説明

低い色彩、低いナトリウムベンズオキサジノンのUV吸収剤およびそれらの製法

【課題】改良ベンズオキサジノンUV吸収剤に関し、特に高い透明度の適用に適する低い色彩、低いナトリウムベンズオキサジノンのUV吸収剤およびこれらの吸収剤の製法を提供する。
【解決手段】約0未満の黄色インデックスおよび約50ppm未満のナトリウム濃度を有するベンズオキサジノン化合物に関する。更に、再結晶もしくは他の精製法により精製されるイサト酸無水物を、化学量論的適量のアシル化化合物と反応させる段階を含んで成る、これらの化合物の製法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は改良ベンズオキサジノンUV吸収剤に関する。より具体的には、本発明は特に高い透明度の適用に適する低い色彩、低いナトリウムベンズオキサジノンのUV吸収剤およびこれらの吸収剤の製法に関する。
【背景技術】
【0002】
日光およびその他の紫外(UV)線源への露出は広範な物質、特にポリマー物質の劣化を惹起することが知られている。例えばプラスチックのようなポリマー物質はしばしば、主としてポリマーの分子量の減少によりUV光線への長時間の露出の結果として変色し、そして/もしくは脆くなる。従って、このような劣化を防止することができる、UV光線吸収剤および安定剤のような物質の方向を目指された膨大な量の技術が開発されてきた。
【0003】
UV吸収剤を使用する1つの重要な適用は処方コンタクトレンズのような光学的品質のレンズである。アクリルおよび他の非晶質ポリマーより優れたそれらの堅牢性および透明性のために、好ましくはポリカーボネートがレンズに使用される。この適用には透明性および色彩が重要なパラメーターであり、400nmを越える可視領域に影響を与えずに380nm領域までのUV光線を遮断するための吸収剤が必要とされる。2,2−p−フェニレンビス(3,1−ベンズオキサジン−4−オン)のような幾つかのベンズオキサジノンUV吸収剤はこれらのUV必要条件を満たすために、この適用に好まれる。
【0004】
しかし、2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンズオキサジン−4−オン)のような市販のベンズオキサジノン化合物はそれらの製法のために問題を有する。これらの方法は特許文献1および2に開示されている(特許文献1および2参照)。
【0005】
2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンズオキサジン−4−オン)の1つの製法はアントラニル酸、炭酸ナトリウム、テレフタロイルジクロリドおよび酢酸無水物を反応させることによる(特許文献2の実施例19参照)。しかし、この方法はベンズオキサジノン製品中の高濃度のナトリウムイオン(Na)不純物をもたらし、それがポリカーボネートを著しく劣化させる。
【0006】
2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンズオキサジン−4−オン)を生成するもう1つの方法はイサト酸無水物をテレフタロイルジクロリドと反応させることによる(特許文献1中の実施例24参照)。しかし、本法を使用する先行技術の市販製品に伴なう問題はそれらが光学レンズおよび他の高度の透明度の適用物中に使用されるためのそれらの願望を限定する高度の色彩を有する点である。
【0007】
従って、高度の透明度およびその他のポリマー適用物中への使用に適する、低色彩、低ナトリウムのベンズオキサジノン化合物を生成する必要が存在する。
【特許文献1】米国特許第3,989,698号明細書
【特許文献2】米国特許第4,446,262号明細書
【発明の概要】
【0008】
本発明は式I:
【0009】
【化1】

【0010】
[式中、nは1〜3であり、Rは直接結合もしくは、更に1ヘテロ原子を含むことができるnの原子価を有する炭化水素残基であり、そしてRは水素、ハロ、ニトロ、C〜Cアルキル、C〜CアルコキシもしくはC〜Cアルケニルオキシである]
の化合物に関する。これらの化合物は約0未満の黄色インデックスおよび約50ppm未満のナトリウム濃度を有する。
【0011】
本発明はまた、化学量論的適量のアシル化化合物とイサト酸無水物を反応させる段階を含んで成る式Iの化合物の製法に関し、ここでイサト酸無水物は再結晶もしくはその他の精製法により精製される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は式I:
【0013】
【化2】

【0014】
[式中、nは1〜3であり、Rは直接結合もしくは、更に1ヘテロ原子を含むことができるnの原子価を有する炭化水素残基であり、そしてRは水素、ハロ、ニトロ、C〜Cアルキル、C〜CアルコキシもしくはC〜Cアルケニルオキシであり、かつそこで前記化合物が約0未満の黄色インデックス(yellow index)および約50ppm未満のナトリウム濃度を有する]
の化合物に関する。
【0015】
本発明においては、イサト酸無水物はまたその二酸をも含む。
【0016】
式Iの化合物は好ましくは、約−5未満の、そしてより好ましくは、約−10未満の黄色インデックスを有する。
【0017】
更に、好ましくは、式Iの化合物は約20ppm未満の、より好ましくは、約10ppm未満の、そして好ましくは、約5ppm未満もしくは約1ppm未満のナトリウム濃度を有する。
【0018】
前記化合物はポリマー系、特に高度な透明度の光学系に使用されるものに対するUV安定剤として使用することができる。
【0019】
芳香族残基、Rはnの原子価を有するあらゆる炭化水素残基であり、nが2の時には直接結合であることができる。炭化水素残基は更に1ヘテロ原子を含むことができる。
【0020】
nが1である時は、Rは1〜18炭素原子を含む置換もしくは未置換脂肪族基、6〜18炭素原子を有する置換もしくは未置換芳香族基または5〜18炭素原子を有する置換もしくは未置換環式脂肪族基を含むことができる。脂肪族基の例にはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、デシル、オクタデシル等が含まれる。芳香族基の例にはフェニル、ナフチル、ビフェニル、トリル、メチルナフトール、ニトロフェニル、アセチルフェニルおよびクロロフェニルが含まれる。環式脂肪族基の例にはシクロペンチルおよびシクロヘキシルが含まれる。
【0021】
nが2である時は、Rは1〜18炭素原子を含む置換もしくは未置換脂肪族残基、6〜18炭素原子を有する置換もしくは未置換芳香族残基または5〜18炭素原子を有する置換もしくは未置換環式脂肪族残基を含むことができる。脂肪族基の例にはメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、デシレン、オクタデシレン等が含まれる。芳香族基の例にはフェニレン、ナフチレン、ビフェニレン、トリレン、キシレニレン、メチルナフチレン、ニトロフェニレン、アセチルフェニレンおよびクロロフェニレンが含まれる。環式脂肪族残基の例にはシクロペンチレンおよびシクロヘキシレンが含まれる。nが2である時は、好ましくはRがフェニレン、ジフェニレンもしくはナフチレン、そしてより好ましくは、パラ−フェニレンである。
【0022】
nが3である時は、あらゆる適した3価の炭化水素残基をRに対して使用することができる。炭化水素残基が3価の芳香族残基であることが好ましい。
【0023】
式Iの化合物の具体的な例は:2−メチル−3,1−ベンズオキサジン−4−オン、2−ブチル−3,1−ベンズオキサジン−4−オン、2−フェニル−3,1−ベンズオキサジン−4−オン、2−(1−もしくは2−ナフチル)−3,1−ベンズオキサジン−4−オン、2−(4−ビフェニル)−3,1−ベンズオキサジン−4−オン、2−p−ニトロフェニル−3,1−ベンズオキサジン−4−オン、2−m−ニトロフェニル−3,1−ベンズオキサジン−4−オン、2−p−ベンゾイルフェニル−3,1−ベンゾイルフェニル−4−オン、2−p−メトキシフェニル−3,1−ベンゾイルフェニル−4−オン、2−O−メトキシフェニル−3,1−ベンズオキサジン−4−オン、2−シクロヘキシル−3,1−ベンズオキサジン−4−オン、2−p−(もしくはm−)フタルイミドフェニル−3,1−ベンズオキサジン−4−オン、N−フェニル−4−(3,1−ベンズオキサジン−4−オン−2−イル)フタルイミド、N−ベンゾイル−4−(3,1−ベンズオキサジン−4−オン−2−イル)アニリン、N−ベンゾイル−N−メチル−4−(3,1−ベンズオキサジン−4−オン−2−イル)アニリン、2−[p−(N−フェニルカルバモニル)フェニル]−3,1−ベンズオキサジン−4−オンおよび2−[p−(N−フェニルN−メチルカルバモイル)フェニル]−3,1−ベンズオキサジン−4−オン、2,2’−ビス(3,1−ベンズオキサジン−4−オン)、2,2’−エチレンビス(3,1−ベンズオキサジン−4−オン)、2,2’−テトラメチレンビス(3,1−ベンズオキサジン−4−オン)、2,2’−ヘキサメチレンビス(3,1−ベンズオキサジン−4−オン)、2,2’−デカメチレンビス(3,1−ベンズオキサジン−4−オン)、2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンズオキサジン−4−オン)、2,2’−m−フェニレンビス(3,1−ベンズオキサジン−4−オン)、2,2’−(4,4’−ジフェニレン)ビス(3,1−ベンズオキサジン−4−オン)、2,2’−(2,6−もしくは1,5−
ナフタレン)ビス(3,1−ベンズオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−メチル−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンズオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−ニトロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンズオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−クロロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンズオキサジン−4−オン)、2,2’−(1,4−シクロヘキシレン)ビス(3,1−ベンズオキサジン−4−オン)、N−p−(3,1−ベンズオキサジン−4−オン−2−イル)フェニル、4−(3,1−ベンズオキサジン−4−オン−2−イル)フタルイミドおよびN−p−(3,1−ベンズオキサジン−4−オン−2−イル)ベンゾイル、4−(3,1−ベンズオキサジン−4−オン−2−イル)アニリン、1,3,5−トリ(3,1−ベンズオキサジン−4−オン−2−イル)ベンゼン、1,3,5−トリ(3,1−ベンズオキサジン−4−オン−2−イル)ナフタレン、および2,4,6−トリ(3,1−ベンズオキサジン−4−オン−2−イル)ナフタレンである。
【0024】
以前に記述したように、式Iの化合物は紫外線遮蔽剤(日焼け止め剤のような)中のみならずまた、例えば様々なポリマー(架橋および熱可塑性の双方の)、光学レンズ、写真材料、繊維および織物材料のための染料溶液を含む広範な物質を安定化するための紫外線吸収剤として特に有用である。式Iの化合物は、被膜もしくは溶液のような光線安定化組成物中の1成分として、もしくは日焼け止め組成物のようなUV遮蔽組成物中の1成分として、場合によっては物質に対する(具体的にはポリマーに対する)化学的結合により、例えば物理的混合もしくは配合(blending)を含むあらゆる様々な通常の方法の1つでこれらの物質中に取り込むことができる。
【0025】
本発明の1態様においては、式Iの化合物はポリマーもしくはその他の物質を含んで成る組成物中に本明細書に請求されている化合物を化学的もしくは物理的に取り込むことにより紫外線による劣化にさらされる物質を安定化させるために使用することができる。そのように安定化させることができる物質の限定しない例は、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリケトン、ポリアミド、天然および合成ゴム、ポリウレタン、ポリスチレン、耐衝撃ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアセタール、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、ポリスチレン、ABS、SAN(スチレンアクリロニトリル)、ASA(アクリレートスチレンアクリロニトリル)、セルロースアセテートブチレート、セルロースポリマー、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニルスルフィド、PPO、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリビニルクロリド、ポリカルボネート、ポリケトン、脂肪族ポリケトン、熱可塑性TPO、アミノ樹脂架橋ポリアクリレートおよびポリエステル、ポリイソシアネート架橋ポリエステルおよびポリアクリレート、フェノール/ホルムアルデヒド、尿素/ホルムアルデヒドおよびメラミン/ホルムアルデヒド樹脂、乾燥および非乾燥アルキド樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、イソシアネート、イソシアヌレート、カルバメートおよびエポキシ樹脂と架橋したアルキド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリレート樹脂、無水物もしくはアミンで架橋されている脂肪族、環式脂肪族、複素環式および芳香族グリシジル化合物から誘導される架橋エポキシ樹脂、ポリシロキサン、マイケル付加ポリマー、アミン、活性化不飽和およびメチレン化合物でブロックされたアミン、活性化不飽和およびメチレン化合物を含むケトイミン、不飽和アクリルポリアセトアセテート樹脂と組み合わせたポリケトイミン、不飽和アクリル樹脂と組み合わせたポリケトイミン、光線硬化性組成物、エポキシメラミン樹脂、有機染料、化粧品、セルロース基材の紙調製物、写真用フィルム用紙、繊維、インクおよびそれらの混合物である。
【0026】
ポリマー物質は好ましくは可視光線に対して実質的に透明である。少なくとも約75%の入射光線の透過を許す製品が可視光線に実質的に透明であると見なされる。例えば、非晶質樹脂に基づく透明成形製品もしくは晶質樹脂に基づく薄い透明な成形製品、例えばポリカーボネートのフィルム、シート、レンズ、プレート、管もしくはパイプ、ポリエチレ
ンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートコポリエステルもしくは全体的芳香族ポリエステルのシートフィルム、ビン、ポリビニルクロリドのシートもしくはフィルム、ポリプロピレンのフィルム、ポリエチレンのシートもしくはフィルムおよびメタクリレート樹脂のシートもしくはフィルムが好ましくは、式Iの化合物とともに使用される。
【0027】
安定化される物質中に取り込まれる式Iの化合物の量は約0.001〜約20重量%、好ましくは、約0.01〜約15重量%、そしてより好ましくは約0.02〜約10重量%である。
【0028】
本発明は更に、式Iの化合物および安定化される物質に対する他の添加剤の添加を予想する。これらの添加剤の例には、それらに限定はされないが、抗酸化剤;他のUV吸収剤および安定剤[例えば2−(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、オキサミド、2−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−ヒドロキシベンゾフェノン、立体障害アミン、ニッケル化合物、シンナメート、ベンジリデンマラネートおよび障害ベンゾエート];金属不活性化剤;ヒドロキシルアミン;ニトロン;共安定剤;核形成剤(nucleating agent);清澄剤(clarifying agent);中和剤;金属ステアレート;金属酸化物;ヒドロタルサイト(hydrotalcites);充填剤および強化剤;可塑化剤;潤滑剤;乳化剤;顔料;審美学的添加剤;触媒;均染剤;光学的光沢剤;難燃剤;静電気抑制剤;発泡剤およびそれらの組み合わせ物が含まれる。
【0029】
本発明のベンズオキサジノン化合物の調製
式Iのベンズオキサジノン化合物の調製は米国特許第4,462,262号明細書の実施例1〜18の方法と同様に実施される。しかし、イサト酸無水物が使用される前に、それは再結晶、昇華もしくは抽出のようなあらゆる適した方法により最初に精製される。好ましい方法は、イサト酸を、ピリジン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、テトラヒドロフラン(THF)のようなエーテルおよびメチレンクロリドのような塩素化溶媒、のような適当な溶媒中に高温で溶解させる再結晶である。混合物を放置冷却し、濾取し、乾燥すると、精製イサト酸無水物を得る。
【0030】
イサト酸無水物の精製は先行技術の生成物よりも黄色がより薄く、より低いナトリウム濃度を有する生成物をもたらすことが発見された。ベンズオキサジノン化合物がポリカーボネートのような透明な物質中に使用される時には薄い色彩および低いナトリウムレベルの双方が重要なパラメーターである。
【0031】
次に精製イサト酸無水物を約25〜約75℃の温度でピリジンもしくはジメチルホルムアミドのようなあらゆる適当な反応溶媒中に少なくとも一部を溶解もしくは懸濁させる。反応溶媒は好ましくは全体もしくは少なくとも一部が有機塩基を含有する。好ましい有機塩基は第三級アミンである。次におよそ化学量論的適量のアシル化化合物をイサト酸無水物混合物に緩徐に添加する。好ましいアシル化化合物の例にはカルボン酸無水物およびアシルハロゲン化物が含まれる。好ましいアシル化化合物はアシルハロゲン化物である。次に混合物を還流下で3〜5時間加熱し、次に室温以下に冷却する。次に沈殿した結晶を濾取し、洗浄し、乾燥する。次に生成された結晶をトルエンのようなあらゆる適当な溶媒を使用して再結晶して、最終的ベンズオキサジノン生成物を与えることができる。
【0032】
反応に使用される反応溶媒の量は好ましくは、反応混合物中に存在するイサト酸無水物1部に対して約0.1〜約30重量部、より好ましくは、イサト酸無水物1部に対して反応溶媒を約1〜約20重量部、更により好ましくは、約5〜約15重量部である。
【0033】
好ましい第三級アミンの溶媒には約20までの炭素原子を有する様々な置換および未置換脂肪族、芳香族および環式第三級アミンが含まれる。例には例えば、ベンジルピリジン、ブチルピリジン、フェニルピリジン、プロピルピリジン、メトキシピリジン、トリメチルキノリン、フェニルキノリン、メチルキノリン、ベンジルキノリン、メトキシキノリンのようなピリジンおよびキノリン並びにそれらの様々な組み合わせ物が含まれる。ピリジンの外に、メチルピリジンもしくはピコリン、ジメチルピリジン、エチルピリジン、トリメチルピリジン、5−エチル−2−メチルピリジン、ジエチルジメチルピリジン等を含むピリジンの同族体を使用することができる。使用することができる様々なその他の第三級アミンには例えば、ジメチルエチルアミン、トリフェニルアミン、メチルジエチルアミン、トリプロピルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリアミルアミン、トリブチルアミンおよび様々なその他の脂肪族もしくは環式脂肪族第三級アミンが含まれる。使用することができるその他のアミンには、ジアルキルトルイジン(例えばジメチルトルイジン)、N,N−ジアルキルアニリン(例えばN,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、等)、N−置換アルキルピロリン(例えばメチルピロリン、エチルピロリン等)、N−置換アルキルピロール(例えばメチルピロール、エチルピロール等)、N−置換アルキルピペリジン、N−置換アルキルピペラジンおよび様々なその他の第三級アミンおよびあらゆる割合のそれらの組み合わせ物が含まれる。
【0034】
前記のように、本発明の方法に使用される好ましいアシル化剤にはカルボン酸無水物およびアシルハロゲン化物が含まれる。
【0035】
好ましいカルボン酸無水物には飽和もしくは不飽和脂肪族、環式脂肪族もしくは芳香族無水物が含まれる。これらの無水物は30までの炭素原子をもつ置換もしくは未置換の1価もしくは2価の有機基をもつことができる。より具体的には、カルボン酸無水物には酢酸、プロピオン酸および酪酸無水物、等のような飽和酸無水物が含まれる。不飽和酸無水物にはアクリル酸、置換アクリル酸、クロトン酸およびオレイン酸無水物等が含まれる。芳香族カルボン酸無水物には、例えばフェニル酢酸無水物、フタル酸無水物およびベンゾイルフタル酸無水物等が含まれる。その他の無水物の具体例にはクロロ酢酸無水物、カプロン酸無水物、カプリル酸無水物、パルミチン酸無水物、フェノキシ酢酸無水物、ラウリン酸無水物、ヘプチル酸無水物、ミリスチン酸無水物、ステアリン酸無水物、スルホ安息香酸無水物、バレリン酸無水物、安息香酸無水物、ベンゾイル酢酸無水物、ニトロフタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ケイ皮酸無水物、2−ニトロ−ケイ皮酸無水物、ナフテン酸無水物、3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、等が含まれる。
【0036】
好ましいアシルハロゲン化物には例えば、アシルモノ−およびジハロゲン化物(すなわち塩化物、臭化物、ヨウ化物およびフッ化物)、例えばベンゾイルハロゲン化物(すなわちベンゾイルクロリド、ベンゾイルブロミド、ベンゾイルフルオリド、ベンゾイルヨウジド)、アセチルハロゲン化物(例えばアセチルクロリド、アセチルブロミド、アセチルヨウジド、アセチルフルオリド)および様々なハロアセチルクロリド(例えばブロモアセチルクロリド、クロロアセチルクロフィド等)が含まれる。他のアシルハロゲン化物にはハロベンゾイルハロゲン化物(例えばクロロベンゾイルクロリド、ブロモベンゾイルクロリド)および様々な置換ベンゾイルハロゲン化物(例えばニトロベンゾイルクロリドもしくはブロミド等)が含まれる。更に、その他のアシルハロゲン化物には、ミリスチルクロリド、パルミチルクロリド、ペラルゴニルクロリド、フェニルアセチルクロリド、プロピオニルクロリド、ブチリルクロリド、カプリルクロリド、ラウリルクロリド、クロトニルクロリド、バレリルクロリド、ナフチルクロリド、ステアリルクロリド並びに二ハロゲン化物(例えばスクシニルジクロリドもしくはジブロミド、フタリルジクロリド、イソフタリルジクロリド、テレフタロイルジクロリド、4,4’−ジフェニルジカルボン酸ジクロリドおよびンフタレン−2,6−ジカルボン酸ジクロリド、オキサシルジクロリドもしくは
ジブロミド、ピバロイルジクロリド、シンナモイルクロリド等)が含まれる。1例として、これらのカルボン酸ハロゲン化物は酸もしくはその無水物をハロゲン化剤(例えば三塩化もしくは三臭化リン、五塩化リン、チオニルクロリド等)と既知の方法により反応させることにより調製することができる。
【0037】
黄色インデックスの測定法
黄色インデックス(YI)はKollmorgen Instrument Corporationの1部門のMACBETH(R)により供給されるCOLOR−EYE(R)7000分光光度計を使用して測定する。ベンズオキサジノン化合物の試料結晶を1cm厚さのキュルベット(curvette)中に入れる。キュルベットを軽く叩いて結晶を落ち着かせ、隙間を排除する。更なる結晶を添加してキュルベットを再充填する。これを必要に応じて繰り返して隙間のないキュルベットを得る。キュルベットを分光光度計中に入れ、CIELabシステムパラメーター(L、a、b)を測定する。YIをASTM E313−73を使用して、測定されたCIELabシステムパラメーターから計算する。分光光度計による測定は工場で目盛合わせされて設置されたセラミックタイルの基準と比較される。高いYI値は試料がより濃い黄色であることを示す。大部分の適用には、より低いもしくは負のYI数が好ましい。
【実施例】
【0038】
本発明の特定の態様および特徴物がそれらに限定されることなく、下記の実施例により具体的に示される。
【0039】
実施例1
低いYI、低いナトリウムの2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンズオキサジン−4−オン)の調製
BASF Corporationから市販のイサト酸をジメチルホルムアミド(DMF)中に60℃の温度で溶解することによりそれを再結晶した。混合物を放置冷却し、結晶を濾取し、乾燥すると、精製イサト酸無水物を得た。
【0040】
次に精製乾燥イサト酸無水物1部を約60℃の温度で乾燥ピリジン10部に溶解した。E.I.du Pont de Nemours and Companyからのテレフタロイルジクロリド(0.63部)を、温度を維持するためにわずかに冷却しながら、イサト酸無水物混合物に撹拌しながら緩徐に添加した。次にこの混合物を約4時間、加熱還流した。次に反応物を室温に冷却した。沈殿生成物を濾過し、洗浄し、乾燥すると、最終的2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンズオキサジノン)生成物を与えた。
【0041】
比較例1A−精製イサト酸無水物を伴なわない2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンズオキサジン−4−オン)
2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンズオキサジノン)の試料を前記実施例1の方法に従いイサト酸無水物を精製せずに調製した。
【0042】
比較例1B−アントラニル酸を使用する2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンズオキサジン−4−オン)の調製
アントラニル酸(1重量部)および0.35部のNaOHを約5.5部のメチルイソブチルケトン(MIBK)中に溶解した。撹拌しながら、MIBK3部中テレフタロイルジクロリド0.7部の溶液を混合物に約60〜70℃で緩徐に添加した。添加後に、混合物を60〜70℃で2時間反応させた。水を溜去し、約2部の酢酸無水物を添加した。次に混合物を還流条件下で7時間反応させた。次に水を添加し、バッチを0.5時間還流し、次にMIBKを溜去した。次に約1部の50%NaOH溶液を添加し、反応混合物を冷却し、濾過し、乾燥すると2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンズオキサジン−4
−オン)を与えた。
【0043】
実施例2
精製イサト酸無水物による2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンズオキサジン−4−オン)のパイロットプラント調製物
2種の2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンズオキサジン−4−オン)のパイロットプラントバッチを実施例1の方法に従い調製した。
【0044】
実施例3〜6
2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンズオキサジノン)試料の黄色インデックスおよびナトリウム濃度測定値
実施例1および2並びに比較例1Aおよび1Bに対するYIを前記の黄色インデックス測定法に従い測定した。これらの試料のナトリウム濃度を誘導結合プラズマ(ICP)元素分析により測定した。これらの測定値の結果は下記の表1に示す。
【0045】
表1 YIおよびナトリウム濃度測定値
実施例 調製例 黄色インデックス Na濃度(ppm)
3 1 −2.6 <1
4 比較−1A 27.7 17
5 比較−1B −15.0 220
2 −13.4 <5
実施例6の測定値は2バッチの平均であった。
【0046】
結果により、本発明の方法により生成されたベンズオキサジノン化合物の試料(実施例3および6)は先行技術の製品より低いナトリウムレベルおよびより低いYIを有することが示される。
【0047】
本明細書に記載され請求された本発明は、これらの態様が本発明の幾つかのアスペクトの具体例として意図されるので、本明細書に開示された具体的な態様により範囲を限定されない。あらゆる同等な態様は本発明の範囲内にあることが意図される。実際、前記の説明から、本明細書中に示され記載されたもの以外の本発明の様々な修飾物が当業者に対し明白になるであろう。これらの修飾物もまた付記の請求の範囲内に含まれることが意図される。
【0048】
以下に本発明の主な特徴と態様を列挙する。
【0049】
1. 式I:
【化3】

[式中、nは1〜3であり、Rは直接結合もしくは、更に1ヘテロ原子を含むことができるnの原子価を有する炭化水素残基であり、そしてRは水素、ハロ、ニトロ、C〜Cアルキル、C〜CアルコキシもしくはC〜Cアルケニルオキシであり、かつここで前記化合物が約0未満の黄色インデックスおよび約50ppm未満のナトリウム濃
度を有する]
の化合物。
【0050】
2. Rが水素でありかつRが、更にヘテロ原子を含むことができる置換もしくは未置換芳香族残基である1.の化合物。
【0051】
3. nが2である2.の化合物。
【0052】
4. Rがフェニレン、ジフェニレンもしくはナフチレンである3.の化合物。
【0053】
5. Rがp−フェニレンである4.の化合物。
【0054】
6. 黄色インデックスが約−5未満である1.の化合物。
【0055】
7. 黄色インデックスが約−10未満である1.の化合物。
【0056】
8. ナトリウム濃度が約20ppm未満である1.の化合物。
【0057】
9. ナトリウム濃度が約5ppm未満である1.の化合物。
【0058】
10. カルボン酸無水物およびアシルハロゲン化物から成る群から選択される化学量論的適量のアシル化化合物と精製イサト酸無水物を反応させる段階を含んで成る1.の化合物の製造方法であって、精製イサト酸無水物が抽出、昇華もしくは再結晶により精製される製造方法。
【0059】
11. 反応溶媒がイサト酸無水物を少なくとも一部溶解するために使用される10.の方法。
【0060】
12. 精製イサト酸無水物が再結晶により精製される11.の方法。
【0061】
13. 反応溶媒が第三級アミンである12.の方法。
【0062】
14. 前記第三級アミンがピリジンである13.の方法。
【0063】
15. アシル化化合物がアシルハロゲン化物である13.の方法。
【0064】
16. アシルハロゲン化物が芳香族アシルハロゲン化物である15.の方法。
【0065】
17. 前記芳香族アシルハロゲン化物がテレフタロイルジクロリド、4,4’−ジフェニルジカルボン酸ジクロリドおよびナフタレン−2,6−ジカルボン酸ジクロリドから成る群から選択される16.の方法。
【0066】
18. 前記芳香族アシルハロゲン化物がテレフタロイルジクロリドである16.の方法。
【0067】
19. 式I:
【化4】

[式中、nは2であり、Rはフェニレンであり、Rは水素であり、かつここで前記化合物が約−5未満の黄色インデックスおよび約50ppm未満のナトリウム濃度を有する]
の化合物。
【0068】
20. 前記ナトリウム濃度が約20ppm未満である19.の化合物。
【0069】
21. 前記黄色インデックスが−10未満であり、かつ前記ナトリウム濃度が約5ppm未満である21.の化合物。
【0070】
22. (a)1.の化合物、および
(b)安定化される物質(ここで前記物質がポリオレフィン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリケトン、ポリアミド、天然および合成ゴム、ポリウレタン、ポリスチレン、耐衝撃ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアセタール、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、ポリスチレン、ABS、スチレンアクリロニトリル、アクリレートスチレンアクリロニトリル、セルロースアセテートブチレート、セルロースポリマー、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニルスルフィド、PPO、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリビニルクロリド、ポリカルボネート、ポリケトン、脂肪族ポリケトン、熱可塑性TPO、アミノ樹脂架橋ポリアクリレートおよびポリエステル、ポリイソシアネート架橋ポリエステルおよびポリアクリレート、フェノール/ホルムアルデヒド、尿素/ホルムアルデヒドおよびメラミン/ホルムアルデヒド樹脂、乾燥および非乾燥アルキド樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、イソシアネート、イソシアヌレート、カルバメートおよびエポキシ樹脂と架橋したアルキド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリレート樹脂、無水物もしくはアミンで架橋されている脂肪族、環式脂肪族、複素環式および芳香族グリシジル化合物から誘導される架橋エポキシ樹脂、ポリシロキサン、マイケル付加ポリマー、アミン、活性化不飽和およびメチレン化合物でブロックされたアミン、活性化不飽和およびメチレン化合物を含むケトイミン、不飽和アクリルポリアセトアセテート樹脂と組み合わせたポリケトイミン、不飽和アクリル樹脂と組み合わせたポリケトイミン、光線硬化性組成物、エポキシメラミン樹脂、有機染料、化粧品、セルロース基材の紙調製物、写真用フィルム用紙、繊維、インクおよびそれらの混合物、から成る群から選択される)、
を含んで成る組成物。
【0071】
23. 安定化される物質がポリカーボネート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートコポリエステル、化粧品、日焼け止め剤および繊維から成る群から選択される22.の組成物。
【0072】
24. 添加剤を更に含んで成る22.の組成物であって、前記添加剤が抗酸化剤;2−(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、オキサミド、2−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−ヒドロキシベンゾフェノン、立体障害アミン、ニッケル化合物、シンナメート、ベンジリデンマラネート、障害ベンゾエート;金属不
活性化剤;ヒドロキシルアミン;ニトロン;共安定剤、核形成剤;清澄剤;中和剤;金属ステアレート;金属酸化物;ヒドロタルサイト;充填剤および強化剤;可塑化剤;潤滑剤;乳化剤;顔料;審美学的添加剤;触媒;均染剤;光学的光沢剤;難燃剤;静電気抑制剤;発泡剤およびそれらの組み合わせ物から成る群から選択される組成物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

[式中、nは1〜3であり、Rは直接結合もしくは、更に1ヘテロ原子を含むことができるnの原子価を有する炭化水素残基であり、Rは水素、ハロ、ニトロ、C〜Cアルキル、C〜CアルコキシもしくはC〜Cアルケニルオキシであり、そして化合物は0未満の黄色インデックスおよび50ppm未満のナトリウム濃度を有する]
の化合物の製造方法であって、
イサト酸無水物を、抽出、昇華もしくは再結晶により精製し、そして、
カルボン酸無水物およびアシルハロゲン化物から成る群から選択される化学量論的適量のアシル化化合物と該精製イサト酸無水物とを反応させて、式Iの化合物を形成する、段階を含んで成る、
上記方法。
【請求項2】
が水素でありかつRが、任意にヘテロ原子を含むことができる置換もしくは未置換芳香族残基である請求項1の方法。
【請求項3】
nが2である請求項2の方法。
【請求項4】
がフェニレン、ジフェニレンもしくはナフチレンである請求項3の方法。
【請求項5】
がp−フェニレンである請求項4の方法。
【請求項6】
得られる化合物の黄色インデックスが−5未満である請求項1の方法。
【請求項7】
得られる化合物の黄色インデックスが−10未満である請求項1の方法。
【請求項8】
得られる化合物のナトリウム濃度が20ppm未満である請求項1の方法。
【請求項9】
得られる化合物のナトリウム濃度が5ppm未満である請求項1の方法。
【請求項10】
反応溶媒がイサト酸無水物を少なくとも一部溶解するために使用される請求項1の方法。
【請求項11】
イサト酸無水物が再結晶により精製される請求項1の方法。
【請求項12】
反応溶媒が第三級アミンである請求項10の方法。
【請求項13】
前記第三級アミンがピリジンである請求項12の方法。
【請求項14】
アシル化化合物がアシルハロゲン化物である請求項1の方法。
【請求項15】
アシルハロゲン化物が芳香族アシルハロゲン化物である請求項14の方法。
【請求項16】
前記芳香族アシルハロゲン化物がテレフタロイルジクロリド、4,4’−ジフェニルジカルボン酸ジクロリドおよびナフタレン−2,6−ジカルボン酸ジクロリドから成る群から選択される請求項15の方法。
【請求項17】
前記芳香族アシルハロゲン化物がテレフタロイルジクロリドである請求項16の方法。

【公開番号】特開2010−189408(P2010−189408A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86335(P2010−86335)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【分割の表示】特願2003−538247(P2003−538247)の分割
【原出願日】平成14年9月12日(2002.9.12)
【出願人】(594060532)サイテク・テクノロジー・コーポレーシヨン (36)
【Fターム(参考)】