説明

位置設定装置、位置設定方法、位置設定プログラムおよび記録媒体

【課題】移動体の現在位置の設定を精度よくおこなう。
【解決手段】位置設定装置100は、算出部101、検知部102、取得部103、設定部104によって構成される。算出部101は、移動体の移動状況を計測した計測データに基づいて、移動体の推測位置を算出する。検知部102は、移動体に発生する所定の振動を検知する。取得部103は、所定の振動が発生する地点(以下、「振動発生地点」という)の位置情報を取得する。設定部104は、推測位置と、検知部102の検知結果と、振動発生地点の位置情報と、に基づいて、移動体の現在位置を設定する。設定部104は、たとえば、検知部102によって所定の振動が検知されない場合には、推測位置を移動体の現在位置として設定し、検知部102によって所定の振動が検知された場合には、推測位置周辺に存在する振動発生地点の位置を移動体の現在位置として設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の現在位置を設定する位置設定装置、位置設定方法、位置設定プログラムおよび記録媒体に関する。ただし、本発明の利用は、上述した位置設定装置、位置設定方法、位置設定プログラムおよび記録媒体に限られない。
【背景技術】
【0002】
従来、車両などに搭載されるナビゲーション装置では、車両の現在位置を設定するため、GPS衛星から受信したGPS情報から絶対位置を、ジャイロセンサの出力値や車速パルスから相対位置をそれぞれ算出する。また、加速度センサから加速度情報を取得し、車両の走行状態を求める。そして、算出した絶対位置、相対位置、車両の走行状態と、地図データとを比較して現在位置を特定している。
【0003】
さらに、センサ誤差や地図データに含まれる道路誤差などに基づく誤差を補正するため、ビーコン発信機やETCアンテナからのデータを受信した際に、地図データに記録されているビーコン発信機やETCアンテナの位置データから、現在位置の誤差を補正する技術が提案されている(たとえば、下記特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−247838号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術によれば、現在位置の誤差の補正基準となるビーコン発信機やETCアンテナの数に限りがあるという問題点が一例として挙げられる。ビーコン発信機やETCアンテナは、高速道路や主要な幹線道路では設置が進んでいるが、一般道路では、設置されていない箇所も多い。このため、限られた区域でしか現在位置の補正をおこなうことができないという問題点が一例として挙げられる。
【0006】
また、上述した従来技術によれば、現在位置の補正をおこなうためには、車両にビーコン受信機やETC端末を搭載する必要があるという問題点が一例として挙げられる。たとえば、運転頻度が低いドライバーの車両など、ビーコン受信機やETC端末を搭載していない車両も数多く存在する。このように、ビーコン発信機やETCアンテナの位置データによる現在位置の補正をおこなうことができる状況は、ごく限られてしまうという問題点が一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、請求項1の発明にかかる位置設定装置は、移動体の移動状況を計測した計測データに基づいて、当該移動体の推測位置を算出する算出手段と、前記移動体に発生する所定の振動を検知する検知手段と、前記所定の振動が発生する地点(以下、「振動発生地点」という)の位置情報を取得する取得手段と、前記推測位置と、前記検知手段の検知結果と、前記振動発生地点の位置情報と、に基づいて、前記移動体の現在位置を設定する設定手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、請求項4の発明にかかる位置設定方法は、移動体の移動状況を計測した計測データに基づいて、当該移動体の推測位置を算出する算出工程と、前記移動体に発生する所定の振動を検知する検知工程と、前記所定の振動が発生する地点(以下、「振動発生地点」という)の位置情報を取得する取得工程と、前記推測位置と、前記検知工程の検知結果と、前記振動発生地点の位置情報と、に基づいて、前記移動体の現在位置を設定する設定工程と、を含んだことを特徴とする。
【0009】
また、請求項5の発明にかかる位置設定プログラムは、請求項4に記載の位置設定方法をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0010】
また、請求項6の発明にかかる記録媒体は、請求項5に記載の位置設定プログラムを記録したコンピュータに読み取り可能なことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる位置設定装置、位置設定方法、位置設定プログラムおよび記録媒体の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0012】
(実施の形態)
はじめに、実施の形態にかかる位置設定装置100の機能的構成について説明する。図1は、位置設定装置の機能的構成を示すブロック図である。位置設定装置100は、算出部101、検知部102、取得部103、設定部104によって構成される。
【0013】
算出部101は、移動体の移動状況を計測した計測データに基づいて、当該移動体の推測位置を算出する。移動状況とは、たとえば、移動体の移動速度や加速度、角速度、ブレーキやアクセルの操作状況などである。算出部101は、これらの移動状況を計測した計測データを用いて移動体の現在位置を推測した推測位置を算出する。また算出部101による推測位置の算出には、GPS衛星から受信するGPS情報を用いてもよい。
【0014】
検知部102は、移動体に発生する所定の振動を検知する。所定の振動とは、たとえば、特定の地物の上を通過した際に移動体に発生する振動であり、たとえば、踏切や居眠り防止用の路面パターン(路面上の凹凸)など、路面上に設けられた凹凸を通過した際に発生する振動である。
【0015】
取得部103は、所定の振動が発生する地点(以下、「振動発生地点」という)の位置情報を取得する。取得部103は、たとえば、路面上に凹凸の変化がある地点の位置情報を取得する。路面上に凹凸の変化がある地点とは、たとえば、踏切や居眠り防止用の路面パターン、速度超過防止用の段差、未舗装道路などである。なお、路面パターンは、速度超過防止用など居眠り防止以外の目的で設けられたものであってもよい。
【0016】
設定部104は、算出部101によって算出された推測位置と、検知部102の検知結果と、取得部103によって取得された振動発生地点の位置情報と、に基づいて、移動体の現在位置を設定する。設定部104は、たとえば、検知部102によって所定の振動が検知されない場合には、推測位置を移動体の現在位置として設定する。また、検知部102によって所定の振動が検知された場合には、推測位置周辺に存在する振動発生地点の位置を移動体の現在位置として設定する。
【0017】
つづいて、位置設定装置100による位置設定処理について説明する。図2は、位置設定装置による位置設定処理の手順を示すフローチャートである。図2のフローチャートにおいて、位置設定装置100は、まず、算出部101によって、移動体の推測位置を算出する(ステップS201)。
【0018】
つぎに、位置設定装置100は、取得部103によって、振動発生地点の位置情報を取得する(ステップS202)。このとき取得する位置情報は、たとえば、推測位置から所定範囲内に位置する振動発生地点の位置情報であってもよい。つづいて、位置設定装置100は、検知部102によって、所定の振動が検知されたか否かを判断する(ステップS203)。
【0019】
所定の振動が検知された場合は(ステップS203:Yes)、ステップS201で算出された推測位置の周辺に存在する振動発生地点の位置を移動体の現在位置として設定して(ステップS204)、本フローチャートによる処理を終了する。一方、所定の振動が検知されない場合は(ステップS203:No)、推測位置を移動体の現在位置として設定して(ステップS205)、本フローチャートによる処理を終了する。
【0020】
以上説明したように、位置設定装置100によれば、推測位置と、検知部102の検知結果と、振動発生地点の位置情報と、に基づいて、移動体の現在位置を設定する。これにより、推測位置の計測誤差を補正して、移動体の現在位置をより精度よく設定することができる。
【0021】
たとえば、所定の振動が検知されない場合は推測位置に、所定の振動が検知された場合は推測位置周辺に存在する振動発生地点の位置に、それぞれ現在位置を設定する。このように、振動発生地点の位置を用いて移動体の現在位置を設定することにより、現在位置の設定に移動体の移動状況を反映させることができる。
【実施例】
【0022】
つぎに、上述した実施の形態にかかる位置設定装置100の実施例について説明する。以下の実施例においては、位置設定装置100を、車両に搭載されたナビゲーション装置300に適用した場合について説明する。
【0023】
(ナビゲーション装置300のハードウェア構成)
つぎに、ナビゲーション装置300のハードウェア構成について説明する。図3は、ナビゲーション装置のハードウェア構成を示すブロック図である。図3において、ナビゲーション装置300は、CPU301と、ROM302と、RAM(メモリ)303と、磁気ディスクドライブ304と、磁気ディスク305と、光ディスクドライブ306と、光ディスク307と、音声I/F(インターフェース)308と、マイク309と、スピーカ310と、入力デバイス311と、映像I/F312と、カメラ313と、ディスプレイ314と、通信I/F315と、GPSユニット316と、各種センサ317と、外部接続用I/F318とを備えている。また、各構成部301〜318はバス320によってそれぞれ接続されている。
【0024】
まず、CPU301は、ナビゲーション装置300の全体の制御を司る。ROM302は、ブートプログラム、通信プログラム、データベース作成プログラム、データ解析プログラムなどのプログラムを記録している。RAM303は、CPU301のワークエリアとして使用される。
【0025】
磁気ディスクドライブ304は、CPU301の制御に従って磁気ディスク305に対するデータの読み取り/書き込みを制御する。磁気ディスク305は、磁気ディスクドライブ304の制御で書き込まれたデータを記録する。磁気ディスク305としては、たとえば、HD(ハードディスク)やFD(フレキシブルディスク)を用いることができる。
【0026】
光ディスクドライブ306は、CPU301の制御に従って光ディスク307に対するデータの読み取り/書き込みを制御する。光ディスク307は、光ディスクドライブ306の制御に従ってデータが読み出される着脱自在な記録媒体である。光ディスク307は、書き込み可能な記録媒体を利用することもできる。また、この着脱可能な記録媒体として、光ディスク307のほか、MO、メモリカードなどであってもよい。
【0027】
磁気ディスク305または光ディスク307に記録される情報の一例として、経路探索・経路誘導などに用いる地図データが挙げられる。地図データは、建物、河川、地表面などの地物(フィーチャ)を表す背景データと、道路の形状を表す道路形状データとを有しており、ディスプレイ314の表示画面において2次元または3次元に描画される。ナビゲーション装置300が経路誘導中の場合は、地図データと後述するGPSユニット316によって取得された自車の現在地点とが重ねて表示されることとなる。
【0028】
また、地図データには、走行中の車両が通過する際に特徴のある振動が発生する地点(以下、「振動発生地点」という)の位置情報が含まれている。特徴のある振動が発生する地点とは、たとえば、居眠り防止や速度超過防止のために路面に設けられた凹凸(路面パターン)、進入禁止区域を区別するための段差、踏切などである。また、未舗装道路を振動発生地点としてもよい。ナビゲーション装置300は、後述するように、これらの振動発生地点の位置情報を用いて、GPS情報などから算出される推測位置を補正することによって車両の現在位置を設定し、経路誘導などをおこなっている。
【0029】
なお、地図データは、後述する通信I/F315を介して地図データ管理サーバなどからダウンロードしたり、地図データを記録した記録媒体を利用してナビゲーション装置300内部に記録する。
【0030】
音声I/F308は、音声入力用のマイク309および音声出力用のスピーカ310に接続される。マイク309に受音された音声は、音声I/F308内でA/D変換される。また、スピーカ310からは音声が出力される。なお、マイク309から入力された音声は、音声データとして磁気ディスク305あるいは光ディスク307に記録可能である。
【0031】
入力デバイス311は、文字、数値、各種指示などの入力のための複数のキーを備えたリモコン、キーボード、マウス、タッチパネルなどが挙げられる。さらに、入力デバイス311は、デジタルカメラや携帯電話端末などの他の情報処理端末を接続し、データの入出力をおこなうことができる。
【0032】
映像I/F312は、映像入力用のカメラ313および映像出力用のディスプレイ314と接続される。映像I/F312は、具体的には、たとえば、ディスプレイ314全体の制御をおこなうグラフィックコントローラと、即時表示可能な画像情報を一時的に記録するVRAM(Video RAM)などのバッファメモリと、グラフィックコントローラから出力される画像データに基づいて、ディスプレイ314を表示制御する制御ICなどによって構成される。
【0033】
カメラ313は、車両内外の映像を撮像し、画像データとして出力する。カメラ313で撮像された画像は、画像データとして磁気ディスク305あるいは光ディスク307に記録可能である。ディスプレイ314には、アイコン、カーソル、メニュー、ウインドウ、あるいは文字や画像などの各種データが表示される。このディスプレイ314は、たとえば、CRT、TFT液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイなどを採用することができる。
【0034】
通信I/F315は、無線を介してインターネットなどの通信網に接続され、この通信網とCPU301とのインターフェースとして機能する。通信網には、LAN、WAN、公衆回線網や携帯電話網などがある。
【0035】
GPSユニット316は、GPS衛星からの電波を受信し、車両の現在地点(ナビゲーション装置300の現在地点)を示す情報を出力する。GPSユニット316の出力情報は、後述する各種センサ317の出力値とともに、CPU301による車両の現在地点の算出に際して利用される。現在地点を示す情報は、たとえば緯度・経度、高度などの、地図データ上の1点を特定する情報である。
【0036】
各種センサ317は、車速センサや加速度センサ、角速度センサなどの、車両の位置や挙動を判断することが可能な情報を出力する。各種センサ317の出力値は、CPU301による現在地点の算出や、速度や方位の変化量の測定に用いられる。
【0037】
また、各種センサ317は、車両に発生する振動を検知する。振動の検知は、振動検出用のセンサを設けてもよいし、加速度センサから出力される情報から車両に発生する振動を検知してもよい。
【0038】
外部接続用I/F318は、オーディオ装置や車内空調装置など、外部の機器と接続するためのインターフェース類である。外部接続用I/F318は、たとえば、専用の接続ケーブルのポート、赤外線通信用ポートなどによって構成される。
【0039】
また、実施の形態にかかる位置設定装置100の構成のうち、算出部101および設定部104はCPU301によって、検知部102は各種センサ317によって、取得部103は磁気ディスクドライブ304、磁気ディスク305、光ディスクドライブ306、光ディスク307、通信I/F315によって、それぞれの機能を実現する。
【0040】
(ナビゲーション装置300による位置設定処理)
つづいて、ナビゲーション装置300による位置設定処理について説明する。ナビゲーション装置300は、GPSユニット316や各種センサ317から出力される各種の情報に基づいて、CPU301によって車両の現在位置を算出する。しかし、これらの計測データから得られた現在位置(推測位置)は、GPS衛星の軌道誤差やGPS情報伝達時における上空での遅延誤差、センサ感度誤差などによって、実際の現在位置との間には誤差が生じてしまう。
【0041】
このため、ナビゲーション装置300は、地図データに記録された振動発生地点の位置情報と、各種センサ317のうち加速度センサなど振動を検知可能なセンサからの出力値を用いて推測位置を補正して、車両の現在位置を設定する。これにより、車両の現在位置をより正確に設定し、経路誘導の精度を向上させることができる。
【0042】
図4は、ナビゲーション装置による位置設定処理の手順を示すフローチャートである。ナビゲーション装置300のCPU301は、まず、車両が走行を開始するまで待機する(ステップS401:Noのループ)。車両が走行を開始すると(ステップS401:Yes)、CPU301は、GPSユニット316で受信したGPS情報を取得する(ステップS402)とともに、各種センサ317の出力値を取得する(ステップS403)。なお、このとき取得するデータは、GPS情報または各種センサ317の出力値のうちいずれであってもよい。
【0043】
つぎに、ステップS402およびステップS403で取得した情報を用いて、車両の推測位置を算出する(ステップS404)。つづいて、CPU301は、各種センサ317の出力値から、特定振動を検知したか否かを判断する(ステップS405)。ここで、特定振動とは、前述した振動発生地点を通行した際に発生する振動である。すなわち、路上に設けられた凹凸などの上を通行した車両に発生する特徴的な振動であり、通常の走行中に発生する振動とは区別できる振動である。
【0044】
たとえば、踏切などでは、道路と交差している線路のレール数分の段差(一般にはくぼみ)があり、段差を通行する際には車両に振動が発生する。また、居眠り防止用や速度超過防止に設けられた路面上の凹凸(路面パターン)などの上を通行する際にも規則的な振動が発生する。この他、たとえば、未舗装道路を走行する際に発生する振動を特定振動としてもよい。
【0045】
特定振動を検知したか否かの判断は、特定振動に特有の振動パターンを検知したか否かを判断してもよいし、所定強度(通常の走行時に発生する振動)以上の振動を検知した場合に、特定振動が発生したと判断することとしてもよい。
【0046】
特定振動を検知した場合は(ステップS405:Yes)、地図データを参照して、推測位置の周辺に振動発生地点があるか否かを判断する(ステップS406)。前述のように、ナビゲーション装置300が記録する地図データには、振動発生地点の位置情報が含まれている。CPU301は、地図データのうち、ステップS404で算出した推測位置の周辺(たとえば、推測位置を中心として半径20mの円内など)の範囲を参照して、振動発生地点があるか否かを判断する。
【0047】
なお、たとえば、振動発生地点の属性(たとえば、踏切や路面パターンなど)と、その上を走行する際に発生する振動のパターンを記憶しておき、ステップS405で検知した特定振動のパターンと合致する属性の振動発生地点があるか否かを判断することとしてもよい。これにより、狭い範囲に複数の振動発生地点が存在する場合でも、車両が走行した振動発生地点がどれかを特定できる可能性が高くなる。
【0048】
推測位置の周辺に振動発生地点がある場合は(ステップS406:Yes)、振動発生地点の位置を用いて推測位置を補正する(ステップS407)。推測位置を補正するとは、たとえば、推測位置から最も距離が短い振動発生地点の位置を、振動発生時における車両の現在位置とする。また、たとえば、推測位置と振動発生地点の位置との中間点を、振動発生時における車両の現在位置としてもよい。
【0049】
また、推測位置の周辺に複数の振動発生地点がある場合は、推測位置から最も距離が短い振動発生地点の位置を基準として推測位置を補正する他、車両の進行方向や走行速度や、複数の振動発生地点の位置関係などから、いずれの振動発生地点の位置を基準とするかを選択してもよい。
【0050】
そして、CPU301は、ディスプレイ314に車両の位置を表示する(ステップS408)。このとき、車両の位置は、ステップS407で推測位置の補正がおこなわれた場合には補正後の位置に、補正がおこなわれなかった場合にはステップS404で算出した推測位置に、それぞれ表示する。車両の位置の表示は、たとえば、ディスプレイ314上に表示された地図データ上に、所定の車両位置マークを表示させることによっておこなう。また、推測位置の周辺に複数の振動発生地点がある場合は、補正の基準とした振動発生地点以外の振動発生地点の位置を合わせて表示することとしてもよい。また、補正後の車両の位置は、ディスプレイ314に表示されるのみならず、経路誘導処理や経路探索処理にも反映される。
【0051】
なお、ステップS405で特定振動を検知しない場合は(ステップS405:No)、ステップS408に移行する。すなわち、車両の現在位置は推測位置にあるとして、現在位置の表示や経路誘導をおこなう。また、ステップS406で推測位置の周辺に振動発生地点がない場合も(ステップS406:No)、ステップS408に移行する。すなわち、補正の基準となる振動発生地点がないため、車両の現在位置は推測位置にあるものとみなして、現在位置の表示や経路誘導をおこなう。
【0052】
車両が走行を終了するまでは(ステップS409:No)、ステップS402に戻り、以降の処理を繰り返す。そして、車両が走行を終了した場合は(ステップS409:Yes)、本フローチャートによる処理を終了する。
【0053】
図5および図6は、車両の位置設定処理を説明するための説明図である。図5において、地図データMP上には、S字カーブを有する道路R1、一方通行などによって進入が制限されている道路R2、道路R1と交差する線路L、高速道路Hが示されている。
【0054】
道路R1のS字カーブ部分には、スピードの出し過ぎや急カーブへの注意を喚起する路面パターンd1が設けられている。また、道路R2には、進入禁止道路であることを示す路面パターンd2が設けられている。また、道路R1と線路Lとが交差する地点には、踏切d3が設けられている。さらに、高速道路Hには、居眠り防止用に路面パターンd4が設けられている。路面パターンd1,d2,d4および踏切d3は、ともに振動発生地点である。
【0055】
ナビゲーション装置300が記録する地図データには、これら振動発生地点の位置情報が含まれており、特定の振動を検知した場合には、推測位置の補正をおこなう。たとえば、図6に示すように、車両の推測位置がP1にある時に特定振動を検知した場合、推測位置との距離が最も短い振動発生地点である踏切d3の位置を車両の現在位置とする(図6中P2)。
【0056】
また、たとえば、図6に示すように、車両の推測位置がP3にある時に特定振動を検知した場合、推測位置との距離が最も短い振動発生地点である路面パターンd4の位置を車両の現在位置とする(図6中P4)。なお、路面パターンのように、車両の振動が一定区間継続する場合は、振動が発生し始めた時点における車両の現在位置を、路面パターンの始点に合わせることとする。
【0057】
以上説明したように、ナビゲーション装置300によれば、GPS情報などによって算出した推測位置と、各種センサ317による振動の検知結果と、地図データに含まれる振動発生地点の位置情報と、に基づいて、車両の現在位置を設定する。これにより、推測位置の計測誤差を補正して、車両の現在位置をより精度よく設定することができる。
【0058】
たとえば、特定振動が検知されない場合は推測位置に、特定振動が検知された場合は推測位置周辺に存在する振動発生地点の位置に、それぞれ現在位置を設定する。このように、振動発生地点の位置を用いて車両の現在位置を設定することにより、現在位置の設定に車両の移動状況を反映させることができる。
【0059】
また、ビーコン受信機やETC端末などを用いることなく、特定振動が発生する位置を推測位置の補正の基準位置とするため、ユーザに経済的な負担をかけることなく、多くの地点において推測位置の補正をおこなうことができる。
【0060】
なお、本実施の形態で説明した位置設定方法は、あらかじめ用意されたプログラムをパーソナル・コンピュータやワークステーションなどのコンピュータで実行することにより実現することができる。このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク、CD−ROM、MO、DVDなどのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行される。またこのプログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することが可能な伝送媒体であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】位置設定装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図2】位置設定装置による位置設定処理の手順を示すフローチャートである。
【図3】ナビゲーション装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図4】ナビゲーション装置による位置設定処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】車両の位置設定処理を説明するための説明図である。
【図6】車両の位置設定処理を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0062】
100 位置設定装置
101 算出部
102 検知部
103 取得部
104 設定部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の移動状況を計測した計測データに基づいて、当該移動体の推測位置を算出する算出手段と、
前記移動体に発生する所定の振動を検知する検知手段と、
前記所定の振動が発生する地点(以下、「振動発生地点」という)の位置情報を取得する取得手段と、
前記推測位置と、前記検知手段の検知結果と、前記振動発生地点の位置情報と、に基づいて、前記移動体の現在位置を設定する設定手段と、
を備えることを特徴とする位置設定装置。
【請求項2】
前記設定手段は、
前記検知手段によって所定の振動が検知されない場合には、前記推測位置を前記移動体の現在位置として設定し、
前記検知手段によって所定の振動が検知された場合には、前記推測位置周辺に存在する振動発生地点の位置を前記移動体の現在位置として設定することを特徴とする請求項1に記載の位置設定装置。
【請求項3】
前記取得手段は、路面上に凹凸の変化がある地点の位置情報を取得することを特徴とする請求項1または2に記載の位置設定装置。
【請求項4】
移動体の移動状況を計測した計測データに基づいて、当該移動体の推測位置を算出する算出工程と、
前記移動体に発生する所定の振動を検知する検知工程と、
前記所定の振動が発生する地点(以下、「振動発生地点」という)の位置情報を取得する取得工程と、
前記推測位置と、前記検知工程の検知結果と、前記振動発生地点の位置情報と、に基づいて、前記移動体の現在位置を設定する設定工程と、
を含んだことを特徴とする位置設定方法。
【請求項5】
請求項4に記載の位置設定方法をコンピュータに実行させることを特徴とする位置設定プログラム。
【請求項6】
請求項5に記載の位置設定プログラムを記録したコンピュータに読み取り可能な記録媒体。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−263881(P2007−263881A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−92037(P2006−92037)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】