらが強い鎖間パイ−パイスタッキング相互作用を示し、高い結晶性を有するために有用であり、そのため例えばUS 6,166,172に記載されているように、高いキャリア移動度を有する有効な電荷輸送材料となっている。
本発明によるポリマーは、好ましくは、重合の程度(または、繰り返し単位の数n)が2〜5,000、特に10〜5,000または110〜5,000、非常に好ましくは50〜1,000、最も好ましくは100より大〜1,000である。
【0066】
さらに好ましいのは、分子量が5,000〜300,000、特に10,000〜100,000、好ましくは15,000〜100,000、非常に好ましくは20,000〜100,000であるポリマーである。
式I、I1およびIIのRは、好ましくは有機基、好ましくは非反応性または保護された反応性の有機基であって、好ましくは5個または6個以上のC原子を有するものである。
【0067】
特に好ましいRは、1個または2個以上、好ましくは5個または6個以上、非常に好ましくは1〜20個のC原子を有する、直鎖、分枝または環式アルキルであって、これは無置換か、F、Cl、Br、IもしくはCNによって一置換もしくは多置換されてもよく、1つまたは2つ以上の隣接していないCH基が、各々の場合互いに独立して、−O−、−S−、−NH−、−NR−、−SiR00−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCO−O−、−SO−、−S−CO−、−CO−S−、−CY=CY−または−C≡C−によって、Oおよび/またはS原子が互いに直接結合しないように置換されることも可能であり、随意的に、好ましくは1〜30個のC原子を有する置換アリールもしくはヘテロアリール、またはP−Spであり、ここで
およびR00は、互いに独立して、Hまたは1〜12個のC原子を有するアルキルであり、
およびYは、互いに独立して、H、F、ClまたはCNであり、
Pは、随意的に保護された重合可能な基または反応基であり、そして、
Spは、スペーサー基または単結合である。
【0068】
式I1およびIIのXおよびXは、好ましくは互いに独立して、ハロゲンから選択され、非常に好ましくはClまたはBr、最も好ましくはBrである。
式I2のX11およびX22は、好ましくは互いに独立して、H、ハロゲン、B(OR’)(OR”)またはSnR00000、または1〜20個のC原子を有する直鎖、分枝または環式アルキルであって、これは無置換か、F、Cl、Br、I、−CNおよび/または−OHによって一置換もしくは多置換されてもよく、1つまたは2つ以上の隣接していないCH基が、各々の場合互いに独立して、−O−、−S−、−NH−、−NR−、−SiR00−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−CY=CY−または−C≡C−によって、Oおよび/またはS原子が互いに直接結合しないように置換されることも可能であり、随意的に、置換アリールもしくはヘテロアリール、またはP−Spであり、ここでR、R00、Y、Y、PおよびSpは上で与えられた意味を有し、
000は、Hまたは1〜12個のC原子を有するアルキルであり、そして
R’およびR”は、互いに独立して、Hまたは1〜12個のC原子を有するアルキルであり、または、OR’およびOR”はホウ素原子と一緒に、2〜10個のC原子を有する環式基を形成することもできる、
から選択される。
【0069】
特に好ましいのは、式I、II、I1およびI2のポリマーまたは化合物であって、式中、
−Rは、有機基であり、好ましくは5個または6個以上のC原子を有するアルキル基であり、
−Rは、1〜12個、好ましくは5〜12個のC原子を有する直鎖アルキル基であり、
−Rは、n−ヘキシルであり、
−Rは、C〜C20−アルキルであって随意的に1個または2個以上のフッ素原子によって置換されたもの、C〜C20−アルケニル、C〜C20−アルキニル、C〜C20−アルコキシ、C〜C20−チオアルキル、C〜C20−シリル、C〜C20−エステル、C〜C20−アミノ、C〜C20−フルオロアルキル、随意的に置換アリールもしくはヘテロアリール、またはP−Spから、特にC〜C20−アルキルまたはC〜C20−フルオロアルキルから、好ましくは直鎖基から選択され、
【0070】
−Rは、アルキルであって随意的に1個または2個以上のフッ素原子によって置換されたもの、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、チオアルキルまたはフルオロアルキルから選択され、これらの全ては直鎖状であり、1〜12個、好ましくは5〜12個のC原子を有し、
−Rは、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシルまたはドデシルから選択され、
−XおよびXは、同じ意味を有し、
−XおよびXは、Brを表し、
−X11およびX22は、同じ意味を有し、
−X11およびX22は、Hを表し、
【0071】
−X11およびX22は、アルキルであって随意的に1個または2個以上のフッ素原子によって置換されたもの、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、チオアルキル、シリル、エステル、アミノもしくはフルオロアルキルから選択され、これらの基の全ては直鎖もしくは分枝状であり、1〜20個、好ましくは1〜12個、最も好ましくは1〜6個のC原子を有し、または、随意的に置換されたアリールもしくはヘテロアリール、または上に定義されたP−Spから選択され、特に直鎖または分枝のC〜C−アルキルから、最も好ましくはイソプロピル、tert.ブチル、または2−メチルブチルから選択され、
−nは、2〜5000、特に50〜1000の整数である。
【0072】
式I、II、I1およびI2においてRがアルキルまたはアルコキシ基である場合、すなわち末端のCH基が−O−によって置き換えられている場合、これは直鎖または分枝状であってよい。好ましくは直鎖で、2〜8個の炭素原子を有し、従って好ましくは、例えば、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキシルオキシ、ヘプトキシ、またはオクトキシ、さらにメチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ノノキシ、デコキシ、ウンデコキシ、ドデコキシ、トリデコキシまたはテトラデコキシである。特に好ましいのは、n−ヘキシルおよびn−ドデシルである。
【0073】
式I、II、I1およびI2においてRがオキサアルキルである場合、すなわち1つのCH基が−O−によって置き換えられている場合、これは好ましくは、例えば、直鎖の2−オキサプロピル(=メトキシメチル)、2−(=エトキシメチル)または3−オキサブチル(=2−メトキシエチル)、2−、3−、もしくは4−オキサペンチル、2−、3−、4−、もしくは5−オキサヘキシル、2−、3−、4−、5−、もしくは6−オキサヘプチル、2−、3−、4−、5−、6−もしくは7−オキサオクチル、2−、3−、4−、5−、6−、7−もしくは8−オキサノニルまたは、2−、3−、4−、5−、6−、7−、8−もしくは9−オキサデシルである。
式I、IIおよびI1においてRがチオアルキル、すなわち1つのCH基が−S−によって置き換えられている場合、これは好ましくは、直鎖のチオメチル(−SCH)、1−チオエチル(−SCHCH)、1−チオプロピル(=−SCHCHCH)、1−(チオブチル)、1−(チオペンチル)、1−(チオヘキシル)、1−(チオヘプチル)、1−(チオオクチル)、1−(チオノニル)、1−(チオデシル)、1−(チオウンデシル)または1−(チオドデシル)であって、ここで好ましくは、sp混成ビニル炭素原子に隣接するCH基が置き換えられている。
【0074】
式I、II、I1およびI2においてRがフルオロアルキルである場合、好ましくは直鎖のペルフルオロアルキルC2i+1であって、式中iは1〜15の整数であり、特にCF、C、C、C、C11、C13、C15またはC17であり、非常に好ましくはC13である。
ハロゲンは好ましくはF、BrまたはClである。
−CY=CY−は好ましくは−CH=CH−、−CF=CF−または−CH=C(CN)−である。
【0075】
アリールおよびヘテロアリールは、好ましくは25個までのC原子を有する、単環、二環、もしくは三環式芳香族または複素環式芳香族基であって、これはまた縮合環を含んでもよく、随意的に1つまたは2つ以上のL基によって置き換えられてもよく、ここでLは、ハロゲン、または1〜12個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニルまたはアルコキシカルボニル基であり、ここで1個または2個以上のH原子は、FまたはClによって置き換えられてもよい。
特に好ましいアリールおよびヘテロアリール基は、さらに1つまたは2つ以上のCH基がNによって置き換えられてもよいフェニル、ナフタレン、チオフェン、チエノチオフェン、ジチエノチオフェン、アルキルフルオレンおよびオキサゾールであり、これらの全ては、無置換か、上に定義のLによって一置換もしくは多置換されることができる。
【0076】
本発明のその他の好ましい態様は、3位において重合可能な基または反応基によって置換されているポリチオフェンに関し、ここで前記の基は、ポリチオフェンの形成過程中、随意的に保護されている。この種類の特に好ましいポリマーは、式I、I1またはI2で表され、式中RがP−Spを示すものである。これらのポリマーは特に半導体または電荷輸送材料として有用であり、なぜならば、それらがP基を介して、例えばin situでの重合により、半導体部品用にポリマーを薄膜に加工する間またはその後に架橋されて、高い電荷キャリア移動度および高い熱的、機械的および化学的安定性を有する架橋ポリマーフィルムを、生成することができるからである。
【0077】
重合可能な基または反応基Pは、好ましくは
【化15】

から選択され、ここでWはH、Cl、CN、フェニルもしくは1〜5個のC原子を有するアルキルであり、特にH、ClもしくはCHであり、WおよびWは、互いに独立して、Hもしくは1〜5個のC原子を有するアルキルであり、特にメチル、エチルもしくはn−プロピルであり、W、WおよびWは、互いに独立して、Cl、1〜5個のC原子を有するオキサアルキルもしくはオキサカルボニルアルキルであり、Pheは、1,4−フェニレンであり、そしてkおよびkは、互いに独立して0もしくは1であり、または、これらの基の保護された誘導体であって、本発明による方法のために記載された条件の下でマグネシウムと非反応性であるものである。好適な保護基は専門家に知られており、文献、例えばGreene and Greene, “Protective Groups in Organic Synthesis”, John Wiley and Sons, New York (1981)に記載されており、例えばアセタールまたはケタールである。
【0078】
好ましくはしかし、重合可能な基は、最終ステップとして重合の後に、本発明のポリマーに添加される。
特に好ましいP基は、CH=CH−COO−、CH=C(CH)−COO−、CH=CH−、CH=CH−O−、(CH=CH)CH−OCO−、(CH=CH)CH−O−、および
【化16】

またはこれらの保護された誘導体である。
【0079】
P基の重合は専門家に知られており、文献、例えばD. J. Broer; G. Challa; G. N. Mol, Macromol. Chem, 1991, 192, 59に記載された方法に従って、実施することができる。
スペーサー基Spとしては、当業者にこの目的で知られている全ての基を用いることができる。スペーサー基Spは好ましくは式Sp’−X’で表され、したがってP−Sp−はP−Sp’−X’−であって、式中、
【0080】
Sp’は、30個までのC原子を有するアルキレンであって、これは無置換か、またはF,Cl、Br、IもしくはCNによって一置換もしくは多置換されており、1つまたは2つ以上の隣接していないCH基が、各々の場合互いに独立して、−O−、−S−、−NH−、−NR−、−SiR00−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−CH=CH−または−C≡C−によって、Oおよび/またはS原子が互いに直接結合しないように置換されることも可能であり、
X’は、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−O−COO−、−CO−NR−、−NR−CO−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−CH=CR−、−CY=CY−、−C≡C−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−または単結合であり、
【0081】
およびR00は、互いに独立して、Hまたは1〜12個のC原子を有するアルキルであり、そして
およびYは、互いに独立して、H、F、ClまたはCNである。
X’は好ましくは、−O−、−S−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CHCH−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−CH=CR−、−CY=CY−、−C≡C−または単結合であり、特に、−O−、−S−、−C≡C−、−CY=CY−または単結合である。他の好ましい態様において、X’は、共役系を形成することのできる基、例えば−C≡C−または−CY=CY−、または単結合である。
【0082】
典型的なSp’基は、例えば、−(CH−、−(CHCHO)−CHCH−、−CHCH−S−CHCH−または−CHCH−NH−CHCH−または−(SiR00−O)−であって、ここでpは2〜12の整数であり、qは1〜3の整数であり、そしてRおよびR00は上で与えられた意味を有する。
好ましいSp’基は、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン、ドデシレン、オクタデシレン、エチレンオキシエチレン、メチレンオキシブチレン、エチレン−チオエチレン、エチレン−N−メチルイミノエチレン、1−メチルアルキレン、エテニレン、プロペニレンおよびブテニレンである。
【0083】
本発明のポリマーは、光学、電子および半導体材料として、特に電界効果トランジスタ(FET)における電荷輸送材料として、例えば、集積回路、IDタグまたはTFT用途の部品として、有用である。代替的に、それらは、電子発光ディスプレイ用途の有機発光ダイオード(OLED)において、例えば液晶ディスプレイのバックライトとして、光起電またはセンサー材料として、電子写真記録のために、そして他の半導体用途のために、有用である。
【0084】
本発明によるポリマーは、これらの化合物の溶液を用いる製造方法を許容する、特に有利な溶解性の特性を示す。従って、層および被覆を含むフィルムは、例えばスピンコーティングなどの低価格の製造技術によって生成することができる。好適な溶媒または溶媒混合物は、アルカンおよび/または芳香族化合物、特にそれらのフッ素化もしくは塩素化誘導体を含む。
【0085】
本発明のポリマーは、特に、FETにおける電荷輸送材料として有用である。FETであって、有機半導体材料がゲート誘電体およびドレインおよびソース電極の間にフィルムとして配列されているものは、一般に知られており、例えばUS 5,892,244、WO 00/79617、US 5,998,804、ならびに、背景および従来技術の章および以下に引用した文献から知られている。本発明による化合物の溶解性の特性を用いた低価格製造および、それによる大表面の加工性などの有用性のため、これらFETの好ましい用途は、集積回路、TFTディスプレイおよび安全保障用途などである。
【0086】
安全保障用途において、半導体材料を有する電界効果トランジスタおよび他のデバイス、例えばトランジスタまたはダイオードは、IDタグまたは安全保障マークのために用いることができ、価値ある書類、例えば銀行券、クレジットカードまたはIDカード、国家ID書類、ライセンスまたは、貨幣価値のある任意の製品、例えば切手、チケット、株式、小切手等を認証し、その偽造を防ぐことができる。
【0087】
代替的に、本発明によるポリマーは、有機発光デバイスまたはダイオード(OLED)、例えばディスプレイ用途または例えば液晶ディスプレイのバックライトとして、用いることができる。一般のOLEDは多層構造を用いて実現される。発光層は一般に、1つまたは2つ以上の電子輸送層および/または空孔輸送層の間に挟まれている。電圧を印加することにより、電荷キャリアとしての電子および空孔は発光層に向って移動し、そこでそれらの再結合(recombination)により、励起、従って発光層に含まれた発光ユニット(lumophor unit)の発光が引き起こされる。本発明の化合物、材料およびフィルムは、それらの電気的および/または光学的特性に対応して、1つまたは2つ以上の電荷輸送層において、および/または発光層において、用いることができる。さらに、それらの発光層内での使用は、本発明によるポリマーがそれ自体で電子発光特性を示すか、または電子発光基もしくは化合物を含む場合に、特に有用である。OLEDにおける使用に好適なモノマー、オリゴマーおよびポリマー化合物または材料の選択、特徴付けおよび加工は、一般に当業者に知られており、例えば、Meerholz, Synthetic Materials, 111-112, 2000, 31-34, Alcala, J. Appl. Phys., 88, 2000, 7124-7128およびその中に引用されている他の文献を参照のこと。
【0088】
他の使用によれば、本発明のポリマーであって、特に発光特性を示すものは、光源の材料として、例えばEP 0 889 350 A1またはC. Weder et al., Science, 279, 1998, 835-837に記載のディスプレイデバイスの材料として、用いることができる。
本発明のさらなる側面は、本発明のポリマーの、酸化および還元形態の両方に関する。電子の損失または獲得のいずれかは、非常に非局在化したイオン形態の形成をもたらし、これは高い導電性を有する。これは、一般のドーパントへの暴露により起こり得る。好適なドーパントおよびドーピングの方法は、例えば、EP 0 528 662、US 5,198,153またはWO 96/21659などから、当業者に知られている。
【0089】
ドーピングのプロセスは典型的には、半導体材料を酸化還元反応において酸化剤または還元剤により処理して、適用したドーパントからの対応する対イオンと共に、該材料中に非局在化イオン中心を形成することを言う。好適なドーピング方法は、例えば、大気圧または減圧下でのドーピング蒸気への暴露、ドーパントを含む溶液中での電気化学的ドーピング、ドーパントを半導体材料と接触させて熱的に分散させること、および半導体材料中にドーパントをイオン注入することを含む。
【0090】
電子をキャリアとして用いる場合、好適なドーパントは例えば、ハロゲン(例えば、I、Cl、Br、ICl、ICl、IBrおよびIF)、ルイス酸(例えば、PF、AsF、SbF、BF、BCl、SbCl、BBrおよびSO)、プロトン酸、有機酸、またはアミノ酸(例えば、HF、HCl、HNO、HSO、HClO、FSOHおよびClSOH)、遷移金属化合物(例えば、FeCl、FeOCl、Fe(ClO、Fe(4−CHSO、TiCl、ZrCl、HfCl、NbF、NbCl、TaCl、MoF、MoCl、WF、WCl、UFおよびLnCl(式中、Lnはランタノイドである)、アニオン(例えば、Cl、Br、I、I、HSO、SO2−、NO、ClO、BF、PF、AsF、SbF、FeCl、Fe(CN)3−、およびアリール−SOなどの種々のスルホン酸のアニオン)である。空孔をキャリアとして用いる場合、ドーパントの例は、カチオン(例えば、H、Li、Na、K、RbおよびCs)、アルカリ金属(例えば、Li、Na、K、Rb、およびCs)、アルカリ土類金属(例えばCa、Sr、およびBa)、O、XeOF、(NO)(SbF)、(NO)(SbCl)、(NO)(BF)、AgClO、HIrCl、La(NO・6HO、FSOOOSOF、Eu、アセチルコリン、R、(Rはアルキル基)、R(Rはアルキル基)、RAs(Rはアルキル基)、およびR(Rはアルキル基)である。
【0091】
本発明のポリマーの導電性形態は、有機「金属」として、例えば、限定はされないが、有機発光ダイオード用途における電荷注入層およびITO平坦化層、フラットパネルディスプレイおよびタッチスクリーン用のフィルム、帯電防止フィルム、電子用途におけるプリント導電基板、パターンもしくはトラクト(tract)、例えばプリント回路基板およびコンデンサーなどの用途において、用いることができる。
【0092】
他の使用によれば、本発明によるポリマー、特にそれらの水溶性誘導体(例えば極性またはイオン性側方基)またはイオン的なドーピング形態は、DNA配列を検出および識別するための、化学センサーもしくは材料として用いることができる。かかる使用は、例えば、L. Chen, D. W. McBranch, H. Wang, R. Helgenson, F. Wudl and D. G. Whitten, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 1999, 96, 12287; D. Wang, X. Gong, P. S. Heeger, F. Rininsland, G. C. Bazan and A. J. Heeger, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 2002, 99, 49; N. DiCesare, M. R. Pinot, K. S. Schanze and J. R. Lakowicz, Langmuir 2002, 18, 7785; D. T. MacQuade, A. E. Pullen, T. M. Swager, Chem. Rev. 2000, 100, 2537に記載されている。
以下の例は、本発明を限定することなく説明するためにある。本明細書において、他の記載がない限り、全ての温度は摂氏温度で、全てのパーセンテージは重量パーセンテージで表される。
【0093】
例1
a)重合:
2,5−ジブロモ−3−ヘキシルチオフェン9.7gを、100mlのジエチルエーテルに溶解する。この調製溶液の10%に、マグネシウム0.8gを加えて、還流まで熱する。臭素を1滴加えてグリニャール反応を開始させる。前記調製溶液の残り(90%)を、反応溶液に30分の間に加え、さらに2時間還流する。次に、余分なマグネシウムをろ過して分離し、反応物を0℃まで冷却し、Ni(dppp)Clを0.2g加えて重合を開始させ、反応物を還流まで熱する。
【0094】
b)操作および精製:
さらに2時間の還流の後、塩化イソプロピルマグネシウム4ml(ジエチルエーテル中2mol/l)をH−エンドキャッピングのために加える。
2時間の反応時間の後、エンドキャッピングが終了し、反応混合物を水性エタノールで冷却する。生成物を水相からクロロホルムで抽出し、メタノール中に沈殿させて粗ポリマーを得て、これをメタノールおよびヘプタンによるソックレー抽出によりさらに精製する。これにより、2.5g(50%)の純ポリ−3−ヘキシルチオフェン(H−NMRの位置規則性>95%)を得る。GPCにより決定された分子量は、M=12,6000、M=21,700、多分散度は1.7である。
【0095】
比較例1(ジブロモモノマーの代わりにジヨードモノマー)
例1を、2,5−ジブロモ−3−ヘキシルチオフェンの代わりに2,5−ジヨード−3−ヘキシルチオフェンを用いて、同じモル量で繰り返す。しかし、グリニャール中間体の混合物は沈殿し、重合できない。濃度を変更すると中間体生成物は溶液中に留まるが、しかし重合の後、油性の生成物が得られ、これはメタノールから沈殿せず、熱いヘプタン中に溶解して、低分子量を示唆する。位置規則性は約70%程度である。
【0096】
比較例2(溶媒として直鎖エーテルの代わりにTHF)
溶媒としてジエチルエーテルの代わりにTHFを用いて、例1を繰り返す。その結果、低分子量の生成物が得られ、これは熱いヘプタン中に溶解し、約90%の位置規則性を有する。
【0097】
例2−エンドキャッピング(BrをHで置換)
例1a)に記載のようにしてポリ−3−ヘキシルチオフェンを製造する。重合反応の終わりに、反応混合物の一部を例1b)に記載のようにしてHでエンドキャッピングし、一部を、エンドキャッピングなしで直接沈殿によりグリニャール試薬を加える前に操作する。MALDI−TOF質量分析法(Matrix-Assisted Laser-Desorption/Ionization Time-Of-Flight、M. Karas and F. Hillenkamp, Anal. Chem. 1988, 60, 2299およびJ. Liu., R. S. Loewe and R. D. McCullough, Macromolecules, 1999, 32, 5777参照)での分析により、エンドキャッピングした試料は多くのH末端基を有し、一方エンドキャッピングしていない試料は、より多量の臭素末端基を有することが示される。
【0098】
例3−エンドキャッピング(Brをプロピルで置換)
例1a)に記載のようにしてポリ−3−ヘキシルチオフェンを製造する。重合反応の終わりに、反応混合物の一部を、初めに塩化イソプロピルマグネシウム(ジエチルエーテル中2mol/l)を加え、2時間後に1−ブロモプロパンを加えることによってアルキル基でエンドキャッピングする。他の一部は、エンドキャッピングなしで操作する。MALDI−TOF MS分析によって、エンドキャッピングした試料は多くのプロピル末端基を有し、一方エンドキャッピングしていない試料は、より多量の臭素末端基を有することが示される。
【0099】
例4−エンドキャップポリマーのトランジスタ中での使用
最大電流対電圧の測定を、Br終端化ポリマーならびに例1および例2のH−エンドキャップポリマーに対して、以下の基板および加工条件を用いて行った。
熱的に成長させた酸化シリコン(SiO)絶縁層を有する高度にドーピングしたシリコン基板上に、薄膜有機電界効果トランジスタ(OFET)を製造し、ここで前記基板は、共通ゲート電極として働く。トランジスタのソース−ドレイン金電極は、SiO層上にフォトリソグラフィにより規定される。有機半導体の蒸着の前に、FET基板をシリル化剤(silylating agent)ヘキサメチルジシラザン(HMDS)で処理する。次にクロロホルム中のポリマー溶液をスピンコーティングして、薄い半導体フィルムをFET基板に蒸着する。トランジスタデバイスの電気的特性試験を、乾燥窒素雰囲気下でコンピュータ制御されたAgilent 4155C半導体パラメータアナライザーを用いて実施する。
【0100】
結果を図1〜3に示す。末端基の効果は以下のようにして見ることができる:
図1に見られるように、最大電流(従って移動度)は、Hでエンドキャッピングした試料の方がBrでエンドキャッピングした試料より高い。Hを有する試料はより高い副閾値勾配(sub threshold slope)を有する。
図2Aおよび2Bに見られるように、繰り返しスキャンに対する試料の安定性は、Hでエンドキャッピングした試料(2B)の方が臭素でエンドキャッピングした試料(2A)より優れている。
【0101】
最後に、図3Aおよび3Bのトランジスタ出力スキャンに見られるように、低いソース−ドレイン電圧において、Hでキャッピングした試料(3B)は、良好なオーム接触特性を示す。Hでキャッピングした試料は、完全に線形性を示す。しかしBrでキャッピングした試料(3A)は、0V付近の電流−電圧プロットの非線形性に見られるように、大きな接触抵抗を示す。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の例1および例2による異なる末端基を有するポリマーのフォワード移動特性を示す図である。
【図2A】本発明の例1および例2による異なる末端基を有するポリマーの、フォワード移動スキャンを示す図である。
【図2B】本発明の例1および例2による異なる末端基を有するポリマーの、フォワード移動スキャンを示す図である。
【図3A】本発明の例1および例2による異なる末端基を有するポリマーの、低Vsdにおけるトランジスタ出力特性を示す図である。
【図3B】本発明の例1および例2による異なる末端基を有するポリマーの、低Vsdにおけるトランジスタ出力特性を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
95%以上の頭−尾(HT)結合の位置規則性を有する位置規則性ポリ(3−置換チオフェン)の製造方法であって、クロロおよび/またはブロモ基を2位および5位に有する3−置換チオフェンを供給すること、該チオフェンを、直鎖エーテルまたは直鎖エーテルの混合物を含む溶媒中でマグネシウムと反応させて、位置化学性グリニャール中間体または位置化学性グリニャール中間体の混合物を形成すること、および該グリニャール中間体を、好適な触媒を加えることにより重合することによる、前記方法。
【請求項2】
a)3−置換チオフェンを、溶媒または溶媒の混合物中に溶解すること、
b)チオフェンの少なくとも1モル量のマグネシウムを溶液に加えること、または、溶液を前記マグネシウムに加えること、ここで前記マグネシウムは前記チオフェンと反応して、位置化学性グリニャール中間体または位置化学性グリニャール中間体の混合物を形成し、
c)随意的に、未反応のマグネシウムを反応混合物から除去すること、
d)触媒を反応混合物に加えること、または反応混合物を触媒に加えること、および随意的に混合物を攪拌して、ポリマーを形成すること、ならびに、
e)ポリマーを混合物から回収すること、
による、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
チオフェンの3位の置換基が有機基であり、前記有機基は、無置換で無修飾の直鎖または分枝アルキルの場合には5個または6個以上のC原子を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
3−置換チオフェンが、3−置換2,5−ジブロモ−チオフェンであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
ポリ(3−置換チオフェン)が、98%以上の位置規則性を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
溶媒が、ジエチルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジ−イソプロピルエーテル、2つの異なるアルキル基を有するエーテル、1,2−ジメトキシエタンもしくはt−ブチルメチルエーテル、またはこれらの混合物、またはトルエンと1種もしくは2種以上の上記エーテルとの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
溶媒が、ジエチルエーテルであることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
スッテプa)における溶液中のチオフェンの濃度が40〜200g/Lであることを特徴とする、請求項2〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
マグネシウムの量が、チオフェン遊離体のモル量の>1〜3倍であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
マグネシウムの量が、チオフェン遊離体のモル量の1.02〜1.20倍であることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
未反応のマグネシウムを、触媒を添加する前に反応混合物から除去することを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
触媒がNi(II)触媒であることを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
触媒が、Ni(dppp)Cl(1,3−ジフェニルホスフィノプロパン塩化ニッケル(II))またはNi(dppe)Cl(1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン塩化ニッケル(II))から選択されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
位置化学性グリニャール中間体の形成および重合(ステップa)およびd))が、室温から還流温度の範囲の温度において行われることを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
位置化学性グリニャール中間体の形成および重合(ステップa)およびd))が、還流温度において行われることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ポリマーを、反応混合物から回収した後に精製することを特徴とする、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
ポリマーの1つまたは2つ以上の末端基が化学修飾されている(エンドキャッピングされている)ことを特徴とする、請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
ポリマーが、式I:
【化1】

式中、nは>1の整数であり、Rは、前記または以下の任意の請求項に記載の方法の条件のもとで、マグネシウムと反応しない基である、
から選択されることを特徴とする、請求項1〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
3−置換チオフェンが、式II:
【化2】

式中、Rは請求項18に記載の意味を有し、そしてXおよびXは、互いに独立してBrまたはClである、
から選択されることを特徴とする、請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
が、1個または2個以上のC原子を有する、直鎖、分枝または環式アルキルであって、これは無置換か、F、Cl、Br、IもしくはCNによって一置換もしくは多置換されることができ、1つまたは2つ以上の隣接していないCH基が、各々の場合互いに独立して、−O−、−S−、−NH−、−NR−、−SiR00−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCO−O−、−SO−、−S−CO−、−CO−S−、−CY=CY−または−C≡C−によって、Oおよび/またはS原子が互いに直接結合しないように置換されることもまた可能であり、随意的に置換アリールもしくはヘテロアリールであり、またはP−Spであり、ここで
およびR00は、互いに独立して、Hまたは1〜12個のC原子を有するアルキルであり、
およびYは、互いに独立して、H、F、ClまたはCNであり、
Pは、随意的に保護された、重合可能な基または反応基であり、
Spは、スペーサー基または単結合である、
であることを特徴とする、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
が、C〜C20−アルキルであって随意的に1個または2個以上のフッ素原子によって置換されているもの、C〜C20−アルケニル、C〜C20−アルキニル、C〜C20−アルコキシ、C〜C20−チオアルキル、C〜C20−シリル、C〜C20−エステル、C〜C20−アミノ、C〜C20−フルオロアルキルから選択されることを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
が、直鎖または分枝の、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシルまたはドデシルから選択されることを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
が、n−ヘキシルであることを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
およびXが、Brであることを特徴とする、請求項18〜23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
nが、50〜1,000の整数であることを特徴とする、請求項18〜24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
ポリマーが、式I1:
【化3】

式中、n、R、XおよびXは、請求項18〜24の意味を有する、
から選択されることを特徴とする、請求項1〜25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
エンドキャッピングの後のポリマーが、式I2:
【化4】

式中、nおよびRは、請求項18〜24の意味を有し、
11およびX22は、互いに独立して、H、ハロゲン、Sn(R、または1〜20個のC原子を有する直鎖、分枝または環式アルキルであって、これは無置換か、F、Cl、Br、I、−CNおよび/または−OHによって一置換もしくは多置換されることができ、1つまたは2つ以上の隣接していないCH基が、各々の場合互いに独立して、−O−、−S−、−NH−、−NR−、−SiR00−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−CY=CY−または−C≡C−によって、Oおよび/またはS原子が互いに直接結合しないように置換されることもまた可能であり、随意的に置換アリールもしくはヘテロアリールであり、またはP−Spであり、
およびR00は、互いに独立して、Hまたは1〜12個のC原子を有するアルキルであり、そして
およびYは、互いに独立して、H、F、ClまたはCNである、
で表されることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項28】
11およびX22が、互いに独立して、アルキルであって随意的に1個もしくは2個以上のフッ素原子によって置換されているもの、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、チオアルキル、シリル、エステル、アミノまたくはフルオロアルキルであり、これらの基の全ては直鎖もしくは分枝状で1〜20個のC原子を有するか、または随意的に置換アリールもしくはヘテロアリール、または請求項20に定義されたP−Spであることを特徴とする、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
11およびX22が、1〜6個のC原子を有する直鎖または分枝アルキルを表すことを特徴とする、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
11およびX22の一方または両方が、反応基または保護反応基を表すことを特徴とする、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
式I2で表されるポリマーが、末端基X11および/またはX22を介して、式I2で表される同一もしくは異なるポリマーと、または他のポリマーと、さらに反応してブロックコポリマーを形成することを特徴とする、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
請求項1〜31のいずれかに記載の方法によって得られる、ポリマーまたはコポリマー。
【請求項33】
電気デバイス、電界効果トランジスタ、OLED、光電池または光起電センサーにおける半導体部品として用いるための、末端基が化学的に修飾されている、ポリ−3−置換チオフェン(「エンドキャップポリマー」)。
【請求項34】
Hまたはアルキル基によってエンドキャッピングされていることを特徴とする、請求項33に記載のポリ−3−置換チオフェン。
【請求項35】
改善された酸化安定性および/または改善された電荷キャリア特性を有することを特徴とする、請求項33または34に記載のポリマー。
【請求項36】
電気デバイス、電界効果トランジスタ、OLED、光電池または光起電センサーにおける半導体部品として用いるために、重合中または重合の後に、ポリ−3−置換チオフェンの末端基を化学的に修飾(「エンドキャッピング」)する方法。
【請求項37】
請求項33に記載のエンドキャップポリマーからブロックコポリマーを製造する方法であって、ここで一方または両方の末端基が反応基または保護反応基に改変されており、前記ポリマーを前記反応基もしくは保護反応基の一方または両方を介して他のモノマーまたはポリマーと反応させることによる、前記方法。
【請求項38】
請求項32〜35のいずれかに記載のポリマーの使用であって、半導体または電荷輸送材料としての、特に、光学、電気光学もしくは電子デバイスにおける、例えば集積回路の部品としての電界効果トランジスタ(FET)における、フラットパネルディスプレイ用途におけるまたは無線IC(RFID)タグのための薄膜トランジスタとしての、または例えば電子発光ディスプレイもしくは例えば液晶ディスプレイ(LCD)のバックライトなどの、有機発光ダイオード(OLED)のための半導体部品における、光起電もしくはセンサーデバイスのための、バッテリーにおける電極材料としての、光導電体としての、電子写真記録などの電子写真用途のための、またはDNA配列の検出および識別のための、前記使用。
【請求項39】
電子発光材料としての、光起電もしくはセンサーデバイスにおける、バッテリーにおける電極材料としての、光導電体としての、電子写真用途または電子写真記録のための、請求項32〜35のいずれかに記載のポリマーの使用。
【請求項40】
請求項32〜35のいずれかに記載の1種または2種以上のポリマーを含む、半導体または電荷輸送材料、部品またはデバイス。
【請求項41】
請求項40に記載の半導体または電荷輸送材料、部品またはデバイスを含む、光学、電子光学もしくは電子デバイス、FET、集積回路(IC)、TFTまたはOLED。
【請求項42】
請求項40または41に記載の半導体もしくは電荷輸送材料、部品もしくはデバイス、またはFET、IC、TFTまたはOLEDを含む、フラットパネルディスプレイ、無線IC(RFID)タグ、電子発光ディスプレイまたはバックライト用の、TFTまたはTFTアレイ。
【請求項43】
請求項42に記載のFETまたはRFIDタグを含む、安全保障マークまたはデバイス。
【請求項44】
酸化的または還元的にドーピングされて導電性イオン種を形成する、請求項32〜35のいずれかに記載のポリマー。
【請求項45】
請求項44に記載のポリマーを含む、電子用途またはフラットパネルディスプレイのための、電荷注入層、平坦化層、帯電防止フィルムまたは導電性基板もしくはパターン。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【公表番号】特表2007−501300(P2007−501300A)
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522288(P2006−522288)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【国際出願番号】PCT/EP2004/008438
【国際公開番号】WO2005/014691
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】