説明

低アセトアルデヒド発生度及び高ビニル末端濃度を有するポリエステルポリマー

少なくとも0.72dl/gのIt.V.、少なくとも0.8マイクロ当量/gのビニル末端濃度及び20ppm未満のAA発生度を有する、アルキレンアリーレート単位を含むポリエステルポリマーを、重縮合の遅い段階において又は固体ポリエステルポリマーの再溶融時に触媒失活剤を添加することによって、製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルポリマー、ポリエステルポリマーの製造方法、固体ポリエステルポリマー粒子及びその成形物に関する。更に詳しくは、本発明は、少なくとも0.72dl/gのIt.V.、少なくとも0.8マイクロ当量/グラムのビニル末端基(VEG)濃度、20ppm未満のアセトアルデヒド発生度(generation rate)を有する、アルキレンアリーレート単位を含むポリエステルポリマー並びにこのようなポリエステルポリマーの製造方法、このようなポリエステルポリマーの固体粒子及びこのようなポリエステルポリマーから製造される成形物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルポリマー、特にポリエチレンテレフタレートポリマーは、シート、板、押出ブロー成形ボトル、押出積層品、容器及び飲料ボトルのような種々の用途に広く使用されている。ポリエチレンテレフタレート(PET)のようなポリエステルポリマー及びポリエステルポリマー粒子を包装用途に望ましいものとする物理的特性には、衝撃強度、成形性、明澄度(clarity)、透明度(transparency)及び低着色がある。しかし、特定の用途によっては、特にCSD及び水ボトルのような延伸ブロー成形品には望ましい他の特性及び性質がある。
【0003】
例えば、ポリエステルポリマーメルト及びそれから得られる固体粒子(例えばペレット)の1つの通常望ましい特徴は、一般にインヘレント粘度(IhV)又は極限粘度数(It.V.)として表される比較的高い分子量である。高いIt.V.値を達成するための周知の方法の1つは、固相重合(即ち、固相化(solid stating))を用いることである。一般に、固相化は、ポリエステルポリマー固体の平均分子量を増加させる方法である。一定の最小レベルの結晶化が固相化の前提条件である。これは、そうしないと固体粒子は固相化温度において互いに粘着し合うであろうためである。固相化の間に、パーセント結晶化度の増加及び結晶の完成度の増加の両面で結晶化が続き、それが融点の増加として現れる。例えば、部分結晶化PETペレットを流動床中で最大で12時間、結晶融解温度に近いがそれより低い温度に供して、PETペレットのIt.V.を増加させることができ、同時にPET結晶化度も増加する。不活性ガス流又は真空を用いて、固体ポリエステル粒子中に存在するアセトアルデヒドを含む、固相化温度において揮発性である化合物を除去することができる。固相化の排除は望ましいが、固相化を行わないとアセトアルデヒドの除去が問題となる。この状況は、ポリエステル粒子が溶融される場合に(例えばPETボトルプレフォームの射出成形の間に)、後になってアセトアルデヒドを発生し得るアセトアルデヒド前駆体の存在によって更に複雑化される。固相化の間には、AAを遊離させる、VEGのようなAA前駆体とヒドロキシエチル末端基(HEG)又は水との反応が若干ある。このようなAAは、一部分は不活性ガス又は真空によって吹き飛ばすことができる。固相化を行わない場合には、アセトアルデヒド前駆体は溶融相重縮合後に存在する濃度に留まる可能性がある。更に、固相化を計画する場合には、AA前駆体は、溶融相での滞留時間がより短いので、より少ない量で存在する場合が多い。
【0004】
別の通常望ましい特徴は、アセトアルデヒド(AA)濃度が低いことである。アセトアルデヒドはそれとわかる風味を有し、飲料用容器用途には極めて望ましくない可能性がある。2つの種類のAAが問題となることが知られている。1つ目は、射出成形又は押出ブロー成形において原料として使用されるポリエステルペレット又はポリエステル粒子に含まれる残留又は遊離AAである。AAの2つ目の型は、プレフォームAA又はPETペレットを溶融加工してボトルプレフォームを形成する際に発生するAAである。ポリエステルの溶融時に反応し得る、固体ポリエステル粒子、化合物又は化学官能基中のAA前駆体は、プレフォーム中に許容され得ないレベルのAAを生成し得る。更に、ボトルプレフォームを製造するための射出成形プロセスの場合のように、ポリエステルポリマーを溶融状態に保持する場合には、新たなAA前駆体が形成される。プレフォームをボトルにブロー成形する場合には、許容され得ないほど高いAAレベルは、これらのボトル中に含まれる飲料の風味に悪影響を与えるものである。水のような比較的に無味の飲料は、AAの風味によって特に悪影響を受ける。多くの水ボトル用途では、プレフォームAAレベルが炭酸清涼飲料(CSD)ボトル用途よりも低くなければならない。ポリエステル粒子を取得してボトルプレフォームを製造する加工業者は、水及びCSDの両用途のためのプレフォームの製造に使用できる1種類の樹脂の入手を望んでいる。これは、1つの供給サイロ又は1つの型の供給サイロ、1つの生成物貯蔵領域又は1つの型の生成物貯蔵領域などを可能にすることによって、加工業者の材料処理プロセスを単純化するであろう。水ボトル市場に売られるほとんどの樹脂は、CSD市場に売られる樹脂よりも低いIt.V.を有する。二重用途樹脂は、CSD用途にとって充分に高いIt.V.と水ボトル用途にとって充分に低い溶融時AA発生度を有することが必要であろう。
【0005】
固体ポリエステル粒子中の高い残留AAレベル及び/又は高い溶融時AA発生度という問題に取り組む多くの方法がある。例えば、同時係属出願である特許文献1は、種々の型の燐含有酸アミン塩を比較的高いIt.V.を有する溶融チタン触媒ポリエステルに添加することによって残留AAが低く且つAA発生度が低いポリエステルポリマーを製造できるポリエステルポリマーの製造方法、より具体的にはPETポリマーの製造方法を開示している。別法として又は他の方法に加えて、加工業者は、水市場に受け入れられるプレフォームAAを得るために、CSD樹脂にAA捕捉剤を加えることができる。AA捕捉剤は容器のコストをかなり増大し、AA捕捉剤が添加されていない類似容器に比較して容器の色をより黄色又は暗色にすることによって容器の色に頻繁に悪影響を及ぼす。ある種のAA捕捉剤を用いる場合には、固体ポリエステル粒子中及び/又は成形品中に存在する黒色斑点のレベルもまた増加し、その結果としてその後の成形物中の黒色斑点の数が不所望に増加する可能性がある。
【0006】
ポリエステルポリマーメルト及び前記ポリエステルポリマーメルトの固化によって製造される任意のその後のポリエステル粒子の通常望ましい特性の別の例は、ビニル末端濃度が低いことである。式:−CO2−CH=CH2によって表されるビニル末端は、周知のAA前駆体である。溶融ポリエステル中でAAを発生する1つの一般に認められているメカニズムは、ポリエステルポリマー鎖の内部鎖切断によるビニル末端基及びカルボン酸末端基の形成である。VEGはHEGと反応して、残留又は遊離AAと新たな内部エステル結合を形成し得る。高濃度のビニル末端がこのように望ましくないのは、ポリエステルポリマーのその後の溶融加工の間にビニル末端が反応してAAを形成し得るためであることが一般に認識されている。
【0007】
更に、特許文献2は、その例のほとんど全てにおいて100モル%の総ジオール含量に基づき約33モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノールを含む高改質ポリエステルポリマーの溶融熱安定性を改善するためには、ビニル末端、ビニリデン末端及びメチルシクロヘキセン末端の和であるオレフィン末端又は末端基の濃度が25eq/トン未満であるのが好ましいことを示している。一般に、特に成形プロセスにおいては、ポリマーの極限粘度数が溶融時に著しく低下することは、得られる物品又は成形品の性質が悪影響を受けるのでの望ましくない。更に、ビニル末端は、また、極端な条件下では重合して、PETの黄変の原因となり得る、ポリ(エン)の生成を排除することができるポリビニルエステルを形成し得ることが知られている。
【0008】
ビニル末端は周知のAA前駆体であるので、溶融相ポリエステル重合プロセスは、下流工程の溶融加工用途におけるその後のAAの発生を抑制する温度及び生産速度で行うのが一般的傾向である。これは、前駆体It.V.を溶融相で得た後で、所定の用途に許容され得る生成物のIt.V.を得るために固相化が行われる場合には特に当てはまる。
【0009】
一般的には理解されていないのは、溶融時のAA発生に重要なことが、VEG濃度が比較的高いという事実ではなく、VEG濃度が、なぜ又はどのようにして、増加したかということである。他の全ての条件が同じで、仕上げ機温度の増加のためにVEGレベルが比較的高い場合には、ポリエステルの溶融時に発生するAAのレベルは増加するであろう。他の全ての条件が同じで、VEGのAAへの転化の反応速度が遅いためにVEGレベルが比較的高い場合には、AAに転化されるVEGがより少なく、その結果、VEGレベルが増加し且つポリエステルの溶融時に発生するAAのレベルが低下するであろう。
【0010】
ポリエステルを専ら溶融相で製造する場合には、溶融加工中に生じるVEGからAAへの反応速度を支配することがより容易である。これは、ポリエステル前駆体の溶融相製造後にVEGのAAへ反応速度を低下させる取り組みは通常は、固相化の間の重縮合速度にもマイナスの影響を及ぼすためである。他方、固相化を含む従来の方法を用いて、射出成形プロセスの開始時に又は配合のような事前の押出工程においてVEGからAAへの反応速度に影響を与えることも可能である。このアプローチは、通常、生成物又は最終It.V.を得るために使用される溶融相ラインの最後に取られる処置よりもコストがかかり且つ/又は問題をはらむであろう。
【0011】
より高い温度からの比較的高いビニル末端濃度及び低いAA発生度という性質を有するポリエステルポリマーが経済的観点から魅力的である。例えば、PET製造プロセスをより高温でより大きい処理量で行い、それによって高いビニル末端濃度を他の既知のPETポリマーよりも高い濃度まで上昇させると同時に、ボトルのブロー成形のようなその後の加工用途において同程度のAA発生度を維持することが望ましいであろう。VEGからAAへの反応速度を低下させてVEGレベルを増加させる取り組みは、溶融相製造においてより高い温度の使用を可能にし、それがまたVEGレベルを増加させ、より高温であるがVEGからAAへの反応速度を低下させる取り組みを行わない同様な場合に比較して、成形時に発生するAAレベルを更に低下させるであろう。製造温度がより高い場合にVEGからAAへの反応速度を低下させると、仕上げ機温度がより低い同様な場合に比較して、発生AAが多いか又はプレフォームAAが多くなる可能性がある。非常に低いプレフォームAA値を得るためには、VEGからAAへの反応速度を低下させると共に低〜中程度の製造温度及び低〜中程度の触媒濃度を使用することが必要であり得ることに留意しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許出願第11/229,367号(2005年9月16日出願)
【特許文献2】米国特許第5,852,164号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、コストのかかる固相化工程を回避する、全て溶融相において製造される高It.V.を有するポリエステルポリマーに対するニーズがある。更に、全て溶融相の製造プロセスの終わり近くにおいてポリエステルポリマーを処理することによって、VEGからAAへの反応速度が低下し、その結果として固体ポリエステルポリマー粒子中のVEGレベルが増加すると同時に、処理を行わない場合に比較して、溶融加工時に発生するAAのレベル又はプレフォームAAのレベルが低下するようにすることができるであろう。一実施態様において、ポリエステルポリマーはより高い温度及びより大きい処理量で製造することによって比較的高いビニル末端濃度をもたらすことができ、次いで、全て溶融相の製造プロセスの終わり近くにおいてポリエステルポリマーを処理して、その結果としてVEGからAAへの反応速度が低下することによって比較的高いビニル末端濃度をもたらし、更に依然として、処理を行わない場合に比べて、AA捕捉剤の不存在下での再溶融時に少ない量のAA量を発生するようにすることができるであろう。別の実施態様において、通常はプレフォーム及びボトル中のAAレベルが低いことが要求される水ボトル用の樹脂の必要性が特に大きく、この場合には、製造温度を低〜中程度とすると共にVEGからAAへの反応速度を低下させる処理が行われるであろう。同一ポリエステルを炭酸清涼飲料ボトル及び水ボトルの両用途のための原料として使用できれば更に望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様において、
a)1種又はそれ以上の重縮合触媒の存在下にポリエステルポリマーを重縮合させ;
b)触媒失活剤を含む少なくとも1種の添加剤化合物を、前記ポリエステルポリマーが少なくとも0.45dl/gのIt.V.に達した後に、前記ポリエステルポリマーに添加し;そして
c)前記ポリエステルポリマーのIt.V.を少なくとも0.72dl/gのIt.V.まで更に増加させ、それによって少なくとも0.8μeq/gのビニル末端濃度及び22ppm未満のAA発生度を有するポリエステルポリマーを生成せしめる
ことを含んでなるポリエステルポリマーの製造方法が提供される。
【0015】
本発明の別の態様において、アルキレンアリーレート単位を含むポリエステルポリマーを含んでなり、前記ポリエステルポリマーが少なくとも0.72dl/gのIt.V.、少なくとも0.8μeq/gのビニル末端濃度及び22ppm未満、又は20ppm未満、のAA発生度を有するポリエステルポリマー組成物が提供される。
【0016】
本発明の別の態様において、アルキレンアリーレート単位を含むポリエステルポリマーを含んでなり、前記ポリエステルポリマーが少なくとも0.72dl/gのIt.V.、少なくとも0.8μeq/gのビニル末端濃度及び、好ましくは、20oz.プレフォームにおいて10ppm未満のプレフォームAA(押出機バレル温度285℃及びメルト滞留時間約2分の条件下で測定した場合)を有するポリエステルポリマー組成物が提供される。
【0017】
本発明の別の態様において、アルケンアリール単位及び、ポリマーの重量に基づき、少なくとも20ppmの量の燐を含むポリエステルポリマーを含んでなり、前記ポリエステルポリマーが少なくとも0.7dl/gのIt.V.、少なくとも0.8μeq/gのビニル末端濃度、22ppm未満のAA発生度及び少なくとも10%の結晶化度を有し、個々の粒子の重量が0.01〜10gの範囲にある完成ポリエステルポリマー粒子が提供される。
【0018】
本発明の別の態様において、アルケンアリール単位及び、ポリマーの重量に基づき、少なくとも20ppmの量の燐を含むポリエステルポリマーを含む完成ポリエステルポリマー粒子(前記ポリマーは少なくとも0.7dl/gのIt.V.、少なくとも0.8μeq/gのビニル末端濃度、295℃で5分間における22ppm未満のAA発生度及び少なくとも10%の結晶化度を有し、前記の個々の粒子の重量は0.01〜10gの範囲にある)を溶融加工ゾーンに、直接的又は間接的に、供給し、前記粒子を溶融させてポリエステルメルトを形成し、そして前記ポリエステルメルトから成形物を形成することによって得られる成形物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、以下の発明の詳細な説明を参照することによってより理解し易くなるであろう。
【0020】
本明細書及び添付した特許請求の範囲において使用する単数形は、前後関係からそうでないことが明白に指示されない限り、複数の指示対象を含むことにも留意しなければならない。例えば、1種の「ポリマー」、1つの「プレフォーム」、1つの「物品」、1つの「容器」又は1つの「ボトル」の加工又は製造への言及は、複数のポリマー、プレフォーム、物品、容器又はボトルの加工又は製造を含むものとする。
【0021】
「1つの」成分又は「1種の」ポリマーを含む組成物への言及は、名前を挙げたもの以外の他の成分又は他のポリマーをそれぞれ含むものとする。
【0022】
範囲の表示はその範囲内の全ての整数及び分数を含む。プロセスにおける、又は反応混合物の、又はメルトの若しくはメルトに適用される、又はポリマーの若しくはポリマーに適用される温度又は温度範囲の表示は、全ての場合において、適用された温度、メルト若しくはポリマーの実際温度又は両者が指定温度であるか又は指定範囲内にあるならば、制限に適合することを意味する。
【0023】
用語「組成物」は、列挙した各成分が組成物中に存在することを意味するが、組成物中の成分が未結合又は未反応であるという意味は含まない。組成物は固体であっても溶融していてもよい。組成物中の記載された成分は、結合され、未結合であり、反応され、未反応であり、また、特に断らない限り任意の酸化状態にあることができる。本明細書の説明全体にわたって記載したIt.V.値は、フェノール60重量%及び1,1,2,2−テトラクロロエタン40重量%中で25℃において測定したインヘレント粘度から計算されたものを、dL/g単位で示してある。ポリマーサンプルは、0.25g/50mLの濃度で溶媒に溶解させる。実施例部分におけるサンプルについては、ポリマー溶液の粘度は、Rheotek Glass Capillary粘度計を用いて測定する。この粘度計の操作原理についての記載はASTM D4603に見られる。インヘレント粘度は、測定した溶液粘度から計算する。以下の式は、このような溶液粘度測定値とその後の、Ih.V.までの計算及びIh.V.からIt.V.までの計算を記載している。
【0024】
ηinh=[ln(ts/t0)]/C
[式中、ηinh=フェノール60重量%及び1,1,2,2−テトラクロロエタン40重量%の溶媒100mL当たり0.5gのポリマー濃度で25℃において測定したインヘレント粘度
ln=自然対数
s=毛細管を通るサンプルの流下時間
0=毛細管を通る溶媒ブランクの流下時間
C=溶媒100mL当たりのポリマー(g)の濃度(0.50%)]。
【0025】
極限粘度数(intrinsic viscosity)は、ポリマーの比粘度(specific viscosity)の無限稀釈における極限値である。これは以下の式によって定義される:
ηint=lim(ηsp/C)=lim (lnηr)/C
C→0 C→0
[式中、ηint=極限粘度数
ηr=相対粘度(relative viscosity)=ts/t0
ηsp=比粘度=ηr−1]。
【0026】
計測器の較正は、標準対照材料を三重反復試験し、次いで適当な数式を適用して「許容」Ih.V.値を得ることを含む。較正のために用いた3つの値は、0.010の範囲内とし;そうでなければ、この範囲内の3つの連続した結果が得られるまで、問題を解決し、標準の試験を繰り返すものとする。
【0027】
較正係数=対照材料の許容Ih.V./三重反復測定値の平均
極限粘度数(It.V.又はηint)は、Billmeyer式を用いて以下のように概算できる:
ηint=0.5[e0.5×補正Ih.V.−1]+(0.75×補正Ih.V.)。
【0028】
極限粘度数の概算に関する参考文献(Billmeyer関連)は、J.Polymer Sci.,,pp.83−86(1949)である。
【0029】
別法として、ポリマー溶液の粘度を、Viscotek Modified Differential Viscometerを用いて測定する。差圧式粘度計(differential pressure viscometer)の操作原理はASTM D 5225に記載されている。各サンプルの未補正インヘレント粘度(ηinh)を、Viscotek Model Y501 Relative Viscometerから、下記式:
ηinh=[ln(P2/KP1)]/C
[式中、P2=毛細管P2中の圧力
1=毛細管P1中の圧力
ln=自然対数
K=ベースラインの読み取り値から得られる粘度定数
C=ポリマーの濃度(溶媒100mL当たりのg)]
を用いて計算する。
【0030】
標準対照材料を用いた較正に基づく補正Ih.V.は以下のように計算する:
補正Ih.V.=計算Ih.V.×較正係数。
【0031】
アンチモン及び/又は燐を含むPETサンプルは、チタン及び/又は燐を含むサンプルと同様に、X線螢光スペクトル分析法(XRF)によって金属について試験した。アルミニウム、リチウム及び/又は燐を含むPETサンプルは、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP−OES)によって金属について試験した。実施例部分におけるサンプルについては、ICP−OESのための湿式灰化法は、水性サンプルの分析前のホットプレート上における硫酸及び硝酸中へのPETの温浸(digestion)を含んだ。PET中のアルミニウムに関するICP測定においては、PET中のリチウムの場合よりも大きいバックグラウンド汚染が起こり得る。実施例2については、Al及びLiレベルは、バックグランドAl汚染を最小限に抑えるために石英ガラス器具中で二重反復試験で測定する。その他の実施例については、標準ガラス器具中での単一試験を報告する。方法は以下の通りである。
【0032】
サンプルの調製
100mL石英ビーカー中にポリマー約1.0gを量り入れる。濃H2SO4 5mLを加える。時計皿で蓋をする。サンプルを入れない以外は同様にして、方法ブランクを調製する。ビーカーをホットプレート上に置き、炭化が始まるまで低設定値(〜100℃)で加熱する。この時点で濃HNO3を滴加し始め、溶液が透明になるまで徐々に加熱を増加する。最高加熱設定値(約400℃)において約30分間還流させる。室温に冷却する。ビーカーの内容物を100mLメスフラスコ中に定量的に移す。Sc内部標準を1ppmのレベルで加え、18Mオームの水で標線まで稀釈する。
【0033】
誘導結合プラズマ発光分析法(ICP−OES)を用いる分析
測定器の構成:
噴霧室: 石英ガラスサイクロン−バッフルなし
ネブライザー: 石英ガラス同心
インジェクター: 内径2mmの石英
プラズマ出力: 1450ワット
プラズマAr流: 18L/分
補助流(Aux flow): 0.2L/分
ネブライザー流(Neb flow): 0.65L/分
サンプル消費量: 1.56mL/分
【0034】
方法パラメーター
分析ライン:
Al−396.153nm アキシャルプラズマビュー(axial plasma view)
Li−670.784nm ラジアルプラズマビュー(radial plasma view)
内部標準ライン:
Sc−361.383nm アキシャルプラズマビュー
測定器を較正する−較正ブランク及び1ppmレベルで調製されたNIST追跡可能標準を用いる2点較正。
【0035】
サンプルを吸引し、3つの反復試験を用いて分析する。3つの反復試験の平均値を報告する。
【0036】
本明細書の説明全体にわたって記載したビニル末端濃度値は、μ当量/グラム(μeq/g)又はミリモル/キログラム(ミリモル/kg)で示す。ビニル末端濃度は固体粒子又はプレフォームに関して測定できる。ビニル末端は、式:−CO2−CH=CH2で表される。
【0037】
少量の、典型的には0.4gの、ポリエステルサンプルを最も近いmgまで秤量し、4ドラム・スクリュートップバイアル中にテフロン(登録商標)被覆撹拌子と共に入れる。新鮮な溶媒混合物(溶液A)を、容量比でクロロホルム−d(Aldrich Chemical Company製)75部、トリフルオロ酢酸19部及びトリフルオロ酢酸無水物6部を測り取ることによって調製する。サンプルバイアルに溶液Aを4.00ml加え、バイアルを閉じ、シールする。バイアルを金属ブロック中で50℃に加熱し、16時間撹拌する。次いで、バイアルをブロックから取り出し、冷却する。新鮮な溶液(溶液B)を、正確な容量比で溶液A2部及び酢酸1部を混合することによって調製する。バイアルクロージャーを開け、溶液B1.0ml及びα,α,α−トリフルオロトルエン50μlをこのバイアルに加える。バイアルを閉じ、よく混合する。調製した溶液の一部をNMRチューブに装填し、Bruker Avance 500MHz測定器で、フッ素19NMR実験のための定量的シグナルをもたらす条件を用いて、NMRスペクトルを分析のために記録する。主要なNMR測定器の条件は;パルス遅延時間=5秒;掃引幅=32.795ppm;平均走査数=512;データ点数=65536;線幅拡大=2.0Hzである。α,α,α−トリフルオロトルエン(TFT)シグナルに関する13.0ppmの化学シフトを参照する。スピンバンド及び炭素13サイドバンドの面積を含むα,α,α−トリフルオロトルエンシグナルの面積を、ビニル末端基シグナルの正確な面積と共に正確に測定する。ビニル末端基シグナルが隣接ピークから分解されるベースラインでない場合には、面積は曲線適合法又は他の許容され得る面積測定法を用いて測定できる。下記式においては、精度を高めるために、1.1の補正因子乗数を用いてビニル末端基の面積を補正する。この方法の標準偏差は5.6mmol/kg(μeq/g)のビニル末端基濃度においては0.43mmol/kg(μeq/g)、0.76mmol/kg(μeq/g)のビニル末端基濃度においては0.11mmol/kg(μeq/g)である。
【0038】
代表的な計算は以下の通りである:
ビニル末端基mmol/kg=((ビニル末端基ピークの面積)*1.1*0.0595*1,000,000)÷((TFTピークの面積)*146.1*(サンプル重量(g)))。
【0039】
本明細書全体を通して記載した遊離AA値はppm単位で示してある。本発明に関して記載したAA発生度はppm単位で示してある。全てのペレット又は物品のAA発生度を測定するために、以下の試験法を用いる。ペレット又は物品は、押出式可塑度計中で、295℃で5分間溶融加工する。
【0040】
遊離AAは固体粒子又はプレフォームについて測定できる。この試験法は、粒子、粉末、プレフォーム、ボトル及びポリエステルポリマー組成物が取ることができる全ての他の形態中の遊離アセトアルデヒドレベルの測定に使用する。残留又は遊離アセトアルデヒドを測定するために、サンプルを下記の方法に従って試験する。
【0041】
プレフォーム、ペレット、粉末又は他の形態のいずれであっても、サンプルについての遊離アセトアルデヒドレベルを測定するための試験方法は、ASTM #F2013−00試験法である。サンプルは極低温で1.0メッシュのスクリーンを装着したWileyミルに通して粉砕する。最終粉砕材料は800μm未満の粒度を有する。サンプルの一部(0.20g)を、20mLヘッドスペースバイアル中に量り入れ、シールし、次いで150℃において60分間加熱する。加熱後、シールしたPETポリマーサンプルの上方の気体を毛細管GCカラム上に注入する。アセトアルデヒドを分離し、次いでサンプル中に存在するアセトアルデヒドのppmを算出する。算出されたアセトアルデヒドの量は、サンプル中に存在する遊離又は残留アセトアルデヒドの量を表す。
【0042】
プレフォームについてアセトアルデヒド発生度を測定するためには、プレフォームを生成することによってペレットが射出成形前に押出機中で溶融されるので、プレフォームは更なる溶融履歴に供することなく、前述のASTM #F2013−00法を用いれば充分である。溶融押出し成形又は射出成形によって、ポリマーメルト中のAA前駆体はアセトアルデヒドに転化される可能性がある。
【0043】
アセトアルデヒド発生度は、固体粒子について測定できる。しかし、アセトアルデヒド発生を測定するためには、サンプルは、発生するアセトアルデヒドレベルを測定するために、第2溶融履歴(溶融相ポリエステル製造を第1溶融履歴と見なす)を経なければならない。サンプルが事前の溶融相製造工程以外に溶融工程を経なかった粒子又は粉末である場合には、サンプルは最初に下記のサンプル調製手順に従って処理し、その後にサンプルを分析のためにASTM #F2013−00試験法に供する。
【0044】
サンプルの調製: アセトアルデヒド発生度を測定するために、また、専ら溶融相で製造されたサンプルが溶融相重縮合の後で溶融履歴を経ていない場合に、サンプルをASTM #F2013−00試験に供する前に、この方法に従って調製する。ポリマー粉末(3mmのスクリーンを通るように粉砕)のサンプルをオーブン中で115℃において真空(25〜30in.Hg)下で4SCFHの窒素パージを用いながら、少なくとも48時間加熱する。固相化サンプルに必要とされるのが水の除去だけならば一晩の乾燥で充分であろうが、この長時間にわたるオーブン処理は、また、AA発生試験前の溶融相のみの合成後に高IV粉末中に存在する残留AAを約1ppm又はそれ以下まで脱着させるのに役立つ。ペレットから事前に残留AAのほとんどをストリッピングしていない場合(目標:1ppm又はそれ以下)には、ペレットから残留AAを脱着する必要がある。ペレットは、前記条件下で残留AA除去前に2mmのスクリーンを通るように粉砕することができる。粉砕を行わない場合には、粒度がより大きい(拡散経路がより長い)ため、残留AAをペレットから約1ppm又はそれ以下まで脱着するのにより長い時間がかかり且つ/又はより高い温度が必要であろう。残留アセトアルデヒドを目的レベルまで低下させるのに充分な時間、高温不活性ガスを粒子上に通すことを含む任意の適当なアセトアルデヒド脱蔵技術を、粒子について用いて、遊離アセトアルデヒドレベルを約1ppm又はそれ以下まで低下させることができる。好ましくは、アセトアルデヒド脱蔵温度は165℃を超えてはならず、又はより好ましくは160℃を超えてならず、又は更に好ましくは150℃を超えてはならない。次に、サンプルを鋼棒を用いて、予熱したTinius Olsen押出式可塑度計中に充填する。オリフィスダイをASTM D1238に従って較正する。少量の材料を底部からパージし、次いで底部に栓をする。ピストンロッドアセンブリをバレルの上部に入れる。225gの重りをピストンロッドの上部において、バレルの内部にロッドを下げたままにすることができる。ポリマーを295℃に5分間保持する。次に、オリフィスプラグをバレル底部から取り外す。大きな重りとオペレーターの加圧によって、押出物をバレルから氷水浴中に押出す。押出物をたたくようにして水気を取り、バッグ中にシールし、ASTM #2013−00試験を行うまでフリーザー中に入れておく。
【0045】
別法として、CEAST Model 7027 Modular Melt Flow測定器を用いる。295℃の温度を保持し且つ溶融PET材料を測定器のファームウェアに設定された一定流速で5分で押出するAA発生プログラムを開始する。押出物がバレルから氷水浴に押出されたら、サンプルを収集し、たたくようにして水気を取り、バッグ中にシールし、ASTM #2013−00試験を行うまでフリーザー中に入れておく。
【0046】
アセトアルデヒドは、Ceast Model 7027 Modular Melt Flow又は任意の同様な押出式可塑度計型測定器を用いてポリエステル樹脂中に発生させることができる。しかし、Ceast 7027計測器の自動機能は押出バレル内におけるポリマーの接触時間を均一に保つことによって試験のばらつきを低減するので、Ceast 7027計測器が好ましい。この特定のモデルの計測器は、試験方法の開始時における樹脂の自動充填を組み込む。この計測器に、ピストンがバレルの底部より上方の指定した高さとなるまでバレルから材料を押し出す電動プラットフォームを装着する。その後、プラットフォームはピストンロッドを所定の位置に保持して、樹脂を昇温させ、アセトアルデヒドを発生させるであろう。指定保持時間の最後に、プラットフォームは、一定速度で移動しながら、バレルから樹脂の残りを押出す。これらの工程は、最終押出工程の間じゅう、材料の充填による結果のばらつきの可能性をなくす。ポリマーの装填のばらつきは、バレルの設計によって低減されるが、ポリマーの装填は自動化されない。
【0047】
アセトアルデヒドは265〜305℃の範囲の温度にわたって前述のようにして発生させることができる。最も均一な結果は、275〜295℃において得られる。樹脂をバレル内に保持する時間長は、2〜15分の場合に好結果を示す。5〜10分の範囲が最良の再現性及び材料間の差異を示す。本発明に関して記載したAA発生数値に関しては、295℃及び5分を用いた。
【0048】
このようなアセトアルデヒドの発生及び試験の方法を用いると、ボトルプレフォームの成形のような評価に大量の材料を必要とすることなく、ポリエステル樹脂をアセトアルデヒド発生についてスクリーニングすることができる。この方法にはわずか10gの材料を使用すればよく、これは実験室サンプルの試験に理想的である。
【0049】
本発明の方法において、ポリエステルポリマーは芳香族又は脂肪族ジカルボン酸、ジカルボン酸のエステル、ジカルボン酸の無水物、ジカルボン酸の酸塩化物、グリコール、エポキシド及びそれらの混合物から製造できる。適当なポリエステルポリマーは、テレフタル酸、イソフタル酸及び2,6−ナフタレンジカルボン酸並びにそれらの混合物のような二酸とエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール及びそれらの混合物のようなジオールから製造できる。
【0050】
本発明の方法は、「改質」ポリエステルを含むポリエチレンテレフタレート(PET)ポリエステルを製造できる。この方法によって製造される適当なポリエステルポリマーの例としては、40モル%若しくはそれ以下、15モル%未満又は10モル%未満の量の1種又はそれ以上の改質剤で改質されたポリアルキレンテレフタレートホモポリマー及びコポリマーが挙げられる。特に断らない限り、ポリマーはそのホモポリマー及びコポリマー変種の両方を含む。特に適当なポリエステルポリマーの例は、ポリアルキレンテレフタレートポリマーであり、好ましいのはポリエチレンテレフタレートポリマーである。「改質」とは、二酸成分及び/又はジオール成分が1種又はそれ以上の異なる二酸及び/又はジオール成分で部分置換されていることを意味する。
【0051】
例えば、PETの場合のエチレングリコールのようなジオール成分は、1種若しくはそれ以上の異なるジオール成分で部分置換されることができ、且つ/又はPETの場合のテレフタル酸のようなジカルボン酸成分は1種若しくはそれ以上の異なるジカルボン酸成分で部分置換されることができる。全ての二酸成分のモル百分率は合計100モル%となり、全てのジオール成分のモル百分率の和は合計100%となる。
【0052】
例えば、ポリエステルのジカルボン酸成分は、任意的に、約20モル%以下の1種又はそれ以上の異なるジカルボン酸で置換することができる。このような追加のジカルボン酸成分としては、炭素数が好ましくは8〜14の芳香族ジカルボン酸、炭素数が好ましくは4〜12の脂肪族ジカルボン酸又は炭素数が好ましくは8〜12の脂環式ジカルボン酸が挙げられる。テレフタル酸と共に含ませるジカルボン酸の例としては、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、スチルベンジカルボン酸、シクロヘキサン二酢酸、1,12−ドデカン二酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸及びそれらの混合物が挙げられる。ポリエステルポリマーは、2種又はそれ以上の前記ジカルボン酸から製造できる。更に、前記ジカルボン酸のうち立体異性体として存在できるものは、それらのシス形、トランス形で又はそれらの混合物として存在できる。
【0053】
更に、例えば、ジオール成分は、任意的に、エチレングリコール以外の1種又はそれ以上のジオール成分で約20モル%まで置換することができる。このような他のジオールとしては、炭素数が好ましくは6〜20の脂環式ジオール又は炭素数が好ましくは3〜20の脂肪族ジオールが挙げられる。このようなジオールの例としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、プロパン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオール、ペンタン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、3−メチルペンタン−2,4−ジオール、2−メチルペンタン−1,4−ジオール、2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオール、2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、2,2−ジエチルプロパン−1,3−ジオール、ヘキサン−1,3−ジオール、1,4−ジ(ヒドロキシエトキシ)−ベンゼン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパン、2,4−ジヒドロキシ−1,1,3,3−テトラメチルシクロブタン、2,2−ビス−(3−ヒドロキシエトキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシプロポキシフェニル)−プロパン、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール及びそれらの混合物が挙げられる。ポリエステルは2種又はそれ以上の前記ジオールから製造できる。更に、前記ジオールのうち立体異性体として存在できるものは、それらのシス形、トランス形で又はそれらの混合物として存在できる。この点に関して、エチレングリコール残基−OCH2CH2O−の不存在下ではアセトアルデヒドの発生が起こらないので、このような残基の存在が最も重要であることに留意すべきである。
【0054】
本発明のポリエステルポリマーは、任意的に、多官能価モノマー、例えばトリメリット酸無水物、トリメリット酸、トリメチロールプロパン、ピロメリット酸二無水物、ペンタエリトリトールなどのような三価又は四価コモノマーを含むことができる。しかし、これらは、一般的には好ましくなく、使用する場合であっても一般的に極めて微量で使用する。
【0055】
本発明のポリエステルポリマーは、任意的に、ポリマーを着色するある種の助剤を含むことができる。例えば、得られるポリエステルポリマーのb*を低下させるために、青味付けトナーをメルトに添加することができる。このような青味剤としては、青色無機及び有機トナーが挙げられる。更に、赤色トナーもa*カラーの調整のために使用できる。トナー例としては、コバルト(II)化合物、例えばカルボン酸コバルト(II)が挙げられる。他の例としては、米国特許第5,372,864号及び第5,384,377号に記載された赤色及び青色トナーが挙げられる。トナーをポリエステルポリマー中に取り入れる方法もトナーの量も限定しない。
【0056】
本発明のポリエステルポリマーは、任意的に、ポリエステル中に通常用いられる添加剤を含むことができる。このような添加剤としては、着色剤、顔料、カーボンブラック、ガラス繊維、充填剤、耐衝撃性改良剤、酸化防止剤、安定剤、難燃剤、再加熱助剤などが挙げられるが、これらに限定するものではない。ポリエステルポリマーの性能特性を向上させる添加剤の更に他の例としては、結晶化助剤、耐衝撃性改良剤、表面潤沢剤、嵌め外し剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、成核剤、粘着性ボトル添加剤、例えばタルク、及び充填剤が挙げられる。
【0057】
本発明のポリエステル組成物は、エステル化及び重縮合を行うのに充分な、当業界で知られた重合法によって製造できる。ポリエステル溶融相製造法は、エステル化ゾーンにおける(任意的にエステル化触媒の存在下での)少なくとも1種のジカルボン酸と少なくとも1種のジオールとの縮合、それに続く重合ゾーン(場合によってはプレポリマーゾーンと仕上げゾーンに分けることができる)中における重縮合触媒の存在下での重縮合を含むか;或いはエステル交換ゾーンにおける通常はエステル交換触媒の存在下でのエステル交換と、それに続く予備重合ゾーン及び仕上げゾーンにおける重縮合触媒の存在下での重縮合を含む。得られる各ポリマーは、任意的に、周知の方法に従って固相化することができる。
【0058】
更に説明すると、1種又はそれ以上のジカルボン酸、好ましくは芳香族ジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体と1種又はそれ以上のジオールとの混合物を、約200〜300℃の温度において、直接エステル化に関しては典型的には240〜285℃の温度において約1psig〜最大約70psigの圧力で運転されるエステル化反応器又はエステル交換反応器に供給する。反応体の滞留時間は、典型的には、約1〜5時間の範囲である。溶融相反応は回分式、半回分式又は連続式で進行させる。好ましくは、本発明の方法は連続的である。通常、1種又はそれ以上のジカルボン酸を高圧で約240〜約270℃の温度において1種又はそれ以上のジオールで直接エステル化させる。エステル化反応又はエステル交換反応は、少なくとも70%のエステル化度が達成されるまで続けるが、より典型的には少なくとも85%のエステル化度が達成されて所望のモノマー及び/又はオリゴマーが生成されるまで続ける。モノマー及び/又はオリゴマーの形成は、典型的には、直接エステル化法では無触媒で行い、エステル交換法においては触媒を用いて行う。
【0059】
重縮合触媒は、任意的に、エステル化/エステル交換触媒と共にエステル化ゾーンに加えることができる。重縮合触媒がジカルボン酸と不溶性塩を形成する場合には、触媒はエステル化ゾーンの後で加えることができる。エステル化ゾーンにおいて重縮合触媒を加えた後に生成速度が遅くなる場合には、触媒はエステル化ゾーンの後で加えなくてはならない。重縮合触媒をエステル化ゾーンに加える場合には、それは典型的には1種又はそれ以上のジオール成分とブレンドして、混合物としてエステル化反応器に供給する。エステル交換ゾーン又は反応器に加えることができ且つ別個でも組合せても使用できる典型的なエステル交換触媒としては、チタンアルコキシド、錫(II)若しくは(IV)エステル、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属、例えばリチウム若しくはカルシウム、マンガン化合物、亜鉛化合物、マグネシウム酢酸塩若しくは安息香酸塩及び/又は当業者によく知られた他のこのような触媒材料が挙げられる。更に、燐含有化合物及びある種の着色剤もまた、エステル化ゾーンに存在することができる。エステル交換触媒が尚早に失活されるので、燐含有化合物はエステル交換ゾーンに存在することが一般に推奨されず、より望ましくは、エステル化が直接エステル化又はエステル交換のいずれであっても、燐含有化合物はエステル化ゾーンにも、エステル化ゾーンから生成されたモノマー/オリゴマー組成物にも添加しない。
【0060】
ポリエステルポリマーがPETポリマーである場合には、エステル化ゾーン及び/又はエステル交換ゾーンで形成される、得られるポリエステルオリゴマーメルトは、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)モノマー、低分子量オリゴマー、ジエチレングリコール(DEG)及びエステル化ゾーン中で除去されない縮合副生成物としての微量の水を、原料からの及び/又はおそらく触媒副反応によって形成された他の微量不純物並びにトナー及び安定剤のような、他の任意的に添加された化合物と共に含む。BHET及びオリゴマー種の相対量は、プロセスが直接エステル化法(この場合には、オリゴマー種の量が多く、主な種として存在することすらある)であるか或いはエステル交換法(この場合には、BHETの相対量がオリゴマー種よりも優っている)であるかによって異なるであろう。平衡を生成物の方向に進めるために、エステル化反応の進行につれて、水を除去する。平衡を生成物の方向に進めるために、エステル交換反応の進行につれて、エステル原料によって生成されるアルコールを除去する。テレフタル酸ジメチルの場合には、除去されるアルコールはメタノールである。エステル化ゾーンは、典型的には、一連の1つ又はそれ以上の反応器中でモノマー及びオリゴマー混合物を連続的に生成する。別法として、モノマー又はオリゴマー混合物は1つ又はそれ以上の回分反応器中で生成することもできるであろう。しかし、ポリエチレンナフタレートポリマー(PEN)の製造方法においては、反応混合物は、PETを製造する場合に存在するであろうBHET及びその対応するオリゴマーの代わりに、モノマー種であるビス(2−ヒドロキシエチル)ナフタレート及びその対応するオリゴマーを含むことがわかる。
【0061】
プロセスのこの段階において、It.V.は通常は測定できないか又は0.1dl/g未満である。ポリエステルオリゴマーメルトの平均重合度は、典型的には、15未満であり、7.0未満である場合もある。
【0062】
所望のエステル化度が達成されたら、反応混合物(即ちポリエステルオリゴマーメルト)をエステル化ゾーンのエステル化反応器から、プレポリマーゾーン及び仕上げゾーンを含むことができる重縮合ゾーンに移す。重縮合反応は予備重合ゾーンの溶融相で行われ、仕上げゾーンの溶融相で仕上げられ、その後にメルトは生成物に固化されるか或いは任意的にチップ、ペレット又は任意の他の形状に固化される。固体粒子は、任意的に、切断前又は後に結晶化させることができる。
【0063】
予備重合ゾーン及び仕上げゾーンは、異なる条件で運転される一連の1つ又はそれ以上の別個の反応器を含むこともできるし、或いは複数のゾーンを、単一の反応器中で異なる条件で行われる1つ又はそれ以上の副段階(サブステージ)を用いる1つの反応器中に合することもできる。即ち、予備重合ゾーンは、連続的に運転される1つ若しくはそれ以上の反応器、1若しくはそれ以上の回分反応器、又は更には、単一反応器中で実施される1つ若しくはそれ以上の反応工程若しくは副段階の使用を含むことができる。いくつかの反応器設計においては、予備重合ゾーンは、反応時間に関して重縮合の最初の1/2に相当し、仕上げゾーンは重縮合の次の1/2に相当する。他の反応器設計は、(仕上げゾーン中滞留時間)対(予備重合ゾーン中滞留時間)の比を約1.5:1又はそれ以上に調整できるが、多くの設計における予備重合ゾーンと仕上げゾーンの共通の差異は、仕上げゾーンが予備重合ゾーンにおける運転条件よりも高い温度及び/又は低い圧力で運転されることが多い点である。一般に、予備重合ゾーン及び仕上げゾーンのそれぞれが、1つ又は一連の1つより多い反応器を含み、予備重合反応器及び仕上げ反応器は、ポリエステルポリマーを製造するための連続方法の一部として直列に配列される。
【0064】
ポリエステルポリマーメルトがポリアルキレンテレフタレート又はより具体的にはポリエチレンテレフタレートである特定の場合において、予備重合ゾーンは一般に一連の1つ又はそれ以上の容器を含み、約260〜300℃の温度において約5分〜4時間の間運転される。このゾーン内で、ゾーンの初めのポリエステルポリマーメルトを構成するモノマー及びオリゴマーのIt.V.は、約0.48dL/gまでしか増加されない。It.V.の増加につれて、平衡を生成物の方向に押し進めるために、350〜0.2mmHgの範囲の印加真空を用いて1種又はそれ以上のジオール副生成物をポリエステルポリマーメルトから除去する。その際に、ポリエステルポリマーメルトは、例えば撹拌メカニズムによる撹拌に供して、メルトからのジオールの除去を促進できる。逐次容器にメルトが供給されるにつれて、ポリマーメルトの分子量、ひいてはIt.V.が増加する。各容器の圧力は、一般に、ジオールの蒸発を促進するために低下させて、各逐次容器中における又は1つの容器内の各逐次ゾーン中における重合の漸進的増加を可能にすることができる。別法として、グリコール類、水、アルコール、アルデヒド及び他の反応生成物の除去を促進するために、反応器を不活性ガスでパージすることができる。不活性ガスは、反応条件において望ましくない反応又は生成物の特性の原因とならない任意の気体である。適当な不活性ガスとしては、アルゴン、ヘリウム及び窒素が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0065】
当業界で低重合器としても知られる予備重合ゾーン中では、低分子量モノマー及びオリゴマーを触媒の存在下で重縮合によって重合させて、ポリエチレンテレフタレートポリエステルプレポリマー(又はPENポリエステルなど)を形成することができる。1種又はそれ以上の重縮合触媒をエステル化段階に加えない場合には、重縮合触媒はこのゾーンで加えて、モノマーと低分子量オリゴマーとの反応を触媒してプレポリマーを形成し且つジオールを副生成物として除去することができる。
【0066】
多数の重縮合触媒が当業界で知られている。例えば重縮合は少なくとも1種の触媒活性金属化合物、例えばチタン、アルミニウム、アンチモン、ゲルマニウム、コバルト、アルカリ金属並びにアルカリ土類金属、マグネシウム及びカルシウムの存在下で進行できる。一実施態様において、ポリエステルポリマーは、ポリエステルポリマーの製造のために溶融相プロセスに添加されるコバルト、ゲルマニウム、アンチモン、カルシウム、活性炭及び/又はマグネシウムの触媒活性化合物を含まない。
【0067】
一実施態様において、チタン触媒は、ポリエステルポリマーメルト中のチタンの重量に基づき、好ましくは約3〜約35ppm(百万分率)、より好ましくは約4〜15ppm、最も好ましくは5〜10ppmの量の触媒からのチタンがある状態で供給する。
【0068】
チタン触媒は、妥当な重縮合速度を促進する任意のチタン化合物であることができる。好ましくは、この触媒は、PETの商業的製造に使用される周知の重縮合触媒の例である三酢酸アンチモン又は三酸化アンチモンを用いて達成されるのと少なくとも同じ重縮合速度を示し、より好ましくは燐酸のような失活剤化合物の不存在下に、それよりかなり速い重縮合速度を示す。チタン触媒のような適当な重縮合触媒は、溶融相プロセスの任意の場所で、例えばエステル化ゾーン又は重縮合ゾーンに添加できる。好ましくは、選択する添加点は、他の可能な添加点に比較して、重縮合速度を低下させない、即ちIVビルドアップを低下させないものとする。触媒は、エステル化ゾーン中において少なくとも90%の転化の後に、又はエステル化(エステル交換を含む)の完了後に、又はエステル化ゾーンと重縮合ゾーンとの間で、又は重縮合ゾーンの初めに、又は予備重合ゾーンの間に、好ましくは予備重合ゾーンの最初の1/2(ゾーン中の滞留時間を基準として)の間に、より好ましくは予備重合ゾーンの最初の1/4(ゾーン中の滞留時間を基準として)の間に添加するのが望ましい。
【0069】
重縮合に適当なチタン触媒の例としては、一般に、アルコキシド、グリコール酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩などであるチタン(IV)化合物が挙げられる。アルコキシド及び混合グリコレートアルコキシドが好ましい。チタン(IV)イソプロポキシドが好ましい触媒の一例である。多くのこのような触媒が市販されており、即ちDuPontからTyzor(登録商標)チタン酸塩として市販されている。不均一触媒の役割をする固体チタン化合物、例えば米国特許第5,656,716号に開示されたものも適当である。チタン酸化物及び水和酸化物は、重合の過程において、例えば任意のジオール成分との錯体形成及び/又は反応によって可溶化される可能性がある。触媒が少なくとも一部分が依然として不溶性である場合には、濁り(明澄度の欠如)と同様に触媒活性が問題となるであろう。可溶性触媒が好ましく、反応の最初に可溶性である触媒がより好ましい。チタン触媒は任意の常法で反応に取り入れることができる。例えば、オリゴマー混合物中の触媒の溶液又はスラリーと同様に、触媒のアルコール溶液又は触媒のエチレングリコール中固液混合物(スラリー)を使用できる。触媒は単独でも添加でき、撹拌によって、例えば機械的混合によって又はスタティックミキサーを使用して分散させることができる。
【0070】
別の例において、適当な重縮合触媒はアルミニウム化合物であることができる。触媒アルミニウム化合物は、単独で又はアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属原子若しくは化合物と組み合わさって重縮合相において触媒として最終的に活性であるならば、金属として或いは化合物(塩または錯体を含む)として溶融相プロセスに添加できる。アルミニウム酸化物は、アルミニウム化合物又は金属の意味の範囲内に含めない。望ましいのは、揮発性であり且つ/又はポリエステル形成成分と反応する担体又は稀釈剤中に溶解させることができるアルミニウム化合物である。適当な液体反応性担体は任意の分子量、例えば62〜約10,000g/モルの範囲の分子量を有することができる。アルミニウム化合物は、また、揮発性であり且つ/又はポリエステル形成成分と反応する液体中のスラリー又は懸濁液として添加できる。アルミニウムは、また、適当な押出機又は他の装置中でアルミニウム化合物をポリエステルポリマーと溶融ブレンドしてコンセントレートを形成し、続いて好ましくは溶融相プロセスへの溶融供給材料としてコンセントレートを溶融させることによって、溶融相プロセスに添加することができる。アルミニウム化合物の好ましい添加様式は、ポリエステル溶融相プロセス装置の一部である触媒混合タンクへの添加である。好ましくは、触媒混合タンクは、また、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物又はアルカリ化合物並びに適当な溶媒又は分散剤を含む。
【0071】
アルミニウム化合物は、エステル化ゾーンに、エステル化ゾーンから出たオリゴマー混合物に、又は重縮合の初めに、又は重縮合の間に、ポリエステルメルトに、好ましくはエステル化ゾーン中で約75%の転化後に前述のようにして添加できる。アルミニウム化合物は、好ましくはエステル化ゾーン中の酸末端基の%転化率が少なくとも75%である場合に、より好ましくは酸末端基の%転化率が少なくとも85%である場合に、最も好ましくはエステル化による酸末端基の%転化率が少なくとも93%である場合に、添加する。しかし、アルミニウムは重縮合触媒としても働くので、アルミニウムは、ポリエステルメルトに、モノマー/オリゴマーメルトがエステル化反応器から出た後であってエステル化ゾーンと重縮合ゾーンの間に、又はより短い反応時間若しくはより高い分子量ビルドアップの利益をもたらすためには予備重合ゾーン(重縮合ゾーンの第1段階)の開始時に若しくは予備重合ゾーンに添加するのが望ましい。
【0072】
好ましい実施態様において、アルミニウム化合物は、オリゴマー混合物に、エステル化ゾーンの完了時若しくは完了後に、又はポリエステルメルトのIt.V.が0.3dL/gに達するまでに若しくはポリエステルメルトのIt.V.が0.2dL/gに達するまでに、ポリエステルメルトに、より好ましくはエステル化ゾーンから出たオリゴマー混合物に、又は重縮合の開始前若しくは重縮合の初めに(重縮合の第1段階としての予備重合ゾーンに若しくは予備重合ゾーン内に)添加する(仕上げゾーンは重縮合ゾーンの第2及び最終段階である)。
【0073】
重縮合触媒として適当なアルミニウム化合物には、少なくとも1つの有機置換基を有するアルミニウム化合物がある。適当な化合物の例示としては、式:
Al[OR]a[OR’]b[OR”]c[R”’]d
[式中、R、R’、R”は独立してアルキル基、アリール基、アシル基又は水素であり、好ましくはR、R’、R”及びR”’のうち少なくとも1つは水素でなく、R”’はアニオン性基であり、a、b、c、dは独立して0又は正の整数であり、a+b+c+dは3又は3以下である]
を有するものが挙げられる。
【0074】
アルミニウム化合物の適当な例としては、アルミニウムのカルボン酸塩、例えば酢酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、アルミニウムアルコラート、例えばアルミニウムエチラート、アルミニウムイソプロピラート、アルミニウムトリn−ブチラート、アルミニウムトリ−tert−ブチラート、モノ−sec−ブトキシアルミニウムジイソプロピラート、及びアルミニウムアルコラートのアルコキシ基がアルキルアセトアセテート若しくはアセチルアセトンのようなキレート化剤で部分置換又は全置換されたアルミニウムキレート、例えばエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピラート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピラート、アルミニウムモノアセチルアセテートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセテート)、アルミニウムアセチルアセトネートが挙げられる。
【0075】
アルミニウム化合物の中で好ましいのは、アルミニウムの塩基性カルボン酸塩及びアルミニウムアルコラートである。アルミニウムの塩基性カルボン酸塩としては、一塩基性及び二塩基性化合物が挙げられる。使用する塩基性アルミニウム酢酸塩は、ジアセテートモノヒドロキシ化合物若しくはモノアセテートジヒドロキシ化合物又はそれらの混合物であることができる。特に、塩基性アルミニウム酢酸塩及びアルミニウムイソプロポキシドが好ましいアルミニウム化合物である。ホウ酸による塩基性アルミニウム酢酸塩の安定化は、場合によってはその溶解度を増加させることができる。アルミニウムイソプロポキシドが最も望ましい。
【0076】
重縮合を引き起こす量のアルミニウム原子を加える。好ましい量は妥当な速度で重縮合を行うのに有効な量である。妥当な速度はポリエステルラインを運転でき且つ更にポリエステルラインが資本コストを戻すことができる速度である。より好ましくは、妥当な速度は少なくとも250ppmのSbで達成される速度である。この量は一般に、ポリマーの重量に基づき、少なくとも2ppm又は少なくとも5ppm又は少なくとも10ppm又は少なくとも15ppm又は少なくとも20ppm又は少なくとも30ppmから、約150ppmまで又は約100ppmまで又は約75ppmまで又は約60ppmまでの範囲のAlである。アルカリ又はアルカリ土類金属(一部はエステル化ゾーンに添加できる)と組合せて使用する場合には、アルカリ金属又はアルカリ土類金属対アルミニウムのモル比(M:Al)を増加させると重縮合速度を増加させることができ;従って、低いAl使用量は中程度から高いM:Alで妥当な速度を生じることができ、低いM:Alモル比においては遅い速度を生じる。アルミニウムの好ましい範囲は3〜60ppmであり、より好ましい範囲は5〜20ppmである。他の適当なAlの量としては、少なくとも3ppmから又は少なくとも5ppmから又は少なくとも7ppmから又は少なくとも10ppmから、60ppmまで又は40ppmまで又は30ppmまで又は25ppmまで又は20ppmまで又は18ppmまで又は16ppmまで又は15ppmまでが挙げられる。
【0077】
アルミニウム化合物はアルカリ金属又はアルカリ土類金属と組合せて使用できる。後者は、任意的に、存在することもできるし、或いはエステル化ゾーンに又はアルミニウム化合物を添加する任意の点において添加することもできる。アルカリ金属又はアルカリ土類金属は、周期表の第IA族及び第IIA族の金属、例えばLi、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、好ましくはLi,Na又はK(これらに限定するものではないが)を意味する。金属は、対イオンを有する金属化合物(錯体又は塩を含む)として、溶融相に添加することができ、対イオンのうち好ましいのは、水酸化物、炭酸塩及びカルボン酸塩である。
【0078】
(アルカリ金属のモル又はアルカリ土類金属のモル又はアルカリのモル)対(アルミニウムのモル)(M:Al)の比は一般には少なくとも0.1又は少なくとも0.25又は少なくとも0.5又は少なくとも0.75又は少なくとも1又は少なくとも2から、約75まで、約50まで、約25まで、約20まで、約15まで、約10まで又は約8まで又は約6まで又は約5までの範囲である。アルミニウムの特定の量及び使用するM:Alモル比を特定するためには、重縮合ゾーン中の温度によって影響される目的反応速度、最終ポリマーが示す色、明澄度及びAA発生度を考慮に入れる。
【0079】
予備重合ゾーンから約0.48dL/gを超えないIt.V.が得られたら、予備重合ゾーンからのポリエステルポリマーメルト生成物を重縮合仕上げゾーンに供給し、重縮合仕上げゾーンにおいて、一般に(必ずしも必要ではないが)予備重合ゾーンに存在するより高い温度まで昇温された1つ又はそれ以上の仕上げ容器中で更に重縮合を続ける。例えば仕上げゾーン内の温度は、メルトのIt.V.が予備重合ゾーン中のメルトのIt.V.(典型的には0.20〜0.30dL/gであるが、通常は0.48dL/g以下)から約0.54〜約1.2dL/gの範囲のIt.V.まで増加されるまで、270〜305℃の範囲内の値まで上昇させることができる。当業界において一般に「高重合器」又は「仕上げ機」として知られる最終容器は通常、予備重合ゾーンで使用されるより低い圧力で、例えば約0.2〜4.0トルの範囲内の圧力で運転する。仕上げゾーンは典型的にはプレポリマーゾーンと同じ基本的化学反応を伴うが、分子のサイズ、ひいては粘度が異なるという事実は、反応条件も異なることを意味している。しかし、プレポリマー反応器と同様に、各仕上げ容器は真空又は不活性ガス下で運転し、各仕上げ容器では、典型的には、エチレングリコールの除去を促進するための何らかの混合又は表面更新が行われる。
【0080】
本発明によれば、触媒失活剤化合物を含む少なくとも1種の添加剤化合物は、ポリエステルポリマーメルトのIt.V.が少なくとも0.45dL/g又は少なくとも0.55dL/g又は少なくとも0.55dL/g又は少なくとも0.60dL/g又は少なくとも0.65dL/g又は少なくとも0.68dL/g又は少なくとも0.70dL/g又は少なくとも0.72dL/g又は少なくとも0.74dL/g又は少なくとも0.76dL/g又は少なくとも0.80dL/gに達した後に、前記ポリエステルメルトに添加する。触媒失活剤の添加は、望ましくは重縮合仕上げゾーンの排出の近くで、又はその直後であるが切断の前に、行うが、触媒失活剤の添加は、充分に高いIt.V.値を有するポリエステルメルトと一致する溶融相内の任意の点で行うことができるであろう。
【0081】
又は溶融相プロセスの遅い段階で終了間近に、触媒を安定化又は失活させてから、任意的に、It.V.の更なるビルドアップを行い、それに続いて、ポリエステルポリマーメルトの固化後にポリエステル粒子の製造を行う。ポリエステルポリマーメルト及び製造されるその後の固体ポリエステル粒子には望ましい特性が多い。例えば、このポリエステルの通常望ましい特徴の1つは、固体ポリエステル粒子中の残留又は遊離AAの濃度が低く且つ前記粒子の溶融時のAA発生度が低いことである。例えば炭酸清涼飲料(CSD)及び水ボトル用途においては、ポリエステル粒子、より具体的にはPETポリエステルペレットは多くの場合、ボトルプレフォームに成形する。ボトルプレフォームの成形の間に遊離されるAAは、それと分かる、おそらくは望ましくない風味を飲料に与える可能性がある。許容され得るAA濃度は、ポリマーの考えられる用途によって異なり得る。本発明の利点の1つは、ポリエチレンテレフタレートポリマー中のAA発生度が水ボトル用途に許容され得るほど充分に低いと同時にCSDボトル用途に必要なIt.V.を有するポリエステルポリマー、従って二重用途樹脂を製造できることである。
【0082】
ポリエステルポリマーメルト及びこのメルトの固化によって製造される任意のその後のポリエステル粒子の通常の望ましい特性の別の例は、低いビニル末端濃度を有することである。式:−CO2−CH=CH2によって表されるビニル末端は周知のAA前駆体である。反復単位の少なくとも一部にエチレングリコール残基を含む溶融ポリエステル中でAAが発生される、1つの一般に認められているメカニズムは、ポリエステルポリマー鎖の内部鎖切断によるビニル末端基(VEG)及びカルボン酸末端基の形成による。VEGはヒドロキシエチル末端基(HEG)と反応して、残留又は遊離AAと新たな内部エステル結合を形成し得る。従って、高濃度のビニル末端は、ポリエステルポリマー粒子のその後の溶融加工の間にビニル末端が反応してAAを形成し得るため、望ましくないことが一般の認識である。例えばAAはポリエステルポリマーの溶融相製造プロセスの間に形成され得るだけでなく、PET粒子(例えばペレット)を使用してボトルプレフォームを生成する射出成形の間にも発生し得る。本発明の利点の1つは、PETプレフォームの射出成形又は他の物品への溶融加工の前又はその間にAA捕捉剤又は他のAA低下剤を添加する必要がないポリエステルポリマーの製造である。更に、下流の加工用途におけるその後のAA発生を抑制するために溶融相ポリエステル重合プロセスを低温及び低生産速度で行うのが一般的な傾向である。本発明の別の利点は、それらの一般的傾向がもはや重要でないことである。
【0083】
更に、米国特許第5,852,164号は、ほとんど全ての例において、総ジオール含量に基づき、約33モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノールを含む高改質ポリエステルポリマーの溶融熱安定性を改善するためには、ビニル末端、ビニリデン末端及びメチルシクロヘキセン末端の和であるオレフィン末端又は末端基の濃度が25eq/トン未満であるのが好ましいことを示している。一般的に、特に成形プロセスにおいては、加熱時におけるポリマーの極限粘度数の低下は、得られる物品又は成形品の性質に悪影響を及ぼすので、望ましくない。例えば、典型的には改質剤を添加せずに製造された(未改質の)又はわずかに改質されたポリエステルポリマーから製造されるボトル及び/又はプレフォームの製造において、特に本発明の粒子から製造される炭酸飲料又は水ボトルのような飲料ボトルの製造において、粒子のIt.V.とプレフォーム及び/又はボトルのIt.V.とのIt.V.差は0.04dL/g以下、好ましくは0.03dL/g以下、最も好ましくは0.02dL/g以下である。更に、ビニル末端はまた、極端な条件下では重合して、PETの黄変の原因となり得るポリビニルエステルを形成する可能性があることが知られている。
【0084】
しかし、本発明者らは意外にも、触媒失活剤の添加が、ポリマー中のビニル末端濃度が比較的高く且つ溶融温度におけるAA発生度が比較的低いポリエステルポリマーとその後のポリエステル粒子の生成をもたらし、そのビニル末端濃度がポリエステルポリマーの品質に無視できないのほどの悪影響を及ぼさないことを発見した。更に、より短い重縮合継続時間又はより速い生産速度を可能にし且つ固相化を行わなくても適当なIt.V.の生成物を生成する、最低レベルのAA発生又はプレフォームAAを必要としない実施態様がある。
【0085】
ポリエステルポリマーは、また、触媒失活剤を含むことができる。触媒失活剤とは、触媒系の活性を少なくとも一部分失活させるか又は阻害するのに有効な化合物を意味する。ある化合物は、所定のレベルで添加する場合に、所定のレベルでの化合物の有効性の試験のみに関して言えば、a)実際の運転条件下における固相化の速度が失活剤を用いない同一ポリマー(添加剤なしの場合)に比較して低減され且つ/又はb)より早い段階で添加した際に実際の運転条件下における一定のIt.V.目標値までの溶融相重縮合速度が低減される、即ち、添加剤なしの場合に比較して、It.V.目標値に到達するのにより多くの時間がかかるか又は一定時間におけるポリマーIt.V.が低減されるならば、触媒系を少なくとも一部分失活するのに有効である。好ましくは、触媒失活剤は、また、添加剤なしの場合に比較して粒子の溶融時におけるAA発生度を低下させて、添加剤なしの場合に比較してプレフォームのような成形品中のAAレベルへのAA発生の寄与を低下させ、より好ましくは溶融相重合から得られた少なくとも0.72dL/gのIt.V.を有するポリエステル粒子の溶融時に発生するAAの量がこのようにより少ない。
【0086】
触媒失活剤は、ポリマーメルトの製造プロセスの遅い段階で加えて、その後の溶融加工工程の間における触媒系の活性を制限する。触媒失活剤を添加しなければ、触媒系はポリマー粒子中に存在するアセトアルデヒド前駆体のアセトアルデヒドへの転化を触媒し且つ/又はより多くのAA前駆体の形成及びそれらのその後のAAへの転化を触媒する。未処理のままにしておくと、ポリマーは押出又は射出成形の間に高いアセトアルデヒド発生度を有し、従ってメルトから製造される物品中のAAレベルの増加の一因となるであろう。安定剤又は失活剤は、また、溶融相重縮合の終わり近くにおいて及びポリエステル粒子のその後の溶融(例えば物品への溶融加工の間に行われる)の間に、ポリマーメルトの熱的安定化を助けることができる。安定剤又は失活剤がなければ、高粘性メルトの状態のポリマー鎖を切断するより多くの反応が起こり、より多くのAA前駆体、そして最終的にはより多くのAAが形成されるであろう。重縮合触媒系によって少なくとも一部分触媒される副反応は、重縮合触媒系が少なくとも一部分失活される場合には、それほど問題にならない可能性がある。触媒失活剤は金属触媒の触媒活性を阻害し、ひいては重縮合速度を抑制するので、触媒失活剤はアルミニウム化合物又はアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物又はアルカリ化合物の添加と一緒には添加することもないし、重縮合の最初時に添加することもない。しかし、燐化合物の全ての型又は形態が必ずしも失活剤ではないこと、及び燐化合物が失活剤でない場合には、燐化合物は所望ならば触媒と共に又は重縮合の最初に添加できることに留意すべきである。
【0087】
適当な失活化合物は好ましくは燐含有化合物である。燐化合物は1つ又はそれ以上の燐原子を含む。好ましいのは燐酸トリエステル、酸性燐化合物又はそれらのエステル誘導体及び酸性燐含有化合物のアミン塩である。酸性燐化合物は少なくとも1つのオキシ酸基、即ち酸素に二重結合し且つ少なくとも1つのヒドロキシル又はOH基に一重結合した少なくとも1つの燐原子を有する。酸性基の数は、酸素に二重結合した燐原子に結合したヒドロキシル基の数が増加するにつれて、増加する。
【0088】
燐化合物の具体例としては、燐酸、ピロリン酸、亜燐酸、ポリ燐酸、カルボキシホスホン酸、アルキルホスホン酸、ホスホン酸誘導体並びにそれらの酸性塩及び酸性エステル及び誘導体のそれぞれ、例えば酸性燐酸エステル、例えば燐酸モノエステル及びジエステル、並びに非酸性燐酸エステル(例えば燐酸トリエステル)、例えば燐酸トリメチル、燐酸トリエチル、燐酸トリブチル、燐酸トリブトキシエチル、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、オリゴマー燐酸トリエステル、燐酸トリオクチル、燐酸トリフェニル、燐酸トリトリル、(トリス)エチレングリコールホスフェート、ホスホノ酢酸トリエチル、ジメチルメチルホスホネート、テトライソプロピルメチレンジホスホネート;燐酸とエチレングリコール、ジエチレングリコール若しくは2−エチルヘキサノールとのモノエステル、ジエステル及びトリエステル、又はそれぞれの混合物が挙げられる。他の例としては、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、燐酸一水素化合物及び燐酸二水素化合物、ホスファイト化合物、ポリマーメルト中に好ましくは可溶なある種の無機燐化合物、ポリ(エチレン)水素ホスフェート及び燐酸シリルが挙げられる。粒子の溶液又は成形品のヘイズ(haze)は、ポリマーメルトへの添加剤の溶解度の欠如又は限られた溶解度を示す。可溶な添加剤は、触媒系を失活/安定化させる可能性がより高い。更に、成形品のヘイズは、許容限度を超え且つ/又は成形品の外観を害するならば、望ましくない。
【0089】
添加できる他の燐化合物には、酸性燐化合物のアミン塩がある。アミンは環状であっても非環状であってもよく、モノマー、オリゴマー又はポリマーのいずれであってもよく、ヘイズ及び/又は溶解度が問題である場合にはヘイズを最小限に抑え且つ/又は溶解度を最大にするように選択すべきである。アミンの有機成分は基本的には任意の有機基であることができる。アンモニア及び水酸化アンモニウムのような関連化合物が適当である。
【0090】
アミンの適当な有機基としては、直鎖及び分岐鎖アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アルカリール、ヘテロアリールなどが挙げられる。これらの型の有機基はそれぞれ、非置換でも置換されていてもよく、即ちヒドロキシ、カルボキシ、アルコキシ、ハロ及び同様な基で置換されていてもよい。有機基は、また、炭酸、ケト、エーテル及びチオエーテル結合並びにアミド、エステル、スルホキシド、スルホン、エポキシなどを含むことができる。このリストは説明のためのものであり、限定するものではない。
【0091】
好ましいアミンは、5〜7員環、好ましくは6員環を有する環状アミンである。これらの環は単一の「モノマー」種を構成することもできるし、或いはより大きいオリゴマー又はポリマーの一部であることもできる。
【0092】
好ましい環状アミンは、環窒素に隣接する環の位置で置換された有機基を有するヒンダードアミンである。環窒素自体も置換されることができる、即ちアルキル、アリール、アラルキル、アルカリール及び他の基で置換されることができる。ヒンダードアミンはまた、オリゴマー部分又はポリマー部分の一部を構成することができる。
【0093】
別の型の好ましいアミンはアミノ酸である。分解点が重合温度又はそれ以上の温度であるアミノ酸が特に好ましい。L−エナンチオマー、D−エナンチオマー又はラセミ混合物を含むそれらの任意の混合物を使用できる。アミン基及びカルボン酸基は同じ炭素に結合する必要はない。アミノ酸はα、β又はγであることができる。置換アミノ酸を使用できる。水にある程度の溶解度を有するアミノ酸が特に好ましい。これは、水にある程度の溶解度があれば、塩の合成が水中で、即ちVOC(揮発性有機化合物)を用いずに行われることができるためである。
【0094】
適当なアミンは、燐含有酸と塩を形成できる少なくとも1つの窒素を含む。N−アルキル化ピペリジニル部分を含むヒンダードアミンにおいて、例えば、塩形成はピペリジニル窒素を含み、以下のような種(これらに限定するものではないが)を生成できる。
【0095】
【化1】

【0096】
塩を形成できるアミン化合物中に窒素が1つある場合には、アミン化合物モル当たり1モルの燐含有酸が使用される。塩を形成できるアミン化合物中に窒素原子が2つ又はそれ以上ある場合には、中和可能な窒素が残存しない塩を形成する酸の量まで又はこの量よりもわずかに上回る量で、アミン化合物モル当たり2モル又はそれ以上の酸が使用されることができる。
【0097】
アミノ酸のカルボン酸基は塩のアミン部分がポリエステル鎖中に反応される可能性を広げる。ポリマー鎖中への反応は揮発性及び抽出性を低下させるはずである。ポリマー鎖中への反応は、また、塩のアミン部分がヒドロキシル及び/又はカルボキシル基を含む場合にも、行うことができる。カルボキシル又はヒドロキシル基が1つしかない場合には、塩は末端キャップ剤(end-capper)の役割を果たすであろう。反応性基(カルボキシル又はヒドロキシル)が合計2個又はそれ以上ある場合には、塩は必ずしも鎖の末端にない可能性がある。ポリエステル鎖中への反応も、塩の燐含有部分については可能である。例えば、燐酸はヒドロキシル化合物と反応して、燐酸エステルを形成できる。ポリエステルの鎖末端はヒドロキシエチル末端基であることが多い。燐酸はポリエステル鎖の中央でも反応できる。
【0098】
燐塩の燐部分の前駆体は次亜燐酸、亜燐酸、燐酸、ポリ燐酸、ポリ亜燐酸、ピロリン酸、ホスフィン酸、ホスホン酸、ホスフェートモノマー、燐酸ジエステル、ホスホン酸モノエステル、ピロリン酸モノエステル、ピロリン酸ジエステル、ピロリン酸トリエステル又は少なくとも1つの酸性水素をなお有する塩若しくは化合物などであることができる。P=Oに直接結合した任意のOH基上の水素は酸性である。1つより多い酸性水素を有する化合物は、1つ又はそれ以上の酸性水素がポリエーテルオリゴマー、ポリエステルオリゴマーなどによって、アルキル、アリール、アラルキル、アルカリールなどのような有機基で置換されることができる。しかし、少なくとも1つの塩形成性酸性水素が残らなければならない。1つ又はそれ以上の水素がP=O基に直接結合した燐のオキシ酸は、これらの水素のうち1つ又はそれ以上がアルキル、アリール、アラルキル、アルカリールなどのような有機基で置換されることができる。これらの化合物の例としては、アルキルホスホン酸、アルキルホスフィン酸及びジアルキルホスフィン酸が挙げられるが、これらに限定するものではない。アミンと同様に、有機基は置換することができる。
【0099】
一実施態様において、塩は、1種又はそれ以上の酸性燐含有化合物と窒素を含む1種又はそれ以上の塩基性有機化合物との反応によって製造し、燐含有化合物は好ましくは式:
【0100】
【化2】

【0101】
[式中、R1及びR2は独立して水素、C1〜C22−アルキル、置換C1〜C22−アルキル、C3〜C8−シクロアルキル、置換C3〜C8−シクロアルキル、ヘテロアリール及びアリールから選ばれ;
nは2〜500であり;
Xは水素及びヒドロキシから選ばれる]
を有する化合物から選ばれ、窒素を含む塩基性有機化合物は好ましくは式:
【0102】
【化3】

【0103】
【化4】

【0104】
【化5】

【0105】
【化6】

【0106】
【化7】

【0107】
[式中、
1及びR2は独立して水素、C1〜C22−アルキル、置換C1〜C22−アルキル、C3〜C8−シクロアルキル、置換C3〜C8−シクロアルキル、ヘテロアリール及びアリールから選ばれ;
(以下の型の有機基は、それぞれ、非置換でも置換されていてもよく、即ちヒドロキシ、カルボキシ、アルコキシ、ハロ及び/又は同様な基並びにそれらの組合せで置換されていてもよい。有機基は、また、炭酸、ケト、エーテル及びチオエーテル結合並びにアミド、エステル、スルホキシド、スルホン、エポキシなどを含むことができる。このリストは説明のためのものであり、限定するものではない。)
3、R4及びR5は独立して水素、C1〜C22−アルキル、置換C1〜C22−アルキル、C3〜C8−シクロアルキル及び置換C3〜C8−シクロアルキルから選ばれ;好ましくは、R3、R4及びR5のうち少なくとも1つは水素以外の置換基であるが;R3、R4及びR5が全て水素である場合には、水酸化アンモニウムが好ましい形であり;R3とR4又はR4とR5は共同で、それらが結合する窒素原子と共に環を形成する二価の基、例えばモルホリノ、ピペリジノなどを表すことができ;
6、R7、R8及びR9は独立して水素、C1〜C22−アルキル、置換C1〜C22−アルキル、C3〜C8−シクロアルキル、置換C3〜C8−シクロアルキル、ヘテロアリール及びアリールから選ばれ;
10は水素、−OR6、C1〜C22−アルキル、置換C1〜C22−アルキル、C3〜C8−シクロアルキル及び置換C3〜C8−シクロアルキルから選ばれ;
11は水素、C1〜C22−アルキル、置換C1〜C22−アルキル、C3〜C8−シクロアルキル、置換C3〜C8−シクロアルキル、ヘテロアリール、アリール、−Y1−R3又は式:
【0108】
【化8】

【0109】
を有するスクシンイミド基から選ばれ;
【0110】
12は水素、C1〜C22−アルキル、置換C1〜C22−アルキル、C3〜C8−シクロアルキル、置換C3〜C8−シクロアルキル、ヘテロアリール及びアリールから選ばれ且つ芳香環の3、4又は5位に位置することができ;
−N(R3)(R4)基は窒素化合物(5)のピリジン環の3、4又は5位に位置することができ;
−CO23及びR1基は窒素化合物(6)のピリジン環の2、3、4、5、6位のいずれかに位置することができ;
1はC2〜C22−アルキレン;−(CH2CH2−Y11-3−CH2CH2−;C3〜C8−シクロアルキレン;アリーレン;又は−CO−L2−OC−から選ばれた二価の連結基であり;
2はC1〜C22−アルキレン、アリーレン、−(CH2CH2−Y11-3−CH2CH2−及びC3〜C8−シクロアルキレンから選ばれ;
1は−OC(O)−、−NHC(O)−、−O−、−S−、−N(R1)−から選ばれ;
2は−O−又は−N(R1)−から選ばれ;
13及びR14は独立して−O−R2及び−N(R22から選ばれ;
Zは約20以下、好ましくは約6以下の正の整数であり;
m1は0〜約10から選ばれ;
n1は2〜約12から選ばれた正の整数であり;
15及びR16は独立して水素、C1〜C22−アルキル、置換C1〜C22−アルキル、C3〜C8−シクロアルキル、置換C3〜C8−シクロアルキル、ヘテロアリール、アリール及び基Aから選ばれ、基Aは下記構造:
【0111】
【化9】

【0112】
(基Aの構造において、*は結合位置を示す)
から選ばれ;好ましくはR15及びR16の少なくとも一方はA基である]
を有する化合物から選ばれ;(酸性燐含有化合物中の燐原子の数)対(塩基性有機化合物中の塩基性窒素原子の数)の比は約0.05〜約2、好ましくは約0.25〜約1.1である。
【0113】
用語「C1〜C22−アルキル」は1〜22個の炭素原子を含み且つ直鎖又は分岐鎖であることができる飽和炭化水素基を意味する。このようなC1〜C22−アルキル基はメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソプロピル、イソブチル、tert−ブチル、ネオペンチル、2−エチルヘプチル、2−エチルヘキシルなどであることができる。用語「置換C1〜C22−アルキル」は、ヒドロキシ、カルボキシ、ハロゲン、シアノ、アリール、ヘテロアリール、C3〜C8−シクロアルキル、置換C3〜C8−シクロアルキル、C1〜C6−アルコキシ、C2〜C6−アルカノイルオキシなどから選ばれた1つ又はそれ以上の置換基で置換することができる前記C1〜C22−アルキル基を意味する。
【0114】
用語「C3〜C8−シクロアルキル」は3〜8個の炭素原子を含む脂環式炭化水素基を意味するのに用いる。用語「置換C3〜C8−シクロアルキル」はC1〜C6−アルキル、C1〜C6−アルコキシ、ヒドロキシ、カルボキシ、ハロゲンなどから選ばれた少なくとも1つの基を含む、前に詳述したC3〜C8−シクロアルキルを記載するのに用いる。
【0115】
用語「アリール」は、共役芳香環構造中に6、10又は14個の炭素原子を含む芳香族基を意味し、これらの芳香族基は、任意的に、C1〜C6−アルキル;C1〜C6−アルコキシ;フェニル及びC1〜C6−アルキルで置換されたフェニル;C1〜C6−アルコキシ;C3〜C8−シクロアルキル;ハロゲン;ヒドロキシ、カルボキシ、シアノ、トリフルオロメチルなどから選ばれた1つ又はそれ以上の基で置換される。典型的なアリール基としては、フェニル、ナフチル、フェニルナフチル、アントリル(アントラセニル)などが挙げられる。用語「ヘテロアリール」は、2〜約10個の炭素原子と共に硫黄、酸素、窒素又はこれらの組合せから選ばれた少なくとも1つのヘテロ原子を含む共役環状基、及び前記アリール基上の可能な置換基として前述した基で置換されたこれらのヘテロアリール基を記載するのに用いる。典型的なヘテロアリール基の例としては、2−及び3−フリル、2−及び3−チエニル、2−及び3−ピロリル、2−、3−及び4−ピリジル、ベンゾチオフェン−2−イル、ベンゾチアゾル−2−イル、ベンゾオキサゾル−2−イル、ベンズイミダゾル−2−イル、1,3,4−オキサジアゾル−2−イル、1,3,4−チアジアゾル−2−イル、1,2,4−チアジアゾル−5−イル、イソチアゾルー5−イル、イミダゾル−2−イル、キノリルなどが挙げられる。
【0116】
用語「C1〜C6−アルコキシ」及び「C2〜C6−アルカノイルオキシ」はそれぞれ基−O−C1〜C6−アルキル及び−OCOC1〜C6−アルキルを表すのに用い、ここで「C1〜C6−アルキル」は、直鎖又は分岐鎖であることができ且つ更にハロゲン、メトキシ、エトキシ、フェニル、ヒドロキシ、カルボキシ、アセチルオキシ及びプロピオニルオキシから選ばれた1つ又はそれ以上の基で置換されることができる炭素数1〜6の飽和炭化水素基を意味する。用語「ハロゲン」はフッ素、塩素、臭素及びヨウ素を表すのに用いるが、塩素及び臭素が好ましい。
【0117】
用語「C2〜C22−アルキレン」は直鎖又は分岐鎖であることができ且つヒドロキシ、カルボキシ、ハロゲン、C1〜C6−アルコキシ、C2〜C6−アルカノイルオキシ及びアリールから選ばれた1つ又はそれ以上の置換基で置換されることができる炭素数2〜22の二価炭化水素基を意味するのに用いる。用語「C3〜C8−シクロアルキレン」は、炭素数3〜8の二価脂環式基を表すのに用い、これらは、任意的に、1つ又はそれ以上のC1〜C6−アルキル基で置換される。用語「アリーレン」は、1,2−、1,3−及び1,4−フェニレン基並びに任意的にC1〜C6−アルキル、C1〜C6−アルコキシ及びハロゲンで置換されるこれらの基を意味するのに用いる。
【0118】
好ましいヒンダードアミンは、アルキル置換ピペリジニル部分及び/又はトリアジン部分を含み、より好ましくはヒンダードアミンは、少なくとも1つのアミン基がトリアジン部分及びアルキル置換ピペリジン部分の両方によって置換されているものである。最も好ましいヒンダードアミンにおいて、アミノ基含有部分はアルキレン基によって、好ましくは(−CH2−)n基[nは2〜12、好ましくは4〜10、最も好ましくは6〜8である]によって連結される。最も好ましいヒンダードアミンは、式:
【0119】
【化10】

【0120】
の反復単位を含むCyasorb(登録商標)UV 3529である。
【0121】
アミン成分の塩は、酸性燐含有化合物と塩基性窒素含有有機化合物又は水酸化アンモニウムとを適当な方法で一緒にすることによって製造できる。適当な方法は、酸性の燐含有酸を塩基性窒素含有有機化合物又は水酸化アンモニウムと接触させることを含む任意の方法である。例えば、酸性燐含有化合物及び塩基性窒素含有有機化合物又は水酸化アンモニウムを、適切な溶媒中に溶解させ、溶液を混合し、続いて反応生成物を沈殿させることもできるし;溶媒を用いずに、酸性燐含有酸と塩基性有機化合物又は水酸化アンモニウムを混合することもできるなどである。
【0122】
(酸性燐化合物中の酸性基の数)対(塩基性有機化合物又は水酸化アンモニウム中の塩基性窒素原子の数)の比は約0.05〜約2、好ましくは約0.25〜約1.1の範囲であることができる。大過剰の未反応酸性燐化合物を含む組成物は、ポリエステルの製造、コンセントレートの製造(もしあれば)又はプレフォームの製造の間にプロセス装置の腐蝕を引き起こすおそれがある。
【0123】
本発明において使用する触媒系はそのように簡単に少なくとも一部分を失活させることができるので、アンチモン触媒系と一緒ではそれほど有効でないことがこれまでわかっている燐化合物、例えば燐酸トリエステルのような酸性燐化合物のフルエステルを、本発明のポリマーメルト及び方法において有効に使用できる。更に、アンチモン触媒系と一緒ではヘイズの増加を引き起こすことが分かっている燐化合物、例えば燐酸を、アンチモン触媒系の場合にはポリエステルを灰色又は黒色にする金属への還元によってヘイズを増加させるように作用することなく、本発明の触媒系と共に失活剤として使用できる。
【0124】
このプロセスに使用する燐化合物又は他の触媒失活剤の量は、組合せチタン触媒の触媒活性又は前記(i)アルミニウム原子及び(ii)アルカリ土類金属原子若しくはアルカリ金属原子若しくはアルカリ化合物残基の触媒活性を一部分又は完全に失活させることによって、溶融相製造プロセスによって生成されるポリマー粒子の溶融時に発生するAAの量を低減させるのに有用である。許容できる、溶融時のAAの発生量は、最終使用用途及び多くの場合には関係する当該飲料ブランドの所有者によって異なる。水ボトルの製造に使用するプレフォームは多くの場合、炭酸清涼飲料(CSD)用のボトルの製造に使用するプレフォームよりも低いAA規格値(specification)を有する。例えばCSDプレフォーム中のAAの最大許容レベルは約8ppmであることができるのに対して、一部の水ボトルプレフォーム中のAAの最大許容レベルは約3ppmであろう。CSD及び水市場の両方において使用するためのプレフォーム、即ち二重用途プレフォームは、多くの場合、水市場のみで使用されるプレフォームと同様なAA規格値を有する。使用する燐化合物又は他の触媒失活剤の量は、最終使用用途及び/又は関係する飲料ブランドの所有者によって異なるポリエステル中の目標値によって異なる。例えば、PET中の目標燐レベルは、水又は二重用途への適用の場合には、CSDへの適用の場合よりも高いであろう。触媒失活剤の遅い段階での添加はIt.V.の低下を引き起こすおそれがあるので、可能な失活剤の最少量を、所定の用途のための目標AAレベルを成形品中において達成するように添加すべきである。失活剤が腐蝕性である場合には、これが所定の用途のための目標AAレベルを成形品中で達成するために可能な失活剤の最少量を使用する別の理由である。
【0125】
アルミニウム化合物及び/又はアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を用いて重縮合を触媒する場合には、メルト中に存在するアルミニウム、アルカリ、又はアルカリ土類金属及び他の全ての触媒金属の累積量を考慮に入れる。(燐のモル)対(アルミニウム及びアルカリ土類金属及び/又はアルカリ金属の総モル)の比[P:M MR(Mはアルミニウムのモル、存在する場合にはアルカリ土類金属のモル及び存在する場合にはアルカリ金属のモル和と見なされ、MRはモル比を表す]は、一般に少なくとも0.1:1若しくは少なくとも0.3:1若しくは少なくとも0.5:1若しくは少なくとも0.7:1若しくは少なくとも1:1であって且つ約5:1以下又はより好ましくは約3:1以下若しくは約2:1以下若しくは1.8:1以下若しくは1.5:1以下である。ポリエステルメルトへの燐化合物の添加時におけるポリマーIt.V.の低下を最小限に抑えるためには、過剰に多い量の燐化合物は回避しなければならない。更に、アルミニウム及びアルカリ金属触媒の場合には、AA発生量を最低にするのに最適の燐の量があり;従って、過剰の燐化合物は、特にそれが酸性である場合には、発生するAAの量を増大させる可能性がある。P:M MRの好ましい範囲は0.5〜1.5である。
【0126】
アルミニウム、アルカリ金属及びアルカリ土類金属以外の金属の化合物も燐化合物と反応する。アルミニウム、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属に他に、燐化合物と反応する他の金属化合物が存在する場合には、遅い段階で添加する燐化合物の量は、燐化合物が存在する全ての反応性金属と確実に反応又は結合するために、目標P:M MRの達成に必要な量を上回るのが望ましい。本発明の別の実施態様において、ポリエステルポリマー組成物は、ポリエステルポリマーの重量に基づき、5〜100ppm又は7〜60ppm又は8〜20ppmの範囲内のアルミニウム原子を含み、(全てのアルカリ土類金属及び/又はアルカリ金属原子)対(アルミニウム原子)のモル比は0.5:1〜6:1又は1:1〜5:1又は2:1〜4:1の範囲であり、P:M比は0.1:1〜3:1又は0.3:1〜2:1又は0.5:1〜1.5:1の範囲である。好ましくは、ポリエステルポリマー組成物は、アルミニウムとリチウム若しくはナトリウム若しくはカリウム又はそれらの組合せのうち少なくとも1つを含む。一実施態様において、組成物はアルミニウム原子とリチウム原子、又はアルミニウム原子とナトリウム原子を含む。
【0127】
触媒失活剤が燐化合物を含むチタン重縮合触媒については、本発明の別の実施態様において、失活剤は少なくとも0.015:1又は少なくとも0.7:1又は少なくとも1:1のP:Tiモル比(P:Ti)で存在する。
【0128】
別の実施態様において、チタン原子の望ましい範囲は、ポリエステルの重量に基づき約2〜約20ppm又は約4〜約15ppm又は約5〜約10ppmである。
【0129】
本発明の利点の1つは、触媒系を容易に失活させ得ることであるので、燐化合物又は別の失活剤を、重縮合速度を遅延させるほど過度に早い段階で添加しないように気を付けなければならない。所望の燐の最終量の添加は、専ら重縮合の実質的完了時とその後に完了させるべきであり、好ましくは、所望の燐化合物の最終量は、溶融相製造プロセスにおいては重縮合の実質的完了又はその後まではポリマーメルトに添加すべきでない。
【0130】
燐化合物を溶融相重合において添加する実施態様において、「燐の最終量」は、溶融相製造プロセスから出た又はペレット中に見られるポリエステルポリマー中において望ましい燐の最終量を意味する。最終量に相当する燐の一部を重縮合過程の遅い段階又はその後であって以下に詳細に説明する固化の前に添加するならば、必要に応じて、燐化合物の一部の量を溶融相製造プロセスの早い段階で、例えば重縮合の開始時に添加することができる。重縮合速度及び/又は生産速度を最大にするためには、燐化合物のほとんど、又は好ましくは大部分、又は最も好ましくは全てを、溶融相製造プロセスの遅い段階で添加する。当業者には、エステル交換を含む方法が、エステル交換触媒を失活させるために、エステル交換の直後に燐化合物の添加を必要とすることがわかっている。エステル交換触媒がまた、重縮合ゾーン中の触媒反応の少なくとも一部を担っている場合には、エステル交換後の燐の添加は省く。
【0131】
多量の燐を添加する場合にはIt.V.の低下を最小限に抑えるために、又は中程度の量又は最適量の燐を添加する場合であっても起こり得るIt.V.の低下を更にできるだけ少なくするために、燐化合物は純粋なまま、即ち、85%又はそれ以上の燐酸の場合のように、更なる稀釈をせずに添加するのが望ましい。担体を用いる場合には、担体は非反応性である、即ち、ポリマー鎖を切断することもAA発生度を増加させることもないのが好ましい。水、アルコール、グリコール類及び低分子量PETはポリマー鎖を切断することが知られている。最少量の燐化合物及びそれに関連するIt.V.の低下がわかったら、目標It.V.を達成できるように、失活/安定化前のIt.V.が予想されるIt.V.低下の量だけ高くなるようにして溶融相プロセスを実施することができる。
【0132】
仕上げゾーン中で目的It.V.が得られ且つ触媒失活剤を遅い段階で添加したら、メルトは一般に、溶融PETを非晶質固体ペレットに転化するように加工する。典型的には、単一の非晶質固体ペレットの重量は0.01〜10gの範囲であろう。溶融相からの適当なIt.V.は0.5〜1.2dL/gの範囲であることができる。しかし、本方法の1つの利点は、固相化工程を任意的に回避できることである。固相化は一般に、固体状態のペレットの分子量(及びIt.V.)を、通常は少なくとも0.05単位、より典型的には0.1〜0.5単位増加させるために使用する。
【0133】
溶融相反応器から出た溶融ポリマーをペレットに転化するための方法及び装置は限定せず、ペレットの製造に使用される任意の従来のシステムが本発明の実施に適当である。例えば、ポリエステルポリマーメルトのストランドをポリマーのガラス転移温度未満まで少なくとも表面冷却して冷却ポリエステルポリマーを形成し、続いて冷却ポリエステルポリマーをペレット化して固体非晶質ペレットを形成する。これらのペレットは任意的に結晶化させることができる。別法として、溶融ポリマーをダイを通して押出し、ポリエステルポリマーがそのガラス転移温度未満に冷える前にほとんど瞬時にペレットに切断する。これらのペレットは、任意的に、ポリマーがそのガラス転移温度未満に冷える前に結晶化させることができる。
【0134】
一部のポリエステルポリマーについては、結晶化及び/又は「固相化」が非常に困難な場合があることに留意すべきである。例えば、ジオール成分の15重量%又はそれ以上の量で共重合シクロヘキサンジメタノール(CHDM)を含むPETは、非晶質であるか又はパーセント結晶化度が低い(例えばパーセント結晶化度が1%未満又は5%未満又は10%未満である)。従って、本発明の一実施態様において、特に固体ポリエステルポリマー粒子に関しては、前記粒子は、かなり容易に結晶化できる、典型的にはパーセント結晶化度が少なくとも10%又は少なくとも20%である共重合材料(例えば二酸及びジオール)の組合せに限定する。
【0135】
好ましい実施態様において、本発明の方法は、その後の固相重合(通常「固相化」と称される)を必要とすることなく、溶融相において直接的に充分に高いインヘレント粘度の生成物を製造できる点で、従来の方法とは大きく異なる。固相化の回避はまた、メルトからの直接成形さえも可能にすることができる。これらの利点は、少なくとも1種の重縮合触媒を、重縮合段階において遅れて添加される燐酸又は燐含有酸アミン塩のような触媒失活剤と一緒に使用することによって達成される。意外なことに、本方法は重縮合時間の短縮を可能にし、固相化を行わずに適当なインヘレント粘度を有する生成物を作り出し、しかも固体ポリエステル粒子中残留アセトアルデヒド含量が低下し、溶融時のアセトアルデヒド発生が低下し且つビニル末端濃度が比較的高い固体生成物を製造することがわかった。
【0136】
溶融相プロセスにおいて製造される固体粒子は、好ましくは押出可塑度計中で295℃において5分間測定した場合に、20ppm若しくはそれ以下又は18ppm若しくはそれ以下又は16ppm若しくはそれ以下又は13ppm若しくはそれ以下又は11ppm若しくはそれ以下又は10ppm若しくはそれ以下又は8ppm若しくはそれ以下のアセトアルデヒド発生度を有する。本発明の方法は、成形品の製造のために粒子を295℃において5分間溶融させることを必要としない。プレフォームのアセトアルデヒド発生度を測定する場合において、プレフォームを製造することによってペレットが射出成形前に押出機中で溶融されるので、プレフォームは更なる溶融履歴に供することなく、前述のASTM #F2013−00法を用いれば充分である。ポリエステル粒子を、射出成形機の一部である押出機に供給する場合には、本発明の固体ポリエステル粒子から製造された20oz.のプレフォームは任意の製造条件下で10ppm若しくはそれ以下、8ppm若しくはそれ以下、6ppm若しくはそれ以下、5ppm若しくはそれ以下又は4ppm若しくはそれ以下のAAレベルを有するが、AA発生レベルを測定するためには、そのレベルは約285℃のバレル温度及び約2分のメルト滞留時間で測定する。
【0137】
溶融相製造プロセスにおいて製造された固体粒子は好ましくは、0.8μeq/g若しくはそれ以上又は1.0μeq/g若しくはそれ以上又は2.0μeq/g若しくはそれ以上又は3.0μeq/g若しくはそれ以上又は5μeq/g若しくはそれ以上のビニル末端濃度を有する。
【0138】
本発明の粒子は、輸送コンテナ中にバルクとして、直接的に又は間接的に、梱包し、次にそれらを顧客又は販売業者に輸送する。結晶化された粒子は、粒子を輸送コンテナ中に梱包する前の時点で粒子を固相重合することなく、本明細書中に記載した任意の方法実施態様に供するのが好ましい。固相重合を除いて、粒子は記載した工程のいずれかの間で多数の追加の加工工程に供することができる。
【0139】
輸送コンテナは、陸路、海路又は空路で輸送するために使用されるコンテナである。例としては、鉄道車両、セミトラクター・トレイラー・コンテナ、ゲイロードボックス、船殻又は顧客への完成ポリエステル粒子の輸送に使用する任意の他のコンテナが挙げられる。顧客は典型的には粒子をプレフォーム又は他の成形品に加工する加工事業体である。
【0140】
輸送コンテナはポリエステルポリマー粒子のバルクを含む。バルクは少なくとも3m3の体積を占める。好ましい実施態様において、輸送コンテナ中のバルブは少なくとも5m3又は少なくとも10m3の体積を占める。典型的には、個々の完成ポリエステルポリマー粒子の重量は0.01〜10gの範囲であろう。
【0141】
一実施態様において、溶融相重合で得られる平均It.V.が少なくとも0.68dL/g又は0.70dL/g又は0.72dL/g又は0.74dL/g又は0.76dL/g又は0.80dL/gであり且つ残留アセトアルデヒドレベルが10ppm若しくはそれ以下又は5ppm若しくはそれ以下である完成ポリエステルポリマー粒子が提供され;前記粒子は、ポリマーの重量に基づき、少なくとも3ppm又は少なくとも5ppm又は少なくとも8ppm又は少なくとも11ppm又は少なくとも15ppmの量のアルミニウムレベルを含む。好ましくは、輸送コンテナ中のポリエステル粒子は、また、最小0.8μeq/g若しくはそれ以上又は1.0μeq/g若しくはそれ以上又は2.0μeq/g若しくはそれ以上又は3.0μeq/g若しくはそれ以上又は5μeq/g若しくはそれ以上のビニル末端濃度を有する。好ましくは、輸送コンテナ中のポリエステル粒子はまた、少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%の結晶化度を有し;粒子は、また、ゼロでないレベルの燐と共にゼロでないレベルのアルカリ土類金属又はアルカリ金属を含む。より好ましくは、このような粒子のAA発生は、20ppm未満又は18ppm未満又は16ppm未満又は14ppm未満又は12ppm未満又は10ppm未満であり、粒子は、少なくとも55又は少なくとも60又は少なくとも65又は少なくとも70又は少なくとも73又は少なくとも76のL*明度を有し且つAA捕捉剤を含まない。粒子は望ましくは輸送コンテナに入れる。最も好ましくは、粒子は固相重合されていない。「完成」粒子とは、成形機に付随する乾燥ホッパー中にすぐに供給できる又は物品への粒子の加工に使用する成形機に直接供給できる状態の粒子の製造に必要な全ての加工条件に粒子製造業者が既に供しており、粒子製造業者がそれ以上加工工程を行うことない粒子を意味する。
【0142】
成形物は、当業者に知られた任意の従来の方法によって溶融相生成物から形成できる。例えば少なくとも10%の結晶化度まで結晶化された、任意的に固相重合された溶融相生成物を、飲料若しくは食品容器への延伸ブロー成形に適当なプレフォームのような形状にメルトを溶融押出及び射出成形するための機械に、又は射出成形するために又はシートのような他の形態に単に押出すための機械に、供給する。成形物を形成するための適当な方法は周知であり、その例には押出、押出ブロー成形、溶融キャスト、射出成形、溶融−成形プロセス(melt-to-mold process)、延伸ブロー成形(SBM)、熱成形などがある。
【0143】
本発明の溶融相生成物及びポリエステルポリマー組成物から形成できる成形品の種類の例としては、シート;フィルム;パッケージング及び容器、例えばプレフォーム、ボトル、ジャー及びトレイ;ロッド;チューブ;並びにフィラメント及び繊維が挙げられる。水又は炭酸飲料を飲料ボトルを入れるのに適当なポリエチレンテレフタレートから製造される飲料ボトル、及びボトル中に熱間充填される飲料を入れるのに適当なヒートセット飲料ボトルは、本発明の結晶化粒子から製造されるボトルの種類の例である。トレイの例は、オーブンに入れてもその他でも使える両用CPETトレイであるものである。
【0144】
別の実施態様において、成形品は有機アセトアルデヒド捕捉剤を含まないのが好ましい。溶融加工工程において固体ポリエステル粒子に添加する成分は有機アセトアルデヒド捕捉剤を含まないのが好ましい。
【0145】
前述のように、触媒失活剤は、重縮合過程の遅い段階で又はその後であって固化の前に、添加する。また、失活剤の大部分は溶融相製造プロセスの遅い段階で添加するが、溶融相製造プロセスのより早い段階で少量の失活剤を添加することも可能である。失活剤の総量をポリエステルポリマーを製造するための溶融相プロセスの間に添加する実施態様の他に、別の実施態様においては、失活剤の総量の一部を少なくとも2つの段階で、即ちポリエステルポリマーを製造するための溶融相プロセスにおいて、1回、ポリエステルポリマーを固化した後であってポリエステルポリマーから物品を形成する前の任意の時点で、例えば物品を製造するための押出機中又は射出成形機中で従来なされているような物品を製造するためのポリエステルポリマーの溶融加工の間に、更に1回、ポリエステルポリマーに添加する。更に別の実施態様においては、失活剤の総量を、固化の後であって物品の製造前に添加する。
【0146】
溶融相製造プロセスからの固化後における燐化合物の部分添加又は全添加は、触媒失活剤をポリエステルポリマー粒子と溶融配合して、ランダムに分散された触媒失活剤化合物を含むポリエステルポリマー粒子の固体コンセントレートを形成し、その後に前記コンセントレートをポリエステル粒子の供給流と共に、物品を製造するための溶融加工ゾーンに供給することによって実施することもできるし;或いは触媒失活剤化合物の流れを、純粋な流れとして直接的に又は液体担体を用いて生成されたスラリー又は分散液の形態でポリエステルポリマー粒子の流れと共に、物品を製造するための溶融加工ゾーンに添加することもできる。従って、触媒失活剤を遅い段階で添加することなく、結晶性ポリエステルポリマーを溶融相プロセスから生成し、その後に触媒失活剤とポリエステルポリマーとを、配合押出によって又は射出成形プロセスの押出機部分において(例えば固体、液体若しくは溶融成分を押出機中でポリエステルポリマー流中に溶融ブレンドするのに使用されるもの又は射出成形プロセスにおいて押出によって成形品を製造するのに使用されるもの)ブレンドするか、或いは任意の他の混合装置中でブレンドする実施態様が提供される。
【0147】
この実施態様において、触媒失活剤を取り入れる混合装置は射出成形プロセスの一部であることもできるし、或いは射出成形前の別の工程であることもできる。触媒失活剤は純粋なまま、液体担体中に入れた形態で又はポリマーコンセントレートによって取り入れることができる。ポリマー担体中における触媒失活剤と触媒との反応は有効性を低下させる可能性があるので、純粋なままで又は液体担体に入れた形態で取り入れるのがより好ましい。触媒失活剤が液体であり且つ純粋なまま又は液体担体中に入れた形態で添加する場合には、周囲条件の混合機を用いて、ペレットを液体添加剤でコーティングしてから押出機中に入れることができるであろう。ポリマーコンセントレートルートを用いる場合には、コンセントレートペレットは、専ら溶融相で製造されたペレットと周囲条件においてドライブレンドして、「塩胡椒」型ブレンドを生成することができるであろう。これらの同じ注釈及びアプローチはまた、触媒失活剤と固相化ペレットとの溶融ブレンドにも適用する。
【0148】
この実施態様は、ペレットを固相重合する場合に特に有用である。溶融相への触媒失活剤の組み込みは、場合によっては固相化速度を低下させるおそれがある。ポリエステルペレットを固相重合したい場合には、ペレットが固相重合プロセスを経た後で触媒失活剤を添加するのが有利である。
【実施例】
【0149】
本発明をその実施態様の別の実施例によって更に説明できるが、これらの実施例は説明のためにのみ記載するのであって、本発明の範囲を限定することを目的としない。
【0150】
比較例1及び実施例1において出発原料として使用するPETオリゴマーは、プロトンNMRによれば、約94〜96.5%の転化率を有している。イソフタル酸濃度レベルは約2.0〜2.2モル%である。ジエチレングリコール濃度レベルは約4.6〜4.8モル%である。
【0151】
撹拌機とフラスコとの嵌合は、トルク終了ラン(torque-terminated run)の間に必要な仕上げ機時間に影響を及ぼす可能性がある。パドル撹拌機は、使用するフラスコと典型的な嵌合を有するように選択する。このランの前に、フラスコに練り歯磨き粉を入れ、次いでフラスコにパドル撹拌機、ポリマーヘッド、リップ付きテフロンチューブ(lipped tube)及びホースを装着する。撹拌機を押し上げ且つ手で回転させる際に、フラスコを反転させる。中央の両側の透明な領域を測定する。透明な領域の幅は合計1.7〜2.7cmでなければならない。フラスコを使用前に水及びアセトンで洗浄する。
【0152】
重縮合のために、粉砕オリゴマー(103g)を、前のパラグラフに従って選ばれた0.5Lの一口丸底フラスコ中に量り入れる。触媒溶液又は混合物をフラスコに加える。フラスコに、前のパラグラフに従って選ばれた316Lステンレス鋼パドル撹拌機と、リップ付きテフロン(登録商標)チューブ及びホースを装着したガラスポリマーヘッドを装着する。サイドアーム及びパージホースにポリマーヘッドを取り付けた後、0.5トルまでの2回の窒素パージを完了させる。
【0153】
実験室で製造したポリマーディスクを外側(ポリマーがフラスコと触れる場所)から内側(ポリマーが撹拌棒と接触する場所;ディスクの最も深い部分は、撹拌棒が位置する中央にある)へと冷却する。実験室で製造したポリマーディスクが冷えていく間に、若干のAA発生が起こり得る。工業的製造の生産環境においては、粒子又はペレットになる溶融ストランド又はメルトグロビュールは、比較的大きいディスクよりもはるかに薄く、はるかに速く冷めるか、或いは能動的に冷却される。例中の全てのサンプルはほぼ同じ冷却時間を有するので、遊離AAの減少パーセントは相対的比較点として依然として重要である。
【0154】
比較例1
使用したオリゴマー及び手順は、実施例部分の前のパラグラフに記載したものである。0.94wt/wt%のSb溶液を、エチレングリコール中三酢酸アンチモンから製造する。
【0155】
アルミニウムイソプロポキシド、水酸化リチウム及びエチレングリコールを、窒素パージ、電磁撹拌子及び熱電対を装着した栓をしていないボトル中で125℃まで加熱する。125℃に達したら、混合物をを約3.5時間加熱する。目標Alレベルは0.3wt%であり、目標Li:Alモル比は1、3又は5である。ICP−OESによれば、Li:Alモル比が1の混合物は、Alを0.33wt%及びLiを0.084wt%含む。ICP−OESによれば、Li:Alモル比が3の混合物は、Alを0.33wt%及びLiを0.28wt%含む。ICP−OESによれば、約3時間加熱したLi:Alモル比が5の混合物は、Alを0.38wt%及びLiを0.45wt%含む。
【0156】
重合反応器は、以下の実験配列を実施するようにプログラムされたCAMILE(登録商標)自動化システムの制御下で運転する。Sb対照については、段階5〜12の温度は280℃である。実験ランについては、表VIIIに記載した温度は段階5〜12のための配列において使用したものである。アルミニウム目標値は10又は25又は40ppmである。目標Li:Alモル比は1、3又は5である。
【0157】
【表1】

【0158】
撹拌システムは、段階4と5の間でトルクについて、自動的に較正される。仕上げ機段階(#12)は、撹拌トルク目標値が達成されか又は3つの別個の場合に撹拌トルク目標値を超えた場合に終了させる。この例中のランには燐化合物を添加しない。
【0159】
【表2】

【0160】
触媒失活剤の不存在下において、比較的低レベルのAlと比較的低いL:Alモル比の組合せでは、ビニル末端基濃度が0.8μeq/g又はそれ以上となり、295℃において5分間のAA発生レベル(AA Gen 295/5)が22ppm若しくはそれ以下又は22ppmに極めて近い値となる。例えば表I中のサンプル184、185及び196を参照。285℃の高い重縮合温度(サンプル185&196)において、ビニル末端基(VEG)は高く、従ってAA発生レベルも高いが;ビニル末端はAA発生レベルよりもより大きい割合で増加している。3つの場合(サンプル184、185及び196)において、低レベルのAl及び低いLi:Alモル比はビニル末端のほとんどをAAに転化するだけの触媒活性を与えないと理論上想定できるが、この理論は拘束性はない。触媒失活剤を含まない他のサンプル(サンプル199&5)については、Al及びLiレベルがより高く、このレベルはVEGのより多くをAAに転化するに足る触媒活性を生じる可能性があり;従って、VEG数は0.8μeq/gより低く、AA Gen 295/5の数値が22ppmより高い。より短い仕上げ機時間は、より高いAl&Liレベルで製造されたサンプルの増加した触媒活性を裏付ける。275℃に加熱されたポリマーについては、より高いAl&Liレベルで製造されたサンプル(サンプル199)は、より低いAl&Liレベルで製造されたサンプル(サンプル184)よりも仕上げ機時間が約111分短い。285℃において製造されたポリマーについては、より高いAl&Liレベルで製造されたサンプル(サンプル5)は、より低いAl&Liレベルで製造されたサンプル(サンプル185&196)よりも仕上げ機時間が平均して約103分短い。
【0161】
実施例1
使用したオリゴマー及び手順は、実施例部分の最初に記載したものである。使用したアンチモン溶液及びリチウム/アルミニウム混合物は比較例1に記載したものである。アルミニウム目標値は10又は25又は40ppmである。目標Li:Alモル比は1、3又は5である。燐対金属モル比(P:M MR)目標値は0、0.5又は1であり、この場合、分母の金属のモルはLiのモル数とAlのモル数の和である。
【0162】
表II中でP:M MRがゼロに等しくない場合には、以下の重合配列の段階14において85%の燐酸を加える。燐目標値に応じて、85%燐酸は、より高い目標値の場合には稀釈せずに、或いはより低い目標比の場合には85%燐酸とMillipore水の50:50、即ち1:1溶液として添加する。例外は75:25の燐酸(85%):Millipore水溶液を用いるサンプル12である。
【0163】
重合反応器は、以下の配列を実施するようにプログラムされたCAMILE(登録商標)自動化システムの制御下で運転する。表IIに列挙した温度は、この配列の段階5〜16で使用したものである。段階12において使用した仕上げ機時間は、比較例1中に示したのと同様な方法で測定した仕上げ機時間に基づく。
【0164】
【表3】

【0165】
撹拌システムは、段階4と5の間でトルクについて自動的に較正される。トルクについての較正は、バックグラウンドのトルク、即ち、ポリマーが感知できるほどに増成し始める前のトルクを測定し、ポリマーの分子量が増加した際に測定したトルクからそれを差し引くことを意味する。
【0166】
【表4】

【0167】
【表5】

【0168】
【表6】

【0169】
【表7】

【0170】
【表8】

【0171】
実験サンプルについてAA発生試験を行う場合には、Eastman Chemical CompanyからCB−12として入手可能な市販ポリエステルを試験に供する。
【0172】
サンプル21、10、50、25、26、20、48、51及び56には、失活剤を遅い段階で添加していない。サンプル21及び10以外のこれら全てのサンプルについて低いビニル末端レベル(0.2〜0.3μeq/g)が見られる。失活剤を添加しないことは、触媒が重縮合とビニル末端基(VEG)のアセトアルデヒド(AA)への転化の両方に活性であることを意味する。この状況における低レベルのVEGは、触媒がVEGのほとんどをAAに転化したことを示している。理論によって拘束するものではないが、同等の環境下で重縮合温度が増加すると、より多くのVEGが生成され、AAの転化に利用できる。この場合もやはり、理論によって拘束するものではないが、より高いアルミニウムレベル及びより高いLi:Alモル比(MR)の形態のより多くの触媒は、VEGのAAへの転化を増加させる。サンプル56は、Al目標値が40ppm、Li:Al MRが5、重縮合温度が285℃であり;従って、押出機可塑度計中で295℃において5分間の溶融加工後のAA発生レベルは、Li/Al触媒ポリマーについて見られる最も高いレベルであると予想される。サンプル51は、Al目標値が40ppm、Li:Al MRが5、重縮合温度が275℃であり;従って、AA発生レベルは、Li/Al触媒ポリマーについて見られる2番目に高いレベルであると予想される。次に高いAAはサンプル48について、重縮合温度が285℃であり且つAl目標比が40ppmのままであるが、Li:Al MRを1に低下させた(即ち、Liレベルは〜45ppmから〜10ppmに低下する)場合にみられる。
【0173】
失活剤を添加しない場合の最も低いAA発生レベルは、最も低い重縮合温度(275℃)、最も低いAl目標値(10ppm)及び最も低いLi:Al MR(1)であるサンプル21について見られる。VEGは、触媒レベルが低い(ICPによりAl 9.2ppm&Li 2.4ppm)ために集積し始め(0.5μeq/g)、AAに転化されるVEGが少なくなるにつれて、AA発生が減少していく。おそらく、AAへのVEGの転化に関する低い触媒活性は、低重縮合速度又は長い仕上げ機時間(274分又は〜4.5時間)によって裏付けられる。サンプル10もまた、最も低いAl目標値(10ppm)及び最も低いLi:Al MR(1)を有するが;重縮合温度(285℃)がより高い。より高い温度ではより多くのVEGが生成され、低い触媒レベルはAAへの転化をそれほど多くもたらさず;従って、VEGレベルは大幅に増加し(1.4μeq/g)、AA発生レベルは少しだけ高い(22.7ppm)。
【0174】
サンプル39及び67は、低いAA発生レベル(Ceast押出式可塑度計で295℃において5分後のAA<15ppm)及び高濃度のビニル末端基(>1μeq/g)を有する、失活剤を遅い段階で添加したリチウムアルミニウム触媒PETの例である。高い重縮合温度及び低い触媒添加量はサンプル10と同様であるが、サンプル39においては、VEGをAAに転化する触媒の活性を更に低下させる失活剤の存在によってVEGが更に高く、従ってVEGはより多く蓄積する(2.9μeq/g)。サンプル67はAlレベル及び重縮合温度に関してはサンプル39と同様であるが;Li:Al MRがはるかに高い。更なるLiが存在することによって、サンプル67の場合にはサンプル39に比較して仕上げ機時間がはるかに短くなる。より短い仕上げ機時間はより速い生産速度をもたらし、ひいては単位時間当たりより多くのポリマーを生成する。
【0175】
サンプル71及び66は、非常に低いAA発生レベル(Ceast押出式可塑度計で295℃において5分後のAA<10ppm)及び高濃度のビニル末端基(>1μeq/g)を有する、失活剤を遅い段階で添加したリチウムアルミニウム触媒PETの例である。両サンプルともLi:Al MRが1であるが、サンプル66は、Alが〜10ppmでなく〜26ppmであり且つ重縮合温度が275℃でなく280℃であるので、サンプル71より仕上げ機時間がはるかに短い。
【0176】
同じ目標値:Al(〜24ppm)、Li:Alモル比3(Li〜19ppm)、重縮合温度280℃及び燐対金属(Li+Al)モル比0.5で9つのランを行った。9つのランは全て、押出式可塑度計中で295℃において5分間加工後に発生したAA量が非常に少なかった(8.1〜10.5ppm)。これらのランのうち4つ(サンプル2、3、58及び59)はまた、0.8μeq/g又はそれ以上のビニル末端基(VEG)を有していた。1つのラン(サンプル1)は0.6μeq/gのVEGを有していた。VEG試験の標準偏差は0.76μeq/gにおいて0.11μeq/gであり、単一の試験に関する95%信頼区間は0.8±0.22μeq/g又は0.58〜1.02μeq/gである。試験にはばらつきはあるが、サンプル1は0.8μeq/gのVEGを有することができる。サンプル27、28、29&57は0.4μeq/gのVEGを有する。また、サンプルの調製にも若干のばらつきがある。サンプル調製及びVEG試験のばらつきを組み合わせると、低いVEG数値の説明がつく。
【0177】
サンプル49、72及び69は、非常に低いAA発生レベル(Ceast押出式可塑度計で295℃において5分後のAAが10ppm又はそれ以下)及び0.7μeq/gのビニル末端基を有する、失活剤を遅い段階で添加したリチウムアルミニウム触媒PETの例である。試験にはばらつきがあるが、これらのサンプルは0.8μeq/g又はそれ以上のVEGを有することができる。
【0178】
サンプル77は、中程度のAA発生レベル(Ceast押出式可塑度計で295℃において5分後のAAが>15ppmであって<22ppm)及びより高濃度のビニル末端基(>1.0μeq/g)を有する、失活剤を遅い段階で添加したリチウムアルミニウム触媒PETの例である。同一の触媒目標値及び同一条件を用いて製造すると、失活剤を含まないPET(サンプル56)は高いAA Gen(41ppm)及び低いVEG(0.2μeq/g)を有していた。失活剤を遅い段階で添加すると、AA Genが約55%低下し、VEGが7倍増加した。
【0179】
試験した特定のサンプルには、最適のP:M MRがある。これらのサンプルを製造した実験室において、最適値はP:M MR約0.5〜約0.8にあり、最も変化の少ない領域は一般に約0.6〜0.7にある。サンプル77についてはP:M MR 1を用いたので、最適レベルに近いP:M MRを用いる場合には、AA発生度は更に低下する可能性がある。最適P:M MRはまた、とりわけ触媒失活剤の添加方法に左右され得る。in situコンセントレートを生成するスリップストリーム(slip stream)アプローチでは、ここで使用するより直接的な添加アプローチよりもP:M MR最適値が高い可能性がある。
【0180】
比較例2
テレフタル酸及びエチレングリコールから製造した、概ねシス35%/トランス65%の1,4−シクロヘキサンジメタノール約1.5モル%を含むPETオリゴマーのサンプルを重縮合において用いた。このオリゴマーは更に、エステル化の間に発生した約1.2重量%のジエチレングリコールを含んでいる。このオリゴマーは、約95%の酸基転化率(酸基のNMR/滴定による)、約766g/モルのMn及び1478g/モルのMwを有する。
【0181】
重縮合を経る前に、粉砕オリゴマー(103g)を0.5Lの一口丸底フラスコ中に量り入れる。使用する触媒はチタンテトラブトキシドであり、これをフラスコに加える。316Lステンレス鋼パドル撹拌機及びガラスポリマーヘッドをフラスコに取り付けた。ポリマーヘッドをサイドアーム及びパージホースに取り付けた後、2回の窒素パージを完了させる。重合反応器を、以下の配列を実施するようにプログラムされたCAMILE(登録商標)自動化システムの制御下で運転する。
【0182】
【表9】

【0183】
Belmont金属の溶融浴をフラスコを取り囲むように上昇させ、CAMILE(登録商標)配列を実施する。所定のサンプルに使用する温度は、表IIIに示したものである。この配列において、「傾斜」は、特定段階の時間の間における真空、温度又は撹拌速度の直線的変化と定義する。攪拌システムは、段階4と5の間に自動的に較正される。段階6の終了後、真空レベルは140トルまで上昇し、その後、2分の燐添加段階(段階8)が始まる。Sb対照には、燐化合物、オリゴマー燐酸トリエステルのみを加える。撹拌機のトルクが目標値(所定の温度及びポリマーリグに関して予め設定)に達するような値となったら、仕上げ機段階(13)を終了させる。仕上げ機段階の時間を「IVまでの時間」と称する。配列又は実験室製造の終了後に、ポリマーを約15分間冷却し、ガラスフラスコから分離して取り出し、約10分間冷却し、次いで直ちに液体窒素中に入れる。ポリマーを、3mmのスクリーンを通るように極低温で粉砕する。
【0184】
粉砕ポリマーをアセトアルデヒド発生度(AA Gen)、インヘレン度粘度及びVEGについて分析する。データは表IIIに記載してある。同時に試験した製品PETペレット、CB−12の平均AA Genは25.5ppmであった。(これらはいずれも、本発明の実施例の主題ではなく;全て比較例である。)
【0185】
【表10】

【0186】
表IIIにおいて、Ti触媒を含むが失活剤を遅い段階で添加しなかったPETは全て、押出式可塑度計中で295℃において5分間溶融した場合に22ppmを超えるAA発生度を有する。最も高いVEGを有する2つのサンプル(C6&C9)は、低いTiレベル及び高い重縮合温度を有する。高い温度(300℃)はPETのより大きな熱崩壊をもたらし、ひいては低レベル(5ppm)のTiによってAAに転化され得るより多いVEGをもたらす。Tiレベルが高温においてより高い場合には(C4&C11)、VEGレベルが低下し、AA発生レベルが上昇する。
【0187】
実施例2
Cyasorb UV 3529の亜燐酸塩を製造するために、Cyasorb UV 3529モル当たり2モルの亜燐酸を用い、以下の手順に従って反応させた。塩は、同時係属の米国特許出願第10/392,575号(引用することによって全体を本明細書中に組み入れる)の記載に従って製造した。
【0188】
機械的撹拌機、熱電対及び加熱マントルを装着した5L丸底フラスコに、Cyasorb UV 3529 411.76g及びトルエン945gを加える。Cyasorb UV 3529は、前述のアミン式(12)においてR6=R7=R8=R9=R10=メチルであり;L1がヘキサメチレンであり;(R3)(R4)N−が共同でモルホリノ基を表す化合物にほぼ一致すると考えられるポリマーヒンダードアミン光安定剤である(式21も参照)。均一溶液が得られるまで、このスラリーを60℃に加熱し、撹拌する。イソプロピルアルコール(370g)を反応容器に加える。イソプロピルアルコール370gに溶解された亜燐酸115.46g(1.41モル)の溶液を、約30分にわたって急速撹拌しながら、添加漏斗によって小さい定常流で前記Cyasorb UV 3529溶液に添加する(高速で滴加)。添加完了時に、均一溶液が得られ、15分間撹拌する。
【0189】
急速撹拌されたヘプタン(4768g)約7Lを含む12L反応器中に、反応混合物を約5mL/分で約50分にわたってポンプ注入した。ヘプタン含有反応器への反応混合物の供給速度は、最終生成物の粒度に対してある程度の影響を及ぼす。遅い供給は、より微細な粉末を生じる傾向があり、より速い供給速度は、ほとんど凝塊形成しているように見える、より大きい粒子をもたらすであろう。これは、供給速度が速すぎる場合には塩がドラウン容器(drowning vessel)中で粘着性になる傾向によって相殺される必要がある。添加完了後、得られたスラリーを約60分間撹拌した。沈殿物を吸引濾過によって収集した。濾過ケークをヘプタン137gで2回洗浄し、次いで濾紙上で一晩、吸引乾燥させた。固体を金属皿に入れ、乾燥窒素をわずかに入れながら、真空オーブン中で50℃において一晩乾燥させた。乾燥生成物は約531.8g(理論値の101%)であった。乾燥塩の典型的な嵩密度は0.4〜0.6g/mLであった。
【0190】
Cyasorb UV 3529の亜燐酸塩を試験するために、ガラスフラスコ中の溶融ブレンドが、最終重縮合反応器の終わり近く又は最終重縮合反応器の後における添加剤の混合をほぼシミュレートする、ポリマー内の添加剤の均一分布を達成する。
【0191】
この例は、イソフタル酸約2.6モル%及びジエチレングリコール約4.2モル%で改質されたPET 100gを用いた。このPETは、生産規模のラインでTi 10ppm及びP 0ppmを用いて製造した。ペレットを、2mmのスクリーンを通るように粉砕した。文字「C」を前に付けた例は、比較例である。
【0192】
ポリエステル粉末を500mL丸底フラスコ中に量り入れる。粉末を真空オーブン中で120℃において完全真空下で一晩(約16時間)乾燥させる。デシケーター中でフラスコを約室温まで冷却(約1.5時間)した後、添加剤をフラスコ中に量り入れる。添加剤の目標レベルは、0.1重量%とした。ブレンドパラメーターは下記表中に記載してある。
【0193】
アミン塩とポリマーとを混合するために、撹拌機を装着したポリマーヘッドを取り付け、フラスコを窒素で2回パージする。CAMILE(登録商標)自動化システムは、下記表中に記載した以下の配列についてプログラムされている。
【0194】
【表11】

【0195】
中程度の窒素パージを常に用いた。段階2及び3の間には、撹拌機を手でゆっくりと回転させる。配列の終了後、ポリマーを冷却し、細断し、3mmのスクリーンを通るように粉砕する。粉砕ポリマーをアセトアルデヒド発生度、ビニル末端基濃度及びインヘレント粘度について分析する。結果を表IVに示す。表IV中、左から第5列は添加した添加剤の量(g)であり、添加剤はCyasorb UV 3529の亜燐酸塩である。
【0196】
【表12】

【0197】
押出式可塑度計中で295℃において5分間の溶融加工後におけるAA発生レベル(AA GEN 295/5)の低下%を以下のようにして計算した:1)添加剤を用いないランに関する平均AA Genを計算すると35.68ppmであり、2)所定のランについてのAA Genを35.68ppmで割り、3)商に100を掛け、4)積を100から引く。表Vから明らかなように、AA Gen 295/5の低下%は、Cyasorb UV 3529の亜燐酸塩(Cyasorb UV 3529−H3PO3)からの約55ppmのPについては、約75%であった。同時に試験した製品CB−12 PETペレットの平均AA Genは23.5ppmであり、本発明の例における8.5〜9.3ppmよりもはるかに高かった。Cyasorb UV 3529の亜燐酸塩と溶融ブレンドした後のPETのVEGレベルは、失活剤が存在しない場合の約2倍である。VEGのAAの転化は触媒作用をかなり受けるので、添加剤は触媒を少なくとも一部分失活させた。その結果として、AAに転化されるVEGは少なくなり、従ってVEGが蓄積し、発生するAAが少なくなる。平均して、インヘレント粘度の低下は、試験した添加剤レベルにおいては中程度であった(<0.05dL/g)。
【0198】
サンプル15&16は、失活剤を遅い段階で添加したチタン触媒PETであり、押出式可塑度計中で295℃において5分間溶融時のAA発生度が22ppmよりはるかに低く、ビニル末端基レベルが0.8μeq/gより高い。
【0199】
実施例3
この例は、実施例2に記載した溶融ブレンド手順、出発ポリマー、生成物ワークアップ及びCYASORB UV 3529の亜燐酸塩を用いる。更に、ポリエステルを極低温で粉砕後、残留AAサンプルは、試験まで凍結しておく。
【0200】
種々のレベルのCYASORB UV 3529の亜燐酸塩を用いて、一連のポリマーを製造した。結果は表Vに示してある。表Vにおいて、左から第5列はインヘレント粘度(IhV)(dL/g)である。
【0201】
【表13】

【0202】
表Vは、非常に低濃度の添加剤、即ち0.02重量%の添加剤目標値又はP 16ppmであっても、Cyasorb UV 3529の亜燐酸塩は残留アルデヒドと溶融時に発生するアセトアルヒドを共に低下させることができる(添加剤なしの場合に比較して>70%の低下)。非常に低濃度の添加剤であっても、VEG濃度は、添加剤なしの場合に比較して2倍より高い。
【0203】
サンプル18、19、20、21及び22は、失活剤を遅い段階で添加したチタン触媒PETであり、押出式可塑度計中で295℃において5分間溶融時のAA発生レベルは22ppmよりはるかに低く、ビニル末端基レベルは0.8μeq/g又はそれ以上である。
【0204】
実施例4
Cyasorb UV 3529の燐酸塩を生成するために、Cyasorb UV 3529モル当たり燐酸2モルを用い、以下の手順に従って反応させる。
【0205】
電磁撹拌子、熱電対及び加熱マントルを装着した500mL丸底フラスコに、Cyasorb UV 3529 41.18g及びトルエン94.51gを加える。Cyasorb UV 3529は、前述のアミン式(12)においてR6=R7=R8=R9=R10=メチルであり;L1がヘキサメチレンであり;(R3)(R4)N−が共同でモルホリノ基を表す化合物にほぼ一致すると考えられるポリマーヒンダードアミン光安定剤である(式21も参照)。均一溶液が得られるまで、このスラリーを60℃に加熱し、撹拌する。イソプロピルアルコール37.01gに溶解した燐酸16.23g(0.141モル)の溶液を、約100分にわたって急速撹拌しながら、添加漏斗によって小さい定常流で前記Cyasorb UV 3529溶液に添加する(中程度の速度で滴加)。添加が速すぎる場合には、固体の大きな塊が形成され、撹拌が困難になる。淡色の固体を含むスラリーが得られ、添加が完了したら15分間撹拌する。沈殿物は微細な白色粉末と白色粉末で被覆された粘着性の琥珀色小球(globule)との混合物であり、これを吸引濾過によって収集する。濾過ケークを、ヘプタンを40mLずつ用いて7回洗浄し、次いで2時間、濾紙上で吸引乾燥させる。固体を金属皿に入れ、乾燥窒素をわずかに入れながら、50℃において週末にかけて乾燥させる。乾燥生成物は約36.48gであった(理論値の66%;濾液中の微粉は単離しなかった)。
【0206】
別の一連のポリマーを、Cyasorb UV 3529の燐酸塩(CYASORB UV 3529−H3PO4)を用いて製造した。この例は、実施例3に記載した溶融ブレンド手順、出発ポリマー及び生成物ワークアップを用いる。サンプル23については、CYASORB UV 3529の亜燐酸塩は実施例2に記載したものである。結果は表VIに示してある。表VIにおいて、左から第6列はインヘレント粘度(IhV)(dL/g)を含む。
【0207】
【表14】

【0208】
燐酸塩を用いたランは、若干高いPレベルを有することがわかった。表Vによれば、Cyasorb UV 3529の亜燐酸塩を用いたレベルの分析は、AA生成能に対するレベルの影響が大きいことを示さなかった。表VIは、粉末中の残留AA及び溶融時に発生するAAのレベルが、Cyasorb UV 3529の燐酸塩とCyasorb UV 3529の亜燐酸塩の両者について非常に類似していたことを示している。同時に試験した製品C−12 PETの平均AA Genは22.6ppmであった。
【0209】
サンプル23&24は、失活剤を遅い段階で添加したチタン触媒PETであり、押出式可塑度計中で295℃で5分間の溶融時のAA発生レベルが22ppmよりはるかに低く、ビニル末端基レベルが0.8μeq/gより高い。サンプル25は、失活剤を遅い段階で添加したチタン触媒PETであり、押出式可塑度計中で295℃で5分間の溶融時のAA発生レベルが22ppmよりはるかに低く、ビニル末端基レベルが0.8μeq/gより低い。サンプル25はサンプル24の複製であるので、サンプル25の低いVEG数値は、サンプル調製のばらつきとVEG試験のばらつきの組合せで説明できる。
【0210】
実施例5
他の添加剤:N−メチルピペリジンの亜燐酸塩(NMP−H3PO3)、アンモニアのアリン酸塩(アンモニア−H3PO3)及びN−メチルピペリジンの燐酸塩(NMP−H3PO4)を用いた。
【0211】
N−メチルピペリジンの亜燐酸塩を生成するためには、N−メチルピペリジンモル当たり亜燐酸1モルを用い、以下の手順に従って反応させる。
【0212】
電磁撹拌子、熱電対及び加熱マントルを装着した500mL丸底フラスコに、1−メチル−ピペリジン7.0g(0.0704モル)及びトルエン94.5gを加える。均一な溶液が得られるまで、スラリーを60℃に加熱し、撹拌する。イソプロピルアルコール37gに溶解した亜燐酸5.8g(0.0704モル)の溶液を、約55分にわたって急速撹拌しながら、添加漏斗によって小さい定常流で前記1−メチル−ピペリジン溶液に添加する(高速で滴加)。急速撹拌されたヘプタン約700mL(476.8g)を含む、機械的撹拌機を装着した2L反応器中に、反応混合物を約5mL/分で約40分にわたってポンプ注入した。添加完了後、得られた溶液を約50分間撹拌した。吸引濾過を開始し、その後、生成物が若干の微細白色固体を含む黄色油であることが確かめられた時に停止した。真空ポンプ及び55℃の水浴を用いて溶媒を回転蒸発させた。濾紙及びフラスコをヘプタンですすいだ。溶媒をロータリーエバポレーター上で除去した。油を一晩乾燥させ、次いで乾燥窒素をわずかに入れながら約50℃において約5時間乾燥させた。生成物は7.5gであった(理論値12.75g)。
【0213】
アンモニアの亜燐酸塩を生成するために、アンモニアモル当たり亜燐酸1モルを用い、以下の手順に従って反応させる。
【0214】
電磁撹拌子、熱電対及び加熱マントルを装着した500mL丸底フラスコに、28〜30%水酸化アンモニウム8.5g及びトルエン94.5gを加える。均一な溶液が得られるまで、スラリーを60℃に加熱し、撹拌する。イソプロピルアルコール37.1gに溶解した亜燐酸5.8g(0.0704モル)の溶液を、約25分にわたって急速撹拌しながら、添加漏斗によって小さい定常流で前記水酸化アンモニウム溶液に添加する(高速で滴加)。添加が完了したらこの溶液を15分間撹拌する。急速撹拌されたヘプタン約700mL(476.8g)を含む、機械的撹拌機を装着した2L反応器中に、反応混合物を約5mL/分で約35分にわたってポンプ注入した。添加完了後、得られた溶液を約60分間撹拌した。溶媒を、真空ポンプ及び55℃の水浴を用いて回転蒸発させた。溶媒を全て除去した後に、白色半固体が肉眼で見えた。フラスコをヘプタン、イソプロピルアルコール及びMillipore水ですすいだ。溶媒をロータリーエバポレーター上で除去した。白色固体を、乾燥窒素をわずかに入れながら50℃において一晩乾燥させる。生成物は7.3gであった。
【0215】
N−メチルピペリジンの燐酸塩を生成するためには、N−メチルピペリジンモル当たり燐酸1モルを用い、以下の手順に従って反応させる。
【0216】
電磁撹拌子、熱電対及び加熱マントルを装着した500mL丸底フラスコに、1−メチル−ピペリジン7.0g及びトルエン94.5gを加える。均一な溶液が得られるまで、スラリーを60℃に加熱し、撹拌する。イソプロピルアルコール37gに溶解した85%燐酸8.1g(0.0704モル)の溶液を、約50分にわたって急速撹拌しながら、添加漏斗によって小さい定常流で前記1−メチル−ピペリジン溶液に添加する(高速で滴加)。固体の白色リングを含む黄色液体が得られ、添加が完了したらこれを15分間撹拌する。フラスコから粘着性固体を掻き落とし、沈殿物を吸引濾過によって収集した。濾過ケークを、ヘプタンを約40mLずつ用いて8回洗浄し、次いで濾紙上で3時間吸引乾燥させる。固体を金属皿に入れ、乾燥窒素をわずかに入れながら、50℃において一晩と翌日のほとんどにわたって乾燥させる。生成物は12.1gであった。
【0217】
この例は、例3に記載した溶融ブレンド手順、出発ポリマー及び生成物ワークアップを用いる。
【0218】
【表15】

【0219】
サンプル26、27、28、29、30及び31は、失活剤を遅い段階で添加したチタン触媒PETであり、押出式可塑度計中で295℃において5分間の溶融時に測定した場合のAA発生量が22ppm未満であり、ビニル末端基レベルが0.8μeq/g又はそれ以上である。
【0220】
表VIIに示した塩のうち、より小さく、より簡単な有機塩基を有するものは、Cyasorb UV 3529−H3PO3塩に比べてAA発生の低下が約1/2であった。より簡単な塩はまた、はるかに安価である。一部の用途及び状況では、AA発生の低下が他に比べて少なくてすむ場合があり、簡単な塩はこれらの場合において経済的な溶液を提供するであろう。同時に試験した製品CB−12 PETペレットの平均AA Genは22.0ppmであった。
【0221】
更に、アミン塩ではなく、アミン添加剤自体の使用について詳細に調べるために、1つのランを行った。結果を表VII中に例C20として示してある。Cyasorb UV 3529は残留AAをそれほど低下させないが、AA発生レベルはわずかに低下した(10〜15%)。AA Genは22ppmより大きく、VEGレベルは0.8μeq/g未満である。アミン単独は、アセトアルデヒドの低下には、燐含有酸を用いて生成したアミン塩に比べて、はるかに有効でない。
【0222】
塩のアミン部分は、表VIII中の例C20に示すようにある程度のAAを捕捉することができるが、塩が残留AA及びAA Genを低下させる有力なメカニズムは、理論に拘束するものではないが、触媒の失活であると考えられる。
【0223】
実施例6
有機塩基としてのアミノ酸の選択は、アミノ酸のカルボン酸基をPET鎖中に反応させる可能性を提示する。
【0224】
L−ヒスチジンの燐酸塩を生成するために、L−ヒスチジンモル当たり燐酸2モルを用い、以下の手順に従って反応させる。
【0225】
電磁撹拌子、熱電対及び加熱マントルを装着した500mL丸底フラスコに、L−ヒスチジン10.94g及びMillipore水143.97gを加える。均一な溶液が得られるまで、スラリーを60℃に加熱し、撹拌する。Millipore水37gに溶解した燐酸16.397gの溶液を、約35分にわたって急速撹拌しながら、添加漏斗によって小さい定常流で前記L−ヒスチジン溶液に添加する(高速で滴加)。添加が完了したら、この溶液を約35分間撹拌する。透明な溶液を500mL一口丸底フラスコに移した。水性溶媒を凍結乾燥によって除去した。液体は、ドライアイス/アセトン浴中で手動で回転しながら、凍結させた。凍結乾燥機を3日4時間17分用いた。白色固体は24.829gであった(理論値24.722g)。XRFによると、白色固体中のPのwt/wt%は17.17%であった(理論値17.6%)。
【0226】
L−アラニンの燐酸塩を生成するために、L−アラニンモル当たり燐酸1モルを用い、以下の手順に従って反応させる。
【0227】
電磁撹拌子、熱電対及び加熱マントルを装着した500mL丸底フラスコに、L−アラニン6.275g及びMillipore水94.5gを加える。均一な溶液が得られるまで、スラリーを60℃に加熱し、撹拌した。Millipore水37.01gに溶解した燐酸8.201gの溶液を、約17分にわたって急速撹拌しながら、添加漏斗によって小さい定常流で前記L−アラニン溶液に添加する(高速で滴加)。添加が完了したら、この溶液を少なくとも15分間撹拌する。透明な溶液を500mL一口丸底フラスコに移した。水性溶媒を凍結乾燥によって除去した。液体は、ドライアイス/アセトン浴中で手動で回転しながら、凍結させた。凍結乾燥機を1日19時間15分用いた。透明な粘稠油は14.808gであった(理論値13.17g)。XRFによると、透明な油中のPのwt/wt%は11.92%であった(理論値16.6%)。
【0228】
別の一連のポリマーを、L−ヒスチジンの燐酸塩、L−アラニンの燐酸塩(共にこの例中で前述した)、及び実施例4に記載したCYASORB UV 3529の燐酸塩(Cyasorb UV 3529−H3PO4)を用いて製造した。これらの例は、実施例3に記載した溶融ブレンド手順、出発ポリマー及び生成物ワークアップを用いる。
【0229】
【表16】

【0230】
サンプル32、33及び34は、失活剤を遅い段階で添加したチタン触媒PETであり、押出機可塑度計中で295℃において5分間溶融時のAA発生レベルは22ppmよりもはるかに低く、ビニル末端基レベルは0.8μeq/g又はそれ以上である。
【0231】
表VIIIは、燐酸の2つのアミノ酸塩が残留AAを79〜83%、溶融時のAA発生を65〜66%低下させることを示している。燐酸のCYASORB UV 3529塩は残留AAを約87%、溶融時のAA発生を約75%低下させる。AA発生の低下%は、アミノ酸塩の場合(P約64ppm)にはCyasorb UV 3529塩の場合(P約90ppm)よりも約10%低いが、アミノ酸はより安価であり、共重合性であり(予想される抽出率がより低い)、水溶性である(塩の製造の間にVOCが発生しない)。L−アラニンの燐酸塩は油であり、このため、L−ヒスチジンの燐酸塩のような固体の塩よりも添加がより経済的であることができる。
【0232】
本発明の実施態様を例示及び説明したが、これらの実施態様は本発明の全ての可能な形態を例示及び説明するものではない。むしろ、明細書中の用語は限定ではなく説明の用語であり、本発明の精神及び範囲から逸脱しなければ、種々の変更が可能であることがわかる。
【0233】
比較例3
オリゴマー、触媒、手順及び重合配列は比較例2に記載したものであり、比較例2においてプレポリマー段階の間にSb対照にのみ添加したオリゴマー燐酸トリエステルを、ここではプレポリマー段階の間にTi触媒ランに添加する。段階6の終了後、真空レベルを140トルまで上昇させ、次いで2分の燐添加段階(段階8)が始まる。残留又は遊離AAサンプルは、実施例3に記載したようにして処理する。
【0234】
【表17】

【0235】
失活剤を早い段階で、即ち仕上げ機段階の前に添加する場合、仕上げ機時間は、失活剤を添加しない場合の仕上げ機時間に比較して大幅に増加する。サンプルC23は、押出式可塑度計中で295℃において5分間溶融時のAA発生レベルが22ppm未満であり且つビニル末端基レベルが0.8μeq/g又はそれ以上であるチタン触媒PETであるが、非常に長い仕上げ機段階はマイナスである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)1種又はそれ以上の重縮合触媒の存在下にポリエステルポリマーを重縮合させ;
b)触媒失活剤化合物を含む少なくとも1種の添加剤化合物を、前記ポリエステルポリマーが少なくとも0.45dl/gのIt.V.に達した後に、前記ポリエステルポリマーに添加し;そして
c)前記ポリエステルポリマーのIt.V.を少なくとも0.72dl/gのIt.V.まで更に増加させ、それによって少なくとも0.8μeq/gのビニル末端濃度及び22ppm未満のAA発生度を有するポリエステルポリマーを生成せしめる
ことを含んでなるポリエステルポリマーの製造方法。
【請求項2】
前記触媒失活剤化合物の添加を、前記ポリマーが少なくとも0.60dl/gのIt.V.に達した後に、行う請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記触媒失活剤化合物の添加を、前記ポリマーが少なくとも0.68dl/gのIt.V.に達した後に、行う請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記触媒失活剤化合物の添加を、前記ポリマーが少なくとも0.72dl/gのIt.V.に達した後に、行う請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリエステルポリマーから成形物を得る請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリエステルポリマーがメルトであり、それを固化させてポリエステルポリマー粒子を形成する請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリエステルポリマーをカッターによって切断し、固化させて、少なくとも1つのポリエステルポリマー粒子を形成する請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリエステルポリマー粒子から成形物を得る請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記成形物がボトルプレフォームである請求項5、7及び8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリエステルポリマーがポリエチレンテレフタレートポリエステルを含む請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリエチレンテレフタレートポリエステルが、ポリエステル中の総ジオール残基100モル%に基づき10モル%以下の、エチレングリコールの残基でないジオール残基及びポリエステル中の総二酸残基100モル%に基づき10モル%以下の、テレフタル酸の残基でない二酸残基を含む請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記重縮合触媒が少なくとも1種の触媒活性金属化合物を含み、前記金属がチタン、アンチモン、アルミニウム、アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選ばれる請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記重縮合触媒がチタンアルコキシドを含み、前記チタンアルコキシドが、ポリエステルポリマーの重量に基づき、チタン3〜35ppmとなるような量で存在する請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記重縮合触媒が三酢酸アンチモン又は三酸化アンチモンを含み、前記三酢酸アンチモン又は三酸化アンチモンが、ポリエステルポリマーの重量に基づき、チタン20〜300ppmとなるような量で存在する請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記重縮合触媒が、式:
Al[OR]a[OR’]b[OR”]c[R”’]d
[式中、R、R’、R”は独立してアルキル基、アリール基、アシル基又は水素であり、R”’はアニオン性基であり、a、b、c、dは独立して0又は正の整数であり、a+b+c+dは3以下である]
で表される少なくとも1種のアルミニウム化合物を含む請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記重縮合触媒が、アルミニウムのカルボン酸塩、置換水酸化アルミニウム、アルミニウムアルコラート又はアルミニウムキレートを含む少なくとも1種のアルミニウム化合物を含み、アルミニウムアルコラートのアルコキシ基がキレート化剤で部分置換又は全置換されている請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記重縮合触媒が、カルボン酸アルミニウム、塩基性カルボン酸アルミニウム、アルミニウムアルコキシド又はそれらの組合せを含む少なくとも1種のアルミニウム化合物を含む請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記アルミニウム化合物が、ポリエステルポリマーの重量を基準としてアルミニウム重量に基づき、2〜150ppmの範囲の量で存在する請求項15、16及び17に記載の方法。
【請求項19】
前記触媒失活剤が、ポリエステルポリマーの重量を基準として燐重量に基づき、3〜250ppmの範囲の量の燐原子を含む請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記燐原子を、燐酸、亜燐酸、ポリ燐酸、ピロリン酸、カルボキシホスホン酸、ホスホン酸誘導体又はそれらの塩及びエステル及び誘導体のいずれから得られる請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記燐原子が酸性燐化合物を構成する請求項20に記載の方法。
【請求項22】
少なくとも0.72dl/gのIt.V.、少なくとも0.8μeq/gのビニル末端濃度及び20ppm未満のAA発生度を有する、アルキレンアリーレート単位を含むポリエステルポリマーを含んでなるポリエステルポリマー組成物。
【請求項23】
前記ポリマーが18ppm又はそれ以下のAA発生度を有する請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記ポリマーが13ppm又はそれ以下のAA発生度を有する請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記ポリマーが10ppm又はそれ以下のAA発生度を有する請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記ポリマーが8ppm又はそれ以下のAA発生度を有する請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記ポリマーが1.0μeq/g又はそれ以上のビニル末端濃度を有する請求項23に記載の組成物。
【請求項28】
前記ポリマーが2.0μeq/g又はそれ以上のビニル末端濃度を有する請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記ポリマーが5μeq/g又はそれ以上のビニル末端濃度を有する請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記ポリマーが、溶融相重合プロセスにおいて得られた、少なくとも0.76dL/gのIt.V.を有する請求項23に記載の組成物。
【請求項31】
前記ポリマーが、溶融相重合プロセスにおいて得られた、少なくとも0.80dL/gのIt.V.を有する請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
前記ポリマーが、溶融相重合プロセスにおいて得られた、少なくとも0.82dL/gのIt.V.を有する請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
前記ポリマーがエチレンテレフタレート、エチレンナフタレート又はトリメチレンテレフタレートを含む反復単位を有する請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
前記組成物が、前記ポリエステルポリマーの重量に基づき、2〜150ppmの範囲の量のアルミニウム原子を更に含む請求項23に記載の組成物。
【請求項35】
前記組成物が、周期表の第IA族及び第IIA族から選ばれた少なくとも1種のアルカリ金属又はアルカリ土類金属を更に含み、アルカリ金属又はアルカリ土類金属対アルミニウムのモル比が0.1:1〜75:1の範囲である請求項24に記載の組成物。
【請求項36】
前記アルミニウム原子が、少なくとも1つの有機置換基を有するアルミニウム化合物に由来する請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
少なくとも1つの有機置換基を有する前記アルミニウム化合物が式:
Al[OR]a[OR’]b[OR”]c[R”’]d
[式中、R、R’、R”は独立してアルキル基、アリール基、アシル基又は水素であり、R”’はアニオン性基であり、a、b、c、dは独立して0又は正の整数であり、a+b+c+dは3以下である]
で表される請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
前記アルミニウム化合物がアルミニウムのカルボン酸塩、置換水酸化アルミニウム、アルミニウムアルコラート、アルミニウムキレートを含み、アルミニウムアルコラートのアルコキシ基がキレート化剤で部分置換又は全置換されている請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
前記アルミニウム化合物がカルボン酸アルミニウム、塩基性カルボン酸アルミニウム、アルミニウムアルコキシド又はそれらの組合せを含む請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
前記アルミニウム原子が、1種又はそれ以上のポリエステル形成性成分と反応性の担体又は希釈剤中に分散又は溶解されたアルミニウム化合物から得られるか、又はポリエステルポリマーコンセントレート内に含まれる請求項23に記載の組成物。
【請求項41】
前記組成物が、ポリエステルポリマーの重量に基づき、3〜35ppmの範囲の量のチタン原子を更に含む請求項23に記載の組成物。
【請求項42】
前記組成物が燐原子を更に含む請求項23に記載の組成物。
【請求項43】
前記燐原子が燐化合物触媒失活剤から得られる請求項42に記載の組成物。
【請求項44】
前記燐原子が燐酸、亜燐酸、ポリ燐酸、ピロリン酸、カルボキシホスホン酸、ホスホン酸誘導体又はそれらの塩及びエステル及び誘導体のいずれから得られる請求項43に記載の組成物。
【請求項45】
前記燐原子が燐酸又はそのエステル誘導体から得られる請求項43に記載の組成物。
【請求項46】
燐原子を更に含み、燐P対(アルミニウム、アルカリ土類金属及びアルカリ金属の)累計総モルMの比が0.1〜3の範囲である請求項23に記載の組成物。
【請求項47】
請求項23〜46のいずれか1項に記載の組成物から得られるボトルプレフォーム。
【請求項48】
アルキレンアリーレート反復単位を含むポリエステルポリマーを含んでなり、前記ポリマーが少なくとも0.72dl/gのIt.V.、少なくとも0.8μeq/gのビニル末端濃度及び10ppm又はそれ以下のプレフォームAAを有するポリエステルポリマーを含んでなるポリエステルポリマー組成物。
【請求項49】
前記ポリマーが8ppm又はそれ以下のアセトアルデヒド発生度を有する請求項48に記載の組成物。
【請求項50】
前記ポリマーが6ppm又はそれ以下のアセトアルデヒド発生度を有する請求項49に記載の組成物。
【請求項51】
前記ポリマーが5ppm又はそれ以下のアセトアルデヒド発生度を有する請求項50に記載の組成物。
【請求項52】
前記ポリマーが4ppm又はそれ以下のアセトアルデヒド発生度を有する請求項51に記載の組成物。
【請求項53】
前記ポリマーが1.0μeq/g又はそれ以上のビニル末端濃度を有する請求項49に記載の組成物。
【請求項54】
前記ポリマーが2.0μeq/g又はそれ以上のビニル末端濃度を有する請求項53に記載の組成物。
【請求項55】
前記ポリマーが5μeq/g又はそれ以上のビニル末端濃度を有する請求項54に記載の組成物。
【請求項56】
前記ポリマーが、溶融相重合プロセスにおいて得られた、少なくとも0.76dL/gのIt.V.を有する請求項49に記載の組成物。
【請求項57】
前記ポリマーが、溶融相重合プロセスにおいて得られた、少なくとも0.80dL/gのIt.V.を有する請求項56に記載の組成物。
【請求項58】
前記ポリマーが、溶融相重合プロセスにおいて得られた、少なくとも0.82dL/gのIt.V.を有する請求項57に記載の組成物。
【請求項59】
前記ポリマーが、エチレンテレフタレート、エチレンナフタレート又はトリメチレンテレフタレートからなる反復単位を有する請求項58に記載の組成物。
【請求項60】
前記組成物が、前記ポリエステルポリマーの重量に基づき、3〜150ppmの範囲の量のアルミニウム原子を更に含む請求項59に記載の組成物。
【請求項61】
前記組成物が、周期表の第IA族及び第IIA族から選ばれた少なくとも1種のアルカリ金属又はアルカリ土類金属を更に含み、アルカリ金属又はアルカリ土類金属対アルミニウムのモル比が0.1:1〜75:1の範囲である請求項48に記載の組成物。
【請求項62】
前記アルミニウム原子が少なくとも1つの有機置換基を有するアルミニウム化合物に由来する請求項61に記載の組成物。
【請求項63】
少なくとも1つの有機置換基を有する前記アルミニウム化合物が式:
Al[OR]a[OR’]b[OR”]c[R”’]d
[式中、R、R’、R”は独立してアルキル基、アリール基、アシル基又は水素であり、R”’はアニオン性基であり、a、b、c、dは独立して0又は正の整数であり、a+b+c+dは3以下である]
で表される請求項62に記載の組成物。
【請求項64】
前記アルミニウム化合物が、アルミニウムのカルボン酸塩、置換水酸化アルミニウム、アルミニウムアルコラート、アルミニウムキレートを含み、アルミニウムアルコラートのアルコキシ基がキレート化剤で部分置換又は全置換されている請求項63に記載の組成物。
【請求項65】
前記アルミニウム化合物がカルボン酸アルミニウム、塩基性カルボン酸アルミニウム、アルミニウムアルコキシド又はそれらの組合せを含む請求項63に記載の組成物。
【請求項66】
前記アルミニウム原子が、1種又はそれ以上のポリエステル形成性成分と反応性の担体又は希釈剤中に分散又は溶解されたアルミニウム化合物から得られるか、又はポリエステルポリマーコンセントレート内に含まれる請求項48に記載の組成物。
【請求項67】
前記組成物が、ポリエステルポリマーの重量に基づき、3〜35ppmの範囲の量のチタン原子を更に含む請求項48に記載の組成物。
【請求項68】
前記組成物が燐原子を更に含む請求項48に記載の組成物。
【請求項69】
前記燐原子が燐化合物触媒失活剤から得られる請求項68に記載の組成物。
【請求項70】
前記燐原子が燐酸、亜燐酸、ポリ燐酸、ピロリン酸、カルボキシホスホン酸、ホスホン酸誘導体又はそれらの塩及びエステル及び誘導体のいずれから得られる請求項68に記載の組成物。
【請求項71】
前記燐原子が燐酸又はそのエステル誘導体から得られる請求項68に記載の組成物。
【請求項72】
燐原子を更に含み、燐P対(アルミニウム、アルカリ土類金属及びアルカリ金属の)累計総モルMの比が、0.1〜3の範囲である請求項48に記載の組成物。
【請求項73】
請求項48〜72のいずれか1項に記載の組成物から得られるボトルプレフォーム。
【請求項74】
アルキレンアリーレート反復単位及びポリマーの重量に基づき少なくとも20ppmの量の燐原子を含むポリエステルポリマーを含んでなる完成ポリエステルポリマー粒子であって、前記ポリマーが少なくとも0.7dl/gのIt.V.、少なくとも0.8μeq/gのビニル末端濃度、22ppm未満のAA発生度及び少なくとも10%の結晶化度を有し、個々の粒子の重量が0.01〜10gの範囲である完成ポリエステルポリマー粒子。
【請求項75】
輸送コンテナ中に含まれる請求項74に記載の粒子。
【請求項76】
前記粒子が固相重合されていない請求項74に記載の粒子。
【請求項77】
アルキレンアリーレート反復単位及び、ポリマーの重量に基づき、少なくとも20ppmの量の燐を含むポリエステルポリマーを含み、前記ポリマーは、少なくとも0.7dL/gのIt.V.、少なくとも0.8μeq/gのビニル末端濃度、22ppm未満のAA発生度及び少なくとも10%の結晶化度を有し、前記の個々の粒子の重量は0.01〜10gの範囲にある、完成ポリエステルポリマー粒子を溶融加工ゾーンに直接的又は間接的に供給し、前記粒子を溶融させてポリエステルメルトを形成し、そして前記ポリエステルメルトから成形物を形成することによって得られる成形物。
【請求項78】
前記成形物がボトルプレフォームである請求項77に記載の成形物。
【請求項79】
前記ボトルプレフォームが有機アセトアルデヒド捕捉剤を添加せずに製造された請求項78に記載の成形物。
【請求項80】
前記重縮合触媒が少なくとも1種のアルカリ土類金属又はアルカリ金属及び少なくとも1種のアルミニウム化合物を含み、前記アルカリ土類金属又はアルカリ金属が、アルカリ土類金属又はアルカリ金属対アルミニウムのモル比が0.1〜約75の範囲となるような量で、存在する請求項12に記載の方法。
【請求項81】
前記重縮合触媒が少なくとも1種のアルカリ土類金属又はアルカリ金属及び少なくとも1種のアルミニウム化合物を含み、前記アルカリ土類金属又はアルカリ金属が、アルカリ土類金属又はアルカリ金属対アルミニウムのモル比が0.5〜約10の範囲となるような量で、存在する請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記重縮合触媒がアルミニウム及び少なくとも1種のアルカリ金属又はアルカリ土類金属を含み、且つ前記触媒失活剤が燐原子を含み、燐のモル対(アルミニウム、アルカリ土類金属及びアルカリ金属の)累計総モルのモル比が約0.1〜約3の範囲となるような量で存在する請求項1に記載の方法。
【請求項83】
燐のモル対(アルミニウム、アルカリ土類金属及びアルカリ金属の)累計総モルのモル比が約0.5〜約1.5の範囲である請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記重縮合触媒がチタンを含み、且つ前記触媒失活剤が燐原子を含み、燐原子対チタン原子のモル比が少なくとも0.015〜1となるような量で存在する請求項1に記載の方法。
【請求項85】
燐原子対チタン原子のモル比が少なくとも0.7〜1である請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記燐原子が燐酸、亜燐酸、ポリ燐酸、ピロリン酸、カルボキシホスホン酸、ホスホン酸誘導体又はそれらの塩及びエステル及び誘導体のいずれから得られる請求項82及び84のいずれかに記載の方法。
【請求項87】
前記燐原子が酸性燐化合物を構成する請求項82及び84のいずれか1項に記載の方法。
【請求項88】
アルカリ金属又はアルカリ土類金属対アルミニウムのモル比が0.5:1〜10:1の範囲である請求項35に記載の組成物。
【請求項89】
前記組成物が燐原子を更に含む請求項60、61及び67に記載の組成物。

【公表番号】特表2010−518195(P2010−518195A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−548262(P2009−548262)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【国際出願番号】PCT/US2008/000560
【国際公開番号】WO2008/097417
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(594055158)イーストマン ケミカル カンパニー (391)
【Fターム(参考)】