説明

低エーテル組成物およびデリバリー装置

角質溶解薬、特にサリチル酸を含み、並びにニトロセルロースおよび一以上の揮発性成分を含む皮膚塗布用の低エーテルゲル組成物であって、角質溶解薬が皮膚の治療をするために必要な時間、皮膚との接触表面に保護バリアを形成するのに十分な被膜を形成する当該組成物;当該組成物を使用する治療方法、並びに当該組成物を含有するディスペンサ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年10月8日出願の米国仮出願第61/249,788号による優先権を主張する。当該出願の内容は、参照することによりその全てが本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
近年、化粧品および医薬品の単位用量デリバリーを提供するために、間欠薬物分ディスペンシングデリバリーシステムが開発された。当該システムは、医薬品をディスペンスし塗布するのに操作しやすく設計されている。当該システムには、例えば米国特許第7,309,195号および米国公開特許第2007/0020038号に記載されたペン型ディスペンサ等の装置が含まれ、それらは化粧品や医薬品の塗布用の統合装置をも含む一の装置内に当該品を貯蔵することが可能といわれている。当該装置は、歯磨剤(例えば、歯磨ゲル、練歯磨剤、口腔洗浄薬、洗口液、歯用増白剤等)、化粧品(例えば、マスカラやアイライナー等)、ヘアケア製品および/またはスキントリートメント組成物を含む種々の化粧品または医薬品に有用であると言われている。
【0003】
当該デリバリーシステムを利用できるかもしれない揮発性溶剤を含む特定の局所医薬/化粧組成物は、従来、当該システムで利用されてこなかった。当該組成物が有効成分のためのデリバリービーイクルとして必要な大量の揮発性溶剤および被膜形成剤等の追加の薬剤を含有するという事実を除いては、当該装置は特に局所液体化粧組成物または医薬組成物にとって有用であり得るだろう。例えば、米国特許第5,433,950号は、皮膚障害治療用の特定の液体およびゲル製剤を記載しており、その製剤は、主としてジエチルエーテルである揮発性溶剤中にニトロセルロースの被膜形成剤を含む弾性コロジオンビーイクルを含有する。当該組成物は、疣、胼胝および魚の目等の皮膚障害、または面皰や乾癬等の他の皮膚障害の治療のための、例えば角質溶解剤等の有効成分を含有可能である。当該製剤には揮発性溶剤が含まれるために、当該間欠ディスペンシング装置からの、最初の使用前または使用の間のいかなる実質的な溶剤の漏出も、現在監督官庁により許可されたよりも高濃度の有効成分を有する治療組成物をもたらしてしまう。
【0004】
従って、間欠ディスペンシングデリバリーシステムに詰められたときに、当該組成物中で許容可能な有効成分濃度を維持し、化粧組成物または医薬組成物を含有する揮発性物質が必要とされる。さらに、間欠ディスペンシングデリバリーシステムに含まれたときに、十分な被膜形成能を備え、にもかかわらず当該組成物中で許容可能な有効成分濃度を維持する被膜形成医薬組成物が必要とされる。当該組成物は、当該製剤に対する規制許容量を超えた高い有効薬剤の濃度上昇をもたらす揮発性溶剤量の過剰な低下をよりよく阻止し、それにもかかわらず塗布のさいに有用な処置被膜を形成するだろう。本発明によって提供されるこれらおよび他の目的物については、本明細書に完全に記載し権利を主張する。
【0005】
本明細書で引用した全ての特許および非特許参考文献は、これに関して参照することによって全てが本明細書に援用される。本節および本明細書のいかなる部分におけるいかなる参考文献に関する確認または議論も、当該参考文献が本出願に対する既知の発明として利用できるということを認めるものと解釈されてはならない。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、濃度約17%(w/w)までのサリチル酸またはその塩、被膜形成剤、および一以上の揮発性成分を含む局所塗布用のゲル組成物を提供し、ここで当該組成物は約3%(w/w)から約14%(w/w)の量のエーテルを含む。
【0007】
本発明はさらに、濃度約17%(w/w)までのサリチル酸、約5から約20%(w/w)の量のコロジオン製品および一以上の揮発性成分を含む局所塗布用のゲル組成物を提供し、ここで当該組成物は約3%(w/w)から約14%(w/w)の量のエーテルを含む。
【0008】
本発明はまた、濃度約17%(w/w)までのサリチル酸および0.2%から約1.0%(w/w)の量のニトロセルロースを含む局所塗布用のゲル組成物も提供する。
【0009】
本発明はさらに、角質溶解薬を含み並びに約5%から20%(w/w)の量のコロジオン製品および一以上の揮発性成分を含む皮膚塗布用のゲル組成物を提供し、ここで当該組成物は、約3%(w/w)から約14%(w/w)の量のエーテルを含み、角質溶解薬が皮膚の治療をするために必要な時間、皮膚との接触表面に保護バリアを形成するのに十分な被膜を形成する。
【0010】
本発明はまた、角質溶解薬を含み並びに約0.2%から1.0%(w/w)の量のニトロセルロースおよび一以上の揮発性成分を含む皮膚塗布用のゲル組成物も提供し、ここで当該組成物は、約3%(w/w)から約14%(w/w)の量のエーテルを含み、角質溶解薬が皮膚の治療をするために必要な時間、皮膚との接触表面に保護バリアを形成するのに十分な被膜を形成する。
【0011】
本発明はまた、本発明の組成物の皮膚への塗布を含む患者の皮膚疾患を治療する方法も提供し、ここで当該組成物は、サリチル酸が障害の治療をするために必要な時間、皮膚との接触表面に保護バリア形成するのに十分な被膜を形成する。
【0012】
本発明はさらに、患者の皮膚疾患の治療用組成物を投与するためのディスペンサを提供し、ここで当該ディスペンサは、ディスペンシング手段および患者に塗布する前の当該組成物中の揮発性物質の蒸発を遅延するための手段と連絡するリザーバ中に本発明のゲル組成物を含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1−室温(RT)および高温(40℃)に13週間放置された対照および本発明ゲル製剤を満たしたペンの平均重量減少パーセントを示すグラフ。
【図2】図2−対照の液体製剤によって形成された被膜を示す倍率20倍の顕微鏡写真。
【図3】図3−対照のゲル製剤によって形成された被膜を示す倍率30倍の顕微鏡写真。
【図4】図4−本発明のゲル製剤によって形成された被膜を示す倍率20倍の顕微鏡写真。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書に記載の通り本発明は、有効成分および揮発性溶剤を含有する組成物並びに当該組成物を貯蔵しデリバリーするデリバリー装置の機能強化を提供する。ある種の実施態様において当該組成物は被膜形成剤も含む。本発明の組成物は、当該組成物が当該デリバリー装置に貯蔵され当該装置から塗布されたときの、揮発性成分の減量損失に備える。ある種の実施態様において装置には、種々の皮膚症状を治療するために製剤を皮膚に簡便に塗布できるように設計されたペン型のデリバリーシステムが含まれる。
【0015】
[製剤]
一実施態様において、本発明は、化粧用または薬用の有効成分を含む局所塗布用の液体組成物を提供し、ここで当該組成物は約3%(w/w)から約14%(w/w)の量のエーテルを含む。ある種の実施態様においてエーテル含量は、約6%ないし約10%(w/w)の間にある。ある種の実施態様においてエーテル含量は、約6%ないし約7%(w/w)の間にある。ある種の実施態様において当該エーテルは、化粧用または薬用組成物中で有用なエーテル、特にジエチルエーテルを含むことが可能である。ある種の実施態様において当該組成物は、揮発性アルコール成分を追加して含有してもよく、化粧用または薬用組成物に有用なアルコール、例えばメタノール、エタノールおよびプロパノール、並びにその混合物等を含むことが可能である。
【0016】
ある種の実施態様において本発明の製剤は、例えば疣、魚の目および胼胝等の皮膚障害の治療に有用である。他の実施態様において当該製剤は、例えば座瘡、乾癬、乾燥皮膚、爪真菌症、内反趾爪等の他の疾患の治療に使用される。疣治療薬または魚の目・胼胝治療薬として製剤するとき、本発明のある種の実施態様は、有効剤としてサリチル酸を含有することができる。当該組成物が爪の障害または疾病(例えば、爪真菌症)の治療を意図する場合には、例えば、クロトリマゾール、ブテナフィン、テルビナフィン、ミコナゾールを含む抗真菌剤等の他の有効成分を添加することが可能である。本明細書で使用する場合、用語「サリチル酸」には、局所塗布用組成物への使用が許容可能な酸およびそのいかなる塩またはエステルが含まれる。適した塩には、サリチル酸のナトリウム、カリウム、カルシウム、リチウムまたはマグネシウム塩が含まれる。適したエステルには、例えば、サリチル酸メチル等のサリチル酸のCないしCエステルが含まれる。他のエステルには、サリチル酸のサリチル酸エステルであるサルサラート(サリチルサリチル酸)が含まれる。最も好ましくは有効成分として酸型が用いられる。サリチル酸は2−ヒドロキシ安息香酸としても知られている。爪および/または皮膚へのサリチル酸の浸透を促進するために、局所製剤中に任意に他の成分を用いることができる。当該薬剤には、例えば、尿素、スルフヒドリル剤および硫化ナトリウム等の硫黄系の還元剤等の爪軟化剤および爪剥離剤、爪浸透エンハンサー、並びに爪および/または皮膚の水和を促進するための吸蔵剤および/または親水性充填剤が含まれ得る。
【0017】
米国FDAのモノグラフ規則は、再審査なしでの販売を許可するための疣治療薬および魚の目/胼胝治療薬中の有効成分濃度の制限量を規定している。当該規則下において、濃度を明記した組成物が販売されることにより、サリチル酸濃度が具体的に規制される。従って、ある種の実施態様において当該組成物は、約17%(w/w)までの量のサリチル酸を含有してもよい。ある種の実施態様において当該組成物は、約5%から約17%の量のサリチル酸を含有してもよい。しかし、当該組成物が特定の医薬品または化粧品の規則の範囲に入るかどうかにかかわらず、当該組成物中においてサリチル酸をより高含量とすることは、本発明の教示するところでは当該分野の通常技術で調製可能なものと考えられる。
【0018】
他の実施態様において本発明には、サリチル酸を含みしかも約5ないし約20%(w/w)の量のコロジオン製品を含有する、局所塗布用ゲル組成物がさらに含まれる。本明細書で使用する場合、用語コロジオン製品には、コロジオンおよび弾性コロジオンの双方が含まれる。コロジオン製品とは、ニトロセルロース、ジエチルエーテルおよびエチルアルコールを含む米国薬局方で規定する製剤である。ニトロセルロースは、有効成分が治療をするために十分な時間、有効成分(ここではサリチル酸)を蒸発から保護する被膜形成剤として作用する。弾性コロジオンは、可塑剤として樟脳およびヒマシ油が添加されている点でコロジオンと異なる。ある種の実施態様において組成物は、約5%ないし約10%(w/w)の量のコロジオン製品を含有する。 従って、ある種の実施態様において本発明は、サリチル酸を含みおよび約0.2%から1.0%(w/w)のニトロセルロースを含む皮膚障害塗布用の液体組成物を提供し、ここで当該組成物は、サリチル酸が障害を治療するために必要な時間、皮膚との接触表面に保護バリアを形成するのに十分な被膜を形成する。ある種の実施態様において当該組成物は、約0.25%から約0.50%(w/w)の量のニトロセルロースを含んでもよい。
【0019】
ある種の実施態様において本発明は、この種の製剤で歴史的に使用された最も揮発性の溶剤、例えば、沸点が34.5℃であるエチルエーテル等の量を減少し、その一方、間欠単位用量ディスペンサから必要とする患者の表面へ滴下して塗布することができる能力のあるゲル製剤を維持する、サリチル酸製剤を提供する。当該装置からのサリチル酸製剤の塗布により皮膚上にサリチル酸デリバリング被膜が形成される。ある種の実施態様において本発明には、低含量の低沸点溶剤、例えばエチルエーテル等の40℃以下の沸点を有する溶剤を含有し、しかも、被膜形成ポリマーをなお溶解し皮膚に塗布されたときに良好な被膜を形成する高含量の高沸点溶剤、例えば約70℃以上の沸点を有する溶剤を含む製剤が含まれる。当該高沸点溶剤の例には、例えば酢酸エチル(沸点=77℃)および酢酸イソブチル(沸点=118℃)が含まれる。
【0020】
ある種の実施態様において本発明の組成物には、付加的な増粘剤/粘性剤を更に含んでもよい。例えば、Klucel(登録商標) HF(Hercules Inc.,Aqualon Division Hopewell,VA USA)を含むヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系ポリマーを約2.6%量まで添加することができる。ある種の実施態様において本発明の製剤は、微量の乳酸エチルをさらに含み、それはニトロセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロース双方の可塑剤であり、製剤により作製された塗布乾燥した被膜の強度/弾力性を改良するための量だけ含まれる。
【0021】
ある種の実施態様において本発明の製剤は、塗布乾燥した被膜の強度/弾力性を改良するための量のニトロセルロースを追加して含有してもよい。例えば、製剤には、上記の通り酢酸エチルまたは他のアルキル酢酸エステル等の適切な高沸点溶剤等中にピロキシリン溶液由来のニトロセルロースが含まれてもよい。当該ピロキシリン溶液は市販されており(CAS 9004−70−0)(Alfa Chem,Kings Point,NY USA)、マニキュア液等の化粧品塗布および家具のラッカー塗装に使用されてきた。ある種の実施態様において本発明には、被膜形成特性を改良するためのニトロセルロース互換性ポリマー、例えばISP International Specialty Produsts(Wayne,NJ,USA)社製のGantrez ES−425、Gantrez ES 335−1、およびGantrez ES−225等のGantrezポリマー材料が含まれてもよい。これらのGantrezポリマーは、PVM/MAのブチル、イソプロピル、およびエチルエステルを含むポリメチルビニルエーテル/マレイン酸(PVM/MA)のアルキルエステルである。当業者は、適切なPVM/MAポリマーが所期の製剤において塗布の際に高品質で、強度があり、弾力性のある被膜を形成するために、他のポリマーの被膜形成剤/粘性剤と互換性を示すことを認めるであろう。
【0022】
ある種の実施態様において本発明の組成物は、従来の疣治療に使用される配合物中に局所麻酔薬を含んでもよく、本発明は角質溶解薬の皮膚への塗布にしばしば付随する局所的な不快感および刺激を緩和する。局所麻酔薬には、限定されるものではないが、安息香酸のエステル、例えばベンゾカイン、プロカイン、テトラカイン、およびクロロプロカイン等、並びにアミド、例えばブピバカイン、ジブカイン、リドカイン、メピバカイン、プリロカイン、およびエチドカイン等が含まれる。存在する局所麻酔薬の含量は、当該組成物が塗布される範囲での局所麻酔の達成に有効な量であり、一般的には組成物重量の約0.5%ないし約15%またはより好ましくは1%ないし10%である。例えば、リドカインに関して有効範囲は約0.5%ないし約4%である。ベンゾカインでは、有効範囲は約5%ないし約25%である。
【0023】
[治療法]
本発明はさらに、本発明の低エーテル含量組成物による種々の皮膚疾患を治療する方法を提供する。従ってある種の実施態様において本発明は、角質溶解薬を含みしかも約0.2%から1.0%(w/w)の量のニトロセルロースを含む組成物を患者の患部に塗布することを含む、患者の疾患を治療する方法を提供し、ここで当該組成物は、角質溶解薬が患部を治療するために必要な時間、皮膚との接触表面に、保護バリアを形成するのに十分な被膜を形成する。以下に明示した通り、本発明の低エーテル含量で調剤したゲル組成物は、従来の組成物より驚くほど優れた被膜を提供する。このため、当該組成物は、改良被膜による有効薬剤への暴露の上昇という利益による当該組成物による治療に受け入れやすい障害治療における進歩を提供するものと考えられる。ある種の実施態様において角質溶解薬は、サリチル酸、アスコルビン酸、パントテン酸カルシウム、氷酢酸、乳酸、ポドフィルム樹脂、および塩化亜鉛またはそれらの組み合せであってよい。ある種の実施態様においてサリチル酸は、約17%の量まで含まれてもよい。ある種の実施態様においてサリチル酸は、約5%(w/w)から約17%(w/w)の量含まれてもよい。ある種の実施態様において疾患には、例えば疣、魚の目および胼胝等の皮膚障害が含まれてもよい。他の実施態様において疾患には、座瘡、乾癬、乾燥皮膚、爪真菌症、または内反趾爪が含まれてもよい。
【0024】
角質溶解薬は過角化症の治療において局所的に使用され、皮膚の角質層を軟化しおよび破壊することによって作用し、それによって塗布部位で剥離を亢進する。
【0025】
従って一側面において本発明は、サリチル酸等の角質溶解薬、弾性コロジオンおよび形成被膜の弾性を高めるために十分な量の局所的に許容可能なポリマーを含む、本発明の被膜形成液体組成物を使用することにより過角化症の治療に有用であり、服薬遵守および治療効果を改良するであろう。
【0026】
本発明にはまた、治療上有効量の本発明の少なくとも一組成物を含む組成物を疣に塗布することを含む疣治療法も含まれる。ある種の実施態様において当該方法は、サリチル酸またはその塩を含む本発明の組成物を塗布することを含む。一般的に、当該組成物は、毎日または週に2ないし3回等の間欠的な間隔で疣に塗布することができる。治療期間は疣の大きさに依存して大きく異なる。
【0027】
本発明にはさらに、治療上有効量の本発明の少なくとも一組成物を含む組成物を爪に塗布することを含む爪真菌症の治療法が含まれる。一般的に製剤は、毎日または週2回ないし3回等の間欠的な間隔で爪に塗布される。治療期間は、感染症の重症度、爪が治療を受ける局部、患者の年齢、爪の厚さ、爪の成長速度等に依存して大きく異なる。一般的に若い人の足指爪には6カ月までの治療期間が予想され、一方、老人の足指爪には約1年間までの治療期間が予想され得る。これらの期間は、足指爪が足指から出て完全に成長するのに必要とされる時間を反映する。手指爪の成長は足指爪の成長の約2倍速いので、手指爪の治療期間はより速いと予想され得る。治療の有効性は、症状の鎮静または消失によって評価することができる。爪の末端部だけが感染した軽症の場合には、より短い治療期間が必要とされると予想され得る。
【0028】
[装置]
本発明はさらに、本明細書記載の皮膚障害を治療するための組成物投与用ディスペンサを提供し、ここで当該ディスペンサは、ディスペンシング手段および患者への塗布前の当該組成物中の揮発性物質の蒸発遅延手段と連絡するリザーバ中に、本発明の液体組成物を含む。本発明のある種の実施態様において当該ディスペンサは、ペン様型装置である。
【0029】
ある種の実施態様において当該ディスペンサは、当該組成物の揮発性成分の蒸発を遅延させる、例えば、バリアフィルムから加工されディスペンサが内部に設置された後に密封されるパウチ等の追加の手段を含む。追加の実施態様において揮発性物質の蒸発の遅延手段は、リザーバとディスペンシング手段との間へのシール機構の配置である。
【0030】
ある種の実施態様において本発明は、サリチル酸製剤を容れたリザーバ、リザーバから皮膚または爪または髪の表面等の患者の表面に製剤を伝えるためのディスペンシング先端、および製剤をディスペンシング先端に通すための加圧機構を備える装置から組成物を塗布することによってサリチル酸を含有する製剤を必要としている患者に塗布するための手段を提供する。加圧機構は、利用者によって機械的に操作されるプランジャ―または製剤をディスペンシング先端の開口に通す類似した機構であってよい。本発明はまた、ペン型ディスペンサシステムからの揮発溶剤成分の放出を遅延するように設計されたディスペンシング装置も提供する。ある種の実施態様においてディスペンシング装置には、サリチル酸を容れる樽型のリザーバ、およびリザーバの圧力により製剤がディスペンシング先端中のバリアを通して移動し、必要としている患者の表面に塗布するための液滴を形成するまで、製剤をリザーバ中に保持するディスペンシング先端を備えたペン型ディスペンサが含まれる。圧力は、例えば、患者により作動されるプランジャ―によってかけることができる。装置は、使用しないときにディスペンサ先端を囲うためのキャップを任意で含むことができる。本発明によって提供される改良点には、形を含むペン自体の意匠の要素および密閉手段の構造物の材料が含まれる。ある種の既存の発明装置において密閉手段は、装置のディスペンシング先端末の反対側のペン型ディスペンサのプランジャ―端末に設置された「O」リングである。ある種の実施態様において本発明には、装置からの揮発性の組成物成分いかなる放出をも封じるために、適切な溶剤耐性材質から作成したディスペンサ先端末の、多数のゴム製の「O」リング型の又は同等物の密封手段で装置を装備することが含まれる。加えて、本発明の装置には、ペンの継ぎ目、例えばペンディスペンサ先端を覆うキャプと製剤を詰めたペンバレル(ペン軸)の間等を密閉するために、一以上の溶剤バリアフィルム接着テープ(例えば3M(St.Paul,MN,USA)から入手可能な9792Rアルミニウムテープ等)が含まれてもよい。ある種の実施態様において本発明の装置にはさらに、例えば、Hueck Foils(例えば、TPMSF005SB)(Wall,NJ,USA)から入手可能なPET/アルミ箔/接着剤等のヒートシール可能な、ラミネート包装フィルムから作成したパウチの中に詰めたディスペンサ装置を設置することによって、上記の製剤の改変物、密閉剤、テーピング、と組合せてかまたは独立して装置を間接包装することが含まれてもよい。
【0031】
[実験]
表1は、ペン様ディスペンサ装置中の揮発性の蒸発に耐える能力を測定するために調剤し既知のサリチル酸製剤と比較した、17重量%のサリチル酸を含有する試験的なゲル製剤を示す。対照のゲル製剤は、対照の液体よりも少量のコロジオンを従って低含量のエーテルを含有し、しかも添加アルコールを含有する。試験的なゲル製剤は、皮膚への塗布の際になお有効な被膜を形成しながらも、さらに揮発性成分をより低くし溶剤の蒸発を減少するために、対照のゲル製剤よりもより少量のコロジオンを有するように設計された。表中の全ての量は、製剤に対する重量%で示されている。弾性コロジオン成分(ピロキシリン(ニトロセルロース)、ヒマシ油、樟脳、エタノール、及びエチルエーテル)に対する重量は、弾性コロジオン中のそれらの重量%に基づいて示されている。
【表1】

【0032】

全ての製剤は、圧搾空気駆動の撹拌モーター、二枚羽根撹拌棒を使用して広口瓶の中で調剤した。撹拌作業の間、広口瓶の開口部を覆うためにパラフィルムを使用した。最初に、アルコール、乳酸エチル及びIndopol L−50を広口瓶に詰め10分間撹拌した。その後、混合液にサリチル酸を添加し30分間撹拌した。次に、混合液に弾性コロジオンを添加し10分間撹拌した。その後、約3ないし5分間にわたって撹拌する間に、混合液にKlucel HF粉末をゆっくりと添加し、調合を完全にするために最終混合液をさらに30分間撹拌した。
【0033】
ペン様ディスペンサ装置に貯蔵されたときの室温及び40℃での経時的な揮発性物質の蒸発への製剤の効果を測定するため、対照のゲル製剤とのさらに進んだ比較分析のために、実施例3及び4のゲル製剤を選択した。製剤を60ccの注射器に詰め込み、それを使用してゲル溶液をペンバレルの中に満たした。ペンバレルをプラスチックの挿入物で密閉し、シリコン製の先端チップで覆いキャップでスナップ嵌めした。試料のペンは室温及び40℃で13週間放置した。図1は、本発明の製剤が、室温および高温条件の双方で経時的に揮発性成分の減少を低下するうえで、実質的な改良を提供することを証明する試験結果を示す。
【0034】
実施例3のゲル製剤を、さらに対照の液体製剤と比較してインビトロの被膜形成試験にかけた。図2は、スポイトでスライドガラスに沈着し、その後完全に乾燥するまで数分間乾燥した、2滴の対照の液体製剤試料の顕微鏡写真である。デジタル顕微鏡画像は倍率20倍で作成した。顕微鏡写真上のマーカーは、スライドガラス上の乾燥被膜の点が直径約7.5mmであることを示す。図3は、スポイトでスライドガラスに沈着し、その後完全に乾燥するまで数分間乾燥した、2滴の対照のゲル製剤の顕微鏡写真である。画像は、同じ顕微鏡を使用して倍率30倍で作成した。顕微鏡写真上のマーカーは、乾燥被膜の点が直径約4mmであることを示す。図4は、スポイトでスライドガラスに沈着し、その後完全に乾燥するまで数分間乾燥した、2滴の実施例3のゲル製剤の顕微鏡写真である。画像は、同じ顕微鏡を使用して倍率20倍で作成した。顕微鏡写真上のマーカーは、乾燥被膜の点が直径約8.1mmであることを示す。
【0035】
図2(対照液体)、図3(対照ゲル)及び図4(実施例3の製剤)の比較は、本発明の実施例の製剤によって証明された、被膜形成における予期せぬ優位性を示す。対照の液体および対照のゲル製剤の乾燥被膜点は、最初に液滴の外側の周囲を回って乾燥し、結果としてそこでより厚みのある「山脈のような」被膜となる。そのために山脈の内側の部分のスライド上には実質的にかなり少ない物質しか沈積せず、被膜はその範囲の至る所で厚さが均一でない。対照の被膜はまた、ミクロンサイズの多数のサブ粒子が凝集した構造も示し、サブ粒子は塊になっている。対照的に、実施例3のゲル製剤の乾燥被膜は、縁からではなく、その全面至る所で均一に乾燥し、微粒子からなるやや大きい凝集物が見られるものの、全体としてその全範囲の至る所でより密集しておりより均一である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濃度約17%(w/w)までのサリチル酸またはその塩、被膜形成剤、および一以上の揮発性成分を含む局所塗布用のゲル組成物であって、約3%(w/w)から約14%(w/w)の量のエーテルを含む当該組成物。
【請求項2】
約5%から約17%(w/w)の量のサリチル酸又はその塩が存在する請求項1に記載のゲル組成物。
【請求項3】
約6%ないし約10%(w/w)の量のエーテルが存在する請求項1に記載のゲル組成物。
【請求項4】
約6%ないし約7%(w/w)の量のエーテルが存在する請求項1に記載のゲル組成物。
【請求項5】
濃度約17%(w/w)までのサリチル酸、約5ないし約20%(w/w)の量のコロジオン製品を含む局所塗布用のゲル組成物。
【請求項6】
約5ないし約10%(w/w)の量のコロジオン製品を含む請求項5に記載のゲル組成物。
【請求項7】
濃度約17%(w/w)までのサリチル酸および0.2から約1.0%(w/w)の量のニトロセルロースを含む局所塗布用のゲル組成物。
【請求項8】
約0.25ないし約0.5%(w/w)の量のニトロセルロースを含む請求項7に記載のゲル組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の組成物を含む疣治療製品。
【請求項10】
請求項1に記載の組成物を含む魚の目/胼胝治療製品。
【請求項11】
角質溶解薬を含み並びに約5%から20%(w/w)の量のコロジオン製品および一以上の揮発性成分を含む皮膚塗布用のゲル組成物であって、約3%(w/w)から約14%(w/w)の量のエーテルを含み、角質溶解薬が皮膚を治療するために必要な時間、皮膚との接触表面に保護バリアを形成するのに十分な被膜を形成する、当該組成物。
【請求項12】
約5ないし約10%(w/w)の量のコロジオン製品を含む請求項11に記載のゲル組成物。
【請求項13】
約6ないし約10%(w/w)の量のエーテルが存在する請求項11に記載のゲル組成物。
【請求項14】
約6ないし約7%(w/w)の量のエーテルが存在する請求項11に記載のゲル組成物。
【請求項15】
角質溶解薬がサリチル酸、アスコルビン酸、パントテン酸カルシウム、氷酢酸、乳酸、ポドフィルム樹脂、および塩化亜鉛またはそれらの組み合せから選択される、請求項11に記載のゲル組成物。
【請求項16】
角質溶解薬がサリチル酸である請求項15に記載のゲル組成物。
【請求項17】
約17%(w/w)までの量のサリチル酸が存在する請求項16に記載のゲル組成物。
【請求項18】
約5%(w/w)から17%(w/w)の量のサリチル酸が存在し得る請求項16に記載のゲル組成物。
【請求項19】
角質溶解薬を含みおよび約0.2%から1.0%(w/w)の量のニトロセルロースを含む皮膚塗布用のゲル組成物であって、約3%(w/w)から約14%(w/w)の量のエーテルを含み、角質溶解薬が皮膚を治療するために必要な時間、皮膚との接触表面に保護バリアを形成するのに十分な被膜を形成する、当該組成物。
【請求項20】
約0.25ないし約0.50%(w/w)の量のニトロセルロースが存在する請求項19に記載のゲル組成物。
【請求項21】
約6%ないし約10%(w/w)の量のエーテルが存在する請求項19に記載のゲル組成物。
【請求項22】
約6%ないし約7%(w/w)の量のエーテルが存在する請求項19に記載のゲル組成物。
【請求項23】
角質溶解薬がサリチル酸、アスコルビン酸、パントテン酸カルシウム、氷酢酸、乳酸、ポドフィルム樹脂、および塩化亜鉛またはそれらの組み合せから選択される、請求項19に記載のゲル組成物。
【請求項24】
角質溶解薬がサリチル酸である請求項23に記載のゲル組成物。
【請求項25】
約17%(w/w)までの量のサリチル酸が存在する請求項24に記載のゲル組成物。
【請求項26】
約5%(w/w)から17%(w/w)の量のサリチル酸が存在し得る請求項24に記載のゲル組成物。
【請求項27】
麻酔薬をさらに含む請求項11、および19に記載のゲル組成物。
【請求項28】
請求項1記載の組成物を皮膚に塗布することを含む患者の皮膚疾患を治療する方法であって、ここで当該組成物が、サリチル酸が障害を治療するために必要な時間、皮膚との接触表面に保護バリアを形成するのに十分な被膜を形成する当該方法。
【請求項29】
患者の皮膚疾患治療用組成物を投与するためのディスペンサであって、ここで
ディスペンシング手段および患者への塗布前の当該組成物中の揮発性物質の蒸発を遅延するための手段と連絡するリザーバ中に請求項1に記載のゲル組成物を含む当該ディスペンサ。
【請求項30】
ペン様型装置である請求項29に記載のディスペンサ。
【請求項31】
揮発性物質の蒸発を遅延するための手段がディスペンサを内側に設置した後に密閉されるパウチである、請求項29に記載のディスペンサ。
【請求項32】
パウチがバリアフィルムを含む請求項29に記載のディスペンサ。
【請求項33】
揮発性物質の蒸発を遅延するための手段がリザーバとディスペンシング手段との間のシール機構の配置である、請求項29に記載のディスペンサ。
【請求項34】
必要としている患者へのサリチル酸の局所的な送達を改良するための方法であって、当該患者へ請求項1記載の組成物を局所的に投与することを含む当該方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−507367(P2013−507367A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533227(P2012−533227)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【国際出願番号】PCT/US2010/051257
【国際公開番号】WO2011/044008
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(512089335)エムエスデー・コンシユーマー・ケア・インコーポレイテツド (1)
【Fターム(参考)】