説明

位置計測システム、位置計測装置、位置計測方法およびプログラム

【課題】IN/OUT型のセンサを用いる方式において、センサーノードの設置コストを削減する。
【解決手段】発信機3は、それぞれが所定の周期で識別情報を無線で発信し、ID受信機4は、発信機3が発信する識別情報を受信する。受信情報生成部11は、所定の領域の複数の地点でID受信機4が受信した識別情報を取得し、識別情報ごとの単独受信回数と2つの識別情報の組ごとの受信した地点が同一である同時受信回数を計数して受信情報を生成する。発信機間距離算出部13は、受信情報および発信機3ごとの発信の到達範囲から、2つの発信機3の間の距離を算出する。発信機位置算出部15は、三角形を構成できる3つの発信機3の設置座標と発信機間距離から、残りの発信機3それぞれの設置座標を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置計測技術に関する。より詳しくは、分散して配置された複数の通信機と移動体との通信によって、移動体の位置を計測する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ユーザの位置、現在時刻といったコンテキスト情報をもとにユーザに情報を提供するサービスが盛んに研究・開発されている。特にユーザの位置計測の高精度化は、上記サービスの重要な技術課題とされている。特許文献4はRFタグのアクティブリーダーを一定の間隔で配置し、ユーザに持たせているRFタグの識別情報(RFID)を読み込むことによって、各RFIDリーダーの電波範囲へのユーザのIN/OUTを判定し、ユーザの位置検出を行っている。非特許文献1は、複数の発信機から受信する信号強度と、他のセンサ(GPSなど)で取得した絶対座標の情報を用いて学習を用い、学習後は電波強度を用いて、位置の検出を行っている。
【0003】
無線通信装置の位置を決定する方法として例えば特許文献1の技術では、まず、固定された無線送信機から信号を受信し、三角測量法、k−最近接近傍法、最小多角形法の複数の計算方法を用いて暫定的な予測位置を複数計算する。次に、計算した暫定的な予測位置と無線通信環境に関する参照情報とに基づいて、高精度の予測位置を計算する。
【0004】
特許文献2には、無線タグの位置を検出する技術が記載されている。特許文献2の位置検出システムは、トランスポンダが、基地局から送信される識別情報と測距用信号を光通信で受信し、受信識別情報とトランスポンダ固有の識別情報が一致したときにこれらの情報を基地局に電波で送信する。3つ以上の基地局が、それぞれトランスポンダからの送信識別情報と測距用信号を受信し、受信情報に基づいて、トランスポンダとの距離を測定する。そして、トランスポンダとの距離が近い少なくとも3つの基地局の位置情報に基づいて、トランスポンダの位置を三角測量により特定する。
【0005】
一般にRFタグは、利用者認証に用いられることが多い。利用者認証では、RFタグをタグリーダにかざして読み取らせる場合が多いが、利用者に認証のための動作を強いることなく認証を行うことが特許文献3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−215258号公報
【特許文献2】特開2005−241301号公報
【特許文献3】特開2006−161390号公報
【特許文献4】特開2010−33457号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】“PlaceEngine: 実世界集合知に基づくWiFi位置情報基盤”, IC2010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献4に示されるような赤外線センサなどの信号受信の有無しか用いることができないセンサ(IN/OUT型センサ)では、個別の発信機の位置情報をあらかじめ全て登録した上で、受信機のIN/OUTの判定から位置検出を行うため、発信機の設置コストがかかるという、第1の課題がある。
【0009】
特許文献1の位置決定方法では、受信信号の信号強度を距離を表す指標として用いている。また、特許文献2の位置検出システムでは、測距用信号を用いている。非特許文献1に示されるような電波強度型センサにおいては、電波強度を使って発信機からの距離を推定できるため、より高精度な位置計測が可能であるが、この手法はIN/OUT型センサには適用することができないという、第2の課題がある。
【0010】
本発明は、上述のような事情に鑑みてなされたもので、IN/OUT型のセンサを用いる方式において、センサーノードの設置コストを削減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の観点に係る位置計測システムは、
それぞれが所定の周期で識別情報を無線で発信する、または、所定の周期で無線で信号を発信する移動体から該信号を受信する、分散して配置される複数の通信機と、
前記通信機が発信する識別情報を受信する移動体、または、前記所定の周期で無線で信号を発信する移動体と、
所定の期間、所定の領域内の複数の地点で前記移動体が前記通信機から受信した前記識別情報および異なる2つの前記識別情報を受信した地点が同一か否かを表す情報の集合、あるいは、前記移動体が所定の期間、所定の領域内を移動しながら前記所定の周期で発信する信号を受信した前記通信機の識別情報および異なる前記通信機が受信した信号が同一の地点から発信されたか否かを表す情報の集合、である通信機ID集合を取得する収集手段と、
前記通信機ID集合に含まれる前記識別情報ごとの受信回数、および、前記2つの識別情報の組ごとの前記識別情報の受信もしくは発信した地点が同一である受信回数、を計数した受信情報を生成する受信情報生成手段と、
前記通信機ごとの発信の到達範囲もしくは受信可能な前記移動体の発信範囲を示す通信範囲情報を取得する範囲情報取得手段と、
前記受信情報および前記通信範囲情報から、前記複数の通信機に含まれる2つの前記通信機の間の通信機間距離を算出する距離算出手段と、
前記複数の通信機のうち、その位置を頂点とする三角形を構成できる3つの通信機それぞれの前記識別情報および設置座標を含む通信機情報を取得する手段と、
前記通信機間距離と前記通信機情報から、前記通信機それぞれの設置座標を算出する座標算出手段と、
を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明の第2の観点に係る位置計測装置は、
それぞれが所定の周期で識別情報を無線で発信する分散して配置される複数の通信機から、所定の期間、所定の領域内の複数の地点で受信した識別情報および異なる2つの識別情報を受信した地点が同一か否かを表す情報の集合、あるいは、所定の周期で無線で信号を発信する移動体が所定の期間、所定の領域内を移動しながら発信する信号を受信した、分散して配置される複数の通信機の識別情報および異なる前記通信機が受信した信号が同一の地点から発信されたか否かを表す情報の集合、である通信機ID集合を取得する収集手段と、
前記通信機ID集合に含まれる前記識別情報ごとの受信回数、および、前記2つの識別情報の組ごとの前記識別情報の受信もしくは発信した地点が同一である受信回数、を計数した受信情報を生成する受信情報生成手段と、
前記通信機ごとの発信の到達範囲もしくは受信可能な前記移動体の発信範囲を示す通信範囲情報を取得する範囲情報取得手段と、
前記受信情報および前記通信範囲情報から、前記複数の通信機に含まれる2つの前記通信機の間の通信機間距離を算出する距離算出手段と、
前記複数の通信機のうち、その位置を頂点とする三角形を構成できる3つの通信機それぞれの前記識別情報および設置座標を含む通信機情報を取得する手段と、
前記通信機間距離と前記通信機情報から、前記通信機それぞれの設置座標を算出する座標算出手段と、
を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の第3の観点に係る位置計測方法は、
それぞれが所定の周期で識別情報を無線で発信する分散して配置される複数の通信機から、所定の期間、所定の領域内の複数の地点で受信した識別情報および異なる2つの識別情報を受信した地点が同一か否かを表す情報の集合、あるいは、所定の周期で無線で信号を発信する移動体が所定の期間、所定の領域内を移動しながら発信する信号を受信した、分散して配置される複数の通信機の識別情報および異なる前記通信機が受信した信号が同一の地点から発信されたか否かを表す情報の集合、である通信機ID集合を取得する収集ステップと、
前記通信機ID集合に含まれる前記識別情報ごとの受信回数、および、前記2つの識別情報の組ごとの前記識別情報の受信もしくは発信した地点が同一である受信回数、を計数した受信情報を生成する受信情報生成ステップと、
前記通信機ごとの発信の到達範囲もしくは受信可能な前記移動体の発信範囲を示す通信範囲情報を取得する範囲情報取得ステップと、
前記受信情報および前記通信範囲情報から、前記複数の通信機に含まれる2つの前記通信機の間の通信機間距離を算出する距離算出ステップと、
前記複数の通信機のうち、その位置を頂点とする三角形を構成できる3つの通信機それぞれの前記識別情報および設置座標を含む通信機情報を取得するステップと、
前記通信機間距離と前記通信機情報から、前記通信機それぞれの設置座標を算出する座標算出ステップと、
を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明の第4の観点に係るプログラムは、コンピュータに、
それぞれが所定の周期で識別情報を無線で発信する分散して配置される複数の通信機から、所定の期間、所定の領域内の複数の地点で受信した識別情報および異なる2つの識別情報を受信した地点が同一か否かを表す情報の集合、あるいは、所定の周期で無線で信号を発信する移動体が所定の期間、所定の領域内を移動しながら発信する信号を受信した、分散して配置される複数の通信機の識別情報および異なる前記通信機が受信した信号が同一の地点から発信されたか否かを表す情報の集合、である通信機ID集合を取得する収集ステップと、
前記通信機ID集合に含まれる前記識別情報ごとの受信回数、および、前記2つの識別情報の組ごとの前記識別情報の受信もしくは発信した地点が同一である受信回数、を計数した受信情報を生成する受信情報生成ステップと、
前記通信機ごとの発信の到達範囲もしくは受信可能な前記移動体の発信範囲を示す通信範囲情報を取得する範囲情報取得ステップと、
前記受信情報および前記通信範囲情報から、前記複数の通信機に含まれる2つの前記通信機の間の通信機間距離を算出する距離算出ステップと、
前記複数の通信機のうち、その位置を頂点とする三角形を構成できる3つの通信機それぞれの前記識別情報および設置座標を含む通信機情報を取得するステップと、
前記通信機間距離と前記通信機情報から、前記通信機それぞれの設置座標を算出する座標算出ステップと、
を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、IN/OUT型のセンサを用いて基点となる3個の発信機の位置情報を入力することによって、全ての発信機の位置情報を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1に係る位置計測システムの構成例を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1における発信機ID集合ごとの受信回数の例を示す図である。
【図3】実施の形態1において受信情報から単独受信回数と同時受信回数を計数する例を示す図である。
【図4】実施の形態1における単独受信回数の例を示す図である。
【図5】実施の形態1における同時受信回数の例を示す図である。
【図6】実施の形態1における重複エリア面積の算出方法を示す図である。
【図7】実施の形態1における発信機間の距離の算出方法を示す図である。
【図8】実施の形態1において使用される発信機間距離情報の例を示す図である。
【図9】実施の形態1において使用される発信機情報の例を示す図である。
【図10】実施の形態1における座標候補算出方法を示す図である。
【図11】実施の形態1において座標候補から最終的な推定座標を決定する方法を示す図である。
【図12】実施の形態1に係る発信機座標算出の動作の一例を示す流れ図である。
【図13】実施の形態に係る受信機の位置を推定する動作の一例を示す流れ図である。
【図14】本発明の実施の形態2に係る位置計測システムの構成例を示すブロック図である。
【図15】実施の形態2における基点発信機の仮想座標の算出方法を示す図である。
【図16】実施の形態2における実座標の算出方法を示す図である。
【図17】実施の形態2に係る発信機座標算出の動作の一例を示す流れ図である。
【図18】実施の形態の具体例における発信機、観測点の配置を示す図である。
【図19】本発明の実施の形態に係る位置計測装置の物理的構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態の構成を説明する前に、まず実施の形態の原理を説明する。本発明の実施の形態では、例えばRFタグリーダのような、それぞれの識別情報を所定の周期で発信する複数の発信機が、分散して配置される領域を想定する。複数の発信機のうち、発信機の位置を頂点として三角形を構成する3つの発信機の座標(通信機情報)が与えられる。発信機から発信される識別情報の到達範囲(識別情報を受信できる範囲)は、発信機を中心とする円であると仮定し、到達範囲の半径が与えられる。
【0018】
複数の発信機が分散して配置される領域に分布する複数の地点で、発信機から発信される識別情報を受信する。複数の地点で受信した識別情報を収集し、識別情報ごとの受信地点の数(受信回数)と、任意の異なる2つの識別情報の対ごとに、その2つの識別情報を同一の地点で受信した回数(同時受信回数)を計数する。
【0019】
任意の2つの発信機(識別情報)について、識別情報ごとの受信回数と同時受信回数から、それぞれの到達範囲の面積と、到達範囲が重複する範囲の面積(重複エリア面積)の比を算出する。到達範囲の面積と重複エリア面積の比、および到達範囲の半径から2つの発信機の距離(発信機間距離)を算出する。重複エリア面積が0を超え、かつ、重複エリア面積がどちらの発信機でもその到達範囲の100%未満である2つの発信機について距離を算出できる。そして、三角形を構成する3つの発信機の座標と発信機間距離から、三角形の余弦定理を用いて各発信機の座標を計算する。
【0020】
いずれの発信機も他の2つ以上の発信機との発信機間距離が算出できて、発信機をノード、発信機間距離をエッジとするグラフを考えたときに、複数の発信機が1つの(単連結の)グラフで表されれば、複数の発信機全部の相対座標(本発明では仮想座標という)を計算できる。仮想座標は、領域に固定された座標に対して、平行移動、領域面内の回転、および、鏡像(表と裏の関係)の自由度がある。複数の発信機のうち、三角形を構成する3つの発信機の座標が与えられれば、これらの自由度は一意に決められる。
【0021】
発信機の座標を計算できれば、あとは、移動体(RFタグ)が1つの地点で発信機(RFタグリーダなど)から受信した識別情報、または、移動体が1つの地点で発信した信号を受信した発信機(RFタグリーダなど)の識別情報、を取得し、識別情報に対応する発信機の座標の重心点を算出することによって、移動体の位置を推定できる。
【0022】
上述の発信機と受信機を入れ替えて、領域内の複数の地点から発信する信号を、分散して配置された複数の受信機で受信し、受信した信号に受信機の識別情報をつけたものを、識別情報ごとに計数して受信回数としてもよい。その場合、同時受信回数は、2つの受信機で同じ信号を受信した回数である。本発明では、発信機と受信機を総称して通信機という。また、発信機が発信する識別情報を受信する装置、または、領域内の複数の地点から信号を発信する装置を移動体という。本発明の実施の形態では、通信機が発信機の場合を主に説明する。なお、実施の形態では、分散して配置される複数の発信機から、その識別情報を受信する装置(移動体)をID受信機という。
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお図中、同一または同等の部分には同一の符号を付す。
【0024】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る位置計測システムの構成例を示すブロック図である。位置計測システム1は、複数の発信機3、ID受信機4および位置計測装置2から構成される。発信機3は、それぞれ固有の識別情報を所定の周期で発信する。複数の発信機3は、ID受信機4が移動しうる領域を、その識別情報の到達範囲の集合で被覆するように分散して配置される。
【0025】
ID受信機4は、所定の領域内の複数の地点で、発信機3が発信する識別情報(発信機ID)を受信する。ID受信機4は、受信した識別情報に受信した時刻をつけて記憶する。または、同一の地点で受信した複数の識別情報を、受信した地点ごとに関連づけて(まとめて)記憶する。ID受信機4は、記憶した識別情報を、位置計測装置2に送信する。ID受信機4は、識別情報を受信するごとに位置計測装置2に送信して、ID受信機4内に識別情報を記憶しておかなくてもよい。いずれの場合でも、位置計測装置2は、受信した時刻または受信した地点ごとの関連づけから、受信した地点ごとに受信した識別情報を記憶する。
【0026】
位置計測装置2は、受信情報生成部11、受信情報データベース(受信情報DB)12、発信機間距離算出部13、発信機位置算出部15、発信機情報データベース(発信機情報DB)14、および、位置推定部16を備える。受信情報生成部11は、ID受信機4から、ID受信機4が受信した識別情報を受信(取得)して、発信機IDごとに受信した地点の数(単独受信回数)を計数する。また、異なる2つの識別情報の組(対)ごとに、その2つの識別情報を同一の地点で受信した回数(同時受信回数)を計数する。
【0027】
図2は、実施の形態1における発信機ID集合ごとの受信回数の例を示す図である。図2の発信機ID集合は、それに含まれる発信機IDを同一の地点で受信したことを表す。受信回数は、発信ID集合を受信した地点の数である。例えば、1行目の発信機ID集合=Sの場合、S1のみを受信した地点の数が18である。また、2行目は、発信機ID集合={S,S}であり、SとSを同一の地点で受信した地点の数が10であることを示す。
【0028】
図3は、実施の形態1において受信情報から単独受信回数と同時受信回数を計数する例を示す。図3の発信機ID集合と受信回数は、図2と同じである。例えば、発信機IDがSとSの場合、Sの単独受信回数は、Sが発信機ID集合に現れる受信回数を計数して、40になる。Sの単独受信回数は、Sが発信機ID集合に現れる受信回数を計数して、44である。そして、SとSの同時受信回数は、{S,S}が含まれる発信機ID集合の受信回数を計数して、14になる。
【0029】
図4は、実施の形態1における単独受信回数の例を示す図である。図5は、実施の形態1における同時受信回数の例を示す図である。図3で説明したように、受信情報生成部11は、発信機IDごとに、発信機IDが発信機ID集合に現れる受信回数を計数して図4のようなデータを得る。また、全ての発信機IDの対(ペア)について、そのペアが発信機ID集合に含まれる受信回数を計数して、図5のようなデータを得る。
【0030】
図1の受信情報生成部11は、単独受信回数と同時受信回数をまとめて受信情報として、受信情報DB12に送る。受信情報DB12は、受信情報を記憶する。
【0031】
発信機間距離算出部13は、発信機3の信号到達エリアを円と仮定し、単独受信回数と同時受信回数の比率からエリア重複部分の面積(重複エリア面積)を算出する。信号到達エリアの半径は、例えば、発信機情報DB14に記憶されている。すべての発信機3の信号到達エリアの半径が同一の場合は、半径情報を発信機間距離算出部13が保持していてもよい。そして、信号到達エリアの半径および重複エリア面積から、2つの発信機3の間の距離(発信機間距離)を算出する。
【0032】
図6は、実施の形態1における重複エリア面積の算出方法を示す。2つの発信機d1、d2の信号到達エリアをそれぞれ、半径r、rの円と仮定する。それぞれの信号到達エリアの面積をS、S、重複エリアの面積をS1_2とする(図6(a)参照)。dの単独受信回数をn、dの単独受信回数をn、dとdの同時受信回数をn12とする。
:S1_2=n:n12
:S1_2=n:n12
とみなすと(図6(b)、(c)参照)、重複エリアの面積S1_2は、
1_2=S・n12/n
1_2=S・n12/n
の2つの関係で表される。2つの重複エリアの面積を等しいと考えて平均をとれば、
1_2=(S・n+S・n)n12/(n・n
である。特に、r=r=rなら、S=S=πrで、
1_2=πr・n12(n+n)/(n・n
である。これは、単独受信回数の平均と同時受信回数の比を、単独エリア面積と重複エリア面積の比とみなして計算したことになっている。
【0033】
発信機間距離算出部13は、エリア半径と重複エリア面積から発信機間距離を算出する。図7は、実施の形態1における発信機間の距離の算出方法を示す。2つの発信機d、dの信号到達範囲をそれぞれ、半径r、rの円とする。それぞれの中心(発信機3の位置)から、信号到達エリアの円の交点を見込む角度をそれぞれ2α、2βとする。重複エリアの面積S1_2
1_2=(αr−rsinα・cosα)+(βr−rsinβ・cosβ)
ただし、rsinα=rsinβである。この方程式からα、βを求めれば、発信機間の距離d12
12=rcosα+rcosβ
で計算できる。特に、r=r=rならα=βで、重複エリアの面積は
1_2=2(αr−2rsin2α)
であり、距離は、d12=2rcosαである。
【0034】
図8は、実施の形態1において使用される発信機間距離情報の例を示す図である。発信機間距離算出部13は、例えば、図8のような発信機IDペアと発信機間距離からなる発信機間距離情報を生成する。ここで発信機間距離情報を
Distance_info=<PairIDs,Distance>
:(PairIDs=発信機IDペア、Distance=発信機間距離)
と定義する。発信機間距離算出部13は、発信機IDペアと発信機間距離からなる発信機間距離情報を発信機情報DB14に記憶する。
【0035】
図1の発信機情報DB14は、発信機ID、設置座標からなる発信機情報を保持する。図9は、実施の形態1において使用される発信機情報の例を示す。発信機情報DB14は、初期状態では、配置している発信機3の内、三角形を構成することができる3点(基点発信機)の発信機情報を保持している。他の発信機情報に関しては発信機位置算出部15で生成された発信機情報を取得して保存する。ここで発信機情報SenderInfo=<ID,Coord>(ID=発信機ID、Coord=設置座標)と定義する。
【0036】
図1の発信機位置算出部15は、発信機情報と発信機間距離情報から、発信機3の位置(座標)を算出する。発信機3の位置(座標)は、発信機3が配置される領域に固定された座標系で表す。図10は、実施の形態1における座標候補算出方法を示す。
【0037】
発信機位置算出部15は、発信機情報DB14から発信機情報および発信機間距離情報を取得する。そして、座標が既知の2個の発信機A,Bについて、発信機A,Bまでの距離が発信機間距離情報に存在し、自身と発信機A,Bの3点間の距離が三角形成立条件を満たす発信機Cを選択する。既知の発信機A,Bと選択した発信機Cの3点において、発信機A,Bの座標からX軸に対する辺ABの角度θを算出し、さらに余弦定理を用いて3辺の長さから∠BAC(α)を算出する。これらの角度からX軸に対する辺ACの角度を算出し、発信機Aの座標とX軸に対する辺ACの角度から発信機Cの候補点の座標を算出する。
【0038】
発信機Cの候補点(C1,C2)は2つ存在する(図10)。ここで、
θ=arctan((x−x)/(y−y))
cosα=(d+d−d)/2d
α=arccos((d+d−d)/2d
c1:xc1=xA+dcos(θ+α),yc1=y+dsin(θ+α)
c2:xc2=xA+dcos(θ−α),yc2=y+dsin(θ−α)
である。発信機位置算出部15は、以下のようにして2つの候補のうちの1つを決定する。
【0039】
図11は、実施の形態1において座標候補から最終的な推定座標を決定する方法を示す図である。発信機位置算出部15は、発信機Cとの距離(DistanceD_C)が発信機間距離情報に存在し、かつ発信機3の座標が発信機情報に存在する発信機Dに対して、座標情報を用いて候補点C1、C2との距離を算出する。そして、算出した距離とDistanceD_Cを比較し、DistanceD_Cに値が近い方を最終的な発信機Cの位置とする。発信機位置算出部15は、発信機Cについて発信機IDと設置座標からなる発信機情報を生成する。以上の作業を発信機情報が生成できなくなるまで繰返し行う。計算式で表せば、以下のように書ける。
DC=DistanceD_C
DC1=√((x−xc1+(y−yc1
DC2=√((x−xc2+(y−yc2
(|DC1−DC|<|DC2−DC|)ならば、C=C1とする。
(|DC1−DC|<|DC2−DC|)でなければ、C=C2とする。
【0040】
発信機Cの最終的な位置の決定方法としては、他に2通りのやり方が考えられる。一つ目は、発信機Cとの距離が発信機間距離情報に存在し、かつ発信機3の座標が発信機情報に存在する全ての発信機3(D={d,d,...,d})に対して、座標情報を用いて各発信機3(d∈D)とC1、C2との距離(Distancedk_c1、Distancedk_c2)を算出する。Distancedk_c1、Distancedk_c2とDistancedk_cとの差(Gapdk_c1、Gapdk_c2)を算出する。そして、その積算値
【数1】

を比較し、値が小さい方を最終的な発信機Cの位置として採用する。
【0041】
二つ目は、一つ目の方法において座標を算出する対象の発信機Cとの距離が発信機間距離算出部13で算出した発信機機間距離に含まれず、かつ、発信機Cの座標の2つの候補(C1、C2)の一方について座標から算出した距離Distancedk_ci(i=1または2)が発信機Cと発信機dのエリア半径の和よりも小さく、2つの候補の他方について座標から算出した距離Distancedk_cj(j=2または1)が発信機Cと発信機dkのエリア半径の和より大きい場合に、座標から算出した距離Distancedk_ci(i=1または2)がそれぞれのエリア半径の和よりも小さい候補に対して、座標から算出した距離Distancedk_ci(i=1または2)を距離の差の積算値ΣGapdk_ciに加える。そして、2つの積算値(数1)を比較し、値が小さい方を最終的な発信機Cの位置として採用する。
【0042】
発信機Cの座標を決定したら、発信機Aまたは発信機Bと発信機Cを、改めて座標が既知の2つの発信機A、Bにして、上述の処理を繰り返す。このようにして、次々に発信機3の位置(座標)を算出する。
【0043】
初めに座標が与えられる3つの発信機3のうちのいずれの2つの発信機A,Bについても、発信機A,Bまでの距離が発信機間距離情報に存在し、自身と発信機A,Bの3点間の距離が三角形成立条件を満たす発信機Cがない場合には、発信機Aとの距離が発信機間距離情報に存在し、発信機Aを含んで三角形成立条件を満たす2つの発信機3を選択して、発信機Aに対する仮の座標を算出する。この場合、発信機Aを中心とする回転と鏡像の関係の自由度が残る。そこで、次々に発信機3の仮の座標を算出していって、座標が与えられる発信機3の仮の座標を算出したところで、その仮の座標と与えられた座標を一致させることによって、仮の座標から実際の(領域に固定された座標系の)座標を算出する。
【0044】
発信機位置算出部15は、他の2つの発信機3と発信機間距離情報が決定されている発信機3すべてについて、以上のようにして発信機IDと設置座標からなる発信機情報を生成する。発信機位置算出部15は、発信機情報を発信機DBに記憶する。
【0045】
位置計測装置2は、すべての発信機3の座標を計算したのち、発信機3の座標を用いて、ID受信機4の位置を推定する。位置推定部16は、1つの地点で前記通信機から受信した発信機ID集合(または、移動体が1つの地点で発信した信号を受信した通信機の識別情報)を、受信情報生成部11から取得する。そして、発信機ID集合に含まれる発信機IDに対応する発信機3の座標を発信機情報DB14から読み出し、それらの重心点を算出する。例えば、発信機ID集合が{S,S,S}でありそれぞれの座標が
=(x,y)、S=(x,y)、S=(x,y
の場合、最終的な位置座標は
((x+x+x)/3,(y+y+y)/3)
となる。位置計測装置2は、この重心点の座標をID受信機4の推定位置とする。
【0046】
図12は、実施の形態1に係る発信機座標算出の動作の一例を示す流れ図である。ID受信機4を複数の発信機3が分散して配置される領域内で移動させて、複数の地点で発信機IDを受信する(ステップS11)。例えば、ID受信機4を身につけた人物に計測対象区域(発信機3が配置される領域)を満遍なく一定回数歩き回ってもらって、ID受信機4で発信機IDを受信する。受信情報生成部11は、ID受信機4が受信した発信機ID集合をID受信機4から取得する(ステップS12)。受信情報生成部11は、発信機ID毎の単独受信回数と、2つの発信機IDの対ごとの同時受信回数を計数し、発信機ID集合、受信回数(単独受信回数および同時受信回数)からなる受信情報を生成し、受信情報DB12へ登録する(ステップS13)。
【0047】
次に、発信機間距離算出部13は、受信情報DB12から受信情報、発信機情報DB14から発信機情報を取得する。発信機間距離算出部13は、発信機3の到達エリア半径を発信機情報DB14から取得する(ステップS14)。発信機3の信号到達エリアを円と仮定し、単独受信回数と同時受信回数の比を単独エリア面積と重複エリア面積の比として利用して重複エリア面積を算出する。そして、エリア半径、重複エリア面積から発信機間距離を算出する(ステップS15)。発信機間距離算出部13は、発信機IDペアと発信機間距離からなる発信機間距離情報を生成して、発信機情報DB14に記憶する。
【0048】
次に、発信機位置算出部15は、発信機情報DB14から3つの発信機3の座標(発信機情報)および発信機間距離を取得する(ステップS16)。そして、座標が既知の2個の発信機A,Bについて、発信機A,Bまでの距離が発信機間距離情報に存在し、自身と発信機A,Bの3点間の距離が三角形成立条件を満たす発信機Cを選択する。発信機A,B,Cの3点において、前述のとおり三角形の余弦定理を用いて、発信機Cの座標を算出する(ステップS17)。発信機位置算出部15は、他の2つの発信機3と発信機間距離情報が決定されている発信機3すべてについて、発信機IDと設置座標からなる発信機情報を生成して、発信機情報DB14に記憶する。
【0049】
図13は、実施の形態に係る受信機の位置を推定する動作の一例を示す流れ図である。受信情報生成部11は、例えば、ID受信機4が所定の時間に受信した発信機IDを、ID受信機4から受信するのを待機する(ステップS21、ステップS22;NO)。ID受信機4から発信機IDを受信すると(ステップS22;YES)、受信した発信機IDの発信機3の座標の重心を算出する(ステップS23)。そして、算出した重心の座標をID受信機4の位置として出力する(ステップS24)。
【0050】
以上説明したように、本実施の形態の位置計測システム1によれば、ID受信機4で受信する信号の強度を用いずに、基点となる3個の発信機3の位置情報から、全ての発信機3の位置情報(座標)を算出することを可能とする。そして、算出した発信機3の座標を用いて、ID受信機4の位置を推定することができる。
【0051】
(実施の形態2)
図14は、本発明の実施の形態2に係る位置計測システムの構成例を示すブロック図である。実施の形態2では、発信機間距離から、発信機3の仮想座標を算出し、そののち、三角形を構成する3つの発信機3の座標(実座標)を用いて、発信機3の仮想座標からその実座標を算出する。実施の形態2の位置計測装置2は、実施の形態1の構成に加えて、発信機位置算出部15に仮想座標算出部17を備える。その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0052】
受信情報生成部11は、実施の形態1と同様に、発信機ID集合をID受信機4から取得し、単独受信回数および同時受信回数を計数して受信情報を生成する。発信機間距離算出部13は、受信情報と発信機3の到達範囲のエリア半径から、重複エリア面積を算出して、発信機間の距離を算出する。そして、発信機間距離情報を発信機情報DB14に記憶する。
【0053】
仮想座標算出部17は、発信機情報DB14から発信機間距離情報を取得する。発信機3のいずれか1つを原点とし、他のいずれか1つと原点を通る直線を座標軸の1つとする仮想座標系を設定する。そして、発信機間距離から仮想座標系における発信機3の仮想座標を算出する。発信機位置算出部15は、発信機情報DB14から三角形を構成することができる3点(基点発信機)の実座標を含む発信機情報を取得し、発信機3の仮想座標と発信機情報から発信機3の実座標を算出する。
【0054】
図15は、実施の形態2における基点発信機の仮想座標の算出方法を示す図である。仮想座標算出部17は、発信機間距離から三角形を構成することが可能な任意の3点(A,B,C)を選択する。発信機Aの座標を(0,0)、発信機Bの座標を(DistanceA_B,0)とし、余弦定理を用いて3辺の長さから∠BAC(α)を算出する。そして、発信機Cの座標を(DistanceA_C・cosα,DistanceA_C・sinα)と算出する。
【0055】
発信機Cの仮想座標について候補が2つ算出されるが、そのうち、最終的な仮想座標は、実施の形態1と同様に、仮想座標における既知の発信機3との距離によって決定する。
【0056】
4点目以降の発信機3について、実施の形態1の発信機位置算出部15の座標算出方法と同様に、仮想座標系における座標を算出する。そして算出された仮想座標から発信機ID、仮想座標からなる仮想座標情報を生成する。ここで仮想座標情報VirtualCoordInfo=<ID,VirtualCoord>(ID=発信機ID、Coord=仮想座標)と定義する。
【0057】
発信機位置算出部15は、仮想座標算出部17から仮想座標情報を、発信機情報DB14から基点発信機(I,J,K)の実座標を含む発信機情報を取得する。発信機I,J,Kの仮想座標と実座標を用いて仮想座標から実座標への変換式を生成する。
【0058】
図16は、実施の形態2における実座標の算出方法を示す図である。実座標系x−yと仮想座標系x−yとの関係を図16のように表す。すなわち、実座標系の原点に対する仮想座標系原点の位置(変位)を(a,b)、実座標系に対する仮想座標系の傾き角をβ(γ=β|π−β)とする。仮想座標系から実座標系への変換式は、
=a+xcosβ−ysinβ、
=b+xsinβ+ycosβ
(a+xIvcosβ−yIvsinγ=xIr、b+xIvsinβ+yIvcosγ=yIr
a+xJvcosβ−yJvsinγ=xJr、b+xJvsinβ+yJvcosγ=yJr
a+xKvcosβ−yKvsinγ=xKr、b+xKvsinβ+yKvcosγ=yKr
γ=β|π−βを満たすa、b、β、γ)
となる。この変換式を用いて、仮想座標情報における仮想座標を実座標に変換した値を設置座標とし、発信機ID、設置座標からなる発信機情報を生成する。
【0059】
図17は、実施の形態2に係る発信機座標算出の動作の一例を示す流れ図である。図17のステップS31からステップS35は、図13のステップS11からステップS15と同様である。発信機間距離を算出した(ステップS35)のち、仮想座標算出部17は、前述のように発信機間距離から発信機3の仮想座標を算出する(ステップS36)。
【0060】
すべての発信機3について、仮想座標を算出すると、発信機位置算出部15は、3つの発信機3の実座標を含む発信機情報を発信機情報DB14から取得する(ステップS37)。そして仮想座標と発信機情報から、前述のように仮想座標から実座標への変換式を生成し、発信機3の座標(実座標)を算出する(ステップS38)。発信機3の座標(実座標)を算出したのち、実施の形態1と同様にして、受信機の位置を推定することができる。
【0061】
以上説明したように、本実施の形態2の位置計測システム1によれば、最初に座標が与えられる3つの発信機3の相互の発信機間距離が受信情報から直接的に算出されなくても、いずれの発信機3も他の2つ以上の発信機3との発信機間距離が計算できれば、発信機3の座標を決定することができる。
【0062】
次に、具体的な例を用いて本発明の実施の形態の作用を説明する。図18は、実施の形態の具体例における発信機3と観測点の配置を示す図である。図18の例では、13m×13mの計測対象エリアに対して、信号到達エリア半径が1.5mの発信機100個を、1m間隔の格子状の100点(10×10)の基準点それぞれから、半径25cmの範囲内に1個ずつランダムに配置した。観測点(受信機が発信機IDを受信した場所)を計測対象エリアにランダムに5000点用意した場合を考える。計測エリアを1mの格子に区切って全ての格子を通るようにID受信機4を身につけた人物が歩き回って貰い、各格子で1回発信機IDを受信できるとして、約30回計測エリアを歩き回ってもらった。
【0063】
このような場合において、受信情報生成部11は、ID受信機4から図2のような発信機ID集合を取得し、図4および図5のような受信情報を生成した。発信機間距離情報算出部103は、発信機3の信号到達エリアを円と仮定し(全発信機3のエリア半径は同一であり、半径情報は保持している)、単独受信回数の平均と同時受信回数の比を単独エリア面積と重複エリア面積の比として利用して重複エリア面積(DupArea)を算出した。
【0064】
例えば、エリア半径が1m、単独エリア面積をπmとし、図3においてS1とS2の発信機間距離情報を生成する場合、それぞれの単独受信回数が
SingleRevNumS = 18+10+8+4 = 40、
SingleRevNumS = 10+4+14+7+6+3 = 44、
同時受信回数が
DoubleRevNumS_S= 10+4 = 14
となり、重複エリア面積は
DupArea S_S=π・14/((40+44)/2)
となる。
【0065】
発信機間距離算出部13は、エリア半径、重複エリア面積から発信機間距離を算出し(図7)、図8のような発信機IDペアと発信機間距離からなる発信機間距離情報を生成した。発信機間距離は、
π/3 = α−sin2α・DistanceS_S = 2cosα
の式を解きDistanceS_S=1.438となる。
【0066】
発信機情報DB14には、三角形を構成できるような任意の3個の発信機3について図9のような発信機IDと設置座標からなる発信機情報を登録しておく。発信機位置算出部15は、発信機情報DB14から発信機情報および発信機間距離情報を取得し、前述の方法で座標が既知の2個の発信機(A,B)から出発して、三角形を構成できる発信機間距離の発信機3の座標を算出する。
【0067】
発信機A,Bまでの距離が発信機間距離情報に存在し、自身と発信機A,Bの3点間の距離が三角形成立条件を満たす発信機(C)の3点において、発信機A,Bの座標からX軸に対する辺ABの角度を算出し、さらに余弦定理を用いて3辺の長さから∠BAC(α)を算出し、これらの角度からX軸に対する辺ACの角度(θ)を算出し、発信機Aの座標とX軸に対する辺ACの角度から発信機Cの候補点C1,C2の座標を算出する(図10)。次に、発信機Cとの距離(DistanceD_C)が発信機間距離情報に存在し、かつ発信機3の座標が発信機情報に存在する発信機Dに対して、座標情報を用いて候補点C1、C2との距離を算出し、算出した距離とDistanceD_Cを比較し、DistanceD_Cに値が近い方を最終的な発信機Cの位置とし(図11)、発信機Cについて発信機ID、設置座標からなる発信機情報を生成する。以上の作業を発信機情報が生成できなくなるまで繰返し行う。
【0068】
例えば、図8、図9においてS1、S2の座標、S、S、Sの距離からSの座標を算出する場合、∠S
α=arccos((1.45+0.67−1.12)/(2×1.45×0.67))
=48°となる。X軸に対するS1S2の角度はθ=90°となる。Sの候補点S41、S42の座標はそれぞれ
41
(1.02+1.45cos(48°+90°)、1.36+1.45sin(48°+90°))
=(2.11、2.33)、
42
(1.02+1.45cos(48°−90°)、1.36+1.45sin(48°−90°))
=(−0.1、2.33)
となる。
【0069】
42、S41とSの座標からS41,S42とSの距離は、
41=√((2.11−2.01)+(2.33−1.50))=0.83、
42=√((−0.1−2.01)+(2.33−1.50))=2.27
となる。図9のS=0.82と比較し、S41の方が値が近いので最終的にSの座標を(2.11、2.33)とする。
【0070】
以上のような計算を繰り返して、図18に示すような発信機3の推定位置を得た。図18では、発信機3の設置位置を○印で、発信機3の推測位置を□印で示す。観測点(発信機IDの受信位置)を小さい点で示す。観測点の間隔を均等にし、さらに密度を大きく(観測点を多く)することによって、発信機3の推定位置の精度を向上できる。
【0071】
位置推定部16は、受信情報生成部11から1つの地点で受信した発信機ID集合を取得し、発信機ID集合の全てのIDに対する座標の重心を最終的な位置として出力する。例えば、発信機ID集合が{S,S,S}であり、それぞれの座標が図9の値の場合、最終的な位置座標は
((1.02+1.02+2.01)/3,(1.36+2.08+1.50)/3)
=(1.34,1.31)
となる。
【0072】
本発明の実施の形態2の仮想座標の算出について、具体的な例を説明する。
例えば、図8におけるS、S、Sの距離からS、S、Sの仮想座標を算出する場合、∠S
α=arccos((1.45+0.67−1.12)/(2×1.45×0.67))
=48°
となる。Sを原点にして、SとSを通る直線をx軸とする仮想座標系を設定する。各点の仮想座標は、S=(0,0)、S=(0.72,0)、S=(1.45cos48°,1.45sin48°)である。
【0073】
、S、Sの3点を元に、4点目以降の仮想座標を算出する。すべての発信機3の仮想座標を算出したのち、発信機位置算出部15は、仮想座標算出部17から仮想座標情報を、発信機情報DB14から基点発信機(I,J,K)の発信機情報を取得し、発信機I,J,Kの仮想座標と実座標を用いて仮想座標から実座標への変換式を生成する。
【0074】
実施の形態2で説明し仮想座標と実座標の変換式で、例えば、
Ir=(3,2)、Jr=(6,4)、Kr=(4,5)、
Iv=(1,0.5)、Jv=(4,1)、Kv=(2.5,3)
の場合、
a+1cosβ−0.5sinγ=3、
b+1sinβ+0.5cosγ=2、
a+4cosβ−1sinγ=6、
b+4sinβ+1cosγ=4、
a+2.5cosβ−3sinγ=4、
b+2.5sinβ+3cosγ=5
の連立方程式を解き、a,b,β,γを算出して、変換式
=a+xcosβ−ysinβ、
=b+xsinβ+ycosβ
を生成する。
【0075】
図19は、本発明の実施の形態に係る位置計測装置の物理的な構成例を示すブロック図である。図19は、図1または図14の位置計測装置2の構成を示す。
【0076】
位置計測装置2は、図19に示すように、制御部21、主記憶部22、外部記憶部23、操作部24、表示部25、入出力部26および送受信部27を備える。主記憶部22、外部記憶部23、操作部24、表示部25、入出力部26および送受信部27はいずれも内部バス20を介して制御部21に接続されている。
【0077】
制御部21はCPU(Central Processing Unit)等から構成され、外部記憶部23に記憶されている制御プログラム29に従って、位置計測のための処理を実行する。
【0078】
主記憶部22はRAM(Random-Access Memory)等から構成され、外部記憶部23に記憶されている制御プログラム29をロードし、制御部21の作業領域として用いられる。
【0079】
外部記憶部23は、フラッシュメモリ、ハードディスク、DVD−RAM(Digital Versatile Disc Random-Access Memory)、DVD−RW(Digital Versatile Disc ReWritable)等の不揮発性メモリから構成され、上述の処理を制御部21に行わせるための制御プログラム29を予め記憶し、また、制御部21の指示に従って、この制御プログラム29が記憶するデータを制御部21に供給し、制御部21から供給されたデータを記憶する。
【0080】
操作部24はキーボードおよびマウスまたはタッチパネルなどのポインティングデバイス等と、キーボードおよびポインティングデバイス等を内部バス20に接続するインタフェース装置から構成されている。操作部24を介して、基点となる3つの発信機3の座標を含む発信機情報および発信機3のエリア半径などの入力を受付ける。
【0081】
表示部25は、LCD(Liquid Crystal Display)もしくは有機ELディスプレイ、およびスピーカなどから構成され、発信機3の座標またはID受信機4の推定位置を表示する。
【0082】
入出力部26は、シリアルインタフェースまたはパラレルインタフェースから構成されている。入出力部26に発信機3が接続される。ID受信機が発信する信号を発信機3が受信する場合、発信機3が受信した情報を入出力部26を介して入力し、制御部21に送る。
【0083】
送受信部27は、無線送受信機、無線モデムまたは網終端装置、およびそれらと接続するシリアルインタフェースまたはLAN(Local Area Network)インタフェースから構成されている。位置計測装置2は、送受信部27を介して、ID受信機4から発信機ID集合を受信する。
【0084】
位置計測装置2の 受信情報生成部11、受信情報DB12、発信機間距離算出部13、発信機情報DB14、発信機位置算出部15、位置推定部16などの処理は、制御プログラム29が、制御部21、主記憶部22、外部記憶部23、操作部24、表示部25、入出力部26および送受信部27などを資源として用いて処理することによって実行する。
【0085】
その他、前記のハードウエア構成やフローチャートは一例であり、任意に変更および修正が可能である。
【0086】
制御部21、主記憶部22、外部記憶部23、操作部24、内部バス20などから構成される制御処理を行う中心となる部分は、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。たとえば、前記の動作を実行するためのコンピュータプログラムを、コンピュータが読み取り可能な記録媒体(フレキシブルディスク、CD−ROM、DVD−ROM等)に格納して配布し、当該コンピュータプログラムをコンピュータにインストールすることにより、前記の処理を実行する位置計測装置2を構成してもよい。また、インターネット等の通信ネットワーク上のサーバ装置が有する記憶装置に当該コンピュータプログラムを格納しておき、通常のコンピュータシステムがダウンロード等することで位置計測装置2を構成してもよい。
【0087】
また、位置計測装置2の機能を、OS(オペレーティングシステム)とアプリケーションプログラムの分担、またはOSとアプリケーションプログラムとの協働により実現する場合などには、アプリケーションプログラム部分のみを記録媒体や記憶装置に格納してもよい。
【0088】
また、搬送波にコンピュータプログラムを重畳し、通信ネットワークを介して配信することも可能である。たとえば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS:Bulletin Board System)に前記コンピュータプログラムを掲示し、ネットワークを介して前記コンピュータプログラムを配信してもよい。そして、このコンピュータプログラムを起動し、OSの制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、前記の処理を実行できるように構成してもよい。
【0089】
上記の実施形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0090】
(付記1)
それぞれが所定の周期で識別情報を無線で発信する、または、所定の周期で無線で信号を発信する移動体から該信号を受信する、分散して配置される複数の通信機と、
前記通信機が発信する識別情報を受信する移動体、または、前記所定の周期で無線で信号を発信する移動体と、
所定の期間、所定の領域内の複数の地点で前記移動体が前記通信機から受信した前記識別情報および異なる2つの前記識別情報を受信した地点が同一か否かを表す情報の集合、あるいは、前記移動体が所定の期間、所定の領域内を移動しながら前記所定の周期で発信する信号を受信した前記通信機の識別情報および異なる前記通信機が受信した信号が同一の地点から発信されたか否かを表す情報の集合、である通信機ID集合を取得する収集手段と、
前記通信機ID集合に含まれる前記識別情報ごとの受信回数、および、前記2つの識別情報の組ごとの前記識別情報の受信もしくは発信した地点が同一である受信回数、を計数した受信情報を生成する受信情報生成手段と、
前記通信機ごとの発信の到達範囲もしくは受信可能な前記移動体の発信範囲を示す通信範囲情報を取得する範囲情報取得手段と、
前記受信情報および前記通信範囲情報から、前記複数の通信機に含まれる2つの前記通信機の間の通信機間距離を算出する距離算出手段と、
前記複数の通信機のうち、その位置を頂点とする三角形を構成できる3つの通信機それぞれの前記識別情報および設置座標を含む通信機情報を取得する手段と、
前記通信機間距離と前記通信機情報から、前記通信機それぞれの設置座標を算出する座標算出手段と、
を備えることを特徴とする位置計測システム。
【0091】
(付記2)
前記通信範囲情報は、前記複数の通信機それぞれの前記到達範囲もしくは前記発信範囲を示すエリア半径を含み、
前記距離算出手段は、前記通信機の前記到達範囲もしくは前記発信範囲を、前記通信機を中心とする前記エリア半径の円とみなして、前記通信機間距離を算出することを特徴とする付記1に記載の位置計測システム。
【0092】
(付記3)
前記距離算出手段は、前記2つの通信機それぞれの前記エリア半径、および、前記到達範囲もしくは前記発信範囲の重複面積から前記通信間距離を算出することを特徴とする付記2に記載の位置計測システム。
【0093】
(付記4)
前記距離算出手段は、前記2つの通信機それぞれの前記到達範囲もしくは前記発信範囲の面積に、前記2つの通信機の識別情報ごとの受信回数に対する前記受信もしくは発信した地点が同一である受信回数の比率をかけることによって、前記重複面積を算出することを特徴とする付記3に記載の位置計測システム。
【0094】
(付記5)
前記複数の通信機それぞれの前記エリア半径は同一であることを特徴とする付記2ないし4のいずれかに記載の位置計測システム。
【0095】
(付記6)
前記座標算出手段は、前記通信機間距離から余弦定理を用いて、2つの前記通信機に対する他の1つの前記通信機の相対座標を計算することを特徴とする付記1ないし5のいずれかに記載の位置計測システム。
【0096】
(付記7)
前記座標算出手段は、前記相対座標の2つの候補の内、前記相対座標を算出する対象の前記通信機との距離が前記距離算出手段で算出した前記通信機間距離に含まれ、かつ、座標が前記座標算出手段で算出された前記通信機との間で、前記距離算出手段で算出した距離と、前記座標および前記相対座標の候補から算出した距離と、の差が小さい前記候補を前記相対座標として算出することを特徴とする付記6に記載の位置計測システム。
【0097】
(付記8)
前記座標算出手段は、前記相対座標の2つの候補の内、前記相対座標を算出する対象の前記通信機との距離が前記距離算出手段で算出した前記通信機間距離に含まれ、かつ、座標が前記座標算出手段で算出された前記通信機全てに対して、前記距離算出手段で算出した距離と、前記座標および前記相対座標の候補から算出した距離との差を、前記相対座標の候補それぞれについて積算した値を比べ、値が小さい前記候補を前記相対座標として算出することを特徴とする付記7に記載の位置計測システム。
【0098】
(付記9)
前記座標算出手段は、前記相対座標を算出する対象の前記通信機との距離が前記距離算出手段で算出した通信機間距離に含まれず、かつ、前記相対座標の2つの候補の一方について座標から算出した距離がそれぞれの前記エリア半径の和よりも小さく、前記2つの候補の他方について座標から算出した距離がそれぞれの前記エリア半径の和より大きい場合に、前記座標から算出した距離がそれぞれの前記エリア半径の和よりも小さい候補に対して、前記座標から算出した距離を前記積算した値に加える、ことを特徴とする付記8に記載の位置計測システム。
【0099】
(付記10)
前記座標算出手段は、前記通信機のいずれか1つを原点とし、他のいずれか1つと前記原点を通る直線を座標軸の1つとする仮想座標系を設定して、前記通信機間距離から前記通信機の前記仮想座標系における仮想座標を算出し、前記通信機情報と前記仮想座標から前記通信機の座標を算出することを特徴とする付記6ないし9のいずれかに記載の位置計測システム。
【0100】
(付記11)
前記移動体が1つの地点で前記通信機から受信した識別情報、または、前記移動体が1つの地点で発信した信号を受信した前記通信機の識別情報、を取得し、該識別情報に対応する前記座標算出手段で算出した前記通信機の座標の重心点を算出する重心算出手段を備えることを特徴とする付記1ないし10のいずれかに記載の位置計測システム。
【0101】
(付記12)
それぞれが所定の周期で識別情報を無線で発信する分散して配置される複数の通信機から、所定の期間、所定の領域内の複数の地点で受信した識別情報および異なる2つの識別情報を受信した地点が同一か否かを表す情報の集合、あるいは、所定の周期で無線で信号を発信する移動体が所定の期間、所定の領域内を移動しながら発信する信号を受信した、分散して配置される複数の通信機の識別情報および異なる前記通信機が受信した信号が同一の地点から発信されたか否かを表す情報の集合、である通信機ID集合を取得する収集手段と、
前記通信機ID集合に含まれる前記識別情報ごとの受信回数、および、前記2つの識別情報の組ごとの前記識別情報の受信もしくは発信した地点が同一である受信回数、を計数した受信情報を生成する受信情報生成手段と、
前記通信機ごとの発信の到達範囲もしくは受信可能な前記移動体の発信範囲を示す通信範囲情報を取得する範囲情報取得手段と、
前記受信情報および前記通信範囲情報から、前記複数の通信機に含まれる2つの前記通信機の間の通信機間距離を算出する距離算出手段と、
前記複数の通信機のうち、その位置を頂点とする三角形を構成できる3つの通信機それぞれの前記識別情報および設置座標を含む通信機情報を取得する手段と、
前記通信機間距離と前記通信機情報から、前記通信機それぞれの設置座標を算出する座標算出手段と、
を備えることを特徴とする位置計測装置。
【0102】
(付記13)
それぞれが所定の周期で識別情報を無線で発信する分散して配置される複数の通信機から、所定の期間、所定の領域内の複数の地点で受信した識別情報および異なる2つの識別情報を受信した地点が同一か否かを表す情報の集合、あるいは、所定の周期で無線で信号を発信する移動体が所定の期間、所定の領域内を移動しながら発信する信号を受信した、分散して配置される複数の通信機の識別情報および異なる前記通信機が受信した信号が同一の地点から発信されたか否かを表す情報の集合、である通信機ID集合を取得する収集ステップと、
前記通信機ID集合に含まれる前記識別情報ごとの受信回数、および、前記2つの識別情報の組ごとの前記識別情報の受信もしくは発信した地点が同一である受信回数、を計数した受信情報を生成する受信情報生成ステップと、
前記通信機ごとの発信の到達範囲もしくは受信可能な前記移動体の発信範囲を示す通信範囲情報を取得する範囲情報取得ステップと、
前記受信情報および前記通信範囲情報から、前記複数の通信機に含まれる2つの前記通信機の間の通信機間距離を算出する距離算出ステップと、
前記複数の通信機のうち、その位置を頂点とする三角形を構成できる3つの通信機それぞれの識別情報および設置座標を含む通信機情報を取得するステップと、
前記通信機間距離と前記通信機情報から、前記通信機それぞれの設置座標を算出する座標算出ステップと、
を備えることを特徴とする位置計測方法。
【0103】
(付記14)
前記通信範囲情報は、前記複数の通信機それぞれの前記到達範囲もしくは前記発信範囲を示すエリア半径を含み、
前記距離算出ステップは、前記通信機の前記到達範囲もしくは前記発信範囲を、前記通信機を中心とする前記エリア半径の円とみなして、前記通信機間距離を算出することを特徴とする付記13に記載の位置計測方法。
【0104】
(付記15)
前記距離算出ステップは、前記2つの通信機それぞれの前記エリア半径、および、前記到達範囲もしくは前記発信範囲の重複面積から前記通信間距離を算出することを特徴とする付記14に記載の位置計測方法。
【0105】
(付記16)
前記距離算出ステップは、前記2つの通信機それぞれの前記到達範囲もしくは前記発信範囲の面積に、前記2つの通信機の識別情報ごとの受信回数に対する前記受信もしくは発信した地点が同一である受信回数の比率をかけることによって、前記重複面積を算出することを特徴とする付記15に記載の位置計測方法。
【0106】
(付記17)
前記複数の通信機それぞれの前記エリア半径は同一であることを特徴とする付記14ないし16のいずれかに記載の位置計測方法。
【0107】
(付記18)
前記座標算出ステップは、前記通信機間距離から余弦定理を用いて、2つの前記通信機に対する他の1つの前記通信機の相対座標を計算することを特徴とする付記13ないし17のいずれかに記載の位置計測方法。
【0108】
(付記19)
前記座標算出ステップは、前記相対座標の2つの候補の内、前記相対座標を算出する対象の前記通信機との距離が前記距離算出ステップで算出した前記通信機間距離に含まれ、かつ、座標が前記座標算出ステップで算出された前記通信機との間で、前記距離算出ステップで算出した距離と、前記座標および前記相対座標の候補から算出した距離と、の差が小さい前記候補を前記相対座標として算出することを特徴とする付記18に記載の位置計測方法。
【0109】
(付記20)
前記座標算出ステップは、前記相対座標の2つの候補の内、前記相対座標を算出する対象の前記通信機との距離が前記距離算出ステップで算出した前記通信機間距離に含まれ、かつ、座標が前記座標算出ステップで算出された前記通信機全てに対して、前記距離算出ステップで算出した距離と、前記座標および前記相対座標の候補から算出した距離との差を、前記相対座標の候補それぞれについて積算した値を比べ、値が小さい前記候補を前記相対座標として算出することを特徴とする付記19に記載の位置計測方法。
【0110】
(付記21)
前記座標算出ステップは、前記相対座標を算出する対象の前記通信機との距離が前記距離算出ステップで算出した通信機間距離に含まれず、かつ、前記相対座標の2つの候補の一方について座標から算出した距離がそれぞれの前記エリア半径の和よりも小さく、前記2つの候補の他方について座標から算出した距離がそれぞれの前記エリア半径の和より大きい場合に、前記座標から算出した距離がそれぞれの前記エリア半径の和よりも小さい候補に対して、前記座標から算出した距離を前記積算した値に加える、ことを特徴とする付記20に記載の位置計測方法。
【0111】
(付記22)
前記座標算出ステップは、前記通信機のいずれか1つを原点とし、他のいずれか1つと前記原点を通る直線を座標軸の1つとする仮想座標系を設定して、前記通信機間距離から前記通信機の前記仮想座標系における仮想座標を算出し、前記通信機情報と前記仮想座標から前記通信機の座標を算出することを特徴とする付記18ないし21のいずれかに記載の位置計測方法。
【0112】
(付記23)
前記移動体が1つの地点で前記通信機から受信した識別情報、または、前記移動体が1つの地点で発信した信号を受信した前記通信機の識別情報、を取得し、該識別情報に対応する前記座標算出ステップで算出した前記通信機の座標の重心点を算出する重心算出ステップを備えることを特徴とする付記13ないし22のいずれかに記載の位置計測方法。
【0113】
(付記24)
コンピュータに、
それぞれが所定の周期で識別情報を無線で発信する分散して配置される複数の通信機から、所定の期間、所定の領域内の複数の地点で受信した識別情報および異なる2つの識別情報を受信した地点が同一か否かを表す情報の集合、あるいは、所定の周期で無線で信号を発信する移動体が所定の期間、所定の領域内を移動しながら発信する信号を受信した、分散して配置される複数の通信機の識別情報および異なる前記通信機が受信した信号が同一の地点から発信されたか否かを表す情報の集合、である通信機ID集合を取得する収集ステップと、
前記通信機ID集合に含まれる前記識別情報ごとの受信回数、および、前記2つの識別情報の組ごとの前記識別情報の受信もしくは発信した地点が同一である受信回数、を計数した受信情報を生成する受信情報生成ステップと、
前記通信機ごとの発信の到達範囲もしくは受信可能な前記移動体の発信範囲を示す通信範囲情報を取得する範囲情報取得ステップと、
前記受信情報および前記通信範囲情報から、前記複数の通信機に含まれる2つの前記通信機の間の通信機間距離を算出する距離算出ステップと、
前記複数の通信機のうち、その位置を頂点とする三角形を構成できる3つの通信機それぞれの前記識別情報および設置座標を含む通信機情報を取得するステップと、
前記通信機間距離と前記通信機情報から、前記通信機それぞれの設置座標を算出する座標算出ステップと、
を実行させることを特徴とするプログラム。
【符号の説明】
【0114】
1 位置計測システム
2 位置計測装置
3 発信機
4 ID受信機
11 受信情報生成部
12 受信情報データベース(受信情報DB)
13 発信機間距離算出部
14 発信機情報データベース(発信機情報DB)
15 発信機位置算出部
16 位置推定部
17 仮想座標算出部
20 内部バス
21 制御部
22 主記憶部
23 外部記憶部
24 操作部
25 表示部
26 入出力部
27 送受信部
29 制御プログラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが所定の周期で識別情報を無線で発信する、または、所定の周期で無線で信号を発信する移動体から該信号を受信する、分散して配置される複数の通信機と、
前記通信機が発信する識別情報を受信する移動体、または、前記所定の周期で無線で信号を発信する移動体と、
所定の期間、所定の領域内の複数の地点で前記移動体が前記通信機から受信した前記識別情報および異なる2つの前記識別情報を受信した地点が同一か否かを表す情報の集合、あるいは、前記移動体が所定の期間、所定の領域内を移動しながら前記所定の周期で発信する信号を受信した前記通信機の識別情報および異なる前記通信機が受信した信号が同一の地点から発信されたか否かを表す情報の集合、である通信機ID集合を取得する収集手段と、
前記通信機ID集合に含まれる前記識別情報ごとの受信回数、および、前記2つの識別情報の組ごとの前記識別情報の受信もしくは発信した地点が同一である受信回数、を計数した受信情報を生成する受信情報生成手段と、
前記通信機ごとの発信の到達範囲もしくは受信可能な前記移動体の発信範囲を示す通信範囲情報を取得する範囲情報取得手段と、
前記受信情報および前記通信範囲情報から、前記複数の通信機に含まれる2つの前記通信機の間の通信機間距離を算出する距離算出手段と、
前記複数の通信機のうち、その位置を頂点とする三角形を構成できる3つの通信機それぞれの前記識別情報および設置座標を含む通信機情報を取得する手段と、
前記通信機間距離と前記通信機情報から、前記通信機それぞれの設置座標を算出する座標算出手段と、
を備えることを特徴とする位置計測システム。
【請求項2】
前記通信範囲情報は、前記複数の通信機それぞれの前記到達範囲もしくは前記発信範囲を示すエリア半径を含み、
前記距離算出手段は、前記通信機の前記到達範囲もしくは前記発信範囲を、前記通信機を中心とする前記エリア半径の円とみなして、前記通信機間距離を算出することを特徴とする請求項1に記載の位置計測システム。
【請求項3】
前記距離算出手段は、前記2つの通信機それぞれの前記エリア半径、および、前記到達範囲もしくは前記発信範囲の重複面積から前記通信間距離を算出することを特徴とする請求項2に記載の位置計測システム。
【請求項4】
前記距離算出手段は、前記2つの通信機それぞれの前記到達範囲もしくは前記発信範囲の面積に、前記2つの通信機の識別情報ごとの受信回数に対する前記受信もしくは発信した地点が同一である受信回数の比率をかけることによって、前記重複面積を算出することを特徴とする請求項3に記載の位置計測システム。
【請求項5】
前記複数の通信機それぞれの前記エリア半径は同一であることを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1項に記載の位置計測システム。
【請求項6】
前記座標算出手段は、前記通信機間距離から余弦定理を用いて、2つの前記通信機に対する他の1つの前記通信機の相対座標を計算することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の位置計測システム。
【請求項7】
前記座標算出手段は、前記通信機のいずれか1つを原点とし、他のいずれか1つと前記原点を通る直線を座標軸の1つとする仮想座標系を設定して、前記通信機間距離から前記通信機の前記仮想座標系における仮想座標を算出し、前記通信機情報と前記仮想座標から前記通信機の座標を算出することを特徴とする請求項6に記載の位置計測システム。
【請求項8】
それぞれが所定の周期で識別情報を無線で発信する分散して配置される複数の通信機から、所定の期間、所定の領域内の複数の地点で受信した識別情報および異なる2つの識別情報を受信した地点が同一か否かを表す情報の集合、あるいは、所定の周期で無線で信号を発信する移動体が所定の期間、所定の領域内を移動しながら発信する信号を受信した、分散して配置される複数の通信機の識別情報および異なる前記通信機が受信した信号が同一の地点から発信されたか否かを表す情報の集合、である通信機ID集合を取得する収集手段と、
前記通信機ID集合に含まれる前記識別情報ごとの受信回数、および、前記2つの識別情報の組ごとの前記識別情報の受信もしくは発信した地点が同一である受信回数、を計数した受信情報を生成する受信情報生成手段と、
前記通信機ごとの発信の到達範囲もしくは受信可能な前記移動体の発信範囲を示す通信範囲情報を取得する範囲情報取得手段と、
前記受信情報および前記通信範囲情報から、前記複数の通信機に含まれる2つの前記通信機の間の通信機間距離を算出する距離算出手段と、
前記複数の通信機のうち、その位置を頂点とする三角形を構成できる3つの通信機それぞれの前記識別情報および設置座標を含む通信機情報を取得する手段と、
前記通信機間距離と前記通信機情報から、前記通信機それぞれの設置座標を算出する座標算出手段と、
を備えることを特徴とする位置計測装置。
【請求項9】
それぞれが所定の周期で識別情報を無線で発信する分散して配置される複数の通信機から、所定の期間、所定の領域内の複数の地点で受信した識別情報および異なる2つの識別情報を受信した地点が同一か否かを表す情報の集合、あるいは、所定の周期で無線で信号を発信する移動体が所定の期間、所定の領域内を移動しながら発信する信号を受信した、分散して配置される複数の通信機の識別情報および異なる前記通信機が受信した信号が同一の地点から発信されたか否かを表す情報の集合、である通信機ID集合を取得する収集ステップと、
前記通信機ID集合に含まれる前記識別情報ごとの受信回数、および、前記2つの識別情報の組ごとの前記識別情報の受信もしくは発信した地点が同一である受信回数、を計数した受信情報を生成する受信情報生成ステップと、
前記通信機ごとの発信の到達範囲もしくは受信可能な前記移動体の発信範囲を示す通信範囲情報を取得する範囲情報取得ステップと、
前記受信情報および前記通信範囲情報から、前記複数の通信機に含まれる2つの前記通信機の間の通信機間距離を算出する距離算出ステップと、
前記複数の通信機のうち、その位置を頂点とする三角形を構成できる3つの通信機それぞれの前記識別情報および設置座標を含む通信機情報を取得するステップと、
前記通信機間距離と前記通信機情報から、前記通信機それぞれの設置座標を算出する座標算出ステップと、
を備えることを特徴とする位置計測方法。
【請求項10】
コンピュータに、
それぞれが所定の周期で識別情報を無線で発信する分散して配置される複数の通信機から、所定の期間、所定の領域内の複数の地点で受信した識別情報および異なる2つの識別情報を受信した地点が同一か否かを表す情報の集合、あるいは、所定の周期で無線で信号を発信する移動体が所定の期間、所定の領域内を移動しながら発信する信号を受信した、分散して配置される複数の通信機の識別情報および異なる前記通信機が受信した信号が同一の地点から発信されたか否かを表す情報の集合、である通信機ID集合を取得する収集ステップと、
前記通信機ID集合に含まれる前記識別情報ごとの受信回数、および、前記2つの識別情報の組ごとの前記識別情報の受信もしくは発信した地点が同一である受信回数、を計数した受信情報を生成する受信情報生成ステップと、
前記通信機ごとの発信の到達範囲もしくは受信可能な前記移動体の発信範囲を示す通信範囲情報を取得する範囲情報取得ステップと、
前記受信情報および前記通信範囲情報から、前記複数の通信機に含まれる2つの前記通信機の間の通信機間距離を算出する距離算出ステップと、
前記複数の通信機のうち、その位置を頂点とする三角形を構成できる3つの通信機それぞれの前記識別情報および設置座標を含む通信機情報を取得するステップと、
前記通信機間距離と前記通信機情報から、前記通信機それぞれの設置座標を算出する座標算出ステップと、
を実行させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−194023(P2012−194023A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57581(P2011−57581)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】