説明

位置認証システム

【課題】移動体の位置情報の正当性を保証するためシステムを提供する。
【解決手段】位置認証システムは、複数の路側機11と位置情報管理センタ12を備えており、路側機11は、識別情報発信部15の機能により、当該路側機を識別するための識別情報を発信する。車両13は、近接する路側機11から受信した識別情報を自身の位置情報とともに移動体情報として位置情報管理センタ12に送信する。位置情報管理センタ13は、移動体情報受信部17の機能により車両13から移動体情報を受信する。また、位置情報管理センタ13は、記憶部16に複数の路側機の設置位置の情報を記憶している。そして、位置情報管理センタ13は、設置位置特定部18の機能により、上記近接する路側機11の設置位置を特定する。当該路側機の設置位置を特定したら、位置情報管理センタ12は、位置情報判定部19の機能により、位置情報が正当か否かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の位置を認証する位置認証システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、移動体(自動車、船舶、航空機、人物など)の位置を特定する手法としてGPS(Global Positioning System;全地球測位システム)が広く利用されている。GPSは、GPS信号を送信する3つ以上の人工衛星(GPS衛星)と移動体との見掛け上の距離を計測することによって移動体の平面上の位置を特定する技術である(4つ以上のGPS衛星を利用すれば、高さ方向の位置も測定することができる)。
【0003】
一方、GPSのような、位置を特定するための技術を利用して、複数の移動体の位置情報を管理・提供するサービスなどが考えられている。そのようなサービスは、例えば、車両の渋滞情報、バスの運行状況などを知らせるサービスなどである。
【0004】
そのようなサービスの処理の流れの一例を説明すると、まず、移動体(車両)の位置を管理するためのセンタが、車両にその位置情報を送信することを要求する。車両は、センタの要求に応じて、自身の位置情報をセンタに送信する。センタは、車両から送信された位置情報を受信し、管理したり、サービスの利用者に提供したりする。
【0005】
しかし、上記手順(従来の技術)では、車両から受信した位置情報の正当性を保証することができないため、車両が自身の位置情報を正確にセンタに送信しなければ、正確な位置情報を管理・提供することができない。そのため、そのような位置情報(移動体の位置情報)の正当性を保証するための技術(位置情報が正当か否かを判断するための技術)が望まれている。
【0006】
なお、GPSをデジタルカメラに利用した従来技術としては、特許文献1〜特許文献3がある。また、GPSを利用した位置情報の管理方法などに関する従来技術としては、特許文献4〜6がある。
【特許文献1】特開2001−33537号公報
【特許文献2】特開2005−45486号公報
【特許文献3】特開2005−286687号公報
【特許文献4】特開平11−55741号公報
【特許文献5】特開2003−223449号公報
【特許文献6】特開2006−287327号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、移動体の位置情報の正当性を保証するためシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用する。
【0009】
本発明に係る位置認証システムは、複数の固定体と位置情報管理センタとを備える、移動体の位置認証システムであって、固定体は、当該固定体を識別するための識別情報を、当該固定体の設置位置を基準とする所定の範囲に発信する識別情報発信手段を有しており
、移動体は、近接する固定体から受信した識別情報を自身の位置情報とともに移動体情報として位置情報管理センタに送信するものであり、位置情報管理センタは、前記複数の固定体それぞれの設置位置の情報を記憶する記憶手段と、移動体から、前記移動体情報を受信する移動体情報受信手段と、前記移動体情報受信手段で受信した識別情報に基づき前記記憶手段を参照することによって、前記近接する固定体の設置位置を特定する設置位置特定手段と、前記移動体情報受信手段で受信した移動体の位置情報を、前記設置位置特定手段で特定した固定体の設置位置の情報と比較することによって、当該移動体の位置情報が正当か否かを判定する位置情報判定手段と、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る位置認証システムでは、位置情報管理センタが、移動体の位置情報を、設置位置特定手段で特定した固定体の設置位置の情報と比較することによって、当該移動体の位置情報が正当か否かを判定する。固定体の設置位置は、移動体情報受信手段で受信した識別情報に基づき前記記憶手段を参照することによって特定される。固定体は、当該固定体の設置位置を基準とする所定の範囲にのみ識別情報を発信しており、移動体は、当該範囲内に入らなければ固定体から識別情報を受信することができない。そのため、移動体が識別情報を受信できたこと、当該移動体の位置情報が当該識別情報の発信範囲内に収まっていることなどは、当該移動体の位置情報が正当であることの証拠になる。これにより、移動体の位置情報の正当性を保証することができる。
【0011】
前記識別情報は、固定体自身の設置位置の情報も含み、前記設置位置特定手段は、前記移動体情報受信手段で受信した識別情報に基づいて特定される設置位置の情報と、当該識別情報に含まれる設置位置の情報とを比較することによって、当該識別情報自体が正当か否かを判定することが好ましい。移動体情報に含まれる固定体の識別情報が正当である場合、移動体の位置情報が正当である可能性は高い。すなわち、当該識別情報が正当であるという結果は、当該移動体の位置情報が正当であることの証拠になる。これにより、移動体の位置情報の正当性を保証することができる。
【0012】
前記識別情報は、時刻情報も含み、前記設置位置特定手段は、前記移動体情報受信手段で受信した識別情報に含まれる時刻情報と、前記位置情報管理センタが前記移動体情報を受信した時の受信時刻とを比較することによって、当該識別情報自体が正当か否かを判定し、当該固定体の識別情報が正当である場合に、当該固定体の設置位置を特定することが好ましい。これにより、過去に送信された識別情報を正当でないと判定することができる。
【0013】
前記識別情報は暗号化された情報であり、前記位置情報管理センタは、当該暗号化された識別情報を復号する復号手段を有することが好ましい。識別情報が暗号化されていなければ、移動体などは、その内容(識別情報の中身)を把握することができてしまう。そのため、移動体などは、当該識別情報を流用したり、当該識別情報の中身を書き換えたり(改ざん)することによって位置情報管理センタを欺くことができてしまう。識別情報が暗号化されていることにより、移動体などは、識別情報の中身を把握することができないため、当該識別情報が流用・改ざんされる可能性を低減することができ、ひいては、移動体の位置情報の正当性を保証することができる。
【0014】
前記識別情報は、前記位置情報管理センタの公開鍵によって暗号化された情報であり、前記復号手段は、当該暗号化された識別情報を、前記位置情報管理センタの秘密鍵によって復号することが好ましい。これにより、位置情報管理センタは、復号するための鍵の管理が容易になる。
【0015】
前記位置情報は、GPS情報であることが好ましい。GPSは、移動体などの対象物の位置を特定するために広く使われている技術であるため、本発明に係る位置認証システム
を容易に構築することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る位置認証システムでは、移動体の位置情報の正当性を保証することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。
【0018】
<システム概要>
図1は、本発明の実施形態に係る位置認証システムの全体構成を示す図である。この位置認証システムは、移動体の位置を認証するためのシステムであり、例えば、車両の渋滞情報を提供するサービスや、バスの運行状況を提供するサービスなどに用いることができる。本実施形態では、移動体が車両の場合について説明する。なお、この位置認証システムは、車両に限らず、GPS電波受信機内蔵の携帯電話など、自身の位置情報を算出(受信)・送信できる機器であればどのようなものの位置認証にも適用することができる。
【0019】
位置認証システムは、図1に示すように、複数の路側機11(固定体)と、位置情報管理センタ12とによって構成される。
【0020】
各々の路側機11は、道路付近又は道路上の予め決められた位置に設置されている。そして、近接する車両のみが受信できるよう、比較的狭い範囲(例えば、十数m〜数十m)に自身の識別情報を発信している。路側機11は、信号機、電柱、道路、建物のようなインフラに設けられていてもよいし、独立に設置された機器であってもよい。なお、識別情報は、当該路側機を識別するための情報である。本実施形態における識別情報は、当該路側機の識別番号である。
【0021】
まず、本実施形態における位置認証システムの大まかな処理の流れについて説明する。
【0022】
位置情報管理センタ12が、車両13に対し位置情報を要求する(ステップS1)。そして、車両13は、近接する路側機11から識別情報を受信する(ステップS2)。
【0023】
次に、車両13は、GPS衛星から発信されている電波を受信し、自身の位置情報を割り出す(ステップS3)。そして、その位置情報をステップS2で受信した識別情報とともに移動体情報として位置情報管理センタ12に送信する(ステップS4)。
【0024】
そして、位置情報管理センタ12は、受信した移動体情報に含まれる識別情報に基づき路側機11の設置位置を特定する。そして、路側機11の設置位置と車両の位置とが近い場合に、当該位置情報が正当であると判定する。
【0025】
車両13の位置情報が正当である場合には、当該システムを利用したサービスの登録者などに、当該車両の位置情報を含めた情報を提供すればよいし、当該位置情報が不当である場合には、当該情報は管理・提供する情報内に含めなければよい。
【0026】
路側機11と車両13との間の情報通信は、無線通信により行われる。なお、通信方式は、本実施形態のように、車両13が路側機11から情報を受信するのみである場合には、片方向通信を用いればよい。しかし、車両13が路側機11に識別情報を要求してもよく、その場合には、双方向通信を用いればよい。本実施形態における路側機11は、識別情報を常時発信している場合を想定しているが、路側機11と車両13との間の情報通信に双方向通信を用いる場合、路側機11は、車両13からの要求があったときのみ識別情
報を発信するようにしてもよい。
【0027】
車両13と位置情報管理センタ12との間の情報通信は、例えば、車両13と位置情報管理センタ12の間に基地局を設け、車両13と当該基地局との間では無線通信を行い、当該基地局と位置情報管理センタ12との間では有線(又は無線)通信を行えばよい。なお、通信方式は、本実施形態のように、位置情報管理センタ12が車両13に当該車両の位置情報を要求するような場合には、双方向通信を用いればよい。しかし、車両13が定期的(又は路側機11から識別情報を受信するたび)に情報を送信し、位置情報管理センタは当該情報を受信、判定してもよく、その場合には、片方向通信を用いればよい。
【0028】
<装置構成>
次に、路側機11及び位置情報管理センタ12の機能構成について説明する。
【0029】
<路側機>
路側機11は、図1に示す識別情報発信部15を有している。
【0030】
識別情報発信部15は、識別情報を発信する機能である。具体的には、路側機11が、識別情報発信部15の機能により、識別情報を当該路側機の設置位置を基準とする所定の範囲に発信する。
【0031】
なお、路側機11が識別情報を発信する範囲は、どのような範囲でもよく、路側機ごとに異ならせてもよい。例えば、多くの路側機が設置できないような場所(例えば、山道)などでは、設置する路側機の数を少なくし、識別情報を発信する範囲を広くすればよい。
【0032】
なお、路側機11は、目的に応じた場所であればどこに設置してもよい。例えば、道路に沿って等間隔に設置してもよいし、車両の交通量が多い場所ではその間隔を狭くして車両が何処にいても識別情報を受信できるようにしてもよいし、車両の交通量が少ない場所ではその間隔を広くしてもよい。また、路側機11は、識別情報を発信する範囲が他の路側機の識別情報を発信する範囲に重ならないように設置されていることが好ましい。これにより、車両13は同時に複数の路側機から識別情報を受信することが無くなるため、通信回数や処理負荷を減らすことができる。さらに、路側機11の設置数を減らすことができるため、コストを減らすことができる。
【0033】
とは言うものの、路側機11を数多く設置すると、路側機間で識別情報を発信する範囲が重なってしまうことが避けられない場合も考えられる(例えば、図2に示すように、路側機11が信号機21に設けられている場合、交差点では互いの信号機の距離が近いため、当該範囲(信号機21から距離L1の範囲)が重なることがある。)。その場合には、各路側機(信号機21)が、識別情報とは別に信号機21自身の設置位置の情報を発信していればよい。それにより、車両13は、複数の信号機21から識別情報が受信可能な位置にいたとしても、当該複数の信号機21から設置位置の情報を受信し、(車両13から)最も近い信号機を選択することにより、識別情報の受信対象とする信号機21を決定することができる。また、車両13が、複数の信号機21から設置位置の情報と識別情報を受信した場合でも、(車両13から)最も近い信号機21を選択することにより、位置情報管理センタ12に送信する識別情報を決定することができる。すなわち、路側機11が設置位置の情報を発信することにより、車両13は路側機11(又はその識別情報)を1つ決定することができるのである。
【0034】
なお、路側機の設置位置の情報は、GPS衛星(図1のGPS衛星14)から発信されている電波を受信し、算出された情報であってもよいし、GPSに限らず、どのような具体的技術によって得られる情報であってもよい。
【0035】
<位置情報管理センタ>
位置情報管理センタ12は、図1に示す記憶部16、移動体情報受信部17、設置位置特定部18、位置情報判定部19を有している。本実施形態では、これらの機能要素は、夫々、コンピュータの演算処理装置がソフトウエア(プログラム)を実行し、必要に応じてハードディスク、メモリ、ディスプレイなどのハードウエア資源を制御することで実現される。ただし、これらの機能要素を専用のチップで構成しても構わない。
【0036】
記憶部16は、複数の路側機それぞれの設置位置の情報を記憶する記憶装置である。この記憶装置としては、不揮発性メモリやハードディスクなど、どのような具体的技術が適用されてもよい。
【0037】
図3に、路側機11がn個ある場合の記憶部16に記憶されている情報の一例を示す。図3の例では、各行に1つずつ、n個の路側機11の設置位置の情報が記憶されている。そして、その設置位置の情報が記憶されている行番号がその路側機の識別番号に対応している。例えば、3行目に記憶されている設置位置の情報は、識別番号が「3」である路側機11の設置位置を表したものである。
【0038】
移動体情報受信部17は、車両13から移動体情報を受信する機能である。
【0039】
設置位置特定部18は、車両13が受信した識別情報の発信源である路側機11の設置位置を特定する機能である。特定方法は、具体的には、移動体情報受信部17の機能により受信した識別情報に基づいて記憶部16を参照することにより特定する(例えば、路側機の識別情報が「3」という識別番号である場合、記憶部16の3行目に記憶されている設置位置の情報を当該路側機の設置位置とする(図3参照))。
【0040】
位置情報判定部19は、車両13の位置情報が正当か否かを判定する機能である。具体的には、移動体情報受信部17で受信した車両13の位置情報を設置位置特定部18で特定された路側機11の設置位置の情報と比較することによって判定する。例えば、当該車両13と当該路側機11の間の距離が所定の範囲(例えば、当該路側機11が識別情報を発信している範囲)内に収まっている場合に、正当であると判定すればよい(なお、所定の範囲はユーザ(管理者)が予め設定しておくものである)。
【0041】
<位置認証機能>
図4のシーケンス図に沿って、位置認証システムの機能及び処理の流れを詳しく説明する。
【0042】
なお、本実施形態では、図5に示す5つの路側機51a〜51e、車両13、位置情報管理センタ12がある場合について説明する。図5の例では、路側機51a〜51eそれぞれが、識別情報発信部15の機能により、当該路側機の設置位置を基準として距離L1の範囲内に識別情報を発信しており、車両13は、当該範囲内に属しているときのみ識別情報が受信可能となる(但し、受信できる識別情報は、その範囲の基準位置に設置されている路側機の識別情報である)。
【0043】
まず、位置情報管理センタ12が、車両13に自身(車両13)の位置情報を要求する(ステップS11)。
【0044】
車両13は、位置情報管理センタ12からの要求を受信すると(ステップS12)、自身の周辺の路側機から識別情報を受信する(ステップS13)。なお、図5の例では、車両13は、路側機51cの設置位置から距離L1内に属しているため、路側機51cから
識別情報(路側機51cの識別番号)を受信する。車両13が当該識別情報の発信範囲内にいない場合には、車両13は、位置情報管理センタ12に識別情報を受信できない旨を送信してもよいし、識別情報が受信できるまで、後の処理を待機してもよい。一方、位置情報管理センタ12は、車両13からの応答がない場合、車両13から応答があるまで要求を繰り返してもよいし(所定の時間(例えば、5分)おきに要求するなど)、当該車両から位置情報を受信することをあきらめてもよい。
【0045】
次に、車両13は、GPS衛星から発信されている電波を受信し、現在の自身の位置情報を算出する(ステップS14)。
【0046】
そして、車両13は、当該識別情報を自身の位置情報とともに移動体情報として位置情報管理センタ12に送信する(ステップS15)。図5の例では、路側機51cの識別情報と、当該識別情報を受信した時の車両13の位置情報とが位置情報管理センタ12に送信される。
【0047】
次に、位置情報管理センタ12が、移動体情報受信部17の機能により、車両13から移動体情報を受信する(ステップS16)。
【0048】
そして、位置情報管理センタ12が、設置位置特定部18の機能により、路側機の設置位置を特定する(ステップS17)。図5の例では、路側機51cの設置位置が特定される。
【0049】
次に、位置情報管理センタ12が、位置情報判定部19の機能により、ステップS16で受信した車両13の位置情報が正当か否かを判定する(ステップS18)。図5の例では、車両13と路側機51cの間の距離が距離L1以下の場合に「当該車両の位置情報は正当である」と判定する。なお、判定するための閾値は識別情報の発信範囲(距離L1)でなくてもよい、例えば、距離L1より小さい距離L2という閾値を予め設定しておいてもよいし、当該閾値を移動体情報に基づいて決定してもよい(例えば、識別情報(識別番号)に応じて閾値を異ならせるなど)。
【0050】
車両13の位置情報が正当である場合、位置情報管理センタ12は当該位置情報を承諾し、当該システムを利用したサービスの登録者などに、当該車両の位置情報を含めた情報を提供すればよい。車両13の位置情報が不当である場合には、当該車両から正当な位置情報を受信することをあきらめてもよいし、正当な位置情報が送信されるまで当該車両に対し位置情報を要求し続けてもよい。
【0051】
以上述べたように、本実施形態では、位置情報管理センタ12が、車両13の位置情報を、近接する路側機(路側機51c)の設置位置の情報と比較することにより、車両13の位置情報が正当か否かを判定する。路側機は当該路側機の設置位置を基準とする所定の範囲にのみ識別情報を発信しており、車両は当該範囲内に入らなければ当該識別情報を受信することができない。そのため、車両13は、識別情報を受信できたこと、当該識別情報と自身(車両13)の位置関係が正当であること(車両の位置情報が当該範囲内に収まっているなど)、を自身(車両13)の位置情報が正当であることの証拠とすることができる。これにより、車両13の位置情報の正当性を保証することができる。
【0052】
<変形例1>
変形例1では、識別情報が、路側機自身の設置位置の情報も含んでいる。位置情報管理センタは、車両から受信した識別情報に路側機自身の設置位置の情報が含まれていれば、当該設置位置の情報を記憶部16に記憶されている当該路側機の設置位置の情報と比較することにより、当該識別情報が正当か否かを判定することができる。当該識別情報が正当
である場合、車両の位置情報が正当である可能性が高いため、識別情報が正当であるという結果は、当該車両の位置情報が正当であることの証拠になる。
【0053】
<装置構成>
変形例1の位置認証システムの全体構成は、図1のものと同様であるため説明を省略する。
【0054】
ただし、変形例1の設置位置特定部18は、移動体情報受信部17で受信した識別情報が正当か否かを判定する。具体的には、移動体情報受信部17で受信した識別情報(に含まれる識別番号)に基づいて特定される設置位置の情報と、当該識別情報に含まれる設置位置の情報とを比較することによって判定する。
【0055】
<位置認証機能>
図6のシーケンス図に沿って、変形例1の位置認証システムの機能及び処理の流れを説明する。
【0056】
ステップS101〜S107の処理は、夫々、図4のステップS11〜S17の処理と同様であるため説明を省略する。
【0057】
ステップS107の次に、位置情報管理センタが、設置位置特定部18の機能により、車両から受信した識別情報が正当か否かを判定する(ステップS108)。図5の例では、車両13から受信した識別情報に含まれる設置位置の情報が、路側機51cの識別情報に含まれる設置位置の情報であるか否かを判定する。なお、本実施形態では、ステップS107で特定された設置位置の情報と当該識別情報に含まれる設置位置の情報とが同一である場合に、「当該識別情報は正当である」と判定される。
【0058】
識別情報が正当である場合には、次の処理に進めばよい。識別情報が不当である場合には、当該車両の位置情報が不当であるとし、当該車両から正当な位置情報(及び識別情報)を受信することをあきらめてもよいし、正当な位置情報(及び識別情報)が送信されるまで当該車両に対し位置情報を要求し続けてもよい。
【0059】
そして、位置情報管理センタが、位置情報判定部19の機能により、ステップS106で受信した車両の位置情報が正当か否かを判定する(ステップS109)。なお、ステップS109の処理は、ステップS106で受信した車両の位置情報を、設置位置特定部18で特定された設置位置の情報(記憶部16に記憶されている設置位置の情報)と比較することにより判定してもよいし、ステップS106で受信した識別情報に含まれる設置位置の情報と比較することにより判定してもよい。
【0060】
ステップS109の判定後の処理は、図4のステップS19の判定後の処理と同様であるため、説明を省略する。
【0061】
以上述べたように、変形例1では、識別情報に路側機自身の設置位置の情報も含まれることにより、当該識別情報が正当か否かを判定することができる。識別情報が正当であれば、車両の位置情報も正当である可能性は高くなる。つまり、識別情報が正当か否かを判定することにより、車両の位置情報の正当性を保証することができる。
【0062】
<変形例2>
変形例2では、識別情報が、時刻情報も含んでいる。識別情報に含まれる時刻情報は、識別情報の有効性を判定するために利用される。
【0063】
例えば、当該識別情報を発信した時刻を時刻情報としてもよいし、当該識別情報の有効期限を時刻情報としてもよい。発信時刻を時刻情報とする場合、位置情報管理センタは、時刻情報が当該識別情報の受信時刻(位置情報管理センタが移動体情報を受信した時の時刻)から所定の時間内の時刻であるか否かによって、当該識別情報が正当であるか否かを判定すればよい。有効期限を時刻情報とする場合、位置情報管理センタは、当該識別情報の受信時刻が有効期限内か否かによって、当該識別情報が正当であるか否かを判定すればよい。なお、本実施形態では、識別情報内の時刻情報と位置情報管理センタの受信時刻の差が10分以内である場合に、「当該識別情報は正当である」と判定される。
【0064】
識別情報に時刻情報が含まれていなければ、位置情報管理センタは識別情報がいつの情報なのか判断することができない。そのため、車両が、過去に受信した識別情報と当該識別情報を受信した時の当該車両の位置情報とを位置情報管理センタに送信した場合に、位置情報管理センタは、車両から受信した位置情報が過去の位置情報であるにもかかわらず、当該位置情報を正当な位置情報であると誤判定してしまう。識別情報に時刻情報が含まれていることにより、当該識別情報が過去に受信したものか否かを判断することができる。識別情報が過去に受信されたものではないという事実は、識別情報が正当であることの証拠にもなる。
【0065】
<装置構成>
変形例2の位置認証システムの全体構成は、図1のものと同様であるため説明を省略する。
【0066】
ただし、変形例2の設置位置特定部18は、車両から受信した識別情報が正当か否かを判定し、当該識別情報が正当である場合にのみ、当該路側機の設置位置を特定する。識別情報が正当か否かの判定は、具体的には、(上述したように)識別情報に含まれる時刻情報と位置情報管理センタでの受信時刻とを比較することによって判定する。
【0067】
<位置認証機能>
図7のシーケンス図に沿って、変形例2の位置認証システムの機能及び処理の流れを説明する。
【0068】
ステップS201〜S206の処理は、夫々、図4のステップS11〜S16の処理と同様であるため説明を省略する。
【0069】
ステップS206の次に、位置情報管理センタが、設置位置特定部18の機能により、車両から受信した識別情報が正当か否かを判定する(ステップS207)。具体的には、ステップS206で受信した識別情報に含まれる時刻情報と位置情報管理センタでの受信時刻を比較することにより、当該識別情報が正当か否かを判定する。
【0070】
識別情報が正当である場合には、次の処理に進めばよい。識別情報が不当である場合には、当該車両の位置情報が不当であるとし、当該車両から正当な位置情報(及び識別情報)を受信することをあきらめてもよいし、正当な位置情報(及び識別情報)が送信されるまで当該車両に対し位置情報を要求し続けてもよい。
【0071】
そして、位置情報管理センタが、設置位置特定部18の機能により、当該路側機の設置位置を特定する(ステップS208)。
【0072】
次に、位置情報管理センタが、位置情報判定部19の機能により、ステップS206で受信した車両の位置情報が正当か否かを判定する(ステップS209)。
【0073】
ステップS209の判定後の処理は、図4のステップS19の判定後の処理と同様であるため、説明を省略する。
【0074】
以上述べたように、変形例2では、識別情報に時刻情報が含まれることにより、当該識別情報が正当か否かを判定することができる。識別情報が正当であれば、車両の位置情報も正当である可能性は高くなる。つまり、識別情報が正当か否かを判定することにより、車両の位置情報の正当性を保証することができる。
【0075】
<変形例3>
変形例3では、識別情報が暗号化されている。識別情報が暗号化されていれば、識別情報の内容が漏洩したり、改ざんされたりする可能性を低減することができ、位置認証システムの信頼性が向上する。なお、識別情報は、ブロック暗号やストリーム暗号などの共通鍵暗号によって暗号化されていてもよいし、位置情報管理センタの公開鍵(RSA暗号や楕円曲線暗号など)によって暗号化されていてもよい。位置情報管理センタの公開鍵によって暗号化されていれば、管理者以外は(位置情報管理センタの秘密鍵以外では)復号することができないため、識別情報が漏洩したり、改ざんされたりする可能性はより低くなる。更に、位置情報管理センタの公開鍵によって暗号化することにより、位置情報管理センタは復号するための鍵の管理が容易になる。
【0076】
<装置構成>
図8は、変形例3の位置認証システムの全体構成を示す図である。変形例3における位置情報管理センタ12は、復号部81を更に備えている。なお、他の機能要素は、図1のものと同様であるため説明を省略する。
【0077】
復号部81は、暗号化された識別情報を復号する機能である。
【0078】
<位置認証機能>
図9のシーケンス図に沿って、変形例3の位置認証システムの機能及び処理の流れを説明する。
【0079】
ステップS301〜S306の処理は、夫々、図4のステップS11〜S16の処理と同様であるため説明を省略する。ただし、識別情報は暗号化されているため、(当該識別情報を受信した)車両はその内容を理解することができない。また、識別情報の内容を改ざんすることも困難である。
【0080】
ステップS306の次に、位置情報管理センタが、復号部81の機能により、暗号化されている識別情報を復号する(ステップS307)。ただし、位置情報管理センタは当該識別情報を復号できない場合がある(例えば、車両から受信した識別情報が無理に改ざんされている場合など)。その場合、当該識別情報(及び位置情報)は不当であるとし(なお、当該識別情報が復号できることは、当該識別情報が改ざんされてないことの証拠となる)、当該車両から正当な位置情報(及び識別情報)を受信することをあきらめてもよいし、正当な位置情報(及び識別情報)が送信されるまで当該車両に対し位置情報を要求し続けてもよい。
【0081】
以後の工程(ステップS308及びステップS309の処理)は、図4のステップS17及びステップS18の処理と同様であるため、説明を省略する。
【0082】
以上述べたように、変形例3では、路側機が暗号化されている識別情報を発信し、位置情報管理センタが当該識別情報を復号する。これにより、位置情報管理センタ以外は識別情報の中身を知ることができず、改ざんすることもできない(例えば、車両自ら識別情報
を作成することができない(無理に改ざんし、位置情報管理センタへ送信したとしても、不当な識別情報であると判定される))。そのため、識別情報の正当性を保証することができ、ひいては車両の位置情報の正当性を保証することができる。
【0083】
なお、上記複数の実施例の手法は、可能な限り互いに組み合わせて用いてもよい。
【0084】
なお、本実施形態では、路側機が、発信する情報を予め記憶しているのか、取得しているのかなどについて詳しく説明していないが、どちらでもよい(例えば、設置位置の情報や時刻情報は、GPS受信機を備えることにより得ることができる。また、時刻情報は、路側機に時計の機能を備えることにより取得することもできるし、外部の時計から取得してもよい。)。識別番号、設置位置の情報、時刻情報などを得る(又は記憶する)ことができればどのような手法を用いてもよい。
【0085】
なお、変形例1では、移動体情報受信部17で受信した識別情報に基づいて特定される設置位置の情報と、当該識別情報に含まれる設置位置の情報とが一致する場合に、「当該識別情報は正当である」と判定されるが、それらの設置位置の情報は完全に一致していなくてもよい。位置情報管理センタの管理者などが、予め閾値を設定しておき、設置位置の情報のズレ量が当該閾値未満であるならば「当該識別情報は正当である」と判定してもよい。
【0086】
なお、変形例3では、路側機から暗号化された識別情報が発信されているが、路側機は、暗号化された識別情報を記憶しておかなくてもよい。路側機に暗号化処理を行う機能を更に備えてもよい。
【0087】
なお、変形例3では、識別情報が復号できない場合に、当該識別情報が不当であるとしているが、当該判定処理の機能は、復号部81に備えられていてもよいし、設置位置特定部18に備えていてもよい。また、位置情報管理センタが、当該判定処理を行う他の構成要素を備えていてもよい。
【0088】
なお、変形例1及び変形例2において、識別情報が正当か否かの判定処理は設置位置特定部18の機能により行われているが、位置情報管理センタは、当該判定処理を行う他の構成要素を備えていてもよい。
【0089】
なお、変形例1〜3では、路側機の設置位置の情報と車両の位置情報を比較しなくてもよい。路側機の識別情報が正当であれば、車両の位置情報も正当である可能性が高い。そのため、路側機の識別情報が正当か否かの判定結果を、車両の位置情報が正当か否かという結果にしてもよい。
【0090】
なお、路側機の設置位置の情報や、車両などの位置情報は、どのような技術によって得られる情報であってもよい。但し、それらの情報を、GPSのような車両などの位置を特定するために広く利用されている技術を用いて得ることにより、本実施形態の位置認証システムを容易に構築することができる。
【0091】
なお、図4,6,7,9に示す処理の流れは、夫々、可能な限り処理の順序を入れ替えてもよい。
【0092】
例えば、本実施形態では、車両が、位置情報管理センタからの要求を受信した後に路側機から識別情報を受信しているが、車両は、当該要求を受信する前に識別情報を受信してもよい(図4のステップS13の処理をステップS12の処理より前に行うなど)。具体的には、車両は、走行中に受信した最新の識別情報をメモリなどに記憶させておき、位置
情報管理センタからの要求に応じて、当該記憶されている識別情報を自身の位置情報とともに位置情報管理センタに送信すればよい。
【0093】
また、例えば、本実施形態では、車両が、路側機から識別情報を受信した後にGPS衛星から電波を受信し、車両自身の位置情報を算出しているが、車両は、位置情報管理センタからの要求を受信した後に(路側機から識別情報を受信する前に)、自身の位置情報を算出してもよい(図4のステップS14の処理をステップS13の処理より前に行うなど)。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】図1は、位置認証システムの全体構成を示す図である。
【図2】図2は、路側機の選択方法の一例を示す図である。
【図3】図3は、記憶部16に記憶されている情報の一例を示す図である。
【図4】図4は、位置認証システムの処理の流れを示すシーケンス図である。
【図5】図5は、路側機、車両、及び、位置情報管理センタの設置様態の一例を示す図である。
【図6】図6は、変形例1における位置認証システムの処理の流れを示すシーケンス図である。
【図7】図7は、変形例2における位置認証システムの処理の流れを示すシーケンス図である。
【図8】図8は、変形例3における位置認証システムの全体構成を示す図である。
【図9】図9は、変形例3における位置認証システムの処理の流れを示すシーケンス図である。
【符号の説明】
【0095】
11 路側機
12 位置情報管理センタ
13 車両
14 GPS衛星
15 識別情報発信部
16 記憶部
17 移動体情報受信部
18 設置位置特定部
19 位置情報判定部
21 信号機
51a〜51e 路側機
81 復号部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の固定体と位置情報管理センタとを備える、移動体の位置認証システムであって、
固定体は、
当該固定体を識別するための識別情報を、当該固定体の設置位置を基準とする所定の範囲に発信する識別情報発信手段
を有しており、
移動体は、
近接する固定体から受信した識別情報を自身の位置情報とともに移動体情報として位置情報管理センタに送信するものであり、
位置情報管理センタは、
前記複数の固定体それぞれの設置位置の情報を記憶する記憶手段と、
移動体から、前記移動体情報を受信する移動体情報受信手段と、
前記移動体情報受信手段で受信した識別情報に基づき前記記憶手段を参照することによって、前記近接する固定体の設置位置を特定する設置位置特定手段と、
前記移動体情報受信手段で受信した移動体の位置情報を、前記設置位置特定手段で特定した固定体の設置位置の情報と比較することによって、当該移動体の位置情報が正当か否かを判定する位置情報判定手段と、
を有することを特徴とする位置認証システム。
【請求項2】
前記識別情報は、固定体自身の設置位置の情報も含み、
前記設置位置特定手段は、前記移動体情報受信手段で受信した識別情報に基づいて特定される設置位置の情報と、当該識別情報に含まれる設置位置の情報とを比較することによって、当該識別情報自体が正当か否かを判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の位置認証システム。
【請求項3】
前記識別情報は、時刻情報も含み、
前記設置位置特定手段は、前記移動体情報受信手段で受信した識別情報に含まれる時刻情報と、前記位置情報管理センタが前記移動体情報を受信した時の受信時刻とを比較することによって、当該識別情報自体が正当か否かを判定し、当該固定体の識別情報が正当である場合に、当該固定体の設置位置を特定する
ことを特徴とする請求項1〜請求項2のいずれか1項に記載の位置認証システム。
【請求項4】
前記識別情報は暗号化された情報であり、
前記位置情報管理センタは、当該暗号化された識別情報を復号する復号手段を有する
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の位置認証システム。
【請求項5】
前記識別情報は、前記位置情報管理センタの公開鍵によって暗号化された情報であり、
前記復号手段は、当該暗号化された識別情報を、前記位置情報管理センタの秘密鍵によって復号する
ことを特徴とする請求項4に記載の位置認証システム。
【請求項6】
前記位置情報は、GPS情報である
ことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の位置認証システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−38586(P2009−38586A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−200992(P2007−200992)
【出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【出願人】(502087460)株式会社トヨタIT開発センター (232)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】