説明

低ガラス転移温度を有するポリマー組成物

【課題】マトリックス樹脂の加工性を改良する方法を提供する。
【解決手段】マトリックス樹脂に2以上のポリマーサイズインデックス及び高くとも20℃までのガラス転移温度(Tg)を有するポリマー組成物の添加を含み、前記ポリマー組成物は、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート及び2‐エチルヘキシルアクリレートからなる群から選択される少なくとも一つのモノマーから誘導される単位を有する第一ポリマー成分からなる第一段、及び任意に前記第一段上に適用される第二段であって、前記第二段の量が、前記第二段が存在する場合、前記ポリマー組成物の1%から35%である第二段を含み、前記マトリックス樹脂は、ポリ(ビニルハライド)樹脂または主にポリ(ビニルハライド)樹脂である、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は低ガラス転移温度を有する比較的大きな寸法のポリマー組成物に関する。これらの組成物は、ポリマーマトリックス樹脂の特性及び加工性を改良する手段としてホモポリマー及び又はコポリマー樹脂として有用である。本発明は、また、斯かるポリマー組成物を調製及び使用する方法、並びにそれらを含有するポリマーマトリックス樹脂を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂はしばしばそれらを商業的に実現性のあるものにするのに必要な物理的及び加工特性を有さないことが数十年にわたり知られてきた。従って、組成物が、しばしばプラスチックの特性を向上させるために添加される。
【0003】
プラスチック工業に使用される性能及びプロセス向上化合物(以下「プラスチック添加剤」と称する)は、典型的にはポリマーである。ポリマープラスチック添加剤の共通の例としては:プラスチック樹脂のレオロジー特性を調節し、順に樹脂の加工性を最適化し、そして樹脂のプロセス効率を増加させるのに使用されるもの(以下「加工助剤」と称する);プラスチック樹脂の耐衝撃強度を改善するのに使用されるもの(以下「耐衝撃性改良剤」と称する);及びマトリックス樹脂が加工装置の壁に固着しないようにマトリックス樹脂を滑らかにするもの(以下「潤滑剤」と称す)が挙げられる。
【0004】
例えばポリ塩化ビニルを含む幾つかのマトリックス樹脂は、加熱に際し、固体形から滑らかに流れる溶融体へ容易に転移(「融解」と呼ばれる)しない。加工助剤は、斯かる樹脂における融解を改善するのに有用であり得る。融解の容易性を判断する一つの方法は、固体ポリマーが加熱及び機械的作業に曝されて均質溶融体を形成するのに必要とされる時間を測定することである。
【0005】
多くの熱可塑性マトリックス樹脂は、少なくとも幾つかの上記添加剤を含有する。それぞれについての簡単な説明が、以下の通りなされる。
【0006】
加工助剤は、ブロー成形、インジェクション成形、発泡及び熱成形等のある種の熱可塑性加工用途にとって重要である熱可塑性樹脂溶融強度を増加させるのに有用である。熱可塑性樹脂用の最も慣用な加工助剤は、ビニル芳香族、(メタ)アクリロニトリル及び/又はC〜Cアルキル(メタ)アクリレートモノマーのようなエチレン性不飽和モノマーから重合される単位を含有するポリマー及びコポリマーである。更に、最も慣用な加工助剤は、20〜500nmの平均直径のディスパーションを生じさせるエマルション重合技術を使用して調製される。
【0007】
慣用の加工助剤は、少なくとも30℃、典型的には少なくとも50℃及びより典型的には少なくとも70℃のガラス転移温度を有する硬質ポリマー粒子である。慣用の加工助剤は、0.1×10から12×10g/モルに範囲する非常に高い分子量を有する。一般に、最も慣用な加工助剤の分子量は、0.5×10から8×10g/モルの範囲である。
【0008】
熱可塑性樹脂配合物に使用される加工助剤の量は、樹脂の種類、それが付される塗布及び加工条件で変化する。使用される場合には、加工助剤は、典型的にはマトリックス樹脂の100部当たり0.1及び20部の範囲の濃度において採用される。
【0009】
耐衝撃性改良剤は、典型的にはブタジエン及び/又はアクリレートモノマーのホモポリマー又はコポリマーをベースとしたコア又はゴム段を有する多段、コア‐シェルエマルションポリマーとして提供される。大部分の耐衝撃性改良剤のコア部分は、一般に柔軟であるり、そのTgが一般に−20℃未満である。一方、大部分の耐衝撃性改良剤のシェル部分は、一般に硬質であり、そのTgが一般に30℃より大である。
【0010】
耐衝撃性改良剤は、しばしばアクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン(「ABS」)、スチレン‐アクリロニトリルコポリマー、メチルメタクリレートポリマー、ポリ(塩化ビニル)(「PVC」)及び他のポリ(ハライドビニル)ポリマー、ポリカーボネート、ポリエステル又はポリアミド等の種々のエンジニアリング樹脂、及びエポキシ等の熱硬化性樹脂等のマトリックスポリマーにおいて使用される。ブタジエン及びスチレンの1以上のゴム状コポリマー及びポリ(メチルメタクリレート)の少なくとも一つのシェルを含有する耐衝撃性改良剤は、メチルメタクリレート‐ブタジエン‐スチレン(「MBS」)プラスチック添加剤として当分野で知られている。同様に、アルキルアクリレートの1以上のゴム状コポリマー及びポリ(メチルメタクリレート)又はそれらのコポリマーの少なくとも一つのシェルを含有する耐衝撃性改良剤は、アクリル耐衝撃性改良剤(「AIM」)プラスチック添加剤として当分野で知られている。熱可塑性樹脂配合物において使用される耐衝撃性改良剤の量は、樹脂の種類、それが付される塗布及び加工条件で変化する。使用される場合には、耐衝撃性改良剤は、典型的にはマトリックス樹脂の100部当たり0.5及び40部の範囲の濃度において採用される。
【0011】
潤滑剤は、プラスチックマトリックス系において特異機能を遂行する添加剤である。少量の潤滑剤(例えば、典型的にはプラスチックマトリックス樹脂100部当たり0.01から5部)は、他のポリマー鎖又は加工装置等の物体との関連でポリマー鎖の移動に対する抵抗の実質的減少を提供する。典型的な潤滑剤は、熱可塑性樹脂系の加工温度範囲以内又はそれより下である軟化点又は融点を有する小分子である。それらは、一方でこの系の機械的特性に悪影響を及ぼすことなく、本樹脂系の加工を改良するよう熱可塑性樹脂系と充分相溶性であることが必要である。それらは、0.01phr(樹脂100部当たり)の低さ又は組み合わせでは5phrの高さの濃度で使用され得る。プラスチック添加剤工業において使用される潤滑剤の例としては:パラフィンワックス、低分子量ポリエチレンワックス、カルボン酸(及びそれらのエステル)、脂肪族アルコール、アミド、エステル及びカルボン酸塩等が挙げられる。
【0012】
潤滑剤は、通常、マトリックス樹脂に対し1以上の有用な特性(本明細書において「潤滑剤特性」として称される)を付与する。潤滑剤は、しばしば溶融マトリックス樹脂の粘度を減少させ、従って溶融マトリックス樹脂と接触して加工装置のパーツを回転させるのに必要なトルクを減少させる。ある場合においては、このより低いトルクは、回転パーツを運転するモーターへのより小さな荷重として検出される。粘度減少とは独立して、潤滑剤は、しばしば溶融マトリックス樹脂の金属表面からの剥離を援助する;この効果は、ときどき二本ロールミルの金属表面から溶融マトリックス樹脂を剥離させる傾向を試験することにより観察される。
【0013】
大部分の市販のマトリックス樹脂系は、典型的にはマトリックス樹脂の重量を基準にして0.05から50重量パーセントのプラスチック添加剤を含む。加工助剤、耐衝撃性改良剤及び潤滑剤のような普及した添加剤の使用にも拘らず、変性されたマトリックス樹脂系の特性を維持又は改善しながら、それらの実行のコストを減少させる必要性が常に存在する。従って、プラスチック添加剤工業及びプラスチック製造工業にとって、大幅に製造及び使用コストを減少させ、同時にそれらの性能特性を改善しながらプラスチック添加剤を製造する方法は大いに歓迎するところであろう。
【0014】
U.K.サループ等(Journal of Applied Polymer SCienCe、第38巻、1421〜1423頁、1989年)は、ポリ塩化ビニルに対する多様なアクリルポリマーの添加を開示する。しかしながら、より少ない成分を必要とし、しかも、例えば望ましい融解時間、望ましい潤滑剤特性の程度、望ましいグロス度及び望ましい耐衝撃性等の有用な特性を維持する系(即ち、マトリックス樹脂及びプラスチック添加剤の混合物)を提供することが望まれる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】U.K.サループ等(Journal of Applied Polymer SCienCe、第38巻、1421〜1423頁、1989年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、本発明の一目的は、比較的大きな寸法を有し、低ガラス転移温度を有する新規なポリマー組成物を提供することである。
本発明の他の目的は、加工助剤特性及び潤滑剤特性を有する新規なポリマー組成物を、それらの製造及び使用方法も含めて提供することである。
【0017】
本発明の更に他の目的は、耐衝撃性改良剤及び加工助剤特性及び潤滑剤特性を有するポリマー組成物を含む新規なプラスチック添加剤系を、それらの製造及び使用方法を含めて提供することである。
【0018】
本発明のいまだ他の目的は、マトリックス樹脂及び加工助剤特性及び潤滑剤特性を有するポリマー組成物を含む新規なポリマーマトリックス樹脂系を、それらの製造及び使用方法を含めて提供することである。
【0019】
なお本発明の更なる目的は、マトリックス樹脂を含む新規なポリマーマトリックス樹脂系、及び耐衝撃性改良剤及び加工助剤特性及び潤滑剤特性を有するポリマー組成物を含む新規なプラスチック添加剤系をそれらの製造及び使用方法を含めて提供することである。
【0020】
これらの及び他の目的は、明細書及び特許請求の範囲を読んだ後で当業者には明白であろう。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の第一の態様において、2以上のポリマーサイズインデックス(Polymer Size Index)及び高くとも20℃までのガラス転移温度(Tg)を有するポリマー組成物をマトリックス樹脂に添加することを含む該マトリックス樹脂の加工性を改善する方法が提供され、ここで、該ポリマー組成物は第一ポリマー段を含み、該第一ポリマー段の少なくとも50重量パーセントはブタジエン及びC1からC18アルキル(メタ)アクリレートからなる群から選択される1以上のモノマーから誘導された単位を有する第一ポリマー成分を含む。
【0022】
本発明の第二の態様において、プラスチック添加剤として使用され得るマルチモーダルポリマー組成物が提供され、該マルチモーダルポリマー組成物は:
a)30℃以上のTgを有する少なくとも一つのポリマー及び少なくとも30nmのポリマー粒子を含む第一成分、及び
b)少なくとも30nmの平均粒径、2以上のポリマーサイズインデックス及び高くとも20℃までのTgを有するポリマー粒子を含む第二成分を含み、ここで、該加工助剤粒子は第一ポリマー段を含み、ここで該第一ポリマー段の少なくとも50重量パーセントはブタジエン及びCからC18アルキル(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1つのモノマーから誘導された単位を有する第一ポリマー成分を含む;
但し該第一成分と該加工助剤粒子との重量比は約99.5/0.5から約50/50である組成物である。
【0023】
本発明の第三の態様において、2以上のポリマーサイズインデックス及び高くとも20℃までのガラス転移温度(Tg)を有するポリマー組成物が提供され、ここで、該ポリマー組成物は第一ポリマー段を含み、少なくとも50重量パーセントの該第一ポリマー段はブタジエン及びC1からC18アルキル(メタ)アクリレートからなる群から選択される1以上のモノマーから誘導された単位を有する第一ポリマー成分を含む。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書において使用される用語「分子量」は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)としても知られるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定されるポリマー分子の重量平均分子量を意味する。一つの有用なGPC法は、高MW‐低Tg(「HMLT」)法として本明細書において称されるものである。液体クロマトグラフは、ウォーターズ590モデルポンプ(ウォーターズ Co.、米国、マサチューセッツ州、ミルフォード)、アジレント(Agilrent)HP1100オートサンプラー(アジレント Co.、ドイツ国、ワルトブロン)、ウォーターズCH−430モデルカラムオーブン(ウォーターズ Co.、米国、マサチューセッツ州、ミルフォード)、ウォーターズ410モデル示差屈折計(ウォーターズ Co.、米国、マサチューセッツ州、ミルフォード)からなる。システムコントロール、データーアクイジッション及びデータープロセッシングは、PLカリバー(Caliber、商標)ソフトウェア(ポリマーラボラトリーズ、英国、チャーチ ストレットン)を使用して遂行される。分離は、一つのPLgel(商標)20μmガードカラム(50mm長×7.5mm内径)及び連続して接続された二つのPLgel混合A分析カラム(300mm長×7.5mm内径)からなるカラムセットを使用して遂行される。カラムはポリスチレン‐ジビニルベンゼンゲル(孔径「混合A」、粒径20μm、ポリマーラボラトリーズ、英国、チャーチ ストレットン)で充填される。試料は、2mg/mlの濃度でHPLC品質のTHF中で調製された。100μl試料溶液は、クロマトグラフィー系に注入される。キシレンは、内部フローマーカーとして使用される。リファレンスは、ポリマーラボラトリーズ、英国、チャーチ ストレットン)から入手した既知の分子量のポリ(メチルメタクリレート)標準に対する補外により計算されたパラロイド(Paraloid、商標)K‐120ND(ロームアンドハース Co.、米国、ペンシルバニア州、フィラデルフィア)である。溶離剤は、HPLC品質のTHFである;流速は1ml/分;カラム温度は40℃;及び検出法は屈折率である。
【0025】
代替的に、ポリマーサイズは、そのポリマーの溶液の粘度を測定することにより判断され得る。一般に、ポリマーの特定の組成物に関しては、より高い粘度は、より大きな寸法のポリマーに相当する。斯かる粘度測定法の一つは、次のように本明細書において定義される「溶液ブルックフィールド」法である:テトラヒドロフラン(THF)又はTHFと水の混合物中のポリマー溶液は、80g溶液重量中の2.8gポリマー固形分を使用して調製される。その溶液は、30rpmにおいて2番スピンドルを有するブルックフィールドLVF粘度計で測定される。もしポリマーが固体として存在するならば、2.8gがTHFに溶解する。もしポリマーがラテックスとして存在するならば、充分量のラテックスが2.8gのポリマー固形分を有するよう選択され、その量のラテックスが充分量のTHFに溶解され80gの総溶液重量を与える。溶液は、ポリマーが溶解するまで振とうされなければならず、それはしばしば16時間の機械的振とうを必要とし、さらにより長い時間を要求するかもしれない;ポリマーが溶解したことを決定する一つの方法は、粘度試験の結果が上昇するのを停止するまで粘度試験と振とう期間を交替することである.振とうの後で、全ての気泡が、粘度測定が遂行される前までに無くなるまで試料は静置される。
【0026】
ポリマーサイズの有用な特性決定は、下記のように本明細書において定義される「ポリマーサイズインデックス」である。ポリマー組成物は、次の二条件の内の一つ又は双方を満たすならば4のポリマーサイズインデックスを有する:(1)HMLT法により測定されたその分子量が4×10g/モル以上及び(2)それらが0.4Pa・s(400Cps)以上の溶液ブルックフィールド粘度を有する。ポリマー組成物は、もしそれが4のポリマーインデックスを有さず、次の二条件の内の一つ又は双方を満たすならば3のポリマーサイズインデックスを有する:(1)HMLT法により測定されたその分子量が3×10g/モル以上及び(2)それらが0.3Pa・s(300Cps)以上の溶液ブルックフィールド粘度を有する。ポリマー組成物は、もしそれが3又は4のポリマーインデックスを有さず、次の二条件の内の一つ又は双方を満たすならば2のポリマーサイズインデックスを有する:(1)HMLT法により測定されたその分子量が2×10g/モル以上及び(2)それらが0.2Pa・s(200Cps)以上の溶液ブルックフィールド粘度を有する。
【0027】
本発明の新規なポリマー組成物は、2以上、好ましくは3以上及びより好ましくは4のポリマーサイズインデックスを有する。本明細書において使用される用語「Tg」は、中間点法を使用した示差走査熱量分析法(DSC)により測定したポリマーのガラス転移温度を表す。
【0028】
本発明の新規なポリマー組成物は、また、高くとも20℃までのTgを有する。これらの新規な組成物は、少なくとも第一ポリマー段を含み、ここで、該第一ポリマー段の少なくとも50重量%は次のものの1以上から誘導された単位を有する第一ポリマー成分を有する:ブタジエン;及びCからC18アルキル(メタ)アクリレート。
【0029】
また、本発明により包含されるのは、−20℃未満のTgを有するコア部及び30℃より大きいTgを有するシェル部を有するポリマー粒子の第一集団;及び2以上のポリマーサイズインデックス及び高くとも20℃までのTgを有するポリマー粒子の第二集団を含有するマルチモーダル粒子系である。
【0030】
本明細書において使用される用語「ゴム状」は、そのガラス転移温度より上のポリマーの熱力学状態を表す。
【0031】
本明細書において用語「‐から誘導された単位」とは、ポリマーがその構成モノマー「-から誘導された単位」を含有する公知の重合技術に従い合成されるポリマー分子を意味する。
【0032】
本明細書において用語「段」は、米国特許第3,793,402号;米国特許第3,971,835号;米国特許第5,534,594号;及び米国特許第5,599,854号等の先行技術においてもたらされる意味を含み、その最も広い可能な意味を包含することが意図される;それらの米国特許は、「段」ポリマーを達成する種々の手段を提示する。
【0033】
本明細書において用語「部」は、「重量部」を意味することが意図される。断りのない限り、「全重量部」は加えて100になる必要はない。
【0034】
本明細書において用語「重量パーセント」は、総部が加えて100になる「100重量部当たりの部」を意味することが意図される。
【0035】
本明細書において用語「粒径」は、粒子の集団の平均粒子直径を意味する。
【0036】
本明細書において用語「高固形分」は、総エマルションの少なくとも30重量パーセントの固形分濃度を有するエマルションを意味する。
【0037】
本発明の新規なポリマー組成物は、それらが2以上のポリマーサイズインデックス及び低Tgを有する点で独特である。本発明により包含される組成物の具体的なポリマーサイズインデックス及びTgは、一部には、望ましい最終用途に依存する。これらの当業者は、多くの最終用途について本発明の組成物を使用することができるだろう。しかしながら、例示目的として、本発明の重合体組成物は、加工助剤及び潤滑剤特性を有するプラスチック添加剤として記載されるであろう。
【0038】
本発明により包含されるポリマー組成物は、多くの有益な特性を有する。例えば、本発明により包含されるポリマー組成物がプラスチック添加剤として使用されるならば、慣用の加工助剤の量は部分的又は完全に減少され又は潤滑剤の量が部分的又は完全に減少される場合であっても結果として生じる系は、しばしば、望ましい融解特性及び潤滑剤特性を有する。幾つかの場合において、潤滑剤及び慣用の加工助剤双方の量が、それぞれ他のものと独立に部分的又は完全に減少される場合であっても、結果として生じる系は望ましい融解特性及び潤滑剤特性を有する。従って、プラスチック配合業者が1以上の潤滑剤に加えて1以上の慣用の加工助剤をかつては必要としていたであろう場合に、その配合業者は、本発明のポリマー組成物を使用することにより、より少量の潤滑剤又は伝統的加工助剤又はその両方を使用しながら望ましい系を作ることができ、及びその配合業者は1以上の潤滑剤、1以上の伝統的加工助剤又はその両者の1以上を完全に削除することができるであろう。幾つかの場合において、本発明のポリマー組成物を使用することにより、配合業者は全ての潤滑剤及び伝統的加工助剤を削除することができるであろう。これは、配合業者並びにプラスチック添加剤製造業者にとって多くの明白なコスト、加工及び取り扱い利点を有する。
【0039】
上記したように、本発明のポリマー組成物は、2以上のポリマーサイズインデックスを有する。もしプラスチック添加剤として使用されるならば、それらのポリマーサイズインデックスは、3以上;より好ましくは4である。独立して、プラスチック添加剤として使用されるならば、それらの分子量は、好ましくは少なくとも4×10g/モル又は少なくとも5×10g/モルである。それらの分子量の上限は、部分的には、それらが暴露される加工条件、並びにそれらの望ましい最終用途により決定される。典型的には、本発明のポリマー組成物の分子量は、12×10g/モル未満、又は10×10g/モル未満、又は8×10g/モル未満である。
【0040】
本発明のポリマー組成物は、低いTgを有する。具体的には、それらのTgは20℃未満である。もしも一つの好ましい態様においてプラスチック添加剤として使用する場合は、それらのTgは10℃未満、又は0℃未満、又は−10℃未満、又は−20℃未満、又は−40℃未満、又は−60℃未満である。それらのTgの下限は、部分的には、本発明のポリマー組成物が暴露される加工条件、並びにそれらの望ましい最終用途に依存する。
【0041】
これらの新規な組成物は、少なくとも第一ポリマー段を含む、ここで少なくとも50重量%の第一ポリマー段は次のものの1以上から誘導された単位を有する第一ポリマー成分を含む:ブタジエン及びCからC18アルキル(メタ)アクリレート。第一ポリマー成分は、ブタジエン及び/またはCからC18アルキル(メタ)アクリレートから誘導された単位に加えて、次のモノマーの1以上から誘導された単位を含有してもよく又は含有しなくてもよい:ブタジエン以外のジエン;イソプレン;(メタ)アクリル酸;置換CからC18アルキル(メタ)アクリレート、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート;スチレン;置換スチレン、例えば、アルファメチルスチレン;ビニルアルコール;ビニルエーテル;ビニルアセテート等のビニルエステル;塩化ビニル等のビニルハライド;及びアクリロニトリル等のビニルニトリル。従って、本発明は、ブタジエン及びC〜C18アルキル(メタ)アクリレートの1以上から誘導された単位を有するコポリマーを含む第一ポリマー成分を含む第一ポリマー段を有するポリマー組成物を包含する;任意に、これらのコポリマーは追加的に他のモノマーから誘導された単位を有することができ;ブタジエン及び/又はC〜C18アルキル(メタ)アクリレート及び/又は任意の他のモノマーから誘導された単位は20℃未満のTgを提供する任意の比率で含まれ得る。
【0042】
好ましい第一ポリマー段は、部分的には、本発明のポリマー組成物が暴露される加工条件、並びにそれらの望ましい最終用途に依存する。もし一つの好ましい態様においてプラスチック添加剤として使用される場合は、少なくとも50重量パーセントの第一ポリマー段は1以上のCからC18アルキル(メタ)アクリレートから誘導された単位を有する第一ポリマー成分を含み、又は第一ポリマー段の少なくとも60重量%は1以上のCからC18のアルキル(メタ)アクリレートから誘導された単位を有する第一ポリマー成分を含み、少なくとも70重量%の第一ポリマー段は1以上のCからC18のアルキル(メタ)アクリレートから誘導された単位を有する第一ポリマー成分を含み、又は少なくとも80重量%の第一ポリマー段は1以上のCからC18のアルキル(メタ)アクリレートから誘導された単位を有する第一ポリマー成分を含む。
【0043】
第一ポリマー成分の重量パーセント上限は、部分的には、また、本発明のポリマー組成物が暴露される加工条件、並びにそれらの望ましい最終用途に依存する。もし一つの好ましい態様においてプラスチック添加剤として使用される場合は、100重量パーセントの第一ポリマー段は1以上のCからC18アルキル(メタ)アクリレートから誘導された単位を有する第一ポリマー成分を含み、又は多くとも95重量%の第一ポリマー段は1以上のCからC18のアルキル(メタ)アクリレートから誘導された単位を有する第一ポリマー成分を含み、又は多くとも90重量%の第一ポリマー段は1以上のCからC18のアルキル(メタ)アクリレートから誘導された単位を有する第一ポリマー成分を含み、又は多くとも85重量%の第一ポリマー段は1以上のCからC18のアルキル(メタ)アクリレートから誘導された単位を有する第一ポリマー成分を含む。
【0044】
第一ポリマー段が1以上のCからC18のアルキル(メタ)アクリレートから誘導された単位を有する第一ポリマー成分を含む上記の例示的例において、もしも一つの好ましい態様においてそのポリマー組成物がプラスチック添加剤として使用される場合は、第一ポリマー成分は次のものの少なくとも一つから誘導された単位を有する:メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2‐エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート。他の好ましい態様において、第一ポリマー成分は、少なくとも次のものの一つから誘導された単位を有する:メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート又は2‐エチルヘキシルアクリレート。更に他の好ましい態様において、第一ポリマー成分は、エチルアクリレートから誘導された単位を有する。
【0045】
幾つかの態様において、第一ポリマー成分は、−10℃以下のTgを有する1以上のCからC18のアルキル(メタ)アクリレートから誘導された単位を有する。本明細書において、モノマーの「Tg」は、そのモノマーのホモポリマーのTgである。幾つかの斯かる態様において、第一ポリマー成分は、−10℃以下のTgを有する1以上のCからC18のアルキル(メタ)アクリレートから誘導された50重量%以上の単位を有する。
【0046】
幾つかの態様において、第一ポリマー成分はCからC18アルキル(メタ)アクリレートから誘導された単位の代わりに又は加えて、CからC18アルキル(メタ)アクリレート以外の1以上のモノマーから誘導された単位を有する。本発明において有用であると知られるCからC18アルキル(メタ)アクリレート以外のモノマーの幾つかの例は、ビニル芳香族及び芳香族(メタ)アクリレートである。有用なビニル芳香族としては、例えば、スチレン及びアルファ‐メチルスチレンのような置換スチレンが挙げられる。有用な芳香族(メタ)アクリレートとしては、例えば、ベンジルアクリレート及びベンジルメタアクリレートが挙げられる。
【0047】
幾つかの態様においては、第一ポリマー成分はエチルアクリレート及び、任意に、1以上のコモノマーから誘導された単位を含有する。コモノマーとして有用なモノマーは、例えば、スチレン、メチルメタクリレート、2‐エチルヘキシルアクリレート、ラウリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ブチルメタクリレート及びベンジルメタクリレートが挙げられる。
【0048】
第一ポリマー成分が100重量パーセント未満の第一ポリマー段である場合には、残りの重量パーセントは少なくとも第二のポリマー成分から構成され得る。そこで複数の引き続くポリマー成分が存在することは、本発明の範囲内である。これらの引き続きのポリマー成分に関する限定は、それらの総重量パーセントが第一ポリマー段の50重量パーセントを超えることはできないことである。
【0049】
第二ポリマー成分の好ましい量は、部分的には、本発明のポリマー組成物が暴露される加工条件、並びにそれらの望ましい最終用途に依存する。もしも一つの好ましい態様においてプラスチック添加剤として使用される場合は、少なくとも5重量の第一ポリマー段は第二ポリマー成分を含み、少なくとも10重量パーセントの第一ポリマー段は第二ポリマー成分を含み、又は少なくとも15重量パーセントの第一ポリマー段は第二ポリマー成分を含む。
【0050】
第二ポリマー成分の重量パーセント上限は、部分的に、本発明のポリマー組成物が暴露される加工条件、並びにそれらの望ましい最終用途に依存する。もしも一つの好ましい態様においてプラスチック添加剤として使用される場合は、多くとも50重量パーセントの第一ポリマー段は第二ポリマー成分を含み、又は多くとも40重量%の第一ポリマー段は第二ポリマー成分を含み、多くとも30重量%の第一ポリマー段は第二ポリマー成分を含む。
【0051】
存在する場合は、第二ポリマー成分は、最終ポリマー組成物について20℃以下のTgを生じる任意の好適なポリマー化合物であり得る。斯かる好適なポリマー化合物の例としては、他のCからC18アルキル(メタ)アクリレート、イソプレン、酢酸ビニル、スチレン、アルファメチルスチレン、(メタ)アクリル酸等の酸性モノマー、イソブチレン、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
【0052】
好ましい第二ポリマー成分は、部分的に、本発明のポリマー組成物が暴露される加工条件、並びにそれらの望ましい最終用途に依存する。もしも一つの好ましい態様においてプラスチック添加剤として使用される場合は、第二ポリマー成分は、少なくとも次の一つを含む:CからC18のアルキル(メタ)アクリレート、アルファメチルスチレン、スチレン、(メタ)アクリル酸等の酸性モノマー。他の好ましい態様においては、第二ポリマー成分は少なくとも次の一つを含む:CからC18アルキル(メタ)アクリレート。
【0053】
幾つかの態様において、第一ポリマー段は、また、少なくとも一つの多不飽和モノマーから誘導された単位を含有することができる。もしも存在するならば、斯かる単位の濃度はコア部分の総重量当たり0.001重量パーセントから5重量パーセントの範囲である。多不飽和モノマーは、不飽和基がジビニルベンゼン、アジピン酸ジビニル、エチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジアクリレート及びトリメチロールプロパントリメタクリレート等におけるような同等の又は同一の反応性のものであり得る。他方、多不飽和モノマーはジアリルマレエート、アリルメタクリレート及びアリルアクリレート等におけるような、不飽和基が非同等及び同一でない反応性のものであり得る。
【0054】
幾つかの態様において、本発明のポリマー組成物は、水又は他の流体との混合物で存在する。斯かる幾つかの態様において、ポリマー組成物は、水又は他の流体において溶解又は分散している。ポリマー組成物を水又は他の流体から分離することは、しばしば望ましいことである。この分離法は、本明細書においては「分離」と称される。ある場合において、ポリマー組成物は、分離の後、粉末形態で存在する。
【0055】
望ましい形状(マトリックスについて)に形成される前に、又はその特性又は加工性(プラスチック添加剤について)を改善するようマトリックス樹脂とブレンドされる前には、斯かるポリマー組成物は典型的には粉末形態である。しかしながら、本発明により包含されるもののポリマーサイズインデックス及びTg特性を有するポリマー組成物は、安定な粉末として分離することが困難であり得る。即ち、安定な粉末形態のポリマー組成物を生じさせる分離法を見出すのは時々困難である。ポリマー粉末に関する場合の用語「安定」は、通常の貯蔵、取り扱い及び加工手順の過程で流動可能な形態に留まる個々の粉末粒子の能力を意味する。この困難性のひとつの理由は、本発明により包含されるポリマー組成物が柔軟なことである。従って、それらは粉末の安定性を減少させることとなる、分離及び取り扱いの過程での固着傾向を有する。
【0056】
安定な粉末の形態で本発明のポリマー組成物を分離する一つの方法は、第一ポリマー段の上に第二ポリマー段を適用することである。分離を助ける(aiding isolation)ために使用される場合は、第二ポリマー段は第一ポリマー段のそれに比較して比較的高いTgを有する。しかしながら、第二ポリマー段が同一範囲内、又は第一ポリマー段よりも低いTgを有することは本発明の範囲内である。例示的な目的のために、第二ポリマー段が安定な粉末の形成を容易にするのに使用される、本発明の態様が説明されるであろう。
【0057】
この具体的な態様において、第二ポリマー段は典型的には粒子総重量の少なくとも1重量パーセント、又は少なくとも2重量パーセント、又は少なくとも3重量パーセントである。他方、この態様を実施するとき、ポリマー組成物の第二ポリマー段部分は典型的には粒子総重量の多くとも35重量パーセント、又は多くとも30重量パーセント、又は多くとも25重量パーセントである。
【0058】
本発明のこの態様を実施するとき存在し得る第二ポリマー段は、典型的には少なくとも20℃のガラス転移温度を有する硬質ポリマー又はコポリマーを含んでなる。第二ポリマー段が少なくとも30℃又は少なくとも40℃又は少なくとも50℃のTgを有することは、本発明の範囲内である。
【0059】
これらの場合において、第二ポリマー段は、少なくとも50重量パーセントの典型的にはメチルメタクリレート又はスチレンから誘導された単位から形成される。例えば、第二ポリマー段はメチルメタクリレート又はスチレンのホモポリマー、メチルメタクリレート又はスチレンと少量のエチルメタクリレート又はブチルアクリレートのようなアルキルアクリレート又はアルキルメタクリレートとのコポリマー、メチルメタクリレート又はスチレンとメタクリル酸等とのコポリマーであり得る。第二ポリマー段は、第一ポリマー段に、部分的または全体的に、結合又はグラフトされていてもよい。
【0060】
この具体的な態様において、第二ポリマー段の分子量は、典型的には1×10g/モルより大である。しかしながら、第二ポリマー段の分子量は、1×10g/モルより大きく及び5×10g/モルより大きく及び10×10g/モルよりも大きくてもよい。
【0061】
幾つかの場合において、本発明のポリマー組成物は、また、第一ポリマー段及び第二ポリマー段の間に挿入された中間層を有する(以後、「第三ポリマー段」と称される)。斯かるポリマー組成物中に存在するならば、第三ポリマー段は典型的にはCからC18アルキル(メタ)アクリレートから誘導される単位を含む。一般に、第三ポリマー段の少なくとも50重量パーセントは、CからC18アルキル(メタ)アクリレートを含んでなる。第三ポリマー段が、本質的にCからC18アルキル(メタ)アクリレートを含んでなることは本発明のこの態様の範囲内である。従って、第三ポリマー段はCからC18アルキル(メタ)アクリレートのホモポリマー、CからC18アルキル(メタ)アクリレートと約1から約20部のような少量の他のCからC18アルキル(メタ)アクリレートとのコポリマー、CからC18アルキル(メタ)アクリレートとスチレンとのコポリマー、CからC18アルキル(メタ)アクリレートとメタクリル酸等とのコポリマーであり得る。
【0062】
存在する場合は、第三ポリマー段は典型的には少なくとも2重量パーセントのポリマー組成物である。第三ポリマー段が少なくとも5重量パーセントのポリマー組成物又は少なくとも7重量パーセントのポリマー組成物であることは、本発明のこの態様の範囲内である。他方において、存在する場合は、第三ポリマー段は、典型的には多くとも25重量パーセントのポリマー組成物である。第三ポリマー段が多くとも20重量パーセントのポリマー組成物、又は多くとも15重量パーセントのポリマー組成物であることは、本発明のこの態様の範囲内である。好ましい重量パーセンテージは、望ましい最終用途に依存する。
【0063】
第三ポリマー段は、第一ポリマー段に部分的に又は全体的に結合又はグラフトされていてもよい。更にそれは、約0.05重量パーセントから約5重量パーセントの上記1以上の多不飽和モノマーを含有することができる。
【0064】
本発明により包含されるポリマー組成物は、多くの異なる方法により製造され得る。例示的目的のためには、新規なポリマー組成物を製造するための一つの方法が、開示される。しかしながら、この記載を読んだ後で、当業者は、使用され得る他の方法及びこれら方法の中でそれらのニーズ及び資源に最も適したものを知るであろう。ポリマー組成物を製造する全ての斯かる方法は、本発明により包含されることが意図されている。
【0065】
この例示的な方法において、ポリマー組成物の水性ディスパーションは、エマルション重合により調製される。本発明を実施するとき使用されるラテックスエマルションを形成するために重合プロセスが行われる際の反応条件には、当業界で公知のものが含まれる。採用される開始剤は、過硫酸塩、ペルエステル、ヒドロペルオキシド、過酸及びアゾ化合物等、エマルション重合に一般的なものである。幾つか又は全ての開始剤は、活性化剤と組み合わされて「レドックス」対を形成することができる。斯かる活性化剤としては、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、ナトリウムメタビスルフィット及びヒドロ亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0066】
一つの具体的なエマルションプロセスにおいて、重合過程は反応物が水性媒体中で好適に配合され、混合され及び反応され、熱が反応帯域内部に移動され及びそこから逃げ去る好適な反応器内で遂行される。モノマーは、ゆっくりと(即ち、セミバッチプロセスのように徐々に)長時間に亘り又は迅速に「ショット」(即ち、バッチ)として開始及び伝搬の迅速な速度が反応器温度の迅速な上昇により示される反応器に添加されうる。ある種の態様において、モノマーはショットとして添加されるのが好ましい。長時間に亘るモノマーの反応器への連続供給は、反応温度を調節することが重要ではあるが、有用である。
【0067】
モノマーは、結果として生じるポリマーの望ましい粒径の制御のために又は構造的変更のために予め形成されたポリマーディスパーション(「シード」ポリマー)の存在下で重合され得る。もし使用されるならば、「シード」ポリマーは、しばしば、100nmより下のような比較的小さな粒径を有する。
【0068】
シードポリマーは、粒径を調節するために別個に作られ添加されることができ、その場で発生させてもよい。モノマーは、予め形成されたエマルションとして「そのまま」で添加され、又は反応器に添加されながらインライン乳化剤の使用により添加されてもよい。
【0069】
シードポリマーは、組成的に第一ポリマー段のそれと類似であり得る。例えば、シードはゴム状物質のポリマーでよく、第一ポリマー段の組成と類似又は異なってもよい。代替的に、シードは、硬質非ゴム状ポリマー(例えば、ポリスチレン又はポリ(メチルメタクリレート)でもよい。シードポリマーは、生じるポリマー組成物の屈折率を調整する手段として使用され得る。これを行う方法は、本明細書において挿入され、参照される米国特許第3,971,835号において開示される。
【0070】
この例示的態様に連続して、エマルションが本発明により包含されるポリマー組成物を含む固形部分を有して形成される。(a)平均粒径を有するポリマー組成物の唯一の集団(以下「ユニモーダル系」と称される)又は(b)それぞれがそれ自身の別個の平均粒径、それ自身別個の粒子組成又はそれ自身別個の粒径及びポリマー組成を有する2以上のポリマー組成物集団(以下単独で及び集合的に「マルチモーダル系」と称される)であることは本発明のこの態様の範囲内である。
【0071】
本発明のこの具体的な態様を実施するとき、形成されたラテックスエマルションの固形成分がユニモーダル系であるならば、平均粒径は典型的には少なくとも30nmである。同様に、もし、形成されたラテックスエマルションの固形成分がその集団の相違が単にそれらの組成であるマルチモーダル系であるなら(即ち、両集団の平均粒径が本質的に同一である)、両集団のその平均粒径は、典型的には少なくとも30nmである。最終的に、もしも形成されたラテックスエマルションの固形成分がその集団の相違が少なくとも平均粒径であるなら(即ち、それらが組成的に同一又は異なることができる)、より小さな集団の平均粒径は典型的には少なくとも30nmであり、より大きな集団の平均粒径は典型的に少なくとも70nmである。ラテックスエマルションの固形成分がその集団の相違が少なくともそれらの平均粒径であるマルチモーダル系である場合において、その集団の合計の総平均粒径は典型的に少なくとも50nmである。
【0072】
従って、形成されたエマルションの固形成分がユニモーダル又はマルチモーダル系であるかどうかに拘らず、その集団の合計の総平均粒径は典型的には少なくとも30nmである。集団の合計の総平均粒径が30nm未満であることは、本発明のこの態様の範囲内である。しかしながら、多くの場合、集団の合計の総平均粒径は、少なくとも30nmである。これらの態様においては、集団の合計の総平均粒径は、少なくとも50nm又は少なくとも70nmとなり得る。
【0073】
本発明のある種の具体的な態様を実施するとき、エマルションは少なくとも15重量パーセントの固形成分濃度を有する。ラテックスエマルションの固形分成分濃度が15重量パーセント未満であることはこの態様の範囲内である。しかしながら、多くの場合、エマルションは、少なくとも15重量パーセントの固形成分濃度を有する。これらの態様において、エマルションは少なくとも25重量パーセント;又は少なくとも35重量%の固形成分濃度を有することができる。
【0074】
本発明のポリマー組成物は、エマルション、水性ディスパーション、凝固スラリー、ウェットケーク、クラム(Crumb)、グラニュール又は粉末を含む、種々の量の水を含有する幾つかの形態で使用され得る。ポリマー組成物の第一ポリマー段の柔軟な、ゴム状の性質のために、引き続きのポリマー段が存在しないならば、エマルション、水性ディスパーション、凝固スラリー、ウェットケーク又はクラムの形態又はグラニュール形のポリマー組成物を使用することが好ましい。
【0075】
しかしながら、粉末形態で使用されることが望まれるならば、ポリマー組成物は更に少なくとも30℃のTg、好ましくは少なくとも50℃のTgを有する第二ポリマー成分を含むことが好ましい。本発明により包含されるポリマー組成物の粉末形は、多くの異なる方法により水性ディスパーション又はエマルションから分離され得る。
【0076】
本発明のポリマー組成物は、当業者に公知の任意の形態で使用され得る。好ましい形態は、部分的に、使用者のニーズ及び資源に依存する。本発明の使用され得る組成物の形態の例としては、エマルションとして、粉末として、クラムとして、ウェットケーク又はペレットとしてのものが挙げられる。
【0077】
また、これらの形態のときに、本発明の組成物はそれら自身で、又は他の材料との組み合わせで使用され得る。例えば、本発明の組成物は、エマルションとして耐衝撃性改良剤、硬質加工助剤などの他のエマルション製品と、又は充填剤、クレー、固体ポリマー粒子等の他の硬質物質とブレンドされ得る。これらのブレンドは、その後、上述の任意の形態(即ち、エマルションとして、粉末として、クラムとして、ウェットケークとして又はペレットとして)で使用され得る。
【0078】
粉末として本発明の組成物を分離することが望まれる場合には、これが達成されうる場合には次の二方法の例がある。一つの試みは、そのエマルションからポリマー粒子を凝固させ、凝固したポリマー粒子を乾燥することである(以後「凝固プロセス」と称する)。斯かるプロセスの典型的な例は、塩化カルシウム等の凝固剤をエマルションに加えることにより、ポリマー組成物を含有するエマルションが凝固される方法である。凝固エマルションは、その後分離される。その後、凝固エマルションは洗浄され、乾燥される。凝固エマルションは洗浄され、乾燥される。本発明を実施するとき採用され得る凝固プロセスの具体的例は:凍結凝固、塩凝固、メタノール凝固及び酸凝固等が挙げられる。
【0079】
粉末粒子をエマルションから分離する他の一般的な試みは、ポリマー組成物を含有するディスパーション又はエマルションを噴霧乾燥することである(以後「噴霧乾燥プロセス」と称される)。
【0080】
第一ポリマー段を含有する本発明のポリマー組成物が使用され得る別の方法は、その場で形成される凝固剤によりラテックスエマルションからポリマー組成物を凝固させることによるものである。これは、粉末を形成するために使用され得るか、又はエマルションを添加しながらポリマー組成物粒子を押出し成形物の形態に凝固するのに使用され得る。
【0081】
本発明の組成物がエマルションから分離される場合の一態様において、分離プロセスは新規な組成物を含有する少なくとも一つのエマルションを形成する工程を含む。しかしながら、2以上のエマルションが使用されるのは、本発明の範囲内である。本発明のこの態様を実施するとき使用されるエマルションの数に拘らず、新規なポリマー粒子及び(a)エマルション内に含まれる粒子集団の凝固を生じさせないが、しかし(b)粒子集団の凝固を生じさせる凝固剤を形成する第二イオン形成化合物と反応するイオン形成化合物を含有する少なくとも一つのものでなければならない。
【0082】
従って、一態様において、第一及び第二エマルションが形成され、それぞれは、少なくとも一つの粒子集団を含む固体成分を含み、集団の少なくとも一つが新規なポリマー組成物、水を含む液体成分及び、エマルションの固体成分、液体成分又は両者中に存在し得るイオン形成化合物を有する。個々のエマルション中に存在するイオン形成化合物の組成及び強度は、それらが:(a)与えられた任意のエマルション内に含有される粒子集団の凝固を生じさせず、しかし(b)二つのエマルションが共にブレンドされるとき第一及び第二のエマルション内に含有される粒子集団の凝固を生じさせる凝固剤を形成するためにお互い反応するものである。
【0083】
この態様において、第一及び第二イオン形成化合物は、異なるものでなければならない。それが第一及び第二イオン形成化合物を意味するとき用語「異なる」は、組成、濃度又は強度の相違を包含する。
【0084】
与えられるエマルション内に含有される粒子集団は、また、同一又は異なるものでもよい。それが粒子集団を意味するとき、用語「異なる」は粒径分布、組成、濃度又は任意のそれらの組み合わせにおける相違を包含する。
【0085】
新規な粒子をエマルションから分離する他の態様において、単一のエマルションが形成される。このエマルションは少なくとも一つの粒子集団を含む固体成分を含み、集団の少なくとも一つが新規なポリマー組成物、水を含む液体成分及び、エマルションの固体成分、液体成分又は両者中に存在し得るイオン形成化合物を含む。再度、エマルション中に存在するイオン形成化合物の組成及び強度は、それらが:(a)エマルション内に含有される粒子集団の凝固を生じさせず、しかし(b)エマルション内に含有される粒子集団の凝固を生じさせる凝固剤を形成する第二イオン形成化合物と反応するするものである。
【0086】
この態様において、第一及び第二イオン形成化合物は同一又は異なるものであってよい。それが第一及び第二イオン形成化合物を意味するとき、用語「異なる」は組成、濃度又は強度の相違を包含する。
【0087】
この明細書を読んだ後で、当業者は最もよくそれらの具体的ニーズに合う第一及び第二イオン形成化合物の適当な組成、濃度及び強度を選択することができる。多くの場合、本発明を実施するとき使用され得るイオン形成化合物の組成物としては:酸、塩基、水混和性溶媒及び塩溶液が挙げられる。
【0088】
この態様に従う粒子の凝固は、凝固剤のその場での生成に由来する。例えば、乳化剤が硫酸塩及びスルホン酸塩である場合、凝固剤が塩化ナトリウム及び塩化カルシウムのような塩であることにより達成され得る。しかしながら、エマルションがカルボン酸基を有する石鹸で安定化されるならば、これは凝固剤が適当な酸であることにより達成され得る。
【0089】
一つの具体例において、第一エマルションは酸(即ち第一イオン形成組成物)を含有し及び第二エマルションは塩基(即ち、第二イオン形成組成物)を含有する。それから、エマルションが共にブレンドされるときは、塩(即ち、凝固剤)がその場で形成される。酸及び塩基は、それらのそれぞれのエマルションにおいてそれと同一物の濃縮溶液として存在し得る。もし、酸及び塩基が第一及び第二イオン形成組成物として使用されるならば、典型的にそれらは水溶性であることが好ましい。また、典型的には、生じる塩は水溶性であることが好ましい。
【0090】
別の具体例において、エマルションは酸(即ち、第一イオン形成組成物)を含有し、第二のイオン形成化合物を含む組成物は塩基を含有する。そのとき、エマルションが第二のイオン形成性化合物を含む組成物とブレンドされるとき、塩(即ち、凝固剤)はその場で形成される。酸及び塩基は、それと同一の濃縮溶液として存在し得る。酸及び塩基が第一及び第二イオン形成組成物として使用される場合は、典型的には、それらは水溶性であることが好ましい。また、典型的には、生じる塩は水溶性であることが好ましい。
【0091】
本発明のこれらの態様を実施するとき、使用され得る好適な塩基としては:アンモニア、モノメチルアミンのような低分子量アミンが挙げられる。好ましい塩基は、エマルションの特定組成、及びそれらが付されるプロセス、取り扱い及び貯蔵条件に依存する。エマルションが高固形分耐衝撃性改良剤を含む場合は、アンモニアは好ましい塩基の一例である。
【0092】
アンモニア及び酢酸を含んでなる組み合わせ凝固剤系は、生じる酢酸アンモニウム塩は分解し、高められた温度で揮発性となるので、幾つかの場合においては特に望ましい。配合された凝固剤塩の成分の蒸発を引き起こすため、この現象が活用される多くの方法を想像することは可能である。一つの可能な試みは、残存水、アンモニア、及び酢酸を蒸発させるために加熱され、その結果有効に塩を含まない最終固体ポリマーを残す脱蔵帯を有する押出機を提供することであろう。
【0093】
本発明のこれらの態様を実施するとき使用され得る好適な酸としては、二酸化炭素、二酸化硫黄、酢酸、蟻酸及びプロピオン酸が挙げられる。好ましい酸は、エマルションの特定組成、及びそれらが付されるプロセス、取り扱い及び貯蔵条件に依存する。エマルションが高固形分耐衝撃性改良剤を含む場合は、酢酸は好ましい酸の一例である。
【0094】
個々のイオン形成化合物の適当な選択は、部分的に、凝固法に依存する。しばしば、凝固法は別個のエマルションに存在する界面活性剤の種類に依存するであろう。界面活性剤は、長鎖アルキルスルホン酸のアルカリ金属又はアンモニウム塩、長鎖硫酸アルキル、芳香族スルホン酸誘導体及びエトキシル化アルカリールホスフェイト等のエマルション分野で公知の多様なものから選択され得る。
【0095】
アニオン性界面活性剤が、しばしば好ましい。これらの場合において、吸着されたアニオンは、電気的二重層により囲まれた負に荷電された表面を生成する。塩凝固の機構は、凝固剤イオンによる粒子表面への電気的二重層の圧縮である。塩の有効性は、カチオンの種類及び荷電により特に決定される。二重層を圧縮するカチオン効率性及びそれらの各々の限界塩濃度は次の通りである:
【0096】
【数1】

【0097】
この発明を実施するときその場で形成される凝固剤の好ましい例としては、NaCl、アンモニウム塩、MgSO及びCaClが挙げられる。
【0098】
個々のエマルションの固形分濃度に応じて、凝固塊の液体含量は変化するであろう。乾燥プロセスは経費が嵩むので、凝固塊の液体含量は最小化されるのがしばしば好ましい。経費節減が好ましいとされるとき、凝固塊中の液体濃度は、典型的に70重量パーセント未満、又は50重量パーセント未満、又は30重量パーセント未満である。
【0099】
凝固塊中の低液体含量を達成する一方法は、第一及び第二エマルションが高固形分濃度のポリマー粒子をその中に含有していることである。典型的には、第一及び第二エマルションの固形分濃度が少なくとも15重量パーセントであることである。しかしながら、一つの好ましい態様において、第一及び第二エマルションの固形分濃度は少なくとも30重量パーセント、又は少なくとも45パーセント、又は少なくとも60パーセントである。
【0100】
凝固塊が形成された後で、それは乾燥され得る。任意の慣用の方法が乾燥用に使用され得る。
【0101】
上で示されたような高固形分エマルションが分離されるとき、更なる経費節減が乾燥機構としての押出機又は加熱マルチロールミル(以後個々に及び集合的に「押出機」と称される)を使用することにより達成され得る。例えば、多くの押出機は、液体供給流を取り扱うように設定され得る。従って、第一及び第二エマルションは、容易に押出機中に供給され得る。一度押出機本体中に供給されたら、凝固塊の形成をもたらす凝固剤が形成される。塊が押出機中で混合されている間に、熱が適用される。この熱は、大部分の液体を追い払う。塊は、次いでダイを通して押出される。押出された生成物は、その後ペレットに切断され又は粉末に粉砕され得る。
【0102】
本発明の任意の態様を実施するとき、使用され得るエマルションは当業者に公知の多くの異なる方法により製造されることができる。当業者は、明細書を読んだ後でエマルションを形成する好ましい方法を知るであろう。
【0103】
本発明のポリマー組成物は、粉末として分離され得る。粉末形態の本発明のポリマー組成物を分離する一つの方法は、他のポリマー粒子と共に本発明の組成物を共分離(例えば、共凝固又は共噴霧乾燥)することによるものである。この態様において、もし他のポリマー粒子がポリマー組成物粒子対他のポリマー粒子の適正な比率を選択することにより安定な粉末を容易に形成することができるならば、ポリマー組成物粒子は生じる粉末の安定性を破壊することなく容易に共凝固又は共噴霧乾燥され得るであろう。
【0104】
もしも本発明の重合組成物がプラスチック添加剤として採用されるならば、この共分離プロセスは新規なプラスチック添加剤系を形成するのに使用され得る。例えば、多くのプラスチック添加剤は粉末形態のまま販売され、使用される。一般的な例は、耐衝撃性改良剤及びメチルメタクリレート(又は他の高Tgポリマー)ベース加工助剤である。少なくとも一つの硬質ポリマーを含む第一成分、本発明の少なくとも一つのポリマー組成物を含む第二成分及び任意の1以上の更なる成分を含むブレンドが、本発明に基づき製造されてもよい。本明細書において「硬質」とは、30℃以上のTg;好ましくは50℃以上;及びより好ましくは80℃以上のポリマー物質を意味する。一つの好適な第一成分は、硬質ポリマー相を含有する1以上の耐衝撃性改良剤;幾つかの場合における硬質ポリマー相はシェルである。他の好適な第一成分としては、1以上の慣用の加工助剤が挙げられる。更に好適な第一成分としては、他の硬質ポリマー又は耐衝撃性改良剤と硬質ポリマー相、慣用の加工助剤及び他の硬質ポリマーとの任意の組み合わせが挙げられる。好適な慣用の加工助剤としては、例えば、パラロイド(PARALOID、商標)K‐400(ロームアンドハースカンパニーより製造され、販売される)ようなメチルメタクリレート加工助剤が挙げられる。
【0105】
幾つかの共分離態様においては、第一成分はポリマー粒子を含む。好ましいのは、30nm以上の粒径を有するポリマー粒子である。好適なポリマー粒子は、エマルション重合又は他の方法により製造され得る。
【0106】
これらの共分離態様の実施において、第一成分を含有する溶液、ディスパーション、サスペンション、エマルション又はラテックスは、第二成分を含有する溶液、ディスパーション、サスペンション、エマルション又はラテックスと、また任意の自由選択の更なる成分を含有する溶液、ディスパーション、サスペンション、エマルション又はラテックスと混合される。結果として生じる混合物は、それから、共分離されて粉末を形成する。
【0107】
幾つかの共分離の態様において、それぞれの成分は、少なくとも一つのラテックスポリマーを含有する。ある種のラテックスポリマーを含有する幾つかの態様において、ラテックスポリマーは、少なくとも30nmの粒径を有する。それぞれの成分の内容物の粒径は、独立して選択され得る。例えば、第一成分は、時々30nm以上の粒径を有する少なくとも一つのラテックスポリマーを含有し、そこでは一部の又は全てのラテックスポリマー粒子は30℃以上のTgを有する少なくとも一つのポリマー相を含有する。
【0108】
大部分の慣用な耐衝撃性改良剤は、ゴム状コア及び硬質シェルを有する多段ポリマーである。このことはそれらを安定な粉末に分離するのを比較的容易にする。安定な粉末を形成する、1以上のコア/シェルポリマーを有するポリマー組成物の共凝固は、部分的に、単一段ポリマー組成物対コア/シェルポリマーの比に依存する。この比率は、次には、部分的に、ポリマー組成物粒子の粒径、コア/シェルポリマーの粒径及びコア/シェルポリマーのシェル段の組成及び濃度に依存する。好ましい比率は、本明細書を読んだ後で当業者により容易に決定され得る。
【0109】
「コア/シェル」は、本明細書において、多岐に亘るポリマーモルホロジーを意味する。幾つかの態様において、コアポリマーは、球状又はほぼ球状である粒子として存在する。幾つかの態様において、「シェル」ポリマーと称される第二ポリマーは、大部分又は全てのコアポリマー粒子を包囲する;その包囲は完全又は部分的であり得る。コア/シェルポリマーを形成する一つの公知の方法は、エマルション重合によりコアポリマーを作り、それからコアポリマーの存在下でエマルション重合によりシェルポリマーを製造することである。
【0110】
共分離態様において、第一成分は、プラスチック添加剤系の固形分重量を基準にしてプラスチック添加剤系の約99.5から約50固形分重量パーセントの範囲の濃度で典型的には存在する。第一成分が、プラスチック添加剤系の固形分重量を基準にしてプラスチック添加剤系の約99.5から約65固形分重量パーセント、又は約99.5から80固形分重量パーセント、又は約99.5から約90固形分重量パーセントの範囲の濃度で存在することは、本発明のこの態様の範囲内である。
【0111】
共分離態様において、第二成分は、プラスチック添加剤系の固形分重量を基準にしてプラスチック添加剤系の約50から約0.5固形分重量パーセントの範囲の濃度で存在する。加工助剤がプラスチック添加剤系の固形分重量を基準にしてプラスチック添加剤系の約35から約0.5固形分重量パーセント、又は約20から0.5固形分重量パーセント、又は約10から約0.5固形分重量パーセントの範囲の濃度で存在することは、本発明のこの態様の範囲内である。
【0112】
もしこの態様が実施されるならば、第二成分対第一成分の固形分重量比は、典型的には約0.5/99.5から約50/50である。第二成分から第一成分の固形分重量比が約0.5/99.5から約35/65、又は約0.5/99.5から約20/80、又は約0.5/99.5から約10/90であることは、本発明のこの態様の範囲内である。
【0113】
上記の新規なプラスチック添加剤系は、安定な粉末に分離されることができ、その後で、プラスチックマトリックス系に適用され得る。しかしながら、新規なプラスチック添加剤系が上記のように共凝固され、直接押出機に添加されてプラスチック添加剤ペレット、又はプラスチック樹脂と共に押出機に添加されてポリマーマトリックスを形成することは、また、本発明の範囲内である。
【0114】
本発明のポリマー組成物が、共分離により製造される粉末及び/又は他の方法により製造される粉末を含み及び噴霧乾燥、凝固、他の手段及びこれらの組み合わせにより製造された粉末を含み、粉末として分離される場合の態様は、本明細書において「粉末態様」として知られる。幾つかの粉末態様において、無機粒子は、また、粉末に含まれ、一方で他の粉末態様においては、無機粒子は含まれない。無機粒子が含まれる場合の粉末態様において、無機粒子の組成物は、例えば、クレー又は他の鉱物であってよい;他の鉱物は、例えば、二酸化チタン、1以上の酸化珪素、他の無機酸化物、炭酸カルシウム又は他の無機炭酸塩であり得る。異なる鉱物組成物の混合物又はブレンドが、使用されてもよい。鉱物粒子は、充填剤、顔料、流動助剤及び/又は他の名称で呼ばれてもよい。鉱物粒子は、小板、球、不規則形状、その他の形状及びそれらの組み合わせを含む任意の形状であり得る。鉱物粒子は、任意の粒径であり得る;多くの場合、鉱物粒子は0.1nmから100μmの粒径を有する。
【0115】
鉱物粒径を含む粉末態様において、鉱物粒子は、粉末粒子の形成前、過程又は後で、或いはそれらの組み合わせで本発明のポリマー組成物と混合され得る。幾つかの態様において、本発明のポリマー組成物の粒子が形成され、本発明のポリマー組成物の粒子はそれから無機粒子でコートされる;これらの態様において、鉱物粒子は本発明のポリマー組成物の粒子より小さい。これらの態様の幾つかの場合においては、鉱物粒子は、結果として生じる乾燥粉末の流動する能力が向上するよう本発明のポリマー組成物粒子の表面積を充分被覆すると信じられている。
【0116】
もしもプラスチック添加剤として使用される場合には、本発明のポリマー組成物又はプラスチック添加剤系は、それらの特性が向上するために必要とする任意のプラスチック樹脂とブレンドされることができる。それに添加される性能及び/又はプロセス向上化合物を必要とするプラスチック樹脂族の例としては:ポリオレフィンのホモポリマー又はコポリマー、エンジニアリング樹脂、及びポリ(ビニルハライド)樹脂が挙げられる。ポリオレフィンの一般的例としては:ポリプロピレン及びポリエチレンが挙げられる。エンジニアリング樹脂の一般的例としては、テレフタル酸及び脂肪族グリコールのポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリグルタルイミド及びアクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン樹脂が挙げられる。ポリ(ビニルハライド)樹脂の一般的例は:ポリ(塩化ビニル)(「PVC」)、塩素化ポリ(塩化ビニル)(「CPVC」)、ポリ(フッ化ビニル)(「PVF」)、ポリ(フッ化ビニリデン)(「PVDF」)及びこれらのブレンドが挙げられる。上述した樹脂の多くのブレンドは、また、マトリックス樹脂を形成し、それらの性能及び/又はプロセスは本発明のポリマー組成物の添加により望ましく向上され得る
【0117】
本発明の実施においてマトリックス樹脂として有用であることが知られている一つの種類の樹脂は、マトリックス樹脂の重量を基準にして、全てのポリ(ビニルハライド)樹脂の合計が50重量%から99.9重量%のマトリックス樹脂を構成するような量の少なくとも一つのポリ(ビニルハライド)樹脂を含む本明細書においてマトリックス樹脂と定義される「ポリ(ビニルハライド)主成分」樹脂として知られる種類である。また有用なのは、マトリックス樹脂の重量を基準にして、全てのポリ(ビニルハライド)樹脂の合計が75重量%から99.9重量%のマトリックス樹脂を構成するポリ(ビニルハライド)主成分樹脂である;追加的に有用なのはマトリックス樹脂の重量を基準にして、全てのポリ(ビニルハライド)樹脂の合計が90重量%から99.9重量%のマトリックス樹脂を構成するポリ(ビニルハライド)主成分樹脂である。追加的に、ポリ(ビニルハライド)主成分樹脂における使用に有用であるポリ(ビニルハライド)樹脂の一例は、PVCである。幾つかの有用なポリ(ビニルハライド)主成分樹脂において、PVCは存在する唯一のポリ(ビニルハライド)である。
【0118】
本発明の幾つかの態様においての実施は、少なくとも一つのマトリックス樹脂と少なくとも一つの本発明のポリマー組成物とのブレンドを伴う。斯かるブレンドは、任意に1以上の追加成分を含む。幾つかの態様において、斯かるブレンドは、マトリックス樹脂の固体重量を基準にして、0.01以上の固体重量パーセントの本発明のポリマー組成物を含む;他の態様において、斯かるブレンドは、マトリックス樹脂の固体重量を基準にして、0.05以上;0.1以上;又は0.25以上の固体重量パーセントの本発明のポリマー組成物を含む。幾つかの態様において、斯かるブレンドは、マトリックス樹脂の固体重量を基準にして、50以下の固体重量パーセントの本発明のポリマー組成物を含む;他の態様において、斯かるブレンドは、マトリックス樹脂の固体重量を基準にして、20以下;5以下;又は2.5以下の固体重量パーセントの本発明のポリマー組成物を含む。
【0119】
マトリックス樹脂及びプラスチック添加剤のブレンドは、しばしば、例えば、安定剤及び顔料のような1以上の追加の成分を含有する。一般的な安定剤としては、例えば、鉛を含有するもの及びスズを含有するものが挙げられる;鉛を含有しない安定剤が好ましい;より好ましいのは鉛を含有せず且つスズを含有する安定剤である。一般的な顔料は、例えば、二酸化チタン、炭酸カルシウム及びこれらの混合物が挙げられる。
【0120】
本発明のマトリックス樹脂及びポリマー組成物のブレンドは、追加的に0、1以上の慣用の加工助剤を含有することができる。独立して、斯かるブレンドは、本発明のポリマー組成物以外の0、1以上の潤滑剤を追加的に含有することができる。また、独立して、斯かるブレンドは追加的に0、1以上の安定剤を含有することができる。これら及び他の成分は、マトリックス樹脂及び本発明のポリマー組成物のブレンドに任意の順序で、任意の組み合わせで添加され得る。幾つかの成分又はそれらの部分は、お互い混合され、生じた混合物は、その後、他の成分と混合され得る。成分を混合する上で任意の順序及び任意の組み合わせが、本発明の実施において構想される。
【0121】
本発明の幾つかの態様において、マトリックス樹脂及び少なくとも一つのプラスチック添加剤のブレンドは、本明細書において「1液」法と称される方法を使用して本発明のポリマー組成物をマトリックス樹脂に添加することにより製造される。本明細書において定義されるように、「1液」法は、本発明の全ポリマー組成物、存在する全ての慣用の加工助剤、存在する全ての安定剤及び本発明のポリマー組成物以外に存在する全ての潤滑剤がお互い、マトリックス樹脂へのそれらの添加前に混合される方法である。本発明のポリマー組成物、慣用の加工助剤、安定剤及び本発明のポリマー組成物以外の潤滑剤の混合物は、本明細書において「単一パック」として知られる。「1液」法には、例えば、次のものの1以上を欠くブレンドを製造する方法が含まれるものと理解される:慣用の加工助剤、安定剤及び本発明のポリマー組成物以外の潤滑剤。「1液」法は、その中で、斯かる成分がブレンド中に含まれるならば、それらは単一パック中に最初に含まれることによりブレンド中に組み入れられ、それからマトリックス樹脂及び自由選択の他の成分に添加される。単一パックは任意にマトリックス樹脂の一部を含み;単一パックは単一パックの重量を基準にして、マトリックス重量の50重量%以下を含むであろう。
【0122】
幾つかの1液態様において、例えば、顔料及び充填剤等の1以上の追加成分は、マトリックス樹脂及びプラスチック添加剤のブレンドに任意に存在し得る。これら任意の追加成分は、単一パックに含まれることができ、それらは単一パックとは別にマトリックス樹脂に添加されることができ、又はそれらは部分的に単一パックに含まれ(任意の順序又は組み合わせで)、単一パックとは別にマトリックス樹脂に添加されることができる。
【0123】
次の実施例は、本発明のある種の具体的な態様を例示する。
【実施例】
【0124】
実施例1
2以上のポリマーサイズインデックス及び低ガラス転移温度を有するポリマー組成物はエマルション重合により次のように製造された:加熱、冷却、撹拌可能な;及び窒素ガススパージ/スウィープ、コンデンサー及び温度をモニターする手段を装填した好適な反応器に71.39部の脱イオン水及び0.05部の塩化ナトリウムが充填された。溶液は、ゆっくりと撹拌し、窒素の緩慢な流れでその溶液をスパージしながら約55℃に加熱された。約30分の後で、50〜55℃の溶液について、窒素スウィープが使用された。
【0125】
それから、4.25部のラウリル硫酸ナトリウム28%水溶液及び0.007部のエチレンジアミン四酢酸第二鉄ナトリウム5%水溶液が添加された。混合物は、約2分撹拌された。その後、23.80部のエチルアクリレートが、添加された。
【0126】
モノマーが添加された後で、0.27部のt‐ブチルヒドロペルオキシド‐70%の5%水溶液及び0.24部のホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム5%水溶液が、また、混合物に添加された。重合が開始した後で、温度は約90℃に上昇した。反応は、約15分間、ピーク温度に維持された。その後、反応は50℃より下に冷却され、濾過された。
【0127】
このプロセスは、89nmの粒径の平均サイズを有する粒子及び約500ppmの残存エチルアクリレートを有する24%固形分エマルションを与えた。固形分の分子量は、HMLT法を使用してゲル浸透クロマトグラフィーにより測定して、約4.8×10グラム/モルであった。溶液ブルックフィールド試験の粘度は、0.545Pa・s(545Cps)であった。
【0128】
実施例2
第一段階は、加熱及び冷却できるジャケット、高強度ミキサー、マーリン(MERLIN)FM‐10を使用してPVC粉末ブレンドを作ることであった。2500gのオキシビニル(OXYVINYL、商標)155PVC(K値49、オキシケム Corp.製造)はブレンダーに充填された。PVCは、加熱され、20メートル/秒の速度で混合された。混合物の温度が50℃に達したら、38gのアドバスタブ(ADVASTAB)TM‐181スズベース熱安定剤(ロームアンドハースカンパニー製造)が添加された。それから、混合物の温度が、約90℃に達したとき、次の量の実施例1からの生成物が添加された:
【0129】
【表1】

【0130】
上記のそれぞれの混合物においては、混合物の温度が約101℃に到達したとき、冷却水がジャケットに加えられた。その後で、2.5gのOPワックス(ヘキストセラニーズ Corp.により製造されたエステルワックス)が約98℃において高強度ミキサーに添加され、引き続き125g[100部当たり5部のPVC]RCL‐4二酸化チタン(TICONAにより販売される)が90℃で添加された。温度は、それから60℃より下に低下された。
【0131】
第二段階は、ハークフィソンズレオコード(HAAKE Fisons RHEOCORD、商標)90レオメーターで運転されるL/D:25/1ハークフィソンズレオメックス(HAAKE Fisons RHEOMEX、商標)252単一スクリュウ押出機内で粉末ブレンドを押出することであった。ここで、5ミリメーターキャピラリーダイが、ダイスウェルにより溶融弾性を測定するためロッド試料を形成させるために使用された。押出速度が、また、測定された。加熱帯域温度は次の通りである:
【0132】
【表2】

【0133】
望ましい温度に加熱された押出機について、スクリュウは約60の固定rpmにおいて開始された。PVC粉末ブレンドは、押出機の開口部の供給漏斗に添加され、ブレンドが確実に溶融され、平衡化するようタイマーが使用された。これに約7分を要した。
【0134】
ダイスウェル及び押出速度を測定するため次の工程が行われた:ロッド押出物はダイにおいて切断され、タイマーがスタートした;押出物はダイオープニングの下870ミリメーターのポイントにゆっくりと落下した。このポイントにおいて押出物はダイオープニングにおいて再び切断され、タイマーは停止した。押出速度は、ダイの下870ミリメーターに落下するに要する秒での時間で割ったグラムでのコイル状ロッドの重量として計算された。
【0135】
長さ約150ミリメーターのロッド押出物の他の試料が採取され、ミリメーターでのダイスウェルを測定するために冷却される。ダイスウェルは次式により計算された:[押出されたロッド直径(mm)/ダイオープニング直径(mm)]×100。
【0136】
実施例3
この実施例において、実施例2の第一段階が次の点を除き繰り返された。混合物の温度が約90℃に到達したとき、次のものが添加される:
【0137】
【表3】

【0138】
この実施例で使用されるプロセスの残りは、実施例2に記載されたような仕様で完了された。
【0139】
実施例4
実施例2a及び実施例3aの第一段階からの生成物は、より高い温度条件においてロッドを押出すために使用された。この実施例において、押出プロセス(工程2)は次のように変更された:
【表4】

【0140】
実施例2の押出プロセスは、次いで繰り返され、データが収集された。
【0141】
下記の表のデータは、本発明の加工利点を表している。押出物の膨張[ダイスウェル]により測定される溶融弾性及び速い押出速度において見られるような潤滑利点及び高加工温度におけるロッドの少ない黄色化が示される。
【0142】
【表5】

phr=PVC樹脂100部当たりの部。
K−400 は、ローム アンド ハース社製造のPVC用高分子量アクリル加工助剤、パラロイドK−400を意味する。
HMLT法を使用して測定された分子量(×10)。
ダイスウェルは、(冷却ロッドの直径(mm)/ダイオープニングの直径)×100(より高い値はより大きい溶融強度を示す)。
YIは、光源C、2°の標準観察、6.35ミリ(0.25インチ)アパーチャでのハンターラブ(商標)ラブスキャン(商標)XE機器を使用した高溶融温度において押出されたロッドについて測定されたイエローネスインデックスである。
【0143】
上記から判るように、本発明は加工助剤特性並びに潤滑特性を提供する。
【0144】
比較実施例5
次の比較配合物が、実施例2の方法を使用して製造された:
【0145】
【表6】

【0146】
実施例6及び7
耐衝撃性改良剤パラロイド(Paraloid、商標)BTA‐730Lの水性ラテックスは、BTA‐730L固形分対実施例1固形分が20:1の比を与えるように選択される量で、実施例1からの本発明の水性ラテックスとブレンドされた。このブレンドは、30%固形分を有するよう水で希釈された;次いで、それは室温でHCl溶液に添加されラテックスを凝固させた;凝固ラテックスは、濾過され、60℃においてオーブン中で乾燥された。生じた粉末は、本明細書において「730/SFA/H」として表示される。プロセスは、今回は10:1の固形分比を使用して繰り返され、生じた粉末は、本明細書において「730/SFA/1」と表示される。次の配合物が、比較実施例5においても使用された選択成分を使用して製造された:
【0147】
【表7】

【0148】
比較実施例C8及び実施例9及び10
比較実施例5及び実施例6及び7の配合物は、インターナルミキサー中で衝撃試験により試験された。インターナルミキサーはハークレオコード系90ボウルである。60gの固体配合物はボウルに添加され、175℃において分当たり55回転数で試験された。融解時間(ピークトルクが生じる時間);(PVC樹脂が容易にスムースな流動性溶融体となる一つの尺度)及び平衡におけるトルク(融解後6分)が記録された。試料は、種々の回数でボウルから取り出され、実施例4においてのようにYIについて試験された。
【0149】
また、それぞれの配合物の衝撃抵抗が、試験された。210gの配合物が二本ロールミル(コリンミル(Collin mill)、180℃、分当たり26回転(rpm)でのフロントロール及び20rpmでのバックロール)に置かれた。流動した後に、物質は5分間、練られ、ミルロールから除去され、プラーク(plaque)に圧縮成形された。試料は切断され、ASTM D‐256Aに従いアイゾット衝撃抵抗について試験された。
【0150】
試験結果は、次の通りであった:
【0151】
【表8】

【0152】
これらの結果は、本発明の実施例6及び7が融解容易性、潤滑剤性質、耐衝撃性及び劣化抵抗性(YIにより測定)の有用な特性を有することを示している。本発明の実施例6及び7の特性は、たとえ本発明の実施例6及び7が比較実施例5において存在する多様な加工助剤及び潤滑剤なしで製造されても、比較実施例5に匹敵する。
【0153】
比較実施例C8及び実施例9及び10は、また、ミル‐ロール剥離性について試験された。それぞれの配合物は、上記のように2‐ロールミル上に置かれた;物質が切断され、5分間繰り返し混合された後、物質は30秒間、切断することなしにロール上で循環させられた。真鍮のナイフを使用して、物質はフロント(運転者に最も近い)ローラーの中央線(ロール底部)に沿って迅速に切断され、引き続きロールから物質の分離が観察される。「優れる(E)」は、更なる切断無しでローラーから分離することを意味する。「貧弱な(P)」は、物質がロール上で完全に留まり、ナイフ切断がなされる線上以外でなんらの変化を示さないことを意味する。「貧弱」より幾分多い分離は「並み(F)」と評価され;「並み」より幾分多い分離は「良好(G)」と評価され;「良好」より多い分離ではあるが「優れる」より少ない分離は「非常に良好(VG)」と評価される。ミルロール剥離試験の結果は、次の通りであった:
【0154】
【表9】

【0155】
これらの結果は、実施例9のミルロール剥離が許容可能であること及び実施例10のミルロール剥離は、実施例9及び10が幾つかの標準の加工助剤及び潤滑剤を含まなくても、標準試料比較実施例C8より、より良いものであることを示す。
【0156】
比較実施例C11〜C14
下記の比較配合物が製造された。これらは、PVC発泡体配合物である。押出の後で、配合物は、比較的高いダイスウェル及び比較的低い密度を有する。成分量は、「重量部」(pbw)として下に掲示される。下記のベース配合物は、比較実施例C11〜C14について使用された:
【0157】
【表10】

【0158】
比較実施例は、次の通り製造された(「PA」は「加工助剤」を意味する):
【0159】
【表11】

アダワックス−165は、ローム アンド ハース社のパラフィンワックスである。
K−175は、ローム アンド ハース社のパラロイド(商標)加工助剤である。
AZRVは、ユニロイヤルケミカル社のアゾジカルボンアミド発泡剤である。
K−435は、ローム アンド ハース社のパラロイド(商標)加工助剤である。
【0160】
実施例15〜18
下記の配合物が製造された。これらはPVC発泡体配合物である。押出の後で、配合物は、比較的高いダイスウェル及び比較的低い密度を有する。成分量は、「重量部」(pbw)として下に掲示される。これらのベース配合物は、比較実施例C11〜C14について使用されたのと同一であった。
【0161】
これらの実施例において、次の略語が使用される:
「400/SPA」=75pbwK‐400及び25pbw実施例1のブレンド
「435/SPA」=75pbwK‐435及び25pbw実施例1のブレンド
【0162】
ブレンド400/SPAは、K‐400の固形分対実施例1の固形分について75/25の比率を与えるように選ばれた量でK‐400の水性ラテックスと実施例1の水性ラテックスとをブレンドすることにより製造された。そのブレンドは、それから、30%の固形分となるよう水で希釈された。ブレンドは、その後、下記の条件下でニロモービルマイナーラブ(NIRO MOBILE MINOR lab)噴霧乾燥機に供給された:
・空気圧による約35,000rpmのアトマイザースピード
・160℃に設定された挿入空気温度
・60℃の出口温度を達成するよう設定されたブレンド供給速度
・粉末は出口から収集され、下記のように使用された。
【0163】
実施例は下記のように製造された(「PA」は「加工助剤」を意味する):
【0164】
【表12】

【0165】
比較実施例C19〜C22及び実施例23〜26
比較例C11〜C14及び実施例15〜18において記載された発泡体配合物は、押出された。押出は、実施例2におけるのと同一ハーク装置において、60rpmで、帯域温度170℃(帯域1)、180℃(帯域2)、190℃(帯域3)及び170℃(帯域4)で遂行された。結果は次の通りであった:
【0166】
【表13】

【0167】
比較実施例C19、C20、C21及びC22は、通常の加工助剤及び潤滑剤と共に製造され、それらは許容される特性を示した。それぞれの場合において、加工助剤の一部は本発明の実施例1と置き換えられ、生じた配合物(それぞれ実施例23、24、25及び26)は、低いトルクを示しながら、同様の溶融温度、密度及びダイスウェルを示した。
【0168】
比較実施例C27
次の比較配合物が、実施例2の方法を使用して製造された:
【0169】
【表14】

【0170】
実施例28及び29
HCLの代わりにCaClを使用したことを除いて実施例6の方法を使用して、ロームアンドハース Co.からの耐衝撃性改良剤エマルションポリマーパラロイド(商標)KM‐399は、実施例1からのエマルションポリマーと混合された。混合物は、KM‐399対実施例1の固形分比が8:1で製造され、生じた粉末は「399/SPA/H/28」と呼ばれる。操作手順は4:1の固形分比で繰り返され、生じた粉末は「399/SPA/1/29」と呼ばれる。
【0171】
下記の配合物が実施例2の方法を使用して、製造された。
【0172】
【表15】

【0173】
比較実施例C30及び実施例31及び32
比較実施例C27及び実施例28及び29からの配合物は、シンシナティミリクロンにより製造されたCM‐35二軸スクリュウ押出機において次の条件で押出された:帯域1、188℃(370°F);帯域2、185℃(365°F);帯域3、182℃(360°F);スクリュウオイル171℃(340°F)、アダプターD1;ボディD2、サイドD3、サイドD4、全て191℃(375°F);18rpm;152mm(6インチ);シートダイ;高剪断スクリュウ。トルクは、押出機が可能である最大トルク荷重のパーセンテージである「%荷重」を使用して評価された。配合物は、また、ガードナー衝撃法、ASTM D5420‐98aを使用してダート衝撃抵抗について評価された,但し、平均破損エネルギーを試料厚さで割ったものである。結果は、次の通りである:
【0174】
【表16】

【0175】
比較実施例C30は、許容可能な特性を示す。実施例31及び32は、それらがK‐120ND、K‐175及びAC629Aを含まなくても同様の押出速度、同様の耐衝撃性及び低いパーセント荷重を示す。
【0176】
実施例33〜36及び比較実施例C37
実施例1の方法を使用して、追加のポリマーが製造された。それぞれの追加のポリマーにおいては、エチルアクリレートの23.80部はアクリルモノマー混合物の約23.80部で置き換えられた;混合物は種々のTgのポリマーを生じるよう選択された。それぞれのポリマーが製造された後、Tgは二度測定され、平均が下記に報告される。それぞれのポリマーは、実施例2の方法を使用して、PVC配合物中に含まれ、押出された。それぞれの場合において、PVCの100重量部当たり1重量部のポリマーが使用された。結果は、次の通りであった:
【0177】
【表17】

実施例1の繰り返し。
使用されるポリマーは75℃より上のTgを有するパラロイド(商標)K−120NDであった。
【0178】
本発明のポリマー組成物を含む配合物(実施例33〜36)は、慣用の加工助剤パラロイドK120NDを使用した配合物(比較実施例C37)と比較したとき、望ましく高い押出速度により示されるように改良された溶融加工特性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリックス樹脂の加工性を改良する方法であって、2以上のポリマーサイズインデックス及び高くとも20℃までのガラス転移温度(Tg)を有するポリマー組成物の前記マトリックス樹脂への添加を含み、
前記ポリマー組成物は、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート及び2−エチルヘキシルアクリレートからなる群から選択される少なくとも一つのモノマーから誘導された単位を有する第一ポリマー成分からなる第一段、及び任意に前記第一段上に適用される第二段であって、前記第二段の量が、前記第二段が存在する場合、前記ポリマー組成物の1%から35%である第二段を含み、
前記マトリックス樹脂は、ポリ(ビニルハライド)樹脂または主にポリ(ビニルハライド)樹脂である、前記方法。
【請求項2】
前記ポリマー組成物が、4のポリマーサイズインデックス及び0℃未満のTgを有する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリマー組成物が、前記第一ポリマー成分の少なくとも80重量%を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリマー組成物が、4のポリマーサイズインデックス及び0℃未満のTgを有し、前記ポリマー組成物の少なくとも80重量%が前記第一ポリマー成分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記添加が、請求項1に記載のすべてのポリマー組成物、存在するすべての慣用の加工助剤、存在するすべての安定剤、及び請求項1に記載のポリマー組成物以外の存在するすべての潤滑剤を、前記マトリックス樹脂に添加する前に、互いに混合する方法を用いて行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリマー組成物が、前記ポリマー組成物からなる第一ポリマー段上に第二ポリマー段を適用することにより形成される粒子である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第二ポリマー段が存在し、かつ前記第二ポリマー段が少なくとも30℃のTgを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記樹脂がポリ(ビニルハライド)樹脂である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記樹脂がポリ塩化ビニルである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第一ポリマー成分が、エチルアクリレート及びブチルアクリレートからなる群から選択される少なくとも1つのモノマーから誘導された単位を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第一ポリマー成分が、エチルアクリレートから誘導された単位を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第一ポリマー成分が、エチルアクリレートから誘導された単位からなる、請求項1に記載の方法。

【公開番号】特開2011−140657(P2011−140657A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55948(P2011−55948)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【分割の表示】特願2006−214865(P2006−214865)の分割
【原出願日】平成15年8月22日(2003.8.22)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】