説明

位置調整装置及びPTPシートの製造装置

【課題】密封用フィルムの破断を生じさせないように密封用フィルムを延伸させ、密封用フィルムに付された図柄を容器フィルムの所定位置に高い精度で合わせるように、密封用フィルムの位置調整を行う。
【解決手段】延伸用センサ51にて密封用フィルムのマークが検出されると、位置検出エンコーダ53から位置情報Aが出力される(d)。この位置情報Aと上流側目標位置Qとの差分から密封用フィルムの延伸率Gを算出する(e,j)。一方、延伸後センサ52にて密封用フィルムのマークが検出されると、位置検出エンコーダ53から位置情報Bが出力される(f)。この位置情報Bと下流側目標位置Pとの差分からフィードバック量を算出し(g,h)、上流側の目標位置Qを補正することによって(i)、延伸率Gを補正する(j)。そして延伸率Gで延伸サーボモータ64を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装用フィルムに形成されたポケット部に錠剤が収容され、前記ポケット部を塞ぐようにカバーフィルムがシール状態で取着されてなるPTPシートを製造する技術に係り、特にカバーフィルムを取着する際に位置調整を行う位置調整装置及び当該位置調整装置を備えたPTPシートの製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、PTPシートは、錠剤等が充填されるポケット部が形成された樹脂製の包装用フィルムと、その包装用フィルムにポケット部の開口側を密封するように前記包装用フィルムに取着されるアルミニウム製のカバーフィルムとから構成されている。
【0003】
このようなカバーフィルムには文字情報やコード情報などの図柄が付される場合があり、例えばシート単位で図柄が適切な位置にくるように、包装用フィルムに対するカバーフィルムの取着に際し、カバーフィルムの位置を調整する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
かかる文献に記載された技術においては、径の異なる一対のローラを備えており、通常時は相対的に径の大きな下流側のローラを駆動させてカバーフィルムを搬送する。そして、包装用フィルムに対するカバーフィルムのずれが一定以上になると、選択的に係合、解放が可能なクラッチを介して相対的に径の小さな上流側のローラを駆動させる。これにより、カバーフィルムが部分的に延伸されてカバーフィルムの位置が調整されるため、カバーフィルムのずれが大きくなりすぎてしまうことを防止できる。
【特許文献1】特開昭60−82558号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記技術では、カバーフィルムのずれが一定以上になってはじめてカバーフィルムの延伸を行うため、カバーフィルムの位置調整の精度が十分であるとはいえない。また、クラッチを介した技術であり、カバーフィルムのある部分は延伸され別の部分は延伸されないという具合に、カバーフィルムが部分的に延伸されることになる。しかも、ローラの径の相違に基づいて延伸させるものであり、一定割合でしか延伸させることができない。そのため、カバーフィルムが延伸時に破断してしまうおそれもあった。
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、カバーフィルムの破断を生じさせないようにカバーフィルムを延伸させ、カバーフィルムに付された図柄を包装用フィルムの所定位置に高い精度で合わせるように、カバーフィルムの位置調整を行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記目的等を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果等を付記する。
【0008】
手段1.ポケット部に錠剤の収容された包装用フィルムに対し前記ポケット部を塞ぐようにカバーフィルムをシール状態で取着するためのシール手段による前記カバーフィルムの取着位置を、当該カバーフィルムに付された図柄が前記包装用フィルムの所定位置にくるように調整する位置調整装置であって、
前記カバーフィルムを延伸させるための一対のローラと、
前記包装用フィルムに対するカバーフィルムのずれの大きさを検出する検出手段と、
前記ローラのうちの少なくとも一方の回転速度を調整し、前記カバーフィルムを延伸させることが可能な延伸制御手段とを備え、
前記延伸制御手段は、前記検出手段にて検出されたずれに応じて、前記カバーフィルムを延伸させるべく、前記ローラの回転速度を調整するよう構成されていることを特徴とする位置調整装置。
【0009】
手段1に記載の位置調整装置は、シール手段によるカバーフィルムの取着位置を、当該カバーフィルムに付された図柄が包装用フィルムの所定位置にくるように調整する。
【0010】
ここで特に、検出手段が、包装用フィルムに対するカバーフィルムのずれの大きさを検出し、延伸制御手段によって、検出されたずれに応じて、カバーフィルムを延伸させるべく、ローラの回転速度が調整される。
【0011】
本発明の技術思想は、カバーフィルムのずれを量として把握すること、そして、ずれに応じてカバーフィルムを延伸させることにある。つまり、ずれが大きくなればカバーフィルムの延伸量は大きくなり、ずれが小さくなればカバーフィルムの延伸量は小さくなるのである。
【0012】
このようにすれば、従来の構成と異なり、カバーフィルムの延伸量が急激に変化することがないため、カバーフィルムの破断を生じさせないようにカバーフィルムを延伸させることができる。また、ずれが発生するとそれに応じてカバーフィルムが延伸されるため、カバーフィルムに付された図柄を包装用フィルムの所定位置に高い精度で合わせることができる。
【0013】
なお、カバーフィルムのずれは、搬送されるカバーフィルムの位置を取得することによって検出することができる。カバーフィルムの位置は、カバーフィルムに図柄が付されることから、当該付される図柄との関係において、移動経路における進行度合として捉えることができる。以下の手段でも同様である。
【0014】
また、カバーフィルムの位置の取得は、上述した一対のローラの上流側で行うようにしてもよいし、下流側で行うようにしてもよい。もっとも、ローラによってカバーフィルムが延伸されたときに、当該延伸によってカバーフィルムの位置がどの程度変化したかは、上流側のカバーフィルムの進行度合に即座に反映される。なぜなら、カバーフィルムが延伸されると、上流側のカバーフィルムの搬送が即座に遅れることになるためである。そのため、連続してカバーフィルムのずれを検出することを考えると、ローラの上流側においてカバーフィルムの位置を取得することが望ましい。したがって、「前記検出手段は、前記包装用フィルムに対するカバーフィルムのずれの大きさを、前記ローラの上流側のカバーフィルムの位置に基づき検出すること」としてもよい。
【0015】
ただし、下流側でカバーフィルムの位置を取得すれば、シール手段により近いところでカバーフィルムのずれを検出することができるため、精度を上げるという点において有利である。そこで、次に示すような構成を採用することが考えられる。
【0016】
手段2.ポケット部に錠剤の収容された包装用フィルムに対し前記ポケット部を塞ぐようにカバーフィルムをシール状態で取着するためのシール手段による前記カバーフィルムの取着位置を、当該カバーフィルムに付された図柄が前記包装用フィルムの適切な位置にくるように調整する位置調整装置であって、
前記カバーフィルムを延伸させるための一対のローラと、
前記包装用フィルムに対するカバーフィルムのずれの大きさを、前記ローラの上流側のカバーフィルムの位置に基づき第1のずれとして検出すると共に、前記ローラの下流側のカバーフィルムの位置に基づき第2のずれとして検出する検出手段と、
前記ローラのうちの少なくとも一方の回転速度を調整し、前記カバーフィルムを延伸させることが可能な延伸制御手段とを備え、
前記延伸制御手段は、前記検出手段にて検出された前記第1のずれに応じて前記カバーフィルムを延伸させるべく前記ローラの回転速度を調整するよう構成されると共に、前記第2のずれに応じて前記ローラの回転速度を補正するよう構成されていることを特徴とする位置調整装置。
【0017】
手段2に記載の位置調整装置では、検出手段が、包装用フィルムに対するカバーフィルムのずれの大きさを、ローラの上流側のカバーフィルムの位置に基づき第1のずれとして検出すると共に、ローラの下流側のカバーフィルムの位置に基づき第2のずれとして検出する。そして、延伸制御手段によって、第1のずれに応じてカバーフィルムを延伸させるべくローラの回転速度が調整されると共に、第2のずれに応じてローラの回転速度が補正される。
【0018】
つまり、上流側においてカバーフィルムのずれ(第1のずれ)を検出し、この第1のずれを無くすべくカバーフィルムを延伸されるのであるが、このカバーフィルムの延伸制御にも、例えば包装用フィルム側の伸びや縮み、あるいはカバーフィルムの延伸後の戻りなど、種々の外乱が作用する可能性が残る。そこで、延伸後にも、すなわち下流側のカバーフィルムのずれ(第2のずれ)を検出して、この第2のずれに基づいて延伸制御へのフィードバックを行うのである。
【0019】
このようにすれば、カバーフィルムの延伸制御の基準となる第1のずれが上流側のカバーフィルムの位置に基づいて取得されるため、延伸制御によるカバーフィルムの位置変化が即座に把握でき、カバーフィルムのずれへの迅速な対応が可能になる。しかも、下流側のカバーフィルムの位置に基づいて取得した第2のずれによって延伸制御へのフィードバックが行われるため、カバーフィルムに付された図柄を包装用フィルムの所定位置に高い精度で合わせることができる。しかも、上述の構成と同様、カバーフィルムの延伸量が急激に変化することがないため、カバーフィルムの破断を生じさせないようにカバーフィルムを延伸させることができる。
【0020】
手段3.手段1又は2に記載の位置調整装置において、
前記検出手段は、前記カバーフィルムの位置と、予め決定される前記カバーフィルムの目標位置との差分として、前記包装用フィルムに対する前記カバーフィルムのずれの大きさを検出することを特徴とする位置調整装置。
【0021】
手段3によれば、検出手段が、カバーフィルムの位置と予め決定されるカバーフィルムの目標位置との差分として、包装用フィルムに対するカバーフィルムのずれの大きさを検出する。あるタイミングにおいてカバーフィルムがどの位置にあれば、その後、包装用フィルムに対してずれが生じないかが分かる。そこで、このカバーフィルムの位置を目標位置としておき、目標位置との差分としてずれの大きさを検出する。このようにすれば、カバーフィルムの位置を取得することによって、簡単に包装用フィルムに対するカバーフィルムのずれの大きさを検出することができる。
【0022】
手段4.手段3に記載の位置調整装置において、
前記検出手段は、前記カバーフィルムに付されるマークを検出するマーク検出手段と、前記マーク検出手段にて前記マークが検出されると、前記包装用フィルムの位置情報を出力する位置情報出力手段とを有しており、前記位置情報出力手段からの位置情報として前記カバーフィルムの位置を検出することを特徴とする位置調整装置。
【0023】
手段4によれば、検出手段は、マーク検出手段及び位置情報出力手段を有している。マーク検出手段は、カバーフィルムに例えば所定間隔毎に付されるマークを検出し、マークが検出されたタイミングで、位置情報出力手段が、包装用フィルムの位置情報を出力する。これにより、検出手段は、位置情報出力手段からの位置情報としてカバーフィルムの位置を検出する。
【0024】
カバーフィルムは延伸されるため、カバーフィルムの位置を直接的に検出しようとした場合、特にローラの上流側と下流側とでカバーフィルムの位置を検出する場合には、複雑な機構が必要となってくる。そこで、手段4では、延伸されない包装用フィルムに着目し、カバーフィルムに付されるマークの検出タイミングにおける包装用フィルムの位置情報を利用する。つまり、カバーフィルムの位置を包装用フィルムの位置情報として捉えるのである。上述したカバーフィルムの目標位置も包装用フィルムの位置情報に置き換えることができるため、包装用フィルムの位置情報を利用して、包装用フィルムに対するカバーフィルムのずれの大きさを検出することができる。このようにすれば、カバーフィルムの位置のずれの大きさを、簡単な構成で検出できることになる。
【0025】
手段5.手段4に記載の位置調整装置において、
前記シール手段は、前記包装用フィルムに対し前記カバーフィルムを取着するための取着ローラを有しており、
前記位置情報出力手段は、前記取着ローラの回転位置に基づき、前記包装用フィルムの位置情報を出力するよう構成されていることを特徴とする位置調整装置。
【0026】
上述した位置情報出力手段は、例えば手段5に示すように、シール手段の取着ローラの回転位置に基づいて、包装用フィルムの位置情報を出力することが考えられる。具体的には、包装用フィルム側の取着ローラにはポケット部に対応する凹部が設けられていることを前提として、1シート分(例えばポケット部2つ分)に対応させて回転角度あるいは回転角度に基づく回転量などを出力するようにする。このようにすれば、包装用フィルムの位置情報を簡単に出力することができる。
【0027】
手段6.手段1乃至5のいずれかに記載の位置調整装置において、
前記一対のローラは、前記カバーフィルムを下流側へ繰り出す繰出ローラ及び、前記繰出ローラの上流側に位置し、前記繰出ローラとの間でフィルムを延伸させることが可能な延伸ローラであり、
前記延伸制御手段は、前記繰出ローラの回転速度に応じて前記延伸ローラの回転速度を調整可能に構成されていることを特徴とする位置調整装置。
【0028】
手段6によれば、位置調整装置が、繰出ローラ及び延伸ローラを備えている。繰出ローラはカバーフィルムを下流側へ繰り出し、延伸ローラは、繰出ローラの上流側に位置し、繰出ローラとの間でフィルムを延伸させることが可能である。そして、延伸制御手段は、繰出ローラの回転速度に応じて延伸ローラの回転速度を調整可能となっている。これは別の表現を用いて「前記延伸制御手段は、前記延伸ローラの回転速度を調整することにより、前記繰出ローラと前記延伸ローラとの回転速度の比率を調整可能に構成されていること」としてもよい。このようにすれば、繰出ローラの回転速度を可変にすることができ、延伸ローラとは独立した駆動系によって繰出ローラを制御することができる。
【0029】
手段7.手段6に記載の位置調整装置において、
前記繰出ローラの下流側及び前記延伸ローラの上流側にそれぞれ配設され、前記カバーフィルムに対し張力を及ぼすテンションローラと、
前記テンションローラを一定間隔で支持し、前記繰出ローラの下流側及び前記延伸ローラの上流側において反対方向に作用する張力の関係により摺動可能な摺動部と、
前記摺動部が略一定位置に留まるように、前記繰出ローラの回転速度を調整する繰出制御手段とを備えていることを特徴とする位置調整装置。
【0030】
手段7では、テンションローラが、繰出ローラの下流側及び延伸ローラの上流側にそれぞれ配設され、カバーフィルムに対し張力を及ぼす。また、摺動部は、テンションローラを一定間隔で支持し、繰出ローラの下流側及び延伸ローラの上流側において反対方向に作用する張力の関係により摺動可能となっている。そして、繰出制御手段によって、摺動部が略一定位置に留まるように、繰出ローラの回転速度が調整される。
【0031】
手段7によれば、下流側及び上流側において反対方向に作用する張力の関係により摺動する摺動部を略一定位置に制御するため、カバーフィルムに対し一定の張力が作用し、カバーフィルムにしわが生じることを防止できる。しかも、摺動部がテンションローラを一定間隔で支持するため、摺動部の摺動があってもカバーフィルムの移動経路の長さに変化を生じさせることがなく、上述した検出手段によるカバーフィルムの位置検出に影響を及ぼすことがない。
【0032】
手段8.ポケット部に錠剤の収容された包装用フィルムに対し前記ポケット部を塞ぐようにカバーフィルムをシール状態で取着するためのシール手段による前記カバーフィルムの取着位置を、当該カバーフィルムに付された図柄が前記包装用フィルムの適切な位置にくるように調整する位置調整装置であって、
前記カバーフィルムを下流側へ繰り出す繰出ローラと、
前記繰出ローラを駆動する繰出モータと、
前記繰出モータを制御して前記繰出ローラの回転速度を調整可能な繰出制御手段と、
前記繰出ローラの上流側に位置し、前記繰出ローラとの間でフィルムを延伸させることが可能な延伸ローラと、
前記延伸ローラを駆動する延伸モータと、
前記延伸モータを制御して前記延伸ローラの回転速度を調整可能な延伸制御手段と、
前記包装用フィルムに対するカバーフィルムのずれの大きさを、前記延伸ローラの上流側のカバーフィルムの位置に基づき第1のずれとして検出すると共に、前記繰出ローラの下流側のカバーフィルムの位置に基づき第2のずれとして検出する検出手段とを備え、
前記検出手段は、前記カバーフィルムに付されるマークを検出するマーク検出手段と、前記マーク検出手段にて前記マークが検出されると、前記包装用フィルムの位置情報を出力する位置情報出力手段とを有しており、前記位置情報出力手段からの位置情報として前記カバーフィルムの位置を検出し、予め決定される前記カバーフィルムの目標位置との差分として前記カバーフィルムのずれの大きさを検出するよう構成されており、
前記延伸制御手段は、前記繰出制御手段にて制御される前記繰出ローラの回転速度に応じて前記延伸モータを介し前記延伸ローラの回転速度を調整することを前提として、前記検出手段にて検出された前記第1のずれに応じて前記カバーフィルムを延伸させるべく前記延伸ローラの回転速度を調整するよう構成されると共に、前記第2のずれに応じて前記延伸ローラの回転速度を補正するよう構成されていることを特徴とする位置調整装置。
【0033】
手段8に記載の位置調整装置の各構成による作用については、上記手段の説明にて既に述べた通りである。このような手段8によれば、繰り返すことになるが、従来の構成と異なり、カバーフィルムの延伸量が急激に変化することがないため、カバーフィルムの破断を生じさせないようにカバーフィルムを延伸させることができる。また、ずれが発生するとそれに応じてカバーフィルムが延伸されるため、カバーフィルムに付された図柄を包装用フィルムの所定位置に高い精度で合わせることができる。しかも、カバーフィルムの延伸制御の基準となる第1のずれが上流側のカバーフィルムの位置に基づいて取得されるため、延伸制御によるカバーフィルムの位置変化が即座に把握でき、カバーフィルムのずれへの迅速な対応が可能になる。しかも、下流側のカバーフィルムの位置に基づいて取得した第2のずれによって延伸制御へのフィードバックが行われるため、カバーフィルムに付された図柄を包装用フィルムの所定位置に高い精度で合わせることができる。
【0034】
また、カバーフィルムのずれをカバーフィルムの目標位置とカバーフィルムの位置との差分として検出するが、ここでは延伸されない包装用フィルムの位置情報を利用する。したがって、比較的簡単な構成で包装用フィルムに対するカバーフィルムのずれの大きさを検出することができる。
【0035】
さらに、延伸ローラの回転速度は繰出ローラの回転速度に応じて調整されるため、延伸ローラとは独立した駆動系によって繰出ローラを制御することができる。
【0036】
なお、上述した繰出モータ、延伸モータは、速度可変モータであればよい。この意味では、「前記繰出ローラを駆動する速度制御可能な繰出モータ」、「前記延伸ローラを駆動する速度制御可能な延伸モータ」としてもよい。以下の手段でも同様である。
【0037】
手段9.ポケット部に錠剤の収容された包装用フィルムに対し前記ポケット部を塞ぐようにカバーフィルムをシール状態で取着するためのシール手段による前記カバーフィルムの取着位置を、当該カバーフィルムに付された図柄が前記包装用フィルムの適切な位置にくるように調整する位置調整装置であって、
前記カバーフィルムを下流側へ繰り出す繰出ローラと、
前記繰出ローラを駆動する繰出モータと、
前記繰出モータを制御して前記繰出ローラの回転速度を調整可能な繰出制御手段と、
前記繰出ローラの上流側に位置し、前記繰出ローラとの間でフィルムを延伸させることが可能な延伸ローラと、
前記延伸ローラを駆動する延伸モータと、
前記延伸モータを制御して前記延伸ローラの回転速度を調整可能な延伸制御手段と、
前記包装用フィルムに対するカバーフィルムのずれの大きさを、前記延伸ローラの上流側のカバーフィルムの位置に基づき第1のずれとして検出すると共に、前記繰出ローラの下流側のカバーフィルムの位置に基づき第2のずれとして検出する検出手段と、
前記繰出ローラの下流側及び前記延伸ローラの上流側にそれぞれ配設され、前記カバーフィルムに対し張力を及ぼすテンションローラと、
前記テンションローラを一定間隔で支持し、前記繰出ローラの下流側及び前記延伸ローラの上流側において反対方向に作用する張力の関係により摺動可能な摺動部とを備え、
前記検出手段は、前記カバーフィルムに付されるマークを検出するマーク検出手段と、前記マーク検出手段にて前記マークが検出されると、前記包装用フィルムの位置情報を出力する位置情報出力手段とを有しており、前記位置情報出力手段からの位置情報として前記カバーフィルムの位置を検出し、予め決定される前記カバーフィルムの目標位置との差分として前記カバーフィルムのずれの大きさを検出するよう構成され、
前記繰出制御手段は、前記摺動部が略一定位置に留まるように、前記繰出モータを介して前記繰出ローラの回転速度を調整するよう構成され、
前記延伸制御手段は、前記繰出制御手段にて制御される前記繰出ローラの回転速度に応じて前記延伸モータを介し前記延伸ローラの回転速度を調整することを前提として、前記検出手段にて検出された前記第1のずれに応じて前記カバーフィルムを延伸させるべく前記延伸ローラの回転速度を調整するよう構成されると共に、前記第2のずれに応じて前記延伸ローラの回転速度を補正するよう構成されていることを特徴とする位置調整装置。
【0038】
手段9に記載の位置調整装置によれば、上記手段8に記載の位置調整装置と同様の効果が奏される。加えて、下流側及び上流側において反対方向に作用する張力の関係により摺動する摺動部を略一定位置に制御するため、カバーフィルムに対し一定の張力が作用し、カバーフィルムにしわが生じることを防止できる。しかも、摺動部がテンションローラを一定間隔で支持するため、摺動部の摺動があってもカバーフィルムの移動経路の長さに変化を生じさせることがなく、上述した検出手段によるカバーフィルムの位置検出に影響を及ぼすことがない。
【0039】
手段10.手段8又は9に記載の位置調整装置において、
前記繰出モータ及び前記延伸モータは、サーボモータであることを特徴とする位置調整装置。
【0040】
手段10によれば、繰出モータ及び延伸モータとしてサーボモータを採用した。サーボモータは、フィードバック制御のため信頼性が高いというメリットがある。しかも、多くの製品が市販されているため、容易に所望の性能のものが入手できるというという点で有利である。
【0041】
以上は、位置調整装置の発明として説明してきたが、位置調整装置を備えるPTPシートの製造装置として実現することもできる。次に示す如くである。
【0042】
手段11.手段1乃至10のいずれかに記載の位置調整装置を備えるPTPシートの製造装置。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0044】
図2(a),(c)に示すように、本実施形態におけるPTPシート1は、複数のポケット部2を備えた「包装用フィルム」としての容器フィルム3と、ポケット部2を塞ぐようにして容器フィルム3に取着された「カバーフィルム」としての密封用フィルム4とを有している。容器フィルム3は、例えば、PP(ポリプロピレン)やPVC(ポリ塩化ビニル)等の比較的硬質で所定の剛性を有する熱可塑性樹脂材料によって構成され、光透過性を有している(ここでは、透明を呈している。)。密封用フィルム4は、アルミニウムを含む材料によって構成されている。
【0045】
また、各ポケット部2には被充填物としての錠剤5が1つずつ収容されている。PTPシート1の容器フィルム3には、例えば2つのポケット部2が含まれたペア小片に切り離すことができるように複数の横スリット6が形成されている(もちろん縦スリットが形成されていてもよいし、スリットを省略してもよい)。
【0046】
さらに、前記密封用フィルム4のポケット部2とは反対側の面(すなわち、PTPシート1の裏面側)には、シート単位で図柄が印刷されている。例えば、本実施形態では、図2(b)に示すように、ポケット部2の形成されていないPTPシート1の最上部に「ABC」の文字からなる図柄8が印刷されている。このような図柄8は、密封用フィルム4に対し、密封用フィルム4の取着前に印刷される。
【0047】
そのため、容器フィルム3への密封用フィルム4の取着過程においては、印刷された図柄の位置合わせを行うことが必要となる。密封用フィルム4を容器フィルム3に取着した後には錠剤5の充填されたフィルムが裁断されてPTPシート1となるのであるが、裁断前の密封用フィルム4は、図2(d)に示すように、位置合わせのためのマーク7が所定間隔(1シート分よりも僅かに小さな間隔)で外縁部に印刷されている。本実施形態は、密封用フィルム4に付されたマーク7を読み取ることによる位置合わせに特徴を有するのであるが、まずは次に、上記PTPシート1を製造するための製造装置(PTP包装機(ブリスタ包装機))10の構成について説明することとする。
【0048】
図1に示すように、PTP包装機10の最上流側では、帯状の容器フィルム3がロール状に巻回されている。ロール状に巻回された容器フィルム3は、間欠的に搬送されるようになっており、容器フィルム3の搬送経路に沿って、加熱手段12とポケット成形手段13とが順に並設されている。これら加熱手段12及びポケット成形手段13によってポケット部形成装置14が構成されている。そして、加熱装置12によって容器フィルム3が部分的に加熱され、該容器フィルム3が比較的柔軟になった状態において、ポケット成形手段13によって容器フィルム3にポケット部2が成形される。なお、このポケット部2の成形は、容器フィルム3の搬送動作間のインターバルの際に行われる。
【0049】
ポケット部2が形成された容器フィルム3の移送経路に沿って、ポケット部2に錠剤5を自動的に充填する充填装置16、外観検査装置17、シール手段18が配設されている。充填装置16は、所定間隔毎にシャッタを開くことで錠剤5を落下させるものであり、このシャッタ開放動作に伴って各ポケット部2に錠剤5が投入される。
【0050】
外観検査装置17は、錠剤5が各ポケット部2に確実に充填されているか否か、また錠剤5の欠け、ひび等の外観異常の有無、異物混入の有無等の検査を行うためのものである。該外観検査装置17は、ポケット部2の開口側からの検査を行う。
【0051】
一方、帯状に形成された密封用フィルム4は、最上流側においてロール状に巻回されている。ロール状に巻回された密封用フィルム4の引出し端は、シール手段18の方へと案内されている。シール手段18は、フィルム受けローラ19と加熱ローラ20とを備えており、フィルム受けローラ19に加熱ローラ20が圧接可能に構成されている。そして、両ローラ19,20間に容器フィルム3及び密封用フィルム4が送り込まれるようになっており、容器フィルム3及び密封用フィルム4が、両ローラ19,20間を加熱圧接状態で通過することで、容器フィルム3に密封用フィルム4が貼着され、これにより、錠剤5が各ポケット部2に充填された帯状のブリスタフィルムとしてのPTPフィルム21が製造される。なお、フィルム受けローラ19の表面には、容器フィルム3のポケット部2に対応する凹部が形成されている。一方、加熱ローラ20の表面には、シール用の網目状の微細な凸条が形成されており、これが強く圧接することで、強固なシールが実現されるようになっている。
【0052】
上述したように、PTPシート1の密封用フィルム4のポケット部2とは反対側の面に、「ABC」の文字からなる図柄8が付される(図2(b)参照)。本実施形態では、ロール状に巻回された密封用フィルム4として、予め図柄8が所定間隔毎に印刷されているものを用いているが、当該PTP包装機10内に印刷手段を設け、貼着の直前に印刷を施すこととしてもよい。
【0053】
そして、PTPフィルム21が後述するように裁断されて上述したPTPシート1となるのであるが、裁断後のPTPシート1の所定位置に図柄8が付されるように、本実施形態では密封用フィルム4の位置を調整する位置調整装置22がシール手段18の上流側に設けられている。この位置調整装置22については、後述する。
【0054】
前記シール手段18の下流には、ポケット部2側から錠剤5等の異常を検出するための外観検査装置23が設けられている。尚、外観検査装置17,23によって不良品判定された場合、図示しない不良シート排出機構に不良品信号が送られ、その不良品判定となったPTPシートは、不良シート排出機構によって別途排出され、図示しない不良品ホッパに移送されるようになっている。
【0055】
外観検査装置23の下流ではPTPフィルム21移送経路に沿って、スリット成形装置24及びシート打抜装置26が順に配設されている。スリット成形装置24は、PTPフィルム21の所定位置に前記横スリット6を形成する機能を有する。シート打抜装置26は、PTPフィルム21をPTPシート1単位に打抜く機能を有する。前記シート打抜装置26の下流側には、シート打抜装置26から落下する端材27を貯留するためのスクラップ用ホッパ28が設けられている。また、シート打抜装置26の下側には、打抜かれたPTPシート5を移送するためのコンベア29が設けられており、該PTPシート5は完成品用ホッパ30に移送されるようになっている。
【0056】
さて、PTP包装機10の概略は以上のとおりであるが、以下においては図3及び図4に基づき、シール手段18の上流側に設けられている位置調整装置22についてより具体的に説明する。
【0057】
図3に示すように、位置調整装置22には、ロール状に巻回された密封用フィルム4の移送経路に沿って、段差ローラ40、延伸用センサ51、延伸手段60、テンション手段70、延伸後センサ52、位置検出エンコーダ53が配設されている。
【0058】
段差ローラ40は、上下方向に移動可能な錘ローラ41を備えており、この錘ローラ41は自重によってカバーフィルムを支持ローラ42の下方へ引き下げる。これによって、密封用フィルム4の移動方向とは反対方向の張力が作用することになる。これを記号T1として示した。
【0059】
延伸手段60は、一対のローラ61,62を備えている。一対のローラ61,62は、下流側へ密封用フィルム4を繰り出す繰出ローラ61と、繰出ローラ61の上流側に位置し、繰出ローラ61との間で密封用フィルム4を延伸させることが可能な延伸ローラ62となっている。本実施形態では、繰出ローラ61及び延伸ローラ62の径は同一になっており、繰出サーボモータ63及び延伸サーボモータ64によってそれぞれ駆動される。図中では、サーボモータ63,64をSM1、SM2と示した。
【0060】
テンション手段70は、一対のテンションローラ71,72を備えている。一方のテンションローラ71は繰出ローラ61の下流側に設けられており、他方のテンションローラ72は延伸ローラ62の上流側に設けられている。これらのテンションローラ71,72は、摺動部73に一定間隔で支持されている。摺動部73は、上流側と下流側とで反対方向に作用する張力のバランスによってレール74上を摺動する。具体的に、延伸ローラ62の上流側には記号T1で示す張力が作用するが、これとは反対に、繰出ローラ61の下流側にも記号T2で示す張力が作用する。そのため、張力T1,T2のバランスによって摺動部73は、T1>T2の場合は右方向、T1<T2の場合は左方向に摺動することになる。具体的には、シール手段18にて送られる密封用フィルム4の量に対し繰出ローラ61から繰り出される密封用フィルム4の量が多ければ、T1で示す張力が作用し摺動部73は、右方向に摺動する。また、シール手段18にて送られる密封用フィルム4の量に対し繰出ローラ61から繰り出される密封用フィルム4の量が少なければ、T2で示す張力がT1よりも大きくなり摺動部73は、左方向に摺動する。摺動部73にはラック75が一体に取り付けられており、摺動部73の直線運動はピニオンギヤ76によって回転運動として取り出される。このようなラックアンドピニオン機構を用いて摺動部73の位置情報を出力するのが、テンション用エンコーダ77である。
【0061】
延伸用センサ51は、延伸ローラ62の上流側に設けられており、図2(d)に示した密封用フィルム4のマーク7の通過を検出する。一方、延伸後センサ52は、繰出ローラ61の下流側に設けられており、同様に、密封用フィルム4のマーク7の通過を検出する。そして、この検出タイミングで容器フィルム3の位置情報を出力するのが、位置検出エンコーダ53である。位置検出エンコーダ53は、フィルム受けローラ19の所定の基準位置からの回転量(つまり回転位置)を出力する。具体的には、1シート分(ポケット部2に対応する凹部19aの2つ分)の回転角度(記号αで示した角度)を所定角度に等分し、当該角度に基づいて所定の基準位置からの回転量を出力する。なお、本実施形態では回転量を出力する構成としたが、回転角度を出力する構成としてもよい。また、本実施形態では1シート毎に図柄を付すために1シート単位で回転量を出力するが、別の単位で図柄を付す場合には、その単位毎に回転量を出力するようにしてもよい。例えば、2シート毎、3シート毎に図柄付すのであれば2シート単位、3シート単位で回転量を出力するようにすればよい。さらに、本実施形態では1シート分がポケット部2の2つ分としているが、1シートにポケット部2が3つあるようなPTPシートであれば、ポケット部2に対応する凹部19aの3つ分に対応させて回転量を出力するようにすればよい。
【0062】
次に、このように構成された位置調整装置22の動作について説明する。図4は、位置調整装置22の制御ブロックを示す説明図である。本実施形態における制御は、サーボモータ63,64を介しローラ61,62の回転速度を制御するものであり、コンピュータシステムにて行われる。この意味ではコンピュータシステムが[課題を解決するための手段]の欄でいうところの「繰出制御手段」及び「延伸制御手段」に相当する。なお、コンピュータシステムの構成については当業者に周知であるため、その説明は割愛する。
【0063】
まず繰出ローラ61の制御について説明する。上述したように摺動部73は、ローラ61,62の上流側と下流側の張力T1,T2のバランスによってレール74上を摺動する。この摺動をラックアンドピニオン機構にて取り出すのがテンション用エンコーダ77であり、図4(a)に示すように、テンション用エンコーダ77からは位置情報Kが出力される。これに対して、ブロックaでは、係数Fを乗じて速度成分FKを出力する。次にブロックbでは、PTP包装機10の基本速度Vと速度成分FKとの和をとる。そして、繰出サーボモータ63を介し繰出ローラ61を回転速度(V+FK)で制御する。具体的には、図3に示すローラ61,62の上流側の張力T1よりも下流側の張力T2が小さくなると、摺動部73が右方向へ移動する。このとき、テンション用エンコーダ77の出力値Kが小さくなるようになっている。これによって、繰出ローラ61の回転速度(V+FK)が小さくなり、繰出ローラ61からの密封用フィルム4の繰り出し量が小さくなる。その結果、下流側の張力T2が大きくなり、摺動部73は左方向へ移動する。反対に、ローラ61,62の上流側の張力T1よりも下流側の張力T2が大きくなると、摺動部73が左方向へ移動する。このとき、テンション用エンコーダ77の出力値Kが大きくなるようになっている。これによって、繰出ローラ61の回転速度(V+FK)が大きくなり、繰出ローラ61からの密封用フィルム4の繰り出し量が大きくなる。その結果、下流側の張力T2が小さくなり、摺動部73は右方向へ移動する。結果的に、繰出ローラ61は、摺動部73が略一定位置に留まるように、すなわち位置情報Kが一定値をとるように制御される。
【0064】
このような繰出ローラ61の制御に対し、ブロックcにて延伸率Gを乗じた回転速度(G(V+FK))で延伸サーボモータ64を介して延伸ローラ62が制御される。もちろん、延伸率Gを求めることに変え、密封用フィルム4を所定の延伸率で延伸させるための回転速度の低下分G’を求め、回転速度(V+FK−G’)で延伸ローラ62を制御してもよい。
【0065】
次に、延伸率Gの算出について、図4(b)を参照して説明する。上述したように延伸用センサ51にて密封用フィルム4のマーク7の通過が検出されると、位置検出エンコーダ53は、フィルム受けローラ19の回転量Aを、容器フィルム3の位置情報として出力する(ブロックd)。ここで出力される位置情報Aが、上流側の密封用フィルム4の位置を示すことになる。ところで、ずれが生じていない密封用フィルム4の目標位置もフィルム受けローラ19の回転量として表すことができる。これを上流側の目標位置Qとして入力し、ブロックeにてその差分を算出する。この差分が、上流側の密封用フィルム4の位置に基づくずれの大きさ(第1のずれ)を示すことになる。
【0066】
一方、延伸後センサ52にて密封用フィルム4のマーク7の通過が検出されると、位置検出エンコーダ53は、フィルム受けローラ19の回転量Bを、容器フィルム3の位置情報として出力する(ブロックf)。ここで出力される位置情報Bが、下流側の密封用フィルム4の位置を示すことになる。ところで、上述したように、ずれが生じていない密封用フィルム4の目標位置もフィルム受けローラ19の回転量として表すことができる。これを下流側の目標位置Pとして入力し、ブロックgにてその差分(P−B)を算出する。この差分(P−B)が、下流側の密封用フィルム4の位置に基づくずれの大きさ(第2のずれ)を示すことになる。ブロックhでは、フィードバック係数Cを乗じてフィードバック量(C(P−B))を出力する。ブロックiでは、このフィードバック量(C(P−B))にて上流側の目標位置Qを補正する。
【0067】
上述したようにブロックeでは差分を算出するのであるが、正確には目標位置Qをフィードバック量(C(P−B))で補正した目標位置(Q+C(P−B))を用いた差分(Q+C(P−B)−A)を算出する。そして、ブロックjにて、係数Eを乗じて延伸率Gを算出する。したがって、延伸率GはE(Q+C(P−B)−A)となる。
【0068】
以上より、本実施形態の延伸用センサ51、延伸後センサ52、及び位置検出エンコーダ53が「検出手段」に相当する。
【0069】
次に本実施形態のPTP包装機10の発揮する効果を説明する。
【0070】
本実施形態においては、密封用フィルム4のずれを量として把握し、当該ずれに応じて密封用フィルム4を延伸させる。これによって、従来の構成と異なり、密封用フィルム4の延伸量が急激に変化することがないため、密封用フィルム4の破断を生じさせないように密封用フィルム4を延伸させることができる。また、ずれが発生するとそれに応じて密封用フィルム4が延伸されるため、密封用フィルム4に付された図柄を容器フィルム3の所定位置に高い精度で合わせることができる。
【0071】
具体的には、図3に示すように、延伸ローラ62の上流側において密封用フィルム4のずれ(第1のずれ)を検出し、この第1のずれを無くすべく密封用フィルム4を延伸させる。詳しくは、延伸用センサ51にて密封用フィルム4のマーク7が検出されると、位置検出エンコーダ53から位置情報Aが出力される(図4(b)中のブロックd)この位置情報Aと上流側目標位置Qとの差分から密封用フィルム4の延伸率Gを算出する(ブロックe,ブロックj)。ここで繰出ローラ61の下流側においても密封用フィルム4のずれ(第2のずれ)を検出し、この第2のずれに基づいて上流側の目標位置を補正する。詳しくは、延伸後センサ52にて密封用フィルム4のマーク7が検出されると、位置検出エンコーダ53から位置情報Bが出力される(ブロックf)。この位置情報Bと下流側目標位置Pとの差分からフィードバック量(C(P−B))を算出し(ブロックg,ブロックh)、上流側の目標位置Qを補正することによって(ブロックi)、延伸率Gを補正する(ブロックj)。このように密封用フィルム4の延伸制御の基準となる第1のずれが上流側の密封用フィルム4の位置に基づいて取得されるため、延伸制御による密封用フィルム4の位置変化が即座に把握でき、密封用フィルム4のずれへの迅速な対応が可能になる。しかも、下流側の密封用フィルム4の位置に基づいて取得した第2のずれによって延伸制御へのフィードバックが行われるため、密封用フィルム4に付された図柄を容器フィルム3の所定位置に高い精度で合わせることができる。
【0072】
また、本実施形態では、予め決定される目標位置Q,Pとの差分として密封用フィルム4のずれの大きさを検出するため、密封用フィルム4の位置を取得することによって、簡単に容器フィルム3に対する密封用フィルム4のずれの大きさを検出することができる。
【0073】
ここで密封用フィルム4の位置検出には、延伸されない容器フィルム3に着目し、密封用フィルム4に付されるマーク7の検出タイミングにおける容器フィルム3の位置情報を利用する。つまり、密封用フィルム4の位置を容器フィルム3の位置情報として捉えるのである。密封用フィルム4の目標位置も容器フィルム3の位置情報に置き換えることができるため、容器フィルム3の位置情報を利用して、容器フィルム3に対する密封用フィルム4のずれの大きさを検出することができる。容器フィルム3の位置情報は、フィルム受けローラ19の回転量として位置検出エンコーダ53から出力されるため、密封用フィルム4の位置のずれの大きさを、簡単な構成で検出できる。
【0074】
さらにまた、本実施形態では、摺動部73が、ローラ61,62の上流側と下流側の張力T1,T2のバランスによってレール74上を摺動する。そして、テンション用エンコーダ77によって摺動部73の位置情報Kが出力されるようになっており(図4(a)参照)、係数Fを乗じて速度成分FKとし(ブロックa)、PTP包装機10の基本速度Vと速度成分FKとの和をとり(ブロックb)、繰出サーボモータ63を介し繰出ローラ61を回転速度(V+FK)で制御する。これに対して、延伸ローラ62は、延伸サーボモータ64を介し、延伸率Gを乗じた回転速度(G(V+FK))で制御される。これによって、繰出ローラ61は延伸ローラ62とは別個の制御を行うことができる。本実施形態では、摺動部73が略一定位置にくるように、すなわちKが一定値となるように制御されるため、密封用フィルム4に対し一定の張力が作用し、密封用フィルム4にしわが生じることを防止できる。しかも、摺動部73がテンションローラ71,72を一定間隔で支持するため、摺動部73の摺動があっても密封用フィルム4の移動経路の長さに変化を生じさせることがなく、密封用フィルム4の位置検出に影響を及ぼすことがない。
【0075】
以上説明した実施形態において、例えば、次のように構成の一部を適宜変更して実施することも可能である。勿論、以下において例示しない他の変更例も当然可能である。
【0076】
(a)上記実施形態では、上流側及び下流側における密封用フィルム4のずれを検出していた。これに対し、上流側及び下流側のうち少なくとも一方でずれを検出して密封用フィルム4を延伸させる構成としてもよい。ただし、延伸によって密封用フィルム4の位置がどの程度変化したかは、上流側の密封用フィルム4の進行度合に即座に反映される。なぜなら、密封用フィルム4が延伸されると、上流側の密封用フィルム4の搬送が即座に遅れることになるためである。そのため、連続して密封用フィルム4のずれを検出することを考えると、延伸ローラ62の上流側において密封用フィルム4の位置を取得することが望ましい。一方、下流側で密封用フィルム4の位置を取得すれば、シール手段18により近いところで密封用フィルム4のずれを検出することができるため、精度を上げるという点において有利である。そのため、上記実施形態のごとく、下流側における密封用フィルム4のずれを延伸制御にフィードバックさせる構成が最良となる。
【0077】
(b)上記実施形態では、段差ローラ40を用いて延伸ローラ62の上流側に張力T1を作用させていたが、段差ローラ40を用いない構成とすることも考えられる。例えば、摺動部73自体をばね等によって右方向へ付勢するようにしてもよい。
【0078】
(c)上記実施形態では、PTPシート1の裏側面に「ABC」の文字からなる図柄8が付すことを考えた。これに対し、図5に示すように、PTPシート1の裏側面に、バーコード(図柄)9を付す場合にももちろん適用できる。近年、薬局や病院等において、処方され、手渡される錠剤が正しいか否か、或いは如何なる薬剤であるか等を確認するというニーズが高まりつつあり、かかるニーズにこたえるべく、コード情報を付す技術が考案されている。このような場合、少なくとも1シート単位毎にコード情報(図柄)の位置を調整することが必要になる。少なくともとしたのは、1投与単位(例えば錠剤2つ分)でコード情報を付す場合(図5参照)が考えられるからであり、コード情報の付される単位が小さくなればなるほど位置調整の精度が求められ、本発明の効果が際立つ。
【0079】
この意味では本発明において「前記図柄は、コード情報であること」としてもよい。また、「前記図柄は、シート単位あるいは投与単位で付されるコード情報であること」としてもよい。コード情報には、バーコードといった1次元コード、QRコードといった2次元コードが含まれる。
【0080】
(d)上記実施形態では、繰出サーボモータ63及び延伸サーボモータ64として、ローラ61,62の駆動にサーボモータを採用していた。サーボモータは、フィードバック制御のため信頼性が高く、また、多くの製品が市販されていることから、容易に所望の性能のものが入手できる点で都合がよい。
【0081】
もっとも、速度を制御可能なモータであれば差し支えなく、他のモータを採用してもよい。例えば、パルスモータ、インバータとACモータの組み合わせや、電圧やパルス幅により速度制御可能なDCモータなどを採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】製造装置(PTP包装機)の概略構成図である。
【図2】(a)はPTPシートの表側を示す斜視図であり、(b)はPTPシートの裏側を示す斜視図であり、(c)はPTPシートを示す部分拡大断面図であり、(d)密封用フィルムの部分平面図である。
【図3】位置調整装置の概略構成図である。
【図4】位置調整装置における延伸制御を示すブロック図である。
【図5】別実施形態におけるPTPシートの裏側を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0083】
1…PTPシート、2…ポケット部、3…包装用フィルムとしての容器フィルム、4…カバーフィルムとしての密封用フィルム、5…錠剤、7…マーク、8…図柄、9…図柄としてのバーコード、10…PTPシートの製造装置としてのPTP包装機、18…シール手段、19…取着ローラとしてのフィルム受けローラ、22…位置調整装置、51…マーク検出手段としての延伸用センサ、52…マーク検出手段としての延伸後センサ、53…位置情報出力手段としての位置検出エンコーダ、60…延伸手段、61…繰出ローラ、62…延伸ローラ、63…繰出サーボモータ、64…延伸サーボモータ、70…テンション手段、71,72…テンションローラ、73…摺動部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポケット部に錠剤の収容された包装用フィルムに対し前記ポケット部を塞ぐようにカバーフィルムをシール状態で取着するためのシール手段による前記カバーフィルムの取着位置を、当該カバーフィルムに付された図柄が前記包装用フィルムの所定位置にくるように調整する位置調整装置であって、
前記カバーフィルムを延伸させるための一対のローラと、
前記包装用フィルムに対するカバーフィルムのずれの大きさを検出する検出手段と、
前記ローラのうちの少なくとも一方の回転速度を調整し、前記カバーフィルムを延伸させることが可能な延伸制御手段とを備え、
前記延伸制御手段は、前記検出手段にて検出されたずれに応じて、前記カバーフィルムを延伸させるべく、前記ローラの回転速度を調整するよう構成されていることを特徴とする位置調整装置。
【請求項2】
ポケット部に錠剤の収容された包装用フィルムに対し前記ポケット部を塞ぐようにカバーフィルムをシール状態で取着するためのシール手段による前記カバーフィルムの取着位置を、当該カバーフィルムに付された図柄が前記包装用フィルムの適切な位置にくるように調整する位置調整装置であって、
前記カバーフィルムを延伸させるための一対のローラと、
前記包装用フィルムに対するカバーフィルムのずれの大きさを、前記ローラの上流側のカバーフィルムの位置に基づき第1のずれとして検出すると共に、前記ローラの下流側のカバーフィルムの位置に基づき第2のずれとして検出する検出手段と、
前記ローラのうちの少なくとも一方の回転速度を調整し、前記カバーフィルムを延伸させることが可能な延伸制御手段とを備え、
前記延伸制御手段は、前記検出手段にて検出された前記第1のずれに応じて前記カバーフィルムを延伸させるべく前記ローラの回転速度を調整するよう構成されると共に、前記第2のずれに応じて前記ローラの回転速度を補正するよう構成されていることを特徴とする位置調整装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の位置調整装置において、
前記検出手段は、前記カバーフィルムの位置と、予め決定される前記カバーフィルムの目標位置との差分として、前記包装用フィルムに対する前記カバーフィルムのずれの大きさを検出することを特徴とする位置調整装置。
【請求項4】
請求項3に記載の位置調整装置において、
前記検出手段は、前記カバーフィルムに付されるマークを検出するマーク検出手段と、前記マーク検出手段にて前記マークが検出されると、前記包装用フィルムの位置情報を出力する位置情報出力手段とを有しており、前記位置情報出力手段からの位置情報として前記カバーフィルムの位置を検出することを特徴とする位置調整装置。
【請求項5】
請求項4に記載の位置調整装置において、
前記シール手段は、前記包装用フィルムに対し前記カバーフィルムを取着するための取着ローラを有しており、
前記位置情報出力手段は、前記取着ローラの回転位置に基づき、前記包装用フィルムの位置情報を出力するよう構成されていることを特徴とする位置調整装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の位置調整装置において、
前記一対のローラは、前記カバーフィルムを下流側へ繰り出す繰出ローラ及び、前記繰出ローラの上流側に位置し、前記繰出ローラとの間でフィルムを延伸させることが可能な延伸ローラであり、
前記延伸制御手段は、前記繰出ローラの回転速度に応じて前記延伸ローラの回転速度を調整可能に構成されていることを特徴とする位置調整装置。
【請求項7】
請求項6に記載の位置調整装置において、
前記繰出ローラの下流側及び前記延伸ローラの上流側にそれぞれ配設され、前記カバーフィルムに対し張力を及ぼすテンションローラと、
前記テンションローラを一定間隔で支持し、前記繰出ローラの下流側及び前記延伸ローラの上流側において反対方向に作用する張力の関係により摺動可能な摺動部と、
前記摺動部が略一定位置に留まるように、前記繰出ローラの回転速度を調整する繰出制御手段とを備えていることを特徴とする位置調整装置。
【請求項8】
ポケット部に錠剤の収容された包装用フィルムに対し前記ポケット部を塞ぐようにカバーフィルムをシール状態で取着するためのシール手段による前記カバーフィルムの取着位置を、当該カバーフィルムに付された図柄が前記包装用フィルムの適切な位置にくるように調整する位置調整装置であって、
前記カバーフィルムを下流側へ繰り出す繰出ローラと、
前記繰出ローラを駆動する繰出モータと、
前記繰出モータを制御して前記繰出ローラの回転速度を調整可能な繰出制御手段と、
前記繰出ローラの上流側に位置し、前記繰出ローラとの間でフィルムを延伸させることが可能な延伸ローラと、
前記延伸ローラを駆動する延伸モータと、
前記延伸モータを制御して前記延伸ローラの回転速度を調整可能な延伸制御手段と、
前記包装用フィルムに対するカバーフィルムのずれの大きさを、前記延伸ローラの上流側のカバーフィルムの位置に基づき第1のずれとして検出すると共に、前記繰出ローラの下流側のカバーフィルムの位置に基づき第2のずれとして検出する検出手段とを備え、
前記検出手段は、前記カバーフィルムに付されるマークを検出するマーク検出手段と、前記マーク検出手段にて前記マークが検出されると、前記包装用フィルムの位置情報を出力する位置情報出力手段とを有しており、前記位置情報出力手段からの位置情報として前記カバーフィルムの位置を検出し、予め決定される前記カバーフィルムの目標位置との差分として前記カバーフィルムのずれの大きさを検出するよう構成されており、
前記延伸制御手段は、前記繰出制御手段にて制御される前記繰出ローラの回転速度に応じて前記延伸モータを介し前記延伸ローラの回転速度を調整することを前提として、前記検出手段にて検出された前記第1のずれに応じて前記カバーフィルムを延伸させるべく前記延伸ローラの回転速度を調整するよう構成されると共に、前記第2のずれに応じて前記延伸ローラの回転速度を補正するよう構成されていることを特徴とする位置調整装置。
【請求項9】
ポケット部に錠剤の収容された包装用フィルムに対し前記ポケット部を塞ぐようにカバーフィルムをシール状態で取着するためのシール手段による前記カバーフィルムの取着位置を、当該カバーフィルムに付された図柄が前記包装用フィルムの適切な位置にくるように調整する位置調整装置であって、
前記カバーフィルムを下流側へ繰り出す繰出ローラと、
前記繰出ローラを駆動する繰出モータと、
前記繰出モータを制御して前記繰出ローラの回転速度を調整可能な繰出制御手段と、
前記繰出ローラの上流側に位置し、前記繰出ローラとの間でフィルムを延伸させることが可能な延伸ローラと、
前記延伸ローラを駆動する延伸モータと、
前記延伸モータを制御して前記延伸ローラの回転速度を調整可能な延伸制御手段と、
前記包装用フィルムに対するカバーフィルムのずれの大きさを、前記延伸ローラの上流側のカバーフィルムの位置に基づき第1のずれとして検出すると共に、前記繰出ローラの下流側のカバーフィルムの位置に基づき第2のずれとして検出する検出手段と、
前記繰出ローラの下流側及び前記延伸ローラの上流側にそれぞれ配設され、前記カバーフィルムに対し張力を及ぼすテンションローラと、
前記テンションローラを一定間隔で支持し、前記繰出ローラの下流側及び前記延伸ローラの上流側において反対方向に作用する張力の関係により摺動可能な摺動部とを備え、
前記検出手段は、前記カバーフィルムに付されるマークを検出するマーク検出手段と、前記マーク検出手段にて前記マークが検出されると、前記包装用フィルムの位置情報を出力する位置情報出力手段とを有しており、前記位置情報出力手段からの位置情報として前記カバーフィルムの位置を検出し、予め決定される前記カバーフィルムの目標位置との差分として前記カバーフィルムのずれの大きさを検出するよう構成され、
前記繰出制御手段は、前記摺動部が略一定位置に留まるように、前記繰出モータを介して前記繰出ローラの回転速度を調整するよう構成され、
前記延伸制御手段は、前記繰出制御手段にて制御される前記繰出ローラの回転速度に応じて前記延伸モータを介し前記延伸ローラの回転速度を調整することを前提として、前記検出手段にて検出された前記第1のずれに応じて前記カバーフィルムを延伸させるべく前記延伸ローラの回転速度を調整するよう構成されると共に、前記第2のずれに応じて前記延伸ローラの回転速度を補正するよう構成されていることを特徴とする位置調整装置。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の位置調整装置において、
前記繰出モータ及び前記延伸モータは、サーボモータであることを特徴とする位置調整装置。
【請求項11】
手段1乃至10のいずれかに記載の位置調整装置を備えるPTPシートの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−168750(P2006−168750A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−360793(P2004−360793)
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【出願人】(000106760)シーケーディ株式会社 (627)
【出願人】(000000217)エーザイ株式会社 (102)
【Fターム(参考)】