説明

低いブルックフィールド粘度を有する潤滑剤混合物

パラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油留分、石油誘導基油、及び流動点降下剤を含む潤滑剤混合物及び完成ギヤオイルが提供されている。パラフィン系の高いワックスから誘導された該潤滑剤基油留分は、0.30重量パーセントより少ない芳香族化合物、5重量パーセントより多いシクロパラフィン官能性分子、及び、15よりも大きい、モノシクロパラフィン官能性分子対マルチシクロパラフィン官能性分子の重量パーセント比を有する。該石油誘導基油は、90重量パーセントより多い飽和炭化水素及び300ppmより少ない硫黄を含み、好ましくはグループII基油、グループIII基油、及びそれらの混合物から成る群から選択される。これらの潤滑剤混合物は−40℃で驚くほど低いブルックフィールド粘度を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願〕
本願は、米国出願第10/847,996号及び第10/847,997号の部分継続出願であり、それらは両方とも2004年5月19日に出願されたものであり全体的に本明細書に引用して援用する。
【0002】
本発明は潤滑剤混合物及びこれらの潤滑剤混合物を含む完成ギヤオイルを対象とし、該潤滑剤混合物はパラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油留分、石油誘導基油、及び流動点降下剤を含む。本発明は又同じ物を製造する方法をも対象とする。これらの潤滑剤混合物は、驚くほど低いブルックフィールド粘度を含む良好な低温特性を有する。
【背景技術】
【0003】
高性能の自動車用及び工業用潤滑剤は需要がある。従って、潤滑剤製造業者は高性能特性を示す完成潤滑剤を提供しなければならない。一例として、高級品質ギヤオイルは、−40℃におけるブルックフィールド粘度により特定された非常に厳しい低温性能規格を有する。ギヤオイルが使用される用途に依って、それらは又100℃で約3cStより高い特定の粘度を示す必要があるかもしれない。
【0004】
ギヤオイルを含む完成潤滑剤は、二つの一般的成分、即ち、1種以上の潤滑剤基油及び添加剤から成る。潤滑剤基油はこれら完成潤滑剤における主要な構成成分であり、完成潤滑剤の性質に著しく寄与する。個々の潤滑剤基油及び個々の添加剤の混合物を変化させることにより、二、三種の潤滑剤基油を使用して多種多様の完成潤滑剤を製造することが出来る。一例として、ギヤオイルに関して、ブルックフィールド粘度は流動点降下剤を該基油に添加することにより典型的に調整される。100℃における特定の粘度は、異なる粘度を有する一種以上の基油を一緒に混合することにより制御される。高性能完成潤滑剤を製造するために、潤滑剤製造業者はより高品質の潤滑剤基油混合物原料を捜し求めている。
【0005】
これらの高品質潤滑剤基油混合物原料の成長源は合成潤滑剤である。合成潤滑剤はパラフィン系の高いワックスから製造することが出来る。合成潤滑剤はフィッシャー・トロプシュ潤滑剤基油を含み、高性能潤滑剤の調査において最近フィッシャー・トロプシュ誘導潤滑剤に注意が集中されている。フィッシャー・トロプシュ潤滑剤基油はそれらの生分解性及び低量の硫黄の如き望ましくない不純物の点で望ましいけれども、フィッシャー・トロプシュ誘導潤滑剤は一般に望ましい性能特性のすべてを示すわけではない。添加剤の使用により性能特性を改良することは当該技術において周知であるけれども、これらの添加剤は一般に高価であるので潤滑剤基油の原価を著しく増加させ得る。更に、添加剤の添加は望ましい性能特性を達成するのに充分でないかもしれない。
【0006】
合成潤滑剤を製造することは当該技術において周知であり、高性能特性を有する合成潤滑剤を製造することにおいて多数の開発的試みがなされている。一例として、WO 99/41332及びWO 02/070636は、自働変速機油として使用される合成潤滑剤組成物及びこれらの合成潤滑剤基原料油の製造方法を対象としている。2002年11月20日に出願され、米国シェブロン社に譲渡された米国特許出願10/301391は、低粘度フィッシャー・トロプシュ誘導基油留分及びより高い粘度の従来の石油誘導基油留分を含む潤滑剤基油混合物に関する。2003年12月23日に出願され、米国シェブロン社に譲渡された米国特許出願10/301392は、高モノシクロパラフィン及び低マルチシクロパラフィンを有するフィッシャー・トロプシュ潤滑剤基油と石油誘導基油を含む群から選択された更なる基油との混合物を含む完成潤滑剤を開示している。
【0007】
合成潤滑剤への研究にも拘わらず、良好な低温特性を含む高性能を示すフィッシャー・トロプシュ誘導潤滑剤基油を含む合成潤滑剤を含めた合成潤滑剤に対する必要性が残存している。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
パラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油留分、石油誘導基油、及び流動点降下剤を含む本発明の潤滑剤混合物は、−40℃における優れた低ブルックフィールド粘度を含む良好な低温特性を示すことが発見された。
【0009】
一態様において、本発明は潤滑剤混合物に関する。本発明の潤滑剤混合物は、全潤滑剤混合物に基づいて約10〜約80重量パーセントの、パラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油留分、全潤滑剤混合物に基づいて約20〜約90重量パーセントの石油誘導基油、及び全潤滑剤混合物に基づいて約0.01〜12重量パーセントの流動点降下剤を含み、100℃で約3cSt以上の粘度及び−40℃で100,000cPより低いブルックフィールド粘度を有する。パラフィン系の高いワックスから誘導された該潤滑剤基油留分は100℃で約2cStと20cStの間の粘度を有し、又パラフィン系の高いワックスから誘導された該潤滑剤基油留分は(i)0.30重量パーセントより少ない芳香族化合物、(ii)5重量パーセントより多いシクロパラフィン官能性分子、及び(iii)15よりも大きい、モノシクロパラフィン官能性分子対マルチシクロパラフィン官能性分子の重量パーセント比を有する。該石油誘導基油は、グループII基油、グループIII基油、及びそれらの混合物から成る群から選択される。
【0010】
他の態様において本発明は、全潤滑剤混合物に基づいて約10〜約80重量パーセントの、パラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油留分、全潤滑剤混合物に基づいて約20〜約90重量パーセントの、90重量パーセントより多い飽和炭化水素及び300ppmより少ない硫黄を含む石油誘導基油、及び全潤滑剤混合物に基づいて約0.01〜12重量パーセントの流動点降下剤を含む潤滑剤混合物に関する。該潤滑剤混合物は、100℃で約3cSt以上の粘度及び−40℃で100,000cPより低いブルックフィールド粘度を有する。パラフィン系の高いワックスから誘導された該潤滑剤基油留分は100℃で約2cStと20cStの間の粘度を有し、又パラフィン系の高いワックスから誘導された該潤滑剤基油留分は(i)0.30重量パーセントより少ない芳香族化合物、(ii)5重量パーセントより多いシクロパラフィン官能性分子、及び(iii)15よりも大きい、モノシクロパラフィン官能性分子対マルチシクロパラフィン官能性分子の重量パーセント比を有する。
【0011】
本発明は又、ここに提供された−40℃における優れた低ブルックフィールド粘度を有する潤滑剤混合物を含む完成潤滑剤にも関する。一態様において、該完成潤滑剤は該潤滑剤混合物及び該流動点降下剤に加えて少なくとも1種の添加剤を含むギヤオイルである。
【0012】
他の態様において本発明は、100℃で約2cStと20cStの間の粘度を有する、パラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑油留分であり、0.30重量パーセントより少ない芳香族化合物、5重量パーセントより多いシクロパラフィン官能性分子、及び15よりも大きい、モノシクロパラフィン官能性分子対マルチシクロパラフィン官能性分子の重量パーセント比を有する、パラフィン系の高いワックスから誘導された該潤滑油留分を用意し、パラフィン系の高いワックスから誘導された該潤滑油留分を、グループII基油、グループIII基油、及びそれらの混合物から成る群から選択された石油誘導基油、及び流動点降下剤と混合し、そして−40℃で100,000cPより低いブルックフィールド粘度を有する潤滑剤混合物を単離することを特徴とする、潤滑剤混合物の製造方法に関する。
【0013】
〔発明の詳細な説明〕
ギヤオイルを含む完成潤滑剤は、少なくとも1種の潤滑剤基油及び少なくとも1種の添加剤を含む。潤滑剤基油は完成潤滑剤の最も重要な成分であり、一般に完成潤滑剤の70重量%より多くを構成する。完成潤滑剤は、関係管理機関により規定されたそれらの意図された用途用の規格を満たさなければならない。本発明による完成潤滑剤はギヤオイルとしての用途用に意図されている。高級品質ギヤオイルは、−40℃におけるブルックフィールド粘度により特定された非常に厳しい低温性能規格を有する。
【0014】
本発明による潤滑剤混合物は、パラフィン系の高いワックスから誘導された少なくとも1種の潤滑剤基油留分、石油誘導基油、及び流動点降下剤を含む。これらの潤滑剤混合物は、100℃で約3cSt以上の粘度及び良好な低温特性を有する。具体的に該潤滑剤混合物は、−40℃で100,000cPより低いブルックフィールド粘度を示す。一部の態様において、該潤滑剤混合物は−40℃で90,000cPより低い、より好ましくは60,000cPより低い、より好ましくは50,000cPより低い、更により好ましくは35,000cPより低い、更により好ましくは25,000cPより低い、そして更により好ましくは15,000cPより低いブルックフィールド粘度を示す。従って、本発明の潤滑剤混合物は−40℃で例外的なブルックフィールド粘度を示す。かくして、本発明の潤滑剤混合物は、高品質ギヤオイルを製造するのに使用することが出来る。
【0015】
適切なパラフィン系の高いワックスの例には、フィッシャー・トロプシュ誘導ワックス、粗ろう、脱油粗ろう、精製ろう下油、ワックス状潤滑剤ラフィネート、n−パラフィンワックス、直鎖αオレフィン(NAO)ワックス、化学的プラント法で製造されたワックス、脱油石油誘導ワックス、微結晶ろう、及びそれらの混合物が含まれる。
【0016】
該潤滑剤混合物の、パラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油留分は、100℃で約2cStと20cStの間の粘度を有する。パラフィン系の高いワックスから誘導された該潤滑剤基油留分は、0.30重量パーセントより少ない芳香族化合物、5重量パーセントより多いシクロパラフィン官能性分子、及び15よりも大きい、モノシクロパラフィン官能性分子対マルチシクロパラフィン官能性分子の重量パーセント比を有する。
【0017】
好ましい態様において、パラフィン系の高いワックスから誘導された該潤滑剤基油留分は10重量パーセントより多いシクロパラフィン官能性分子を含む。他の好ましい態様において、パラフィン系の高いワックスから誘導された該潤滑剤基油留分は、0.30重量パーセントより少ない芳香族化合物、10より高い重量パーセントのモノシクロパラフィン官能性分子、及び0.1より低い重量パーセントのマルチシクロパラフィン官能性分子を含む。更に他の好ましい態様において、パラフィン系の高いワックスから誘導された該潤滑剤基油留分は、50よりも大きい、モノシクロパラフィン官能性分子対マルチシクロパラフィン官能性分子の重量パーセント比を有する。他の好ましい態様において、パラフィン系の高いワックスから誘導された該潤滑剤基油留分は、0.10重量パーセントより少ない芳香族化合物、より好ましくは0.05重量パーセントより少ない芳香族化合物を含む。
【0018】
本発明のパラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油留分は、水素異性化を含む方法によりパラフィン系の高い該ワックスから製造される。好ましくは、パラフィン系の高い該ワックスは、貴金属水素化成分を含む形状選択性中間孔径分子篩を用いて約600°F〜750°Fの条件下で水素異性化される。
【0019】
好ましい一態様において、パラフィン系の高い該ワックスはフィッシャー・トロプシュ誘導ワックスであり、フィッシャー・トロプシュ誘導潤滑剤基油留分を提供する。該潤滑剤基油留分はフィッシャー・トロプシュ合成原油のワックス状留分から水素異性化を含む方法により製造される。このような事情なので、該潤滑剤混合物で使用されるフィッシャー・トロプシュ誘導潤滑剤基油留分は、フィッシャー・トロプシュ合成を行って生成物流を提供し、該生成物流からパラフィン系の高いワックス供給物を単離し、パラフィン系の高い該ワックス供給物を水素異性化し、異性化油を単離し、そして所望により該異性化油を水素化仕上げすることを特徴とする方法により製造される。該方法から、0.30重量パーセントより少ない芳香族化合物、5重量パーセントより多いシクロパラフィン官能性分子、及び15よりも大きい、モノシクロパラフィン官能性分子対マルチシクロパラフィン官能性分子の重量パーセント比を有するフィッシャー・トロプシュ誘導潤滑剤基油留分が単離される。上記に列挙した好ましい態様の該潤滑剤基油留分も又この方法から単離することが出来る。好ましくは、パラフィン系の高い該ワックス供給物は、貴金属水素化成分を含む形状選択性中間孔径分子篩を用いて約600°F〜750°Fの条件下で水素異性化される。該フィッシャー・トロプシュ潤滑剤基油留分を製造する方法の例は、2003年12月23日に出願された米国出願番号10/744,870に記載されているが、その全体を本明細書に引用して援用する。高モノシクロパラフィン及び低マルチシクロパラフィンを有するフィッシャー・トロプシュ潤滑剤基油留分の態様例は、2003年12月23日に出願された米国出願番号10/744,389に記載されているが、その全体を本明細書に引用して援用する。
【0020】
本発明によれば、潤滑剤混合物及び混合完成潤滑剤は、高重量パーセントのシクロパラフィン官能性分子を含有するパラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油を含むことが望ましいが、それはシクロパラフィンが添加剤溶解性及びエラストマー相溶性を付与するからである。モノシクロパラフィン官能性分子対マルチシクロパラフィン官能性分子の非常に高い重量パーセント比(即ち、高重量パーセントのモノシクロパラフィン官能性分子及び極めて低い重量パーセントのマルチシクロパラフィン官能性分子)を有する、パラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油を含む潤滑剤混合物及び完成潤滑剤も又望ましいが、それはマルチシクロパラフィン官能性分子が酸化安定性を減少させ、粘度指数を低下させ、ノアク揮発度を増加させるからである。マルチシクロパラフィン官能性分子の影響のモデルは、J.Synthetic Lubrication 19−1、2002年4月、3〜18頁、V.J.Gatto等の「水素化分解原料基油及びポリαオレフィンの物性及び酸化防止剤リスポンスに対する化学的構造の影響」に記載されている。
【0021】
従って好ましい態様において、本発明による潤滑剤混合物及び完成潤滑剤は、非常に低い重量パーセントの芳香族官能性分子、高い重量パーセントのシクロパラフィン官能性分子、及びモノシクロパラフィン官能性分子対マルチシクロパラフィン官能性分子の高い重量パーセント比(即ち、高重量パーセントのモノシクロパラフィン官能性分子及び非常に低い重量パーセントのマルチシクロパラフィン官能性分子)を有する、パラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油を含む。
【0022】
該潤滑剤混合物及び完成潤滑剤で使用されるパラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油は、ASTM(アメリカ材料試験協会)D2549−02の溶離カラムクロマトグラフィーにより測定して95重量%より多い飽和炭化水素を含有する。オレフィンは長継続時間13C核磁気共鳴分光法(NMR)により検出できるよりも少ない量で存在する。好ましくは、芳香族官能性分子はHPLC(高速液体クロマトグラフィー)−UV(紫外線)により0.3重量パーセントより少ない量で存在し、低量芳香族化合物を測定するように変更されたASTM D5292−99により確認される。好ましい態様において、少なくとも芳香族官能性の分子は0.10重量パーセントより少ない、好ましくは0.05重量パーセントより少ない、より好ましくは0.01重量パーセントより少ない量で存在する。硫黄は、ASTM D5453−00による紫外蛍光により測定して25ppmより少ない、より好ましくは1ppmより少ない量で存在する。
【0023】
該潤滑剤混合物の石油誘導基油留分は、90重量パーセントより多い飽和炭化水素及び300ppmより少ない硫黄を含む。好ましくは、該石油誘導基油留分はグループII基油、グループIII基油、及びそれらの混合物から成る群から選択される。該石油誘導基油留分は、重質ニュートラル基油、中間ニュートラル基油、又はそれらの混合物であることが出来る。
【0024】
本発明の潤滑剤混合物は、約10〜80重量パーセントの、パラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油、約20〜90重量パーセントの石油誘導基油、及び約0.01〜12重量パーセントの流動点降下剤を含む。好ましくは、本発明の潤滑剤混合物は、約20〜80重量パーセントの、パラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油、約20〜75重量パーセントの石油誘導基油、及び約0.05〜10重量パーセントの流動点降下剤を含む。本発明のギヤオイルは該潤滑剤混合物及び該流動点降下剤に加えて1種の添加剤を含む。従って該ギヤオイルは、(a)約49〜約99.9重量%の本発明による潤滑剤混合物、及び(b)該流動点降下剤に加えて約0.1〜約51重量%の少なくとも1種の添加剤を含む。
【0025】
定義
以下の用語は本明細書を通して使用するが特に断りのない限り以下の意味を有する。
【0026】
「フィッシャー・トロプシュ法から誘導された」又は「フィッシャー・トロプシュ誘導」という用語は、該生成物、留分又は供給物がフィッシャー・トロプシュ法による或る段階を起源とする、即ち該段階で製造されたことを意味する。
【0027】
「石油から誘導された」又は「石油誘導」という用語は、該生成物、留分又は供給物が原油の蒸留からの塔頂蒸気流及び非蒸発性残留部分である残留燃料を起源とすることを意味する。石油誘導物源はガス田凝縮油からのものであり得る。
【0028】
パラフィン系の高いワックスは、高含量の、一般には40重量%より多くの、好ましくは50重量%より多くの、より好ましくは75重量%より多くのn−パラフィンを有するワックスを意味する。好ましくは、本発明で使用されるパラフィン系の高いワックスは又非常に低い量の窒素及び硫黄、一般には25ppm未満の、好ましくは20ppm未満の窒素及び硫黄の組合せ合計量を有する。本発明で使用できるパラフィン系の高いワックスの例には、粗ろう、脱油粗ろう、精製ろう下油、ワックス状潤滑剤ラフィネート、n−パラフィンワックス、直鎖αオレフィン(NAO)ワックス、化学的プラント法で製造されたワックス、脱油石油誘導ワックス、微結晶ろう、フィッシャー・トロプシュワックス、及びそれらの混合物が含まれる。本発明で有用なパラフィン系の高いワックスの流動点は、50℃より高く、好ましくは60℃より高い。
【0029】
「パラフィン系の高いワックスから誘導された」という用語は、該生成物、留分又は供給物がパラフィン系の高いワックスからの或る段階を起源とする、即ち該段階で製造されたことを意味する。
【0030】
芳香族化合物は、非局在化電子の連続クラウドを共有する少なくとも1グループの原子を含有する任意の炭化水素系化合物を意味するが、ここで該原子グループにおける非局在化電子の数は4n+2(例えば、6個の電子に対してはn=1、等)のヒュッケル規則に対する解に相当する。代表的例は、ベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、等を含むが、それらに限定されない。
【0031】
シクロパラフィン官能性分子は、単環式又は縮合多環式飽和炭化水素基であるか、又は一以上の置換基として前記の基を含有する任意の分子を意味する。該シクロパラフィン基は所望により一以上の、好ましくは1〜3個の置換基で置換されていてもよい。代表的例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロヘキシル、シクロペンチル、シクロヘプチル、デカヒドロナフタレン、オクタヒドロペンタレン、(ペンタデカン−6−イル)シクロヘキサン、3,7,10−トリシクロヘキシルペンタデカン、デカヒドロ−1−(ペンタデカン−6−イル)ナフタレン、等を含むが、それらに限定されない。
【0032】
モノシクロパラフィン官能性分子は、3〜7個の環炭素の単環式飽和炭化水素基である任意の分子、又は3〜7個の環炭素の単一単環式飽和炭化水素基で置換された任意の分子を意味する。該シクロパラフィン基は所望により一以上の、好ましくは1〜3個の置換基で置換されていてもよい。代表的例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロヘキシル、シクロペンチル、シクロヘプチル、(ペンタデカン−6−イル)シクロヘキサン、等を含むが、それらに限定されない。
【0033】
マルチシクロパラフィン官能性分子は、2個以上の縮合環の多環式飽和炭化水素縮合環基である任意の分子、2個以上の縮合環の多環式飽和炭化水素縮合環基1個以上で置換された任意の分子、又は3〜7個の環炭素の単環式飽和炭化水素基2個以上で置換された任意の分子を意味する。多環式飽和炭化水素縮合環基は、好ましくは2個の縮合環から成る。該シクロパラフィン基は所望により一以上の、好ましくは1〜3個の置換基で置換されていてもよい。代表的例は、デカヒドロナフタレン、オクタヒドロペンタレン、3,7,10−トリシクロヘキシルペンタデカン、デカヒドロ−1−(ペンタデカン−6−イル)ナフタレン、等を含むが、それらに限定されない。
【0034】
ブルックフィールド粘度:ASTM D2983−03は、低温における自動車用流体潤滑剤の低せん断速度粘度を測定するのに使用される。自動変速機油、ギヤオイル、トルク及びトラクター流体、及び工業用並びに自動車用油圧作動油の低温低せん断速度粘度は頻繁にブルックフィールド粘度により特定される。GM2003DEXRON(登録商標)III自動変速機油の規格は、20,000cPという−40℃における最大ブルックフィールド粘度を必要としている。Ford MERCON(登録商標)Vの規格は、5,000cPと13,000cPの間のブルックフィールド粘度を必要としている。75Wギヤ潤滑剤に対する自動車用ギヤ潤滑剤粘度分類SAE(自動車技術者協会)J306は、150,000cPの粘度に対する最高温度は−40℃であるという低温粘度規格を有している。本発明の潤滑剤混合物は、100,000cPより低い、好ましくは60,000cPより低い、好ましくは50,000cPより低い、より好ましくは35,000cPより低い、更により好ましくは25,000cPより低い、更により好ましくは15,000cPより低い、−40℃におけるブルックフィールド粘度を有する。
【0035】
【表1】

【0036】
該潤滑剤混合物及びこれらの潤滑剤混合物を含む完成ギヤオイルは、−40℃における非常に低いブルックフィールド粘度に加えて、良好な動粘度、低いノアク揮発度、高い酸化安定度、及び低い流動点並びに曇り点をふくむ望ましい性質を示す。
【0037】
動粘度は重力下にある流体の流動抵抗の測定値である。多数の潤滑剤基油、それらから製造された完成潤滑剤、及び装置の正しい操作は、使用される流体の適切な粘度に依存する。動粘度はASTM D445−01により測定される。該結果はセンチストークス(cSt)で報告される。本発明の潤滑剤混合物は100℃において約3.0cSt以上の動粘度を有する。一態様において、該潤滑剤混合物は100℃において約3.0cSt以上で約5.0cSt未満の動粘度を有する。他の態様において、該潤滑剤混合物は100℃において約5.0cSt以上で約7.0cSt未満の動粘度を有する。
【0038】
パラフィン系の高いワックスから誘導された該潤滑剤基油留分は100℃で約2cStと20cStの間の動粘度を有する。パラフィン系の高いワックスから誘導された該潤滑剤基油留分は100℃においてこの範囲内で変化する動粘度を有することが出来る。好ましくは、パラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油留分は100℃で約2cStと12.0cStの間の動粘度を有する。一態様において、パラフィン系の高いワックスから誘導された該潤滑剤基油留分は100℃で約2.0cStと3.0cStの間の動粘度を有する。他の態様において、パラフィン系の高いワックスから誘導された該潤滑剤基油留分は100℃で約3.0cStと6.0cStの間の動粘度を有する。
【0039】
粘度指数(VI)は、該油の動粘度に対する温度変化の影響を示す実験的無名数である。液体は温度とともに粘度を変化させ加熱されるとより粘ちゅうでなくなるが、油のVIが高ければ高い程温度とともに粘度を変化させる傾向はますます低い。広く変化する温度で比較的に一定の粘度が必要とされる場合、高VI潤滑剤が必要である。例えば自動車において、エンジンオイルは常温始動を可能にする程充分自由に流動しなければならないが、完全な潤滑を提供するため暖機運転後は充分粘ちゅうでなければならない。VIはASTM D2270−93に説明されているように測定することが出来る。好ましくは、本発明の潤滑剤混合物は120よりも大きな粘度指数を有する。
【0040】
パラフィン系の高いワックスから誘導された該潤滑剤基油留分の「粘度指数係数」は、パラフィン系の高いワックスから誘導された該潤滑剤基油留分の動粘度から誘導される実験的数である。該粘度指数係数は、以下の式:
粘度指数係数=28xln(パラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油留分の100℃における動粘度)+95
により計算される。パラフィン系の高いワックスから誘導された該潤滑剤基油留分は、粘度指数係数より大きな粘度指数を有することが出来る。
【0041】
流動点は、潤滑剤基油のサンプルが注意深く制御された条件下で流れ始める温度の測定値である。流動点は、ASTM D5950−02に説明されているように測定することが出来る。該結果は摂氏温度で報告される。多数の市販潤滑剤基油が流動点に対して規格を有している。潤滑剤基油が低い流動点を有する場合、それらは又他の良好な低温特性、例えば、低い曇り点、低い低温フィルタつまり点、及び低温クランキング粘度を有し易い。曇り点は、流動点に対して補足的な測定値であり、潤滑剤基油のサンプルが注意深く特定された条件下で曇りを発現し始める温度として表現される。曇り点は、例えば、ASTM D5773−95により測定することが出来る。約35℃より低い流動点・曇り点のひろがりを有する潤滑剤基油が望ましい。流動点・曇り点のひろがりがより高いと、曇り点の規格を満たすために、非常に低い流動点まで潤滑剤基油を処理する必要がある。本発明の潤滑剤混合物及び混合された完成潤滑剤の流動点・曇り点のひろがりは、一般に約35℃より低く、好ましくは約25℃より低く、より好ましくは約10℃より低い。
【0042】
ノアク揮発度は、ASTM D5800により、試験るつぼ中で一定流の空気を60分間引き出しながら油を250℃及び大気圧より低い20mmHg(2.67kPa;26.7mbar)で加熱する時に失われる重量%で表した油の質量として定義される。より便利なノアク揮発度の計算方法であってASTM D5800と関連しているものは、ASTM D6375により熱重量分析器試験(TGA)を使用することによる。特に明記しない限り、TGAノアク揮発度が本開示を通して使用される。TGAノアク及び同様の方法により測定されたエンジンオイルのノアク揮発度は、乗用自動車エンジンにおける油消費と関連があることが分っている。低い揮発度に対する厳しい要件は、例えば、ヨーロッパにおけるACEA A−3並びにB−3、及び北アメリカにおけるILSAC GF−3のような最近のいくつかのエンジンオイル規格の重要な局面である。本発明のパラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油留分は、50重量%より低いノアク揮発度を有することが出来る。
【0043】
パラフィン系の高いワックスから誘導された該潤滑剤基油留分の「ノアク揮発度係数」は、パラフィン系の高いワックスから誘導された該潤滑剤基油留分の動粘度から誘導される実験的数である。ノアク揮発度係数は以下の式:
ノアク揮発度係数=1000(パラフィン系の高いワックスから誘導された該潤滑剤基油留分の100℃における動粘度)−2.7
により計算される。好ましくは、パラフィン系の高いワックスから誘導された該潤滑剤基油留分は、上記式により計算されたノアク揮発度係数より低いノアク揮発度を有する。
【0044】
L−4触媒を用いたOxidator BN試験は、ドーント型の酸素吸収装置を用いて酸化抵抗性を測定する試験である(Industrial and Engineering Chemistry、1936年、28巻、26頁、R.W.Dornteの「ホワイト油の酸化」)。普通、該状況は340°Fの純粋な酸素から成る1種類の雰囲気であり、100gの油により1000mlのOを吸収するまでの時間が報告される。該L−4触媒を用いたOxidator BN試験においては、100gの油当り0.8mlの触媒が使用される。該触媒は、使用されたクランクケース油の平均金属分析を模擬する灯油中溶解性金属ナフテン酸塩の混合物である。溶解性金属ナフテン酸塩の該混合物は、使用されたクランクケース油の平均金属分析を模擬している。該触媒中の金属の量は以下の通りである。銅=6,927ppm、鉄=4,083ppm、鉛=80,208ppm、マンガン=350ppm、錫=3,565ppm 。該添加剤パッケージは、100gの油当り80ミリモルのビスポリプロピレンフェニルジチオ燐酸亜鉛、又は約1.1グラムのOLOA(登録商標)260である。L−4触媒を用いたOxidator BN試験は、模擬された用途における完成潤滑剤の応答を測定する。高い値、即ち、1リッターの酸素を吸着する長い時間は、良好な安定性を示す。OLOA(登録商標)は、Chevron Texaco Oronite Companyの登録商標であるOronite潤滑油添加剤(登録商標)の略語である。
【0045】
一般に、L−4触媒を用いたOxidator BN試験の結果は、約7時間より長くなければならない。好ましくは、L−4を用いたOxidator BNの値は、約10時間より長いだろう。本発明の潤滑剤混合物のフィッシャー・トロプシュ誘導潤滑剤基油留分は、10時間よりはるかに長い結果を有する。好ましくは、本発明の潤滑剤混合物のフィッシャー・トロプシュ誘導潤滑剤基油留分は、25時間より長いL−4触媒を用いたOxidator BN試験結果を有する。
【0046】
パラフィン系の高いワックス
本発明の潤滑剤基油留分を製造するのに使用されるパラフィン系の高いワックスは、高含量のn−パラフィンを有する任意のワックスであり得る。好ましくは、該パラフィン系の高いワックスは、40重量%より多くの、好ましくは50重量%より多くの、より好ましくは75重量%より多くのn−パラフィンを含む。好ましくは、本発明で使用されるパラフィン系の高いワックスは又、非常に低い量の窒素及び硫黄、一般には25ppm未満の、好ましくは20ppm未満の窒素及び硫黄の組合せ合計量を有する。本発明で使用できるパラフィン系の高いワックスの例には、粗ろう、脱油粗ろう、精製ろう下油、ワックス状潤滑剤ラフィネート、n−パラフィンワックス、NAO(直鎖αオレフィン)ワックス、化学的プラント法で製造されたワックス、脱油石油誘導ワックス、微結晶ろう、フィッシャー・トロプシュワックス、及びそれらの混合物が含まれる。本発明で有用なパラフィン系の高いワックスの流動点は、50℃より高く、好ましくは60℃より高い。
【0047】
これらのパラフィン系の高いワックスは、高い重量パーセントのシクロパラフィン官能性分子、及びモノシクロパラフィン官能性分子対マルチシクロパラフィン官能性分子の非常に高い重量パーセント比(即ち、高重量パーセントのモノシクロパラフィン官能性分子及び非常に低い重量パーセントのマルチシクロパラフィン官能性分子)を有する潤滑剤基油留分を提供するように処理出来ることが発見された。これらの潤滑剤基油留分を使用して−40℃における非常に良好なブルックフィールド粘度を示す潤滑剤混合物を提供することが出来る。従って、これらの潤滑剤基油留分を使用して高品質ギヤオイルを製造することが出来る。好ましい一態様において、該パラフィン系の高いワックスはフィッシャー・トロプシュ誘導ワックスでありフィッシャー・トロプシュ誘導潤滑剤基油留分を提供する。
【0048】
油留分を提供する方法
本発明による潤滑剤混合物は、パラフィン系の高いワックスから誘導された少なくとも1種の潤滑剤基油留分、石油誘導基油、及び流動点降下剤を含む。本発明のパラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油留分は、パラフィン系の高いワックスから水素異性化を含む方法により製造される。好ましくは、パラフィン系の高い該ワックスは、貴金属水素化成分を含む形状選択性中間孔径分子篩を用いて約600°F〜750°Fの条件下で水素異性化される。該水素異性化からの生成物は精留されて、100℃で約2cStと20cStの間の動粘度を有し、又0.30重量パーセントより少ない芳香族化合物、5重量パーセントより多いシクロパラフィン官能性分子、及び15よりも大きい、モノシクロパラフィン官能性分子対マルチシクロパラフィン官能性分子の重量パーセント比を有する一つ以上の留分を提供する。該潤滑剤基油留分を使用して、100℃で約3cSt以上の動粘度及び−40℃で100,000cPより低いブルックフィールド粘度を有する潤滑剤混合物を提供する。
【0049】
好ましい一態様において、該パラフィン系の高いワックスはフィッシャー・トロプシュ誘導ワックスでありフィッシャー・トロプシュ誘導潤滑剤基油留分を提供する。
【0050】
これらの潤滑剤基油留分は、パラフィン系の高いワックスを提供し、次に該パラフィン系の高いワックスを水素異性化して異性化油を提供することを特徴とする方法により製造される。該方法は、該水素異性化方法から得られた異性化油を精留して100℃で約2cStと20cStの間の、好ましくは100℃で約2cStと12cStの間の動粘度を有する一つ以上の留分を提供することを更に含むことが出来る。上述の性質を有する潤滑剤基油留分が得られる。
【0051】
好ましい態様において、本発明による潤滑剤基油留分はフィッシャー・トロプシュ誘導潤滑剤基油留分である。非常に良好なブルックフィールド粘度を示す潤滑剤混合物に使用されるフィッシャー・トロプシュ誘導潤滑剤基油留分は、フィッシャー・トロプシュ合成法に続く該フィッシャー・トロプシュ合成原油のワックス状留分の水素異性化により製造される。
【0052】
フィッシャー・トロプシュ合成
フィッシャー・トロプシュ化学において、合成ガスは反応性条件下フィッシャー・トロプシュ触媒との接触により液体炭化水素に変換される。典型的には、メタン及び所望によってより重質の炭化水素(エタン及びより重質のもの)を従来の合成ガス発生器に通して送り合成ガスを提供することが出来る。一般に合成ガスは、水素及び一酸化炭素を含有し、少量の二酸化炭素及び(又は)水を含んでいても良い。合成ガスにおける硫黄、窒素、ハロゲン、セレン、燐、及び砒素の汚染物質の存在は望ましくない。この理由のため、又合成ガスの品質によって、フィッシャー・トロプシュ化学を行う前に該供給物から硫黄及び他の汚染物質を除去することが好ましい。これらの汚染物質を除去する手段は当業者に周知である。例えば、ZnO保護床は硫黄不純物を除去するのに好ましい。他の汚染物質を除去する手段は当業者に周知である。又、フィッシャー・トロプシュ反応器の前の合成ガスを精製して合成ガス反応中に生成した二酸化炭素及びまだ除去されてない更なる任意の硫黄化合物を除去することが望ましいであろう。これは、例えば、合成ガスを充填塔中の弱アルカリ性溶液(例えば、炭酸カリウム水溶液)と接触させることにより成し遂げることが出来る。
【0053】
フィッシャー・トロプシュ法においては、H及びCOの混合物を含む合成ガスをフィッシャー・トロプシュ触媒と適切な温度及び圧力の反応性条件下で接触させると、液体状及び気体状の炭化水素が形成される。フィッシャー・トロプシュ反応は典型的に、約300〜700°F(149〜371℃)、好ましくは約400〜550°F(204〜228℃)の温度、約10〜600psia(0.7〜41バール)、好ましくは約30〜300psia(2〜21バール)の圧力、及び約100〜10,000cc/g/hr、好ましくは約300〜3,000cc/g/hrの触媒空間速度で行われる。フィッシャー・トロプシュ型反応を行うための条件の例は当業者に周知である。
【0054】
フィッシャー・トロプシュ合成法の生成物は、大部分がC〜C100+の範囲であるが、CからC200+まで変動し得る。該反応は、種々のタイプの反応器、例えば、1個以上の触媒床を含有する固定床反応器、スラリー反応器、流動床反応器、又は異なるタイプの反応器の組合せの中で行うことが出来る。かかる反応方法及び反応器は周知であり文献に記録されている。
【0055】
本発明の実施に好ましいスラリー・フィッシャー・トロプシュ法は、発熱性の強い該合成反応に対して優れた熱(及び質量)移動特性を利用しているので、コバルト触媒を使用している場合、比較的高い分子量のパラフィン系炭化水素を製造することが出来る。該スラリー法において、水素および一酸化炭素の混合物を含む合成ガスは、該反応条件下で液状である該合成反応の炭化水素生成物を含むスラリー液体に分散懸濁された粒状のフィッシャー・トロプシュ型炭化水素合成触媒を含むスラリーに通して第三相としてブクブク泡立てる。水素対一酸化炭素のモル比は、約0.5から約4まで幅広く変動し得るが、より典型的には約0.7〜約2.75の範囲内、好ましくは約0.7〜約2.5である。特に好ましいフィッシャー・トロプシュ法はEP0609079に教示されているが、それを又あらゆる目的のために本明細書に完全に引用して援用する。
【0056】
一般に、フィッシャー・トロプシュ触媒は金属酸化物支持体上にVIII族遷移金属を含有している。該触媒は又貴金属促進剤及び(又は)結晶性分子篩を含有していても良い。適切なフィッシャー・トロプシュ触媒はFe,Ni,Co,Ru及びReの1種以上を含むが、コバルトが好ましい。好ましいフィッシャー・トロプシュ触媒は、適切な無機支持体材料、好ましくは1種以上の耐火性金属酸化物を含む該材料の上に、有効量のコバルト及びRe,Ru,Fe,Ni,Th,Zr,Hf,U,Mg及びLaの1種以上を含む。一般に、該触媒中に存在するコバルトの量は、全触媒組成物の約1重量パーセントと約50重量パーセントの間である。該触媒は又、ThO,La,MgO及びTiOのような塩基性酸化物促進剤、ZrOのような促進剤、貴金属(Pt,Pd,Ru,Rh,Os,Ir)、貨幣金属(Cu,Ag,Au)、及びFe,Mn,Ni及びReのような他の遷移金属を含有することも出来る。適切な支持体材料には、アルミナ、シリカ、マグネシア及びチタニア又はそれらの混合物が含まれる。コバルト含有触媒用の好ましい支持体にはチタニアが含まれる。有用な触媒及びそれらの製造は知られており米国特許第4,568,663号に説明されているが、該特許は触媒選択に関して説明するものであるが限定するものではないことを意図する。
【0057】
いくつかの触媒は抑えるには比較的低い鎖成長可能性を提供することがしられており、該反応生成物は比較的高割合の低分子量(C2−8)オレフィン及び比較的低割合の高分子量(C30+)ワックスを含む。他のいくつかの触媒は比較的高い鎖成長可能性を提供することがしられており、該反応生成物は比較的低割合の低分子量(C2−8)オレフィン及び比較的高割合の高分子量(C30+)ワックスを含む。かかる触媒は当業者に周知であり、容易に得ること及び(又は)製造することが出来る。
【0058】
フィッシャー・トロプシュ法からの生成物は、主にパラフィンを含有する。フィッシャー・トロプシュ反応からの生成物は、一般に軽質反応生成物及びワックス状反応生成物を含む。該軽質反応生成物(即ち、凝縮物留分)は、約700°Fより下で沸騰する炭化水素(例えば、中間留出燃料を通るテールガス)であって、大部分がC〜C20の範囲で約C30まで量が減少する炭化水素を含む。該ワックス状反応生成物(即ち、ワックス留分)は、約600°Fより上で沸騰する炭化水素(例えば、重質パラフィンを通る減圧軽油)であって、大部分がC20+の範囲でC10まで量が減少する炭化水素を含む。該軽質反応生成物及び該ワックス状生成物は両方とも実質的にパラフィン系である。該ワックス状生成物は、一般に70重量%より多くの直鎖パラフィンを、度々80重量%より多くの直鎖パラフィンを含む。該軽質反応生成物は、かなりの割合のアルコール及びオレフィンと共にパラフィン系生成物を含む。場合によっては、該軽質反応生成物は50重量%程の、そして更に多くのアルコール及びオレフィンを含み得る。本発明の潤滑剤混合物及び混合完成潤滑剤に使用されるフィッシャー・トロプシュ誘導潤滑剤基油留分を提供する方法への供給原料として使用されるのは、該ワックス状反応生成物(即ち、ワックス留分)である。
【0059】
本発明に有用なフィッシャー・トロプシュ・ワックスは、炭素数60以上の生成物対炭素数30以上の生成物の重量比が0.18より低い。炭素数60以上の生成物対炭素数30以上の生成物の重量比は、次のように測定される。1)ASTM D6352を用いて模擬蒸留によりフィッシャー・トロプシュ・ワックスの沸点分布を測定し、2)ASTM D6352−98の表1に公表されているn−パラフィンの沸点を用いて、該沸点を炭素数による重量パーセント分布に変換し、3)炭素数30以上の生成物の重量パーセントを合計し、4)炭素数60以上の生成物の重量パーセントを合計し、そして5)炭素数60以上の生成物の合計重量パーセントを炭素数30以上の生成物の合計重量パーセントで割る。本発明の他の態様は、炭素数60以上の生成物対炭素数30以上の生成物の重量比が0.15より低い、好ましくは0.10よい低いフィッシャー・トロプシュ・ワックスを使用する。
【0060】
該潤滑剤混合物に使用されるフィッシャー・トロプシュ潤滑剤基油留分は、該フィッシャー・トロプシュ合成原油のワックス状留分から水素異性化を含む方法により製造される。好ましくは、該フィッシャー・トロプシュ潤滑剤基油は、2003年12月23日に出願された米国出願番号10/744,870に記載された方法により製造されるが、該出願全体を本明細書に引用して援用する。本発明の潤滑剤混合物及び混合完成潤滑剤に使用されるフィッシャー・トロプシュ潤滑剤基油留分は、該潤滑剤混合物の成分を受け取って混合する場所とは異なる場所で製造することが出来る。
【0061】
水素異性化
該パラフィン系の高いワックスは水素異性化を含む方法を受けて、本発明による潤滑剤混合物に使用される潤滑剤基油留分を提供する。
【0062】
水素異性化は、分子構造に分岐を選択的に加えることにより潤滑剤基油留分の低温流れ特性を改良するように意図されている。水素異性化は理想的には、分解による変換を最小にすると同時に、フィッシャー・トロプシュ・ワックスから非ワックス状イソパラフィンへの高変換レベルを達成するであろう。好ましくは、本発明における水素異性化条件は、該ワックス供給物における約700°Fより上で沸騰する化合物から約700°Fより下で沸騰する化合物への変換を約10重量%と50重量%の間、好ましくは15重量%と45重量%の間に維持するように制御される。
【0063】
本発明によれば、水素異性化は形状選択性中間孔径分子篩を用いて行われる。本発明に有用な水素異性化触媒は、形状選択性中間孔径分子篩及び所望により耐火性酸化物支持体上の触媒活性水素化金属成分を含む。本明細書で使用される「中間孔径」という句は、該多孔性無機酸化物がか焼形状にある場合の、約3.9〜約7.1Åの範囲の有効孔口径を意味する。本発明の実施に使用される形状選択性中間孔径分子篩は、一般に1−D 10−,11−又は12−環分子篩である。本発明の好ましい分子篩は1−D 10−環という種類であるが、10−(又は11−又は12−)環分子篩は酸素により結合された10(又は11又は12)個の正四面体配位原子(T原子)を有する。1−D分子篩において、10−環(又はそれより大きな)孔は互いに並列であって連結していない。しかしながら、該中間孔径分子篩のより広い定義を満たすが8員環を有する交差孔を含む1−D 10−環分子篩も又本発明の分子篩の定義内に含めることが出来ることに注意すべきである。1−D、2−D及び3−Dというゼオライト内チャンネルの分類は、1984年、NATO(北大西洋条約機構)ASI(米国規格学会)シリーズ、F.R.Rodrigues、L.D.Rollman及びC.Naccache編集、Zeolites,Science and Technology(ゼオライト科学技術)にR.M.Barrerにより記載されているが、その分類を全体的に引用して援用する(特に75頁参照)。
【0064】
水素異性化に使用される好ましい形状選択性中間孔径分子篩、例えば、SAPO−11、SAPO−31及びSAPO−41は燐酸アルミニウムに基づいている。SAPO−11及びSAPO−31がより好ましく、SAPO−11が最も好ましい。SM−3は、特に好ましい形状選択性中間孔径SAPOであり、それはSAPO−11分子篩の結晶性構造の範囲内に入る結晶性構造を有する。SM−3の製造及びその特異な特性は、米国特許第4,943,424及び5,158,665号に記載されている。水素異性化に使用されるやはり好ましい形状選択性中間孔径分子篩は、ZSM−22,ZSM−23,ZSM−35,ZSM−48,ZSM−57,SSZ−32、オフレタイト、及びフェリエライトのようなゼオライトである。SSZ−32及びZSM−23がより好ましい。
【0065】
好ましい中間孔径分子篩は、該チャンネルの選択された無結晶直径、選択された結晶子寸法(選択されたチャンネル長に相当する)、及び選択された酸性度を特徴とする。該分子篩のチャンネルの望ましい無結晶直径は、7.1オングストローム以下の最大無結晶直径及び3.9オングストローム以上の最小無結晶直径を有し、約3.9〜約7.1オングストロームの範囲にある。好ましくは、最大無結晶直径は7.1オングストローム以下であり、最小無結晶直径は4.0オングストローム以上である。最も好ましくは、最大無結晶直径は6.5オングストローム以下であり、最小無結晶直径は4.0オングストローム以上である。分子篩のチャンネルの無結晶直径は、Ch.Baerlocher,W.M.Meier,及びD.H.Olsonによる、2001年、第5改訂版、「Atlas of Zeolite Framework Types(ゼオライトフレーム構造タイプの図表集)」、エルゼビア、10〜15頁に公表されているが、それを本明細書に引用して援用する。
【0066】
本方法に有用な特に好ましい中間孔径分子篩は、例えば、米国特許第5,135,638及び5,282,958号に記載されているが、それらの内容全体をここに引用して援用する。米国特許第5,282,958号において、かかる中間孔径分子篩は、約0.5ミクロン以下の結晶子寸法及び少なくとも約4.8Åの最小直径並びに約7.1Åの最大直径を有する孔を有する。該触媒は、その0.5グラムが管状反応器中に置かれた場合370℃、1200psigの圧力、160ml/分の水素流量、及び1ml/時間の供給物速度でヘキサデカンの少なくとも50%を変換するのに充分な酸性度を有する。該触媒は又、直鎖ヘキサデカン(n−C16)から他の種への96%変換をもたらす条件下で使用された場合、40パーセント以上の異性化選択率{異性化選択率は次のようにして測定される。100x(生成物中分岐C16の重量%)/(生成物中分岐C16の重量%+生成物中C13−の重量%)}を示す。
【0067】
かかる特に好ましい分子篩は、約4.0〜約7.1Åの範囲の、好ましくは4.0〜6.5Åの範囲の無結晶直径を有する孔又はチャンネルにより更に特徴付けることが出来る。分子篩のチャンネルの無結晶直径は、Ch.Baerlocher,W.M.Meier,及びD.H.Olsonによる、2001年、第5改訂版、「Atlas of Zeolite Framework Types(ゼオライトフレーム構造タイプの図表集)」、エルゼビア、10〜15頁に公表されているが、それを本明細書に引用して援用する。
【0068】
もしも或る分子篩のチャンネルの無結晶直径が知られていないならば、該分子篩の有効孔径は標準吸着技術及び動力学的最小直径の知られた炭化水素質化合物を用いて測定することが出来る。BreckのZeolite Molecular Sieves(ゼオライト分子篩)、1974年版(特に8章);Anderson等のJ.Catalysis 58,114(1979年);及び米国特許第4,440,871号を参照して頂きたいが、それらの関連部分を本明細書に引用して援用する。孔径を測定するため吸着測定を行う際には、標準技術を使用する。もしも該分子篩上で約10分未満のうちに平衡吸着値の少なくとも95%に到達しないならば、特定の分子は除外されていると考えるのが便利である(25℃でp/p=0.5)。中間孔径分子篩は、5.3〜6.5オングストロームの動力学的直径を有する分子をほとんど妨げなく典型的に入れる。
【0069】
本発明に有用な水素異性化触媒は、触媒活性水素化金属を含む。触媒活性水素化金属の存在は、生成物の改良、特にVI(粘度指数)及び安定性の改良をもたらす。典型的な触媒活性水素化金属には、クロム、モリブデン、ニッケル、バナジウム、コバルト、タングステン、亜鉛、白金、及びパラジウムが含まれる。白金及びパラジウム金属が特に好ましいが、白金が最も特に好ましい。白金及び(又は)パラジウムを使用する場合、活性水素化金属の全量は典型的に全触媒の0.1〜5重量パーセント、通常は0.1〜2重量パーセントの範囲にあり、10重量パーセントを超えるべきでない。
【0070】
該耐火性酸化物支持体は、シリカ、アルミナ、シリカ・アルミナ、マグネシア、チタニア、及びそれらの組合せを含む、従来から触媒に使用されている酸化物支持体から選択することが出来る。
【0071】
水素異性化用の条件は、約0.3重量%より少ない芳香族化合物、5重量%より多いシクロパラフィン官能性分子、及び15よりも大きい、モノシクロパラフィン官能性分子対マルチシクロパラフィン官能性分子の重量パーセント比を有する潤滑剤基油留分を達成するように調整される。好ましくは、該条件は、約0.3重量%より少ない芳香族化合物、10重量%より多いシクロパラフィン官能性分子、及び15よりも大きい、モノシクロパラフィン官能性分子対マルチシクロパラフィン官能性分子の重量パーセント比を有する潤滑剤基油留分を提供する。他の好ましい態様において、該条件は、約0.3重量%より少ない芳香族化合物、10より高い重量パーセントのモノシクロパラフィン官能性分子、及び0.1より低い重量パーセントのマルチシクロパラフィン官能性分子を含む潤滑剤基油留分を提供する。
【0072】
水素異性化用の条件は、使用した供給物の性質、使用した触媒、該触媒が硫化されているか否か、所望の収率、及び潤滑剤基油の所望の性質に依存する。本発明の水素異性化法を行うことが出来る条件には、約500°F〜約775°F(260℃〜約413℃)、好ましくは600°F〜約750°F(315℃〜約399℃)、より好ましくは約600°F〜約700°F(315℃〜約371℃)の温度、及び約15〜3000psig、好ましくは100〜2500psigの圧力が含まれる。これに関連して水素異性化圧力は水素異性化反応器内の水素分圧のことを言うが、該水素分圧は全圧と実質的に同じ(又はほとんど同じ)である。接触中の液空間速度は一般に約0.1〜20hr−1、好ましくは約0.1〜約5hr−1である。水素対炭化水素の比は、1モルの炭化水素当り約1.0〜約50モルのH、より好ましくは1モルの炭化水素当り約10〜約20モルのHの範囲内に含まれる。水素異性化を行うための適切な条件は、米国特許第5,282,958及び5,135,638号に説明されているが、その内容を全体的に引用して援用する。
【0073】
水素異性化処理中水素は反応帯域中に、典型的に約0.5〜30MSCF/bbl(1バレル当り千標準立方フィート)、好ましくは約1〜約10MSCF/bblの水素対供給物比で存在する。水素は生成物から分離して反応帯域に再循環させることが出来る。
【0074】
水素処理法
水素異性化法へのパラフィン系の高いワックス供給物は、水素異性化の前に水素処理することが出来る。水素処理法は通常遊離水素の存在下で行われる接触方法のことを言うが、その主目的は、砒素、アルミニウム及びコバルトのような種々の金属汚染物質;硫黄及び窒素のような異原子;酸化体;又は芳香族化合物を該供給原料から除去することである。一般に水素処理操作において、炭化水素分子の分解、即ち、比較的大きな炭化水素分子を比較的小さな炭化水素分子に分割することは最小にされ、炭化水素は完全に又は部分的に水素化される。
【0075】
水素処理操作を行うのに使用される触媒は当該技術において周知である。例えば、米国特許第4,347,121及び4,810,357号を参照して頂きたいが、水素処理、水素化分解、及びそれら方法の各々に使用される典型的触媒の一般的説明のために、それら特許の内容を全体としてここに引用して援用する。適切な触媒は、アルミナ又は珪質基材上の白金又はパラジウムのようなVIIIA族(国際純正および応用化学連合の1975年規則による)からの貴金属、及びアルミナ又は珪質基材上のニッケル・モリブデン又はニッケル・錫のようなVIII族及びVIB族を含む。米国特許第3,852,207号は適切な貴金属触媒及び穏やかな条件を記載している。他の適切な触媒は、例えば、米国特許第4,157,294及び3,904,513号に記載されている。ニッケル・モリブデンのような水素化非貴金属は、通常酸化物として最終触媒組成物中に存在するが、通常還元された形で、又は、含まれる特定の金属から硫化物化合物が容易に形成される場合には硫化された形で使用される。好ましい非貴金属触媒組成物は、相当する酸化物として測定して約5重量パーセントを超える、好ましくは約5〜約40重量パーセントのモリブデン及び(又は)タングステン、及び少なくとも約0.5、一般的には約1〜約15重量パーセントのニッケル及び(又は)コバルトを含有する。白金のような貴金属を含有する触媒は、0.01パーセントを超える金属、好ましくは0.1パーセントと1.0パーセントの間の金属を含有する。又、白金及びパラジウムの混合物のような貴金属の組合せを使用することも出来る。
【0076】
典型的な水素処理条件は広い範囲で変動する。一般に、全体的LHSV(液空間速度)は約0.25〜2.0、好ましくは約0.5〜1.5である。水素分圧は200psiaより大きく、好ましくは約500psia〜約2000psiaで変動する。水素再循環割合は典型的に50SCF/Bblより大きく、好ましくは1000SCF/Bblと5000SCF/Bblの間である。反応器中の温度は約300°F〜約750°F(約150℃〜約400℃)、好ましくは450°F〜725°F(230℃〜385℃)で変動する。
【0077】
水素化仕上げ法
水素化仕上げ法は、パラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油留分を提供する水素異性化に続く工程として使用することが出来る水素処理法である。水素化仕上げ法は、微量の芳香族化合物、オレフィン、色物体、及び溶剤を除去することにより潤滑剤基油生成物の酸化安定性、UV(紫外線)安定性、及び外観を改良することを意図している。本開示で使用する場合、UV(紫外線)安定性という用語は、潤滑剤基油又は完成潤滑剤を紫外線及び酸素に曝した時の安定性を言う。紫外線及び空気に曝した時、通常凝集塊又は曇りとして見える可視沈殿物が形成されるか、又はより暗い色が現れる場合、不安定性が示される。水素化仕上げ法の一般的説明は、米国特許第3,852,207及び4,673,487号に見出すことが出来る。
【0078】
本発明の潤滑剤基油留分は、水素化仕上げして生成物の品質及び安定性を改良することが出来る。水素化仕上げ中、全体的液空間速度(LHSV)は約0.25〜2.0hr−1、好ましくは約0.5〜1.0hr−1である。水素分圧は200psiaより大きく、好ましくは約500psia〜約2000psiaで変動する。水素再循環割合は典型的に50SCF/Bblより大きく、好ましくは1000SCF/Bblと5000SCF/Bblの間である。温度は約300°F〜約750°F、好ましくは450°F〜600°Fで変動する。
【0079】
適切な水素化仕上げ触媒は、アルミナ又は珪質基材上の白金又はパラジウムのようなVIIIA族(国際純正および応用化学連合の1975年規則による)からの貴金属、及びアルミナ又は珪質基材上のニッケル・モリブデン又はニッケル・錫のような未硫化VIIIA族及びVIB族を含む。米国特許第3,852,207号は適切な貴金属触媒及び穏やかな条件を記載している。他の適切な触媒は、例えば、米国特許第4,157,294及び3,904,513号に記載されている。非貴金属(例えば、ニッケル・モリブデン及び(又は)タングステン)触媒は、モリブデン及び(又は)タングステン、及び相当する酸化物として測定して少なくとも約0.5、一般的には約1〜約15重量パーセントのニッケル及び(又は)コバルトを含有する。(白金のような)貴金属の触媒は、0.01パーセントを超える金属、好ましくは0.1パーセントと1.0パーセントの間の金属を含有する。又、白金及びパラジウムの混合物のような貴金属の組合せを使用することも出来る。
【0080】
不純物を除去するためのクレー処理は、パラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油留分を提供するための選択的最終処理工程である。
【0081】
分別蒸留
潤滑剤基油留分を提供する方法は、水素異性化の前にパラフィン系の高いワックス供給物を精留することを所望により含むことが出来る。更に、潤滑剤基油留分を提供する方法は、水素異性化法から得られた異性化油を精留して複数の潤滑剤基油留分を提供することを含むことも出来る。パラフィン系の高いワックス供給物又は異性化油の留分への分別蒸留は、一般に、常圧蒸留又は減圧蒸留により、又は常圧蒸留及び減圧蒸留の組合せにより遂行される。常圧蒸留は典型的に、ナフサ及び中間留出物のような比較的軽質の留出物留分を約600°F〜約750°F(約315℃〜約399℃)より高い初期沸点を有する塔底留分から分離するのに使用される。比較的高い温度では、炭化水素の熱分解が起って装置の汚損をもたらし比較的重質の留分の収率を低下させる可能性がある。減圧蒸留は典型的に、潤滑剤基油留分のような比較的高い沸点の物質を異なる沸点範囲の留分に分離するのに使用される。潤滑剤基油を異なる沸点範囲の留分に精留することにより、潤滑剤基油製造プラントは一種の等級又は粘度より多くの潤滑剤基油を製造することが典型的に可能となる。
【0082】
本発明によれば、異性化油を異なる沸点範囲の留分に精留することにより、本明細書に記載された性質を有する潤滑剤基油留分を得ることが出来る。従って、異性化油を精留して100℃で約2cStと20cStの間、好ましくは100℃で約2cStと12cStの間の動粘度を有する1種以上の留分を提供することが出来る。
【0083】
本発明の潤滑剤混合物は、異性化油から分別蒸留により得られた、本明細書に記載された性質を有する1種以上の留分を含むことが出来る。
【0084】
溶剤脱蝋
パラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油留分を製造する方法は、水素異性化法に続く溶剤脱蝋工程を含むことも出来る。溶剤脱蝋は、水素異性化後に潤滑剤基油から少量の残留ワックス状分子を除去するために所望により使用することが出来る。1960年、New YorkのMcGraw−Hill Book Company,Inc.出版、William Gruse及びDonald StevensによるChemical Technology of Petroleum(石油の化学技術)、第三版、566〜570頁で検討されているように、溶剤脱蝋は、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、又はトルエンのような溶剤に潤滑剤基油を溶解するか、又はワックス分子を沈澱させることにより行われる。溶剤脱蝋は又、米国特許第4,477,333、3,773,650及び3,775,288号に説明されている。
【0085】
パラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油留分
本発明による潤滑剤混合物は、本明細書に説明されているように合成された、パラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油留分を含む。好ましい態様において、本発明による潤滑剤基油留分はフィッシャー・トロプシュ誘導潤滑剤基油留分である。
【0086】
パラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油留分は、100℃で約2cStと20cStの間、好ましくは100℃で約2cStと12cStの間の粘度を有する。パラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油留分は、動粘度を変化させることが出来る。一態様において、パラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油留分は100℃で約2cStと3cStの間の粘度を有する。他の態様において、パラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油留分は100℃で約2cStと20cStの間の粘度を有する。
【0087】
好ましくは、パラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油留分の粘度指数は、以下の式:
粘度指数係数=28xln(パラフィン系の高いワックスから誘導された該潤滑剤基油留分の100℃における動粘度)+95
により計算された粘度指数係数より高い。
【0088】
パラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油留分のいくつかの動粘度は比較的低いにも拘わらず、これら潤滑剤基油留分のノアク揮発度は同様な動粘度の石油誘導従来系グループI及びグループII基油のそれよりはるかに低い。好ましくは、パラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油留分のノアク揮発度は、以下の式:
ノアク揮発度係数=1000(パラフィン系の高いワックスから誘導された該潤滑剤基油留分の100℃における動粘度)−2.7
により計算されたノアク揮発度係数より低い。潤滑剤基油留分はフィッシャー・トロプシュ誘導潤滑剤基油留分の場合、好ましくは50重量%より低いノアク揮発度を有する。
【0089】
パラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油留分は、極めて低量の不飽和炭化水素を含む。パラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油留分は、0.30重量パーセントより少ない芳香族化合物、5重量パーセントより多いシクロパラフィン官能性分子、及び15よりも大きい、モノシクロパラフィン官能性分子対マルチシクロパラフィン官能性分子の重量パーセント比を有する。
【0090】
好ましい態様において、パラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油留分は10重量パーセントより多いシクロパラフィン官能性分子を含む。他の好ましい態様において、パラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油留分は、0.30重量パーセントより少ない芳香族化合物、10より高い重量パーセントのモノシクロパラフィン官能性分子、及び0.1より低い重量パーセントのマルチシクロパラフィン官能性分子を含む。更に他の好ましい態様において、パラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油留分は、50よりも大きい、モノシクロパラフィン官能性分子対マルチシクロパラフィン官能性分子の重量パーセント比を有する。他の好ましい態様において、パラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油留分は、0.10重量パーセントより少ない芳香族化合物、より好ましくは0.05重量パーセントより少ない芳香族化合物を含む。
【0091】
該潤滑剤混合物及び完成潤滑剤で使用されるパラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油留分は、ASTM(アメリカ材料試験協会)D2549−02の溶離カラムクロマトグラフィーにより測定して95重量%より多い飽和炭化水素を含有する。オレフィンは長継続時間13C核磁気共鳴分光法(NMR)により検出できるよりも少ない量で存在する。好ましくは、芳香族官能性分子はHPLC(高速液体クロマトグラフィー)−UV(紫外線)により0.3重量パーセントより少ない量で存在し、低量芳香族化合物を測定するように変更されたASTM D5292−99により確認される。好ましい態様において、少なくとも芳香族官能性の分子は0.10重量パーセントより少ない、好ましくは0.05重量パーセントより少ない、より好ましくは0.01重量パーセントより少ない量で存在する。硫黄は、ASTM D5453−00による紫外蛍光により測定して25ppmより少ない、より好ましくは1ppmより少ない量で存在する。
【0092】
HPLC(高速液体クロマトグラフィー)−UV(紫外線)による芳香族化合物測定:
該潤滑剤基油留分中の低量の芳香族官能性分子を測定するのに使用される方法は、HP化学装置に接続されたHP1050ダイオードアレー紫外・可視波長域検出器に連結されたHewlett Packard1050シリーズ第四勾配高速液体クロマトグラフィー(HPLC)システムを利用している。飽和度の高い潤滑剤基油中の個々の芳香族類の同定は、それらのUVスペクトル型及びそれらの溶離時間に基づいて行った。この分析に使用されるアミノカラムは、芳香族分子をそれらの環数(又はより正確には、二重結合数)に大きく基づいて区別する。かくして、単一の芳香族環含有分子が最初に溶離し、続いて1分子当りの二重結合数が増加する順序で多環式芳香族化合物が溶離するであろう。同様の二重結合性を有する芳香族化合物に関しては、環上にアルキル置換だけを有するものの方がシクロパラフィン置換を有するものよりも早く溶離するであろう。
【0093】
種々の基油芳香族炭化水素をそれらのUV吸収スペクトルから明確に同定することは、それらのピーク電子移動が、純粋なモデル化合物類似体に対して、環システム上におけるアルキル及びシクロパラフィン置換の量に依存する度合で、すべてレッドシフトされるという事実により、いくらか複雑となった。これらの深色シフトは芳香族環におけるπ電子のアルキル基非局在化により引起こされることが周知である。潤滑剤の範囲で沸騰する未置換芳香族化合物は少ないので、同定される主芳香族基のすべてに対してある程度のレッドシフトが予想され観察された。
【0094】
溶離芳香族化合物の定量化は、その芳香族化合物に対する適切な保持時間窓領域にわたり、各一般的種類の化合物に対して最適化された、波長から作られたクロマトグラムを積分することにより行われた。各芳香族種に対する保持時間窓領域限界は、溶離化合物の個々の吸収スペクトルを異なる時間で手動で評価し、モデル化合物の吸収スペクトルに対するそれらの定性的類似性に基づいて、それらを適切な芳香族種に割り当てることにより決定する。少数の例外はあるが、飽和度の高いAPI(アメリカ石油協会)グループII及びIII潤滑剤基油においては5種のみの芳香族化合物が観察された。
【0095】
HPLC(高速液体クロマトグラフィー)−UV(紫外線)校正:
HPLC−UVは、これらの種類の芳香族化合物を非常に低い量でも同定するのに使用される。複数環芳香族化合物は、単環芳香族化合物よりも典型的に10〜200倍強く吸収する。アルキル置換も約20%だけ吸収に影響した。従って、HPLCを使用して種々の種の芳香族化合物を分離同定し、それらがどの程度効率的に吸収するかを知ることが重要である。
【0096】
5種の芳香族化合物が同定された。最も高度に保持されたアルキル−シクロアルキル−1−環芳香族化合物と最も低度に保持されたアルキルナフタレンとの間の小さな重複を除いて、芳香族化合物種のすべては基準線が分析された。1−環及び2−環芳香族化合物を272nmで共溶離する積分限界は、垂直落下方法により引起こされた。各一般的芳香族種に対する波長依存性応答係数は、該置換芳香族類似体に最も近いスペクトルピーク吸収に基づいて、純粋なモデル化合物混合物からのベーアの法則プロットを作図することにより先ず決められた。
【0097】
例えば、基油中のアルキル−シクロヘキシルベンゼン分子は272nmで明確なピーク吸収を示すが、それは未置換テトラリンモデル化合物が268nmで示す同じ(禁じられた)遷移に相当する。基油試料中のアルキル−シクロアルキル−1−環芳香族化合物の濃度は、その272nmにおけるモル吸光率応答係数がベーアの法則プロットから計算したテトラリンの268nmにおけるモル吸光率に大体等しいと仮定することにより計算された。芳香族化合物の重量パーセント濃度は、各芳香族種に対する平均分子量が全基油試料に対する平均分子量に大体等しいと仮定することにより計算された。
【0098】
この校正方法は、1−環芳香族化合物を潤滑剤基油から直接に包括的なHPLCクロマトグラフィーによって単離することにより更に改良された。これらの芳香族化合物に関して直接校正することにより、モデル化合物と関連する仮定及び不確実性が除去された。予想される通り、単離された芳香族試料は、より高度に置換されているので、モデル化合物より低い応答係数を有していた。
【0099】
より具体的には、HPLC−UV方法を正確に校正するために、置換ベンゼン芳香族化合物はウォーターズ半分離用HPLC装置を用いて潤滑剤基油の大部分から分離した。10グラムの試料をn−ヘキサン中で1:1に希釈し、移動相としてn−ヘキサンを18mls/分の流速で用いて、カリフォルニア州エメリービルのRainin Instruments製の、5cmx22.4mm ID(内径)の安全覆い付きアミノ結合シリカカラムに続いて、8−12ミクロンアミノ結合シリカ粒子の2本の25cmx22.4mm IDカラム上に注入した。カラム溶離液を、265nm及び295nmに合わせた二重波長UV検出器からの検出器応答に基づいて精留した。265nm吸収が単環芳香族化合物溶離の開始を知らせる0.01吸収単位の変化を示すまで飽和留分を収集した。265nmと295nmの間の吸収比が2環芳香族化合物溶離の開始を示す2.0に減少するまで単環芳香族化合物留分を収集した。単環芳香族化合物留分の精製及び分離は、HPLCカラムに注入し過ぎて生じた「尾びき」飽和留分からモノ芳香族化合物留分を再びクロマトグラフにかけることにより行われた。
【0100】
この精製された芳香族「標準物質」は、アルキル置換が未置換テトラリンに関して約20%だけモル吸光率応答係数を減少させることを示した。
【0101】
NMR(核磁気共鳴)による芳香族化合物の確認:
該精製モノ芳香族標準物質中の芳香族官能性分子の重量パーセントは、長継続時間炭素13NMR分析により確認された。NMRは、芳香族炭素を単純に測定するので該応答は分析される芳香族化合物の種に依存しないから、HPLC UVよりも校正し易かった。飽和度の高い潤滑剤基油における芳香族化合物の95〜99%が単環芳香族化合物であることを知ることにより、NMR結果は芳香族炭素%から芳香族分子%に変換された(HPLC−UV及びD2007と一致するはずである)。
【0102】
芳香族化合物を0.2%の芳香族分子にまで正確に測定するには、仕事率が高く、継続時間が長く、そして良好な基準分析が必要であった。
【0103】
より具体的には、低量の少なくとも1個の芳香族官能基を有するすべての分子をNMRにより正確に測定するために、500:1という最小炭素感度(ASTM実施基準E386による)を与えるように標準的D5292−99方法を変更した。10−12mmのNalorac探蝕子を用いた400−500MHzのNMRによる15時間継続試験を使用した。該基準線の形状を明確にし連続して積分するためにAcornPC積分ソフトウェアを使用した。芳香族領域中に脂肪族ピークの画像を形成しないように偽信号を避けるため、該試験中一度搬送周波数を変えた。担体スペクトルのいずれか一方の側にスペクトルを取ることにより、該解像度は顕著に改良された。
【0104】
オレフィン重量パーセントの測定:
オレフィンの重量パーセントは、以下の段階、a−dに記載された陽子NMR(PROTON NMR)により測定された。
a) 重水素化クロロホルム中5〜10重量%の試験炭化水素の溶液を準備する。
b) 少なくとも12ppmスペクトル幅の通常陽子スペクトルを取得し、該化学シフト(ppm)軸を正確に参照する。使用される機器は、受信機/ADC(アナログ・デジタル変換機)に負荷をかけ過ぎることなく信号を取得するのに充分な増加幅を有していなければならない。30度パルスが適用される場合、該機器は65,000という最小信号数字化動作範囲を有していなければならない。好ましくは、該動作範囲は260,000以上であろう。
c) 6.0−4.5ppm(オレフィン)、2.2−1.9ppm(アリル化合物)、及び1.9−0.5ppm(飽和炭化水素)の間の積分強度を測定する。
d) ASTM D2502又はASTM D2503により測定された試験物質の分子量を用いて、以下のものを計算する。
1) 飽和炭化水素の平均分子式、
2) オレフィンの平均分子式、
3) 合計積分強度(=すべての積分強度の和)、
4) 試料水素当りの積分強度(=合計積分強度/式中の水素数)、
5) オレフィン水素数(=オレフィン積分強度/水素当りの積分強度)、
6) 二重結合数(=オレフィン水素xオレフィン式中の水素/2)、及び
7) PROTON NMRによるオレフィンの重量%=100x二重結合数x(典型的オレフィン分子中の水素数)/(典型的な試験物質分子中の水素数)。
【0105】
段階d)に記載されたPROTON NMRによるオレフィン重量パーセントの計算操作は、得られるオレフィン重量パーセントが約15重量パーセントより低い場合に、最も良く正常に機能する。該オレフィンは、「従来型の」オレフィン、即ち、アルファ、ビニリデン、シス、トランス、及びトリ置換のような、二重結合炭素に結合した水素を有するオレフィン型の分散混合物でなければならない。これらのオレフィン型は、1と約2.5の間のアリル化合物対オレフィンの検出できる積分比を有するであろう。この比が約3を超える場合は、より高いパーセントのトリ又はテトラ置換オレフィンが存在し、試料中の二重結合数を計算するためには異なる仮定をしなければならないことが示される。
【0106】
FIMS(電界イオン化質量分析)によるシクロパラフィン分布
パラフィンは、酸化に対してシクロパラフィンより安定なのでより望ましいと考えられる。モノシクロパラフィンは酸化に対してマルチシクロパラフィンより安定であると考えられる。しかしながら、少なくとも1個のシクロパラフィン官能基を有するすべての分子の重量パーセントが油中で非常に低い場合、添加剤溶解性が低くエラストマー相溶性が悪い。これらの性質を有する油の例は、約5%未満のシクロパラフィンを有するフィッシャー・トロプシュ油(GTL油)である。完成製品におけるこれらの性質を改良するためには、エステルのような高価な補助溶剤をしばしば添加しなければならない。好ましくは、パラフィン系の高いワックスから誘導され誘電性流体として使用される油留分は、高い酸化安定性、低い揮発性、他の油との良好な混合性、良好な添加剤溶解性、及び良好なエラストマー相溶性を有するように、高重量パーセントのモノシクロパラフィン官能性分子及び低重量パーセントのマルチシクロパラフィン官能性分子を含む。
【0107】
本発明の潤滑剤基油は、FIMSによりアルカン及び異なる数の不飽和を有する分子へと特徴づけられた。該油留分における分子の分布は電界イオン化質量分析(FIMS)により測定された。FIMSスペクトルは、Micromass VG 70VSE質量分析計上で得られた。試料は、好ましくは少量(約0.1mg)の試験すべき基油をガラス毛管に入れることにより、固体探触子を経由して該分光光度計中に導入した。該毛管を質量分析計用の固体探触子の先端に置き、該探触子を約10−6Torrの真空下で操作しながら約40℃から500℃まで50℃/分の速度で加熱した。該質量分析計はデケード当り5秒の速度でm/z(質量/電荷数)40からm/z1000まで走査した。得られた質量スペクトルは合計して一つの「平均化」スペクトルを作成した。各スペクトルは、PC−MassSpecからのソフトウェア・パッケージを用いて13C訂正された。
【0108】
重量パーセントが面積パーセントから測定されるように、すべての化合物タイプに対する応答係数は1.0であると仮定された。得られた質量スペクトルは合計して一つの「平均化」スペクトルを作成した。FIMS分析からの出力は、試験試料中アルカン、1−不飽和物、2−不飽和物、3−不飽和物、4−不飽和物、5−不飽和物、及び6−不飽和物の平均重量パーセントである。
【0109】
異なる数の不飽和を有する分子は、シクロパラフィン、オレフィン、及び芳香族化合物から成っていても良い。もし芳香族化合物が潤滑剤基油中に顕著な量で存在していれば、それらは多分FIMS分析において4−不飽和物として同定されるであろう。もしオレフィンが潤滑剤基油中に顕著な量で存在していれば、それらは多分FIMS分析において1−不飽和物として同定されるであろう。FIMS分析からの1−不飽和物、2−不飽和物、3−不飽和物、4−不飽和物、5−不飽和物、及び6−不飽和物の合計、マイナス陽子NMRによるオレフィンの重量パーセント、及びマイナスHPLC−UVによる芳香族化合物の重量パーセントは、本発明潤滑剤基油中のシクロパラフィン官能性分子の全重量パーセントである。FIMS分析からの2−不飽和物、3−不飽和物、4−不飽和物、5−不飽和物、及び6−不飽和物の合計、マイナスHPLC−UVによる芳香族化合物の重量パーセントは、本発明基油中のマルチシクロパラフィン官能性分子の重量パーセントである。もし芳香族化合物含量が測定されなかったら、それは0.1重量%未満でシクロパラフィン官能性分子の全重量パーセントの計算に含まれないと仮定されたことに注意して頂きたい。
【0110】
一態様において、パラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油は、シクロパラフィン官能性分子の重量パーセントが10より大きく、好ましくは15より大きく、より好ましくは20より大きい。それらは、モノシクロパラフィン官能性分子対マルチシクロパラフィン官能性分子の重量パーセント比が15より大きく、好ましくは50より大きく、より好ましくは100より大きい。好ましい態様において、パラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油は、モノシクロパラフィン官能性分子の重量パーセントが10より大きく、マルチシクロパラフィン官能性分子の重量パーセントが0.1より小さいか、又はマルチシクロパラフィン官能性分子が無しでさえある。この態様において、パラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油は100℃で約2cStと約20cStの間、好ましくは約2cStと約12cStの間の動粘度を有することが出来る。
【0111】
パラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油の他の態様においては、少なくとも1個のシクロパラフィン官能基を有する全分子の重量パーセントと本発明潤滑剤基油の動粘度との間に関係がある。即ち、100℃におけるcStで表した動粘度が高ければ高い程、得られるシクロパラフィン官能性分子の量はますます高い。好ましい態様において、パラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油は、シクロパラフィン官能性分子の重量パーセントがcStで表した動粘度の3倍より大きく、好ましくは15より大きく、より好ましくは20より大きく、そして、モノシクロパラフィン官能性分子対マルチシクロパラフィン官能性分子の重量パーセント比が15より大きく、好ましくは50より大きく、より好ましくは100より大きい。パラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油は100℃で約2cStと約20cStの間、好ましくは約2cStと約12cStの間の動粘度を有する。これらの基油の例は、100℃で約2cStと約3.3cStの間の動粘度、及び高いが10重量パーセントより低いシクロパラフィン官能性分子の重量パーセントを有することが出来る。
【0112】
低量芳香族化合物を測定するのに使用される変更ASTM D5292−99並びにHPLC−UVの試験方法、及び飽和炭化水素を特徴付けるのに使用されるFIMS試験方法は、1999年3月16日にヒューストンにおけるアメリカ化学工業研究所(AIChE)1999年春季全国会議で提出されたD.C.Kramer等の「グループII及びIII基油組成物の粘度指数及び酸化安定性に対する影響」に説明されているが、その内容を全体的に本明細書に引用する。
【0113】
パラフィン系の高いワックス供給物は本質的にオレフィンが無いけれども、基油処理技術は特に高温で「分解」反応のためオレフィンを導入する可能性がある。熱又は紫外線の存在下で、オレフィンは重合してより高い分子量の生成物を形成し、それらが基油を着色するか又は沈澱を引起こす可能性がある。一般に、オレフィンは水素化仕上げ法により又は白土処理により本発明方法中に除去することが出来る。
【0114】
本潤滑剤混合物に使用するのに適した典型的フィッシャー・トロプシュ誘導潤滑剤基油の性質は、実施例中の表IIに要約されている。
【0115】
潤滑剤基油中に見出される異種飽和炭化水素の中で、パラフィンは酸化に対してシクロパラフィン(ナフテン)より安定なのでより望ましいと伝統的に考えられてきた。しかしながら、該基油中の芳香族化合物の量が1重量%より少ない場合、酸化安定性を更に改良する最も効果的な方法は該基油の粘度指数を増加させることである。フィッシャー・トロプシュ誘導潤滑剤基油を含む、パラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油は、典型的に1%未満の芳香族化合物を含有する。本発明の、パラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油中における、極めて低量の芳香族化合物及び複数環シクロパラフィンのお陰で、それらの高い酸化安定性は従来の潤滑剤基油の酸化安定性をはるかに超える。更に、フィッシャー・トロプシュ誘導潤滑剤基油は、一般にAPIグループIII基油として分類され、5ppm未満の低硫黄含量、95%より高い飽和炭化水素含量、120より大きな高粘度指数、及び優れた低温流れ特性を有する。
【0116】
石油誘導基油留分
本発明による潤滑剤混合物は又石油誘導基油留分をも含む。本発明の潤滑剤混合物に使用される石油誘導基油留分は90重量%より多い飽和炭化水素及び300ppmより少ない硫黄を含む。石油誘導基油はしばしばニュートラル油と言及される。一般に、ニュートラル油は重質、中間、及び軽質として分類される。重質ニュートラル基油は、約900°F〜約1000°Fの標準沸点範囲、約−7℃以下の流動点、及び100℃で約8cSt〜約20cStの動粘度を有する。中間ニュートラル基油は、約800°F〜約900°Fの標準沸点範囲、重質ニュートラル油と軽質ニュートラル油の中間流動点、及び100℃で約5cSt〜約8cStの動粘度を有する。軽質ニュートラル基油は、約700°F〜約800°Fの標準沸点範囲、約−15℃以下の流動点、及び100℃で約4cSt〜約5cStの動粘度を有する。本発明の潤滑剤混合物に使用される石油誘導基油留分は、重質ニュートラル基油、中間ニュートラル基油、又はそれらの混合物であることが出来る。
【0117】
好ましくは、石油誘導基油留分はグループII基油、グループIII基油、及びそれらの混合物から成る群から選択される。本発明によれば、石油誘導グループII基油を用いた潤滑剤混合物はグループI基油を用いた混合物より実質的に低いブルックフィールド粘度を有することが意外にも発見された。石油誘導グループIII基油を用いた潤滑剤混合物も又グループI基油を用いた混合物より実質的に低いブルックフィールド粘度を示すことが予想される。
【0118】
潤滑剤基油に対する規格は、硫黄含量、飽和炭化水素含量、及び粘度指数を用いて、APIインターチェンジ・ガイドライン(1509年、API出版物)に以下のように規定されている。
【0119】
【表2】

【0120】
グループI基油を製造する工場設備は、典型的に溶剤を使用して比較的低い粘度指数(VI)の成分を抽出して原油のVIを所望の規格まで増加させている。これらの溶剤は典型的にフェノール又はフルフラールである。溶剤抽出により90%未満の飽和炭化水素及び300ppmより多い硫黄を有する生成物が得られる。世界における潤滑剤生産の大部分はグループIの範疇にある。
【0121】
グループII基油を製造する工場設備は、典型的に水素化分解のような水素処理法又は厳しい水素処理法を使用して、原油のVIを規格値まで増加させている。水素処理法の使用により、典型的に飽和炭化水素含量は90より上まで増加し硫黄は300ppmより下まで減少する。世界における潤滑剤基油生産の約20%がグループIIの範疇にあり、米国における生産の約50%がグループIIである。
【0122】
グループIII基油を製造する工場設備は、典型的にワックス異性化技術を使用して非常に高いVIの生成物を製造している。該出発供給物はワックス状減圧軽油(VGO)又はすべての飽和炭化水素を含有するがほんの少しの硫黄しか含有しないワックスであるので、グループIII生成物は90より上の飽和炭化水素含量及び300ppmより下の硫黄含量を有する。フィッシャー・トロプシュ・ワックスは、グループIII潤滑剤油を製造するワックス異性化法用の理想的供給物である。世界の潤滑剤供給物のほんの小割合がグループIIIの範疇にある。
【0123】
グループIV潤滑剤基油は、直鎖アルファオレフィンのオリゴマー化により誘導され、ポリアルファオレフィン(PAO)潤滑剤基油と呼ばれる。グループV潤滑剤基油はすべて他のものである。このグループは、合成エステル、シリコン潤滑剤、ハロゲン化潤滑剤基油、及びVI値が80より下の潤滑剤基油を含む。後者は石油誘導グループV潤滑剤基油として説明することが出来る。石油誘導グループV潤滑剤基油は、典型的にグループI及びII潤滑剤基油を製造するのに使用される同じ方法により製造されるが、もっと厳しくない条件下で製造される。
【0124】
好ましくは、石油誘導基油留分は、グループII基油、グループIII基油、及びそれらの混合物から成る群から選択される。
【0125】
流動点降下剤
本発明の潤滑剤混合物は、少なくとも1種の流動点降下剤を更に含む。流動点降下剤は、当該技術において知られており、無水マレイン酸・スチレン共重合体のエステル、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ハロパラフィンワックスと芳香族化合物の縮合生成物、カルボン酸ビニル重合体、及びフマール酸ジアルキルの三元共重合体、脂肪酸のビニルエステル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、アルキルフェノール・ホルムアルデヒド縮合樹脂、アルキルビニルエーテル、オレフィン共重合体、及びそれらの混合物を含むが、それらに限定されない。好ましくは、流動点降下剤はポリメタクリレートである。
【0126】
本発明に用いられる流動点降下剤は、2003年11月7日に出願された米国特許出願10/704,031(その内容を全体として本明細書に引用して援用する)に記載されているような、異性化されたフィッシャー・トロプシュ誘導塔底生成物から製造された流動点降下性基油混合用成分であっても良い。流動点降下性基油混合用成分は、使用した場合には、潤滑剤混合物の流動点を、流動点降下性基油混合用成分の不存在下における潤滑剤混合物の流動点より少なくとも3℃減少させる。流動点降下性基油混合用成分は、パラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油留分及び石油誘導基油を含む潤滑剤混合物(即ち、流動点降下剤の不存在下における該混合物)の流動点より少なくとも3℃高い流動点を有する、異性化されたフィッシャー・トロプシュ誘導塔底生成物である。例えば、もし潤滑剤混合物の目的流動点が−9℃で、流動点降下剤の不存在下における潤滑剤混合物の流動点が−9℃より高いならば、該混合物の流動点を目的値まで下げるのに充分な割合量の本発明の流動点降下性基油混合用成分を潤滑剤混合物と混合させるであろう。
【0127】
潤滑剤混合物の流動点を下げるのに使用される異性化されたフィッシャー・トロプシュ誘導塔底生成物は通常フィッシャー・トロプシュ操作の真空カラムからの残油として回収される。流動点降下性基油混合用成分の平均分子量は通常約600〜約1100の範囲内に入るが、約700と約1000の間の平均分子量が好ましい。典型的に、流動点降下性基油混合用成分の流動点は約−9℃と約20℃の間であろう。流動点降下性基油混合用成分の沸点範囲の10パーセント点は通常約850°F〜約1050°Fの範囲内であろう。好ましくは、流動点降下性基油混合用成分は、100炭素原子当り約6.5アルキル分枝と約10アルキル分枝の間の分子内平均分岐度を有するであろう。
【0128】
一態様において、該潤滑剤混合物は当該技術で周知の流動点降下剤及び異性化されたフィッシャー・トロプシュ誘導塔底生成物を含むことが出来る。かかる態様において、好ましくは、該潤滑剤混合物は0.05〜15重量%の異性化されたフィッシャー・トロプシュ誘導塔底生成物を含む。
【0129】
潤滑剤混合物
本発明の潤滑剤混合物は、パラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油留分、石油誘導基油、及び流動点降下剤を含む。該潤滑剤混合物は好ましくは全潤滑剤混合物に基づいて、約10〜80重量%の量でパラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油留分を、約20〜90重量%の量で石油誘導基油を、そして約0.01〜12重量%の量で流動点降下剤を含む。
【0130】
該潤滑剤混合物は驚くほど低いブルックフィールド粘度を示す。該潤滑剤混合物は、−40℃で100,000cPより低いブルックフィールド粘度を示す。好ましくは、本発明の潤滑剤混合物は、−40℃で90,000cPより低い、より好ましくは60,000cPより低い、より好ましくは50,000cPより低い、より好ましくは35,000cPより低い、更により好ましくは25,000cPより低い、そして更により好ましくは15,000cPより低いブルックフィールド粘度を有するであろう。
【0131】
該潤滑剤混合物及びこれらの潤滑剤混合物を含む完成ギヤオイルは、−40℃における例外的に低いブルックフィールド粘度に加えて、良好な動粘度、低いノアク揮発度、高い酸化安定度、及び低い流動点並びに曇り点を含む望ましい性質を示す。かくして、本発明の潤滑剤混合物は高品質ギヤオイルを製造するのに使用することが出来る。
【0132】
これらの潤滑剤混合物は、100℃で約3cSt以上の粘度を有し、良好な低温特性を有する。好ましくは、該潤滑剤混合物は120より大きな粘度指数を有する。一態様において、該潤滑剤混合物は100℃で約3.0cSt以上約5.0cSt未満の動粘度を有する。他の態様において、該潤滑剤混合物は100℃で約5.0cSt以上約7.0cSt未満の動粘度を有する。
【0133】
該潤滑剤混合物は、100℃で約2cStと約20cStの間の動粘度を有するパラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油留分を含む。パラフィン系の高いワックスから誘導された該潤滑剤基油留分はこの範囲内で動粘度を変えることが出来、該潤滑剤混合物のブルックフィールド粘度はパラフィン系の高いワックスから誘導された該潤滑剤基油留分の動粘度に従って変化することが出来る。一態様において、該潤滑剤混合物は、100℃で約2cStと3cStの間の動粘度を有するパラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油留分を含む。この態様において、好ましくは該潤滑剤混合物は−40℃で35,000cPより低いブルックフィールド粘度を有する。他の態様において、該潤滑剤混合物は、100℃で約3cStと6cStの間の動粘度を有するパラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油留分を含む。この態様において、好ましくは該潤滑剤混合物は−40℃で60,000cPより低いブルックフィールド粘度を有する。更に他の態様において、該潤滑剤混合物は、100℃で約2cStと12cStの間の動粘度を有するパラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油留分を含む。この態様において、好ましくは該潤滑剤混合物は−40℃で90,000cPより低いブルックフィールド粘度を有する。
【0134】
該潤滑剤混合物は、パラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油留分、石油誘導基油、及び流動点降下剤を当業者に知られた技術により混合することによって製造することが出来る。該潤滑剤混合物成分は、個々の成分(即ち、フィッシャー・トロプシュ誘導潤滑剤基油留分、石油誘導基油、及び流動点降下剤)から出発して直接に潤滑剤混合物を提供する単一工程で混合することが出来る。別の方法では、パラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油留分と石油誘導潤滑剤基油を最初に混合してから得られた混合物を流動点降下剤と混合しても良い。パラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油留分と石油誘導潤滑剤基油の混合物は、そのまま単離しても良いし、又は流動点降下剤を即座に添加しても良い。
【0135】
一部の好ましい態様において、パラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油留分はフィッシャー・トロプシュ誘導潤滑剤基油留分である。
【0136】
ギヤオイル
完成潤滑剤(即ち、ギヤオイル)を提供するためには、本発明による潤滑剤混合物を流動点降下剤に加えて少なくとも1種の添加剤と混合させる。本発明の潤滑剤混合物を流動点降下剤に加えて少なくとも1種の添加剤と混合させてギヤオイルを提供すると、該ギヤオイルも又、−40℃における低いブルックフィールド粘度を含めて、例外的低温特性を示す。
【0137】
流動点降下剤に加えての該添加剤は、耐磨耗性添加剤、極圧剤、清浄剤、分散剤、酸化防止剤、粘度指数向上剤、エステル補助溶剤、粘度調整剤、摩擦調整剤、解乳化剤、消泡剤、腐食防止剤、防錆剤、シール膨潤剤、乳化剤、湿潤剤、潤滑性向上剤、金属不活性化剤、ゲル化剤、粘着剤、殺菌剤、フルイドロス添加剤、着色剤、増粘剤、及びそれらの組合せから成る群から選択することが出来る。
【0138】
粘度指数向上剤を添加する場合、それらは好ましくは8重量パーセントより少ない量で存在し、エステル補助溶剤を添加する場合、それらは好ましくは3重量パーセントより少ない量で存在する。
【0139】
ISO(国際標準化機構)68以上のような高い動粘度を有するギヤオイルを配合するためには、増粘剤添加剤を用いることが出来る。工業用流体潤滑剤に対するISO粘度等級は以下の通りである。
【0140】
【表3】

【0141】
増粘剤の例には、ポリイソブチレン、高分子量複合体エステル、ブチルゴム、オレフィン共重合体、スチレン・ジエン重合体、ポリメタクリレート、スチレン・エステル、及び超高粘度ポリアルファオレフィンが含まれる。
【0142】
該ギヤオイルは、本発明による潤滑剤混合物を流動点降下剤に加えて少なくとも1種の添加剤と、当業者に知られた技術により混合することによって製造することが出来る。該ギヤオイルは、個々の成分(即ち、フィッシャー・トロプシュ誘導潤滑剤基油留分、石油誘導基油、及び流動点降下剤)から出発して直接に該ギヤオイルを提供する単一工程で混合することが出来る。別の方法では、パラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油留分、石油誘導基油、及び流動点降下剤を最初に混合して潤滑剤混合物を提供してから該潤滑剤混合物を流動点降下剤に加えての添加剤と混合しても良い。該潤滑剤混合物は、そのまま単離しても良いし、又は追加の添加剤を即座に添加しても良い。
【0143】
潤滑剤混合物の成分は、潤滑剤混合物の成分を受け取って混合する場所とは異なる場所で製造することが出来る。更に、ギヤオイルは、潤滑剤混合物の成分を受け取って混合する場所とは異なる場所で製造することが出来る。好ましくは、潤滑剤混合物及びギヤオイルは、潤滑剤混合物の成分が最初に製造される場所とは異なる、同じ場所で製造される。更に、潤滑剤混合物の成分(即ち、フィッシャー・トロプシュ誘導潤滑剤基油留分、石油誘導基油、及び流動点降下剤)は、異なる場所で製造することが出来る。
【0144】
パラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油留分がフィッシャー・トロプシュ誘導潤滑剤基油留分である場合、好ましくは、該フィッシャー・トロプシュ潤滑剤基油留分は遠く離れた場所(即ち、製油所または市場における建設費よりも建設費が高くても良い該製油所または市場から離れた場所。数量的な用語で言えば、該遠く離れた場所と該製油所または市場との間の輸送距離は少なくとも100マイル、好ましくは500マイルより長く、最も好ましくは1000マイルより長い。)で製造される。
【0145】
好ましくは、フィッシャー・トロプシュ潤滑剤基油は、第一の遠く離れた場所で製造され第二の場所まで輸送される。石油誘導基油は、第一の遠く離れた場所と同じ場所又は第三の遠く離れた場所で製造することが出来る。第二の場所は、フィッシャー・トロプシュ潤滑剤基油、石油誘導基油、及び流動点降下剤を含む添加剤を受け取り、この第二の場所で潤滑剤混合物が製造される。好ましくは、ギヤオイルも又この第二の場所で製造される。
【0146】
[実施例]
本発明を、限定するものではないことを意図した説明のための以下の実施例により、更に説明する。
【0147】
酸化安定性は、L−4触媒を用いたOxidator BN試験を使用して測定した。L−4触媒を用いたOxidator BN試験は、Dornte型酸素吸収装置(Industrial and Engineering Chemistry、1936年、28巻、26頁、R.W.Dornteの「ホワイト油の酸化」)によって酸化抵抗性を測定する試験である。通常、該条件は一気圧の340°Fにおける純粋な酸素で、100gの油により1000mlのOを吸収するまでの時間を報告している。L−4触媒を用いたOxidator BN試験では、100gの油当り0.8mlの触媒が使用される。該触媒は、使用済みクランクケース油の平均金属分析を模擬する可溶性金属ナフテン酸塩の混合物である。L−4触媒を用いたOxidator BN試験は、模擬用途における完成潤滑剤の応答を測定するものである。高い値、即ち、1リットルの酸素を吸着するための長い時間は、良好な安定性を示す。
【実施例1】
【0148】
フィッシャー・トロプシュ・ワックス及びフィッシャー・トロプシュ潤滑剤基油の製造
Coベースのフィッシャー・トロプシュ触媒を用いて、水素処理フィッシャー・トロプシュ・ワックスの二つの試料、FTワックスA及びFTワックスBを製造した。両方の試料を分析して表Iに示された性質を有することが分った。
【0149】
【表4】

【0150】
該フィッシャー・トロプシュ・ワックスは、少なくとも60個の炭素原子を有する化合物対少なくとも30個の炭素原子を有する化合物の重量比が0.18よりも低く、T90沸点が900°Fと1000°Fの間であった。該フィッシャー・トロプシュ・ワックスの三つの試料(FTワックスAの一つの試料及びFTワックスBの二つの試料)を、アルミナ結合剤上のPt/SAPO−11触媒上で水素異性化した。操作条件には、652°Fと695°F(315℃と399℃)の間の温度、0.6〜1.0hr−1の液時空間速度、1000psigの反応器圧力、及び6MSCF/bblと7MSCF/bblの間の単流水素速度が含まれた。該反応器流出液は、1000psigでやはり操作されるシリカ・アルミナ上Pt/Pd水素化仕上げ触媒を含有する第二反応器へ直接に通過した。第二反応器における条件は、450°F(232℃)及び1.0hr−1の液時空間速度を含んでいた。
【0151】
650°Fより上で沸騰する生成物を常圧蒸留又は減圧蒸留により精留して異なる粘度等級の留出留分を生成した。
【0152】
三種のフィッシャー・トロプシュ誘導潤滑剤基油留分、FT−4A(FTワックスAから)、及びFT−2B並びにFT−8B(FTワックスBから)が得られた。従って、FTワックスAを使用して4.5cStのフィッシャー・トロプシュ誘導潤滑剤基油留分(FT−4A)を製造し、FTワックスBを使用して2.5cStのフィッシャー・トロプシュ誘導潤滑剤基油留分(FT−2B)及び8cStのフィッシャー・トロプシュ誘導潤滑剤基油留分(FT−8B)を製造した。フィッシャー・トロプシュ誘導潤滑剤基油留分として有用な個々の留分に関する試験データを下の表IIに示す。
【0153】
【表5】

【実施例2】
【0154】
潤滑剤混合物の製造
上記で製造したフィッシャー・トロプシュ誘導潤滑剤基油留分(FT−2B、FT−4A、及びFT−8B)を使用して、石油基油との潤滑剤混合物を製造した。フィッシャー・トロプシュ誘導潤滑剤基油留分と混合するのに使用した石油基油は以下の通りである。
【0155】
【表6】

【0156】
FT−2Bと、上の表に要約した石油誘導グループI又はグループII基油、及びポリメタクリレート流動点降下剤との、4種の異なる混合物を製造した。これら4種の潤滑剤混合物のすべてが、約3cSt以上で5.0cSt未満の好ましい範囲の一つ内の動粘度を有していた。
【0157】
【表7】

【0158】
これら混合物のすべては−40℃で100,000より低いブルックフィールド粘度を有していた。石油誘導グループII基油との混合物がグループI基油との混合物よりも実質的に低いブルックフィールド粘度を有していたことは驚くべきであった。石油誘導グループIII基油との混合物は、石油誘導グループII基油との混合物と同じくらい良好な又はそれらより良好な結果を生ずるであろうと予想される。2.5cStのフィッシャー・トロプシュ誘導潤滑剤基油留分(FT−2B)を用いた混合物の結果は図1に図解されている。
【0159】
FT−4Aを用いて5種の異なる潤滑剤混合物を製造した。FT−4A、FT−8、及びポリメタクリレート流動点降下剤を用いたすべてFTの混合物を比較のために製造した。他の4種の混合物は、FT−4A、上記に詳述した石油誘導グループI又はグループII基油、及びポリメタクリレート流動点降下剤を用いて製造した。これらの潤滑剤混合物の4種すべてが約5.0cSt以上で6.5cSt未満の好ましい範囲の一つ内の動粘度を有していた。これらの混合物の性質を以下に要約する。
【0160】
【表8】

【0161】
すべてフィッシャー・トロプシュ誘導潤滑剤基油留分及びポリメタクリレート流動点降下剤を用いた比較潤滑剤混合物は、−40℃で百万cPより大きな容認できない程高いブルックフィールド粘度を有していた。FT−4Aと石油誘導グループI基油との混合物は、−40℃で100,000cPより高いブルックフィールド粘度を有していたので最良ではなかった。石油誘導グループII基油との混合物は、−40℃で100,000cPより充分低いブルックフィールド粘度を有していたので本発明の適切な潤滑剤混合物となった。FT−2Bを用いた混合物と同様に、石油誘導グループII基油との混合物は石油誘導グループI基油との混合物より顕著に低いブルックフィールド粘度を有していた。FT−2B混合物と同様に、FT−4Aと石油誘導グループIII基油及び流動点降下剤との混合物は、石油誘導グループII基油との混合物と同じくらい良好な又はそれらより良好な結果を生ずるであろうと予想される。4.5cStのフィッシャー・トロプシュ誘導潤滑剤基油留分(FT−4A)を用いた混合物の結果は図2に図解されている。
【実施例3】
【0162】
比較例
水素処理フィッシャー・トロプシュ・ワックスの一試料、FTワックスCを、Feベースのフィッシャー・トロプシュ触媒を使用して、製造した。該試料、FTワックスCは、分析の結果、表VIに示された性質を有することが判明した。
【0163】
【表9】

【0164】
該FTワックスCの一試料をアルミナ結合剤上のPt/SAPO−11触媒上で水素異性化した。操作条件には、652°Fと695°F(315℃と399℃)の間の温度、1.0hr−1の液時空間速度、1000psigの反応器圧力、及び6MSCF/bblと7MSCF/bblの間の単流水素速度が含まれた。該反応器流出液は、1000psigでやはり操作されるシリカ・アルミナ上Pt/Pd水素化仕上げ触媒を含有する第二反応器へ直接に通過した。第二反応器における条件は、450°F(232℃)及び1.0hr−1の液時空間速度を含んでいた。
【0165】
650°Fより上で沸騰する生成物を常圧蒸留又は減圧蒸留により精留して異なる粘度等級の二つの留分を生成した。
【0166】
かくして、6.3cStのフィッシャー・トロプシュ誘導潤滑剤基油留分(FT−6.3)及び14.6cStのフィッシャー・トロプシュ誘導潤滑剤基油留分(FT−14.6)が得られた。該2種のフィッシャー・トロプシュ誘導潤滑剤基油留分の性質を下の表VIIに示す。
【0167】
【表10】

【0168】
FT−6.3もFT−14.6も、モノシクロパラフィン官能性分子対マルチシクロパラフィン官能性分子の望ましい重量パーセント比を満足しなかった。これら試料の両者に対する該比はわずかに11.6であった。
【0169】
上記で製造したフィッシャー・トロプシュ誘導潤滑剤基油留分(FT−6.3及びFT−14.6)を各々使用して、表IIIに特性を示されたグループII重質ニュートラル石油基油、及び流動点降下剤としてのポリメタクリレートとの潤滑剤混合物を製造した。得られた2種の混合物の組成及び性質を下の表VIIIに要約する。
【0170】
【表11】

【0171】
モノシクロパラフィン官能性分子対マルチシクロパラフィン官能性分子の望ましい重量パーセント比を満足しないフィッシャー・トロプシュ誘導潤滑剤基油留分を用いて製造した2種の得られた混合物は、−40℃で100,000cPより著しく高いブルックフィールド粘度を有していた。これらの混合物は又、好ましいものより低い粘度指数を有していた、即ち、該粘度指数は120より低かった。従って、これら2種の混合物は高品質のギヤ潤滑剤配合物に使用するには適していないであろう。
【0172】
本発明は特定の態様に関して説明されてきたが、本願は、別紙特許請求の範囲の精神及び範囲から外れることなく当業者がなし得る種々の変更及び置換を保護することが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0173】
【図1】2.5cStのフィッシャー・トロプシュ誘導留分(FT−2B)を用いた潤滑剤混合物の結果を図解したものである。
【図2】4.5cStのフィッシャー・トロプシュ誘導留分(FT−4A)を用いた潤滑剤混合物の結果を図解したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑剤混合物であって、
a. 全潤滑剤混合物に基づいて約10〜約80重量パーセントの、100℃で約2cStと20cStの間の粘度を有する、パラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油留分であり、
(i)0.30重量パーセントより少ない芳香族化合物、
(ii)5重量パーセントより多いシクロパラフィン官能性分子、及び
(iii)15よりも大きい、モノシクロパラフィン官能性分子対マルチシクロパラフィン官能性分子の重量パーセント比
を有する、パラフィン系の高いワックスから誘導された該潤滑剤基油留分、
b. グループII基油、グループIII基油、及びそれらの混合物から成る群から選択された、全潤滑剤混合物に基づいて約20〜約90重量パーセントの石油誘導基油、及び
c. 全潤滑剤混合物に基づいて約0.01〜12重量パーセントの流動点降下剤
を含み、100℃で約3cSt以上の粘度及び−40℃で100,000cPより低いブルックフィールド粘度を有する該潤滑剤混合物。
【請求項2】
パラフィン系の高いワックスから誘導された該潤滑剤基油留分がフィッシャー・トロプシュ誘導潤滑剤基油留分である、請求項1の潤滑剤混合物。
【請求項3】
−40℃で50,000cPより低いブルックフィールド粘度を有する請求項1の潤滑剤混合物。
【請求項4】
−40℃で25,000cPより低いブルックフィールド粘度を有する請求項1の潤滑剤混合物。
【請求項5】
−40℃で15,000cPより低いブルックフィールド粘度を有する請求項1の潤滑剤混合物。
【請求項6】
100℃において約3cSt以上で5.0cStより低い粘度を有する請求項1の潤滑剤混合物。
【請求項7】
100℃において約5.0cSt以上で7.0cStより低い粘度を有する請求項1の潤滑剤混合物。
【請求項8】
120より高い粘度指数を有する請求項1の潤滑剤混合物。
【請求項9】
パラフィン系の高いワックスから誘導された該潤滑剤基油留分が100℃で約2cStと12cStの間の粘度を有する、請求項1の潤滑剤混合物。
【請求項10】
パラフィン系の高いワックスから誘導された該潤滑剤基油留分が10より高い重量パーセントのモノシクロパラフィン官能性分子及び0.1より低い重量パーセントのマルチシクロパラフィン官能性分子を含む、請求項1の潤滑剤混合物。
【請求項11】
パラフィン系の高いワックスから誘導された該潤滑剤基油留分が10重量パーセントより多いシクロパラフィン官能性分子を含む、請求項1の潤滑剤混合物。
【請求項12】
パラフィン系の高いワックスから誘導された該潤滑剤基油留分が、50よりも大きい、モノシクロパラフィン官能性分子対マルチシクロパラフィン官能性分子の重量パーセント比を有する、請求項1の潤滑剤混合物。
【請求項13】
パラフィン系の高いワックスから誘導された該潤滑剤基油留分が100℃で約2cStと3cStの間の粘度を有する、請求項1の潤滑剤混合物。
【請求項14】
−40℃で35,000cPより低いブルックフィールド粘度を有する請求項13の潤滑剤混合物。
【請求項15】
パラフィン系の高いワックスから誘導された該潤滑剤基油留分が100℃で約3cStと6cStの間の粘度を有する、請求項1の潤滑剤混合物。
【請求項16】
−40℃で60,000cPより低いブルックフィールド粘度を有する請求項15の潤滑剤混合物。
【請求項17】
パラフィン系の高いワックスから誘導された該潤滑剤基油留分が、以下の式:
ノアク揮発度係数=1000(パラフィン系の高いワックスから誘導された該潤滑剤基油留分の100℃における動粘度)−2.7
により計算されたノアク揮発度係数より低いノアク揮発度を有する、請求項1の潤滑剤混合物。
【請求項18】
パラフィン系の高いワックスから誘導された該潤滑剤基油留分が50重量パーセントより低いノアク揮発度を有する、請求項1の潤滑剤混合物。
【請求項19】
パラフィン系の高いワックスから誘導された該潤滑剤基油留分が、以下の式:
粘度指数係数=28xln(パラフィン系の高いワックスから誘導された該潤滑剤基油留分の100℃における動粘度)+95
により計算された粘度指数係数より高い粘度指数を有する、請求項1の潤滑剤混合物。
【請求項20】
パラフィン系の高いワックスから誘導された該潤滑剤基油留分が、25時間よりも長い、L−4触媒を用いたOxidator BN試験結果を有する、請求項1の潤滑剤混合物。
【請求項21】
該石油誘導基油が、100℃で約8〜約20cStの動粘度を有する基油、100℃で約5〜約8cStの動粘度を有する基油、及びそれらの混合物から成る群から選択される、請求項1の潤滑剤混合物。
【請求項22】
該流動点降下剤が、無水マレイン酸・スチレン共重合体のエステル、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ハロパラフィンワックスと芳香族化合物の縮合生成物、カルボン酸ビニル重合体、及びフマール酸ジアルキルの三元共重合体、脂肪酸のビニルエステル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、アルキルフェノール・ホルムアルデヒド縮合樹脂、アルキルビニルエーテル、オレフィン共重合体、及びそれらの混合物から成る群から選択される、請求項1の潤滑剤混合物。
【請求項23】
該流動点降下剤が、約600〜約1100の平均分子量及び約850°F〜約1050°Fの10パーセント沸点範囲を有する異性化フィッシャー・トロプシュ誘導塔底生成物である、請求項1の潤滑剤混合物。
【請求項24】
全潤滑剤混合物に基づいて約0.05〜15重量パーセントの異性化フィッシャー・トロプシュ誘導塔底生成物を更に含む請求項22の潤滑剤混合物。
【請求項25】
該流動点降下剤が、約600〜約1100の平均分子量及び約850°F〜約1050°Fの10パーセント沸点を有する異性化フィッシャー・トロプシュ誘導塔底生成物、及び無水マレイン酸・スチレン共重合体のエステル、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ハロパラフィンワックスと芳香族化合物の縮合生成物、カルボン酸ビニル重合体、及びフマール酸ジアルキルの三元共重合体、脂肪酸のビニルエステル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、アルキルフェノール・ホルムアルデヒド縮合樹脂、アルキルビニルエーテル、オレフィン共重合体、及びそれらの混合物から成る群から選択される添加剤の混合物である、請求項1の潤滑剤混合物。
【請求項26】
該流動点降下剤がポリメタクリレートである、請求項1の潤滑剤混合物。
【請求項27】
潤滑剤混合物であって、
a. 全潤滑剤混合物に基づいて約10〜約80重量パーセントの、100℃で約2cStと12cStの間の粘度を有する、パラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑剤基油留分であり、
(i)0.30重量パーセントより少ない芳香族化合物、
(ii)5重量パーセントより多いシクロパラフィン官能性分子、及び
(iii)15よりも大きい、モノシクロパラフィン官能性分子対マルチシクロパラフィン官能性分子の重量パーセント比
を有する、パラフィン系の高いワックスから誘導された該潤滑剤基油留分、
b. 90重量パーセントより多い飽和炭化水素及び300ppmより少ない硫黄を含む、全潤滑剤混合物に基づいて約20〜約90重量パーセントの石油誘導基油、及び
c. 全潤滑剤混合物に基づいて約0.01〜12重量パーセントの流動点降下剤
を含み、100℃で約3cSt以上の粘度及び−40℃で90,000cPより低いブルックフィールド粘度を有する該潤滑剤混合物。
【請求項28】
パラフィン系の高いワックスから誘導された該潤滑剤基油留分がフィッシャー・トロプシュ誘導潤滑剤基油留分である、請求項27の潤滑剤混合物。
【請求項29】
−40℃で60,000cPより低いブルックフィールド粘度を有する請求項27の潤滑剤混合物。
【請求項30】
−40℃で35,000cPより低いブルックフィールド粘度を有する請求項27の潤滑剤混合物。
【請求項31】
−40℃で15,000cPより低いブルックフィールド粘度を有する請求項27の潤滑剤混合物。
【請求項32】
100℃において約3cSt以上で5.0cStより低い粘度を有する請求項27の潤滑剤混合物。
【請求項33】
100℃において約5.0cSt以上で7.0cStより低い粘度を有する請求項27の潤滑剤混合物。
【請求項34】
120より高い粘度指数を有する請求項27の潤滑剤混合物。
【請求項35】
パラフィン系の高いワックスから誘導された該潤滑剤基油留分が10重量パーセントより多いシクロパラフィン官能性分子を含む、請求項27の潤滑剤混合物。
【請求項36】
パラフィン系の高いワックスから誘導された該潤滑剤基油留分が、50よりも大きい、モノシクロパラフィン官能性分子対マルチシクロパラフィン官能性分子の重量パーセント比を有する、請求項27の潤滑剤混合物。
【請求項37】
パラフィン系の高いワックスから誘導された該潤滑剤基油留分が100℃で約2cStと3cStの間の粘度を有する、請求項27の潤滑剤混合物。
【請求項38】
−40℃で35,000cPより低いブルックフィールド粘度を有する請求項37の潤滑剤混合物。
【請求項39】
パラフィン系の高いワックスから誘導された該潤滑剤基油留分が100℃で約3cStと6cStの間の粘度を有する、請求項27の潤滑剤混合物。
【請求項40】
−40℃で60,000cPより低いブルックフィールド粘度を有する請求項39の潤滑剤混合物。
【請求項41】
パラフィン系の高いワックスから誘導された該潤滑剤基油留分が、以下の式:
ノアク揮発度係数=1000(パラフィン系の高いワックスから誘導された該潤滑剤基油留分の100℃における動粘度)−2.7
により計算されたノアク揮発度係数より低いノアク揮発度を有する、請求項27の潤滑剤混合物。
【請求項42】
パラフィン系の高いワックスから誘導された該潤滑剤基油留分が50重量パーセントより低いノアク揮発度を有する、請求項27の潤滑剤混合物。
【請求項43】
パラフィン系の高いワックスから誘導された該潤滑剤基油留分が、以下の式:
粘度指数係数=28xln(パラフィン系の高いワックスから誘導された該潤滑剤基油留分の100℃における動粘度)+95
により計算された粘度指数係数より高い粘度指数を有する、請求項27の潤滑剤混合物。
【請求項44】
パラフィン系の高いワックスから誘導された該潤滑剤基油留分が、25時間よりも長い、L−4触媒を用いたOxidator BN試験結果を有する、請求項27の潤滑剤混合物。
【請求項45】
該石油誘導基油が、100℃で約8〜約20cStの動粘度を有する基油、100℃で約5〜約8cStの動粘度を有する基油、及びそれらの混合物から成る群から選択される、請求項27の潤滑剤混合物。
【請求項46】
該流動点降下剤が、無水マレイン酸・スチレン共重合体のエステル、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ハロパラフィンワックスと芳香族化合物の縮合生成物、カルボン酸ビニル重合体、及びフマール酸ジアルキルの三元共重合体、脂肪酸のビニルエステル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、アルキルフェノール・ホルムアルデヒド縮合樹脂、アルキルビニルエーテル、オレフィン共重合体、及びそれらの混合物から成る群から選択される、請求項27の潤滑剤混合物。
【請求項47】
該流動点降下剤が、約600〜約1100の平均分子量及び約850°F〜約1050°Fの10パーセント沸点範囲を有する異性化フィッシャー・トロプシュ誘導塔底生成物である、請求項27の潤滑剤混合物。
【請求項48】
該流動点降下剤が、約600〜約1100の平均分子量及び約850°F〜約1050°Fの10パーセント沸点を有する異性化フィッシャー・トロプシュ誘導塔底生成物、及び無水マレイン酸・スチレン共重合体のエステル、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ハロパラフィンワックスと芳香族化合物の縮合生成物、カルボン酸ビニル重合体、及びフマール酸ジアルキルの三元共重合体、脂肪酸のビニルエステル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、アルキルフェノール・ホルムアルデヒド縮合樹脂、アルキルビニルエーテル、オレフィン共重合体、及びそれらの混合物から成る群から選択される添加剤の混合物である、請求項27の潤滑剤混合物。
【請求項49】
請求項1の潤滑剤混合物及び該流動点降下剤に加えて少なくとも1種の添加剤を含むギヤオイル。
【請求項50】
パラフィン系の高いワックスから誘導された該潤滑剤基油留分がフィッシャー・トロプシュ誘導潤滑剤基油留分である、請求項49のギヤオイル。
【請求項51】
該流動点降下剤に加えての該少なくとも1種の添加剤が、耐磨耗性添加剤、極圧剤、清浄剤、分散剤、酸化防止剤、粘度指数向上剤、エステル補助溶剤、粘度調整剤、摩擦調整剤、解乳化剤、消泡剤、腐食防止剤、防錆剤、シール膨潤剤、乳化剤、湿潤剤、潤滑性向上剤、金属不活性化剤、ゲル化剤、粘着剤、殺菌剤、フルイドロス添加剤、着色剤、増粘剤、及びそれらの組合せから成る群から選択される、請求項49のギヤオイル。
【請求項52】
請求項27の潤滑剤混合物及び該流動点降下剤に加えて少なくとも1種の添加剤を含むギヤオイル。
【請求項53】
該流動点降下剤に加えての該少なくとも1種の添加剤が、耐磨耗性添加剤、極圧剤、清浄剤、分散剤、酸化防止剤、粘度指数向上剤、エステル補助溶剤、粘度調整剤、摩擦調整剤、解乳化剤、消泡剤、腐食防止剤、防錆剤、シール膨潤剤、乳化剤、湿潤剤、潤滑性向上剤、金属不活性化剤、ゲル化剤、粘着剤、殺菌剤、フルイドロス添加剤、着色剤、増粘剤、及びそれらの組合せから成る群から選択される、請求項52のギヤオイル。
【請求項54】
潤滑剤混合物を製造する方法であって、
a. 100℃で約2cStと20cStの間の粘度を有する、パラフィン系の高いワックスから誘導された潤滑油留分であり、
(i)0.30重量パーセントより少ない芳香族化合物、
(ii)5重量パーセントより多いシクロパラフィン官能性分子、及び
(iii)15よりも大きい、モノシクロパラフィン官能性分子対マルチシクロパラフィン官能性分子の重量パーセント比
を有する、パラフィン系の高いワックスから誘導された該潤滑油留分を用意し、
b. パラフィン系の高いワックスから誘導された該潤滑油留分を、グループII基油、グループIII基油、及びそれらの混合物から成る群から選択された石油誘導基油、及び流動点降下剤と混合し、そして
c. −40℃で100,000cPより低いブルックフィールド粘度を有する潤滑剤混合物を単離する
ことを特徴とする前記の潤滑剤混合物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−538144(P2007−538144A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527526(P2007−527526)
【出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【国際出願番号】PCT/US2005/017976
【国際公開番号】WO2005/113734
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(503148834)シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド (258)
【Fターム(参考)】