説明

低い塩素過電圧のためのPd含有コーティング

【課題】ハロゲン含有溶液の電気分解を行う間に低い動作電圧をもたらす、電極の製造方法を提供する。
【解決手段】電極触媒コーティングおよび上にコーティングを有する電極に関し、そのコーティングは混合の金属酸化物のコーティング、好ましくはバルブ金属酸化物を伴うかまたは伴わない白金族金属の酸化物であり、そしてパラジウム、ロジウムまたはコバルトなどの遷移金属成分を含有する。電極触媒コーティングは特にハロゲン含有溶液の電気分解のための電解槽のアノードの構成要素として用いることができて、このときパラジウム成分はアノードの動作電位を低くするとともに、最も低いアノード電位を得るための「試行」期間の必要性を解消する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
1.発明の分野
本発明は、ハロゲン含有水溶液において用いるための電極およびこの電極上の電極触媒コーティングであって、低い起動電圧と総体的に低い動作電圧をもたらすものを対象とする。
【背景技術】
【0002】
2.関連する技術の説明
電気分解のプロセスにおいて用いるための電極として、金属酸化物の層またはコーティングを伴った基材金属すなわちコア金属を有するものが知られている。電極のコア金属は、チタン、タンタル、ジルコニウム、ニオブまたはタングステンなどのバルブ金属であってもよい。コーティングが酸化物の混合物である場合、コアすなわち支持体の酸化物はその混合物に寄与することができる。そのような混合物は、支持体金属の酸化物に加えて、白金、イリジウム、ロジウム、パラジウム、ルテニウムおよびオスミウムなどの金属の少なくとも一つの酸化物を含みうる。そのような電極は当分野で公知であり、一般に「寸法安定性である」と言われている。
【0003】
しかし、塩素または塩素酸塩を生成する環境の下でのこれらのコーティングの固有の欠点は、塩素発生電位に及ぼす有害な影響であり、これは、高い動作電位とアノードを数ヶ月以内にわたって高い電位で動作させる電圧「試行(break−in)」期間の必要性を生じさせる。
【0004】
塩素発生電位に関連する不利益を克服する試みは米国特許4,233,340号で扱われていて、そこでは、熱分解して白金属を形成しうる白金化合物を含有する酸化パラジウムをベークしたスラリーを含むコーティングを有する不溶性の電極が提示されている。そのコーティングは99〜5モル%の酸化パラジウムと1〜95モル%の白金属を含有する。米国特許4,443,317号においては、40〜90モル%の酸化パラジウム、0.1〜20モル%の白金、および5〜50モル%の(RuTi1−x))からなるコーティングを有する電気分解のための電極についての教示がある。
【0005】
従って、電圧「試行」期間の必要性を解消するとともに総体的に低い動作電位を与えるコーティングを上に有する電極を提供することが有利であろう。さらに、そのような電極とコーティングは、コーティングのポストベークに続く電圧の段階的増大を防止するかあるいは解消するものであることが望ましいであろう。
【発明の概要】
【0006】
発明の概要
電極触媒コーティングを上に有する電極であって、ハロゲン含有溶液の酸化のための電気化学セルにおける電極の動作電位の低下をもたらすものが見いだされた。さらにこのコーティングは、最低のアノード電位を得るために必要な電圧「試行」期間を解消し、またポストベーク工程またはクリープ工程の後に観察されるアノード電位の段階的増大を解消することを可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0007】
発明の説明
本発明によれば、低い動作電位を有する電極触媒コーティングを含む電極であって、電圧「試行」期間の解消をもたらす電極が提供される。本発明の電極は、膜型セル(membrane cell)における塩素やアルカリ金属水酸化物の電気分解による製造と、塩素酸塩や次亜塩素酸塩の電気分解による製造において特に有用である。
【0008】
本発明において用いられる電極は、導電性の支持体の上に電極触媒的に活性な被膜を有する。電極のための金属は、コーティング可能なあらゆる金属として広範囲のものが考えられる。電極触媒コーティングの特定の適用のためには金属はニッケルまたはマンガンなどであってもよいが、しかしそれは最も多くの場合、「被膜形成」金属であろう。「被膜形成金属」とは、電解質の中でアノードとして接続されることによって、このコーティングされたアノードがその後に電解質中にあって動作するときに、下にある金属が電解質によって腐食するのを保護する不動態酸化物被膜を急速に形成する特性を有する金属または合金、すなわち、しばしば「バルブ金属」と呼ばれる金属および合金を意味する。そのようなバルブ金属としては、チタン、タンタル、ジルコニウム、ニオブ、タングステンおよびケイ素、およびこれらの金属のうちの1以上を含む合金、さらにはバルブ金属を含む合金と金属間混合物、セラミックスおよびサーメット(例えば、Ti−Ni、Ti−Co、Ti−FeおよびTi−Cu)がある。より具体的には、等級5のチタンは6.75重量パーセント以下のアルミニウムと4.5重量パーセント以下のバナジウムを含んでいてもよく、等級6のものは6重量パーセント以下のアルミニウムと3重量パーセント以下のスズを、等級7のものは0.25重量パーセント以下のパラジウムを、等級10のものは10〜13重量パーセント好ましくは4.5〜7.5重量パーセントのジルコニウムを含んでいてもよい、というようなことがある。堅牢性、耐食性および入手可能性に関して特に重要なものはチタンである。
【0009】
元素状の金属を使用するとき、それは特に、通常に入手できる状態の金属、すなわち少量の不純物を含有する金属を意味する。従って、特に重要な金属すなわちチタンについては、他の成分が合金であるかあるいは合金に加えて不純物であるものを含めて、様々な等級の金属を利用することができる。チタンの等級は、ASTM B 265−79に詳説されたチタンについての規格仕様の中にもっと具体的に示されている。
【0010】
チタンまたはその他の被膜形成金属のプレート、ロッド、チューブ、ワイヤまたは編みワイヤおよびエキスパンデッドメッシュを電極基材として用いることができる。導電性のコアの上へのチタンまたはその他の被膜形成金属のクラッド(clad)を用いることもできる。
【0011】
選択される金属およびアノードの基材の形態にかかわらず、そのような支持部材の表面は清浄にした表面であるのが有利である。これは、機械的な洗浄を含めて、清浄な金属表面を達成するためのあらゆる公知の処理によって得ることができる。化学的脱脂と電解脱脂のいずれか、あるいはその他の化学的洗浄操作などの通常の洗浄手段も、有利に用いることができる。基材の調製が焼きなましを含み、そして金属が等級1のチタンである場合、チタンを少なくとも約450℃の温度で少なくとも約15分の時間にわたって焼きなましすることができるが、しかし最も多くの場合は、もっと高い焼きなまし温度、例えば600℃〜875℃の温度が有利である。
【0012】
清浄にした表面または調製しそして清浄にした表面が得られたら、そして特に(おそらくはバルブ金属の基材の上に)必要な複数のコーティング層を付与するために、基材の表面をさらに処理することによって付着性(例えばバルブ金属への電極触媒コーティング層の付着性)を向上させてもよい。これは、支持体金属の粒界エッチング、金属表面の高速グリットブラスト、ピーニング、研磨、プラズマスプレー、またはこれらの組み合わせ、およびそれに続いての埋め込まれたグリット(粗粒)を除去するための任意の表面処理を含む手段によって達成されるだろう。
【0013】
エッチングに対してチタンなどの金属を調製するために、焼きなましなどによって金属を調整し、それによって不純物を結晶粒界へ拡散させるのが最も有用であるかもしれない。すなわち、例えば、等級1のチタンを適当に焼きなましすることによって、結晶粒界での鉄の不純物の濃度が高まるだろう。やはりエッチングの見地から、調整された結晶粒界の冶金学的形態を有する金属表面を有利な結晶粒度と組合わせるのが望ましいかもしれない。再び代表例としてチタンについて言えば、結晶粒の少なくとも相当な量が約3〜約7の範囲内の粒度番号を有するのが有利である。ここで言う粒度番号は、ASTM E 112−84で与えられた指示に従うものである。この条件での有用な金属支持体は、米国特許5,167,788号に開示されている。
【0014】
適切に粗くした金属表面は、尖ったグリットを用いる特殊なグリットブラスト、および場合によってそれに続いての表面に埋め込まれたグリットの除去によって得ることができる。通常は角のある粒子を含むグリットは、表面をピーニングすることとは対照的に、金属表面を切除するだろう。そのような目的のために有用なグリットとしては、砂、酸化アルミニウム、鋼、および炭化ケイ素がある。
【0015】
グリットブラストに続いてエッチング、あるいは水ブラストなどのその他の処理を用いて、埋め込まれたグリットの除去および/または表面の洗浄を行うことができる。エッチングは十分に活性なエッチング溶液、典型的には酸性溶液を用いて行われるであろう。それにより、おそらくは結晶粒界の強い侵蝕を含めて、表面の粗さおよび/または表面の形態を生じさせる。これらは、塩酸、硫酸、過塩素酸、硝酸、シュウ酸、酒石酸、およびリン酸、さらにはこれらの混合物(例えば王水)によって実施することができる。用いることのできるその他のエッチング液としては、水酸化カリウムと硝酸カリウムの溶液などの苛性アルカリエッチング液がある。エッチングに続いて、エッチングした金属表面をすすぎと乾燥の工程に供することができる。
【0016】
ここで説明している電極触媒コーティングを有する電極は、実質的に常にアノードとして用いることができるだろう。すなわち、「アノード」という用語は本明細書において電極に言及するときに頻繁に用いられるが、これは単に便宜上のことであり、本発明を限定するものと解釈されるべきではない。
【0017】
適当に粗い金属表面を得るためのプラズマスプレーにおいては、材料は溶融した金属の滴などの粒状の形態で当てられるだろう。このプラズマスプレーにおいて、例えば金属のスプレーに適用されるように、金属は溶融されて、アルゴンや窒素そして場合により少量の水素を含む不活性ガスの中で電気アークを用いて高温に加熱することによって発生したプラズマ流の中でスプレーされる。ここで「プラズマスプレー」という用語を用いるとき、プラズマスプレーが好ましいのではあるが、この用語は電磁流体力学的スプレー、フレームスプレーおよびアークスプレーなどの熱スプレーを一般的に含むことを意味すると理解するべきであり、従ってスプレーは単に「溶融スプレー」または「熱スプレー」と呼んでもよい。
【0018】
用いられる粒状材料はバルブ金属またはその酸化物、例えば酸化チタン、酸化タンタルおよび酸化ニオブであってもよい。また、溶融スプレーのチタネート、スピネル、マグネタイト、酸化スズ、酸化鉛、酸化マンガンおよびペロブスカイトも考えられる。また、スプレーされる酸化物には、ニオブやスズやインジウムのイオンなど、イオンの形のドープ剤を含む様々な添加剤が添加されてもよい。
【0019】
このようなプラズマスプレーの適用は、支持体金属の表面のエッチングと組合わせて用いてもよい。あるいは、最初に電極の基材を前述したようにしてグリットブラストによって調製し、これに続いてエッチングを行うか、あるいは行わなくてもよい。
【0020】
上のことから、次に表面を、コーティングする前に予備処理を与える様々な工程、例えば上で説明したバルブ金属酸化物のコーティングのプラズマスプレーに供してもよい、ということが理解されよう。他の予備処理も有効であろう。例えば、表面を水素化処理または窒化処理に供するということが考えられる。電気化学的に活性な材料で被覆する前に、米国特許3,234,110号に記載されているように、支持体を空気中で加熱することによって、あるいは支持体の陽極酸化によって酸化物層を付与することが提案されている。下地層の上に電気化学的に活性な材料からなる外側層を付着させる様々な提案もなされていて、これは主として保護性で導電性の中間体として提供される。様々な酸化スズをベースとする下地層が米国特許4,272,354号、3,882,002号および3,950,240号に開示されている。不動態化防止層(antipassivation layer)を有するように表面が調製されてもよいということも考えられる。
【0021】
表面の調製(これは上述したような予備処理層を与えることを含んでいてもよい)に続いて、電気化学的に活性なコーティング層を支持体部材に付着させることができる。電気化学的に活性なコーティングの典型例としてしばしば適用されるものは、白金族金属の酸化物、マグネタイト、フェライト、コバルトスピネル、または混合の金属酸化物のコーティングなどの活性な酸化物コーティングから提供されるものである。それらは水溶液のように水をベースとするものであってもよく、あるいは例えばアルコール溶媒を用いるもののように溶液型のものであってもよい。しかし、本発明の電極のためには、好ましいコーティング組成物の溶液の重要な態様は、パラジウム、ロジウムまたはコバルトのうちの1以上を含む遷移金属の酸化物を含有するものであって、この中ではパラジウムが好ましい、ということが見出された。コーティング組成物はPdCl、RhClまたはCoClおよび塩酸を含み、あるいはアルコール溶液中にこれらを含むだろう。金属塩はPdCl・xHO、RhCl・xHO、およびCoCl・xHOなどの形で用いることができる。便宜上、一般にこれらの形のものをここでは単にPdCl、RhClまたはCoClと称する。一般に、金属の塩化物はアルコール中で溶解し、そのようなアルコールは例えばイソプロパノールとブタノールのいずれかであり、これらの全てのものには少量の塩酸が添加されているかあるいは添加されておらず、この中ではn−ブタノールが好ましい。
【0022】
後にさらに説明するが、本発明の各々の態様において、コーティング組成物は、コーティングの全ての白金族金属の酸化物含有量100モル%につき、遷移金属成分を約0.1モル%から約10モル%までの量で含有し、好ましい範囲は約0.4モル%から約6モル%までの範囲であろう。成分は実質的にそれらの酸化物として存在し、金属について言及しているのは便宜上のことであり、特に割合については金属のことを言っている、と理解されるだろう。
【0023】
本発明のコーティング組成物中のこのような少量の遷移金属成分の使用により、遷移金属成分を含まないコーティングの電位値によっては、ハロゲン含有溶液の電気分解についての動作電位を約10ミリボルト(mV)から約100mVまでの値で低下させるということは、予期せざることであった。前述したように、これまでのコーティングにおいては、酸化パラジウムを、あるいはこれに他の金属を組合わせたものを、40%以上の多くの量で用いてきた。従って、上述したようなもっと単純化したコーティング組成を用いて本発明で開示されたような望ましいコーティング組成物が達成されるということは、予測されなかった。
【0024】
本発明の第一の態様においては、PCT特許出願No.PCT/US04/14357に記載されているように(これの開示の全体は、ここに参考文献として援用される)、コーティング組成物は、前述したようなPd成分に加えて、酸化ルテニウムを酸化チタンおよび酸化アンチモンまたは酸化スズと組合わせた成分を含有するだろう。場合により、コーティング組成物は酸化イリジウムを含有していてもよいと考えられる。このとき、この第一の態様のコーティング組成物はRuCl、TiClまたはSbClおよび塩酸を含むものであり、これらは全て水溶液中にある。第一の態様の電気化学的に活性なコーティングについて、コーティングの配合物は、アルコールをベースとするものとは対照的に、水をベースとするものを用いて調製されるのが好ましい、ということが見出された。
【0025】
第一の態様のコーティング組成物は、コーティングの金属含有量の100モルパーセントにつき、ルテニウム成分を少なくとも約10モルパーセントから約30モルパーセントまで、そして好ましくは約15モルパーセントから約25モルパーセントまでとするのに十分な量で含有するだろう。成分は実質的にそれらの酸化物として存在し、金属について言及しているのは便宜上のことであり、特に割合については金属のことを言っている、と理解されるだろう。
【0026】
第一の態様のコーティング組成物中にはバルブ金属成分が含まれるだろう。チタン、タンタル、ニオブ、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、モリブデン、およびタングステンを含めた様々なバルブ金属を用いることができ、チタンが好ましい。溶解した金属の塩が用いられ、そして適当な無機置換基は酸性溶液中に塩化物、ヨウ化物、臭化物、スルフェート、ボレート、カーボネート、アセテート、およびシトレート、例えばTiClまたはTiClを含んでいてもよい。このようなコーティング組成物は、コーティングの金属含有量の100モルパーセントにつき、Ti成分を少なくとも約50モルパーセントから約85モルパーセントまで、そして好ましくは約60モルパーセントから約75モルパーセントまでとするのに十分な量で含有するだろう。
【0027】
第一の態様のコーティング組成物が酸化イリジウムを含む場合、適当な先駆物質の置換基はIrClまたはHIrClを含みうる。酸化イリジウムは、コーティングの金属含有量の100モルパーセントにつき、約1モルパーセントから約25モルパーセントまでの量で存在するだろう。
【0028】
好ましい第一の態様のコーティング組成物は酸化アンチモンを含むだろう。適当な先駆物質の置換基はSbCl、SbCl、またはその他の無機アンチモン塩を含みうる。酸化アンチモンは一般に、コーティングの金属含有量の100モルパーセントにつき、約5モルパーセントから約20モルパーセントまで、そして好ましくは約10モルパーセントから約15モルパーセントまでの量で存在するだろう。
【0029】
上述したように、第一の態様の電極触媒コーティングは酸化アンチモンの代わりに、あるいは酸化アンチモンに加えて、酸化スズを含みうると考えられる。酸化スズが望ましい成分である場合、適当な先駆物質の置換基はSnCl、SnSO、またはその他の無機スズ塩を含みうる。酸化スズが用いられる場合、それは一般に、コーティングの金属含有量の100モルパーセントにつき、約2モルパーセントから約20モルパーセントまで、そして好ましくは約3モルパーセントから約15モルパーセントまでの量で存在するだろう。
【0030】
第一の態様のコーティング組成物において、ルテニウム対アンチモンまたはスズの比率は一般におよそ2:1からおよそ0.1:1まで、そして好ましくはおよそ1.5:1であり、チタン対アンチモンまたはスズの比率はおよそ19:1から1:1まで、そして好ましくはおよそ5.7:1であろう。選択的なものであるイリジウム成分が用いられる場合、ルテニウム対イリジウムの比率は一般におよそ1:1からおよそ99:1までであろう。
【0031】
本発明の第二の態様においては、米国特許出願10/395939号に記載されているように(これの開示の全体は、ここに参考文献として援用される)、好ましいコーティング組成物の溶液は典型的にRuClとIrClおよび塩酸からなるものであり、全てアルコール溶液中にあり、そしてバルブ金属成分の存在を伴っていても、伴っていなくてもよい。クロリリド酸HIrClを用いることも考えられる。RuClはRuCl・xHOなどの形で用いてもよく、同様にIrCl・xHOを用いることができると理解されるだろう。便宜上、一般にこれらの形はここでは単にRuClおよびIrClと称されるだろう。一般に、塩化ルテニウムは塩化イリジウムとともにアルコール中で溶解し、そのようなアルコールは例えばイソプロパノールとブタノールのいずれかであり、これらの全てのものには少量の塩酸が添加されているかあるいは添加されておらず、この中ではn−ブタノールが好ましい。
【0032】
このような第二の態様のコーティング組成物は、コーティングの金属含有量の100モルパーセントにつき、ルテニウム金属を少なくとも約5モルパーセントから約50モルパーセントまでとするのに十分なルテニウム成分を含有し、好ましい範囲はルテニウムについて約15モルパーセントから約35モルパーセントまでであろう。成分は実質的にそれらの酸化物として存在し、金属について言及しているのは便宜上のことであり、特に割合については金属のことを言っている、と理解されるだろう。
【0033】
第二の態様のコーティング組成物は、100モルパーセントのイリジウム金属とルテニウム金属につき、イリジウム金属を少なくとも約50モルパーセントから約95モルパーセントまでとするのに十分なIr成分を含有し、好ましい範囲は約50モルパーセントから約75モルパーセントまでのイリジウムであろう。このとき、最良のコーティング特性を得るためには、Ru:Irのモル比はおよそ1:1からおよそ1:4までであり、好ましい比率はおよそ1:1.6であろう。
【0034】
コーティングのさらなる安定化および/またはアノード効率の変更を目的として、場合により第二の態様のコーティング組成物中にバルブ金属成分が含まれていてもよい。本発明の第一の態様に関して上述したように、チタン、タンタル、ニオブ、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、モリブデン、およびタングステンを含めた様々なバルブ金属を用いることができる。バルブ金属成分はアルコール溶媒中のバルブ金属のアルコキシドから形成することができ、このとき酸の存在を伴うか、あるいは伴わない。本発明において用いることが考えられるそのようなバルブ金属のアルコキシドとしては、メトキシド、エトキシド、イソプロポキシドおよびブトキシドがある。例えば、チタンエトキシド、チタンプロポキシド、チタンブトキシド、タンタルエトキシド、タンタルイソプロポキシドまたはタンタルブトキシドが有用であろう。
【0035】
第二の態様の組成物中にバルブ金属成分が存在するとき、コーティングは、コーティングの金属含有量の100モルパーセントにつき、約0.1モルパーセントから25モルパーセント以下を含有し、好ましい組成物は約5モルパーセントから約15モルパーセントまでを含有するだろう。
【0036】
第三の態様においては、米国特許5,230,780号に記載されているように(これの開示の全体は、ここに参考文献として援用される)、コーティング組成物は、遷移金属成分に加えて、イリジウム、ルテニウム、およびチタンの酸化物の溶液からなるであろう。通常、それぞれの先駆物質成分は金属塩であり、最も多くの場合はハロゲン化物の塩であり、そして好ましくは、経済性と溶液の調製の効率のためには全てが塩化物の塩であろう。しかし、その他の有用な塩としては、ヨウ化物、臭化物、およびヘキサクロロイリジウム酸アンモニウムまたはヘキサクロロルテニウム酸アンモニウムなどのアンモニウムクロロ塩(ammonium chloro salts)がある。金属支持体に塗布されるコーティング組成物は水性のものであり、これは大抵の場合、さらなる液体を混合していない単なる水であろう。好ましくは、無機質の不純物を含まないように、脱イオン水または蒸留水が用いられる。
【0037】
この第三の態様の個々の溶液または溶液の組み合わせにおいて、適当な先駆物質の置換基に加えて、ただ一つの例外を除いて大抵の場合は、さらなる溶液成分は存在しないだろう。そのような例外とは実質的に常に、無機酸の存在であろう。例えば、三塩化イリジウムの溶液はさらに強酸を含むことがあり、大抵の場合それは塩酸であり、通常約5〜約20重量パーセントの酸を供給する量で存在するだろう。典型的に、個々の溶液または溶液の組み合わせは1未満のpH、例えば約0.2〜約0.8の範囲内のpHを有するだろう。
【0038】
このとき、第三の態様のコーティング組成物は、少なくとも約15モルパーセントで25モルパーセント未満のイリジウム成分、約35から約50モルパーセントまでのルテニウム成分、および少なくとも約30モルパーセントで45モルパーセント未満のチタン成分を含有し、これはこれらの成分の100モルパーセントを基準とするものである。
【0039】
最良のコーティング特性を得るためには、最終的なコーティング中の酸化ルテニウム対酸化イリジウムのモル比は、およそ1.5:1を超える値からおよそ3:1までであろう。最終的なコーティングはさらに、イリジウムとルテニウムの酸化物の合計に対する酸化チタンのモル比として、およそ1:1未満の値で、しかし大抵の場合およそ0.5:1を超える値を有するだろう。
【0040】
本発明の第四の態様において、好ましいコーティング組成物はルテニウム、イリジウムおよびチタンの酸化物を含有するものである。上述したように、適当な先駆物質の成分は、アルコール溶液中にRuCl、IrCl、およびオルトブチルチタネートを含むだろう。このとき、第四の態様のコーティング組成物は、約2から約20モルパーセントまでのイリジウム成分、約10から約30モルパーセントまでのルテニウム成分、および約50から約85モルパーセントまでのチタン成分を含有し、これはコーティング中のこれらの成分の100モルパーセントを基準とするものである。
【0041】
上述の態様のそれぞれにおいては、電気化学的に活性なコーティング層として、混合の金属酸化物コーティングと組合わせて遷移金属の酸化物を含有するコーティング組成物について説明した。本発明の第五の態様においては、パラジウム、ロジウムまたはコバルトのうちの1以上(パラジウムが好ましい)を含む遷移金属からなるトップコート層(上塗り層)を電気化学的に活性なコーティング層からなる中間層の上に塗布することができる、と考えられる。トップコート層はアルコールまたは水の中の遷移金属の稀薄溶液から形成することができ、このとき酸の存在を伴うか、あるいは伴わない。一般に、遷移金属成分は約0.2〜約10g/lの金属の量で存在するだろう。好ましいトップコート層は塩酸中のPdClから形成されるだろう。
【0042】
上述のコーティング組成物のいずれのものも、金属の支持体に液体のコーティング組成物を塗布するために典型的に用いられるいかなる手段によっても、金属の支持体に塗布することができる。そのような塗布の方法としては、浸漬スピン法および浸漬排出法、ブラシ塗布、ローラーコーティング、および静電スプレーなどのスプレー塗布がある。さらに、スプレー塗布と組合わせた方法、例えば浸漬排出法とスプレー塗布の組合わせを用いることができる。スプレー塗布は、慣用の圧縮ガスの適用と静電スプレーの適用のいずれかによって行うことができる。電気化学的に活性なコーティングを付与するための上述のコーティング組成物を用いるとき、ローラーコーティングの操作が最も実用的であるかもしれない。
【0043】
コーティングを塗布する方法のいかんにかかわらず、通常は、コーティングの工程を繰り返すことによって、一回だけのコーティングによって達成されるよりも均一で多くの塗布量が得られる。しかしながら、塗布されるコーティングの量は、約0.1g/m(平方メートル当りのグラム量)から約20g/mまでの範囲の金属の総量を与えれば十分であり、好ましくは約3g/mから約12g/mまでの範囲であろう。
【0044】
コーティングの塗布に続いて、塗布した組成物を加熱すると、コーティング組成物中に存在する先駆物質の熱分解によって最終的な混合した酸化物のコーティングが調製されるだろう。これにより、酸化物の金属に基づいて上述した通りのモル比で混合した酸化物を含有する混合酸化物のコーティングが調製される。熱分解のためのこのような加熱は、少なくとも約350℃の温度で少なくとも約3分間行われるだろう。より典型的には、塗布したコーティングは約550℃までのもっと高い温度で約20分以下の時間加熱されるだろう。適当な条件には、空気中または酸素中での加熱が含まれうる。一般に、用いられる加熱方法は、金属支持体上のコーティングを硬化するために用いることのできる方法のいずれでもよい。従って、コンベヤーオーブンを含むオーブンコーティングを用いてもよい。さらに、赤外線硬化法も有効であろう。このような加熱に続いて、そしてコーティング組成物の追加の塗布が行われる場合はこの追加のコーティングの前に、加熱されコーティングされた支持体は通常、少なくとも実質的に周囲温度まで冷却されるだろう。特に、コーティング組成物の全ての塗布が完了した後、ポストベークを用いることができる。コーティングのための典型的なポストベークの条件には、約400℃から約550℃までの温度が含まれてもよい。ベークの時間は約10分から約300分の長さまで変化しうる。
【0045】
上述したように、本発明のコーティングは特に、塩素酸塩とアルカリ金属水酸化物の製造のための電気分解プロセスにおけるアノードについて有用である。しかし、これらの電極は、塩素と次亜塩素酸塩の製造など、その他のプロセスにおいても用途が見出されると考えられる。
【実施例】
【0046】
実施例1
合金化されていない等級1のチタンからなる平坦なチタンのプレートが、18〜20%塩酸の90〜95℃の溶液中で25分間にわたってエッチングされて、コーティングの塗布のために表面が粗くされた。
【0047】
【表1】

【0048】
表1に示したコーティング組成物が塗布された。コーティング溶液は、ブタノールまたは水/HCl溶媒のいずれかに、表に示した金属(塩化物の塩として)を添加することによって調製された。全ての塩を溶解させるために混合した後、用意したチタンプレートの個々の試料に溶液が塗布された。コーティングは層状に塗布され、このとき各々のコーティングが別々に塗布され、そして室温で乾燥させ、次いで空気中で表に示した硬化条件で加熱した。最終のコーティングを塗布した後、試料の幾つかのものは、空気中で表のポストベークの欄に示した温度/時間の条件においてさらにベークされた。
【0049】
標準電極電位(Standard Electrode Potentials:SEP)(対SCE)が、コーティングされた試料について300gplのNaCl溶液中でセ氏50度において測定された。表1は測定された値を示し、挙げられた全てのコーティングについて配合物中のパラジウムの存在は、ポストベークの操作を行う場合も行わない場合も、SEPの値を低下させることが示されている。
【0050】
実施例2
コーティングがなされた製品の三つの試料が、保管してあるものから得られた。コーティングの組成と支持体のタイプを表2に示す。
【0051】
【表2】

【0052】
表面の全ての汚染物質を除去するために、コーティングした支持体#1〜3はオーブン中で450〜470℃に約5分間加熱された。次いで、試料についてSEPの測定が行われ、その値を表2に示す。データから、試料#1は前もってポストベークされたものであり、従って高いSEPの値を有することに注目されたい。
【0053】
18wt%HCl中の0.7g/l Pd(PdClとして)の溶液が調製され、この溶液からなる一つのコーティングが試料1〜3に塗布されて、試料4〜6が作られた。コーティングは空気乾燥され、そしてコーティングを硬化させるために試料はオーブン中に460〜490℃で3〜6分間置かれた。オーブンから取り出し、そしてそれに続く冷却期間の後、試料について再びSEPの測定が行われた。表2におけるデータは、試料4はもはや高いSEPを有しておらず、この原因は塗布されたパラジウム溶液からなるトップコートにあるとすることができる、ということを示している。
【0054】
次いで、三つの試料4〜6は470℃において90分間ポストベークされて、試料7〜9が作られ、そして再びSEPが記録された。表2におけるデータは、ポストベーク操作の後にいずれの試料においてもSEPは増大せず、この原因は塗布されたパラジウム溶液からなるトップコートにあるとすることができる、ということを示している。
【0055】
特許法に従って最良の形態と好ましい態様を示したが、本発明の範囲はそれらに限定されるのではなく、添付した特許請求の範囲によって示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲン含有溶液の電気分解において用いるための電極を製造するための方法であって、それにより前記電極は前記電気分解を行う間に低い動作電位をもたらすものであり、次の工程:
a)上に中間の電極触媒コーティング層を有するバルブ金属の支持体を用意すること;
b)前記バルブ金属の支持体を本質的にパラジウム、ロジウムまたはコバルトの酸化物の1以上からなる遷移金属酸化物の混合物の溶液からなるトップコート層でコーティングすること、ここで、前記混合物はコーティングの約0.1モル%から約10モル%までの遷移金属酸化物の総含有量を与えるものである;
を含む前記方法。
【請求項2】
前記バルブ金属の支持体はバルブ金属のメッシュ、シート、ブレード、チューブ、有孔プレートまたはワイヤの部材のうちの1以上のものであり、そして前記バルブ金属はチタン、タンタル、アルミニウム、ハフニウム、ニオブ、ジルコニウム、モリブデンまたはタングステン、これらの合金およびこれらの金属間混合物のうちの1以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記バルブ金属の電極基材の表面は粗くした表面であり、そして前記粗くした表面は粒界エッチング、グリットブラスト、ピーニング、研磨またはプラズマスプレーのうちの1以上によって調製される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記粗くした表面の上に前処理層としてのセラミック酸化物のバリヤー層が定着している、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記中間の電極触媒コーティングは、白金族金属または白金族金属の酸化物、マグネタイト、フェライト、酸化コバルトスピネル、酸化スズ、および酸化アンチモンを含み、そして/またはバルブ金属の少なくとも一つの酸化物と白金族金属の少なくとも一つの酸化物の混合の結晶材料を含み、そして/または二酸化マンガン、二酸化鉛、プラチネート置換基、ニッケル−ニッケル酸化物またはニッケル酸化物とランタン酸化物の混合物のうちの1以上を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記トップコート層の前記遷移金属酸化物は酸化パラジウムであり、そして前記酸化パラジウムは約0.4モル%から約6モル%までの量で存在する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は前記コーティングを加熱する工程をさらに含み、そして前記加熱は少なくとも約350℃から約550℃までの温度で少なくとも約3分から約20分までの時間にわたってベークすることによるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記電極は、塩素、塩素酸塩または次亜塩素酸塩のうちの1以上の製造のためのプロセスにおけるアノードである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記電極は前記電気分解を行う間に約10ミリボルトから約100ミリボルトまでの量で動作電位の低下をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記中間の電極触媒コーティング層と前記トップコート層は、浸漬スピン法、浸漬排出法、ブラシ塗布、ローラーコーティングおよびスプレー塗布のうちの1以上によって前記バルブ金属の支持体に塗布される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
請求項1の方法によって製造された電極を含む、ハロゲン含有溶液の電気分解のための電解槽。
【請求項12】
ハロゲン含有溶液の電気分解において用いるための電極であって、前記電極は上に電極触媒コーティングを有していて、前記電極は、
バルブ金属の電極基材と、
前記バルブ金属の電極基材の上の電気化学的に活性なコーティングからなるコーティング層を含み、前記コーティングは、
a)コーティングの約0.1モルパーセントから約10モルパーセントまでの遷移金属酸化物の総含有量になる、本質的にパラジウム、ロジウムまたはコバルトの酸化物の1以上からなる遷移金属酸化物の混合物、
b)白金族金属酸化物の混合物と25モルパーセント以下の量で選択的に含まれるバルブ金属酸化物、このとき前記白金族金属酸化物の混合物は本質的にルテニウムとイリジウムの酸化物の1以上からなり、その比率は、コーティング中に存在する金属の100モルパーセントにつき、約5モルパーセントから約50モルパーセントまでのルテニウムと約50モルパーセントから約95モルパーセントまでのイリジウムとなる比率である、
を含み、
前記電気化学的に活性なコーティングは前記セルにおいて低い動作電位をもたらすものである、前記電極。
【請求項13】
前記バルブ金属の電極基材はバルブ金属のメッシュ、シート、ブレード、チューブ、有孔プレートまたはワイヤの部材である、請求項12に記載の電極。
【請求項14】
前記バルブ金属の電極基材はチタン、タンタル、アルミニウム、ハフニウム、ニオブ、ジルコニウム、モリブデンまたはタングステン、これらの合金およびこれらの金属間混合物のうちの1以上である、請求項13に記載の電極。
【請求項15】
前記バルブ金属の電極基材の表面は粗くした表面であり、そして前記表面は粒界エッチング、グリットブラスト、ピーニング、研磨または熱スプレーのうちの1以上によって粗くされている、請求項14に記載の電極。
【請求項16】
前記粗くした表面の上に前処理層としてのセラミック酸化物のバリヤー層が定着している、請求項15に記載の電極。
【請求項17】
前記電極触媒コーティングは前記バルブ金属酸化物を含む、請求項14に記載の電極。
【請求項18】
前記バルブ金属酸化物は酸化チタン、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化ハフニウム、酸化スズのうちの1以上であり、そして前記バルブ金属酸化物は約0.1モルパーセントから約25モルパーセントまでの量で存在する、請求項17に記載の電極。
【請求項19】
酸化ルテニウム対酸化イリジウムのモル比はおよそ1:1からおよそ1:4までである、請求項15に記載の電極。
【請求項20】
前記白金族金属酸化物と前記バルブ金属酸化物のモル比はおよそ4:1からおよそ1:4までの範囲内である、請求項16に記載の電極。
【請求項21】
前記電極触媒コーティングの上にバルブ金属酸化物のコーティングまたは酸化スズのコーティング、またはこれらの混合物を含む少なくとも一つのトップコート層が定着している、請求項20に記載の電極。
【請求項22】
前記バルブ金属酸化物のトップコート層は、チタン、タンタル、ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、アルミニウム、ハフニウム、またはタングステンからなる群から選択される酸化物を含む、請求項21に記載の電極。
【請求項23】
前記トップコート層はSb、F、Cl、Mo、W、Ta、Ru、Ir、Pt、Rh、Pd、またはInおよびこれらの酸化物のうちの1以上をドープした酸化スズのコーティング層であり、そして前記ドープ剤は約0.1%から約20%までの範囲の量である、請求項21に記載の電極。
【請求項24】
前記遷移金属酸化物は酸化パラジウムであり、そして前記酸化パラジウムは約0.4モル%から約6モル%までの量で存在する、請求項12に記載の電極。
【請求項25】
前記コーティングはさらに、コーティングの金属含有量の100モルパーセントにつき、酸化イリジウムを約1モルパーセントから約25モルパーセントまでの量で含み、そしてルテニウム金属対イリジウムの比率はおよそ1:1からおよそ99:1までである、請求項12に記載の電極。
【請求項26】
ハロゲン含有溶液の電気分解のための電極触媒プロセスにおいて用いるためのバルブ金属支持体からなる電極であって、前記バルブ金属支持体は上に電極触媒表面コーティングを有していて、前記コーティングは本質的に、パラジウム、ロジウムまたはコバルトのうちの1以上の遷移金属の酸化物の混合物に酸化ルテニウム、酸化チタン、および酸化スズまたは酸化アンチモンの1以上を組合わせたものからなり、前記混合物は、コーティング中の金属含有量の100モルパーセントにつき、少なくとも約0.1モルパーセントから約10モルパーセントまでの前記遷移金属酸化物、少なくとも約10モルパーセントから約30モルパーセントまでのルテニウム、および少なくとも約50モルパーセントから約85モルパーセントまでのチタンを与え、これにより前記電極触媒コーティングは前記セルにおいて低い動作電位をもたらすものである、前記電極。
【請求項27】
前記バルブ金属支持体はチタン、タンタル、ジルコニウム、ニオブ、タングステン、アルミニウム、これらの合金および金属間混合物のうちの1以上であり、そして前記支持体はメッシュ、シート、ブレード、チューブ、有孔プレートまたはワイヤの形態になっている、請求項26に記載の電極。
【請求項28】
前記バルブ金属支持体の表面は粗くした表面であり、そして前記表面は粒界エッチング、グリットブラスト、ピーニング、研磨、または熱スプレーのうちの1以上によって粗くされている、請求項27に記載の電極。
【請求項29】
コーティングの金属含有量の100モルパーセントにつき、前記酸化ルテニウムは約10モルパーセントから約25モルパーセントまでの量で存在し、そして前記チタンは約60モルパーセントから約75モルパーセントまでの量で存在する、請求項28に記載の電極。
【請求項30】
前記コーティングは、コーティングの金属含有量の100モルパーセントにつき、約5モルパーセントから約20モルパーセントまでの酸化アンチモンを含む、請求項26に記載の電極。
【請求項31】
前記コーティングは、コーティングの金属含有量の100モルパーセントにつき、約2モルパーセントから約20モルパーセントまでの酸化スズを含む、請求項26に記載の電極。
【請求項32】
前記コーティングは、コーティングの金属含有量の100モルパーセントにつき、約10モルパーセントから約15モルパーセントまでの酸化アンチモンと約2モルパーセントから約15モルパーセントまでの酸化スズを含む、請求項26に記載の電極。
【請求項33】
ルテニウム金属対アンチモンまたはスズの比率はおよそ2:1からおよそ0.1:1までであり、そしてチタン対アンチモンまたはスズの比率はおよそ19:1からおよそ1:1までである、請求項26に記載の電極。
【請求項34】
前記コーティングは水をベースとするコーティングである、請求項26に記載の電極。
【請求項35】
前記コーティングはさらに、コーティングの金属含有量の100モルパーセントにつき、酸化イリジウムを約1モルパーセントから約25モルパーセントまでの量で含み、そしてルテニウム金属対イリジウムの比率はおよそ1:1からおよそ99:1までである、請求項26に記載の電極。
【請求項36】
前記電極は前記電気分解を行う間に約10ミリボルトから約100ミリボルトまでの量で動作電位の低下をもたらす、請求項26に記載の電極。
【請求項37】
請求項26の方法によって製造された電極を含む、クロロ−アルカリ溶液の電気分解のための電解槽。
【請求項38】
ハロゲン含有溶液の電気分解において用いるための電極であって、前記電極は上に電極触媒表面コーティングを有するバルブ金属支持体を含み、前記表面コーティングは本質的に、パラジウム、ロジウムまたはコバルトのうちの1以上の遷移金属の酸化物の混合物に酸化ルテニウム、酸化イリジウムおよび酸化チタンを組合わせたものからなり、前記混合物は、コーティング中に存在する酸化物の100モルパーセントにつき、少なくとも約0.1モルパーセントから約10モルパーセントまでの前記遷移金属酸化物、少なくとも約15モルパーセントで25モルパーセント未満の酸化イリジウム、約35モルパーセントから約50モルパーセントまでの酸化ルテニウム、および少なくとも約30モルパーセントで45モルパーセント未満の酸化チタンを与え、これによりコーティングは1:1未満の酸化チタン対イリジウムとルテニウムの酸化物の合計のモル比を有し、また酸化ルテニウム対酸化イリジウムのモル比は1.5:1より大きく3:1までであり、これにより前記電極触媒コーティングは前記セルにおいて低い動作電位をもたらすものである、前記電極。
【請求項39】
前記バルブ金属支持体はチタン、タンタル、ジルコニウム、ニオブ、タングステン、アルミニウム、これらの合金および金属間混合物のうちの1以上であり、そして前記支持体はメッシュ、シート、ブレード、チューブ、有孔プレートまたはワイヤの形態になっている、請求項37に記載の電極。
【請求項40】
前記バルブ金属支持体の表面は粗くした表面であり、そして前記表面は粒界エッチング、グリットブラスト、ピーニング、研磨、または熱スプレーのうちの1以上によって粗くされている、請求項38に記載の電極。
【請求項41】
前記遷移金属酸化物は酸化パラジウムであり、そして前記酸化パラジウムは約0.4モル%から約6モル%までの量で存在する、請求項37に記載の電極。
【請求項42】
前記表面コーティングは、少なくとも約350℃から約550℃までの温度で少なくとも約3分から約20分までの時間にわたってベークすることによって加熱される、請求項38に記載の方法。
【請求項43】
請求項38の方法によって製造された電極を含む、ハロゲン含有溶液の電気分解のための電解槽。
【請求項44】
前記動作電位は約10ミリボルトから約100ミリボルトまでの量で低下する、請求項38に記載の方法。
【請求項45】
ハロゲン含有溶液の電気分解において用いるための電極であって、前記電極は上に電極触媒表面コーティングを有するバルブ金属支持体を含み、前記表面コーティングは本質的に、パラジウム、ロジウムまたはコバルトのうちの1以上の遷移金属の酸化物の混合物に酸化ルテニウム、酸化イリジウムおよび酸化チタンを組合わせたものからなり、前記混合物は、少なくとも約0.1モルパーセントから約10モルパーセントまでの前記遷移金属酸化物、約10モルパーセントから約30モルパーセントまでのルテニウム、約2モルパーセントから約20モルパーセントまでのイリジウム、および約50モルパーセントから約85モルパーセントまでのチタンを与え、これにより前記電極触媒コーティングは前記セルにおいて低い動作電位をもたらすものである、前記電極。
【請求項46】
前記バルブ金属支持体はチタン、タンタル、ジルコニウム、ニオブ、タングステン、アルミニウム、これらの合金および金属間混合物のうちの1以上であり、そして前記支持体はメッシュ、シート、ブレード、チューブ、有孔プレートまたはワイヤの形態になっている、請求項45に記載の電極。
【請求項47】
前記バルブ金属支持体の表面は粗くした表面であり、そして前記表面は粒界エッチング、グリットブラスト、ピーニング、研磨、または熱スプレーのうちの1以上によって粗くされている、請求項46に記載の電極。
【請求項48】
前記遷移金属酸化物は酸化パラジウムであり、そして前記酸化パラジウムは約0.4モル%から約6モル%までの量で存在する、請求項45に記載の電極。
【請求項49】
前記表面コーティングは、少なくとも約350℃から約550℃までの温度で少なくとも約3分から約20分までの時間にわたってベークすることによって加熱される、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
請求項45の方法によって製造された電極を含む、ハロゲン含有溶液の電気分解のための電解槽。
【請求項51】
前記動作電位は約10ミリボルトから約100ミリボルトまでの量で低下する、請求項45に記載の方法。

【公開番号】特開2012−67390(P2012−67390A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−233068(P2011−233068)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【分割の表示】特願2007−529796(P2007−529796)の分割
【原出願日】平成16年9月1日(2004.9.1)
【出願人】(591041783)デノラ・テック・インコーポレーテッド (6)
【Fターム(参考)】