説明

低カルボキシル化スチレンブタジエンベースのラテックスから製造された再分散可能なポリマー粉体

【課題】低カルボキル化で低Tgで大きな平均粒子サイズの水不溶性膜形成性ポリマーラテックスもしくはエマルションと、コロイド安定化剤との水性混合物を乾燥させることにより、水に再分散可能なポリマー粉体を提供する。
【解決手段】ラテックスポリマーは2000Å〜5000Åの平均粒子サイズ、並びにポリマーの重量を基準にして0.1重量%〜2.75重量%の少なくとも1種のエチレン性不飽和ジカルボン酸、その塩もしくはその混合物のカルボキシル化の量を有する。このポリマーおよびコロイド安定化剤としてポリビニルアルコールを含む分散物は低い粘度を示し、噴霧乾燥を容易にし、低圧力噴霧乾燥での高固形分含量の分散物の使用を可能にし生産効率を増大させる。再分散可能なポリマー粉体を含むモルタルのようなセメント組成物は、より良好な作業性もしくはコテ塗りのための低い速度の粘性発現、より早い硬化時間、よりすぐれた熱フロー特性を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は大きな平均粒子サイズを有する低カルボキシル化スチレンブタジエンコポリマーラテックスから製造される、セメント組成物に使用するための再分散可能なポリマー粉体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
建築用途においては、モルタルはセメント、砂、および有機ポリマーを用いて製造されうる。輸送コストを低減させるために、ポリマーは再分散可能なポリマー粉体として乾燥形状で輸送され添加されることができる。再分散可能なポリマー粉体はセメントベースのタイル接着剤の接着性および適用性を向上させる。粉体形態のこのポリマーは一般的に、自由流動性粉体を得るために液体ポリマー組成物を噴霧乾燥することにより製造される。その粉体が添加されるコンクリートのような適用配合物においてその機能を発揮させるために、適用配合物中でポリマー粉体は容易に再分散可能であることが望まれる。また、ラテックスもしくはポリマー分散物から噴霧乾燥によって再分散可能なポリマー粉体(RDP)を製造する場合に、再分散性を喪失させることなく、さらに容易な噴霧乾燥のためのさらに高い固形分量の組成物、並びにRDPのさらに効率的な製造のためのさらに低い圧力装置の使用を可能にするために、低粘度のポリマー分散物が望まれる。ラテックスポリマーのカルボキシル化の量を低減させることはポリマー分散物の粘度を低減させるが、再分散性に悪影響をもたらしうる。部分的に加水分解されたポリビニルアルコール(PVOH)は概して保護コロイドとして使用され、有機ポリマーの再分散性を向上させる。しかし、効果的な再分散性のためには、多量のPVOHが必要とされ、そしてそれはスチレンブタジエンポリマー組成物もしくは分散物の粘度を不利に増大させ、噴霧乾燥による粉体の製造を困難にする。概して、適用中の作業性またはコテ塗りの容易さのための低粘度を伴いつつさらに素早い硬化時間のために、さらに高いおよびさらに早い熱フロー特性を示すモルタルが望まれる。
【0003】
ネルソン(Nelson)への米国特許第3,822,230号は約500Å〜約10,000Å、好ましくは約1500Å〜約4,000Åの平均粒子直径を有するラテックス組成物を開示し、これは噴霧乾燥されて粉体生成物を形成することができ、この粉体生成物は水中に分散可能で元のラテックとほぼ同じ粒子サイズを有する再構成されたラテックスを形成する。しかし、1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸の二ナトリウム塩のような2つの隣接カルボキシル基を有するさらなる配合化合物が水への再分散性を提供するために必要とされ;これらはカルボキシル化の量に加わる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第3,822,230号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の再分散可能なスチレンブタジエンポリマー粉体と配合されたモルタルは、他のSB RDPと比較して予想外に素早い硬化時間および予想外に遅い粘性発現速度を示し、これは適用中のコテ塗りの容易さまたは作業性のために有利である。よって、本発明は噴霧乾燥の前の他の既知のSB RDP組成物におけるPVOH組成物およびラテックス分散物の粘性発現の課題、並びに他の既知SB RDPを含む既知のセメント組成物での使用における課題を解決し、これは噴霧乾燥のためのさらに高い固形分量の組成物の使用を可能にし、並びに再分散性の喪失なしにさらに効率的なRDPの生産のための低圧装置の使用を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、再分散性のために2つの隣接カルボキシル置換基を有する6員炭素環式化合物を必要としない、水不溶性で低カルボキシル化で大粒子サイズで低Tの少なくとも1種のスチレンブタジエン(SB)コポリマーラテックス製造される少なくとも1種の水不溶性ポリマーおよびコロイド安定化剤、例えば、ポリビニルアルコール(PVOH)を含んでなる再分散可能なポリマー粉体(RDP)を提供する。水に再分散可能な本発明のポリマー粉体は、セメントベースの組成物に、良好な接着特性、高く素早い熱フロー特性、予想外に早い硬化時間、および予想外に低い速度の粘性発現を付与する。このRDPは、水不溶性の膜形成性ポリマーおよび1種以上のコロイド安定化剤、好ましくはポリビニルアルコール(PVOH)の共乾燥混合物を含み、この膜形成性ポリマーはスチレン−ブタジエンコポリマー、またはスチレンおよびブタジエンと1種以上の他のモノマーとの共重合生成物を含む。膜形成性ポリマーは2,000Å〜5,000Å、好ましくは2,100Å〜3,900Å、より好ましくは2,200Å〜3,500Åの平均粒子サイズ、並びに水不溶性膜形成性ポリマーの重量を基準にして0.1重量%〜2.75重量%、好ましくは0.5重量%〜2.5重量%、より好ましくは1重量%〜2重量%の少なくとも1種のエチレン性不飽和ジカルボン酸、その塩またはその混合物、好ましくはイタコン酸および/またはマレイン酸のカルボキシル化の量を有する。本発明のRDPにおけるカルボキシル化の量は、RDPの全重量を基準にして0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、または2.75重量%以下、好ましくは2.5重量%以下、より好ましくは2重量%以下の範囲であることができる。よって、本発明のRDPにおけるカルボキシル化の量は膜形成性ポリマーの共重合からの、すなわち、膜形成性ポリマーにおける共重合されたジカルボン酸からのカルボキシル化から本質的になることができる。あるいは、RDPはRDPの全重量を基準にして0.75重量%以下の追加のジカルボン酸、モノカルボン酸、ポリカルボン酸、例えば、クエン酸、その塩またはその混合物を含むことができる。セメント含有組成物における使用のために、膜形成性ポリマーは30℃未満、好ましくは28℃未満、より好ましくは25℃未満のガラス転移温度(T)を有する。別の形態においては、本発明は、焼結もしくは焼成されたときにセラミックを形成する、例えば、金属塩化物、金属酸化物および金属塩のような1種以上のセラミック形成材料を含む、セラミック組成物における使用のための再分散可能なSB粉体セラミック処理添加剤を提供し、このポリマーは110℃以下のガラス転移温度(T)を有することができ、この形態においては、このポリマーは膜形成性ポリマーと同じ種類のモノマーから重合されうるが、膜形成性であるには高すぎるTを有する場合がある。本発明の好ましい実施形態においては、水不溶性の膜形成性ポリマーはスチレン、ブタジエン、イタコン酸およびアクリロニトリルのモノマーを含んでなるコポリマーである。本発明の形態においては、コロイド安定化剤は、水不溶性の膜形成性ポリマーの重量を基準にして少なくとも1重量%、例えば、2重量%〜30重量%、好ましくは5重量%〜20重量%の量でポリビニルアルコールを含む。
【0007】
本発明の形態においては、再分散可能なポリマー粉体は水不溶性の膜形成性ポリマーとコロイド安定化剤との水性混合物を乾燥させることにより製造されることができ、水に再分散可能なポリマー粉体を得ることができる。水不溶性の膜形成性ポリマーの水性分散物は重合により提供されることができ、コロイド安定化剤は重合後にこの水性分散物と混合されることができ、次いで、水性分散物は噴霧乾燥されて、水に再分散可能なポリマー粉体を得ることができる。低カルボキシル化で大粒子サイズで低Tgで水不溶性の膜形成性ポリマーをPVOHコロイド安定化剤と共に使用することは液体ポリマー組成物の粘度を予想外に低くし、このことは噴霧乾燥を容易にし、よってポリマー組成物を再分散可能な粉体にすることを容易にし、噴霧乾燥のためにさらに高い固形分量の組成物およびさらに低い圧力装置の使用を可能にする。少量のカルボキシル化を有し、高度に疎水性の水不溶性の膜形成性ポリマーを含む組成物を使用してさえ、優れた再分散性が達成される。
【0008】
本発明の別の形態においては、SBコポリマーラテックスから製造される水に再分散可能なポリマー粉体とセメント材料とを混合してモルタルのような組成物を得ることにより、セメントベースのタイル接着剤のようなセメント組成物が製造されることができ、この組成物はラテックス処理および使用における作業性またはコテ塗りに有利でかつ優れた熱フロー特性を提供する予想外に低い速度の粘性発現、並びに予想外に早い硬化時間を示す。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は水に再分散したときの本発明の再分散可能なポリマー粉体についての粒子サイズ分布データを示すグラフであり、水不溶性の膜形成性ポリマーは63.5部のスチレン、28.75部のブタジエン、6部のアクリロニトリルおよび1.75部のイタコン酸のコモノマー含量(全コモノマー重量を基準にして1.75重量%のイタコン酸のカルボキシル化)を有し、2490Åの粒子サイズを有するカルボキシル化スチレンブタジエン(SB)ラテックスであり、この再分散可能なポリマー粉体中のコロイド安定化剤はポリビニルアルコールである。
【図2】図2は水に再分散したときの本発明の再分散可能なポリマー粉体についての粒子サイズ分布データを示すグラフであり、水不溶性の膜形成性ポリマーは62.5部のスチレン、29部のブタジエン、6部のアクリロニトリルおよび2.5部のイタコン酸のコモノマー含量(全コモノマー重量を基準にして2.5重量%のイタコン酸のカルボキシル化)を有し、2600Åの粒子サイズを有するカルボキシル化スチレンブタジエン(SB)ラテックスであり、この再分散可能なポリマー粉体中のコロイド安定化剤はポリビニルアルコールである。
【図3】図3は水に再分散したときの比較の再分散可能なポリマー粉体についての粒子サイズ分布データを示すグラフであり、水不溶性の膜形成性ポリマーは62部のスチレン、35部のブタジエンおよび3部のイタコン酸のコモノマー含量全コモノマー重量を基準にして(3重量%のイタコン酸のカルボキシル化)を有し、1500Åの粒子サイズおよび8℃のTを有するカルボキシル化スチレンブタジエン(SB)ラテックスであり、この再分散可能なポリマー粉体中のコロイド安定化剤はポリビニルアルコールである。
【図4】図4は、実施例2のRDP並びに比較例AおよびBのRDPに対する実施例1の再分散可能なポリマー粉体(RDP)の熱フロー特性を示す熱量測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は添付の図面によってさらに説明される。
他に示されない限りは、全ての温度および圧力単位は室温および標準圧力(STP)である。示される全ての範囲は包括的でありかつ組み合わせ可能である。
【0011】
挿入語句を含む全ての語句は挿入事項を含むものおよびそれが存在しないもののいずれかまたは双方を示す。例えば、語句「(メタ)アクリラート」には選択的に、アクリラートおよびメタクリラートが挙げられる。
【0012】
本明細書において使用される場合、用語「(メタ)アクリラート」はアクリラート、メタクリラートおよびこららの混合物を意味し、用語「(メタ)アクリル」は本明細書において使用される場合、アクリル、メタクリル、およびこれらの混合物を意味する。
【0013】
本明細書において使用される場合、他に示されない限りは、語句「分子量」とは、アニオン性安定化エマルションポリマーについてのポリ(メタクリル酸メチル)もしくはポリ(スチレン)標準に対するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定される重量平均分子量をいう。
【0014】
本明細書において使用される場合、用語「ポリマー」とは、選択的に、1種以上の異なるモノマーから製造されるポリマー、例えば、コポリマー、ターポリマー、テトラポリマー、ペンタポリマーなどをいい、ランダム、ブロック、グラフト、シークエンシャルまたはグラジエントポリマーのいずれであってもよい。
【0015】
本明細書において使用される場合、他に示されない限りは、測定ガラス転移温度(T)が使用される。本明細書において使用される場合、用語「計算T」とは、フォックス式(T.G.Fox、Bull.Am.Physics Soc.第1巻、第3号、123ページ(1956))を用いて計算されたポリマーのTをいう。本明細書において使用される場合、用語「測定T」とは、示差走査熱力測定すなわちDSCを用いて測定される(10℃/分の加熱割合、Tとして変曲の中点を採用)Tを意味する。
【0016】
本明細書において使用される場合、語句「重量%」は重量パーセントを表す。
【0017】
本明細書において使用される場合、他に示されない限りは、語句「平均粒子サイズ」とは、分布における粒子の50重量%がある粒子より小さく、かつ分布における粒子の50重量%がその粒子の50重量%より大きくなるような、レーザー光散乱によって決定される粉体粒子の分布におけるその粒子の最大寸法または粒子直径をいう。当初ラテックス分散粒子については、平均粒子サイズは、マイクロトラックインコーポレーティド(Microtrac Inc;ペンシルベニア州ヨーク)の製品であるナノトラック(Nanotrac)NPA150を用いて動的光散乱による製造者の推奨する手順で測定された。ブラウン運動を受けている粒子から散乱した光のドップラーシフトは、導波路/媒体界面でのレーザーのフレネル反射によって確立される参照ビームと比較されて(ヘテロダイン検波)周波数スペクトルを生じさせ、これは次いでストークス−アインシュタイン式を通じて粒子直径のヒストグラムに変換される。体積平均粒子サイズが記録された。再分散された粒子については、ベックマンコールター(Beckman Coulter;カリフォルニア州ブレア)の製品であるコールター(Coulter)LS230粒子サイズ分析器を用いて、レーザー散乱により製造者の推奨する手順で粒子サイズ分布が測定された。レーザー散乱および偏光散乱強度差散乱を通じて粒子からの散乱光が角度の関数として集められ、次いで粒子サイズ分布に変換される。
【0018】
本明細書において使用される場合、用語「硬化(setting)」とは、Concrete−Microstructure,Properties,&Materials(コンクリート−微細構造、特性および材料)第3版、P.Kumer Mehta,Paulo J.M.Monteiro、220ページに開示されるように、プラスチックセメントペーストの固化をいう。初期硬化と称される固化の開始は、このペーストが加工できなくなる時点を示す。このペーストは突然固化するのではなく、充分に剛性となるのにかなりの時間を必要とする。完全に固化するのに必要な時間は最終硬化と特徴付けられ、これは建築プロセスにおける遅れを回避するために長すぎてはいけない。
【0019】
本発明者は、再分散可能なポリマー粉体について、再分散可能なポリマー粉体中で例えばPVOHのようなコロイド安定化剤を同時に含む一方で、低カルボキシル化を提供する少なくとも1種のエチレン性不飽和ジカルボン酸モノマーを有する低カルボキシル化で低Tで水不溶性の膜形成性スチレンブタジエンポリマーの粒子サイズの増大が、セメント水和に関する向上した反応速度を示す予想外に優れた熱フロー特性、予想外に早いモルタル硬化時間、および作業性またはコテ塗りに有利である予想外に低い速度のモルタル粘性発現を有するセメント組成物を生じさせることを見いだした。それはまた、噴霧乾燥前および噴霧乾燥中での有意に低いラテックス−PVOH粘度をもたらし、それにより噴霧乾燥のためにさらに高い固形分量の組成物および再分散性の喪失なく再分散可能なポリマー粉体のより効率的な生産のためのさらに低い圧力装置の使用を可能にすることができる。例えば、熱量測定による特徴付けは、本発明の再分散可能なポリマー粉体と配合されるモルタルが、他のスチレンブタジエンおよび酢酸ビニルエチレン(VAE)再分散可能なポリマー粉体と配合されたモルタルよりも予想外に優れた熱フロー特性を示すことを示す。同様に、モルタルの熱量測定試験は発熱の速度を測定し、これは水和の速度および硬化時間の相対的に素早い推定についての情報を提供する。よって、ポリマー粒子サイズとカルボキシル化レベルとの組み合わせは再分散性と、高生産性生産の容易さと、向上した最終用途性能との最適なバランスを可能にする。
【0020】
本発明において使用されうるポリマーは、低いカルボキシル化度および大きな平均粒子サイズを有する水不溶性の膜形成性ポリマーである。好ましい水不溶性の膜形成性ポリマーはスチレンブタジエンコポリマー、または他のモノマーと共重合されたスチレンおよびブタジエンである。本発明の実施形態においては、水不溶性の膜形成性ポリマーは大粒子サイズで低カルボキシル化のアクリル系でありうる。
【0021】
水不溶性の膜形成性コポリマーは水性乳化もしくは懸濁重合によって、好ましくは乳化重合によって、従来の方法で、従来の重合温度、例えば、40℃〜120℃、好ましくは70℃以上、好ましくは105℃以下、および従来の重合圧力、例えば、150psi以下、好ましくは100psi以下のジエンコモノマー圧力で製造されうる。重合は従来の量の1種以上の従来の水可溶性もしくは油(モノマー)可溶性開始剤、例えば、t−ブチルペルオキシドおよびクメンヒドロペルオキシド、または亜硫酸塩および亜硫酸水素塩のような還元剤を使用するレドックス開始剤組み合わせを用いて開始されうる。分子量を制御するために、従来の調節剤物質または連鎖移動剤、例えば、メルカプタン、アルカノールおよびダイマーアルファメチルスチレンが、従来の方法で、重合されるモノマーを基準にして0.01〜5.0重量%、または好ましくは3重量%以下の従来の量で重合中に使用されうる。重合プロセスは好ましくは既知の方法で、従来の量の1種以上の従来の乳化剤および/または保護コロイド、例えば、2000以上の数平均分子量を有する水溶性コポリマーの存在下で起こる。好適な乳化剤には、アニオン性、カチオン性、および非イオン性乳化剤、例えば、8〜18炭素のアルキルもしくはアルキルアリールエーテルスルファート、およびそれらの塩のようなアニオン性界面活性剤、並びに例えば、アルキルもしくはアルキルアリールポリグリコールエーテルのような非イオン性界面活性剤が挙げられる。好適な保護コロイドは、1種以上の界面活性剤の代わりにまたは1種以上の界面活性剤に加えて、例えば、ポリビニルアルコール;水可溶性形態の多糖、例えば、デンプンおよびセルロール系物質;タンパク質、例えば、カゼインまたはダイズタンパク質;リグニンスルホナート;および合成コポリマー、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸とカルボキシル官能性コモノマー単位とのコポリマーを含むことができる。
【0022】
従来の重合方法に従って、特に、より大きな粒子サイズの水性コポリマー粒子(400nm以上)が望まれる場合には、重合にシードポリマーが使用されうるか、またはシードラテックスがその場で形成されうる。Encyclopedia of Polymer Science and Technology(ポリマーサイエンスおよび技術の百科事典)第5巻、John Wiley&Sons Inc.ニューヨーク、1966年、847ページを参照。重合の完了後、残りのモノマーは既知の方法によって、例えば、レドックス触媒チェイスを添加することにより、または蒸留もしくはストリッピングによるなどして除去されうる。
【0023】
重合前、重合中または重合後に1種以上の塩基性化合物が、コポリマーにおけるカルボキシル基のモルあたり0.4モル以上、好ましくは0.5〜2モル、より好ましくは0.6モル以上の量で添加されうる。あるいは、塩基性化合物は水性コポリマー生成物のpHを8.0以上、または9.5以上、または好ましくは少なくとも10.5、および好ましくは12.5以下に調節する様な量で添加されうる。塩基性化合物は無機塩基性化合物、好ましくは強塩基性無機化合物、例えば、アルカリ金属水酸化物、またはアルカリ土類金属水酸化物、例えば、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムであり得る。
【0024】
コポリマーはコポリマーを製造するのに使用されるモノマーの全重量を基準にして、a)20〜79.9重量%、好ましくは30重量%以上、例えば、60重量%〜70重量%の1種以上のビニル芳香族コモノマー、b)79.9重量%以下、好ましくは60重量%以下、例えば、20重量%〜33重量%の1種以上の1,3−ジエンコモノマー、c)0.1〜2.75重量%、好ましくは0.5重量%〜2.5重量%、より好ましくは1重量%〜2重量%のコモノマー、並びにd)0〜76重量%、好ましくは40重量%以下、より好ましくは20重量%以下、例えば、3重量%〜7重量%のコモノマーからの共重合生成物を含む。
【0025】
コモノマーおよびその重量比は、−20℃以上、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上、または30℃以下、好ましくは28℃以下、より好ましくは25℃以下のガラス転移温度(Tg)を有するコポリマーを製造するように選択される。このTgがセメント組成物に使用するのに高すぎる場合には、クラック架橋および特に低温での可とう性のような最終用途特性は劣る。コポリマーのTgは示差走査熱量測定(DSC)による既知の方法で決定されうる。セラミック加工における犠牲的バインダーのような用途においては、SB RDPの有用なTgは110℃、好ましくは60℃の高さであり得る。
【0026】
好適なコモノマーa)には、例えば、スチレン、アルファ−メチルスチレン、C−Cアルキル−スチレン、例えば、o−ビニルトルエンおよびtert−ブチルスチレンが挙げられる。スチレンが好ましい。好適なコモノマーb)には、例えば、1,3−ブタジエンおよびイソプレンが挙げられ、1,3−ブタジエンが好ましい。好適なコモノマーc)には、例えば、エチレン性不飽和ジカルボン酸、その無水物およびその塩、特に、イタコン酸および/またはマレイン酸および/またはフマル酸が挙げられ、再分散可能なコポリマー粉体の分散性を向上させる。
【0027】
好適な任意のコモノマーd)には、例えば、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、例えば、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチル、または(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなど、エチレン性不飽和カルボキサミドおよびカルボニトリル、例えば、(メタ)アクリロニトリルなど;フマル酸またはマレイン酸のジエステル;(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;硫黄の酸モノマー、例えば、スチレンスルホン酸ナトリウム;リンの酸モノマー、例えば、(メタ)アクリル酸ホスホアルキル;並びに架橋性コモノマー、例えば、ジビニルベンゼンまたはアジピン酸ジビニル;ポスト架橋性コモノマー、例えば、アクリルアミドグリコール酸(AGA)、メチルアクリルアミドグリコール酸メチル(MAGME)、N−メチロール−(メタ)アクリルアミド(MMA)およびそのアルキルエステル;メタクリル酸アリルまたはアリルN−メチロールカルバマート;エポキシ官能性コモノマー、例えば、グリシジル(メタ)アクリラート;並びに、ケイ素官能性コモノマー、例えば、アルコキシシラン含有(メタ)アクリラート、またはビニルモノマーが挙げられる。
【0028】
乾燥時に得られる粉体の水への再分散性を増大させるために、水性コポリマー分散物を実質的に乾燥させる前に上述のような塩基性化合物が添加されうる。
【0029】
好ましい実施形態においては、水への良好な再分散性および良好な臭気コントロールを達成するために、コポリマー中のカルボキシル基の総数の75%以上、好ましくは85%以上またはより好ましくは95%以上がコポリマー粉体粒子の表面に位置する。このようなコポリマーにおいては、表面カルボキシル基の75%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上がその塩形態でコポリマー粉体中に存在する。
【0030】
乾燥で得られるコポリマー粉体粒子の表面に位置するカルボキシル基の高いパーセンテージは、コモノマーc)としてエチレン性不飽和ジカルボン酸(単一種もしくは複数種)の単独使用によって、または重合の進展した段階でのコモノマーc)の添加のような段階的なモノマー供給によって、または3〜9、好ましくは4〜8、または好ましくは6以上のpHで重合を行うことにより得られうる。
【0031】
乾燥により得られる粉体粒子の表面に位置するカルボキシル基のパーセンテージは、コポリマー粒子の表面に位置するカルボキシル基、低分子量酸水溶液コポリマーにおいて液相に存在するもの、または遊離のカルボン酸もしくはその塩、例えば、クエン酸とし存在するものの全てを包含する。水性コポリマー分散物の乾燥の際に、液相溶液コポリマーに存在するカルボキシル基がコポリマー粒子の表面上に堆積する。
【0032】
コポリマー粒子の表面に存在するカルボキシル基のモル量と、水性分散物の液相中のカルボキシル基のモル量との合計は別々に測定可能である。
【0033】
コポリマー粉体中のカルボキシル基の合計量を決定するために、溶媒でコポリマー粒子を膨潤させ、この溶媒は存在する全ての酸基を水酸化ナトリウムのような強塩基性化合物が中和するのを可能にし、全ての酸が電位差滴定で滴定されることにより、カルボキシル基の合計モル量が測定される。例えば、2gの湿潤コポリマーが水で希釈されて20mlの合計体積にされ、そして7.5mlの油溶性界面活性剤溶液、例えば、オクチルフェノールエトキシラートのエタノール中溶液が添加される。滴定の前に、7.5mlのエチルメチルケトンが添加されて、コポリマー粒子を膨潤させる。このサンプルのpHはHCl(0.5M)を用いてpH2.5に調節され、滴定は0.5MのNaOHで行われる。滴定中のpHの変化が記録され、エチレン性不飽和ジカルボン酸コモノマーの中和当量点の決定を助ける。先に添加されたHClおよび水性分散物中に潜在的に存在する何らかの強酸基が中和されるときに、第1の中和点が記録される。c)エチレン性不飽和ジカルボン酸に由来する全てのカルボキシル基が中和されるときに、最後の中和点が記録される。サンプルの全酸含量は第1の当量点のためのNaOH添加体積と最後の当量点のためのNaOH添加体積との差に基づいて計算されうる。
【0034】
コポリマー粒子の表面に位置するおよびセラム中のカルボキシル基のモル量はコポリマー粒子を溶媒で膨潤させることなく、水酸化ナトリウムのような強塩基性化合物が容易にアクセス可能な酸基のみを中和するのを可能にすることにより測定される。表面およびセラムの酸滴定は電位差滴定を用いて行われる。2gの量の湿潤コポリマーが水で希釈されて20mlの全体積にされる。サンプルのpHはHCl(0.5M)を用いてpH2.5に調節される。滴定は0.5MのNaOHで行われる。滴定中のpHの変化が記録され、セラム相およびコポリマー粒子の表面上に存在するカルボン酸基の中和当量点の決定を可能にする。先に添加されたHClおよび水性分散物中に潜在的に存在する何らかの強酸基が中和されるときに、第1の中和点が記録される。c)エチレン性不飽和ジカルボン酸に由来する全てのカルボキシル基が中和されるときに、最後の中和点が記録される。サンプルの全酸含量は第1の当量点のためのNaOH添加体積と最後の当量点のためのNaOH添加体積との差に基づいて計算されうる。
【0035】
コポリマー粉体の表面に存在するカルボキシル基のパーセンテージを計算するために、コポリマー粒子の表面および水性分散物の液相中に存在するカルボキシル基の測定されたモル量はコポリマー粒子の水性分散物中のカルボキシル基の測定された全量で割られる。
【0036】
所定のpHでその塩形態で存在するコポリマー粉体粒子の表面に位置するカルボキシル基のパーセンテージを表すために、第1の中和点および目標のpHに到達するのに必要とされるNaOH量の差が計算される。次いで、この差は、上述のようなコポリマー粒子の表面に位置する全ての酸基を中和するのに必要とされるNaOH量で割られる。よって、V1=第1の中和点に到達するためのNaOHの体積、V2=最後の中和点に到達するためのNaOHの体積、およびV3=所定のpHに到達するためのNaOHの体積の場合に、中和パーセントは
(V3−V1)/(V2−V1)100として与えられる。
【0037】
本発明の実施形態においては、水不溶性の膜形成性ポリマーは、イタコン酸とのスチレンブタジエンコポリマーのような水不溶性の膜形成性ポリマーの重量または全コモノマー重量を基準にして、0.1重量%〜2.75重量%、好ましくは0.5重量%〜2.5重量%、より好ましくは1重量%〜2重量%のカルボキシル化の量の少なくとも1種のエチレン性不飽和ジカルボン酸、その塩、またはその混合物、好ましくはイタコン酸および/またはマレイン酸および/またはフマル酸を有する。本発明に従って、特定のポリマー粒子サイズと全カルボキシル化レベルとの組み合わせは再分散性、噴霧乾燥前のラテックス分散物およびPVOH組成物粘度、モルタル粘度、およびモルタル硬化時間を有意に影響を及ぼす。カルボキシル化の量の増大はSB RDP粉体の再分散性を向上させる傾向があるが、噴霧乾燥前のラテックス分散物の粘度を不利に増大させ、そしてより遅い硬化を引き起こしかつセメント組成物の最終用途性能に悪影響を及ぼす傾向がある。よって、さらに低いカルボキシル化レベルのラテックスからの良好な再分散性を示すSB RDP粉体を達成することが望まれている。しかし、カルボキシル化の量の低減は再分散性に悪影響を及ぼす。本発明においては、ラテックスポリマー粒子サイズの増大が低ラテックスカルボキシル化レベルで良好な粉体再分散性を可能にし、これは再分散性と、噴霧乾燥前のラテックス分散物−PVOH組成物粘度と、モルタル粘度と、硬化時間と最終用途性能との最適なバランスを提供することができる。
【0038】
本発明に従って、噴霧乾燥される水性分散物もしくはラテックス中の水不溶性の膜形成性ポリマーは2,000Å〜5,000Å、好ましくは2,100Å〜3,900Å、より好ましくは2,200Å〜3,500Åの平均粒子サイズを有する。平均粒子サイズを2,000Å未満に低減させることは、ポリマーおよびコロイド安定化剤の水性分散物の粘度を不利に増大させる傾向があり、それにより噴霧乾燥を妨げかつさらに高い圧力の噴霧乾燥装置および/または噴霧乾燥のためのさらに低い固形分レベルを余儀なくさせる。
【0039】
本発明において得られる、一般的に水性媒体中でのポリマー微粒子の安定な分散物またはエマルションをいう水性分散物またはラテックスは概して、30〜75重量%、例えば、35重量%〜65重量%、好ましくは40重量%〜60重量%の固形分含量を有することができる。
【0040】
本発明の水に再分散可能なポリマー粉体は、水不溶性の膜形成性ポリマーと、ポリマー粉体のサブミクロン粒子サイズへのコロイド安定化および再分散性のためのコロイド安定化剤との共乾燥混合物を含む。コロイド安定化剤として使用されるポリビニルアルコール(PVOH)は噴霧乾燥前の水性ポリマー分散物の粘度を増大させるが、低カルボキシル化で大きな平均粒子サイズで水不溶性の膜形成性ポリマーの使用は、比較的高レベルのコロイド安定化剤および噴霧乾燥にかけられる分散物中の高レベルの固形分においてでさえ、噴霧乾燥ための予想外の低粘度を提供する。本明細書において使用するのに好ましいポリビニルアルコールは部分的に加水分解されたポリビニルアルコールである。本発明の実施形態においては、コロイド安定化を達成するために使用されるPVOHまたは他の既知のコロイド安定化剤の量は水不溶性の膜形成性ポリマーの重量を基準にして少なくとも1重量%、例えば、2重量%〜30重量%、好ましくは5重量%〜20重量%でありうる。
【0041】
本発明の再分散可能なポリマー粉体を製造する方法に従って、水に再分散可能なポリマー粉体は水不溶性の膜形成性ポリマーとコロイド安定化剤との水性混合物を乾燥させ、水に再分散可能なポリマー粉体を得ることにより製造されうる。好ましい実施形態においては、重合により得られる水不溶性の膜形成性ポリマーの水性分散物はコロイド安定化剤と混合されて、実質的に均一な水性分散物を得て、この水性分散物は次いで噴霧乾燥されて水に再分散可能なポリマー粉体を得る。一例においては、1000mPas未満(20回転、23℃でのブルックフィールド粘度)、好ましくは250mPas未満の値が得られるように、噴霧乾燥される供給物の粘度は固形分含量を介して調節されうる。噴霧乾燥される分散物の固形分含量は、分散物の全重量に基づいて、概して、25重量%〜60重量%、好ましくは35重量%〜50重量%でありうる。水に再分散可能なポリマー粉体を製造するために、水性分散物は乾燥させられ、好ましくは噴霧乾燥させられる。噴霧乾燥は通常の噴霧乾燥プラントにおいて行われることができ、霧化は単一流体、2流体もしくは多流体ノズルまたはロータリーディスクアトマイザーの手段によって行われる。一般的に、乾燥ガスとして空気、窒素もしくは窒素富化空気が使用されることができ、この乾燥ガスの入口温度は一般的に200℃を超えず、好ましくは110℃〜180℃、より好ましくは140℃〜170℃である。出口温度は、プラント、樹脂のTgおよび望まれる乾燥の程度に応じて、一般的に45℃〜120℃、好ましくは60℃〜90℃であることができる。
【0042】
水性分散物を乾燥する前に、コロイド安定化剤に加えて、従来の量の従来の任意の添加剤、例えば、ポリマー粒子の重量を基準にして1.5重量%以下の消泡剤量での消泡剤が添加されうる。従来の量で使用されうる他の添加剤には、1種以上の塩、例えば、CaClおよびMgCl、乳化剤もしくは界面活性剤、単糖、二糖および抗クラッキング剤(抗ブロッキング剤)、例えば、カオリンが挙げられる。抗クラッキング剤の量は、全粉体量に基づいて好ましくは30重量%以下、より好ましくは3重量%〜15重量%でありうる。
【0043】
再分散可能な粉体の粒子サイズ分布のX50サイズは、乾燥条件および乾燥装置によって決まる。X50はマイクロメートル単位でのメジアン直径を表し、これは粒子の50重量%がこの直径よりも小さいことを意味する。水に再分散可能な生じたポリマー粉体は、5〜300マイクロメートル、好ましくは20〜200マイクロメートル、最も好ましくは50〜100マイクロメートルのX50粒子サイズ直径を有する。粉体の粒子サイズ分布は1.8〜350μmの測定範囲で粒子サイズ分析装置「シンパテックヘロズ(Sympatec Helos)」を用いるレーザー回折によって、そして圧縮空気によって粉体を分散させることによって測定されうる。
【0044】
粉体中のポリマー粒子の重量、例えば、本明細書に記載される粉体中のビニル芳香族コモノマーと1,3−ジエンコモノマーとのカルボキシル化コポリマーの重量は、水に再分散可能なポリマー粉体の全重量の、好ましくは40重量%〜95重量%、より好ましくは65重量%〜87重量%でありうる。
【0045】
5〜100マイクロメートル、例えば10μm〜20μmの粒子サイズの平均粒子サイズを有することができる再分散可能なポリマー粉体は、脱イオン水に容易に分散されることができ、2μm未満のような元のラテックス粒子サイズ分布を提供することができる。
【0046】
水に再分散可能な本発明のポリマー粉体は様々な用途を有する。本発明の実施形態においては、本発明の再分散可能なカルボキシル化スチレンブタジエンポリマー粉体はアクリル系の再分散可能なポリマー粉体(RDP)、VAE RDP、VAE/VeoVA RDP、エポキシベースのRDP、ポリオレフィン分散物ベースのRDP、およびこれらの混合物の1種以上とのブレンドにおいて使用されうる。本発明の粉体は、建築材料、パーソナルケア組成物、医薬組成物、農業用組成物のような様々な組成物、高塩濃度用途もしくは環境、例えば、オフショア油井セメンティング、油およびガス掘削およびセメント、並びに硬水における機能性添加剤として使用されうる。粉体のさらなる用途は廃棄物取り扱い用途、例えば、廃棄物、石炭スラッジ封じ込め、土壌、土壌浸蝕制御をはじめとするバルク材料の山のための合成覆いのための組成物であり、これらは廃棄物の浸透、不快な放出ダスト、臭気および鳥に対する親和性を最小限にする。粉体は噴霧可能な他の埋立地の覆いに使用されることができ、安価で広範囲に利用可能で環境に優しい再利用される材料の使用はプラスチックおよびガラス廃棄物への良好な接着性を有し、そして短時間で接着性が増大した混合物を形成し/固めることができる。粉体はポリウレタンフォームのような発泡体の製造にも使用されうる。
【0047】
好ましい実施形態においては、水に再分散可能なポリマー粉体は、無機水硬性バインダーをさらに含むことができる硬化性組成物における添加剤として使用されうる。無機バインダーの例としては、セメント、例えば、ポルトランドセメント、アルミナセメント、ポゾランセメント、スラグセメント、マグネシアセメント、およびホスファートセメント;半水石膏および水ガラスが挙げられる。本発明に従うポリマー組成物の例示的な用途は、タイル接着剤、建築用接着剤、レンダー(render)、ジョイントモルタル、プラスター、コテ塗り用組成物、充填用組成物、例えば、床充填用組成物(例えば、自己平坦化床用組成物)、コンクリート補修ジョイント、ジョイントモルタル、テープジョイントコンパウンド、コンクリート、耐水膜用途、クラック隔離(crack isolation)膜用途、およびセラミック加工用添加剤がある。例えば、セメントベースのタイル接着剤におけるまたは外断熱複合材料システムにおけるような硬化性組成物における本明細書に記載される水に再分散可能なポリマー粉体の使用は、高い初期接着強度、水に浸した後の高い接着強度(耐水性)および水硬性組成物の最終適用前で特定のオープンタイム(open time)を可能にした後の高い接着強度を有する組成物を生じさせる。本発明の実施形態においては、水に再分散可能なポリマー粉体は、例えば、シリカ、アルミナ、アルカリ金属酸化物およびアルカリ土類金属酸化物のような原料の鋳込成形(slip casting)のためのバインダーとして使用されうる。
【0048】
水に再分散可能なポリマー粉体の好ましい用途はコンクリート組成物または高pH、例えば、少なくとも11、例えば、11.5〜13.5のpHを示す他の組成物においてである。本発明の再分散可能なポリマー粉体はタイル接着剤、例えば、セメントベースのタイル接着剤に使用されうる。セメントベースのタイル接着剤は概して水硬性バインダーとして5〜50重量部のセメント、好ましくはポルトランドセメント;主充填剤として40〜70重量部のケイ砂、好ましくは0.1mm〜0.5mmの粒子サイズを有するケイ砂;並びに、(タイル接着剤の乾燥重量を基準にして)0.1重量%〜10重量%、好ましくは1重量%〜6重量%の本発明に従った再分散可能なポリマー粉体を含むことができる。さらなる任意成分には、レオロジー、水保持、耐スリップ性および向上した作業性を制御するための1種以上のセルロースエーテル(タイル接着剤の乾燥重量を基準にして好ましくは0.05重量%〜1重量%、より好ましくは0.2重量%〜0.5重量%の量);一貫性および作業性を向上させるための微細共充填剤(co−filler)としての30μm〜60μmの粒子サイズを有する石英もしくは石灰石粉体;並びに耐スリップ性を向上させるためのセルロースまたは鉱物繊維が挙げられる。
【0049】
水に再分散可能なポリマー粉体の別の用途は自己平坦化床用コンパウンドSLFCにおいてである。粉体は基体への接着性、可とう性、耐摩耗性および老化特性を向上させるために添加されうる。他の実施形態においては、水に再分散可能なポリマー粉体は外断熱システムETICSにおいて、特に水吸収を低減させ外断熱システムの耐衝撃性を向上させるための断熱板層上の接着剤として使用されうる。
【0050】
さらに、本発明に従う水に再分散可能なポリマー粉体は紙製品、板紙製品、カーペット裏あて、塗料もしくはコーティングにおいて、または木材、紙もしくは織物コーティングもしくは含浸組成物のためのバインダーにおいて、好ましくは実質的な量の無機水硬性バインダー剤が存在せずに、より好ましくはいかなる量の無機水硬性バインダー剤も存在せずに使用されうる。例えば、水に再分散可能なポリマー粉体はコーティング組成物および接着剤における唯一のバインダーとして使用されうる。
【0051】
以下の実施例は例示目的のためだけに提供され、添付の請求項の範囲を限定することを意図していない。他に示されない限りは、全ての部およびパーセンテージは重量基準であり、全ての温度は℃単位であり、全ての圧力はbar単位であるか、それとは異なり他に示されない限りは大気圧である。
【実施例】
【0052】
実施例1
再分散可能なポリマー粉体はa)63.5部のスチレン、28.75部のブタジエン、6部のアクリロニトリルおよび1.75部のイタコン酸(全コモノマー重量を基準にして1.75重量%のカルボキシル化のイタコン酸)のコモノマー含量を有し、2490Åの粒子サイズおよび25℃未満のTを有する水に不溶性の膜形成性カルボキシル化スチレンブタジエン(SB)ラテックス、並びにb)ラテックスポリマーの重量を基準にして10重量%のMOWIOL4−88:を混合することにより製造された。このMOWIOL4−88は、顆粒形態の部分的に加水分解されたPVOH(ポリビニルアルコール)であり、クラレヨーロッパGMbH、ディビジョンPVA/PVB D−65926フランクフルト アム マイン、ドイツ国から入手可能である。このMOWIOL4−88は4±0.5mPa・s(20℃で4%水溶液)の粘度DIN53015、87.7±1.0mol%の加水分解(ケン化)度、140±10mgKOH/gのエステル価DIN53401、10.8±0.8w/wの残留アセチル含量、および0.5%の最大灰含量(NaOとして算出)を有する。この混合物は混合物の全重量を基準にして35重量%の全固形分含量を有する。
【0053】
この混合物は、モバイルマイナー噴霧乾燥機上に取り付けられた2流体ノズルアトマイザーにポンプ移送された。50%フローでノズルへの空気圧力は1barで固定され、これは6kg/時の空気フローに等しい。噴霧乾燥はN環境で、140℃に固定された入口温度で行われたが、この混合物の供給速度を調節することにより出口温度は50℃±1℃を目標にされた。同時に、抗ケーキング剤(anti−caking agent)としてカオリン粉体(KaMin HG90)が噴霧乾燥のためのチャンバーに添加され、その量は乾燥粉体の10重量%に制御された。
【0054】
噴霧乾燥により得られた再分散可能なポリマー粉体は10〜20μmの平均粒子サイズを有していた。噴霧乾燥された粉体は1重量%の固形分量で脱イオン(DI)水に分散され、30秒間2回渦攪拌された。次いで、この再分散物はコールターLS230レーザー回折粒子サイズ分析装置を使用して測定された。図1はこの再分散物の粒子サイズ分布データを示し、これは再分散可能なポリマー粉体は元のSBラテックス粒子サイズ分布に容易に分散されたことを示す。
【0055】
実施例2
a)62.5部のスチレン、29部のブタジエン、6部のアクリロニトリルおよび2.5部のイタコン酸(全コモノマー重量を基準にして2.5重量%のカルボキシル化のイタコン酸)のコモノマー含量を有し、2660Åの粒子サイズを有する水に不溶性の膜形成性カルボキシル化スチレンブタジエン(SB)ラテックス、並びにb)ラテックスポリマーの重量を基準にして10重量%のMOWIOL4−88が使用されたことを除いて、実施例1におけるように再分散可能なポリマー粉体が製造された。この混合物は混合物の全重量を基準にして35重量%の全固形分含量を有する。
【0056】
噴霧乾燥により得られた再分散可能なポリマー粉体は10〜20μmの平均粒子サイズを有していた。噴霧乾燥された粉体は1重量%の固形分量で脱イオン(DI)水に分散され、30秒間2回渦攪拌された。この再分散物はコールターLS230レーザー回折粒子サイズ分析装置を使用して測定された。図2はこの再分散物の粒子サイズ分布データを示し、これは再分散可能なポリマー粉体は元のSBラテックス粒子サイズ分布に容易に分散されたことを示す。
【0057】
比較例A
a)全コモノマー重量を基準にして62部のスチレン、35部のブタジエンおよび3部のイタコン酸(3重量%のカルボキシル化のイタコン酸)のコモノマー含量を有し、1500Åの粒子サイズおよび8℃のTを有する水に不溶性の膜形成性カルボキシル化スチレンブタジエン(SB)ラテックス、並びにb)ラテックスポリマーの重量を基準にして10重量%のMOWIOL4−88を使用して再分散可能なポリマー粉体が製造されうることを除いて、実施例1におけるように再分散可能なポリマー粉体が製造されうる。この混合物は混合物の全重量を基準にして35重量%の全固形分含量を有する。
【0058】
噴霧乾燥により得られた再分散可能なポリマー粉体は10〜20μmの平均粒子サイズを有していた。噴霧乾燥された粉体は1重量%の固形分量で脱イオン(DI)水に分散され、30秒間2回渦攪拌された。次いで、この再分散物はコールターLS230レーザー回折粒子サイズ分析装置を使用して測定された。図3はこの再分散物の粒子サイズ分布データを示し、これは再分散可能なポリマー粉体は元のSBラテックス粒子サイズ分布に容易に分散されたことを示す。
【0059】
比較例B
比較例Bの再分散可能なポリマー粉体はザダウケミカルカンパニー、ミッドランド、ミシガン州により製造された市販の再分散可能なポリマー粉体であるDLP2000である。DLP2000は酢酸ビニル/エチレンコポリマーをベースにする。それは多目的な再分散可能なポリマーであり、10〜14重量%の灰含量、0.375g/ml〜0.525g/mlの密度および2重量%未満の水分含量を有するミディアムハードである。
【0060】
実施例3
スチレンブタジエンラテックスとコロイド安定化剤との混合物についての粘度比較(噴霧乾燥前)。
ブルックフィールド粘度計モデルLVTDV−IIを用いて60rpm、LVスピンドル4および25℃の条件下で、50重量%の固形分含量を有する150gの実施例1のスチレンブタジエン(SB)ラテックス(63.5部のスチレン、28.75部のブタジエン、6部のアクリロニトリルおよび1.75部のイタコン酸のコモノマー含量を有し、2490Åの粒子サイズを有する)と15重量%の固形分含量を有する50gのPVOHコロイド安定化剤MOWIOL4−88との混合物のブルックフィールド粘度が測定された。粘度読み取り値は408cpsであった。
【0061】
ブルックフィールド粘度計モデルLVTDV−IIを用いて60rpm、LVスピンドル4および25℃の条件下で、50重量%の固形分含量を有する150gの実施例2のスチレンブタジエン(SB)ラテックス(62.5部のスチレン、29部のブタジエン、6部のアクリロニトリルおよび2.5部のイタコン酸のコモノマー含量を有し、2660Åの粒子サイズを有する)と15重量%の固形分含量を有する50gのPVOHコロイド安定化剤MOWIOL4−88との混合物のブルックフィールド粘度が測定された。粘度読み取り値は579cpsであった。
【0062】
ブルックフィールド粘度計モデルLVTDV−IIを用いて60rpm、LVスピンドル4および25℃の条件下で、50重量%の固形分含量を有する150gの比較例Aのスチレンブタジエン(SB)ラテックス(62部のスチレン、35部のブタジエンおよび3部のイタコン酸のコモノマー含量を有し、1500Åの粒子サイズを有する)と15重量%の固形分含量を有する50gのPVOHコロイド安定化剤MOWIOL4−88との混合物のブルックフィールド粘度が測定された。粘度読み取り値は3252cpsであった。
【0063】
以下の表1は、41重量%の固形分含量での、実施例1および2における低カルボキシル化で大粒子サイズのポリマーを含んでなるラテックス組成物の粘度が、比較例Aにおける比較的高カルボキシ化で小粒子サイズのポリマーを含んでなるラテックス組成物の粘度と比較して有意に低かったことを示し、このことは後者の噴霧乾燥がより困難であることを示す。以下の表1は、比較例Aにおけるように41%の全固形分で配合された相対的に高いカルボキシル化で小粒子サイズのポリマーラテックスを含んでなるラテックス組成物の粘度と比較して、45重量%の全固形分含量(水不溶性の膜形成性ポリマーの重量を基準にして10%PVOHコロイド安定化剤を含むポリマーラテックス)で配合された場合に、実施例2におけるような低カルボキシル化で大粒子サイズのラテックスポリマーは低粘度を維持したことを示す。このことは本発明のSB RDPについて、より高い噴霧乾燥生産性を示す。
【0064】
【表1】

【0065】
図1、2および3に示された再分散時の粒子サイズ分布は、低カルボキシル化で大粒子サイズのポリマーを含んでなる本発明の再分散可能なポリマー粉体の再分散性(実施例1および図1、並びに実施例2および図2)は、相対的に高いカルボキシル化で小さな粒子サイズのポリマーを含んでなる比較例の再分散可能なポリマー粉体の再分散性(比較例Aおよび図3)と同様に良好であることを示す。
【0066】
本発明に従ってラテックスコポリマーが大粒子サイズおよび低カルボキシル化パーセンテージを有するスチレンブタジエンラテックスとコロイド安定化剤との混合物についての低粘度の達成は、噴霧乾燥のための高固形分含量の組成物および再分散可能なポリマー粉体のより効率的な生産のための低圧力装置の使用を可能にし、同時に再分散可能なポリマー粉体の優れた再分散性を達成する。
【0067】
実施例4
実施例1および2、並びに比較例AおよびBの再分散可能な粉体組成物を使用するセメントベースのモルタル組成物を製造するために使用されうる成分およびその相対量(重量%または重量部、pbw)が以下の表2に示される。表1に示される固体成分を乾燥ブレンドし、次いで水を添加することによって、異なるセメントベースのモルタル組成物が製造されうる。セメントベースのモルタル組成物の様々な特性およびその性能が試験されることができ、結果は以下の図4および表3に示される。
【0068】
熱量測定および硬化時間の比較
試験方法:
乾燥混合物製造:セメント、砂、ポリマーおよび増粘剤が秤量され、プラスチック袋に入れられ、次いで2分間手で混合され、24時間調整した。
【0069】
粘度:粘度は、ブルックフィールドヘリパス(Brookfield Helipath)スタンドと組み合わせたブルックフィールドシンクロ−レクトリック(Synchro−lectric)粘度計(モデルRVT)を用いて25℃で測定される。モルタルが密度カップに満たされ、スピンドルがモルタルの表面にちょうど触れるようにスピンドル(T−F)が配置される。粘度計のスピンドルは5rpmで2分間回転する。粘度計の回転するスピンドルがサンプルを通るらせん径路を描くように回転中に粘度計が上下される。完全な1回転の後でスピンドルが充分に沈められるまで最初の測定はなされない。粘度計が各方向に動きながら4つの読み取り値が測定され、その平均が報告される。
【0070】
密度:モルタルが既知の体積の容器に入れられ、軽くたたいて詰められ、次いで秤量される。
【0071】
硬化時間:硬化時間はASTM C191に従って測定される。モルタルは環状硬化時間用型に入れられ、これは次いでプラスチックの層で覆われ、このプラスチックの層はゴムバンドでその場に保持される。これらは次いでビカー針装置の下の位置に配置される。針がモルタルに突き刺さることができる距離に従って、初期硬化時間および最終硬化時間が測定される。
【0072】
熱フロー特性:熱フロー特性は、一定の温度での小さなサンプルにおける熱発生速度が連続的に測定される等温(熱条件)熱量計(TAM AIR)を用いて決定された。このTAM Airは、5〜90℃の操作温度範囲のTAインスツルメンツ(Instruments)からの8チャネルマイクロ熱量計である。全ての熱量計チャネルはそれぞれ20ml体積のサンプルと参照容器とからなるツインタイプのものである。サーモスタットは循環空気および最新の調節システムを使用して温度を非常に安定(±0.02K以内)に維持する。約3gの新たなモルタルをこの容器に満たし、20℃および10℃で約48時間の間測定された。
【0073】
【表2】

【0074】
図4は、実施例2のRDP並びに比較例AおよびBのRDPと比較して、驚くべき良好な実施例1の再分散可能なポリマー粉体(RDP)の熱フロー特性を示す熱量測定の結果を示す。実施例1のRDPのピークの始まりおよびピーク高さは他のどのRDPよりも良好である。これは以下の表3に示される硬化時間データと一致し、表3はセメントベースのモルタル組成物の様々な特性を示す。
【0075】
さらに、以下の表3に示されるように、実施例1のRDPと配合されたモルタルは、比較例AのRDPと比較して有意に低い粘性発現速度を示し、これは適用中の作業性またはコテ塗りの容易さに有利である。
【0076】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水不溶性の膜形成性ポリマーとコロイド安定化剤との共乾燥混合物を含む、水に再分散可能なポリマー粉体(RDP)であって、
前記膜形成性ポリマーがスチレン−ブタジエンコポリマー、またはスチレンとブタジエンと1種以上の他のモノマーとの共重合生成物を含み、かつ前記膜形成性ポリマーが30℃未満のガラス転移温度(T)、2,000Å〜5,000Åの平均粒子サイズ、および水不溶性の膜形成性ポリマーの重量を基準にして0.1重量%〜2.75重量%の少なくとも1種のエチレン性不飽和ジカルボン酸、その塩またはその混合物のカルボキシル化の量を有し、
RDPにおける前記カルボキシル化の量はRDPの全重量を基準にして0.1重量%〜2.75重量%の範囲である、
水に再分散可能なポリマー粉体。
【請求項2】
水不溶性の膜形成性ポリマーが2,100Å〜3,900Åの平均粒子サイズ、0.5重量%〜2.5重量%のカルボキシル化の量、および28℃未満のガラス転移温度(T)を有し、並びに不飽和ジカルボン酸がイタコン酸および/またはマレイン酸である、請求項1に記載の水に再分散可能なポリマー粉体。
【請求項3】
水不溶性の膜形成性ポリマーがスチレン、ブタジエン、イタコン酸およびアクリロニトリルのモノマーを含んでなるコポリマーである、請求項1に記載の水に再分散可能なポリマー粉体。
【請求項4】
コロイド安定化剤が水不溶性の膜形成性ポリマーの重量を基準にして、少なくとも1重量%から30重量%以下の量のポリビニルアルコールを含む、請求項1に記載の水に再分散可能なポリマー粉体。
【請求項5】
水不溶性の膜形成性ポリマーが2,200Å〜3,500Åの平均粒子サイズ、1重量%〜2重量%のカルボキシル化の量、および25℃未満のガラス転移温度(T)を有し、不飽和ジカルボン酸がイタコン酸および/またはマレイン酸であり、並びにコロイド安定化剤が水不溶性の膜形成性ポリマーの重量を基準にして、少なくとも1重量%の量のポリビニルアルコールを含む、請求項1に記載の水に再分散可能なポリマー粉体。
【請求項6】
水不溶性の膜形成性ポリマーとコロイド安定化剤との水性混合物を乾燥させて、水に再分散可能なポリマー粉体を得ることを含む、水に再分散可能なポリマー粉体を製造する方法であって、
前記膜形成性ポリマーがスチレン−ブタジエンコポリマー、または別のコポリマーと共重合されたスチレンブタジエンを含み、かつ前記膜形成性ポリマーが30℃未満のガラス転移温度(T)、2,000Å〜5,000Åの平均粒子サイズ、および水不溶性の膜形成性ポリマーの重量を基準にして0.1重量%〜2.75重量%の少なくとも1種のエチレン性不飽和ジカルボン酸、その塩またはその混合物のカルボキシル化の量を有する、
水に再分散可能なポリマー粉体を製造する方法。
【請求項7】
水不溶性の膜形成性ポリマーが2,100Å〜3,900Åの平均粒子サイズ、0.5重量%〜2.5重量%のカルボキシル化の量、および28℃未満のガラス転移温度(T)を有し、並びに不飽和ジカルボン酸がイタコン酸および/またはマレイン酸である、請求項6に記載の水に再分散可能なポリマー粉体を製造する方法。
【請求項8】
水不溶性の膜形成性ポリマーがスチレン、ブタジエン、イタコン酸およびアクリロニトリルのモノマーを含んでなるコポリマーであり、並びにコロイド安定化剤が水不溶性の膜形成性ポリマーの重量を基準にして、少なくとも1重量%の量のポリビニルアルコールを含む、請求項6に記載の水に再分散可能なポリマー粉体を製造する方法。
【請求項9】
セメント材料と請求項1に記載の水に再分散可能なポリマー粉体とを混合することを含む、セメント組成物を製造する方法。
【請求項10】
1種以上のセラミック形成材料と1種以上の水に再分散可能なポリマー粉体とを含むセラミック組成物であって、
前記1種以上の水に再分散可能なポリマー粉体が、水不溶性の膜形成性ポリマーとコロイド安定化剤との共乾燥混合物を含み、
前記膜形成性ポリマーがスチレン−ブタジエンコポリマー、または別のコポリマーと共重合されたスチレンブタジエンを含み、かつ前記膜形成性ポリマーが110℃未満のガラス転移温度(T)、2,000Å〜5,000Åの平均粒子サイズ、および水不溶性の膜形成性ポリマーの重量を基準にして0.1重量%〜2.75重量%の少なくとも1種のエチレン性不飽和ジカルボン酸、その塩またはその混合物のカルボキシル化の量を有する、
セラミック組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−225873(P2011−225873A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−84140(P2011−84140)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】