説明

低アレルゲン焼き菓子及びその製造方法

【課題】5大アレルゲンのうち卵、乳、小麦粉およびこれら由来の成分を全く使用せず食感、外観の優れたスポンジケーキ、ホットケーキ、クッキー、ビスケット、クラッカー等の焼き菓子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】卵、乳、小麦粉およびこれら由来の成分を含まず、米粉および米粉100質量部に対し30〜180質量部の糖類、60〜390質量部の豆乳、2〜90質量部の起泡性油脂を含む生地を焼成して得られる焼き菓子およびその製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
卵、乳、小麦粉およびこれら由来の成分を含まず、米粉、糖類、豆乳、起泡性油脂を含む生地を焼成して得られる焼き菓子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食物アレルギーの原因物質として、卵、牛乳、落花生、そば及び小麦粉の5大アレルゲンが知られている。
卵、牛乳、小麦粉は、スポンジケーキ、ホットケーキ、クッキー、ビスケット、クラッカー等の焼き菓子の原料として一般に使用されているので食物アレルギー患者のためにこれらの原料を代替する試みがなされている。
例えば、小麦粉の代替として米粉を使用することが知られている(例えば特許文献1参照)。
しかし、小麦粉、乳成分及び卵成分を全く使用せずに満足な外観や食感を有する焼き菓子は得られていなかった。
【0003】
【特許文献1】特開2003−199497号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、5大アレルゲンのうち卵、乳、小麦粉およびこれら由来の成分を全く使用せず食感、外観の優れた焼き菓子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、卵、乳、小麦粉およびこれら由来の成分を使用することなく、これらの代替として米粉、糖類、豆乳、起泡性油脂を含む生地を焼成することにより食感、外観の優れた焼き菓子を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
従って、本発明は、卵、乳、小麦粉およびこれら由来の成分を含まず、米粉および米粉100質量部に対し30〜180質量部の糖類、60〜390質量部の豆乳、2〜90質量部の起泡性油脂を含む生地を焼成して得られる焼き菓子である。
本発明はさらに、卵、乳、小麦粉およびこれら由来の成分を含まず、米粉および米粉100質量部に対し30〜180質量部の糖類、60〜390質量部の豆乳、2〜90質量部の起泡性油脂を含む生地を焼成することを特徴とする焼き菓子の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
卵、乳、小麦粉およびこれら由来の成分を全く使用することなく、これらの代替として米粉、糖類、豆乳、起泡性油脂を含む生地を焼成することにより食感、外観の優れた焼き菓子を製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の焼き菓子とは、生地をオーブン等で焼成したものをいい、例えば、スポンジケーキ、ホットケーキ、クッキー、ビスケット、クラッカー、ウエハース等が挙げられる。
【0008】
本発明の焼き菓子に使用する生地には、卵、牛乳、落花生、そば及び小麦粉の5大アレルゲンのうち、卵、牛乳、小麦粉及びこれら由来の成分を全く使用せず、これらの代替として米粉、糖類、豆乳、起泡性油脂を使用する。
【0009】
本発明で使用しない卵および卵由来の成分とは、全卵、卵白、卵黄及びこれら由来のオボアルブミン、コンアルブミン等の蛋白質をいう。
本発明で使用しない乳および乳由来の成分とは牛乳、脱脂粉乳、全脂粉、練乳、ホエー、ホエーパウダー、カゼイン、カゼインナトリウム、ラクトアルブミン、等の乳の蛋白質をいう。
また、これらを使用したクリーム、バター、バターオイル、チーズ等の乳製品も含まれる。
本発明で使用しない小麦粉および小麦粉由来の成分とは、小麦粉、湿熱処理小麦粉、小麦澱粉、グリアジン、グルテニン等の小麦蛋白をいう。
【0010】
本発明で使用する米粉は特に限定されず、例えばもち米、うるち米をロール挽き、水挽きなどで製粉したものを使用できる。
具体的にはもち粉、上新粉、求肥粉、上用粉等が挙げられこれらを組み合わせて使用することもできる。
また、蛋白質分解酵素、澱粉分解酵素等で低アレルゲン化処理後製粉したものも使用できる。
【0011】
本発明で使用する糖類は乳由来以外の、蔗糖、黒糖、果糖、オリゴ糖、転化糖、ぶどう糖等が挙げられる。
甘味と焼色のバランスがよく好ましく使用できるのは蔗糖であり、市販のグラニュー糖や三温糖が使用できる。
本発明で使用する糖類は、米粉100質量部に対し30〜180質量部である。
30質量部未満では、食感が硬く口溶けが悪い傾向となり好ましくない。
180質量部を超えると甘くべたつく傾向となり好ましくない。
好ましくは、50〜150質量部である。
【0012】
本発明で使用する豆乳は、大豆の搾汁であれば製造方法は特に限定されず市販品も使用することができる。
一般的には、一晩水につけた大豆を石臼やグラインダー等で「水引き」してさらに水を加えて加熱後搾汁して製造する。
風味の点で加熱した後、搾汁したものが好ましい。
本発明で使用する豆乳は、米粉100質量部に対し60〜390質量部である。
60質量部未満では、食感が硬く口溶けが悪い傾向となり好ましくない。
390質量部を超えると形状が不安定で、ネチャツク傾向となり好ましくない。
好ましくは、90〜350質量部である。
【0013】
本発明で使用する起泡性油脂とは乳化剤で油脂を水中油型(O/W)エマルジョン型に保持したものいい、油脂としては菜種油、大豆油、綿実油、コーン油、ひまわり油、紅花油、パーム油、落花生油、オリーブ油、牛脂、豚脂、魚油等の動植物性油脂を、乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等が使用されるが、使用する油脂は、低アレルゲンのものが好ましい。
本発明で使用する起泡性油脂は、米粉100質量部に対し2〜90質量部である。
2質量部未満では、食感が硬く口溶けが悪い傾向となり好ましくない。
90質量部を超えるとネチャツキが多く、異味を感じる傾向となり好ましくない。
好ましくは、5〜80質量部である。
【0014】
本発明の焼き菓子には、必要に応じて小麦粉を除く穀粉、小麦澱粉を除く澱粉、膨張剤、香料、ココア、増粘剤、果実類、ココナッツミルク、レーズン、食塩、香辛料、着色料、調味料、フレーバー、油脂類、乳化剤等を使用することができる。
【0015】
本発明の生地は、起泡性油脂、砂糖及び豆乳を合わせて攪拌し泡立てた後、米粉及びその他の粉類を加えさらに攪拌して調製する。
米粉及びその他の粉類を加えるときに、好み応じて果実類、着色料、香料等を加えることができる。
前記生地を、目的とする製品に応じて焼型に流し込み又は天板に搾り出す等して焼成し製品とする。
前記生地は豆乳の使用量若しくは加水により生地粘度を調整することによりスポンジケーキ、ホットケーキ、パウンドケーキ、クッキー等の製品に仕上げることができる。
前記製品の製造工程は従来公知の方法が使用でき、例えばクッキーの場合ではスポンジやホットケーキよりも生地粘度を上げて、天板上に絞り焼成する。

【実施例】
【0016】
以下本発明を実施例により具体的に説明する。
[実施例1]
[スポンジケーキ]
米粉100質量部、砂糖90質量部、豆乳200質量部、起泡性油脂10質量部をホイッパーで高速2分間ミキシング後米粉100質量部を加えさらにホイッパーで高速3分間ミキシングし生地を得た。
前記生地360gをスポンジ型に流し込み180℃で30分間焼成しスポンジケーキを得た。
【0017】
[実施例2〜7、比較例1〜6]
配合を表1のとおり変更した以外は実施例1と同様にしてスポンジケーキを得た。
【表1】

【0018】
前記スポンジケーキをパネラー10名により以下の基準で評価した。
【0019】
外観
5点・・・ボリュームがあり非常によい
4点・・・ボリュームがあり良い
3点・・・ボリュームが普通
2点・・・ボリュームがやや劣る
1点・・・ボリュームが非常に劣る弱い

食感
5点・・・ソフトで口溶け良い
4点・・・ややソフトで口溶け良い
3点・・・普通
2点・・・やや硬く団子状になり、口溶け悪い(ややネチャツキがあり口溶けが悪い)
1点・・・硬く団子状になり、口溶け悪い(ネチャツキが多く、口溶け悪い)
【0020】
得られた評価結果(平均値)を表2に示す。
【表2】

【0021】
表2のとおり、本発明の生地を焼成して得たスポンジケーキはボリュームが十分で外観が非常に良好であり食感はソフトで口溶け良く非常に良い食感であった。
【0022】
[実施例8]
[ホットケーキ]
米粉100に対して砂糖50、豆乳190、起泡性油脂12を上記のスポンジと同様の製法で生地を作り、180℃の鉄板の上に生地を円形状に流して片面3分(両面で6分)焼成し、ホットケーキを得た。
【0023】
[実施例9〜13 比較例7〜12]
配合を表3のとおり変更した以外は実施例8と同様にしてホットケーキを得た。
【表3】

【0024】
前記ホットケーキをパネラー10名により以下の基準で評価した。
【0025】
外観
5点・・・ボリュームがあり非常によい
4点・・・ボリュームがあり良い
3点・・・ボリュームが普通
2点・・・ボリュームがやや劣る
1点・・・ボリュームが非常に劣る弱い

食感
5点・・・ソフトで口溶け良い
4点・・・ややソフトで口溶け良い
3点・・・普通
2点・・・やや硬く団子状になり、口溶け悪い(ややネチャツキがあり口溶けが悪い)
1点・・・硬く団子状になり、口溶け悪い(ネチャツキが多く、口溶け悪い)
【0026】
得られた評価結果(平均値)を表4に示す。
【表4】

【0027】
表4のとおり、本発明の生地を焼成して得たホットケーキはボリュームが十分で外観が非常に良好であり食感はソフトで口溶け良く非常に良い食感であった。
【0028】
[実施例14]
[クッキー]
米粉100に対して砂糖60、豆乳80、起泡性油脂15を上記のスポンジと同様の製法で生地を作り、天板の上に生地を絞り180℃のオーブンで30分焼成し、クッキーを得た。
【0029】
[実施例15〜18 比較例13〜15]
配合を表5のとおり変更した以外は実施例14と同様にしてクッキーを得た。
【表5】

【0030】
前記クッキーをパネラー10名により以下の基準で評価した。
【0031】
外観
5点・・・ボリュームがあり非常によい
4点・・・ボリュームがあり良い
3点・・・ボリュームが普通
2点・・・ボリュームがやや劣る
1点・・・ボリュームが非常に劣る弱い

食感
5点・・・サクミがあり口溶け良い
4点・・・ややサクミがあり口溶け良い
3点・・・普通
2点・・・やや硬くネチャツキがあり口溶けが悪い
1点・・・硬くネチャツキが多く、口溶け悪い
【0032】
得られた評価結果(平均値)を表6に示す。
【表6】

【0033】
表6のとおり、本発明の生地を焼成して得たクッキーはボリュームが十分で外観が非常に良好であり食感はサクミがあり口溶け良く非常に良い食感であった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
卵、乳、小麦粉およびこれら由来の成分を含まず、米粉および米粉100質量部に対し30〜180質量部の糖類、60〜390質量部の豆乳、2〜90質量部の起泡性油脂を含む生地を焼成して得られる焼き菓子。
【請求項2】
卵、乳、小麦粉およびこれら由来の成分を含まず、米粉および米粉100質量部に対し30〜180質量部の糖類、60〜390質量部の豆乳、2〜90質量部の起泡性油脂を含む生地を焼成することを特徴とする焼き菓子の製造方法。


【公開番号】特開2006−230348(P2006−230348A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−53137(P2005−53137)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(000231637)日本製粉株式会社 (144)
【Fターム(参考)】