説明

低エチレンエーテル含有率を有するポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールからのスパンデックス

本発明は、少なくとも1種のジイソシアネート化合物と、エチレンオキシドに由来する単位の部分がポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコール中に約15モルパーセント未満で存在する、テトラヒドロフランおよびエチレンオキシドを共重合させることによって誘導された構成単位を含むポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールとを含むポリウレタンウレア組成物を提供する。本発明はさらに、スパンデックス組成物における、かかる低エチレンエーテル含有率ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールの使用に関する。本発明はまた、かかる低エチレンエーテル含有率のポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールを含む新規ポリウレタン組成物、およびスパンデックスにおけるそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレンオキシドに由来する単位の部分がポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコール中に約15モルパーセント未満で存在する、テトラヒドロフランおよびエチレンオキシドを共重合させることによって誘導された構成単位を含むポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールと、少なくとも1種のジイソシアネートと、少なくとも1種の鎖延長剤と、少なくとも1種の連鎖停止剤とを含む新規ポリウレタンウレア組成物に関する。本発明はさらに、スパンデックス組成物におけるソフトセグメント・ベース材料としてのかかる低エチレンエーテル含有率を有するポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールの使用に関する。本発明はまた、かかる低エチレンエーテル含有率を有するポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールを含む新規ポリウレタン組成物、およびスパンデックスでのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリテトラヒドロフランまたはテトラヒドロフラン(THF、オキソラン)のホモポリマーとしてもまた知られる、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールは、ポリウレタンウレア中のソフトセグメントでのそれらの使用についてよく知られている。ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールは、ポリウレタンウレアエラストマーおよび繊維に優れた動的特性を与える。それらは非常に低いガラス転移温度を有するが、室温より上の結晶溶融温度を有する。このように、それらは周囲温度でワックス様固体であり、固化を防ぐために高温に保たれる必要がある。
【0003】
環状エーテルとの共重合がポリテトラメチレンエーテル鎖の結晶性を低下させるために用いられてきた。これは、コポリエーテルグリコールのポリマー溶融温度を下げ、同時にソフトセグメントとしてかかる共重合体を含有するポリウレタンウレアのある種の動的特性を改善する。この目的のために使用されるコモノマーの中に、コモノマー含有率に依存して、共重合体溶融温度を周囲温度より下に下げることができる、エチレンオキシドがある。ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールの使用はまた、幾つかの最終用途にとって望ましい、ポリウレタンウレアのある種の動的特性、例えばテナシティ、破断点伸び、および低温性能を改善するかもしれない。
【0004】
ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールは当該技術で公知である。それらの製造は特許文献1および特許文献2に記載されている。かかる共重合体は、例えば、非特許文献1に記載されているものなどの、環状エーテル重合の公知方法のいずれかによって製造することができる。かかる重合法には、強プロトンまたはルイス(Lewis)酸、ヘテロポリ酸、およびパーフルオロスルホン酸または酸樹脂による触媒作用が含まれる。幾つかの場合には、特許文献3に記載されているように、カルボン酸無水物などの、重合促進剤を使用することが有利であるかもしれない。これらのケースでは、一次ポリマー生成物はジエステルであり、それは次に、所望の高分子グリコールを得るために次工程で加水分解される必要がある。
【0005】
ドレイ(Dorai)に付与された特許文献4は、THFと1種または複数のコモノマーとの重合からのポリテトラメチレンエーテルのジエステルの製造を開示している。ドライには、3−メチルTHF、エチレンオキシド、プロピレンオキシドなどが含まれるが、それは、約15モルパーセント未満のエチレンエーテル含有率を有するポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールを記載していない。
【0006】
ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールをベースとするスパンデックスはまた、当該技術で公知である。しかしながら、これらのスパンデックス組成物のほとんどは、より高いレベルの、すなわち、30モルパーセントより大きいエチレンエーテル含有率のポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールをベースとする。例えば、ペッチホールド(Pechhold)らに付与された特許文献5は、スパンデックスおよび他のポリウレタンウレアを製造するために低い環状エーテル含有率のポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールの使用を開示している。ペッチホールドは、30パーセントより上のエチレンエーテル・レベルが好ましいことを教示している。
【0007】
アオシマ(Aoshima)らに付与された特許文献6は、ヘテロポリ酸触媒を使用するTHFと多価アルコールとの反応による幾つかのTHFコポリエーテルの製造を開示している。アオシマはまた、エチレンオキシドなどの、共重合性環状エーテルが重合プロセスでTHFと共に含まれてもよいことを開示している。アオシマは、ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコール中のエチレンエーテルの含有率が約0.5パーセント未満であるとき、物理的特性はポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールのそれに近づくことを開示している。アオシマはまた、ポリウレタンおよびスパンデックス用の出発原料としてのTHFコポリエーテルグリコールの使用を開示しているが、ポリウレタンまたはポリウレタンウレア中の低エチレンエーテル含有率のポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)の実施例を全く提供していない。開示されているスパンデックスポリウレタン中のポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)の唯一の実施例は、低温特性の改善に有用であると述べた。
【0008】
アクセルルード(Axelrood)らに付与された特許文献7は、耐油性および良好な低温性能での使用のためのポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールからのポリエーテルウレタンウレアの製造を開示している。ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールは、20〜60重量パーセント(29〜71モルパーセントに等しい)の範囲のエチレンエーテル含有率を有する。
【0009】
ニシカワ(Nishikawa)らに付与された特許文献8は、THF、エチレンオキシド(15〜37モルパーセント)および/またはプロピレンオキシドのコポリエーテルを含有するポリオールと、ジイソシアネートと、ジアミンとから製造されたポリウレタンウレアおよび有機溶媒に溶媒和されたポリマーを含有する低温で良好な弾性を有する繊維を開示している。ニシカワは、これらの組成物が標準ホモポリマー・スパンデックスより改善された低温性能を有することを教示している。ニシカワは、10パーセントのエチレンエーテル含有率のポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールをベースとするが、比較(比較例1)に過ぎないスパンデックスを開示している。この実施例は、−5℃で31パーセントの永久歪みを有し、このようにニシカワは該発明のスパンデックスが望ましくもより低い低温永久歪みを有することを教示している。
【0010】
【特許文献1】米国特許第4,139,567号明細書
【特許文献2】米国特許第4,153,786号明細書
【特許文献3】米国特許第4,163,115号明細書
【特許文献4】米国特許第5,684,179号明細書
【特許文献5】米国特許第4,224,432号明細書
【特許文献6】米国特許第4,658,065号明細書
【特許文献7】米国特許第3,425,999号明細書
【特許文献8】米国特許第6,639,041号明細書
【非特許文献1】P.ドレフュス(P.Dreyfuss)著、「ポリテトラヒドロフラン(Polytetrahydrofuran)」、ニューヨーク、Gordon & Breach社、1982年
【非特許文献2】S.シッギア(S.Siggia)著、「官能基による定量有機分析(Quantitative Organic Analysis via Functional Group)」、第3版、ニューヨーク、Wiley & Sons社、1963年、559−561ページ
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、(a)エチレンオキシドに由来する単位の部分がポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコール中に約15モルパーセント未満で存在する、テトラヒドロフランおよびエチレンオキシドを共重合させることによって誘導された構成単位を含むポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールと、(b)少なくとも1種のジイソシアネートと、(c)少なくとも1種のジアミンまたはジオール鎖延長剤と、(d)少なくとも1種の連鎖停止剤とのポリウレタンまたはポリウレタンウレア反応生成物を含むスパンデックスに関する。
【0012】
本発明はまた、(a)テトラヒドロフランおよびエチレンオキシドを共重合させることによって誘導された構成単位を含むポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールであって、エチレンオキシドに由来する単位の部分がポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコール中に約15モルパーセントで存在するポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールを、少なくとも1種のジイソシアネートと接触させてキャップされたグリコールを形成する工程と、(b)任意選択的に(a)の生成物に溶媒を加える工程と、(c)(b)の生成物を少なくとも1種のジアミンまたはジオール鎖延長剤および少なくとも1種の連鎖停止剤と接触させる工程と、(d)(c)の生成物を紡糸してスパンデックスを形成する工程とを含む上記スパンデックスの製造方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
新規スパンデックス組成物は、低い、すなわち、約15モルパーセント未満のエチレンエーテル含有率のポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールと、1−イソシアナト−4−[(4−イソシアナト−フェニル)メチル]ベンゼンなどのジイソシアネートと、エチレンジアミンなどの鎖延長剤と、ジエチルアミンなどの連鎖停止剤とから製造される。任意選択的に、他のジイソシアネートと、連鎖停止剤と、鎖延長剤および共延長剤とが使用されてもよい。本出願の目的のためには、低エチレンエーテル含有ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールは、エチレンオキシドに由来する約1〜約15モルパーセント未満の繰り返し単位を含有するものと定義される。
【0014】
本発明のセグメント化ポリウレタンまたはポリウレタンウレアは、ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールと、任意選択的に、高分子グリコールと、少なくとも1種のジイソシアネートと、二官能性鎖延長剤とから製造される。ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールは、スパンデックスを製造するのに使用されるポリウレタンまたはポリウレタンウレアの「ソフトセグメント」を形成するのに役に立つ。ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールまたはグリコール混合物は先ず、少なくとも1種のジイソシアネートと反応させられてNCO−末端プレポリマー(「キャップされたグリコール」)を形成し、それは次に、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、またはN−メチルピロリドンなどの、好適な溶媒に溶解され、次に二官能性鎖延長剤と反応させられる。ポリウレタンは、鎖延長剤がジオールであるときに形成される。ポリウレタンウレア、ポリウレタンの亜類は、鎖延長剤がジアミンであるときに形成される。スパンデックスへ紡糸することができるポリウレタンウレアポリマーの製造で、ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールは、ヒドロキシ末端基とジイソシアネートおよびジアミンとの順次反応によって延長される。各ケースで、ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールは、粘度をはじめとする、必要な特性のポリマーを提供するために連鎖延長を受けなければならない。必要ならば、ジブチルスズジラウレート、オクタン酸第1スズ、鉱酸、トリエチルアミン、N,N’−ジメチルピペラジンなどの第三級アミンなど、および他の公知の触媒を、キャッピング工程を助けるために使用することができる。
【0015】
本発明のポリウレタンおよびポリウレタンウレアを製造するのに使用されるポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールは、パーフルオロスルホン酸樹脂触媒を使用してプルックマイヤー(Pruckmayr)に付与された特許文献1に開示されている方法によって製造することができる。あるいはまた、任意の他の酸性環状エーテル重合触媒、例えばヘテロポリ酸がこれらのポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールを製造するために使用されてもよい。本発明の実施に有用なヘテロポリ酸およびそれらの塩は、例えば、アオシマらに付与された特許文献6に記載されているような環状エーテルの重合および共重合に使用されるそれらの触媒であることができる。これらの重合法は、無水酢酸などの、追加の促進剤の使用を含んでもよいし、または分子量を調整するための連鎖停止剤分子の使用を含んでもよい。
【0016】
ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコール中のエチレンエーテルの量が約15モルパーセント未満に維持される場合、ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールの物理的特性、特に融点は本質的に、同じまたは類比の分子量を有するポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールのそれらと同じものである。同様に、低エチレンエーテル含有ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールをベースとするスパンデックスの理的特性は本質的に、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール−ベースのスパンデックスと同じものである。あるいはまた、より高いエチレンエーテル含有率のポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールの使用は、同じ分子量を有するポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールをベースとするものとは著しく異なる物理的特性のスパンデックス(またはポリウレタン)をもたらす。伸び、ロードパワー、高い伸びでのアンロードパワー、例えばTM2など、および低温性能などスパンデックス特性の幾つかは改善されるが、幾つかの特性は悪化する。
【0017】
本発明のポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールは、エチレンエーテル部分の百分率が約15モルパーセント未満から、または約5〜約15モルパーセント未満、または約10〜約15モルパーセント未満である、テトラヒドロフランおよびエチレンオキシドを共重合させることによって誘導された構成単位を含むことができる。任意選択的に、本発明のポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールは、エチレンエーテル部分の百分率が約14モルパーセント未満から、または約5〜約14モルパーセント、または約10〜約14モルパーセントである、テトラヒドロフランおよびエチレンオキシドを共重合させることによって誘導された構成単位を含むことができる。グリコール中に存在するエチレンオキシドに由来する単位の百分率は、グリコール中に存在するエチレンエーテル部分のパーセントに等しい。
【0018】
本発明のポリウレタンまたはポリウレタンウレアの製造に使用されるポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールは、約650ダルトン(Dalton)〜約4000ダルトンの平均分子量を有することができる。より高いポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコール分子量は、伸びなどの、選択された物理的特性にとって有利であることができる。
【0019】
本発明のポリウレタンまたはポリウレタンウレアを製造するのに使用されるポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールは、連鎖停止剤ジオール分子、特に非環化ジオールに由来する少量の単位を含むことができる。非環化ジオールは、反応条件下に容易に環化して環状エーテルを形成しないであろうジ−アルコールと定義される。これらの非環化ジオールには、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチンジオール、および水が含まれ得る。
【0020】
例えば3−メチルテトラヒドロフランなどの、少なくとも1つの追加成分、を含むポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコール、分子量調整剤として少量組み込まれた1,3−プロパンジオール、または他のジオールに由来するエーテルを任意選択的に含むポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールもまた、本発明のポリウレタンおよびポリウレタンウレアを製造するのに使用することができ、用語「ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)またはポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコール」の意味に含められる。少なくとも1つの追加成分は高分子グリコールのコモノマーであってもよいし、またはそれはポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールとブレンドされている別の材料であってもよい。少なくとも1つの追加成分は、それが本発明の有益な態様を損なわない程度まで存在してもよい。
【0021】
使用することができるジイソシアネートには、1−イソシアナト−4−[(4−イソシアナトフェニル)メチル]ベンゼン、1−イソシアナト−2−[(4−シアナトフェニル)メチル]ベンゼン、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、5−イソシアナト−1−(イソシアナトメチル)−1,3,3−トリメチルシクロヘキサン、1,3−ジイソシアナト−4−メチル−ベンゼン、2,2’−トルエンジイソシアネート、2,4’−トルエンジイソシアネート、およびそれらの混合物が含まれるが、それらに限定されない。好ましいジイソシアネートは、1−イソシアナト−4−[(4−イソシアナトフェニル)メチル]ベンゼン、1−イソシアナト−2−[(4−シアナトフェニル)メチル]ベンゼン、およびそれらの混合物である。特に好ましいジイソシアネートは、1−イソシアナト−4−[(4−イソシアナトフェニル)メチル]ベンゼンである。
【0022】
ポリウレタンが望まれるとき、鎖延長剤はジオールである。使用されてもよいかかるジオールの例には、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロピレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−トリメチレンジオール、2,2,4−トリメチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ブタンジオール、およびそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0023】
ポリウレタンウレアが望まれるとき、鎖延長剤はジアミンである、使用されてもよいかかるジアミンの例には、ヒドラジン、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,2−ブタンジアミン(1,2−ジアミノブタン)、1,3−ブタンジアミン(1,3−ジアミノブタン)、1,4−ブタンジアミン(1,4−ジアミノブタン)、1,3−ジアミノ−2,2−ジメチルブタン、4,4’−メチレン−ビス−シクロヘキシルアミン、1−アミノ−3,3,5−トリメチル−5−アミノメチルシクロヘキサン、1,6−ヘキサンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、2,4−ジアミノ−1−メチルシクロヘキサン、N−メチルアミノビス(3−プロピルアミン)、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、1,5−ジアミノペンタン、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−ジアミノ−4−メチルシクロヘキサン、1,3−シクロヘキサン−ジアミン、1,1−メチレン−ビス(4,4’−ジアミノヘキサン)、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,3−ペンタンジアミン(1,3−ジアミノペンタン)、m−キシリレンジアミン、およびそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。延長剤としてのエチレンジアミンが好ましい。
【0024】
任意選択的に、連鎖停止剤、例えばジエチルアミン、シクロヘキシルアミン、n−ヘキシルアミン、またはブタノールなどの一官能性アルコール連鎖停止剤は、ポリマーの分子量を調整するために使用することができる。さらに、ペンタエリスリトールなどの高官能性アルコール「連鎖分岐剤」、またはジエチレントリアミンなどの三官能性「連鎖分岐剤」が溶液粘度を調整するために使用されてもよい。
【0025】
本発明のポリウレタンおよびポリウレタンウレアは、この一般タイプのポリウレタンまたはポリウレタンウレアが用いられる任意の用途に使用されてもよいが、使用中に、高い伸び、低い弾性率、または良好な低温特性を必要とする物品を製造するのに特に有益である。それらは、スパンデックス、エラストマー、柔軟なおよび堅いフォーム、コーティング(溶剤および水をベースとするの両方)、分散系、フィルム、接着剤、および造形品を製造するのに特に有益である。
【0026】
本明細書で用いるところではそして特に明記しない限り、用語「スパンデックス」は、繊維形成物質が少なくとも85重量パーセントのセグメント化ポリウレタンまたはポリウレタンウレアからなる長鎖合成ポリマーである人造繊維を意味する。スパンデックスはまたエラスタンとも言われる。
【0027】
本発明のスパンデックスは、編および織ストレッチ布、ならびにかかる布を含む衣服または織物品を製造するために使用することができる。ストレッチ布例には、丸編、横編、および縦編布、ならびに平織、綾織、および繻子織布が挙げられる。用語「衣服」は、本明細書で用いるところでは、シャツ、パンツ、スカート、ジャケット、コート、作業シャツ、作業パンツ、制服、上着、スポーツウェア、水着、ブラ、ソックス、および下着などの衣料品を意味し、そしてまたベルト、手袋、ミトン、帽子、靴下、または履物などのアクセサリーも含む。用語「織物品」は、本明細書で用いるところでは、衣服などの、布を含む物品を意味し、そしてさらにシート、枕カバー、ベッドカバー、キルト、毛布、掛け布団、掛け布団カバー、寝袋、シャワーカーテン、カーテン、掛布、テーブルクロス、ナプキン、雑巾、ふきん、および室内装飾品または家具用の保護カバーのようなアイテムを含む。
【0028】
本発明のスパンデックスは、織布、横編布(フラットおよび丸編布をはじめとする)、縦編布、およびおむつなどの個人衛生アパレルに単独でまたは様々な他の繊維と組み合わせて使用することができる。本スパンデックスは、裸である、カバーされる、またはナイロン、ポリエステル、アセテート、綿などのようなコンパニオン繊維と絡ませられることができる。
【0029】
本発明のスパンデックスを含む布はまた、タンパク質繊維、セルロース系繊維、および合成ポリマー繊維、またはかかるメンバーの組み合わせからなる群から選択された少なくとも1つの繊維を含んでもよい。本明細書で用いるところでは、「タンパク質繊維」は、羊毛、絹、モヘア、カシミヤ、アルパカ、アンゴラ、ビクーナ、ラクダ、および他の毛髪および毛皮繊維のような天然起源動物繊維をはじめとする、タンパク質からなる繊維を意味する。本明細書で用いるところでは、「セルロース系繊維」は、例えば綿、レーヨン、アセテート、リオセル、リンネル、ラミー、および他の植物性繊維をはじめとする、木または植物材料から製造される繊維を意味する。本明細書で用いるところでは、「合成ポリマー繊維」は、例えばポリエステル、ポリアミド、アクリル、スパンデックス、ポリオレフィン、およびアラミドをはじめとする、化学元素または化合物から構築されたポリマーから製造された人造繊維を意味する。
【0030】
有効量の様々な添加剤をまた、それらが本発明の有益な態様を損なわないという条件で、本発明のスパンデックスに使用することもできる。例には、二酸化チタンなどの艶消剤およびハイドロタルサイト、フンタイドとハイドロマグネサイトとの混合物、硫酸バリウム、ヒンダードフェノール、ならびに酸化亜鉛、染料および染色エンハンサー、抗菌剤、粘着防止剤、シリコーンオイル、ヒンダードアミン光安定剤、UV遮断剤などが挙げられる。
【0031】
本発明のスパンデックスまたはそれを含む布は、20℃〜130℃の温度で吸尽法によって水性染液からなど、慣習的な染色および印刷手順によって、スパンデックスを含む材料を染液でパッディングすることによって、またはスパンデックスを含む材料に染液をスプレーすることによって染色および印刷されてもよい。
【0032】
酸性染料を使用するときは従来法に従ってもよい。例えば、吸尽染色法で、布は、3〜9のpHを有する水性染浴へ導入することができ、それは次に、約10〜80分にわたっておおよそ20℃の温度から40〜130℃の範囲の温度まで着実に加熱される。染浴および布は次に、冷却する前に40〜130℃の範囲の温度に10〜60分間保持される。固定されていない染料は次に布からリンスされる。本スパンデックスのストレッチおよび回復特性は、110℃より上の温度での最小暴露時間によって最良に維持される。分散染料を使用するときは従来法にまた従ってもよい。
【0033】
本明細書で用いるところでは、用語「洗濯堅牢度」は、家庭または業務洗濯中の色の損失に対する染色布の耐性を意味する。洗濯堅牢度の欠如は、洗濯堅牢性ではない物品によって、色ブリードと時々言われる、色損失をもたらし得る。これは、洗濯堅牢性ではない物品と一緒に洗濯される物品に色変化をもたらし得る。消費者は一般に、布および糸が洗濯堅牢度を示すことを望む。洗濯堅牢度は、繊維組成物、布染色および仕上げ法、ならびに洗濯条件に関係する。改善された洗濯堅牢度を有するスパンデックスが今日のアパレルにとって望ましい。
【0034】
本スパンデックスの洗濯堅牢度特性は、慣習的な補助化学添加剤の使用によって支援され、さらに高められてもよい。陰イオン性シンタン(syntan)は、洗濯堅牢度特性を向上させるために使用されてもよく、そしてまた染料の最小限分配がスパンデックスとパートナー糸との間に必要とされるとき、緩染剤および遮断剤として使用することもできる。陰イオン性スルホン化オイルは、一様なレベルの染色が必要とされる場合に、アニオン染料に対してより強い親和力を有するスパンデックスまたはパートナー繊維から該染料を阻害するために使用される補助添加剤である。陽イオン性固定剤は、改善された洗濯堅牢度をサポートするために単独でまたは陰イオン性固定剤と組み合わせて使用することができる。
【0035】
スパンデックス繊維は、乾式紡糸または溶融紡糸などの繊維紡糸法によって、本発明のポリウレタンまたはポリウレタンウレアポリマー溶液から形成することができる。ポリウレタンウレアは、スパンデックスが望まれるときに典型的には乾式紡糸または湿式紡糸される。乾式紡糸では、ポリマーおよび溶媒を含むポリマー溶液が紡糸口金オリフィスを通して紡糸チャンバー中へ計量供給されてフィラメントを形成する。典型的には、ポリウレタンウレアポリマーは、重合反応のために使用されたものと同じ溶媒からフィラメントへ乾式紡糸される。ガスがチャンバーを通過して溶媒を蒸発させてフィラメントを固化させる。フィラメントは、少なくとも毎分550メートルの巻取速度で乾式紡糸される。本発明のスパンデックスは好ましくは、毎分800メートルを上回る速度で紡糸される。本明細書で用いるところでは、用語「紡糸速度」は、伝動ロール速度によって測定され、そしてそれと同じものである巻取速度を意味する。スパンデックス・フィラメントの良好な紡糸性は、紡糸セルでのおよび巻取でのめったに起こらないフィラメント切れによって特徴づけられる。スパンデックスは、単一フィラメントとして紡糸することができるし、または従来技法によってマルチフィラメント糸へ合体させることができる。各フィラメントは、フィラメント当たり6〜25デシテックスの範囲の、織物デシテックス(dtex)のものである。
【0036】
スパンデックス組成物の紡糸速度を上げると、より低い速度で紡糸された同じスパンデックスと比べてその伸びを減少させ、そしてそのロードパワーを上げることは当業者に周知である。それ故、丸編および他のスパンデックス加工操作でその延伸性を高めるためにスパンデックスの伸びを増加させ、そしてそのロードパワーを下げるために紡糸速度を遅くすることは一般的な方法である。しかしながら、紡糸速度を下げると、製造生産性を低下させる。
【0037】
高エチレンエーテル含有率ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)−ベースのスパンデックスの一欠陥は、テナシティがしばしば、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール−ベースのスパンデックス組成物よりはるかに低いことである。表1に示されるように、50モルパーセントのエチレンエーテルを含有する高エチレンエーテル含有率ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールをベースとするスパンデックス・フィラメント(比較例3)は0.5887g/デニールのテナシティを有するが、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール−ベースのスパンデックス・フィラメント(比較例2)は1.2579g/デニールのテナシティを有する。実施例1で、スパンデックス・フィラメントは10.5モルパーセントのエチレンエーテルを含有するポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールをベースとしており、1.2554g/デニールのテナシティを有する。ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールは、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールより製造するのに安価である。それ故、本発明は、テナシティを犠牲にすることなく安価なスパンデックスを提供する。
【0038】
テナシティに加えて、幾つかの布構成のためにはできるだけ高い100%伸びでの繊維アンロードパワーを有することが望ましい。高エチレンエーテル含有率を有するポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)のスパンデックス(比較例3)は、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール−ベースのスパンデックス(比較例2、0.0181g/デニール)より100%伸びで低いアンロードパワー(0.0163g/デニール)を与え、それによって高エチレンエーテル含有率のポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)を含有するスパンデックスの実用性を制限する。本発明のスパンデックス、実施例1は、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール−ベースのスパンデックスと同一の100%伸びでのアンロードパワー(0.0181g/デニール)を有し、それ故、厳しい収縮力パラメーターを必要とする布用途でポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール−ベースのスパンデックスの代わりに使うことができる。
【0039】
本発明のスパンデックスはまた、有利な永久歪み特性、すなわち、5サイクル第1ストレッチング時に繊維長さのゲインを実証する。低エチレンエーテル含有ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールをベースとする発明のスパンデックスは、同一の条件下に紡糸されたときに、同じ分子量を有する高エチレンエーテル含有ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールをベースとするもの(比較例3、30.0%)と比較してはるかにより低い永久歪み(実施例1、22.8%)を有する。表1に示されるように、低エチレンエーテル含有ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールをベースとするスパンデックスは、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール−ベースのスパンデックス(比較例2、20.5%)に見いだされる永久歪み値に近づく。低い永久歪みは、ストレッチング後に、布が最小の永久歪みのその意図される寸法に戻り得るように重要である。本発明のスパンデックスの永久歪みがポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール−ベースのスパンデックスのそれとほぼ同じであるので、衣服製造業者による布構成の再デザインは全く必要ではない。しかしながら、高エチレンエーテル含有率ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコール−ベースのスパンデックスのかなりより高い永久歪みで、布構成は多分再デザインされなければならないであろう。
【0040】
本発明のスパンデックスはまた、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール−ベースのスパンデックスよりある種の利点を実証する。例えば、本発明のスパンデックス(実施例1)は、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール−ベースのスパンデックス(比較例2、0.0293g/デニール)より高い200%伸びでのアンロードパワー(0.0311g/デニール)を与える。従って、本発明のスパンデックスを使用する衣服製造業者は、所与の衣服構成に対する収縮力要件を満たすためにポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール−ベースのスパンデックスで必要であるより少ない材料を使用してもよく、それによって経済的便益を提供する。
【0041】
本発明のスパンデックスはまた、優れたロードパワー特性、すなわち、ストレッチに対する抵抗性を実証する。表1に示されるように、本発明のスパンデックス(実施例1)についてのロードパワーは、100%伸びで第1サイクル(0.0831g/デニール)および第5サイクル(0.0258g/デニール)ロードパワーを与えるポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール−ベースのスパンデックス(比較例2)と比較して、100%伸びで第1サイクル(0.0710g/デニール)および第5サイクル(0.0238g/デニール)の両方でより低い。従って、本発明のスパンデックスは、スパンデックス含有率を低くするためにまたは衣服着用者向けの着心地の良さを改善するために利用することができるスパンデックスの増加した延伸性のために、衣服製造業者(第1サイクル)および消費者(第5サイクル)の両方に利点を与える。
【0042】
本発明のスパンデックスはまた、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール−ベースのスパンデックス(比較例2、479%)より高い伸び(実施例1、512%)を示す。より高い伸びは、スパンデックスの増加した延伸性のために衣服製造業者のためになり、それはスパンデックス含有率を下げるために利用することができる。
【0043】
本発明の実施は、本発明の範囲を限定することを意図されない下記の実施例によって実証される。実施例のそれぞれについての物理的特性データは、表1に示される。
【0044】
本明細書で用いるところではそして特に明記しない限り、用語「DMAc」はジメチルアセトアミド溶媒を意味し、用語「%NCO」は、キャップされたグリコール中のイソシアネート末端基の重量パーセントを意味し、用語「MPMD」は2−メチル−1,5−ペンタンジアミンを意味し、用語「EDA」は1,2−エチレンジアミンを意味し、用語「PTMEG」はポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールを意味する。
【0045】
本明細書で用いるところでは、用語「キャッピング比」は、基準がグリコールの1.0モルと定義される状態で、グリコールに対するジイソシアネートのモル比と定義される。それ故、キャッピング比は典型的には、一つの数字、グリコールの1モル当たりのジイソシアネートのモルとして報告される。本発明のポリウレタンウレアについては、ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールに対するジイソシアネートの好ましいモル比は約1.2〜約2.3である。本発明のポリウレタンについては、ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールに対するジイソシアネートの好ましいモル比は約2.3〜約17、好ましくは約2.9〜約5.6である。
【0046】
(原材料)
THFおよびPTMEG(テラセイン(TERATHANE)(登録商標)1800)は、米国デラウェア州ウィルミントンのインビスタ有限責任会社(Invista S.a r.l.,Wilmington,Delaware,USA)から入手可能である。ナフィオン(NAFION)(登録商標)パーフッ素化スルホン酸樹脂は、米国デラウェア州ウィルミントンのイー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I.du Pont de Nemours and Company,Wilmington,Delaware,USA)から入手可能である。
【0047】
(分析方法)
テナシティは、第6ストレッチングサイクルにおける破断点応力、言い換えると、究極伸びでの破壊に対する繊維の抵抗性である。ロードパワーは、第1ストレッチングサイクルにおける規定伸びにおける応力、または言い換えると、より高い伸びにストレッチされることに対する繊維の抵抗性である。アンロードパワーは、第5収縮サイクルにおける規定伸びにおける応力、または言い換えると、300パーセント伸びに5回サイクルされた後で所与の伸びにおける繊維の収縮力である。
【0048】
パーセント・イソシアネート−キャップされたグリコールのパーセント・イソシアネート(%NCO)は、電位差滴定法を用いる非特許文献2の方法に従って測定した。
【0049】
エチレンエーテル含有率−本発明のポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコール中のエチレンエーテル含有率のレベルは、1H NMR測定から求めた。ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールのサンプルを、CDCl3などの好適なNMR溶媒に溶解させ、1H NMRスペクトルを得た。3.7〜3.2ppmの組み合わせた−OCH2ピークの積分を、1.8〜1.35ppmからの組み合わせた−C−CH2CH2−C−ピークの積分と比較した。−OCH2−ピークは、EO−ベース結合(−O−CH2CH2−O−)およびTHF−ベース結合(−O−CH2CH2CH2CH2−O−)の両方に由来するが、−C−CH2CH2−C−結合はTHFのみに由来する。ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコール中のエチレンエーテル結合のモル分率を見いだすために、−C−CH2CH2−C−ピークの積分を、組み合わせた−OCH2−ピークの積分から差し引き、次に当該結果を−OCH2−ピークの積で割った。
【0050】
数平均分子量−ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールの数平均分子量は、ヒドロキシル価法によって測定した。
【0051】
テナシティおよび弾性特性−スパンデックスのテナシティおよび弾性特性は、ASTM(米国材料試験協会)D2731−72の一般方法に従って測定した。インストロン(Instron)引張試験機を用いて引張特性を測定した。3つのフィラメント、2インチ(5cm)ゲージ長さおよびゼロ−300%伸びサイクルを、コントロールされた環境中おおよそ70°Fおよび65%相対湿度(±2%)での24時間のエージング後に、巻取からの「そのままで」、すなわち、スカーリングまたは他の処理なしに、測定のそれぞれについて使用した。サンプルを、毎分50cmの一定の伸び速度で5回サイクルさせ、次に第5伸長の後に300%伸長で30秒間保持した。
【0052】
ロードパワー、最初の伸長中のスパンデックスへの応力は、第1サイクルで、100%、200%、または300%伸長で測定し、デニール当たりのグラム単位で表に報告し、「LP」と示す。アンロードパワー、第5のアンロードサイクルでの100%または200%の伸長での応力もまた、デニール当たりのグラム単位で報告し、それは「UP」と示す。パーセント破断点伸び(「Elo」)およびテナシティは、滑りの減少のためにゴムテープを取り付けた改良インストロン・グリップを用いて第6伸長サイクルで測定した。
【0053】
パーセント永久歪み−特に明記しない限り、パーセント永久歪みはまた、5回の0〜300%伸び/緩和サイクルにかけたサンプルに関して測定した。パーセント永久歪み(「%SET」)は、
%SET=100(Lf−Lo)/Lo
(式中、LoおよびLfは、それぞれ、5回の伸び/緩和サイクル前後の、張力なしで真っ直ぐに保持されたときの、フィラメント(糸)長さである)
の通り計算した。
【0054】
丸編(CK)延伸−ニッティングで、スパンデックスは、それが供給パッケージから親板へ、そして順繰りに編目に配送されるときに、編目使用速度とスパンデックス供給パッケージからのフィード速度との間の差のためにストレッチする(延伸する)。スパンデックス供給速度に対する硬い糸供給速度(メートル/分)の比は普通2.5〜4倍(2.5〜4倍)より大きく、機械延伸「MD」として知られる。これは、150%〜300%、またはそれ以上のスパンデックス伸びに相当する。本明細書で用いるところでは、用語「硬い糸」は、ポリエステル、綿、ナイロン、レーヨン、アセテート、または羊毛などの、比較的非弾性の糸を意味する。
【0055】
スパンデックス糸の全延伸は、機械延伸(MD)と、スパンデックス糸が供給パッケージで既にストレッチしている量であるパッケージ延伸(PD)との積である。所与のデニール(またはデシテックス)について、布中のスパンデックス含有率は全延伸に反比例し、全延伸が高ければ高いほど、スパンデックス含有率は低い。PRは、「パーセント・パッケージ緩和(Percent Package Relaxation)」と呼ばれる測定特性であり、100×(パッケージでの糸の長さ−緩和糸の長さ)/(パッケージでの糸の長さ)と定義される。PRは典型的には、丸編、弾性、シングルジャージ布に使用されるスパンデックスについては5〜15と測定される。測定されたPRを用いると、パッケージ延伸(PD)は1/(1−PR/100)と定義される。それ故、全延伸(TD)はまた、MD/(1−PR/100)として計算されてもよい。4×機械延伸および5%PRの糸は4.21×の全延伸を有するであろうが、4×機械延伸および15%PRの糸は4.71×の全延伸を有するであろう。
【0056】
経済的な理由で、丸編機はしばしば、適正な布特性および一様性と合致する最小スパンデックス含有率を使用しようと試みるであろう。上で説明されたように、スパンデックス延伸を上げることは含有率を下げるための一方法である。延伸を制限する主要因はパーセント破断伸びであり、だから高いパーセント破断伸びの糸が最も重要な要因である。破断点テナシティ、摩擦、糸粘着性、デニール一様性、および糸中の欠陥などの、他の要因が実際の達成可能な延伸を減らし得る。編機は、延伸を究極延伸(測定されるパーセント破断点伸び)から減らすことによってこれらの制限要因に安全率を提供するであろう。それらは典型的には、ニッティング切断が編機の1,000回転当たり5切断などの、受け入れられないレベルに達するまで延伸を増やし、次に受け入れられる性能が回復するまで後退することによってこの「持続可能な延伸」を決定する。
【0057】
編針での張力もまた延伸についての制限要因であり得る。スパンデックス糸でのフィード張力は、スパンデックス糸の全延伸に直接関係する。それもまた、スパンデックス糸の固有弾性率(ロードパワー)の関数である。高延伸でのニッティングで受け入れられるほどに低い張力を維持するために、スパンデックスが低い弾性率(ロードパワー)を有することは有利である。高い延伸性のための理想的な糸は、それ故、高いパーセント破断伸び、低い弾性率(ロードパワー)、十分に高いテナシティ、低い摩擦および粘着、一様なデニール、ならびに低レベルの欠陥を有する。
【0058】
その応力−歪み特性のために、スパンデックス糸は、スパンデックスに加えられる張力が増加するにつれてより延伸し(ドローし)、逆に、スパンデックスが延伸されることが多ければ多いほど、糸の張力は高くなる。丸編機での典型的なスパンデックス糸バスは次の通りである。スパンデックス糸は、供給パッケージから、切断端検出器を越えてまたは通って、1つまたは複数の方向変更ロールを越えて、そして次にスパンデックスを編針におよび編目へと導く親板へ計量供給される。スパンデックス糸が供給パッケージから、そして各デバイスまたはローラーを越えて通るにつれて、スパンデックスに触れる各デバイスまたはローラーによって与えられる摩擦力のために、スパンデックス糸に張力の蓄積がある。編目でのスパンデックスの全延伸はそれ故、スパンデックス・パスの全体にわたる張力の合計に関係する。
【0059】
スパンデックス中の残留DMAc−スパンデックス・サンプル中に残るパーセントDMAcは、デュラテック(Duratech)DMAc分析器を用いることによって測定した。既知量のパークレンを使用してDMAcを既知重量のスパンデックスから抽出した。パークレン中のDMAcの量を次に、DMAcのUV吸収を測定し、当該値を検量線と比較することによって定量した。
【0060】
熱湿クリープ(HWC)−熱湿クリープは、糸の元の長さ、L0を測定し、それをその元の長さの1.5倍(1.5L0)にストレッチし、それをそのストレッチ状態で、97〜100℃の範囲の温度に維持された水浴に30分間浸漬し、それを浴から取り出し、張力を解除し、そして最終長さLfを測定する前にサンプルを室温で60分間緩和させることによって求めた。パーセント熱湿クリープは、次式から計算する:
%HWC=100×[(Lf−L0)/L0
【0061】
低い%HWCの繊維は、染色などの、熱湿仕上げ操作で優れた性能を与える。
【実施例】
【0062】
(実施例1(低EO含有スパンデックス))
10.5モルパーセントのエチレンエーテル含有率および1774ダルトン分子量のポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールのサンプルを、2つのサンプルをブレンドすることによって調製した。サンプルの1つは11.3モルパーセントのエチレンエーテル含有率および1600ダルトン分子量を有したが、他は10モルパーセントのエチレンエーテル含有率および1997ダルトン分子量を有した。これらのサンプルの両方とも、THF、エチレンオキシド、および水の溶液を酸性粘土触媒の固定床に通し、引き続き未反応THFおよび環状エーテル副生成物を留去することによって製造した。
【0063】
ブレンドしたポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールを1−イソシアナト−4−[(4−イソシアナト−フェニル)メチル]ベンゼンで、90℃で90分間キャップして2.62%NCOプレポリマーを与えた。このキャップされたグリコールを次にDMAc溶媒で希釈し、EDAとMPMDとの混合物(90/10比)で連鎖延長し、そしてジエチルアミンで連鎖停止して市販のスパンデックスに組成が似ているスパンデックス生成物を与えた。使用したDMAcの量は、最終紡糸液が、総溶液重量を基準として、その中に31重量%ポリウレタンを有するようにであった。紡糸液を、415℃乾燥窒素が提供される塔へ乾式紡糸し、合体させ、ゴデットロールの周りを通し、そして869m/分で巻き取った。紡糸性は良好であった。繊維特性を表1に提示する。
【0064】
(比較例2(PTMEGベースのスパンデックス))
1800sダルトン分子量のPTMEGのサンプルを1−イソシアナト−4−[(4−イソシアナト−フェニル)メチル]ベンゼンで2.62%NCOにキャップし、EDAおよびMPMD(90/10比)で連鎖延長し、ジエチルアミンで連鎖停止し、そして実施例1の手順に従ってスパンデックス繊維へ紡糸した。
【0065】
(比較例3(高EOスパンデックス))
2000ダルトン分子量および50モルパーセントのエチレンエーテル含有率を有するポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールのサンプルを1−イソシアナト−4−[(4−イソシアナト−フェニル)メチル]ベンゼンで、100ppmの鉱酸をキャッピング触媒として使用して90℃で120分間キャップした。キャップされたグリコールを次に、EDAおよびMPMD(90/10比)で連鎖延長し、ジエチルアミンで連鎖停止し、そして実施例1の手順に従ってスパンデックス繊維へ紡糸した。
【0066】
【表1】

【0067】
本出願者らは、ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコール中のエチレンエーテルのレベルが約16モルパーセントより上に上がるとき、ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールの融点が急速に低下することを観察した。この観察と平行して、スパンデックス物理的特性の幾つかは、これらのポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールを基準として、エチレンエーテル含有率が上がるとき急速に変化する。スパンデックスの応力−歪み曲線はもはや、PTMEGベースのスパンデックスの曲線とは似ていない。さらに、出願者らは、ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコール中のエチレンエーテルの量がおおよそ16モルパーセントまたはそれ以下に保たれるときに、製品スパンデックスの応力−歪み曲線がPTMEG−ベースのスパンデックスのそれにほぼ同一であることを発見した。出願者らは、ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコール中のエチレンエーテル含有率が約16モルパーセントまたはそれ以下であるときに、ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールがPTMEGをベースとするものに近い特性のスパンデックスを提供することを見いだした。これらのより低いエチレンエーテル・レベルで、コスト節減およびPTMEG−ベースのスパンデックスのような性能の両方が得られるかもしれない。
【0068】
本発明の利点は、16モルパーセント未満のエチレンエーテルのポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールがPTMEGよりも製造するのに安価であるという事実にある。それ故、ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールをベースとするスパンデックス(またはポリウレタン)は、より低い原材料コストを有する。しかしながら、重要なことには、ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコール−ベースのスパンデックス製品は、現在上市されているPTMEG−ベースのスパンデックス製品と同じ性能特性を提供し続ける。
【0069】
我々は、一つにはテトラヒドロフランと対比してエチレンオキシドのより低いコストのために、そして一つにはより安価なグリコール製造プロセスのために、ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールを好む。PTMEG(例えば、テラセイン(TERATHANE)1800)は、触媒および促進剤システム(無水酢酸)を用いる方法を用いて最も普通に製造され、それはアセテート末端基を除去して製品グリコールを製造するために重合後に追加の処理工程を必要とする。しかしながら、本発明のポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコール法は、重合を開始するためにエチレンオキシドを使用し、製品グリコールを直接もたらす。
【0070】
より高い量のエチレンエーテルのポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールを使用すると、同じ分子量を有するPTMEGをベースとするものとは著しく異なる物理的特性のスパンデックス(またはポリウレタン)を提供する。伸び、ロードパワー、200%またはそれ以上の伸びでの収縮力(TM2)、および低温性能などのスパンデックス特性の幾つかは改善されるが、幾つかの特性(例えば、破壊への抵抗性(テナシティ))は悪化する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)エチレンオキシドに由来する単位の部分がポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコール中に約15モルパーセント未満、好ましくは約5〜約15モルパーセント未満、より好ましくは約10〜約15モルパーセント未満で存在する、テトラヒドロフランおよびエチレンオキシドを共重合させることによって誘導された構成単位を含むポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールと、
(b)少なくとも1種のジイソシアネートと、
(c)少なくとも1種のジアミン鎖延長剤と
の反応生成物を含むことを特徴とするポリウレタンウレア。
【請求項2】
請求項1に記載のポリウレタンウレア反応生成物を含むことを特徴とするスパンデックス。
【請求項3】
前記ポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールが約650ダルトン〜約4000ダルトンの分子量を有することを特徴とする請求項2に記載のスパンデックス。
【請求項4】
前記ポリウレタンウレアが、約1.2〜約2.3のポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコール対するジイソシアネートのモル比を有することを特徴とする請求項2に記載のスパンデックス。
【請求項5】
前記ジイソシアネートが1−イソシアナト−4−[(4−イソシアナト−フェニル)メチル]ベンゼン、1−イソシアナト−2−[(4−イソシアナト−フェニル)メチル]ベンゼン、およびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項2に記載のスパンデックス。
【請求項6】
前記ジアミン鎖延長剤がエチレンジアミン、2−メチルペンタンジアミン、および1,2−プロパンジアミン、ならびにそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項2に記載のスパンデックス。
【請求項7】
デニール当たり1.0グラム以上のテナシティを有することを特徴とする請求項2に記載のスパンデックス。
【請求項8】
デニール当たり約0.016グラム以上の100パーセント伸びにおけるアンロードパワーを有することを特徴とする請求項2に記載のスパンデックス。
【請求項9】
スパンデックスが、毎分約800メートルを上回る速度で紡糸されることを特徴とする請求項8または請求項9に記載のスパンデックス。
【請求項10】
(a)エチレンオキシドに由来する単位の部分がポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコール中に約15モルパーセント未満で存在する、テトラヒドロフランおよびエチレンオキシドを共重合させることによって誘導された構成単位を含むポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールと、
(b)少なくとも1種のジイソシアネートと、
(c)少なくとも1種のジオール鎖延長剤と
の反応生成物を含むことを特徴とするポリウレタン。
【請求項11】
請求項10に記載のポリウレタン反応生成物を含むことを特徴とするスパンデックス。
【請求項12】
(a)エチレンオキシドに由来する単位の部分がポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコール中に約15モルパーセント未満で存在する、テトラヒドロフランおよびエチレンオキシドを共重合させることによって誘導された構成単位を含むポリ(テトラメチレン−コ−エチレンエーテル)グリコールを、少なくとも1種のジイソシアネートと接触させてキャップされたグリコールを形成する工程と、
(b)任意選択的に(a)の生成物に溶媒を加える工程と、
(c)(b)の生成物を少なくとも1種のジアミンまたはジオール鎖延長剤と接触させる工程と、
(d)(c)の生成物を紡糸してスパンデックスを形成する工程と
を含むことを特徴とするスパンデックスの製造方法。
【請求項13】
請求項2または請求項11に記載のスパンデックスを含むことを特徴とする布。
【請求項14】
請求項13に記載の布を含むことを特徴とする衣服または織物品。
【請求項15】
請求項1に記載のポリウレタンウレアを含むことを特徴とする分散系、コーティング、フィルム、接着剤、エラストマー、または造形品。
【請求項16】
請求項10に記載のポリウレタンを含むことを特徴とする分散系、コーティング、フィルム、接着剤、エラストマー、または造形品。

【公表番号】特表2009−516768(P2009−516768A)
【公表日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−542293(P2008−542293)
【出願日】平成18年5月8日(2006.5.8)
【国際出願番号】PCT/US2006/017560
【国際公開番号】WO2007/061444
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(505245302)インヴィスタ テクノロジー エスアエルエル (81)
【氏名又は名称原語表記】INVISTA Technologies S.a.r.l.
【住所又は居所原語表記】Talstrasse 80,8001 Zurich,Switzerland
【Fターム(参考)】